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現実的選択としてのイージス・アショア

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安倍氏が敵基地攻撃能力について、当座否定的な考えを示したようです。 

それを報じる朝日(8月6日)です。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6249592

「首相は広島市内であった記者会見で報道陣の質問に答えた。北朝鮮による核・ミサイル開発を念頭に「現実をしっかり踏まえながら様々な検討を行うべきだ」としたうえで、「敵基地攻撃能力の保有に向けた具体的な検討を行う予定はありません」と述べた」

この問題について安倍氏の考えは、定まっていないようです。 

実はかなり前から与党内で敵基地攻撃能力の保有を促す提言はなされてきましたhttp://www.sankei.com/politics/news/170330/plt1703300025-n1.html

「自民党安全保障調査会の今津寛会長らは30日、官邸を訪れ、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、発射拠点を攻撃する「敵基地攻撃能力」保有の早期検討などを政府に求める提言を、安倍晋三首相に手渡した。
 首相は「(北朝鮮の)新たな段階の脅威を深刻に受け止めている。本日の提言をしっかりと受け止め、今後も党とよく連携したい」と述べたが、能力保有の是非には言及しなかった。 菅義偉官房長官は記者会見で「大変重要な提言をいただいた。弾道ミサイル対処能力の総合的な向上のために検討を行っていきたい」と強調した」(産経3月30日)
 

安倍氏は今年3月2日の参院予算委員会で、「国民の生命と財産を守るためには何をなすべきか、様々な検討を行っていくべきだ」(産経3月3日)と述べています。

そして今回、安倍氏は、「様々な検討」の対象から敵基地攻撃能力を保留したということになります。 

つまりは、敵基地攻撃能力は保有しない、防衛大綱の見直しはする、となると選択肢は弾道ミサイル防衛(BMD)の強化だけしかのこらないことになります。

必然的に、パトリオットPAC3の増強と、イージス・アショア(Aegis Ashore 陸上型イージスシステム)の導入ということになります。

Photo_2ミサイル防衛局 [PDF]より) 
http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50788821.html

元来イージス艦に搭載していたイージスシステム(イージス・フロートAegis Afloat)を、ミサイル防衛(BMD)部分を、地上に移植しようというものです。

いままで沢山の実験を重ねてきて折り紙つきのイージスシステムのSPY-1レーダー、C4Iシステム、Mk 41ミサイル垂直発射システム(VLS)、ディスプレイ、電源・水冷装置などを、そっくり地上に設置しようとする考えです。

アーレイ・バーク級イージス艦の設備がそのまま陸上でも使用されます。よっこらしょと移すとこういう外観になるようです。

Photo_4http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50788821.html

艦船搭載型との大きな違いは、設置型なために、常に監視・警戒・迎撃ができることです。

哀しくやイージス艦は白波を蹴立てて疾走してカッコイイのですが、いつも必要な位置に、必要な隻数がいるわけではありません。

海自の4隻のBMD艦は、作戦航海・整備休養・訓練などのローテーションで回っていますから、4隻丸々日本海にいることはありえません。

いつ何時起きるか分からないミサイル発射に対応できる位置に、常にいられる保障がないわけです。

地上型イージス(イージス・アショア)はこの欠陥を補うもので、米国においてはSM-3ブロック2Aが配備されて、既に2015年12月9日に標的ミサイル迎撃実験に成功しています。

この最新型のSM-3ブロック2Aを導入して、日本海側の舞鶴基地に配置した場合の迎撃範囲は、「海国防衛ジャーナル」様(2017年05月01日)によれば以下です。
http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50788821.html

Photo_5「海国防衛ジャーナル」様による。

上図は舞鶴を中心にSM-3ブロック2Aの探知範囲の2000kmの範囲を描くと、このように日本全国をカバー可能となります。   

また、気になる価格ですが、日本はこのシステムを米国から有償援助調達(FMS)で輸入することになり、その価格は「海国防衛ジャーナル」様(2017年05月01日)の試算によれば、8億2千万ドルていどと見積もられています。

一基800億~900億円ということになります。これを高いというか、国民の安全を考えれば安いとみるかは分かれるところです。

私は実現するには技術的障害があまりにも多く、かつ、いつになったら国民的合意をえられるかわからない敵基地攻撃能力などに深入りするより、とりあえず、現実的なイージスアショアで対応することが現実的ではないかと思います。
 関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-42bf.html

しかし航空機による空爆はナンセンスですが、相手の防空網の射程外から発射するスタンドオフ攻撃能力を持つトマホーク巡航ミサイルは、具体的に獲得に向けて検討するべき段階だとは思っています。

これについては長くなりますので、別稿で詳述するつもりです。

ただし、これについても簡単に考えないで下さい。

敵基地攻撃能力の獲得は、日本が日米同盟を超越して独自の攻撃オプションを持つことを意味しますので、国際政治力学上も難しい問題を持っていることを付け加えておきます。

■謝辞 本日の記事は「海国防衛ジャーナル」様の知見に多くを負ったことを感謝いたします。ありがとうございました。

 

 

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コメント

イージスアショアですね。ブロック2Aで列島ほぼ全域(南鳥島とかを除く)をカバーできるのは頼もしいものです。もう導入が決まってるようなので良いでしょう。お高いですけど、できれば数を多くして2ヶ所以上に分散配備すべきでしょうね。。

