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2017年1月 7日 (土)

世界有数の軍事的緊張ポイント宮古海峡とは

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このブログでよく宮古海峡を取り上げてきました。 

なぜなのでしょうか? 

理由は簡単です。アジア地域のみならず、世界的に見ても有数の軍事的緊張が存在する海域だからです。 

宮古海峡は、中国東方艦隊の太平洋の入り口に当たっており、さらに中国が絶対に「解放」してやると宣言している台湾侵攻の際には、その後背地になる地理的条件にあります。 

宮古海峡の地理的位置を確認してみましょう。 

Photo

尖閣諸島から宮古島は南東に180㎞の距離にあります。画面中央左の赤い点が宮古島で、上の青い点が尖閣諸島です。  

おわかりのように、尖閣諸島か東シナ海の入り口の扉だとすれば、宮古島は玄関の上がり口に相当します。 

尖閣を中国が落そうとするならば、あらかじめこの一帯の海域の海上・航空優勢を握る必要があります。 

さもないと上陸した陸上部隊が、補給路を自衛隊に断たれて孤軍となるからです。 

岩礁の島で孤軍となったら、トカラ山羊でも喰ってサバイバルして下さいという事になります。 

また尖閣を離れても、宮古島は宮古海峡を扼しています。先程の地図に水深図を重ねてみます。 

Photo_2海底地図 海上保安庁海洋情報部提供。海底地形名称・海上保安庁発行海図「南西諸島(No.6315)」に基づく笹川平和財団https://www.spf.org/islandstudies/jp/info_library/senkaku-islands/03-ocean/03_ocean001.html   

画面左下から画面右・北東にかけて斜めに濃い青色で伸びているのが、沖縄トラフです。 

トラフとは海溝のことで、海溝(trench)とは、海底が細長い溝状に深くなっている場所のことで、その深さは深いものでは水面下1万mに達する場合もありますが、沖縄トラフは深さが2200mです。
沖縄トラフ - Wikipedia  

画面右が中国大陸で、そこから連なる大陸棚が白っぽく表示されていますね。 大陸棚の水深はわずか200mていどで、極めて浅い海域だと分かります。

そのために大型船が使う港は、年中浚渫しつづけないと埋まって使い物にならなくなってしまうそうです。 

脱線しますが、この浚渫技術は海底の泥と海水を同時に吸い上げて、土だけ分離するものです。

この技術を利用して中国は南シナ海で人工島を作ってしまいました。

それはさておき、中国沿岸部はこの浅い海によって囲まれているために、軍事的に大きなハンディキャップを持っています。 

潜水艦が忍ぶ安全な海域が、自国周辺にないからです。 

海自の潜水艦は推定で深度700mまで潜航可能な上に、世界で屈指のサブマリン・キラー部隊を有していますから、200mでウロウロしていなければならない中国海軍の歯ぎしりが聞こえてきそうです。

この深い沖縄トラフに、戦略原潜を潜ませたいというのが、中国海軍の野望です。

096

 中国海軍 戦略原潜096型「唐」級

現在少なくとも4隻の戦略原潜を中国は保有し、最低でも48基の「巨浪2」潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載しているとされています。  

