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2018年3月

2018年3月31日 (土)

中北呉越同舟同盟の誕生

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メディアでは報じられていないのですが、昨日書いたとおり先日の正恩が、中国にあらためて臣従を誓いました。 

正恩の26日に開かれた習の開いた食事会挨拶の部分です。これは朝鮮中央通信が配信したものですから、北の公式発表となります。 

私が注目する部分だけを抜粋します。煩雑なら写真の下に飛んで下さい。
※全文はこちらから産経3月29日
http://www.sankei.com/world/news/180329/wor1803290029-n1.html 

「私はまず、党と国家事業を導く多忙な中でも自ら時間を作り、われわれを真の兄弟のように熱烈に歓待してくださっている尊敬する習近平総書記同志と彭麗媛女史に心から謝意を表します。
今回、われわれの電撃的な訪問を快く受け入れてくださり、訪問が実りあるものとなるよう習近平同志、中国の党と国家指導幹部同志らが短時間で傾けた真心と手厚い配慮に私は深く感動し、大変感謝しています。
習近平総書記同志が中華人民共和国主席、中華人民共和国中央軍事委員会主席に選ばれたことに対し、熱烈にお祝いします。
私の初の外遊先が中華人民共和国の首都となったことはあまりにも当然のことであり、朝中親善を代を継ぎ命のように大切に守っていかなければならない私の崇高な義務でもあります。
川一つを挟み接する兄弟的隣人である両国にあって、地域の平和環境と安定がどれほど大切であり、それを勝ち取り守っていくことがどれほど価値あることか、はっきりと身にしみています。
われわれは習近平総書記同志の賢明な指導の下、党第19次大会が示した課業を貴国人民が輝かしく貫徹し、中華の偉大な復興を成し遂げることを心から祈っています

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要約すると、正恩はこう言っています。 

①習を「同志」と呼び、「兄」と呼んだ。
②習をが終身国家首席になったことを祝う。
③中朝親善は永遠である。
④中朝は鴨緑江を隔てて一衣帯水のj隣国であって、この地域の安定が必要だ。
⑤中華帝国の偉大な復興を祈念する。
 

もちろん公式晩餐会におけるスピーチですから、美辞麗句に覆い尽くされるのは当然で、5掛けていどに割り引いて聞いて置く必要はあります。 

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このスピーチで注目すべきは、正恩が習を「兄」と呼び、「中華(帝国)の復興を祈念する」と述べた意味です。 

これが意味することは、繰り返しますが、中華帝国に北朝鮮が従属国として服従することを改めて誓ったという意味です。 

中国とコリアの関係を、自由主義世界の二国間関係と思うと、裏切られることになります。

あの両国関係には、古代から近世まで連綿と続いた中華秩序意識が支配しているのです。

日本人は唯一、華夷秩序から自由な国でしたので、それが分かりません。

正恩が本気かどうかはもう少し見ねばなりませんが、 とまれ中北関係が、とりあえず元の鞘におさまったということです。

元の鞘とは、華夷秩序の体系の頂点に位置づけられる中華皇帝を、「兄」とも慕う臣下の「王」の位置に、正恩が復帰したということです。

ボンから出向くというのも、重要なチャイナ・プロトコールです。

あくまで臣下は皇帝の徳を慕って行くわけですから、最初は訪中して臣下の礼をとらねばなりません。

まぁ行きさえすれば、北京の壮大さに打たれ、皇帝の慈悲のお心も肌で分かるというものです。

言い換えれば、反抗期のスネガキを脱して、真面目な「属国」として励みますと、ボンが誓ったことになります。

さて、よくある素朴な誤解に、中朝は同じ「共産主義国家」なのだし、中国は朝鮮戦争で100万の義勇軍を派遣した同盟関係ではないか、今だって原油をパイプラインで送って助けているじゃないか、というものがあります。 

まぁ、表面的にはそうですが、この見方は北朝鮮の側から見たもので、ではなぜ、そんなことを中国がしているのか、という疑問には答えていません。 

中国にとって、北朝鮮は不愉快、かつ不安定な隣国です。 さらに強い表現を使えば、いつ核攻撃をしかけてくるかもわからない潜在的な「敵」だと考えているはずです。

彼らの核は、現時点でも北京を射程内に納めており、軍事的脅威度は日本や韓国などよりはるかに高いはずです。

逆に北から見れば、地上軍を地続きで大量に投入できる唯一の国が、中国です。

地政を見れば分かりやすいと思います。 

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上の中朝国境付近の地図をみると、中国と北朝鮮の国境は、鴨緑江という一本の河で隔てられているにすぎません。 

下の写真を見れば、この鴨緑江は自然国境としては大変に危うい壁でしかないことがわかるでしょう。

河の中央でも水深は浅く、夏にはじゃぶじゃぶと横断している庶民が見られますし、冬には凍結して歩いて渡れますので、脱北者は全員このルートで逃げています。

歴史的にも、中国義勇軍は朝鮮戦争時に大挙して渡河しています。

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今、この中国軍が渡河した地点に中北をむすぶ原油パイプラインが走っています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-2910.html

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かつては援軍で来ましたが、これからもそうとは限りません。逆もまたありえるのが国際関係というものです。

というのは、援軍に来たということは、軍事制圧にも簡単に来られるということを意味しますからね。

軍隊に限らず、日本統治以前から朝鮮人は食いっぱぐれると続々と満州に移住していきました。 

かの金王朝初代の金日成も、朝鮮領内に暮らしていたのはほんの子供の時だけで、あとは一貫して中国東北部jソ連沿海州で活動していました。

その結果、朝鮮民族は南北朝鮮だけでなく、中朝国境の北側の延辺朝鮮族自治州にも数百万人が暮らしています。

言語はバリバリの朝鮮語で、キムチとプルコギといった朝鮮料理が普通に食べられています。

ですから、コリアが側から見れば、朝鮮民族は北朝鮮・韓国・延辺朝鮮族自治州の3ツに分断されている民族だということになります。

あれだけナショナリズムが強烈な朝鮮民族が、「大朝鮮」主義を夢見ないはずがありません。

韓国歴史教科書には、古代朝鮮の版図を下のように記述しています。

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韓国歴史教科書は旧満州も版図だったと主張して上の地図を載せましたが、中国側の猛反発を食っています。

