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2017年5月25日 (木)

安倍首相の改憲シナリオとは

Dsc_8500
活発なご意見をありがとうございます。 

改憲問題を考える時に、忘れられがちなのが「いつ」というタイミングの問題です。 

理想的な(といっても諸外国並のですが)憲法ができました。

しかしそれが数十年後でした。その時は尖閣はおろか沖縄まで某国自治区になっていた、ではなんの意味もありません。 

こういうことを言うと両方から殴られそうですが、私は護憲派と改憲頑固派はメダルの裏表だと思っています。 

護憲派の錯誤の源泉は、「9条が日本を守ってきた」という認識に今なおしがみついていることです。 

改憲派の立場ではなく、改良護憲派の井上達夫氏『憲法の涙』 にそれを批評してもらいましょう。

「ここではっきり言っておきましょう。9条が日本の平和を守ったというのは嘘です。
ふたつの問題を区別したほうがいい。ひとつは9条は海外の戦争・戦闘に日本が関わるのを防いだか?
もうひとつは、日本が侵略されなかったのは、9条のおかげか?」(前掲書)

井上氏も認めるように、護憲派のいう「戦後70年間、一発の弾も撃たずに済んだ」のは、9条があったからではなく、日本が米国と安保条約を結んでいたからにすぎません。

日本は軍事的根拠地である在日米軍基地を提供することで、米国の国際戦略を支えてきたわけで、その反面、米国の軍事根拠地を攻撃できないために日本は守られてきたのです。 

井上氏もこう嘆いています。

「戦後日本が外から侵略されることなく平和でいられたのは9条のおかげではなく、自衛隊と日米安保のおかげです。憲法の命じるとおり『非武装中立』でいたら、戦後日本が平和でいられたか、保証の限りではない」(同)

というわけで、いまや護憲派内部からも井上氏のような9条懐疑論が飛び出すように、9条護持派はいまやカルトの域に入りつつあります。 

むしろ問題は、自民党の側にあります。

井上氏は政府と護憲派が、実は表裏一体の存在ではないかと考えているようです。

「『9条があるのでちょっと』とか、こちらの手札としては9条は使おうと思えば使えた、ということですね。だからそういう動きを遅延させたかもしれないが、防衛費は増えていき、結果的には海外派兵しているわけですから、決め手にはなっていない。遅延させたが、抑止はできなかった。
『保守の智恵』のひとつだったかもしれないが、そういう9条頼みは、結局、大人の交渉力の陶冶を妨げた」(同)

米国と交渉する時に日本政府は、9条を楯にして自衛隊の海外派遣を拒否してきたのは事実でした。 

自民党は時には、野党にさんざんぱら反戦デモをやらせて、それすら交渉材料に使ったほどです。 

自民党が改憲を党是としながら、いっかな改憲発議という現実のプロセスに進まなかったのは、9条があったほうがなにかと都合よかったからです。

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思い出してほしいのですが、去年集団的自衛権審議の折りに、政府を背中から刺したのは他ならぬ自民党憲法改正推進本部長の船田元氏でした。

船田氏は、安保法制審議の際に、あろうことかゴリゴリの護憲派であるのことが天下に轟いている長谷部泰男氏を自民側参考人として招致するという利敵行為を演じたのです。

ここで集団的自衛権問題は、いきなり憲法論議にすり代わってしまい、政府は大変な困難に遭遇することになったのは記憶に新しいことです。 

ちなみに、朝日によると憲法学者で集団的自衛権はおろか自衛隊を憲法違反とするのは半数に登ります。

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「自衛隊は違憲だからいけん」と言っている憲法学者が、集団的自衛権を肯定するわきゃないじゃないですか。

そのボス的存在の長谷部氏を呼んだのが、自民党の改憲本部の代表の船田氏だったということが喜劇的に自民党の体質を物語っています。

Photohttp://toyokeizai.net/articles/-/116365

後に船田氏はインタビューの中でこう言っています。

「米国の世界戦略の中で日本が支援できることと、日本自身を守ることとは切り離して考えるべきです。憲法9条を改正するにしても、米国の世界戦略の中に組み込まれたり、巻き込まれることは避けるべきです」
http://toyokeizai.net/articles/-/116365

