土曜日の記事をもう少し解説します
昨日の記事は、こういうオプションもあるが、まぁそうとうに難しいだろうな、というかんじで書いていました。
というのはこの北朝鮮問題には、完全な解決が存在しないからです。
まず前提として、北朝鮮という国がどのような国かを押さえておきましょう。
私はかの国は国家の衣を被ったカルト宗教集団だと思っています。彼らはマルクス主義の用語は使いますが、まったく関係ない疑似宗教国家です。
あんなものを共産主義といったら、泉下でマルクス翁が怒ります。
オーム真理教は疑似国家でしたが、あちらはほんものの国家の体裁をして国連にも加盟し、ホンモノの軍隊を持ち、ホンモノの核兵器を持っているから困るのです。
さて北朝鮮が崩壊するためにはいくつかの条件が必要です。
ひとつめは、中国が北朝鮮をこれ以上放置できないと考えた時。
ふたつめは、米国が北朝鮮をこれ以上放置できないと考えた時。
みっつめは、内部崩壊。
最初にみっつめの内部崩壊からいきますが、現時点ではありえません。
張成沢が存命していたらあるいは、と思いますが、あのような秘密警察を張りめぐらせたカルト国家が内部崩壊することは考えにくいと思われます。
そこでひとつめの中国の思惑ですが、微妙です。
結論から言えば、私は北朝鮮と中国は共犯関係にあると思っています。
今回、金正男暗殺事件で中国も怒っているという見方が一部で出ましたがナンセンスです。
まったく中国は怒っていません。本心から正男を重要だと思っていたなら、中国は張りつきガードを着けたでしょうし、そもそもマカオから出さなかったはずです。
それどころか、金正男暗殺直後の2月28日から3月4日まで北朝鮮外務次官・李吉聖が北京を訪問して、ティラーソンとも会った王毅とも和気あいあいと会談しています。
本気で怒っていたら訪中すら不可能だったはずで、会談後王毅はこんなとぼけたことを言っています。
「中朝の伝統的な友好をしっかりと発展させることが中国の一貫した立場だ。北朝鮮との意思疎通を強化したい」
そして李の帰国後2日目に、北朝鮮は「日本の米軍基地を標的とする」と公言して、4発のミサイル同時発射をやってのけます。
李は当然中国当局に対して事前通知したはずで、了解を得ています。
それは攻撃目標を明示したことでわかります。
北朝鮮の弾道ミサイルは方角を変えれば、中国の政治・軍事中枢を攻撃可能なので、李は中国に対してではないということを明確に通知する必要があったのです。
中国は、北朝鮮の暴走を自国の国益と捉えているふしがあります。
正恩に一定の範囲内で暴走させて、米国を困らせることで妥協を得ることが、中国の戦略です。
こう考えると、中国は「困った、困った、もう許せない」といいながら、内心はベロを出していると思ったほうが正解でしょう。
次に米国ですが、中東に戦力を取られているために、朝鮮半島で戦端を切る余裕はないはずです。
本心を言えばやる気はないと見るべきでしょう。
ひとことで言えば、昨日も書きましたが、北朝鮮による攻撃によって、韓国と日本が受ける「返り血」のほうが大きいからです。
純粋に軍事的な観点からみても、横須賀と岩国を核攻撃された場合、米国の国際戦略が根底から崩壊するからです。
ここで、北はもう一枚のカードを切ってきました。
新型ロケットエンジンの開発によって、ICBM保有へ進むことを宣言したのです。
やがてこれはMIRV(多弾頭ミサイル)技術を保有するレベルまで進むでしょう
MIRV - Wikipedia - ウィキペディア
そうなった場合、いかに米国といえどこれを防ぎきることは相当に難しくなります。
つまり、北朝鮮は第1撃の先制中距離弾道ミサイルと、米国の報復を受けた場合の第2撃ICBMの双方を持とうとしているのです。
伝統的手法としてこのような場合、米国は相互確証破壊を取るしかなくなります。
相互確証破壊 - Wikipedia
相互確証破壊理論に基づいて、核の均衡を北朝鮮との間に結び、その上で核軍縮協議に入ることになります。
以上、私は正恩がカッとして撃つ、あるいはトランプが切れて攻撃するという属人的要素をあえて無視して述べました。
実は、このキャラ的要素が前面に出るのが北朝鮮問題なのですが、そこばかり強調される報道が余りに多いので、今回は捨象しました。
これが昨日私が書いた、「米朝平和交渉もありえる」ということの説明です。
道は3択です。
ひとつは相互確証破壊のレベルに達するまでに、この危機の根源であるカルト国家の三代目教祖を除去する。
ふたつめは、核保有国であることを認めて、核軍縮協議の道に入る。
みっつめは、なにもしない。
トランプなら1番目、ヒラリーなら2番目と言いたいところですが、正直私にもわかりません。
みっつめは中国が既に選択しています。
いずれにせよ、あと数カ月でどちらなのか私たちにもわかるはずです。
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アメリカの北朝鮮攻撃が差し迫っているかのような論調に違和感を覚えたのですが、今回の記事には完全に同意します。北朝鮮と中国は共犯で、アメリカはやる気なしと。
