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2017年12月 7日 (木)

トランプ エルサレムに大使館移動

059

昨日の日経平均が大暴落しました。不気味ですね。

12月6日(15時15分)で、2万2177で445円の暴落です。特に内在的な理由が思い当たらないのに落ちるというのはイヤな気分です。
 

なにをマーケットは読んだのでしょうか。 

黒田日銀総裁は金融緩和の継続を述べて、このところ喧伝されている一部の与党からの「出口戦略」を明快に否定しています。 

ならば考えられるのは、二つの外因です。 

ひとつはいうまでもなく、北朝鮮危機の煮詰まりによる日本の地勢学的リスクの顕在化です。 

市場は米国のティラーソン路線の破綻と、年末から年始にかけての軍事オプションの可能性を折り込み始めた可能性があります。

Photo今年5月のイスラエル訪問時、現職大統領として初めて、ユダヤ教徒にとって神聖な「嘆きの壁」を訪れたトランプ大統領 (C)AFP=時事Foresightより引用させていただきました。

ふたつめは、トランプがエルサレムをイスラエルの首都に移したことです。それを伝えるAFP(12月7日)です。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171207-00000000-jij_afp-int 

「ドナルド・トランプ米大統領は6日、ホワイトハウス(White House)で声明を発表し、エルサレムをイスラエルの首都に認定する方針を表明した。米国が数十年にわたり保持してきた方針を転換する歴史的決定で、中東の情勢悪化を招く恐れがある。(略)
在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転する手続きの開始も表明した。

実はこのエルサレムをイスラエルの首都として承認すること自体は、トランプが言い出したことではありません。 

かねてから大使館移転は、米国政界の宗教保守派と呼ばれる福音派キリスト教徒や右派ユダヤ系の献金者たちが熱望してきたことで、1995年にはエルサレムに大使館移転する法律すら作られています。 

ただ、歴代の大統領たちは、中東の火種となりうるエルサレム移転を実行してきませんでした。 

それをトランプ氏が大統領選の公約として取り込んだものです。 

Photo_2エルサレム https://wondertrip.jp/middleeast/israel/90643.html

エルサレムはダビデ、ソロモンが築いた古代ヘブライ王国の輝ける黄金期の首都でした。
エルサレム - Wikipedia

またユダヤ、イスラム、キリスト教の信者にとって聖地とされる都市で、このように3つの世界宗教の聖地が重なるという都市は世界でもここだけです。

まぁ、世界三大宗教といっても、アブラハムの宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教はもともとは同じ宗教であり、分化したものでルーツが一緒ですからね。
アブラハムの宗教 - Wikipedia

しかもここはアッパス議長率いるパレスチナ自治政府の管理するとされる地域であって、イスラエルは首都と宣言していますが、国連などの国際社会にはみとめられていません。 

かつて1967年までは、13カ国の大使館がエルサレムに置かれていた時期もあったのですが、イスラエルのヨルダン川西岸やガザ地区占領に抗議してこれらの国はテルアビブに大使館を移しています。 

日本ももちろん同じで、今回のトランプのエルサレム大使館移転について追随する気はないと、菅氏は記者会見で述べています。 

では、エルサレムのどこに、米国は大使館を移転するのでしょうか? 

エルサレムはふたつの地域によって成り立っています。東エルサレムと西エルサレムです。 

Photo_3

エルサレムの東西分断の経緯はこうです。 

①1949年、第一次中東戦争の休戦協定により東西に分断。東側はアラブ地域、西側はイスラエル地域とされる。第一次中東戦争 - Wikipedia
②1950年、西エルサレムを占領したイスラエルはエルサレムを首都と宣言し、テルアビブの首都機能を西エルサレムに移転。
③1967年、第三次中東戦争でイスラエルが東西ともに占領。
④1980年、イスラエル議会、統一エルサレムは「イスラエルの永遠の首都」と宣言。
 

西エルサレムは、イスラエルの首都機能や経済センターがある新市街なので、とりあえずは問題になりません。 

問題となるのは、もう一方の東エルサレムの方です。 

Photo_5http://www.christiantoday.co.jp/articles/24188/201...