ちなみに、北と韓国が「高麗連邦」と名付けているのは、高麗は高句麗の後継国家ですから、中国に対する「大朝鮮」主義の暗喩が含まれていると私は見ています。

それはさておき、中国から見れば、「大朝鮮」主義など夢見られたらトンデモない話で、これを許したら最後、満州族やモンゴル民族(内モンゴル)、そしてなにより独立運動が存在するチベット、ウィグルが大爆発するでしょう。

そうなれば、「中華の偉大な復興」どころか、内戦が勃発し、中国は再び軍閥と民兵が跋扈する清朝末期に逆戻りしていくことになります。

ですから、中国は「大朝鮮」主義による統一は絶対に認めませんし、そのような気配すら許しません。

唯一中国が認める朝鮮統一は、中国の支配圏にある非核化された「高麗連邦」だけです。

このように中国にとって朝鮮を見る眼は、原則として冷やかな「敵国」を見る眼なのです。

共に「共産国家」だといっても、方や開放改革路線を取る異形の国家資本主義国であり、方や社会主義とは名ばかりの宗教国家です。

似ているのはひとり独裁ということですが、中国には権力の家系相続はありません。

朝鮮戦争で助けたのは、米軍が鴨緑江を渡って中国領に侵入を開始したから自衛する必要に迫られただけです。

元々、建国したばかりの共産中国には、北を支援する国力などなかったのに、金日成の南進の失敗につき合わされたのです。

同じ理由で、文禄・慶長の役の時に、明が大軍を派遣して日本軍と戦ったのも、加藤清正が鴨緑江を超えたのが理由です。

今、経済支援をしているのは、北が自然崩壊して、韓国に吸収され、韓国主導の朝鮮統一がされたら、その次には「大朝鮮」構想の危険があるからです。

北もこの冷やかな中国の視線をよく知っています。そもそも、中国に支配し続けられた長い歴史を、あの「恨みは千年たっても忘れない」朝鮮民族がよもや忘れるはずがありません。

南北を問わず、朝鮮の側からしても、中国は民族感情の深層においては日本より嫌悪する国なはずです。 

北の初代が「主体思想」という珍妙なイデオロギーを作った理由も、米国もさることながら、隣国・中国から自由な「主体」になるという含意がありました。

初代、2代目は中ソ対立を巧妙に利用して中ソを手玉にとり、両側から援助をせしめました。核開発も両側から技術を得ています。

中国からは、朝鮮族も多い瀋陽軍区の反北京感情をうまく利用して、技術移転させてきました。

ロシアは元々北という国自体の製造元の上に、中国との対抗意識をくすぐられて弾道ミサイル技術や核爆弾の製造技術の移転に力を貸しました。

結局、中露が作りだしたのは、核を持った北というポケット・モンスターです。

したがってこう考えてくると、北の核武装が中国に対しても潜在的に向けられているのは当然のことなのです。

もし仮に北と中国の関係が、日米同盟のような関係ならば、中国の「核の傘」に守られているはずですから、あれほどまでに必死に核武装に励む必要はないはずです。

つまり、かつてのフランスのドゴールのように、「中国は米国から上海を核攻撃すると脅かされたら、北を守るはずがない」という思いがあったと考えられます。

いや、それどころか、中国にとって不利益なことを北がしようとすれば、北国内の親中分子を使って、政権転覆を図るだろうと睨んでいました。

まぁ、この北の危惧はそのとおりだと思いますね。

実際に、中国は初代の時から北内部に勢力を植えつけてきました。日成は建国当初から党内闘争にあけくれましたが、中国派(延安派)は真っ先に粛清の対象となり抹殺されました。

3代目となった去年も張成沢のような中国派を使って、正恩の暗殺クーデターすら狙っていたと噂されています。

張成沢は親中派のボスで、中国との政治・経済のパイプを握り、鉱物輸出で巨額の資金を得ていたとされています。

彼の処刑に伴って、張派=親中派は将軍クラスまで含めて大量に粛清されたと噂されています。

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また正恩が兄の正男を公衆の面前で暗殺したのも、彼が張成沢から資金を得ていただけではなく、中国に庇護されて、その駒にされる可能性が濃厚だと疑われたからです。

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つまり、正恩は中国を「兄」どころか、心底最大の脅威ととらえているのです。

米国は金王朝宮廷内部まで手を伸ばせませんが、中国だけはそれが可能だからです。

というわけで、ただ米国とだけの関係だけで、北の過激な核武装化を見ては分からなくなります。

ところが、私が何回か書いてきたように、正恩はトランプとのマッドマン・レースに破れて直接会談という袋小路に追い込まれつつあります。

いまや北は正面の敵である米国と、背後の敵である中国に背腹をはさまれる形になってしまったのです。

そこで正恩は、恥も外聞もかなぐり捨てて中華帝国に臣従を誓ったというわけです。

一方習も、終身国家主席の座をかけた全人代での権力闘争で、米朝首脳会談に対して対応ができない状況だったので、正恩の逃げ込みは渡りに舟でした。

祖父からの遺訓の「主体」を捨てて臣従・屈伏に走った正恩、かつてはこの男を暗殺しようとした習。

まさに心底憎み合う者同士による呉越同舟・同床異夢劇、そのものです。

今後、この両国の間で、密かに「非核化」の意味を煮詰めることになるでしょうが、かんたんに決まるかどうか、見物です。

 

