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北朝鮮危機 北朝鮮に核放棄させるためには原油と金を制裁せねばならない

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先週から違和感かあった右掌が、とうとう昨日激痛。いや、痛いの、痛くないのって。一時は箸も持てないあり様でした。 

右手が使えなければ仕事はできない、記事も書けないわけで、さすが病院嫌いの私もふっ飛んで行きました。 

レントゲンなど撮られましたが、筋や腱は大丈夫とのこと。腫れ止めと痛み止めをカバに食わせるほどもらって、いまは回復こそしていないもののなんとかキイボードていどは打てるようになっています。お見舞いありがとうございました。 

それにしてもああいう時に荒らしが来ると、ガクッと疲れますな。山路さんにまでご迷惑をおかけして申しわけありませんでした。 

さて、気を取り直していきましょうか。 

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北朝鮮情勢で見落とされがちなことがひとつあります。北朝鮮の命綱です。 

え、核兵器?う~ん。化学兵器?う~ん。どちらも怖いのは確かですが、核兵器を先制使用するほど状況が煮詰まっているとは思えません。 

核を使うのはギリギリの土壇場。ピョンヤンが炎上し、正恩がテンパってどうせ滅びるならもろともと思う時です。手下たちが口で勇ましいことを言っているうちは撃ちません。 

化学兵器は、弾道ミサイルが再突入する際の温度はなんと7000度といわれていますから、化学兵器が変質して使用不可能になると思われます。 

そもそも北朝鮮が、再突入技術という核ミサイルの必修過程をパスしたかどうかすらよく分からないのです。http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/03/18/0900000000AJP20160318004400882.HTML

「韓国国防部の韓民求長官によると、専門家らは大気圏再突入時の弾道ミサイルは7000度程度の温度に耐える必要があるため、圧力や振動などの様々な影響を考慮し、この条件を満たす試験をするべきとの見解で一致しているという。
 北朝鮮が公開した実験は弾道ミサイルが実際に大気圏に再突入する時とは大きく異なる条件で行われたため、北朝鮮が再突入技術を確保したとは言えないとの見解を示したものとみられる」(韓国聯合 2016年3月16日)

もちろん日本は彼らが核ミサイルや化学兵器を打ち込んでくる可能性がゼロではない以上、「危機がある」ことを前提に立って、守りを固めねばならないのは当然のことです。 

ではどうやったら、正恩が核や化学兵器をほんとうに保有しているのかわかるでしょうか? 

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フェーク疑惑の出ている北朝鮮ICBM

これは国際査察をする以外に調べる方法がありません。

持っていたら頑として拒みます。核査察はとうぜん核放棄を前提にしていますからね。 

逆に全部フェークならば、これも頑として拒むでしょう。もはや金家家伝の威嚇戦法が使えなくなるからですし、第一、独裁者の体面に関わりますからね。 

どっちに転んでも拒否ですから、正恩が国際核査察を受け入れるように追い詰めていかねばなりません。それも正恩がカッとなってなにかやらかさないように、ジワジワと真綿で首を締めるように「平和的」にです。 

米国は、いやトランプはと限定すべきでしょうが、もちろんその方法に気がついています。

北朝鮮危機を見る上で見落とされているもっとも重要な環は、原油供給の停止です。

私が「 トランプに限定する」と述べたのは、オバマは知ってか知らずか北朝鮮への原油供給の存在を無視し続けてきたからです。

重村智計氏によれば、これをトランプに助言したのは、他ならぬ安部氏だったようです。http://ironna.jp/article/6306 

「「石油禁輸」は、安倍首相がトランプ大統領に強くアドバイスした戦略である。安倍首相は、北朝鮮への効果的な制裁策を聞かれ、「中国の対北石油全面禁輸」を伝えた」
「国と中国のメディアは、12日の米中首脳電話会談で「北朝鮮が核実験とミサイル実験に踏み切れば、中国は石油禁輸を実行する」意向を習主席が伝えたと報じた。画期的な政策転換だ」

既に、北朝鮮はミサイル実験を失敗したとはいえ実施しているわけですから、重村氏の説に従えば、中国は原油供給禁輸を実行していなければなりません。

E9a6ace5b882wikimapiarev4thumbnail2http://kazuohage.sblo.jp/article/164902193.html

