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2017年12月

2017年12月29日 (金)

今年もありがとうございました

015

今日で今年の更新はおしまいです。  

新年は元旦の賀詞の後は、三賀日は休ませていただいて、1月4日(木)からの開始となります。

                                                                                    ブログ主 

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意図しているわけではないのですが、毎年なにかしらのテーマのようなものがあるようです。

この何年かの晦日の更新を振り返るとこんな感じです。

・2016年は、「「暗黒面」の時代の始まり」としてトランプに警戒感があったようです。http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-6714.html

・2015年は、「慰安婦問題は朝日の構造的体質から生れている」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-2064.html

・2014年は、「本年もありがとうございました」と題して、再エネやエネルギー政策を論じていました。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-31ae.html

・2013年は、「仲井真沖縄県知事の苦悩と決断その2 普天間問題解決が最優先に決まっているだろう!」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-1bd1.html

・2012年は、「脱原発運動・こうなってほしくはない三つの将来」として、ただの左翼運動と化して現実性を喪失した脱原発運動に警鐘をならしています。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-31ae.html

・2011年は、「年の瀬になると思い出す一杯。ヤンバルのオジィの沖縄そば」でしたが、11年が沖縄そばをやっていたわけではなく(笑)、もう放射能パニックとの攻防一色だった年でした。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-98c1.html

・2010年は、「韓国口蹄疫 殺処分数55万頭」でした。宮崎口蹄疫で1年間終わったという年です。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-075b.html

とまぁ、この7年間、口蹄疫、放射能、大地震、原発、再エネ、辺野古移設問題、慰安婦問題ときて、今年はやはり北朝鮮の核とモリカケ、小池騒動でしょうか。

こう見てくると、私はいわゆる「朝日的なるもの」とやり合ってきたのが分かります。

朝日は小川氏への巨額損害賠償に見られるように、まだ自覚が足りないようですが、かつてと違って世論形成力はみるも無残に落ちています。

それが無残なまでに明らかになったのが、今年のモリカケ選挙でした。

ことしのモリカケ騒動は、新聞・テレビ・週刊誌というかんがえられうるすべてのメディアが安倍憎しで共同戦線を組んだにも関わらず、衆院選において敗北しました。

私はあの衆院選の結果は、野党の敗北ではなく、むしろ朝日に象徴されるオールド媒体の敗北であったと思います。

モリカケが慰安婦聞問題が起きた1992年時点だったなら、国民は真実を知ることもできないまま、瞬時で首相の首が飛んでいたことでしょう。

理由はいうまでもありませんが、ネット言論が存在しなかったからです。

福島事故にはかろうじて間に合いました。国民に広がる放射能パニックと真正面から戦ったのは当時の民主党政権(あの無能ぶりは思い出すだに、腹が煮えくり返りますが)ではなく、私たちネット言論でした。

慰安婦問題の検証や辺野古移設問題においても、ネット言論が世論最後の砦の働きをしたと思っています。

特に沖縄は地元2紙の極端な言論支配のために、ネットだけが残された知るためのツールとなっています。

さてネットの特徴は、過去ログが残ることです。私のブログもPC画面に切り換えてバックナンバーに入れば、すべての過去記事を閲覧することが可能です。

そして検索エンジンを使えば、膨大な数のブログ・サイトのアーカイブと接触でき、それはあたかも「見えない巨大図書館」のようになっています。

これを利用することによって、私たちは従来メディアが一方的に流してきたニュースの裏に眠っている真実を知ることが可能となりました。

メディアの言説は、どう言い繕おうと過去に逆上って検証可能なために、報道されたニュースの信憑性を個々の国民が自ら確かめることができ、意見を発信できるようになりました。

結果、朝日は慰安婦で謝罪に追い込まれ、吉田調書誤報で土下座し、今年もたぶん来年には第2の慰安婦謝罪になりそうなモリカケ騒動を引き起こしました。

たぶん、来年の今頃には国民の大多数は、「あれは一体なんだったんだろうね」ときょとんとし、朝日はひっそりと沈黙を守ることでしょう。

今週の記事で辛淑玉氏のBPO提訴に触れましたが、辛氏があえて裁判所ではなくBPOに提訴したのは、「お仲間」ばかりで委員が占められていたからです。

裁判なら弁護人がつきますが、BPOなら弁護人ぬき裁判ができます。

そしてなにより、BPOが代表する地上波メディアというオールドウェーブと、辛氏のような戦後左翼は利害が一致したからです。

高江紛争はネット言論がなければ、国民は現地でなにが起きているのかまったく知らされることなく、BPOの結論を信じてしまったことでしょう。

これもネット言論の双方向性の力による、検証力と拡散力を甘く見た罪です。

また、国民の最大関心事である北朝鮮の弾道ミサイルや朝鮮半島情勢ひとつとっても、新聞ていどの浅い解説よりはるかに突っ込んだ知識がネットから得られるはずです。

極端に言えば、新聞媒体のような一方通行的媒体は、このままではいらない時代になり、双方向的媒体にとって変わることになっていくことでしょう。

私も、このような時代に間に合ったことを幸せに思います。微力ながら来年も頑張りたいと思います。

本年も支えていただきまして、心から感謝いたします。

よいお年をお迎えください

2017年12月28日 (木)

BPO提訴した辛淑玉氏のやったこと

002

BPO問題に戻ります。 

BPOは、シンスゴ(辛淑玉)氏の在日韓国人(以下在日)の運動が、高江紛争の「黒幕」扱いにされたのは不当だ、という抗議をそのまま認めています。
https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2017/27/dec/0.pdf#page=14 

「ニュース女子」の流れをBPOはこう述べています。

「また、二番目のゲスト女性が、反対派の『ボスは日本の方ではないってことですか』と質問したのに対し、A氏は『もう、わかんないんですよ。とにかく韓国人がいるは、中国人はいるは、という状況なんで。だから、なんでこんな奴らが反対運動やってるんだってことで、地元の人は怒り心頭になっているっていうのを聞きましたけど』と答える」(BPO報告書)

という流れで、例のシン氏の「ホットケナイ、高江。ないちゃ~大・作・戦会議!」が登場します。

「Cさんからね、驚くべきものを持ってきていただいたんです」と述べる。C氏はまず東京で配られていたという「ホットケナイ、高江。ないちゃ~大・作・戦会議!」「特派員を派遣しよう!」「往復の飛行機代相当、5万円を支援します」などと書かれたチラシを見せる。
そのチラシを見てインタビューするA氏が、『たしか韓国の方ですよね』などと述べたあと、『いやビックリしたのが、5万円あげますって書いてある』と声のトーンを高めて言うと、C氏が「あとは自力でがんばってくださいって』と応じ、ナレーションも『一体、何をがんばれというのだろうか』と続ける。」(前掲)

そしてこの後に、「茶封筒」やらなにやらが証拠としてでてくるわけです。雑なつくりです。ため息が出ます。 

しかし、おそらく電波メディアで初めて在日の運動が、高江紛争に影響を与えたということを報じたことについては一定の評価を与えておくべきでしょう。 

下の写真が2016年9月9日、高江紛争真っ盛りの時期に、シン氏たちの「のりこえねっと」がひらいたくだんの「ホットケナイ」集会のものです。 

Photo_2

この時のシン氏の発言は、しばらくは「のりこえねっと」のサイトにアップされていましたが、高江で逮捕者が出ている状況において、教唆煽動となることを恐れたのかすぐに削除されています。※現時点では復活しているそうです。 

ここはひとまずBPOに提訴した張本人であるシン氏の発言を聞いてみましょう。なかなかスゴイものがありますよ。
書き起こしはhttp://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-98d0.html 

「ネトウヨなんかがね、朝鮮人たちがよく現場に行っているとか、あそこは朝鮮人が仕切っているとか書いてありますよね。そりゃそうだわって。
あたしもそう。今回捕まった?(聞き取り不可)もそう。それから広瀬さんのそばにいる在日の人もそう。行ってますよ。
おそらく日本のね、1億何千万の比率に対して60万の朝鮮人の比率から言ったらですね、在日の数はたぶん比率としては高いと思う」
「そして、私たちは一票ない。一票ない人間が何ができるのかっていえば、口でやるか、そしてもしくは一生懸命稼いで金送るか、もしくは現場に行ってね、体を張るかですよ」

そしてこのシン氏の発言は、当時ネットで有名になった、こんなことも述べています。

「あと若い子には死んでもらう。若い子にはお国のために頑張ってもらうって稲田も言ってるんですから、稲田が言うなら私も言おうじゃないかって。」
「それからじいさん、ばぁさんたちは向こうに行ったらただ座って止まって、なにしろ嫌がらせをして、みんなつかまって下さい。
でね、70以上がみんな捕まったら刑務所もう入れませんから、若い子が次頑張ってくれますので」

そして、高江でなにをするのかということまで具体的にしゃべっています。この部分です。

「なぜならば現場の人が足りないからです。現場で彼ら2人が二十何台も止めた、それでも1日止められるのが15分。
でもあと3人いったら16分止められるかもしれないんです、もう1人行ったら20分止められるかもしれないんです。だから送りたいんです」

なにもない時でしたら、70年安保世代が居酒屋でやるような「革命的放言」にすぎません。

しかし在日運動組織の主宰者が、現実に高江に人を動員し、資金提供もし、現地で車両検問をすることを具体的に教唆したとなると、やや違って聞こえます。

ここでシン氏の、「ホットケナイ」集会での発言要旨をまとめておきます。

①2016年夏、在日団体は高江に動員をかけた。
②在日団体は沖縄に派遣した者たちに、財政的援助を行った。
③若者に暴力的闘争を教唆煽動した。
④老人には座り込みをして警察に逮捕され、機能を麻痺させることを教唆煽動した。
⑤私的「検問」をする者が不足しているので、もっと本土から行けと教唆煽動した。

その結果、下のような私的検問が横行し、「2人で20台止めた」という違法行為があたかも戦果のように言われる状況が現出しました。

Photo

そして現地に行った人たちは、シン氏の言うように「じいさん、ばぁさんたちは向こうに行ったらただ座って止まって、なにしろ嫌がらせをして、みんなつかまって下さい」という行動を起こしたのです。

Photo_3

また、シン氏が高江現地に連れてきて、山城氏に引き合わせた人物がいます。添田充啓(別名・高橋直輝)容疑者です。

当時は「しばき隊」幹部でした。

Photo

上の映像で山城議長と並んで、シャツから入れ墨を見せている男が添田です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-d19e.html 

この写真を見ると、腰に手を当てて警察をなめきっている添田の姿勢がわかります。

下の写真はしばき隊の集合写真です。どこかの指定暴力団のものだといわれても、そうかと思うような一枚です。

実際に添田容疑者は、某広域暴力団の構成員だったと自称していました。

Photo

この人物が本土でやってきたことは、反ヘイトの看板をかけた暴力的反対派狩りでした。

ある時は在特会をリンチにかけ、ある時は安保法制デモに紛れ込もうとした過激派を蹴りだし、そしてある時は身内さえも容赦なくリンチにかけました。

これが世にいう「十三リンチ事件」、あるいは連赤事件を暗喩して「十三ベース事件」と呼ばれています。
※十三ベース事件
http://togetter.com/li/974584
http://critic20.exblog.jp/25658919/  

人もあろうにシン氏は、この十三ベース事件を知りながら、この暴力を屁とも思わない人物を、高江の衝突現場に連れてきたわけです。

この添田容疑者に影響されたのか、山城氏は暴力闘争をエスカレーションさせ、警察に逮捕されました。指導者を失った運動は一気に崩壊へと進みます。

シン氏のなんと罪深いことよ。当時のシン氏のツイッターです。

毎度のことながら、この人物の言葉の過激さにはほとほとうんざりします。

Photo

言葉のあやとしても、外国人に安全保障問題で「戦争」など起こされたくはありません。

当時の高江紛争の支援網について、篠原章氏は「Hanada 2月号」で、在日関係者の聞き取りとしてこう述べています。

「要するに反日運動なんです。日本あるいは日本政府をおとしめようとする活動なんです。
在日差別を沖縄差別に置き換えれば『差別』というキーワードも共有できますしね。
朝鮮総連の関西系本部が中心だと聞いていますか、北朝鮮寄りの在日韓国民主統一連合(韓統連)大阪本部や民団の一部も朝鮮総連に歩調を合わせて沖縄に支援人員を送っています。
これとは別に、日本基督教団のキリスト団体には在日系牧師が少なからずいて、高江や辺野古での活動や、本土の情宣活動に積極的に取り組んでいます。
韓国のキリスト教団体も多数の支援者を送り込んでいます。
結果的に、在日団体の指示や勧誘で沖縄に来ている活動家の数は、反対運動の中でかなりの勢力に成長していると思います」

私はシン氏を「黒幕」だなどとは思いません。そんなに「褒めて」やる必要はありません。

現実は、上記の篠原氏の記事にあるように朝鮮総連関西系と北朝鮮寄りの民団の一部、韓統連大阪本部などが、在日を送り込んだほんとうの「黒幕」でした。

シン氏はよくしゃべる広告塔にすぎませんでした。

しかしそれでもなお、高江紛争に対して暴力を持ち込み過激化に導いた責任は重いとは言えると思います。

2017年12月27日 (水)

アレッポさんにお答えして

034

アレッポさん。 私はできるだけニュートラルに見ているつもりですが、なかなか話がかみ合いません。困ったことですね。 

直接、この件だけにとらわれず考えてみましょう。 

翁長知事の決起集会の模様です。 

昨日も紹介したニューズウィーク(2015年6月30日「沖縄もうひとつの現実」は、このように報じています。

「会場ですぐ目につくのは、色とりどりの旗やのぼり、横断幕だ。赤、青、黄色と鮮やかなのぼりには『日教組』』「JP労組』「全農林労組』など様々な労働組合や、社民党など革新政党の政党が、沖縄はもとより、東京、埼玉、神奈川、大阪と全国の地方と支部名と共にはためいている。
『安保粉砕』という文字と過激派の名を記した赤い横断幕も目につく」
「開会直前に主催者から、旗やのぼりを降ろすように指示されるとそれまで会場に満ちていた『組合臭』は隠されて、本土の組合員たちも等しく『県民』とカウントされる」

Photo_12

ニューズウィーク前掲 

集会が始まるまで会場に溢れていた本土の組合や政党系団体の赤旗は、翁長氏の登場に合わせて降ろされました。それが上の写真です。 

特に隠す必要がない基地前集会などでは、下の写真のようににぎやかに組合や政党の旗が林立しています。 

Photo

はなぜ翁長氏の決起集会において、赤旗が隠されたのでしょうか? 

それはもちろん、投票前に翁長陣営の中の大勢力だった「組合臭」や「左翼臭」「本土臭」を消して「県民しかいない」とカモフラージし、<国家権力vs沖縄県民>という構図を作るためです。 

あくまでも翁長氏は「オール沖縄」、言い換えれば島ぐるみの候補である必要がありました。

さもないと従来の革新候補のような左翼陣営候補と一緒で、保革を超えた「怒れる沖縄県民」の代表とならないからです。 

もっとも知事になってしまえばこっちのものと思ったのか、当選後は平気で赤旗たなびく場所でも演説しているようですが。 

ちなみにこの翁長氏の決起集会がひらかれた会場は、翁長氏が沖縄自民党の大幹部にして那覇市長の時に、振興予算を引っ張って作ったものです。

「会場は、翁長氏が那覇市長時代の遺産である沖縄セルラースタジアム那覇。5年前、総事業費約68億円のうち4分の3を国庫補助を受けて完成した。その場所で基地反対集会を開いたこということが、基地問題の根深さを物語っている」 (前掲)

基地を見返りにした累積11兆円の振興予算、年平均3000億円にも達し、多少減額されるとメディアが騒ぐという本土からの予算で出来たスタジアムで、反基地を叫ぶ候補が「怒れる沖縄県民」を代表して決起集会をするというわけです。 

そしてその翁長決起集会には、 本土からも大勢の労組組合員や政党運動員が押しかけ、そしてその「匂い」は巧妙に隠されていて、メディアも知っていて目をつぶる・・・。

まさに二重三重に奇妙な風景ではないでしょうか。 

高江や辺野古でも、このような「左翼臭」「組合臭」「本土臭」を消すことがなされた気がします。

ここでも理由は同じです。<国家権力vs地元住民>という構図が有効だと思われたからです。

事実、メディアは一貫して、高江の反対派を「現地住民」、あるいは「反対派市民」と呼んでいます。

アレッポさんは、現地の農民も参加していると書いていますが、それは私も知っています。 

高江現地には、「ヘリパッドいらない住民の会」という安保廃棄・沖縄統一連系の団体が存在します。 

「住民の会」の伊佐真次・東村議は共産党員で、反対派のリーダーです。

Photo_3https://twitter.com/ihayoichi

伊佐氏は 県議選では共産党候補として出て当選しています。
伊佐真次(沖縄県・東村) - 議員 - 日本共産党

統一連はもまた、共産党系団体加盟組織として知られています。

その傘下には、日本共産党沖縄県委員会、沖縄民医連、沖縄医療生協、沖縄県労連、沖縄民商、新日本婦人沖縄、民青沖縄県委員会などの名が並びます。 

統一連の上部団体は)安保廃棄中央実行委員会」で、彼らのサイトもこの中にあります。
http://anpohaiki.news.coocan.jp/ 

この安保廃棄中央実行委員会のサイトをみると、沖縄の反基地闘争一色で占められているといっても過言ではありません。

それは反戦・反基地闘争が、今や沖縄だけが全国唯一の拠点だからです。

Photo_2

いかに共産党が全力で辺野古・高江紛争を支援していたのか、かいま見ることができます。

共産党が資金提供しているかどうかは公表された資料がないので、実態は分からないとお答えしておきます。

なぜ分からないかといえば、共産党がむき出しの形で献金するケースはほぼ皆無で、傘下の大衆団体、労組からの「カンパ」の形で提供しているからです。

したがって、当該部分はこのように修正しました。

「沖縄では一説で、連合や共産党系などの政党が資金提供をしているといわれています」

修正したものに「共産党系」と「系」を挿入したのは、共産党は社民党と違って、前面に共産党の看板をだすような不用意なまねはしないからです。

もちろん党旗は各支部にありますが、内輪の集会で飾るくらいで、ほとんどのデモ・集会では労組、大衆団体の名を出しています。

全労連系の労組内でも、公然と赤旗を配っている党員すら、あなたは党員かと問われると答えをはぐらかします。

覆面を脱ぐのはオルグするときだけ。

私、若き日に、よもやこの人は党員ではないと思っていた人から、「党員にならないか」と誘われたので、ちょっと怖かったですよ(笑い)。

このへんは、かつての非合法だった時の「革命党」の体質そのままです。

これについてはかつて、『なぜ共産党志位「党首」は責任を問われないのか?』と題して記事にしたことがあります。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-938e.html

共産党は一般的な左翼政党ではなく、「革命政党」だということがわかっていないと、あの党を分かったことになりません。

それについては上記の記事をお読みください。

このようにシンスゴ氏側が隠したかったことは、在日韓国人や労組、左翼政党などの高江での影だったのです。

そして「茶封筒」というやくたいもないことを理由に、BPOはそれを追認したというわけです。

 

2017年12月26日 (火)

BPO「ニュース女子」報告書 茶封筒問題の実態とは

103

BPOの「ニュース女子」報告書について、ややイライラしながら書いています。 

前回も書きましたが、私は本土の右サイドのネットのようにこのテーマに乗り気ではありませんでした。 

それは「ニュース女子」のレベルの低さもありますが、それ以上に既に沖縄の政治局面は目前の名護市長選と、県知事選に向けて進んでいるからです。 

高江紛争は山城氏逮捕で1年前に決着がついています。地元の高江集落から遊離した暴力闘争をすればあのような結末になるということです。 

稲嶺市政と翁長県政の牙城を崩すことは、容易なことではありません。 

自民は前回知事選時の解体状況よりややましになった程度で、例によって「オール沖縄」に対して対抗軸を明確にできないままでいます。 

二階氏が主導する本土から党利党略の介入は水面下でねちっこく続けられているようですし、そもそも沖縄自民自身がなにをしたいのかよく分からないようです。 

経済振興なら経済振興で、政権与党なのですから明確なプランを示すべきですが、それもできないでいます。 

今の自民は仲井真氏の経済振興プランに、新たな具体性を付け足すことができたのでしょうか。 

肝心の安全保障政策は常に後ろ向きなために、国境の島という自覚が乏しく、「オール沖縄」と本質的に変わるところはありません。 

県議会でなにか事故や犯罪が起きるたびごとに見苦しく動揺し、「オール沖縄」与党と肩を組んで反米軍決議に同調してしまうようでは、どうしようもありません。 

自民に決定的に欠落しているのは、沖縄の今の日本から望まれていることに対する自覚、そして未来に対するビジョンです。 

「オール沖縄」が揺らいでいる今こそ勝機はあるはずですが、立ち向かっていくチャレンジ精神がないようでは、やる前から負けています。 

このまま時間だけ推移すれば、稲嶺市政と翁長県政は安泰でしょう。沖縄自民は政権与党としてシャキっとしなさい。 

Bpo


おっといかん、沖縄自民に怒っていたら紙数が尽きてしまいます(苦笑)。BPOについて話を戻しましょう。 

BPOがこの報告書全体で述べていることは、要はこうです。 

「暴力はなかった。危険な状況ではなかった。救急車は問題なく通行できた。日当をもらっているような人はいなかった。反対派は機動隊や右翼から差別語をいわれながらがんばっていた」 

なんと既視感溢れることよ。この既視感は、BPOが沖タイ、琉新、つまりは「オール沖縄」の主張とそっくりです。 

つまりは、沖縄の閉塞的言論状況をBPOが、「ニュース女子」検証という形を借りて信用の裏書きをしたということになります。 

BPOがそのような左翼的バイアスに満ちた機関だとうことは、いまさらいうまでもないこと で、今それを言う意味はないと私は思っています。 

それを言い出せばメディア全体がそうであって、特にBPOだけが突出してそうであるわけではないのですから。

今日は③の日当問題を考えてみます。 

「③本件放送で提示された茶封筒のカラーコピーやチラシは、基地建設反対派は誰かの出す日当をもらって運動しているという疑惑の裏付けとなるものとは言いがたい。これらの内容は、他のマスコミが報道しない「過激な反対運動」の実像を伝えるという本件放送の核となるべきものであるにもかかわらず、それらに十分な裏付けがないままに放送された点で、本件放送には放送倫理上の問題が含まれていた」
(BPO報告書Ⅴ 考査に対する検証)

https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2017/27/dec/0.pdf#page=14

 やれやれ、BPOからやはり言われてしまいましたね。 

あんな拾った茶封筒はなんの証拠にもならないのはわかりきった話です。こんなものを取り上げて、ことさら意味があるが如く放映してしまう神経に驚かされます。

「ニュース女子」は「金をもらって動員されてきた連中が多くいる」、ということを言いたかったのだと思います。

「ニュース女子」は運動がすべて身銭を切ってするのだけが、崇高だと思っているのでしょうか。

運動は一定規模になれば、組織動員が前提となります。

保守はそもそも運動をすることが目的ではないために、運動組織は持ちません。

菅野氏のヨタ本で有名になった日本会議ですら、実態は懇親会と勉強会のようなものにすきません。

しかし左翼運動は1世紀もの長い運動経験と組織を有していますから、そんなに純真なわけではありません。

運動を継続するには事務局を維持せねばならず、集会は黙っていても集まらないので、動員をかけて会場までの移動の手配、弁当代、街宣車などの経費で一回の集会で、何十万、何百万という金が飛ぶことを熟知しています。