またこのミサイルは多弾頭(MIRV)といって、ひとつの弾頭からいくつもの弾頭に別れて飛んできます。  

ですから、約200個の核弾頭を持っていることになり、これは中国の核戦力の35%前後にあたります。  

長々と説明しましたが、この宮古島周辺の沖縄トラフが、いかに中国海軍にとって垂涎の海域なのかご理解いただけましたでしょうか。  

また、水上艦にとっても、この宮古海峡は太平洋の入り口にあたります。 

下図は中国海軍の動向を表示したものです。 

Photo_5

 黄色の矢印で示されているのが、中国海軍のメーンルートです。 

宮古海峡を抜けて、画面中央上に見えるグアムを目指しているのがお分かりいただけますでしょうか。 

先日の「遼寧」空母艦隊の通過や、その前の中国空軍の大編隊の目標地点は米軍の西太平洋での最大拠点であるこのグアムです。 

下図は2015年12月における、中国空軍のミサイル爆撃機を含む大編隊の航路です。 

Photo
中国航空機編隊が飛行した経路 防衛省 

この時飛行したH-6Kミサイル爆撃機は、主翼に長剣10型(CJ-10)長距離巡航ミサイルを6基装着することができる巡航ミサイルプラットフォームです。

Photo_2H-6Kミサイル爆撃機 防衛省

CJ-10巡航ミサイルの射程圏は1500㎞以上と推定され、上海東方400㎞上空から東京を直接標的にできます。

グアムを攻撃するには、宮古海峡を抜けて、射程内にまで接近する必要があります。

そのためには、なにがなんでもこの宮古海峡を抜けねばならないわけです。

このように、中国軍にとってこの宮古海峡が持つ軍事的意味は、空中・海上・海中のすべての次元で極めて大きいのがお分かりいただけたでしょうか。

稿を改めて詳述しますが、この宮古海峡は法的には国際海峡ではなく、ただのEEZですので、経済的主権は保護されますが、外国軍艦には無害通航の縛りはありません。

『日本の海洋安全保障政策カントリー・プロファイル』(小谷哲男)には、このような記述があります。

「(2) EEZ における航行権及び上空飛行についての考え方

EEZ における行政機関の権限については、漁業資源の保全、海洋環境保護、航行安全確保、海洋の科学的調査等、規制分野ごとに個別法が整備されている。ただし、外国軍艦・政府公船は規制対象外となっている。
外国政府公船によるEEZ での事前申請のない調査活動に対する中止要請は、国内法が未整備のため、国連海洋法条約第246 条の義務を履行していないことを根拠に行われる。EEZ における外国の軍事演習については、禁止されていないとの立場が1998年に国会答弁で表明されている。」

お読みのとおり、残念ですが、EEZである限り、外国軍艦・公船の演習を禁じる国内法が未整備です。

極端に言えば、EEZである宮古海峡で、中国海軍と空軍が共同軍事演習をしても、法的には自衛隊は指をくわえて見ているしかない事になります。

実はEEZにおける外国軍艦の活動については、国際社会で見解が別れています。

それについては次回に回します。

すいませ~ん、おさらいたけで終わってしまった(泣く)。

それにしても、自分の県にこんなコワイ場所かあるなんて、「オール沖縄」の人たちは考えたこともないんでしょうね。

 

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コメント

自衛隊誘致問題について宮古島市議会を度々傍聴してみましても、この記事のような話は全く出てきません。
つねに「3周遅れ」の議論ばかりやっている。
しかし個別具体的に確認すると、与党会派や市当局がこのような現実を現実として認めていないとか、勉強不足で全然認識していない、という事でもないのが分かりました。
にもかかわらず、なぜ(宮古島に限らず)議会はじめ行政で真正面から取り上げられないのか、という疑問が日本の安全保障を歪めている原因にも通底します。

自衛隊は長く「まま子扱い」で、国民の大勢の意識とは違い、それは今でもそうなんです。
非現実的アカデミズムが主流の日本では「軍事」は今でも「学問未満」なのであって、何も東大だけじゃなく、つい最近は関西大学でも自衛隊の助成金を得るような軍事研究を禁止しました。
自衛隊は今だに「憲法の埒外」なのだし、理論的には「存在していない」からです。

政府も憲法で縛られる存在なので、中共の侵略的行為を目の当たりに見せつけられても、公に「敵国」として認知する事は憲法違反の疑いが濃厚ですので出来ません。
しかしそれは「建前」で、「置かれた現実」とは相違します。
そしてこのギャップが拡大し、いよいよ顕在化するにつれ、国民の意識の二分化が避けられません。
為政者や行政はこれを一番恐れるわけで、戦後政治史的に自民党は、常にこれに妥協を重ねてきたのです。

また、政治家の「国民の二分化」を回避する実益を「民主主義」と強弁すると「オール沖縄」になり、結局「現実」は声が大きく県民の怠惰を許容する「建前」に引きずられ、後塵を拝する事になるのですね。
もちろん「怠惰」は県民だけのものではなくて、県民の命と財産を守るべき県知事が「安全保障は国の問題だ」として国への協力を拒む事で、県知事と県民の「怠惰連合」が出来上がってくるワケです。

山路さん

> にもかかわらず、なぜ(宮古島に限らず)議会はじめ行政で真正面から取り上げられないのか、という疑問が日本の安全保障を歪めている原因にも通底します。

 その通りですね。

> 自衛隊は長く「まま子扱い」で、国民の大勢の意識とは違い、それは今でもそうなんです。

 やはりこれは、法律(憲法)を改める必要がありますね。

> 非現実的アカデミズムが主流の日本では「軍事」は今でも「学問未満」なのであって、何も東大だけじゃなく、つい最近は関西大学でも自衛隊の助成金を得るような軍事研究を禁止しました。

