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北朝鮮がまたしても弾道ミサイルを発射したようですが、すぐに爆発したそうです。おそらく、サイバー・アタックが成功したと考えられます。(欄外参照)
さて韓国という国はまったく変わりませんね。
まぁ、「強制徴用像」を作って釜山の領事館前に置こうが、大統領候補が全員揃って日韓合意廃棄して、関係者は処分だぁとか言っているうちは、いつもの見飽きたコリアの平常運転だと思って見てきました。
ただ今回はさすがにちょっとなぁと思いました。
朝鮮半島有事の際に予想される日本への難民流入の対処策について首相は4月17日の衆院決算行政監視委員会で検討していることをのべたところ、韓国から非難を浴びていることです。
この難民対策はいたってあたりまえの措置です。
「避難民の保護に続いて、上陸手続き、収容施設の設置および運営、(日本政府が)庇護すべき者にあたるかのスクリーニング(ふるい分け)といった一連の対応を想定している」と述べた」(産経4月18日)
http://www.sankei.com/politics/news/170418/plt1704180004-n1.html
これは朝鮮有事において、大量に流入するであろう難民を、いったん保護施設に留め置き、そこで北朝鮮軍のテロリストかどうかをふるいにかけようというもので、「武装難民対処」と呼ばれています。
これはシリア難民に対してヨーロッパ各国が実施しているものモデルにしたもので、国際標準の対応です。
難民を一気に無選別で入国させると、その中に経済難民やISのテロリストが混ざっていて、ヨーロッパ社会に浸透されてテロを起こしました。
その反省からいまはどこの国もいったん保護施設に入れて、身元や動機を確認してから入国させます。
上の写真は、もっとも多く難民が押し寄せたハンガリーの収容施設ですが、想定した規模をはるかに凌いだために過剰収容、医療不在を来しました。
そして偽装難民の中から、懸念されていたISテロが起きています。
http://www.christiantoday.co.jp/articles/22853/201...
「19日、ベルリンのクリスマスマーケットにトラックが突っ込み、12人が犠牲になるテロがあり、ドイツ警察当局は21日、難民認定を申請したものの却下されたチュニジア出身のアニス・アムリ容疑者(24)の公開捜査に踏み切った」
(ニューズウィーク2016年12月22日)http://www.newsweekjapan.jp/kimura/2016/12/post-24.php
この日本の難民対策についての、朝鮮日報(4月18日)に載ったネットユーザーの声の一部です。http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/04/18/2017041800836.html
「(これが日本の)本心だ。朝鮮半島に戦争が起きるのを待っている。自分たちの経済が生き返るから、それに自衛隊をより強く育てるための名分にもなる。下心が見える」
「朝鮮半島の分断に責任を負うべき犯罪者の子孫が、わが民族の対決をあおりながら自分たちの利益ばかり狙った沙汰をする」
「日本の地震と放射能汚染による避難民発生時の対応マニュアルを作って公表しよう。われわれにどうしても必要な人だけスクリーニングして受け入れ、極右勢力と関係者は除外せよ」
はいはい、「われわれの運命はわれわれが決定する」そうで、日本は韓国の運命にクチバシを突っ込んでいるわけじゃないんですが、なにをそう怒るのでしょうか。
朝鮮日報は同日の社説でこう述べています。
「安部首相のような人が、このようにレベルの低い言動をすれば意味ない。安部首相の言葉は少女像に対する感情的な腹いせにしか聞こえない。
韓国の国会で「日本で大地震か発生して韓国に難民が流入した場合の対策を聞く質問が出て、韓国の公職者が『スクリーニングする』と答弁する光景を想像してほしい。
今一部の日本人の間に反韓勘定が広がっているとはいえ、公職者たちがまるで隣国の不幸を願い、楽しむかのような言動でこれに迎合しようというなら、両国関係はの正常化はますます遠ざかるしかない」
呆れるというか、くたびれるなぁ。
そんなことより、自分の頭の蠅を追えよといいたいところですが、もっとももはや蠅どころかモスラ化していますが。
なお、仮に大地震がまた起きても、うちの国民は間違っても韓国などに難民流出しませんからご安心を。
少女像、いやもとい娼婦像とも、難民対策はなんの関係もありませんから、ひとつよろしく。
それにしてもコリアさん、完全にお忘れになられているようですが、朝鮮半島有事においては米軍主力は在日米軍ですよ。
おかげさまで、そのとばっちりでわが国の在日米軍基地は、正恩に名指しで核攻撃をしてやるという宣告までされている始末です。
誰のおかげでしょうかね。 朝鮮半島とその住民が極め付きで不安定だからではありませんか。
そしてこの在日米軍を朝鮮有事に動かすためには、日本の事前承認が必要です。
日米防衛協力の指針(ガイドライン)によれば、朝鮮半島有事の際、在日米軍や世界各地の米軍は最大で60万といわれる援軍を日本の領土、領空を通過して朝鮮半島に送るわけです。
当然日本は主権国家として、その通過についての拒否権が存在します。
また通過だけではなく、米軍は朝鮮半島有事において、日本は策源地となります。在日米軍基地だけではなく、自衛隊や一部民間の飛行場、日本の港を利用し補給を受けるわけですが、これにも日本の事前承認が必要です。
コリアさんは今まで日本が気持ちよく事前承認していたことに、馴れっこになっておられるようです。
わが国の首相がムン・ジェイン氏のようであったなら、朝鮮有事において冷やかに事前承認を拒否をするでしょうね。
朝鮮日報さんにいわせるとわが国の首相は、「隣国の不幸を願い、楽しんで」いるとのことてすから、事前協議でうんにゃといったらどないしましょう。
わが国は自分の国を守るためには、かならずしも韓国は必要ありません。バランスに欠け、いつ何時暴走しかねないから困るのだけのことです。
そもそも韓国と違って、日本の同盟軍たる米軍は日本国内に駐留しているからです。
わが国の安全保障にとって、コリア(南北共に)は巨大な不安定要素であり、できたら玄界灘に壁でも作ってしまいたいような地域でした。
その意味で近年北朝鮮の弾道ミサイルが具体的脅威として浮上するまで、日韓は非対称の関係だったのです。
これは歴史的にも同じでした。今コリアは自分が北朝鮮危機でカヤの外に置かれていると不満のようです。
ならば、なぜこんな危機の時期に大統領を追い落とし、独房に閉じ込めたのでしょうか。大統領すらいない国が、カヤの外におかれても当然です。
いまも国論は真っ二つではありませんか。
常に自分の世界の中で置かれた状況に向かい合えず、事大主義に凝り固まり、党派に分かれて血なまぐさい派閥抗争を繰り返したあげく自滅してきた様は、いまも昔も変わりません。
現在日韓は:、米国をかすがいにしてブリッジでかろうじて協力し合っています。
今、まがいなりとも協力しあえるのは、かろうじて共通の脅威である北朝鮮が、驚くほど急な核武装化をなしとげたからです。
北との国境線に展開できために韓国海軍のイージスは、海自のイージスより、いち早く弾道ミサイルを補足できるといいます。(ただし迎撃能力はありません)
http://obiekt.seesaa.net/article/354712832.html
上図は2012年12月12日の、ムスダン発射時の日米韓イージスの配置図です。韓国のイージスが北との境界線ギリギリの深い位置にいることがお分かりになるだろうと思います。このよう位置には日米は近づけません。
そのために海自イージスが失探したミサイルを、韓国イージスは捉えて通報しています。
このような現場での積み重ねを経て、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)はできたものです。
その意味で、日韓は北朝鮮の脅威に共同で立ち向かっている「はず」です。こんなささやかな協力すらムン・ジェインは、大統領になったら即座に廃棄するそうです。
こんな緊迫したもっとも共同せねばならぬ時期に、声高に反日を喚かないでほしいものです。
■追記
[ソウル、ワシントン時事]韓国軍合同参謀本部などによると、北朝鮮は29日午前5時半ごろ、西部の北倉周辺から弾道ミサイル1発を発射したが、失敗したもようだ。ミサイルは発射数秒後に空中爆発したとみられるという。韓国軍はミサイルの種類や詳しい状況を分析している。
日本の防衛省幹部も発射情報について、「失敗した」との見方を示した。米太平洋軍も、北倉飛行場の近郊から弾道ミサイルが発射されたことを把握したと発表。「ミサイルは北朝鮮の領域を出なかった」としているが、ミサイルの種類などには触れていない。
スパイサー米大統領報道官は「米政府は北朝鮮のミサイル実験を把握しており、大統領は報告を受けた」と述べた。
米軍は、原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海に派遣するなど軍事的圧力を強化。国連安全保障理事会は28日、北朝鮮の非核化について協議する閣僚級会合を開催しており、こうした動きに合わせたミサイル発射で、圧力に屈しない姿勢を示そうとした可能性もある。 北朝鮮は16日にも、東部・新浦付近から弾道ミサイル1発の発射を試みたが、失敗した。25日には軍創建85周年の記念日を迎え、過去最大規模の合同演習を実施。これと前後して核実験やミサイル試射などの挑発に出る可能性が高いとみて、日米韓は警戒を強めていた。
山路敬介氏の論考の2回目です。これで終了となります。もう一回分割しようかと思いましたが、流れを阻害しそうなので、最後まで掲載いたしました。
なお記事タイトルは、私がつけさせていただきました。ありがとうございました。
この論考の中で山路氏が説く、「米国まで届く核ミサイルの開発は永久に凍結し、それを常に現認可能にしておいて、すでに完成している日本を標的としているミサイルについては維持させる、という折衷的妥協案の提示が北の了解のもと、中共から米国にある事」という指摘は、ありえる可能性だと思います。
遠藤誉氏「アメリカが北朝鮮を攻撃したときの中国の出方 ── 環球時報を読み解く」(ニューズウィーク(4月26日)は、米中蜜月と今の期間を捉えています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7494.php
「今や米国と「新型大国関係」を築きたいと思っている中国にとって、「米中蜜月」は決して手放したくない「宝」のようなものだ」(同上)
「もし4月6日、7日の米中首脳会談とその後の一連の両首脳による電話会談がなかったら、これまでの中国ならば、弾丸の一発でも米国が北朝鮮に打ち込もうものならば、必ず激しい抗議をして、何らかの軍事的報復措置を取っただろう。そのときには中朝同盟(中朝友好協力相互援助条約)があることを理由として、部分的攻撃であったとしても北朝鮮側に立ち、何らかの軍事介入をしていたはずだ。
いまピンポイントなら、「軍事的介入をしない」と宣言できるのは、米中首脳会談により「米中蜜月」状態が形成されたからである。」
米中両国が参加した環太平洋合同演習(2016年) Hugh Gentry-REUTERニューズウィークより引用
そうかなと思いますが、遠藤氏は続けて、中国の北朝鮮の核武装についての基本スタンスは、以下だと述べています。
「中国は北朝鮮の核・ミサイル開発には一貫して断固反対している。
理由としては3つほどある。
1. いつ中国に向けてくるか分からないので、中国に脅威を与え、放射能汚染にもさらされる。
2. 中国は中国共産党による一党支配体制を維持したいので、地域を不安定化させることには絶対に反対。
3. これが最も重要だが、北朝鮮が核を保有すれば、韓国も保有しようとし、必ず「日本だけ持ってないのは安全保障上危険だ」として、日本が核を持とうとする。それだけは許せない!」
この認識は正しいと思います。特に中国がもっとも警戒しているのは3の日本の核武装によって、日本が中国との相互確証破壊の構図に持ち込むことです。
中国は日本国内の平和運動と親中メディアを全力支援して、これを阻止しようとするでしょう。
日本の核武装の中間にニュークリア・シェアリングという手段もありますが、これも徹底的に潰そうと画策するはずです。
そして、現在の中国の意図はこのようなものだと遠藤氏は書きます。
「中国はいま米国と戦うつもりはなく、あらゆる手段を駆使して、戦争を食い止めるだろう。中国が望んでいるのは「対話」(六者会談)であり、米朝が「休戦協定を平和条約に持っていくこと」である。そうすれば、米軍が韓国に駐留する正当性がなくなり、北朝鮮に核・ミサイル開発を中止するよう、中国も説得できるようになる」
この記事の中で、遠藤氏は「北朝鮮の核・ミサイル開発」の種類が何なのかお茶を濁しているように読めます。
中国が北を制止しようとしているのが、米国に到達する大陸間弾道ミサイルなのか、あるいは日本を標的にした中距離弾道ミサイルなのか、はっきりわかりません。
また遠藤氏は米国が中国の主張する六者会談を再開して米朝休戦条約が成立すれば、北朝鮮に核・ミサイル開発を中止できる材料ができるとしています。
遠藤氏の記事にはまるで日本の国益がないのですが、まぁ彼女はそういう人だと思ってください。裏読みすれば、中国はこう考えているという参考にはなります。
つまり中国の「説得」の永続化による現状固定です。
中国が「説得」しているふりをし続けている限り、米国は手出しできず、中国に外交的イニシャチブをにぎられているということです。
ましてや六者会談など作られて「話合い」のテーブルが再現されれば、北朝鮮は「削減するふり」「放棄するふり」をしながら、国際査察が入ろうとすればブチ切れてみせるという田舎芝居を再演できることになります。
改めて山路氏がルトワックの箴言として紹介した「平和が戦争につながるのだ」という逆説を日本人は噛みしめるべきです。
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写真 ロイター 太陽節http://www.newsweekjapan.jp/kim/2017/04/415.php
「北朝鮮問題」 私はこう考える
山路敬介
■習近平の口約束
習は北朝鮮に核放棄を決意させるまでの「強力な圧力」をかける力がない事は、米軍や安倍氏は想定肢としてあり、承知のうえではないか?
中共による「石油の全面禁輸」が北朝鮮の核開発に致命的打撃を与えるだけでなく、体制維持さえ困難にさせるほどの効果がある事は、ほぼ全ての専門家の意見が一致しています。
しかし、これは現時点での事実なのであり、米国の「手の内」を晒した今現在も中共による供給が続いているのが現状で、当然ロシアなど別ルートの摸索もあり、北朝鮮国内での備蓄も始まっています。
このような中、環球時報はしきりに「核実験をしたら、石油禁輸」とのお囃子的に言辞を述べますが、これは逆に「核実験さえしなかったら、石油の禁輸はない」というサインを送っている事と同義です。
直ちに重大な制裁を課さない中共の真意は、明らかに「レッドライン」を自から作り出し明示する意図が透けて見え、よって問題の先送りを画するもので全く信用できません。
石油の禁輸は別として、ここに来てもまだ習近平本人に万難を排し本気で積極的に「北の核開発」をやめさせようとする意思があるのかどうか、それさえ不確かです。
しかし、唯一確かな事は習近平はもともと判断力に乏しいうえに決断力もなく、あまけに瞬発力も敏律性もない事です。
「どんくさい」がゆえに、江沢民が傀儡を謀って主席に据えたのですから、この資質的欠陥は明らかなものです。
種々の国内事情があるにせよ、習氏にはこれまで国際の場で何一つまともに評価出来る実績もありません。
それにもまして習氏には「敵対的中朝関係」に転換するかもしれない重要な案件に独断で判断を下せる立場にはまだなく、それをするクソ度胸もありません。
その意思があったとしても、早くとも11月の党大会で政治局常務委員の構成を意図するように達成出来てから、という次元の話です。
そしてこれは推測にすぎませんが、所詮無理な注文を承知のうえで日米は習近平に押し付けたのではないかと感じます。
それは戦後の「関与」に関係する事でもあるかと考えますが、これも私の憶測にすぎません。
■中共の底意と日本の困難
そうした環境のなかでも、たしかに北京では北への石油禁輸は「議論」はされているようです。
しかし、その内容は米中貿易関係における不利な要求を減らしてもらいたい趣旨からの応答に終始しており、「一応の対応を見せる」事が決定されている段階にすぎません。
つまるところ習近平が当面やる事は、努力を演出し何とか「やっている感」を醸し出しつつ、しぶしぶでも米国に認めてもらい、無限に時間稼ぎをしながら北朝鮮をもあやしていこうとする方針です。
北が核実験をしないなら禁輸はせず、その後米からのさらなる圧力で禁輸をせざるを得ない状況になったとしても、北が石油の手当を別にできるか当面必要のない状況になってからになるでしょう。
中共は北の核を全面的に取り除くなどという事はハナから考えていないし、それが可能であるとも思っていません。
誰の説であるか失念しましたが、時間の経過が日本にとって不利になる事と関連し、「中共主導で最悪なのは、米国まで届く核ミサイルの開発は永久に凍結し、それを常に現認可能にしておいて、すでに完成している日本を標的としているミサイルについては維持させる、という折衷的妥協案の提示が北の了解のもと、中共から米国にある事だ」、という論考もあります。
このような妥協にトランプ政権が直ちにのるとは考えづらいですが、米国としても戦争への道のりは険しく、きっかけがない以上開戦事由さえ不十分な現在です。
くわえて、中共が建前でも事実上北との調整を行う状況に入っている以上、うかつに開戦は実現出来ようはずもなく、さればこのような説に一顧だに与えないという事もないような気もします。
なにより、米国民の多くはこれに賛成するのではないでしょうか?
そのような状況下、日本に一定の損害の可能性が少しでもあるからと言って時期に注文をつけたり、「米国の先制攻撃を支持しない」という理由があるのかどうか、はなはだ疑問に思えてなりません。
■E・ルトワック氏の警告
ルトワック氏の最近の論考では、「安穏な日常。それゆえにタガが緩み、危機を認識出来ない状況」をもって、逆説的ではありますが「平和が戦争につながるのだ」と指摘します。
「日本にとって、その典型が北朝鮮問題である」とし、「北朝鮮の軍事開発力は他国にくらべても抜きん出ており、きわめて危険な域に達しており」、すでに看過できない状況であるとしています。
これを放置する場合、近い将来日本に壊滅的な損害をもたらすだろう事は容易に想像しうる、としています。(どうも我々は、一般に核以外の北朝鮮の戦力を過小評価したい願望が強すぎるようで、真実を見失っているようです。)
そのうえで、「自身は政治家ではなく倫理者でもない一戦略家」だ、として、日本がとるべき道に二つの選択肢を提示しています。
「北朝鮮に降伏するか」、「北朝鮮を攻撃するか」、この二つのみです。中間はありません。
こうした考えはもはや決して極端でも特殊でもなく、現実をそのまま見た結果であろう事が最近の北朝鮮事情からも垣間見えると思うのです。
精強さが折り紙つきの特殊部隊員だけで自衛隊員の総数と同じく13万人おり、それゆえ人民解放軍の戦争を忌避する原因にもなっていると伝えられます。
日本は基本的に北朝鮮に先制攻撃をかけるわけにはいきません。
憲法があるから、自衛隊法が改正されてから、というような言い訳は現実の前では意味がありません。
瀬戸際に置かれているのは米国ではなく日本であり、米国が軍事行動を行う場合、出来うる限り支援し協力し共働すべきの時でしょう。
政府はじめ日本全体をあげて、米国の軍事行動に関し国際的な支持を取り付ける行動も肝要と考えます。
(了)
文責 山路 敬介
野党が失言で更迭された復興相を巡って、またまた審議拒否だそうです。ほんとうに職場放棄がお好きな人たちだ。
しかも昨日は、一番危ないとされていた第2「Xデイ」の建軍記念日とやらの翌日ではなかったのですかね。
前回のミサイル発射も太陽節の翌日でしたが、野党の皆さまお忘れでしょうか。今日北朝鮮が核実験をして、米軍が核施設を攻撃してもまったくおかしくないのですよ。
米国は既に上院議員への北朝鮮問題への説明を終え、テロ支援国家指定も上院と大統領の採決を待つだけです。
カールビンソンと巡航ミサイル原潜は作戦可能範囲に入っています。http://jp.reuters.com/article/idJP2017042601001558?il=0
THAADの資材も運搬が終了し、設置作業に移っています。中国とロシアは、難民対策のためか、国境付近に10万規模の軍を配置しました。
一方、安倍総理とNSC(国家安全保障会議)谷内氏、防衛省幹部、統合幕僚長などとの会議は連日ぶっ通しで行われ、米国からいつ何どき事前通告があっても対応可能な体制が組まれつつあります。
今日の首相の訪露はその一環で、トランプとも意思疎通した上で、北朝鮮包囲網で唯一の穴になっているロシアに協力を求めに行くのです。残念ながら、北方領土問題とはとりあえず無関係です。
私は「今はないだろう」論者ですから、これ以上言いませんが、なにが起きてもおかしくはないのです。
そんな時に何が復興相で審議拒否ですか。ほんとうにこの人たちただの馬鹿か、アチラの人の意図を「忖度」してやっているとしか思えません。
北朝鮮が策源地攪乱のために、テロリストを潜入させる可能性すらささやかれています。
策源地とは耳慣れない言葉ですが、軍隊が作戦行動を起こす場合の根拠地という意味です。
今回の場合、北朝鮮への軍事攻撃を準備し、その出撃基地となる日本を指します。日本への攻撃方法は、なにも弾道ミサイルだけではないのですよ。
現実に過去何十年にも渡って北朝鮮との連絡船だった万景峰号が、工作員の潜入や資金の提供、原爆やミサイル部品の密輸などに使われていたことは有名な事実です。
横田めぐみさんたち拉致被害者は、好き放題に日本に浸透した北朝鮮のテロリストに拉致されたことを忘れないでください。
長年それを放置していたために、いまや北朝鮮をほんものの核武装国家に成長させてしまったわけです。
その意味でふゆみさんのおっしゃるように、まさに「北朝鮮に手を貸して来たのは日本」なのです。
このようなことを二度とさせないために、テロリストとそれを支援するグループを野放しにはできないのです。
そのような者たちを逮捕して取り調べるためにテロ等準備罪を作ろうというのに、なにが「山菜を採りにいったら共謀罪で逮捕」ですか。頭の中はオガ屑か。
野党は、特定秘密法の時は「オスプレイの写真を撮ったら逮捕」とか、安保法制の時も「できたら徴兵制が来る」といった論評する気にもなれないトンデモデマを流し続けました。
今回もまたその繰り返しです。いい加減にしなさい。
テロ等準備罪を議論するなら、現下のテロが吹き荒れ、緊迫した北朝鮮危機といった国際情勢との関わりでこの法律が出てきたことを直視して議論しなさい。
ああいかん、素で怒ってしまう。
~~~~~
さて山路敬介さんから、ご多忙の中、無理を言って論考を頂戴いたしました。見やすく改行した以外は原文のまま掲載させていただきます。
どうしてもひとりで書いていると視座が固定されがちです。同じ事象を追跡していると、能力不足のために、つい毎日くり返しになってしまうこともままあります。
それに、ひとりでこういうしんどいテーマを書き続けていると、心理的に悲観モードに陥ってしまいがちなのですよね。
それが一番いかんとは分かっていても、しっかりやります(苦笑)。
森友脳のメディアのデマと煽りにうんざりして、冷静に突き放して見ようとするあまり、今度は視点を冷し過ぎちゃうんですね。
この論考の中でも山路さんが書かれていますが、「私たち日本人にできることは少ない。米国頼みで金王朝を存続させることが、日本の平和の代償なのだ」という諦観的気分が流布されていて、この私の中にすら侵入しかける時があります。
今回の山路さんの論考は、まさにその私の視点から抜け落ちていたものをしっかりと追及していただいています。
コメンターの皆さまにおかれましても、コメント欄は狭い、もっと展開させろという方は、遠慮なくその旨を書き込みください。喜んで対応させて頂きます。
個人情報は尊重いたします。HNをお使い続けられても、捨てアドでもまったくかまいません。
前々から申し上げているように、このブログは共同の討論空間です。私と意見が違ってもなんの問題もありませんので、奮ってご参加いただければこれにすぐる喜びはありません。
ブログ主 ~~~~~~
この問題に関して、4月15日を迎える時点でのブログ主様の見解は、私の理解では「米軍の先制攻撃について必ずしも反対ではないが、日本にはその準備が整っておらず、従って時間的猶予があるべきだ」というもので、今なすべきは「避難行動をどう取るべきか? 専らこれを徹底すべきより他に方途はないであろう」との概要でありました。
現時点でもブログ主様が同様の意見を維持しておられるのかどうか、慎重に出来るだけ主観を排した記述が続いている様子なので、そのあたりはわかりませんが、ともかくも時点として私も同様の考え方に落ち着いたものです。
(ただしその後4月24日の記事などを拝見いたしますと、深く状況を勘案するゆえにある意味「しん吟」しておられるのではないか、とも拝察します)
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-9127.html
最近の状況を見るにつけ、特に「上記のような判断をした状況は架空に作られたものであった」点、「トランプ氏が中共を巻き込んだ複数の意味と、その事による直接的本来的効果は望めない」だろう事、さらに「問題が長期に及ぶ事は日本にとって、決して将来にわたる有利には運ばないだろう」という確信も得て、私の考察もまだ若く批判は承知の上ですが、あえて「米軍は北朝鮮を軍事攻撃すべき」との立場に立って論じてみたいと考えました。
生まれながらの暗い左派的悲観性に終始するかもですが(笑)、その言うところからのご批判を頂ければ幸いと思います。
■日本人は「北朝鮮危機問題」をどこまで深く考えているか?
4月15日の前週だったと思いますが、FNNだかの世論調査において「米軍の専制武力攻撃を支持する」が、60%を上回っていた事に正直、ちょっとびっくりしました。
つい昨日の共同の世論調査においても、「武力行使を含むトランプ氏の方針を支持する」が53%以上です。
疑問に考えたのは「米軍の先制武力攻撃を支持する」と回答しながら、その実は無条件の「米国支持」なのであって、「米国のやる事」を反射的・無意識に容認しているにすぎないのではないか? という危惧からです。
日米同盟は日本の生命線ですので、「反米」に振れるよりもはるかにマシです。
ですが、(私の危惧が妥当とすれば)この無意識の「米国依存」が昂じた先にあるものは、結局は自らの、本来的に米国と相違する「安全保障への無関心」につながるのであり、これからおそらく膠着状態に入る事になるであろう「朝鮮半島問題」をも、継続的に深く掘り下げて考える事が出来ず、「極端から極端への瞬時の移行」などの原因になり得るのではないか、という心配です。
■ 今こそ、目先の「ミサイル問題」に矮小化されるのではなく、日朝関係の諸問題を包括的に論じた言論こそが望まれる時ではないだろうか?