県民大会クラスだと、数千万の費用がかかるのではないでしょうか。

当然のこととして、それを維持するために多額の資金が必要で、その資金源は労働組合や左翼政党です。

沖縄では、一説で、連合や共産党系などの政党が資金提供をしているといわれています。※コメントの指摘を受けて断定調を修正しました。

辺野古や高江紛争のように長期化すれば、地元に現地事務局や小屋も必要になります。

彼らを無給で使うわけにはいかないので、生活費を支給します。

Photo_9

上の写真はシュワブ前の集会風景ですが、集会の動員も、自然発生的に集まるわけではなく組織動員がなされています。

011

ニューズウィーク(2015年6月30日)「沖縄もうひとつの現実」は、こう述べています。

「陸の抗議活動は日々、さまざまな団体から動員が行なわれて維持されている。朝からマイクで労働歌や演説を繰り返しながら、各地からの動員を待つ。人数が揃うとゲート前の道を練り歩き、車の出入りを封鎖する。これを毎日繰り返すだけの大人数が必要で、組合によっては動員人数の目標を設けるところもある」

集会が設定されると、運動事務局から労組や市民団体に何人出してくれというお達しが回ってきます。

南部・中部、本土から来る参加者のためにバスを用意し、弁当を喰わせ、街宣車を回し、日当まで払うと、一体1日どれほどの金がかかるのか、想像していただきたいと思います。

闘争は金がかかるのです。

労組や政党によって動員された集会参加者には、日当と弁当、足代が支払われます。額は幅がありますが、1万円(※)前後ではないでしょうか。※1万円と書きましたが、単組、団体によってかなりのバラ付きがあるようです。

言い方は悪いですが、組織動員で現地に来た参加者は、個人の飛び入りをのぞけば大部分がアゴアシ付きです。

Photo

「ニュース女子」が放映した「茶封筒」は、たぶん上のものだと思われますが、そういう性格のものです。

上の写真の書き込みには「生業としてやっているなら隠すな」とありますが、特に隠してはいないと思います。

もちろん集会に参加している人の中には、「生業」でやっているいわゆる運動家、あるいは専従という職業的左翼運動家たちも多くいます。

前掲のニューズウィークは、辺野古のいわゆる「外人部隊」についても報じています。

「カヌー隊で海上抗議行動を連日行なうH(※原文は本名)もまた、労組によって本土から派遣されたひとりだ。もともとは大阪の生コン運転手。建設運輸関連の組合から各地の平和・反核運動に動員され、辺野古には昨年は計1か月間、今年は正月開けから8月末まで派遣されているという」(前掲)

ここで出てくる「大阪の生コン労組」とは、あの有名な過激労組の「関西生コン」です。

ここに登場する人は、正月明けから8か月間、累積約9か月間も現地で暮らして運動をしています。

もちろん9か月も会社を休めるはずもありませんから、とうぜん職業として左翼活動しています。

専従は給料と同等の賃金が貰える上に、「現地」での生活費や活動費も加給され、時には危険手当さえもつく悪くない仕事のようですが、単身での現地暮らしも楽ではないでしょうね。

この記事に出てくる生コンの運ちゃんも、毎日こんなすさんだ暮らしをしていると、元の実直な勤労者に戻るのはむずかしいかもしれませんね。(よけいなお世話だ)

このような労組や政党によって動員された人たちが、大量に高江に向かいました。

Photo_4

上の写真は岩上安身氏のツイッター(2016年8月7日)に載せられた写真ですが、このように説明してあります。

「県外からきてくれた人、手を挙げてください」という山城氏の呼びかけに応えて挙手する参加者の方々。18時からの集会が本番。まだまだ増える見込み」

恒常的な統計数字はありませんが、高江紛争の主役が県外者である時期がそうとう長期間続いたのは紛う事なき、事実です。

これを、メディアは「地元住民」と画一的に報じています。

Photo_2

上の写真は沖タイ(2016年7月23日)ですが、「平和を叫ぶ市民を国家権力が暴力で排除した。これは殺人行為だ」と報じています。

地元紙や全国紙などのメディアは、このような衝突の背後にあるものを意識的にスルーしています。

そしてこんな基地反対運動の実態を知らないはずがないBPOも、そ知らぬ顔をして「茶封筒のカラーコピーやチラシは、日当をもらって運動しているという疑惑の裏付けとなるものとは言いがたい」とシャラと言ってのけたわけです。

シンスゴ氏が名誉棄損をさけぶなら司法に提訴すればよいものをあえてBPOを選んで提訴したのは、弁護人ぬき裁判ができるからであり、なによりもBPOがシンスゴ氏のよき理解者だからです。

 

 

 

2017年12月25日 (月)

木を見せて森を見せないBPO報告書

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リクエストにお答えして、あまり気が乗らなかったのですが、BPO報告書問題をやります。

あんなものが高江紛争の「定説」となっては:たまったものではありませんから。

12月14日、:GPO(放送倫理検証委員会)は、「ニュース女子」について、「重大な放送倫理違反があった」との意見書を公表しました。 

まず私は、この東京MXの番組はできがよくないと考えています。立場が正しいから内容も正しいというのは短絡的です。

この番組は沖縄のみならず、本土すらも覆うメディアの反対運動絶賛報道へ一石を投じるものでした。

しかしならばなおさらのこと、綿密な事実検証をして丁寧に番組をつくるべきだったと思います。 

この番組の杜撰な内容が、放送法9条の「真実でない放送の訂正」条項に問われる結果となってしまったことは、テーマがテーマなだけに大変に残念です。 

後述しますが、番組には裏取りがされたとは到底思えない印象報道のつなぎ合わせ、反対派に対しするべきではない悪意表現などが随所に登場します。 

放送直後から、シンスゴ側の高江において反対派の暴力行為がなかったかのような宣伝に利用されてしまいました。 

結果として、反対運動の暴力を現地の東村から告発し続けていた依田氏の社会的立場を、いっそう困難なものにしてしまったように思えます。 

制作したDHCテレビジョンは、今なお進行している高江紛争というデリケートな問題に対して、制作責任者として事前考査をするべきでした。 

とくに司会・統括役の長谷川幸洋氏はベテランの報道記者なのですから、事前に目を通してチェックすべきでした。

また、この放映したMXも、このような出来上がった形態で局に入れたいわゆる「完パケ」に対しても、厳しい事前考査をかけるべきでした。 

これらの地上波に要求されるクォリティ・チェックを怠ったために、BPOから指摘を受ける結果となりました。 

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 ところでBPOの指摘は、以下の6点です。
https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2017/27/dec/0.pdf#page=14

①抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった
②「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを確認しなかった
③「日当」という表現の裏付けを確認しなかった
④「基地の外の」とのスーパーを放置した
⑤侮蔑的表現のチェックを怠った
⑥完パケでの考査を行わなかった

ではこのBPOの指摘が正当性を持つかといえば、まったく違います。 

BPO検証委員会は、2回にわたって現地で調査をしたと述べていますが、とうてい真摯な調査をしたとは思えません。 

①の反対派への取材が欠落していたことについては、トンネル前の井上氏の「ここより先には危険で行けない」という表現が引っかかったものと思われます。 

井上氏の事実誤認です。取材当時、すでに高江の暴力的状況は終了していて、現地に行くことは十分に可能でした。 

弁論書でDHC側は「反対派に襲われそうになった」と述べていますが、ならばその状況こそ伝えるべきだったと思われます。 

まぁ、「両論併記」を否定する報道が日常化している放送界に言う資格があるとは思いませんが、それはまた別次元の問題です。 

②の救急車事件については、「救急車の現場到着が大幅に遅れたケース自体が見当たらない」で済ませてしまっています。

「現地の消防本部の資料などによれば、救急車の現場到着が大幅に遅れたケース自体が見当たらない。反対運動による渋滞の列に救急車がいたという情報が仮にあっても、それは反対派が実力で救急車を止めたという本件放送の伝えた事実とは趣旨をまったく異にしており、到底その裏付けにならないことは明らか」(BPO報告書)

BPOがここで「反対運動による渋滞の列に救急車がいた」と認めながら、「反対派が実力で止めた」ということにはならないという苦しいロジックを作っています。

ではまず、防衛局が公式にアップしている、当時の高江への県道の状況を写した一枚をご覧いただきます。

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道が人為的に封鎖されているのがお分かりでしょう。

このように公道の通行を妨害した結果、仮に救急車が通過した場合、結果はいうまでもありません。救急車に翼でもついていなければ、通行不可能です。

ならばそれは救急車を止めたに等しい行為ではないでしょうか。

ところがBPOにかかると、道路封鎖と救急車を直接止めるのは別次元だなどというのですから、詭弁もいいかげんにして下さい。

道路が通れなければ、救急車も通れないに決まっています。中坊か、BPOは。

たまたま写真のような封鎖時に、救急車が遭遇しなかっただけの幸運があっただけにすぎません。

もし通り掛かっていたら、間違いなく悲惨な結果を招いたことでしょう。

BPOはこんなことを書いています。

「③ 抗議活動側が傷病者であった18件のうち1件について、傷病者を収容した救急車が徐行運転を開始して間もない高江橋で、抗議活動側の人が救急車に対して手を挙げて合図し、救急車に停止してもらい、誰を搬送しているのかを確認したことがあった。救急車が停止した時間は数十秒であった。この事実が「救急車を止めた」と誤解された可能性がある」

BPOにお聞きしたいのですが、「救急車を止めて誰が乗っているのかを見る」、こういう行為を検問というのではありませんか。

私人がこのような救急車両を私的検問することが:日本で許されているのでしょうか。

これを「数十秒」だったから許されるかのごとき記述をする:BPOの法治意識がわかりません。

BPO委員が、升味代表代行は沖タイに登場する常連、斉藤委員は「マスコミ9条の会」呼びかけ人をしているなど、ほぼ全員が左翼関係者で占められているのは有名な話です。

どのような思想を持とうと自由ですが、違法行為に眼をつぶっていいのでしょうか。

このBPO報告書「2 基地建設反対派は救急車を止めたのか」の記述は、一貫して何分遅れたの遅れなかったのという記述の羅列でしかなく、肝心の私的検問というまぎれもない暴力が横行していた事実から眼をそらしています。

BPOにかかると、このような妨害活動をされても、救命活動にはなんの影響も及ぼさなかったという驚くべきものです。

BPOがいう「反対派が実力で救急車を止めた」というのは、この下の写真のような状況を指すと思われます。

高江に続く公道には、ご丁寧にも各所に反対派の事前検問所までが設置されていました。 

依田氏は地元住民なのにもかかわらず、高江を通過しようとしてこの私的検問に引っ掛かってしまい、反対派に抗議して揉み合いになったことから事件となりました。 

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上の写真は反対派のツイッターですが、みさかいなく警察車両までも止めて「検問」をしているのが分かります。

このような行為は当時各所で頻繁に目撃されており、画像に多く残されています。

BPOはその1枚も見なかったようです。これで「調査」というのがおこがましい。

また高江に続く道のみならず、集落内部においても、日常的に下の写真のような狂態が我が物顔で行われていました。 

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つまりは当時、高江集落に行こうとすると、手前の私的検問所に引っかかって「帰れ」と命令され、仮に通れたとしてもその先には車が十重二十重のバリケードを築いており、そして高江集落内部は住民すら通行できない状態が日常化していたのです。

住民は下の写真のようなステッカーを作って、せめて畑くらいには行かしてくれと、反対派に懇願しましたが、拒否されました。

高江の住民が通行許可を行政や警察に要請したのではなく、反対運動団体に頼んだことを留意して下さい。

もはや公権力は無力化し、反対運動が実効支配していたのがわかるでしょう。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-1f27.html 

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これについては、他ならぬ反対派の応援団長格の沖縄タイムス(2016年9月8日)ですら、こんな記事を掲載しています。

長文ですが、当時の状況を物語る唯一の記録ですので、再度引用いたします。(上写真も同じ)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/61153

■高江の農家、ヘリパッド抗議に苦情 県道混乱で生活にも支障
2016年9月8日 ステッカーを使った対策は5日から始まった。区は村を通じ県警に通知。市民側にも伝えているが、仲嶺久美子区長は「農家から効果があったとの報告はない。周知が必要」と言う。
 県道70号では8月から、市民が「牛歩作戦」として、工事車両の前を時速10キロ未満の速度で走る抗議行動を展開。
機動隊の交通規制もあって県道は渋滞し、出荷や作付けする農家を中心に地元住民の往来に支障が出ていた。
 高江区の農家の男性(75)はカボチャの植え付けに向かう途中で渋滞に巻き込まれ、本来10分で到着するはずの畑に1時間以上を要した。
『作付け期間は限られている。このままでは1年間の収入に響く』と嘆く。『決してヘリパッドに賛成ではない。ただ、彼らのやっていることはわれわれの生活の破壊。もう爆発寸前だ』と憤慨する。当初の機動隊への怒りの矛先は市民側に変わりつつある。
 ヘリパッド建設予定地に近い国頭村の安波小学校では5日、「牛歩作戦」の影響で教員1人が授業に間に合わず、学校側は授業を急きょ変更した。
宮城尚志校長は「反対運動を否定しないが、もっと別にやり方はないのかと思う」と首をかしげる。
 高江共同売店では物品の入荷日を抗議集会のある曜日は避けるようにした。仲嶺区長は『区民のストレスは限界に来ている。早くヘリパッドを完成させた方がいいとの声も出ている』と打ち明ける。
通勤、保育園送迎、通院などに支障が出ていると苦情は絶えない。 
7日早朝、抗議行動を遠目で眺めていた与党県議は『これでは反対していた人たちまで離れていく。工事を進めたい国の思うつぼだ』とつぶやいた」

生活物資は滞り、生産活動は出来ない、学校には通えないという状況が続くならば、間違いなくムラは死滅します。

反対派はわかっていて、このような暴力を働いていたのでしょうか。

記事にあるように住民の多くは当初高江のヘリパッドに反対でしたが、あまりのことに反対派から離れていきました。

そして残ったのが、外人部隊だったのです。これについては明日にします。

こういう反対派の「ムラ殺し」によって高江村落は危機的状況に陥りましたが、それが解消されるのは、沖縄県警が重い腰を上げてようしゃなく違法駐車を取り締まってからのことです。

地元集落を踏みつけにして、なにが「やんばるの森を守れ」ですか。

反対派が高江紛争ので敗れたのは (負けていないというなら別ですが)、このような地元住民から浮き上がった過激路線にあります。

地元住民の強い支持があれば、別な展開がありえたはずですが、自らそれを潰してしまいました。

救急車妨害事件は、このような反対運動の暴力全体の中に置いて評価すべきなのです。

また①の反対派への取材がされなかったという点も、この空気の中での判断だったわけです。

おそらく、BPOは大阪MBS・斉加尚代ディレクターのような調査をしたのだと思います。 

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 斉加氏はこの番組の中で、消防署長から下の発言を引き出しています。

「ナレーター 『もう一度地元の消防本部の署長に確認しました』
署長 『本当にですね。政治的圧力もそうですし、反対派の抗議活動に業務を阻害されたというか邪魔されたことは一切ないです』
斉加『ということは、ないということですね結論は』
署長『そうです。ウソはついていません』」

反対派陣営はこのMBSの番組以降、鬼の首をとったようにこの消防署長の言葉を拡散し、依田氏をデマッター扱いにする個人攻撃を強めていきました。 

ところが、この「ニュース女子」検証版において、同じ消防署長に別な聞き方をしてみたところ、このような返事がかえってきています。

なお初回版はこの消防署長への聞き取りもしておらず、手抜きと批判されても致し方ないでしょう。

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 これが真相です。

救急車は、反対派の過激な行動によって活動を妨げられていたのです。 

現時点で署長は、公務員として証言できる範囲ぎりぎりまで答えています。

「ニュース女子」検証版も、MBSのような恣意的な編集はせずに無編集で流しています。

このように去年夏、反対派の暴力闘争が北部緊急医療に大きな打撃を与えたことは事実だったと断言できます。

それをBPOは、「渋滞はあったが救急車は止めていない」というアクロバティックな論理で反対派の暴力行為を糊塗してしまっています。

このようなことを、「木を見せて、森を見せない」と呼びます。

さてさて、①②だけで今日は終わりになってしまいました。③以降の問題は明日に続けることにいたします。

 

 

2017年12月24日 (日)

日曜写真館 太陽という火球が昇る前

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2017年12月23日 (土)

メディアの驕り

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元テレビ朝日の報道制作局長だった廣淵升彦氏は、『メディアの驕り』の冒頭を「無知に基づく正義感は危うい」として、このような言葉で始めています。

「マスコミは、好きか嫌いかで人間を分類する。人間だけではない。思想や理念まで、自分たちの好みに合わせて報道する。それが正確で真実をいいあてていればいいのだが、とんでもなく外れている場合が多いのだ」

これを廣淵氏は自戒を込めて、「メディアの驕り」と呼んでいます。

残念ながら、このような廣淵氏のような存在はメディアでは絶滅危惧種です。

この1年を振り返ると、今やメディアはいっそう感情的になり平板で浅い報道に終始し、どの局も一緒。モリカケならモリカケだけ。相撲なら相撲だけ。

あげく、とうとうジャーナリズムの大原則すら投げ捨てようとしています。

それがあらためて示されたのが、民放労連の談話でした。

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 「日本民間放送労働組合連合会(民放労連、赤塚オホロ中央執行委員長)は20日、沖縄の米軍基地反対運動を扱った東京MXテレビ(MX)の番組「ニュース女子」をめぐり、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が「重大な放送倫理違反があった」との意見書を公表したことについて、「沖縄の苦悩に『両論併記』はありえない」と題した委員長談話を発表した」(太字引用者 12月21日産経)

民法労連はこう言っているわけです。
日本民間放送労働組合連合会 - Wikipedia

「メディアには客観性などいらない。特に沖縄報道では不要だ。オレたちが認める『正義』だけを書け。異論を報じることも許さん」 

スゴイですね。メディアはとうとう落ちるところまで落ちたのか、とため息が出ます。

少なくともかつてメディアにおいては、事実を報じることの大事さを記者たちに教えていたはずでした。

山口敬之氏(名を聞いただけで脊椎反射しないこと)こう書いています。※名前を誤記したので゛訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。

「私は1990年にTBSに入社し、報道局に配属された。以来16年間、報道局で『記者』という立場にいた。
そしてTBS報道局で、あるいは社会部、政治部の現場で、記者が記者であるためにもっとも重要なこととして常に強調されたのが、この二つのシンプルなことだった。
①主張が対立している場合、その双方を公平に取材する。
②常識に囚われることなく、『万が一』『まさか』の可能性を徹底的に追求する。

(略)
①についていえば、主張の異なる双方を取材しなければ、物事を片面しらしか観察できない。
②もまた、一見、被害者に見える人物が加害者だったり、一見、国民生活を向上させるように見える法案に大きな悪意や欠陥が潜んでいたりするからである」(太字引用者『Hanada1月号)

これは常識的ジャーナリズムの原則中の原則であって、面と向かってこれを間違っているといえる報道関係者はいないでしょう。

これを平然と全否定したのが、民放労連の談話だったわけです。

先日の記事で取り上げたNHKの報道は、この「物事の片面」しか見せない報道の典型です
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171220/k10011265631000.html

事実はつまるところ、こんな単純なことにすぎなかったはずです。

①普天間基地は戦中に米軍が強制接収した。
②復帰後の宜野湾市の人口の急激な増加により、基地周辺はベッドタウンに変貌した。

ところか、NHKは、①を前面に出し、②を無視するからおかしくなります。NHKは①の状況のまま現代に至っているかのように報じるから、無理が出るのです。

のNHKの報道にも、「自民党の勉強会に招かれた作家」が登場しますが、それはもちろんNHK経営委員もしていた百田氏のことです。

氏は「水田の真ん中に基地を建てた」と、接収時の状況をやや単純化して述べていました。

これが100%正しくないことは、一昨日の記事で述べたとおりです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-4119.htm

lしかし、すべてが誤りかと言うとそうではなく、百田氏がいうこの後段はそれなりの正しさを持っています。

「『騒音がうるさいのはわかるが、そこを選んで住んだのは誰だ』と発言したほか、『危険な場所にあえて住んでいるのではないか』」(NHK前掲)

私から見ても、周辺住民は「あえて住んでいる」という決意があったわけではなく、仕方なしに住んでいるだけです。

表現は過剰気味ですが、まぁ当たらずとも遠からずです。

ところが、このような見方を否定するために、NHKは「住民、正しい経緯を知って」として①の時期の語り部である宮城氏のみを、画面に登場させます。

そしてこの被害者性の強い語り部の口から、こう言わせています。

「『何もなかったところに基地ができた』という意見を聞くと、私たちのふるさとを消し去られたような気分になり、強い怒りを覚える。正しい歴史を知ってほしい」(前掲)

NHKは宮城氏の口を借りて、論点をズラしています。

百田氏は戦後の基地周辺に住宅地が立て込んできた②の状況について言っているのであって、宮城氏の「ふるさとを消し去られた」①の時期のことを言っているのではありません。

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基地周辺に越してきた新住民は、飛行場があって好き好んで集まったわけではありません。

逆に言えば、基地が「銃剣とブル」で住宅地を押しつぶして落下傘降下したわけでもありません。

②の宜野湾市人口が、普天間飛行場が建設されて以来10倍という急激な人口増加をしてしまったために、基地周辺に宅地が押し出されただけです。

ですから、人口密集の市街地の真ん中にある異常な状況と米軍の接収は、直接、なんの因果性も持ちません。

もちろん、いうまでもなく市の中心部に基地が居すわるということがこの遠因にありますが、最大の原因は宜野湾市の那覇のベッドタウン化による人口増です。

いずれにせよ、解決案はひとつしかないはずです。

すなわち、可能なかぎり早急に移転することです。ただし、現在使われている軍事施設ですから、その機能を損なうことなく、より安全な土地へ移設すべきです。

代替施設ができるまで、普天間基地を現時点で廃棄することは不可能ですから、当座居続けることになりますが、そう遠くない将来、宜野湾の人口密集地から撤去することを明確にすることです。

本土政府はそう考えて実施していますが、民放労連ばりにいえば「沖縄の苦悩」に反対されて、茨の道を歩むことになっています。

NHKはこの当然の結論をから目を背けさせるために、70年前にさかのぼる接収で、一切の時間を止めてしまいました。

NHKが「主張が対立している場合、その双方を公平に取材する」ことをしていれば、このような報道は生まれなかったでしょう。

沖縄問題のような意見が激しく食い違うテーマについては、両論併記は最低限の報道する者のモラルなのです。 

ちなみに、この番組との直接の関係は分かりませんが、NHKには民放労連以上に左翼的だと言われる日放労が強い力を持っています。 

日放労はユニオンショプ協定によって、管理職をのぞく全員加盟の巨大労組で、経営に対しても強い影響力を行使していると伝えられます。
日本放送労働組合 - Wikipedia

真偽は定かではありませんが、NHKの病巣であるNHKエンタープライズに対して査察に乗り出した籾井前会長に激しく抵抗して、追い出したのはこの日放労だと言われているそうです。

それはさておき、民放労連が両論併記などくそくらえだといった、「ニュース女子」問題についての詳細は今日は触れません。

いままでかなりの本数書いていますので、そちらをお読みください。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-19cf.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-c05b.html 

ただひとこと述べておくと、1年前の高江紛争の敗北は、決して反対派がいうような権力の弾圧によるものではなく、自らの手で潰したのです。

反対派は高江現地が僻村であって隔離された地理的条件にあることをいいことにして、村落を丸々封鎖するという暴挙を行いました。

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上の写真はその時のものですが、「ニュース女子」が救急車を妨害したのしなかったのとBPOは問題視していますが、枝葉末節です。

