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2017年6月19日 (月)

ISのマラウィ占拠 フィリピンのシリア化始まる

048
フィリピンのミンダナオ島がシリア化しています。

既にISはミンダナオ中部のマラウィ(Marawi)を占領し、市民を「人間の楯」にして実効支配を続けています。

このミンダナオにおいてISが勝利すると、フィリピン全土のIS拠点化が進行します。

そしてそれは海を超えてインドネシア、マレーシアへと拡大していくかもしれません。

いままでISは一部のアジア内陸部で影響力を持っているだけでしたが、ここでISの疑似国家建設を許せば、アジアにおける「シリア」、すなわち八方へと伸びるテロ拠点が完成することにてります。

その場合、はかりしれないテロの脅威がアジア全域に拡がるでしょう。

まずは、私たちになじみの少ないミンダナオ島の位置からいきましょう。

ミンダナオは、首都マニラがあるルソン島に次ぐ2番目に大きな島です。
ミンダナオ島 - Wikipedia

面積だけで97530平方kmもあり、驚いたことには韓国と同じくらいの面積です。人口も2200万人で、これも北朝鮮の2500万人といい勝負です。

島というと小さなイメージですが、北海道の83450平方kmより大きく、沖縄の(1207平方km)の8倍以上もあります。

平野にも恵まれていて農業・漁業が盛んなうえに、東海岸には2000m級の山岳さえあります。

Photo_4
宗教はカソリックが多いフィリピンでは珍しく、イスラム教が支配的です。14世紀には既に布教が盛んに行われ、イスラム教のスールー王国の版図の一部でした。
スールー王国 - Wikipedia

この「スールー王国軍」を名乗るフィリピン人テロリストは、2013年3月1日にマレーシア・ボルネオのサバ州ラハダトゥで、マレーシアの治安部隊の間で銃撃戦を行い、双方あわせて14人の死者が出す事件を発生させています。

スールー王国軍は分離独立を目指しています。

Sulu4スールー王国軍

現職のロドリゴ・ロア・ドゥテルテ大統領は、このミンダナオ・ダバオの出身です。彼はダバオ市長で名を馳せました。
ロドリゴ・ドゥテルテ - Wikipedia

ミンダナオを拡大します。今回ISに実効支配を許しているマラウィの位置を確認してください。MarawiGoogle Earth

このマラウィを巡って、激しい戦闘が繰り広げられています。

Photo_6ニューズウィークhttp://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/isis-116_1.php

「政府軍と「マウテグループ」などイスラム過激派との交戦が続くフィリピン南部のミンダナオ島情勢で、地元住民が戦闘現場から逃れる際、最大100体の遺体を目撃したと証言していることが17日までにわかった。(略)
政府軍と戦闘になっているのは、主にマウテグループで過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」に忠誠を誓っている。また、地元のイスラム過激派「アブ・サヤフ」とも共闘しているとされる」(CNN6月17日)

https://www.cnn.co.jp/world/35102883.html

政府軍は戒厳令を布告し、陸上部隊以外に空軍も投入し、空爆をしています。

「フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は23日夜、南部ミンダナオ島全土とその周辺地域に戒厳令を布告した。同島南ラナオ州の州都マラウィ市で、ISIS(自称イスラム国)とつながりのあるイスラム系武装組織と政府軍の間で衝突が激化したからだ。
東南アジアにおけるISISの指導者と目されるイスニロン・ハピロンが潜伏するマラウィ市内でフィリピン軍が捕獲作戦を行った際、ISISに忠誠を誓うマウテグループの戦闘員らが政府軍に発砲して銃撃戦に発展。衝突により、周辺の住民に外出をやめるよう通達が出た。同市では27日以降、反政府勢力が病院や刑務所などを占拠している。
戒厳令の期間は60日。ドゥテルテは以前から、イスラム系武装組織との闘争が続くミンダナオ島に戒厳令を敷くと公約していた。フィリピンは国民の大多数がキリスト教徒だが、2016年以降は同国南部が実質的な「ウィラーヤ」(イスラム国の支配地域)になるのではと懸念されていた」(ニューズウィーク5月29日)