例えば数日前、ふゆみさんが「正恩は狂人だというけれど、北朝鮮に手を貸して来たのは日本」、という趣旨のコメントを寄せられていましたが、これは多くの示唆に富んだ意見と思います。
北の核開発における基本的技術は日本から流出したものであるし、その開発資金も長期間にわたって日本からのものであった事は明らかなのです。
そうであれば、日本にもその責任の少なくない部分はあるのだし、言い方を変えれば北の体制維持に「加担していた」とも言え、とても中共なんぞに全て責任転嫁出来る立場ではないのは明らかです。
言ってみれば、日本人は自分たちの金や技術で自からの首を締め付けたようなものなのであって、誠に滑稽な図式にも見えます。
そこで、ここに来て一番大きな問題だと思うのは、日本人がこうした経緯をふまえる事を忘れる事と同様、朝鮮半島関連の根本的問題の原因や本質が、日本国内においてどのように存在しているのかを国民が全く認識出来ていなく、そうした言論や報道がほぼ皆無である点にあると思えるのです。
それゆえ、それが問題の着地点として「信頼関係の構築により、核の放棄の交換条件として、正恩に「王朝の継続」を約束する事だ」などという取引が本気で出来ると考える識者や国民が、次から次へ現れて来る要因になっているのだと思うのです。
金日成時代後期から正日時代全般にかけて正日が築き上げてきた、日・米・韓や欧州・国連内に張り巡らせた親北朝鮮ネットワークの存在は非常に強固で根が深く、その事で日本の政治や私たちの生活一般にも津々浦々、思いがけず大きな影響を受けている現実を十分に検証出来ていない事実は、非常に痛いのではないかと思っています。
実際のところ、日本の状況は親北派が強い韓国ととてもよく似て来ていると考えられ、多くの問題に「北朝鮮の影」がチラつきます。
それだけでなく、馬鹿なTVメデイアは「米国の先制攻撃の是非」を論じるだけならまだしも、常に視聴率優先で「Xデーはいつか?」などとセンセーショナルな煽りばかりの報道が先行します。
こうした言論が常に「問題」に対する考えの深みを失わせ、その結果国民に問題そのものに対する「倦み」や「飽き」が生じ、さらに保守派の間ですらも政治的に「そもそも米国のやる事であるから」云々と、その成すところ全てを容認するような安直な理解が生まれ、とうとう当事者意識すら希薄になってしまっているように思えてなりません。
このような思考停止システムは、左派や反米マスコミが北朝鮮問題を日本人の「当座の安全問題」だけに収斂させる事で、やがて問題の責任の所在を「米軍先制攻撃起源説」にもっていかんとしている「狙い」にまんまと嵌り、それに加担する事と些かも変わるところがないのではないか、と考えます。
(続く)
文責 山路 敬介
もう既に来年の知事選を睨んで、様々な動きがでているはずです。
名護市長選は重要な前哨戦ですが、ここで保守が前回と同じ失敗をすると悪夢の翁長2期目もあながち冗談とも言えなくなります。
一部に「潰走するオール沖縄の追撃戦」といった浮ついた声も出てているようですが、とんでもありません。
稲嶺氏は2期やった現職の上に、野党から国政選挙並の支援を受けるはずです。俵に足がかかった「オール沖縄」が、ここを先途と踏ん張らねば嘘です。
私はよくてフィフティ・フィフティ、候補者の選定に失敗すればまた負けるかも知れないとすら思っています。
最大の敗因は翁長氏の裏切りにあります。知事に登り詰めたい野望を抱いた翁長氏は、名護市長選を知事選のステップボードに使いました。
というのは自民県連ボスでバリバリの移転推進派だった翁長氏に対して、左翼陣営は不信の目で見ていたからです。
翁長氏はここでなにがなんでも左翼陣営の信頼を勝ち取る必要がありました。そこで打ったのが、自分がトップまで務めた自民県連の破壊です。
名護市長選はその供物にされたわけです。
寝返り自体は地方政治を舞台にしてまれにあることてすが、与党県連幹事長までした大物地方政治家が、自党を内部から破壊するという光景は聞いたことがありません。
小池都知事が今やっていることを、翁長氏はもっとあざとくやったと思って下さい。
当時那覇市長だった翁長氏は、個人的造反にとどまらず共産党主導の「オール沖縄」に合流する手土産代わりに、名護に子飼いの自民党那覇市議団を送り込み、切り崩しを図りました。
その指揮を執ったのが、翁長氏の腹心であった安慶田元副知事だったといわれています。
それに対して左翼陣営が推す稲嶺候補は夏前に選挙準備が出来ており、共産、社民、社会大衆、そして本来政権与党である公明党県連への根回しも済ませて、なおかつ翁長氏による自民党県連の内部崩壊まで手をかけていました。
これで負けたら不思議。まさに完璧に勝てる布陣です。
一方自民党県連は、当時の「移転阻止」の同調圧力に屈して、移設問題に明確な態度表明ができていませんでした。
「辺野古も含むあらゆる選択肢」なんて自ら争点回避をしているようなら、やる前から負けているではありませんか。
候補者も本来、知名度も実績もある島袋吉和前市長を候補者に立てるべきであったのに、「推進」を掲げたとして引きずり降ろして知名度も実力も未知数の末松文信県議を候補にするというていたらくでした。
末松氏が移設について自民党県連と一緒で、玉虫色だったからという馬鹿馬鹿しい理由です。
ただし後に自民党中央の介入で統一候補となるに際して、末松氏は「推進」に変わりますが、腰の定まらなさは誰の目にも明らかでした。
島袋氏、立候補見送り 沖縄・名護市長選の保守系候補一本化 - 産経 ...
この候補者選びのもたつきが致命的でした。一本化できた時は、既に稲嶺氏の背中ははるか遠くにあったのです。
県連をしっかり指導すべき自民中央の介入も遅かった上に、当時自民幹事長だった石破氏のコワモテの顔とあいまって、いかにも沖縄現地の声を押しつぶす本土政府の直接介入のように市民には写ったはずです。
その上、国場組を中心とする既存の沖縄財界主流に対して、金秀を引きいる呉屋氏や「かりゆしグループ」の平良氏らがこの「翁長の乱」に加担しました。
後に金秀と平良「かりゆし」が、翁長政権の御用商人となったのは、ご存じの通りです。
この名護市長選時には、既に共産、社民、民主、社大、そして自民変節組、経済界の一部を取り込んだ「オール沖縄」の原型は完成していたわけです。
このように政治的な敗北とは、外敵によってもたらされるのではなく、内部瓦解を起こした時に生じます。
まさに前回の名護市長選は、保守にとって戦わずして敗北したとすらいえます。
今回幸いにも、前回の敗因の震源地だった自民県連は、やっと腹をくくったようで「移設容認」で固まっているのは吉兆です。
あとは強い候補者選びにかかっています。私は経済に強い候補をお勧めします。
あえて言いますが、もはや辺野古移設は争点たりえません。稲嶺氏は争点化したがるでしょうが、乗る必要はありません。
決着したで押し切るべきです。むしろ稲嶺市政で落ち込みが恒常化してしまった名護市経済を復活できるプランを持った人物がいると思います。
それにしても、前回の名護市長選は、翁長氏が知事に成り上がるために使われ、今回は知事から転げ落ちるのを食い止めるために使われるというわけです。
踏み台に使われた名護市の皆さんは実にお気の毒です。
ご存じのようにうるま市長戦で、島袋現職市長が当選しました。翁長知事率いる「オール沖縄」の宮古、浦添に継ぐ敗北です。
・島袋俊夫・・・31,369.000票
・山内末子・・・25,616.000
・得票差 ・・・5753票
一時は接戦と伝えられていたので、5753票もの大差がついたことには、私も驚きました。
完全に潮目が変わったことはたしかなようです。
それを伝える沖縄タイムス(4月25日)です。
「8年ぶりとなる同市長選は、政府・与党が島袋氏を、名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長雄志知事ら「オール沖縄」勢力が山内氏を支援する対立構図となっていた。双方が来年の知事選に影響する重要な選挙と位置付け、激戦を繰り広げてきた。
選挙戦では、8年間の市政運営に対する評価や子育て支援策、経済施策などが大きな争点となった。島袋氏は企業誘致による雇用拡大で、失業率を10ポイント以上も改善した実績をアピール。今後は中城湾港新港地区のクルーズ船誘致などでさらなる経済の活性化を目指す。山内氏は市政刷新を訴えたが、島袋氏の支持基盤の強さに阻まれた」
ご承知のように、この市長選はただの市長選ではなく、「翁長城」の外堀をめぐっての戦いでした。
来年1月には、「翁長城」の内堀である稲嶺名護市長の続投を問う、名護市長選が待ち構えています。
この名護市長選で、翁長氏サイドが4連敗目を喫すると内堀が埋め立てられた大坂城状態で、「翁長城」は落城必至です。
今回の「オール沖縄」の失敗は、今までの連敗を総括せずに、あいもかわらず「オール沖縄」と翁長氏になにかしらの神通力があるが如く思ったことです。
「オール沖縄」を名乗らず、手垢のつかない新人を対抗馬に送り出せれば、まだ勝機はあったはずです。
一言でいえば人選の失敗です。
手垢のべったりついた島左翼の典型のような山内候補が、共産党の運動員と走り回る、そういう硬直性こそが最大の敗因です。
思えば、2014年11月の頃の翁長氏は絶妙な配役でした。(褒めているのではありませんよ)
かつての翁長氏のような腹芸もできそうで(出来ませんでしたが)、政府とのパイプもありそうで(ありませんでしたが)、保守だから無茶はすまいと思わせ(しましたが)、そんなそこはかとない「安心感」が保守層の一部まで取り込んだのでした。
これらのひとつでも山内氏に備わっていれば、この市長選はどう転んだか分からなかったと思います。
「オール沖縄」は、その名から分かるように寄せ集め集団にすきません。もはや「オール」という冠は重荷にすらなっているように見えます。
そもそももはや城間那覇市長と稲嶺名護市長の2人しかいないのに、「オール」を名乗るのは図々しいというべきです。
また、かつて翁長氏が引き連れてきた新風会系自民転向組は、安慶田氏に象徴されるようにボロボロになってしまっています。
翁長氏は「新基地反対」「移設阻止」を掲げて当選し、かくて翁長知事は「移設阻止」に特化した知事という、世にも奇妙な地方行政官が誕生してしまったわけです。
ほかにもやるべきことは、沖縄に山積しているはずです。
ぬかるみのように続く振興予算頼みの県経済の落ち込み、製造業の立ち遅れ、それに伴う失業や貧困問題などは待ったなしだったはずです。
仲井真氏は大胆な経済ビジョンを構築し、その具体化に取りかかった所で、矢折れ刀尽きました。
仲井真氏を継いだ翁長氏は、中国詣で以外県の経済問題になんの手も打とうとしませんでした。
その理由は翁長氏の経済オンチぶりもありますが、それ以上に彼は「決められない首長」なのです。
なぜなら支持基盤は、基地問題を巡っても共産党の「全基地地閉鎖」から、民進党の「基地容認」まで様々あるからです。
その結果、最小限公約を掲げるしか「オール沖縄」にはできないわけです。
つまり、「辺野古反対」「オスプレイ反対」、これ以外「オール沖縄」の政策(と言っていいのなら)はありません。
これを越えると、「オール沖縄」の誰かが必ず反対し妨害しようとします。
辺野古以外に唯一ある現実的選択肢であったはずのハンセン敷地内への移動(小川案)すら、「県内」にこだわる共産党の強固な反対に遭遇します。
県の経済界から待望される那覇空港第2滑走路建設も、今まで翁長氏の現行との不整合を問われ、今や岩礁問題で工事を遅らせる有り様です。
翁長氏からすれば、県民の利害などはどうでもいい、共産党に見捨てられたくないの一心なのでしょう。
このように翁長知事は、この「オール沖縄」の最小限公約の針の穴の如き可動範囲内で動くしかできなかったし、それをこえようという意志もなかったのです。
それが明らかになったのは、現実的妥協と落し所を探るべき、去年の3月から半年間の「和解」調整期間に、毎月官房長官と膝を交えて会談する機会がありながら、なんの解決も見いだせなかったことです。
落し所を見いだせないなら、司法判断を仰ぐしかないわけで、結果は最高裁まで上告して完敗です。
現実的妥協ラインを設定できない政治家などは、ただの運動家、あるいは騒動師にすぎません。
まったく無関係なうるま市長選で、仮に山内氏が当選したとしても、まぁそれだけの話で、国はなんの関係もないと突き放したことでしょう。
あとの山内氏の公約は、高校生までの医療無償化だのなんのと、財源措置もない無責任な「言っただけ公約」の羅列です。
桑江沖縄市長が苦々しげに、「そんな公約をやったら自治体は夕張市(※)になる」と評していましたが、当然です。(夕張でした。すいません)
山内氏のような地域の経済を活性化させる経済政策を欠落させておきながら、カネだけはバラ撒きたいというのが沖縄革新の長年の宿痾でした。
一方、島袋市長は地元への企業やクルーズ船誘致などの経済活性化対策が実って、失業率を下げることに成功した実績が評価されました。
今回、米兵レイプ事件という反基地神風が吹かなかったのに業をにやした地元紙は、「米軍流れ弾事件」をデッチ上げて反基地ムードを煽ろうとしましたが、無残にも失敗しました。 地元2紙は、このうるま市長選の敗者のひとりです。
今まで沖縄メディアは選挙の度に候補者アンケートという踏み絵を踏ませ、意のままに選挙を牛耳ってこられたと思ってきました。
自民党すら地元メディアを「忖度」して、移転問題に口を濁してきたのです。
今回、沖縄自民が移転問題で意志表示を明確にしたことは、当然といえば当然ですが大きな一歩でした。
今回もまた地元紙は、なにがなんでも移転反対を焦点化したかったようですが、見事不発に終わりました。
その意味でうるま市長選は、日本最強といわれた地元紙のバイアスとコントロールが、みごと弱体化した記念日として後世語られるかもしれません。
地元経済振興の土俵に引っ張り込まれたら、山内氏に勝てる道理がありません。なにせ彼女は、反基地以外なにも考えてこなかった政治人生を歩んできた人なのですから。
そして気の毒ですが、既に移設阻止闘争は去年暮れの最高裁判決が出た時点で終わっていました。
今あるように見えるのはウォーキングデッドです。
紛争というもしょせん人間の一生のような生もので、成長期-全盛期-衰退期があります。
辺野古・高江紛争も同じくそのような盛衰がありました。
翁長氏が知事になった2014年は闘争全盛期でした。
そして今はほとんどのエネルギーを出し尽くして、戦う方途もなく、その残骸にすがって延命治療を受けているような時期です。
いわば大きく左に触れた島の政治の振り子がゆっくりと中立に向かう、そんな正常化時期とでもいえばよいのでしょうか。
紛争の過程で引き起こした過激暴力行為が裁かれている山城容疑者の裁判などは、まさにこの時期を象徴するものでした。
その中で、ひとり翁長氏だけは権力に妄執しています。
2期目をしたいばかりに、「ありとあらゆる手段」で抵抗するふりをして共産党に媚びを売ってしがみつく翁長氏は、もはや醜悪を通り越して哀れすら誘います。
くだらない延長戦をしたいようですが、それを見る県民の目はとうに醒めていると知るべきでしょう。
それが改めて確認されたのが、このうるま市長選挙でした。
問題はむしろ、この「オール沖縄」の崩壊現象に際して、しっかりと翁長氏と稲嶺氏に対置できる保守候補者を絞り込めない保守陣営の問題です。
それについては別稿に譲ります。
※大幅に加筆しました。すいません。(午後6時)
今は戦争が始まるかどうかフィフティ・フィフティの状況です。
なぜなら、習に投げられたボールのお手並みを拝見している段階だからです。
基本的に2択です。
●(1)習がトランプとの約束に成功した場合
①中国の北朝鮮コントロールが実証されて、中国の国際的威信が高まる。
②北朝鮮から根深い恨みを買うことになる。
③米国は中国に宥和的になる。疑似G2関係ができることもありえる。
④トランプは支持層から離反される。
⑤南シナ海での中国の覇権を暗黙で承認する可能性がある。
⑥テロ支援国家指定をしない可能性がある。
(1)は火種を温存したままのあいまいなシナリオです。
朝鮮半島の武力紛争は一時的に回避されますが、周辺国情勢に大きな影を落します。
日本にとっては短期的には朝鮮半島の紛争が回避される代わりに、中長期的には中国のアジア覇権をトランプが容認する可能性すら出るので、複雑な立場ということになります。
ロシアが妙に北朝鮮の肩を持ったような態度をしたりするのは、米中接近されるとロシアの分が悪くなるからです。
ですから、ロシアは中国の「説得」を妨害しようとするでしょうし、北朝鮮への原油などの支援を継続することで正恩への影響力を保持しようとするでしょう。
トランプにとっては公約の中国との貿易戦争をやらずに、政治的にも協調するとなると、かつてのG2路線に復帰することを意味します。
これではラストベルトの労働者の失望を買い、政治的求心力を喪失するかもしれません。
もうひとつのシナリオは、中国が「説得」に失敗した場合です。
●(2)習が北朝鮮の「説得」に失敗した場合。
①トランプは元の単独行動路線に復帰する。
②G2体制は未来永劫できない。
③習は中国共産党内部で、江沢民派の巻き返しにあい、激烈な内部闘争が勃発する。
④ロシアとの距離は相対的に縮まる。
⑤南シナ海問題では、中国の覇権を認めない。
⑥テロ支援国家指定を行う。
⑦経済封鎖が実施される。
(2)は中国の北朝鮮へのコントロール失敗のケースです。
先日の「圧力をかける国には核攻撃をしてやる」という名指しこそ避けていますが、あきらかに中国に対しての核攻撃を宣告するところから見ても、うまくいっているとはいえないようです。
「説得」が失敗した場合、テロ支援国家指定が始まります。海洋封鎖や、金融関係を封じて経済的日干しにするでしょう。
それでもラチがあかず正恩が核実験や弾道ミサイルを発射し続ければ、最終的選択である軍事オプションとなります。
いいかえれば、北朝鮮が先制攻撃を仕掛けない限り、この経済封鎖期間が挟まるわけで、いきなり始まるということはありえません。
米軍がまだのんびりして見えるのはそのためです。
武力紛争に至った場合、民間人の被害、難民、テロなどの可能性が出るでしょう。
国際関係的には日露が有利になります。
最悪シナリオでは、正恩が核を使うケースもないとはいえません。その兆候が現れたら、米国は躊躇なく予防的先制攻撃をするでしょう。
米軍が戦端を切る場合の注目点は以下です。
①北朝鮮がミサイル実験をもう一回やった場合、成功するかどうか。
②同じく6回目の核実験をやって成功するかどうか。
①②が成功すれば、(1)の中国の「説得」が失敗したわけで、自動的に(2)シナリオとなります。
テロ支援国家指定実施は、北朝鮮と取引がある中国系銀行にとって、米国との取引ができなくなる悪夢ですが、それが現実になります。
また米軍は今までの威嚇的効果をねらった軍事行動から、本気モードに入ります。
●米軍が先制攻撃する場合の兆候
①空母打撃群の集中。最低で3隻。できれば6隻
②本土からの増援の到来
③情報ブラックアウト
④米国民間人避難計画の発動
ですから、以下の兆候が在日米軍に現れたら警戒度を高めましょう。
①カールビンソン打撃群の消息がわからなくなる
②横田、嘉手納、普天間、三沢、岩国などに大量の航空機が来援する、
③米軍の動向がさっぱり発表されなくなる
④米国人とその家族の避難が秘かに始まる
北朝鮮はいつも気が狂ったようなことを喚いているのですが、妙に静かになった時は危険です。
もっとも良いシナリオは、核実験と弾道ミサイル発射に共に失敗したケースです。これは、米国のサイバー攻撃が的確に成功している証です。
その場合、米国は先制攻撃する必要がありませんから、一定期間は様子見の膠着状態となります。
正恩は居すわりますが、核と弾道ミサイルを封じられていれば、「凶器を持った貧乏な狂人」から「ただの貧乏な狂人」となるので脅威度は減ります。
日本としては、とりあえずこれが最良のパターンです。
くりかえしますが、今は戦争が始まる状況ではありません。備えながら、いくつもの可能性を考えながら状況を注視する時期です。
おっと、ちっとも短くないじゃないか(笑い)。
うるま市長選現職島袋氏当選です。「オール沖縄」に対しての、大きな一歩、だめ押しの一歩です。
翁長「オール沖縄」4連敗です。次は天王山の名護です。
歯ぎしりせんばかりの琉球新報です。
翁長知事の応援もむなしく落選した反基地運動家の山内末子氏。
日本共産党サイトより引用http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-04-21/2017042101_08_1.html
「任期満了に伴う、うるま市長選は23日投開票され、3期目を目指した現職の島袋俊夫氏(64)=自民、公明推薦=が当選を確実にした。翁長県政と政府与党との代理戦の様相を呈していた中、自公は7月にある那覇市議選や来年1月の名護市長選、県内政局の天王山となる県知事選に向けて弾みをつけた。
島袋氏は、経済振興を中心に中城湾港新港地区への企業誘致や「市民協働のまちづくり」を掲げ、市政継続を訴えていた。
うるま市の当日有権者数は9万4629人(男性4万6953人、女性4万7676人)。投票総数は5万7439。投票率は60・70%で、8年前の前回(62・55%)よりも1・85ポイント下がった。
島袋 俊夫(しまぶく・としお) 1952年10月生まれ、市天願出身。沖国短大卒。旧具志川市議会議長2期、うるま市議会議長を1期務めた。2009年の市長選で初当選。」
北朝鮮の宋日昊(ソンイルホ)日朝国交正常化担当大使が、17日ピョンヤンでこんなことを述べています。
「北朝鮮のソン・イルホ日朝国交正常化担当大使は、ピョンヤンで記者会見し、北朝鮮が拉致被害者を含む日本人行方不明者の全面的な調査を行うことを約束した3年前の合意について、日本側が破棄したとしたうえで、「拉致については誰も関心がない」と主張しました。一方で日本側から要望があれば、残留日本人などの問題には今後も取り組む用意があるという姿勢を示しました。」
「朝鮮半島で戦争の火が付けば、日本に一番被害が及ぶ」
精神衛生上よくないので、この発言の額面どおりに受け取ってはいけません。
どのような時期に、どうしてわざわざ日本のメディアを集めてこんな挑発的なことを言ったのか考えてみましょう。
まず時期です。この発言は4月17日、太陽節の翌々日です。北朝鮮が16日に弾道ミサイルを発射してみせてぶざまな失敗に終わった翌日に行われています。 失敗は3会続いて起きています。
今年2月から3月にかけての北極星2型、スカッドERの発射にはかろうじて成功したものの、3月以降は全部失敗です。
4月5日、失敗。飛距離は60キロ。4月16日、失敗。発射後5秒後に爆発。そして今回の爆発です。
ニューヨークタイムズによれば、旧ソ連製ミサイルの失敗率はわずか13%なのにかかわらず、北朝鮮のミサイルのそれは実に88%もの確率で失敗に帰しています。
10発撃って9発落ちるようなシロモノを戦力とはいいません。
北朝鮮の発射失敗を横目に、米国はこの弾道ミサイル実験に、冷やかな対応を示したのみでした。.
