翁長知事の動揺
翁長氏にとって誤算だったことはいくつかありますが、最大の失敗は、本土政府の動向を読み間違えたことです。
政府を決定的に甘く見ていました。
そして山城氏たちが、かくも暴走するとは思っていなかったことです。
この「和解」に不満を持つ山城氏たち平和センター派は、翁長氏の統制の外で実力闘争に及んで「和解」プロセスを破壊しようとしました。
「和解」についてはちょっと分かりにくいので、過去記事をお読みください。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-08d4.html
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-9847.html
なにか深いところで勘違いしてたんですね、山城さんたち。
自分は正義だからなにをしてもいい、いや正義のためには許されて当然だ、という奢りです。
しかも政府は下手で見て見ぬふり、県警の指揮権は知事、メディアは味方、本土からは支援が多数来てくれる、ならば何をやってもいいじゃないか。
防衛局資料http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-36a1.html
このような甘い情勢認識と奢りは、状況判断を歪めます。
山城派はまるで熱に冒されたように、高江地区を封鎖するわ、車の下で寝ころぶわ、警官に暴言を吐き散らして挑発するわ、本土から元暴力団員を入れるわ、果ては県道で検問までするわとやりたい放題の始末でした。
そして何より、高江住民から迷惑だから出ていってくれといわれる始末です。現地を敵にした闘争はありえません。
司法から見れば「実力による実効支配」とみなされかねない、統治の及ばない地域を山城氏たちは作り出してしまったわけです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/20165-b8be.html
そしてこの山城派の暴走は、いままで呉越同舟で共闘していた統一連・共産党との事実上の分裂にまで及びます。
共産党は運動の過激化は逮捕を招くだけではなく、運動の孤立化を招くとして批判的しました。
共産党は言っていることが空想的な分、どっこいリアリストなのです。
「ヘリパッドいらない住民の会」の伊佐真次・東村議は基地内行動の趣旨は理解しつつ「逮捕者が出て世論に受け入れられるかどうか」と懸念。「社会に認められ、一緒に頑張れる運動にしたい」と思う。
統一連の瀬長和男事務局長は「建設を止めたい思いは一つだが、方法論で異なる。那覇の路上で抗議する人もいるし、国の強行に対抗する手段として、みんなが模索している」と言う。(沖タイ10月15日)
伊佐議員は共産党員で、統一連も共産党系団体です。
こういう山城派の過激な実力闘争に、内心一番眉をしかめたのは翁長氏だったと思います。
「この微妙な最高裁判決が出る時期にこんなバカやりやがって、第一オレは高江ヘリパッド反対なんか公約していねぇぞ」と怒鳴りたかったでしょう。
裁判所というのは法律解釈だけではなく、その前後の状況を慎重に読んで勘案します。
特に今回のような国vs県という構図の場合、県が「和解」を提唱しているのにも関わらず、「オール沖縄」の側が暴力闘争をしてしまえば、ハッキリ言って手を出したほうが負けに決まっています。
だからこそ、国は他県の機動隊を助っ人で派遣しても、いかなる罵声や挑発にも「ならぬ堪忍、するが堪忍」だったのです。
あの高江リンチ事件も、警備の警官の目の前でしているわけで、いかに政府が反対派との摩擦を自制していたのか分かります。
最高裁判事がこの山城派の暴走を見てどのような心証形成をするのか、考えるまでもありません。
もっとも最高裁の心証を良くせねばならない時期に暴力に走った山城派によって、判決は決定的となってしまったのです。
翁長氏からすれば舌打ちしたい気分だったでしょう。「バカヤロー、最高裁が出るまで静かにしておれ」、と。