中国側馬市村のパイプライン基地(赤丸)から鴨緑江を越えて供給パイプが、対岸の北朝鮮側金山湾油タンク(青丸)に延びているのがおわかりでしょうか。 

ちなみにこのパイプラインの位置は、かつての朝鮮戦争時の中国義勇軍渡河の位置とほほ同じだそうです。※謝辞白血病のハゲオヤジのブログ 

この原油供給パイプラインこそが、ほんとうの北朝鮮の命綱です。

北朝鮮は日本同様に原油の純輸入国で9割を輸入に頼っています。

そのために電力事情が逼迫し、衛星から撮影した東アジアにおいて北朝鮮領内は漆黒の闇となっています。

2014051105365083cNASAが公開した朝鮮半島の夜の画像。北朝鮮は暗闇に包まれている(AP)

韓国中央日報(2017年2月24日)はこう述べています。
http://japanese.joins.com/article/186/226186.html

「中国の石油は北朝鮮にとって、救急室の患者がつけている酸素マスクのような生命線だ。このような事情をエネルギー経済研究院の研究員キム・ギョンスル博士が分かりやすく説明した。
「原油の100%、石油製品の90%を中国に依存している現実で、中国がパイプラインを閉めてしまえば、北朝鮮は数日間しか持ちこたることができない。あっという間に国家システムが崩れ、社会全体が心理的恐慌状態に陥る」

ただし1回止めると再開が難しくなるという要素があります。それは中国原油が粗悪なためにパイプを一回止めると、詰まってしまって再開が困難になるからです。 

「キム・ギョンスル博士の説明によると、大慶産石油にはパラフィン成分が多く、流れていなければ固まるパラフィン粒子がパイプラインにつく。使用を再開するにはパラフィン粒子を溶かす必要がある。時間がかかるということだ」

まぁそのとおりでありましょうが、それはさておき、重村氏は既に止めたのではないかと観測していますが、私ははなはだ怪しいと思っています。

というのは、北朝鮮と中国はハッキリ言えば共犯関係として、中国は北を「中国のナイフ」としてさんざん利用してきたからです。

その証拠に、北朝鮮はミサイル実験と核実験をやりたい放題やってきたわけですが、その間中国はこれを止めるどころか、原油や原子炉部品を売り続けてきました。

それを示した中国からの石油製品輸出と、逆に北朝鮮からの石炭輸入ゆ貿易量推移のグラフです。

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中国の対北朝鮮石炭輸入と石油製品輸出 田村秀男氏による
http://www.sankei.com/premium/news/170225/prm1702250016-n1.html

共に、国際社会がなんと叫ぼうと、国連が制裁を決議しようと馬耳東風。常任理事国の中国が堂々と北朝鮮に石油を売りつける一方、石炭を買い続けており、むしろ増やし続けていることがわかります。

「16年の中国からの対北輸出は石油製品が前年比26%、鉄鋼製品9%、自動車は45%各増と急増している。背景には中国の過剰生産があるはずだ」(田村秀男氏 グラフと同じ)

重村氏はこう指摘します。

「北朝鮮はアジアで最も石油のない国である。この問題の重要さに多くの人は気がついていない。北朝鮮の年間の石油輸入量は、最大でも70万トンである。この90%は中国が供給している。日本の自衛隊が年間消費する石油は年間150万トンに達する。その半分以下では全面戦争はできない」(同)

続いてもう一枚見て頂きましょう。中国の2015年の対北朝鮮輸出の主要品目です。

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この中国の主要輸出品を見ると脱力します。

中国は北朝鮮に対して、電子機器、原子炉、輸送機器、原油、医療、食料など、ほぼすべての戦略物資を供給していることがわかるでしょう。

これで北朝鮮が「制裁」に音をあげる道理がありません。

北朝鮮には小型武器、ミサイル、麻薬、覚醒剤、ニセタバコ、そして石炭ていどしか売るものがありませんが、そんなものは中国には売り先に困るほど余っています。

国というより暴力団ですが、北朝鮮はスーパーKという偽100ドル札まで作っていました。

とうぜんのこととして中国の北朝鮮への一方的貿易黒字となります。(数字は田村氏による)