訪日したベンスはこう語ったのみでした。
「私に言えるのは、(北朝鮮のミサイル発射が)失敗したということだ。あれはさらなる挑発だった。そしてそれは終わらせなければならない」((ロナルドレーガン艦上でのCNNインタビュー)。
失敗に終わったのではなく、サイバー攻撃が成功して自爆スイッチを米国が押してしまったからだと見られています。
ニューヨークタイムズ(4月15日)に報じられた"Left of Launch operation"(「発射寸前作戦」なお「発射の残骸」は誤訳)で、これはオバマ時代からの遺産です。
参考資料 http://newsphere.jp/world-report/20170421-1/
オバマは弾道弾迎撃ミサイルのあまりの成功確率の低くさに懲りて、6年前からサイバー攻撃の開発研究を続けてきたと言われています。
米国政府は絶対に口外しませが、この奇妙なまでの米国の沈黙は、このサイバー・アタックによるミサイル発射妨害が確実に成功しつつあることを物語っています。
北朝鮮という国はあまりに前近代的なので、交通やエネルギーインフラがコンピュータ管理になっていません。
軍隊すら伝令や有線通信で行われているために、逆に周回遅れのトップランナーよろしく、サイバー攻撃に強い国になっています。
ただ一カ所弱点がありました。それが弾道ミサイルの発射命令システムなのです。ここだけは北朝鮮もさすがに外国製電子部品を使っています。
米国はこの電子部品に、サプライチェーンのどこかでコンピュータ・ウィルスを仕掛けたと思われます。
このようなトラップを仕掛けられると、原因を追及するためには膨大な部品をすべて洗いださねばなりません。
たぶんアトランダムに複数個仕掛けてあるはずですから、見つけ出すのは藁の山から針を見つけるような作業になります。
3回続けて失敗する原因が、仮に米国によるサイバー・アタックだった場合、正恩の発射指令システムにまで介入されるかもしれません。
その場合、ミサイルは容赦なく地上で爆発します。核弾頭をつけていれば、近くにいる正恩の司令部まで蒸発することでしょう。
2009年にはイランの核施設に米国NSA(米国家安全保障局)がイスラエルと共同でサイバー攻撃を仕掛け、イラン核燃料施設をオシャカにしました。
たぶん次の北朝鮮の核実験に対しても、全力でサイバー攻撃を仕掛けるものと思われます。
このように考えてくると、北朝鮮は現在、見せ掛けの強がりとは裏腹に、深刻なパニックに陥っている可能性があります。
なにせ、唯一無二の切り札である弾道ミサイルと核爆弾が無効化された可能性があるですから。
では、核ミサイルの無効化 があったとして、なぜソンイルホは日本人の拉致被害者について挑発的言辞を吐いたのでしょうか。
私はこれは「逆さ言い」ではないかと思います。
米国ですら「逆さ言い」をします。
昨日書いたように、米国がやるやる、すぐにぶちのめしてやると息巻く時は、実はやらないのです。
本気でやるときにはシーンと静まり返って、静かに民間人を避難させていたりします。こう言うときこそコワイ。
ちなみに、米国のNEO(非戦闘員退避行動)は日本で実施されたことがあります。
2011年の福島第1原発事故の際に、関東一円の米国人、米軍家族に実施されました。気がついたら、米国人はいなかったのです。
静かに逃げていったでしょう。本番とはそんなものです。
そう考えると案外、北朝鮮も同じセオリで動いているのかもしれません。正恩が「超強力な先制攻撃」を警告無慈悲な先制攻撃を仕掛ける」といえば、なんらかの交渉の余地を残しているかもしれない、ということかもしれません。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7462.php
ですから、この「鏡言語」の「拉致被害者なんて誰も関心がない」を通訳すれば、「なぁ日本人、関心あるだろう。返してほしいだろう」という意味になります(苦笑)。
つまりは北朝鮮は、日朝交渉を再開したいということなのかもしれません。
この仮定に立って推測を進めてみます。この時期に日朝交渉をしたい理由はひとつしか思いつきません。
米軍の攻撃が始まる前に、日朝交渉が開始されてしまえば、米国は手を出せなくなるからです。
拉致被害者5名が帰国したのは2002年10月でしたね。
このとき、金正日は驚くべきことに拉致を認めて謝罪し、5名を「一時帰国」することを認めました。
この年なにが起きていたのでしょうか。2002年4月8日に勃発した第2延坪海戦です。
韓国西側の境界線上の海域に、北朝鮮海軍哨戒艇が侵入し、韓国海軍と激しい銃火を交えたものです。
第2延坪海戦 - Wikipedia
韓国では大変に有名な事件で、朝鮮戦争の休戦が破綻しかけた時期でした。
この時韓国は、米国に報復攻撃を求めたといわれています。
後の 2010年11月23日の延坪島砲撃事件の際にも、韓国は報復攻撃を要請していますが、オバマは空母の派遣でなだめました。
延坪島砲撃事件 - Wikipedia
この第2延坪海戦の起きたあたりから日朝交渉の準備が盛んになり、10月の小泉首相訪朝へとつながっていきます。
このような日朝交渉が行われている間は、米国は北朝鮮に拳を振り降ろすことは難しくなります。
ひるがえって現在、もし正恩が核実験を強行したとしたら、トランプは軍事オプションを取る可能性は充分にあります。
断定する気はいささかもありませんが、ソンイルホがこの時期にわざわざ訪朝記者団にあえて拉致問題を持ち出した背景には、なんらかの北朝鮮の思惑があるような気がしてなりません。
危機が長期化すると「危機疲れ」が出て、そのうち新聞社会面の一角に、「今日の北朝鮮危機」というコーナーができるかもしれませんね。
さて、「無敵艦隊」がどこにいるのか分からなくなって、世界が騒いでいます。おーい、カールビンソンや~い、どこにいるだよぉ。(エコーかけてね)
トランプが「無敵艦隊を送った」(誤訳ですが)と語ったので、すわっ、カールビンソンが朝鮮半島沖に着いたら火蓋が切られるのかと怯えた人も多かったと思います。
スターウォーズのデススターが、ダスベイダーのテーマミュージックに乗って接近してくるかんじですね。
まぁ確かに、原子力空母は現代のデススターではあります。
朝鮮危機前にNSCから追い出されたスティーブン・バノンなど、ほんとに「ホワイトハウスのダスベイダー」なんて呼ばれていましたしね。
私は先週から今ただちの攻撃は、ありえないと書いてきました。
その理由は
①空母戦力の集中が不足している
②在日米軍基地に米本土からの来援がない
③非戦闘員退避作戦(NEO)
このような兆候がないという3点をあげて、私は軍事オプションは「今ではない」と主張してきました。
するとなんと、米海軍が4月17日になって、肝心のデススターが朝鮮半島ではなく、実はインドネシア沖にいたことを公表しました。https://news.biglobe.ne.jp/international/0418/jj_170418_7087331290.html
とうていXデイとされていた15日の太陽節はおろか、25日の建軍記念日に着くか着かないか、ということになりました。ハレホレ、ですな。
かつてのレイテ沖海戦では、米海軍司令部が打った、「第34任務部隊は何処にありや?全世界は知らんと欲す」という有名な電報がありましたが、今回など「カールビンソン空母打撃群は何処にありや?全世界は知らんと欲す」ということになっちゃいましたね。
では今回、なぜカールビンソンはこんな場所にいたのでしょうか。
時系列で眺めてみます。
・4月8日、米海軍第3艦隊はハリス太平洋軍司令官の命令により、シンガポール沖にいたカール・ビンソンの豪州寄港を中止し、朝鮮半島近海へ派遣すると発表。
・4月11日、トランプ大統領は、「とても強力な大艦隊(アン アルマダ)を派遣した。北朝鮮は面倒を起こそうとしている。中国が協力を決断しなければ、われわれは独力で問題を解決する」と発言。
同日、マティス国防長官は記者会見で、「カール・ビンソンが豪海軍との共同訓練を中止し、米軍がその理由を説明しなければならなくなったので、空母の行動を発表することになった」。
国防総省、記者会見で「豪フリーマントルへの寄港は中止されたが、豪海軍との共同訓練は予定どおり実施される」。
・4月15日、米海軍、スマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡を通ってインド洋へ出たカールビンソンの写真を公開。(下写真)
「防衛専門紙ディフェンス・ニューズ(電子版)は17日、同空母が15日時点で「韓国から約5600キロも離れている」」(時事4月17日)わけです。
さてさて、これをどう考えるべきでしょうか。
単なる凡ミス説もあります。実際、ホワイトハウス高官は、「国防総省の手違い」と説明している模様です。
だとすると、おおぴらに政治宣伝したホワイトハウスは赤っ恥、NSCはなにしているんだということになります。
バノンに替えてダンフォード統合参謀本部議長という制服組トップが入っているのに、ちょっとおかしいじゃないかということになります。
私の憶測ですが、これは米国の意図的情報攪乱の可能性が高いと思います。
米軍が軍事上の機密に属することをペラペラしゃべる時には、必ず裏があります。
織田邦男(元空将)はこう述べています。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49767?page=2
「空母機動部隊の動き、巡航ミサイル搭載原潜の派遣、アフガニスタンでのMOAB (大規模爆風爆弾)の使用、あるいは岩国基地におけるF35Bの爆弾搭載訓練、SEALS支援船の派遣など、米軍は普段は決して公開しないものを続々と公開した。本当に作戦実施なら、手の内をばらすような馬鹿はしない」
まったくそのとおりで、米軍が本気に攻撃態勢するときは、インフォメーション・ブラックアウト(情報封止)と言われてピタっと情報を出さなくなります。
ややオーバーにいえば、派手に言ったことはやらないかもね、ということです。
特にSEALsチーム6が展開したというニュースなど、チーム6はパキスタンでウサマ・ビン・ラディンを抹殺した、DEVGRU(海軍特殊戦開発グループ/デブグルー)という暗殺に特化したチームです。DEVGRU - Wikipedia - ウィキペディア
襲撃されたパキスタンのウサマ・ビン・ラディンの隠れ家。この作戦は正恩斬首作戦よりも困難性が少ないと推測されたにもかかわらず、事前には完全に秘匿された。
そんなもの騒がせな米軍暗殺チームの展開状況などは、最高レベルの秘匿情報であって、「今、チーム6が韓国にいますから」と言うのは、何か腹にイチモツあると思ったほうがいいでしょう。
言い換えれば、当時よく喧伝されていた斬首作戦はやらないということです。
また、岩国にF35がこの時期に配備されたのも実はたまたま一致しただけで、通常の海兵隊前方配備計画があったから配備されただけです。
ですから、これが米国の意図的情報攪乱(ディス・インフォメーション)ならば、初めからカールビンソン空母打撃群は15日に来るつもりなどなかった、ということになります。
そもそも:あんがい空母打撃群は遅いのです。
たしかに空母自身は高速ですが、艦隊には20ノット以下の補給艦も随伴していますから、一隻でズンズン行くわけにはいきませんしね。
ひとことで言えば、北朝鮮に対しての威嚇の意味があるのは当然ですが、中国に対して「さっさと北朝鮮、いやあのヘンな頭の若造をどうにかしろ」という催促のようにも思われます。
今後、米国は中国を睨んだ展開になるでしょう。
カールビンソンは堂々と「遅刻」して朝鮮半島水域に到着するでしょうが、あの朝鮮半島東側の水域は、空母打撃群が展開するには大変手狭です。
仮に北朝鮮が中国と示し合わせて両岸から攻撃をしかけた場合、さすがのデススターもピンチに陥るからです。
ですから、半島から着かず離れずの海域で遊弋しながら、ホワイトハウスの命令をじっと待つことになります。
米国としては、北朝鮮問題があって中国との貿易戦争や、韓国のTHAAD配備で多少譲ったわけですから、成果が上がらねばまた再開することとなります。
ボールが習に投げられているわけですが、「戦略的忍耐は終わった」とベンス副大統領が言っている以上、延々と待つことはないでしょう。
中国が適正に対処せねば米国独力で・・・、という含みを持たせての展開となります。
ただし、25日に北朝鮮が核実験をすれば、一気にわからなくなります。
明日にでも空爆があるようなマスコミやネットの噂は間違いですが、危機は危機として厳然として存在し続けています。
北朝鮮が核武装を進め続ける限り、日米韓はそれを軍事的脅威の増大と見て対応レベルを上げていかざるをえません。
そのひとこまが、現在進行形で進んでいると思って下さい。
ようやく織田邦男氏や部谷直亮氏など専門家の冷静な評論が出始めましたが、ほぼ私の見解と一緒です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49758
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49767
なお、両記事がアップされたのは4月19日ですので、私の「いますぐはない」という記事のほうが先ですので念のため。(ああ、こういうこと書かねばならないなんて、ほんとうに腹がたつ)金王朝三代目。そうとうに劣化が進んでいると思う。
ただこう書くと「そうか、危機は去ったのか」とタカをくくる気分の人がでるかも知れませんが、それも間違いです。
21世紀初頭もまた戦争の世紀でした。今世紀に入って、ざっと見ただけで、アフガニスタン、イラク、ダルフール、東ティモール、パレスチナ、レバノン、グルジア、リビア、シリアなどで戦争が起きています。
ただ今回の北朝鮮が他の戦争と決定的に違うのは、この国が「核武装を持てば自らの欲するものが手に入る」という教義(ドクトリン)を行動原理としていることです。
いわば「核兵器信仰」が、北朝鮮を支配する宗教なのです。
続・猿の惑星 生き残った地底人が核ミサイルを拝んでいます。山形さん、ありがとう。
これは正恩の一種の「強がり」だと思ってもらえば近いかもしれません。
北朝鮮は国連加盟国の下から勘定したほうが早いような極貧国です。農業は常に凶作、水害は年中行事。
工業生産などはないに等しく、鉱業だけでしのいでいる有り様です。
軍隊と秘密警察で国民を押さえつけている国ですが、この軍隊もとうに石油がなくただの鉄の箱で、国民は慢性的飢餓状態です。、
こういう国にありがちな、崩壊するのではないか、侵略されるのではないか、独裁者たる自分が処刑されるのではないかという危機感が行動原理となっています。
こういう心理から北朝鮮の「核兵器信仰」が生れました。
海中発射ミサイルだと称する北極星2号。たぶん中国から貰ったのではないかと噂されています。
正恩が考えていることは、こんなことかもしれません。
「核爆弾さえ握ってしまえば、わが国は崩壊しないだろう。それどころかいつまでも中国は援助を寄越すだろう。いや米国や日本韓国なども支援するかもしれない。特に日本が日韓条約並の支援を寄こせばわが国は立ち直るはずだ」
では国際社会は、どうやってこの「核兵器信者」の迷妄を、解いてやったらいいのでしょうか。
このようなテンパった国に対して国際社会は、まず「対話」を求めます。
20年間に渡る間に出された多くの国連決議、六カ国協議は、まさにこの「対話」を求めたものでした。
2005年6カ国協議。顔で笑って握手をして、足で蹴り合っています。
その上韓国は独自に、金大中・盧武鉉政権下で太陽政策という援助を与えながら対話を求めるという宥和政策を取りました。
2009年9月 金大中と金正日会談 金大中はこの愚行でノーベル平和賞を取りました。
結果はご承知のとおりです。北朝鮮は常に対話を無視し、裏切り、逆切れして見せるという国際常識が通用しない国だということを暴露しました。
そして、対話と宥和をいいことにして時間稼ぎをし、今や核武装を完成の域に進めようとしています。
これを見て、なおいまだ日本には北朝鮮との「対話」でなんとかなると思っている左翼リベラル界隈の人が存在するほうが不思議なくらいです。
朝日にいわせると 「北朝鮮と日本 軍事より対話の道描け」(朝日新聞4月12日社説)だそうです。はいはい。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12886993.html
この国を尋常な方法で再度、対話チャンネルの席に着かせるのは不可能です。
北朝鮮は中国からの会談要請に対してさえ無視を決め込み、返答すらしません。
中国が派遣した外交使節団は入国すら禁じられました。
これは北朝鮮が、今食わして貰っているはずのパトロンの言うことすら聞かないという事実上の拒絶とみられています。
こちらから対話チャンネルを切断する必要はありませんが、交渉の余地は残しつつも、軍事的圧力と経済的圧力をギリギリまで強化するしか方法は残っていません。
朝日のように「軍事」か「対話」かというように対立するものとして捉えるのではなく、軍事的圧力をかけつつ、対話に引き出すのが正しいのです。
その意味で、トランプは大変にオーソドックスなやり方で、北朝鮮の「核兵器信仰」に対応していると言えます。
ロナルjドレーガン艦上で演説するペンス副大統領
https://twitter.com/CNFJ?lang=ja
来訪したペンス副大統領は、北京で韓国政府関係者と会談し、北朝鮮国境付近の視察も行いました。次いで韓国、日本を訪れています。
このペンスの歴訪によって、最終的な合意と布陣が完成しました。
その布陣は北朝鮮に対する攻撃オプションではなく、未確認情報で16隻といわれる米海軍イージス艦と自衛隊のイージス艦は、日本へのミサイル着弾を阻止するためのものだと受け取られています。
http://businessnewsline.com/news/201704190005060000.html
「米軍が北朝鮮の周辺海域に展開している米海軍のイージス艦を使って北朝鮮の弾道ミサイルの迎撃を行うことを検討していることがtheguardianによる報道で明らかとなった。
米政府は、北朝鮮の弾道ミサイルの迎撃を行うことにより、米国は北朝鮮が大量破壊兵器を使用することを阻止する実行的能力を有しているということを改めて示すことを検討している模様となる」(BusinessNewsline 4月19日)
私が恐れるのは、このような極度に緊張した状況でしばしば起きる偶発的戦闘が本格的戦争に拡大していくことです。
先週から違和感かあった右掌が、とうとう昨日激痛。いや、痛いの、痛くないのって。一時は箸も持てないあり様でした。
右手が使えなければ仕事はできない、記事も書けないわけで、さすが病院嫌いの私もふっ飛んで行きました。
レントゲンなど撮られましたが、筋や腱は大丈夫とのこと。腫れ止めと痛み止めをカバに食わせるほどもらって、いまは回復こそしていないもののなんとかキイボードていどは打てるようになっています。お見舞いありがとうございました。
それにしてもああいう時に荒らしが来ると、ガクッと疲れますな。山路さんにまでご迷惑をおかけして申しわけありませんでした。
さて、気を取り直していきましょうか。
北朝鮮情勢で見落とされがちなことがひとつあります。北朝鮮の命綱です。
え、核兵器?う~ん。化学兵器?う~ん。どちらも怖いのは確かですが、核兵器を先制使用するほど状況が煮詰まっているとは思えません。
核を使うのはギリギリの土壇場。ピョンヤンが炎上し、正恩がテンパってどうせ滅びるならもろともと思う時です。手下たちが口で勇ましいことを言っているうちは撃ちません。
化学兵器は、弾道ミサイルが再突入する際の温度はなんと7000度といわれていますから、化学兵器が変質して使用不可能になると思われます。
そもそも北朝鮮が、再突入技術という核ミサイルの必修過程をパスしたかどうかすらよく分からないのです。http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/03/18/0900000000AJP20160318004400882.HTML
「韓国国防部の韓民求長官によると、専門家らは大気圏再突入時の弾道ミサイルは7000度程度の温度に耐える必要があるため、圧力や振動などの様々な影響を考慮し、この条件を満たす試験をするべきとの見解で一致しているという。
北朝鮮が公開した実験は弾道ミサイルが実際に大気圏に再突入する時とは大きく異なる条件で行われたため、北朝鮮が再突入技術を確保したとは言えないとの見解を示したものとみられる」(韓国聯合 2016年3月16日)
もちろん日本は彼らが核ミサイルや化学兵器を打ち込んでくる可能性がゼロではない以上、「危機がある」ことを前提に立って、守りを固めねばならないのは当然のことです。
ではどうやったら、正恩が核や化学兵器をほんとうに保有しているのかわかるでしょうか?
フェーク疑惑の出ている北朝鮮ICBM
これは国際査察をする以外に調べる方法がありません。
持っていたら頑として拒みます。核査察はとうぜん核放棄を前提にしていますからね。
逆に全部フェークならば、これも頑として拒むでしょう。もはや金家家伝の威嚇戦法が使えなくなるからですし、第一、独裁者の体面に関わりますからね。
どっちに転んでも拒否ですから、正恩が国際核査察を受け入れるように追い詰めていかねばなりません。それも正恩がカッとなってなにかやらかさないように、ジワジワと真綿で首を締めるように「平和的」にです。
米国は、いやトランプはと限定すべきでしょうが、もちろんその方法に気がついています。
北朝鮮危機を見る上で見落とされているもっとも重要な環は、原油供給の停止です。
私が「 トランプに限定する」と述べたのは、オバマは知ってか知らずか北朝鮮への原油供給の存在を無視し続けてきたからです。
重村智計氏によれば、これをトランプに助言したのは、他ならぬ安部氏だったようです。http://ironna.jp/article/6306
「「石油禁輸」は、安倍首相がトランプ大統領に強くアドバイスした戦略である。安倍首相は、北朝鮮への効果的な制裁策を聞かれ、「中国の対北石油全面禁輸」を伝えた」
「国と中国のメディアは、12日の米中首脳電話会談で「北朝鮮が核実験とミサイル実験に踏み切れば、中国は石油禁輸を実行する」意向を習主席が伝えたと報じた。画期的な政策転換だ」
既に、北朝鮮はミサイル実験を失敗したとはいえ実施しているわけですから、重村氏の説に従えば、中国は原油供給禁輸を実行していなければなりません。
http://kazuohage.sblo.jp/article/164902193.html
中国側馬市村のパイプライン基地(赤丸)から鴨緑江を越えて供給パイプが、対岸の北朝鮮側金山湾油タンク(青丸)に延びているのがおわかりでしょうか。
ちなみにこのパイプラインの位置は、かつての朝鮮戦争時の中国義勇軍渡河の位置とほほ同じだそうです。※謝辞白血病のハゲオヤジのブログ様
この原油供給パイプラインこそが、ほんとうの北朝鮮の命綱です。
北朝鮮は日本同様に原油の純輸入国で9割を輸入に頼っています。
そのために電力事情が逼迫し、衛星から撮影した東アジアにおいて北朝鮮領内は漆黒の闇となっています。
NASAが公開した朝鮮半島の夜の画像。北朝鮮は暗闇に包まれている(AP)
韓国中央日報(2017年2月24日)はこう述べています。
http://japanese.joins.com/article/186/226186.html
「中国の石油は北朝鮮にとって、救急室の患者がつけている酸素マスクのような生命線だ。このような事情をエネルギー経済研究院の研究員キム・ギョンスル博士が分かりやすく説明した。
「原油の100%、石油製品の90%を中国に依存している現実で、中国がパイプラインを閉めてしまえば、北朝鮮は数日間しか持ちこたることができない。あっという間に国家システムが崩れ、社会全体が心理的恐慌状態に陥る」
ただし1回止めると再開が難しくなるという要素があります。それは中国原油が粗悪なためにパイプを一回止めると、詰まってしまって再開が困難になるからです。
「キム・ギョンスル博士の説明によると、大慶産石油にはパラフィン成分が多く、流れていなければ固まるパラフィン粒子がパイプラインにつく。使用を再開するにはパラフィン粒子を溶かす必要がある。時間がかかるということだ」
まぁそのとおりでありましょうが、それはさておき、重村氏は既に止めたのではないかと観測していますが、私ははなはだ怪しいと思っています。
というのは、北朝鮮と中国はハッキリ言えば共犯関係として、中国は北を「中国のナイフ」としてさんざん利用してきたからです。
その証拠に、北朝鮮はミサイル実験と核実験をやりたい放題やってきたわけですが、その間中国はこれを止めるどころか、原油や原子炉部品を売り続けてきました。
それを示した中国からの石油製品輸出と、逆に北朝鮮からの石炭輸入ゆ貿易量推移のグラフです。
中国の対北朝鮮石炭輸入と石油製品輸出 田村秀男氏による
http://www.sankei.com/premium/news/170225/prm1702250016-n1.html
共に、国際社会がなんと叫ぼうと、国連が制裁を決議しようと馬耳東風。常任理事国の中国が堂々と北朝鮮に石油を売りつける一方、石炭を買い続けており、むしろ増やし続けていることがわかります。
「16年の中国からの対北輸出は石油製品が前年比26%、鉄鋼製品9%、自動車は45%各増と急増している。背景には中国の過剰生産があるはずだ」(田村秀男氏 グラフと同じ)
重村氏はこう指摘します。
「北朝鮮はアジアで最も石油のない国である。この問題の重要さに多くの人は気がついていない。北朝鮮の年間の石油輸入量は、最大でも70万トンである。この90%は中国が供給している。日本の自衛隊が年間消費する石油は年間150万トンに達する。その半分以下では全面戦争はできない」(同)
続いてもう一枚見て頂きましょう。中国の2015年の対北朝鮮輸出の主要品目です。
この中国の主要輸出品を見ると脱力します。
中国は北朝鮮に対して、電子機器、原子炉、輸送機器、原油、医療、食料など、ほぼすべての戦略物資を供給していることがわかるでしょう。
これで北朝鮮が「制裁」に音をあげる道理がありません。
北朝鮮には小型武器、ミサイル、麻薬、覚醒剤、ニセタバコ、そして石炭ていどしか売るものがありませんが、そんなものは中国には売り先に困るほど余っています。
国というより暴力団ですが、北朝鮮はスーパーKという偽100ドル札まで作っていました。
とうぜんのこととして中国の北朝鮮への一方的貿易黒字となります。(数字は田村氏による)
・2016年中国の対北輸出・・・32億ドル
・同 対北輸入・・・27億ドル
△北の貿易赤字 ・・・5億ドル
では北朝鮮は、この赤字をどう処理しているのでしょうか。中国から金を借りているのです。
このからくりを田村氏はこう分析します。
「不足分は中国からの借り入れでまかなう、つまり中国の金融機関による融資で補うわけで、正恩氏直結の企業や商社、銀行は中国の金融機関との協力関係を保っている」
中国は瀋陽軍区(いまは戦区)の軍、あるいは国営金融機関を通して、正恩系列の企業や商社に融資してきました。
表向きには民生品貿易への融資ですが、その金が市民のためのバスに使われようが、弾道ミサイルに使われようが、金に色はついていません。
北朝鮮はそれをいいことに、中国の銀行を経由して、武器の売買をしていました。
2015年12月、北朝鮮がシンガポールのトンネル会社を使って武器輸出の代金を中国銀行を通して送金してもらっていたことが発覚しました。
これは国際的に反響を呼び、オバマも重い腰をあげざるを得ませんでしたが、上げたのは北朝鮮にだけ。肝心のバックについていた北京にはひとことの抗議の声すらあげなかったのです。
これは米国による、事実上の容認と受け取られました。前掲の貿易推移グラフを見ると15年あたりを境に、一気に急上昇しています。
北朝鮮に対して核と化学兵器の放棄を迫るために制裁したいのなら、正恩の原油と金を抑えねばならないのです。
この件に関して、トランプは習とディールしたようです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170419-35052071-bloom_st-bus_all
「中国はこれまでと同じような取り組み方をしていない。あんな様子はこれまで誰も見たことがない。わが国のためにあれほど前向きな立場を中国が取るのを目にしたのは誰もいない」(ブルーミングバーク4月19日)
米国は中国を為替操作国認定しないかわりに、中国に原油輸出の停止を要請したと考えられています。
メディアは北の石炭輸出ばかり取り上げて、「北朝鮮に制裁強化」などと報じていましたが、どうしてこうも目がガラス玉なのでしょうか。
大事なことは輸出ではなく輸入。それも原油の輸入なのです。
また保守の皆さんも、「うわー、米国が中国に接近した。尖閣を忘れたのか」、なんて騒がないこと。ディール好きなあの大統領相手に右往左往していたら身が持ちませんよ。
そもそも、中国に北への原油止めるというプランは、安部さんがトランプに入れ智恵したらしいですからね。
■渡部昇一先生がお亡くなりになりました。先生と私は多くの点で意見を異にすることもありましたが、先生のリベラルな「自由主義」を基礎にした保守の精神には多くを教えて頂きました。
