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北朝鮮農業 1991年ナイアガラ瀑布現象とは

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沖縄からちょっと離れて北朝鮮農業に戻ります。 

北朝鮮はいわば多臓器疾患の重病患者のようなもので、内臓諸器官がなにからなにまで全部ダメになったうえ上に、それが絡み合って手もつけられない状況になっています。 

その原因のひとつが農業です。農業は大きくふたつの顔を持っています。ひとつは食料生産部門としての顔で、いまひとつが国土の姿です。 

まずは北朝鮮の農業生産の推移を見てみます。 

先にお断りしますが、北朝鮮の出す統計数字は眉唾モノで、国連に救済をも申し出た自然災害年(1996年、97年、2000年、2007年)の数字だけが意図的に落ち込むように作られています。 

Photo北朝鮮の食糧生産量(単位千トン)出典「レポート」 2011http://www.sukuukai.jp/report/20120418/1-1.html

このグラフが正しいならば、コメの生産量300万トン(2008年~09年度)のコメの生産量300万トンもあり、これを北朝鮮の人口2275万人で割ると、1人あたり年132㎏にも達します。
 

これは日本の2倍で、10アール(1反)あたり10俵以上ていどできたことになってしまいます。

おいおい、基盤整備と機械化が進み品種改良が世界で最も高度化した日本ですら8俵ていどですよ(苦笑)。 

李佑泓『どん底の共和国』によれば、統計を取るに当たって協同農場などでは一袋の量をごまかしてノルマを達成したと報告することが常態化しているということなので、まぁそう思って5掛か6掛ていどで見てください。 

なおこの数字はなまじ国連の機関(FAO/WFP)が出している数字なので、北朝鮮関連の分析資料には必ずでてきますが、しょせん北朝鮮の自己申告の数字にすぎません。

社会主義計画経済にありがちな、初めに目標値があって、あとから統計数字をおっつけたのでしょうが、統計数字がデタラメでなにが「計画経済」だつうの。まぁいいか。

というわけで到底ありえない数字ですが、生産量推移の傾向はわかります。 

むしろこれでわかるのは、1991年という節目です。 

なにが起きた年でしょうか。歴史的といっていい年ですが、ソ連が崩壊したのです。 

Photo UNDP(国連開発計画)による『朝鮮民主主義人民共和国の農業復興・環境保護に関する円卓会議(Thematic Roundtable Meeting)-農業の基本的発展』(1998年5月)と、FAO (国連食糧農業機構)およびWFP(国連世界食糧計画)による『朝鮮民主主義人民共和国の作物収穫と食糧供給に関する特別報告書』による。  

数字は怪しいですが、ソ連が崩壊するまでとりあえず800万トンを超えた生産高が、もっとも落ちた96年には200万トンと4分の1にまで下落しています。 

これは食料の輸出量にも現れています。 Photo_2

 グ゙ラフ中央でナイアガラ瀑布状態になっている年が、1991年・ソ連崩壊の年です。 

この91年ナイアガラ瀑布現象は、ソ連の衛星国で共通して起きたことです。 

ちなみにキューバもこんなかんじです。ソ連崩壊と同時にドッカーンと吹き飛んでしまい、そのまま停滞してしまったのは北朝鮮と似ています。

Photo_3http://lib.ruralnet.or.jp/nisio/?p=3692

キューバの場合、国際サトウキビ価格より高めの価格でソ連に売り、見返りに石油や穀物を輸入していました。 この差額が支援となります。

国際的物々交換というわけで、バーター貿易と呼びます。 

国際市場価格より高めな差額が支援なわけです。これとまったく同じ構造は北朝鮮も持っており、石油や機械製品、穀物などを安価に提供されていました。 

キューバはソ連崩壊まで、ガチガチのソ連型社会主義統制経済を敷いていたのは、北朝鮮と一緒です。

それが一切なくなったわけです。たちまち、農業機械を動かす石油や化学肥料、資材などが、いやそれを作る工場まで半死半生状態になってしまったわけです。 

実際に東欧圏の共産主義国家は、親亀こけたら皆こけたとばかりにドミノ倒しのようにバタバタと崩壊していきます。

ならば北朝鮮も、それまでに国が自立できる農業の仕組みを作っていればよかったのですが、あいにく「主体農法」という独裁者の思いつきで農業をいじくったために、目もあてられないことになってしまいました。 

この「主体農法」については後述しますが、よくもまぁコンナ馬鹿げたものを考えだしたもんだ、と妙に感心してしまうようなシロモノで、「農法」の名に値いしません。 

そもそも、社会主義農業は、大規模化・集団化がミソであって、それによる効率化がなされるのが前提です。 

つまり大規模化に必須の機械化こそキモなのですが、輸入は途絶するわ、国内の工場は動かないわではどうにもなりません。 

しかしキューバは発想の転換を果たして、有機農業へとシフトします。 

というか石油を使わない農法は有機農業しかなかったからで、特にカストロがエコロジストだったわけではありません。 

しかしこのキューバ農業政策の転換は、国のサイズから言ってもまったく正解でした。有機農業は本来、大規模農法には向いていないのです。

化学肥料が輸入できないなら、その代替に天敵利用やハーブ防虫を利用して害虫を寄せつけない工夫をするには、小規模な畑のサイズのほうが向いているのです。

というわけで、キューバは従来の単作プランテーション栽培を縮小し、小規模に適した有機農法を広めていきます。

キューバについては現地に旅してきましたので、そのうち記事にします。 

なおひとこと付け加えれは、キューバ農業が「100%有機農業で自給自足できている」という人がよくいますが、環境農業研究家の西尾道徳氏が指摘するように「誤った宣伝」にすぎません。http://lib.ruralnet.or.jp/nisio/?p=3692