2018年3月30日 (金)

「怒鳴るど」と3代目のマッドマン・バトル最終章

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HNつよしさんのコメントにお答えしていたら長くなったので、こちらに移しました。 

正恩は焦っているというよりも、これしか選択の余地がないのですよ。 

昨日あたりのメディアを見ると、野党は自分の責任を棚に上げて「緊張緩和に乗り遅れた」というのが定番でしたね。 

また、「米韓両大統領を手玉に取とる金正恩」(※)なんてもんもあって、プップッでした(笑)。「米中に手玉に取られる」の間違いでしょう。 
http://miu.ismedia.jp/r/c.do?R2W_vfB_1r3_sds

ハンギョレは「グレートゲームの始まり」(※)というようなことを解説していましたが、今はそこまで大げさに考えるとかえってわからなくなります。
※https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180329-00030153-hankyoreh-kr

プレイヤーは6カ国協議のままです。日米中露北韓です。 

中村逸朗さんには怒られるかもしれませんが、 ロシアは今、中東とウクライナで手一杯で、東アジアの北の暴走にまで、手を突っ込める余裕はないと思いますから、とりあえず一言主ていどで考えてもいいでしょう。 

あとはそうですね、正恩の亡命候補地と会談場所にいく経由地くらいでしょうかね。 

で、正恩の目線に身を置いて考えてみればいいのです。結論から言えば、彼は目算が狂ったのです。 

伝統芸を封じられたからです。北の伝統芸って何か考えたことがおありですか。「瀬戸際戦略」というやつです。 

べつの言い方をすればチキン・レース・セオリ、あるいはマッドマン・セオリ、彼ら流に言えばパルチザン外交です。 

これは2代目正日が確立したやり方で、ともかくうるさい。 

要求を通すために、恥も外聞もなく大声で、「ミサイル打ち込むぞ。火の海にするぞ」とわめき、そのうち「潰れて難民だすぞ」という崩壊カードまで取り出すのですから、常識人は負けちゃったんです。 

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負けて、ダラダラと20年間近く引っ張り回されたあげく、その間カネや原油までくれてやり、原発まで作ってやろうとしました。 

しかし、しっかりとその間に得た「時間の利益」で核技術を入手し、弾道ミサイルを作り続け、そして息子の代でとうとう本格的な核武装を完了してしまったのですから、なんともタチ悪い。 

3代目は特に天才というわけではなく、親父のコピーです。一家相伝というやつですな。 

いや、なんの、やりかたは簡単なんですよ。戦争すると喚き続け、暴発することを誇示することで相手の妥協を引き出すというだけです。 

そして国際社会は怒ったり、制裁したり、忠告したりするでしょうが、一切しかとして、シコシコと核ミサイルを作り続けます。 

出来ちゃえば、こっちのもんだからです。どんなに役不足で、本当に使えるかどうか分からなくても、とりあえずICBMには間違いないですからね。 

で、去年いっぱい「週刊弾道ミサイル実験」を続けて、順調そのものに見えました。創業のおじぃ様、中興のお父様、私、正恩は3代目にしてほんとうの「強勢大国」に仕立て上げました。うるうる。

とうとうワタクシは、お預かりした「共和国」(←どこが)を、中国のヤローにもなめられず、米国とサシで戦える国に致しました。Rebelpepper160212thumb720xautoと、さぞかし得意だったでしょうね。 

ところが、米国は今までの青瓢箪から、マッドマンに代わってしまったのです。

なんとこの男はあろうことか合衆国大統領でありながら、まるでヤクザのような口をきき、正恩より過激なことを言い出したのですから、こりゃ想定外です。

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暴露本のタイトルからして、「炎と怒り」ときたもんです。 

瀬戸際外交は弱者がやるもので、世界の盟主がやるもんじゃありませんからね。 

この男は名前は「怒鳴るど」というくらいですから、ツイッターでガンガン怒鳴る。

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怒鳴るだけならともかく、世界最大の軍隊の最高指揮官ですから、空母を3隻連れて来る、B1戦略爆撃機を境界線すれすれまで飛ばす、斬首作戦をやると公言する、トマホーク巡航ミサイル原潜を配備するなどと、とことんやるんですから始末に負えません。

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フツーの合衆国大統領なら、まぁやらないだろうなと思えても、この「怒鳴るど」に限ってはわかりません。常識が通用しないと思わせるのが戦法ですからね。 

かくして、イニシャチブはすっかり米国のマッドマンに奪われて、いまや駆け出しの極東マッドマンは防戦一方となってしまいました。  

「時間」を武器に使った外交戦術は、いまやトランプに奪われてしまったんです。 

パターンを変えないと、この凶暴なオヤジにはかなわないと思ったんですね。 

そこで、3代目が思いついたのは、隣国の北シンパを使うことでした。 

初代、2代目から、北は半世紀以上かけて韓国内の各層にシンパを大量に扶植してきたのです。 

彼らにパククネをろうそくデモで焼き殺させ、一気に北の同調者を大統領にしてしまいました。 

ここまでうまくいうとは3代目も思っちゃいなかっでしょうが、ムン・ジェインは自分から率先して北のためになんでもしますという男なんですから、手数が省けます。 

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 ムンと北の合作で、冬季五輪を徹底的に政治利用し南北融和を演出し融和ムードを作ったところで、一気に米国に直接会談を呼びかけることでした。 

苦し紛れですが、彼我の間合いを詰めるいい戦法です。 

3代目はまず乗って来ないだろうなと、タカをくくっていただろうと思います。 

拒否すれば、平和の敵とかなんとかワンワン批判できますし、そもそも米朝直接交渉こそ初代から夢に見た憧れのステージなんですから。 

だって、カッコイイでしょう。世界の盟主相手に、たった人口2千5百万の辺境の最貧国がサシで勝負するんですから。 

ところが、「怒鳴るど」はもう一手先まで読んでいたのです。 

冬季五輪で南北融和を仕掛けて来るのはとっくにわかっていましたから、やりたいようにやらせたうえで、融和の頂点として米朝トップ会談を仕掛けてくることを予想していました。

そしてそうなったら喜んで受けるのです。

なぜかって、これで延々続いた不毛なチキン・レースを終わりにできるからです。

、この後は?