ここには有名な「神殿の丘」があり、3宗教の聖地と、いまでも運用されている宗教施設が目白押しに立ち並んだ旧市街です。 

かつてここにはユダヤ教の神殿のあった場所でしたが、ローマ帝国の支配の下で神殿は破壊され、ユダヤ教徒はその麓にわずかに残る神殿の石垣の跡に向かって祈っています。

トランプが訪れたのもここです。 

ところで、イスラエルは東西共に「一体不可分な聖なる都市」として領有権・管理権を主張していますが、先の①の第一次中東戦争の休戦協定に従って、国際社会は東エルサレムの潜在的領有権をパレスチナ国家にあるとしています。 

イスラエルの主張どおりにしてしまうと、イスラム教の宗教遺跡や施設を破壊されるという恐怖が、イスラム側にはあります。 

そこで今取られている方法は、「ステータス・クオ」と呼ばれる考え方です。ラテン語で「現状維持」という意味で、外交用語として使われる概念です。 

この東エルサレム(旧市街)の「ステイタス・クオ」とは、「神殿の丘」およびその周辺のユダヤ・キリスト・イスラム教の三宗教の施設と運営の現状をそのまま保存し共存させ、いかなる国家も干渉しないとすることです。 

つまり、数千年の間、あるときはローマ帝国、現代においては米国という世界帝国によってイスラエルやエルサレムの処遇が変化したとしても、この宗教的核心部分の「神殿の丘」とその周辺部分だけは宗教的なサンクュアリ(聖域)として保存していこうということです。 

ですから、今回トランプがエルサレムに大使館を移転するといっても、西エルサレムの新市街ですから、イスラム諸国も「ステータス・クオ」さえ守ればギリギリ許容ということもありえるわけです。(現実には相当にもめるでしょうが) 

イスラーム研究者の池内恵氏はこう述べています。 

「トランプの演説で、見どころとなるのは「エルサレム」をイスラエルが1948−49年の段階から掌握している西エルサレムに限定し、東エルサレムが依然として将来の「パレスチナの首都」として残る、ということを説得的に伝えられるかだろう。」(Foresight12月7日) 

つまり、パレスチナ国家の首都して東エルサレムを潜在的に認めた上で、米大使館は西エルサレムに移動すればイスラム国家としてもなんとか受容できるのではないかということです。 

ところがここで、ひとつやっかいなことが残っていると池内氏は指摘します。 

米大使館予定地は、米総領事館の施設と近隣の取得地となる可能性が高いのですが、この土地の位置がクセモノなのです。 

「この地区は1948−49年の第一次中東戦争で停戦ラインが引かれた「グリーン・ライン」上にあり、個人の所有権という意味でも、二国家解決の際の領土としての帰属という意味でも、係争の対象になりかねない。現在の総領事館の建物の真ん中を、1949年の停戦ラインが走っている。
順次購入してきた近隣の土地や建物はその東側に位置し、国際的には潜在的にパレスチナ国家に帰属するとみなされている東エルサレムの一部である。
米国がここに大使館を置くことは、イスラエルの主張する東西エルサレムの不可分性を物理的な施設の形で認めたと解釈されるだろう。」(Foresight12月6日)
 

きょうのトンプ演説の詳細は分かりませんが、私たちとしては細心の注意を払ってエルサレム移転をしていただきたいものです。

トランプがエルサレム移転を認めた背景には、娘婿のクシュナーとイスラエルロビーの存在が指摘されています。

トランプが来年の中間選挙を睨んでいることは確かでしょうが、とまれ、これで 1993年に締結された和平プロセスであるオスロ合意は一挙に崩壊したことになります。  

これについては長くなりそうなので、別稿にします。

それにしてもこの時期に、こんなことを中東でやられるのは実に迷惑だなぁ。

今の米国は現状でも、中東-アフガン-北朝鮮の3正面は大きな負荷なのに、そのうえに中東でこじらせれば眼も当てられません。

正直言って、止めて欲しかったですね。

追記

記事写真の「嘆きの壁」で祈るトランプについて追加情報を付け加えます。

あの写真は現職の合衆国大統領として初めて訪問した時のものです。

トランプの姿はご覧のように、ユダヤ教徒の男性を表す小さな黒い帽子(キッパ)を被り、同行したユダヤ教のラビに従って「嘆きの壁」に頭をつけて、ユダヤ教のオーソドックスな祈りを捧げています。

