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2017年10月

2017年10月31日 (火)

「ユニコ」さんにお答えして 人格攻撃では批判になりませんよ

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初めはコメント欄で「ユニコ」氏に答えたものですが、長いのでこちらに移動しました。 

ああ、やっぱり来たか。山口敬之氏と書けば、必ずこういうコメントが来ると思っていました。 

依田氏、長谷川氏、篠原氏・・・、反基地派を批判する人たちは、ことごとく「こいつは○○のような奴だからデタラメだ」とやられましたもんね。

私なんかアベサティアンの司祭だそうで(爆)。

さてこういう批判の仕方は、いいかげんやめませんかね。

まるでそう書けば論証終了、Q・E・Dってわけで、実は何も言っていません。

○○はひどい奴だ=○○は腹が立つことを書いた=だから○○の書いたことはデタラメだ。

ひどい奴だから論考までデタラメということで、驚異の三段論法です。

「ひどい奴」と証明できれば発言内容そのものも全否定できてしまう、実にお手軽な批判方法で、こういうのを「論理の飛躍」とか「証明の短絡」と呼びます。 

ひとことで言えば、詭弁です。言論を戦わせる場でそれをやっただけで相手にされませんので、ご注意下さい。 

Photo_22015年5月8日有本香氏ツイッターより 眼鏡の男性が山口氏

さてユニコさん、山口氏のレイプ疑惑と昨日の記事は無関係です。 

私は情報は様々なルートで入手していますが、その確度が高いかどうかは、別の情報がそれを裏付けている場合には信頼に足ると評価しています。

昨日の記事の場合、「安倍氏がなぜ朝鮮情勢について寡黙になったのか」という事と、「安倍氏はなぜ解散記者会見で自分の不利になることを冒頭から出したのか」という2点の素朴な疑問から始まっています。

いまや日米の安全保障上の情報共有のレベルが飛躍的に上がっているということは様々な情報から確かなことで、特に山口氏の独創的見解というわけではありません。

菅官房長官も、「特定秘密保護法があるために米国からの情報が大量に入ってきている」と記者会見で述べています。

山口氏の記事が私の興味を引いたのは、「安倍首相のどす黒い孤独」という為政者の心理分析が正鵠を射ていると考えたからです。

ところで、ユニコさん。あのWillの山口記事が「幇間のおべんちゃ」ですって?あなた、失礼ですが読んで言っているの?

どこがどうオベンチャラなの?教えて下さいな。ちゃんと読んだら、こんな薄っぺらなこと、書けませんからね。 

そもそも情報は属人的なものではありません。

それに山口氏の記事は手掛かりとして使わせてもらっているだけで、展開は私独自のものです。

文中に自分の気くわないジャーナリストが出ると、「○○はレイプ犯だからデタラメ」と言うんですから、自分のリテラシー能力を問われます。 

山口氏の「レイプ疑惑」自体に立ち入る気はありませんが、そもそもあのレイプ疑惑は、警察・検察が却下し、さらには検察審査会ですら却下したものです。 

これだけの司法の正当な手続きにもかかわらずなにも立件されるべき要素はなかったのですから、一般的には「なにもなかった」と解するべきではないでしょうか。

ユニコさんは山口氏が「レイプ疑惑で雲隠れ」と書いていますが、検察審査会で審議している真っ最中に、当事者が場外で発言することのほうが非常識なだけです。

Photo
詩織氏は本も出した上に、いろいろな場所で発言しているようですが、それは検察審査会の審議に有形無形の圧力をかけることになりますから、いかがなものかと思います。

審査会が膨大な証言と証拠に基づいてシロ判断を出しても、詩織氏はまだ主張を変えないようですので、後は民事訴訟の法廷で争うということになったようです。

民事訴訟なら検察とは違うので、ならばもう自由に発言してかまわないと山口氏が判断したのは、しごく常識的です。

でなければ、発言することが職業のジャーナリストにとって、死に等しい苦しみだったことでしょう。しかも「レイプ犯」という社会的生命を断たれるような糾弾ですからね。

ユニコさん、事実関係は裁判として公開されますから、それを見てから彼を「レイプ犯」扱いにすることです。

いまこの件で騒いでいるのは、「リテラ」のようななんとかアベ氏の「忖度」があったとくっつけたくて騒いでいるようなアベノセイダーズの人たちだけです。 

それに当時彼はあのTBSの社員なんですがね。だから検察が「忖度」したとしたらそれはTBSです。

だから、この疑惑とやらが週刊誌で騒がれても、メディアは同業のTBSに「忖度」して沈黙していました。

一時は反安倍ネタが大好きな外国特派員協会ですら、詩織氏の会見を拒否したほどです。

安倍氏を叩こうとしたら、逆に天に唾することになりますからね。 

まぁ今月号のHanadaに彼の反論が掲載されているので、読んでから書き込むことです。
私は一読して説得力のある反論だと感じましたが、まぁそれは個々人の感じ方です。
 

とまれ、両者の言い分を聞かないで一方だけ犯人扱いすると、スキャンダルを立てられたら即罪人扱いということになります。

推定有罪は人権無視ですので、ご注意ください。

snsn氏寄稿 アベノミクスの課題とリスク その2

  025

snsn氏寄稿の2回目です。本日の記事は北朝鮮危機とからめて消費増税について展開されておられます。 

実は私も「共同統治」案に近づいていたので、先に書かれてしまったぁ。 自分のブログで先に書かれたというのも妙な気分(笑い)。

ではどうぞ。 

                  ~~~~~~~~~~ 

              ■アベノミクスの課題とリスク その2                                              
                                               snsn
 

承前 

3.今後の経済政策の展望

え~ここからは深読みコーナーですw

政府の今後の経済政策の動きを個人的に深読みをしていますので、大外しするかもしれませんので悪しからず。


今後の経済展望を考える上で避けて通れない北朝鮮問題、つまり日本が戦争に巻き込まれる<戦時下経済>と<戦後経済>の観点から深読みをしてみましょう。


(1)戦時下経済と消費税

これは前回の寄稿「ニセモノ政治時代の終わり」

http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-041c.html

ここでも説明した仮説ですが、北朝鮮戦争勃発時にはいくつかのパターンを想定する必要があります

・朝鮮半島のみが戦場となる
・日本も戦場となる

前者であるならば、1950年の朝鮮戦争時同様に軍事物資、支援物資等の大幅な需要増による景気の過熱、過度なインフレを警戒する必要があります。

一方で後者である場合でも被害の程度によりますが都市機能、発電所、ダム、交通などインフラの大規模破壊による供給能力の減少によるインフレを警戒する必要があります。

どちらにせよ、供給<需要というギャップが一時的でしょうがインフレを促進させます。

かつて高橋是清が世界恐慌からデフレ脱却を成功させたものの、戦時下経済でのインフレ抑制に失敗し結果的に226事件で暗殺されてしまった教訓を生かし、密かに消費税増税でインフレコントロールすることを考えているかもしれません。
 

(2)戦後の北朝鮮共同統治事業

私の仮説では米中ロ韓日で体制崩壊後の共同統治を検討しているのではないかと考えています。

最悪の場合武力衝突は避けられないとしても、兵力から鑑みて北の体制崩壊は短期で行われることは確実であり、

周辺国として<戦後>を想定する必要があります。大量の難民や経済復興をどうするのか。

共同統治のメリットは、中ロにとっては例えば北を非武装中立国にすることで米との防衛ラインを38度線のまま足止めできます。

また難民を発生させず、なんとか自国内に止めることができます。

韓国にとっては自国だけで北の統合をすると背負いきれずに経済破綻する可能性がありますので共同統治が望ましいでしょう。

統一ナショナリズムを沈静化させる必要はありますが・・・。

また現在の在韓米軍は形式上国連軍ですので、国連としても難民問題の解決であれば賛成しやすい。

 

                                         (続く)

2017年10月30日 (月)

全面改訂版 首相はなぜ解散記者会見を消費税から話始めたのか?

017

snsn氏の寄稿はもう一本のほうです。ぜひお読みください。

さて、非常識にもほぼ全面的に書き換えてしまいました(汗)。まったくの新記事となりました。朝読まれた方、まったく別記事ですから、ごめんなさい。

実は今朝この記事を上げてから、一日悩んでしまいました。

それは、「なぜ首相は消費増税を確約してしまったのか」という疑問です。最初の稿ではその問いに答えていません。

だってあんな国民に嫌がられることなど、黙っているほうが有利に決まっているからです。それも負ければ退陣必至の総選挙前にですよ。

安倍氏は最悪50議席は落すと予測していたと伝えられます。

Photo_3
勝った後の首相の顔がいささかも晴れなかったのは、野党の自壊によって信任を得た僥倖にすぎないと分かっていたからでしょう。

で、あったとしても彼は、国民の護民官として眼前の戦後最大級の国家的危機に対応せねばならないのですから。

そんな勝負をかけた解散宣言冒頭に増税などと言う必要もないわけですし、言い訳のように福祉目的だからどうのと言い訳がましく言うこともなかったのです。

事実、保守論客の何人かが、「消費税を固定化するもの」と手厳しく批判しました。

当然冒頭から北朝鮮一色で信任を問うてよかったし、そのほうが得策だったと思いました。

私は当初首相のミスかと思っていました。

たぶん、そうではありません。あの解散記者会見原稿を、首相はひとりで前日の夜に悩みに悩んで何度も消しては書き、消しては書いたと伝えられています。 

安倍氏は解散宣言記者会見、消費税の使途から始めていました。この意味を少し考えてみましょう。

ひとつの合理的理由として、国民にはとうてい率直に話せる内容ではなかったという説があります。 

これは朝鮮半島情勢があまりに切迫した状況なために、逆にこれを前面に押し立てられなかったこともありえるでしょう。 

山口敬之氏はWILL12月号で、安倍氏がトランプと世界の首脳で最も近い関係であるだけのことではなく、現在かつてとは別次元の関係が日米間にできあがっていることを述べています。

「官邸とホワイトハウス、両国のNSC(国家安全保障会議)がガッチリとタッグを組んだことで、事務レベルの風通しがよくなった。
さらに特定秘密保護法の成立で、米軍が自衛隊と共有する軍事情報のグレードとシステムが変わり、これまでは手に入らなかった非常に高いレベルの軍事機密情報にアクセスできるようになった。
これにより総理大臣であり自衛隊の最高指揮官である安倍氏にはこれまでには入手できなかった種類のきわめて生々しい情報が、リアルタイムで入って来るようになった。
そしてその情報の質量と反比例するように、安倍の口は目に見えて重くなった。」

山口氏は、米中間で新たな「北朝鮮処理」の秘密合意の枠組みが出来上がったのではないかと見ています。これについては稿を改めて書いてみたいと思います。

Photo_2https://www.jimin.jp/news/press/president/126548.h...

さてそのような外的要因だけではなく、おそらく政府・与党内部においても、本日の論考でsnsnさんが指摘されているように早期のデフレ脱却宣言を求める動きが活発化しています。

つまり、「失業率を見れば明らかなようにデフレは終わったんだから、さっさと脱却宣言を出して、財政赤字をなくそうぜ。さぁ、緊縮始めるぞ!」というわけです。 

いまや野党に行ってしまいましたが、小池女史のいう「ポスト・アベノミクス」とは、端的に金融緩和の終了と、財政均衡主義(プライマリーパランス黒字論)への復帰を意味しています。

野党は共産党を除けばおしなべて三党合意路線を守れ、つまり増税しろというのが元来の主張でした。

ではここで首相が、「増税は予定どおり行う」と宣言してしまったらどうでしょうか?

野党は選挙対策上、必ずいままでの増税路線から消費増税凍結に転向することでしょう。

そしてそのとおりになりました。

野党は反安倍だけのために消費増税凍結に飛びつきました。彼らが無責任なポピュリストだからです。

ところがよく考えて下さい。実は消費増税問題など田中秀臣氏が言うように、「1年先に決めればいいことで、今決めることではない」問題なのです。

ならば、2019年10月、その前の準備を入れて1年前の2018年10月頃に決めればいいわけです。

その時にまででデフレ脱却に到達していればよし、おそらくむりでしょうから、首相はたぶん次の国政選挙に再凍結を訴えるかもしれません。

その可能性は多くのリフレ派論客が口を揃えていますが、蓋然性としてはありえますが、首相の腹まで私にはわかりません。私もそうあってほしいと心底願います。

とまれその時、野党陣営はすでに凍結を衆院選で主張してしまった以上、もはや彼らはそれを否定できないはずです。

そう考えると、この消費税凍結の言質を野党から引き出し、返す刀で与党増税派も黙らせること、それが今回の首相のほんとうの目的ではなかったのでしょうか。

つまり、首相が凍結したかったのは、この北朝鮮情勢の危機が極大化する情勢を前にしての消費増税の政治争点化の回避すること、ここにこそ真の目的があったのだ私には思えるのです。

そのために逆に冒頭に出したのではなかったのか。うがちすぎかもしれませんが、私にはそう思えるのです。

結局、消費増税は争点足り得ず真の争点である北朝鮮問題が全面的なテーマとなっていったのはご承知のとおりです。

 

snsn氏寄稿 アベノミクスの課題とリスク その1

540
snsn氏から優れた経済政策についての論考を寄稿いただきましたので3回分割で掲載いたします。

労作をありがとうございました。

私のリードは長すぎたので、記事に移しかえました。

なお、表題は編者がつけたものです。


                    ~~~~~~~
 

             ■アベノミクスの課題とリスクその1
                                               snsn
 

選挙も終わりましたので、腰を落ち着けて各党の経済政策について評価をまとめたいと思います。

立憲民主党と希望の党についてですが今後解党、再統合などの可能性があり現時点で提出されている公約は変わってしまうでしょうし論じる意味はないと思います。

また批判的な観点では管理人さんが既に的確に解説してくれていますので、そちらを参照ください。

「小池が作り、小池が壊した反安倍政局」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-1152.html

一つ言えるとしたら両派とも表面的には経済成長を志向しているようでいて、その内容は緊縮派であるということです。 

また経済政策を実行するにあたっては財務省との調整、日銀総裁人事など政治的実行力が問われますが両党にそれがあるとは到底思えません。

従いましてここでは自民党の経済政策の評価を中心にまとめさせていただきます。


1. 有権者から見たアベノミクス評価


よくアベノミクスで景気が良くなった”実感”がないという批判があります。アベノミクスの成果は出てきていますが、まだまだ道半ばといったところでしょう。

就職率の改善、企業の倒産の減少、自殺率の減少、円安による恩恵などの領域では”実感”している方も確実にいるはずです。

今回の選挙結果について日経新聞記事(2017年10月22日)を引用します。
 

「年代別に自民の支持率をみると、20代が40.6%と最高だった。次に70歳以上が40.2%と高く、18~19歳が続いた。40~60代はいずれも30%台前半だった。
立憲民主は60代の17.8%が支持するなど高齢層の支持率が高かった。最も高かったのは60代。
70歳以上が16.7%とそれに次いで高かった。10~30代ではいずれも10%を下回り、高齢層ほど支持を集める傾向が強かった。共産も高齢層のほうが若年層より支持率が高かった。」

もちろん投票行動は複合的であり経済政策だけで決まるわけではありませんが、アベノミクスの成果が投票行動に結びついている可能性は十分にあると思います。

就職率が改善していることが若者層の支持に繋がっていると想定されますね、

一部オールド左翼が若者の保守化と主張していますが全く違います、若者はイデオロギーに囚われず合理的な投票行動をしているのです。


立憲民主支持の60代高齢者についてですが、全共闘世代のオールド左翼の支持基盤に加えアベノミクスによって、現預金保有、債権に対してインフレ税という形で負のインパクトがありますので自民党を支持しなかった可能性がありますね。

そう考えると年代別には、各層でアベノミクスの効果を”実感”していると言えます。一般的には経済政策を詳しく調べて投票する人は非常に少ないでしょうが、経済政策の<結果>には敏感であると考えています。

しかしながら地域別にみると、都心部に比較して地方の経済状態は改善されているとは言えないと思いますし現在40代のロスジェネ世代、親の介護を抱えている世代などは生活が厳しいことに変わりはないでしょうから、まだまだアベノミクスの効果はムラがあると言えます。

今回の自民党圧勝を見ていると、多くの有権者の中にあの民主党時代だけは勘弁して欲しいという気持ちがあるのでしょう。

人間とは改善に対する”実感”はなかなかわかないものですが、どん底の”実感”は強烈に覚えているものです。

100社回っても一つも内定が取れなかった学生、銀行に融資を断られ倒産した企業などなど・・・。

アベノミクスで景気が良くなった”実感”がないという人でも、民主党時代のどん底の”実感”を覚えている方が非常に多くいたでしょう。


■ 2.アベノミクスの課題、リスク

(1)反緊縮系に対し、緊縮派が勢いを増している

党幹部クラスだと、もともと安倍さんか菅さんくらいしかリフレ派はおりませんし、ここにきて石原伸晃が消費税を15%と言い出しています。


緊縮派石破も総裁選出馬の噂もあります。同じく緊縮派(構造改革派)小泉ジュニアの存在感がどんどん高まっています。安倍さんの後継者が見当たらないというのがリスクでしょう。

二回生中心の「日本の未来を考える勉強会」では反緊縮、消費税増税凍結を提案していますが今回現職メンバー29名のうち幹事クラスの安藤裕氏などは当選しましたが、青山周平など9名が落選です。

反緊縮陣営の大幅な戦力ダウンと言えましょう。

野党の方でも、希望の党からでたリフレ派経済に明るい馬渕澄夫が落選、民進党の金子洋一は下野したままです。

与野党含めて経済に明るい層が減ってきている印象があります。議席を多く確保したからといってアベノミクスは安泰ではないのです。

(2)政府やリフレ派のトーンが微妙に変わってきている点

10月25日のロイターによると

「政府部内では、物価の2%上昇と切り離し、2%達成前にデフレ脱却宣言をすることが可能かどうか具体的な検討が始まっている。」

とのことです。当初目標の旗を降ろすような検討がなされていますが、上述のようにアベノミクスはまだ道半ばであり時期尚早ではないでしょうか。

(この記事の編集ロイター田巻氏は観測気球的に記事化する傾向があり多少割り引いて読んだ方がいいと思いますが)

最近リフレ派経済学者、内閣ブレーンの浜田宏一氏からは最近消費税10%増税を許容する発言もありました。


安倍さんも会見では、このように述べています。

「生産性革命により、全国津々浦々に至るまで賃上げの熱い勢いをさらに力強いものとすることでデフレ脱却を目指す。」

金融緩和や大幅な財政出動といったトーンが後退し、「生産性革命」という構造改革的な=小泉ー竹中的なキーワードが冒頭に登場します。

経済学では、デフレ期に供給サイドである生産性を向上させると需要ギャップが拡大するためにデフレが悪化するのでありアベノミクスの効果を打ち消す懸念がある。

このような政府やリフレ派ブレーンのトーンが変化しているのは今後のリスク事項だと考えています。

(3)消費税増税公約について

安倍政権の過去の国政選挙を振り返ってみると

・2012年 衆院選 政権奪取
・2013年 参院選 アベノミクス

・2014年 衆院選 消費税増税8 →10%を 2015/10/1  → 2017/4/1に延期
・2016年 参院選 消費税増税8 →10%を 2017/4/1 → 2019/10/1に再延期
・2017年 衆院選 消費税増税10%路線維持 2019/10/1


このように2014年も2016年も、選挙では消費税増税延期を争点にしています。

しかし今回の選挙では増税維持を公約化してしまっており、これまでよりも実施確度は高まっています。

また過去の延期は実施の1年前の選挙で争点化しています。

それは消費税アップ時には企業やお店がメニューを変更したり、会計システムの設定を変更するなど実務的対応期間も考慮しなければならないからです。

そうなると2018年の10月頃には、延期を決める必要がありますので実はあまり時間がありません。

来年にはデフレ脱却宣言→消費税増税という流れが形成されつつあるように感じます。

杞憂であれば良いのですが・・・。

今始まった来期予算編成に大幅な財政出動が盛り込まれるか、来年3月の日銀総裁人事がどうなるかが重要な指標になりますので注視しましょう。

アベノミクスは失敗ではなく、まだまだ足りないのです!

 

                                              (続く)

2017年10月29日 (日)

日曜写真館 命の盛りとしての花

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2017年10月28日 (土)

八重山日報論説 改憲、沖縄から議論発信を

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八重山日報の論説をこちらに落しておきます。

目配りの効いたバランスのよい素晴らしい論説記事です。特にこの 9条改正を沖縄の基地縮小とからめてひとつのものとして展開した論旨は眼からうろこでした。

「9条改正によって自衛隊を憲法に明記し、自国を守る戦力として位置付ける。米国だけに頼らない安全保障体制を目指す。
それが米軍の整理縮小を進める上で画期的な第一歩になる。県民が将来、米軍基地負担のくびきから逃れたいと願うならば、改憲は最終的に避けて通れない道だ。」 

八重山日報は沖縄本島ではなにかというとすぐに「極右」とか「カルト宗教とのつながり」などと誹謗されますが、これを読む限り本土ならむしろ保守でもリベラル寄りのスタンスです。

地元2紙を潰せなどとは思いませんが、選択の自由がある言論空間は民主主義の大前提ではないでしょうか。

八重山日報の本島での奮闘をお祈りします。

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               ■改憲、沖縄から議論発信を
                                    八重山日報10月27日
 

憲法改正の議論が現実味を帯びてきた。衆院選で、安倍政権下での憲法改正に賛同する与党や希望の党、日本維新の会などの改憲勢力が、憲法改正の発議に必要な衆院定数の3分の2以上を獲得したためだ。 

沖縄は米軍基地問題や尖閣諸島問題に悩まされ、日本の安全保障が抱える矛盾を体現している。沖縄の視点から、憲法9条改正に向けた潮流を起こしていく好機だ。 

残念ながら沖縄では、9条をめぐる論議が活発化しているとは言えない。むしろ9条改正は「平和憲法」の破壊につながるとの誤解が横行しているのではないか。 

一部の政治家やメディアが言うような「戦争のできる国」を目指す乱暴な改憲論議は存在しない。そうではなく、沖縄に象徴される安全保障体制のひずみを解決するための知恵こそ改憲である。 

言うまでもなく9条は、戦争放棄と戦力の不保持を定めている。そのため日米安保条約に基づき、日本を他国の侵略から守る役割は実質的に在日米軍が担い、自衛隊は補完勢力でしかなかった。

しかし、在日米軍専用施設の70%が集中する沖縄では、米軍絡みの事件・事故が絶えない。しかも日米地位協定によって日本側の捜査権は制限され、日本人に比べ米軍が優遇されるという不条理な状況が続く。 

日米同盟が日本の平和と安全に貢献してきたことは事実だが、他国に自国を防衛してもらう「いびつ」な体制のツケを、戦後一貫して沖縄県民が支払わされてきたのである。 

9条改正によって自衛隊を憲法に明記し、自国を守る戦力として位置付ける。米国だけに頼らない安全保障体制を目指す。

それが米軍の整理縮小を進める上で画期的な第一歩になる。県民が将来、米軍基地負担のくびきから逃れたいと願うならば、改憲は最終的に避けて通れない道だ。 

9条の理念を「実行」し、沖縄を「非武装地帯」とするよう求める声も県内では根強い。翁長雄志知事も「沖縄を平和の緩衝地帯にしたい」と強調している。 

しかし歴史を振り返れば、沖縄戦だけでなく、近世には薩摩侵攻の被害もある。沖縄が繰り返し戦禍に踏みにじられてきたのはなぜか。 

備えが無力であれば、犠牲になるのは結局、住民であることを歴史の教訓は示している。 

改憲に強く反対している外国が中国だ。中国外務省の耿爽(こう・そう)副報道局長は23日の記者会見で、改憲勢力が国会発議に必要な衆院3分の2の議席を確保したことに関し「日本が平和発展の道を引き続き歩むことを望む」と述べ、9条改正の動きを牽制(けんせい)した。 

中国は石垣市の行政区域である尖閣諸島周辺海域への公船派遣を継続し、沖縄に対する領土的野心を公言している唯一の国でもある。 

現憲法のほうが中国にとって都合がいいということだろう。その意味で改憲は遅まきながら、中国に対し、尖閣への手出しを控えるよう求める強力なメッセージになるはずだ。 

ただ改憲のプロセスは、日本の軍事的台頭を警戒する中国や韓国の理解を得る努力と並行して行うべきである。改憲はあくまでも国内問題だが、中韓の対応によっては国際問題に発展する恐れもあるからだ。 