こういう村の封鎖をしたら、救急車なんか通れるはずがないではありませんか。

にもかかわらず救急車に対して反対派が妨害したかしないかという部分だけを切り取って矮小化させています。

そして致命的だったのは、あからさまな暴力を人もあろうに指導者の山城氏が、無抵抗の公務員にふるってしまったことです。

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BPOは、この行き過ぎた暴力を放置し、一行たりとも報じない地元2紙、本土大手紙の容認ぶりこそが、高江紛争における暴力の常態化を生む温床になっていることを問うべきでした。

NHKが都合の悪いことを「選択的報道をしない自由」なら、沖縄地元2紙は「全面的報道しない自由」です。

この高江紛争は、あらためて左翼には自分たちの暴力は、権力に対する抵抗権に当たるので是認されるべきだという甘ったれた考えがあり、それと同じ価値観がメディアにも深く浸透していることを明らかにしてまいました。

これが民放労連のいう、「沖縄問題には両論併記はありえない」という主張の背景です。

※民放労連を民法労連とミスタイプしていました。すいません。訂正してあります。

2017年12月22日 (金)

普天間2小の成り立ちを淡々と振り返ってみよう

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米軍ヘリの窓枠が校庭に落下したことの波紋を書いてきました。 

NHKは、「窓枠が落下した普天間第二小学校に誹謗中傷の電話がかかってきている」と報じています。 

「沖縄県宜野湾市の小学校のグラウンドにアメリカ軍普天間基地を離陸した大型ヘリコプターの窓が落下した事故で、現場の小学校などには「基地があるところに学校を造ったのに文句を言うな」といった電話がこれまでに25件あり、市の教育委員会は「アメリカ軍に土地を接収され、しかたなく建てたという事実を知ってほしい」と話しています」(NHK12月20日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171220/k10011265631000.html

 どのような「正義感」にかられているのか分かりませんが、こういう無意味な学校への抗議電話は止めて下さい。 

いっそう問題をこじらせるばかりです。 

このような馬鹿げた抗議をすればするほど、<沖縄の悲惨さを知らない本土の人間.>vs< 基地に苦しんでいる地元の住民>.という構図にはまってしまいます。 

その結果、本土と沖縄の分断が深まるばかりとなります。 

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そもそも抗議する対象を間違えています。 

普天間2小に解決能力があるならまだしも、小学校にとって「そんなことを学校に言うな」と返答するしかないではありませんか。 

基地が先か、小学校が先かなどというニワトリと卵のような論争を、小学校相手にやるべきことではありません。 

解決方法は実にシンプルです。 

行政が責任を持って、普天間2小を安全な場所に移設すればいい、ただそれだけです。 

筋からいえば市立学校ですから宜野湾市がするべきでしょう。今までのしがらみから比較的自由な立場とお見受けする佐喜真市長、ぜひご尽力してください。 

ただし、この普天間2小問題は、いまや基地という安全保障がらみとなって久しいですから、市だけにやらせるのは酷です。 

翁長県政はまったくあてになりませんから、ここは国が移転先とその費用について全面的に応援すべきでしょう。 

行政が移転用地を見つけようとしない、あるいは費用を出さない、はたまた移転そのものに反対の人たちがいる、ということが明らかになれば、その時こその阻害する対象に対して声をあげればよいのです。 

まずは、普天間2小の場所から押さえておきましょう。下のグーグルアースの画面中央、滑走路東北の赤点が普天間2小の位置です。 

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 間違いなく「世界で一番危険な場所にある小学校」であることに、異論を持つ者はいないでしょう。 

普天間2小は、伊波前市長が「お気に入り」のスポットで、なにかというとメディアや本土政治家を引き連れて見学させていた場所です。 

普天間2小の屋上で、ダークスーツの地元の中で黄色いアロハを着て背中を見せているのが鳩山氏、指を基地に指しているのが伊波氏です。 

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 伊波氏のような反基地運動家にとって、普天間飛行場の危険性を一目で説明するに、普天間2小ほどふさわしいスポットはなかったはずです。

語弊があるかもしれませんが、伊波氏たちのような反基地運動家たちは、普天間2小を基地の危険性を雄弁に語る「広告塔」のような使い方をしていたのです。 

市長ならばさっさとこんな危険場所から移転することに全力をあげるのが筋のはずですが、伊波氏は抗議はしても移転に尽力したという話は寡聞にして知りません。

本土政府は腰が引けていてなにもしない、地元の宜野湾市の反戦市長は危険を叫ぶが、市の権限を行使して移転を図ろうとしない、こんな谷間に落ちてしまったのが児童たちでした。 

さて、普天間2小が開校したのは、復帰前の1969年(昭和44年)のことでした。 

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どうして基地のフェンスと文字通り隣接する場所に小学校を建ててしまったのかについて、NHKはこんな解説をしています。

「市の真ん中に広大なアメリカ軍普天間基地があるという状況の中、土地は限られ、確保できたのは基地に隣接する現在の場所でした」(前傾)

う~ん、嘘とまでは言いませんが、微妙な歪曲だなぁ。

では、普天間基地ができた当座の1945年の空中写真を見ていただきます。

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今の普天間市の真ん中にあるのは事実ですが、私にはまだまだ小学校のひとつやふたつできる空き地がいくらでもありそうな気がします。

おそらく戦争が終わって収容所から帰った住民を迎えたのは、このような状態だったと考えられます。

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「(基地ができた経過の)DVDを作成した宮城政一さん(74)さんは、基地となる前の集落で生まれ、今は普天間基地の近くに住んでいます。
宮城さんは「『何もなかったところに基地ができた』という意見を聞くと、私たちのふるさとを消し去られたような気分になり、強い怒りを覚える。正しい歴史を知ってほしい」と話しています」(前傾)

宮城氏は、今は基地のコンクリート下になってしまった村に生まれました。

深く同情します。故郷の喪失は、ひとの心の中心にある始源的ななにかを奪うことですから。

そして宮城氏はこう続けるわけですが、ここからは私には違和感がでてきます。

宮城氏は、「飛行場があってその周辺に市民が集まってきた」のではないと言うのです。

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宮城氏がどこをとってこう説明しているのかわからないので、軽々に批評するのはためらわれますが、違うと思います。

普天間2小ができて8年目の1977年、国交省が撮った復帰5年後の普天間基地北側の写真です。

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滑走路北端の周回道路脇に、普天間2小が確認できますね。

私には学校の周囲に緑地帯(赤矢印A)が、かなりあるように見えます。

今度は基地南側を見てみましょう。1977年、同時期に国交省が撮った普天間基地南側です。赤矢印B、Cにはまだ緑地帯が存在します。

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では続いて、それから28年後の2005年の空中写真です。

基地北側を見ると、1977年には白く写っていた周回道路から西には住宅がなかったものが、道路を越えて基地にまで迫ってきています。

2枚上の写真と比較してもらえれば、住宅地が容赦なく基地に接近している様がお分かりいただけると思います。

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上はさらに10年後の2015年のものですが、もはや基地は住宅地の海に溺れそうになっています

つまり宮城氏は自分の体験の範疇では正確に述べています。氏が言うとおり、基地に接収されてふるさとが消えたのです。

しかし、「飛行場があってその周辺に市民が集まってきた」、ということまで否定するのはいかがなものでしょうか。

NHKは、戦中にふるさとを接収された旧住民の証言のみで、戦後の経緯すべてを語らせようとしています。

NHKは基地建設後における、:基地周辺地域の宅地化を無視してしまっています。

宜野湾市の人口動態を見てみましょう。

・1946年(昭和21年)   ・・・6820人(宜野湾市教育委員会副読本平成12年度版)
・2015年(平成27年現在)       ・・・9万7062人(宜野湾市)

この70年で、宜野湾市の人口は10倍以上に膨れ上がっています。これは沖縄県の人口が増加したのと見合っています。

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沖縄県の人口動態です。

・1945年・・・約30万人
・1977年・・・約110万人
・2005年・・・約138万人
・2015年・・・約142万5千人

沖縄県全体の人口は5倍弱にまで膨れ上がり、100万人を突破した70年代から、那覇近郊にあって交通が便利な宜野湾市は通勤圏、つまたはベッドタウンへと変貌しました。

そして、さらには住宅が基地周辺にまで押し出されるようにして接近する、今の風景を作り出したのです。

この基地周辺住民たちの大部分は、いうまでもありませんが、新住民です。宮城氏のような旧住民はいないとは言いませんが、希少だということに留意すべきです。

一方普天間基地は、基地返還交渉が実って復帰後に徐々に縮小しています。

・1977年3月31日・・・ 10.9haを返還
・1977年4月30日・・・ 0.3haを返還
・1977年9月30日 ・・・ 2.4haを返還
・1992年5月14日 ・・・ 道路用地等として1.5haを返還

1982年、宜野湾市は普天間2小から200mの場所にヘリが墜落炎上した事故を受けて、米軍と用地交渉した結果、約1㎞離れた米軍家族用の軍用地のうち8千坪を校舎用に日本に返還することが決まりました。

また防衛施設庁との協議で、移転費用も確保したといわれています。

しかし、なぜか頓挫します。

その理由については諸説ありますが、今日は触れません。

とまれ挫折したまま放置されてしまったのだけは確かです。

ただ一度だけ民主党政権時に30億の移転費用を出そうという話が持ち上がりましたが、それもすぐに「沖縄の声」に押しつぶされるようにして立ち消えました。

そしてまるでエアポケットに落ちたように、今に至るも老朽化した校舎が基地に寄り添うように建っているわけです。

 

 

2017年12月21日 (木)

沖縄で米軍機を日本が整備するのは意味がある

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せう少し米軍機窓枠落下事件について続けます。

テレジアという人から、このようなコメントをもらったので記事でも答えておきます。

「米軍の正式な発表では「操縦士の人為的なミス」であり「操作手順を間違えていた」と日本政府などに伝えたそうです。
どこに大韓航空の整備不良の話が出てるのでしょう」

はい、確かにあなたのようにメディアだけ見ている限りは、「小学校校庭に落ちた」と、「おびえる市民たち」といったことしか報じられていません。 

私から見れば、失礼ながらずいぶんと薄っぺらな報道だなと感じたので、その背景を探ることにしました。 

なるほど今回の事故原因は直接には、パイロットが脱出ハッチのレバーを押してしまったことによる誤操作です。 

これだけ見ると、いわゆる人為ミスの範疇に分類されてしまいます。 

しかし実は危機管理上、人為ミスで済ましてしまうのは、もっとも安易な事故原因の出し方なのです。 

対策としては要は「気をつけよう」ですから、マニュアルを上書きして、講習会のひとつでもして、脱落した脱出ハッチの安全索の検査を徹底し「よろしいですね、皆さん。気を引き締めていきましょう」でおしまいです。

まぁ、現場としてはこんなていどしかやることがないわけです。 

だって、たかだかと言う言い方は児童に当たる可能性もあったので語弊がありますが、機体そのものやエンジン本体の事故ならともかく、窓枠の誤操作にすぎませんからね。 

翁長知事は怒っているようですが、米軍はくだんのCH53Eを数日の飛行停止だけにとどめて、わずか数日後に訓練を再開しました。

Ch53e2https://www.jiji.com/jc/d4?p=fal016&d=d4_zz

飛行再開に翁長氏が県民の安全を声高に要求するなら、米軍に対する要求はつまるところこのふたつしかなかったはずです。 

①CH53Eは事故を多発する老朽機だから早期に退役させよ。
②米軍は整備を外注化せずに、軍内部で責任をもって行え。
 

ところが翁長氏ときたら、例によって「米軍基地撤去」という政治的方向に話を持っていきたがるので、肝心の米軍機の安全性は放置されることになります。 

これでいいのでしょうか。米軍はお家の事情、県知事は反米だけ、日本政府は腰が引けている、これでは米軍機の事故の歯止めになりません。 

真剣に米軍機の事故を憂慮するなら、米軍の整備状況そのものにメスを入れねば、また別の形で事故が起きます。 

最大の原因は、米軍の予算削減による整備・管理不門の削減と外注化です。 

これは日本もこの20年間のデフレ地獄においてさんざん経験したことで、米軍もその轍を踏んでいるにすぎません。 

経営体がコストカットを至上課題にすると、まず安全部門からカットします。 

Ssg122jlp13728883_wikipedia

2012年に起きた笹子トンネル天井崩落事故は、道路公団が民営化されて生まれたNEXCO中日本が、笹子トンネルの老朽化を知りながら、補修点検に手抜きをしたため起きました。 

天井を固定するボルトを、打音検査によってチェックすべきところを、目視だけで済ませてしまったために破損に気がつかなかったのです。
笹子トンネル天井板落下事故 - Wikipedia 

この間の米軍の多発する事故を見ていると、笹子事故と似たパターンを感じます。 

NEXCO中日本はトンネル天井の老朽化を、4年前に起きた同じ吊り天井タイプの関門トンネル事故で知り得ていました。

同様にCH53Eは、とうにスクラップにしてくず鉄にしてしまうのがふさわしい機体だということは、とうぜん米軍が一番よく知っているはずです。

同じタイプの機体を使っていた海自は、とっくに退役させて部品取りに米軍に提供しています。

海自は大型ヘリの必要性がなかったので退役させたのですが、米軍は戦略上、重輸送ヘリがなければ困る局面が多いために、いまだ現役を張らせています。

後継機の開発が遅れているために代替機がないわけですが、それは米軍の都合です。いいかげん接受国の迷惑も考えてほしいと思います。

またNEXCO中日本は、事故の後に「崩落現場付近約110mを除く範囲で、アンカーボルト11,613カ所のうち、ボルトの緩みや欠落などの不具合が1,211カ所見つかった」、(Wikipedia)にもかかわらず、2000年以降一度も打音検査をしなかったことがわかっています。

一方、米軍も整備予算削減のために、整備の一部を外注化していることは昨日記事にしました。

念のために書き添えますが、米軍が民間に全部丸投げにしているわけではありません。米海軍・海兵隊の航空機整備にはレベルが3ツあります。

①「0レベル」・・・飛行隊で行われる日常整備
②「中級整備」・・・整備補給中隊でのエンジンや可動部などの点検・整備
③「デポレベル」・・・航空機を分解したり、オーバーホールする高度の専門技術が必要とされる整備

これらを統括するのが、岩国に移動したばかりの「西太平洋航空機整備センター」(FRC-WP)と呼ばれる組織です。

KALがどのていどのレベルまで整備に携わっているのか資料がありませんが、おそらく①の「0レベル」ではないでしょうか。

とまれ、仮に「0レベル」だとしても、安値に目が眩み、よりによって世界でも事故率がボトムと評価されているKALに整備を委託させるというのは、わが国の安全保障上も問題です

それも朝鮮半島有事が現実性を帯びる中で、米軍は有事を想定した厳しい訓練を続けている状況で、ほんとうにこれでいいのでしょうか。

せめて外注するというなら、わが国の優れた航空機整備技術を用いるべきです。

私はその意味で、山路氏の提案を支持します。検討に値する大変に面白いプランだと思います。

米軍機整備なら長い経験を持つ「日本飛行機」(日飛)という会社があります。おそらく世界でも指折りに高い航空機整備技術を持つ企業です。
日本飛行機 - Wikipedia

日飛は自衛隊の整備の一部も請け負っており、高い信頼性をもっています。下写真は鮮明でなくて恐縮ですが、日飛工場で整備されているF/A-18E/Fです。

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「アメリカ海軍機・海兵隊機の整備は、1953年の航空機修理契約締結以来、半世紀以上の実績を誇り、現在では全整備台数の約8割を占める整備根幹事業となっています。
NIPPIは進化する米軍機の技術に対応し、整備技術の高度化に取り組み、主力戦闘機F/A-18E/F型(スーパーホーネット)や対潜ヘリコプターSH-60F(オーシャン・ホーク)など最新鋭の機体も含め、多機種の整備を行っています。
また、厚木飛行場に隣接する航空機整備事業部での整備に加え、国内米軍拠点各地にNIPPI整備スタッフが出向して整備に当たる『オンサイト整備』を提供し、時間短縮、コスト削減などを達成しています。」(日本飛行機HPより )

http://www.nippi.co.jp/aircraft/usa.html

今まで山形などに分工場を展開しており、なぜ沖縄にないのかが不思議なくらいです。

この「日本飛行機」の沖縄工場を作れば、沖縄の青年の航空機整備技術を習得することにつながります。

沖縄にはそうとう数の米軍機が駐留していますから潜在需要はあると思いますし、在韓米軍の需要も期待できるかもしれません。

破格の安値を提示しているKALに負けないために、その差額をなんらかの国家補助で補填すれば、入札でも勝機はあります。

それが可能ならば、沖縄経済の最大の欠陥である製造業不在の解消にもつながることでしょう。

その意味で、地場の製造業創出としての補助金支出の意味あいも期待できます。

また、沖縄を中国の軍事膨張から守るためには、現時点で米軍を「引き止める」必要があります。

勘違いしている人が多いようですが、米軍は沖縄で「新基地」を作って増大する気などいささかもありません。

辺野古移設による「新基地」は、あくまでもわが国の国内事情にすぎません。

米軍は世界的に明瞭に撤収のトレンドにあります。米国は沖縄に固執していません。

いつまでもあると思うな、親と基地なのです。

シュワブもハンセンも一年中定員の1万数千などいやしません。がら空きです。

米軍にとって沖縄は、駐留する必然が急速に薄れつつある地域になりつつあります。

この朝鮮半島情勢が落ち着くところに落ち着けば、おそらくは5年、遅くとも10年、15年先というスパンで、ハンセンは米軍にとって弾薬・装備類だけ事前備蓄する場所となり、陸自の水陸機動団の分遣隊が入ることでしょう。

普天間も陸上部隊の空洞化に伴って、反米軍感情の強い沖縄に居続ける理由を失うかもしれません。

皮肉にも辺野古の代替施設ができる頃には、米軍がそれを欲するかどうかは分からないのです。

このような大きな流れの中で、沖縄での日本による米軍機整備を考えることは意味あることだと私は思います。

現時点では極端なことを言うなと言われるでしょうが、米軍はやがて、そう遠からず沖縄から姿を消していきます。

それは反基地闘争の勝利ではなく、米国が歴史的セットバック(後退)期にあるからです。

それは数十年の幅で進行するでしょうが、その時になお、彼らが「沖縄は横須賀に並んで必要だ」ということを認識させておく必要があります。

横須賀は抜きんでた日本の整備技術によって米海軍に必要不可欠な整備拠点となりました。

理由は簡単、本国以上,ときにはそれ以上の整備を受けられるからです。

艦船のみならず厚木の日飛に飛べば、艦載機は米本土と同等、あるいはそれ以上のメンテを受けられたのです。

このふたつの整備拠点によって、横須賀と厚木は米海軍にとってなくてはならない存在となったのです。

の沖縄版ができないかと、私は考えています。

仮に在沖米軍が撤収したとしても、沖縄に来れば高度の整備が受けられるということは、実働部隊がいればなおさら、それが去った後も整備拠点として米軍の戦略の中にゴチック活字で書き留められることになるはずです。

復帰後、日本政府はさまざま先端産業の研究所や予算誘導を持ち込んできましたが、肝心の地元の反応 が鈍く、ことごとく失敗したのは大久保潤『幻想の島』にも述べられています。

製造業がないに等しい地域で、いきなり先端産業に行けというのは無理があるのでしょう。

まずは整備という製造業の基礎の基礎を置く、というのもあながち間違いではないかもしれません。

軍用機のみならず、沖縄の新たな産業として軍用・民間を問わず航空機整備を置くのも面白いのではないでしょうか。

それを特区で保護し、アジア全域の航空会社を相手にするも面白いでしょう。

アジアの航空会社は一部を除き、事故率ワーストに名を連ねています。

彼らにとっても飛行機でひとっ飛びの沖縄にいけば、日本の高度の整備を受けられるという提案は魅力的ではないかと思います。

※大幅に加筆しました。(午後3時)

2017年12月20日 (水)

普天間のヘリ窓枠落下事件の背景とは

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やっとPCの修理が済みました。まだそこここ変ですが、やりながら直していきます。相撲でも怪我は土俵で治せと申します(笑)。 

それにしてもいや~、時間がかかったこと。 もうこりごりだぁ。

さてご存じのように、普天間2小に米軍ヘリの窓枠が落ちました。

反戦運動家園長の保育園屋根になぜか「あった」部品の時とは違って、米軍も素直に部品脱落を認めています。 

この部品脱落事故は、前回の高江の不時着事故と並んで、いくつかの問題をはらんでいます。 

結論から先にいえば原因は、たぶんこんなところではないでしょうか。 

①米軍の整備がコスト削減で圧縮された結果、外注化さたこと。
②CH53Eは早々に退役させるべき老朽機だが、さまざまな理由でできないこと。
③部品か落下した小学校の位置がきわめて危険な場所にあること。
 

Photo事故機を調べる沖縄県警の捜査員と米軍関係者 産経新聞12月18日

まずは、米軍内部の整備事情です。米軍のメンテナンスは緩む傾向にあります。 

このように書くと、必ず米軍はたるんでいるといわれますし、まぁ実際にこう事故ばかり続くと少しは言われろよという気分になりますが、精神論だけでは解決できない構造的な問題が背後にあります。 

今、米軍はバサバサと国防予算を圧縮されたうえに、昨今の緊張した世界情勢のために世界を駆けずり回っている過酷な状況です。 

その中で起きたのが、イージス艦(といっても米海軍は全部イージスですが)2隻の衝突事故でした。 

静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之氏は『NEWSを疑え』(2017年11月16日)でこう述べています。

「米議会は2011年、国債発行上限の引き上げをめぐって争った結果、予算コントロール法を制定した。この法律には、歳出削減について議会が合意できない場合、人件費などを除く予算を自動的に削減(強制削減)する条項がある。
 その結果、2013年から国防予算も削減され、運用維持費がもっとも削減された。海外から米国へ戻った部隊の訓練と装備品整備がしわ寄せを受けて、航空機等の稼働率が低下している。
 さらに、新年度(10月1日)までに国防権限法が成立せず、前年度の配分を変えないで国防費が支出されること(予算継続決議)が常態化し、予算がいっそう硬直化している」

このようなコストカットにあうと、米軍も民間会社もやることは一緒です。採算と一見結びつかないように見える、安全管理部門や訓練から経費を削減するのです。 

笹子トンネルの天井崩落と一緒で、民営化による悪しき合理化で、メンテナンスがおざなりにされてあの痛ましい事故が起きました。 

米軍の場合、それは軍内部の整備部門の圧縮と外注化でした。 

正面装備の大道具である航空機や艦船はなかなか軍の抵抗もあって削りにくいのですが、裏方の整備や訓練は外部からは分かりにくいので密かにやります。

Brb40624nifty米原子力空母、手前からセオドア・ルーズベルト、ロナルド・レーガン、ニミッツ(11月12日) Courtesy James Griffin/U.S. Navy/REUTERS ニューズウィーク日本版http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/11/3-79.php

先日、北朝鮮に対して堂々の米空母3隻の横綱揃い踏みを見せた米海軍も、内情は厳しいようで、こんなところでやりくり算段をしています。

当事者のシューメーカー海軍中将の予算をカットした議会への恨みがこもった証言をお聞き下さい。(11月9日、米下院軍事委員会即応性小委員会)

「『カール・ヴィンソン』『セオドア・ルーズベルト』『ニミッツ』が今年1月、6月、10月に、作戦可能なジェット機を必要な数だけ配備した航空団を載せて出港できるようにするため、補給処と東海岸・西海岸の飛行隊からF-18戦闘攻撃機94機をかき集めた。
新人パイロットのための訓練飛行隊からも航空機を引き抜いた。
戦闘攻撃機の在庫管理はインチキな員数合わせだ。米国にいる飛行隊の機数は、パイロットの技量を維持し、資格取得や昇任に向けて向上させるためには足りない。パイロットに海軍に残ってもらうためにも、将来の戦力のためにも、現状はよくない」(前掲)
 

