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2017年5月 3日 (水)

いつまでフランス国民戦線を「極右」と呼ぶのか

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新稿を起こそうかと思いましたが、まとまった形になっている2015年12月14日記事を再録することにします。

日本のみならず、世界での国民戦線に対してのバイアスはひどく、これではなぜ彼らが台頭し得たのかをまったく説明できなくなります。

マリーヌ・ルペンが父親にして創設者だったジャンを除名してまで、党改革をしたことを知るべきです。

さらに、マリーヌは今や、国民戦線の代表を下りてまで決戦投票に望もうとしています。

私は彼らの支持者ではありませんし、急進的なEU離脱はリスクがあまりにも高いでしょう。

しかし、メルケルが掲げている超緊縮財政は、財政均衡の美名の下にドイツ以外のヨーロッパ経済全体を長く不況にさらしてきました。

難民しかり。ISテロしかり。

主権国家が国境管理を放棄することがいかに大きな失敗だったのか、移民に依存した経済を作ることがいかに危険だったことだったのか、フランス人は身に沁みているはずです。

フランス国民の2割を越える人たちがEUという巨大グローバリズムから離脱をしたいと望み、ナショナルを掲げる彼女に投票したという事実を直視すべきだと思います。

これを「ネオナチ」「ファシスト」のひとことで切り捨ててきたつけが、いまようやく回ってきたのです。

今回は「フレグジット」は避けられるでしょうが、その後の国民議会選挙で、国民戦線は大きな位置を占めるはずです。

あるいはフレグジット党のような勢力を作り、国民戦線を発展的解消するかもしれません。

国民戦線は暖簾の古い党派ですが、「極右」の手垢がつきすぎました。

フレグジットと金融緩和・財政緩和・難民・移民対策に絞り込んだ新党にしたほうがいいかもしれません。

ユーロから離脱しフランに回帰する激痛に耐えることができる方法と展望を彼らが提示できれば、その波紋はスウェグジット(スウェーデン)、スペグジット(スペイン)と続き、やがて盟主ドイツ自身のジャーグジット(ドイツ)で終了します。

その後にゆるやかな国家間経済政治の協力関係は生れるかもしれませんが、二度とドイツ「第4帝国」もどきのものは生れることはないでしょう。

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それにしても嘆息してしまいますが、山路さんもおっしゃるように、日本の不幸はイギリスのメイ首相、そしてまたマリーヌ・ルペンのようなリアリズムに立脚した強かにしてチャーミングな女性政治家を日本が持たないことです。 

蓮舫氏、稲田氏、そしてあるいはと思わせた小池氏しかり。ああ。

                        ~~~~ 

フランス国民戦線(FN)について、もう少しお話しておきましょう。  

実は、国民戦線は、今や日本のメディアの常套句である「極右」「排外主義政党」と簡単に言えるような存在ではなくなっています。  

先代党首のジャン・マリー・ル・ペン氏です。この頑固そうなのがオヤジ・ル・ペンです。おお、ヤニ臭そう。 

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う~ん、いかにも生粋の「ザ右翼」って感じで、実に香ばしいキャラです。 

去年には、国民戦線を批判したフランスのユダヤ人歌手ブリュエルに対して、「今度はこちらが窯に入れてやる」という凄まじい発言をしています。 

「窯」が、アウシュビッツのガス窯であることはヨーロッパ人ならすぐ分かるわけで、こういうことを平気で言う政党だという猛烈な批判を浴びました。当然ですね。 

これに対して直ちに、この反ユダヤ主義の発言の削除と、厳重処分を言い渡したのがこの人、現党首のマリーヌ・ル・ペンです。

オヤジ・ル・ペンの三女です。おッ、シックなセンス。パリ第2大学卒の弁護士やってました。 

別に国民戦線は同族世襲会社をやっているわけではなく、彼女は副党首のカール・ラングや、全国代表のゴルニッシュを押えて党首に選出されています。 

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 このマリーヌがやったのが、オヤジ・ル・ペンの路線の大幅見直しでした。 

おお、いきなり骨肉の対立か、日本の家具屋お家騒動みたいだと思われるでしょうが、日本もそうであったように、この父娘は考え方の基本は一緒なものの、現実的な路線では水と油だったのです。 