そう、ないんですよ。これを流したり、非核化を呑まないならもう後は戦争だけ、という大義を米国は得てしまうのです。 

ここまでオレは国連に諮りながら外交的努力をしたが、北はあくまでも核を手放さない、さぁ国際社会の皆さん、この凶暴なヤローを懲らしめちゃっていいですか、というわけです。 

そのうえご丁寧にも「怒鳴るど」は、トランプ・トラップまで仕掛けてきました。 

米朝会談を受諾した後になって、米国でもこのふたりより強面の奴はいないというポンペオとボルトンという二人組を閣内に入れて交渉役に当たらせることにしたのです。 

これで終わりかとおもえば、さにあらず。空席の駐韓大使には元在韓米軍司令官のウォルター・シャープ(陸軍大将・予備役)となりそうで、もうそうなったら完全な戦争モード・・・、ブルブル。 

だから、ティラーソンやジョセフ・ユンが、北との交渉窓口でいる頃に手打ちしときゃよかったのですよ。 

彼らだったら、核の「段階的廃棄」とか、「封じ込め」戦略なんて美辞麗句を使って、ICBM凍結・中距離弾道ミサイル温存くらいで手打ちしてくれたのにね。

イッツ・トゥ・レイト(←キャロル・キングの節で)

マッドマンの子分2名が仕切る準備協議なんて、どうせ核放棄宣言くらいじゃおさまらずに、核査察で米軍人が北国内を走り回ることまで要求してくるに決まっています。

そうなったら、どうすんの~、ボク。

蹴ったら、戦争。呑んだら赤っ恥で、軍隊にクーデター起こされて亡命しなきゃならなくなるかも・・・。

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そこでもう後がない3代目は、旧宗主国の胸に飛び込んでいったのでありました。

3代目が言った「兄のように温かく迎えてくれた」というのは、華夷秩序のこの地域では、中華を兄と慕って属国になりますという意味以外なにものでもありませんからね。

というわけで、3代目は属国になることを誓って、「血盟の関係」を取り戻したのです。 

ま、泣きつかれた習は悪い気はしなかったでしょうよ。もう手放したと思われていた「北カード」が自分から戻ってきて、うまくすれば、南北統一すれば、ごっそりと朝鮮半島は中国の支配圏ですからね。

さて、今後ですが、「怒鳴るど」は今回の3代目北京飛び込み劇をさほどイヤな気分で見てはいないと思います。

だって、1年前に戻っただけですから。

ちょうど去年の春頃、トランプ訪中前後に、「習よ、いいかげん3代目をどうにかさらせ」と叱咤していた頃となにも変わりませんもんね。

対北圧力カードが一枚増えたぜ、習は「椅子をひとつ確保しただけだ」、ていどのところでしょうか。

ちなみにこの「中国はテーブルのイスを確保したに過ぎない」という表現は、「ナショナル・インタレスト」(3月29日号電子版)における、オリアナ・マストロ女史のものです。

米国はいたってクールにこのように受け止めているということです。

で、これで会談準備交渉が不調だったり、流れたりしたなら、こう言いそうです。

「習よ、舎弟もいうこときかせられないのか。使えねぇ奴だ。経済制裁は続行だ。習よ、去年の地上軍投入しないなら、限定爆撃していいって約束したよな。じゃあ、約束どおりやらせてもらうから文句ねぇな」くらい言いそうですね。

妥協線としては、北の核査察に中国軍人を使うていどはあるかもしれませんが、これでおとなしく引き下がる「怒鳴るど」ではないはずです。

ま、あくまでも憶測だとお断りしておきます。

最後に日本ですが、このもっとも変化を続けた時期に、司令塔不在となってしまいました。

結果、残念ですが、かつての主要プレイヤーの地位を失い、すべてが日本の頭越しで決まっていくのを、指をくわえて見守るしかなくなってしまいました。

G20欠席、米朝会談、鉄鋼・アルミ輸入制限・・・。少し前のように日米同盟が磐石ならありえないことばかりが立て続けに起きてしまいました。 

なぜかって?

理由はひとつです。 朝日が仕組んだ森友財務省文書改竄疑惑で首相のパワーが大幅に削がれたからです。

野党とメディアの犯した罪は、国益棄損級でした。

このアゲンストにもめげず、政権はかろうじて党大で不満分子を押えきり、佐川国会喚問を乗り切り、予算を通して、やっと最終章本番の舞台に滑り込んだというところでしょうか。

それでもまだ足腰はふらついていますから、健闘をお祈りしますとしかいえませんね。

これから、まだ驚かされることが頻発することでしょう。

まだ最終章は始まったばかりですから。

2018年3月29日 (木)

中朝首脳会談は「放蕩息子の帰還」となるか?