ご冥福をお祈りいたします。
北朝鮮情勢を書きはじめたのが4月1日ですから、もうかれこれ18日間ですか。
正直言って、不謹慎かもしれませんが、さすが飽きましたね(笑)。
ただ日本国民が現実問題で、北朝鮮の核ミサイルや化学兵器ミサイルが襲いかねない状況の中で、戦後初めて国の安全保障を考え始めたのはよかったと思います
憲法前文のように、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、 われらの安全と生存を保持しようと決意」するだけでは、北朝鮮のような暴漢のような国から自分の国の平和を守れないのです。
「憲法改正に「賛成」と答えた人が、半数を超えた。
FNNが16日までの2日間実施した世論調査で、5月の憲法記念日を前に、憲法改正への賛否を尋ねたところ、憲法改正に「賛成」と答えた人は、半数を超えた(52.9%)。
「反対」は、4割未満だった(39.5%)。
ちょうど1年前の世論調査では、憲法改正に「賛成」と「反対」は、4割台半ばで同数だったが(賛成 45.5%、反対 45.5%)、今回、「賛成」が「反対」を10ポイント以上、上回った。
今回の調査で、憲法改正に「賛成」と答えた人を対象に、憲法9条を改正することへの賛否を尋ねたところ、半数を超える人が9条の改正に「賛成」と答え(56.3%)、「反対」は3割台後半だった(38.4%)。(FNN4月17日)
さて、昨日も書きましたが、私はこのまま状況が一定期間にわたって固定化するのではないかと思って見始めています。
言い換えれば、北朝鮮危機の長期化です。
米国が戦争に踏み切る「レッドライン」はICBMの保有ですから、正恩にとってICBMを保有しているのかどうかは「分からない」、というあいまいさのままに置くことは利益です。
ですからこれがバレてしまう核査察は絶対に受け入れませんし、長距離ミサイルも銀河2号のようなロケットだと言い張ることでしょう。
私はたぶん持っていていないと思っています。15日の太陽節軍事パレードの肝は8台のICBMでした。
全部で8台あって、4台がキャニスター(発射筒)に入った自走式発射機で残りはトラックで牽引されていました。
これがホンモノなら、理論上はどこからでも撃てるので、昨日書いたように米国にとって発射前に潰すことができなくなります。
しかしニセモノといって悪ければ、モックアップ(実物大模型)の可能性も専門家から指摘されています。
静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之氏は『ニュースを疑え』第577号でこう述べています。
「これらの弾道ミサイルがモックアップだと考えられる理由は二つある。まず、北朝鮮は2012年と13年のパレードで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星13号」としてモックアップを公開した過去がある。
火星13号は、単純な構造の枠に薄い金属板を溶接した物体に特徴的なへこみ(痩せ馬)がみられ、12年のパレードの6基は部品の位置が少しずつ異なり、13年のパレードの火星13号も、エンジンの位置を示すリベットが、ミサイルの下端からわずか50センチという、ありえない位置に打たれていた」
つまり今回登場したICBMは、「火星13号」で既に公開済の実物大模型と同じ溶接の凹みがあるので、使い回しではないかと思われるわけです。
このような分析は既に米国の情報機関が徹底的におこなっているはずで、トランプに「正恩のICBMはフェークだ」と伝えているはずです。
ならば、トランプにとって軍事的圧力を掛け続けて妥協を引き出すまで継続するでしょうが、現実の攻撃は慎重になるでしょう。
もし、本気でトランプがやるならば、空母打撃群をできる限り集中させます。
何度も書いているように、今動員できるのはカールビンソンのみ。ロナルドレーガンは横須賀で定期修理中、太平洋に残るはミニッツだけですが、カリフォルニア沖ですから25日の建軍記念日には到底間に合いません。
在日米海軍司令部のツイッターを読むと、実にのどかものです。https://twitter.com/CNFJ?lang=ja
「ロナルド・レーガンて行動中でしたよね? カール・ビンソンの方々も何事もなく無事終了するよう祈ってます」というRTに答えてこうです。
一緒に休暇とっているわけじゃありませんからね。
これにカールビンソン打撃群のトマホークが最低で300発加わりますから、合わせて800発超のトマホークを撃ち込めることになります。
もちろん北朝鮮全域が攻撃可能範囲ですが、やるかどうかとは別問題です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20170106-00066299/NEO(非戦闘員退避行動)訓練
小川和久氏は、このような見解を示しています。(西氏と同じ)
「韓国在留米国関係者12万人以上に対するNEO(非戦闘員退避行動)が実施されていないことです。使える軍事力を突きつけてはいるものの、北朝鮮側の主にソウルに対する火砲による反撃だけでも甚大な損害が出ると予想されるのに、本気で軍事力を行使するのにNEOを実施しないわけがない、というわけです。
NEOには戦争のほか災害時などについての計画もあり、福島第1原発事故の時にも実施されました。 私が知っている計画は朝鮮半島での戦争に関するものですが、12万5000人の米国関係者を10日ほどかけて、航空機でグアムに避難させるというものです。 NEOの動きは1か月前から始まり、北朝鮮は米国が本気で戦争を始める気になっていると感じるわけで、譲歩を強いるための圧力にもなるというものです」
かつて本気で北の核施設の空爆を考えたクリントンは、秘密が漏洩するのを恐れて金泳三に伝達せずに、米国人の避難計画を実施しようとして、強烈に噛みつかれて断念したという経緯もあります。
もし、現在米軍が本気で北朝鮮を攻撃する気なら、NEO(非戦闘員退避行動)をとっくにやっているはずです。
ちなみに沖縄の米軍基地前で、「ゴーホームヤンキー」とヘイトしている自称「平和運動家」たちがいますが、米軍家族や軍属が逃げ始めたらホントにホント危険なのですよ。
ですから、平和のためには「ゴーホーム」どころか、「ズッと居てくれ!」と米軍にシュプレッヒコールしなければなりませんね。もちろん冗談ですが。
それはさておき、この推測が正しいならば、トランプは軍事的プレッシャーを掛け続け、中国も同調して北朝鮮への原油供給停止を実施し、非軍事的方法で手をあげさせようとしているようにも思えます。
なお、一部の未確認情報では、中国の原油は既に供給が止まっているという情報もあります。
ただし、北朝鮮が再度核実験をしてみせ、新型ロケットエンジンの実験を再開すれば、この限りではありません。
■右指が腱鞘炎のようになってしまいました。痛くて動きません。今日は片手の指でうっています。われながらよーやるよですが,明日はどうなりますか・・・。
多くの識者の意見には一定のポジションがあらかじめあるとみえて、その位置に従って材料を選んで立論しがちです。
特にいまのような先が見えない状況では、よくもまぁと思えるほどバラバラの意見となります。
ある者はあすにでも正恩の原爆が東京に降ってくるかのように言い、ある者は話合いで解決できる、トランプは挑発するなと主張します。
本来職業的ニュートラル感覚がなければならない外交官あがりの評論家さえ、「マッドマン・セオリ」(狂人の論理)と言い出したのには失笑しました。
マッド・トランプとマッド・ジョンウンとの闘争だから分からないよ、と元職業外交官はいうのですから、おいおいです。
待って下さい。正恩が投げたカードがどのようなものであったのか、あなた方はよく見ましたか。
おとといから昨日にかけて正恩から投げられたカードは、とりあえず3枚です。
①「中距離弾道弾の失敗」
②「核実験なし」
③「移動式発射機に乗った固形式燃料のICBM」
ここから推測できる文脈はなんなのでしょうか。
これもしょせん明日からの状況で変化していくことでしょうが、手さぐりで見ていきます。
まず、訪韓のミサイル発射の挨拶を受けたベンス副大統領の反応です。
「【ソウル支局】米ホワイトハウス当局者は16日、北朝鮮が同日発射したミサイルについて「ICBM(大陸間弾道弾)ではない。おそらくは中距離ミサイルだ。発射後4~5秒で失敗した」と説明した。今後の対応については「大統領は軍事、外交など幅広い選択肢を持つが、今回の失敗したミサイルに特に対処する必要はない」と述べ、当面は静観する姿勢を示した。ペンス米副大統領のアジア歴訪に同行する記者団に語った」(毎日新聞2017年4月16日 )
トランプ自身の反応はマティスが、「大統領はこれ以上のコメントはない」と代弁しています。
まず1枚目の北朝鮮のカードです。
X デイと考えられていた15日太陽節の翌日、北朝鮮はスカッドER(北極星2号の異説もあります)を発射し、しかも原因不明で発射直後に爆発しました。
爆発した理由は、自爆説、サイバー攻撃説、と技術的失敗説がありますが、三回続けての失敗ですので、サイバー攻撃説の信憑性が強まってきました。
もちろん米国は、そんなことを公表するはずがありませんので、数十年後に「あの時はねぇ」で分かることでしょう。
これは先日の軍事パレードにも、移動式発射装置に載せて登場した中距離弾道ミサイルです。
ちなみに 、この中距離弾道ミサイルは日本に向けたものです。撃たれた私たちが天ボケしているので、撃ったほうも気抜けしていることでしょう。
次の「核実験なし」は、技術的には大型のおそらく水爆級だといわれる核兵器実験のことです。
これと投射手段のICBMはペアになっています。いくら破壊力があっても投射手段がなければただのバクダンです。
そこで3枚目のカードの、「移動式発射装置に乗った固形燃料型ICBM」をどう評価するかということになります。
たぶん、これが今回正恩が切ったカードで一番国際社会に見せたかったものだったはずです。
米国は敵が多い国ですが、その中でももっとも手に負えない奴だと認識しているのが、実はこの北朝鮮です。
朝鮮戦争休戦以降、北朝鮮は巧みに米国を挑発しつつ、一線を越えることを回避してきました。
それは米軍が国境から指呼の距離に展開しているということもあって、中国も巻き込みかねない全面戦争を避けるという暗黙の合意が両者の間に存在したからです。
そしてなにより、米国は戦争するに際して国際社会の盟主として、常に疑う余地がない「大義」を掲げる必要があったからです。
たとえば今回のシリア攻撃は、「毒ガスを子供に使用して多くを殺した」という大義がありました。
裏を返せば、北朝鮮が米国を直接攻撃したり、米国民にテロを仕掛けたりしなければ、米国は手を出さないと彼らは知っていたことになります。
少し時間を巻き戻してみましょう。
1994年、クリントン政権は北朝鮮の核施設を空爆することを真剣に検討し、それを韓国に通告しました。
辺真一氏によれば、当時韓国大統領だった金泳三は、クリントンの在韓米国人の秘かな救出作戦を知るや、怒ってクリントンにかみついたそうです。
また別な説によれば、金日成からも「核武装する気はない。だから今回はかんべんしてくれ」との泣きが入ったからとも言われています。
いま思えば、タイミング的にはこの時しかなかったのですが、クリントンの判断は「まだ放っておいても核武装はできまい」というものでした。
送電線がない原発は核兵器製造以外の目的であるはずがないのにかかわらず、クリントンは「大義不足」と考え、結局、6カ国協議の20年間の泥沼に足を踏み込んだのでした。
次のタイミングは、第1期オバマ政権時の2010年11月、北朝鮮軍の韓国の延坪島砲撃事件でした。
この時、イ・ミョンバク韓国大統領は反撃を求めましたが、オバマは拒否しました。
オバマは、空母打撃群を朝鮮半島水域に向かわせることで、ムニャムニャとお茶を濁すだけに止まりました。
これはオバマ特有の「平和主義」だけではなく、まだ北朝鮮が核武装化が幼稚な段階にすぎず、少なくとも自分の2期内に完成するわけがないと思っていたからです。
こうして20年の「話合い」の時間が、北朝鮮に与えられました。
そして今。
北朝鮮は中距離弾道ミサイル実験を「訓練」の域にまで高め、かつ即応性がある固体燃料ミサイルの同時発射というレベルにまで達しました。
そして新型の大型ICBM用ロケットエンジン開発も、終盤に差しかかったと称しています。
あまりにも急速の核武装化の進化に、中国からの技術供与、あるいは実物供与が疑われるほどです。
つまり、北朝鮮は米国本土に到達する投射手段であるICBMに、その手をかけたことになります。
これは北朝鮮の核が「放置してよい」段階を越えて、米国にとって直接の脅威に成長したことを意味します。
言い換えれば、米国は北朝鮮攻撃の「大義」を得たことになりました。
さて、15日の軍事パレードに搭乗した新型ICBMは2種類ありました。
ひとつが下写真1番目の旧式のトレーラー牽引型であり、もうひとつが2枚目の16輪の重野戦機動トラック型のものです。
自走式移動発射装置型ICBM
この自走式ICBMの登場に、見ていた米国政府関係者は背筋に冷たいものが走ったはずです。
なぜならこれは原理的には、いつでもどこからでも自由な時間を選んで米国本土を攻撃しうる能力を北朝鮮が獲得した、あるいは、テストをしていませんから、「獲得しつつある」ということになります。
ICBMの最大の欠点は、露天式の発射台に固定的に据えて発射するしかないことです。
上の写真は銀河2号長距離ミサイルですが、大規模発射台に据えて、液体燃料を数日かけて注入してからおもむろに撃つという段取りになります。
現実に、そんなことをトロトロしていたら、「対米核攻撃の兆候」と米国に認定されて、空爆されてお終いです。
移動式発射台から発射するには、コールドローンチといって、2枚上の写真のようなキャニスター(収納筒)の中にミサイルを納めて、圧縮ガスによって打ち上げ、空中で推進剤に点火して上昇させます。
コールドローンンチで発射した北極星2号
コールドローンチできるICBMを移動式発射装置のキャニスターに入れたまま、山中に隠蔽し発射することが可能となるわけです。
この方法で発射されると、事前に捕捉して破壊することはほとんど無理です。
さて、こうして見て来ると、北朝鮮のICBM発射を事前に察知して阻止することが大変に難しいことが分かってきます。
そう考えてくると、偶然にか意図的にか、正恩は難しい問いをトランプに突きつけたことになります。
ICBMも実験することなく保有し、核実験はしないであえてあいまいな状態に置くことも正恩は取り得るからです。
中距離弾道ミサイルはパカパカ撃つが、ICBMは撃たない、核実験はしないが核兵器を保有しているのは間違いないというあいまいな状態も可能だというわけです。
ただ保有しているだけですら、ホンモノかニセモノかは分からないし、分からないからこそ「あいまい戦略」なのです。
この「あいまい戦略」の目的は、米国の「大義」を封じることです。
この「究極の宙ぶらりん状態」は、米国政府中枢に取っても甘いささやきになるはずです。
今までクリントンやオバマがさんざんやってきた、「大義が足りないから捨ておく」という選択肢も合理化できるからです。
トランプがこの方法を取った場合、米国の敗北と見なされて、トランプはやるやる詐欺として2期目は諦めたほうがいいでしょう。
一方、正恩にとっては、現況で状況を固定化することで、国家と自分のリスクを回避し、米中の譲歩を引き出せる「あいまい戦略」はなかなか妙味のある考え方ではないのでしょうか。
現在、米中露三カ国による確執に満ちた共同圧力が加えられていることでしょうが、かんじんのトランプが、どのようにこれを判断するのか、私には予測がつかないと正直にお断りしておきます。
※追記 大幅に加筆修正しました。
「韓国軍は、北朝鮮が16日朝、東部から何らかのミサイルの発射を試みたものの失敗した見られると発表し、韓国軍とアメリカ軍が情報の収集と分析を急いでいます。
韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が16日朝、東部のハムギョン(咸鏡)南道シンポ(新浦)付近から何らかのミサイルの発射を試みたものの、失敗したと見られると発表しました。韓国軍はアメリカ軍とともに詳しい情報を収集し、ミサイルの種類などについて分析を急いでいます。
北朝鮮は、今月5日、同じシンポ付近から日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射し、アメリカ国防総省の当局者は、発射されたのが射程が1000キロの中距離弾道ミサイル「スカッドER」だったと見られ、発射後まもなく制御不能に陥って発射に失敗した可能性が高いとしていました。一方で韓国軍は、ミサイルがSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを地上配備型に改良した、新しい中距離弾道ミサイル「北極星2型」である可能性もあるとの見方を示し、分析を進めていました。
北朝鮮は、先月から行われているアメリカ軍と韓国軍の合同軍事演習に強く反発していたうえ、15日はキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の祖父、キム・イルソン(金日成)主席の生誕105年だったほか、25日には朝鮮人民軍の創設85年と、記念日が相次ぐため、国威発揚などを目的に新たな挑発に踏み切るおそれがあるとして米韓両軍が警戒と監視を強化していました。
■米軍「弾道ミサイル 発射直後に爆発」
おそらく米国の指令電波妨害のサイバー攻撃が成功したのでしょう。 技術的失敗ならば、ミサイル開発の進捗にも影響がでるでしょう。
この常軌を逸した北朝鮮の対応に、どのように米国が反応するのかにかかっています。
とうとう今日が、初代独裁者の生誕記念日「太陽節」だそうです。
私はといえば、ニュース速報を聴くために、よくラジオをよく聞くようになりました。
あ~あ、たまらん。桜くらい心静かに愛でさせてくれよ。
このような時期に森友脳となってしまったメディアは、面白半分で煽る情報を出しています。 時と場合をわきまえてほしいものです。
たとえば時事が全国の地方紙に配信した記事にはこうあります。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170412-00000019-jij-n_ame
「【ワシントン時事】米メディアによると、トランプ大統領は12日に放送予定のFOXビジネス・ネットワークのインタビューで、北朝鮮対応について「『無敵艦隊』を派遣した」と語った。
北朝鮮の近海に向かっている米海軍の原子力空母カール・ビンソンを中心とした空母打撃群を指しているとみられる。」(時事4月12日)
共同もそっくりの報道をしていますが、明らかな誤報です。
この時事の報道はFOXのツイッターがソースですが、元ネタを当たってみます。
.”@POTUS on North Korea: We are sending an armada - very powerful. We have submarines - very powerful. Interview on @FoxBusiness Wed at 6a ET2017年Apr12日 08:05”
時事と共同はこの”an armada ”を「無敵艦隊」と訳してしまいました。馬鹿かと思います。
”an armada”はただの艦隊もしくは海軍の意味で、「無敵艦隊」とは訳しません。
「armada 【名詞】1【可算名詞】 艦隊; 軍用飛行隊.2[the A] 無敵艦隊.用例⇒Invincible Armada.【語源】スペイン語「海軍,艦隊」の意」(.weblio辞書)
頭が大文字の”the Armada”ならば、1588年の対英海戦で大敗したスペインの「無敵艦隊」(アルマダ ・インベンシブレ)です。
いまでもスペイン海軍は"Armada Española"(アマルダ・イスパニオラ)と名乗っていますが、これを「スペイン無敵艦隊」と訳すのでしょうか。
スペイン海軍 - Wikipedia
以後、スペインは凋落の道を辿りますので、転じて”the Armada”は「自信過剰で負けた」を意味する場合もあります。
ですから、「トランプが無敵艦隊を送った」と訳せば、「相手をあなどって負けるために大艦隊を送った」という正反対の意味になってしまいます。
トランプが「ネイビー」を使わずに、「アルマダ」を使ったニュアンスを汲めば、「トランプが大艦隊を送った」ていどでしょうか。
マスコミの無教養と不勉強は、第7艦隊の主力空母であるロナルド・レーガンが現在ドック入りしていることを伝えないことです。
下の写真のように、ロナルド・レーガンは8月まで横須賀で修理の真っ最中で動けません。
TBSの昼の報道バラエティでは、朝鮮半島を挟んで東西に2個空母打撃群を勝手に配置して解説していました。 デタラメですね。
なにか「無敵艦隊が朝鮮半島に向かっているぞ」と書くと、一触即発のようですが、単にアジア・西太平洋をエリアとする第7艦隊の中核的戦力が欠けているとしまらないので、カール・ビンソンで穴埋めしたということにすぎません。
おそらく北朝鮮危機が勃発する以前から決められていた通常の交替か、あるいはそれを情勢を鑑みて早めた可能性があるていどです。
またメディアは、「爆弾の母」と言われていると称するMOABを、米軍が4月13日にアフガンで使ったと大騒ぎしています。
これもコメンテーターは洞窟に潜む正恩と北朝鮮軍をビビらせるためだともっともらしく解説していました。もう一回言ってしまいましょう。馬鹿か。
あのねメディアさん、「爆弾の母」 ("Mother Of All Bombs")はただのゴロ合わせジョークなの。
かつてフセインを、”Mother of all battles”(全ての戦争の母)と呼んだのをモジった米軍のスラングです。
これは”Massive Ordnance Air Blast”(大規模爆風爆弾兵器 GBU-43/B)という確かにバカデッカイ9m、重さ9.8tもある一種のゲテモノです。
Massive Ordnance Air Blast bomb - Wikipedia
Massive Ordnance Air Blast bomb - Wikipedia
ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は14日こう述べています。
「(この爆弾が)標的としたのはトンネルや洞窟で構成される軍事施設で、ISは現地で活動するアメリカの軍事顧問団やアフガニスタン軍を容易に攻撃できていた。ISの拠点を奪うための作戦だ」
スパイサーが洞窟と言ったので、「すわ、北朝鮮攻撃向けを実験したのか」と短絡したようですが、違います。
MOABの前身は通称「デイジーカッター」という可愛らしい名前の、6.8tもあるBLU-82/Bでした。
デイジーカッター
これは実際にベトナム戦争などでも使用されていますが、確かにスゴイ破壊力で、キノコ雲まで出ますから小型戦術核のように見えますが、何をしているのかといえばヘリの着陸地帯を作るためにジャングルをなぎ払っていだけです(笑)。
つまり有体に言えば、巨大草刈り機にすぎません。
そもそもあまりに重いので、通常の戦闘機には搭載できないために、MC-130という輸送機でポイと落します。
いちおうGPS誘導装置がついていますが、こんな輸送機でしか運べないような「巨大草刈り機」で正恩を狙うはずがありません。
このアフガンの使用でも、ものすごい衝撃と光線でISが腰を抜かしたていどで、被害はゼロに近かったと思われます。
米軍が洞窟に潜む正恩や北朝鮮軍を攻撃するなら大型貫通爆弾(Massive Ordnance Penetrator、MOP GBU-28)、通称バンカーバスターを使用します。
大型貫通爆弾 - Wikipedia
https://theaviationist.com/2013/10/28/b-2-mop/
上の写真はスティルス性能が高いB2爆撃機に搭載されたMOPですが、米国が正恩がいる地下司令部の位置を補足したなら、この組み合わせを選ぶでしょう。
日本のメディアはこういうやくたいもない、少し調べれば分かる誤報はダダ漏れするくせに、こういう情勢判断をする上で大事な情報はスルーします。
香港有力英字紙South China Morning Post (SCMP) 紙が4月13日に報じたものです。http://businessnewsline.com/news/201704140847260000.html
ここでサウスチャイナ・モーニングポストは「米国が北朝鮮を攻撃しても中国は北朝鮮を防衛する義務はない」と報じています。
「中国と北朝鮮は、1961年に相互防衛協定となる「中朝友好協力相互援助条約(Sino-North Korean Mutual Aid and Cooperation Friendship Treaty)」を締結しており、本来の条約の趣旨に基づく限り、北朝鮮が米国の攻撃を受けた場合には、中国は北朝鮮を防衛する義務が生じることとなる。
しかし、SCMPに見解を寄せた識者によると、中朝友好協力相互援助条約は両国による平和維持を基盤としたものであり、北朝鮮による核開発は、核兵器不拡散条約(NPT)の国際協定に違反しており、米国が核開発を阻止するために攻撃を行った場合には、条約による相互防衛義務の範疇を越えたものとなるとしている。
SCMPの報道内容は中国共産党の意向が強く反映した中国国営紙によるものではないが、こうした報道が中国当局による厳しい検閲を通過したということは、中国が米国による攻撃を容認した可能性を示唆するものともなっている。(以下略)」
中国は、環球時報やサウスチャイナ・モーニングポストなど、息のかかったメディアを通じて、しきりと米国にシグナルを送っているのが分かります。
要は、こういうところではないでしょうか。
①中国は米国が軍事攻撃しても介入しない。
②その理由はNPTを北朝鮮が破壊したからだ。
③北朝鮮がレッドラインである核実験をしないように、中国は北に対する原油供給停止も視野に入れている。
つまりは、中国がこのように「平和的解決」に全力を上げているのだから、しばし猶予をいただきたいということのようです。
この中国の「平和解決への努力」が実ったかどうかは、この1週間以内、特に去年15日の太陽節に実施しているので、今日がもっとも警戒を要する一日です。
トランプは核実験の兆候が見えたら破壊すると明言していますから、「番組の途中ですが、ニュース速報です。北朝鮮が核実験を実施しました」というニュースが流れた瞬間、地獄の釜の蓋が開くことになります。
そうならないことを心から祈ります。
■非常時参考文献https://selectra.jp/sites/selectra.jp/files/pdf/kokumin_hinan_02_s2-1.pdf
民進党がこの時期になって、事前の与党との了解を破って森友問題を取り上げて、委員長から再三注意を受け、あげく議題と無関係として採決に入られたら強行採決だと怒っています。
民進党は、以後国会のすべての審議を拒否するんだとか。大丈夫ですか。熱でもあるんですか。
こういう野党をどう評したらよいのでしょうか。平和ボケと言う言葉すらあたりません。国民を守らないのですから、国民政党の態をなしていません。
民進党の議員の皆さん、あなた方の党は国民の安全などとうでもいい、ともかく政局に持ち込むんだと宣言しているも同然ですが、気がついていますか。
仮にその企図が成功して解散総選挙になれば、わが国は北朝鮮危機の真っ只中に衆院選をするという前代未聞のことになります。
外交・防衛は海岸線まで、危機に際しては与野党の隔てなく一丸となって当たる、これが民主主義国の政党の基本だったはずです。
ひとりひとりなぜ今、国民から選ばれて国会議員として議事堂に立っているのか問うてみることですね。
恥ずかしくないなら、どうぞそのままおやりなさい。私ももうあなた方を日本の政党ではないと思っていますから。
さて北朝鮮危機は、こんな民進党を置き去りにして進んでいます。
結論から先に言えば、北朝鮮は米国が「レッドライン」、つまり越えてはならないとした一線である核実験に進む歩調を止めていないようです。
それを報じるAFP(4月13日)です。
「米国営ラジオ放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は12日夜、米政府その他情報筋の話として、北朝鮮が「坑道に核爆発装置を設置したようだ。現地時間15日午前にも実験を行う可能性がある」と報じた」
ジョンズ・ポプキンス大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」に当たってみましょう。
38 North: Informed Analysis of North Korea
北朝鮮の豊渓里の核実験場を撮影した衛星画像を見ると、北側の坑道入り口付近にトレーラーのような車両が駐車されているのが確認できます。
http://38north.org/2017/04/punggyeri041217/
”A 38 North exclusive with analysis by Joseph S. Bermudez Jr. and Jack Liu.