現実には窒素系化学肥料を国内製造しており、広範に使用しています。

それはさておき北朝鮮は、キューバのような柔軟な転換ができませんでした。

もちろんカストロと金日成という指導者の人間としての資質の差もありますが、北朝鮮にはキューバにはない妄執があったからです。 

それがながなんでも「パンツを履かないでも核兵器保有国なるんだ」という妄執です。 

このパンツ談義は、中国の毛沢東の言った台詞ですが、毛は数千万人の餓死者を出しながらほんとうに原爆を作ってしまいます。 

それをまねしたのが金日成でした。彼は中国の核武装路線をそのまま模倣し、国のリソースのすべてを核兵器につぎ込んでしまったというわけです。 

その結果がいま私たちの眼前に悪夢としてあります。  

 

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コメント

偽バイアグラなら滝のように作って裏商売で流してるのにねぇ。。

あとは国家ぐるみの偽造ドル札やら偽タバコやらと。

投稿: 山形 | 2017年5月18日 (木) 13時01分

あと国家ぐるみのサイバーアタック銀行強盗。
(つい最近バングラディシュが被害にあったそうで。。。)

投稿: やもり | 2017年5月18日 (木) 13時17分

あと、白い粉疑惑とかBC兵器あたりも・・・

投稿: 一宮崎人 | 2017年5月18日 (木) 14時36分

産地ロンダリング松茸もあったような

投稿: クラッシャー | 2017年5月18日 (木) 15時41分

>農業は大きくふたつの顔を持っています。ひとつは食料生産部門としての顔で、いまひとつが国土の姿です。

日本の農を語る際にも、ここを忘れては訳わからない文句の付け合いになります。

キューバの有機農法を誇大賛美する人達がいたんですね。そして国内で窒素肥料作ってたなんて知りませんでした。管理人さんの目から観たキューバ有機農業の実際、楽しみにしています!

投稿: ふゆみ | 2017年5月18日 (木) 17時04分

加計学園問題、安倍とその信者の破滅のカウントダウン始動か?

投稿: 行方市民 | 2017年5月18日 (木) 18時21分

キューバの農業事情ですが、すっかり間違って信じ込んでました。
吉田氏の前著しか読んでなかったし、NYタイムスなんかでも「有機農法すごいぞ!」って、キューバあげ一色ですし。
目からウロコが落ちました。

投稿: 山路 敬介 | 2017年5月18日 (木) 18時31分

行方市民とやら。ここは政局ネタを語るブログではありませんし、北朝鮮農業とはなんの関係もありませんね。嫌がらせですか。

そもそも現時点において加計問題は単に「永田町によくバラ撒かれる出所不明の怪文書」以上でしかありません。
こんな文書は年中行事で撒かれています。

しかし、それがすぐに表面に出ないのは、謀略性があるからです。怪文書に飛びついて自爆して自殺した議員がいたことを民進党はもうお忘れのようです。
すくなくとも裏もとらないで大手紙が1面トップに載せることではありません。

そもそもあんな審議官レベルという低い地位の官僚が、首相の意志を直接受けたなどというのはありえないことです。
文書でも「総理が言っているのを聞いた」という伝聞じゃないですか。
どこで聞いたんですか。たぶん会議でしょうね。会議で「聞いた」ことまで「忖度」ととられたらたまったものではありません。

審議官なんてペーペーに毛が生えた中級官僚です。
官邸を交えた省庁会議で、テーブルにも座れず、発言もできず、バックベンチでメモをとっているていどで発言すらできないランクの役人です。

仮にあるとすれば、そんなランクの官僚が「首相がスピード感をもってやれ」と会議で言っていたというのをメモしたていどのことだと思います。

首相と相対で「意志」を聞けるようになるには、審議官よりはるか高位にならず、省内に数人しかいないのを、朝日も知っているはずですが、なぜこうも「反安部」となるとダボハゼのように怪情報に飛びつくのでしょうか。

民進党はなんの調査能力もないので不思議ではありませんが。
それにしてもどこからこのメモもらったのでしょう。朝日だったとしたら、大変にマズイですね。報道機関と野党の癒着ですから。

一方朝日にとって第2の吉田証言事件になる方を心配しなさい。

それとこのブログに来る人には「安部信者」などいませんし、 信者とはカルト扱いの表現ですね。
ならば現政権支持者は6割ですから、6割の国民は「信者」=カルトというわけですか。

批判するなら、小股すくいではなく、真正面からやって下さい。

投稿: 管理人 | 2017年5月19日 (金) 03時19分

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