恒久平和をどう実現するか。9条のあり方を今一度考え直すことで、実行可能な道筋をつけたい。

試読のお申込み/ https://www.yaeyama-nippo.com/

山路氏寄稿 沖縄選挙戦に見る沖縄自民党の問題点その2

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山路氏の論考最終回です。

私も頷くことばかりで、昨日は数行のリードを書くつもりが一本になってしまいました。しかもその後に大加筆。(汗)失礼しました。

現況の沖縄自民は、どの県の県連よりも国政を担う政党としての自覚と覇気に欠けています。

今回、選挙前に予想されていたように安倍政権が崩壊したとしたら、沖縄県連も無事ではすまされなかったでしょう。

来年早々の名護市長選、そして沖縄の政治の未来を決定づける県知事選で、沖縄自民が今のように普天間移設を争点隠しするままのようでは、再び一敗地にまみれるかもしれません。

この八重山日報の論説でも読んで、背筋を伸ばして下さい。
https://www.yaeyama-nippo.com/

沖縄自民よ、しっかりしろ!なんやかんや言っても、あなたたちが頼りなんだぞ。

おっと長くなりそうなので、今日はこれまで。

                ~~~~~~~~

    ■沖縄選挙戦に見る沖縄自民党の問題点その2
                                          山路敬介
 

承前

翁長知事でも補助金は確保できると思い始めてしまった 

もう一点、事の「善し悪し」は別として、県民の関心事は補助金の多寡の問題でもありますが、3000億円台の継続に尽力したのは自民党前衆議院議員四氏や島袋氏などであり、現実に国とのパイプ役として県民に為にそのような業績を果たして来ています。

ところが県民は、「沖縄の自民党衆議員がおらずとも、補助金の確保に問題はない」と思い始めています。

つまり県民はもう、「3000億円台も振興法の延長も、翁長知事でも達成出来る」と確信しているのです。

これは安倍政権と自民県連の間の大失敗でもありますが、とにかくそういう「絵」として県民に写ってしまっているんですね。 これも致命的に痛い部分です。

普天間の代替施設はもともと県内移設が最初に決まり、辺野古移設はその後に県側の承認のもと米軍や日本政府、三者の合意事項になったのです。

ところが、鳩山が現れて「最低でも県外」とやった。

日本国の総理総裁がそう言うのですから、自民県連も総じて「県外移設」に舵を切る他に手立てが無くなりました。

しかし、結局は鳩山も「辺野古しかない」と理解して、辺野古移設で閣議決定をして退陣しました。

その後自民党政権になり、予定通り仲井真前知事は「埋め立て承認」をしましたが、これは「鳩山前」の、然るべく決定された位置に戻った当然の成り行きでした。

この時、いち早くその位置に戻ったのが島尻安伊子氏であり、西銘恒三郎氏でした。(だから今でも島尻氏や西銘氏は二紙の目の敵なのです。

一方の翁長氏は、この機を利用して手兵を連れて自民党を出て革新と接着する事にし、「政局」に乗り出しました。

これは父親殺しの「謀反」ですから、理論的にその「正当性」の所在が「大義」として必須だし、乗り越えなければならない大問題だったのです。

そこを二紙や本土の左派マスコミと組んで詐欺的な作り話をでっち上げ、「事実の歪曲」でストーリーを組み上げ、知事になったのが翁長雄志という人物の正体なのです。

ところが今、翁長氏はまさに、その身体ごと革新に乗っ取られ傀儡化しつつあるのですから皮肉です。まぁお約束のとおりの末路ですが。

濡れ衣を晴らそうとしない沖縄自民

二紙を中心としたこの部分の報道は革新の為に作られたストーリーであって、その経緯を無視し、鳩山の「県外移設」を起点・出発点として、そこをベースに据えた「意図的に作られた詐欺的な作り話」なのは既に本ブログでも明らかにされて来たとおりです。
 

その観点からは沖縄自民党や仲井真前知事は「変節者」であり、県民にとっての「裏切り者」なのです。

このような「落とし込み」の手法は左翼が昔からよくやる手でして、古くは「公害問題」やベトナム反戦問題にもそういう部分がありましたし、慰安婦問題では日本の国家自体が落とし込まれました。モリカケもそうですね。

「情報の一部を隠す事」がその重要なポイントなのですが、さらに「議論嫌い」の沖縄県民には拍車をかけ、その効果は絶大なのです。

ここのからくりは今だに県民に認識されていず、「それでも西銘氏の父上は功績があったから」とか、「とにかく安伊子ちゃんは頑張ってるし、いい人だから」とか、ある意味「変節を許した上での支持」である事で沖縄自民党は本当にいいのか? と問わざるを得ません。

まるで慰安婦問題においての日本の外務省のようなもので、濡れ衣を晴らす努力もせずに「もう既に、謝罪も賠償も行った」と言っているだけに等しいのです

しかし、それを防げない組織は往々にして、その組織内部にも問題がある場合が多いのも事実です。

■党見解を言えない自民議員たちではやがて消滅していくだろう 

例えば、国場幸之助氏。

私は、彼が小選挙区で落選して比例で救われた事はむしろ良かったと思う。

引き続き自民党の「捨扶ち」を心して食んで、保守の原点に戻るべきです。

彼にも公明の地盤を引き継いだ選挙区事情があり、選挙戦においても公明党の重鎮が側近ですから、言われん事もたしかにあるでしょう。

しかし、辺野古や尖閣のような国家の最重要案件についてすら党見解を言う事が出来ない姿勢、これは大いに問題だし「保守」として致命的です。

くわえて、自民党は国民政党なのです。

その意味は、自民党議員は地域の代表であると同時に、日本国民全体の負託に答える最大限の義務がある、という事です。

ある自民党県議が私に、「犬は吠えても、辺野古基地は出来る」式にこう言いました。

「このような自民党の状態は辺野古が出来るまでの一過性の現象であって、工事が完了して普天間が返還されれば、必ず県民は「ああ、よかった」と理解してくれるので、今は辛抱だ」と。

「いやいや、その前に自民党が沖縄からなくなりますよ」とは流石に言い返しませんでしたが、この議員は何も分かっていないのだし、こういうのが沖縄自民党のスタンダードなのです。

雑駁に言えば、そもそも「辺野古問題」などというものは私たち一般の県民にとっては些事にすぎないのであって、それは二紙でも革新でも実は同じなのです。

彼らにとっての「辺野古問題」とは権力闘争の手段なのであって、「舞台」であり、一つの「目印」に過ぎません。

自民党は選挙中と如何にかかわらず「駆逐される側」の立場であり、「標的」となっている自覚が足りなさ過ぎます。

                                           了

 

2017年10月27日 (金)

訴える力なき沖縄自民党

056

山路氏の寄稿はもう一本のほうです。ぜひお読みください。

なお、記事全体を大幅に加筆しました。すいません。

                  ~~~~

私はかねてから、沖縄自民は腰が引けていると思っていました。今回の衆院選は、特にその傾向が強かったような気がします。

オール沖縄との最も鋭い対立点であるはずの基地移転問題や安全保障テーマに真っ正面から挑まず、態度をあいまいにしたまま問題を避けているように見えます。

端的に、それはオスプレイや移転問題に対する態度です。個別の自民候補の演説までチェックしていないのですが、言及しないか、ぼやかしているような気がします。

沖縄自民にはしっかりとした安保観が脆弱なのです。

中国や北朝鮮の脅威、あるいは景気回復をどう実現するか、といった焦眉の課題をどれだけ沖縄自民は訴えられたでしょうか。

もちろんこれは本質的には本土政府に責任があることは事実です。

本土政府は「負担軽減」といいながら、そもそもなぜ沖縄に基地が必要なのか、沖縄を守るためにはどうしたらいいのか、という安全保障上の問題を「愚直に政策を訴え」てきませんでした。

本土政府は振興予算のパッチを貼るだけでした。

本土は沖縄への過剰な贖罪意識から、腫れ物に触るような対応をしてしまい、それがかえって問題をこじらせる結果につながっていることもしばしばです。

このあいまいさが、沖縄自民に乗り移っているのかもしれません。

ことに必ず大きな選挙になると不思議と必ず発生する大事故や基地がらみの重大犯罪に対して、なんの対抗軸も設定できず、なすすべもなくズルズルと後退し続け敗北してしまう沖縄自民に歯ぎしりしたい気分です。

今回も1区は自民は必勝で臨んだにもかかわらず、共産党の赤嶺候補に敗北しました。

下地氏と保守分裂したこともありますが、その影にかりゆしの平良朝敬氏や金秀が談合で暗躍したと漏れ伝わります。

かりゆしは1区のみ自民を応援し、他地区ではオール沖縄支援しました。平良氏は既に両天秤をかけ始めています。

また、県建設業協会が下地支持に回ったために、国場氏は不利になりました。

地方において「組織票を固める」というのは、団体票を高めるという意味です。沖縄の場合、最大産業の土建業界を固めるという意味になります。

このような保守陣営の混乱ぶりでは、共産党の牙城を守ろうとする攻勢に勝てるはずがありません。

2区も同様です。全国でただひとつの議席を確保したい社民の必死さに対抗して、どれほど有効な支援を組めたでしょうか。

宮崎政久氏が1万票以上上乗せしたことは評価しますが、照屋氏には勝てませんでした。

照屋氏の老耄は進行しているといわれていますが、「世代交代」だけでは弱いのです。

さて、よく本土では誤解されていますが、沖縄は「左翼の島」一色ではありません。保守支持層と左翼陣営支持層の数はほぼ拮抗しています。

いままでの国政選挙、知事選での保革双方の基礎票は25万~27万です。
関連記事 沖縄参院選結果をデータで見る
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/ume-b186.html

したがって、主張が鮮明な方が浮動票の上積みすることが可能です。

今回自民は組織票固めに走ったといいますが、それだけでは自民は勝てないのです。

率直に言いますが、こちらから積極的に争点を作り、アグレッシブに主張しなければ沖縄自民は負けます。

なぜなら本土と違って、体制側が左翼陣営、反体制のチャレンジャーが保守だからです。

ぬるい挑戦者に勝機はありません。

結局、こと沖縄に限っていえば、本土と違って争点なき選挙戦が常態化してしまっています。

4区での宮古の踏ん張りがなければ、全敗でした。ただし、これも建設業組合の1区と4区のバーターの結果だとも言われています。

「オール沖縄」は争点明瞭、基地問題だけの一点突破で突撃し、一方沖縄自民は争点回避では勝てる道理がありません。

参院選の島尻氏の時にも待機児童問題を訴えました。間違ってはいない思うのですが、それだけでは国政選挙では弱い。それは県議レベルのテーマなのです。

このパターンを踏襲するなら、沖縄自民は必ずまた負けます。

山路氏が指摘する「訴える力なき自民党」という声に、沖縄自民は耳を傾けるべきです。

さもないと名護市長選、そして天王山の知事選にも連敗することになります。

※選挙区分析は、篠原章氏のブログ「批評.COM」を参考にさせていただきました。ありがとうございました。
http://hi-hyou.com/archives/6831

山路氏寄稿 沖縄選挙戦に見る沖縄自民党の問題点その1

Img_4581
山路敬介氏から今回の沖縄選挙戦の分析レポートをいただきましたので、2回にわけて掲載させていただきます。鋭い論考ありがとうございました。

なおタイトルと小見出しは編者がつけたものです。

                 ~~~~~~~~~~~
 

              ■沖縄選挙戦に見る沖縄自民党の問題点その1
                                          山路敬介

■「訴える力」なき沖縄自民党 

 
今回の衆院選で沖縄県において自民党は二議席減。 「半減」ではあります。

本土の状況に比べれば沖縄自民は「惨敗した」ように言われる場合もありますが、そうでもなく、「4:4が3:2になった」という数字通りにとらえれば良いのだと思います。

注目点は翁長県政誕生の陣営の基盤であり、その象徴でもあった仲里利信氏が敗退した事です。
 

この事について10月23日の沖縄タイムス二面の解説では「オール沖縄の勢い堅持」と提灯をつけながら、「オール沖縄の「保革を超える」という言葉の根拠は薄れつつある」とし、今後「オール沖縄内の革新色が濃くなる傾向」、と指摘しています。

今後の県内政治に与える影響はどんなものになるか? 私も沖縄タイムスの見解とおりになると考えています。

その四区での沖縄自民党はたしかに一矢報いましたが、私が知る四区に限らず、その戦い方は「仲良しクラブ」的で面白くなかったし、散慢で刺激的要素もなくアピール度の乏しいものだったと感じられた支持者が多かったようです。

私自身も最後までイマイチ高揚感がなかったです。

こういう選挙は「悔しさ」を持続出来ず、再起を期す意味でも「次」につながりません。

もっとも、そうした傾向は今に始まったものでもありませんが、民主党政権が終わり自民党政権になってからでも続くこの傾向の意味は、沖縄自民党に「重大な何か」が欠けているからです。

米軍犯罪や事故などの逆風はあります。 

そういうものに一々打ちひしがれ、またそれを言い訳として順次「訴える力」をなくしてしまっているのが沖縄自民党の現状だろうと考えます。

ところで私の記事での選挙予想は大幅に外しましたが、それは開票前一週間より以降はヘリ事故の影響が収束するどころか、日を追って刻々と自民党に逆風となって増大・拡大してしまった事が読みきれなかったという事になるでしょう。

■「オール沖縄」批判を回避しようとする沖縄自民党 

しかし、自民党の敗退の原因はそれだけではありません。 

この選挙に限らず以前から沖縄自民党は特に後半の選挙戦に弱く、目先の勝ち負けに対して淡白にさえ見えるし、「戦い方」そのものに関しても重大な欠陥があるようです。

自民党は前回選挙の反省として流れ出した組織票を固める事には尽力をしておりましたし、その点は一定の効果は見られたと思います。
 

しかし、浮動票や無党派層の流れが終盤に来て前回以上にほとんど相手候補に行ってしまったように感じます。 

この「弱さ」の原因は、常に基地問題を前面に出される事に対する「沖縄自民党の対処の仕方」に根本があると考えられますが、一方では対立を回避する「甘さ」がどうしても感じられてしまうのです。

安倍総理は「愚直に政策を訴える」を表向きのスローガンにしましたが、池袋や秋葉原での演説では壮絶なまでの民主党政権批判を展開しました。 

彼我の違いを鮮明にし、それを選挙人の植え付け徹底的にすり込んでいったのです。

選挙戦はひとつの「物語」です。こうした訴え方は終盤に行けば行くほど熱くあらわに、聴衆との一体感を演出して実際の投票行動まで導くべきなのです。 

こうした緩急自在、応援弁士と自民党総裁としての「使い分け」などは、選挙の戦い方、有権者心理を熟知しているからこそで、非常に感心させられました。

「共通の敵を作って、味方の同質性を作り出す事が政治の本質」(カール・シュミット)であるならば、沖縄自民党の戦い方は最後まで「オール沖縄批判」を手控えた「おぼっちゃま風」の腰の引けたものであったと言わざるを得ません。
 

なにも候補者本人が相手を批判するのではなくともいいのですが、次から次へと出る弁士皆が皆、誰も相手を批判しないのでは気勢も何も上がりはしません。

沖縄において自民党はチャレンジャーなのであり、政策を云々する以上に「断言」や「反復」、「感染手法」等あらゆる手段を駆使し、相手批判を展開して「粉砕」すべく努めなければならない局面であったはずですが、最後まで「政策を愚直に訴えた」だけの官僚的な「言い訳選挙」に終始しました。

沖縄の有権者には風変わりで不合理な部分があって、オール沖縄側に常に投票する人々にあってさえ、「辺野古を阻止できる」と考える人は実は非常にまれです。
 

「辺野古絶対阻止」がオール沖縄の公約で、そんなものは最初から実現しようもないものだと分かっていて「一票」を投じているという事実が重要なのです。

その意味はおもに、翁長知事が言うような「言いようのない米軍基地への反感」などではなくて、「沖縄自民党が辺野古推進へと寝返った」と考える事で生じた自民党に対するマイナス感情、あるいはもっと言えば、家父長的権威を失った者への侮蔑的感情が育ってしまっているから自民党は弱いのです。
 

「辺野古移設の善し悪しの問題」ではとっくにない、のです。 

                                           (続く)


2017年10月26日 (木)

なぜ共産党志位「党首」は責任を問われないのか?

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今回選挙のあまりの野党の猫の目ぶりに呆れ果てて、何をどう信じていいのか分からない、いっそ自民に入れるかと思ったが、やはり共産党に入れたという知人がいました。 

まぁ、ひとつの選択でしょうね。確かにあそこは「変わらない」ことが命ですから。 

今回の選挙であまり報じられないのがかえって不思議ですが、共産党は選挙前21議席を半減させて12議席となる大敗を喫しました。

前回がバブルで、本来の適正規模に戻ったのだといわれています。

であったとしても、普通の政党なら絶対に党首の責任問題に発展します。 

Photo
いま、前原氏や小池氏が座らされているのが、この敗戦責任の追及という針のムシロです。 

下の写真は選挙戦真っ最中のものですが、惨敗を予期して慰め合っているように見えてしまえるから不思議です。 

Photo_3https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/minshin201... 

ところが志位氏の敗戦の弁はこうです。 

「共産党の志位委員長は、党本部で記者会見し、『民進党によって直前に野党共闘が分断され、多大な負担を強いられた。選挙を戦う形が作れていれば、こんなに自民・公明両党の多数を許す結果にはならなかった』と述べました。」(NHK10月23日)

おいおいです。同じ台詞を前原氏あたりが言ったら、落選した議員諸氏からモノが飛んで来ます。 

こういう他人に責任を転化して被害者ヅラして居直ってしまっても、周囲からも党内からも不思議に思われないというのが共産党党首、いや「共産党委員長」という椅子なのです。 

よく善意の誤解する人がいますが、共産党は国民政党ではありません。というか、そもそも近代的な「政党」ですらありません。 

共産党は狭い意味での「結社」です。 

結社は「特定多数の人がひとつの目的達成のために作った継続的団体」ていどの意味ですが、共産党の体質はむしろ「秘密結社」に近い性質です。 

まず、今回の総選挙で党首の責任が問われない唯一の敗北政党でいられるのは、そもそも党首選挙がないからです。 

こんな政党は唯一共産党だけです。

志位氏はなんと2000年から17年間も党首をしています。いうまでもなく、こんなに長期間党首の座に座っているのは、志位氏しかいません。安倍一強どころではありません。
志位和夫 - Wikipedia 

これは共産党の仕組みに理由があります。 

志位氏や小池氏のような中央指導部は、他の党にないスゴイ権力の座に就いています。 

それが「民主中央集権制」、あるいは「民主集中制」です。民主主義的中央集権制度(Adobe PDF)

ではこの共産党の体質を理解するために、日本共産党規約を見てみましょう。
日本共産党規約 

共産党規約によれば、何年かに一度開かれる党大会において、中央委員が選出されます。  

その中央委員候補は、前任の中央委員会による推薦制です。

●日本共産党規約第3章第13条
「指導機関は、次期委員会を構成する候補者を推薦する。」

推薦制ということに注目してください。一般の政党における指導部は全党員がなんらかの方法で選挙をして選ばれますが、共産党に限っては指導部が候補者を推薦、つまりは指名するのです。 

当然指導部にとって都合のいい人物しか「推薦」されませんから、初めから誰が指名されるのか見えています。

こういうのを俗にシャンシャン人事と呼びます。 大会参加者ができるのは、シャンシャンと賛成の拍手をするだけという意味です。

中国全人代の「選挙」と同質だと思えば、間違いないでしょう。 

シャンシャン人事で選ばれた中央委員から、更に常任幹部会委員長が選ばれます。

「●第23条 中央委員会は、中央委員会幹部会委員と幹部会委員長、幹部会副委員長若干名、書記局長を選出する。また、中央委員会議長を選出することができる。」

ですから、志位氏は自分の息がかかった指導部を作り続けることが可能なのです。

「民主」という名がかぶっていますが、まったく民主主義と相反する条項です。 

もう少し説明しましょう。 共産党における民主集中制とは、このようなシステムです。 

まず第1に、下級機関は上級組織に絶対服従する。いったん決定した事項について、下級組織は上級機関の許可なくして論議が認められません。 

ピラミッドのように作られている共産党組織の下部組織は、疑問を発表することはおろか、持つことそのものも許されません。実行あるのみです。

Photo_5

 上の写真は党大会のものですが、一糸乱れず賛成票を投じています。なかなか他党ではみられない風景です。

かつての自民党の恒例行事だったナントカの乱など起こりようかありませんね。

第2に、組織人事もまた上級の承認なくして決定できません。したがって、シャンシャン大会で選ばれた上級指導部に絶対服従することが義務づけられています。 

第3に、党内部でなにが議論されているか、どう議論されたのかについて党外に情報公開してはなりません。

●第3章第17条
全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない。」

共産党員は、党の方針と違うことを外部に言ってはいけないのです。

国会だろうと、地方議会だろうと、はたまた、どんな運動の会議でも、共産党員は自由に個人の意見を言うことはできないのです。

私たちが共産党員にときおり感じるクローンじみた印象は、ここから来ています。

志位氏自身若き日に指導部にのし上がったきっかけは、この分派狩りでした。伊里事件といいます。

伊里一智が1985年の日本共産党第17回大会に際して、東京都大会で代表となり中央委員会への批判を公表した。日本共産党中央委員会議長を務めていた宮本顕治の辞任を要求し、減少していた共産党の党勢を「立て直そう」と提案する。
これが所属の支部で可決され都大会の代議員として選出されるべく、東大大学院の他の支部にも働きかけ、6割の支持を得て可決された。
これに対し、当時
日本共産党中央委員会青年学生対策委員だった志位和夫は宮本顕治の直接の指示を受け、党の規律に背いて他の代議員に対し働きかけた分派活動と断定し伊里を1986年に日本共産党から除名し追放した。
この働きを認められ、宮本顕治による抜擢で
1987年(昭和62年)の第18回党大会で准中央委員に選出され、1988年(昭和63年)に書記局員に任命される。」(ウィキ)

当時宮本顕治が絶対的権力を握っていた共産党中央を東京都委員会の代表として厳しい批判をした伊里氏に対して、これが6割の支持を集めた合法的な批判だったにもかかわらず、宮本の意を受けて分派活動として圧殺したのが、他ならぬ志位氏でした。

これが志位氏が宮本に取り立てられて、出世階段を登るきっかけとなります。

指導部に対する批判はどのような形であろうと一切許さない、これが志位氏の一貫した政治スタイルですが、その出発点は20代に既にあったのです。

下の写真は北朝鮮のものですから、比較して申し訳ありませんが、共産党と基本構造は一緒です。

Photo_4

第3に、当然のこととして分派や派閥は禁止です。

「第3条4
4 党内に派閥・分派はつくらない。」

党は頂点の委員長から末端まで一直線に上意下達の命令系統が貫徹する組織でなければならないから、分派などはもっての他です。 

以上に背いたら除名です。

共産党は「民主」という言葉が異常に偏愛していて、彼らの組織には必ず「民主」をかぶせます。

民青、民医連、民商などという傘下団体につけまくっていますが、最も民主主義不在なのは、他ならぬ自分の党内なのです。 

さて、いかがでしょうか。まるで軍隊ですね。 

ただの比喩でなくそうなのです。共産党といちばんよく似た組織構造を持つのは、実は軍隊です。 

軍隊は戦闘を遂行するために民主的手続を省きます。大枠ではシビリアンコントロールが効いていますが、軍隊内部では上意下達の命令系統がなければ、大変なことになります。 

敵軍を前にして、民主的に戦術を決めたり、指揮官を選挙していたら負けるに決まっていますからね。 

同様に共産党もまた「戦争」をするための組織なのです。

いや「闘争」と言い換えるべきでしょうか。共産党の目的理念は規約冒頭の第2条にこう書いてあります。

「第2条
日本共産党は、日本の労働者階級の党である(略)
終局の目標として、人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会の実現をめざす。」

これは共産主義という表現こそ使っていませんが、いうまでもなく共産主義社会の実現を指します。

共産主義実現のために階級闘争という「戦争」を戦っているというのが共産党のアイディンティティですから、最高指揮官たる党委員長は絶対的な権限を持たねばならないのです。

その意味で、共産党は権限が上部に集中する極端な階級社会だともいえます。

共産党がいまでもこのアナクロの極みのような党名を変えないのは、変えてしまうと党外から一般の人たちが入り込んでしまって、この民主集中制を揺るがしてしまうからです。

だって党首選せにゃならんでしょう。そんなもんしたら、一気にいままで共産党を支えていた背骨がへし折れてしまいますもんね。

Photo_6http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-07-13/09_0401.html

実際西欧最大の共産主義組織だったイタリア共産党は「左翼民主党」と党名変更して、しばらくして消滅してしまいました。

というわけで、志位さんは負けようとどうしようと、絶対にその「党首」の地位が揺らぐことはないのです。

このような組織体質を持つ党が、先進民主国家の政党として存在し、国会に議席を持っていること自体が驚きです。

上の写真は日本共産党本部です。

首都の一等地に堂々たる地上11階のビルを構えていますが、共産党本部が首都に巨大ビルを構えている風景はわが国だけでしか見られないものです。

私は共産党は自らの党内ガバナンス(統治)を変えない限り、「政党」とは呼ばれるべきではないと思います。

 

2017年10月25日 (水)

朝日の逆切れと立憲民主の今後

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さてさて、昨日の記事は右端が一字欠ける不具合の修正が効かないまま、いじるとかえっておかしなことに・・・。

デニーの写真を入れたらおかしくなったので、デニーの呪いとでも呼びますか(笑)。 

まだ総選挙の余韻冷めるやらぬというわけか、朝日が怒り狂っています。もはや目につくもの全部が憎いと喚いています。

Photo_2http://japan.hani.co.kr/arti/international/28766.h...