3隻の巨大空母を揃えるために、米本土中の飛行隊や補給部隊、果ては訓練部隊からもインチキな員数合わせまでして戦闘機をかき集めたというのですからハンパではありません。

この台所事情をみると、米軍が北朝鮮水域にかつての湾岸戦争時のように6隻もの空母打撃群を浮かべるのは不可能な気がします。

それはさておき、国外に展開している米海兵隊や空海軍は、現地で公開入札を行い最も安く入札した会社に航空機の整備をさせています。

それが大韓航空だというのには、私もたまげました。

「大韓航空が日本に駐留する米海兵隊のヘリコプターCH53約40機の整備を担当する事業者に選ばれた」
「2020年までの5年間、システム点検や機体を分解しての主要部位点検のほか、非破壊検査を実施し欠陥を修理、補強する」(聯合ニュース2015年5月26日)

「今年、事故機をメンテナンスしたことは事実だが、落下した窓は契約の対象に含まれておらず、弊社は全く関係ない。整備や点検は数カ月かけて丁寧に行っている」(夕刊フジ12月16日)

米軍が整備を現地雇用の軍属に整備を委託すること自体は、今に始まったことではありません。

米海軍は横須賀軍港や厚木基地などではかねてから、艦船や航空機を日本人技術者軍属が整備していました。

2014年からは武器三原則の緩和に伴って、日本の整備会社が多くを受け持つようになったようです。

米海軍は米本土よりしっかり整備してくれくる横須賀で整備してもらうために、メンテ時期になるとわざわざ第7艦隊に配転するという噂があるほどで、日本のドックと技術力なしに第7艦隊は動けないといわれるほどです。

128横須賀軍港の修理施設。日本人技術者が働いている。

日本の整備環境のほうが、米軍自身の整備より優れている場合が往々にしてありますし、日本がわが国の防衛に密接に関わる米軍機・艦船を整備することはむしろ望ましいことです。

しかし、失礼ながら大韓航空の技術レベルは決して高くはありません。というか、はっきり言えば、世界的に見てもそうとうにひどい水準です。
※ 図版は産経新聞自身の訂正があったとの指摘があったので削除しました。

2013年度の航空会社の安全性を調査、発表するJACDEC(Jet Airliner Crash Data Evaluation Centre)によれば、安全度ランキングで全日空は0.015で12位なのに対して、大韓航空はなんと52位で0.396でした。

なんと全日空より大韓航空は、20倍以上アブナイってわけです。大韓航空はKALと呼ばれていますが、KはケンチャナヨのKだとか。
http://flyteam.jp/news/article/31276

ちなみに60位以下はランク外扱いですので、安全性に関しては世界でも指折りに危ない航空会社といってよいでしょうね。

これを知ってか知らずか、ただ安いという理由だけで、米海兵隊所属航空機の事故率2.45を上回る事故率2.58の大韓航空に、高価な軍用機を整備させる米軍の気がしれません。

韓国経済の宿痾となっていますが、シェアが欲しいばかりに海外でありえない安値で入札し、結局破綻するということを繰り返しています。

建設業、海運など請け負ったのはいいが続かなかったり、すぐに壊れたり、はたまた請け負い会社そのものが立ちいかなくなったりするなどといった事例が山積しています。

そもそも常識的に見ても、法外な安値で落とした仕事を丁寧にやるはずがないじゃないですか。

今回の窓枠脱落事故も典型的な凡ミスです。今回脱落したのはただの窓ではなく、脱出用ハッチをかねた窓部分です。

どうして窓が落ちるんだという疑問が出ていますが、開くようになっているのです。

ですから脱出レバーを何も起きていないのに引く乗員も馬鹿(飛行場3周走ってこい)ですが、仮に誤操作させても、空中での脱落防止のワイヤーが付いていて防げる仕組みなっています。

それが付いていなかったわけですから、今回の事故は、乗員、大韓航空、機つき整備員の三者がポカミスをしたことになりなります。

このような事故が起きた場合、軍内部のことなら締められますが、第三国に整備を委託してしまうとそう簡単に改善することは難しいのです。

そのうえ老婆心ながら、米軍さん、軍事機密の塊の軍用機をよりにもよって世界の航空業界最悪の大韓航空に整備させるのは、即刻お止めになったほうがいいと思います。

ただ技術水準が劣悪なばかりではなく、韓国社会に大量に北の工作員が紛れ込んでいるのは常識ですし、大韓航空整備部門のセキュリティが万全かどうかまで分からないからです。

憶測に過ぎませんが、前回の高江炎上事故の原因は電気系統からの失火でしたが、これにも大韓航空が関わっていそうな気がします。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/post-894b.html

日本政府は、米軍にただ安全を要求するのではなく、米軍自身の整備かあるいは日米同盟の枠内での整備形態に改善する要請をするべきです。

 

2017年12月19日 (火)

再掲 普天間基地の成り立ちを淡々と振り返ってみよう その2

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あいかわらず修理がなおらずに、だましだまし書いています(泣く)。昨日に続いて、2015年10月17日記事を大幅に加筆修正して掲載します。

                                    ~~~~~~~~

承前

前回、百田氏の「基地の周りは水田だった」という主張と、翁長知事や地元紙の「銃剣とブルドーザーで基地を作った」という二つの主張を比較してみました。

百田氏の主張が全面的に正しいのは戦前までです。

普天間地域には、有名な松街道が縦貫し、畑や水田の中に民家や公共施設、商店が散在する普通の村の風景。ひろがっていたようです。

そしてあの忌まわしい戦争が始まりました。普天間を見下ろす嘉数台地は、米軍戦史にも残i 激戦の舞台となりました。※修正しました。

後に基地のコンクリートの下に埋もれてしまった宜野湾、神山、中原、新城などの集落は、戦中の軍事的接収で基地となったのでした。

もちろん戦後には、地権者の申し立てにしたがって地代が支払われるようになっています。

住民は収容所から帰ると、我が村はすでに基地になっていたのでした。

戦争で家族と財産を失った上に、帰るべき故郷も家ごと喪失した村民にとっては、胸がつぶれる思いであったことでしょう。

その意味では、確かに琉球新報が述べるように、「米軍によって排除され、基地周辺で生活せざるを得なかったことは歴史が証明している」という言い方は正しいのです。

しかし表現の問題としては、接収時には住民は避難していたはずですので、住民に「銃剣をつきつけて」という場面があったとは思えませんが。

「銃剣」=軍政の含意でしょうが、この表現は後に多くの誤解をもたらすことになります。

では地元紙がいうように、沖縄の基地すべてが「銃剣とブルドーザー」で作ったのかといえば、かならずしもそうではありません。

ここで留意したいのは、沖縄の米軍基地には3分類あることです。

①普天間基地のように米軍の接収によるもの。
②嘉手納基地のように日本軍飛行場だったもの。

③キャンプシュワブのように地元が誘致したもの。

さて、ここで時間を飛躍して現在の写真を見ましょう。 

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これが反基地運動家をして、「沖縄基地はギネス級」といわせる現在の写真です。

まぁ、ひと目見てスゴイですね。特に驚かないのは、私のような.本土米軍基地の真横で育った者くらいでしょうか。  

では、これらの普天間基地周辺の学校がいつ出来たのか調べてみましょう。

うして、普天間基地周辺の学校の出来た時期を見ていくと、基地があってその周辺に学校や住宅が建ったのがわかります。

もちろん、そこに基地があることを十分に知って、家や学校を建てたのです。

米軍が「銃剣とブルドーザー」で民家や学校を破壊して、基地があるわけではありません。

私の実家も厚木基地の周辺でしたが、私の両親はそこに基地があり、爆音公害があるのを知って引っ越したのです。 

反基地運動家が叫ぶように、「銃剣をつきつけてブルドーザーで民家をぶっ壊して住宅地のどまん中に建てた。だからこのように基地周辺に密集した」わけではないのです。 

たとえば米軍ヘリが墜落したことで一躍「有名」になった沖国大は、大学創設は1972年です。その前身である琉球国際短期大学の創立は1959年です。 

普天間基地が出来て実に14年後のことです。ということは、基地があるのを十分知りながら、ここに大学を設置したことになります。 

ちなみに、今米軍機の部品が落下したといわれている緑が丘保育園は1964年の開園です。

これをどう評するべきでしょうか。  

保守派の百田さんは、「普天間基地があって、その後に住宅が出来た」ということを強調したいあまりに、実際に「銃剣とブル」で接収した時代もあったことを無視しています。これはフェアではありません。

一方、翁長氏や地元2紙は逆に、「米軍は銃剣とブルドーザーで住民が住んでいた民家や学校を潰して普天間基地はできた」と言いたいために、いま基地周辺にある学校や住宅は、基地が出来てから集まったことを、都合よく忘れています。

翁長氏は公的発言の中で、このような極端な言い方をしています。

「住民が住んでいるときは銃剣とブルドーザーでどかして、家も壊して今の基地は全てできている」

この短いセンテンスにふたつも間違いがあります。「住んでいる時」ではなく避難した後に接収したのであり、「すべての基地」ではなく、一部の基地です。

②の嘉手納基地のように元日本軍飛行場跡もあれば、③のシュワブのように、住民が誘致した事例すらあります。

しかも接収されたのは半世紀以上前の、しかも戦時であって、米軍の接収は腹が立ちますが、国際法上では占領地の接収は合法です。

戦後はこの軍事占領を契約関係による土地賃貸関係に転じたわけですが、「気分」としては占領軍の居座り続けている「気分」を沖縄県民に与える原因となっています。

たしかに、戦闘で奪った土地に占領軍がそのまま駐留軍となって居すわるのは、ここ沖縄だけの現象です。

とまれ、今の普天間基地の危険性の問題と「銃剣とブルドーザとは、直接になんの関係もありません。 

この人たちは、移設問題の発端が「普天間基地の危険性の除去」だという事実から目をそらしたいために、接収方法のみを声高に言っているにすぎません。

翁長氏は辺野古移設についての福岡高裁那覇支部の裁判でも、このような陳述をしています。

「このたびの訴えの提起は、法律に基づくものであるとはいえ、沖縄県民にとっては「銃剣とブルドーザー」による強制接収を思い起こさせるものであります」

あるいは、2015年9月2日の国連人権委のスピーチ冒頭で、こう述べています。 

「沖縄県内の米軍基地は、第2次大戦後、米軍に強制的に接収され、建設されたものです。私たちが自ら進んで提供した土地は全くありません」 

2015年5月20日外国特派員協会での講演ではこうです。 

「普天間基地もそれ以外の飛行場も基地も、戦後、沖縄県民が収容所に入れられているときに取られたか、住民が住んでいるときは銃剣とブルドーザーでどかしてですね、家も壊して今の基地は全てできているんです」

本土人と外国人がいるところで彼が講演すると、「銃剣とブルドーザー」が出ない時のほうが珍しいくらいです。

これが翁長氏が率いる「オール沖縄」の定番である米軍基地「銃剣とブルドーザー強制徴発論」です。 

ここまで意図的にねじまげるとため息が出ます。ある種の心理的トリックです。

辺野古移設は、市街地にある基地の危険性の低減を目的としたものですが、翁長氏にかかると「米軍による強制接収」となってしまっています。

主体はあくまでも米軍ではなく、日本政府です。

このように「銃剣とブルドーザーを思い出す」といえば、米軍の非道が論証ぬきで説明できてしまい、本土政府はそれを言われると異民族支配を言い募られたような気分になって腰が引けて妥協してしまう、被害者性を必要以上に強調するためのマジック・ワードに変化してしまったことがわかります。

マジックワードはえてして、イデオロギーくっついて反論を許さない硬直した状況を作り出します。

百田氏の発言は、そのような状況に一石を投じたものでした。

判断はそれぞれにお任せしますが、私は百田さんと地元2紙双方とも、自説に引き寄せて都合よく歴史を切り取っているようにみえます。

次回もう少し普天間の市街地の膨張をみてみましょう。

                                                                                           (続く)

 

2017年12月18日 (月)

再掲 普天間基地の成り立ちを淡々と振り返ってみよう その1

070

あいかわらず故障中です。しくしく。

ブロッガーからパソコンとったらだるまさん。 

これもお借りしたので作っていますが、私は親指キイボードという知る人ぞ知る奇妙奇天烈なものなので、もうたいへん。

今日は、過去記事で訪問数が多いものを選んで、再掲載させていただくことにいたしました。

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                     「普天間基地の成り立ちを淡々と振り返ってみよう」
                                                               2015年10月17日掲載

淡々とというのは、簡単そうであんがい難しいものです。

というのは今のように対立が政治がらみで先鋭化すると、その政治力学の狭間に落ちて、肝心なニュートラルであるべき事実関係が忘れられてしまうからです。 

ちょっと前に百田さんが「普天間基地は水田ばかりの場所に建った」と発言して物議を醸しました。 

沖縄2紙は自分が批判されたこともあって、逆上気味に反論していました。 

では、普天間基地が作られていく状況を、時系列で見ていきましょう。 

まずは、1945年に戻っていただきます。今の普天間基地のあたりです。 

Photo_2(写真 1944年9月、米軍が上陸用に撮影。宜野湾市による) 

学校や役場も見えますが、おおよそは緩やかな丘陵地に連なる松林と畑地、サトウキビ畑のように見えます。 

この写真は、普天間基地の空中写真としてはもっとも古いもので、米軍が1944年(昭和19年)9月という上陸作戦7か月前に軍事目的で撮影したものだということです。 

米軍が上陸用の作戦地図をつくるために撮影した写真だそうです。民家もたくさんありますが、広大な畑が広がっている様子がわかります。 

地上の写真も残されています。大変に見事な松林の道です。この写真を掲載した琉球新報はこうキャプションをつけています。

「1932年の松が並ぶ宜野湾並松。1932年には「宜野湾街道の松並木」の名称で国の天然記念物に指定された(1910年ごろ(写真集じのーんどぅーむらより)」

これらは沖縄戦で失われました。実に残念です。今残っていれば、人々に憩いと涼を与え、いい観光スポットにもなったでしょう。 

Photo_3(写真 戦前の見事な松林。琉新2015年6月30日http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-245002.html

このような見事な松林街道があったのは、普天間という場所が、南部と北部を結ぶ交通の要衝だったからです。

※参考資料 宜野湾市 普天間基地の歴史・成り立ち:普天間基地@米軍飛行場がある暮らし 

街道沿いには宜野湾、神山、新城などの集落がありました。いわゆる散村形態ですので、畑やキビ畑に混じって、学校や役場などが点在していたと思われます。 

次の航空写真は、もう少し時系列が下がって1945年です。米軍は、近隣の読谷から上陸し、当時の宜野湾村を制圧しました。 

今でも基地を眺めるスポットになっている嘉数台地は、沖縄戦を代表する激戦地でした。今もまだ多くの将兵の遺骨が残されています。 

ここに米軍は、2400mの滑走路を作りました。それは本土に対する上陸作戦用の航空基地でした。 

Photo(写真 1945年当時の普天間基地。米軍撮影) 

さて、この基地が作られた場所を改めて確認しておきましょう。琉球新報がいい地図を作ってくれています。Photo_6(図 琉新2015年6月30日より)

 松林の街道に沿った宜野湾、神山、中原、新城などの集落が、基地になってしまっています。 

これが軍事接収でした。米軍は沖縄戦の真っ最中から基地建設のために土地接収を開始します。 

当然、彼らにとって沖縄は敵地で、普天間地域は嘉数という映画にもなった激戦地の近隣でした。多くの米兵も日本兵が戦死した、まさにその現場だったといってよいでしょう。

しかも日本との戦争は終わっていませんでした。

ですから、占領地にたいしては一切の補償もクソもなく、文字通り「銃剣とブルドーザー」で奪い取ったものです。 

ただし、民間人の家屋を接収するにたいして、普天間でほんとうに「銃剣」を使ったような行為に米軍が及んだかは疑問です。

普天間では、あくまで比喩的表現だと考えたほうかよいと思います。う。

なぜなら民間人が激戦地に居住しているはずがないからです。住民は南部に逃れた後に収容所に入れ:解放されて我が家が基地のコンクリートの下になったことに気がついて愕然としたのでした。

もちろん、普天間も戦後に地代を払っていますが、これが既に日本軍の飛行場があった嘉手納基地などと違って、民間所有が多くなった原因です。 

ちなみに戦後、地籍簿が焼失し、所有者の自主申告に任せたために、それらを累計すると、普天間基地は海の中まで出てしまうという笑い話があります。 

それはさておき、ここまで読まれて、百田さんが言うように「普天間飛行場はもともと田んぼだった」(琉球新同じ)のか、地元2紙が言うように「米軍によって排除され、基地周辺で生活せざるを得なかったことは歴史が証明している」(琉新同じ)のが正しいのか、いかが思われるでしょうか。 

私は、双方とも事実の片面だけを見ていると思います。 

百田さんが言う「水田だけ」というのは、やや大げさな表現だと思います。 

大都市大阪の人らしい視点ですね。大阪人風に言えば、「なにもないやろー」ということですが、ちゃうねん。 

大阪人たちにかかると奈良すら、「なにもないやろ。鹿しかおらへん」ということらしいので、農村なんかまったくの田んぼと思うようです(笑)。

私は農村に住んでいますが、水田があるということは、必ず近在にそれを耕す農家もあれば、寄り合い場、公民館、郵便局、学校、小学校などの公共施設も付随しているものなのです。 

これを「水田だけ」と言われると、村の人間としてはムッとなりますね。 人の暮らしも田んぼには付随しているものなのですよ。

Photo_7(写真 5月18日、大名高地で戦闘中の第1海兵師団第2大隊アメリカ海兵隊員。Wikipediaより)

一方、地元2紙が言うような「村を銃剣とブルで潰して作った」というのも、事実としては当時はそうだった、ということです。 

ここで地元2紙は、普天間基地が誕生したのが、沖縄戦の真っ最中で、まだ大戦はおろか、南部では日本軍が強固な抵抗をしていた時期だという状況を忘れています。 

戦闘中の軍隊が、敵地で平時と同じ接収方法をするわけがありません。 

戦後も、普天間基地は拡大を重ねていくのですが、戦中ほどではないにせよ、占領軍独特の強引で暴力的方法で接収を重ねていきます。 

これがいわゆる「銃剣とブル」の時代です。私はこのような時期があったことを、まったく否定しません。 

ただし、これは1950年代末から60年頃まで戦われた「島ぐるみ闘争」までの時期だったということを忘れないで下さい。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-e46c.html 

この米軍占領下の時期が永続して、今もなお続いていて「植民地のようになっている」と主張するのが、地元2紙と翁長氏です。 

翁長氏は、9月2日の国連人権委のスピーチ冒頭で、こう述べています。

「沖縄県内の米軍基地は、第2次大戦後、米軍に強制的に接収され、建設されたものです。私たちが自ら進んで提供した土地は全くありません」

翁長氏は似たようなことを、そこかしこでよく言っています。

「普天間基地もそれ以外の飛行場も基地も、戦後、沖縄県民が収容所に入れられているときに取られたか、住民が住んでいるときは銃剣とブルドーザーでどかしてですね、家も壊して今の基地は全てできているんです」(2015年5月20日外交特派員協会での講演)

さすがに、これは無理筋な論理展開でしょう。

翁長氏は、普天間移設問題を基地の危険性の除去という政府の論点からズラしたいために、「いかに奪われたのか」という部分のみを強調しようとしています。

「自ら提供した土地はない」というのはウソです。翁長氏は、キャンプ・シュアブやハンセンなどの地元の誘致運動の事実を無視しています。

他の基地に関しても、自分の主張にとって都合のいい、1950年代までしか見ようとしません。

 翁長氏は都合よく、米国の統治の仕方が戦時から平時へ移行したことを忘れているのです。 

1951年のサンフランシスコ講和条約移行の頃になると、占領下にあった沖縄でも戦時から平時への切り換えが行なわれました。  

米国は沖縄が「軍事占領下」である」としていたわけで、裏返せばそれは潜在的に日本領だと認めていたことになります。 

それが講和条約後に響いてきます。今までのような「銃剣とブル」で基地作りというわけにはいかなくなったのです。  

                                                                                      (続く)

2017年12月17日 (日)

パソコンが壊れました

皆さま、ぼろパソコンがこわれました。

修理から返るまで更新ができなくなります。
ご了承ください。とほほ(;´д`)
                  ブログ主

2017年12月16日 (土)

核廃絶を比較衡量してみよう

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ノーベル平和賞で核兵器廃絶を運動する団体が受賞しました。 

ノーベル平和賞授与式で被爆者のサーロー節子さんが、核兵器を「必要悪ではなく、絶対悪だ」と述べたのは記憶に新しいことです。

Photoサーロー節子氏

サーロー節子氏は核兵器が「絶対悪」な以上、それに反対する自分たちは「絶対善」だと信じています。

大変な苦難を受けた被爆者にこう言われると、大部分の人々はなにも言えなくなるわけですが、あえて言うことにします。 

このような「絶対悪」という極端な価値判断をすると、本来見えるものが見えなくなってしまいますよ、と。

なぜならそこには、廃絶したらどのようなデメリットをこうむるのか、という思考回路そのものが欠落しているからです。

残念ながら、私はサーロ節子氏のいう核の悲惨さは共有しますが、ではどうしたらその悲惨から逃れられるのかという道筋が分かりません。

これでは思考停止です。 どうしたら核廃絶ができるのか、あるいは削減できるのかというリアリティがないのです。

「絶対悪」という価値判断を一回はずしてみましょう。

廃絶した場合の利益と、存続するデメリットを秤にかけてみねばなりません。 

この考え方を比較衡量と呼びます。先日、記事で書きましたので、結論だけ言えば、今、核戦争にならないのは核兵器が大国同士でバランスしているからです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-aaab.html

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サーロー節子氏が聞けば怒るような問いをあえて言えば、広島になぜ原爆が落されたのでしょうか?日本人はそのことを考えてみる必要があります。

いくつも答えはありますが、そのひとつに日本が核兵器を保有していなかったからだということも入れておいてもよいでしょう。

原爆は開発の初歩的段階にも達していなかったし、日本は戦争を継続すら力すらうしなって丸腰の状態に等しい状況でした。

だから、米国は原爆を投下したのです。

もし日本の原爆製造がかなりのレベルに達していれば、その可能性を考慮してそうとうに躊躇したはずです。

核兵器を防ぐには核兵器しかない、これが冷厳な現実なのです。

また戦後の歴史をみると核の恐怖によって、通常兵器による戦争もしにくくなっています。 

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大国は相手が核保有国でなければ、ようしゃなく攻撃をしかけています。典型はフォークランド(マルビナス)紛争です。

ここでもう一度同じ問いをしてみましょう。当時アルゼンチンが核兵器保有していたら、サッチャーは攻撃できただろうか、と。

サッチャーは一度譲歩すると、アルゼンチンに次々と譲歩を強いられ、国民の中に不満が増大するだろうと思っていました。

また、サッチャーは当時どんぞこの英国経済に大鉈を奮う決意を固めていました。そのために支持を回復することに迫られていたのです。

そして最後にサッチャーの背中を後押ししたのは、アルゼンチンは非核保有国だったからです。

仮に核兵器を廃絶すれば、人類は核戦争の悪夢から自由になった代償として、通常兵器を使った戦争が頻発するもうひとつの悪夢の世界に住むことになります

世界中の核保有国が原爆を手放したとしても、北朝鮮と中国だけは握りしめて放さないでしょうから、唯一の核保有国たるこの二つの独裁国家は、スーパーパワーとして世界に君臨することができます。 

