北朝鮮再度のICBM実験か
韓国政府は再び北朝鮮がミサイルを撃つ兆候があると発表しました。
それを伝えるロイター(9月4日)です。
http://jp.reuters.com/article/nk-more-possible-missile-idJPKCN1BF0MP?il=0
「ソウル 4日 ロイター 韓国国防省は4日、国会の公聴会で、北朝鮮が弾道ミサイルをさらに発射する可能性が残されているとの認識を示した。大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射する可能性もあるとしている。
国防省高官は「弾道ミサイルの追加発射の可能性の兆候が引き続きみられる。ICBMも発射可能と予測している」と述べた」
このところ正恩は、先を急ぐせいか、記念日発射にはこだわらなくなってきているのですが、とりあえずあるとすれば9月9日の北朝鮮建国記念日ということになります。
発射する可能性が高いのは、核保有国への最後の扉であるICBM(長距離弾道ミサイル)だと、推測されています。
火星14http://www.sankei.com/smp/world/photos/170704/wor1...
というのは、北朝鮮が保有するICBM・「火星14」は、ロフテッド軌道、つまり垂直に打ち上げる実験だけは済ましていますが、通常の遠くに飛ばすミニマム・エナジー(最小エネルギー)軌道での実験はまだだからです。
前回日本を越えて撃った弾道ミサイルは、中距離弾道ミサイルで、最大射程5000㎞でもグアムには届いても、米本土には到達しないわけです。
あたりまえですが、実戦では国際宇宙ステーションより高く飛ばしても意味がないので、通常の遠距離用のミニマム・エナジー軌道で撃つ実験をせねばなりません。
というのは、ICBMの技術的難関は二つあります。
ひとつは「大気圏再突入」で、今ひとつは「核弾頭小型化」です。
おそらく後者の核弾頭の小型化はクリアしたと思われていますが、大気圏再突入を実証していません。
打ち出された弾道ミサイルはいったん大気圏外に飛び出してから、再突入します。
下の写真は、われらが「はやぶさ」の再突入時の想像図です。
大気圏への再突入時に発生する高温はハンパではなく、7000度にも達するといわれています。
この高熱に耐え、しかも激しい振動からカプセルや弾頭を守る必要があります。
角度が少し浅ければ大気圏に弾き返されますし、カプセルの耐熱保護が甘ければ燃え尽きてしまうからです。
「はやぶさ」の場合、スッタモンダ7年間の苦闘の末に、母なる地球に再突入したわけですが、JAXAは正確無比にオージーの着陸予定地点からわずか500mの地点に着地を成功させました。
「はやぶさ」は惑星間航行速度である毎秒10㎞という超高速で大気圏に再突入したために、毎秒数㎞ていどのICBMよりはるかに過酷な条件にさらされていました。
しかし「はやぶさ」の耐熱シールドは完全に機能し、内部を保護しました。
日本人は、この奇跡の帰還を私も含めて心熱く迎えたでしょうが、国際社会の軍事技術者たちは別の見方をしたはずです。
つまり、日本はICBM技術に必要な、大重量弾頭の発射、精密誘導、再突入時の姿勢制御、耐熱シールド、これらすべてを完全に備えている、ということです。
好むと好まざるとに関わらず、日本はICBM技術を保有していると見られて致し方がないわけです。
さて、話を北朝鮮に戻します。
北朝鮮側は「過酷な大気圏再突入でも弾頭の誘導、姿勢制御が正確に行われた。高温条件でも構造的安定性が維持された」と主張しています。
ただし、眉唾でした。というのは、北朝鮮は高角度のロフテッド軌道発射を繰り返していたからです。
この発射方法だと、再突入技術を検証しにくいのです。
北朝鮮がICBMの再突入の成功を国際社会に知らしめるためには、ぜがひでも(余計なお世話ですが)、通常のミニマムエナジー軌道で発射する必要があるのです。
そしてそれは、再び日本列島上空をまたぐような軌道で、太平洋に落す軌道をとることになります。
え、なぜ日本列島をまたぐ軌道かって。わかりきったことを聞かないでください。
日本海に落せばロシアが怒り、東シナ海に落せば中国が怒るのからにきまっています。
彼らを不必要に刺激すると原油を止められる可能性がありますが、怒ってもいささかも怖くないのが「草食国家」日本だけだからです。
ですから、次回のICBMの発射実験では、必ず日本を再び飛び越えることになるのはまちがいありません。
このICBM発射実験によって長射程と、再突入が確証されれば、北朝鮮の核保有はほぼゴールにたどり着いたということになります。
では、米国はどのように出るでしょうか。
よく1962年のキューバ危機を例に上げる人がいますが、ちょっと状況は違います。
キューバ危機はケーススタディとして改めて詳述したいのですが、キューバに核弾頭を装備した弾道ミサイルを配備された場合、アラスカを除く全米が射程に入ります。