ま、でありましょうな。彼らが安倍氏に解散を迫った張本人ですから。 

ざっとこんな調子です。10月24日、朝日1面トップの論説主幹・根本清樹氏の論説がスゴイ。 

いきなりフルスロットルです。

「総じて首相の手にする権力が大きくなりすぎた。これが、自民大勝という結果を受け、いま考えるべき問題の一つである。」

首相に解散権を持たせるから悪いんだ、というわけです。おお、いきなりそこですか。 

首相の解散権は憲法7条「天皇の国事行為」3項に根拠を持ちます。いちおう押さえておきましょう。
日本国憲法第7条 - Wikipedia

「日本国憲法
第七条
天皇は、
内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
3 
衆議院を解散すること。」

憲法の定めでは、天皇ご自身には解散する権限がありませんから、「内閣が助言」するわけで、とうぜん解散する権限は首相の権限に行き着くのです。 

朝日はこれがイヤなら、どうぞ率先して改憲を主張して下さい。それとも批判してやまない改釈憲法やりますか。

単に選挙法を修正すればどうにかなるということではなく、憲法に規定がある以上、「安倍に勝たせすぎて悔しい」ていどの怒りでは変わりません。 

もちろん、私も現行解散権のあり方がベストだとは思いませんし、英国などでは首相の解散権に制限が掛かっているのも事実です。 

しかし、憲法にそう明記されている以上、憲法を変えるしかありませんね、朝日さん。 

次に必ず朝日が言うと思っていたのは、小選挙区の仕組みです。朝日5面では南日慶子記者がこんなことを書いています。http://www.asahi.com/articles/ASKBR5DWZKBRUTFK01N.html

「朝日新聞が23日午後9時40分現在で集計した結果、自民党は289選挙区で2672万票を獲得し、得票率は48%だったが、議席では75%を占める218議席を獲得した。
1議席を争う
小選挙区制度では、第1党が得票率に比べて獲得議席数の比率が大きくなる傾向がある。今回も自民党の大勝を後押しした格好だ。
(略)
ただ、投票しなかった人を含む全有権者に占める自民の絶対得票率は、
小選挙区で25%、比例区で17%。自民に票を投じた人は選挙区で4人に1人、比例区で6人に1人だったが、結果として全465議席の6割を占めたことになる。」

「投票しなかった人を含むと自民に票を投じた人は選挙区で4人に1人、比例区で6人に1人」ですって(笑)。

「投票しなかった人を含むな」って、あんたねぇ。投票を通じて民主主義を維持するというのが、間接民主主義の根幹です。

それを投票所にも来なかった棄権者までいれて「全有権者に占める自民の得票率は○人に1人」とか言っているわけで、頭は大丈夫ですか、朝日さん。

投票するのは国民の義務と権利なの。民主主義のイロハのイです。

また、「得票率は48%だったが、議席では75%」というのも、負けた側が必ず言う定番フレーズで、「落選者の得票を積算すれば、ほら見ろ、当選者を上回るぞ」、という理屈です。耳タコですな。

これは保守分裂で負けた時に自民党がよくいう台詞で、統一できなかったから負けただけにすぎません。

結果が出たことを後智恵で、「こうやれば勝てた」というのはそうとうに恥ずかしいとおもいますがね。

今回は自民が得票率48%で議席数75%だからおかしいと言うなら、吉田徹氏の『二大政党制批判論』によれば、2009年の民主党が「政権交代」した衆院選では、47%の得票率で74%の議席数を獲得し、圧勝しました。

数字までそっくりです。

得票率と議席割合比較
・民主党政権誕生選挙   ・・・得票率47%・議席率74%
・今回総選挙         ・・・得票率48%・議席率75%

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ああ、上のようなことが起きて、あの異民族支配のような民主党政権が延々と3年半続くわけですが、朝日はその時には諸手を挙げて欣喜雀躍していたのではなかったのでしょうか。

たしか天声人語では、「民意の雪崩を受け止めよ」と言っていましたっけね。

その時に朝日は、小選挙区制がおかしいなんてひとことでも言ってましたか? 

自分のご贔屓さんが勝つと大喜び、怨敵が勝つと今度は選挙制度がおかしいと言い出す、実に分かりやすいダブルスタンダードです。

負けたらルールがおかしいっていうようなもんですよ。

で、朝日さんはその敗因を、野党が分裂したからだと指摘しています。ま、誰でもそう思いますよね。

3面の田嶋慶彦記者はこう書いています。http://www.asahi.com/articles/ASKBR54WCKBRUTFK014.html?ref=nmail

「今回の衆院選は、政権批判票の受け皿となる野党が分散したのが大きな特徴だ。複数の野党候補(野党系無所属を含む)が競合した「野党分裂型」226選挙区のうち、約8割の183選挙区で与党候補が勝利をおさめた。
一方、朝日新聞が各野党候補の得票を単純合算して試算したところ、このうち3割超の63選挙区で勝敗が逆転する結果となり、野党の分散が与党側に有利に働いたことがうかがえる。」
 

この分析は朝日だけではなく、産経の石橋政治部長も23日の1面で分析していることで、特にどうってことない指摘です。

これもまた「オレの思うとおりに政局が動いていたら、ほら見ろ、このように勝っていたゾ」という机上の空論にすぎません。

小池氏と前原氏を手鎖にして、江戸所払いにでもするんですな。あるいは憲法7条改憲を新たな社是にしますか。

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さて、今後ですが、立憲民主のフィーバーは当分続くでしょう。メディアは立民しか応援する政党がなくなりましたからね。

メディアからは、やることなすこと絶賛の嵐という報道が延々と続くことでしょう。

立民はまちがいなく左翼反対政党に純化していきます。というか、ゴリゴリの左翼政党で、なんでも反対するしか選択肢がないのです。

改憲も、「加憲はいいが、安倍がやるからダメだ」という理屈にもならないことを主張し続けるでしょう。

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戦争法は廃止しろ、共謀罪も白紙にしろ、辺野古移設反対、投票は牛歩戦術、委員会採決は暴力沙汰という風景がまた見られるはずです。

というのは、彼らにはそれしか方途がないのです。

立民は現況で最弱の野党です。かつての民進が100を越える議席数を有していたが故に、野党勢力を束ねられたのに対して、わずか55ではどうしようもありません。

この数字は自民の2割弱にすぎず、今後、無所属や希望転向組を吸収するとしても与野党比2割台の壁は越えられないはずです。

こんな内実では戦後最弱の野党第1党にすぎませんから、政治的に柔軟な立場がとれません。

次の選挙で再び政権交代できるという色気がありさえすれば、大人の政策をする余裕も見せねばなりませんが、政権返り咲きの望みが断たれた以上、子供じみたなんでも反対政治をするしかテはないのです。

立民はかつての社会党、あるいは昨今のレンホー民進のような硬直した左翼方針を打ち出すことになるでしょう。

民進分裂で、すっきりと保守派がいなくなった以上、それは可能です。 

 

2017年10月24日 (火)

2017年衆院選 沖縄選挙区結果

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沖縄選挙区の当落についてまとめておきます。 

沖縄1区(那覇市、渡嘉敷村、座間味村、粟国村、渡名喜村、南大東村、北大東村、久米島町) 

・当選 赤嶺政賢(69) 共産党県委員長 7回   ・・・60,605 39.90%
・比当 国場幸之助(44) 自民党副幹事長 6回  ・・・54,468 35.86
%
・比当 下地幹郎
(56) 維新 元郵政民営化相3回・・・34,215 22.53%
・    下地玲子(59) 幸福実現党 0回      ・・・2,594 1.71%
 

※赤嶺氏は全国唯一の小選挙区での共産党当選者
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沖縄2区(宜野湾市、浦添市、読谷村、嘉手納町、北谷町、北中城村、中城村、西原町) 

・当選 照屋寛徳(72) 社民党国対委員長 6回・・・92,143 58.94%
・宮崎政久(52) 自民 2回             ・・・64,193 41.06%

※照屋氏は全国唯一の小選挙区での社民党当選者琉球独立論者。

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沖縄3区(名護市、沖縄市、うるま市、国頭村、大宜味村、東村、今帰仁村、本部町、恩納村、宜野座村、金武町、伊江村、伊平屋村、伊是名村)
 


・当選 玉城デニー(58) 自由党幹事長 4回・・・95,517 57.86%
・比嘉奈津美(59)自民 2回          ・・・66,527 40.30%
金城竜郎(53)幸福実現 0回        ・・・3,031 1.84%
 
※玉木氏は人気ラジオDJ。父親は米兵。
沖縄4区 (石垣市、糸満市、豊見城市、宮古島市、南城市、与那原町、南風原町、八重瀬町、多良間村、竹富町、与那国町)
 

西銘恒三郎(63) 自民 経産副大臣 5回  ・・・82,199 50.51%
仲里利信
(80) 無所属 元県議会議長 1回・・・75,887 46.63%
富川泰全(38) 幸福実現党 0回      ・・・4,650 2.86%
 

※西銘氏は沖縄選挙区唯一の自民小選挙区当選者

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今回は論評は差し控えますが、1区赤嶺、2区照屋、3区玉木の各氏はいずれも個人的人気もさることながら、すべて基地絡みの候補者でした。

沖縄の問題は基地だけではないはずですのに、不可思議な現象です。

基地絡みでないのは4区の西銘氏のみで、氏だけが唯一「オール沖縄」の牙城に杭を撃ち込んだ結果となりました。

仮に自民が全敗し、比例復活もなくなったと仮定した場合、沖縄と本土政府をつなぐパイプ役が消滅することになったわけです。

このような場合、振興予算に影響が出たことはありえたかもしれません。

いずれにせよ、危機のガスで膨れ上がって、いつ何時爆発するかもしれないこの時期に、基地撤去・安保廃棄を叫ぶ共産、社民候補がこの沖縄だけで唯一トップ当選するという風景は不思議なものです。

※お断り 右一字がPC版では消えています。原因不明で修正できません。すいません。スマホは正常に表示されています。

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2017年10月23日 (月)

速報 2017年総選挙結果

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台風の中の選挙でした。結果は与党の圧勝でした。

 

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自民・公明の与党は、ほぼ予測の最大値を確保しました。

自民は今後の追加公認などもあるでしょうから、公示前の議席数を確保する大勝でした。

与党勢力だけで310を押さえ、公示前に迫る勢いです。

一方、野党はトータル121で数的には公示前109を上回りましたが、野党の勢力図が激変しました。

立憲民主が公示前の15を51として一人勝ちしましたが、小澤氏の自由と中山夫妻の日本のこころは消滅し、希望、共産、維新、社民は軒並みに票を減らしました。

中山斉彬氏は硬骨を売り物にする保守政治家だったはずですが、晩節汚しました。

小澤氏も生き延びました。あ、ついでに菅元首相も(笑)。しぶといですね、あの人たちは。

特に、今回政局の目玉となって、一時は100を越えて政権交替の可能性すらささやかれていた「希望」は公示前の57を49まで落して惨敗でした。

共産は野党共闘で政権の一角に食い込むことを夢見ていたようですが、あえなく半分にまで数を減らしてしまい、他党なら解党的出発をする惨敗でした。

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「共産党の志位委員長は、党本部で記者会見し、「民進党によって直前に野党共闘が分断され、多大な負担を強いられた。選挙を戦う形が作れていれば、こんなに自民・公明両党の多数を許す結果にはならなかった」と述べました。」http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171023/k10011192231000.html

一般的な民主政党なら、間違いなく代表交替となるところですが、この党のことですからどうなりますか。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-b346.html

希望の負け方も劇的で、国民がこの党をまったく信用していないことが明らかになりました。

なにせ小池女史のお膝元の東京選挙区ですら1議席に止まり、小池氏の都政運営にも影響が出る結果となりました。

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小池女史の敗北の弁です。

「都知事選で完勝、都議選でも完勝したが今回は完敗だ。私自身も、おごりがあったと反省したい」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171023-00034564-nksports-soci

博打打ちの末路を見る思いです。小池女史の政治生命まで響く大敗でした。ツイッター上での小池代表への関心は急速に下降しました。

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「希望の党設立に動いた小池代表への言及が急激に増え、解散の先月28日にかけて小池代表への言及が安倍総理大臣への言及を上回っていきました。
この時期は希望の党への民進党の事実上の合流が焦点になり、ツイッター上でも小池代表への関心が高いまま推移しましたが、合流にあたっての「選別」や「排除」をめぐって徐々に小池代表への批判的な投稿も目立つようになりました。
その後は、公示が近づくにつれて小池代表への言及は急速に減り、代わって安倍総理大臣への関心が高くなっていきました。」(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171023/k10011192451000.html

希望は選挙後すぐに開かれるであろう代表選(やっていなかったのですよ)で、権力闘争が激化し、分解過程に突入するのは必至でしょう。

なんとか今年の末まで形だけは生き延びさせて、政党交付金を取りたいことでしょうが、どうなりますか。

野党勢力図の変化を前回選挙と比較してみます。

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前回選挙で97を確保していた民進党が分解して、希望加入組と若干の無所属を生み出したことがわかります。

つまりは、野党は表面上は同じ勢力を保っているように見えますが、内部は民進党という大黒柱を失って希望49、立憲民主51に二分解したわけです。

立憲民主も伸びたといっても元々がわずかに15ですから、かつての民進党時の栄華は望むべくもありません。

またこの両者が歩調を揃えて国会審議に臨めればいいのですが、今回の分裂劇で絶望的なしこりが残っていますから、不可能でしょう。

ただし、希望から立憲民主に再移動する無節操な議員も相当数いると思われますので、ここ当分は流動的でしょう。

このような結果を受けて、安倍政権は国民の信託を受けたと判断されました。

今後、2019年10月までの2年間は、金融緩和・財政拡大・規制緩和というアベノミクスが続くことになります。

今回敗北していたら、財務省が息を吹き返してどんな悪だくみをするか分かったもんじゃなかっただけに、私は素直にほっとしています。

かねがね言われているようにアベノミクス最大の問題点は、緊縮傾向の財政政策ですから、解散時の約束のようにプライマリーバランスの黒字化目標の後ろ倒しをぜひ実現してほしいものです。

かくして、朝日・TBS・文春連合軍は一敗地にまみれたわけですが、性懲りもなく反アベ攻勢をかけ続けるはずですから、次の罠の準備に入っているのではないでしょうか。

あとは朝鮮半島の危機状況ですが、長くなりそうなので、別稿に譲ります。

2017年10月22日 (日)

日曜写真館 花という華

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2017年10月21日 (土)

賢い一票を行使して下さい

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こともあろうに投票日にかけて、大型台風が接近しています。 

できたら期日前投票をお勧めします。ショッピングモールなどにも設置してあって、通常の投票所より便利な場合が多いようです。私も期日前投票を済ませました。 

政治というのは冷厳なものですから、実績で評価するしかありません。なにをしたいのかもけっこうですが、彼らに任せた結果、何をしたのかです。 

私は経済に注目します。なんといっても景気を敏感に反映するのは、有効求人倍率です。

企業は先行きが明るいから求人を拡大するのですから、あたりまえです。

 

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巷にはよく、「景気回復の実感がない」というメディアがありますが、あいにく若い人たちはそう思っていないようです。 

なぜなら、有効求人倍率がいまや空前の高水準に達してきているからです。 

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安倍氏が就任した2012年12月時の有効求人倍率はわずか0.8倍でした。

0・8人分の求人枠に1人が押しかけるのですから、いかに就職氷河期が吹き荒れていたか分かります。 

今の30歳代の人たちは、就活で20数件就職試験を受けたなどという者もザラでした。彼らの多くは正規社員の道を断たれて、非正規雇用に行かざるをえませんでした。 

それがいまや2017年5月には1.49倍です。完全な売り手市場です。

失業率も2012年1月は4.5%だったものが、今は3.0%を切っています。ほぼ理論値の最低に近づきつつあります。 

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 この結果、失業による「見えない殺人」である自殺者は激減しています。 

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あとはこの有効求人倍率の好転が、実質賃金の上昇に繋がるように、更に金融緩和と財政拡大のダブルアクセルを吹かさねばなりません。

ところで、株価の連日高騰のニュースはご覧になっているでしょうし、株価だけが経済の指標ではないのですが、いちおう押さえて置きます。 

安倍氏が就任した2012年12月は1万230円でした。今は2017年7月には2万118円をつけて、なおも右肩上がりです。 

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これを民主党政権時と比較したのが、過去10年の推移です。

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なんと1万円割れという超低空飛行です。いかに景気が冷えきっていたのかわかります。

このように少しずつですが、景気が着実に回復してきているということが、自民党が青年層に支持されている最大の原因です。

サンモニの関口氏たちのようなオールド左翼が考える「青年の嘆かわしい保守化」ではないのです。

私はイデオロギーで言っているのではなく、経済という生活に直結することで言っています。

経済を良くした政権を換える必要があるのか、よくお考え下さい。

「希望」の経済政策について、エコノミストの安達誠司氏を参考に少し考えてみます。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53259

「希望」は、「現在の日銀の金融政策スタンス(量的質的緩和)を見直す」という立場をとっていますが、これはいわゆる金融緩和の出口を検討するという意味です。

安達氏はこう述べています。

「日本経済の現状は、過去数回到達した「デフレ脱却の入り口」にようやく達しつつあると考えた方がよいと思うが、そのタイミングで出口政策についての言及が日銀から出されると、マーケットを中心に、世の中は、出口政策の実施を前提に行動を開始することになる。その場合、デフレ脱却が十分に実現する前に金利の上昇や円高などが発生する懸念があり、それによってせっかくいい所まで来ていたデフレ脱却自体が頓挫するということにもなりかねない。」

つまり「希望」の政策を実行すれば、「日本経済が『早すぎる出口政策』の実施によって、再び長期的にデフレに陥ってしまう」のです。

もうひとつの目玉経済政策のベーシックインカムは、要するに金をザブザブ国民に配るというものですが、たぶん貧困層や青年層の票狙いだと思います。

しかしベーシックインカムの財源に、通貨発行益を用いるというのは空論にすぎません。

本来、ベーシックインカムは冷え込んだ個人消費に刺激を与えるのが目的ですが、一方で景気を確実に冷やす金融引き締めと緊縮財政政策をとりながら実施した場合、たちたまち税収が落ち込み、財源が枯渇して挫折します。

これはかつての民主党政権の子供手当てと一緒で、バラ撒きをするための財源に事業仕分けという歳出カットを当て込めば、財源が見つからないばかりか、景気に打撃を与えて税収を減らす効果しか出ません。

そもそもこんな政策を国家規模でやったところなど世界のどこにもなく、やるならどうぞ、小池知事の足下の東京都で社会実験してからにしてください。

内部留保課税に至っては共産党的政策で、法人税の他に「もうひとつの法人税」をむしり取ろうとするものですから、企業は悲鳴を上げるでしょう。

「内部留保に課税さられた場合、企業はその分、資産の圧縮を迫られる可能性が高い。その場合、企業はますます資本ストックの圧縮、設備投資の抑制を行い、場合によっては、事業の縮小から雇用を抑制する懸念もある。すなわち、内部留保課税も『デフレ促進・親和的』である。」(前掲)

実はこの「希望」の「デフレ促進・規制強化・緊縮財政」という経済政策は、他の立憲民主、社民、共産党と酷似しています。

「希望の党の提案する経済政策は基本的には『デフレ促進的・親和的』であると思われる。また、これらの政策の根本的な原理、及びその背景にある思想・哲学は、立憲民主党や社民党、共産党と共通なのではないかと考える。
その意味で、一見、『新しい保守政党』と目されてきた希望の党と、『旧来のリベラル(左翼)政党』である立憲民主党、社民党、共産党の経済政策に類似点が多いということに、筆者は別の危機感を持つ。」

立憲民主については、論評を差し控えます。

失礼ながら何をしてきたのか、あまりにもはっきりしているからで、おそらくかつての菅直人政権とそっくりのことをするでしょう。

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それは菅内閣と立憲民主の顔ぶれがピタリと一致するからで、想像力を使う余地がありません。ひとりだけ赤松氏が違っていますが、彼はハト政権の農相でした。

新鮮味のかけらもありません。

どうぞかつての民主党政権が懐かしい、福島第1事故の対応は見事だった、海保の巡視船にぶつけてきた中国人船長の対応は素晴らしかった、なにもかも善政だったと思える方だけが一票をお入れ下さい。

一票は貴重です。どうぞ無駄に使わないように。 

2017年10月20日 (金)

小池が作り、小池が壊した反安倍政局

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猫の目のように変化した2週間でしたので、整理を兼ねて少し流れを追ってみます。 

9月28日宣言と共に前原民進党代表は、「希望」に合流を申し出ました。

前代未聞です。聞いたことがありません。

大が小に向かって、自分は解体するからどうぞ合併させてくれないか、なんて申し出をしたなんて聞いたことがありません。 

Photo_2朝日新聞http://www.asahi.com/articles/DA3S13179146.html 

まがいなりとも衆参100を越える議席を擁し、100億円超といわれる豊富な政治資金を持つかつて政権党だった野党第1党が、まだ出来て3日目の新党というのもおこがましい「希望」に合流を申し出たのですから、日本全国がたまげました。 

なんせ、「希望」には公約も党執行部も決まっておらず、地方組織もないというないない状態で、あるのは小池女史のカリスマ性だけというていたらくでしたから、ぶっ飛んでいるというかナンと言うか。 

前原氏としては、小池女史と日本新党当時の同窓という気安さもあって、合流してしまえば、数でも経験でも一枚上の民進で乗っ取りができるという読みでもあったのでしょうか。 

そしてジャンヌ小池を神輿に担いで、都議会議院選挙のミラクルがもう一回再現できたら政権交替も夢ではない、まぁ、こんなことが前原氏の腹の中にあっても不思議ではありません。

こんな重大事はもう少し熟考して周囲に諮ってから決めたらよさそうなものを、前原氏は思い立ったら吉日の人なのです。政治評論家の誰かが言っていましたが「タメがない」。

これを前原氏が言った瞬間、民進党は自己解体したと認知されました。 

ここで皮肉にも前原氏の解体・合流構想に立ちはだかったのは、8月に既に民進党を見限って離党していた細野氏でした。 

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細野氏は仮執行部の若狭氏と諮って、解散当日の9月28日に「三権の長を経験した方々は(希望の党への合流を)遠慮してもらいたい」と述べています。

三権の長とは首相職にあった者を指しますから、直接には菅、野田両氏を指すものですが、言いたいことは「こちらで選ばしてもらう」ということです。 

選ぶのは「希望」、合流したければ土下座して踏み絵を踏みなさい、というわけです。 

先に逃げた者と、逃げ損なったその他大勢の間の近親憎悪ほどコワイものはありません。 

そしてこの細野発言は、小池女史の考えでもあったことがすぐに分かります。翌29日朝、いまや有名となってしまった小池女史のあの排除宣言が飛び出します。 

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小池女史の「排除」宣言それ自体は正論にすぎず、政党が初めから民進党のような左右のチャンコ鍋でいいわけはありません。 