冗談のような話ですが、事実です。北朝鮮と中国の核を問わない核廃絶運動は無意味です。

残念ながらこの「力の均衡」がガッチリできあがってしまったために、現実的にできることは少なく、お互いに核兵器を減らしていこうとする核兵器削減交渉や、新たな核兵器保有国をなくすことていどしかできません。

日本は中国、ロシア、北朝鮮の核ミサイルの標的となっているが故に、これを防ぐためには米国の核の拡大抑止に依存さぜるを得ません。他に選択肢がないからです。

「核の拡大抑止」とは聞き慣れない言葉ですが、自国に対する核攻撃を抑止することを「基本抑止」といい、同盟国に対する核攻撃を抑止することを拡大抑止と呼びます。一般的には「核の傘」と呼んでいます。

この核の傘をはずせば、中国や北は大いに喜ぶでしょう。核ミサイルで脅迫しながら、いつでも通常兵器で侵攻することが可能になるからです。

侵攻せずとも、自国の主張に絶対服従させることも可能となります。

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ただし、日本は「倫理戦としての核廃絶」をしています。 安倍氏はオバマを広島に訪問させることを大きな政治課題としていました。

その理由は日米和解の儀式でもあったと同時に、日本が改めて「被爆国」であることを世界にアピールしたとも言えます。

日本が意識的に「唯一の被爆国」という外交カードを、日本に対して核ミサイルを向けている核保有国に突きつけたとも見ることが出来ます。

そのために、核兵器禁止条約には参加しなくとも、(それ以前に「核の傘」に依存する国は加入できませんが)、核廃絶を提唱し続ける国として自らを位置づけたのです。

これも道義的カードを使った立派な間接的核抑止力です。

比較衡量してみましょう。

米国の核に拡大抑止してもらうことの道義的後ろめたさと、現実に米国の核の拡大抑止によって核ミサイルの脅威から守られていることの、どちらが重いのか天秤にかけてみることです。

天秤は二つの重りしか乗りません。他国への絶対的服従か、さもなくば米国との同盟か、です。

双方イヤならば、米国との同盟関係を精算して、独自核武装という方法もないわけではありませんが、その代償は想像を越えて巨大だと申し上げておきましょう。

2017年12月15日 (金)

広島高裁判決に従えばすべての科学文明は全否定されてしまう

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去る12月13日、伊方原発3号機の運転差し止めが広島高裁から出ました。 

またかい、というところです。訴えた市民団体側は「歴史的転換点」などと言っていますが、どうなりますか。 

野々上裁判長は判決でこんなことを言っています。

「熊本県の阿蘇での大規模噴火が起きた際に、原発がおよそ130kmの距離にある。およそ9万年前の阿蘇カルデラでの噴火で火砕流が原発の敷地内に到達した可能性が小さいとは言えないとして、立地に適さない」

私は福井地裁・樋口裁判官や大津地裁・山本裁判官の判決などを読んできましたが、もういいかげんにしてくれという気分です。 
関連記事
樋口判決 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-c2ac.html
山本判決http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-32fe.html

そもそもこのような国のエネルギー政策を、司法が裁くこと自体がナンセンスです。 

司法は短時間の審理で、規制委の専門家の意見を否定したわけですが、どこでそんな素晴らしい知見を民事専門の野々上裁判長閣下がいつ蓄積されておられたのでしょうか。

「歴史的転換点」と市民団体側は言っていますが、なにも変わりません。 

あくまでも広島高裁判決は「司法としての判断」であって、国の「政府としての判断」でもなければ、再稼働審査の権限を持つ「規制委の判断」でもないからです。

司法に 国の判断も規制委員会の判断も超越できる権限を、一体誰が与えたのでしょうか。

高裁レベルでひっくり返ったというだけのことで、メディアはワーワーいいなさんな。 

当然のこととして四国電力の方はこれを不服として広島高裁に異議申し立てをするでしょう。 

そして決定の効力を一時的に止めるために、執行停止にも取りかかるはずです。 

つまり広島高裁を舞台にして2回戦があるわけですし、今回差し止めを命じた野々上裁判長は今月下旬に定年退官となりますから、次は別の裁判長が審理を担当するので、どのような判決になるのか、むしろそちらを注目しましょう。 

今回の野々上判決はいわば、隕石がぶつかったら原発は壊れるぞというようなもので、9万年前の阿蘇のカルデラから火砕流が流れて、海を渡って130㎞伊方原発に達するということを述べています。 

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正直、論評する気にもなりません。このていどのレベルなら地震による破壊を言った山本判決のほうがまだ科学的香りが残っていました。

いいですか、そもそも、福島第1原発の事故はどうして起きたのでしょうか。そこからはっきりさせましょう。

何万年に一回あるかないか誰にも分からない、広島高裁のいう「カルデラの大噴火」なのか、あるいは大津地裁がいう「耐震基準を上回った大地震によって破壊された」のか、どちらなんでしょう。

どちらでもありません。これについては、とっくに規制委が結論を出しています。

福島第1は巨大地震に耐えましたが、その後の津波による配電盤の水没によって全交流電源ブラックアウトに陥りました。これが事故原因です。

かつては、唯一国会事故調のみが、津波以前の地震での破損を「匂わせている」に止まっていましたが、今は否定されています。

福島第1の事故原因に対して溝口判決のように安全性に対する異論を唱えるならまだ納得できますが、まったく別次元の9万年前のAso4を持ち出すこと自体がぶっ飛んでいます。

まだ福島第1事故の時に言われた貞観地震(869年)のほうが、はるかにリアリティがありました。せいぜい千年に一度ですからね。

それを言うに事欠いて9万年前ときたもんだ。もう私、開いた口が塞がりませんでしたよ。

万年単位で危険性判定ができるのなら、地上にあるすべてが「危険」です。

Aso4は阿蘇山最後の破局噴火と呼ばれていて、現在の阿蘇山がAso4レベルの大噴火を起こす可能性は、かぎりなくゼロです。
破局噴火 - Wikipedia
阿蘇山 - Wikipedia

科学にゼロはありませんから、ありえないとは言いませんが、火山学者ですぐに起きるという人がいたら、そうとうにレアな人でしょう。

では、もしAso4レベルの大噴火が起きたらどうなるのか、ラフ・シナリオを描いてみましょう。

火砕流によって地元の熊本はおろか、大分、長崎、佐賀、宮崎県北半分、山口県南端は短時間で全滅します。

時速200㎞の火砕流から、この範囲の住民1千万人は逃げる術すらないでしょう。

Aso4
九州全域はほぼ人が住めなくなり、降灰は本州、四国、北海道、朝鮮半島にまで達します。

判決がいうように、火砕流は伊方にも海を渡って怒濤のように押し寄せるでしょうから、伊方原発はたちまちその下に埋没してしまって、ちょうどいい「石棺」となって放射能を遮蔽してくれるかもしれません。(もちろん悪い冗談です)

Aso4の降灰は40㎝にも及び、沖縄、鹿児島、宮崎南部を除いて、北海道においても地層として今でも地層年代測定の目安になっています。

Aso4は日本列島全部を火山灰に埋没させてしまったのです。

下の絵は1783年の浅間山の噴火を描いたものですが、Aso4よりはるかに小規模でしたが、江戸時代の3大飢饉の1つ天明の大飢饉が引き起こされました。

「夏」がなくなったからです。

Photo_3http://blog.livedoor.jp/nara_suimeishi/archives/51782666.html

特に、東北の南部藩、津軽藩の冷害と旱魃、それにより引き起こされた飢饉は地獄を思わせるような悲惨な状況だったことが記録されています。

この降灰は民家や工場、公共施設の屋根に積もり、やがてラハール(土石流)となって倒壊させます。
土石流 - Wikipedia

交通インフラは寸断され、自動車は通行すらできなくなるでしょう。航空機は降灰をエンジン・タービンに吸い込むとストール(失速)を起こしますから、陸も空も交通機関は壊滅状態になります。

かつての東日本大震災は関東東部と東北地域に限定されていましたが、これを遥かに凌ぐ規模で、しかも全国規模で引き起こされ、工業、農業共に致命的打撃を受けます。

この時点で、日本経済は死滅します。経済だけに止まらず、政府機能も急速に失われていきます。

そして短期間にもはや居住することすら不可能な列島に変貌するでしょう。

しかしこれは序幕に過ぎません。第2幕はここから始まります。

降灰は成層圏を突き抜けてジェット気流に乗って地球を覆います。北半球全体は太陽光を遮断されて、急速に寒冷化現象が引き起こされます。これが「火山の冬」です。
火山の冬 - Wikipedia

おそらく年平均3度の寒冷化が起きて、最短で10年間、北半球の人間は夏をかんじることはないでしょう。

北海道と本州は凍結して歩いて通れることになり、カラフトとシベリアも繋がることでしょう。北半球の農業は死滅し、信じがたい規模での食料危機と飢餓が訪れます。

日本列島は人が住めない地域となり、日本民族は凍結した海を渡って中国か朝鮮半島に難民としてさまよい出るでしょう。

日本民族のおそらく千年以上続くであろうディアスポラの始まりです。

このようにして日本政府のみならず、民族そのものが事実上消滅します。

いやそれどころか、日本人のみならず人類の生存そのものが重大な危機にさらされます。

これが野々上裁判長が想定する、Aso4が今起きたとしたらというシナリオです。

野々上裁判長閣下、どうしてこのような極端な想定をするのでしょうか。

日本全土が原発もなにもあったもんではない壊滅状況に立ち至るような、極端な状態を想定するあなたの常識を疑います。

このような極端な想定は、「ゴジラが上陸したら原発が耐えられるか」というようなものです。

野々上裁判長閣下、あなたは映画『ボルケーノ』や『2012』の見すぎです。

Photo_2映画『ボルケーノ』

ちなみに、『ボルケーノ』はNASAが選んだ「ワーストありえない映画」に堂々4位に輝いています。https://matome.naver.jp/odai/2129431251731967001

こんな極端な想定をしたら、自動車や鉄道、船、航空機など一切の安全性は「ない」ということになります。

阿蘇が大噴火する可能性が9万年前にあったからという理由で、自動車を使用することを禁じる判決をだすようなものです。

したがって、原発に限らずすべての科学文明が全否定されてしまいます。これはそんな司法の仮面を被った流言蜚語の類の判決なのです。

規制委の更田(ふけた)豊志委員長は判決の後の会見でこう述べています。(産経12月13日)

「基準やガイドは不変のものではなく、科学的・技術的知見に基づき常に改善を考えている。基準やガイドは不変のものではなく、科学的・技術的知見に基づき常に改善を考えている」

また、判決が約9万年前の阿蘇山の噴火で、火砕流が原発敷地内まで到達した可能性を指摘したことに対してもこう答えています。

「四国電はこの噴火について、火砕流の堆積物が山口県南部にまで広がっているものの、四国には達していないとしており、規制委も審査でこれを妥当と確認していた。
 規制委は「火山影響評価ガイド」と呼ばれる内規を基に審査を行っており、原発の160キロ圏内で将来活動する可能性がある火山が対象となる。原発の稼働期間に噴火の可能性が低くても、過去に火砕流が原発のある場所まで到達したと考えられる火山は、電力会社に監視を義務付ける」(前掲)

実際に規制委11月29日、火山の噴火「規制委は原発周辺の火山が大規模噴火した際、設備や機器が機能を維持できる火山灰濃度の基準の試算方法を変更し、実質的に濃度基準を引き上げることを決めた」(前掲)改善をおこなっています。

大滅亡がお好きとみえる野々上裁判長閣下には、更田規制委員長の科学者らしい淡々とした言葉をお送りしましょう。

「われわれがどのような判断をしても、納得しない方は常にいる。私たちは私たちで規制の役割を果たすのみだ」

※大幅に加筆しました。(午後4時)

2017年12月14日 (木)

ティラーソンの「前提なしの会談」発言の裏側にあるものとは

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米国の北朝鮮(以下北)に対する交渉方針が、正式に切り替わったようです。
 

このレックス・ティラーソンの「前提なしの会談」発言と前後して、トランプがエルサレムを首都と認める「宣言文」を出しています。 

ティラーソンは前提条件なしの北朝鮮(以下北)との交渉に応じると言明しました。
※NSCが否定しました。追記をご覧ください。

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「ティラーソン米国務長官は12日、ワシントンで講演し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮との対話に関し、『前提条件なしで北朝鮮との最初の会議を開く用意がある』と述べた。米国はこれまで北朝鮮が非核化の意思を示すことを対話の前提としてきたが、ティラーソン氏は「非現実的だ」とし、トランプ大統領も現実的な判断をしていると強調した。
 米朝対話の議題について、ティラーソン氏は『天気の話でもいい』としたが、最初は、今後の協議の行程を決めるものとする意向を示した。ただ、『協議中に(核・ミサイル)装置を実験すれば協議は厳しくなる。静かな期間が必要だ』とし、核実験や弾道ミサイル発射の中止を求めた」(産経12月13日)

別稿で詳述しますが、米国は明らかに「封じ込め」路線にシフトしました。米国は北の脅威度が低いと読んだのです。 

だから軍事力行使の必要はなく、外交的手段で解決可能だと考えたのでしょう。 

現時点で北に対して軍事力行使をしてしまえば、中国と宥和を図ることが前提な以上、代償として中国の南シナ海での軍事拡張を容認するはめになりかねません。

スティーブン・バノンは調子がおかしい人物でしたが、ことこの読みに関してはまともで、一貫して北より中国が脅威だと主張して、ホワイトハウスを追われました。

また、中東での新たな危機的状況にも対応不可能になります。

また、朝鮮半島に全戦力を投入してしまえば、いつ起きてもおかしくないと言われるロシアのバルト諸国への侵攻にも対処不能になります。 

結局、米国にとって北相手の戦争などなにひとついいことはないのです。地上軍を入れて泥沼にでもなれば目も当てられませんしね。

このことに関しては、実は日本も同様です。軍事オプションをとられたら、弾道ミサイルの数発は覚悟すべきですし、日本経済は大打撃を受けます。 

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なるほど、北は核保有国に向けて、進行表に沿って着々と進んでいるかに見えます。 

北が望むものは「米国を話し合いの場に引き出す」こと一般にあるのではありません。

米国と相互確証破壊(もどき)の関係を結び、米国の介入を排除して、あくまで「民族の内部問題」としてムン・ジェインの登場で熟柿同然となった韓国との統一を果たすことです。 

そこまではいかに民が飢えようと、石油が底をつこうと眼をつぶる、国連の言うことなど馬耳東風、宗主国づらした中国の特使など追い返し、一気に米国に「核戦力保有国」だと認めさせるところまで突っ走るぞ、と考えているはずです。 

ですから、その一歩手前で止めてしまっては、一切が台無しになる、たぶん正恩はそう思っています。

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ではこの正恩の言うことは、ほんとうなのでしょうか? 

もちろん、フェークです。それも真実が8割くらいの嘘ですから、困るのです。 

全部嘘ならすぐバレるのに、真実と嘘をまぜこぜにしていちびるから始末が悪いのです。

米国はノース38など読むと、冷静に評価していると思いますが、そもそも北の核戦略技術は初歩的段階に止まっています。

比喩的にいえば、米露英仏の核戦力技術が高級スポーツカーとするなら、中国のそれは中古車、印パは軽自動車、北などはママチャリか電動アシストつきチャリに進化したていどの水準にすぎません。 

たとえば、核ミサイルの核心技術であるロケットエンジンは、ロシアのRD250という70年代の旧式を密輸入して焼き直したにすぎません。 

焼き直し技術で打ち上げたとしても、かんじんの再突入に際してマッハ24、表面温度7000度という超高温に耐えられなかったのは、バラバラになって墜落しているのが民間旅客機のパイロットに目撃さたことでわかってしまいました。 

バラバラになったことを多弾頭化だと考えて、必要以上に怯える必要はありません。 

そもそも再突入ができない弾道ミサイルなど、単なる巨大打ち上げ花火にすぎないのですから。 

Photo_4火星15の移動式発射装置

正恩は移動式発射装置が新型なのが得意そうでしたが、小川和久氏によればICBMクラスのものをあのような移動式で運ぶとなると随行車両だけで十数台となってしまい、そんな大名行列で静々と運んでいたら、たちまち警戒衛星に探知されてしまいます。

今回もかなり前から探知されていて、発射時期まで分かっていたようです。

また多弾頭化や米国に到達するICBM完成のためには、核弾頭の小型化が必須ですが、成功していないと見るべきです。 

成功したと証明したいなら、北は率先して弾頭重量を公表しているはずですし、おそらく前回の火星15は弾頭重量を軽くして飛距離を伸ばしたにすぎないと、軍事専門家は見ています。 

というのは、小型化の達成のためには核実験が必要ですが、この間できていないからです。 

プンゲリ(豊渓里)核実験場は、度重なる酷使で坑道が崩落を起こして使用不能の状態だと観測されています。 

崩落などしていないと北は言っていますが、ならばどうして新たな坑道を11月から12月にかけて掘り進めているのか説明がつきません。 

12月9日にはプンゲリ周辺を震源地とするM3.0の「自然地震」がありましたが、またどこかの坑道が崩落した可能性すらあります。 

また、前回の核実験は水爆実験をしたと称していますが、いま北の核技術に必要なことは水爆のような時代錯誤の巨大化ではなく、むしろ使える700㎏以下の小型化なのです。

小型化ができないので、水爆でめくらましをしているのです。 

したがってあくまで現時点でとお断りしておきますが、北が正規の弾頭重量を搭載し、燃料を満載して発射した場合、米本土、グアムはおろか日本にすら届くかも怪しいものだと思われます。 

このように見てくると、北が「核保有国」を宣言したのは、ただの北特有の政治プロパガンダ、いわば「吹かし」にすぎません。 

米国は、既に北の核の脅威度は低いと見始めています。 

でなければ、この時期にトランプがエルサレム首都認知などをするわけがありません。 

池内恵東大准教授は、昨日のラジオ『ザ ボイス』の中で、新たなインティファーダは起きないだろう、中東諸国は口では非難してもかつてのように一枚岩でイスラエルと敵対できるような国内状況ではないと述べられていました。

Photo_32012年のインティファーダ 

おそらく池内氏と似た観測を前提にして、トランプはエルサレム首都認知をしたと考えられます。 

米国の真の敵はイランです。今回のことでインティファーダを叫んでロケット弾を発射しているのはしょせんハマースだけで、他の中東諸国がいちばんおそれるのは自国内の反乱です。 

ですから、一時は民衆にガス抜きさせてやっても、かつてのような大規模デモや騒乱を起こすことは許さないでしょう。 

しかもハマースがイランの紐付きだというのは有名である以上、サウジとその同盟諸国は断じて彼らを支援することはしないはずです。 

したがって、中東は今回のエルサレム首都認知によって、大きく動揺することは考えにくいと、池内氏は見ます。 

もし、動くとすればそれはあくまでも、<サウジ+同盟国VSイラン>の構図の内であって、かつてのような<イスラエルVSすべてのアラブ諸国>という図式ではありません。 

今回この新たな図式で戦端が開かれた場合、イスラエルはサウジに対して好意的中立を保ち、米国はサウジを支援します。 

トランプの今回の宣言は、米国は同盟国を見捨てないというネバー・デカップリング(切り捨てない)を世界に示したものに思えます。

とするなら、なおのこと北を協議の場に引きずり出して、「封じ込め」て檻に入れておかねばなりません。

世界は日本人が見るように、北だけを軸にして回っているわけではないのです。

■追記

おいおいです。アップした後に、こんなニュースが入ってきました。ティラーソンの解任覚悟の最後ッ屁でしょうか。(午後5時)

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「ティラーソン米国務長官が核・ミサイル開発を続ける北朝鮮と前提条件なしに対話を行う用意があると発言したことについて、ホワイトハウス当局者は13日、「トランプ政権の北朝鮮政策に変更はない」と本紙に語った。
 「北朝鮮がまず挑発行為をやめ、非核化に向けた誠実で意味ある措置を講じなければならない」とし、ティラーソン氏の発言を軌道修正した。
 同当局者は「朝鮮半島を非核化する目的で、北朝鮮と対話する可能性についてはオープンだ」と述べる一方、北朝鮮が11月29日に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射したことを挙げ、「今は明らかに(対話の)時期ではない」と話した。
 その上で「北朝鮮が根本的に態度を改めるまで対話に応じないことで政権内は一致している」と強調した」(読売2017年12月14日 11時06分)

 

 

2017年12月13日 (水)

NHKの「隠し田」としての子会社群

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NHKが受信料の負担減を言い出しました。

「NHKは12日の経営委員会で、受信料の負担軽減策を検討する方針を固めた。一律値下げではなく、経済的に支払いが困難な視聴者が対象になるもようだ。2018年度からの次期3カ年計画に盛り込む」(時事12月13日)

こういうセコイところが、たまりませんなぁ。 

NHKがこんな貧乏人にはちょっとまけてやってもよいぞという徳政令を出した理由は、昨年度の決算で余剰金がまたまた大幅に積み上がってしまったからです。

「NHKは9日、2016年度決算の速報を発表した。受信料収入は前年度比144億円増の6769億円となり、3年連続で過去最高を更新した。事業収入全体では同205億円増の7073億円、収入から支出を差し引いた事業収支差金は同7億円減で280億円の黒字となった。黒字は1990年度から27年連続」(毎日2017年5月10日)

「余剰金が過去最高」ということは、取りすぎたということです。それを免除対象をちょっと増やす、それも小学校が対象というのですから黒光するような吝嗇ぶりです。

ならば本来は、取りすぎた分を視聴者に還元すればいいだけのことです。

実際、籾井前会長は、それをやろうとしました。

昨日もふれましたが、昨年11月、籾井勝人前会長は、「視聴者に返すのが当然」(朝日2017年11月28日)として地上契約で月額1260円を今年10月から50円ていど値下げすることを提案しました。

しかし、経営委員の大半が反対したためにあえなく頓挫。自らもその座を追われることになります。

その旗頭に立って「時期尚早」として値下げ反対を唱えたのが、現会長の上田良一氏です。

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上田氏が唱えていたのが、この生活保護受給給者や小中学校で児童生徒用テレビなどに限定した減免措置でした。

当時の経営委員会内では、「一度下げれば、視聴者の反発もあり値上げはできなくなる。別の形での還元が免除の拡充だった」(朝日同上)という意見が大勢を占めたそうで、彼らに一般市場の感覚自体が欠落しているのかわかります。http://www.asahi.com/articles/ASKCN52CZKCNUCLV00G.html?iref=pc_rellink

受信料はコンテンツ提供の対価として支払われるもので、NHKオンラインのようにコンテンツごとに切り売りして商品市場の原則に従うべきなのです。

見もしないものを受信機があれば支払わせるという、まるで全体主義共産国家のようなことをするからおかしくなります。

いわば朝日新聞をポストがあれば、強制的に全国民から購読料3千円なにがしを徴集するようなものです。

新聞ならありえないでしょう。ならばテレビも例外ではないのすよ。

このような黙っていても金をふんだくれるという、市場原理に背いた怠惰なシステムを作れば、絶対的に腐敗します。

受信料が下がったまま固定化されてしまうのが恐ろしいならば、一般企業なみの経営努力をして経費削減に務めればいいはずです。

入社7,8年の役つきなしの30代ペーペーの年棒が700万円弱などという、超高給を少しカットするだけで多少は違うはずです。

山路氏から「人件費だけで、海保全体の予算よりも多い」とのコメントをいただいたので調べてみました。

現在は尖閣の緊張で増額されていますが、海保は2012年度は、全部の人件費、巡視艇からヘリなどの装備費を入れてたった1千732億円でした。

また海保の人員は1万2636人です。

一方、同年度のNHKの職員数は1万354人、人件費だけで1千819億円でした。わ、ははですな。

連日のように侵入する中国海警や違法漁船と危険を冒して取り締まりにあたっている海保の予算総額は、なんとNHKの人件費より少ないのです(号泣)。

Photo_5NHKエンタープライズ ウィキ

もしNHKが本気で経営環境を見直したいのなら、丸投げをしているNHKエンタープライズ(NEP)との関係を見直して、自社制作を増やせばいいだけです。

そもそも、NHKは放送業界最大の自前の放送設備や番組制作のリソースを持っています。

そのうえに全国すべての県にまたがった放送局もあるわけです。

なぜわざわざこの巨大な自社資産を使わないで、下請けのNEPに出す必要があるのでしょうか。

このNEPは大変な売り上げを上げている超優良企業です。NHKの名はかぶっていますが、ただの民間会社にすぎません。

このNEPも2015年度売り上げが544億3175万円で、その6割が番組制作費としてNHKから支払われています。

このようなNEPに渡った番組制作費用が正しく使われたか否かについて、国会は監査することができません。

なぜなら、NHK本体は「公共放送」ですから、国民の監査が可能ですが、NEPはただの民間企業ですので、監査の手が及ばないのです。

一般企業ならば一般株主の監査要求ができますが、なにぶん株主はNHKが独占しています。

つまり、NHKは経費の80.7%を占める番組制作・発送経費の多くを、監査不可能な民間会社に出しているのです。

これで「公共放送」とは、とんだ言い草ではありませんか。

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http://www.dempa-times.co.jp/housou/2017/0120-01.h...