Commercial satellite imagery of North Korea’s Punggye-ri Nuclear Test Site from April 12 shows continued activity around the North Portal, new activity in the Main Administrative Area, and a few personnel around the site’s Command Center.”
4月12日、北朝鮮の奉渓里核実験場の商業衛星画像は、ノースポータル(北入り口)周辺での活動を捉えた。主要管理区域では新たな活動が見られ、敷地内の指令センター周辺には数人の人員が見られる。
”A few personnel are seen moving around the Command Center Area, guard barracks and security checkpoint.”
指令センターエリア、警備兵舎、セキュリティ・チェックポイントの周りを移動する少人数の人が見られる。
焦点は絞られています。
北朝鮮が核実験とICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験に踏み切れば、軍事オプションを選択すると、米国は最後通牒を突きつけています。
これはICBMでなく中距離弾道ミサイル実験でも、米国に与える政治的効果は同じです。
黒井文太郎氏は、「韓国日本グアムを核攻撃する」という北朝鮮の威嚇は、「もう止めてくれ」という恐怖の現れだと見ていますが、結論は同じでしょう。
恐怖にかられてこの「レッドライン」を越えるのか、自殺行為だと分かって止めるかの2択しか、正恩の前にはないからです。
韓国ネットでは新月の4月27日に、爆撃を開始するとの情報がネットで拡散しているようです。
米軍は湾岸戦争時にも、新月を狙って空爆を開始した実績があります。
私は北朝鮮が先制攻撃などしたらこの限りではありませんが、ギリギリ首の皮一枚で軍事衝突は寸止めができるのではないかと見ています。
この理由の第1は、米軍の兵力集中が不足しているからです。
カールビンソンは確かに世界最大の破壊力を持つ空母打撃群には違いありませんが、しょせん一個空母打撃群にすぎません。
ちなみに1991年の湾岸戦争時には、6個態勢で作戦を開始しています。
2003年のイラク戦争でも同じく世界中から6隻を集中しています。
もちろん搭載する航空機の数、兵器の高度化は当時よりはるかに進んでいるのですが、カールビンソン1隻で当たるとは思えません。
アジア太平洋地域をエリアとする第7艦隊の主力であるロナルド・レーガンは、現在横須賀に定期ドック入りをしています。
これは5月に横須賀港を出港して8月に短期間入港し、再び出港後12月に帰港し、5月まで整備・修理・点検というローテーションが決まっているからで、次に作戦航海(オン・ステーション)に出てくるのは8月以降となります。
よく北朝鮮攻撃は、在日米空軍と海兵隊でチャッチャッとやれるという人がいますが、わけはありません。
こういう人は横田・嘉手納・普天間基地が、なんのためにあるのか知らないのです。
横田、嘉手納・普天間は有事に際して、米本土から来援する空軍・海軍の航空機を迎い入れるためにあれだけ大きいスペースがあるのです。
おそらく平時の数倍の規模にまで膨れ上がります。
しかし、在日米軍基地は厳戒体制に入っていますが、そのような目立った動きはありません。
またなんのために第7艦隊という世界最大のパワーを持つ艦隊を、アジアに貼り付けておくのでしょうか。
私は米海軍の空母戦力の集中の度合いから見ても、早くても秋以降の情勢次第ではないかと思っています。
もうひとつの政治的要素は中国の対応です。
中国はトランプの本気度を疑っていません。いったん開戦となると世界第2位の中国も巻き込まれないわけにはいきません。
一方中国はどうでしょうか。朝鮮半島に火が着くのを望んでいるのでしょうか。
いえ、いくら経済に疎い習でも、中国経済が立ち直りかけている今、そのような打撃は慎重に回避したいと考えているはずてす。
真偽は定かではありませんが、習はトランプとの先日の電話会談で、哀願調で拳を振り降ろしてくれるな、「平和解決」を頼むと言ったといわれています。
トランプがどう答えたのかは分かりませんが、年内の訪中を合意したところからみて、決裂ではなかったようです。
トランプ大統領は、12日の記者会見で、こう述べています。
「習主席は協力したがっていると思う。北朝鮮は非常に大きな問題であり、中国は厳しく取り組もうとしており、すでに始めてもいる。北朝鮮から中国へ輸出されるはずの石炭を乗せた船はすでに返されており、これは大きな一歩だ。中国はほかにも多くの措置も行うだろう」
トランプは従来の中国の主張である6カ国協議には乗ることはありえませんが、中国の影響力は認めています。
トランプが習に要求する「平和的解決」は、まず国際機関の核査察の受け入れであり、今ひとつは、原油の供給の停止です。
知られているように北朝鮮の9割の原油は中国からおくられています。これが北朝鮮のもじどおりの生命線です。
原油は中国・丹東市の「金山湾油タンク」から、馬市村の輸油ステーションへ送られて、加熱・加圧して豆満江を越えて対岸の北朝鮮・平安北道義州郡の烽火化学工場に送られて製油されています。
下写真には、金山湾油タンクと馬市村が移っています。赤線がパイプラインルートです。
http://kazuohage.sblo.jp/article/164902193.html
2枚目の写真は馬市村のパイプライン基地です。左の赤色で囲った部分がそれらしき建物が見えます。
このパイプラインのコックを締めるだけで、なんの軍事攻撃に頼ることなく、短期間で北朝鮮は崩壊します。
その場合、核査察を条件に再供給という交渉も成立します。
もう中国にとって、今まで温存していた原油の供給停止カードを切るのは今しかないようにも見らえます。
その動きが出たとブルームバークは、中国共産党準機関紙「環球時報」4月12日社説を報じています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OOA5BR6K50XS01
「中国外務省の陸慷報道官は同日の定例記者会見で、「緊張をエスカレートさせる恐れのある行動を取ることは無責任であり危険ですらある」と言明。「全当事者が自制を旨とし、互いを挑発して火に油を注ぐことは避けるべきだ」と述べた。
中国共産党の機関紙、人民日報の国際版、環球時報は社説で、現時点での北朝鮮核実験は米政府への「平手打ち」となり、そうした行動は中国が北朝鮮への石油輸出を制限することにつながる可能性があると論じた」(ブロームドーグ4月12日)
環球時報は人民日報よりお手軽な大衆紙という性格を利用して、中国政府のなかなか口にできない意志を代弁させたりすることに使ってきました。
今回もそうならば、習は北朝鮮が核実験を行えば、「石油を制限する可能性がある」と正恩を恫喝したように思えます。
あくまで憶測に過ぎませんが、願わくば太陽節で招かれた中国外交団が、原油供給停止を切り札にして正恩に正気に戻るように説得して欲しいものです。
ただし、この中国の原油供給停止を背景とした対北圧力が成功したとしても、当分は表にでないでしょう。
しかし、この4月一杯核実験もミサイル発射もなくすごすことができたら、それはなにかが起きたのです。
今週末に北朝鮮の「太陽節」と称する初代金王朝覇王の生誕記念日が近づいています。
儒教国家である北朝鮮にとって、先祖を祀るというのは重大な節目です。
初代を祀るために錦繍山太陽宮殿まであり、勲章保存室、史跡列車、史跡乗用車の保存室、涙のホールなどがあります。
共産国家らしく、お約束の初代のミイラまで安置してあるそうです。ちなみに二代目も剥製にして展示されているそうです。(趣味悪ぅ)
錦繍山記念宮殿3階にある金日成のミイラの姿。
え、ミイラがあるくらいだから共産主義だと思ってたって。
いえいえ、あの国をコミュニズムだなんて呼んだら、ミイラになって残っているレーニンもお怒りになります。
言葉遣いが「反帝国主義」だの、「戦う被抑圧人民」のような共産党フレーバーがまぶしてありますから、日本の左翼知識人は誤解しているようですが、世界で唯一現存する儒教主義独裁王国です。
ですから、儒教の長幼の序に従えば、本来は金王朝は長男の正男が継ぐべきでした。
しかし正男(ついマサオと読んでしまいますが)は、ディズニーランド好きが嵩じて二代目に見放され失脚。
次男は性格の弱さでパスして、王位継承権第3位だったはずの三男・正恩が継ぐことになってしまいました。
正男は国内にいる時は、麻薬や武器の密売、マネーロンダリングなど金王朝の暗部に関わる仕事をしたと言われていますが、国外で出ると父親譲りの女好きと放蕩の日々を送っていたようです。
性格も体形もぐっと丸くなり、ま、こういう自由生活もいいかとばかりにマカオに豪邸を構えていたわけですが、こんなことが出来たのもいうまでもなく中国の庇護があったからです。
王位を継承した正恩にとって、実兄は兄であるが故に目障りであるだけでなく、宰相格の叔父・張成沢とつるまれると自分のほうが抹殺されかねないと思っていたのでしょうね。
どこかで、正男の庇護者であった中国と話が着いたのだと思います。
正男は中国国内にいる限り、正恩は手を出せなかったのですが、護衛も解かれてマレーシアあたりにいれば・・・、というわけで暗殺に及びました。
かくして、正恩による尊属殺人が行われました。それもVXガスで激痛を与えながら、公衆の面前で殺すという残虐な方法でした。
その直後に、朝鮮中央通信で配信された正恩の表情です。ちなみに、張成沢処刑の時も似たような陰鬱な表情を浮かべていたそうです。
写真上、正男氏殺害の直後、写真下、張成沢の処刑直後 共に朝鮮中央テレビ
上の写真をご覧ください。これが儒教国家において最大の禁忌である兄殺人を犯してしまった男の顔です。
朝鮮国民は情報統制国家にありがちなうわさ国家ですから、いまや多くの国民は正恩が何を仕出かしたのか、そうとうに知り得ていると思われます。
この男にとってそのような時に行われる太陽節は、絶対に盛大にど派手に行われなければなりません。
なぜなら、自分は兄を殺して王になったのではなく、これだけスゴイ能力があるからこそ正統な指導者なのだということを満天下に知らしめる必要があるからです。
2012年生誕100周年の太陽節 それにしても人文字が好きな国である。国民を駒のひとつていどにしかみていないのがわかる。
ですから、正恩は太陽節の節目に向けて、世界の耳目を驚かす大イベントを演じてみせねばなりません。
それはICBM(大陸間弾道ミサイル)実験と、それに搭載するであろう大型核兵器の実験だろうと見られています。
これこそ金王朝が3代に渡って追い求めてきた、「強盛大国」の完成した姿であるからです。
強盛大国 - Wikipedia
さて米国はハルノートのように要求を文書化する愚は犯していませんが、北朝鮮に対して「レッドライン」を引きました。
それはティラーソン国務長官が言明した「ICBM の完成」です。
もし北朝鮮がICBMの実験を敢行すれば、トランプはためらいもなく軍事オプションを選ぶことでしょう。
トランプも、正恩とは別の意味で追い詰められていました。
そもそも共和党主流派は、自分たちとは異質なトランプを嫌っていました。
トランプが攻撃しているのは、民主党ではなく自分たちの存立基盤だったからです。
共和党主流派は、ティラーソンや失脚したフリンに見られるロシアとの関係を理由に、一気にトランプ切りの動きを加速させていました。
このままこの素人の異端児にやりたい放題させていては、自分らも心中することになるというわけです。
ですから、民主党にトランプ弾劾を起こさせ、共和党は先だってのオバマケア廃止の反乱のようにトランプを切り捨て、ペンス副大統領に代えようとしました。
江戸時代の「主君押込」のようなものですな。
主君押込 - Wikipedia
この絶体絶命のピンチに、トランプが起死回生の一手として打ったのがシリア攻撃でした。
そういう逆流のさなかに、頭に血が昇りやすいバノンは有害無益な存在になりました。
バノンは引導を渡され、NSCはいったって冷静沈着なマティス国防長官とバノンに代わったマクマスター大統領補佐官で仕切られることになります。
NSCは、最も政治的効果が上がり、米国側の損害が少ないアサド政権の毒ガス基地攻撃に絞り込むことによって、アサドの背後にいるロシア、イランに警告を発しました。
トランプにとって、疑惑をもたれていたロシアとは、とうに手が切れているという証明にもなりました。
またマティスが中東で最大の脅威とみなすイランは、核開発と弾道ミサイルで北朝鮮とワンセットてあり、この両国に対する強い警告ともなっていました。
しかもご丁寧に、このシリア空爆を中国の習との晩餐会で寝耳に水でするという手の込んだ仕掛けです。
シリア、北朝鮮、その後ろ盾のロシア、イラン、中国に対して、ひと粒で5度美味しいというわけです。
これにはさすがのヒラリーも拍手せざるをえなかったようです。
トランプは一気に包囲網を破ったばかりか、ロシア、中国、イラン、そして北朝鮮に対して米国が譲れない「レッドライン」を鮮明にさせたのです。
と同時に、米国はレッドラインを越えない方法も提示しています。
ティラーソンは、「我々の目的は朝鮮半島の非核化で、北朝鮮の体制変更ではない」と述べ、斬首作戦を「そのような計画は知らない」と否定しました。
つまり、北朝鮮が非核化に応じれば、米国は正恩体制の存続を保証するということです。
軍事的水圧プレッシャーをギリギリとかけている今、同盟国への合意の取り付け以外、もはや北朝鮮に対して米国にできることはありません。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/...トランプはとぼけた顔をして、この時にはシリア攻撃を命じていた。
米中首脳会談でボールを投げられた形となった習が、この少ない日数でどう動くのかにかかっています。
習もいちおうアリバイ的ですが、やることはやっています。
習は、米中首脳会談から3日後に韓国に武大偉を派遣し、韓国中央日報によると武は「北朝鮮が核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射のような『戦略的挑発』を敢行する場合、国連安全保障理事会の決議に基づき強力な追加の措置があるだろう」と発言しました。
ただし内容は、北朝鮮が追加挑発すれば、①よりいっそう強力な安保理決議はもちろん、制裁と圧力を持続的に強化するべきである、②北の非核化のために韓中協力と5カ国(韓・米・日・中・露)の連携が重要だ、③韓中は核問題の緊急性・厳重性に対する評価を共有し、北の挑発を懸念して反対する、ということです。
まさに無内容。中国の対応はいささかも今までと変わりません。
李克強も同時期、河野洋平らと会談した際に、「北朝鮮情勢は緩和すべきだ。中国もやるべきことがあるし、中日でも共にできることがある」と日本との連携を示唆していますが、これは武と同じく、また6カ国協議をしようぜ、ということにすぎません。
6カ国協議をすれば中国が議長国となって主導権を握れるという思惑です。
しかし、今さら正恩が先代が瀬戸際外交を使って時間引き延ばしに使った6カ国協議に乗ると思うほうが愚かです。
こんなしゃもないものをやったあげく、北朝鮮にホンモノの核武装を与えてしまったのは誰も知っています。
国連安保理のお墨付など、トランプが必要としないことは、シリア攻撃で分かっているはずです。
中国が北朝鮮に示すべきは、非核化に向けた国際機関の核査察の受け入れ以外ありえません。私にはそれ以外の解決法を思いつきません。
太陽節はあさってです。
゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。
■追記 決して危機を煽るわけではなく、万が一の知識としてお読み下さい。
[核攻撃を受けた場合の市民の対処方法]
http://ameblo.jp/sonaeru/entry-10136615837.html
①地下室があれば逃げ込む。地下街、地下鉄のホームでよい。地上へつながる出口をふさぐか、物陰に隠れ、露出している肌をできるだけ隠すようにしてしゃがみ込む。
②地下へ逃げ込めない場合、できるだけ建物の中心で、窓のない部屋、トイレ、風呂場、倉庫などに逃げ込む。それも間に合わない場合、とにかく窓から離れ、また窓との間に何か遮蔽物を置く。机の下、いすを盾にしてもかまわない。
③核兵器の爆発で、建物の窓ガラスは粉々に砕け、そこから超高温の爆風が襲いかかる。熱線によるやけどの防止のため、肌の露出は最小限に控える。また黒い色や金属は熱を吸収しやすいため、できるだけ白い布をまとったり、金属製のアクセサリーや時計は外すようにする。
以下、詳細は引用ソースをご覧下さい。
遅いですが、外務省が韓国に渡航する人に対する安全情報を出しました。
「外務省は11日、韓国に滞在、渡航する人に対して最新の情報に注意するよう促す海外安全情報(スポット情報)を出した。「ただちに邦人の安全に影響がある状況ではない」としつつ、「北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返している」として、朝鮮半島情勢に関する最新情報に注意するよう呼びかけた。
滞在が3カ月未満の場合は外務省への旅行の登録、3カ月以上の場合は在留届を提出することも求めている。 最近の韓国のスポット情報では3月、朴槿恵大統領(当時)の弾劾(だんがい)に関する大規模デモをめぐって出された。一方、北朝鮮による弾道ミサイル発射をめぐっては昨年2月、韓国や中国などを対象に注意を促す広域情報が出された」(朝日 2017年4月12日)
さて、不思議な現象が起きています。
もう避けられないコースと思われていた自殺への直滑降に、韓国国民がようやくためらいを見せ始めたことです。
大変に結構なことですが、言うまでもなく、原因は北朝鮮ショックです。
北朝鮮はよほど頭に血が昇っているとみえて、「われわれの核の照準は韓国と太平洋区域の米国の侵略的基地だけでなく、米国本土にも向いている」と言ってのけてしまいました。
「太平洋区域」というのは、日本とグアムを指すと思われます。
「[ソウル 11日 ロイター] - 北朝鮮は、米国による先制攻撃の兆候があれば米国に核攻撃すると警告した。米原子力空母などが太平洋西部に向かっているが、北朝鮮の機関紙、労働新聞は、米国によるいかなる攻撃にも反撃する用意があると表明した。
「わが革命的に強力な軍は、敵部隊のあらゆる動きに目を光らせており、われわれの核の照準は韓国と太平洋区域の米国の侵略的基地だけでなく、米国本土にも向いている」と指摘した」(ロイター4月11日)
こういう軍事攻撃目標を、あからさまに口にしないで、せいぜいが匂わすていどに抑えて、それで逆にビビらせるというのが奥ゆかしい国際常識です。
ましてや核兵器を使うぞ、というのですからそうとうなもんで、正恩は父親から瀬戸際外交という金王朝の家伝を伝えられなかったと思われます。
二代目は瀬戸際外交の名手でしたが(褒めているのではありませんよ)、それは「核攻撃するぞ」などというどぎついことを言ってしまってはお終いです。
しかも相手が長年の「南朝鮮」工作が実って、めでたくも熟柿のように自ら金王朝の膝下に入ろうとしていた韓国相手にです。
正恩君、青いね。
ひと頃次期大統領確定のうわさすらあったムン・ジェイン(文在寅)など、「当選したら真っ先に北朝鮮に行く」などと正恩を喜ばせることを言っていました。
ムンさん絶好調の時の発言です。
http://japanese.donga.com/List/3/all/27/429106/1
「『私たちの経済活動の領域を北朝鮮と大陸に広げ、韓半島の新しい経済地図を描くべきだ』
野党新政治民主連合の文在寅(ムン・ジェイン)代表は16日、光復(日本植民地支配からの独立)70周年の記者会見に臨み、「経済統一は、わが経済を立て直せる政権担当ビジョンだ」として、こう述べた。文代表は、また6者協議再開に向けて、事前に南北間と米朝間の「2+2会談」を開き、与野党代表は5・24対北朝鮮制裁措置の解除の求める公開書簡を朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に送ることを提案した」(東亜日報2015年8月17日)
パク・クネが3月31日に逮捕され、3.2坪の独房に入れられ、1日の食費はなんと145円というアムネスティもびっくりの境遇に落ちたあたりまでは、ムンと「共に民主党」は順調に支持を伸ばしてきました。
没落した先代覇王を水に落ちた犬を叩けとばかりに追い詰めて復讐心を満足させるのが、かの国の伝統芸ですからね。
韓国大統領は職を失ったら最後、大方これで畳の上で死ねません。
それはさておき3月末の「共に民主党」の政党支持率は45%、ムンの支持率31%で独走態勢に入っていました。
ムンは学生運動家上がりで逮捕歴までありますし、人権派弁護士だったそうです。
うちの国の野党にもよくいて、総理や官房長官になったりしましたっけね。
ノムヒョンの秘書を務めていましたので、ノムヒョン2代目と見ていいでしょう。
このムンの対北政策は対話で核問題を解決するというものでした。THAAD配備も撤回すると主張しました。
反日なのは大統領候補としての基礎教養みたいなものですから、あえて触れません。
一方、保守党の「セヌリ党」は分裂した上に、これといった候補者不在で自滅。もうムンは大統領一直線かと見られていました。
保守としては情けないことに、頼りないが第2野党候補のアン・チョルス(安哲秀)で統一するしかないという、いわばかつての朝鮮戦争時の釜山陣地のような状況に陥っていたわけです。
アンはTHAAD配備に関して「合意を護るべきである」という至極まっとうな意見の持ち主でした。
しかしいかんせん、ムンにはパク・クネを追い落した時の氏神がついています。
ムンの雪崩的勝利をこの私も含めてだれしも確信したのがこの3月末から4月にかけての時期だったわけですが、なんと北朝鮮からとんでもない「支援」がムン陣営に届いてしまいました。
韓国人の宗教のひとつに、「北朝鮮は同胞だから核兵器は使わないさ」というものがあります。
なんの根拠もない思い込みですが、上の漫画のように自分の安全が誰によって守られているのか見ないのですから、米国にとっても忌ま忌ましいかきりだったでしょう。
この構図は沖縄の「平和運動」にもあります。
それはさておき、その韓国人の宗教にヒビが入ったのが、4月に入ってからです。
4月4日、東亜日報の世論調査で、ムンが41・7%に対 して、アンが39・3%、その差がわずかに2・7%だと判明しました。
4月6日、さらに流れの変化がくっきり出ます。
同日の各社の世論調査では、「2人の対決なら」という設問に対して中央日報はアンが50・7%、ムンが42・7%、YTNテレビによればアン47・0%、ムンが40・8%と共に逆転となりました。
この数字については朝日系のハフィントン・ポストが疑念を出しているので、割り引いて拮抗したくらいだというのが真相でしょう。h
ttp://www.huffingtonpost.jp/2017/04/10/korea-presidential-election_n_15929010.html?ncid=tweetlnkjphpmg00000001
この時期、米韓合同演習が続き、北朝鮮は景気よくミサイル発射を繰り返していました。
その上、北朝鮮のサイバー攻撃で、米韓軍事作戦「5027」も流出したらしいことが分かり上へ下への大騒ぎです。
そして韓国は蚊帳の外での米中会談が開かれ、北朝鮮のパトロンの中国もさじを投げたようだと分かったのは、先日お伝えしたとおりです。
トランプはカール・ビンソン空母打撃群を、朝鮮半島海域に進めました。
これは本来ここを守備範囲にしているロナルド・レーガンが横須賀でドック入りしているためですが、正恩にとってすこぶる刺激的だったと見えます。
またワスプ級強襲揚陸艦マキン・アイランドを旗艦とし、強襲揚陸艦3隻を持つ上陸準備戦隊(ARG)は、現在南シナ海を通過して、これも朝鮮半島水域に向かっています。
これには第11海兵遠征部隊(MEU)が乗り組んでいます。
一方、佐世保を母港とするボノムリシャール上陸準備戦隊は現在、朝鮮半島水域に既にいて米韓共同訓練を実施しています。
この上陸戦隊には、第31海兵遠征部隊2200人が所属しています。
そして3月31日、このふたつの海兵隊上陸戦隊4400人に加えて、米国本にいた米海兵隊の主力である米第1海兵師団が戦闘準備態勢評価を終了し、東アジア・太平洋地域に投入される予定です。
このように、軍事オプションを取るか取らないかは別にして、しっかりと北朝鮮制裁の水圧プレッシャーが作動を開始したのです。
4月11日、これに耐えられなくなった正恩が発した暴言が、冒頭の「核の照準は韓国」という同胞に対する核攻撃予告でした。
「当選したら真っ先に正義恩に会いに行く」と言ってしまった従北派のムンにとっても同じく、水圧プレッシャーの下で暮らすような日々が続くことでしょう。
ところで、こういう緊迫した時期に中国に行く翁長さん、きっと中国に北朝鮮を説得してくれと頼みにいくのでしょう。
長島昭久氏が民進党を離党しました。党執行部は除籍という不名誉処分にしたいようです。
あんな党から「除名」されるのはむしろ名誉です。
米中会談についてお読みになりたい方は、4野党党首のバンザイ写真の下からお読みください。
長島氏の会見の発言です。全文引用してもいいような内容ですが、外交・安保の部分だけ抜粋します。
会見全文 http://www.sankei.com/politics/news/170410/plt1704100017-n1.html
http://www.sankei.com/photo/daily/news/170410/dly1...
