リクエストにお答えして、あまり気が乗らなかったのですが、BPO報告書問題をやります。
あんなものが高江紛争の「定説」となっては:たまったものではありませんから。
12月14日、:GPO(放送倫理検証委員会)は、「ニュース女子」について、「重大な放送倫理違反があった」との意見書を公表しました。
まず私は、この東京MXの番組はできがよくないと考えています。立場が正しいから内容も正しいというのは短絡的です。
この番組は沖縄のみならず、本土すらも覆うメディアの反対運動絶賛報道へ一石を投じるものでした。
しかしならばなおさらのこと、綿密な事実検証をして丁寧に番組をつくるべきだったと思います。
この番組の杜撰な内容が、放送法9条の「真実でない放送の訂正」条項に問われる結果となってしまったことは、テーマがテーマなだけに大変に残念です。
後述しますが、番組には裏取りがされたとは到底思えない印象報道のつなぎ合わせ、反対派に対しするべきではない悪意表現などが随所に登場します。
放送直後から、シンスゴ側の高江において反対派の暴力行為がなかったかのような宣伝に利用されてしまいました。
結果として、反対運動の暴力を現地の東村から告発し続けていた依田氏の社会的立場を、いっそう困難なものにしてしまったように思えます。
制作したDHCテレビジョンは、今なお進行している高江紛争というデリケートな問題に対して、制作責任者として事前考査をするべきでした。
とくに司会・統括役の長谷川幸洋氏はベテランの報道記者なのですから、事前に目を通してチェックすべきでした。
また、この放映したMXも、このような出来上がった形態で局に入れたいわゆる「完パケ」に対しても、厳しい事前考査をかけるべきでした。
これらの地上波に要求されるクォリティ・チェックを怠ったために、BPOから指摘を受ける結果となりました。
ところでBPOの指摘は、以下の6点です。
https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2017/27/dec/0.pdf#page=14
①抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった
②「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを確認しなかった
③「日当」という表現の裏付けを確認しなかった
④「基地の外の」とのスーパーを放置した
⑤侮蔑的表現のチェックを怠った
⑥完パケでの考査を行わなかった
ではこのBPOの指摘が正当性を持つかといえば、まったく違います。
BPO検証委員会は、2回にわたって現地で調査をしたと述べていますが、とうてい真摯な調査をしたとは思えません。
①の反対派への取材が欠落していたことについては、トンネル前の井上氏の「ここより先には危険で行けない」という表現が引っかかったものと思われます。
井上氏の事実誤認です。取材当時、すでに高江の暴力的状況は終了していて、現地に行くことは十分に可能でした。
弁論書でDHC側は「反対派に襲われそうになった」と述べていますが、ならばその状況こそ伝えるべきだったと思われます。
まぁ、「両論併記」を否定する報道が日常化している放送界に言う資格があるとは思いませんが、それはまた別次元の問題です。
②の救急車事件については、「救急車の現場到着が大幅に遅れたケース自体が見当たらない」で済ませてしまっています。
「現地の消防本部の資料などによれば、救急車の現場到着が大幅に遅れたケース自体が見当たらない。反対運動による渋滞の列に救急車がいたという情報が仮にあっても、それは反対派が実力で救急車を止めたという本件放送の伝えた事実とは趣旨をまったく異にしており、到底その裏付けにならないことは明らか」(BPO報告書)
BPOがここで「反対運動による渋滞の列に救急車がいた」と認めながら、「反対派が実力で止めた」ということにはならないという苦しいロジックを作っています。
ではまず、防衛局が公式にアップしている、当時の高江への県道の状況を写した一枚をご覧いただきます。
道が人為的に封鎖されているのがお分かりでしょう。
このように公道の通行を妨害した結果、仮に救急車が通過した場合、結果はいうまでもありません。救急車に翼でもついていなければ、通行不可能です。
