翁長知事の誤算みっつ
当初、本記事は山路氏の論考とカップリングにいたしましたが、長文のために別途掲載にいたしました。
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私は翁長氏が古巣の自民を割って登場した時の衝撃を、いまでも忘れることはありません。
このときの衝撃がいかにすさまじかったのかは、自民は以後の選挙をことごとく落したことでもわかります。
つまりは、翁長氏は、自民県連からただ「出た」のではなく、「ぶっ壊して出てきた」のです。
この衝撃は自民県連の指導部からもたらされたもので、しかもその手下たちは県庁所在地たる自民党那覇市議団(新風会)でした。
つまり、自民県連の中枢部が丸ごと敵陣営に寝返ったのです。
ひとつの政治集団は外部からの衝撃だけでは、簡単に崩壊することはありません。むしろ結束して強固に固められます。
しかしそれが”ユダ”によってもたらされたものだったが故に、かつての自民県連は内部崩壊の危機の淵に追い込まれたのです。
左翼陣営にとって、これほど痛快な出来事はなかったでしょう。
「翁長」という敵将を得て「島ぐるみ」を演出できたばかりではなく、炎上する敵陣営を高みから見物していればよかったのですから。
この裏切りはおそらく、翁長という政治家にとって、一生つきまとう暗い影となるでしょう。
そして翁長氏がこの裏切りを繕うベールに使ったのが、オキナワ・ナショナリズムでした。
米国政府相手の独自外交、駐米沖縄県大使、国連演説、そして延々と続く移設問題やオスプレイをめぐる本土政府との戦い。
これではまるで、沖縄県は特別自治区だと宣言しているようなものです。
「負ける戦いをしない」政治家であるはずだった翁長氏の誤算は、みっつあります。
ひとつは、なにより共産党を甘く見たことです。山路氏も触れておられましたが、翁長氏がよく知っている公明党とは違って共産党は1㎝も立場を変えません。
共産党の政治目標はあくまでも「全基地撤去」であって、辺野古移設においていかなる中間的な妥協点も存在しないのです。
特技のはずの腹芸を封じられた老練な政治家ほど、この世で惨めなものはありません。
去年3月に本土政府からの提案の「和解」期間案に乗ったことを、翁長氏は後に深く後悔することになります。
では、確実にニッチもサッチもいかなくなる本土政府の提案に、なぜ乗ったのでしょうか。
それがふつためです。
昨日の論考で山路氏は今年5月に菅官房長官が振興計画の延長を唐突に言い出したことを、翁長氏のこれ以上の「抵抗」を封じる手段だと書かれていました。
同じメカニズムは去年の「和解」期間にも働いていたのです。「和解」期間の終了は秋。秋は次年度予算折衝の開始時期なのです。
翁長氏は次年度予算をつり上げるためには、戦闘的ポーズを崩さず話し合っている「ふり」だけは必要だったのです。
翁長氏の政治家としての致命的欠陥は、経済オンチだということです。
おそらくはあまりに長期に渡って、振興予算配分の胴元の座にあぐらをかいてきたために、経済オンチで済んだのでしょう。
ここが経済人だった仲井真氏との大きな差です。
振興予算なしでの県経済をまったく構想できず、国家戦略特区というお題にも、「先島への外国人労働者の輸入」ていどのことしか思いつかないのが、翁長氏です。
つまりは、国からの手厚い経済支援なしで県を動かせないわけですから、国との関係を断ち切れないのです。
三つ目は、国がおどろくほど柔軟だったことです。去年の春に工事を再開することは可能でした。
しかし、それをあえて捨てて休戦期間を作り、毎月官邸の最実力者である菅氏を沖縄通いさせたわけです。
抵抗する翁長氏のメンツを立てながら、話し合いを尽くした形を整え、最後には最高裁判決というこれ以上ない決定打で一連の移設を巡る政治劇に幕引きしました。
その後はエピローグのようなものです。まだ共産党に配慮してゴネる翁長氏を再び「黙らせた」のが、先にも述べた今年5月の振興計画の延長でした。
いまや政府は翁長氏を潰す気などありません。どうぞそのまま「戦っているふり」をしてください。そのほうが都合がいいとすら思っているはずです。
なぜなら、工事はすでに再開されているという実は取っており、しかも無意味な闘争をすればするほど県民は翁長氏に、「成果が出ない知事」という印象を強く持つからです。
そして県民の目には、翁長氏は保守でもなんでもなく、身も心も共産党に乗っ取られた傀儡政治家と写るでしょう。
そして沖縄左翼陣営には、翁長氏に代わる独自候補がいません。
あえていえば山城氏でしょうが、病身なうえに社会党色が強すぎて共産党は乗れないでしょう。
2期を巡って人選さえ誤らねば、山路氏が述べるように保守が奪還できる条件は整いつつあります。
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