しかも今のようなミサイル防衛システムが存在しない時代に、わずか数分で核攻撃を受けてしまうわけです。
ソ連は折れて弾道ミサイルを撤去したわけですが、キューバ側には強い不満が残りました。
誕生したばかりの革命国家・キューバにとって、米国の干渉をはねのけて政権を保存するためには核が必要だと考えていたからです。
この論理は今の北朝鮮とまったく同じです。ただし違ったのはその地理的位置です。
いわばキューバ危機において、今の日本の地理的位置に米国があったために、米国はあくまでも自国の安全のために強面の交渉をおこなったのです。
今回、米国はこのような地理的位置にいません。
北朝鮮が現実にいきなりグアムや米本土を核攻撃する可能性がミニマムな以上、核攻撃をもっとも受ける可能性か高いのは、あくまで日本です。
次のICBM実験が成功したとしても、それが量産されて実戦配備されるまで相当時間かかるでしょう。
それまでは撃ってしまったらオシマイの政治的武器にすぎません。すなわち、米国にとって直接的脅威といっても、たかだかそのていどのものなのです。
強いていえば、キューバ危機の相手方は、それなりの戦略的会話が通じるフルシチョフでしたが、こんどは何をしでかすか読めない正恩だということの差くらいはあるでしょうが。
ですから、米国が今している外交的努力は、軍事オプションをとるためのエクスキューズ作りです。
いきなり先制攻撃をすれば、いかに予防攻撃だと主張しても、戦後に国際社会から批判を浴びる可能性があります。
そのためには、「先に撃たせる」か、「ギリギリの外交的努力をしたがダメだった」という言い訳が必要なのです。
このたびの国連安保理の決議に中露が難色を示すか、実行しないならば、米国にとって「外交的努力をし尽くしたが、しかし・・・」という言い訳が成立することになります。
というわけで、今の情勢は、パンパンにはち切れんばかりの風船に、どちらが先に針を刺すのかという段階になっているわけです。
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はやぶさ帰還の時に、IHIの技術者が「これで再突入の技術が確立された・・・」なんてツイートをしてすぐに削除したのは内緒だ(笑)
まあ、軍事的に見ればそういうことです。。
ちなみに現在飛行中のはやぶさ2に搭載されている「小惑星の表層を掘って破壊する銅板」とは、「自己鍛造弾」そのものです。
投稿: 山形 | 2017年9月 7日 (木) 08時05分
少なくとも世界の軍事関係者はみんな日本がICBMを作る技術があることを知っていますからね。そこに思いが至らないのは日本国民だけです。だから、軍医技術は研究しないなんていう学者がはびこっている。
日本の自前核武装は世界に核不拡散条約の終焉を告げることになるのでP5をはじめとした世界各国にとっては絶対避けなければならないでしょう。まあ、米、中、露の核兵器保持という現実を考えれば、実態は言うほど変わらないかもしれませんが。
投稿: ednakano | 2017年9月 7日 (木) 09時41分
まあ、
「日本は既に秘密裏に報復攻撃用核弾頭を保有しており、有事の際にはいつでも反撃できる体制にある」
という「特定秘密」を、コッソリ北のスパイに教えてあげるだけで結構な抑止力になるかも、です。
投稿: 都下人 | 2017年9月 7日 (木) 11時27分
https://dhctv.jp/
石平氏が北朝鮮に怒っております。「ありんくりん」さんが日本人は怒るべきだとおっしゃいましたが、石平氏のように怒るのが私たち日本人の義務だと思いますね。
投稿: ueyonabaru | 2017年9月 7日 (木) 15時57分
日本にはもう、国家ガンジー主義しか残されていませんわ。
核シェルターもロクすっぽ整備してこなかったので、核
兵器に素手で挑むことになります。「ケンポー第9条」と
染め抜いたTシャツを着て、大地の上に「大の字」に寝る
のです。
そして自撮りしてインターネットに即時流れるようにして
おくのです。蒸発したりふっ飛んだり大火傷をしたりして
酷い姿で絶命する己の姿を配信するのです。画面には
第9条の英文をテロップで読めるようにしておきます。
「憲法第9条」を守り抜くサムライ達の最後の姿は、世界中
で多くの人の心を突き動かすでしょう。独裁者は全世界の
人類を敵に殺し合うことになるのです。必ずや八つ裂きに
されるでしょう。
モンダイは、「第9条を守れ!」と叫んでいる人達が、本当
にそこまでの覚悟があるのか?という事です。ちなみに
私はずっと「早く改憲しないと大変な事になるぞい」派
でしたので、少しでも被害が少なくなるように逃げ惑う
事をお許し下さい。
投稿: アホンダラ1号 | 2017年9月 7日 (木) 22時46分