五輪閉幕 祝祭の後の虚しさは・・・
祝祭というのは、かならず終わりがくるもんです。
ピョンチャン五輪が明日で閉幕してしまいますが、さぁ、どうしましょう、ムン閣下。
楽しかった五輪という冬休みの後には、かねてからの宿題の米韓合同軍事演習が待っています。
宿題を出した米国は、やるに決まっているだろうと言っています。これに関しては米国内部の意見の食い違いはありません。
「米国務省のナウアート報道官は20日の記者会見で、平昌冬季五輪・パラリンピック期間(2月9日~3月18日)中の実施を延期した毎年春の米韓合同軍事演習について「(パラリンピック後に)実施しないと考える理由はない」と述べ、計画通り実施されるとの認識を重ねて示した。
北朝鮮は関係改善を進める韓国に対し、米韓軍事演習の中止を要求。韓国の宋永武国防相は20日、演習の日程などをパラリンピックが閉幕する3月18日から同月末までの間に発表すると表明している」(産経2月21日)
http://www.sankei.com/pyeongchang2018/news/180221/pye1802210011-n1.html
一方、韓国は建前では、「やる」といわざるをえない立場に追い込まれています。
あたりまえです。同盟国間の取り決めはいったん決めた以上履行するか、関係そのものを白紙にするかの二択択一しか残らないからです。
さもないと、同盟の基盤である信頼関係がなくなってしまいます。
これは日本とて同じで、普天間移設は日本政府が言い出したことを、米国が合意し政策化されたものです。
したがって、政策化の途中で白紙化することはもとより、鳩山氏のように一方的変更を加えることは、同盟関係そのものを棄損することになります。
どうも移設反対派の人たちは、移転問題が国家間取り決めを根拠にしているということに気がついていないようです。
国家間取り決めですから、地方自治体には口を突っ込む余地は本来まったくありません。
これは国際常識であって、地方自治体がキャスティングボードを握ってしまっているかにみえる日本のほうがおかしいのです。
閑話休題。
さて韓国は、当事者であるソン・ヨンム(宋永武)国防部長官までもがモゴモゴと煮え切らないことを言い始めています。
「【ソウル聯合ニュース】韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防部長官は20日、平昌冬季五輪・パラリンピック期間と重ならないよう実施を延期した韓米合同軍事演習と関連し、「パラリンピックが終了する3月18日から4月より前に韓米両国の長官が正確に発表する」と述べた。両国は演習について、発表までは肯定も否定もしないことにしたと伝えた。
宋氏はまた、北朝鮮が五輪参加の条件として韓米演習の延期を要請したのかと問われ、「事実ではない」と否定した。演習の延期で韓米同盟に亀裂が生じるとの懸念には「(同盟は)1ミリも誤差がない」と述べた。韓米両軍は朝鮮半島有事に備えた合同軍事演習を毎年春ごろ実施している」(聯合2月20日)
まぁ、ソン長官は日本でいえば防衛大臣ですから、こう答えるしかなかったのでしょう。
宋永武 - Wikipedia
ソン長官のおでこにひや汗がにじむような苦しい言い分ですが、「3月18日から4月まで」と期限を切ったところで、米国は冒頭の国務省報道官が「実施しないと考える理由はない」とまでいう以上、回答を一月延ばしただけにすぎません。
冬休みの宿題ができなかったので、一月待ってというわけで、おおよそ国家が言うことじゃありません。
ソン長官は海軍参謀総長を経験していますから、いまこの時期に米韓合同軍事演習を韓国側が拒否したらどのようなことになるのか、よく分かっているはずです。
ただし、ソン長官は、ムン政権の非主流派です。昨日紹介した「対北対応ファイブ」にはお呼びがかからず、国防の責任者でありながらプリンセス・ヨジョンには会わせてもくれませんでした。
その冷や飯ぶりが忍ばれます。
かてて加えて、あしたの閉会式にやって来る北の代表は、なんと韓国に散々テロを仕掛けてきたテロリストの親玉格であるキム・ヨンチョル(金英哲)党副委員長です。
金英哲 - Wikipedia
キムがかつて偵察総局のボスだったとは有名で、この部署は対外テロ・内部工作・内部攪乱の大本締めだったところです。
朝鮮人民軍偵察総局 - Wikipedia
金英哲
「金氏は対韓国政策を統括する党統一戦線部長も兼務しているとされる。一方、かつて工作機関、偵察総局のトップとして、2010年の韓国哨戒艦撃沈事件や延坪(ヨンピョン)島砲撃事件などのテロを主導したとみられており、韓国や米国の独自制裁の対象となっている」(産経2月20日)
http://www.sankei.com/pyeongchang2018/news/180222/pye1802220063-n1.html
韓国政府は天安沈没事故を、北のテロと断定しています。
ソン長官がまともな海軍軍人だったのなら、自分の部下が殺された天安沈没事件や、ヨンピョン島砲撃事件を忘れているはずありませんから、複雑な心境とお察しします。
天安沈没事件 - Wikipedia
延坪島砲撃事件 - Wikipedia
ソン長官は青ざめたことでしょう。こともあろうに、うちの国を散々破壊して回ってくれた張本人がのうのうと「平和の祭典」の締めくくりにやって来るというのですからね。
とまれ、もう引き延ばしは効きません。
いちおう建前では、昨日書いたムン政権主流のチョ・ミョンギュン(趙明均)統一相もこう述べています。