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ご存じのように、正恩が習と会談しました。 習も北を訪問することになったそうです。

会談の様子が中国サイドから漏れています。なかなかのものです。
産経3月29日http://www.sankei.com/world/news/180329/wor1803290006-n1.html

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 「初の外国訪問が中国の首都となったのは当然で、(訪中は)朝中親善を引き継ぐ私の崇高な義務だ」(産経前掲)

最初の訪問国が中国なのは「崇高な義務」だときました。それどころか、共産国特有の言い回しですが、習を「同志」と呼び、こんなことまで言っていたようです。

「会談でも習に朝鮮半島情勢の急速な変化を挙げ、「私が遅滞なく習同志に状況を報告するのは当然だ」と言ってのけた」(前掲)

「報告するのは当然」ですって(笑)。

今までさんざん勝手放題やって、中国派は皆殺しにし、習の特使には面会も許さずに追い返しておきながら、困った時にはメンツをかなぐり捨てて飛び込んでくるというわけです。

古川勝久氏(国連北制裁パネル専門委員)は、昨日の「ザ・ボイス」で、去年から正恩の訪中は準備されていたのではないか、という見解を示されていましたが、それはないと思います。

正恩は自身がいみじくも言うように、この間の「朝鮮半島情勢の急速な変化」に尻を蹴り飛ばされて、北京に押っ取り刀で駆けつけたのです。

やっとトランプの罠に気がついたのか、正恩、といったところです。

米国がなぜ、冬季五輪を政治利用した南北融和攻勢を容認していたのか、この天上天下唯我独尊のこの男にも分かってきたようです。

それは北を首脳会談に「追い込む」筋書きだったからです。

トランプは巧妙にも、正恩の側から会談を言わせて、それをトランプが呑むという形を整え、あくまでも会談を発議したのは北という流れを作り出しました。

いうまでもなく、米国はムンの動きを完全に追跡していましたから、この動きを事前に知っていました。

そして5月中開催とリミットを切って逃げ場を塞いでおいてから、おもむろに出したカードが融和的なティラーソン解任、後任はポンペオ、そして国家安全保障担当補佐官にバランスの取れたマクマスターから「あの」ボルトンという、これ以上ありえないような超強硬対北・対中シフトでした。

彼らが仕切る会談準備なんて金網デスマッチです。考えたくもないと正恩は背筋が凍ったことでしょう。

米国は事前協議でとうぜん核査察まで踏み込むでしょうが、不調なら中止してもいささかもかまいません。なぜなら、言い出しっぺは北だからです。

北はチャブ台返しをすれば、自分が言い出したことを自分でひっくり返すことになります。

南北朝鮮の伝統芸であるチャブ台返しの技が、あらかじめ封じられているのです。

もうこうなれば、なんとか旧宗主国にすがって、米国との関係をとりなしてもらうしかありません。

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上の写真を見ると冷やかな眼で見据える習に対して、媚を含んだ眼で作り笑いする正恩というていたらくです。バツが悪いだろうなぁ。

後ろでおそらく中国関係者でしょうか、ホーっという顔をして見ているのが印象的です。

さて会談内容ですが、詳細は公表されることはないでしょう。

というか、そんな突っ込んだ交渉ができるほど、この内弁慶男に外交力量はないと思ったほうが自然でしょう。

「新華社によると、金委員長が習主席に対し、北朝鮮が緊張緩和に向けて自発的に動き、平和的な対話を提案したことにより、朝鮮半島情勢が改善し始めたと語った。
金委員長は「故金日成主席と故金正日総書記の遺訓により朝鮮半島の非核化に尽力することは、われわれの一貫した立場だ」と表明。北朝鮮は米国との交渉や米朝首脳会談の開催に前向きだと述べた。
その上で「韓国と米国がわれわれの努力に善意で応え、平和と安定の雰囲気を作り出し、平和の実現に向けて段階的かつ歩調を合わせた措置を取るなら、朝鮮半島の非核化問題は解決可能だ」とも述べた」(ロイター3月28日)

https://jp.reuters.com/article/nk-china-visit-idJPKBN1H400C

「非核化が一貫した立場」とは笑わせます。

金日成は死去するまで計40回、2代目正日も10回近く中国を訪れていますが、一貫した米朝の会談テーマは核開発でした。

初代・2代目は、ある時は親分と立て、ある時は泣き落とし、ある時は崩壊カードをちらつかせて中国指導部に核兵器技術の移転を懇願してきたのです。

結局、このアカンタレの言い分を飲んで、北に核技術を移転してしまい、いつ何時自分らに牙を剥くかわからないような国を作ってしまったのが、他ならぬ今までの中国指導部でした。

トランプがオバマの「戦略的忍耐」のツケを払わされているように、ある意味、習も今までの指導部の北の核武装支援のツケを払わされているのです。

金は、米韓が「善意でわれわれの努力に応え、段階的で歩調を合わせた措置をとるなら、非核化問題は解決できる」とし、習に意思疎通の強化や対話の擁護を要請した。
北朝鮮ペースでなければ、非核化に応じないとの表明といえ、前提は韓国特使にも訴えた「体制の安全の保証」だ。生き残りを懸け、中国を最大の擁護者とするため、「宿敵」に膝を屈して取り入った覚悟がにじむ」(産経前掲)

ここで正恩が言っていることは、「段階的に歩調を合わせた措置を実施すれば」という大前提が、非核化の前提だということです。

これはよく勘違いされるのですが、単に「北の体制維持」を意味しません。

また、この「段階的歩調」という意味を吟味して下さい。これは「段階的に」非核化をする、つまり、当面は米国に到達するICBMだけは凍結していいという意味です。

実はこれは中国のfreeze-frieze方式と合致します。

次に、今まで北は「非核化」の条件として、「北の安全保障が満たされれば」という意味で使ってきました。これはすなわち在韓米軍の撤退を意味します。

れをトータルに吟味してみると、北の言い分は次のようなことになります。

「非核化を達成するために、双方が譲歩せねばならない。我々はICBMを凍結を宣言する用意がある。
ならば、米国は在韓米軍撤退と核の持ち込みをしない約束をしてほしい。
これは中国のfreeze-frieze方式と合致するではないか。
ここさえ乗り切れば、後は熟した柿が落ちるように、南はムン同志と私で統一する。悪い話ではなかろう。朝鮮半島丸ごと中国圏だ。
ぜひ、この線で米国とかけあってもらえないだろうか」