つまり、NHKは自社内部に余剰金として毎年280億円もの金を溜め込み、そのうえに営利目的のNEPを作って、そこをもうひとつの「隠し田」にしています。
隠田 - Wikipedia

「隠し田」は領主からの年貢を避けるために農民が秘かに作った田んぼのことですが、NHKは領主である国の眼、つまりは監査から逃れるためにNEPのような「隠し田」を増やしていったのです。

またこのNEPはNHKの天下りが大半を占める意味でも、NHKにとって二重に美味しい「隠し田」なのです。

現在の放送業界は、視聴率最下位に転落したフジを見ればわかるように、制作コストの切り詰めから、さらに下請けの番組会社を圧迫することでコンテンツがいま以上に貧しくなるという悪循環に陥っています。

しかしこのNEPという番組制作会社のみは、バラ色の未来が拡がっています。

説明する必要もないでしょうが、親方NHKが税金まがいの視聴料徴集が可能で、それを気前よく下請けに丸投げしてくれるのですから、永久に鉄のお茶碗で飯がくえるからです。

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ちなみに、NEPはビデオやキャラクター商品の販売までやっていますから、「公共放送」が作ったコンテンツの二次利用で二度おいしい思いをすることすら可能です。

また、すこしでも儲けを増やそうとして韓国から格安の韓流ドラマを仕入れるという悪習を放送業界に取り入れたのも、このNEPでした。

2004年の『冬のソナタ』に始まり、わけのわからない朝鮮王朝ものをはやらせたのが、この「公共放送」の独占的下請けでした。

「公共放送」を自称するならば、日本の優秀な演出家や俳優を起用すべきなのに、このていたらくです。

フジはこれを模倣したあげく、ドラマ制作力を喪失して今の体たらくとなったのはご存じのとおりです。

NEPはこの版権を親会社NHKに独占的に売り込み、そこでもまた膨大な収益を得ました。

このような下請けは13社にも登り、その中にはNHKアイテックという発送設備整備会社まで含まれています。
NHKアイテック - Wikipedia

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ここも余剰金を154億円積み上げていています。

この会社の腐敗ぶりもなかなかで、2人で2億(!)という巨額着服事件まで発生しています。

それにしても作るのは子会社、電波を発送し、保守点検するのも子会社、では親会社は一体なにをする所なのでしょうか。

NHKは「公共放送」であるが故に、格安の価格で電波帯を多数押さえ、視聴料を強制的に徴集する権利を得ています。

テレビ゙局が支払っている電波利用料は、携帯電話会社の実に13分の1という破格な価格に据え置かれているのも、この「公共性」が認められているからです。

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しかし「公共性」の内実はご覧のとおりです。

会計検査院は2015年度のNHKに対する監査で、NEPのようなNHK子会社13社の利益剰余金総額を948億円あるとし、NHKに対してこの剰余金の性格を明瞭にすべきであるとの監査報告を出しています。

NHKが既に健全な「公共放送」としての性格を逸脱し、ただの官許独占企業、それも腐敗しきったそれになっていることは明らかです。

 

 

2017年12月12日 (火)

NHK 「官」の如く尊大にして非効率、「民」の如く貪欲にして意地汚なし

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NHkについてもう少し考えてみましょう。 

NHKはよく勘違いされていますが、「国営放送」ではありません。 

これについて、最高裁寺田判決はこう述べています。

「(NHK受信料は)NHKの公共的性格を特徴づけ、特定の個人、団体または国家機関などから財政面での支配や影響が及ばないようにしたものだ」

最高裁判決の理屈は、国家統制や個人の財政的支配を受けない「公共性」を守るために、受信料の平等な国民負担を求めることは合憲だということです。 

つまり、NHKは放送法によって許された電波受像機を持っている国民から、分け隔てなく集める受信料で成り立つ「特殊法人」なのです。 

今どきテレビを持っていない人は捜した方が早いでしょうから、国民すべてから徴集することをしておきながら、「税金」ではないというところが味噌です。 

国家とは一線を画しているぞ、とNHKはくどいほど繰り返しています。
公共放送は必要なのか|NHKよくある質問集 - NHKオンライン
http://www.nhk.or.jp/faq-corner/1nhk/01.html
 

その理由を国営となると、財政支配を受けて自律性を失うからだと説明しています。 

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なんともヌエ的な存在ですね。

だって、国営でないのですから、職員は公務員ではないので国籍条項は問われませんし、忠誠義務も課されません。 

だから妙に中国寄りの戦争ドキュメンタリーや慰安婦報道が放映され、朝日と見紛うような政権バッシングをするのがわがNHKです。

そういえは韓流ドラマを初めに日本で流行らせたのも、このNHKでしたっけね。

まぁ、別に民放ならそれでいいのです。放送法がなんと言おうと、しょせん民間会社の商品カラーのようなもので,見なけりゃいいだけのことですからね。

しかし国民に等しく負担を求め、「公共の福祉」をうたっている放送局だと言われますよ、ということです。

また公務員でないために、公務員給与体系とは関係ない民間人としての待遇が保証されています。

つまりは権利は国並、義務は民間並なのです。 

紅白歌合戦が典型ですが、民放のようにスポンサー、大手代理店や芸能事務所に頭を下げる必要もないという大名商売が可能でした。 

この背景には、なんの経営努力をせずとも税金まがいに入ってくる超安定した財源、視聴率など無視できる「公共性」があったはずです。 

すると当然生れるのが、放漫経営です。 

NHK職員の年間基本給は、35歳で675万(16年度)、管理職で933万~1202万、そこに手厚い各種手当て、福利厚生手当てが積み上げられていきます。

この年収700~800万円 階層は、サラリーマン階層でわずか9%ていどしか存在しない富裕階層です。

NHK職員は30代で、ほぼ全員が富裕層に属してしまうというわけです。

一方地方局採用の契約アナは、せいぜいが150万~200万ていどといわれていますから、同じ放送局内部でも大変な格差社会です。 

番組制作費は、俗に民放の2倍以上、ときには一桁違うとまでいわれています。

ある地方局の現役記者から聞いたことがありますが、ある海外取材でNHKチームと一緒になったそうです。

地方民放チームは2名、それも泣きついてつけてもらったそうですが、NHKはトラックと四駆2台、日本人10名、地方雇いがその倍という大部隊だったそうです。

ですから、NHKに先行されてしまうと宿は一杯、食料は買い占められ、街の諸物価高騰という悲惨さだったそうで、泊まるところがなくなったこともあったとこぼしていました。

NHKが通った後は、ペンペン草もはえないとは彼の述懐です。

では、この日本人スタッフがみんなNHKの正規職員かといえば怪しいものです。

というのは、NHKは番組のかなり部分を、NHKエンタープライズ、NHKグローバルメディアサービスなど13の連結決算会社に下請けさせているからです。

とくにNHKエンタープライズ(NEP)は元請けとして、そこから多くの孫請け、曾孫受けに下請けさせています。
NHKエンタープライズ - Wikipedia

これが国や地方自治体なら公開入札すべきところを、下請けに丸投げしているわけです。

このNEPは株式会社でただの一民間企業にすぎませんが、幹部社員は全員NHKの天下りによって構成されています。

NEPの正規従業員497人中、NHK等からの出向者は113人(2014年度)にも登ります

本来、このようなNHKに寄生する関連会社の肥大化は、「公共性」を阻害する要因となるはずですが、それを監視すべき経営委員がお飾りになってしまっています。

そもそも経営委員とは、通常の民間会社でいえば監査役のように経営が正しく執行されているかを監視することが仕事なはずですが、そこから会長を選ぶ仕組み自体が矛盾しています。

このような経営形態は、国にも民間にもないもので、このNHKという「官」でも「民」でもない「特殊法人」固有の体質から生れたものです。

たとえば籾井勝人前会長が解任された理由を、ご存じでしょうか。

2016年11月に籾井氏の受信料50円値下げの提案が却下され、引責辞任に追い込まれたのです。

Photo_2籾井前会長

なぜ籾井氏はわずか50円の値下げで解任されたのでしょうか。それはNHKが隠しておきたい巨額余剰金問題に触れたからです。

NHKは受信料だけで、実に年間400億円以上の余剰金を積み上げています。つまり、あまりに金が潤沢すぎてザブザブ使っても使い切れなかったのです。

当然内部的には経営委員や、国会で追及されてしかるべきことでした。

そこでNHKが考えた会計処理が、これをNHK放送センターの建て替え費用組み立て金として処理するやり口だったわけです。

ところがなにせ毎年400億円超も積み重なっていきますから、2015年末時点で積み上がってしまった余剰金総額がなんと約1千627億円というのですから、ハンパではありません。

建て替え費用としては充分以上に溜まってしまったわけで、銀行からの借り入れゼロで本社建て替えができるという民間企業には夢のような状況に立ち至ったわけです。

この1千700億円という建て替え予算自体も、民放本社の3倍以上といわれる法外に贅沢なものなのですから、NHKの骨の髄まで染みついた大名意識が分かろうというものです。

ならば2015年末の時点で、万歳三唱して本社建て替えに取りかかり、次年度からは受信料の値下げをしてしかるべきでした。

これが非営利の特殊法人ならば、競争にさらされない特権を享受できる代償として、当然の視聴者たる国民への義務です。

ところがNHKはしませんでした。

今度考えた理屈は、4K、8K投資が残っているから、というわけですが、これではただの民間会社の内部留保となんら変わりません。

本来、放送センター建て替えも、一般企業のように銀行からの融資を受けてするべきであって、そうすればとっくの昔に受信料値下げが実現したはずです。

籾井氏は経営者としてしごくあたりまえのことを提案したことが、命取りになりました。

まぁ、それを見ていた他のメディアも「アベポチが追い出された」とばかりに拍手せんばかりでしたがね。

このようにNHKは「官」と「民」のいいとこ取りをした結果、「官」の如く尊大で非効率であり、「民」の如く利益中心の意地汚さばかりが目立つメディアに堕落していったのです。

 

2017年12月11日 (月)

情報産業石器時代の放送法に縛られた最高裁判決

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最高裁は「視聴者がNHKを見ない自由」を認めなかったようです。 

それを伝えるNHKニュースです。

「6日の判決で、最高裁判所大法廷の寺田逸郎裁判長は、NHKの受信料について、「NHKの公共的性格を特徴づけ、特定の個人、団体または国家機関などから財政面での支配や影響が及ばないようにしたものだ。広く公平に負担を求めることによってNHKが放送を受信できる人たち全体に支えられていることを示している」と指摘しました。
そのうえで、放送法の規定が憲法に違反するかどうかについて、「受信料の仕組みは憲法の保障する表現の自由のもとで国民の知る権利を充たすために採用された制度で、その目的にかなう合理的なものと解釈され、立法の裁量の範囲内にある」として、最高裁として初めて憲法に違反しないという判断を示しました。
また、受信契約に応じない人に対しては、NHKが契約の承諾を求める裁判を起こして判決が確定した時に契約が成立し、支払いの義務はテレビなどを設置した時までさかのぼって生じるという判断も示しました」(12月6日NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171206/k10011248431000.html

 

 

2017年12月10日 (日)

日曜写真館 光の衣装をまとった花たち

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2017年12月 9日 (土)

トランプ演説は従来の米国政府の既定路線からはずれていない

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トランプがアラブのインティファーダ(反乱)に燃料を投下してしまったようです。当然、予測がついた事態です。 

いったん火をつけてしまうと、互いに行くところまで行ってしまう傾向があります。 

過激なことをいう者のほうが、穏健でパランスがいいことをいう者の声よりはるかに大きいために、多くの支持を集めてしまうのです。困ったことですが、よくあることです。 

イスラエルを海に叩き落とすと言っていたハマスと、イスラエルとの共存関係を模索してきたパレスチナ自治政府に共通の敵を与えてしまったことになります。 

ハマスはまたぞろイスラエルにロケット弾テロを行い、アイアンドームで迎撃されました。
アイアンドーム - Wikipedia

PhotoBBC  http://www.bbc.com/japanese/42275961

一方、ネタニヤフ首相は、米国の「喜びすぎないように」という忠告を無視して、こんなことを言い出しました。 

「トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことについて、同国のネタニヤフ首相は7日、多くの国々が今後、米国に追随するだろうとの見通しを示し、「(米国と)同様の認定に向け、すでに他国と接触している」と明らかにした。具体的な国名は不明。(産経12月7日) 

お止めください、と申し上げたいですね。米国に追随すれば、その国も標的となり、またテロを世界にばらまくことになります。

さて、肝心のトランプがなにを言っていたのか、ほとんど報じられていないと思います。 

トランプのやり方が例の調子だったために、言っている内容が無視されています。 

トランプがイスラエルの肩を持っているのは確かですが、そう過激で突拍子もないことを言っているわけではなさそうです。 

まず、エルサレムがイスラエルの首都であるという認識自体は、米国政界において先日も書いたように特に珍しいものではありません。 むしろ常識でしょう。

1995年に議会の過半数で、「エルサレム大使館移転法」という形で法制化されています。ただ歴代大統領が署名しなかっただけです。 

トランプは決められたことをやらないのは、現実から眼を背けているのだと非難しています。 

Photo_2http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/12/...

大統領演説のこの部分です。
Transcript: Trump’s remarks on Jerusalem," The Washington Post (by Associated Press), December 6, 2017.
 

”In 1995, Congress adopted the Jerusalem Embassy Act urging the federal government to relocate the American Embassy to Jerusalem and to recognize that that city, and so importantly, is Israel’s capital. This act passed congress by an overwhelming bipartisan majority. And was reaffirmed by unanimous vote of the Senate only six months ago.
Yet, for over 20 years, every previous American president has exercised the law’s waiver, refusing to move the U.S. Embassy to Jerusalem or to recognize Jerusalem as Israel’s capital city. Presidents issued these waivers under the belief that delaying the recognition of Jerusalem would advance the cause of peace. ”

(意訳)
1995年、議会はエルサレムがイスラエル首都であることを認め、米国大使館を移転するエルサレム大使館法を採択した。この法律は圧倒的な超党派の過半数で議会を可決された。そして6か月前、上院の全会一致の投票によって再確認されいる。

しかし、20年以上にわたり、すべての米国大統領は、エルサレムに米国大使館を移動したり、イスラエルの首都としてエルサレムを認識することを拒否し、法律の行使を放棄してきた。
大統領たちはエルサレムの認識を遅らせることが、パレスチナ和平を進めるという信念で署名しなかったのだ」

 つまり、オレは決められたことをやる、いままでの大統領と違って現実に眼を背けないんだ、な、カッコイイだろうといいながら、実はつい先だって移転法の延期には署名していたわけです。 

池内恵・東大准教授が指摘するように、トランプの宣言には慎重に安全装置がいくつかかけられています。

「トランプは12月6日に署名した宣言文および演説でエルサレムを首都と認め、大使館のエルサレム移転の決意を表明したが、その直後に、1995年に議会が可決した「エルサレム大使館法」の適用を6カ月免除する大統領令にも署名している。
これは「エルサレム大使館法」の規定により、大統領は6カ月ごとに署名して大使館の移転を延期することができる。大使館移転をぶち上げて当選したトランプも、就任後の今年6月にすでに一度延期のための署名を行っていた」(Foresight中東通信12月8日)
 

つまりトランプはエルサレムを首都と認めた「だけ」であって、現実にエルサレムに大使館を移転するとは言っていないことになります。

また、トランプは「新しい大使館を建てるために建築家を雇う」とは言っているものの、肝心のどこに作るのか、いつまで作るかについては明言を避けました。

「新しい大使館を建てるため」と言っている以上、西エルサレムの総領事館に移転するわけでもないと思われるために、事実上移転先は決めていないようです。

果たして彼の任期中に移転できるのでしょうか。

Photo_3東エルサレムの神殿の丘頂上に建つ黄金のドーム。かつてこの場所に古代ヘブライ王国の神殿があった。

次に、池内氏が最大の懸念材料としていた東エルサレムの「ステータス・クオ」(現状維持)ですが、「当面は」維持すると宣言しています。

”In the meantime, the United States continues to support the status quo at Jerusalem's holy sites, including at the Temple Mount, also known as Haram al Sharif. Jerusalem is today -- and must remain -- a place where Jews pray at the Western Wall, where Christians walk the Stations of the Cross, and where Muslims worship at Al-Aqsa Mosque.”
”In the meantime, I call on all parties to maintain the status quo at Jerusalem’s holy sites including the Temple Mount, also known as Haram al-Sharif. ”

(池内氏訳) 「当面は、米国はエルサレムの聖地のステイタス・クオを支持する。聖地にはハラム・シャリーフとも呼ばれる神殿の丘を含む。エルサレムは今日、西壁でユダヤ人が祈り、十字架の通った道をキリスト教徒が歩き、アル=アクサー・モスクでムスリムが祈る場所であり、今後もそうあるべきである」
当面は、私はすべての当事者に、エルサレムの聖地のステイタス・クオを維持することを呼びかける。聖地には、ハラム・シャリーフとも呼ばれている神殿の丘を含む」
 

この「当面」という含みが気になりますが、トランプは複雑な3宗教の聖地が重なり合う東エルサレムの現状の均衡を崩すつもりはなく、むしろこの「ステータス・クオ」を維持することを当事者に呼びかけた「だけ」ということになります。

妥当な判断です。もしエルサレムの領有問題にまで、イスラエルの言い分に言質を与えてしまうと取り返しのつかないことになっていました。

簡単に説明すれば、イスラエルはエルサレム全域が、自国領土だと主張してきました。

これを現したイスラエル独特の表現が、「不可分で永遠の首都(indivisible and eternal capital)」という表現です。

「不可分」というのは、「東西エルサレムの線引きは認めない、全部オレのものだ」、という意味です。

米国の政治家でもこのイスラエルの枕詞を踏襲する人が多いのですが、トランプは宣言演説ではこの両方とも使用せず、ただ「エルサレム」とだけ表現しています。

それはこの宣言文のこの一節でわかるでしょう。枕詞なしで” Jerusalem ”とだけしか表現していません。

The specific boundaries of Israeli sovereignty in Jerusalem are subject to final status negotiations between the parties. The United States is not taking a position on boundaries or borders.”
”We are not taking a position of any final status issues including the specific boundaries of the Israeli sovereignty in Jerusalem or the resolution of contested borders. Those questions are up to the parties involved.”

(池内氏訳)「エルサレムでイスラエルの主権が及ぶ境界の特定は、当事者間の最終的地位交渉に委ねられる。米国は境界や国境について立場を取っていない」
「エルサレムでイスラエルの主権が及ぶ境界の特定についても、争われている国境の確定についても、我々は最終的地位の諸問題で立場を取っていません。これらは関係する当事者が決める課題です」

Photo_42017年05月23日トランプ米大統領とッバス・パレスチナ自治政府議長(23日、ヨルダン川西岸ベツレヘム)http://www.bbc.com/japanese/40011405

  • この部分はパレスチナ自治政府に対して言っている部分です。
  • ここでトランプは、米国は東西エルサレムには「境界」が存在し、それは未確定であり、それについて米国は関与しない、イスラエルとパレスチナ自治政府の二国間で協議すべきだと述べています。

    つまりトランプは、パレスチナ自治政府が東エルサレムを首都する可能性は残っているのだ、それの協議は「当事者同士」、すなわち二カ国でやって欲しい、とトランプは呼びかけていることになります。

    このように見てくると、いい意味でな~んだという気分になりますね。

    トランプの言い方は勇ましいですが、あくまでそれはトランプ節で威勢よくやるからにすぎません。

    宣言内容を精査すれば、以下のようなことを言っているにすぎず、それはいままで米国政府がさんざん言ってきたこととまったく一緒です。

    ニッキー・ヘイリー国連大使も、国連安保理でこのように明快に言い切っています。

    「エルサレムの主権の在り方についてはイスラエルとパレスチナが交渉で決めるものだ。アメリカはエルサレムの最終的な地位を決めるつもりはなく、持続的な和平合意の達成に力を尽くし続ける」(NHK12月9日)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171209/k10011252421000.html

    つまりはトランプは、「エルサレムがイスラエルの首都だ」と言明した「だけ」にすぎず、以下のことに要約できます。

    ①エルサレムがイスラエルの首都である。
    ②エルサレムへの大使館移転は時期を決めていない。
    ③東エルサレムは現状維持とする。
    ④エルサレムの境界線は未確定であって、二カ国間協議すべきである。

    というわけで、いまごろ在イスラエル米国大使は、アッバス議長と膝詰めで、こんなことを言ってイルノカしれません。

    「まぁまぁアッバス閣下、怒らないでよく宣言文を読んで下さいよ。うちの親分はハッタリ好きなもんで、大げさな言い方してあたしらも困るんですが、従来わが国政府が言ってきたことと変わりないですから、ご安心ください」

    一方、イスラエル政府には

    「調子に乗ってアラブと国際社会全体を敵に回さないようにって、大統領からの伝言です。うちの国は東エルサレムの領有なんか認めてませんからね」

    どっちも当たらずとも遠からずでしょう。

    ちなみに、トランプ演説のためか暴落した東証株価は、演説の中身を知って安心したかのように、一昨日半値戻し、さらには、昨日は全値戻しという展開となりました。

     

     

    2017年12月 8日 (金)

    異教徒はユダヤ教に改宗できるか?