「様々な観点から絞り込みたい。全員受け入れるようなことはさらさらない」というのは受け入れ側としてしごくもっとも言い分なのですが、いままで「百合子、イケイケ、ドンドン」をしていたメディアが一斉に青ざめました。 

なぜなら小池女史は直ちに、民進党の合流希望者に「政策協定書」へのサインを義務づけたからです。 

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この協定書は結局後に実施されたものはハードルが落ちていましたが、当時は改憲・安全保障法制の容認・外国人参政権反対など、左派としてはとうてい呑めないものが含まれているとみられていました。 

その上ご丁寧にも、この協定書には「公認候補となるに当たり、党に資金提供をする」と、明確に持参金を持ってこないと入れてやらないとする条項つきですから、信条を捨てた上に大枚な金(一説1500万)むしられるというエグサです。 

当時、小池女史自身は国政に出馬する気ムンムンでした。

「希望の党」というネーミングは既に春から登録されていたそうで、そもそも彼女は都知事はただの腰掛けにすぎないと考えていたふしがあります。 

それはこの一年間の知事としてやってきたことは、ひたすら「小池百合子」の売り出しだけで、内実はただの都政の停滞だったことを振り返ればお分かりになるでしょう。 

彼女は都政に専念する気はまったくなかったし、自分さえ売り込めれば、さっさと知事など辞めたかったはずです。 

ですから、秘かに都知事の後任探しや、衆院選後の知事選の日程も想定していたようです。 

後任には、今になると失笑しますが、小泉進次郎氏をあてこんでいたようです。 

ところが、その進次郎氏に小泉女史は力一杯批判されてしまいます。 

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進次郎氏は、10月1日に街頭演説で、「小池さんは選挙に出ても無責任、出なくても無責任のジレンマに陥った。どちらの無責任か取りましょうよ」と演説しました。

いやー、父親譲りの天才的アジテーターの素質を感じますね。これで財務省のティーチャーズペットでなければほんとうに素晴らしいのに。 

この発言ひとつで風向きは180度変わります。選挙戦は短い期間に風を読み、風をつけた者が勝つと政治の訳知りはいいますが、その通りのようです。 

よせばいいのに小池女史は2日後の10月3日の記者会見で、「進次郎さんがキャンキャンはやし立てているが、お父さん(小泉純一郎元首相)と約束しているので出馬はありません」などとやってしまいました。 

そして即座にそのパパ小泉からも、「私は進次郎に投票するに決まっているじゃないですか」と突きはなされる始末。 

小池氏を焚きつけたひとりと目されるパパ小泉から、こう冷たくあしらわれてしまっては立つ瀬がありません。 

そしてこの空気を敏感に読んだメディアは、一斉に見事なまでの掌返しをします。 

「安倍退陣 小池氏首相に」と連日囃し立てていたメディアは、一夜で小池女史の敵に回ります。 私も予測していましたが、これほどまでとは思いませんでした。

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各種の世論調査でも都知事を放棄することを批判する結果が多く、小池女史は遂に国政進出を断念しました。 

すると、今度は政党代表が不出馬ということになり別な問題が生じます。 

まずは自分が「希望」を立ち上げた時の「政権選択選挙」という目標を否定することになったうえに、憲法67条「内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名する」という条項に抵触することが明らかになったのです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-34c7.html 

これは既に書きましたが、仮に「希望」が首尾よく政権党になった場合、国会の「外」にもうひとつ司令部がある状態を意味します。 

小池女史が「選挙後に決める」と言うならば、執行部すら満足に作られていない「希望」の現況では、国会議員でもない小池女史が「ひとりで決める」という意味となってしまいます。

一国の首相を国会の外の人物が少数の者と諮って決めてしまうわけですから、おいおいこれでは民主主義の根幹を否定しかねない密室政治ではありませんか。 

しかも彼女は一度も党代表選という手続きを踏んでいないのですから、二重に民主的手続を無視しています。

ここで一気に「希望」は地表に向けて急降下を始め、寄り合い所帯すら固まっていない「希望」は、選挙結果が出る前に既に空中分解を開始します。 

メディアバッシングが始まると、なまじキャスター上がりでメディアを自在に操ってきた自信があった小池女史はこれに危機感を感じて、今度は左にブレます。

10月6日、野党と一緒になって選挙後も「モリカケを追及する」と言い出したのですからまったくやれやれです。

これでこの1年間都政の惨状を「小池さんも保守なんだから」と忍び、半年間のやくたいもないモリカケ騒動に耐えてきた保守世論が小池女史を見放しました。

かくして「排除」で左から、「モリカケ」で右から、まんべんなく嫌われてしまったことになります。

空気を読む勝負勘が命のバクチ打ちとは思えません。右顧左眄(うこうさべん)するからです。

ま、失礼ながら政治家としての芯になる政策がないんですから仕方がない。

百合子姐さん、これだけブレると今回ばかりはちっと挽回は厳しいでしょうぜ。

さて最後はひとつ、今回の選挙戦の立役者だった進次郎氏に締めていただきましょう。

沖縄県南風原での10月18日の演説です。これは聞く価値があります。https://www.youtube.com/watch?v=uqhEaOb53tQ

「自民党が優勢に戦いを進めているという報道もあるが、仮にそうだとしても、それは、野党が分裂して、お互い食い合っているだけであって、私たち自民党が皆さんから完全に信頼を回復できたわけでもない。
8年前に失った私たち自民党の信頼は、まだまだ回復の道半ばにある。決して私たち自民党が、得点を挙げてきたわけではなく、野党があまりにもひどすぎた。ものごとに反対することは簡単で、言うことも簡単だ。しかし、それを形にするのはそう簡単なことではない。」

「自民党は信頼を回復していない」「野党がひどすぎる」、「反対することは簡単だ、形にするのは簡単ではない」。

翁長氏は県庁で苦虫を噛み潰して、進次郎氏の演説を聞いていたことでしょう。

自民党がもし仮に今回の衆院選に勝つことがあれば、それは「野党がひどすぎた」たために他なりません。

こうして野党は小池女史の野望に引っかき回されて分断されたあげく、野党同士で食い合う結果になりました。

小池が作り、小池が壊した反安倍政局だったようです。

 

2017年10月19日 (木)

山路敬介氏投稿 ■沖縄県における衆院選 「序盤・中盤」状況 その2

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山路氏の現地からの報告の完結篇です。今日の私の更新はありません。  

                    ~~~~~~~~~  

■沖縄県における衆院選 「序盤・中盤」状況 その2
                  ~結局、自民党に「負け」はない

                                         山路敬介
 

承前 

■ 個々の選挙区予測 

一区は、自民の国場幸太郎幸之助氏が制すると考えられます。 

種々の情報から翁長知事の側近である平良朝敬氏が、その影響力のある団体等に国場支持を容認した可能性が強いです。 

「翁長氏が、国場氏であればこそ納得した」とも聞きます。 

例えば実際に、県観光協会などは国場幸太郎幸之助と西銘恒三郎の二氏を推薦候補として決定し、各市の観光協会を通じ末端のホテルにまで署名依頼のFAXを流しました。 

前回選挙では見られなかった徹底ぶりです。(ただ、これは西銘氏の弟の元ANA沖縄支店長だった西銘啓四郎県議の功績である、との少数意見もあります) 

ですが私が思うに、「国場氏が平良氏側にどのような歩み寄りを見せたのか?」が明らかにならない事は「問題である」と考えます。

二区は照屋寛徳氏が相変わらず強いものの、宮崎政久氏も前回選挙の得票数を下回らないと見ています。

どういうワケか本土では考えられない事ですが、照屋氏は社民党にも関わらずマメに企業票を多数取り込むのが得意です。 

これは沖縄独特の現象かも知れず、私もその内実と詳細を全く知らない訳でもありませんが選挙中でもあるので予断は控えます。

三区は玉城デニー氏が取るでしょう。
 

ですが、比嘉奈津美氏は前回選挙よりも票の積み増しは大きく可能と思われます。 

比嘉氏は地味ですが、党本部に対して臆さずモノを言って廻る「うるさ型」で、沖縄の為に自身が関与して実現させた政策も多かった。 

その点、デニー氏など全く問題にもなりません。 

もっと評価されていい政治家ですが、どういうワケか女性票が身に付きません。 

女性保守支持層にこのタイプの女性候補が受けが悪いのは、沖縄県の後進性の現れであるのかも知れません。 

「子育て」だの「待機児童問題」だのと、そうした女性特有の関心事だけに偏らない稀有な女性議員ではありますが、本音はオスプレイ反対。 そこが「玉にきず」です。

四区は、仲里利信氏と西銘恒三郎氏互角か、僅かに西銘氏がリードしていると考えています。
 

仲里氏の主張は、全く見るべきところがないだけでなく、ほとんど全ての主張が革新の主張に吸収してされてしまっています。 

「尖閣を守ろうとする意義はなく、それをしようとする安倍政権の狙いは軍備増強だ」との倒錯した主張は、そのまま共産党のものです。 

一方、西銘氏の今回のヘリ事故に関する改善策への主張は穏当でもっとも現実的です。 

度重なる米軍の整備状況の不備をその原因とすれば、横須賀における米海軍艦船の整備や習志野のオスプレイ整備などを念頭に入れ、「自衛隊側に、極力整備を任せるべきだ」とします。

この点、「日米地位協定を改善すべき」とするブログ主様の主張はもっともで、より根本的なものですが、それをするならまず日本の国内法の改善が必須です。 

米軍と自衛隊が協力して問題の解決にあたる事は、協力体制の強化など他の副次的効用も生まれます。 

また、「事故」というものが全くのゼロにはなりづらい性質を有している以上、原因究明を経て責任の分担をも分散するメリットがあります。 

なによりも、法改正によらず一番早く実現可能な案で、その点、西銘案は大いに支持できるところです。

■ 自民党に「組織票」が戻って来つつある

私の上記のような見立ては「自民党に甘いのではないか」とか、「世論調査とズレがある」との意見も当然あるでしょう。
 

ただ、自民党は少なくとも前回選挙よりも、関連団体や企業経済団体の引き締めがうまく行っており、あきらかに支持が戻って来ています。 

まさに「タイムス的世論調査」には出づらい部分なので、そこは考慮したところです。

また、仲里氏の主張など、それはそれはメチャクチャなものなのですが、どだい有権者のほとんどは詳細な主張など聞いていません。沖縄県では特にその傾向が顕著ですね。
 

ですが、仲里氏はもう80歳です。  

この事は実は、さすがに支持者の間でも多く取りざたされているところです。

右手を出して小走りに近づいてくるその足取りは、ふらつきも見られず足腰も確かなものである事は伺えます。
 

ただ、センテンスの長い質問に答える場合の趣旨を瞬時にとらまえる能力や、応用的であったり不意の問題発出に対応できる随応性は明らかに不十分です。 

そこをあの権威主義的パーソナリティーで補っているようにも見受けられ、秘書氏の負担は極大化しています。 

もともと前期限りで引退する意向を示していたところ、後継者もなく「翁長氏との友情の中で立った」のが動機です。 

                                          (了)   

                                                                                              

2017年10月18日 (水)

事故機の放射性物質について [捕捉]

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山路さんの沖縄レポートはもう一本の方にあります。ぜひお読みください。

さて昨日の山形さんのコメントに捕捉しておきます。

今回、メディアが「放射能汚染だ」と騒いでいるのは、このヘリのロータブレードにつけられた小型のユニットが破損したためです。 

これはIBIS(In-Flight Blade Inspection System )です。 

写真が製造元のシコルスキー社のサイトにあります。http://pds.exblog.jp/pds/1/201612/19/02/a0292602_2395727.jpg 

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このユニットは、飛行中のローターブレード(回転翼)にひび割れなどの破損が生じた場合、それを探知する装置です。 

簡単にメカニズムを説明しておくと、ローターブレードは一見全部中身が詰まっているようですが、実は軽量化をはかるために中空です。 

そして空気圧よりやや高い圧力で窒素が充填されていて、その栓にIBISがつけられています。 

ただの栓ではなく、プレッシャー・インジケータという圧力探知機能を持つユニットです。 

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このユニットは、ブレード内部の圧力が下がるとスイッチが入る仕組みになっていて、地上では目視で分かるようになっています。

それができない飛行中でも内部の微量のストロンチウム90がセンサーに感知されて操縦席に表示されます。いまはもっと無害なトリチウムなとが使われているようです。Ibis_3https://i2.wp.com/booskanoriri.com/wp-content/uploads/IBIS.png 

今回はIBISの6ツあるうちのうちの1個の破損ですが、下の写真のように事故機を回収に来た米軍関係者や自衛隊員も、その後の調査ユニットも放射能防護衣のタイベックを着ていませんので、放射性物質の環境放出は限定的だったと思われます。 

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防護衣とは下の写真で、今をときめく「筋を通した人」枝野氏が南相馬市を訪れた際に着ていたようなものです。 

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ちなみに、現地の人はまったくフツーの格好で、枝野氏らはゴム手袋さえ脱がないで握手していましたっけね。 

人としての品格が分かります。 

それはさておき、この牧草地の所有者の方、高江区長、そして東村村長の皆さんに東日本の住民としてアドバイスさせていただければ、矢崎氏たちのグループが流しているような放射能風評被害を防ぐには、その初期で無責任な「噂」を断たねばなりません。 

この対応が遅れると、ことあれかしのメディアや矢崎氏などの反原発団体が自分に都合のいい数値を拡散し始めています。

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この人たちは、ストロンチウムという猛毒が炎上によって広範にバラ撒かれたというような噂をたてようとしています。

沖縄県人は放射能には無関心でしょうが、自主避難者を全国一抱え込んでいますから、彼らを中心にしてネットで騒ぎが全国に波及していく可能性があります。

それが「常識」になっては遅いのです。 私たちはこの誤った「常識」を覆すのに、大変な苦労をしました。経済的打撃、社会的打撃は計り知れません。

それを防ぐには、こちらから情報を積極的に開示していくことです。

自分たちで正確な放射線量分布を知って、それをネットなどで発表していくことをお勧めします。  

山路敬介氏投稿 ■沖縄県における衆院選 「序盤・中盤」状況 その1

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2回にわけて山路氏の現地からの報告を2回にわけて掲載します。 

                    ~~~~~~~~~ 

■沖縄県における衆院選 「序盤・中盤」状況 その1
                  ~結局、自民党に「負け」はない

                                         山路敬介
 

私は宮古島市在住の人間であり、この選挙前にもしばらくは本島に行っておらず、選挙中にもその予定はありません。 

したがって選挙で一番大事な各候補者を取り巻く熱量や肌合いをダイレクトに語るには不首尾もあるように思えますし、県全体の雰囲気を語る場合も同様と考えますので皆様のコメントで情報等を補って頂けると幸いです。 

さはさりながら、本島から来る会議所や商工会関係者、二紙の記者を含めた報道関係者や左右問わず候補者の秘書さんたちの話も十分聞けているし、情勢判断で一番大事な事は前回選挙と比較した「定点観測」なので、そうは判断に狂いはないと密かに自負してます。(笑) 

■勝敗ラインはどこか? 

もともと自民党候補者は、前回選挙では全員同じメンバーで比例復活当選しております。 

今回も現在までのところ、種々のデータや自民党支持率を見る限り、自民候補者全員が当選ライン上に在る事は疑いようはありませんので、今回選挙ではあまり大きな意味は見い出せないと考えています。

これは逆に、例えば、一区で共産党の赤嶺政憲氏が自民党の国場幸太郎氏に敗れても結局は比例復活するし、その政治活動が減殺される訳でもない事と意味は変わりません。

つまり小選挙区云々はともかくも、沖縄県内として「自民候補全員が当選すれば自民党の勝敗ラインに到達している」と捉えるのが私の考えだし、常識的でもあろうと考えます。
 

ですから、今回の選挙には「すでに自民党には負けはない」、ある意味つまらない選挙とも言えましょう。

また通常、比例復活当選の方が当選者個々の党中央へのロイヤリティーが優先されるメリットがあるので、私個人的には国場氏や比嘉氏などの場合はむしろその方がいいのではないか?と考えないでもありません。 

一方、逆に「オール沖縄が勝った」という状態を真に作り出すのは、「自民党議員の比例復活をも許さなかった」という結果を出さなければいけません。

それはそれとして翁長氏最大の問題は、4区の仲里利信氏VS西銘恒三郎氏の戦いに収斂されると考えます。
 

無所属で比例復活がない翁長氏子飼いの仲里利信氏の帰趨こそが、「翁長的オール沖縄」の行き先を象徴する事になるのだし、「オール沖縄」からの保守の分離を顕在化させる事に成り得ると思っています。

対する自民党は「最低でも小選挙区2議席奪還が目標」という立場です。
 

事実、自民党は前回よりもかなり善戦している模様です。 

ただ、CHヘリ墜落事故で直後から無党派層の揺らぎも見られ、二紙などは相変わらずの連日トップ状態。 

いつもの「米軍事故の政治利用」が顕著で、今後どの程度投票行動に影響してくるかも不透明です。

時間が経つにつれ、「今回の事故の影響は限定的」との見方は保守系よりも革新系支持者に多く、むしろ「保守系の引き締めに寄与する事になるのではないか」との見方も現れ始めました。 

しかし、革新側が危惧するほど沖縄自民党にタイトな一体感を見い出せるか疑問だし、10日と15日の沖タイの調査結果の変化に見られるように、今のところは事故報道が自民党に10ポイント程度の逆風になっているのは間違いないものと思われます。

比例で復活当選を約束された今回の選挙であっても、これまでのところ自民党勢は「緩み」を見せない戦いぶりを見せており、小選挙区でも一矢を報いそうな気配です。

対して「オール沖縄」方は、その構成の核となるべき陣営が革新系の他陣営にもたれ掛かっている有様で、翁長知事の思惑は最初から外れています。
 

また、翁長知事自身、解散を予測していなかったがゆえに、実質的な仲里応援団である「辺野古反対する保守系議員の会」を設立する時期も遅きに失しました。その効用も限定的に留まるでしょう。

                                              (続く)

2017年10月17日 (火)

事故機の放射性物質について

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先日、不時着炎上したCH-53Eから放射能が漏れだしていると、騒いでいる人たちがいます。

「沖縄県で不時着したアメリカ海兵隊のヘリコプターに放射性物質が使われていた問題で、付近の住民は「風評被害が怖い」と不安を訴えています。
 東村高江に不時着したアメリカ海兵隊のCH53Eヘリコプターは、複数の部品に放射性物質が使われていました。琉球大学の矢ケ崎克馬名誉教授は14日、事故現場の近くで調査した結果、現場から約300メートルの地点で81ベクレルの放射線を検知したと発表していました。一方、沖縄防衛局は14日夜、空間や土壌表面の放射線量は一般的な環境と比べても差異はないとして汚染を否定しています。
 現場付近に住む西銘晃さん:「放射能汚染というのが確定してしまうと、風評被害ですべて僕の生産する飼料がだめということになってしまうからその辺が一番、怖いですね」(テレ朝10月15日)

こういうことは結論から言っておいたほうがいいと思いますので、先に述べておきます。 

まったく問題ありません。81ベクレルていどの放射線量は、食品規制値より低いくらいです。 つまり食べても大丈夫です。

日本の放射性物質の食品規制値は世界標準より異常に低く設定されていますが、以下のとおりです。
食品中の放射性物質の 新たな基準値について - 消費者庁(Adobe PDF

●食品の規制値
・日本・・・100ベクレル
・EU ・・・1250
・米国・・・1200

仮にこの牧草(?)を食べたとしてもまったく問題がでません。 

欧米では日本の10倍まで認められていて、日常的に市場流通しています。 

今後、どのような対策をしたらいいのかについて、私たち東日本の「被曝」経験から少しご説明しておきます。 

これも結論から言います。このままでも健康被害が出る可能性は考えられませんが、風評被害が気になるなら天地返しをしてください。 

その前にどれだけ降下したのか、正確に知る必要があります。 

この牧草地の所有者の方、高江区長、そして東村村長の皆さまにお願いしたいのは、放射能風評被害を防ぐには、その初期で無責任な「噂」を断たないとだめなことです。

風評被害はあいまいな計測を基にして、人のパニック心理につけ込んで騒ぐ現象です。 

この対応が遅れると、ことあれかしのメディアや反原発団体が自分に都合のいい数値を拡散し始めて、それが「定説」になります。そうなっては遅いのです。

そのためには、自分たちで正確な放射線量分布を知って、それを発表していかねばなりません。 

一カ所だけてはなく、面で計ったほうが良いでしょう。 

個人でもできますが、やはり客観性を担保するために行政や大学などに依頼して、当時の事故機の風下から計測を始めて、全周を測って下さい。 

私は2011年夏に、大学の研究者と一緒に私の村を測定して回りました。 

私たちの測定作業の場合、個人のガイガーカウンター3台と、茨城大学所有のシンチレーションサーベイメーターを使用しました。

たぶん琉球大学なら何台か持っているはずです。これらの計測器械は、空間の放射線量を計るものです。 

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 計測すると分かるのですが、均等に放射性物質は検出されるのではなく、風向きや地形でホットスポットという高い値が出る場合があります。

これはスポットというくらいですから面ではなく点にすぎません。びっくりせずに、印のついた棒でも刺しておけばいいと思います。 

こうやって分布図が出来れば、あとはホットスポットを中心に穴を掘って天地返しをします。 

実は地表に降下した放射性物質は、風や雨ですごい勢いで消滅ししていきます。いや正確に言えば、拡散していきます。

このように書くと反原発派は必ず、「ほらみろ、なくなったわけじゃない」と言いたがりますがなにを言っているのでしょうか。

今回計測に当たった琉大名誉教授矢ヶ崎克馬氏は、「つなごう命の会」という反原発グループの運動家です。
つなごう命の会ー沖縄と被災地をむすぶ会

この会は「放射能瓦礫搬入阻止」を運動していた団体です。

矢崎氏は琉球大名誉教授の肩書で会見していますが、公的に琉球大が関わったわけではなく、あくまでも反原発団体の計測なのですから、このような肩書で記事にするのはいかがなものでしょうか。

氏は記者会見で、「土壌汚染に関してはストロンチウム90が放出された場合、土壌から半減するまでに約30年かかる」と語っているそうです。ありえない机上の空論です。

要は、人体や家畜に影響がでないまでに無害化すればいいだけじゃありませんか。

福島事故直後の春には、私たちの村は500ベクレルを越えるホットスポットが多数ありましたが、その年の夏の終わりには100ベクレルを越える地点は数カ所となっていきます。

こんなことが3月に予測できたでしょうか。私たちは、セシウムの半減期が来る30年の間、苦しみ続けるのだと覚悟していたのですから。

その秘密はなんだったと思いますか。耕したからです。

地表に降下した放射性物質は地表下十数㎝に溜まっているだけにすぎません。

この部分をロータリーやプラウで、更に下の地層に入れてしまえば、無害化されます。

土壌の団粒構造の分子には大変に微細な穴が無数にあります。その微細な穴に、放射性物質を取り込んでしまうのです。

81ベクレルていどで「放射能汚染」という表現をとること自体、いたずらに危険を煽り、土地の所有者や高江集落を傷つける行為です。

2017年10月16日 (月)

政党詐欺 無節義な連中は転ぶのも早いが、再度転ぶのも素早い

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全国いたるところでしょうが、わが選挙区でも、民主党政権時に政府にいたこともある某候補は、「希望」に看板を掛け替えて出馬しています。 

隣の選挙区の「希望」候補者も看板掛け替え組ですが、いままでデカデカとポスターにあった「民進党」の文字に「希望」のシールをチマチマと貼って対応しているようで、いじらしさがにじみます。

 いくら「希望」に持参金でむしられたか知りませんが、 一説ではひとり1500万見当ということです。

600万が選挙費用ですから、差し引きひとり1千万弱、110人で11億近い金が「希望」の懐に移動したことになります。

そういえば選挙の定番グッズの党首とのツーショットがなかったですね。3万とられるからかな。(笑)