・2016年中国の対北輸出・・・32億ドル
・同        対北輸入・・・27億ドル
△北の貿易赤字      ・・・5億ドル

では北朝鮮は、この赤字をどう処理しているのでしょうか。中国から金を借りているのです。

このからくりを田村氏はこう分析します。

「不足分は中国からの借り入れでまかなう、つまり中国の金融機関による融資で補うわけで、正恩氏直結の企業や商社、銀行は中国の金融機関との協力関係を保っている」

中国は瀋陽軍区(いまは戦区)の軍、あるいは国営金融機関を通して、正恩系列の企業や商社に融資してきました。

表向きには民生品貿易への融資ですが、その金が市民のためのバスに使われようが、弾道ミサイルに使われようが、金に色はついていません。

北朝鮮はそれをいいことに、中国の銀行を経由して、武器の売買をしていました。

2015年12月、北朝鮮がシンガポールのトンネル会社を使って武器輸出の代金を中国銀行を通して送金してもらっていたことが発覚しました。

これは国際的に反響を呼び、オバマも重い腰をあげざるを得ませんでしたが、上げたのは北朝鮮にだけ。肝心のバックについていた北京にはひとことの抗議の声すらあげなかったのです。

これは米国による、事実上の容認と受け取られました。前掲の貿易推移グラフを見ると15年あたりを境に、一気に急上昇しています。

北朝鮮に対して核と化学兵器の放棄を迫るために制裁したいのなら、正恩の原油と金を抑えねばならないのです。

この件に関して、トランプは習とディールしたようです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170419-35052071-bloom_st-bus_all

「中国はこれまでと同じような取り組み方をしていない。あんな様子はこれまで誰も見たことがない。わが国のためにあれほど前向きな立場を中国が取るのを目にしたのは誰もいない」(ブルーミングバーク4月19日)

米国は中国を為替操作国認定しないかわりに、中国に原油輸出の停止を要請したと考えられています。

メディアは北の石炭輸出ばかり取り上げて、「北朝鮮に制裁強化」などと報じていましたが、どうしてこうも目がガラス玉なのでしょうか。

大事なことは輸出ではなく輸入。それも原油の輸入なのです。

また保守の皆さんも、「うわー、米国が中国に接近した。尖閣を忘れたのか」、なんて騒がないこと。ディール好きなあの大統領相手に右往左往していたら身が持ちませんよ。

そもそも、中国に北への原油止めるというプランは、安部さんがトランプに入れ智恵したらしいですからね。

■渡部昇一先生がお亡くなりになりました。先生と私は多くの点で意見を異にすることもありましたが、先生のリベラルな「自由主義」を基礎にした保守の精神には多くを教えて頂きました。
ご冥福をお祈りいたします。

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コメント

先の戦争で、日本が対米開戦を決めたのが、石油の輸入を止められたからだった記憶があります。生命線である石油が止まることは、国家の存亡に直結するのは、今も昔も同じなのでしょうが、北が石油を止められた場合、素直に核を放棄してくれるでしょうか?中国の根回しがしっかりしていて、核放棄と体制の維持みが確約されることが一番なのだとは思いますが、果たして今の将軍様がそれを信じるか?逆に、窮鼠猫噛みにならないか?
いずれにしても難しいかじ取りがこれからも続くのでしょうか。

投稿: 一宮崎人 | 2017年4月19日 (水) 12時01分

まず、一宮崎人さんと同じ事を考えました。
しかし同時に、米軍がそうしたリスクに思い至らないはずもない、と感じました。

 ところで、仮に中共により「石油」を一切止められて、金融も「全く停止」となると、その事に対する北の「恨」の矛先は主として何処に向かうか?
 それは、今まで生かしてくれた恩人にも関わらず、まず間違いなく「中共」に向かうだろうと考えられ、そのような特殊な精神構造を有するのが歴史的にみても彼らの民族的特徴と考えます。
 
 合理的に考えても、継戦に必要な「石油」を最短距離で手に入れる方法は中共から以外なく、この戦い(あるとすれば、ですが)の端緒は「石油を得る為の戦争」に性質が変わる可能性がありますね。
(米国はまさに「そこを狙っている」のではないか)
 
 そうすると、ほとんどの「リスク」は中共に転嫁されるのであって、その対処も主として中共が負うハメになる。
もっとも、こうなった責任の大部分がもともと中共にあるのですから、「当然」と言えば当然です。
 ここらへんの事情ゆえに、中共に必ず石油禁輸や金融引き締めを実行させるプレッシャーを与えるため、トランプ氏が最近嫌らしいくらいやたらと習近平を持ち上げる理由なのかと。