翁長氏からすれば、背後から斬りつけられたような気分だったことでしょう。
元々体質が違うのは知っていたが、こういう大事な時期に左翼はこんなことをするのか、と天を仰ぎたい気分だったことでしょう。
そこで翁長氏の口から出るのが、「高江容認」発言です。
琉球新報からズタボロに噛みつかれて慌てて撤回しますが、翁長氏の動揺ぶりがよくわかります。
これを静かに観察していた国は、従来の宥和的対応を止めることに決めたのです。
いままで法を犯しまくっていたので当然です。
暴行傷害、器物破損、強要、道交法違反、そして刑事特別法などなど、逮捕要件は山積みしていました。
意地悪な見方をすれば、国は山城氏が暴走し、反対派を分断し知事を孤立化させる仕事をしてくれることを待っていたのかもしれません。
満を持したように山城氏は逮捕され、留置場で再逮捕されてしまいました。
また過去のシュワブゲート前のブロック積みまで遡及して再逮捕されました。
平和センター事務所や、いままで聖域のように思われていた辺野古テント2にも家宅捜索の手が延びました。
中谷元防衛相は、今年3月にこう述べています。
「移設作業か遅れれば作業船や資材の制約解除で損害がでる。作業が中断した場合、損害の発生が想定されている」(産経2015年3月27日)
つまり国は暗にこう言っているのです。
「もし来年からの辺野古工事で、また今までと同じような過激な阻止行動が取られれば容赦なく検挙し、そのうえに工事が止まれば損害賠償請求するからな。」
この情勢を見て、翁長氏も決心をしたかに見えます。
さらに、11月から始まる振興予算交渉において、これがどんな影響を及ぼすのか翁長氏が考えないはずがありません。
実は、翁長氏は政府との「密使」を持っていました。それが安慶田(あげだ )光男副知事です。 ※あげたではなく、「あげだ」でした。ご指摘ありがとうございます。
安慶田光男副知事htwebronza.asahi.com/politics/articles/201504...
安慶田氏は自民党時代、新風会という那覇自民党市議団のボスでした。
そして翁長氏のクーデターに参加して飛び出しましたが、今でも自民党中枢とパイプを持ち、「密使」として東京とひんぱんに往復しているのは知られた事実です。
その安慶田氏の指南役と目されているのが、元県会議長・自民党県連会長だった外間盛善氏です。
先日の和やかな沖縄そばの背景に、安慶田-外間-二階ラインが動いたと見るほうが自然です。
さてその外間氏の移設問題についての持論はこうです。
外間氏は琉球新報2014年8月25日のインタビューでこのように述べています。
「(辺野古埋め立てには反対だが)基地反対ということではない。強いて言えば、内陸部の基地内に移すということであればいいとは思っている」
http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-230580.html
「内陸部の基地内なら容認する」、それはシュワブ・ハンセン陸上案のことです。
ならば、翁長氏の意見も、あんがい似た所にあるのではないかと思います。
そして二階氏はよく言えば清濁併せ呑む、融通無下、クリアにいえば得になるならなんだってオーケーのお人です。
翁長氏に沖縄すば食いながら、「おいタケシちゃん、戻ってこねぇか。オレが幹事長の間だぜ。いつまでつっぱってんだよ」くらいいいそうです(笑)。
ただしこれも、流血沙汰の暴力闘争が止み、穏やかに解決してほしいと願う私の希望的観測だとお断りしておきます。
※追記はまとめて記事にしますので、今日は削除しました。
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翁長知事が動揺しようがなんにも構わない気持ちが私にはある。この方は知事になるべきではなかったと今でも思っている。オ-ル沖縄をぶち上げて県民を扇動し知事になってしまった。彼は知事になりたいだけがホントの目的ではなかったのかという疑念が私にはあるのだ。