たしかわが選挙区の「希望」候補は、かつて護憲・戦争法案反対・消費税増税を唱えていたような気がしますが、どうやらころりと主義主張を忘れてしまわれたようです。 

こんなショック性健忘症の候補者が百数十名出るというのも、天下の奇観です。 

さて、このようなど忘れ候補者がどのていど「希望」にいるのかと思えば、どうやら大半のようです。 

「希望の党公認192人の内訳は、選挙区と比例代表の重複立候補者が191人で、比例単独立候補者が1人。合流に伴う民進党出身者は110人を占めた。
小池氏側近の若狭勝前衆院議員が候補者発掘のために開講した政治塾「輝照塾」の塾生26人も含まれた。
 小池氏は3日、東京都内で記者団に「一つの旗のもとに集ってくれた。これから戦いが始まるが、同じ方向を向きながら、戦える体制を至急整えていきたい」と語った。」(産経10月3日)

 ほー、小池さん、「ひとつの旗のもとに集まってくれた」ですか。ところがその「ひとつの旗」の内実は、ほとんど全部が民進党からの転向組でした。 

彼らが実に「希望」候補者の過半数を占めます。 

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ところで司馬遼太郎の名作『関が原』には、旧豊臣家臣団の裏切り大名たちを率いて江戸へ還ってきた徳川家康の孤独な姿が描き出されています。 

江戸で家康は、西へとひた走る福島正則などを尻目に、麾下の軍団を待機状態においたまま昼寝を始めます。 

さすがの家康の謀友である本多正信も、心中を計りかねて家康に問いただします。 

家康の答えはこうです。 

「『彼らを信じうるかな』と家康は陰気な声で答えた。
(いまさらなにをおおせある)正信はむしろ驚いた。
(略)
『戦場で転ばれてはこまる』と家康はいった。戦場でにわかに逆流して家康の本陣へ突っかかられてしまえば、いままで積み上げてきた天下取りの策謀の高層建築も、一挙に瓦解してしまう。
『ではないか。なにぶんああいう性根の連中だ。味方に寝返ることも素早ければ、敵に寝返ることも素早かろう。そういう点は信用できぬ』
(略)
『いやさ、実のところは太閤手飼いの大名とはああも無節義な連中かと思い、それを悦ぶ反面、心の冷える思いを致しておる』」

司馬さん流に言えば、この民進党転向議員たちは、「ああも無節義な寝返りができる性根の連中」である機会主義者なのです。 

おそらく、この転向組の多くは地盤をもっていて、候補によっては連合系組合の個別支援も受けているでしょう。 

その上に、民進党の金庫に眠る120億とも言われる政党交付金(←税金です)を、前原氏は惜しげもなく支援金としてつけていますから、その相当数が当選する可能性があります。 

本来は党の根幹を占めねばならない「希望塾」の小池子飼い候補はわずかに26名。しかも選挙など初めての手合いばかりで地盤なし。

風がピタリと止まってしまった今、子飼い候補の多くは落選の憂き目にあうはずです。 

となると、共同通信が出している序盤情勢調査(10月10~11日)の予測数は希望の党62ですから、そのほぼすべては家康をして言わしめた「無節義な寝返りができる性根の連中」によって完全に占められることでしょう。 

これでは誰の眼にも、なんのことはない第2民進党ですが、それもすぐに再度の寝返りにあうことが想定されています。

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 それをはしなくもバラしてしまったのは、民進党に残った参院会長である小川敏夫氏の10月12日の都内での街頭演説でした。

ここで小川氏は止せばいいのに、妙に正直なことを言ってしまっています。

「民進党参議院の幹部は12日、衆議院選挙後に、希望の党で当選した人にも「復帰」を呼びかけ、民進党の復活を目指す考えを示した。
民進党の小川参院議員会長は、「民進党は不滅です。民進党は、これからもしっかりと存続します。立憲民主党、本当に信念を通している。よくわからないから、やむを得ず希望の党から立候補の人もいるでしょうし、無所属で信念通す人もいた。また、この選挙が終わったら、民進党を大きな軸として、しっかりと結集して、安倍自民党政権、絶対に打倒する。皆さまに約束する」と述べた。」(fnn-news10月12日)

謀は密なるを良しとすですよ、小川さん。

ここまではっきりと「衆院選後の民進党再結集」を言ってしまっては、「希望」に転んだはずの無節義な連中の再度の寝返りが予定されていることを自白してしまったようなものです。

なるほど確かに今回の選挙の眼目は立憲民主党+共産党+左翼リベラル無所属の合計が、改憲発議を阻止し得る3分の1以上の議席、つまり155になることでした。

Photo_3高橋洋一氏による http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53214

上の予想値の最大値を取ります。「希望」を民進出身者が乗っ取ったとして65、立憲民主が45、共産党が18、無所属はよく読めないのですが半分が民進系だとして12と仮定します。

希65+立民45+共産18+無12=140です。

「希望」を全部左翼リベラルがとることは考えにくいですから、実際はかなり数を減らすでしょう。

ギリギリで改憲阻止勢力が出来るか出来ないか微妙なところ、けっこう厳しいというのが現状でしょうか。

となると、あんがい「希望」の旧民進勢力の今後の動向が要になるかもしれません。

民進党転向組は本来は無所属であって、「希望」は公認をしただけだから、選挙後には個別の意志でどうにでも党籍を変更できることになります。

「希望」に公認をとりつけた議員に対して民進党が「支援金」を出せるのは、おそらく彼らは党籍上は「無所属」、あるいはいまだに民進党の党籍の抹消がなされていないからだとしか考えられません。

なんのことはない、彼ら民進党転向組議員たちは、無節義とはとんでもない、偽装転向しただけなわけです。

といってもそんなに計画的なものではなく、元来が選挙互助会的な民主党・民進党のぬるま湯に長年漬かってきた彼らにとって、小池流の傲慢で冷酷な水がなじまないていどのことなんでしょうがね。

吉田拓郎の歌ではありませんが、「たどりついたら、ここもどしゃぶり」といったところですか。嗚呼。

いずれにしても「希望」は、選挙後に解体を始めることは必至です。早くも小池氏の政治生命の先が見えてきました。

一場の茶番劇と言ってしまえばそれまでですが、これほどまでに民主主義の根幹である政党政治をあざ笑った所業はないでしょう。

もはやこれにふさわしい言葉はひとつしか思いつきません。

それは「政党詐欺」です。

 

2017年10月15日 (日)

日曜写真館 水鳥の声しか聞こえない

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2017年10月14日 (土)

改憲派さんにお答えして 危険と安全のバランスをとっていくのが大事です

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改憲派さんの昨日最後のコメントにお答えしておきます。長かったので、こちらの記事に移しかえました。 

お気持ちは分かるが・・・、としかいいようがありません。

念のために言っておきますが、私は普天間の比ではないベトナム戦争真っ盛りの時の厚木基地周辺で育ちました。墜落事故もいくつか経験しています。

ですから航空機がもたらす日常的騒音と、その危険性について骨身で熟知しています。

だから、気持ちは分かると言ったのです。

事故が起きて怒りと不安にかられ、そして自分たちの置かれた不条理さに怨嗟の声を上げておられるのでしょう。 私にも経験があります。

しかし残念なことに、そこから先の改憲派さんの論述は感情論に流されてしまっています。

「パイロットありがとう、普天間じゃなくて良かったという保守」と、まるで事故を軽薄にへらへら笑っている者がいるように書いていますが、それは私のことですね。

確かに私は普天間で落ちたら大惨事だと考えましたし、それを未然に食い止めた機長はいい仕事をしたと敬意を払っていますが、そのなにが問題なのでしょうか。

改憲派さんはまるで普天間で落ちたほうがよかったように読めますが、私の勘ぐりすぎでしょうか。

またこうも書いておられます。

「ヘリパッド建設時から事故があるから反対していた人たちに今さら、当然事故はありますよと言ってなんの説得力が?だから反対してたのにと言われるだけです。」

溜め息が出ました。あの高江集落に狂騒と暴力を持ち込んだ反対派に聞けば、それはそういうに決まっています。

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挺対協の人に向かって、「慰安婦と挺身隊は別ものですよ」と言いに行けというようなものか、あるいは逆に在特会に憲法をどう思いますかと聞くようなものですから。

では、順を追って考えていきましょう。改憲派さんはこう書きます。

「昨年のオスプレイ事故は、最近米軍の調査報告が出ましたが、当初発表の訓練していた場所も違う、黒塗りばかりの報告書。当初パイロット女性を「彼」?と自信満々に讃えた米軍司令官。」

失礼ながら、ずいぶんとバイアスが掛かった悪意に満ちた表現のように感じました。

去年のオスプレイ事故で黒塗りがあったのは当然です。軍事機密が記入されていますからね。 

事故を起こしたのは当初の報道と異なって西海岸で、その女性パイロットは、延々と辺土岬を迂回する海岸沿いの海上コースを飛行したのです。 

まっすぐに東から西に縦断すれば、普天間まで早く到着する可能性がありましたが、それを機長はあえて捨てたのです。

それは市街地に落さない、というプロのパイロットとして強い職業意識がなくてはできないことです。 

怒るのもけっこうですが、彼女の職業意識に敬意を少しは払ってもいいのではないでしょうか。 

機長の上司であるローレンス・ニコルソン氏が、部下を褒めてどこがいけないのか、理解に苦しみます。

こういう、部下が危険をかえりみず立派な仕事をした時に、評価してくれない上司など持ちたくはありませんからね。

今回の事故についても改憲派さんは、「高江のヘリパッドにもどりつけなかった」という言い方をなさっていますが、ずいぶんと酷な表現です。

機上火災というもっとも危険な状況で、ここまで傷ついた機体を飛ばしてきた人間たちがいることにも多少目配りしたらいかがでしょうか。

昨日の航空関係者のスナフキンさんは、「操縦士他同乗スタッフは賞賛されるべきと思います」とコメントされていました。

これが同業者のおそらく多数意見です。

では、今回もそうですが、どうしてよく軍用機が事故をおこすのが海上になるのでしょうか? 考えてみたことがありますか。

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それは危険性を帯びる訓練、たとえば空中給油訓練などは常に海上で実施すると定められているからです。

日米の取り決めで 陸地ではさせません。オスプレイはプロップ・ロータの位置変更すら基地上空に限っています。

訓練空域も厳格に定められています。西海岸、東海岸がありますが、すべて海上に設定されています。 

危険性を伴う訓練と安全措置は相矛盾する要素なのです。 

安全なだけの訓練で終わっては有事に対応できませんからね。 

かといって民間に被害が出るのは防がねばなりません。

要は、その兼ね合いなのです。これが比較衡量という考え方です。 

この危険性と安全確保のバランスが、なにかの原因で崩れた状態が事故です。

航空機において万が一事故が発生したら、その時地上にいる人間にできることは少ないのです。

今も昔も、乗員の判断と技量、そしてその勇気に頼るしかないのです。 

このように見ると、今回の事故や去年の事故は共に、パイロットは立派な職業人だと評価できるのです。 

ところで最後になりますが、あなたの主張をつきつめると、結局は危険な米軍は出て行けとなります。 

お分かりでしょうが、そんなことをしたらたちまち沖縄県は隣の軍事膨張を続ける超大国に呑み込まれてしまいます。 

改憲して自衛隊を強化したとしても、自衛隊が単独で沖縄を防衛できるのは遥かに先の話なのです。 

残念ながら、それまでは米軍にいてもらわねばならないし、その重い現実とどう向き合って、いかに<危険>と<安全>のバランスをとっていくのかが大事なのです。 

2017年10月13日 (金)

CH-53Eの事故続報

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依田氏も言っていたように、確かに「墜落」と言いたくなるのは分かります。 

今の時期だからこそあえて言いますが、事故が起きた時の怒りと動揺が治まったら、その原因がなにか、どうしたら防ぐことができるのか、考えねばなりません。 

やっていけないことは、関係のないオスプレイのことに論点をすり替えたり、あるいは翁長知事のように「国難」だ」などと大見得を切って政治利用することてす。 

そのようなことをしても、再発防止には繋がりません。

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結論から先に言えば、今回のCH-53Eの事故原因は、機体が米軍の中でも問題視されていた老朽機の非常着陸後の炎上事故です。 

現時点では在日海兵隊司令部からの公式発表がないので、推測の域を出ませんが、CH-53Eの事故機は、キャビン燃料、油圧チューブ、電気配線系に問題があったようで、なんらかの理由で漏れた燃料に、電気配線からの火花が着火したものだと思われます。
在日海兵隊サイトhttp://www.okinawa.usmc.mil/news/News.html 

CH-53Eは、この数年間に重大事故が何度も起こしています。ざっと以下の事故歴があります。 

・2012年6月29日、韓国で緊急着陸後に炎上(MH-53E)
・2012年7月19日、オマーン沖で墜落(MH-53E)
・2014年1月8日、バージニア州ヘンリー岬沖で墜落。(MH-53E)
・2014年9月1日、アデン湾で墜落(MH-53E)
・2016年1月14日、ハワイ沖で2機が空中衝突(CH-53E)
・2017年10月11日、沖縄で緊急着陸後に炎上(CH-53E)
 

この事故歴を見て気になるのは、2012年の韓国の事故が、今回の事故によく似ていることです。共に緊急着陸後に炎上しています。 

米軍もこの事態を放置していたわけではなく、2015年に海軍・海兵隊の航空機の安全管理当局である航空システム軍団(NAVAIR)が、この機体の安全性確保のために改善措置AFB-346を発令しています。 

原文をリンクしておきます。
http://www.navair.navy.mil/index.cfm?fuseaction=home.NAVAIRNewsStory&id=5840

●AFB-346抜粋(仮訳)
”NAVAIR releases new guidance for H-53 community, deploys inspection teams
AFB-346 provides step-by-step instructions for inspecting CH-53E and MH-53E helicopter cabin fuel and hydraulic tubes, as well as hoses and electrical wiring within 18 inches of those tubes and hoses, for chafing damage.”

「NAVAIRはH-53の新しい指針を発表し、検査チームを展開する
AFB-346は、CH-53EおよびMH-53Eヘリコプターのキャビン燃料および油圧チューブ、ならびにこれらのチューブおよびホースの18インチ以内のホースおよび電気配線を点検するためのステップバイステップの手順を提供した。」

今回の場合、「事故機は11日に海上で訓練を行っていた際に、エンジンから出火し、機長が民家のない陸地までヘリを移動させて緊急着陸したという。」(産経10月12日)http://www.sankei.com/politics/news/171012/plt1710120058-n1.html

事故機は飛行中に発火したものだと思います。当然消火活動はしたでしょうか、鎮火しなかったと思われます。
飛行中の火災ほどこわいものはありません。
その場合、パイロットがとり得る選択肢は3つです。
①普天間基地に帰還する。
②海に不時着水する。
③人家のない場所に緊急着陸する
①の基地への帰還は即座に却下されたはずです。なぜなら途中で機体を市街地に墜落させる可能性があるからです。
これはパイロットに課せられる普遍的職業倫理ですし、在沖米軍にとっても市街地に墜落というのは、悪夢以外なにものでもありません。
となると、②の海上か③の陸上しか残りませんが、海上に降ろすと直ちに浸水が始まって脱出が不可能なことが多いとされていますので大変に危険です。

したがって③の人家のない牧草地を選んだのでしょう。適格な措置だと思います。

今回のメディアの報道には「わずか人家から数百m」といったものが見受けられますが、パイロットはこの牧草地に慎重に緊急着陸させたのです。

私がこの事故を地元紙のように「墜落」と表現しないのは、このような慎重に場所を選定して降ろしたのですから、完全にコントロールが効いていたと思われるからです。

下の写真は琉新が撮ったものですが、操縦席付近からキャビンにかけて全焼していますが、機体の位置は正常な位置から左に横転しているに止まっています。

墜落したなら、クラッシュした部分があるはずですがみあたりません。

これからも「墜落」したのではなく、正常に着陸した後に、火が回ったと見るべきでしょう。

ならば、ローレンス・ニコルソン中将が言うように「クラッシュ(墜落)ではなく、着陸はコントロールされていた」というのは虚偽ではないように思えます。

つまりこの事故は、「非常着陸後の炎上事故」なのです。

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かつて名護市沖のオスプレイ不時着水事故について、ニコルソン中将はこう述べていました。

"The pilot made a decision to not fly over Okinawan homes and families. He made a conscious decision to try to reach Camp Schwab…and land in the shallow water to protect his crew and the people of Okinawa."

「パイロットは、沖縄の家庭や家族の上を飛行しないことを決意した。彼(女)はキャンプシュワブ沖合にたどり着こうと強く決意した。そして乗員や沖縄の人々を守るために浅瀬に着陸しようとした。」

事故は起こりえるのです。飛行機は落ちるし、鉄道は脱線します。自動車はひんぱんに事故を起こします。 

ですから残念ながら、事故は起きるという前提に立って、なにが原因なのか、どうしたら事故を防げるのかと考えるべきです。 

そうでないと、逆に事故は防げません。 

皮肉にも「事故はありえる」という前提に立たないと、「安全」はないのです。

小野寺大臣は当該機種の事故原因が分かるまでの飛行停止を要請し、米軍はこれを了承しました。

私としてはさっさと日本から撤去してスクラップに欲しいですが、朝鮮半島危機がここまで緊張すると、重輸送ヘリの代替がない以上、当分は難しいかもしれません。

CH-53について詳しい専門知識を持つ自衛官を派遣したそうですので、日米共同調査になるようです。 

2017年10月12日 (木)

米軍ヘリの事故について

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米軍ヘリが緊急着陸後に炎上しました。私が書いている午前3時段階の時点では、米軍の公式発表や詳報は入っていません。

「11日午後5時35分ごろ「東村高江の集落に米軍機が墜落したもよう」と、沖縄県の国頭(くにがみ)地区消防本部に119番通報があった。防衛関係者から県警に入った情報によると、米軍の大型輸送ヘリCH53が高江に墜落したとみられる。
同消防によると、けが人は確認されていない。午後6時現在、県警が警察官を派遣し、状況を確認している。」(沖縄タイムス10月11日 18:15配信)
 

「付近の住民が撮影した映像には激しく燃えながら黒煙を上げるヘリの機体が捉えられています。プロペラ部分は完全に火に包まれ、胴体部分が激しく損傷している姿も確認できます。現場は民間の牧草地ですが、辺りの牧草には火が燃え移っています。
 「パトカーと救急車、消防車、すごい台数が高江の方に向かっていて、風下だったのでガソリンの臭いがすごかった」(東村・高江の住民)TBS 10月12日 0:48配信)

動画https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20171012-00000006-jnn-soci

事故を起こした機体はCH-53Eスーパースタリオンです。
CH-53E (航空機) - Wikipedia 

Ch53ehttps://www.youtube.com/watch?v=WrZD6cCqKkU

事故が起きた場所は、一時東村高江の集落と伝えられていたので、イヤでもかつての普天間における2004年の沖国大事故と重ね合わせてしまいましたが、幸いにも無人の牧草地でした。 

なんらかのトラブルが発生して墜落したのか、あるいは不時着したものだと思われます。 

メディアは一括りで「墜落」という表現を使いますが、パイロットが最後までコントロールを失っていない状態で緊急着陸した場合が「不時着」で、機体がコントロールできずに落ちた場合が「墜落」です。 

今回は公式発表がまだなので、どちらなのかについては決定的なことは言えませんが、最初の米軍の通報では「不時着した」と警察に伝えたということです。

憶測の域を出ませんが、パイロットは安全な牧草地だと見極めて降ろしたのではないかと思われます。 

乗員は全員脱出に成功し、負傷者はありませんので、着地した後に機体に着火してしまい炎上したもののようです。

不幸中の幸いで、事故を起こした場所が民間牧草地だったために、周辺住民に被害はありませんでした。 

なお、必ずメディアが混同して報じると思うので説明しておくと、沖国大に墜落したのはCH-53Dシースタリオンで、今回の事故機はCH-53Eスーパースタリオンです。

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同じCH-53シリーズですが、沖国大事故のD型はエンジンが2基で合計7850馬力に対して、今回の事故機は3基で合計13140馬力で、ほぼ倍の馬力をもっています。
※機体についての解説はJSF様の記事を参考にさせていただきました。ありがとうございます。https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20171011-00076814/

今日あたりの報道では、「沖国大で落ちたあのCH-53がまたもや墜落」という表現が蔓延する思いますが、まったく別の機体だと考えて下さい。 

ただし共に旧式で、退役寸前です。既にD型は全機退役済ですが、少数のE型が普天間に駐留しています。 

本来、このE型も退役する予定でしたが、後継機のK型の開発が遅れたためにまだ飛ばしています。 

というのは上の写真に見られるように、ヘリすら持ち上げることができる馬力の重輸送ヘリの代替がないからです。

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さて、今回の事故で改めて確認できたことがあります。

この事故が普天間で起きていた場合、市街地に落ちた可能性があります。その場合、最悪の場合市街地炎上となり、市民の被害が起きた可能性があります。

だから危険を減らすためには、普天間の市街地から過疎の辺野古に移転するのがいいわけです。

たぶん翁長氏を先頭にして、基地反対派や地元メディアは、移設に反対する理由が新たに生れたと主張するでしょうが、正反対です。

新たに生れたのは、移設するべき理由であって、移設しない理由ではありません。 

反対派の言い分は、「移設は新基地建設であって、基地負担を増やすものだ」というものですが、住宅地にある飛行場より、周辺が海で後背地はキャンプシュワブの移設予定地のほうが遥かに安全を確保できるのは、考えるまでもありません。

おそらく、沖縄自民にとっては逆風になることは疑い得ませんが、真正面から「だからこそ移設が必要なのだ」と主張していただきたいと思います。

なお、この間米軍は海軍のイージス艦の衝突や、豪州におけるオスプレイの着艦失敗など「クラスAミスハップ」(重大事故)が増えています。

北村淳氏によれば

「2016年度の海兵隊の「クラスAミスハップ」発生率は3.42(10万回の飛行あたり3.42件発生)であり、2017年度の発生率はこれまでのところ4.56と跳ね上がっている。」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50797?page=3による)

この原因はオバマ時代の国防費大幅削減にあったと、北村氏は指摘します。

「その元凶は、オバマ政権による国防予算の大幅削減策の目玉であった「強制財政削減」にあるという。2012会計年度から2021会計年度の10年間で、連邦支出は1兆2000億ドル削減された。そのうちのおよそ半分は国防費であった。」(同上)

その結果、米軍は緊縮財政に苦しみ、このような現象が生れました。

「(1)新型航空機の調達が滞り、長年にわたって使い込み、安全性が(新鋭機に比べて)低い航空機を使用せざるを得ない。
(2)軍用機の整備点検費用が不十分となり、航空機に故障が生じやすくなる。
(3)十分な訓練費用を確保できなくなり、パイロットの錬成度も低下する。」(同上)

今回のケースも、これらの要因が影を落していると思われます。

 

2017年10月11日 (水)

小池女史不出馬 「希望」の度し難い密室政治体質

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そうとうに知られてきたことですが、小池女史の政治手法は、「話題作り」です。 

内容などなくてもいい、とまれ「話題」さえあればワイドショーは食いつく、メディアが食いつけばなんか「やっている」イメージを散布できるというわけです。 

双葉より芳しで、小池女史が出馬の公認を求めた時のことを思い出します。 

自民が公認を寄こさないことを知っていながら、わざわざメディアを引き連れて誰もいない都連本部に押しかけるというえぐさを思い出しますなぁ。

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彼女はこういう「絵」を見せたかったわけです。

「悪玉は都連。私はこの腐った都連のジジィどもと戦うジャンヌダルクなんだ」 

ミニサイズですが、女史の政治の2番目の師匠だった小泉元首相の「自民党をぶっ壊す」を彷彿とさせます。 

この「内容はないが、話題だけで引っ張る」、「政治をワイドショー化する」という政治手法は、去年、豊洲移転でさんざん私たちが見させられてきたことです。 

なにも決めない、なんの問題もないことを共産党とつるんで攻撃して「悪玉狩り」に勤しむ、これが小池女史の1年間の都政の足跡です。

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ところでよく小池女史のことを、「決められない政治家」だと言う人がいますが、ちょっと違うと思います。 

移転問題で言えば、女史は明瞭に移転を粉砕したかったのです。それは豊洲移転を潰してみせて、これぞ悪玉=自民都連の仕業と大見得を切りたかったのでしょうね。

それは小池氏が移転問題のPT座長に、小島敏郎氏という隠れもしない反対派を選んだことで分かります。

PTの専門委員だった建築家佐藤尚巳氏は、このように述べています。

座長を務める小島敏郎氏の言動から感じることは、ともかく豊洲には行かせたくない、実際にPTでも感じることですが、『専門家』と呼ばれる人たちは政治性を帯びているように見えてしまいます。」(有本香『「小池劇場」が日本を滅ぼす』)