もちろん、私の勝手な想像ですよ。

ただ、これも公式な発表がないので断言は避けますが、中国はそう簡単に「協力しよう」などいう可愛いタマでありません。

ただし中国にとって、米国に完全に喪失したと思われていた北への影響力復活、という宣伝にはつかえるでしょう。

一方、米国にとっては、かつての「地上侵攻せねば限定攻撃を容認する」という立場を中国が翻したか否かが焦点となることでしょう。

いずれにしても、中国が「窮鳥懐に入れば」といった今の状況を最大限利用することは間違いありません。

たとえば、南シナ海における航行の自由作戦の停止、経済制裁の停止などの妥協を取ろうとすると思われます。

■追記

朝鮮「日朝首脳会談、6月初めにも」 党幹部に説明 (朝日3月29日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180329-00000002-asahi-pol

北朝鮮関係筋によると、金正恩(キムジョンウン)政権が最近、朝鮮労働党幹部らに「6月初めにも日朝首脳会談の開催がありうる」との説明を始めた。日朝首脳会談に対する金正恩政権の関心が明らかになるのは、2011年12月の権力継承後初めて。

 

 

 

2018年3月28日 (水)

佐川証人喚問 政権は取るべきものを取った

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北京を訪問したのは正恩で、習と会談したそうです。単なる会談場所の打診ではないはずで、米朝会談が流れることを想定した動きだと思われます。 

プーチンは米欧14カ国の自由主義諸国から外交官追放措置をとられていますから、必然的に今、米国から仕掛けられている経済・軍事的圧力を受けている中国とダッグを組むしか選択肢はありません。 

その時期に北が会談に追い込まれたのですから、北を結節環とした新たな中露北三国同盟が形成されると思われます。 

<米国軍事強硬派シフトvs中露北同盟>という、大変にきな臭い様相を呈してきました。 

あくまでこのままの状況で進めばという前提つきですが、この初夏の頃には朝鮮半島有事が勃発するかもしれません。 

私は占い師ではないので、戦争の可能性がきわめて高まったと言うに止めておきます。 

これについては、別稿で詳説したいと思います。 

さて、このような東アジア情勢などどこ吹く風とばかりに、わが国はモリトモ騒動に明け暮れてきました。 

隣の火薬庫に火がまわろうとしているのに、タフな神経の持ち主ばかりのようです。 

私は昨日で、政権は最大の山場を乗り切ったと思います。 

政権としては、佐川宣寿前国税庁長官から二つのことを引き出せればよかったわけです。 

第1に、「書き換え」において政権の指示があったのか否か。 

第2に、貸し付け、売却に首相夫人の関与があったか否か。 

あとは誰が「書き換え」を命じたのかということが残りますが、それは大阪地検が調べればいいのであって、国会承認喚問で佐川氏が「はい、私か命じました」なんていうわけかありません。

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政権はここで決定的ともいえる佐川証言を引き出しています。
■NHK3月27日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180327/k10011380321000.html 

まず、第1の政権の「書き換え」関与についての、参院予算委員会での佐川証言。

「(財務省の決裁文書の書き換え問題は)理財局の国有財産部局の個別案件だ。
したがって、こういう個別案件については、理財局の中で資料要求の対応をする。
財務省の官房部局に相談・報告したり、総理大臣官邸に対して報告をすることはないし、そういう意味では、財務省の官房や総理大臣官邸の指示もなく、理財局の中で対応した

はい、これで一件決着です。

太田理財局長国会答弁、近畿財務局職員の大阪地検取り調べの証言などと一致して、政権の「書き換え」関与は完全に否定されました。 

第2に、土地の貸し付け・売却に昭恵氏が「関与」したか否かについての佐川氏の証言。

「(書き換え前の決裁文書に森友学園との国有地の取り引きについて「特例的」とか「特殊性」といった表現が記載されていたことについて「総理大臣夫人の関与を意味しているか」と問われたのに対し)
通常は国有財産は売却するが、貸し付ける場合の期間は通達に3年と書いており、その期間は特例承認をもらって変えることができる。特例とはそういう意味だと昨年答弁している。
(安倍総理大臣の妻の昭恵氏が小学校の名誉校長だったことが影響したかと問われて)その話は去年2月の最初のほうで知りました。影響はありません

野党・メディア連合に常識的な判断力があれば(無理でしょうが)、これで投了です。 

いままでもなんの新味もない追及に名を借りたイメージ戦略に明け暮れていましたが、「書き換え」問題に狂喜乱舞したのも束の間、これ以上の追及ネタはなくなりました。

第一、佐川国会喚問前日に籠池容疑者にお知恵拝借で全野党が出かけるという無様な姿をさらせば、なんの弾もないことは初めから見えていました。

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そもそも、「書き換え」問題は省益以前の局益に理財局が走ったために、佐川氏が去年2月24日の答弁のように「近畿財務局と森友学園の交渉記録はない」などということを言ってのけたわけです。 

もちろん近畿財務局と森友との間には、価格交渉があり記録文書も存在していました。 

もし仮に野党にまともな脳味噌があれば、なぜ一般競争入札にせずに随意契約にしてしまったのか、地中廃棄ゴミの見積もりをなぜ森友有利に見積もったのかなど、突っ込みどころはいくつもあったのです。 

ところが気の毒にも、彼らは「アキエ脳」でした。

財務局職員を殺したのは昭恵、自殺が報じられた時にパーティをやっていた冷血女は昭恵、ツイッターでいいねを押しやがったのも昭恵、全部悪いのは昭恵、魔女は昭恵、さぁこいつを吊るせ、火あぶりにしろというわけです。

こうなると国会喚問はまるで人民裁判か、異端審問所です。もう社会病理学の領域ですね。

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このような「昭恵を吊るせ」という思い込みがあまりにも強烈なために、彼らにはすべてが歪んで見えます。 

