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2017年2月10日 (金)

琉球新報またオスプレイ誤報

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琉球新報が、2月4日付けでオスプレイの「衝撃の新事実」を載せていますので、少し書いておきます。 

これは琉新が発掘したのではなく、「週刊金曜日」(2月3日号)に載った、ライターの新藤健一氏の記事が発信源になっています。 

沖縄県名護市の東海岸に不時着水した、オスプレイから流れ出した「米海軍航空機運用規程手順書(フライトマニュアル)」が、12月21日に宜野座村の海岸に漂着し、それが一般人に回収されたようです。 

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そこにこういう記述があったということで、琉新は1面トップで騒いでいます。まず見出しはからしてこうです。http://ryukyushimpo.jp/news/entry-438775.html 

「オスプレイ事故、大惨事想定 米軍が確認書、対応手順判明」 

そして続けてこう本文に続きます。

「米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの緊急時の対処手順などをまとめた米海軍のチェックリスト(確認書)の全容が3日までに判明した。空中給油中に給油機のホースや装備の一部がオスプレイに衝突する可能性があると記しており、プロペラに当たれば「大惨事を引き起こしかねない」と指摘している。」

この米軍フライトマニュアルに、「大惨事」という表現があったということで、琉新は小躍りしちゃったんでしょうね。 

自分で「大惨事の可能性」があると言っている危険な空中給油訓練なんかしやがって、というわけです。 

せっかくの琉新の喜びに水を差すようで申し訳ありませんが、ただの誤訳です。 

フライトマニュアルにあったのは「カタストロフィック」(catastrophic)という用語について、マニュアル発行元の米海軍航空システム・コマンドはこう定義しています。 

「死亡事故または全損事故」 

淡々とこう定義されており、昨年の12月13日に起きた不時着水は、機体が全損でしたのでこれに該当します。 

マニュアルにはすべての航空機の注意事項にも「カタストロフィック」という事態を想定してあり、別にオスプレイだから「カタストロフィック」になったということではありません。

ところが琉新にかかると、「オスプレイ事故、大惨事想定」とまるでオスプレイだから「大惨事」を米軍が想定していた、という意味になってしまいます。

こういう表現することを歪曲報道といいます。

「カスタトロフィック」には、琉新が期待する「大惨事」という訳語がもたらす、住宅地に墜ちて沢山死ぬぞという意味はまったく含まれません。 

たぶん琉新は、これで自分らが一貫して使ってきた「墜落」が正しかったと言いたいのでしょうが、前にも書きましたが、「墜落」は機体が空中分解したり、重要な部品が破壊されて操縦不能になって墜ちることを意味します。

ちなみに新藤氏も「墜落」と書いていて、このライターのスタンスが分かります。 

「墜落」と「不時着(水)」を分けるのは操縦不能になったか、ならないかです。 

パイロットが着水面を選択し、もっとも安全なピッチ角度である11度で滑り込んだ今回の事故を、墜落と規定するのは間違いです。 

「墜落」的状況ならコントロールするもなにも、その場で墜ちています。今回もヘリなら、その場で墜落しただろうと言われています。

オスプレイだから「事故が起きた」のではなく、オスプレイだからあれだけ長距離の飛行に「耐えた」のです。 

今回のケースの飛行ルートも分かってきています。当初はうるま市近辺の海上と思われていましたが、違っていて、実は本島北方海上でした。

パイロットは本島北方海上から辺土名岬をぐるりと迂回し、宜野座まで飛行した後に、不時着水しています。

なおこのパイロットは女性だと分かっていますが、彼女は冷静に、本島北部を通過する飛行コースを選択せずに、わざわざ大きく沿岸に沿って迂回飛行をしました。

その理由は、直線で飛行すれば、この機体は普天間までもった可能性がありましたが、住宅地に墜ちる可能性が捨てきれなかったからです。 

さて確かにマニュアルには、「空中給油中に給油機のホースや装備の一部がオスプレイに衝突する可能性」があると記述してあります。 

プロップロータ(プロペラ)が給油管(プローブ)ホースに衝突すれば、当然「カタストロフィック」になりますが、それは「大惨事になる」ということではありません。 

また、琉球新はこうも述べています。 

「その上で機体に衝突した場合はすぐに着陸するよう定めている。給油機のホースとオスプレイの給油管(プローブ)が外れなくなった場合も想定、給油機側でホースを「ギロチン(切断)」することも定めている。この場合、固定されていないホースがオスプレイに接続したまま飛行を続ける不安定な事態も想定される。」 

これが二番目の誤訳です。 

「ギロチン」という用語を新藤氏も琉球新も「切断」と訳してしまっていますが、間違っています。 

「ギロチン」(guillotine) を指す部品用語です。

彼らが好きそうな響きですが、新藤氏はわざわざ整備の経験者に取材してこんな言葉を引き出しています。 

「民間航空機のマニュアルには略号や専門用語がたくさんありますが、このような即物的な表現であるギロチンという言葉はなじみません、と驚きを示した」(「週刊金曜日」)

この「ベテラン整備士」とやらが知らなかっただけです。 

なぜなら、民間機は空中給油をしないことを前提に飛行していますから知らないのです。 

軍用航空用語で空中給油を調べれば、「ギロチン」が空中給油で必ず出てくる部品の名称だと分かったはずです。 

「ギロチン」という装置は、プローブ・アンド・ドローグ方式で空中給油を実施する場合、プロペラが給油管を巻き込んだ場合を想定して、ホースの根元を少量の火薬で切断する装置のことです。 

1950年に開発された枯れた技術で、珍しくもなんともありません。わざわざ民間整備士に聞かなくても、航空専門家に聞けば即答してくれたはずです。 

Photo給油ポッド内部のギロチンの配置の例 (原図 米国特許出願公告US4905937 A図2 西恭之氏による)