ならばそれは救急車を止めたに等しい行為ではないでしょうか。
ところがBPOにかかると、道路封鎖と救急車を直接止めるのは別次元だなどというのですから、詭弁もいいかげんにして下さい。
道路が通れなければ、救急車も通れないに決まっています。中坊か、BPOは。
たまたま写真のような封鎖時に、救急車が遭遇しなかっただけの幸運があっただけにすぎません。
もし通り掛かっていたら、間違いなく悲惨な結果を招いたことでしょう。
BPOはこんなことを書いています。
「③ 抗議活動側が傷病者であった18件のうち1件について、傷病者を収容した救急車が徐行運転を開始して間もない高江橋で、抗議活動側の人が救急車に対して手を挙げて合図し、救急車に停止してもらい、誰を搬送しているのかを確認したことがあった。救急車が停止した時間は数十秒であった。この事実が「救急車を止めた」と誤解された可能性がある」
BPOにお聞きしたいのですが、「救急車を止めて誰が乗っているのかを見る」、こういう行為を検問というのではありませんか。
私人がこのような救急車両を私的検問することが:日本で許されているのでしょうか。
これを「数十秒」だったから許されるかのごとき記述をする:BPOの法治意識がわかりません。
BPO委員が、升味代表代行は沖タイに登場する常連、斉藤委員は「マスコミ9条の会」呼びかけ人をしているなど、ほぼ全員が左翼関係者で占められているのは有名な話です。
どのような思想を持とうと自由ですが、違法行為に眼をつぶっていいのでしょうか。
このBPO報告書「2 基地建設反対派は救急車を止めたのか」の記述は、一貫して何分遅れたの遅れなかったのという記述の羅列でしかなく、肝心の私的検問というまぎれもない暴力が横行していた事実から眼をそらしています。
BPOにかかると、このような妨害活動をされても、救命活動にはなんの影響も及ぼさなかったという驚くべきものです。
BPOがいう「反対派が実力で救急車を止めた」というのは、この下の写真のような状況を指すと思われます。
高江に続く公道には、ご丁寧にも各所に反対派の事前検問所までが設置されていました。
依田氏は地元住民なのにもかかわらず、高江を通過しようとしてこの私的検問に引っ掛かってしまい、反対派に抗議して揉み合いになったことから事件となりました。
上の写真は反対派のツイッターですが、みさかいなく警察車両までも止めて「検問」をしているのが分かります。
このような行為は当時各所で頻繁に目撃されており、画像に多く残されています。
BPOはその1枚も見なかったようです。これで「調査」というのがおこがましい。
また高江に続く道のみならず、集落内部においても、日常的に下の写真のような狂態が我が物顔で行われていました。
つまりは当時、高江集落に行こうとすると、手前の私的検問所に引っかかって「帰れ」と命令され、仮に通れたとしてもその先には車が十重二十重のバリケードを築いており、そして高江集落内部は住民すら通行できない状態が日常化していたのです。
住民は下の写真のようなステッカーを作って、せめて畑くらいには行かしてくれと、反対派に懇願しましたが、拒否されました。
高江の住民が通行許可を行政や警察に要請したのではなく、反対運動団体に頼んだことを留意して下さい。
もはや公権力は無力化し、反対運動が実効支配していたのがわかるでしょう。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-1f27.html
これについては、他ならぬ反対派の応援団長格の沖縄タイムス(2016年9月8日)ですら、こんな記事を掲載しています。
長文ですが、当時の状況を物語る唯一の記録ですので、再度引用いたします。(上写真も同じ)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/61153
「■高江の農家、ヘリパッド抗議に苦情 県道混乱で生活にも支障
2016年9月8日 ステッカーを使った対策は5日から始まった。区は村を通じ県警に通知。市民側にも伝えているが、仲嶺久美子区長は「農家から効果があったとの報告はない。周知が必要」と言う。