「書き換え」文書が出た3月13日付朝日の1面トップはこうです。 

「必死の責任封じ・削られた『昭恵氏』」 

以下、2面、3面でもデカデカと「昭恵」一色で、まるで昭恵氏が土地取引に関与したことを隠すために、近畿財務局が「忖度」して「昭恵」の名を故意に削ろうとしたかのようです。 

事実は、先日の記事で書いたとおり、籠池容疑者が例の昭恵氏との写真を黄門様の御印籠よろしくチラつかせて「前に進めて下さい」と言ったと述べた、はるか7カ月も前に事は決していました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-8916.html 

これは『平成25年8月鴻池議員から財務局への陳情案件』に記載があります。

ここには鴻池秘書が、籠池容疑者の陳情を受けて動いており、売ることを急いでいた近畿財務局側もそれに積極的に協力していた様が記録されています。

近畿財務局は、大阪府私学課が賃貸に難色を示すと、わざわざ大阪府まで出張して「横の連絡」(平成25年10月26日前西統括官)してまで、積極的に売ろうとしているのが分かります。

つまり、この森友用地は、籠池容疑者の依頼を受けた鴻池議員が主体となって近畿財務局に働きかけ、その思惑が売り手を渇望していた近財と航空局の思惑と完全に一致したために、急展開したのです。

ここには昭恵氏の姿はかけらもなく、彼女は森友用地に案内された時には、ここで田んぼでも作るのか、と能天気なことを考えていたわけです(ああ、なんたる天然ぶり・・・)。 

とまれ、まだ余震は続くことでしょう。野党・メディア連合は今日あたり「深まる疑惑」「アベを忖度した佐川氏」と書き立ててこの政治ショーの延長戦を図ることでしょう。

やらせておきましょう。

問題は与党です。25日の自民党大会は政局の匂いすらなく、例によって例の如くの反安倍発言をしたのは石破氏と小泉氏に限られました。

もし石破氏を担いで政局化する気なら、党大会こそ絶好の機会でしたが、完全のベタ凪状態で、安倍氏は完全に党内を引き締めきりました。

よくメディアは世論調査で石破氏待望ポイントが首相を凌いだと喧伝しますが、首相が自民党員の投票で選ばれることをお忘れでしょうか。

安倍支持は細田派94人、麻生派59人、二階派44人に官房長官菅義偉の影響が強い無派閥を加えれば、これだけで過半数を超えます。

一方反主流派の石破派は人望のなさが祟ってわずか20人の極小派閥、岸田派も47人です。

そして昨日の佐川喚問で、完全に自民党内の流れは決しました。

この佐川証人喚問が終われば予算は28日の今日にも成立し、ようやく日本政治は焦眉の課題となっている東アジア外交に向かいます。

・・・だといいね。

2018年3月27日 (火)

速報 佐川前理財局長国会証人喚問

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速報します。

■NHK3月27日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180327/k10011380321000.html

「財務省の決裁文書の書き換え問題をめぐり、佐川・前国税庁長官は、参議院予算委員会での証人喚問で、当時、理財局長を務めていたことの責任を問われ、「今回の決裁文書の書き換え問題によって、国会において大きな混乱を招き、行政の信頼を揺るがすような事態になったことは誠に申し訳ないと思っている。当時の担当局長として責任はひとえに私にある。深くおわびしたい。申し訳ありませんでした」と述べ、謝罪しました。

財務省の決裁文書の書き換え問題をめぐり、佐川前国税庁長官は、参議院予算委員会での証人喚問で、「本件は、理財局の国有財産部局の個別案件だ。
したがって、こういう個別案件については、理財局の中で資料要求の対応をする」と述べました。
そのうえで、佐川氏は、「財務省の官房部局に相談・報告したり、総理大臣官邸に対して報告をすることはないし、そういう意味では、財務省の官房や総理大臣官邸の指示もなく、理財局の中で対応した」と述べました。

財務省の決裁文書の書き換え問題をめぐり、佐川前国税庁長官は、参議院予算委員会での証人喚問で、今回の書き換え以外にも日常的に決裁文書の書き換えが行われていたのではないかと問われたのに対し、「私は承知しておらず、答える立場にありません」と述べました。

財務省の決裁文書の書き換え問題をめぐり、佐川前国税庁長官は、参議院予算委員会での証人喚問で、今回の書き換え以外にも日常的に決裁文書の書き換えが行われていたのではないかと問われたのに対し、「私は承知しておらず、答える立場にありません」と述べました。

書き換え前の決裁文書に森友学園との国有地の取り引きについて「特例的」とか「特殊性」といった表現が記載されていたことについて「総理大臣夫人の関与を意味しているか」と問われたのに対し、佐川前理財局長は「通常は国有財産は売却するが、貸し付ける場合の期間は通達に3年と書いており、その期間は特例承認をもらって変えることができる。特例とはそういう意味だと昨年答弁している」と述べました。

証人喚問で佐川前理財局長は文書の書き換えについて「安倍総理大臣の妻の昭恵氏の名前を消すために行われたのか」と問われたのに対し、「大変申し訳ありませんが、経緯に関わる話ですので、誰が指示、どのような対応で行ったのかは捜査の対象であり、刑事訴追のおそれがあるので控えさせていただきたい」と述べました。

近畿財務局が学園側への国有地の貸し付けについて本省に承認を求めた書き換え前の文書には平成26年4月28日の打ち合わせの際の学園側の発言として「安倍総理夫人を現地に案内し『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と記載されていたほか、昭恵氏が学園を訪問して講演したことなど5か所に昭恵夫人に関する記述がありました。しかし佐川氏は昭恵氏が講演したことについて「学園のホームページに載っているので見た担当者がいたかもしれないが、具体的な内容については知らない」などと答弁していました。