 軍事学を大学での正式学問にしなければなりませんね。

> なので、中共の侵略的行為を目の当たりに見せつけられても、公に「敵国」として認知する事は憲法違反の疑いが濃厚ですので出来ません。

 「敵国」という認知が当たり前にできる、言える雰囲気がなければ、どこかおかしいのです。

> 為政者や行政はこれを一番恐れるわけで、戦後政治史的に自民党は、常にこれに妥協を重ねてきたのです。

 そろそろ、国民挙げて二分化して大議論をしてみる時期ではないでしょうか。中国国内では、一般民衆が軍事をテ-マに自由に議論をしております。そちらが正常ではないでしょうか。イエ、自然です。戦争を語ると戦争がやってくる、自衛隊を増強すると戦争になるというような迷信が戦後の日本人の中にはあります。この意識を払しょくせねば、日本の自立はないと思います。

> それにしても、自分の県にこんなコワイ場所かあるなんて、「オール沖縄」の人たちは考えたこともないんでしょうね。

 オール沖縄の人たちの発想、感情は このような戦争に結びつく、あるいは関連してくる事象は考えない方がよいというものではないでしょうか。彼らは問題点があるにもかかわらず、ただ考えない方が良いと思うのですよ。ですから、問題点の解決に結びつく議論や行動は起こらないのです。

 平和外交、話し合い解決でなんとかなるだろうと言い、自民党が安保法制を立法しようとすると危険だ危険だと叫ぶばかりです。マスコミも同様です。

 日本国の平和が脅かされている事実を分かろうとせず、軍備に反対するだけが平和に結びつくのだという風に考えるのです。要するに彼らは怠惰なんですよ。

 あるいは、戦争恐怖症に侵されているのです。先の大戦の悲惨なことが忘れられないのです。戦争を体験していない人たちにとっては、体験者の語る言葉に呪縛されていくのです。学校教育でもそのような反戦平和の呪縛は行われます。

 

>EEZである限り、外国軍艦・公船の演習を禁じる国内法が未整備です。
国際的に意見が分かれているとはいえ法整備の余地がある訳ですね。
週明けの続編を期待します(o^^o)/

ueyonabaruさんの言うように、
「戦争に結びつく、あるいは関連してくる事象は考えない方がよい」となるのでしょうし、「平和外交、話し合い解決でなんとかなる」と結論づけてしまうのでしょうね。
そして、それで思考的に自己完結してしまい「抑止力」概念まで到達する余地がまるでなくなってしまうのでしょう。

全然関係無い話ですが、これって日本人特有の歴史の理解の仕方と似ているような気がします。
俗に「東京裁判史観」などと言われる史観は多数派なのでしょうが、つねに「日本が何をやったか」だけが問題とされますね。
その時「他国がどうだったか」は視野になく、世界の事情は殆ど完全無視です。
「抑止力」まで理解到達するためには、冷戦でなぜ核が使われずに決着がついたか、幾多の国が「どういう理由で紛争をし」また、戦争を「未然に防げたか」って事を広く知る必要があると思うんですね。
若干強引ですが、共通点があると思われます。


> 全然関係無い話ですが、これって日本人特有の歴史の理解の仕方と似ているような気がします。
俗に「東京裁判史観」などと言われる史観は多数派なのでしょうが、つねに「日本が何をやったか」だけが問題とされますね。
その時「他国がどうだったか」は視野になく、世界の事情は殆ど完全無視です。


「日本が何をやったか」だけが問題とされますね
という山路さんのお言葉は大変に示唆的でした。なるほどと思います。

 さきほどTVを見ていたのですが、、内容は、日本の料理、食べ物で今後ともぜひ残して欲しいと思うのはなにかということで外人の料理に詳しい方々100名が選ぶものを色々と挙げ、日本料理の素晴らしさをアピ-ルしておりました。こんな日本礼賛の番組は好きでよく観るのですが、これも単純に日本を礼賛するものであり、たしかに価値のある日本人の伝統の料理食物だとは思うのですが、何か釈然としない感想が少し残りました。

 それは、おっしゃるように日本人のことだけを取り上げているのですね。外国にも良い料理・食物の伝統はあるのですから、それとも比べて考える視点は必要だと思うのですよ。番組は、日本至上主義と言えるほどのものではなかったのですが、日本人がこれまで自虐的であったのを修正するにはイイものかもしれません。日本の伝統は素晴らしいと考える人が増えるのはいいことです。

 何であれ、他者との比較、他者との応対で自分を評価していくのが大事です。

 平和問題も、日本がいかに立派な平和主義の倫理を持っていようと、他国の出方により適切な応対をせねばなりません。他国の日本への出方には十分気を配るべきだということですね。

 少し分かりにくいですか?

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