この人事は、「小池さんが都庁の中に、過激派を連れ込んだようなもの」(同上)と評されています。

事実、この小島氏という人物は、C派を中心とする過激派で構成されている「首都圏反原発連合」の運動家でもあります。

20170624203730e89     小島敏郎氏

過激な思想を持った人物を座長に据えてまで阻止したかった豊洲移転は、引きずれば引きずるほど反対する理由がなくなってしまいました。

とうとう最後には、「安全だが安心ではない」などという放射脳オバさんのようなことを口走ることになってしまったのはご愛嬌です。

つまりは、小池女史は移転阻止に失敗して、くどくど言い訳しているだけなのです。

言い訳だけならまだしも、豊洲の「安全性」で73億の追加工事というおまけまでつけてくれました。これなど、もはや女史のメンツの問題でしょうに。
https://mainichi.jp/articles/20170810/k00/00m/040/092000c

それをスマートにシャラと言えてしまえるのが、この人のスゴイところです。さすが元テレビキャスター。

ちなみに「原発ゼロ」政策を「希望」は公約としましたが、小池氏の保守の仮面の下にあるもうひとつの顔を覗かせたように見えるのは、勘繰りでしょうか。

私はこの豊洲移転騒動の過程をかなり丁寧に追ってきたので、女史へ当初もっていた淡い期待が雲散霧消していくのを感じたものです。 

今回もまた、衆院選に「出るか出ないか」という、まーどうでもいいことで公示日まで引っぱるだけ引っぱったあげく、結局出ないそうで、こりゃまたどうも。 

引っぱればワイドショーへの露出が増えて、情報弱者に刷り込みが効くのを知ってのことです。 

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私はぜひ小池女史に出馬して頂きたかったですね。 

なぜなら、国政選挙で過半数を押さえて政権党になると豪語する党の党首が、その肝心な国政選挙の審判を受けていないのですからね。 

もし仮に「希望」が単独過半数を取ったら、いかなることになるでしょうか。当然、首班指名をせねばなりませんが、小池女史はこう述べています。 

「しっかり第一党を目指す、その結果を見てということ、政治では当たり前の話」  

わ、はは、当たり前ですって?冗談ではない。失礼ながら、失笑してしまいましたよ

とんでもない。憲政史上初めてですよ。

首班指名を決められないで総選挙に臨む党なんて。連立与党でもない限り自党の党首を指名するのが常識です。 

単独過半数を「希望」が取れば、その時は党首が少数の幹部とだけ諮って決めるのですから、まさに密室政治そのものです。

そして以後の国会審議においても、国民の選択を経ない「黒幕」が国会の外から遠隔操作することになるでしょう。 

おっと、憲政史上初めてだと書いてしまいましたが、ひとつだけ過去に例があったことを思い出しました。 

かつて宮本共産党が、今の「希望」と酷似することをしたことがあります。 

当時、党内で絶対的指導者だった宮本顕治書記長は、国会議員に立候補しないまま選挙に臨んでいました。 

立花隆氏は『日本共産党の研究』の中で、国民の審判を受けない人物が、国政政党の党首であることを許せば、それは国会の外の黒幕支配を許してしまうことだとして、批判しました。 

宮本書記長は、国会でスパイリンチ殺人事件の追及を受けることを嫌がって出なかったといわれています。 

共産党は「犬は吠えても歴史は進む」と威勢よく反論していましたが、やはり立花氏の宮本氏による国会外からの支配批判は耳が痛かったとみえて、後に宮本氏も参院選挙に出ることになります。 

今回の出馬騒動を出る出ないの政治コントではなく、「希望」の持つ密室政治体質を知る上で、よいケースとなったはずです。

2017年10月10日 (火)

「ユリノミクス」 緊縮財政・金融引き締め・内部留保課税という暗黒三点セット

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選挙において経済は重要な判断材料ですが、「希望」の経済政策は大変に面白いモノになってしまいました。 

「希望」の公約は以下です。

●希望の党の公約要旨 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21990610W7A001C1EA3000/
【税・財政】
①金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す「ユリノミクス」を断行する。
②2019年10月に予定されている10%への消費税引き上げは凍結する。
③消費増税の代替財源として、約300兆円もの大企業の内部留保への課税を検討する。
④ベーシックインカム導入で低所得層の可処分所得を増やす。
⑤20年度までに基礎的財政収支を黒字化する目標は現実的な目標に訂正する。

まずもっとも注目された「消費税凍結」ですが、たぶん小池女史はわかってやっているとは思えません。

というのは、例の三党合意の上に成立した、消費税法という行政化された法律があるという前提が欠落しています。 

ですから、「希望」は政権党になったなら、どのような根拠で「消費税凍結」をするのでしょうか?

その時必ず日本最強の官庁・財務省は、消費増税凍結による得られるべきだった税収の代替財源を問うてきますよ。

その時に「リセットしました」では通用しないのです。

さて、安倍政権の経済政策は、ある意味、財務省との暗闘の歴史でした。

当初、金融緩和と財政拡大によってロケットスタートを切ったアベノミクスは、たった一回の消費増税のために、その後日本経済は実に4年間ちかく低迷し続けました。 

この反省から首相は、2回に渡って再増税を延期しましたが、2019年10月に実施ということにとりあえず決まっています。 

この時、政府が使った手段が、消費税付則18条にある実施回避条項でした。 

そこには回避できる条件として、「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」とあります。  

今回の衆院選で消費税ゼロを叫ぶべきだったという意見は多くあります。私も情緒的には分かるのですが、今それを与党の公約として言える時期かどうか、です。 

できないでしょうね。現在、日本経済は絶好調ですから回避条項は使えないのです。 

政府がやるとすれば、2019年の実施時期を狙った次の国政選挙しかタイミングはありません。 

その時までにデフレ脱却せずに、インフレ率が目標に達しないに関わらず、再増税するなら、その時こそ徹底的に政府を批判しましょう。

まだ2年あります。

たぶん首相は、この2年間にうちになんとかデフレのあぎとから脱してしまうことを考えているのでしょう。

そしてそれがかなわないなら、選挙にひっかけて3回目の延期も念頭にはあるでしょう。

今ここで財務省だけではなく、三党合意堅持派の公明と対決構造になることが得策かどうかという政治判断です。 

だから、消費税の使途という、まぁどーでもいいようなことでグニョグニョ言うはめになりました。

選挙戦術としては失敗ですが、与党の哀しさです。

このような複雑を判断とは無縁に、なんでも言えるのが野党の強みです。

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「希望」は、「ユリノミクス」とやらでアベノミクスを全面否定しています。

ここで「希望」がいう「金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す」という部分は、明瞭に金融引き締めと緊縮財政をすると宣言するに等しい内容です。

なにが「過度に」ですか。デフレ脱却までまで「過度に依存」していいのです。 

もし仮に、現況で消費増税を阻止できる方法あるなら、それは唯一、さらなる金融緩和と財政拡大によって景気を引きずり上げるしか方法はありません。 

これによる税収の拡大が、消費増税をしないため発生する財政失陥の穴埋めとならねばなりません。 

ところが、「希望」は、なんと消費増税の代替財源として、約300兆円もの大企業の内部留保へ課税すると公約してしまいました。 

その上に、ベーシックインカム導入まで約束する始末です。ベーシック・インカム自体はいわゆるヘリマネ(ヘリコプター・マネー)として存在する個人消費のてこ入れ政策です。

しかしこれも同時に、緊縮財政・金融引き締めをしたらなんのためにヘリマネをするのか意味が分からなくなります。ブレーキとアクセルを同時に踏むようなものですから。

小池氏は消費税ゼロやヘリマネを、有権者の耳に心地よい客引きとして使っているにすぎないようです。

そこで代替財源として「希望」が公約で出してきたのが、なんと内部留保課税です。

正気ですか、小池さん。「内部留保」と「留保金」はまったく別概念なのですよ。 

内部留保はいわば「儲けの蓄え」です。これを企業は再投資に回しています。 

「内部留保は設備拡充や技術開発などの再投資に回される性格のもので、12兆6千億円の連結利益剰余金をもつトヨタもその多くを設備増強に投じており、現預金は6分の1程度しか残っていない(08年9月末時点)。」(知恵蔵)
https://kotobank.jp/word/%E5%86%85%E9%83%A8%E7%95%99%E4%BF%9D-107430

ですから、「内部留保」が企業活力を計る指標なために、「通常、企業が銀行から融資を受ける際には内部留保の厚みが重視される」(同上)ことになります。

小池さんは致命的に経済を勉強していません。この人は内部留保という現金が、企業の金庫に眠っていると思っているらしいのです。 

冗談ではありません。内部留保は設備投資などの形で既に再投資されています。 

これに課税するというのですから、ほんとうにそれが実施された場合、企業は既に投資した設備を売却して納税せねばならなくなります。 

その中には稼働して利潤を生んでいる現役バリバリの設備も多いはずですから、もう笑えるほど悲惨なことになるはずです。 

その上に、「希望」は、「2020年度までに、基礎的財政収支を黒字化する現実目標を持つ」と宣言していますから、つまりは緊縮財政一直線です。 

もし仮に「希望」が政権を取り、国会議員でもない黒幕エックス(←小池さんのことですよ)が個人的に指名する誰かが政権をとった場合、かんがえるだけでゾッとする経済状況に舞い戻ることでしょう。 

私は今回の新党事件が起きるまで、小池氏の経済政策は知らなかったのですが、氏と自民党内で調子があったのは石破氏や野田氏というアンチ・アベノミクス、緊縮財政・増税派たちばかりでしたから、なるほどなぁと思った次第です。

今回自民は、プライマリーバランスの目標は取り下げないものの、20年実施は無理だと言い切りました。 

けっこうなことです。国民に分かりにくいことが難でしたが、それは端的に財政拡大はやめないということですから。 

PBなど永遠の目標に祭り上げて、とまれ今は景気回復、デフレからの脱出に力を傾注すべき時なのです。

 

 

2017年10月 9日 (月)

名無し氏にお答えして 政局だけの単眼ではなにも見えませんよ

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過去記事「麻生発言は、今年冬からの朝鮮半島情勢の爆発を念頭にした発言だった」にコメントが来ました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/post-7915.html 

名無し氏は、根拠を挙げて反論しているのではなく、ただ「そうは思わない」「考えすぎだ」と書いているだけです。

ま、こんな書き方ならなんとでも言えますけどね(苦笑)。 

ならば私も、ただ一行この人に習って、「そうは思わない。あなたは考えなさすぎだ」でオシマイにしてもいいのですが、それではあんまり愛想がないので、できるだけていねいに答えておきます。

この人は今回の解散を、国内政局だけの単眼で見ようとしています。 

ですから、メディアと野党が言っている「モリカケ隠し解散」というミスリードを丸飲みしているようです。

そのために、戦後最大の脅威に成長しつつある北朝鮮の核武装との関係で、首相の解散判断を見ることができないでいます。

その関係で見れば、今後日本を襲うであろう危機に対応するために首相が信を問うているのがあたりまえに見えるはずですが、この人にはまったく見えないようで困ったものです。

まず11月米大統領訪日以前に米国が軍事オプションをとらないのは、あまりに当然すぎて説明する気にもなりません。 

大統領の訪問は膨大な外交プロトコルを含んでいる国家間事業ですので、半年以前から二国間外務官僚の間で分単位のスケジュールまで練られています。 

この間に、グアムにでも撃たれたら別ですが、すべてを台無しにするような軍事オプシッン行使はありえません。 

そもそも軍事衝突が始まったら、訪日どころではありませんよ。 

「そうなら日本を戦場にしてまで戦争しますか?」とのことですが、この人はまったく「同盟」の意味をわかっていない。 

外交的歓待は、なにもトランプが安倍氏を好きだからということだけではなく(それはそれで首脳間の「友情」は、安倍氏の重要な資産ですが)、同盟が堅固に維持されているという外交的デモンストレーションなのです。 

ちなみに、下のトランプのツイッターで使われた写真を見ると、河野外相と安倍氏が表情たっぷりに喜んでいますが、二人とも通訳なしで英会話をこなします。

あんがい外交には重要なことなのですよ、こういうことって。

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日米は共に、この同盟関係こそが何よりも北の核を抑止していると考えています。 

米国は何も戦争したいのではなく、北の核武装を許さない立場を堅持しているだけであって、「日本を戦場にする」という言い方は悪しき意味でナイーブであって、適切ではありません。 

「安倍に好意的な産経新聞の憶測に過ぎない」とのことですが、石橋氏が「アベ贔屓の産経」の政治部長だからどうしたのです?

私は逆に情報の信頼性が高まったと思いますがね。

なぜなら、現時点でもっとも官邸に深く入り込んで情報をとっているのが産経だからです。 

だからこそ信用性が高い情報なのです。産経を好きかキライかという価値判断以前に、現況で確実な安倍政権の動きを伝えているのは産経です。

私は琉球新報だろうが東京新聞だろうが、はたまた「しんぶん赤旗」だろうが、正確な情報を伝えているなら信用します。

問題は報道機関の政治的立場ではなく、相対的に独自にあるべき報道内容だからです。 

ところが朝日などの左翼系メディアの弊害は、論説と報道をゴッチャにして政治的バイアスをかけて報じることです。これを朝日は「角度をつけた報道」と自称していました。

結果、朝日は報道機関にあるまじき倒閣運動に走り、いまや官邸や自民党本部からまともな情報が取れない状態になっています。 

そのために解散はおろか、動向すらまったく報じることができない有り様のようです。

まぁ、あそこまでモリカケ騒動を焚きつけたら、当然でしょうね。気の毒な朝日の政治部記者さんたち。

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次に私が38度選越えの北の砲撃を「ソウルを火の海にする」ほどではないと書いたことに対して、「凄く楽観的な分析」とのことです。

北に38度線越えの攻撃能力が、北と南が申し合わせたように言うには裏があります。

北にとってはこれこそが、米国の軍事オプションを妨げる最大の「抑止装置」である一方、韓国にとってもまた、このグダグダの南北癒着構造を維持するための「抑止装置」でもあるからです。

北はまじめに韓国を攻撃する気はなく、韓国もまた北への侵攻はおろか、まともな防衛の意志もない。北も韓国も互いに「ふり」だけなのです。

韓国軍はよく景気よく「大量報復作戦」だの「斬首作戦部隊結成」などとメディアに吹聴していますが、本気で考えていたらあんな軍事機密を自分からバラすわけがありません。

韓国軍がこのように勇ましいことを言い出したら裏目読みしてかまいません。それはやる気がないということですから。

というわけで、なんのことはない有体に言えば、阿吽の呼吸で現状維持がもっとも望ましい、これが北と韓国の共通の利害だったので、これは今も不変です。

ただ北からすれば、韓国がムンジェインによって内部崩壊して赤旗を掲げてくれるなら話は別でしょうが。

ほんとうにソウルが「火の海」となる脅威があるなら、ソウルをルトアックが口酸っぱく言ってきたように射程外に遷都すればいいのですし、少なくとも人口集中を抑制するていとのことは可能だったはずです。

米8軍や第2歩兵師団など、さっさと中部にまで南下していますものね。

ところが韓国政府は、ソウルの安全措置をなにひとつしませんでした。

これが問わず語りに、韓国が北の38度線越え攻撃の脅威がないと判断していることを暴露してしまっています。

一切遷都の努力をしないというのは、韓国も北の「ソウルを火の海」の内実を知っていて、米国への言い訳として使えるからにすぎません。

しかしそれも、軍事的にクリアな眼でみれば、小川和久氏など複数の軍事専門家が指摘するように大いに眉唾なのです。

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B1-Bが北との境界線スレスレに飛んだことについて、「アメリカは何でもありのお国柄で機密にしてるだけかもしれません」だそうです。

メディアの「死の白鳥」宣伝にだまされましたね。第一、黒色です(笑)。

「B1B戦略爆撃機は、核攻撃などで大きな影響を与えられる戦略兵器の一つ。グアムの米軍基地から約2時間で朝鮮半島に飛来できる。搭載した爆弾の破壊力から「死の白鳥」とも呼ばれる。」(朝日9月2日)

朝日はたった3行のうちで2カ所も間違えています。B1Bは核攻撃用の機体ではなく、「死の白鳥」はエリア88というマンガがつけたネーミングにすぎません(爆笑)

なにが「なんでもありだ」ですか。馬鹿をいいなさんな。B1-Bの非核装備は、ロシア相手の国家間軍事協定に規定されているのです。

米国がB1の核装備を取りはずしているのは、2011年に米国とロシアとの間で新戦略兵器削減条約(New START)が締結されたからです。
新戦略兵器削減条約 - Wikipedia

B-1Bは元来、高度数10mの超低空を音速に近い速度で敵地に侵攻し、核攻撃を行う目的で開発されました。

しかし登場したときは、既にそのような目的で使われることは考えにくい状況になっていたのです。

それは米露で、核弾頭と運搬手段の保有数に制限を設けるSTARTが結ばれたからです。

この条約によって核兵器の運搬手段は爆撃機+大陸間弾道ミサイル(ICBM)+潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の合計700、核弾頭数1550発以内への削減が義務化されてしまいました。

ここでB-1Bは、新たなSTARTに適応しない爆撃機として潰される運命になったのですが、長期間かけて紆余曲折の末に開発されてきたのにもったいないというので、核搭載能力の封印を条件に、なんとか「条約制限外」に滑り込ませたのです。

見返りとしてロシア側もTu-22M戦略爆撃機から、空中給油装置を排除し航続距離に制約を設けることによって「条約制限外」としました。

米国が、この人が思うような「なんでもあり」状態、つまり無条約状態に入ったら、ロシアは報復措置として自らも無条約状態に突入することになります。

米国がこんなリスクを冒すと思うほうが物知らずです。

このような長年の米露の核軍縮の経緯が背景があって、B1-Bは核兵器が積めないのです。

米国にとって北の核など鼻くそです。米国にとって真にコワイのは、ロシアの核兵器だということをお忘れなく。

ノーベル平和賞をICANがとったので、またまた非核運動が盛り上がりそうですが、現在の国際社会がいかなる核軍縮の道を辿ったのかを勉強してから議論しましょうね。

今は、B1-Bはその長時間滞空能力を活かして、通常兵器攻撃に使用されています。これは既にアフガンでも実施されている使用法で、この人が知らないだけです。 

この冬から来年にかけて軍事オプションの危機が高まるという見通しを持たない軍事専門家がいたら、どうぞぜひご紹介ください。

この人物はたぶん過去ログなど一本も読まないで来たのでしょうから言っておくと、私はいままで軍事オプションはありえないという立場にたっていました。 

いまでも回避されることを願っています。しかしこの冬以降は、まったく見通せなくなってしまいました。

私は国連制裁も底を打ちつつあり、いまや軍事オプションが好むと好まざるとにかかわらず、最後の選択肢になりかかってきている厳しい事実を指摘しただけです。 

猫パンチはくすぐったいのでやめましょう。あと、HNくらいつけなさいよ。

2017年10月 8日 (日)

日曜写真館 キツネノカミソリと出会った植物園散歩

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私が仕事中の事故で怪我したかとおもったら、まだ私が治りきらないうちに、今度は家人が国道で運転席側に衝突を受けて全損事故です。

運転席側のドアがくの字になりました。

重傷を負ってもしょうがないような事故でしたが、幸い大事にはいたらず、あばら骨にシップを貼っていててなどと言っています。

皆さまもご注意ください。厄払いの御祓いでもせにゃならんか。

2017年10月 7日 (土)

菅官房長官がしつこく小池氏に出てこいと言ったわけ

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政局記事が多くてごめんなさい。こんな10年に1回あるかないかの時期なのでご勘弁下さい。 

さて、「小池衆院選不出馬、官邸安堵」などというメディア報道を見ると微苦笑してしまいました。 

自民党本部が常に調査機関を使って、大規模な世論調査を実施していることは有名で、この「希望」についても、その支持率推移を冷静に読んでいると思われます。 

官邸はもはや小池女史が都知事を辞任して衆院に出た後まで、計算に入れるどころか、つい先週までそれが第1シナリオでした。

菅氏はある時期から盛んに小池氏に出馬を勧め始めましたが、それは小池効果は持続しないという自信があったからです。

Photo_2https://www.j-cast.com/2016/07/22273323.html

事実、衆院で「希望」は9月28日の毎日の調査で18%で、自民の29%に10ポイント差まで追い上げていましたが、直近のNHKの世論調査では、希望は5.4%にまで急落し、自民は堅調に30.8%を維持しています。

10月5日付けの朝日の調査では、比例区投票先は自民35%、希望12%で立憲、公明が7%です。

緒戦でこれだけ自民と希望との差が大きく出てしまっては、このまま与党側に麻生氏の失言病でも出ない限り(苦笑)、この形勢のまま終盤戦に向かうかもしれません。 

おそらく希望は、一定の議席数を取ることはありえますが、しょせんそれは旧民進党を削ったものでしかないと官邸は見切っています。 

立憲民主はとりあえず左翼リベラル陣営の唯一の受け皿となりますから、安倍政権への対抗勢力の核としてしぶとく生き残るでしょう。 

メディアは既に小池氏を見切り、立憲民主に鞍替えしたようですので、共産との野党共闘の力もあって、そうとうに票を伸ばすはずです。

Photo_3http://biz-journal.jp/2017/10/post_20804.html

余談ですが、ラジオの某キャスターは、「前川さんが立憲民主の党首にならないかなぁ」なんて言っていましたが、実に名案です。私も一票!(笑) 

既に共産は全選挙区の候補者擁立を放棄し、立憲民主と調整に入っています。 

たとえば枝野氏の埼玉5区で立候補を取りやめました。このような野党共闘は全国化するはずです。 

この一見リベラル統一に向かうかのような現象は、その影で別のもうひとつの分裂を生み出しています。

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それが、労組・連合の分裂です。
日本労働組合総連合会 - Wikipedia
 

これはそのうち詳述したいテーマですが、左翼リベラルをまとめていたのは、旧民進党ではありません。 

民進党の支持母体であった労組・連合です。彼らが゛選挙資金から事務所、運動員まで一切合切の面倒をみてきたスポンサーなのです。 

よく勘違いされるのですが、政党があって労組・連合があるのではなく、逆です。労組・連合の政治部として民進党があったにすぎません。 

エライのは労組。センセイ、センセイとおだてられていても、ボスはあくまでも労組・連合なのです。 

その労組・連合にとって、共に天を戴かざる宿敵が共産党です。彼らにとってのファースト・エネミーは自民党政権ではなく、むしろ競合他社である共産党なのです。 

枝野新党が民共合作路線を取った以上、労組・連合としてまとまって立憲民主を支持することはありえません。 

支持するのは、労組・連合の中の左翼部分である日教組と官公労のみに限定されます。

彼らは少数派に過ぎませんが、役人と教師の強みで全国津々浦に遍在しているために、連合の地方組織や青年組織を牛耳って、左翼路線を突っ走っています。

今回は立憲民主を応援すると明言しています。

一方、大手民間労組は金属、自動車、繊維、アパレル、化学やサービス・流通などの製造・流通を押さえて、UAゼンセンなどは150万を擁する日本最大の労組です。

方針は、穏健な改良路線を堅持してきました。

このような民間産別は今回、「希望」を支持するとしましたが、これは小池新党が自民の補完勢力だとわかっているからです。 

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UAゼンセン会長が先日、官邸で首相と会談したとのニュースが流れ、労働界を震撼させたことは記憶に新しいことです。 

このように労組・連合は政党支持を決められないまま、左翼と漸進的改良派に四分五裂していきます。 

結局、希望、立憲、無所属に連合票は分散し、選挙後には神津会長が2期を目指さずに退任するようですので、労組・連合が分裂過程に入ったことは間違いないと思われます。 

このような大きな再編のトレンドをつかんだから、菅官房長官はしつこく小池氏に出てこいと言っているわけてす。 

小池氏が都知事を辞めれば、都知事選のやり直しですが、都民ファーストが小池女史に替わる候補を立てることは不可能です。 

都民Fは純然たる小池人気頼みの個人商店にすぎず、なんの政治理念も持たない素人集団にすぎないからです。 

左翼リベラル陣営は、せいぜいが立憲民主などを中心にして左翼文化人を統一候補に推すのが精一杯でしょう。 

その場合、仮に自民が小泉進次郎氏のような強力な候補を立てた場合、確実に自民が都知事を奪還することになります。 

その場合、都議会は遠くない時期に解散し、やり直し都議選となります。 

このように流れは、自民が仮に票を減らしたとしても悪くない流れに乗っているのです。 

これが菅氏が、「小池さん、どうぞ衆院選に出てください」と言い続けた理由です。

 