船田氏は実は9条があることが、日本に有利だと考えているはずです。 

なぜなら「米国の世界戦略に組み込まれる」ことを阻止するためには、いつまでも9条があったほうがはぐらかす「言い訳」になるからです。 

していまやこの「はぐらかし」が効く時代状況ではなくなってしまいました。 

尖閣が奪取されれば、日本は沖縄を失うでしょう。北朝鮮の弾道ミサイルと核兵器を放置しつづければ、やがて私たちの頭上に核ミサイルが降って来ることになります。 

国民主権の中で明確に「軍」として位置づけるべき時期なことは確かです。 

すべての成熟した国家がそうであるように、「軍」をシビリアンコントロールする経験と智恵を蓄積するべき時期です。 

そのために自衛隊員の身分を「軍人」として正式に位置づけ、民事とは異なる法体系をもたせねばなりません。 

具体的には軍事法廷、交戦法規、兵士の顕彰などです。これらは大変に重要なことですが、ものには順番があります。

現況で自衛隊は、先の憲法学者の言うとおり、憲法上「あってはならないもの」なのですよ。

自衛隊そのものを「違憲番外地」に置いたまますべてを正常な形にするのは無理です。

まずは自衛隊を憲法の枠内に置いてから、これらの諸問題に手をつけるべきです。

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さて、安倍案に対する最大の批判者は石破氏ですが、その主張の核心は、2点です。 

「自衛隊を3項に加えても、それが軍隊なのかという矛盾が残る」 

そしてもう一点は、「実質的には自衛隊が警察権しか持たない現状の追認に過ぎなくなる」ということです。 

9条2項削除論ですが、原理的には正しい批判です。 おそらく安倍氏も純粋な論戦なら、そのとおりですというでしょう。

ただし今、それで自民党内部すらまとめきれますか?石破氏は総裁選にでるそうですが、勝てますか? 

石破派は結成以来20人という小派閥で、しかも石破氏には人望がありません。勝負勘が悪い上に、度胸がないからです。 

2012年の総裁選の時のように、安倍氏を初戦で凌駕しないかぎり勝てません。 

いまや自民党の議席という分母が違います。2012年時には、衆参で203人しかいなかったものが、安倍政権の4回の国政選挙の結果、411人に増加しました。ここで増えたのがいわゆる「安倍チルドレン」という新米議員です。 

彼らは安倍氏を支持票を投じると思われます。 

石破氏が2項削除論を争点とする限り、他派閥が応援することはないでしょう。 

安倍チルドレンは修行が足りず、次の総選挙では落選するものが多数でるでしょうから、18年12月任期一杯まで引っ張って、現有の力のまま改憲発議します。 

安倍氏は総選挙と改憲国民投票を同時に行うと言っていますから、この場合の大義は「自衛隊を憲法に位置づける」以外ありえません。 

「自衛隊を加憲する」ことに民進党は反対できないはずですから、野党連合は雲散霧消します。 

幹事長代行・下村博文氏は今後の段取りについてこう述べています。 

「年内にコンセンサスを作り、来年の通常国会には自民党から発議案を出せるようにする。総裁選の大きなテーマになることは間違いない」 

すると年内に改正案がとりまとめに入り、自民党発議案が決まれば、衆参憲法審査会に提出され原案可決、衆参本会議での3分の2以上での可決と発議となり、さらに60日から180日以内で国民投票、天皇による公布へと進みます。 

その場合、最速で2018年12月に国民投票・総選挙となるかもしれませんが、当然その節目節目で戦後日本政治史に残るような騒動になることは間違いありません。 

安倍氏は冷徹にここまで読み切った上で、安倍試案を出したのだと思われます。 

とまれ、突破口を開くこと。自民と野党が共に温存してきた生暖かい9条という寝床をしまうこと。

そしてこの突破口が開いた後に、新しい憲法に則って、原理原則を煮詰めていけばいいのではないでしょうか。

いわば安倍試案は、2段仕立てのロケットのようなものかもしれません。

まずは「3項加憲」で岩盤を打ち破り、そしてその後のいずれかの時期に2項を削除することを目指します。

初回で国民投票に失敗すれば二度と突破口は開きませんが、3項加憲の後にはもっと自由な国民的議論が起きるでしょう。

いや、起こさねばなりません。

 