むしろ総理が「スタンドオフ能力を今は検討しない」という発言が気になります。

スタンドオフ兵器(ぶっちゃけて言えばトマホーク)は欲しいものですが、そうなると日米同盟やら9条がぁー!やらとなりそうですけど・・・
しかし、今のトランプ政権が負担云々で投げ掛けて来ているのは正にここではないかと。つまり「己の国くらいは自分で守れ!」ということです。

隣国の仮想敵は弾道弾と核弾頭を持っています。
迎撃能力を備えることは必然でしょう。
そこから「敵基地攻撃能力」を持つとなるとハードルが上がりますが、「いつでも反撃できるぞ!」と示すだけで効果は絶大です。
核武装を躊躇うか否定するのならば、他に選択肢がないのではないかと思います。

投稿: 山形 | 2017年8月 7日 (月) 06時30分

国民の意識レベルの乖離が激しいと感じます。

敵基地攻撃能力は必要と思う人もいれば、戦後の平和洗脳教育の影響で、自衛隊すらダメだと思う人もいます。

くだらないもりかけ騒動に影響されて、戦後もっとも仕事している首相の支持しないとか平気でのたまう連中とか、そんな人々がこの国に多数いるうちは、国民の安全なんて「守れない」と思います。

しかしながら、一部でもこのエントリーのような内容を議論するのは、将来的には有望だと思います。

ただ、今となっては、現実的な対応すら、夢物語のように感じてしまうのですが。」

投稿: かつて… | 2017年8月 7日 (月) 14時22分

管理人様の仰ることは、ごもっともですが、少しでも国民の意識をかえるべくアピールすることは必要です。現代戦に於いて、また、日本国の置かれた状況においては、「専守防衛」とは「敵国の策源地を叩く能力を持った上で」初めて主権国家として選択・宣言できる言葉です。また、イージス・アショアにしても、どこに設置するかなど、また移動式のXバンドレーダとの兼ね合いなども検討が必要です。日本国の警戒管制レーダは、レーダの能力がまだ十分でない頃、アメリカの調査した拠点にサイトを定められたようであり、かなりよく調査された場所が選ばれています(さすがです)。ということは、現状の空自レーダサイトへの入れ替え等が進んで行くことも考えられます。ますます米国との一体化が進みますね。いっそのこと、大部分の基地を共同運用することが国防の近道になるかもしれません。沖縄の一部勢力の「在日米軍基地の面積の云々」の話もしにくくなる…。いずれにせよ、国防産業の見地からすれば、BMDの話が出た時点で国産防衛産業は、アメリカの下請けとなる道が決まったと思います。それがいいことかは、わかりません。しかし、これも国防に関する議論を疎かにしたからです。管理人様の仰る、実際に効力がある方法を選ぶと同時に、やはりあるべき姿を論ずる機運を高めないと、もう間に合わないと思います。シナ・韓国も通常兵器による敵基地攻撃能力を有しています。日本海側の原発にとって一番の危険は、活断層ではなく、大陸・半島の巡航ミサイルです。これを防ぐ策だけでは、立ち行かないと思います。

投稿: ぼびー | 2017年8月 7日 (月) 16時57分

アショアって、命中率がごく高いなら素晴らしいですね。

私は非ミリオタですので、兵器に対する知識・感覚は市井
の凡人で、その目からはアショアの見た目デザインが秀逸
だと思います。なんてマヌケな外観なんだ!

ハイブリッド自動車の車輪を除去して据え付け、災害用の
発電機にしたような感じ。まるで兵器という感じがしない
ではありませんか?兵器アレルギーのある日本でも、案外
すんなりと国民の合意が得られると思います。コストは、
公務員の人件費を削減して当てれば良い。より愛国者である
モノに税金を使う。人か兵器かは関係ありません。

優れたデザイナーを使って、より非兵器な外観に仕立てれ
ば、まったく導入に対する違和感がなくなるハズです。
見た目フツーの住宅で、実はハイテク兵器というのが理想
ですわ。

ポピュリズムは利用する側に回るべきで、ヤラれる側に回る
ものではありません。私、マジで配備して欲しいです。

投稿: アホンダラ1号 | 2017年8月 7日 (月) 17時53分

こんばんわ。はじめまして。
私は攻撃能力の保持が、講和に臨んで発言権を得る。
専守防衛で戦ったら終わりじゃない。講和がある。
そういう発想が、絶えて久しい感じがしています。
我々日本人が考える平和が望むのなら、そういうことだと思います。戦前、いや戦国時代を持つ我々なら普通の考えに思います。
今後もご活躍応援しております。

投稿: Sum | 2017年8月 7日 (月) 20時02分

 ブナガヤさんと志高い投稿者の皆さまこんにちわ。HYです。

 やはり現憲法下ではミサイルを撃ち落とすか着弾に備えるしかないのですね。ところでミサイル着弾想定の避難訓練に反対する人たちがいるそうです。“北朝鮮を刺激するから止めろ”とのこと。

 国民の不安を何とも思わない変わった人たちですね。

投稿: HY | 2017年8月 8日 (火) 01時46分

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