「(略)共産党との選挙共闘という党方針は、私にとり受け入れ難いものです。一昨年の「安保法制廃案」の熱狂の中で、突然打ち出された共闘路線は、まともな党内論議もないまま共産党主導で進められ、最近では民進党の基本政策にまで共産党が影響を及ぼすかのような場面が目立つようになりました。(略)
衆院選は「政権選択の選挙」です。そこにおいて、国家観も、目指すべき社会像も著しく異なる共産党と選挙協力をするということは、参院選で選挙協力を行うこととは本質的に異なります。(略)
今般のアメリカによるシリア空爆、暴発寸前の朝鮮半島情勢を目の当たりにし、わが国の安全保障のためにアメリカとの同盟関係を強固にし、わが国独自の国防努力を行っていくことはまさしく焦眉の急です。 安全保障は、やり過ぎても、やらなさ過ぎてもいけません。国際情勢の現実を直視しながら、「慎慮」をもって力の行使を判断せねばなりません。これが外交・安全保障のリアリズムです。(略)
このまま国家の基本にかかわるような問題、特にこれから憲法改正という戦後政治の根幹にかかわるような究極的のテーマが控えています。こういった国家の基本に関わるような問題で、左右の衝突が繰り返され、過激な極論や暴論のぶつかり合いが続くようでは、日本社会における保守とリベラルの分断、亀裂は抜き差しならないところまで行くのではないか。深刻な危機感を抱きました。(略)
「党内ガバナンス」という魔法の言葉によって、一致結束して「アベ政治を許さない!」と叫ぶことを求められ、過去に自分たちが推進し、(略)すべて反対、徹底抗戦、廃案路線で突き進む。行き詰まると、院外のデモ隊の中に飛び込んで、アジる、煽る、叫ぶ。そこには熟議も、建設的な提案もない。与野党の妥協も政策調整の余地もない。
国民世論の統合を期待されている国会において、かえって国民の中にある分断の萌芽をさらに拡大しているようにしか見えませんでした。(以下略)
決断が大変に遅かったですが、離党されてよかったと思います。
長島氏は前々から民進党には愛想が尽きていたと思いますが、この間のシリア攻撃と、朝鮮半島緊迫に背中を押されたのでしょう。
このままあの党に着いていくと、朝鮮半島有事に際して「戦争に突き進む安倍を許すな」などと言わせられたあげく、「院外のデモ隊の中に飛び込んで、アジる、煽る、叫ぶ」ことを命じられますからね。
このように朝鮮半島情勢が煮詰まっていているのに、なにひとつ国会議論はおろか、党内議論すらなく「安倍倒せ」「昭恵の付託」「共謀罪廃案」などとと言っていられる野党など、日本には不要です。
さて、米中会談は予想どおり共同記者会見すらないという結果に終わりました。
首脳会談の内容は、会談前後の両国の対応でわかります。
高いレベルで一致したのなら、会談前に事務方が9割まで詰めていますから会談前共同記者会見を行います。
これは会談後の共同声明・会見とセットで、パーフェクトな合意があったということを意味します。先だってのトランプ-安倍会談がそうですね。
逆に会談前共同記者会見がなければ、事前に相当に食い違いがあって難行を予想されるわけで、そういう場合だいたい会談でもなにも決まらずに、結局会談後の記者会見はお流れになります。
今回のトランプ-習会談はまさにそれで、要は何もまとまらなかったということです。
しかも大統領の単独会見もなく、代わってティラーソン国務長官が会見を開き、中国に対して北朝鮮の脅威に対して、米国独自の制裁もありうると通告したと述べています。
米国はこの米中首脳会談の晩餐会の時刻に合わせてシリア攻撃をしたわけですが、トランプは締めのデザートとしてシリア攻撃を用意したようです。
本国からの情報が隔離され、外国首脳とこのような形でサシの対決をしたことのないこの内弁慶は、思わず「(シリア攻撃を)理解する」と答えてしまったようです。
習は安倍首相への対抗心から、オレもフロリダの豪華別荘に呼んでくれと希望したようですが、みごと裏目に出たわけです。
これがホワイトハウスなら、通信情報施設が充実していますし、在米大使館のフォローも効いたのでしょうが、なんせフロリダのトランプ私邸ですからね。
このシリア攻撃の日程は多少前後できたはずですから、習はみすみす「トランプのトラップ」にかかりに行ったようなもんです。初めて習が気の毒になりました(笑)。
直球ストライクの大失言です。老練な政治家なら、フツーは「(貴国の言い分は)聞きおいた」くらいにするものです。
ここまで踏み込んだ賛成を言ってしまうと、シリアに毒ガスを持ち込み、世界に拡散させている北朝鮮はどうなのだということになります。
これを聞いたプーチンはそこいらのものを蹴飛ばし、正恩は腹いせにひとりくらい処刑したかもしれません。
これでトランプは事実上、中国から北朝鮮の制裁のフリーパスを貰ったことになりました。
会談内では北朝鮮の核について、かなり激しいやりとりがあったとされています。
韓国の東亜日報によれば、トランプはTHAAD配備について、「韓国に対して報復措置を取らないように求め」ましたが、習はTHAAD配備に反対するとともに、米韓軍事演習について「軍事的圧力を停止すべきだ」と反論したそうです。
また、どうやら首脳会談でも、会談前にトランプが言っていた通りに、「中国がやらなければ米国が独自の行動について準備が出来ている」と習に伝えたようです。
この「独自の行動」については、トランプはあらかじめ首脳会談前にNBCテレビに、「NSCが在韓米軍への核兵器の再配備をトランプ大統領に提案した」と報じさせていますから、習の耳にも入っていたはずです。
つまり米国は中国に会談前から、「中国がやらないなら、米国は韓国に核兵器再配備をするぞ」と通告していたことになります。
そして情報をブラインドされたフロリダの別荘での晩餐会の席上、シリア攻撃のカードを切り、パニックになった習に支持を表明させてしまったということになります。
シリアへのミサイル攻撃後、フロリダ州の別荘の一室でジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長からビデオ会議で報告を受けるトランプ大統領ら The White House/Handout via REUTERS ニューズウィーク4月8日
今後予想されるトランプの北朝鮮に対する「劇的警告」のメニューは、下院が可決している北のテロ支援国家再指定を実施、北と取り引きする中国企業を念頭に置いた第3国の企業・個人への制裁、そして最大の「独自制裁」は韓国への戦術核の再配備です。
核兵器の抑止には核兵器しかないというのは常識であって、軍事攻撃を回避したいのならば、独自核武装をするか、さもなければ米軍との核の共有(ニュークリア・シェアリング)しか手段はありません。
自国では核兵器を製造せずに、米軍基地に保管して有事に際して米国に合意を受けて受け取るシステムです。
ドイツ、イタリア、トルコ、オランダ、ベルギーがこれに加わっています。
NATOはこのシステムを使って、常に150~200発のB61核爆弾が備蓄されていますし、1991年に軍縮計画の一環として撤収するまで、韓国にも常備されていました。
いわば米国戦略の見直しから米国の都合で撤収したわけで、韓国は再配備について異論はないはずです。
4日前の朝鮮日報(2017年4月7日)はこう述べています。日本のマスコミにもこのていどのことを言ってほしいものです。http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/04/07/2017040701037.html
「米国は、韓国に対しては、アジア・太平洋地域における核心同盟と言いつつも全く違う態度を示している。核だけではなく、ミサイルの射程や弾頭重量までもコントロールしている。今や、北朝鮮の核の脅威は完全に別のレベルへと変化しつつある。
既に核を保有しており、これを積んだミサイルが米国本土を脅かす水準に迫っている。
北朝鮮の核が鼻先まで迫った現在、最大の被害者たる韓国が、生き残りを米国の口頭での約束にのみ依存しているとするなら、それは安全保障を「まさか」に委ねているということだ。
西欧諸国は、米国に「本土の犠牲を覚悟してでも私たちを守ってくれるのか」と尋ねた。韓国も、同じ質問をせざるを得ないだろう。ニュークリアシェアリングが可能になれば、韓国が必要とするときに核戦力を要求でき、必要ないときは拒否もできる」
技術的にも烏山(オサン)空軍基地にはかつての核兵器貯蔵施設がありますから、グアムから移動するだけの話ですし、短期間の配備が可能です。
韓国でニュークリア・シェアリングが実施されるとすれば、大統領選挙の間の期間でしょう。
あくまでも常識的にはとお断りしますが、韓国に核が再配備されればきわめて強い抑止効果を持ちますので、対韓国に対する北朝鮮の核は事実上封じられます。
なにぶん相手がああいうイっている人物ですので、この世界常識が通用するかどうかは不明です。
ただし、通常兵器を200から300門ズラリと北朝鮮は38度線北に並べています。
いくら核兵器を封じられても、170ミリ自走砲、地対地ロケット・フロッグ7、300ミリ多連装ロケット砲の射程なら、30㎞しか離れていないソウル全域はおろか、一部の兵器は、中部まで射程範囲に入れています。
ですから韓国にとって、「これ以上ない最悪の事態」が、「ややましな最悪」に変化するだけといえば、だけです。
むしろ問題は、もうひとつの北朝鮮の核攻撃の仮想敵であるわが国です。
非核三原則の「持ち込ませず」の撤廃となりますが、世界標準の共謀罪でこれだけ引っかかっている国会をみていると、そうとうに厳しいことは確かです。
政府として衆院選前に反核運動の爆発を招くようなテーマはやりたくないことは確かでしょうから、日本政府がどう出るのか私にはなんとも分かりません。
米原子力空母・カール・ビンソンが、朝鮮半島水域に展開を始めました。http://www.sankei.com/world/news/170409/wor1704090012-n1.html
「米太平洋軍のハリス司令官は8日、寄港先のシンガポールからオーストラリアに向かっていた原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群に対し、北上を命じた。米海軍第3艦隊(米カリフォルニア州サンディエゴ)が発表した。朝鮮半島周辺で活動し、核開発・ミサイル開発を続ける北朝鮮の挑発に備える狙いがある」(産経4月9日)
カール・ビンソンが朝鮮半島方面に移動を開始した前後に、米海軍はシリアの毒ガス基地を攻撃しました。
偶然であるはずがありません。
さて、ようやく日本でもわずかに報道されつつありますが、破壊されたシリア軍の毒ガス基地は北朝鮮が作ったものです。
時系列で事実関係を洗ってみましょう。
・2007年7月・・・シリアにおける工場で爆発事故があり、北朝鮮軍事技術者3名とシリア人多数が死亡。後にこの工場は、化学兵器を搭載するスカッドミサイルの工場であったことが判明。
・2007年9月・・・イスラエルがシリアの核兵器製造工場を空爆し破壊。これも北朝鮮が作ったことが判明。
・2011年12月・・・金正恩、北朝鮮の権力継承。
金正恩 - Wikipedia
2013年4月・・・イスラエル軍が、アサド側の化学兵器使用を公表。この時期シリアは大量に化学兵器を使用した疑いが濃厚。
・2013年4月・・・米国政府は議会に対し、情報機関の分析に基づき、シリアのアサド政権が化学兵器を使用した可能性があるとの公式の認識を示す。サリンも使用しているとの見解。
・2013年4月・・・イスラエル、ヒズボラへの化学兵器流入を懸念。シリアがイスラム原理主義過激派に化学兵器を流出させている疑いが濃厚。イランが関与か?
・2013年4月・・・米韓軍北朝鮮への攻撃を検討し、準備に入るが中止。
・2013年5月・・・国連調査団の担当官が、反政府軍FSA(自由シリア軍)の一部が化学兵器・サリンを使用したと公表。この毒ガス兵器もシリア政府軍から流出したものだと推測されている。
・2013年8月・・・シリアが内戦においてに化学兵器を旧ソ連製のロケット弾に詰めて使用したことが確認される。
・2013年9月・・・オバマ政権シリア攻撃を断念。
・2013年10月・・・シリア、化学兵器の国際査察を受け入れ。
・2016年1月・・・シリア化学兵器の廃棄が完了したと公表。
このように時系列でみると浮き上がってくることがあります。
2013年にご注目ください。アサドは自国民に対して容赦ない毒ガス攻撃をしかけ、それがアサドを支援するイランの手によって、イスラム原理主義テロリストに拡散している状況がわかります。
この時期ISや自由シリア軍も毒ガスを使用したという情報もあるため、中東地域に広く拡散した可能性があります。
イスラム原理主義テロリストが、ヨーロッパで化学兵器テロをすることが懸念されています。
このように、敵味方が化学兵器を撃ち合うという極めて異常な状況が勃発していたことになります。
この毒ガスの出所が、北朝鮮がシリアに売り込んだ化学兵器プラントです。
世界の毒ガスと核兵器拡散の根源は、北朝鮮だと断定してよいでしょう。
「朝鮮は2012年の金正恩政権の発足以降、シリア政府軍に対して化学兵器を輸出した可能性も提起されている。
米国防情報局の専任情報分析官を務めたアンジェロ州立大のベクトル教授は「北朝鮮は1990年代から弾道ミサイルや従来の兵器をはじめさまざまな武器をシリアに輸出したが、その中でも最も強力なものは化学兵器だった」と主張した」
(韓国聯合ニュース2017年2月21日)http://japanese.yonhapnews.co.kr/society/2017/02/21/0800000000AJP20170221005700882.HTML
もはやただの危険な国というだけに止まらず、犯罪国家と言ってよいかと思います。
結局、米軍はこの中東の事態を受けて、米軍を中近東に張り付けざるを得ない状況となり、化学兵器の出所である北朝鮮への攻撃は中止されました。
北朝鮮が化学兵器やミサイルをシリアに売ることは、商売であると同時に、中東地域が緊張すれば、北朝鮮に矛先が向かわないだろうというのが思惑です。
トランプがロシアと既にアサド政権温存によるシリア内戦終結を合意しているという説もあり、アサドの暴走もオバマのように見逃してくれるのではないかという読みがあったと思われます。
残念ながら、トランプは抜く手も見せずに、シリアの化学兵器基地を爆撃し、返す刀で北朝鮮に空母打撃群を派遣しました。
まず、あくまでも毒ガス基地を叩くという目的に限定した作戦であって、地上兵力はおろかさらなる空爆も口にしていません。
巡航ミサイルによる、最小限のアウトレンジ攻撃で止めています。
また、アサドに対しては毒ガス使用については非難しても、退陣要求にまで踏み込んでいません。
すなわち、中東に関しては従来の和平の枠組みを守るということで、米軍の中東シフトはないようです。
ここから伺えるトランプの意志は、中東地域において、大規模な戦闘をするつもりはない、あくまでも北朝鮮が主敵だというように考えられます。
もう既に「絵」は、好むと好まざるとに関わらず出来上がっているような気がします。
蛇足ですが、この時期になってもこの深刻な事態を報じることなく、昭恵がぁ、共謀罪がぁと騒いでいるマスコミと野党の堕落も極まりましたね。
■参考文献 黒井文太郎
「どこの国でもいいから助けてくれ!」シリア国民の悲痛な叫びを聞いてほしい | JBpress(日本ビジネスプレス)
名無しさんのご意見です。HNを入れてくださいね。ルールです。
「北朝鮮の核は防衛用のアメリカ恫喝用で、アメリカ侵攻用ではない、北朝鮮にアメリカを侵攻する目的も能力も全くない、冷静に視たらそれがなんの戦略でもないのが分るはずだ。例えしょうもない北朝鮮でも、能力以上の日米戦争やった日本の無謀な悪例を知ってる。」
はてなさんのご意見。
「北朝鮮脅威論を唱える人は、北がアメリカから受けている軍事的脅威のほうが、日米韓が北から受けている脅威よりはるかに大きいことを見落としがちです。」「アメリカの軍事力のほうが圧倒的に上である以上、別に北を信頼するわけではないが、北のほうから先制攻撃を仕掛ける可能性は低いと判断します。」「他の人たちは、北朝鮮との対話は成り立たないと決めつけていらっしゃるようですが、独裁者の心理なんてある意味わかり易いものではないですか」
まず名無しさんは、兵器に「防衛用」も「侵攻用」の区別はありません。
要は使う側の用兵上の問題であって、小は小銃から大は核兵器まで、防衛用にも攻撃用にもいずれにも使えます。
「なんの戦略もない」と言いますが、おっしゃっている「戦略」の意味がよくわかりません。
北朝鮮は亡命在英公使の証言によっても、2017年の米国の政権交替期を狙って核武装化を急いだことは明らかになっています。
これは北朝鮮の立場に立てば、多弾頭ICBMを実戦化することによって、核武装による体制の保全だろうと推測できます。
これは北朝鮮の国家意思、すなわち「戦略」ではありませんか。しかも大変に危険な。
一説によれば、北朝鮮は2016年5月の党大会で正恩が述べたことを引き合いにして、印パをモデルにしているという説があります。
正恩が、「核を持てば制裁は効かない」と考えていることは確かでしょう。
彼がそう思うのは勝手ですが、国際社会はそうは考えません。
この男にだけは核を持たせられない、と考えているからです。
なるほど印パも持ちましたが、それは相互に標的が明確であって、しかも両国とも民主主義体制の国です。
印パの核武装化はもちろん望ましいことではありませんでしたが、地域の安定や国際社会の秩序そのものを破壊しないという暗黙の「紳士協定」が成立しているとみなされています。
このような場合、逆に核保有国同士は小規模な戦争すら核戦争の導火線として回避するようになりますので、皮肉にも地域は安定化してしまうのです。
まったく印パとは異なります。一党独裁どころかひとり独裁制で、国民の生殺与奪の権利は正恩ただひとりが握っています。いわば属人国家なのです。
その残虐性は古代的ですらあり、叔父を高射砲で撃ち殺し、兄をVXガスで殺すことすらためらいません。
外交感覚はゼロに等しく、中露にさえ訪問したことがないという引きこもりでりです。
名無しさんは、「日本の無謀な悪例を知っている」とは、いわゆる大東亜戦争(歴史的呼称)のことでしょうか。
あの大戦の始まる経緯と戦史を知って言っていますか。
私にはあの人物が歴史書を読んでいるとは想像しにくいのですが、それは置くとしても、日本は避けられた戦争を、戦争目的が混乱した政府方針によって引き寄せてしまいました。
しかし、北朝鮮と決定的に違うのは、かつての日本には独裁者は存在しなかったし、その防衛のために戦ったのではなかったことです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-003a.html
一方、北朝鮮の「戦略」の根底にあるのは、自らの生命の保全とその根拠である独裁権力の永久化です。
独裁者に奉仕する国家、その独裁者を支える核兵器なのです。
このような国が核兵器という一見オールマイティに見える兵器を持った場合、ただ「体制の保全」だけで満足するとは思えません。
おそらく印パとは違って、東アジア地域の小規模覇権国家を目指すことでしょう。
仮想敵国である韓国に対してはかねてからの要求どおり「民主化」すなわち従北化と、「外国軍隊なき朝鮮半島」、つまりは在韓米軍の撤退を要求し、その先に待ち構えているのは「民族悲願の統一」かもしれません。
同じく仮想敵の我が国に対しては、制裁解除から始まり、日韓条約と同等の補償と慰安婦謝罪を要求するでしょう。もちろん拉致被害者など永久に帰国できません。
大小二つの独裁国家に牛耳られる東アジア世界・・・、悪夢です。
はてなさんは「北朝鮮が受けている圧力のほうが大きい」と言いますが、何故にその「圧力」が高まったのか、原因は誰にあるのかをあいまいにしたもの言いです。
それは6カ国協議の過程での裏切りの数々、二枚舌どころか3枚、4枚舌を使って、結局核武装化したのはどの国だったのか、思い出してから言って下さい。
核兵器は狂人と独裁者に持たせてはなりません。
なぜならその動機が最終的には、独裁者個人の「自分の命大事」の恣意に左右されるからです。
核を自分のために私する国に核兵器を持たせてはなりません。
「核を持てば制裁が効かなくなる」のではなく、「核を持たせないためには制裁を続ける」しかないのです。
ただ、その手段が軍事的オプションなのか、直接交渉による核軍縮になるのかの判断の違いがあるだけです。
もう一点。このお二人は北朝鮮が核の先制使用をしないと思っているようですが、そうでしょうか。
私はそう思えません。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-cebc.html
もし、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルをただ1基持っているだけなら、私にもそれは政治的アイコンのようなものだと思えるでしょう。
しかし残念ながら、北朝鮮はこのような最小限核抑止力だけではなく、既に「使える核兵器」を保有しています。
北極星2号(KN15)、スカッドERです。
名無しさんは、「SLBMをお馬鹿な地上発射型にして幼児みたいな示威をした、どうやっても、例え100発の核を保有しても運搬手段が無い以上無用の長物に過ぎない」と書いていますが、違います。
お馬鹿どころか、あれこそが山中に隠蔽でき、どこからも撃てる移動式起立発射機(TEL)を持った弾道ミサイルです。
この中距離弾道ミサイルは、核兵器使用の心理的ハードルを大きく下げてしまいました。
語弊がありますが、「気楽に撃てる核兵器」なのです。
大陸間弾道ミサイルは、核による第1撃を受けたあとの第2撃用であって、その時既に北朝鮮の中枢は消滅しているはずですから、政治的意味のほうが大きいのです。
一方、この北極星2号やスカッドERは、実戦の中で戦術の中に組み込んで使う野戦兵器的性格 があって、さらに言えば先制使用するためにあるといっていい核兵器なのです。
今の北朝鮮危機は、まさに正恩がこの「使える核兵器」を持ったが故に生じていることを忘れないでください。
米国が軍事オプションを取るか、直接交渉オプションを取るのか、はたまた周辺国に核再配備をするのか、私にはなんとも言えません。
もちろん日韓に被害がすくないように祈るしかありませんが、最終的には米国が判断することだからです。
正直に言って驚いたと申し上げておきます。賢しらげに予想していたなどとは言いません。
前提的解説を飛ばしたい方は、中央のトランプの写真以降からお読みください。
この米軍によるシリア空軍基地への攻撃を報じるNHKニュース(4月7日)です。
「アメリカのトランプ政権はシリアで化学兵器の使用が疑われる攻撃で多数の死傷者が出たことへの対抗措置として、シリア国内にあるアサド政権の軍事施設を巡航ミサイルで攻撃しました。シリアの内戦が始まって以降、アメリカがアサド政権への攻撃に踏み切ったのは初めてです。(略)
アメリカ国防総省の声明によりますと、トランプ大統領の指示を受けて、アメリカ軍が日本時間の7日午前9時40分ごろ、シリアのシャイラート空軍基地に対し巡航ミサイルを発射したということです。
巡航ミサイルは、地中海に展開するアメリカ海軍の駆逐艦「ポーター」と「ロス」の2隻から、シリアの空軍機、燃料や弾薬施設、それにレーダーや防空施設を標的に合わせて59発が発射されたということです。
また、シャイラート空軍基地は、化学兵器の貯蔵に使われていたとしていて、アメリカの情報機関はこの基地を離陸した空軍機が化学兵器の攻撃を実施したと判断したとしています。
また、空軍基地にいるロシアとシリアの人員が被害を受ける可能性を最小限にするため、アメリカ軍の攻撃について事前にロシア軍に通報したとしています。
アメリカ国防総省は、現在、今回の攻撃の結果を調べていますが、現時点では、シャイラート空軍基地にある空軍機や設備に大きな損害を与え、シリア政府による化学兵器の使用能力が低下したとしています。」
2017年4月7日、地中海に展開するアレイ・バーク級ミサイル駆逐艦はトマホーク巡航ミサイルを発射した。 写真 US Navy
シリアでは4月4日、アサド政権軍機による北西部イドリブ県ハーン・シェイフーンの町に対して毒ガス攻撃が行われて、少なくとも72人が死亡し、住民の多くに呼吸困難やけいれんなどの症状がみられました。
呼吸困難に陥った重体の患者の多くは子供でした。
これはかつて日本においてオウムが散布して多くの犠牲者を出した、神経ガスのサリンだと考えられています。
日本ではあまり報じられていませんでしたが、これを伝えるBBC(4月5日)です。
http://www.bbc.com/japanese/39499388
「シリア北西部イドリブ県の反政府勢力地域で4日に毒ガスによって多数が死亡したことをめぐり、ロシアは反政府勢力が所有する化学兵器から生じたものだと主張した。
ロシア国防省は、シリア政府軍がイドリブ県のハーン・シェイフーンを空爆したことを認めたものの、空爆によって、毒物が詰まった地雷を製造する施設が破壊されたと述べた。地雷はイラクで使用される予定だったとしている。
米国などはシリアの空軍機が化学兵器を使ったと主張するが、シリア政府は否定している。
ロシア国防省の発表を受け、英国のボリス・ジョンソン外相は、「私が見た全ての証拠は、アサド政権が違法な武器を自国民に使用したと示している」と語った。
ロンドンを拠点とするシリア人権監視団は、ハーン・シェイフーンへの攻撃で子供20人を含む72人が死亡したと述べた。
現場から送られてきた映像には、市民らが窒息したり口から泡を吹いたりする様子が写っている。被害者の多くは子供。目撃者によると、負傷者の手当てをしていた病院もその後、空爆の標的になったという」
化学兵器によるとみられる空爆の後、毒を洗い流すために水をかけられる子供 Social Media Website/REUTERS http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7326.php
いままでシリア・アサド政権は、たび重なる残虐行為を自国民に働いてきました。
誇張ではなく、現代世界でもっとも残虐非道な支配者は、このバッシャール・ハーフィズ・アル=アサドです。
国連難民高等弁務官事務所によれば、2011年3月以降に起きた内戦により、人口2200万のうち22万人以上が死亡、、400万以上が国外で避難生活を送っているといわれています。
この膨大な犠牲者と難民を出したシリア内戦は、アサド政権と国民との間の戦争でした。
.http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48257
アサドは国民の2割しかいないアラウィ派に属し、自派のみを優遇する政策をとりました。
国民の8割を占めるスンニ派は、この独裁に怒って立ち上がったのですが、アサドはこれに容赦ない攻撃を加えました。
自らが統治する国民の頭上に爆弾の雨を注ぎ、無差別殺戮を繰り返しました。
アサドのやり方は常軌を逸しており、反政府側地域に住む老若男女を街ごとすり潰す方法を平然ととりました。
今回使われたサリンはいままでも使用されており、1500人が死亡したとされています。
この内戦の中で反政府側に誕生したのが、あの世界最凶のテロリストであるISです。
しかし、シリア難民はISから逃げたのではなく、自分の国の大統領であるアサドの暴虐から逃げ出したのです。
その上、このシリア内戦に本来は調停する立場でなければならない外国勢力が介入しました。
冷戦期からシリアは自分のテリトリーだと思っているロシアとイランです。
ロシアはアサド政権に強く肩入れし空爆を行い、イランはアサドのアラウィ派に近いシーア派のよしみで精鋭の革命防衛隊を派遣しました。
プーチンは,シリア内戦にIS討伐を理由に軍事介入し、実は反政府側地域を無差別爆撃を続けました。
もちろん、国連はロシアの拒否権によって小指一本あげられませんでした。
というのは国連憲章が定めているのは、あくまでも他国からの侵略に対する自衛権であって、主権国家の軍隊が自国民に対して虐殺を行っている場合、これを防止するため国際社会が軍事介入するいわゆる「人道的介入」については、明確な結論がでていないからです。
これは先日南スーダンPKOの記事でも触れましたが、国連PKOですら、「住民保護」という新しい概念が生れたのは1999年なのです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-6893.html
このきっかけとなったのが、ルワンダ虐殺とコソヴォ紛争でした。
ボスニアではPKO部隊は目の前の虐殺行為を止める権限を与えられず、結果として虐殺を放置することになりました。
コソヴォにおいてはNATO軍が軍事介入し、民族紛争を実力で解決しました。
そして今回の膨大な犠牲者と難民を出し、ヨーロッパを震撼させたシリア内戦においても、国連はまったく無力でした。
理由は簡単です。かつてセルビア、今のシリアのバックに常任理事国のロシアがいて、拒否権を発動するからです。
したがって、国際社会の人道的介入は国連の枠組みの外で、「有志連合」の形態をとるしかないのです。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/...