これはもちろん娘婿でこの東エルサレム訪問に同行したジャレッド・クシュナー中東担当上席顧問の指導があったからです。
ジャレッド・クシュナー - Wikipedia

Photo_6ジャレッド・クシュナーと夫人のイヴァンカ

ティラーソンもイスラエルには同行していましたが、嘆きの壁には行っていません。
ティラーソンは、その後こうコメントしています。

「トランプ大統領が嘆きの壁がある東エルサレムを訪問したことは米国が東エルサレムをイスラエルのものと認めたことを意味しない」

今回の大使館エルサレム移転に対してもティラーソンは強く反対したそうですが、国務長官としてはまた同じことを言うしかないだろうと思います。

あるいは、いっそ辞任ですか。

なお、トランプ氏が礼拝中、長女のイヴァンカ補佐官も女性専用ゾーン(男女礼拝所は別になっているそうですが)礼拝していました。

イヴァンカは旦那と結婚して、ユダヤ教に改宗しました。よほど旦那に惚れていたんでしょうな。

トランプ家の宗教ですが、トランプ家のルーツはドイツですので、プロテスタントの長老派です。もちろんユダヤ教ではありません。

ユダヤ教は元来がユダヤ民族固有の宗教なので、イヴァンカのように他人種は結婚などによらなければ改宗は難しいのです。

ちなみにこの嘆きの壁に黒い帽子(キッパ)を被り祈ったのは現職ではトランプが初めてでしたし、ブッシュ・ジュニア、クリントン、オバマもいます。彼らもプロテスタントですので、あくまでも大統領としては、です。

トランプという大統領は明暗のコントラストがある人ですが、今回ははっきりと失敗だと思います。

今、この時期にこのような重大決定をしたというのは中間選挙で固有の支持層にいい顔したかっただけで、その代償は大きいと思います。

こんな外交的リスクは、かえって北に対する圧力を拡散させてしまいます。悪い意味でのトランプの素人っぽさが出てしまった選択だと思います。

 

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コメント

素朴な疑問として、トランプ氏はユダヤ系なのでしょうか?記事の写真には、ユダヤ教の方々が被る帽子みたいなのを頭に載せていますが、あれって他の宗教の方でも嘆きの壁にお参りするときは被って良いものなのでしょうか?政治に宗教が絡むとなかなか難しい事になりそうな気はします。ただ、アメリカ大統領としての立場と一個人としての立場と、どうなんでしょうか?
自分としては、少し斜めに考えるフシがあるので、この時期、かなりナイイーブな問題をわざわざトランプ氏が惹起したのは、国際社会の注目を中東に引く為ではないかと思います。世界の目が中東に集まっていれば、東アジアでの米国の行動が比較的注視されにくくなる。もしかするとそれがこの時期の首都認定の裏にあるのでは?とも考えてしまいます。ネット上では、在韓米軍家族の引き上げに関する情報も出始めています。アメリカがXDAYを決め始めているのでは?とか妄想しています。

あの小さい黒帽子は、あそこで手をつく男子は皆被るしきたりだそうです。小泉元首相の被る画像とか、ネットに残っています。
こんな小ネタしかフォローできない、今朝の記事は私にはなかなか深掘りが難しい、勉強になります。

一宮崎人さん。記事に追加情報として付け加えました。

本題からは外れていますが、壁とキッパの追記は少しニュアンスが違います。ユダヤ教徒の男性を表すのではなく、神の前で頭を隠すという服装規定なので、敬虔な信者は日常でかぶり、観光客もあそこで手をつくならキッパを被るルールです。
現場で借りて被ります。男女手をつく場所が違いますので女性専用ゾーンがあります。
http://m-mikio.world.coocan.jp/hukusou.htm
ここが分かりやすいです。
トルコなんかで観光客がモスクを見学する時は女性が髪を布やフードで隠すような行為です。
娘婿がユダヤ系なのであの写真が盛って見えています。
毎日新聞の5月の記事にもミスリードした表現があります。
家族に教徒がいてあそこに寄ったら一般人なら一家で手をつくでしょう。現職とかそこら辺配慮なしかワザとやるのがトランプ式と言えるかもしれません。なので管理人さんも「あくまで」と書かれているのかと思っています。

本記事中の大使館敷地の位置の話はびっくりしました。
たしかにこの時期にはとても嫌なのですが、そう出ないと後手になる何かがポツポツと起きているのではとも思えます。

「ユダヤ教は元来がユダヤ民族固有の宗教なので、イヴァンカ
のように他人種は結婚などによらなければ改宗は難しい」のか
も知れませんが、案外とユダヤ教へ帰依するのはカンタンだと
何かで読んだ記憶があります。ユダヤ人がいるのではなくて、
ユダヤ教徒がユダヤ人なんだそうで、日本人のユダヤ人もいる
との事。