この装置は給油機の給油ポッドに装着されていて、事故時にはボンっと火薬で切り離すことができます。
 

これがないと、給油機は事故機と繋がったままになるか、給油管を引きずったままで着陸を強いられる事になります。 

Photo_2
上の写真で翼下のホースを伸ばしているのが給油ポッドです。 

ちなみにオスプレイだから空中給油が危険だということはまったくなく、上のようなCH60ヘりでもリスクは一緒です。

琉新さん、せっかく貴重な文書が手に入ったのですから、少しは調べてから書きなさいよ。

■謝辞 静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之氏の論考を参考にさせていただきました。 ありがとうございます。

 

 

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コメント

カタストロフィックでは?
腐ったパヨクに突かれる前に。

リスクマネジメントの観点からすれば、最悪のケースを想定するのは当然のことで、逆に想定していなかったとしたら怖いですね。

ありがとうございます。修正しました。どうもこのところ凡ミスが多い。くたびれてるみたいです(涙)。

山口さん。そうなんですよ。
工学系は当然「事故は起こり得る」こと前提して安全対策をかんがえていきますが、運動家や運動家的ジャーナリズムは「事故を前提にするのは危険な証拠だ。撤去しろ」となります。
根本的にわかっていないというか、分かろうとしないのですね。
彼らの中に理科系はひとりもいないのかと思いますよ。

テレビで見られる自動車の宣伝だって「事故は起こる」ことを想定してるから安全性を各社こぞって…

カタストロフィックという単語が海外ニュースの自然災害によく使われるようになった事、日本人が割とよく「全体がボロボロと崩れて壊れる」イメージで使うカタカナ語のカタストロフィ。
この2つしか知らないでボロボロの機体とマニュアルの単語を繋いだら週金みたいな記事が仕上がるのだと思います。古代遺跡の破片じゃないのだから、ちゃんと今朝の記事のような基本的な情報を一旦詰めてから、掲載に耐える内容かを吟味してないんでしょうかね。
日報ならまだしも、週刊誌ですから時間はたっぷりあるのに。

ちょうどこの日、沖縄県庁近くに行ったついでに
主人が献血したいと言い、献血センターに行ってきました。
待合室には琉球新報があり、この記事が一面だったので、
主人と「想定するのは当たり前だろう」と話していました。
でも、よく分からない人はこれをうのみにしてしまうのでしょうね。

先日宮城から知り合いが社員旅行で那覇に来たので、
ホテルのロビーで待ち合わせをし、待っている間新聞を手に取ると、
やはり琉球新報か沖縄タイムス。
どこに行ってもこの新聞しかありません。

我が家は読売をとっていますが、届くのは昼過ぎ。
そして、東京版か九州版。
これではちょっと遅いし、地域面の内容が遠い存在で、
あまり使えないですよね、、。
やはり新聞の選択肢を増やしたいと実感する今日この頃であります。

> いなばの白うさぎ

八重山日報の本島版発行の準備しているみたいですから、検討されてはいかがでしょうか。

ednakanoさん、ありがとうございます。

八重山日報沖縄本島版購読申込受付中のチラシと見本版が
2度程ポストに入っていました。
読売と並行して購読しようかと思っています。
「目標部数5000部!」と書いてありましたね。
頑張って欲しいです。

今HPを見てみると、
「浦添市、那覇市、豊見城市、糸満市は朝刊配達可能で、
この4地区以外の地域では、現時点ではお昼以降の配達となる予定ですが、
配達員の確保ができ次第、随時増やして参ります。」
とのことですので、
ぜひ那覇にある公共施設やホテル等も八重山日報を置いて欲しいですよね。

>いなばの白うさぎさん

呼び捨てになっていてごめんなさい。


サヨク脳の辞書には、「謙虚」とか「素直」とか「柔軟性」
とか「合理性」とか「リスク(確率の意味の)」とかの文字
がありません。

「傲慢」「硬直性」「頑固」「妄信性」「二進法」の文字には、
アンダーラインが引かれております。

マトモな人なら心のどこかに、「俺は賢人じゃない」「間違
っているかも知れん」「そうなら直そう」「数字や論理で
真実に近づこう」「世の中、絶対はない」と思っています。

彼等は、「俺は賢人だ」「俺は正しい」「俺は俺様ゆえ正義
だ」「俺様のみが真実を知りうる」「俺様の言うことは絶対
に正しい、皆の者、従え!」です。

そら、面白い紙面になると思います。沖縄への旅行者が
この紙面を読むと「ああ、俺達は間違って中共へ来ちま
った!」と錯覚するほどオモロイ。ただ、生まれてこの方
琉新ドップリの沖縄の方には、お気の毒としか言えない。

沖縄本島の新聞選択の幅が広がりますように。八重山日報には頑張ってもらいたいものです。

でも、サイトは八重山毎日新聞のサイトの方が充実しています。facebookフィードがあるので、ツッコミコメントが出来る分だけマシです。

沖縄タイムスも琉球新報もコメント欄を開いてないだけ、八重山毎日新聞は勇気があります。

琉球新報にコメント欄があれば、こちらのエントリーにリンクを貼りたいのですが、残念です。

私も若いころリスク管理の社内教育を受けました。
常に最悪の事態を想定して対処法を何度も何度も叩き込まれました。
その教育の中で、リスク管理が一番厳しいのが航空業界だと教えられました。なぜならお客様も自分たちも生きて帰らないとならないからです。
最近、私の勤務する会社でも若手社員が対処を誤るケースが発生しました。早速社長自ら、ひとたび対処を誤ると会社の存続を引いては社員の生活を脅かす。チャンとリスク管理をしろと通達が出ました。昔から使い古された言葉ですが、安全第一ですね。

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