2017年10月 6日 (金)

「小池百合子」というイメージ政治の崩壊

024

首相が振り出した解散の一振りによるケイオスは、一定の収斂に向かいつつあるようです。 

メディアにとって最後の反安倍のカードだったはずの小池女史は、失速しました。 

おそらく来週あたりの週刊誌、ワイドショーには、いままでの小池首相待望論をすっかり忘れたかのように「小池ヒトラー」論が跋扈することでしょう。 

その原因は、小池女史という特異な政治家の性質によっています。 

多かれ少なかれ政治家というのは何らかの「根」があるものです。それは土着的利権の許認可かもしれないし、あるいはなんらかの政治目的かもしれません。 

ところが、小池女史にはその「根」がないのです。 

根がない代わりにあるのは、「自分」です。自分といって思いつくような金銭的、あるいは人脈的な利害関係ではありません。 

あくまでも「自分」であって、さらに言えば「自分のスタイル」なのです。

Photo_3https://www.youtube.com/watch?v=NjaS16njH_4

三浦瑠麗氏は小池氏の都民ファーストを、「スタイルの党」だと評しました。三浦氏は、希望の党のビデオクリップについてこう書いています。

「大事なのは、政策の中身でなくてスタイル。談合的でなく、オジサン的でもない。内実はともかく、多様性や透明性といった言葉を多用する。改革、希望、リセットと繰り返す。希望の党が提示したイメージビデオは、とてもわかりやすい。煙草を吸う小太りのおじさんの横を小池知事が颯爽と歩み去っていくのです。」http://lullymiura.hatenadiary.jp/

三浦氏は、小池女史の原動力が「しがらみに対する憎悪」だと指摘しています。 

ヤニ臭いオヤジを横目にして毅然として背筋を伸ばしてハイヒールで歩み去る「自分」、これは理念でもなく、ましてや政策でもありません。

ぶっちゃけて言えば、「あたしってなんてカッコイイの」というナルシズムが、政治というスーツを着て歩いているのです。

小池女子は自己愛まで政治化します。

自分のたちふるまいは言うにおよばず、実は人間関係の個人的好悪にすぎないことすら政治的に表現するのが、彼女のような政治的人間なのです。

それは石原氏から知事選で「大年増の厚化粧」と言われたことに対する根深い憎悪が、百条委員会まで開くに至った小池女史の原動力だということをみれば、なんとかなく分かるでしょうか。

彼女のこの「自分」というスタイルに熱狂できさえすれば、この人が政策を持ち合わせていないこと、東京都をどうしたいのかわからないこと、そしてなによりこの1年間の無惨な迷走と失敗など視野には入らなくなります。 

その意味で、小池女史は政治家ひとりを選ぶ大統領型選挙であった知事選と都議会選挙には完勝を納めたのです。 

この完勝ぶりを見て、安倍氏の対抗馬となり得ると勘違いしたのがメディアでした。 

元々売れないニュースキャスターだった小池女史は、内容がないことでもスマートにしゃべることが特技でしたので、まさにメディアにとって誂えたようなキャラクターだったと思われます。 

しかし、今回の衆院選は根本的に性質が違います。衆院選はどぶ板選挙です。 

全国津々浦々の小選挙区で、地域代表を送り出すという巨大な村議会選挙でもあるわけです。 

しかも、善し悪しは別にして小選挙区制度です。 

小池女史は早々と彼女のスタイルの種明かしをしてしまいました。 

それは、「安倍ヒトラー」が可愛く見えるような合議を嫌う独裁的体質であり、他人のしがらみは認めないが、自分のしがらみだけは別だという側近政治であり、そして思想的には安倍氏がリベラルにみえるほどの右派だという地金でした。

この地金が「大阪大虐殺」に見られるように、民進党合流を「全員公認するつもりはさらさらない」と言い放つことで、国民の眼に露わになってしまったのです。 


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小池女史は得意の横文字で、「レシプタンスに苦慮しています」なんて言っておけばよかったのです。意味不明ですから。

こういうベタな表現を使ったために、彼女が唯一の支持基盤としているワイドショー無党派層が逃げました。
 

「なんて非情な女」、これがワイドショー民たちの実感だったと思います。

その上に、「希望」に公認をもらうために踏ませた踏み絵が、小池氏に反安倍リベラル幻想を抱いていた層に衝撃を与えました。 

そっくり安倍自民党と一緒。ないしはそれ以上に右だったからです。 

唯一反原発だけは違いますが、それすら小池氏が熱を入れていないのは明白で、公認誓約書からは消えています。 

自民の補完勢力そのものに見えても、なんの不思議もありません。 

当初、小池人気に眉をひそめていた自民はすっかり復調し、菅氏のように連日、「さぁ衆院に出てきて下さい」とラブコールする余裕すら生れています。 

ここで立候補して陣頭指揮を取って泥を被る気があるなら、都民からは呆れられ、諸政党はそれ見たことかとバッシングするでしょう。

しかしそれでも彼女の著書のタイトルを借りれば、それは「女子の本懐」ではあったはずです。 

論理的には、全国政党を作り政権交替を狙うと宣言したのですから、本来退路はないはずです。

しかし、小池女史は逃げました。ならば政党代表を引き受けるべきではなかったし、そもそも国政政党などは作らねばよかったのです。 

この瞬間に、「希望」の近未来が見えました。

安倍氏はまれに見る強運の持ち主なのかもしれないとたまに思うことがあります。

それは政治的危機に際して、必ず「救いの手」が登場し、失脚を防いでくれるからです。

小池女子は、野党第1党を4分解に持ち込み、自民がもっとも恐れた野党共闘を阻み、そして対抗政党を率いてヨタヨタと離陸しようとしています。

どうやら今回その救いの手は、皮肉にもメディアが担ぎ上げた「小池百合子」という政治家のようです。 

 

 

snsn氏投稿 ニセモノ政治時代の終わり 完結

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今回で完結となります。 

優れた論考を寄せられたananさんに感謝いたします。 

                  ~~~~~~~~~~~ 

               ニセモノ政治時代の終わり その3
                                          snsn
 

承前 

3)自民党とリベラルの関係は? 

さて、このように振り返ってみたときに自民党特に安倍政権をどう評価すべきか? 

私は自民党安倍政権は政党としての要件を満たしていると考えます。外交、経済の面では国益全体を考えた政策をとっています。 

さらに面白いことにアベノミクスでは、若者の雇用、資源配分などで社会的弱者の利益を代表するというリベラル的な政策を取っています。 

若者からの支持率の高さもその表れです。ここでも語の正確な意味での”パーティー=政党”なのです。 

従って実質的に二大政党制が自民党一党の中に存在しており、無理やり民進党などに政権交代する必要性はありません。

私は日本においては共産主義革命を伴わないリベラル、社会的弱者やマイノリティーに資源配分するリベラルは絶対に必要だと考えています。
 

そして現時点では、それは自民党の中にあることが最も合理的であろうと思っておりそれがアベノミクスなのです。 

自民党の英文名称は Liberal Democratic Party of Japanですね、党名にリベラルが付けられているのです。 

もし今回自由党が解党したらリベラルが党名につくのは、唯一自民党だけになります。

々木俊尚が言う通り日本では1980年代までリベラルとは左派のことではなくアメリカの民主党的政治スタンス=自由主義のことを指していました。 

当時のマルクス主義者から見るとリベラルというのはむしろ対立陣営でした。(ある年齢以上の方はそのような記憶がありますよね) 

それが東西冷戦構造の崩壊により、方向性を失った社会党、共産党など左派やマスコミがリベラルを自称、他称するようになったのです。 

語の本来の意味のリベラルが自民党の中にあることは整合性があるのです。

アメリカの民主党の歴史を読むと分かる通り、労働者の利益を代表することは時には保護主義になります。その意味では労働者の政党が同時に保守でもあるのは不思議ではありません。
 

逆にいうと共産党がリベラルと名乗ることが不思議でしょうがない、、彼らは堂々とマルクス主義を主張すれば良いのです。

私は本物のリベラルの存在は許容しますがニセは不要です。
 

今回あぶり出されたのはエセリベラルだったわけですね。間違っても細野氏たちは<リベラル>ではありません。

 

さらにいうと小池氏は<保守>ではありません。どちらも政局での生き残りだけを考えるニセモノ政治家です。

4)各党の経済政策

最後に各党の今後の経済政策について概観してみましょう。とは言え希望の党については論評に値しないというのが正直なところです。 

小池氏は消費税増税凍結を宣言しました。 

その文字面だけ見れば良いなと思うかもしれませんが、そもそも金融緩和に触れていませんし財政面では減収分を公共事業の削減で補うと明確に主張していますので典型的な緊縮派であり論外です。 

そもそも国家会計に家計の考えを入れるという人ですから、経済学が根本的にわかっていません。

これまでアベノミクスについて寄稿させていただいて、私は現在のアベノミクスは方向性はいいがまだまだ足りない要素があると申し上げてきました。
 

問題は主に財政出動についての消極的な姿勢です。 

財政出動については中野剛志『富国と強兵』が大変説得的な論理展開を行なっています、相当分厚い本ですが一読をお勧めします。 

MMT(modern monetary theory)という経済理論に基づくものであり、 アベノミクスの足りない部分について痛烈な反証となっています。

今回の解散では、閣議決定事項であるとは言え消費税増税前提での政策を掲げてしまいました。
 

増税について識者がいろんなことを言っていますね、民進潰し作戦とか、財務省に押し切られたとか、党内増税派への配慮とか・・・、まあ本当のところはわかりません。

しかし私はどのような事情があっても、消費税率は引き下げるべきだと思います。

一方でプライマリーバランスの20年度までの黒字化目標を削除したスタンスは高く評価できます。

現時点で反緊縮政策を行える実行力のある政治家は、自民党内で見ても安倍さんしかおりません。 

私としては期待しているからこそ批判をするのであって、経済政策的に安倍政権の継続が望ましいと考えています。

最後になぜ安倍さんが消費税増税を言い出したのかについて個人的な推論で本稿を終わりたいと思います。

北朝鮮情勢は危機的な水準にあり、遠からず戦争状態に至る可能性は十分にあります。その場合に日本が戦場になるのか?短期決戦か?長期化するのか?
 

大量の難民が発生するのか?など極めて不確実性が高い状況です。 

こんなとき為政者としては歴史に学ぶでしょう・・・、安倍さんは自分の尊敬する高橋是清について思いを馳せているのかもしれません。 

高橋是清は1931年の世界恐慌時に大蔵大臣を務めておりリフレ政策と積極財政により世界で最も早くデフレを脱却したアベノミクスの元祖のような人です。
(なんとケインズの理論より前!!)
 

しかし戦局が拡大するに従って増大する軍事費により日本経済はインフレに陥ります。

そこで高橋は緊縮に舵を切りましたがこれが軍部の反発を呼び226事件が起こり高橋は暗殺されてしまいます。

今後戦時下においては軍需の増大、あるいは供給設備の大規模破壊などで日本が短期的なインフレになる可能性があります。
 

その場合の引き締めオプションの一つは増税なのです。 

安倍さんとしては戦時下において極端な国粋主義的な声の高まりによって歯止めのない軍拡に陥らないようにするための緊縮オプションを事前に残し、急激な短期的インフレに対して慌てて対応しないように布石を打っているのではないか・・・。

これが安倍氏が高橋是清に学んだ隠された意図ではないか、というのが個人的な推論です。

まあ根拠はと言われると弱いですが、好むと好まざるとにかかわらず、今後の日本は<戦時下経済>を想定する必要があるのです。

まだまだ世界情勢も政局も流動的ですのでどうなるかわかりませんが、以上で今回は終わります。

 

                                               (了)

 

2017年10月 5日 (木)

小池新党 急いで成功しようとする人は急いで失敗する

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snsnさんの第2回目は別にアップしておりますので、ご覧ください。今回も面白いですよ。 

本質的なことはsnsnさんにお任せして、私のほうはやや政局的なことをテーマにします。 

さてさて、当初総選挙を席巻するかと思われていた小池新党は、急速にその勢いを弱めつつあります。 

理由はsnsnさんに習っていえば、小池新党の「支持基盤」がメディアだったからです。 

小池新党は実社会の中に支持基盤を持ちません。 

旧民進党のように連合という労組を選挙基盤にしているわけでもなく、自民党のように強固な土着的後援会を持っているわけではないのです。 

あるのはフワフワとした「安倍がキライだ」というただの「気分」であって、それを醸成していたのはメディアでした。 

こういう綿菓子のような芯がない「党」でもいったん風さえ吹けば政権を狙うことが可能だということが、今の政党制度のおかしさだというのは、snsnさんのご指摘のとおりです。 

今、都議選でメディアが拝まんばかりにしていた小池観音は、慌てて「党」を作ろうとしたためにそこかしこでボロが噴出させています。 

安倍氏は街頭演説で、解散初期の消費税の説明の失敗をとり返すべく、北朝鮮危機を全面に押し出しています。

首相はある会合で箴言のようなことを言っていますが、言い得て妙です。

「急いで成功しようとする人は急いで失敗する」 (読売10月2日) 

まずなによりも、国民を呆然とさせたのは、哀れな民進党議員たちの集団転向でした。 

Jf2v9ozThe main rival to Japan's ruling party is really 'extreme rightist,' analyst( 米 CNBC)

いや~、私もさすが、百人を越える棄教の風景など見たことがありません。

私が悩み抜いて10数年かけて徐々にやってきたことを、わずか数日でやったわけですから初めは唖然、そして爆笑しました。 

彼らが踏まされた踏み絵が下の誓約書です。 

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内容的には、小池氏の「保守思想」そのままですが、反原発が抜けた替わりに、5番目に「外国人参政権反対」が飛び出しました。 

これは安保法制賛成以上に効くかもしれませんね。

微苦笑させられるのは、7番目の「党の指示する金額を提供しろ」という項目と、最後に「党の公約を遵守しろ」という項です。 

公認候補に遵守条項つき誓約書を書かせるという党など、なかなか見られるもんじゃありません。 

この誓約書にサインして、大量の民進党員が小池新党にどどっと流入しました。 

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「民進から合流する候補と希望独自の候補の選挙区を調整してきた希望の若狭勝前衆院議員と、民進の玄葉光一郎総合選対本部長代行らが3日、発表した。
 若狭氏らによると、小選挙区の公認候補者の出身政党は民進109人、希望74人、日本維新の会5人、自由党3人。前職は56人、元職45人、新人90人で、全体のうち女性は35人。」(毎日10月3日)

若狭氏はちょっと前まで、立候補者数について「次の次の選挙で確実に政権交代出来ればよく、233人が必要とは思わない」(NHK)と言っていました。 

金なし、党組織なし、支持基盤なし、なにより政策なしの千早城政党ですから、常識的にいきなり政権党を目指すのはあまりに無謀だと思ったのでしょうが、いきなり小池女史に否定されました。 

小池女史の言い草がまた奮っています。「宝くじは買わないと当たらない」。そりゃそうだ(苦笑)。 

なるほど、それでいきなり233名という目一杯背伸びした数を公認することに決めたようです。 

となると固く「希望」独自候補だけで固められず、大量の集団転向組で水脹れすることとなりました。 

その配分は以下です。 

●小選挙区公認候補・・・191+比例区単独1名計192名
・民進党・・・110名
・希望独自・・・74名
・日本維新・・・5名
・自由党・・・3名

 この面々について、安積明子氏は東経オンラインでこのように分析しています。
http://toyokeizai.net/articles/-/191632 

「安全保障政策と憲法改正を踏み絵にした『政策協定』でふるいにかけたにもかかわらず、野党共闘派が残っていることだ。日本共産党と野党共闘を組むことに賛成していたということは、安保法制に反対ということ。小池知事の「排除の論理」どおりに選定したのであれば、希望の党に参加できるわけがない。」
安積明子氏「希望望の党『「公認候補リスト』の残念すぎる面々」 本日は大変に参考にさせていただきました。感謝します。)

安積氏はその一例として、たとえば、どこからどう見ても左翼街道まっしぐらの人生だった櫛淵(くしぶち)万里元衆議院議員までもが公認をとったことを挙げています。 

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上の写真の中央でピンクのシャツを来て反アベのプラカードを掲げている女性が櫛淵氏です。

櫛淵氏はピースボートの元事務局長で、代表だった辻元氏の共同者でした。民進党最左派だった人物です。 

「櫛淵氏もリベラル派で知られているが、希望の党の設立メンバーである細野豪志元環境相に近いために残ったと思われる。」(前掲) 

細野氏と民進党内で昵懇だったために残ったとされています。つまりは、縁故です。 

このような縁故人事は随所に見えます。 

「身内」に対する優遇は露骨だ。たとえば東京7区に出馬予定の荒木章博氏。熊本県議の荒木氏は荒木千陽(ちはる)都民ファーストの会代表の父親である。
千陽氏の選挙区である中野区は東京7区に含まれる。いわば荒木氏は娘の地盤に降り立った落下傘候補といえるのだ。」(前掲)

 もう恥も外聞もなく、バリバリの左翼だろうと、縁故者だろうと受け入れて、金を絞って選挙運動をやらせるということのようです。 

しかし、これで肝心の選挙運動ができるのかと言えば、安積氏は「希望」の残念な選挙体制をこう報じています。

「希望の党の党本部は、何の準備もしていない。出馬するには戸籍謄本をとらなくてはいけないことすら知らなかった。このような状態で、我々は選挙を戦いぬくことができるのか」。ある候補者が頭を抱える。
実際、希望の党は選挙準備が全くできていない。筆者が入手した資料によると、10月1日現在ではポスターやビラなどの作成すら、とりかかっていない。ある前職議員も「希望の党は政党として全く機能していない。民進党の県連に全部任せるつもりのようだ」と述べている。要するに、しわ寄せはすべて民進党側にくるということだ。」(前掲)

結局、水増しされた「希望」候補者たちが頼りにするのは、あいも変わらず民進党の支持基盤だった連合というお粗末です。

しかし、あいにく連合ときたら麻痺状態で、分裂回避のために傘下組合に対して個別候補で判断しろといっているようですから、どうなりますことやら。

かくしてNHK世論調査の結果は、このようなことになりました。

●政党支持率
・自民党    ・・・30.8%(9月28日毎日調査 自民29%)
・希望の党   ・・・5.4%(同上 希望18%)
・民進党    ・・・3.9%
・公明党    ・・・3.8%
・共産党    ・・・3.3%
・日本維新の会・・・1.0%
・自由党    ・・・0.3%
・社民党    ・・・0.6%

どうやら、メディアが「小池首相」とまで持ち上げた小池観音への風は、ピタリと止まってしまったようです。

snsn氏投稿 ニセモノ政治時代の終わり その2

022

snsnさんの投稿2回目です。 

                      ~~~~~~ 

 ニセモノ政治時代の終わり その2
                                           snsn
 

承前

2 .なぜ支持基盤のない政党が乱立するのか? 

私は政党が沢山できること自体は問題ではないと思います。 

例えば数十の民族からなる国家においては彼らを代表する政党が数十あることは合理的であると思いますし、政党とは規模の大小は問わず利益を代表し政治とのコミュニケーションを図る母体だからです。

しかしここ20年くらい日本では、そのような支持基盤の明確でない政党がポコポコ乱立しました。
 

その一つの要因は二大政党制の幻想だと思います。はっきりいうと経世会分裂以降の小沢一郎による二大政党制の推進です。

二大政党制や政権交代可能な政治体制にはもちろんメリットもあるのですが、比較政治学の世界では必ずしも二大政党制が良いとはされていません。
 

『二大政党制批判』で政治学者吉田徹が分析している通り世界的にも二大政党制は
マイナーな存在なのです。
 

イギリスやアメリカが二大政党制だからと言って日本に当てはめるには無理があります。そのイギリスでも二大政党制のあり方について批判が出てきています。

小沢氏の大好きな「オリーブの木」で分かるように自民党を倒すには野党連合をつくるしかないと小沢氏は考えます。
 

しかしそれは本来の政党の意義とは異なっています。先に見たように政党の意義とは社会のパート=部分を代表することだからです。 

小沢氏流の無理やりな二大政党制政策によって、野党は常にまとまりを欠き分裂を繰り返すことになりました。その結果政治家の野心や考え方の相違、ケンカなどで多数の政党ができてしまうのです。

二大政党制を目指し政治改革を進めてきた小沢氏にとって、小選挙区制と政党交付金が実現した成果でした。

確かに中選挙区制の問題、政治献金の問題は解決すべきでしたので、私としては小選挙区制と政党交付金そのものを否定するわけではありません。 

もっとも小選挙区制の欠陥については承知していますがここでは省略し、政党交付金の問題について取り上げます。

これは企業などからの政治献金に頼らずに税金で党運営ができる仕組みであり、基本的にはその部分は良いのですが副作用もありました。
 

一つ目はお金を握る党執行部が強大な権力を持ったこと、二つ目は、支持基盤のないイメージ政党でも資金を得ることができるようになってしまったことです。

小沢氏はこれまで反乱の度に政党交付金をうまく使ってきました。支持母体がなくとも資金的には困らないのです。
 

しかも政党交付金を他の党に寄付することについて法的な制約はありません、合法です。 

個人的にはある政党に対し税金から交付されたお金を横流しする行為は政治のモラルとしては許容できないと考えます。 

もしこれが政治献金であればお金の出し手は横流しを許可しないでしょう。税金だからどんぶり勘定で分からなくなっているのです。

この政党交付金ロンダリングこそが、支持基盤のない政党の乱立を資金面でサポートしたと言えましょう。

ちなみに今回希望の党の若狭氏は、民進党の交付金100億円については元検事のモラルとして「絶対にもらうことは無い」と断言しています。
 

しかし同じ口で「個人で持ってくるお金は制限しない」と抜け道的な発言もあります。交付金の使途は総務省のサイトで公開されますので、よく監視しましょうね!