練度が高いとは決して思えないフィリピン空軍の空爆は、シリアの例を見ると、市民の多くを巻き添いにし、結果的にISの側に走らせる原因を作る危険がありますのでお勧めできません。

占拠を続けるのはイスニロン・ハピロンが幹部を務めるテロ組織アブ・サヤフ・グループです。

Photo_5イスロン・ハビロン

アブ・サヤフは単一のテログループではなく、ジェマー・イスラミヤ、アルカイダなど世界的なイスラム・テロリスト・ネットワークと連動して動いています。
.アブ・サヤフ - Wikipedia

Photo_7IS旗を掲げるアブ・サヤフ

このハビロンは、2014年にISに加わり、シリアでの戦闘にも参加し、シリアのISの職業的戦闘員を100名ちかくミンダナオに連れて来ていると見られています。

そしてこの受け皿となったのが、地元のイスラム過激派です。

彼らは2016年1月には、ミンダナオにおいて、ISのカリフ制国家を樹立したと宣言しました。

これはフィリピンの4ツの過激派組織が手を組み、ISの指導者バグダディに忠誠を誓ったものです。

ドゥテルテはこう警告しています。

「ドゥテルテは戒厳令下のイリガン市で26日、政府軍の兵士を前に演説した。「ISISはすでにフィリピン国内にいる」「私からテロリストに告げるメッセージは、今ならまだ対話を通じて事態を打開できるということ。もしお前たちに停戦の覚悟ができないならそれまでだ。戦争になるぞ」(ニューズウィーク同)

おそらくマラウィ攻防戦は、かなりの長期戦になると思われます。

フィリピン軍は市民の人質をとられた状態ですので、力攻めをしにくいために長期戦を前提とした包囲戦と海上封鎖で対応すると思われます。

ミンダナオは回りが全部海で内陸が熱帯雨林ですので、非力なフィリピン海軍では完全な海上封鎖は不可能に等しいと思われます。

外国海軍の協力が必須ですが、問題はドゥテルテが誰に支援を要請するかです。

ドゥテルテがいままでのように中国を当て込んだ場合、中国海軍は喜んで南シナ海における海上封鎖・警備活動に協力するでしょう。

対IS戦は大義名分として、これ以上のものはないからです。

これがなされた場合、南シナ海の中国海軍の実効支配は完成します。

一方、いまでも既に米軍特殊部隊が軍事顧問としてマラウィにも従軍していますから、米国の支援を要請するという可能性も捨てきれません。

そもそも、ISの今回の攻勢は、ベトナム戦争直後のスービック・クラークの撤去要求と似た構図の下で発生しています。ドゥテルテは米軍との共同訓練すら拒み、反米親中を掲げました。

彼がどこまで本気かわかりませんが、米国に「信用できない同盟国」という強い印象を与えたことは間違いありません。

エドワード・ルトワックなどは゛フィリピンを信用するなと明快に言い切っているほどです。

米国の軍事力を追い出せば、そこに「軍事の真空」と呼ばれる危険な力の空白地帯が生じます。

現在進行形なのが、ひとつが中国の南シナ海の実効支配であり、いままたISがカリフ国の成立を宣言したわけです。

もしフィリピンにベトナム戦当時のような強力な米軍基地があった場合、ISは手をだせなかったことでしょう。

この原因を作った張本人が、今、ISに浸食されようとしているミンダナオを地盤とするドゥテルテだったのは皮肉なことです。

米国がどのていど真剣に対処してくれるかは未知数ですが、このまま推移すれば中国がなんらかの介入をする可能性もあるかもしれません。

それにしてもこんな状況は去年初めから続いていたのに、モリカケ祭りに没頭してまったく一行も報じない日本マスコミもそうとうなものです。

長くなりましたので、今日はこのくらいに。

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コメント

コメントがゼロなのに驚いていいます。

貴重な情報ありがとうございます。

中共が出張ってくるのは困りものですが、過去の経緯から米軍も難しい感じがしています。

ただ、ドゥテルテさんは共産ゲリラでもなんでも、これと敵対してくれるなら国軍扱いすると宣言されたようで(本当かどうかわかりませんが)それぐらい切羽詰まっているなら、米軍の協力を仰ぐのではないか?と思わなくもありません。