この方には、反日感情があると見ている。3年ほど前に天皇・皇后陛下が来られた時に、当時那覇市長だった翁長氏は奉迎の団体に那覇市の名前を入れることを拒んだ。琉球独立論に内心賛同しているのは確かに感じられるところでもある。あきらかな親中派でもある。
このような方が沖縄県知事であることが残念だ。早々に退陣してもらいたい。
今朝のタイムスに、元副知事の高良倉吉氏がオ-ストリアの学者であるクライナ-氏の業績を称える記事が載っている。奄美の加計呂麻島の住民の写真集(クライナー氏撮影)が加計呂麻島のある瀬戸内町から発刊されたという。「日々営まれる場への共感を基盤にして始めて、学問を論ずることの意味を模索できた、と言うクライナ-氏の思いがにじみ出ている」と高良倉吉氏は称える。要するに、地域住民への愛情が大事だということなのだろう。とこらが、このような深い住民への愛情が翁長氏からは感じられないのである。
高良氏は学者であると同時に、仲井眞前知事の副知事でもあった。だから、政治感覚もある筈だ。このような方が沖縄県の知事にはふさわしいのだ。そうすれば、風格のある沖縄県にもなれるのだ。
翁長知事は、いわゆる政治屋である。沖縄の歴史も十分に知らず、トンチンカンなことをする。そして、すべてが感情的である。高い識見はない。こんな人は嫌いだ。二階さんも私は嫌いだ。翁長氏と同類である。
投稿: ueyonabaru | 2016年12月 3日 (土) 13時29分
いつも 楽しく勉強させてもらってます
難しい事は言えませんが、自分も辺野古内陸部が沖縄の将来的にもよろしいのかと…
いづれ 日本独自の防衛、中国の驚異の低下等の状況になったとき 自衛隊の基地か民間空港に出来るように何千メートル?かは知りませんが 普天間並みの滑走路を造るべきかと… 那覇は第二滑走路できても那覇市が既にキャパオーバーですよね、とくに道路渋滞は酷いですからね。
投稿: 仲西んちゅ | 2016年12月 3日 (土) 15時42分
ueyonabaruさんが、「高良倉吉氏が知事に相応しかった」とおっしゃるのは意外の観もありますが、那覇市長時代にはその萌芽が十分見られたとはいいながら、翁長氏が公然と仲井眞氏に反旗を翻し始めたのは高良倉吉氏が副知事に就任してから。
それに篠原章氏が言うように、「仲井眞前知事は太田知事時代から連綿と続く、反対すれば金になる、という本土国民の嫌沖感の基いとなりかねない沖縄政治の悪弊を絶とうとした」事は事実かと思う。
そうであれば、仲井眞政治を受け継ぐものとしての高良倉吉氏は十分良かったのかも知れません。
また、これもueyonabaruさんと同じで私もやっぱり、二階俊博氏をまったく評価出来ません。
安倍総理の二階幹事長起用の意味は複雑で、中共向けメッセージと言えなくもなかったし、それもヒラリー政権下ならよかったが、トランプ側のフリン情報局長が示す方向性には合わないと思う。
なんと言っても、公費で江沢民像を建立しようと謀ったおっさんですからね。
その事自体は過ぎた事ですが、それへの総括が全然なされていないのが納得行きません。
ブログ主様の「陸上案」を私も支持しますが、「二階=翁長ライン」での拙速な実現は今後の沖縄政治のために良くないと思います。
あくまで法的決着の結果を受け入れつつ、沖縄の中から自然発生させるべき案件であって、二階氏はあくまで「自民党沖縄県連と調整すべし」と突っぱねるべき。
法的にすでにかなり煮詰まって来た現在、これを政治的に後退させる調整は一歩やり方を間違えるとすべて「元の木阿弥」になりかねず、翁長氏の狙いはまさにそこにあるのです。
だから、地元が相当煮詰まって「ほぼ総意」となった時に初めて自民党本部が重い腰をあげ、政府との調整に動くべき事柄なのだと思います。
一緒にソバ食ってニッコリするのはいいが、二階氏はフライングを犯すべきではない、という事です。
それにしても、意図を問わない「反対すれば金になる」「反対すれば国の譲歩を引き出せる」という公式の存在は安倍総理によってすら今後も続きそうで、これは引き続き沖縄を堕落させ続け、安全保障の意義を覆い隠し、引いては本土国民の沖縄に対する感情の離反を招くのでは、と危惧します。