    080

    アホンダラ1号さんの、「ユダヤ教徒になるのはあんがいカンタン」かどうかということをパン種にして、ユダヤ民族について少し考えてみます。 

    まず、ユダヤ教徒というのは「ユダヤ人」ということを指します。 

    したがって、イスラエル国籍とは関係なく、血統的に母親がユダヤ人であることを求められます。 

    キャッツ邦子さんという日系ユダヤ人女性の、『スカースデール村から』というブログを参考にしていくことにします。
    http://www.scarsdalemura-kara.com/kaishuu.htm 

    彼女はユダヤ人男性と結婚したのですが、彼女はアメリカ人と結婚したという意識であって、ユダヤ人と結婚したという意味をあまり考えていなかったようです。 

    子供が生れるまで四季折々のユダヤ教の儀式には参加していましたが、あまり関心がなかったそうです。 

    その夫が子供が生れて、3歳になった時とつぜん、「やっぱりユダヤ人のアイディンティティを教えないといかん」と言い出しました。 

    さてここからが、大変な道のりでした。 

    スカースデール村に越したことを機に、その土地のユダヤ教会(シナゴーグ)に行こうとするのですが、なんと2つの教会から拒否されてしまいます。 

    その理由は、「非教徒の母親から生まれた子供たちはユダヤ人ではないという理由」だったそうです。 

    はい、でてきました。これがユダヤ教の大原則のひとつである、「母親がユダヤ人でなければ、ユダヤ人とは呼ばない」です。 

    Photoディアスポラ 

    ユダヤ教はかつては異教徒と結婚すると、勘当した時代があったそうです。 

    それもただ出て行けではなく、葬式まで出して死んだと思うということまでしたのですからハンパないですね。 

    これには理由があります。 

    2000年前、ユダヤ民族はディアスポラとして父祖の地を追われ、諸国に離散していきました。
    ディアスポラ - Wikipedia
     

    ディアスポラとは「まき散らされた種」というヘブライ語ですが、現代の難民と違うのは故郷の地に二度と戻れない境涯になったということです。 

    ユダヤ民族の故郷の地とは、ユダヤ人が「カナン」と呼んだパレスチナです。
    パレスチナ - Wikipedia 

    この地に戻り再び離散したユダヤ民族が集まって、国家を作ろうとする運動のことをシオニズム運動といいます。
    シオニズム - Wikipedia

    いうまでもなく、その闘争の結果生れたユダヤ人国家が、今のイスラエルです。

    これを潰そうとする周囲のアラブ諸国との戦争が延々と続き、その和平の道として生れたのがオスロ合意ですが、別稿に譲ります。

    さて離散したユダヤ民族は西欧、東欧を中心にして定住していき、そこでユダヤ・コミュニティを作っていくわけですが、その結束の中心となったのがユダヤ教でした。
    ユダヤ教 - Wikipedia 

    ユダヤ教はアブラハム(ユダヤ民族の始祖)の宗教として、キリスト教と同じルーツをもちますが、大きな違いは、ユダヤ教には「布教」あるいは「宣教」という概念自体がないことです。 

    ちなみに、同一のルーツからいちばん遅く分離したのが、イスラム教です。これも説明しだすと長くなるので省きます。 

    Photo_2
    日本は男系社会ですが、ユダヤ民族は完全な女系主義です。 

    これも、ユダヤ民族の血脈を絶やさないという意味があったようです。

     

    Photo_3ニューヨークのシナゴーグ

    ですから、子供が生れてその子供をユダヤ教会に入れようとしたキャッツ邦子さんは、思いもしなかった壁にぶつかることになります。
     

    まず訪れたのが保守派の教会でしたが、あっさりと拒否されます。  

    「子供が生まれる前に改宗をしなかった私が保守派の教会を訪ねたことは明らかに私たちの勉強不足でしたが、密かに子供たちをユダヤ系アメリカ人に育てるための環境作りに尽力していると自負していた当時の私にとってかくもあっさりと断られたことはショッキングな出来事ではありました」(前掲) 

    母親がユダヤ人でないとユダヤ教徒にはなれない、逆に言えば母親がユダヤ人ならば父親が他宗派でも子供はユダヤ人とみなされるというわけです。 

    日本国籍の血統主義の女系版だと思うと分かりやすいでしょう。 

    ただし、改革派教会はもう少し柔軟な対応をしてくれました。 

    「次は改革派の教会へ行ったところ、ここでは両親の一方がユダヤ人で家庭でユダヤの習慣を取り入れているのであればもちろん子供はユダヤ人と言われ、大手をあげて歓迎されました。それ以来我が家はこの教会のメンバーとなり、子供たちは13歳の成人の祝い(バル・ミツバとバット・ミツバ)もここで受け、高校を卒業するまでユダヤ教を勉強しました」 

    で、子供たちを立派な「ユダヤ人」として育てた彼女は、子供を送り出して夫ふたりの食事をしている時に、こう言います。 

    「安息日の準備など既に私の生活の一部になっていることに気づいたのです。子供たちのためと思っていた様々なユダヤ教の習慣が今ではいつの間にか自分のものになっていたのでした。夫と結婚して既に26年が経っていましたが、改宗する時が来たと思いました。
    『あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です』、」ある安息日の夜二人で食事をしているとき私は笑いながらルツ記の一部を夫に暗誦してみせました。(略)
    夫は突然のことで何のことか分からず、怪訝そうにしていましたので、「改宗することにしたのよ。」と言ったら、「え、君はまだユダヤ人じゃなかったけ?」と驚き、しばらくして「ようこそ!」と嬉しそうに叫びました。
    それからラビと相談してあらためて改宗のための勉強をして、教会での式では夫や子供たちだけでなく、教会のメンバーにも祝ってもらいました」
     

    いい話です。夫婦愛と子供への思いが26年たって、ようやく彼女をひとりの「ユダヤ教徒」にしたのです。

    このように他宗派はその宗教に信仰を持って、その教えどおりに生活を送れば改宗できますが、ユダヤ教だけは血統主義なので、そうとうにハードルが高いと思います。

    やるとすれば、ユダヤ教徒の女性と結婚し、子供をユダヤ教徒して育ててユダヤ教の戒律を守り、よきユダヤ人となったことを周囲のユダヤ人から認められれば可能かもしれません。   

    しかし男性の場合、もうひとつの「正式なプロセス」である宗教儀礼を受ける必要があります。 

    これもがなんとあの割礼です。そう、割礼は男性器の包皮を切り取る儀式のことです。 ゾゾっ。

    他宗派にはばかげてみえますが(※)、ユダヤ民族の始祖であるアブラハムとの契約として定められている重要な儀式です。 ※ムスリムにも割礼の儀式はあります。 

    米国においてはユダヤ教への改宗者はかなりいますが、キャッツ邦子さんのようにいずれも夫がユダヤ教徒、つまりはユダヤ人であるケースです。 

    日本にも改宗者はいますが、こちらもほぼすべて夫がユダヤ人です。  

    たまにユダヤ教に関心をもってなりたいという人もいるようですが、ラビに相談すると大方「止めなさい」と言われるようです。

     

    2017年12月 7日 (木)

    トランプ エルサレムに大使館移動

    059

    昨日の日経平均が大暴落しました。不気味ですね。

    12月6日(15時15分)で、2万2177で445円の暴落です。特に内在的な理由が思い当たらないのに落ちるというのはイヤな気分です。
     

    なにをマーケットは読んだのでしょうか。 

    黒田日銀総裁は金融緩和の継続を述べて、このところ喧伝されている一部の与党からの「出口戦略」を明快に否定しています。 

    ならば考えられるのは、二つの外因です。 

    ひとつはいうまでもなく、北朝鮮危機の煮詰まりによる日本の地勢学的リスクの顕在化です。 

    市場は米国のティラーソン路線の破綻と、年末から年始にかけての軍事オプションの可能性を折り込み始めた可能性があります。

    Photo今年5月のイスラエル訪問時、現職大統領として初めて、ユダヤ教徒にとって神聖な「嘆きの壁」を訪れたトランプ大統領 (C)AFP=時事Foresightより引用させていただきました。

    ふたつめは、トランプがエルサレムをイスラエルの首都に移したことです。それを伝えるAFP(12月7日)です。

    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171207-00000000-jij_afp-int 

    「ドナルド・トランプ米大統領は6日、ホワイトハウス(White House)で声明を発表し、エルサレムをイスラエルの首都に認定する方針を表明した。米国が数十年にわたり保持してきた方針を転換する歴史的決定で、中東の情勢悪化を招く恐れがある。(略)
    在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転する手続きの開始も表明した。

    実はこのエルサレムをイスラエルの首都として承認すること自体は、トランプが言い出したことではありません。 

    かねてから大使館移転は、米国政界の宗教保守派と呼ばれる福音派キリスト教徒や右派ユダヤ系の献金者たちが熱望してきたことで、1995年にはエルサレムに大使館移転する法律すら作られています。 

    ただ、歴代の大統領たちは、中東の火種となりうるエルサレム移転を実行してきませんでした。 

    それをトランプ氏が大統領選の公約として取り込んだものです。 

    Photo_2エルサレム https://wondertrip.jp/middleeast/israel/90643.html

    エルサレムはダビデ、ソロモンが築いた古代ヘブライ王国の輝ける黄金期の首都でした。
    エルサレム - Wikipedia

    またユダヤ、イスラム、キリスト教の信者にとって聖地とされる都市で、このように3つの世界宗教の聖地が重なるという都市は世界でもここだけです。

    まぁ、世界三大宗教といっても、アブラハムの宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教はもともとは同じ宗教であり、分化したものでルーツが一緒ですからね。
    アブラハムの宗教 - Wikipedia

    しかもここはアッパス議長率いるパレスチナ自治政府の管理するとされる地域であって、イスラエルは首都と宣言していますが、国連などの国際社会にはみとめられていません。 

    かつて1967年までは、13カ国の大使館がエルサレムに置かれていた時期もあったのですが、イスラエルのヨルダン川西岸やガザ地区占領に抗議してこれらの国はテルアビブに大使館を移しています。 

    日本ももちろん同じで、今回のトランプのエルサレム大使館移転について追随する気はないと、菅氏は記者会見で述べています。 

    では、エルサレムのどこに、米国は大使館を移転するのでしょうか? 

    エルサレムはふたつの地域によって成り立っています。東エルサレムと西エルサレムです。 

    Photo_3

    エルサレムの東西分断の経緯はこうです。 

    ①1949年、第一次中東戦争の休戦協定により東西に分断。東側はアラブ地域、西側はイスラエル地域とされる。第一次中東戦争 - Wikipedia
    ②1950年、西エルサレムを占領したイスラエルはエルサレムを首都と宣言し、テルアビブの首都機能を西エルサレムに移転。
    ③1967年、第三次中東戦争でイスラエルが東西ともに占領。
    ④1980年、イスラエル議会、統一エルサレムは「イスラエルの永遠の首都」と宣言。
     

    西エルサレムは、イスラエルの首都機能や経済センターがある新市街なので、とりあえずは問題になりません。 

    問題となるのは、もう一方の東エルサレムの方です。 

    Photo_5http://www.christiantoday.co.jp/articles/24188/201...

    ここには有名な「神殿の丘」があり、3宗教の聖地と、いまでも運用されている宗教施設が目白押しに立ち並んだ旧市街です。 

    かつてここにはユダヤ教の神殿のあった場所でしたが、ローマ帝国の支配の下で神殿は破壊され、ユダヤ教徒はその麓にわずかに残る神殿の石垣の跡に向かって祈っています。

    トランプが訪れたのもここです。 

    ところで、イスラエルは東西共に「一体不可分な聖なる都市」として領有権・管理権を主張していますが、先の①の第一次中東戦争の休戦協定に従って、国際社会は東エルサレムの潜在的領有権をパレスチナ国家にあるとしています。 

    イスラエルの主張どおりにしてしまうと、イスラム教の宗教遺跡や施設を破壊されるという恐怖が、イスラム側にはあります。 

    そこで今取られている方法は、「ステータス・クオ」と呼ばれる考え方です。ラテン語で「現状維持」という意味で、外交用語として使われる概念です。 

    この東エルサレム(旧市街)の「ステイタス・クオ」とは、「神殿の丘」およびその周辺のユダヤ・キリスト・イスラム教の三宗教の施設と運営の現状をそのまま保存し共存させ、いかなる国家も干渉しないとすることです。 

    つまり、数千年の間、あるときはローマ帝国、現代においては米国という世界帝国によってイスラエルやエルサレムの処遇が変化したとしても、この宗教的核心部分の「神殿の丘」とその周辺部分だけは宗教的なサンクュアリ(聖域)として保存していこうということです。 

    ですから、今回トランプがエルサレムに大使館を移転するといっても、西エルサレムの新市街ですから、イスラム諸国も「ステータス・クオ」さえ守ればギリギリ許容ということもありえるわけです。(現実には相当にもめるでしょうが) 

    イスラーム研究者の池内恵氏はこう述べています。 

    「トランプの演説で、見どころとなるのは「エルサレム」をイスラエルが1948−49年の段階から掌握している西エルサレムに限定し、東エルサレムが依然として将来の「パレスチナの首都」として残る、ということを説得的に伝えられるかだろう。」(Foresight12月7日) 

    つまり、パレスチナ国家の首都して東エルサレムを潜在的に認めた上で、米大使館は西エルサレムに移動すればイスラム国家としてもなんとか受容できるのではないかということです。 

    ところがここで、ひとつやっかいなことが残っていると池内氏は指摘します。 

    米大使館予定地は、米総領事館の施設と近隣の取得地となる可能性が高いのですが、この土地の位置がクセモノなのです。 

    「この地区は1948−49年の第一次中東戦争で停戦ラインが引かれた「グリーン・ライン」上にあり、個人の所有権という意味でも、二国家解決の際の領土としての帰属という意味でも、係争の対象になりかねない。現在の総領事館の建物の真ん中を、1949年の停戦ラインが走っている。
    順次購入してきた近隣の土地や建物はその東側に位置し、国際的には潜在的にパレスチナ国家に帰属するとみなされている東エルサレムの一部である。
    米国がここに大使館を置くことは、イスラエルの主張する東西エルサレムの不可分性を物理的な施設の形で認めたと解釈されるだろう。」(Foresight12月6日)
     

    きょうのトンプ演説の詳細は分かりませんが、私たちとしては細心の注意を払ってエルサレム移転をしていただきたいものです。

    トランプがエルサレム移転を認めた背景には、娘婿のクシュナーとイスラエルロビーの存在が指摘されています。

    トランプが来年の中間選挙を睨んでいることは確かでしょうが、とまれ、これで 1993年に締結された和平プロセスであるオスロ合意は一挙に崩壊したことになります。  

    これについては長くなりそうなので、別稿にします。

    それにしてもこの時期に、こんなことを中東でやられるのは実に迷惑だなぁ。

    今の米国は現状でも、中東-アフガン-北朝鮮の3正面は大きな負荷なのに、そのうえに中東でこじらせれば眼も当てられません。

    正直言って、止めて欲しかったですね。

    追記

    記事写真の「嘆きの壁」で祈るトランプについて追加情報を付け加えます。

    あの写真は現職の合衆国大統領として初めて訪問した時のものです。

    トランプの姿はご覧のように、ユダヤ教徒の男性を表す小さな黒い帽子(キッパ)を被り、同行したユダヤ教のラビに従って「嘆きの壁」に頭をつけて、ユダヤ教のオーソドックスな祈りを捧げています。

    これはもちろん娘婿でこの東エルサレム訪問に同行したジャレッド・クシュナー中東担当上席顧問の指導があったからです。
    ジャレッド・クシュナー - Wikipedia

    Photo_6ジャレッド・クシュナーと夫人のイヴァンカ

    ティラーソンもイスラエルには同行していましたが、嘆きの壁には行っていません。
    ティラーソンは、その後こうコメントしています。

    「トランプ大統領が嘆きの壁がある東エルサレムを訪問したことは米国が東エルサレムをイスラエルのものと認めたことを意味しない」

    今回の大使館エルサレム移転に対してもティラーソンは強く反対したそうですが、国務長官としてはまた同じことを言うしかないだろうと思います。

    あるいは、いっそ辞任ですか。

    なお、トランプ氏が礼拝中、長女のイヴァンカ補佐官も女性専用ゾーン(男女礼拝所は別になっているそうですが)礼拝していました。

    イヴァンカは旦那と結婚して、ユダヤ教に改宗しました。よほど旦那に惚れていたんでしょうな。

    トランプ家の宗教ですが、トランプ家のルーツはドイツですので、プロテスタントの長老派です。もちろんユダヤ教ではありません。

    ユダヤ教は元来がユダヤ民族固有の宗教なので、イヴァンカのように他人種は結婚などによらなければ改宗は難しいのです。

    ちなみにこの嘆きの壁に黒い帽子(キッパ)を被り祈ったのは現職ではトランプが初めてでしたし、ブッシュ・ジュニア、クリントン、オバマもいます。彼らもプロテスタントですので、あくまでも大統領としては、です。

    トランプという大統領は明暗のコントラストがある人ですが、今回ははっきりと失敗だと思います。

    今、この時期にこのような重大決定をしたというのは中間選挙で固有の支持層にいい顔したかっただけで、その代償は大きいと思います。

    こんな外交的リスクは、かえって北に対する圧力を拡散させてしまいます。悪い意味でのトランプの素人っぽさが出てしまった選択だと思います。

     

    2017年12月 6日 (水)

    「国連軍派遣国会合」 北の核の脅威にさらされていない国に発言の資格はない

    118

    今週になって、海上封鎖を言っていたはずのティラーソンが、こんどは「国連軍派遣国会合」をやると一方的に通告してきたようです。 

    日本は即座に拒否したようで、河野外相のメリハリが効いた対応です。あのオヤジ譲りのブルドック顔でうんにゃと言うと効きそうですね。

    「河野太郎外相は5日の閣議後会見で、北朝鮮問題をめぐり、米国とカナダが呼びかけた国連軍派遣国会合の12月開催の打診を日本政府が拒否したことに関し、
    「国連軍派遣国は北朝鮮と距離的にも地理的にも遠い国も含まれるので、もう少し参加国をしぼるべきではないかと伝えた」と述べた。
     その上で、今月中旬に開かれる国連安全保障理事会を念頭に「多くの国は安保理に出席するので、会合自体が成立しないだろうと申し上げた」と述べ、国連軍派遣国会合の今月開催は見送りになるとの見方を示した。」(産経12月5日)

     まったく正しい対応です。こんな時期に無関係な国を「国連軍派遣国」などという有名無実な枠組みで会議してどうするというんでしょうか。 

    いちおう「国連軍派遣国」を押さえておきましょう。主力は米英韓ですが、戦闘支援国として、願いましては・・・、コロンビア、エチオピア、ギリシア、ルクセンブルク、南アフリカ、タイなどなど。
    朝鮮戦争 - Wikipedia 

    これら「戦闘支援国」は、「国連軍」だったのは大昔のお話。今やことごとく北朝鮮と国交を持ち、友好関係をもっている国ばかりです。

    ティラーソンは国連安保理会合とバッティングする時期に、こんな無関係な国々をただ「国連軍」だというだけで招集して、何を話したいのでしょうか。

    「いや~、朝鮮は寒かったってウチのジィさんが言ってたっけ」なんて昔話でもしますか。

    Photo
    そしてもっとも問題なのは、北朝鮮の核ミサイルは届かないような「核の脅威」とはまったく無縁な国々ばかりだということです。

    つまりは、無関係・無関心な国々ばかり。こんな国々をいまさら呼んで何を討議しまするのでしょうか。

    「そりゃ~、核はいけまへんなぁ」という総論賛成で、しかし「米国さんもほどほどにしないと、追い詰めたらあきまへんでぇ」(なぜか関西弁)という各論反対が出まくるのがオチでしょうに。

    今、この土壇場の時期に、そんなことをする意味がどこにあるのでしょうか?ありません。外相のいうとおり、まさに有害無益です。

    いいでしょうか、北朝鮮問題とはすぐれて核兵器問題なのです。これを忘れて議論しても仕方がありません。

    これは日本が署名しなかったとして、「被爆国のくせに」と日本のメディアや野党、そして一部の国際世論からも批判された核兵器禁止条約にも通じることです。
    核兵器禁止条約 - Wikipedia

    この核兵器禁止条約の提案国は、コスタリカとマレーシアです。

    コスタリカと聞くだけで、「おお、平和の輸出国だ」とばかりに随喜の涙を流すリベラル知識人も多いでしょうが、国連加盟193カ国のうち賛成している国は122カ国、反対している国は71カ国です。数的には賛成国が多いですね。

    下のマップの青い色が賛成国です。

    Photo_3

    共通点がありませんか。そうです、ヨーロッパは米国の核とリンクしたNATOを持っていますし、英仏に至っては独自核保有しています。

    アジアでも、独自核武装をしているインドとパキスタン、そして日韓のような米国の核の傘に守られている国々は不参加です。

    つまり核兵器禁止条約に反対している国は、核保有国か、さもなくば揃って現実的な核の脅威にさらされている国々なのです。

    では逆に賛成した諸国はどうかといえば、核保有国の核の傘には入っていません。

    裏返せば核で脅しに来る敵対国が不在ですから、核の傘を差してもらわなくてもいいわけです。

    つまりなんのことはない、締結国とはオレの国は核兵器なんてコワくないよっていう、

    私たち日本人から見れば、「いい場所に国構えているな。こちとら仲が悪い核保有国に包囲されてっかんな。一緒にしないでおくんな」とつい江戸っ子のような啖呵を切りたくなるようなラッキーな国々ばかりなのです。

    これは賛成国の位置をみると分かります。賛成国が南米とアフリカに集中していますね。幸いにも、この地域は核による脅迫がない地域なのです。

    また、国のサイズもドングリの背比べです。いずれの国も経済力・軍事力が小さいので、核保有国である覇権大国と利害が対立することが稀な国々です。

    有体にいえば、これらの国々はいずれかの覇権国=核保有国をむしって支援を引き出し、その代償として従属することを覚悟をしています。

    このような国々を、中露北という非友好的な核保有国にズラリと囲まれているわが国の地勢学的条件と比較するほうが愚かではありませんか。

    一方、核保有国同士は、互いに核兵器の使用は絶滅につながることを知っているために、核戦争につながりかねない通常兵器の戦争すら回避するようになりました。

    これ自体はけっこうなことですが、第2次世界大戦後の「平和」は、皮肉にも米露が互いの核兵器を最大の脅威と認識するが故に生れたのです。

    いわばふたりの巨人が、力こぶを目一杯出して腕相撲をしている状態です。

    Photo_6

    どちらも勝てないが負けない、これを「力の均衡」と呼びます。

    米露の核保有国同士の戦争が起きにくいのは、この核兵器が作り出した「力の均衡」が成立しているからです。

    朝鮮戦争で総司令官のマッカーサーの要求をトルーマンが蹴ったのも、同じくロシアの核報復を恐れたからです。

    ベトナムで核が使われなかった理由も同じです。仮に米軍が戦術核を使用すれば、北ベトナムの背後のロシアの核報復があるという可能性を捨てきれなかったからです。

    Photo_4フォークランド(マルビナス)紛争

    逆に、片方が核保有国で一方が非核保有国の場合、容赦ない通常兵器の二国間戦争が始まります。そのいい例が、フォークランド(マルビナス)紛争です。

    サッチャーはアルゼンチンが核保有国だったら、実力奪還をあきらめたでしょう。

    あれほどひんぱんに戦争していたインドとパキスタンが、互いに核保有したと同時に小競り合いていどに止まっている理由も一緒です。

    Photo_5ウクライナにおけるロシア軍

    最近の例をあげれば、ウクライナ紛争で米露、あるいはNATOとロシアが戦争にならなかったのは、核兵器を互いに擬していたからです。

    あれほど露骨な国境線の書き換えを、結局米国とヨーロッパが容認してしまったのは、ロシアが世界最大の核保有国だからです。

    そうそう脱線しますが、経済的にはズタボロで石油頼みの1次資源輸出国でしかないロシアが、なぜかくも国際舞台でデカイ顔ができるのかも、かの国が核保有国にして世界有数の軍事大国だからです。

    とまれ、<核>というカードさえ握ってさえしまえは、このような世界で5カ国しかない特権的ステータスに登れる、核さえあれば金王朝は安泰で晴れて南北統一に目指せるぜ、というのが正恩です。

    これがなんどかお話ししてきている、相互確証破壊(MAD)という悩ましい関係です。

    一方中国が南シナ海や尖閣に軍事膨張するのは、彼らの核戦力が潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)という分野で大きく出遅れているからです。

    中国は戦略原潜を、静かに着底させることのできる深く安全な海を喉から手がでるほど欲しているのです。

    米中間で相互破壊確証を完成させてしまえば、もはや米国はアジア地域において張り子の虎となり、晴れて中国は地域覇権国の王座に就くことが出来ます。

    仮に核兵器禁止条約が仮に全世界で発効したとすれば、地獄のような通常兵器による戦争がそこかしこで勃発することになるでしょう。

    核による「力の均衡」というロジックが押さえ込んできた世界は、その蓋が吹き飛んでしまうことになり、いままで抑えられてきた大国間の通常兵器による戦争が頻発する用になるでしょう。

    そしてやがてはいくつかのブロックに別れて三つ巴、四つ巴のブロック間戦争に突入するかもしれません。

    このように皮肉にも、「核なき世界」の理想が、かえって世界滅亡のリスクを高めてしまうのです。

    北に核を放棄させるためには、北の核にさらされる利害共有国が結束せねばなりません。

    脅威にさらされていない、しかも核兵器禁止条約に賛成し、北と友好関係にある国々には,この問題に首を突っ込む資格そのものがないのです。

    北を圧力鍋の中に放り込み、ギリギリと最後の圧力をかけている今、その圧力を抜くが如き動きをする米国国務長官がいるとはあきれたことです。

    トランプはこの「国連軍覇権国会合」に相談をあずかっていなかったそうで、それだけでも解任させるべきです。

    ※ またまた大幅加筆して、写真も挿入しました。すいません。(午後6時)

     

     

     

    2017年12月 5日 (火)

    海上臨検はなにを意味するのか?