この娘ル・ペンこそが、いままでヨーロッパ政界の色物扱いされてきた国民戦線を、まともな保守政党に変身させた人物だと言われています。 

まずはオヤジ・ル・ペンの路線です。まさに日本のマスコミの形容どおりの、「極右」「移民排斥政党」そのものです。 

  • 国民戦線旧路線
    移民排斥
    妊娠中絶反対
    ・治安強化
    ・EUからの脱退
    ・通貨の
    ユーロからフランへの回帰
    国籍取得制限の強化など
    2015/12/07 05:14・移民の入国制限。(ただし、フランスの文化を尊重、保護する移民は拒まない)

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これに対して、マリーヌ党首の新路線はこうです。ジャン親父のヤニ臭さがほぼ完全に一掃されているのに、驚きを感じるほどです。

国民戦線新路線
・フランス文化を尊重する移民は認める。
・フランス国籍を持つ移民や移民二世・三世でも、犯罪を犯した場合は出身国へ強制送還させる。
・伝統的な生活様式を保護する。特に農民を尊重する。
・麻薬の密売人、小児性愛などの性犯罪者、母親による児童虐待、殺人者、テロリストを対象とする死刑の復活(現在、EU圏内では死刑はない)
・EU脱退
・極左系団体に対する公的補助金の廃止。
・道徳の復権
・犯罪者や移民の犯罪者には寛容ゼロ (tolérance zéro) で臨む。
・同性愛・妊娠中絶の容認
・国籍の血統主義
・減税
※Wikipedia

  • まるで、別な政党になってしまったようです。この新路線の国民戦線を「極右」「移民排斥政党」とレッテルを貼るのはそうとうに困難でしょう。
  • もっとも重要な移民政策について国民戦線の新路線は、な、なんと「フランスの文化を尊重、保護する移民は拒まない」としています。
  •  
  • 国外追放するのは、「犯罪を犯した場合に限る」としています。
  •  
  • このあたりは、下の写真のように「在日韓国人は殺せ」などと叫んでいる日本の在特会あたりに聞かせたいほどです。
  • マリーヌなら、即刻国民戦線から除名ですぞ。
  • こういう愚かな者たちは、保守でもなんでもなく、ただのレイシスト(民族差別主義者)です。思想などという高尚な問題ではなく、人としての問題です。
  • 私はしばき隊には批判的ですし、ヘイトスピーチ規制に関しても懐疑的ですが、彼らが「日本人の恥」という気分だけは分かります。そのとおりです。
  • こんな連中が、移民反対だのと言って国旗を持ってデモをするので、移民問題の議論が深まらずにほんとうに迷惑です。
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    彼女はこういう在特会的レイシズム体質を持つ党員に対して、党籍剥奪処分で臨んでいます。
  • 父親にして創設者のジャンも、例外ではなかっただけです。

    日本の「愛国勢力」も、いつまでも在特会レベルに止まっているかぎり、まともな国民政党になれる可能性は限りなくゼロです。

    マリーヌ党首の移民についての考えは、朝日新聞(2015年1月27日)がインタビューしていますので、添えておきましょう。
    ※http://www.asahi.com/articles/ASH1P1RBXH1PUSPT002.html

    ――でも、今回のテロ(※シャルリ襲撃テロ)の容疑者たちは、移民とは言い難いのでは。移民家庭出身とはいえ、国内で生まれ育ったフランス人です。
     「いいえ。彼らは
    フランス人になることができた、というだけです。例えば(新聞社を襲撃した)クアシ兄弟。両親はアルジェリア人ですが、フランス領内で生まれたお陰で自動的にフランス国籍を取得しました。
    国籍へのもっと厳しい条件を課さなければなりません。ハードルが低すぎるから、移民も殺到し、
    フランス人から雇用などの権利を奪うようになるのです」
     「
    国籍法の改定も欠かせません。二重国籍を廃止すべきです。祖国は一つしかあり得ない。どちらか選ばなければなりません」
     ――日本では、国内で生まれただけだと国籍を取得できません。二重国籍も違法です。
     「私たちが求めるのは、まさにそのような制度なのです。出生地主義の廃止です。
    フランス人は、フランス人の親から生まれるか、フランスに帰化するかだけ。帰化自体は否定しませんが、そのためには罪を犯さず、規則と価値観を尊重し、フランス文化を共有し、運命を共にする意思を持つ必要があります」