日本は何も出来ないですし、何もしない方が良いのか悪いのかはわからないですが。

とりあえず日本はこのような形でフィリピン政府を支援しました。
https://portal-worlds.com/news/philippines/9213

このニュースの頃、私はマレーシアかインドネシアで何かあるかなと思っていたのですが、ムスリムぎっしりのインドネシアでより、キリスト教国のムスリムが比較的多い地域の方がISのターゲットとしては相応しかったのですね。

今回通ったテロ準でアジアのブラックマネーとテロリストのプラットホームをある程度閉める事ができるなら、日本は先週フィリピンの為にも一仕事できました。
法改正でテロを防ぎきれない!と騒いでいる者達は、海外への資金ダダ漏れで日本がどれだけテロ支援をしてしまってきたのか、目を凝らすべきです。普段世界平和とか言ってるくせに。

ミンダナオ島は記事にあるように2番目に広い島です。宗教分布図によるとマラウィを含む島の1/3位がムスリムの居住地で、ダバオは含まれず、ムスリムは人口の5%ほどだといいます。
マラウィ周辺のカトリック達はどんどん避難しているようで、保護環境が劣悪だというAPFの記事もありました。
おそらく長期化し、鎮圧も難しいのではと危惧します。

日本は、2020年に東京五輪を控えていますよね。
それこそ「世界中」から「東京に」、数え切れないほどの人々が押し寄せます。
その巨大イベントを控えた最中、日本の目と鼻の先でISが暴れている、この現実にまったく危機感を感じないなら、平和ボケではなくもはや平和バカなのかもしれないと思うこともあります。

このまま戦闘が長引きフィリピンが押さえ込みに失敗すれば、ISが台湾や沖縄諸島に流れてくることもまったく否定はできないと思います。
ISが「沖縄に米軍基地があり騒動になっている」ことにいつ気づくかちょっと怖さを感じます。
米軍基地がある沖縄で、反対活動家に混じって自爆テロでもやられたら防ぎようがないのではないかなと思います。
日本人ばかりの中でテロリストがいたら気づく?いやどうだろうと思います。
反基地活動家は中国人や韓国人など反米であれば外国人も受け入れる特徴があります。
欧米人の左翼活動家も反基地活動でテント村などを訪れてたはずですし、反基地活動を一緒に行う人をテロリストと疑うプロ市民っていますかね?
それに日本はアラブ諸国と仲がいいからテロの標的になりにくい、そんなことはありえないですよね。
すでにISには、日本人が殺されているのですから。

しかも今回成立したテロ等準備罪では、ホームグロウンテロはまったく防ぐことができないと思っています。
さらに、オウム真理教のような「犯罪集団未満」の集団にも適用はできません。
日本で自爆テロが起きることを考えるのはナンセンス、そうだろうか、とも思います。