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コメント

このエントリーの結論にあるご指摘の通りだと思います。

ともかく、何か変更するという歴史的事実がなければ、今のままではとても憲法はいじれなくなってしまいます。

これは政治的判断として正しいかと思います。原理原則ばかり説いても仕方がないのです。

http://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/common/pdf/leaflet.pdf

総務省の国民投票ガイダンスを貼っておきます。
項目ごとに国民投票できる仕組みで、東京新聞のコラムなどによれば一度に5案以内が限度?という意見もあるようです。
いつもケチケチとコストの事ばかり書く私ですが、これに女性宮家や教育無償化などをセットせずに、9条一本でやって欲しいと私は思います。
それ位国を左右する大切な事柄ですから。

今回の改憲案は

「自衛隊やめますか?それとも9条に3項加憲しますか?」

という二者択一の質問に収斂されたと思います。

朝日新聞や報道ステーションのようなバイアスのかかった質問のしかたで「憲法改正に賛成か反対か」と聞くのではなく、
全メディアが上記のような共通の質問で、
二者択一のアンケートを取ったらどうなるのでしょうか?

何かドキドキしますが。

今回も、管理人はじめ皆様からとても有益な論点が示されたと思います。

管理人さんの自民党の現状分析はそのとおりだと思います。
石破さんは、きっちりとした9条観を持っていますが、政治的リアリズムに欠けます。経済でも「里山資本主義」を唱えていますが、これも経済実態を軽視した議論です。少々ずれているのに頑固(かつ小心)なので、党内で少数派を脱するのはとても厳しいと思います。他に有力候補がいないのが、現在の自民党の脆さでもありますが、当面は安倍総裁の改憲案以上のもの出てこないと思われますから、ここは「加憲、その後議論」というプロセスがやはり現実的です。

今朝の時事の配信に寄れば、沖縄の海兵隊のグアム移転が加速しそうです。米軍の配置はやはり米国の都合です。自衛隊を憲法で認めることからスタートしないと、国民が「国防」を正しく理解できないまま、危険にさらされることになります。改憲はできるだけ急ぐ必要があります。そのために加憲は有効な手段です。

あと1年半で陛下が譲位され年号が変わると報道されています。
与党内調整で半年、国会で半年、国民投票・衆議院選挙まで半年で
ぎりぎりですね。何しろ時間がない。
陛下には少しでも心を安らかにされ、次の世を見守っていただきたいです。

国民投票の質問方法は、誰にでもわかりやすいように
9条一本でやってほしいですよね。

都下人さんの
「自衛隊やめますか?それとも9条に3項加憲しますか?」←すごく簡潔でいいかも。

その大見出しのあとに、自衛隊やめますか?と、9条に3項加憲しますか?の説明文をイラスト付きで載せてほしい。
時間はもうないです。一刻でも早く自衛隊を憲法で認めてほしいです。

 9条2項を削除しない限り自衛隊を認知することは不可能だと思う。9条2項の削除は必須であろう。憲法の改正は正直なやり方で行きたいものだ。そうでないと、問題点は再燃してゆく。非常に面倒なことが起こりそうだ。

 阿部さんが期限を示し憲法改正、自衛隊認知の方向をハッキリと示したことだけは評価できる。これで、憲法改正論議が盛んになることはイイことだ。

 阿部さんの問題提起は、自衛隊を認知するという1点だけで良かった筈だ。2項はそのままというのは余計だった。国民投票は、自衛隊の認知の賛否を問えばよい。自衛隊を認知し、その後に2項の削除をまた国民投票で問えば良いのではないか。

 2項をそのままに自衛隊を認知するというのは不可能ではないか? 自衛隊には現に交戦能力はあり、軍隊と変わりはないのだ。軍隊から交戦能力を奪えば、軍隊ではない。自衛隊から交戦能力を奪えばもはや自衛隊ではない。正直に考えよう。

 アイマイなかたちで憲法条文を操作してはいけないと思う。そうでもしないと、安保法制の際の議論のように、意味が分からない議論で終始することになる。

ueyonabaruさん

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
前2項目の補填として、国民保護と領土領海領空防衛ならびに国際協力の責は国にある事を確認し、その責に応じた自衛組織の保持は、これを認める。