「趙氏はこの日、国会法制司法委員会の全体会議に出席し、五輪終了後に合同軍事演習を実施するかとの問いに、「韓米の軍事当局間で軍事演習を再開する方向で協議を進めていると聞いている」と答え、反対する考えはないとした」(聯合2月20日)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/pgm/9810000000.html?cid=AJP20180220001200882
私にはとうてい本心だとは思えませんが、いちおう頭では分かっているようです。
ここまで煮詰まれば自ずと、ひと月間にムン政権が仕掛けられる選択肢は限られてしまいます。
イエスと言って、例年どおり米韓軍事演習を実施して、自由主義陣営にとどまるのか、あるいはノーと言って、ピョンヤン詣でに行くかです。
ちなみに、ピョンヤン詣でに行くとムンが言い出せば、米国は激怒するでしょうが、それを同盟解消の理由にはしないはずです。
在韓米軍を引き上げることも、今この時期にすることはありえません。
なぜなら、米国の対北軍事攻撃を実施する場合、韓国軍はアテにしていないでしょうが、オサン(烏山)空軍基地などは重要な前線基地ですから、米国のほうから手放す理由がありません。
仮に 同盟解消となるなら、その手袋を投げるのは韓国側にさせるはずです。
決められないムンとしては、さらにグダグダと半年ほども引き延ばしたいのでしょうが、イヴァンカ・マリー・トランプ補佐官は、その釘を押しにいくのです。
間違っても北側代表団と握手はおろか眼すら合わせず、ワンショット写真におさまることすらないはずです。
ああ、祝祭は一時、その終わりは虚しいもんです。
※改題しました。いつもすいません。
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コメント
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同盟国の米国に対し反意しか示さない韓国との合同演習を、私的にではありますが、以前から少し疑問に思い、北朝鮮・中国に対する牽制の為だけと思っていたのですが、同盟国の信を試す韓国への踏み絵のような意味合いがあったのですね。
言われて見れば得心。
同時に目から鱗です。
最悪の時期に最悪の選択をする事の多い韓国。
不謹慎ではありますが
ムンムン大統領の宿題の選択に、北朝鮮訪朝の有無など少し楽しみかもしれません。
投稿: 北の国から | 2018年2月24日 (土) 08時58分
【トランプ大統領】中国の仮想通貨事情に変化?【制限?】
http://ビットコイン.pw/articles/P4trV
セキュリティーレベルが高い仮想通貨の取引に政府が関与するのは事実上不可能ですが、中国政府は仮想通貨取引にプレッシャーをかけて人民元の流出を防ぎたいのが本音です。
https://www.ft.com/content/2af0a718-17ce-11e8-9e9c-25c814761640
ECBがアメリカの通貨戦争に警戒しています。
今後、仮想通貨に影響するような制裁があるのかもしれません。
韓国はビットコイン取引の通貨割合が高く、先月取引の制限もしてますし文在寅といえどもアメリカと連携してないとは言い切れないと思います。
文在寅がどんなに従北だとしてもアメリカが外交や安全保障にモラトリアムを与えるわけもなく、粛々と韓国に協力を求めていくだけでしょう。普通に考えればいくら韓国保守のほうが協力的とはいえこの時期に韓国の政治的混乱は避けたいと思うのが一般的だと思います。
ソ連崩壊後、中国が助けてきたからこそ北朝鮮が存在できるわけで、アメリカが中国に対して強硬な政策をとれば北朝鮮にとって死活問題です。だからアメリカが中国自身にお仕置きをするとき北朝鮮が暴発しないよう核問題などにも宥和的なコメントをするんだと思います。アメリカにとって本丸は中国ですから旧ソ連が崩壊し、衛星国が民主化したことを考えれば北朝鮮への軍事攻撃は本当に最後の最後の手段なんでしょうね。
米トランプ政権:北朝鮮に最大規模の追加制裁-船舶や商社など対象
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-02-23/P4M2QO6S972801
大統領は「財務省は間もなく、北朝鮮が核開発プログラムと軍の維持に利用する資金と燃料の調達源をさらに断ち切る新たな措置を講じる。対象は北朝鮮の制裁逃れを手助けしている56の船舶、運輸会社、商社だ」と述べた。
投稿: いろは | 2018年2月24日 (土) 09時13分
私がイバンカだったら、無理にでも北朝鮮のキムと会い、熱いハグをし、耳元で「今晩どう?」とささやくのです。そしてその後の記者会見で言うのです。「私とキムは熱い友情を交わした」「北朝鮮は核、ミサイル開発をやめ、米国の友好国になるだろう」
一方、トランプは「イバンカ、good job!」「私も戦争は嫌いだ」と、ニンマリ。そのくらいの仕事をしないと、イバンカが韓国に行く意味はないでしょう。
投稿: 九州M | 2018年2月24日 (土) 14時06分
>仮に 同盟解消となるなら、その手袋を投げるのは韓国側にさせるはずです。
同感です。韓国が投げたように他国に見える、というのも含めて。そこら辺の他国への圧力のかけ方が、中国と米国はちがいますね。
大統領府のファイブさん達の目論見では五輪中のプロパガンダでもっと国内の親北統一人口が増えるはずだったのが思いの外反対派が多くて、軍やソン長官等を力で押しやりきれていません。五輪中は外国記者も詰め掛けて衆目もありますので、弾圧や粛正は、あるならパラ終了後なのかなと想像しています。
マスコミは金妹とイバンカを並べ語っていますが、イバンカは役職持ちの元々相当仕事の出来るエリートですので、今後も報道から彼女の娘美女コネ的な要素をある程度引き算して読んだ方が、実像が見えるとおもいます。
投稿: ふゆみ | 2018年2月24日 (土) 23時12分