なので、せめて今検討されている優遇税制の延長問題は短期に変更しべし、と強く願います。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年12月 3日 (土) 19時27分
沖縄の世論は、自分達が作るとはばから
ない偏向報道2紙の、手を抜いた批判に
対し翁長さん明らかに動揺し、支離滅裂
な事を言い始めました。
翁長さんは、完全に勇気ある撤退の時期
を逃したと思います。
訓練場返還式典への参加がオール沖縄か
らの最後の踏み絵となりそうです。
流れが大きく変わりそうな空気にな
って来ました。
投稿: 宜野湾市民 | 2016年12月 3日 (土) 21時12分
個人的には、ここらで収束して行って欲しいと願うの
ですが、最近の司法は人材的にオカシイと思うのと、
沖縄王が悪リィ悪リィと素直に降りるのかどうか、その
点を心配しています。
地裁にヘンな裁判官が多いとしても最高裁・・とは思
うのですが、私も含めて戦後生まれの人材はどこか芯
が無いというか、ズレてるというか、地獄を見た経験
が無いというか。勉強してイイ学校へ行って司法試験
に合格して戦後憲法下での法律人としてやって来た。
それだけです。厚みがない温室育ちの人材です。トン
でもない見解をブチ撒けやしないか? コワイですわ。
公平な判断をお願いしたい。どちら側にもヨイショし
ないで下さい。勝手な正義の味方にならないで下さい。
追い詰められたら大博打に出る人も多いです。名だた
る起業家にもこのタイプがいます。背水の陣を取って、
大反撃して来やしないか? 隠し玉を持っていたりし
て? コワイですわ。
自身の進退は大局から判断して下さい。自分のエゴは
全て捨てて下さい。勝手な正義の味方にならないで下
さい。
投稿: アホンダラ1号 | 2016年12月 4日 (日) 01時03分
仲西んちゅ さん。おっしゃるとおりです。
私が辺野古埋め立て案に反対しているのは、滑走路の長さもあります。
内陸部でないと2000m級の滑走路はできません。
いまの辺野古案は1500mで地方民間空港としては短すぎます。
これでは将来民間共用になった場合に禍根を残します。
山路さんのおっしゃることはまさに正論で、反論の余地がないのですが、これで収拾できるか、です。
首相は落とし所を探るにしても、最高裁判決で白黒をつけてからの話と思っているでしょうね。
二階は強いものには従うイエスマンです。
結局は、首相の意思決定でしょう。
ueyonabaruさんが推す高良さんは、私がもっとも尊敬あたわざる歴史学者です。学ばせてもらいました。
しかし、が故に、こんなドロドロした政治の場にひきだすのは躊躇われます。
翁長氏は2期めを狙っているでしょう。そのための二階幹事長への接近です。
これは絶対に阻止せねばなりません。
翁長氏は自らの残した混乱を収拾することだけすればよい。
2期めに自民党内から押す政治家がいないわけです。
そもそも自民が翁長クーデターショックから立ち直っていないのが、この間の混乱の原因のひとつです。
こんな内陸案など、本来沖縄自民が提起すべきなのです。
彼らがまごまごしていると、頭越しに決着されてしまいますよ。
高良さんは清新なイメージで、自民党の手垢がついていませんから、いいとはおもいますが・・・。
個人としては迷いますが、素晴らしい選択だとは思います。
ただし、政治的には未知数ですが。
投稿: 管理人 | 2016年12月 4日 (日) 03時36分
管理人様、揚げ足とりに見えたらすみません。
そんなつもりはないのですけれど、訂正できるのならしていた方がいいのかと思いましたので。
本文中にある安慶田の読み方は「あげた」ではなく「あげだ」と読むと思います。
このコメントは削除して頂いて下さいませ。
投稿: 通りがかりのうちなーんちゅ | 2016年12月 4日 (日) 08時30分