というかむしろ、最近の北の急激な核・ミサイル開発の進展は、中国が陰で技術的に援助しているとしか思えません。それとも北に単独で核・ミサイル開発を進める国力があるのでしょうか。
アメリカも日本を安心させるために、日本を守る演技をしているだけのようにも思えます。
核武装した北や軍拡を続ける中国と今後長く向き合っていかねばならないと考えると憂鬱になります。最近九条護憲派の評判が悪くなっていますが、もともと九条にあった日本のアジア侵略に対する謝罪としての意味が失われ、むしろ日本のほうが周辺国の軍事的脅威にさらされるようになって、立場が入れ替わるようになったのです。
投稿: はてな | 2017年4月 2日 (日) 08時42分
色々と考えることが多すぎて、困っております。そこで過去の議論の蒸し返しですが、核保有論についてもう一度取り上げられないでしょうか。
今の状況では、まったくのアメリカ頼みであり、国の命運を条約のみに委ねてしまっております。これが私には不安でです。北朝鮮や中国が日本を威嚇するのであれば、それに対抗してわが国が核武装をしてみるのです。核による核抑止力が効くのであればそれを保持してみませんか? 「ありんくりん」さんや山形さんが核保有反対のご意見であることは承知しておりますが・・・・・。
わたしは、北朝鮮が暴発する可能性もあるという前提に立っておりますが、暴発は絶対にないとはだれも言えないことでしょう。国会がこの時機に森友の問題を一生懸命論じていられるのもアメリカが核の傘をシッカリと差してくれるという感覚であり他国頼み、中国が北朝鮮を制御してくれるだろうの他国頼みばかりです。
日本も核武装をして、アメリカとの同盟国として対等なパ-トナ-になることは可能ではないでしょうか? トランプ政権なら日本の核保有も認めるのではないのか。私には、今の日本の状況は、平和憲法の前文にある精神を実行しているとしか思えません。主体的な日本を取り戻したい。
投稿: ueyonabaru | 2017年4月 3日 (月) 00時29分
個人的にはテロ対策法案の方が気になりますけどね。
投稿: 中華三振 | 2017年4月 3日 (月) 00時49分
ueyonabaru様に同意します。
昨日からいろいろ意見が出ましたが、肝心の日本が何をするかの意見が無いのは不満です。
思えば日清戦争だって、清の無理難題と朝鮮半島の事大主義が原因です。最低限自分の国は自分たちが守るぐらいの気持ちが必要です。そのために何をするのか。日本国民にはハードルの高い課題です。日本を取りまく環境は日清日露戦争当時と何ら変わりません。
核武装にしても慎重に根回ししても、国の内外から相当の圧力は必至です。その中でも日本がどのように生きていくか答えを出さないといけないと思います。
最低限憲法の改正は必要です。
国民に信を問うのも一つの方法です。アメリカが戦争に疲弊している今こそ憲法改正論議が必要です。
イザ朝鮮半島有事の際、弱体化したアメリカが朝鮮戦争の様に介入できる保証はありません。
憲法を忠実に守って国が滅んだらバカすぎます。
中国の動き、北朝鮮の動き、アメリカの動き、貿易立国日本の立場とありんくりん一筋縄ではいかないが避けては通れない日本の道です。その最重要課題を日本は先延ばししてきました。これ以上は無理です。
あまり上品な言葉を使う必要もない無いでしょう。
日本に手を出したら10倍にして返す。そのメッセージが必要です。口だけでなく相手が小便ちびるぐらいの強力なメッセージが必要です。
投稿: karakuchi | 2017年4月 3日 (月) 01時59分
強力なメッセージが必要と書きました。
最近自治体が、朝鮮学校への補助金を打ち切っています。
まだまだ、生ぬるいですね。そういうと必ず綺麗な言葉で子供達には罪はない。とか教育を受ける権利を侵害してはいけない。という人間が出てきます。
その人たちに言いたい。自分の住んでいる地域にミサイルが撃ち込まれ身内が亡くなっても同じことがいえるなら本物だと。
投稿: karakuchi | 2017年4月 3日 (月) 02時08分
憲法改正は必要ですが、国際社会の反対など、日本の核武装はハードルが高すぎます。非核三原則を崩して核持ち込みを認めるか、ニュークリアーシェアリングあたりが妥当でしょう。
平和ボケも困ったものですが、「完全な解決が存在しない」問題に性急に答えを出そうと焦るのもよくありません。北朝鮮への先制攻撃は真珠湾奇襲と同じような愚策でしょう。イスラエルがイラクのオシラク原子炉を破壊できたのとは異なり、北朝鮮はソウルを火の海にし、日本にも被害を与える力を既に保有しています。
米ソの冷戦は半世紀近く続いたが、熱戦には至らず、最終的にはソ連崩壊で決着がつきました。日本にも北や中国の体制変更を根気強く待つ忍耐力が求められているような気がします。
投稿: はてな | 2017年4月 3日 (月) 05時35分