小池氏、前原氏、細野氏、若狭氏・・・、そしてシナリオを書いた(?)小沢氏、本件に関わる全ての政治家は支持基盤のことを全く考えていません。全て自らの保身、野望、選挙で勝つことのみが行動原理です。
 

その証拠に連合が民進党一部議員排除について怒り心頭で前原氏に詰め寄りましたが、
党首の前原氏ですら最大の支持基盤連合と調整をしていないのです。
 

これではとても政党とは言えませんね。

このような政治構造を作った責任を小沢氏一人に押し付けるつもりはありませんが、90年代以降彼の”剛腕”が現在の政局の混乱を引き起こした要因の一つであることは間違いないと思います。 

私はこのような事態を防ぐために、ドイツのように「政党法」を制定すべきであると考えています。また交付金ロンダリングは禁止すべきです。 

                                            (続く)

 

2017年10月 4日 (水)

小池女史4つ目の「ない」 実績がない

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 今日は表面がsnsnさんの連載1回めですので、私のほうは短めな感想ていどにします。 

昨日は九州Mさんのコメントを中心に活発な議論がありました。私は自分に対するもの以外は、議論に介入しないのが主義ですので、興味深く読まして頂きました。 

実は、九州Mさんに寄稿依頼しようかと思ったほど、氏の論説はユニークでした。なるほどそういうふうに思っているわけですか、とある意味感嘆しました。 

賛否は置いて、ご自分の頭で考えておられるのがよく分かりました。 

ただし、私の小池氏への評価は真逆です。私はリアリストたらんと思っているので、実績しか評価しません。 

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小池氏がやったこの1年間の東京都政は、朝鮮学校についての対応を除けば、何点をつけるつけないではなく、マイナス点でした。 

その意味で、有本氏は三つの「ない」と書きましたが、もうひとつ「実績がない」を含めるべき時でしょう。 

これについては少し昨日書きました。過去ログにも相当な数の豊洲移転問題に於ける小池知事の対応批判をしているので、そちらをお読みください。 

築地移転は10カ月も議論して元の木阿弥で豊洲に舞い戻り、その間100億の税金が消えました。 

そのうえに、築地を「食のテーマパークにする」との思いつきには失笑しました。そんなことは都の官業がすべきことではありません。 

官業は、民間がやっても赤字が出て運営が困難なインフラ建設などの場合に代替するのが本来のポジションで、築地の再開発のようなおいしい仕事は、やりたきゃ民間がやればいいのです。 

そうすれば、仮にハズしても都は無傷でいられます。

豊洲だけでかかった費用は6千億です。うち有利子負債が4千億。これを築地を売却する4400億で充当する予定でした。 

これをチャラにすれば、都に4千億丸々の負債が残るです。その上にテーマパーク建設費も乗りますから、一体いくらの負債を乗せれば済むのでしょうか。 

そもそも移転できなかったために豊洲の維持費だけで、1日500万かかっているわけで、業者は予定していた移転作業ができないために悲鳴をあげています。

東京五輪も然りです。三つの競技場を、東京以外に移そうとして、国際五輪委員会まで巻き込んで、ものの見事に全部失敗。 

五輪の費用を他県にも持たせようと図って、これも強い抗議にあってあえなく失敗。結局東京都が単独で6千億を背負いこむことになりました。 

その上に、外国要人を五輪で接待するのだと言い出して、豪華VIP用クルーザーを20億も出して買うことにして、既にイタリアの造船所に発注済です。 

こんなことは外国の要人にいいところを見せたい見栄だけのことで、同じ血税を使うなら保育所のひとつも建てたらどうか、と言いたいですね。

IPクルーザーも、国内に適当な物件は沢山あるのですから、五輪期間中にリースすればいいだけです。 

こんなドタバタをやって貴重な1年間を浪費したために、五輪準備に欠くことができないと言われていた環状2号線は時間切れタイムアウト、断念です。 

環状2号線がない状態で五輪をやれば、晴海通りは大渋滞となってしまうことは必至で、このことは多くの交通専門家が前々から指摘していたことです。 

ほかにやったことを指折れば、石原氏に冤罪をかぶせて、病床から引きずり出してリンチにかけたこと、内田氏を悪徳代官として政界から追放したこと、あるいは、ピコ太郎と踊ったこと、豪華写真集を出した(誰が買うんだ)ことくらいしか思い当たりません。 

このように小池女史に致命的に欠落しているのは、行政責任者として能力がまったくないことです。 

いや、担おうという意志そのものがないのです。こんな人に国政は任せられません。

おっと小池女史が出なければ、「希望」が勝ったら細野総理か、若狭総理を指名するんでしたっけ(笑い)。 

 

snsn氏投稿 ニセモノ政治時代の終わり その1

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snsnさんから、タイムリーな投稿を頂戴いたしましたので、掲載させていただきます。 

3回分割でお届けします。タイトルは私がつけさせていただきました。  

優れた論考に感謝いたします。

                 ~~~~~~~~~~

 

             ニセモノ政治時代の終わり その1
                                       snsn             

 はじめに 

政局のカオスも終息に向かっていますね。大嵐も終わってみれば一つ良かったことがあります。 

それは朝日新聞などマスコミや国民の目が覚めたということです。結局ちゃんと仕事をしている人は安倍さんしかいないことが今回の騒動で明確になりました。

反安倍というだけで小池氏を推してきた朝日新聞は本当の独裁の怖さを感じたでしょう。
 

モリカケだけで政局を演出してきた民進党はいかに自党の中身がなかったか思い知ったでしょう。 

そして「なんとなく安倍さんより小池さんが新鮮でいいよね〜」という一定数の国民には小池氏がニセモノであったことが浸透しつつあると思います。 

選挙結果そのものは色んな要素がありわかりませんけどね、今回の騒動が<ニセモノの政治時代の終わり>であることに期待します。

今回は各党の経済政策について記事を書こうと思いましたが、その前に政治が大変に揺れたこともあり、まず政治の基本的な概念から積み上げて最後に経済について議論できればと思っています。

こういう時だからこそ、地道に言葉の定義を理解することは、今後の政治を見通す補助線になるはずです。

■1.政党とはそもそも何か?
 

今回本当に驚いたことは、多くの民進党の政治家がこれまでの主義主張をあっさりとひっくり返し、それを問題とも思っていないことです。 

政治家は都合よくポジションを変えることは与野党問わずありましたが、ここまで酷いのは見たことがない。 

古い話ですが佐野・鍋山などの戦時中の共産党員の「転向」は自身の身を切る苦渋の選択だったんですけどね、細野氏たちの軽さには驚愕いたしました。 

個人個人の政治家としての資質の問題はあるでしょうが、これだけ雪崩を打って行われると個人の資質に還元できない日本の政治構造自体の問題も内在していると感じています。

そこでまず、基本中の基本である政党とは何かについて考えて見たいと思います。

そもそも政党とは英語でpartyつまり、ある社会の”パート=部分”を代表する団体のことです。
 

例えば二大政党制と言えばイギリスですが歴史的には貴族(ホイッグ党)、王党派(トーリー党)のように社会の構成員を代表していますし、欧州は宗教、人種、階級がはっきり分かれているためにパーティー=政党が政治的に要請されます。 

つまり、下から政党が作られるのであって、先に政党ありきではないのです。 

日本は地政学的に文化的単一性が高く階級もそこまで分かれていないため欧州的な意味での政党が構成されにくいのですが、政治において政党の重要性は言うまでもありませんね。

日本において政党の法的な根拠は政治資金規制法と政党助成法だけであり、それにより国会議員が5人以上必要など申請手順は定められていますが、政党の権限や組織、政策などについての法的規制はありません。 

ドイツでは「政党法」によってそのあたりはきっちり規定されておりますし、ヨーロッパでは憲法によって定義されている国もあります。(参考「民主主義の条件」砂原庸介)

これだけ政治において重要な政党というものがゆるい定義のままであるのが日本の現状です。
 

実際に野望のためだけにポコポコと新しい政党が乱立してますよね、、、果たしてこれは政治の本来の在り方でしょうか?

現時点では自民党が国民全体のマス層を代表し、公明党が特定宗教を、共産党が労働者を代表していると言えましょう。
 

この3党については支持基盤という点では政党としての条件をきっちり満たしています。だから大きくは政策がブレないですね。 

では民進党はどうでしょうか?元々社会党系の支持基盤の連合がありましたが、その顛末はご存じの通りです。 

むしろ今年の春くらいからは、安倍政権の方に連合は期待している向きもありましたね。

さらに希望の党はどうか言うと、小池氏の野望のためだけにある空虚な政党です。従って明確な支持基盤はなく、小池氏のイメージだけで存在しています。
 

小池氏首班指名も無くなりましたし、弱小野党では自公との連立などおこがましい。

今回の混乱は、政党とはあくまでも支持基盤が先にあって、下から成り立つものであるという本来の定義から大きく逸脱した政治構造が引き起こした事態だと思います。 

政治家もそれに慣れすぎていて疑問にも思わない。 

ヨーロッパで言えばブルジョア、労働者、キリスト教などの支持基盤があってそれをまとめるのが政党なのです。 

希望の党に受け入れられるのか、そうでないなら新党結成かなど政党の話ばかりで支持者の顔が全く見えてきません。

■3.内閣の解散
 

今回の解散について個人的には反対でした。 

その理由は朝日新聞のいうような大義がどうのこうのというくだらないことではなく、そもそも安倍さん河野さんの外交はちゃんとやっていたし、アベノミクスはまだ足りないものの一定の成果は出ているので堂々と政権を継続してくださいよ!という気持ちからです。 

海外から見ても北朝鮮情勢が緊迫する中での総選挙は不安感しかありません。 

外交において重要なのは継続性ですから、万が一にも親北政権ができたらと考えると各国も選挙が終わるまで深い連携行動を取りにくい。 

韓国の大統領選の前の雰囲気といえばイメージしやすいでしょう。 

中にいる日本人とは異なり海外から見ると、情報も少なく心配になることは想像できます。

解散とは、衆議院において内閣不信任案が可決されるか内閣信任案が否決された場合(憲法第 69条)か天皇の国事行為の一つとして,内閣の助言と承認により衆議院を解散(憲法第7条)ですが、ほとんどが7条解散です。
 

この日本の解散の多さは世界的に見ると極めて異常なことです。 

諸外国では国の代表は任期を満了することが当たり前であり、それは政治には成果を出すのに時間がかかるため猶予期間として与えられているからです。

結局解散を決めた安倍さんも、それに乗じて野望を実現しようとした小池、小沢、前原各氏も現実にはいない<お化け>を見ていたように思います。
 

それは内閣支持率に表される数字や国民の空気感です。

しかし蓋を開けて見ると結果的には解散して良かったと思っています。
 

それは冒頭に書いたように今回の解散を起因に、小池新党が立ち上がり、前原民進党が自滅、最終的には小池氏も小沢氏も自滅したからです。 

そういえば石破というガヤ芸人もあぶり出されましたね。 

枝野新党について今後の政策を見る必要はありますが、モリカケなどではなくきちんとした政策を主張するのであれば力のある党として存在感を示すでしょう。

今後安倍政権は安全保障含む外交、改憲、経済政策を自信を持って取り組んでほしい。もうお化けはいないんですよ。

 

                                        (続く)

 

2017年10月 3日 (火)

小池女史の3つの「ないない尽くし」

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私はこの小池新党の性格をひとことで言えば、それは<破壊>だと思っています。 

有本氏は、『「小池劇場」が日本を滅ぼす』の中で、小池氏の政治が、同じように「劇場型政治」と言われながらも、小泉氏や橋下氏とは根本的に違うとしています 

その理由を3つの「ないない尽くし」があるからだとして 

「小泉純一郎氏、橋下徹氏の『劇場』には、賛否は別にして,はっきりとした『演目=実現したい政策』があった。小泉のそれは『郵政民営化』に代表される構造改革であり、橋下には『大阪都構想』と銘打った大阪の再編という大命題があった。
しかし小池劇場にはこれといった演目が『ない』 。
強いて挙げれば、小池本人が言った『黒い頭のネズミ捜し』であろうか。つまり、前任者や政敵の『吊るし上げ』劇だが、数カ月もメディアと共に大騒ぎしたわりには、罪人は一人も見つかっていない。」

 「敵」を仕立て上げて、それを叩くことで己の政治目的を達しようとするのは、古来よくある政治手法ですが、ここで問題となるのは小池女史に「政治目的」と呼べるようなものがあるのか、ということです。 

私はないと思っています。小池女史にとって政敵を叩くこと自体が「目的」だからです。 

彼女が取った石原氏の百条委員会でのつるし上げなど、まさに文革の人民裁判を彷彿とさせるものでした。 

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その結果、何か石原氏の都政ガバナンスに問題点がみつかったでしょうか。 

なにひとつ見つかりません。それは一見ワンマン型に見える石原氏が、東京都のシステムを尊重して、議会と官僚に諮りながら慎重に移転作業を進めたからです。 

小池女史は政敵を「叩く」ことについて貪欲です。しかしそれは小泉、橋下両氏と大きく異なっていました。

「つぎの『ない』は、正規の手続きがないことだ。
小泉、橋下は『既得権益をぶっ壊す』ことを訴えて喝采をあびてはいたが、日本の民主主義のシステムをぶっ壊すことはけっしてなかった。
当然ながら、2人は行政の長として手続きをきちんと踏んでものごとを決め、執行した。小泉の『破壊劇』の後ろには財務省のエリート官僚がついていたし、橋下は法律家だ。そのあたりは抜かりはない。
ところが、小池は違った。」

小池女史は口を開けば「ブラックボックスの透明性」と言いますが、それが自分に向けてなされたことはありません。

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思い出してみましょう。わずか2カ月先に迫っていた豊洲市場への移転をちゃぶ台返ししたわけですが、それはどのような手続きを踏んで、どのように執行されたのでしょうか。 

議会には諮りましたか?いや、なにひとつ諮らずに、わずかの側近、それも外部から「小池チーム」として連れてきた側近とだけ相談し、独断で延期すると叫んだのではありませんでしたか。 

この豊洲移転は20年間に渡って続けられたもので、その政策決定過程は「ブラックボックス」などではありません。 

都庁には膨大な議事録が積み重なっており、都議会事務局には審議記録が山のようにあったはずです。 

しかもそれは秘匿情報ではなく、完全に一般市民も閲覧できるものでした。 

「ブラックボックス」など初めからなかったのです。 

少し検索すれば、豊洲になぜ選定されたのか、その汚染土壌をどのように処分して、どのような汚染防止策をとったのか、東京ガスとどのような取り決めをしたのか、すべて詳細に分かります。 

この積み上げを一瞬にして破壊してみせたのが、小池女史でした。しかもひとりの独断で、なんの手続きも踏まず、議会にも諮らずに。 

このようなガバナンスのスタイルを、私は「独裁」と呼びます。 

三つ目の「ない」を有本氏は、「ファクト(事実)に基づくロジック(論理)がない」ことを挙げています。 

豊洲移転は小池氏一人の独断で決定したために、途中から迷走を開始します。 

そもそもメディアが騒いだような豊洲の安全性には、なんの問題もなかったからです。 

私は当時豊洲移転問題を三つに切り分けました。

①豊洲の安全性評価
②東京都のガバナンスのあり方の問題点
③豊洲移転と都政利権

これらがなんの問題もなかったことが分かるに連れて、小池氏はメチャクチャなことを口走り始めます。

「2月末、現在の築地市場の安全性か問われた際に、『コンクリートとアスファルトでカバーされており、法令上も問題がない(から安全)』 と答え、それなら同じく被覆されている豊洲も安全ではないか、と問い返されると、『地上と地下を分けるという考え方は、消費者が合理的に考えてクエスチョンマークだ』と支離滅裂な答えを返し、数日後、『豊洲は安全だが、安心がない。築地は安心もある』との珍回答をした。」

安全性は始めから問題はなく、そもそもメディアと共産党がヒ素が出たなどと騒いだ地下水は、排水路に回されて、魚や野菜にかけるものではありませんでした。

五輪施設の工事にも入札手続きに瑕疵はなく、政治家が介在や談合の不正はなにひとつ見つかっていません。

自分が仕掛けた「革命」が不発に終わったとみるや、窮したあげく小池女史が言ったのが「豊洲と築地の両方をAIで決めた」ですから、もはや爆笑ものです。

このような小池氏は、そっくり都政を焼き畑にしたあげくに、今度は国政で「小池劇場第二幕」をしようとしています。

今週の週刊誌など「安倍惨敗退陣・小池首相誕生」とブチあげています。テレビは小池一色です。

メディアは小池新党がどのような政策を持っているのか、ひとことも触れません。それはメディアの愚かさもありますが、そもそも小池新党に政策などと呼べるものがないからです。

さてこのような小池女史が、どのような国政をするのか私には想像がつきます。

破壊して焼き畑にし、手におえなくなると、迷走したあげく、いっそう独裁を強めることでしょう。

今から想像できるだけにゾッとします。

私はかねてから保守2政党を理想だと考えてきましたが、それはあくまでも政策があって、活発な政策論争があってのことです。

残念ながら、小池女史に肝心要の「政策」がない以上、保守2政党とはなりようがないのです。

2017年10月 2日 (月)

小池百合子というマキャベリ政治家

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10月になりました。あと20日間で日本の政治地図は、大きな変化を迎えることは確かです。 

民進党が解体・消滅することは、もう既に決定しました。 

右にも左にも行けず、党としての背骨に当たるまとまった憲法観も安全保障観もなにひとつなかったこの党は、野合した以前の左右に戻るだけのことです。 

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枝野氏が遭難者のための新党を作るようです。その名も「栄光の」民主党ですから、悪い冗談のようです。

「民進党の枝野幸男代表代行は1日、希望の党に合流しない民進党前衆院議員らを集めて、新党を結成する方針を固めた。希望の党が民進党の全員合流を認めないことに反発した。希望に参加できない前衆院議員を救済するための受け皿を目指す。党名は「民主党」を検討している。(略)
新党は共産、社民両党との選挙協力を行う方針だ。枝野氏側は前原氏に2日昼までに民進党から希望の党に参加できるメンバーのリストを明示するよう要求。前原氏が明確にできなければ新党に踏み切る考えだ。」(毎日10月2日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171002-00000006-mai-pol

今日が枝野氏が「希望」への当落の回答期限とした2日ですから、今日中にこのまったく新鮮味の欠落した「新党」ができることになります。 

おそらくは、参院のリベラル議員まで含めての合流となりますから、数だけはそれなりに確保できるでしょう。 

なんといっても分党処理ができますから、本部金庫に眠る交付金のかなりの部分を押さえられるはずです。 

また社民・共産と野党共闘するようですので、小池新党への風がさほど吹かなかった場合に、一定数のリベラル議員はサバイバルに成功するかもしれません。

一方、小池女史は読みと違って、急速にメディアの水温が下がってきたことを察知したようです。 

民進党リベラルを「大虐殺」したあたりをきっかけにして、メディアはこれはおかしいとさすがに感じたようです。 

特に「三都物語」と歌謡曲のようなタイトルで打ち出した、9月30日の「大阪大虐殺事件」は、鈍感なメディアもさすが眼前で起きている事態のすさまじさに気がついたようです。

「大阪の選挙区におきましては、候補者は立てないという形でございます」。希望の党の小池百合子代表は30日、日本維新の会が地盤とする大阪の小選挙区で、候補者を公認しない考えを明言した。希望への合流を目指していた民進党の立候補予定者たちは行き場を失い、途方に暮れた。」(朝日10月1日)

小池氏は日本維新との選挙協力をするという建前で、大阪での立候補を取り下げました。 

民進党大阪は19小選挙区のうち、13選挙区に候補者を立てる予定でしたので、一瞬にして彼らの政治生命は風前の灯火となってしまいました。 

その中には10区の辻本氏も含まれています。

「私は現実的なリベラルの力と重要性を信じています。ですから、私はいきません。
小池百合子さんとは、女性政策などをいっしょにやってきて、実力のある政治家のひとりだと思っています。
小池百合子さんは寛容な保守のお立場から、私は現実的なリベラルの立場で、安倍政権を右と左からはさみうちにして倒せばいいんじゃないかな、と思っています。」(辻本氏ブログ10月1日)
http://blogos.com/article/249454/

ここまで来て小池氏に対して「寛容な保守の立場」を口にするのは、愚かなだけにそぞろ哀れすら誘います。初めてこの人を気の毒に思いました。 

辻本氏は、かつてのように社会党が潰れたら、社民党、社民党を追い出されたら今度は民主党、そしてちゃっかりと保守派のはずの前原氏に寄り添って副大臣にまでなったような政界遊泳がもう不可能なことにまだ気がつかないようです。 

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辻本氏は、小池女史という人物を深く勘違いしています。 

彼女が今やっている「大虐殺」は、小池氏ひとりが生き残るためのものであって、冷徹な打算に裏打ちされています。

小池氏は日本では稀な、目的達成のためには手段を選ばないマキャベリスト的政治家なのです。 

たとえば、小池氏が掲げる政策の3本柱は、「増税凍結・憲法改正・原発ゼロ」ですが、すべて空洞です。 

これらの政策は、自民に対して付加価値をつけるためだけに、とりあえず思いついたものにすぎません。 

なかでも一般受けしそうな消費税凍結という政策も、リフレ政策を理解してのものではなく、安倍氏が解散記者会見で、消費税の使い道をグダグダ言い訳することを知って、突然突込んだもです。

巷間、メディアのシンパから記者会見原稿が流れたと言われています。

小池氏は、消費増税が「消費税法」として法制化されていて、それを延期するには付帯事項18条の景気条項を使うしかないのを知っていて、あえてそれにぶつけたのです。 

日本経済はアベノミクスによって弱々しい足どりながらも、やっとすべての経済指標がプラスに転じていますから、安倍氏がいままで2回使ったような景気条項は使えないということを知ったうえでやっていることです。 

もし小池氏が、まともな経済政策をもっていたのならば、「ポスト・アベノミクスに代わる」などという、文法的にも政策的にもネジれたことなど言うわけがありません。 

原発ゼロに至っては、いままでこの人が言うのを聞いたことがなかったので、おそらく小泉翁の入れ智恵でしょう。 

時限を切らず、方法も提示せずに「ゼロ」を言うなら、誰にでも言えます。 

改憲だけはましな政策ですが、石破氏合流という噂も流れていますので、ただの「2項削除」改憲なら、これもまたハードルを高くしてやらない言い訳にできてしまいます。 

このように、小池新党の政策はただの思いつきであって、ひたすら自民党との違いを際立たせるための受け狙いのマーケティング戦略にすぎません。 

彼女が突如反安倍になったのも、一転して急に右にブレて「リベラル大虐殺」を開始したのも、すべては自分がメルケルごとき「民主主義的女王」になることを夢見てのことです。

小池氏流にいえば、「清水の舞台から飛び下りたつもり」で知事を辞任し衆院出馬するとしたら、今週いっぱいしか時間は残されていません。

「希望の党の若狭勝前衆院議員は1日のNHK番組で、衆院選後の首相指名選挙に際し、連立政権樹立も視野に対応することを明らかにした。一方で、小池百合子代表(東京都知事)の衆院選立候補について「今回は出ないのではないか」との認識を示した。希望の党の公認候補の擁立作業については「資質を見極め、どの程度になるか積み上げている」と述べ、衆院の過半数にあたる233人に及ばないこともあり得るとの認識を示した。」(毎日10月2日)
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171002/k00/00m/010/139000c?inb=ys

小池氏のようなマキャベリ政治家にふりまわされるのはケンノンですが、すべては今週中に決まることです。

 

 

2017年10月 1日 (日)

日曜雑感 現象としての「小池百合子」

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作業中に高いところから顔面落下。下はなんと砂利道。息をするだけでアバラが痛み、顔は青アザという始末です。 オレも若いな。

おまけに手までくじいたみたいで、キイボードを操るのも痛い。またタイプミスが増えそうです。(言い訳) 

さて、コメントを読まして頂くと、小池懐疑派のほうが多いようです。 

まぁ、だろうな、とは思います。私もゼンゼン信じていませんから。 

私が見ているのは、あくまで彼女の起こした「現象」です。今起きていることはなにか、理念にとらわれないで見てみましょうよ、ということです。 

この数週間を見ないと、理念的なことによる判断を下すには早すぎるというのが私の意見です。 

自民党の政治家の多くは、政治というのは折れ合うことだと考えているでしょうが、小池氏の政治的師匠だった小泉翁は違いました。 

権力は行使して初めてパワー足り得るのだから、握った刃は自分の野望のためだけに使うのです。 

この冷酷非情があって、郵政反対派に刺客を立てるというパーフォーマンスが可能だったのです。 

弟子の小池女史もそれを踏襲するでしょう。今、立ち上げた個人商店・「有限会社希望」には金がありません。 

女史は自分の権力と金を天秤にかけて競り合わせるでしょう。 

どぎつい表現をお許し願えれば、「あんた入りたかったら持参金が高くつくよ。リベラルの衣装を脱ぐのはあたりまえ。金持って来なさい、事務所と後援会持って来なさい」ということです。 

一説巷間では2千万円くらい匂わせているとも聞きます。選挙費用が600万。その差額が「有限会社・希望」に入るという仕掛けです。 

要は、入れて得か損かという比較衡量をされているのです。

小池女史の胸先三寸ですべてが決まります。公権力の東京都ですらこの1年間徹底した側近政治を敷き、都議会を無視し続けた女史ですから、ましてや自分が作った私党なんですから。 

このような政治家である小池女史がやることは破壊です。 

まずは都政を半身不随にして、次は野党第1党を解体へと追い込みました。現在はこの段階です。 

民進党の解体は、事実上戦後リベラルの大絶滅を招きかねない破壊力でした。

まだこの「現象」の余震が、どのように労働界や市民運動、あるいはメディアに影響が及ぶかもうしばらく見ないと分かりません。 

今の時点で言えそうなことは、排除された旧民進党議員を中心にして、安倍憎しから小池憎しに転じるリベラルが激増するでしょうね。

そして彼らは枝野氏や辻本氏を中心にして新党を結成するでしょう。前川前事務次官に党首にでもなってもらったらいかがでしょうか(笑)。

この方法なら分党ということで、応分の政党交付金がもらえますしね。

それはともかくとして、小池氏がどんな政策を掲げようと、ただの表紙であって中身はなにも書かれていないのです。

ましてや政権担当能力を問うのは、野暮というものです

東京都も満足に運営できない人が首相になれるはずがありません。しかも幹部は民主党政権の失敗者ばかりときていますから、やる前から答えは見えています。

あくまでも小池女史という政治家は中身ではなく一過性の「現象」なのであって、「政策」ではないのです。 

私たちは冷静に突き放して、「現象としての小池百合子」を眺める時ではないでしょうか。

 

日曜写真館  秋の野花

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