« どうやら米国のサイバーアタックが成功しているようだ | トップページ | いつまでフランス国民戦線を「極右」と呼ぶのか »

フランス大統領選 左右の枠組みが崩れた後に出現したものとは

093

来週の韓国大統領選挙は、ムン・ジェインの雪崩的勝利に終わりそうですね。 

1カ月前の時期にムンが大統領になっていると包囲網形成に支障が出たでしょうが、包囲網の扉は既にガチャンと締まってしまいました。 

米国はこのまま正恩を干乾しにする予定のように思えますので、軍事オプションが遠のいてしまえば、ムンがなんと吠えようと知ったことではありません。 

逆に言えば、ムンがなった場合、軍事オプションを取りにくくなるのは事実ですが。

ムンは大統領になった暁には、公約どおりピョンヤンに駆けつけて、涙ながらに正恩とハグして、国際社会を白けさせて下さい。

もう正恩にできるのは口撃だけです。憶測に過ぎませんが、ひょっとしてなんらかの妥協が中国を介してなされたのかもしれないとすら、私は思い始めています。

いずれにしてもこう言ってはナンですが、韓国大統領選挙の結果はわが国にはうっとおしい限りですが、しょせんコップの中の嵐にすぎません。

そんなに韓国民が自殺したいのなら勝手にして下さい。止めません。 

さて、眼を西に移します。フランスでは、60年間も続いたフランス版55年体制が崩壊しました。 

「左翼・右翼」という言葉の発祥地であるフランスにおいては、左派は社会党、右派は共和党の二大政党が仕切ってきました。 

日本では自民党と社会党が表面的にはこのこのくぬくぬと争いながら、実は歌舞伎を演じていたわけですが、フランスも合従連衡を繰り返しながら、べた凪の政治構造を続けてきました。 

今回の第1次投票ではその構造が大きく崩壊し、二大政党は3位、4位に落ち込み日本でいえば第3極政党のマクロンと、世界のマスコミから「極右」と罵倒され続けてきた国民戦線のルペンが決戦投票に臨むことになりました。 

もっぱらの前評判では、基礎票を握る二大政党は、いままでの確執を忘れたようにどちらもマクロンを推薦して、EUからの離脱をなんとしてでも止めたいと考えているようです。

Photo_2

さて例によって日本のメディアは、ルペンを「極右」という冠をつけて報じています。

メディアが「極右」という時は、言外に「このファシストどもめ」といったバイアスが張りついています。 

困った人たちです。古くさい「左翼・右翼」の枠内でしか判断できないと見えて、今回のフランス大統領選で、その枠組み自体が崩壊したことに眼がいかないようです。

今回のフランスの投票分布をみると、見事にフランスが真っ二つになっているのがわかります。

それを伝える朝日(4月26日)です。http://www.asahi.com/articles/ASK4V5G78K4VUHBI02C.html

「マクロン氏は都市部で圧倒的に強かった。パリで得票率約36%。ルペン氏は約5%の5位だった。
反対にルペン氏が圧勝したのは北部エヌ県。約36%で、2位のマクロン氏の約18%の2倍の票を得た」

Photo_3仏大統領選挙で各候補が得票1位だった県 朝日新聞より引用 AFPによる

フランス東北部と南部地方はルペンが圧勝し、一方、西部、中央部及びパリではマクロンが勝利しています。

またマクロンは都市部を征し、人口が多い上位10市では、国民戦線の地盤であったニース、マルセイユを除くすべての大都市で勝利しています。

ルペン支持が多い東北部の中に浮かぶ孤島のように見えるパリでは、マクロンが36%に対して、ルペンはわずか5%にすぎません。

まぁよくもこれだけくっきりと、地域間得票差がついたものだと感心します。

イギリスのブレグジットと同様に、「地域間」「地方と都市」という断層でフランス国民が分断されていることが分かります。

実はこの傾向は、先だってのブレグジットと酷似しています。

Photo_7

上図はブレグジットに賛成した地域が赤、反対した地域が青です。ここでも見事に色分けができています。

ただし、英仏はEUについては、地方と都市の傾向が逆転しているところが面白いところです。

これは英国からの独立傾向が強いスコットランドの場合、仮に独立した場合でもEUという域内で無関税で生きていけるという目算があるからです。

もう一枚参考までに、米国大統領選挙の地域別得票を乗せておきます。

Photo_8

この米英仏での大きな選挙によってなにが起きたのか、グラフを睨んでいるだけで見えてくるものがありはしませんか。

EU離脱の意志が強いフランス東北部は、基幹産業の炭鉱業が没落し、それにつれて鉄鋼業などの製造業も落ち込みが続いているフランス版「ラスト・ベルト」(錆びた地域)です。

また、フランスは大農業国家ですが、農業もまたEUによって痛めつけられたという意識があります。

メルケルが頑として譲らな財政規律原理主義のために、フランスもイギリスも長年の不況にあえいできました。

フランスなどは失業率が10%に達し、地方の生活インフラはボロボロになったといわれています。

このような流れの中で、ルペンの主張する金融緩和、財政拡大政策が、フランス版ラスト・ベルトで支持を得たわけです。

おそらく、決選投票においてルペンは敗北するでしょうが、この勢いはその後の国民議会選挙に持ち込まれて、新たな政治地図を作り出して行くものと思われます。

それは手垢のついた右左ではなく、グローバリズムか反グローバリズムか、ネーションを否定する勢力か、ネーションを大事にする勢力なのかをめぐっての新たな地図のような気がします。 