スパイ天国でありテロに無防備な日本が、目の鼻の先のテロリストに無関心である事実を知るにつけ、残念ながら拉致事件も起きるべくして起きたのだなと思わざるを得ません。

日本人は、もっと危機感をもって世界を注視すべきなのだと思います。

初めてコメントさせて頂きます。
いつも感心しながら読んでいます。

フィリピンのISの件、中国が出てきたら、南シナ海で日本が不利になるとは思います。が、中国もウイグルの爆弾が炸裂することになりはしないかと。

ムスリムが最も虐げられているのはどこか?
これにISなり原理主義者が気付くと西域が燃え上がるような気がしました。

西域のカシュガルなんてアフガニスタンの目と鼻の先ですから。

ゆうさんが書かれているような事態の可能性について想像する際、移民の目立つ外見の若者をイメージする人が多いかと思いますが、私の中では違います。
ISが沖縄に気づくのではなく、日本人が彼等に知らせる可能性の方が遥かに高いと思っています。
日本の破防法監視対象者情報を同盟国とシェアすることは重要です。
日本であれば、自爆テロ型でなくパリやベルリンロンドンであったような銃乱射か車暴走、あとは毒物によるテロが有効なのではと思います。
ホームグロウンに限らずテロを完全に防ぐのは不可能ですが、未遂を増やすことは可能です。
中共との絡みは、彼等がでばってきても混沌としてフィリピンとその周辺がまさにシリアの反政府組織三つ巴のようになのではと想像する位で、私には正直見当がつきません。
何年もかけて日本が官民地道に間に入って、この自治区の紛争を収める手助けをしたものを、ISがたった半年でぶち壊してしまいました。

テロ等準備罪に関しては、国際組織犯罪防止条約に参加するために必要であると言うのが政府の見解ですね。
この条約は「組織犯罪対策の平準化」と「国際協力の普遍化」を求めているもので、既に187カ国が加盟、世界的スタンダードとなっています。
つまり、ふゆみさんの言う「テロ情報のシェア」が今後はとても大事になると言う事だろうと思います。
野党などはテロ等準備罪がなくても加盟は可能だぁと言ってましたが、確かに可能ですが、その場合日本はシリアや南スーダンと同じ国なんだなと思われ、そのレベルでしか情報が回されて来ない可能性もありました。

なぜか日本の野党や左派、新聞テレビは「個別的防御」を大変好みます。
有事の際も個別的に守ればいい、テロの時も個別に対応すればいい、とこの調子で、どうやら彼らは有事の際、自分たちで全部対応できて、日本側の都合のいいように周りがいつも助けてくれるだろうと言う物凄い楽観で有事を考えている節があります。

しかし、テロ防御もまた、集団的自衛そのものだと思っています。
逆に日本からも過激派の情報を加盟国と共有することも可能なのではないかと思っていますし、様々な情報やテロの手口を政府も私たちも学び、「備える」ことが大切なのでしょうね。

玉音放送直後に北方領土に侵攻したソ連軍を撃退したのは備えを怠らず迎え撃った樋口中将麾下の戦車隊でした。
「情報」を仕入れ、「備え」、「リーダーが決断」することで最悪を防いだ訳ですね。
樋口中将は玉音放送を聞いた時「これから本番だ、これからが大変だ、必ずソ連が来る」と涙も出なかったそうです。
情報を知り備える大切さを知っていたからこそ迅速に動くことができた。
今後も、政府といった高いレベルから私たちのような民間のレベルまで、こういった備えは震災、自然災害と同じくテロや中国の動向に対しても必要になるだろうと思っています。

http://www.moj.go.jp/psia/kouan_kaiko_index.html

これの中身のもっと濃い、個人情報を加盟国とシェアする訳です。
一体どれくらい出したりもらえたりするのか。
例えば共産党は国会議員はテロ等準備罪適用対象外ですが党としての活動は監視対象ですので、実際どうなのか。総連と繋がっているとされる議員の情報も絶対あるはずですが、そういうのは外すのか。在日で朝鮮籍(もう存在しない国)の監視対象者の情報を日本政府が流す権限があるのか。どこまでシェアするつもりなのか私はすごく知りたかったので今国会は残念でした。
ご本人達が質疑で問う時間が沢山あったにもかかわらず、一言もありませんでした。

そして、この展望の一番下にしゃらっと書いてありますね。イスラムと結びつこうとしている極右勢力へ目を向けていると。
任侠団体山口組が民間軍事会社を作るというコラムがネットニュースにありました。こっち側からのねじれた道もありそうです。

しばらくマラウイ関係の記事はなさそうなので過去記事に追記失礼します。
https://davawatch.com/
ここで割とローカルなダバオとミンダナオの現地情報がとれるようです。ご興味ある方は時々チェックされてみては。

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