それどころか、現在のユダヤ人の多くは中世の黒海付近で栄
えたハザール王国の末裔だそうで、現在のユダヤ人が見るから
にブロンドの白人種なのはそのせいで、元のオリジナルのパレ
スチナ人のユダヤ人は現在のアラブ人っぽい黒髪の褐色肌を
していて今となっては少数派なんだとか・・ややこしい。
ハザール王国は何を思ったか、ユダヤ教を国教にしたのだそうで、
その後すぐに滅亡してしまい、国民の多くが世界中に散ります。

管理人さんが書かれているようにユダヤ教・キリスト教・
イスラム教は、基本的に同じ唯一の神を崇拝していて、各教の
違いは、その唯一神が使わした預言者が誰か?によって決まり、
アダムを始祖とした預言者の教えがユダヤ教で、キリストが
預言者かつ復活昇天して神になったという教えがキリスト教、
ムハンマドが預言した教えがイスラム教になります。

その意味では、三つの世界的宗教の聖地がエルサレムで近接
している事は不思議というより、ガチ当然です。トランプ親ビン
は、「おめーら、兄弟やないかい」「争うなんて、パープリンの
する事だ」「ええ加減、宗教と政治・経済を離せや、ボケ!」
という、毒を持って毒を制す親ビンらしい荒療治なのかも知れ
ませんわ。

管理人から・このコメントはアホンダラ1号さんです。

トランプ大統領の声明で『自身の決断はイスラエル・パレスチナ間で続く激しい対立の解決に向けた「新たなアプローチ」の開始を意味するものだと説明。「2国家共存」による中東和平を支持する米政府の姿勢に変化はないと強調した。』とありますが、近い将来のイスラエルの政権交代のことを言ってるのかなと。

ネタニヤフ首相の後任候補、労働党のガベイ党首 パレスチナ和平に意欲
https://a.excite.co.jp/News/society_g/20171203/Newsphere_34786.html
2016年、内閣の若手幹部だったアビ・ガベイ氏は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と袂を分かつこととなった。その彼が今、スキャンダルにまみれた首相の後任最有力候補となっている。

右派の主張はしてますがネタニヤフとは少々異なるようで。パレスチナはイスラエルの政権交代に向けて、いま内ゲバなんかやってる場合じゃないでしょうに。

中東から世界を見る視点(5)ムスリム同胞団と米国
http://shinsho.shueisha.co.jp/column/middleeast/005/

サウジがレバノンに経済封鎖の圧力をかけてるのでヒズボラと手を切ることになるんじゃないんですかね。トランプ大統領はムスリム同胞団と良好な関係を築いてますしシリアの政権交代も目指してるんじゃないですか?オバマ元大統領が目指していた大シリア的な中東政策路線は変更してないと思いますけど。ガザもイスラエルも人口増加で占領地区を今さらどうかするのも物理的に難しそうですし。パレスチナの内ゲバをはじめ、アラブ諸国の内ゲバ解消とヒズボラを敵に回すであろうレバノンがさっさとイスラエルと手を結んでくれないとテルザアタルの虐殺が再び勃発しそうで危険ですね。そうならないためにはエルサレムがーと言ってる場合じゃないと思うのですが。

アホンダラ1号さん。「ユダヤ教へ帰依するのはカンタンだと 何かで読んだ」そうですが、私が調べた感じではそうとうにキツイようです。
コメント欄には入りきれなかったので、記事にしました。

ふゆみさん。私が書いた意味は、イスラム寺院で足をださない、あるいは女性がスカーフをかぶるというような意味ではなく)当然それもありますが)、クシュナ夫妻が今回のトランプの決断をさせた人たちという意味です。

ユダヤ人は国を失って、異教徒の世界で、長く保護されるものもなく、散々迫害もされつつ、タフに生き延び、国を求めて、つくって、戦って、現在に至ります。

憲法9条?何それ?美味しいのっていうのが彼らの視点でしょうね。

一部の識者が、憲法9条を守って国が滅んでも、歴史に名が残るというような事を言っているようですが、ユダヤ人には鼻で笑われそうです。

もっとも我が国をそういう国にしたのもユダヤ人なのかもしれませんが(陰謀論)

かつてさん。イスラエルに9条をあげようとしたら、頭大丈夫かとオデコに手をあてられるでしょうね(爆)。

私としてはぜひ北朝鮮と中国に差し上げたいので、「9条を中朝に輸出する会」をつくりましょう。

大使館の移転が法律で決められたのは、1995年、確か、アラファト議長とラビン首相が握手した年。でもラビン首相暗殺されて前に進められなくなったような記憶。あれから22年。普天間も。

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