て言う風にでもしたら、なんとかなりませんかね。

 伊勢佐木さん

さすがですね。

石破さんの欠点の第一は、なにより経済政策ですよ。
そしてその経済政策は、根本のところで民進党とかなり類似してますね。
 人口減が憂慮されるのは当然ですが、それがそのままGDPに反映されるわけでもありません。
 石破さんの「ならば、移民を入れるしかない」という発想も超短絡的だし、里山資本主義的傾向では、「福祉」も何もかも持続可能性がありません。

 名なしさん

 面白いと思います。9条2項では 「前項の目的を達するため」 と限定していると解釈すれば、国際紛争を解決する手段でなければ、陸海空軍も認められるし交戦権さえも自衛のためには認められるということになりますよね。

 これで大方の日本人が納得するかどうかですね。なんだか解釈改憲のような様相を帯びてまいりますね。憲法学者たちはこれにどう反応してくるでしょうか?

 自衛隊を合法とする喫緊の課題だけでも早急に解決したいものです。

 ひとつの「ステップ」として捉えられがちですが、私は今回の「自衛隊加憲」は、その事自体に大変大きな意味があると思っています。
 これは自衛隊員が「人殺し」などと呼ばれる状況を是正し、少しでも尊敬されるような立場に置かれるようにする為のものではありません。

 いまや自衛隊は国民の支持も高く、平和安全法制まででも「直接的な攻撃を受けた場合にのみ」武力行使は許されるという解釈がなされておりました。
 ですが一方では、平和安全法制のひとつの論拠となった「砂川判決」ですら、自衛権そのものは認めていますが自衛権行使の為に「自衛隊」を保持することが合憲だとは言っていないのです。

 本当のところ自衛隊はいまだに継子扱いなのだし、法律の世界では日本を守る主体は「米軍」なのです。

 自衛隊を憲法に規定するという事は日本の主権に関わる問題にも通じ、SACO以降の沖縄の米軍基地を減らす「道しるべ」となるものだと思います。
(安倍さんは、必ずこの事は念頭にあるはずです)

 「わが国の存立を全うする為の機関としての自衛隊」が憲法に明記されるならば、具体的には必要な自衛隊基地の設置もやりやすくなりますし、なにより日本国の防衛において、米軍と対等の立場に立つための「一里塚」になるものと考えます。
 

荒木肇氏の「軍国主義とは、国民に軍事知識がない社会をいう」の言葉を思い出しました。
話は別ですが、加計問題で一躍時の人になった前川は天下りを問われて辞めさせられたみたいでそれを逆恨みして叛乱を起こすなんて籠池にそっくりですね。マスコミがヒーローに仕立て上げた点でも。

9条2項を削除するのが、私的には良いと思っています。

同3項を追加する案は、今現在で憲法改正実現はコレしか
ない!という現実的な案だとは思いますが、平和ボケを
直す為にも、日本人は正攻法で憲法改正するべきです。
憲法改正に失敗して危機が訪れようとも、自分達の判断
が過ちだったと民主主義の恐さを思い知ることが出来れ
ば、未来が開けます。

ジミン政権はナァナァの寄合ムラ型政治ですから、ムラ
人に過保護な面があります。字も読めない一般ムラ人達
は弱者なので、世話役のムラ人達が一般ムラ人達の事を
思いはかり、良かれと上から目線で世話をやくのです。
祝日を増やしてやれだの、最低賃金を上げてやれだの、
大学教育をタダにしてやれだの、お金のバラマキをして
やれだの・・

同3項を追加する案は、どうもこれらの延長にあって、
「オメーら一般ムラ人はどうせ解かんねぇんだからよ、
そんなに怖がるなよ、これが現実的ベストだ、米国の
ご了承も頂いてるしな」というような慈悲深さを感じ
てしまうのです。

元々が、このウザウザぶりによって70年間改憲が出来
なかったワケです。安倍さんが国防の必要性について
熱血的大演説をかまして国民の平和ボケを覚ます正攻
法で2項を削除するという方向で進めて欲しいなぁ。

PKO派遣の自衛隊の部隊がやっと撤収できました。
現行憲法では活動制約のある自衛隊員を殺傷したりさらった場合、身柄と対処があまりにもアンフェアである事を、海外派兵した状態でオープンに話し合うのは私は嫌でしたから、そういう意味でもホッとしています。

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