    052

    米韓が大規模な合同軍事演習を開始しました。もちろんこのまま軍事攻撃に移行できるぞというブラフです。 

    一方ティラーソンは「国際社会は実施中の国連制裁に加え、北朝鮮に出入りする物資の海上輸送を阻止する必要がある」として事実上の海上封鎖を宣言しました。 

    それを報じる産経(111月29日)です。 

    「北朝鮮による11月29日の弾道ミサイル発射を受け、米政府が打ち出した新たな対北 圧力をめぐり、日本政府が対応に苦慮している。ティラーソン米国務長官が北朝鮮に対する海上封鎖ともとれる追加措置の必要性を訴えたが、日本政府は憲法上の制約から参加できない可能性があるためだ。安倍晋三政権はトランプ政権とともに圧力を強化する方針を掲げるが、これと矛盾する事態となりかねない。『ティラーソンが何を目指すのか分からない。日本にはできないこともある』 外務省幹部は30日、困惑の表情をかくさなかった。」

    海上封鎖はオーソドックスな米国の取る非軍事的圧力のひとつです。
    海上封鎖 - Wikipedia 

    Photo_3キューバ危機における海上封鎖 ソ連の貨物船の上空を偵察飛行するアメリカ軍哨戒機 ウィキ

    有名な海上封鎖の事例としては1962年10月から11月にかけてのキューバ危機があります。

    キューバ危機 

    これはソ連が米本土と目と鼻の先のキューバに、核兵器搭載可能な中距離弾道ミサイルを持ち込んだことが発覚したことから始まっています。 

    当時ソ連はICBM競争において劣勢に立たされて、焦っていました。 

    そこでソ連がとったバクチが、米国の内海とでもいうべきキューバに共産政権が成立したことを幸いに、キューバと軍事協定を結び、キューバに大規模な核戦力と地上部隊を送り込むことでした。 

    これが「アナディル作戦と」呼ばれる秘密協定でした。 

    この秘密協定によって、ソ連がキューバに送り込んだ戦力は、中距離弾道ミサイル(IRBM)24基、準中距離弾道ミサイル(MRBM)36基、地上兵力4個連隊合せて1万4000名、軽爆撃機「イリューシン」(Il-28)42機、戦闘機(MiG21)40機、その他地対空ミサイル72基などといった大規模なものでした。 

    最終的にキューバに派遣された人員は4万5234名で、このうち海上封鎖が始まった時点で3332名はまだ公海上の輸送船の中でした。 

    Photo_5
    このキューバに持ち込まれた核戦力は、直接ワシントンを標的にすることが可能で、米国は容認できるものではありませんでした。 

    これは今の日本に向けられている中距離弾道ミサイルと一緒で、数十分で着弾するために市民が避難する時間的余裕がほぼゼロのため防ぎようがありません。 

    いまなら警戒衛星と連動するミサイル防衛システムがありますが、当時はそんなものはありませんでしたので、米政府は深刻な核攻撃の脅威として受け取りました。 

    その時、この話を聞いた大統領夫人のジャクリーヌの言葉が残されています。

    「核シェルターに入らなければならない時、私がどうするか、知らせておくわ。もし事態が変化したら、私はキャロラインとジョンJRの手をつなぎ、ホワイトハウスの南庭に行きます。そして勇敢な兵士のようにそこに立ち、全てのアメリカ人と同じく運命に立ち向かいます。」

    キャロラインとは、前駐日大使ですね。

    いかに米国人が現実に頭上に降って来る核ミサイルの脅威として、キューバ危機をうけとっていたのかがわかるでしょう 

    この時、米政府が悩んだ最大の理由は、キューバとの地域戦闘が、ベルリンやトルコに飛び火し、ソ連との全面核戦争につながりかねないということでした。

    「この段階で封鎖と空爆の2つの選択肢が残っていたが、実際は二者択一ではなく、海上封鎖から空爆へという考えと、どちらにせよ最後はキューバ侵攻へという考えで、このエクスコム会議(国家安全保障会議執行委員会)に出席していたメンバーの大半は最後は侵攻する必要があることを理解していた。」(ウイキ)
    エクスコム - Wikipedia

    このキューバ危機においても、米政府内で慎重派の国務省派と、空爆も辞さないとする統合参謀本部という二つの考え方が現れます。 

    この両派はシナリオを作って論戦をしましたが、結局、「ロバート・ケネディの『会議で空爆と結論を出しても大統領は受け入れないだろう』との意見が通り、海上封鎖を実行し事態が進まない場合は空爆実施という折衷案がまとまった」(同上)ようです。 

    そしてこの答申を受け取ったケネディは、このように決断します。

    「(1)まず封鎖から始めて必要に応じて行動を強めていくか、(2)まず空爆から始めて最後は侵攻を覚悟するか、という2つの選択肢を基幹としてそれから派生する分枝の問題が提示された。その後にケネディはまず封鎖から着手すべきとして、空爆と侵攻を主張するメンバーにそういう作戦がその後に絶対に採られないことではないと解してよろしいと言葉を続けた。」(同上)

    そして、1962年10月24日、歴史的にもっとも有名な米軍によるキューバ海上封鎖が行われることになるわけですが、この後幾多の経過を経て、10月28日、フルシチョフは折れて、キューバから核ミサイルを全面撤去します。 

    Photo_4キューバ港からミサイルを運び出すソ連の貨物船米軍機の機影が写っている。(アメリカ空軍の偵察機が撮影/1962年11月)ウィキ

    この事例は米国外交のゴールドスタンダードとされています。
     

    当然、外交評議会メンバーだったティラーソンは熟知しているでしょうし、案外共和党主流の伝統的外交を踏襲しているトランプもよく分かっているはずです。 

    今、この時点で米国が海上臨検を国連安保理で通し、それに基づいて海上封鎖を断行すると言ったことは、キューバの事例を参考にかんがえるべきでしょう。 

    つまり、米国は海上臨検の次を考えてカードを出したのです。 

    もし海上臨検において、北側が一発でも弾丸を発砲したり、実力でブローケード(封鎖)を突破しようとするなら、次のカードの次元に突入することになります。 

    言う必要もないでしょうが、それは軍事オプションです。

     

    2017年12月 4日 (月)

    38ノース 火星15大気圏再突入に失敗し分解か?

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    米国において北朝鮮(以下北と称す)の核開発についてもっとも緻密な追跡と分析をおこなってきた38ノースが、今回の「火星15」について分析記事を上げているのでご紹介します。
    The New Hwasong-15 ICBM: A Significant Improvement That May be Ready as Early as 2018

    38ノース - Wikipedia 

    タイトルは”The New Hwasong-15 ICBM: A Significant Improvement That May be Ready as Early as 2018”(「新しい火星15 ICBMは2018年早期の準備に向けて重要な改良がなされた」)です。 

    来年の初めには、米国全土を射程に収めたICBMを北が完成させているだろうというショッキングなタイトルです。 

    ただし、現状において北が主張するように、それが完全に完成されているわけではないと38ノースは述べています。

    Photo

     なお訳文は仮訳で分かりやすくするために、抄訳し、一部は意訳しています。

    ”Photographs and video released by North Korea reveal that the Hwasong-15 test fired on November 29 is not a modified version of the Hwasong-14, as initially assessed here based solely on flight data. The Hwasong-15 is considerably larger than the Hwasong-14, and initial calculations indicate the new missile could deliver a moderately-sized nuclear weapon to any city on the US mainland. The Hwasong-15 is also large and powerful enough to carry simple decoys or other countermeasures designed to challenge America’s existing national missile defense (NMD) system. A handful of additional flight tests are needed to validate the Hwasong-15’s performance and reliability, and likely establish the efficacy of a protection system needed to ensure the warhead survives the rigors of atmospheric re-entry.”

    (仮抄訳)「北朝鮮が11月29日に発射した火星15は、火星14 の修正版ではない。
    火星15 は火星14よりかなり大きく、新しいミサイルが米国本土のあらゆる都市に核兵器を投射できることを示す。
    火星15はまた、アメリカの既存の米本土ミサイル防衛 システムを混乱させるためのおとりなどを運ぶに充分な大きさと強力な推力を持つ。
    火星15の性能と信頼性を検証するために、いくつかの追加の発射実験が必要であり、弾頭が大気中の再突入の過酷な条件を生き残るために必要な保護システムの有効性を確立する必要があるだろう。」

     

    Photo
    CNN
     
    これはCNN(12月3日)も同時に報じています。
    「北朝鮮が11月29日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」は、大気圏への再突入と同時に崩壊していた可能性が高いことが分かった。米当局者が2日に語った。
    専門家による飛行状況の分析が続くなか、同当局者は「大気圏再突入に問題があった」と指摘。北朝鮮はミサイルの誘導技術に加え、再突入技術でも課題を抱えているとの見方を示した。」
    Photo_29軸の新型移動式発射装置に乗った火星15 弾頭先端は再突入時の摩擦を減らすためにラウンド型である。
    以下、主だった技術的特徴を38ノースはこう指摘しています。
    ①火星15 は2段式液体燃料 ICBMである。
    ②旧ソ連で開発・生産されたRD251エンジンのオリジナル設計に酷似しており、リフトオフ時に発生する合計推力は約80トンとみられる。
    ③火星15のサイズは、火星14 よりも50%多くの推進剤が搭載できる。
    ④火星15は米国本土の任意の地点に 1トン のペイロード(積載量)を提供できる。
    ⑤北はほぼ確実に軽い場合は、700キロ未満の重量を量る核弾頭を1個開発している。
    ⑥姿勢制御においても新しい技術的進歩があった。
    ⑦米本土ミサイル防衛対抗するための単純なデコイを搭載しうるが、今回の試験におとり(デコイ)が含まれていたとは考えづらい。
    ⑧北が今後どのような回数の発射実験を実施するかは、金政権の選択であるが、ICBMの能力を検証するためには、標準軌道(ミニマムエナジー軌道)で最低でも1、2回の実験が必要だ。
    ⑨追加実験では特に、再突入保護システムを検証する必要がある。
    Photo_3
    つまり、北はほぼICBMを完成一歩手前の位置にまで近づけていることは確かです。
    ただし、再突入という最難関を突破できていないと38NOTHはみており、大気圏内で分解したとの報道もあります。
    なお上記の新潟の動画は、火星15のものであるのは確かなようですが、分解したかどうかまでは不明です。
    この分解の原因が、極端なロフテッド軌道によるものという説もありますが、通常軌道(ミニマムエナジー軌道)で再度試みないと判明しません。
    おそらく、北はこの残された課題である再突入技術を確立するために、あと1回、ないしは2回のICBM実験をやるつもりでしょう。
    それに北が成功すれば、チェックメイトとなります。
    それをトランプがどう判断するかは、別次元の問題です。

    2017年12月 3日 (日)

    日曜写真館 透き通った花の命

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    2017年12月 2日 (土)

    ティラーソン更迭が意味すること

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    既報のように、ニューヨークタイムズがティラーソン国務長官更迭をスクープしました。 

    後任はいまCIA長官やってるポンペオだそうです。知る人ぞ知る北朝鮮問題の最右翼です。 

    もしほんとうにこの人事がなされた場合、戦争の危険性は飛躍的に高まります。
    ※追記 トランプは更迭を否定しました。 http://www.afpbb.com/articles/-/3153864

    これが真実だとすると、いうまでもないことですが、ティラーソンの国務省がバックチャンネルで模索していた、米朝秘密協議を表に出し、正式の米朝会談として「管理された危機」のフェーズに移行しようとする路線が否定されたことになるからです。 

    従来のトランプは、意味、こう言ってきました。 

    「喜んで米朝協議をする用意はあるよ。ただし、それはお前が核を放棄すると宣言すればだが」 

    北からすれば、要はイエスかノーの2選択しかないことになります。 

    実はこのように、初めから高いハードルを出してしまうやり方は外交的には得策ではありません。 

    相手国の出方に応じた対応が困難になって、硬直した対応しかできなくなるからです。 

    保守論客の中には「対話」すること自体を敗北として否定する人もいるようですが、米国は冷戦期にも一貫して対話チャンネルを作っていました。 

    それは相互の誤解によって、全面核戦争になるかもしれないという現実的脅威があったからです。 

    これを、セカンドトラックとかバックチャンネルと呼びます。 

    今回、米国は北に対してもこの伝統的方法を踏襲しています。互いに民間学者、あるいは引退した政治家を出して第3国で秘密交渉をしてきたことが明らかになっています。 

    ただし北は、高位の外務官僚を出してきているようで、北なりにこの秘密チャンネルを重視しているのが窺い知れます。 

    このように米国は、国務省主導で米朝協議をしていいというシグナルを出していたわけです。
    関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-2db5.html

    Photoジョセフ・ユン朝鮮担当特別代表

    既報ですがワシントン・ポスト電子版(11月9日)は、こう伝えています。

    「国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が、北朝鮮が核・ミサイルの実験を60日間凍結すれば、米朝対話に応じる考えを10月末に示していたと報じた。米政府当局者はティラーソン国務長官の考えと一致すると指摘している。
    北朝鮮が最後に実験したのは9月15日。北海道上空を通過する弾道ミサイルを発射した。
    ただ『60日』は北朝鮮側から凍結の意思表示を受けてから数え始めることにしており、北朝鮮側の連絡を待っているという。」(太字引用者)
     

    この「凍結を宣言してから60日」という言い方は微妙ですが、とまれ明確に弾道ミサイルと核実験の凍結だけで、話しあいに乗ろうと米国は申し入れしていたわけでした。 

    そして今回のICBM発射は、この米国の外交で解決しようとする平和的解決のオファーを足蹴にしたことになります。

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    まったく正恩とは信じがたい愚か者です。狂人のふりをしているのではなく、真のマッドマンです。 

    ティラーソンと国務省は頭を抱え、トランプは得意のブラフを口にしなくなり、妙に静かになりました。 

    トランプからすれば、「ティラーソンに最後のチャンスをやったが、正恩、これでお前のかんがえはよく分かった」というところでしょうか。当たらずとも遠からずだと思います。 

    そしてティラーソン解任、ポンペオ後任です。常識的に見て、これは軍事行動に移行する可能性が極めて高いことを意味します。 

    おそらく12月中旬から始まるクリスマス休暇に事寄せて、在韓米軍家族の大多数は実質的なNEO(非戦闘員避難計画)を実施するでしょう。 

    決しておおっぴらにはしませんが、ちょうど2011年3月に静かに行われた米軍家族・民間人のNEOのようになると思います。 

    気がつけば在韓米軍基地のハウジングエリアには人影がまばらになっているというわけです。 

    在沖米軍のハウジングエリアは、逆に活況を呈することになるかもしれません。 

    これからの季節の朝鮮半島は、零下数十度の厳しい酷寒期を迎えます。 

    朝鮮では床下暖房を焚きますが、北の軍事施設といえど暖房くらいはつけないと死にますから、上空の偵察衛星やグローバルホークからはサーモグラフィを使って軍事拠点の位置が手にとるように分かってしまうことでしょう。

    攻撃開始するには、最適の条件だとはとりあえず言えるかもしれません。 

    ただし、なんどとなく書いてきたように、よく保守系言論人が威勢よく言うような瞬殺などはまったくの空論だと言っておきます。

    2017年12月 1日 (金)

    北朝鮮「火星15」の発射についてその2 軍事オプションか北の核容認かの沸点へ

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    北朝鮮がミサイルを発射したことで、再び正恩からの球がトランプに戻ってきたことになります。

    ある種のキャッチボールだろうなと思わせるのは、正恩が弾道ミサイルをロフテッド軌道にしたこと、そして日本海に落したことです。

    ミニマムエナジー軌道で、グアムや米国西海岸近くに落さなかったのは賢明だととりあえず褒めてあげましょう。やったらシャレになりません。

    あれほどうるさかったトランプは妙に静かになり、12月18日月曜日新月の夜、米国は軍事攻撃に踏み切ったでしょう。

    正恩からすれば、ただ淡々とICBMの完成への工程を歩んでいるのかもしれないし、さもなくば、米国がなんらかの「核保有」容認オファーを出してくることを期待しているのかもしれません。

    いずれにせよ、米国がこれで軍事オプションへ突入すると考えていないのは、中国の習に電話会談をもちかけて、いっそうの圧力を要請したことです。 

    一方中国は、米国が中国に圧力を要請してくるという関係が、少しでも長く続くことを願っています。 

    国際外交において、いかなる理由があるにせよ、他国に何かを頼む時には、反対給付、つまり見返りを用意せねばなりません。 

    中国が相手ならば南シナ海軍事基地化の黙認することですし、漁夫の利を狙うプーチンに対してならば経済制裁の緩和しかないでしょう。 

    前者はともかくとして、後者のロシアへの譲歩は制裁法に議会承認の一項がある上に、ロシア政府による米大統領選介入疑惑で紛糾している今承認されるはずもなく、米露中の3ケ国の足並みが揃うことは相当に難しいといわざるをえないでしょう。 

    Photo_2
    では米国単独の軍事オプションが可能かどうかですが、私は極めて困難だと見ています。 

    これについては、「北朝鮮の核施設破壊のためは地上部隊を投入するしかない」という記事にまとめてありますので、お読みください。
    関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-1ea4.html 

    大規模な地上軍を北に投入せねばならないとなると、中国の承認が必要となりますが、それは現時点では不可能に等しいと思われます。 

    もしトランプが軍事攻撃を選択するなら、それは「予防戦争」として安保理での非難決議を今度は米国が中露から受けることになる可能性すらあります。
    予防戦争 - Wikipedia

    まさに外交的賭けで、失敗した場合、米国は南シナ海での中国の軍事膨張をブロックするどころか、世界の覇権国家の地位そのものを失いかねません。 

    つまりは拳をふりあげたが振り降ろせない、できるのは中国に頭を下げることだけというなんともしまらない状況が続くことになります。 

    Photo_4

    このような北に対する手詰まり感こそが、中国に取ってもっとも望ましい状況です。 

    中国には急ぐ理由はいささかもありません。 

    爆発するに爆発できず、中国に圧力を依存してこさせる状況に拘束することこそが、中国の利害なのです。

    それについて小泉悠氏は、「北朝鮮有事『米空爆作戦』のオプション」の中でこう述べています。

    したがって中国には急ぐ必要はまったくありません。少しでも長く北に米国の鼻面を引っかき回させて、多くの米国の譲歩を引き出そうとすることでしょう。

    これはさらに悪い状況を呼び込みかねません。

    なぜなら、目先の北への対応に追われて、本来は主敵であるはずの中国との悪しき宥和路線に転がり込む可能性があるからです。

    ここでひとまず北については「損切り」しておくことも考慮すべきです。

    「しかしいわゆる核容認論は北朝鮮の核保有を不問に付そうというものではなく、北朝鮮を核保有国であると認めた上で、なんらかの軍備管理を呑ませる、あるいは北朝鮮の核戦力に対する抑止体制を構築しようとするものである。
    いうなれば核容認論とは、東アジアにおける『小さな冷戦』を継続するオプションなのであり、したかって軍事オプションは今後とも存在し続けると考えられよう。」

    私はこの小泉氏の見立てが、好むと好まざるとにかかわらず、もっとも現実性があると思います。

    つまりは、「東アジアのミニ冷戦」です。

    「東アジアのミニ冷戦」として、北と米国がかつてロシアと交渉したような核戦力制限交渉(STARTと包括的核実験禁止条約(NPT)を同時進行で進めようという考えです。
    新戦略兵器削減条約 - Wikipedia
    包括的核実験禁止条約 - Wikipedia
     

    ただし誤解なきように言えば、旧ソ連との「冷戦」がそうであったように、厳しい軍事的緊張を維持するのが前提で、決して宥和的な「対話路線」一般ではありません。

    軍事封鎖・経済封鎖・金融封鎖・貿易封鎖で北を締め上げながら、核を放棄させる「封じ込め」をしていくという政策です。

    これについての詳述は明日に回しますが、軍事攻撃に頼らず軍事攻撃に等しい破壊力を持つもうひとつのオプションです。

    Photo_3
    一方、米国国内政治にも動きが出ました。 

    ティラーソン国務長官が更迭される模様です。後任は右派として知られるポンペオ中央情報局(CIA)長官のようです。ティラーソンの属する「国務省派」と私が「NSC派」と呼ぶグループの軋轢は、覆いがたいものになっているのは確かなようです。 

    「【ワシントン時事】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は30日、政府高官の話として、ティラーソン国務長官の数週間以内の更迭をトランプ政権が検討していると報じた。
     後任にはポンペオ中央情報局(CIA)長官を充てる見通しという。北朝鮮の核・ミサイル問題など重要な外交課題を抱える国務長官を交代させれば、米国の対外政策に影響を及ぼす恐れもある。
     ティラーソン氏は、イラン核合意やカタール断交問題をめぐり、トランプ大統領と対立。さらに米メディアが10月、ティラーソン氏がトランプ氏を「能無し」と呼んだと報じ、確執が深まっていた。ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏が更迭を最終決定したかどうかはまだ明らかではない。」(12月1日時事)

    少し前から伝わってきている更迭話で、北朝鮮問題において結果が出せなかったわけであり、更迭の理由としては充分なものです。 

    この二つの米国内の潮流については、「北朝鮮に対する米国内の二つの考え方」として記事にまとめましたので、お読みください。山路氏も昨日の寄稿で適格な分析をされています。
    関連記事
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-47f1.html
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-cb58.html   

    これは、表向き「核を放棄しない限り対話はない」とする建前の後ろで、ティラーソンの国務省が北と様々なバックチャンネルで対話の機会を探ってきたことに対する、トランプの最終決断とも受け取れますが、私にはなんともいえません。 

    このように北を巡る国際状況は、北の核容認に向かうか、軍事オプションを決断するのかのギリギリの沸点に向けて進行し続けています。 

    このような中で、わが国にできることは少なく、ミサイル防衛の強化は当然の前提として、具体的にはこの程度のことです。 

    ①在韓邦人の避難保護問題の強化
    ②韓国への渡航制限条件の設定
    ③朝鮮総連と在日朝鮮人に対する金融規制強化
    ④韓国避難民への対応
    ⑤スリーパー・セル対策の強化

    関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-bc8f.html 

    スッキリした解など、北の核については存在しません。

    あらゆる情報に兎のように耳を立て、犬のようにそれを検証し、決して慌てずに着々と今できることを準備することが、日本人の今するべきことです。


     

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