 そこまで考えて安倍氏が「石油のストップ」を進言したのなら、これはとんでもなく恐ろしい総理であり、同時に史上かつてないクレバーな素晴らしい総理大臣だと言えますね。

私の妄想に過ぎないかも、ですが。


投稿: 山路 敬介(宮古) | 2017年4月19日 (水) 17時16分

宮崎人さん、山路さん。
あるでしょうね。

いまごろになって中国は、自分は中国は「キープレーヤーではない」などと言っています。
笑ってやりましょう。そんなこと今さらいうなら、この話合いとやらで「失われた20年間」はなんだったんだと、ね。
 
一方トランプは押し被せるようにして、「いやー、習はいい奴だ。やるべきことを分かっている」みたいな発言を繰り返しています。
じつにエグイ。
面白いというのはナンですが、面白いですね。

もはや、米国にとって焦点は北朝鮮ではないのかもしれません。
今まで「鋭いナイス」としてアブナイ手下として使ってきた北朝鮮が、三代目になって今までの東洋的阿吽の呼吸が効かなくなったのかもしれません。

正恩は中国に呼ばれても行こうともしません。毒を仕込まれることを恐れているにしても、これが宗主国に対する態度かと思いますが、じつに面白い。

私は山路さんのいう、安部氏の提唱したという中朝分断戦略をトランプが採用したのかもしれない思い始めています。
北朝鮮危機を奇貨として、中国が気がついてみたら周りは敵だらけ、北朝鮮すら牙を剥くくというかんじでしょうか。

安部氏は、エドワード・ロトワックをして、「専門的な勉強をしていないのに関わらず天性の戦略家」と言わしめた人ですからね。

私は先週末に堂々と花見をした首相の胸の内を知ってみたい気がします。

投稿: 管理人 | 2017年4月19日 (水) 17時43分

中国が北朝鮮に輸出してる大慶油は、常温ではちょうど水ようかんのように固着してしまう原油であり、これを防ぐには、常に32.5℃以上に加温しておかなければなりません。
仮にパイプライン内に大慶油が残ったまま送油を停めてしまえば、パイプライン内の大慶油が冷えて固着し、再開するのは非常に困難になります。

したがって、大慶油のような性質を持つ原油を運ぶタンカーは、原油タンクやパイプラインの表面に、高温の蒸気を通す細いパイプを巻き付けて24時間加温し続け、またパイプラン内に残った原油を取り除くポンプ等も持っているのですが、中国と北朝鮮を結ぶパイプラインにそのような設備はおそらくないでしょう。

2003年1月に北朝鮮がNPTからの脱退を宣言した直後、
中国が関係各国との協議に応じるよう圧力をかけるため、数日間このパイプラインを停めたとも言われていますが真偽の程ははっきりしていないようです。

いずれにせよ、一度送油を停めれれば二度と再開できないかもしれないパイプラインであるので、中国にもしその気があれば、実際に停めなくても、「弾道ミサイル発射か核実験のいずれかを行えば送油を停める。その後はどうなっても知らないよ」と伝えるだけで効果はあるのではないかと思われます。あとは、中国がその気になってくれるかでしょうね

投稿: 不快害虫 | 2017年4月19日 (水) 18時32分

カール・ヴィンソンご一行が実はオーストラリア海軍との演習のため朝鮮半島とは逆のインド洋へ向かっている。
今日これを聞いてズッコケたのは私だけじゃないですよね。


総理の桜を見る会やGINZA SIXなどの行事を見ても平和な日常、マスコミに報道されているような北朝鮮の緊張は誤報に近いのかと。


>そこまで考えて安倍氏が「石油のストップ」を進言したのなら、これはとんでもなく恐ろしい総理であり、同時に史上かつてないクレバーな素晴らしい総理大臣だと言えますね。

山路さん凄い!
北朝鮮をダシにした中国イジメだとしたら愉快です。


北朝鮮の脅威に変わりはありませんけど。

投稿: 多摩っこ | 2017年4月19日 (水) 18時38分

管理人さん、右掌お大事になさってください。
私も一昨年親指CM関節症で苦労しました。

トランプが誰かを誉め殺す時は相手に無理をさせる時、なのかもしれませんね。
であれば、日本もきっと引き受けている難題があります。でも国交交渉とはそういうもので、国内法を整備しながら経済を落とさないよう踏ん張って凌ぐのが具体的な道だと思います。
昨日の花びらの写真、素敵てした!

投稿: ふゆみ | 2017年4月19日 (水) 21時28分

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