県道70号では8月から、市民が「牛歩作戦」として、工事車両の前を時速10キロ未満の速度で走る抗議行動を展開。
機動隊の交通規制もあって県道は渋滞し、出荷や作付けする農家を中心に地元住民の往来に支障が出ていた。
高江区の農家の男性(75)はカボチャの植え付けに向かう途中で渋滞に巻き込まれ、本来10分で到着するはずの畑に1時間以上を要した。
『作付け期間は限られている。このままでは1年間の収入に響く』と嘆く。『決してヘリパッドに賛成ではない。ただ、彼らのやっていることはわれわれの生活の破壊。もう爆発寸前だ』と憤慨する。当初の機動隊への怒りの矛先は市民側に変わりつつある。
ヘリパッド建設予定地に近い国頭村の安波小学校では5日、「牛歩作戦」の影響で教員1人が授業に間に合わず、学校側は授業を急きょ変更した。
宮城尚志校長は「反対運動を否定しないが、もっと別にやり方はないのかと思う」と首をかしげる。
高江共同売店では物品の入荷日を抗議集会のある曜日は避けるようにした。仲嶺区長は『区民のストレスは限界に来ている。早くヘリパッドを完成させた方がいいとの声も出ている』と打ち明ける。
通勤、保育園送迎、通院などに支障が出ていると苦情は絶えない。
7日早朝、抗議行動を遠目で眺めていた与党県議は『これでは反対していた人たちまで離れていく。工事を進めたい国の思うつぼだ』とつぶやいた」
生活物資は滞り、生産活動は出来ない、学校には通えないという状況が続くならば、間違いなくムラは死滅します。
反対派はわかっていて、このような暴力を働いていたのでしょうか。
記事にあるように住民の多くは当初高江のヘリパッドに反対でしたが、あまりのことに反対派から離れていきました。
そして残ったのが、外人部隊だったのです。これについては明日にします。
こういう反対派の「ムラ殺し」によって高江村落は危機的状況に陥りましたが、それが解消されるのは、沖縄県警が重い腰を上げてようしゃなく違法駐車を取り締まってからのことです。
地元集落を踏みつけにして、なにが「やんばるの森を守れ」ですか。
反対派が高江紛争ので敗れたのは (負けていないというなら別ですが)、このような地元住民から浮き上がった過激路線にあります。
地元住民の強い支持があれば、別な展開がありえたはずですが、自らそれを潰してしまいました。
救急車妨害事件は、このような反対運動の暴力全体の中に置いて評価すべきなのです。
また①の反対派への取材がされなかったという点も、この空気の中での判断だったわけです。
おそらく、BPOは大阪MBS・斉加尚代ディレクターのような調査をしたのだと思います。
斉加氏はこの番組の中で、消防署長から下の発言を引き出しています。
「ナレーター 『もう一度地元の消防本部の署長に確認しました』
署長 『本当にですね。政治的圧力もそうですし、反対派の抗議活動に業務を阻害されたというか邪魔されたことは一切ないです』
斉加『ということは、ないということですね結論は』
署長『そうです。ウソはついていません』」
反対派陣営はこのMBSの番組以降、鬼の首をとったようにこの消防署長の言葉を拡散し、依田氏をデマッター扱いにする個人攻撃を強めていきました。
ところが、この「ニュース女子」検証版において、同じ消防署長に別な聞き方をしてみたところ、このような返事がかえってきています。
なお初回版はこの消防署長への聞き取りもしておらず、手抜きと批判されても致し方ないでしょう。
これが真相です。
救急車は、反対派の過激な行動によって活動を妨げられていたのです。
現時点で署長は、公務員として証言できる範囲ぎりぎりまで答えています。
「ニュース女子」検証版も、MBSのような恣意的な編集はせずに無編集で流しています。
このように去年夏、反対派の暴力闘争が北部緊急医療に大きな打撃を与えたことは事実だったと断言できます。
それをBPOは、「渋滞はあったが救急車は止めていない」というアクロバティックな論理で反対派の暴力行為を糊塗してしまっています。
このようなことを、「木を見せて、森を見せない」と呼びます。
さてさて、①②だけで今日は終わりになってしまいました。③以降の問題は明日に続けることにいたします。
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