さて、以上のことを頭に入れた上で、今回のトランプのシリア攻撃を考えてみましょう。
私はトランプという人物をあまり信じられないできましたが、今回のアサド政権側への巡航ミサイルによる攻撃は、トランプが決断をそのまま実行に移すことを躊躇わない指導者であることを印象づけました。
オバマが逡巡に逡巡を重ね、結局は英国にはしごをはずされ、議会の承認がえられそうもないとわかると、あっと言う間に腰砕けになった前回とは大きく違います。
オバマはシリア攻撃に対し、議会の承認を必須として、結果的に何もせずに不戦敗を喫しましたが、トランプはかねがね大統領は先制攻撃に対して議会の承認は不要という立場をとっており、今回はそれを現実にしたことになります。
皮肉にも議会に根回ししたオバマは腰砕けになったのに対して、トランプの今回の措置は議会でほぼ完全な支持を得たようです。
ちなみにオバマは腰砕けした上に、いわずもがなの「米国は世界の警官ではない」という不用意な台詞を吐いてしまいました。
この台詞に狂喜したロシアはウクライナに侵攻し、中国は南沙諸島に軍事拠点を展開するようになりました。
現代世界の不安定化のきっかけを作ったのは、このオバマです。
選挙期間中からこのオバマの弱腰を罵ってきたトランプは、こともあろうに習との首脳会談を行っている真っ最中にシリア攻撃を命じ、習が別荘からいなくなるや攻撃の発表を行いました。
晩餐会中に国防総省高官が、ひんぱんにトランプ大統領に緊急報告し、指示を仰ぐシーンが複数回あったそうです。
習にとって、さぞかし落ち着かない晩餐だったのではなかったのでしょうか。
プーチンには事前に通告してあったので、シリア軍基地はロシア軍人もいたはずですが退避したことと思われます。
ロシア軍人に犠牲者が出ると米露関係が修復不可能なほど緊迫するので、トランプからすればロシアに対しての警告のこぶしを寸止めしたということです。
一方、習の面子は丸潰れになりました。トランプはシリア攻撃の命令をだしながら、ニコニコと習にうまいものを食わして「個人的友情」を確認したというわけです。
アングロサクソン流外交の、「右手で握手しながら、左手にはこん棒」という絵そのままです。
トランプの外交的シグナルは鮮明です。
米国はシリア、あるいは北朝鮮に対する軍事的オプションの行使をためらわない、米国は中露の反対を押し切ってでも、フリーハンドを保つということです。
トランプは今後、シリアに対しての文明国の参加を求めており、多国籍軍による人道的介入の形式とすると見られています。
その場合、米軍機によるシリア空爆と、シリア軍機の飛行禁止区域を作ると思われます。
シリア内戦が、まったく新たなフェーズに突入したことだけは確かです。
また、今回シリア爆撃は、化学兵器使用がその理由でした。
これは同じく金正男暗殺にVXを使った北朝鮮に対しての、極めて強い警告です。
既に米議会においては、北朝鮮をテロ支援国家再指定の取り付けが完了しつつあり、その次の段階が準備されています。
これは中国経由の資金を断つに止まらず、トマホーク巡航ミサイルや航空機を使ったサージカル・ストライク(外科手術的ピンポイント攻撃)へと進む可能性が現実となる可能性が高まりました。
巡航ミサイル - Wikipedia
なお、横須賀を母港とするイージス艦12隻と日本周辺海域に待機している巡航ミサイル原潜が積むトマホークは常時約500発といわれています。
巡航ミサイル潜水艦 - Wikipedia
笑えることには、金正恩は、奇しくも北朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』(7日付)一面トップで正恩がアサド大統領に送った祝電全文を掲載しました。
「アラブ社会復興党とシリア人民の正義の闘争に再び固い支持と連帯を送りながら反帝国主義のための共同闘争を進めよう」との内容のようです。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170408-00051415-gendaibiz-bus_all
間が悪いことよ(苦笑)。
常識的にはシリアと北朝鮮の二正面作戦は困難を伴いますが、トランプがどう出るのかこれでまったく分からなくなりました。
軍事的合理性からいえば、準備中とされる次の大型核実験とICBM発射実験の前で、しかもムン・ジェインが大統領に就任する前の時期しかないということになります。
つまり、北朝鮮の核武装化が完成する直前の今しかありません。
これを逃すと、あとは先日から書いているように、米朝直接交渉しか道はなくなります。
ムン自身は無能な従北派にすぎませんが、北朝鮮攻撃を受けて韓国民衆を反米で煽動する可能性があります。
その場合、韓国国内の米軍基地使用に困難がでるかもしれません。
となると、今月中のどこかという憶測がでますが、なんとも言えません。相手がトランプですから。
念のために申し添えますが、これはそうあって欲しい欲しくないという価値判断の問題ではなく、トランプの立場に立った場合、合理的判断をすればこうなる確率が高いという意味です。
トランプがどのように決断しようと、我が国にはその決断に介入することはできません。
今後日本は、正恩がトランプの警告に耳を傾けず、タガがはずれた暴走を続ける場合に備えて、政府は緊急の国民保護措置をとらねばならないでしょう。
貴兄がいうのは、国土の荒廃も、自国民の死すら厭わないカルト国家に、相互確証破壊というある種の「紳士同盟としての核クラブ」参加可能な担保はない、ということです。
そのとおりです。私もそう思います。あの国の権力は、最終的にあの変な髪形の肥満児に収斂します。
すべての国家的リソースがこの男に行き着きます。 統治機構、軍隊、警察、生産部門、資源、そして国民の生命・財産まで一切合切すべてです。
そのような国家は、独裁者が自らの命を生き長らえさせるためにはいかなる手段も辞しません。
国民に食料と自由を与えないなどというのはまだ入り口で、国家=自分ですから、いかなる荒廃、いかなる出血にも耐えるでしょう。
自分を守るために、平然と何百万の人民に死ねと命じることが出来るのが、金正恩という人物なのです。
おぞましい限りです。あってはならないことだと思います。
このような国を信じられるのかと問われれば、日本においては主体研究会などというカルト宗教団体を除いて、そりゃ信じろというのは無理だと大部分の国民は思うはずです。
しかし、貴兄が仰せのように、これが北朝鮮という国柄なのです。
このような国と、兵士がひとりが一票を持ち、指導者を選出できる民主国家がイーブンなはずがありません。
ベトナム戦争は兵士とその家族がひとり一票を持っていたが故に、厭戦によって敗北しました。
ではなぜ北ベトナムが勝利できたのかといえば、全体主義国家だったからです。
民主主義国家は全体主義国家に、通常の方法では勝利できないのです。
2008年12月11日の6カ国協議 於・釣魚台国賓館
それはさておき、上の写真は2008年に中国で行った6カ国協議ですが、この直後北朝鮮は2回目の核実験をしています。
このように北朝鮮は核武装はしないといいながら核兵器を開発し、査察に入ろうとすれば拒否し、それを国際社会からなじられればキレて見せて、「ならば戦争だ、東京とソウルは火の海だ」とタンカを切ってきました。
それも何度も何度もです。こんな国を信じろというほうがどだい無理でしょう。
さて、そこで相互確証破壊の枠組みにこのような北朝鮮が組み込めるかですが、私にはわかりません。
ただ言えることは、交渉は信頼しあっているからするのではなく、逆に信じられないから交渉をするのです。
多くの日本人はあまり分かっていないようですが、日本が第3の被爆地とならないのは、相互確証破壊という巨大なバラドックスが機能しているからです。
オレの国を核攻撃すれば、第2撃の報復の矢を容赦なく放つぞというニラミです。
相互に滅びるから止めようということになります。これが私がいう「紳士同盟としての核クラブ」です。
このような管理された「核戦争1分前」が今の世界なのです。 自国が滅びたくなければ「紳士」でいろということです。
初めの問いに戻ります。北朝鮮をこの「核の紳士同盟」に加入させることが可能でしょうか?
問題は手段です。
ひとつめの選択肢は、従来の6カ国協議、あるいは国連の軍縮会議のテーブルでしょうか。
無理でしょう。裏切りの常習犯のようなこの国に振り回されるだけです。
それは無意味どころか、北朝鮮に核武装の時間を与えるだけだった6カ国協議の再現となります。
そこで思い出して頂きたいのですか、私がひとつのオプションとしてありえるかなと提起したのは、あくまでも米朝2カ国間の相互確証破壊の直接交渉です。
多国間ではありません。
多国間にしないのは、その枠組みにすると必ず宗主国づらをして中国が介入するからです。
中国こそが、北朝鮮の核武装に技術を提供し20年間にわたって泳がせていた北朝鮮危機の影の主役でした。
中国は「唯一の影響力を持つ国」などという可愛らしい存在ではなく、北朝鮮の振付師なのです。
したがって、この中国が交渉テーブルに共に着くかぎり、なにひとつ解決しません。
議題は、弾道弾ミサイル数、射程、VXなどの大量破壊兵器の破棄などとなるでしょうが、これもどうせ決まりません。
あえて言いますが、それは折り込んで下さい。ならばなぜこのような不毛な交渉をするのでしょうか?
理由は唯一、時間が稼げるからです。
私は北朝鮮問題に完全解決は存在しないと思っています。スッキリした解などないのです。
何を優先順位にして考えるかです。
あの国の政治体制が問題であるからと言って、米国好みの民主主義要求や人権問題を議題に乗せるべきではありません。
言っても無駄だからです。
繰り返しますが、国際社会が獲得すべきは完全な解決ではありません。
よく保守言論人が陥りがちな、「北朝鮮という悪の根源を絶つ」と思考しないで下さい。
共産主義もどきの北朝鮮の政治体制を憎むことと、今の脅威に対処する手だてを立てることは本質的に別次元なのです。
第一、それを選ぶと軍事的オプションしか残りません。
大事なことは現時点で、なによりも、金正恩に先制核攻撃をさせないことです。
逆に考えてみましょう。ではどのような状況で、この男は核の発射ボタンに手を伸ばすのでしょうか。
かつて北朝鮮の数少ない友好国だったルーマニアが崩壊し、独裁者チャウシェスクが殺された時、金日成は己が運命に重ね合わせて深く恐怖したそうです。
侵攻した米軍兵士や民衆によって、チュチェ思想塔から吊るされる恐怖を脳裏に描いたといわれます。
2代目の金正日は、サダムフセインやカダフィの末路を見ています。
そしてこの恐怖は遺伝して、いまや正恩の脳裏から片時も離れないはずです。
私たちができることは、この独裁者の恐怖を凍結してやることです。
おそらく正恩が核ミサイルの発射命令をするのは、彼が窮鼠猫を噛むという心理の絶望的袋小路に陥った時です。
全国の軍事基地が火に包まれ、ピョンヤンの政治中枢にも着弾が始まった時、正恩のこの祖父譲りの「吊るされる恐怖」が蘇るでしょう。
チャウシェスク、サダム・フセイン、カダフィの列にオレは並びたくない、とこの男は叫ぶことでしょう。
このような状況がもっとも危険です。正恩がもはや山中に隠してある核ミサイルしかないと思った時、本気で北朝鮮が核先制攻撃をかける可能性が極大化します。
こう考えてくると私は、米軍の軍事オプションを平静に眺めることはできません。
独裁者の恐怖を<凍結>してやること、これが私が考える米朝交渉の最大の眼目です。
この「核軍縮交渉」はなにひとつ成果を上げないでしょうが、交渉というゲームを世界の盟主とサシでしている間は、正恩はプライドと正気を保っていられるでしょう。
願望にすぎないかも知れませんが、交渉の真っ最中に交渉相手国と同盟国に核攻撃をするほどクレージーではないと思います。
その間わが国は最悪の核先制攻撃のあぎとから逃れられる代わりに、常に核のカードを手にした北朝鮮と向き合うことになります。
しかし、それが国際政治の現実なのです。
いずれの方法をとっても日本は9条がある限り、なにも出来ません。
改憲までどれだけの時間がかかるか分かりませんが、それまでだましだましやるしか手はないのです。
今、欲しいのは時間です。
私の貧しい頭ではこれしか思い浮かびません。既に始まっている、今日のトランプ-習会談を見守りましょう。
■追記 時事通信 4/7(金) 10:27配信
【ワシントン時事】米軍は6日夜(日本時間7日午前)、シリアの軍事施設を標的に巡航ミサイルを発射し、アサド政権に対して初めての軍事攻撃を行った。
巡航ミサイル59発を撃ち込んだ。トランプ米大統領は対シリア攻撃を発表し、アサド政権が「禁止された化学兵器を使用したことに議論の余地はない」と述べ、シリアで猛毒の神経ガス、サリンの疑いがある化学兵器が使用されたとみられる攻撃の対抗措置だと明らかにした。
米テレビなどによると、地中海上の米駆逐艦から、巡航ミサイル「トマホーク」が発射されたもよう。標的はシリア中部ホムス県にある飛行場で、ロイター通信は「滑走路と航空機、燃料設備」を狙ったと報じた。米軍によれば、航空機などを破壊した。
「北朝鮮は、本日6時42分頃、北朝鮮東岸の新浦(シンポ)付近から、1発の弾道ミサイルを北東方向に発射した模様です。発射された弾道ミサイルは、約60㎞飛翔し、北朝鮮の東岸沖に落下したものと推定されます」
防衛省北朝鮮による弾道ミサイルの発射について(第2報)4月5日
技術的解説が面倒な方は、3枚下の写真の下からお読みください。
ミサイルは米太平洋軍によればKN-15・「北極星2号」中距離弾道ミサイル(MRBM)で、水中発射型弾道ミサイルを陸上配備型に転用したものです。
”Initial assessments indicate that the type of missile was a KN-15 medium-range ballistic missile (MRBM)”.
U.S. Pacific Command Detects, Tracks North Korean Missile Launch
スカッドERとの説もあります。※追記 米国防総省は、スカッドERの失敗と発表しました。
今回の特徴は、ほぼ垂直に打ち上げられていてロフテッド軌道を使用しています。
迂遠なようですが、まずはロフテッド軌道を押さえておきます。
「弾道ミサイルの打ち上げ方法のうち、通常よりも角度を上げて高く打ち上げる方法。
ロフテッド軌道で打ち上げられるミサイルは高高度に到達してから落下するように着弾する。飛行距離は通常ほど延びない代わりに着弾間際の速度が速く迎撃されにくいとされる」
ロフテッド軌道とは - 新語時事用語辞典 Weblio辞書
ロフテッド軌道
韓国・聯合ニュースによると、ミサイルは9分間飛翔し、60km先の日本海へ落下、最高高度は189kmだと推定されています。
ロフテッド軌道によってあえて高く打ち上げて飛距離を減じた代わりに、迎撃しにくい発射方法を選んだことになります。
昨日のテレビでは武貞氏が例によって、今日の米中首脳会談を牽制したとの見方を語っていましたが、半分は当たっていますが、半分は違うと思います。
そもそもこの北極星2号の技術を供与したのは、他ならぬ中国です。
短期間に新型ロケットエンジンを完成させ、「重ICBM」と呼ばれる米国攻撃の手段を与えた背景にも中国がいます。
そうでなくては、どうしてあれだけ短期間に極めて困難だとされる大陸間弾道ミサイルが完成できるのか、説明がつきません。
重ICBMとは、日本のH2に等しいロケットなのです。しかも再突入技術の部分だけとれば、わが国より「進歩」しています。
いいですか。日本ですらH2の打ち上げを失敗して、数年に渡る苦汁を呑んだのです。
「下町ロケット」でも描かれていたような、膨大な部品のひとつひとつに徹底した品質管理が要求される、それが重ICBM(※)なのです。
※重ミサイル(heavy missile): 大型ペイロードを持つミサイルの分類で、SALT-II条約では 旧ソ連のSS-19よりも大きいペイロードを持つミサイルと定義された。現在まで重 ミサイル(重ICBM)に指定されたのはロシアのSS-18のみ。
ミサイルは多くの軍事技術がそうであるように、現代科学技術の粋です。
全体のシステム設計、部品設計、冶金技術、エンジン設計、そして精密加工技術などあまりに越えねばならないハードルが高いので、世界でそれを製造できる国は米露中ユーロ、そしてわが国しかありません。
どのように考えても、満足な車一台も国産できないような北朝鮮に可能だとは思えません。
先だっても書きましたが、私はかねては北朝鮮が初代の遺訓に沿って「主体思想」で動いていると見ていましたが、今は大きく変質したと考えています。
主体思想とは、要は大国の意志には左右されない主体性を持った国家づくりという理念で、キムイルソンは中ソを手玉に取るようにして国際政治を泳ぎ渡りました。
三代目は、中国と強い繋がりを持つことによって、一種の「共犯関係」にあると考えています。
北朝鮮と中国が、実は共犯関係ではないかという見方が、私の中で確信に近いものに変わったのは、金正男暗殺から4発同時発射までの、北朝鮮と中国の蜜月ぶりを見たからです。
金正男暗殺直後、2月28日から3月4日まで北朝鮮の外交トップである李吉聖が北京を訪問し王毅外相と会談しました。
李の帰国後わずか2日後に、北朝鮮は「日本の米軍基地を標的とする」と公言して、4発のミサイルを日本へ向けて同時発射をしました。
これはなにを意味するのでしょうか。
中国は正男を保護する意志はとうにない、むしろ消えてくれたほうがよかった、なぜならもう北朝鮮の内政に介入する意志はないからです。
そして対外的には北朝鮮を慰撫できる唯一の存在として、中国は自らを「高く売れる」と考えているからです。
北朝鮮が暴れれば暴れるほど、中国にとっては自らの価値が光るという思惑です。
おそらく、中国にとっての最良のモデルは、かつての6カ国協議の枠組みの再現です。
六者会合 - Wikipedia
中国は自国が強いイニシアチブを持つ6カ国協議の構図を再現することで、トランプ政権の軍事オプションを抑え、かつ北朝鮮を自らのコントロール下に置くことを考えています。
6カ国協議が破綻して後、その再現のためには、あえて北朝鮮の暴走を止めるどころか、技術供与し、より「高く売る」必要があったのです。
そのために最後の切り札である、重ICBMの技術まであえて供与をしたのではないでしょうか。
今回も私の推測が当たっているなら、あえて米中首脳会談前に「撃たせた」のです。
中国は米国が軍事オプションを取りたくない腹を読んでいますが、同時にトランプなら分からないという一抹の不安は残っているはずです。
だから、ここで北朝鮮にダメを押させたのです。
習は会談でトランプに、北朝鮮が攻撃を受けた場合に起こり得る反撃の規模と内容を知らせるでしょう。
日韓に対する核攻撃、ソウル炎上、毒ガス散布、テロリストによる原発・石油ターミナルの破壊、サイバー攻撃などなど・・・、地獄の釜の蓋を開けたようなメニューが並んでいるはずです。
だから、習さんがうまくやるからまぁまぁ、ということです。
というわけで、習の腹はなんとなくわかるのですが、同盟国たるトランプ米国の意志がわかりません(苦笑)。
いずれにせよ、今日の米中会談は「新6カ国協議」の場に持ち込もうとする中国と、そうはさせまいとする米国との綱引きになるような気がします。
とまれ、朝鮮戦争集結後、最大の危機が訪れようとしています。
しかし今回ほど切迫したトーンで、米国が警告を発することはなかったはずです。
それはタカ派のトランプだからだと思っている人もいるようですが、違います。
米国は今や、北朝鮮を甘く見ていたツケを、一括返済せねばならない事態に立ち至っているのです。
ほんの5年ほど前まで、多くの軍事専門家たちは北朝鮮が核実験をしたり、ミサイル発射するたびに、「騒ぐな。騒げば相手の思うつぼだ。北の脅威は低い」と言ってきましたが、いまやこの有り様です。
北朝鮮は弾道ミサイルの最高レベルである、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発成功に大手をかけています。
大陸間弾道ミサイル - Wikipedia
そして米国は、ニューヨークタイムズ(3月4日)によれば、飛来する北朝鮮の弾道ミサイルを防ぐ確率が驚くほど低いことを自覚しています。
米本土には、飛来するICBMを迎撃するためにアラスカとカリフォニア州にGBI(最新型ABM)を展開していますが、その過去の迎撃実験は56%失敗でした。
ABM(anti-ballistic missile)とは、弾道弾迎撃ミサイルのことです。
弾道弾迎撃ミサイル - Wikipedia
GBI インターセプター http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams01/md-09a.html
アイゼンハワー政権以来、営々と3000億ドルもABMに注ぎ込んできましたが、これでは米国の大都市は守りきれぬとオバマは判断したわけです。
それが2014年前半のことだと言われています。
約6割の実験失敗のショックが、いかに大きかったかと拝察します。
しかもこれは予告された迎撃実験であって、奇襲攻撃をかけられた場合、眼も当てられない確率となることがわかったからです。
かくしてオバマはABMでの迎撃を諦め(撤去したわけではありませんが)、サイバー攻撃によって妨害する方法に転換しましたが、成功したかどうかははなはだ疑わしいとされています。
おそらく数回のムスダンの実験を失敗に終わらせましたが、北朝鮮はそれ以降米国のサイバー攻撃をブロックすることに成功したようです。
ちなみに北朝鮮のサイバー戦能力は、中国と共同して開発・実施されており、能力的には世界トップクラスの水準にあると見られています。
先日のミサイル実験の失敗もサイバー攻撃だという声が上がっていますが、たぶんただの技術的失敗でしょう。
つまり、飛来する北朝鮮の核ミサイルが複数あった場合、かならず数発は大都市に着弾するということです。
この「複数」という意味は、複数のミサイル本体ということを意味しません。
多弾頭弾道ミサイル(MIRV)のことです。
http://www.gepr.org/ja/contents/20160425-02/
大陸間弾道ミサイルは、発射後地球の引力を振り切って大気圏外に出て、ミサイルの先端のキャニスターを開いて中に格納してあった複数の弾頭を放出します。
そして6発ていどの弾頭に別れて、各々の目標に突入しますが、このうちのいくつかにはデコイ(囮)が混ぜ込まれていて、いっそう迎撃を困難にします。
北朝鮮は、いまやこの多弾頭式弾道ミサイルの開発に成功しつつあると見られています。
さて、北朝鮮は3月19日、朝鮮中央通信を通じて「新型の大出力ロケット・エンジンの地上噴射実験に成功した」と発表しました。
この実験は、大変に大きな意味をもっています。正恩がたかだかエンジン実験で立ち会う意味を考えて下さい。
下の写真で正恩が見ている塔が、ロケット・エンジン実験塔です。今まで北朝鮮は、2016年4月、そして9月に既に2回ロケットエンジンの実験を行い、今回は3回目です。
ロケットの専門家である鳥嶋真也氏によれば、まず去年4月のものは、ムスダンのエンジンを2基、束ねたものでした。
この中距離ロケット・エンジンを束ねて推力を増し、第2段、第3段を継ぎ足して長距離大型ミサイルに仕立てるという方法はよくとられる方法です。
次の9月の実験は、西側専門家に論議を呼びました。いままでの旧式ミサイル・エンジンから明らかに新型に進化したからです。
このロケット・エンジンは、ロシアのRD-250の北朝鮮バージョンであると推測されています。
RD-250エンジンは、大陸間弾道ミサイル用エンジンです。
旧ソ連はRD-250ロケット・エンジンを使って「R-36」というICBMを開発した実績があります。
R-36 (ミサイル) - Wikipedia
このR-36ミサイルは、4トンから6トンの弾頭を、1万~1万5000kmまで飛ばす性能をもつ、いわゆる「重ICBM」に分類されるミサイルです。http://www.geocities.jp/space_launches/LaunchVehicle/russia/Tsyklon.htm
R-36ロケット
R-36は旧ソ連最大のミサイルとして君臨し、西側の恐怖の的となったロケットです。
これをフルコピー(一部異なる箇所がありますが)としても、これだけ短期間で完成させてしまう北朝鮮の技術力を侮ってはいけません。
国力を一点に集中し、人民に飯を食わせなければ、まぁなんでもできるということです。
現在北朝鮮は、核弾頭を1トンまで小型化する能力を有していると思われていますから、最大6発の子弾頭を搭載できることになります。
このように、北朝鮮は凄まじい勢いで核武装国家の大手をかけようとしています。