    文化多元主義がお好きな朝日は、嫌悪感をこめてインタビューしているようですが、マリーヌさんの発言には、レイシズムの匂いはありません。

    日本マスコミはいいかげんにオヤジ・ル・ペン時代と、娘ル・ペンをゴッチャにするのはやめたほうがいいと思います。

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    コメント

     最近、M・ウエルベックの「服従」という小説を読みました。
    小説なのでアレですが、フランスの移民政策の結果と行く末を悲観的に暗示した秀作で、やがてフランス文化も社会そのものすら、「イスラム」に回収される過程を描いてます。
     発刊当時はフランス国内でも中々売れていたそうで、同様の危機感を持っている仏国民も多いのかと思いました。

     ルペン氏の移民に対する態度は私には当然の事と思われるのですが、朝日の記者氏はご不満のようです。
     
     単なる憶測ですが、共生とか移民解放が特に喧しく言われ始めたのは、ソ連崩壊後からですね。
    で、失意の社会主義応援団は手をかえ品をかえ、国境の概念や「国家」の本来的領分を縮小させる方向に向けて勤しんでいて、自身に害が及ばないと固く信じているエリートたちが、理想という妄想を極大化し、むやみに移民推進している図式にも見えます。

     この問題でもドイツは狡猾で、これまでは多数の移民は入れても、「同化政策」は徹底して来たのだとか。
    早めに船を降りようする英国を尻目に、EUの番頭格に固執する生真面目なフランスにこそ、問題が大きく跳ね返って来るような気もします。
     マクロン氏の選挙用舌先三寸ぶりも、わが国にかつてあった民主党的で、最近「EUの改革があった場合には、ブレクジットは問題にしない」とかのたまってます。
     改革するのは自分じゃないの? と突っ込みたくもなりますが、引き続きドイツの尻の下でもがき続けるつもりなのでしょう。
     沈みゆく仏経済がさらに続くのであれば、もちろん中共にとっては更なるチャンスですね。

    沖縄で反基地活動中のサヨクさん達に国民戦線旧路線の方に同じ臭いを感じるのは私だけですかねぇ。

    ・移民排斥→(国籍・年齢・性別問わず)米軍関係者・(自分達に同調しない)本土人排斥

    ・治安強化→己の自由な活動のためなら地元住民の自由をも阻害、自己警察権強化

    ・EUからの脱退→日米安保どころかへたすりゃ日本国から脱退

    ・通貨のユーロからフランへの回帰→琉球コイン?(これは関係ないか。さらに関係ないけど、最近、寛永通宝ウチカビが発売されました。)

    ・国籍取得制限の強化など→県外のやつは全面的同調者以外は来るな。(フランス文化を尊重する移民は認めるという新路線に通じるものはあるかもしれんけど、自分達の狭い視野の中で理想化されてしまった文化だし)

    妄言と言われそうですね。しかし、極端な思想を持ち、活動する彼らは、私には琉球第一主義(ただし沖縄本島第一主義)の差別者に見えるのですよ。

     ルペン氏の考え方、賛成できますね。近いうちにEUは解体したほうがよさそうです。過去の戦争の再発を防ぐという理念がありEUは創られましたが、通貨統合などにより各国の自由な経済政策が阻まれてしまいました。強いドイツが中心国となり緊縮財政を加盟国に押し付けております。

     通貨の統合をしてしまうと生産効率の高いドイツに富は集中するのでしょう。そして、ドイツはギリシャのような経済力の弱い国を面倒みなければならなくなります。しかし、ギリシャ経済が復活するためには、ギリシャという国が一旦は破綻するというのが正当なことですが、ドイツはギリシャを破綻させたくないようです。それは、EUが潰れてしまうからでしょう。

     EUには無理があると思います。アメリカ合衆国のように財政も一つにしなければならない筈ですがEU各国の政治・財政は独立しております。中途半端なEU国ではないでしょうか? EUの実験は失敗したのでしょう。

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