■すいません。今日は眼がぼやけていて、ミスタイプの連続でした。

 

|

« どうやら米国のサイバーアタックが成功しているようだ | トップページ | いつまでフランス国民戦線を「極右」と呼ぶのか »

コメント

 私の不勉強かも知れませんが、フランス革命以来の基本的価値観というのは、ルペン氏の方が多分に持っているような気がします。
移民政策だって、かつてド・ゴールが発したそれよりもよほど緩やかなものです。
 それでありながら「極右」と称されて、ファシズムと等値される状況は、ヨーロッパが極度の「共生病」に陥った結果であろうと思います。

 ルペン氏を支持する知識人は、職を失う可能性すら有り得るとか。
嫌な風景です。
「自由」の上に、何か「変なもの」が覆い被さっているような違和感があります。

 結果としてルペン氏はマクロン氏に及ばないのでしょうが、どのくらい善戦するかがポイントですね。
 その影響や潜在的なフランス国民の価値観の発露は国民議会選挙に持ち越され、早晩マクロン氏の政権運営も立ち行かなくなる可能性が大きいようです。
 早速、有名人来々パーティーなど催してる状況じゃないし、政党代表を辞し「ドブ板」に徹するルペン氏に比べ、そうしたところにもマクロン氏の「調子良さ」や「浅薄な青さ」が出ていると見ますね。
 混沌は大統領選後こそ続くのでしょうが、そろそろと仏におけるドイツファクターが意識され始めて来るではないか、と思われます。

 全然話は違いますが、メイ首相やルペン氏の演説風景や立ち居振る舞いからは(言葉はわからないなりにですが)、一国を担うに足る「覚悟」みたいな風格を感じます。
 「最後の最後」には、女性の方が心が強いと思うので、日本にも早くああした女性政治家が出てきてほしいと思います。
 もちろん蓮舫氏のような、物マネ芸人タイプは論外ですが。

投稿: 山路 敬介(宮古) | 2017年5月 2日 (火) 08時11分

マリーヌ・ルペンは、自分の父親を徹底批判して極右といわれた偏りを自己反省した結果、国民の支持を得られる政党に生まれ変わらせています。

それでも、日本のメディアは枕詞で「極右」の国民戦線という海外政治事情に疎い姿をさらし続けていて、既存メディ離れを自ら加速さえていますね。

むしろ、マクロンのほうが状況によってどう転ぶかわからない恐ろしさがあると個人的には思います。ルペンは党を明確な意思で改造した実績がありますが、マクロンはメディアが生んだ見てくれのいいアイドルに過ぎず、能力は不明だし、本心もよくわからない。

いずれにせよ、フランス国民は今までの既存政党にうんざりしていることだけは確かなようですね。

投稿: ednakano | 2017年5月 2日 (火) 09時00分

この赤いゾーンを通って難民が来ています。産業が衰退したまんまそれを目の当たりにすると、右というよりcloseすることに一票入れるのだと思います。とはいえマクロン勝ちなんでしょうね…。

山路さん、私は島袋さんいいと思いますよ。あれくらい地に足がついているのが他者に見える人は地味なんですが、それこそが美点であり良いコーディネーターがついて欲しいと思います。
沖縄が落選させるんなら東京が迎えたい位!

投稿: ふゆみ | 2017年5月 2日 (火) 09時25分

ルペンを極右と呼んでいるのは日本のメディアだけじゃないですよ。ABCやBBCもfar rightと呼んでいます。Foxでさえright Wingです。
それと、フランスの友人から聞いた話なんですけど共和党のフィヨンは妻が給与を不正受給していたというスキャンダルがなければルペンに勝っていただろうと言ってました。それだけルペンは薄氷の勝利だったと。
この前の報道特集によると酪農家もルペンの有力な支持層らしいです。

投稿: 中華三振 | 2017年5月 2日 (火) 09時50分

韓国の大統領選ですが今朝の特ダネはムン陣営の選挙カーがバイクをはねてライダーを死亡させてその後の対応でも問題があったと伝えています。まだ波乱があるかもしれません。

投稿: 中華三振 | 2017年5月 2日 (火) 09時57分

 フランスの政局はあまり分からないのですが、二人のお写真を見て、ルペンさんに私は惹かれます。マクロンさんは二枚目か三枚目か良く分からない感じがしますが、ルペンさんの風貌は、大きな責任を自分で負うという感じがあるし慈母のような感じを受けますね。

 「ありんくりん」さんがおっしゃるように、グロ-バリズムとナショナリズムの対立が現在の世界の状況ではないでしょうかね。今はグロ-バリズムが強すぎるので、少しナショナリズムの風を強くして各国の性格の違いが表に出てくるのも良いことだと思いますね。

投稿: ueyonabaru | 2017年5月 2日 (火) 17時03分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« どうやら米国のサイバーアタックが成功しているようだ | トップページ | いつまでフランス国民戦線を「極右」と呼ぶのか »