そして米国はそれを防ぐ術がないのです。
今後、上の写真のようにこの新型ロケット・エンジンを搭載した大型ミサイルの発射実験をすると思われます。
これは液体燃料ですから、燃料注入に長時間を要するうえに、スカッドERのような隠蔽も不可能です。空爆に脆弱な一瞬です。
この時トランプがどうするのか、注目せねばなりません。
■謝辞 参考文献 鳥嶋真也「脅威増す北朝鮮のロケット技術――「新型ロケット・エンジン」の実力を読み解く」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170329-00134849-hbolz-int
■追記 北朝鮮は米中会談前日にミサイルを発射しました。
韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は5日午前6時42分ごろ、東部の咸鏡南道新浦(ハムギョンナムドシンポ)から日本海に向かって弾道ミサイル1発を発射した。
飛距離は約60キロ。韓国軍はミサイルの種類などの分析を急ぐとともに警戒を強めている。(朝日4月5日 7時33分)
今週に北朝鮮危機をめぐる最初の山場が来ます。もちろんトランプ-習会談が行われるからです。
米中首脳会談の主要議題は、表向きは米中経済問題となっていますが、米国側が求めているのは北朝鮮への制裁協力です。
トランプのフィナンシャル・タイムズ(4月2日)とのインタビューでの発言。
「中国は北朝鮮に対し多大な影響力を持っており、北朝鮮問題で米国に協力するかどうか決めることになる。協力すれば中国にとって非常に良いが、協力しないとすれば誰にとっても好ましくない。
中国が北朝鮮に圧力をかけるのと引き換えに、いずれ朝鮮半島から米軍を撤退させるという取引を検討する用意はあるかとの質問には
「中国が北朝鮮問題を解決しないのであれば、われわれが解決する。私に言えるのはそれだけだ」
要は、米国単独で北朝鮮に対して軍事的制裁を加える意志があるということですが、これを習に対する先制ジャブと見るべきか、本気で言っているのかは不明です。
http://jp.reuters.com/article/northkorea-nuclear-idJPKBN1740XP
習の答えが、例によって「危惧は共有するが、軍事行使は反対」ということなのは、ティラーソン訪中で分かっているはずですから、決裂は折り込み済と思われます。
その場合、トランプが軍事的オプションを選択するなら、習の帰国後、4月6日からの1週間がホットゾーンでしょう。
ロイター(4月2日)はこう報じています。
「米国がどのような措置をとる可能性があるのかは不明だ。
米当局者が2日に明らかにしたところによると、国家安全保障会議(NSC)は北朝鮮の核・ミサイル開発抑制に向けた選択肢の検討を終え、提言をまとめた。提言には経済・軍事上の措置が含まれているが、追加制裁や中国への圧力を強める選択肢を優先しているという。
ここでロイターが「追加制裁」と書いているのは、中国に対して向けられています。
中国の態度は面従腹背です。
表面的には、国連や米国が主張する北朝鮮制裁にはハイハイ、ごもっともと従うふりをしますが、腹ではそんなことはやる気はありません。
先日述べましたが、互いに対米関係で利害が一致しているうちは中国が北を切ることはないはずです。
ですから、中国は核実験、ミサイル「訓練」多発、正男暗殺事件といった正恩の暴走を横目で見ながら、米国が中国に要求する北朝鮮に対するテロ支援国家指定を受け入れることはありませんでした。
この中国の対応が北朝鮮を経済制裁だけでは、核武装化を断念させられない最大の理由になっています。
現実に、北朝鮮の資金移動はすべて中国の企業と銀行を経由して行われているといわれています。
北朝鮮の輸出品はミサイル、武器類、麻薬などですが、その代金は中国系銀行か中国企業を通してロンダリングされて決済されています。
すでに、北朝鮮人の銀行口座は凍結されています。
SWIFTコードといういわば銀行口座の住所が抹消されているからです。
「SWIFTコードは、「SWIFTアドレス」や「BICコード」とも呼ばれ、SWIFT(国際銀行間金融通信協会)が提供する国際送金システム上で相手方の銀行を特定するために用いられる金融機関識別コードをいいます」
SWIFTコードとは|金融経済用語集
このために、北朝鮮へは直接送金が不可能なために、かつてはロシアの口座を使ってロンダリングしていましたが、ロシア自身も経済制裁のために苦しくなり、今は中国に全面的に依存しています。
現在は、瀋陽軍区(今は戦区)系列の企業の口座を通して資金移動しているといわれています。
習に瀋陽軍区を統制するだけの力はなく、仮に習がトランプと合意したとしても、瀋陽軍区がハイ、そうですかと、従うとも思えません。
他国では考えられないことですが、中国はそういう軍閥で成り立っている国なのです。
そのような米中の思惑はどこ吹く風とばかりに、正恩は無邪気に意気軒昂です。
「【ソウル時事】北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞(電子版)は3日、「間もなく、世界は宇宙開発分野でわが国がいかに成果を成し遂げるかはっきりと目にする」と主張した論評を掲載した。長距離弾道ミサイル発射を示唆したものとみられる。
論評では、日本政府が3月に打ち上げた情報収集衛星を「わが国への偵察が目的」と批判。国際社会は北朝鮮の衛星打ち上げだけを問題視していると非難し、「われわれの宇宙開発活動は定められたスケジュールに沿って確実に進められる」と強調した。」(時事4月3日)
あくまでも常識的にはとお断りしますが、トランプが即座に軍事的オプションを取るとは思えません。
それは先日来書いてきているように、韓国・日本に対する「返り血」が大きすぎるからです。
韓国に対する報復ミサイル攻撃は、いかに激しい空爆をしたとしても防ぎ切れませんし、その場合、ソウルは壊滅的打撃を受けます。
日本に対しても、最悪の場合、核攻撃を受ける可能性も否定できません。その場合、米軍家族も巻き込んで、数万の人が死ぬでしょう。
この対価をトランプが払う気があるなら、としか私にはいいようがありません。
私は最悪シナリオを描くタイプなので、現時点では「大統領閣下、思い止まってください」と叫びそうになります。
日本政府が駐韓大使の一時帰国を解除しましたが、当然です。
日本政府は口には出しませんが、米国政府がこの軍事オプションを取る可能性を考慮しています。
その場合、在韓国大使館・領事館は、最大の能力を出し切って在留邦人保護に当たらねばなりません。
大使が不在で済まされる状況ではなく、日韓が緊密に連携して対処せねばならない非常事態なのです。
このような緊迫した状況下で、小学校だ、豊洲だ、昭恵さんだぁ、と騒いでいられる人たちが羨ましいくらいです。
あるいは韓国人のように、「安倍は3カ月で白旗を上げた。大勝利だ」と喜んでいられる神経もうらやまし~い。
こういう心を平常心というのでしょうか(言わねぇよ)。
私にしても、楽しい話題でもないので、じつにシンドイい。
その理由は北朝鮮危機に対して、現実にできることがあまりに限られているからです。
できるとすれば、北朝鮮と戦闘状態に入った米軍の後方支援に限定されてしまいます。
たとえば、米海軍艦船への給油・給水、米軍補給物資の輸送、艦艇の修理、基地警備の強化などは日常的にやってきたことですから、簡単でしょう。
ただこれも、後方の公海上に位置するイージス艦や空母などには補給ができても、戦闘が予想される区域に入っていく強襲揚陸艦に対してはできません。 まぁ、佐世保が近いのが救いですが。
では、遭難した米軍兵士の救助や捜索が可能かといえば、それもできません。
日本政府は、今回の南スーダンPKOでわかったように、自衛隊が活動できる範囲を非現実的なまで切り縮めて解釈しているからです。
①戦闘が起きていない地域、②当該政府が活動を認めた場合のみ、しか活動できないのです。
ですから、米軍兵士がその区域の外で遭難してSOSを発信しても、自衛隊は救助することができません。
これがわかったら、トランプならずともおそらく米国世論は激昂するでしょうね。
「なぜ、お前の国を守っている米国の青年をその手段がありながら、助けないのか」と。
また、日本は世界でもトップクラスの4個掃海隊を保有する能力を持っています。
一方米海軍の極東海軍力の大きな穴は、意外と知られていませんが、この掃海能力がスポンと抜けていることです。
この穴を知りつつ、米軍が補強しないのは海自の能力を作戦構想の一部に既に組み込んでいるからです。
北朝鮮は、米海軍の強襲揚陸艦を接近させないために、韓国や北朝鮮の港湾や、海上ルートに大量の機雷をバラ撒くでしょう。
上の写真は正恩将軍座乗艦ですが、ほとんど浮くスクラップです。
北朝鮮は小型潜水艦を沢山持っていますが、あれは機雷敷設専用だと言われています。
では、海自がどこまで掃海隊を派遣できるのかといえば、公海上か日本領海内で、せいぜいが対馬海峡の日本領海内の海域にすぎません。
米海軍に対してそこまで見送って、あとはがんばってくれと帽子を振るしか自衛隊はできないのです。
もし強襲揚陸艦が機雷で破損して作戦に支障が出たら、お前の国の掃海艇は床の間の飾りものかと言われるでしょうね。
ちなみに、日本は朝鮮戦争の折、当時海保所属だった掃海艇を「日本特別掃海隊」として編成し、北朝鮮軍が占領する仁川港正面の水路にで決死的掃海作業をした結果、国連軍上陸部隊の進入路を拓きました。
日本特別掃海隊 - Wikipedia
当時、この能力を持つのは日本しかおらず、海保に56名の犠牲者まで出しています。
彼らの存在がなければ、仁川上陸作戦から始まる反攻作戦は失敗し、朝鮮半島は北朝鮮の支配下に置かれたかもしれません。
朝鮮戦争に日本が本格参戦する代償だったわけですが、尊い犠牲です。
もう一度日本がこのようなことをやれるかどうか・・・。
さてここまでは米軍支援でしたが、韓国に3万人と言われる在留邦人救出はどうでしょうか。
自衛隊は既に、上の写真でも報道公開されている「誘導隊」という在外邦人救出専門部隊を編成しています。
第1空挺団を中核にして、各地の普通科連隊に編成されています。
ではこれで一安心かといえば、そうではなさそうです。
自衛隊誘導隊は、数個小隊で編成され,輸送機(艦)で現地に急派されます。
しかし、行けるのは空港や港までです。
そもそも、韓国政府がムン・ジェインのような反日親北派の極左(これはレッテル貼りではありません)に握られた場合、救出機(艦)を受け入れてくれるかさえもわかりません。
自衛隊員としては、戦火の中で逃げまどう邦人が集まっているであろう大使館や領事館に直接に行って、その名のとおり安全地域まで「誘導」したいと熱望するでしょうが、出来ません。
なぜなら、先ほど述べたように、「戦闘地域」だからです。
ですから、自衛隊は「戦闘地域外」の空港や港湾で、決死の思いで逃げてくる邦人をただひたすら待っているしかないのです。
おそらく米軍は自国民救出のために海兵隊チームを派遣するでしょうから、それに混ぜてもらって逃げるしかないでしょう。
そもそも極左韓国政府が日本の救援機(艦)を拒否した場合、米軍機(艦)に便乗させてもらうしかありません。
その場合当然、米軍は自国民の保護を優先しますから、取り残されても文句は言えないでしょう。
おそらく沖縄地元紙は、「自衛隊は国民を守らなかった。日本政府は見殺しにした」とでも書くのでしょうね。目に浮かびます。
書いていて口の中に苦い汁が湧いてくるようですが、これが私たちが生きる日本という国の現実です。
自国民すら見殺しにして恬として恥じない、「平和憲法」を持つ国を作ってしまったことを恨むしかありません。
とまれ私は、抽象的になりがちな核武装論議より、今、眼前にある北朝鮮危機を具体的に見たほうがよいのではないかと思います。
とはいえ、週刊誌国会が続いているわが国では、もはや出たとこ勝負、待ったなしで対応することになるのでしょう。
昨日の記事は、こういうオプションもあるが、まぁそうとうに難しいだろうな、というかんじで書いていました。
というのはこの北朝鮮問題には、完全な解決が存在しないからです。
まず前提として、北朝鮮という国がどのような国かを押さえておきましょう。
私はかの国は国家の衣を被ったカルト宗教集団だと思っています。彼らはマルクス主義の用語は使いますが、まったく関係ない疑似宗教国家です。
あんなものを共産主義といったら、泉下でマルクス翁が怒ります。
オーム真理教は疑似国家でしたが、あちらはほんものの国家の体裁をして国連にも加盟し、ホンモノの軍隊を持ち、ホンモノの核兵器を持っているから困るのです。
さて北朝鮮が崩壊するためにはいくつかの条件が必要です。
ひとつめは、中国が北朝鮮をこれ以上放置できないと考えた時。
ふたつめは、米国が北朝鮮をこれ以上放置できないと考えた時。
みっつめは、内部崩壊。
最初にみっつめの内部崩壊からいきますが、現時点ではありえません。
張成沢が存命していたらあるいは、と思いますが、あのような秘密警察を張りめぐらせたカルト国家が内部崩壊することは考えにくいと思われます。
そこでひとつめの中国の思惑ですが、微妙です。
結論から言えば、私は北朝鮮と中国は共犯関係にあると思っています。
今回、金正男暗殺事件で中国も怒っているという見方が一部で出ましたがナンセンスです。
まったく中国は怒っていません。本心から正男を重要だと思っていたなら、中国は張りつきガードを着けたでしょうし、そもそもマカオから出さなかったはずです。
それどころか、金正男暗殺直後の2月28日から3月4日まで北朝鮮外務次官・李吉聖が北京を訪問して、ティラーソンとも会った王毅とも和気あいあいと会談しています。
本気で怒っていたら訪中すら不可能だったはずで、会談後王毅はこんなとぼけたことを言っています。
「中朝の伝統的な友好をしっかりと発展させることが中国の一貫した立場だ。北朝鮮との意思疎通を強化したい」
そして李の帰国後2日目に、北朝鮮は「日本の米軍基地を標的とする」と公言して、4発のミサイル同時発射をやってのけます。
李は当然中国当局に対して事前通知したはずで、了解を得ています。
それは攻撃目標を明示したことでわかります。
北朝鮮の弾道ミサイルは方角を変えれば、中国の政治・軍事中枢を攻撃可能なので、李は中国に対してではないということを明確に通知する必要があったのです。
中国は、北朝鮮の暴走を自国の国益と捉えているふしがあります。
正恩に一定の範囲内で暴走させて、米国を困らせることで妥協を得ることが、中国の戦略です。
こう考えると、中国は「困った、困った、もう許せない」といいながら、内心はベロを出していると思ったほうが正解でしょう。
次に米国ですが、中東に戦力を取られているために、朝鮮半島で戦端を切る余裕はないはずです。
本心を言えばやる気はないと見るべきでしょう。
ひとことで言えば、昨日も書きましたが、北朝鮮による攻撃によって、韓国と日本が受ける「返り血」のほうが大きいからです。
純粋に軍事的な観点からみても、横須賀と岩国を核攻撃された場合、米国の国際戦略が根底から崩壊するからです。
ここで、北はもう一枚のカードを切ってきました。
新型ロケットエンジンの開発によって、ICBM保有へ進むことを宣言したのです。
やがてこれはMIRV(多弾頭ミサイル)技術を保有するレベルまで進むでしょう
MIRV - Wikipedia - ウィキペディア
そうなった場合、いかに米国といえどこれを防ぎきることは相当に難しくなります。
つまり、北朝鮮は第1撃の先制中距離弾道ミサイルと、米国の報復を受けた場合の第2撃ICBMの双方を持とうとしているのです。
伝統的手法としてこのような場合、米国は相互確証破壊を取るしかなくなります。
相互確証破壊 - Wikipedia
相互確証破壊理論に基づいて、核の均衡を北朝鮮との間に結び、その上で核軍縮協議に入ることになります。
以上、私は正恩がカッとして撃つ、あるいはトランプが切れて攻撃するという属人的要素をあえて無視して述べました。
実は、このキャラ的要素が前面に出るのが北朝鮮問題なのですが、そこばかり強調される報道が余りに多いので、今回は捨象しました。
これが昨日私が書いた、「米朝平和交渉もありえる」ということの説明です。
道は3択です。
ひとつは相互確証破壊のレベルに達するまでに、この危機の根源であるカルト国家の三代目教祖を除去する。
ふたつめは、核保有国であることを認めて、核軍縮協議の道に入る。
みっつめは、なにもしない。
トランプなら1番目、ヒラリーなら2番目と言いたいところですが、正直私にもわかりません。
みっつめは中国が既に選択しています。
いずれにせよ、あと数カ月でどちらなのか私たちにもわかるはずです。
HN「はてな」さんのご質問にお答えする形で考えていきます。
「アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、韓国や日本に多大な被害が生じます。平和的解決には、北朝鮮が以前から求めている通り、米朝が平和条約を締結するべきだという声についてはどう思われますか?」
まず皆さんに頭に置いてほしいことは、現実にいつ米軍が北朝鮮に対する斬首作戦と空爆を実施してもおかしくない瀬戸際の状況だという状況認識です。
トランプはこう言っています。
「北朝鮮の脅威への対処に、きわめて高い優先順位(ベリー・ハイ・プライオリテ イ)をあたえねばならない」
また昨日、麻生財務大臣はこう述べました。
「麻生太郎財務相は31日の閣議後記者会見で、北朝鮮情勢に関して「いま日本の新聞が書いているより深刻じゃないか」と述べた。仮に有事が起きた場合、朝鮮半島から難民が日本に流入する可能性について「ゼロではない」としたうえで、経済にはマイナス影響になるとの見方を示した。
麻生氏は「(朝鮮戦争のあった)昭和25、26年、おれの住んでいる筑豊、北九州じゃ『北朝鮮機が入ってきました。電気は消してください』というのをやっていた」と説明。
「今度は(ミサイルに)核弾頭がついているという話になると、規模の大きなことになりかねないから、それに備えないといかん」と話した」(産経3月31日)
あいかわらず、麻生さんらしいざっくりとした物言いですが、政府中枢は警戒レベルを最高度まで高めているのは確かでしょう。
ティラーソン国務長官から、そうとうに突っ込んだ情報を提供されているものと思われます。
今になると、南スーダンのPKO撤収も、朝鮮半島有事に際して、あちらでも同時期に「戦闘」が起きたら対応しきれないという読みがあったと考えるほうが妥当です。
現時点で政府と国会で詰めておかねばならないことは山ほどありますが、とりあえずざっと以下です。
第1に、朝鮮半島有事が起きた場合、在韓邦人約3万人をどのように救出し帰国させるのか。
第2に、韓国政府は自衛隊機・邦人保護部隊の派遣を認めないでしょうから、民間機や米軍にどのような依頼と支援をするのか。
第3に、その場合の自衛隊の集団的自衛権の範疇の支援体制。
第4に、国民の避難訓練などの保護措置。
第5に、朝鮮半島からの避難民に対する保護はどのようにするのか、あるいはブロックするのか。
第6に、拉致被害者の救出をどのように行うのか。
もちろん弾道ミサイル防衛などは、前提ですので省きます。
いま国会で論議しないということは、現実の鉄火場において政府がフリーハンドでやっていいということと同義ですが、民進党とメディアの皆さん、ほんとうにそれでよろしいのですね。
そうなった場合、森友祭は高くつきましたね。
さて、枕が長くなりましたが、冒頭の「はてな」さんの疑問について考えてみましょう。
米国は北朝鮮が前回の4発同時ミサイル発射のような攻撃を日本に仕掛けた場合、日本に迎撃する能力がないと考えています。
考えたくない想像ですが、三沢、岩国、佐世保のいずれか、最悪な場合はそれらすべてに核ミサルが着弾する可能性は捨てきれません。
トランプはおそらく苦慮していると思います。
トランプのつらさは、これまで20年間に渡ってクリントン、ブシュ、オバマなど歴代米政権の宥和主義が無残な失敗に終わり、北朝鮮の核武装を完成させてしまったツケをまとめていま払わされていることです。
確かに北朝鮮を攻撃する準備はできています。
北朝鮮の核施設を破壊する外科的軍事攻撃(サージカル・ストライク)を実施することは、技術的には可能です。
いかに地下深く隠しても、それを破壊するEGBU‐28などのバンカーバスター(地中貫通爆弾)も保有しています。
地中貫通爆弾 - Wikipedia
再突入体を見る正恩。この無邪気な笑いが怖い。
しかし問題はそこにはないのです。
肝心要の正恩がどこにいるのかわかりません。
米軍は北朝鮮に対する偵察をシギントにたよっています。シギントとはシグナル・インテリジェンス、つまり人工衛星や電波傍受などの手段による情報収集のことです。
影武者は独裁者の常として数人いるでしょうし、北朝鮮国内での米韓のヒューミント(人間を媒介にした諜報活動)網はきわめて貧弱だと言われています。
北朝鮮のミサイル基地を叩くといっても、多くは山中の洞窟か深い森林の中に巧妙に移動式発射装置(TEL)に搭載して潜ませているでしょう。
この移動式発射装置は、かつての湾岸戦争でイラクが多用したものですが、特殊部隊を沢山入れて、しらみ潰しに位置を特定せねばなりません。
北朝鮮のような秘密警察の眼が国中に光っている国で、その潜入は大変な困難を強いられることでしょう。
移動式発射装置
次に、問題は「はてな」さんも指摘する副作用です。
日本に対するミサイル発射のみならず、正恩はソウルのすぐ北の軍事境界線に沿っ て砲列を敷いている砲兵部隊に攻撃を命じるでしょう。
ソウルは今までの再三の脅迫どおり、「無慈悲な火の海」となり、大規模なパニックが時起きます。
いまでさえ、ティラーソンを怒らせたほど脳死状態に近づいている韓国政府に、これを押さえる力はありません。
3万の邦人はこのパニックの大群をかきわけるようにして脱出せねばならないのですが、現在の日本にそれを救助する手だてはありません。
すべて米軍頼みです。
またもうひとつの難点は、中国の好意的中立をあまり期待できないことです。
訪中したティラーソンに対して、中国の王毅外相は北朝鮮問題でアメリカとの協力姿勢を示した一方、北朝鮮への軍事的オプションにはあくまでも反対であり、「平和的解決には外交的手段が必要だ」と述べたといいます。
中国にとって北朝鮮はなくてはならないバッファ・ゾーン(緩衝地帯)なのです。
もし北朝鮮がなくなれば、鴨緑江の線まで米軍が進出し、米中は海上だけではなく陸上でも直接対峙することになるからです。
これは中国にとって悪夢以外何ものでもありません。
だからこそ中国は、常任理事国でありながら北朝鮮制裁を裏で破って石油供給を続けてきたわけです。
このように北朝鮮政策はほとんど手詰まりというのが実態ですが、唯一かすかな可能性があるとすれば「はてな」氏が言う平和条約です。
これは、北朝鮮の主張と一緒ですが、トランプがそれしか方法がないと決断すれば、その可能性はゼロではありません。
これがヒラリーだったら、オバマとの政策的継続性を重視せざるをえませんから(というかヒラリー自身が国務長官としてやってきたことですが)、またぞろ6カ国協議などと言い出しかねませんが、トランプはその縛りから自由だということです。
むしろトランプは、積極的に民主党政権時の枠組みを破壊したがっています。
しがらみなきトランプが、北朝鮮の目標はインド・パキスタン型の核保有であって、国際秩序を破壊する意図がないという担保を取り付けられさえすれば、あるいは核軍縮交渉もないとはいえません。
思えば、今まで米国はオバマのように、「北は核保有国ではない」という建前にこだわるあまり、この交渉カードが出せず仕舞いだったのです。
トランプが正恩を、保有する核弾頭数・弾道ミサイル数・VXなどの化学兵器の廃棄・射程の制限を議題とする軍縮テーブルに引き出せるならば、可能性は0.001%くらいならあるかもしれません。
まぁ、トランプ自身、選挙戦中に「金正恩委員長と会談してもよい」なんて言っていましたし(後で引っこめましたけど)、北朝鮮はそれが持論ですから案外乗ってくるかもしれません。
今までの中国を議長国としたやくたいもない六カ国協議と違って、二国間交渉なのでトランプの持ち味が発揮できるかもしれません。
もちろん北朝鮮はあのてこのてで交渉合意をチャブ台返しするでしょうが、そんなことをやっている期間中はいきなりミサイルをぶっ放す可能性は減るでしょう。
どうせどこかでデッドロックに乗り上げるでしょうが、時間稼ぎにはなります。その間の北朝鮮内部の変化と国際情勢の動きをみる余裕が生まれます。
この場合に日本に出来ることは、拉致被害者の全員帰還を絶対条件にしての日韓条約並の経済援助といったところでしょうか。
いずれにせよ、この2カ月が峠です。
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