■産経3月27日
http://www.sankei.com/

「佐川宣寿前国税庁長官は27日の参院予算委で、決裁文書の書き換えを知っていたかという金子原二郎委員長の質問に「告発を受けている身であり、捜査の対象であり刑事訴追の恐れがある。答弁を差し控えたい」と述べた。
 一方、「国民の皆さんに行政の信頼を揺るがす事態になった。誠に申し訳ない。当時の担当(理財)局長として、ひとえに責任は私にある」と陳謝した」

近畿財務局は昭恵氏を知る前から森友に国有地売却方針だった

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昭恵氏の「関与」が争点となっているようですが、それについて産経のよくまとまった記事が出ましたので紹介しておきます。
「近畿財務局は「安倍昭恵」名を知る前から森友に国有地売却方針 決裁文書改竄」産経3月26日
http://www.sankei.com/politics/news/180326/plt1803260006-n1.html 

新たに脚光を浴びているのが近畿財務局の作った2015年(H27)2月4日、同じく4月30日の「特例承認の決裁文書」です。 

この文書には、森友学園に土地を10年間貸し付けるために作られたものです。 

ここでこの事件を、時系列に沿って遡ってみましょう。

そもそも籠池容疑者が,小学校用地としてくだんの国交省大阪航空局所有地を、近畿財務局に申し出たのが、2013年(H25)6月のことでした。 

この時点で、籠池容疑者は購入を前提にした貸し付けを希望しましたが、小学校の許認可を持つ大阪府は、借地じゃ認可は難しいとの対応をします。 

ここで早く土地を処分したい近畿財務局・航空局と、早く土地を利用して校舎を建てたいという籠池容疑者の思惑が一致したようです。 

2カ月後の2015年8月、籠池容疑者は鴻池祥肇議員(参・自・兵庫)に陳情し、近畿財務局から、大阪府私学・大学課を動かしてもらうことを依頼しました。 

これについては、鴻池事務所の2013年年9月9日付「陳情整理報告書」に、以下のような記載があります。

「小学校用地の件、先週、財務局より、7~8年賃借後の購入でもOKの方向。本省および大阪府と話し合ってくれる」

これは、鴻池側が近畿財務局に働きかけたことの記述で、実際に近畿財務局は大阪府に直接赴いて働きかけています。

鴻池議員秘書は、この2013年3月ころから何度か籠池容疑者の陳情を受けて、近畿財務局に問い合わせをしていることは、下写真の陳情報告書で明らかになっています。

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なおこのような議員の陳情を聞いての行政への働きかけ自体は贈収賄が絡まない限りまったく合法で、国会議員の泥臭い仕事でもあります。

なお、籠池容疑者は現金を鴻池氏に手渡そうとして断られています。

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これを記録したのが近畿財務局が作成した2013年年9月12日付「大阪府私学・大学課に訪問し、今後の連携について要請」と、同年10月30日付「認可の状況について照会」の2本の文書です。 

この経過を見ると、近畿財務局はわざわざ大阪府私学課にまで訪問して籠池容疑者のために積極的に動いていたことが分かります。 

さて、この2013年10月末の時点で、いかなる公的文書にも「安倍昭恵」の名は登場しないことにご注意ください。  

初めて昭恵氏の名が登場するのは、削除されて話題となったそれから半年後の2015年4月28日付の近畿財務局の籠池容疑者との面談記録です。 

ここで籠池容疑者が言ったのが、いまや有名になったあのセリフとして近畿財務局文書に記載されます。

「安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」

籠池容疑者は写真も持参していたようで、この写真を2014年4月25日に撮ったと述べています。 

ただし、もう知れ渡ってしまったことですが、2017年3月23日の参院予算委の籠池証人喚問では「田んぼにいい土地ですね」と昭恵氏が言ったとされており、おそらく何も知らない夫人を現地に強引に招いて自分に有利な発言を引き出そうとしたと思われます。

また同じ国会証言では、昭恵氏に「働きかけた」内容として、こう述べていたはずです。

「このような副読本はどうかとお見せしたこともあるし、こういうカリキュラムですけどと話したこともある。教育的なことをお願いした」

このどこが国有地払い下げに昭恵氏が「関与」した証拠になるのか、私にはまったく理解できません。

ちなみに、この写真を撮ったのは、『日本会議の研究』という本を書いた元しばき隊幹部の菅野完氏です。 

 

この人物は後に、事実上の籠池のスポークスマンとして怪情報の発信源となります。 

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それはさておき、昭恵氏が籠池容疑者の小学校の名誉校長にされたのが2015年9月ですから、この写真は名誉校長にされる1年以上前のものだとわかります。 

この名誉校長に強引に仕立てた手口は、事前になんの相談もなく、児童を前にした講演で壇上に上げてから、「昭恵さんに名誉校長になってもらいましょう」と児童の拍手を促したために断りきれなくなったということがわかっています。 

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逃げ場をなくして追い込み、思いのまま動かす、典型的詐欺師のやり口、といわれてもいたしたかがないでしょう。 

この時点で、籠池容疑者は人のいい昭身恵氏を、ガッチリとトラップしたと確信したはずです。 

さて、昭恵氏が谷査恵子政府秘書を通じて、財務省に問い合わせたのが2015年10月~11月だとされています。 

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上の写真は、谷秘書が書いた財務省本省に照会した籠池容疑者宛ての回答文書ですが、「現状ではご希望に沿えない」と記されています。 

なお、この本省問い合わせは、近畿財務局側文書には見当たらず、あれほどくどくどと書かれた文書になにもないということは、出先の近畿財務局に照会することなく、本省で断ってしまったようです。 

以上の時系列を整理すると

・2013年9月~10月・・・近畿財務局が大阪府私学課に働きかけ。
2013年10月末の時点までに「安倍昭恵」の名は登場せず。
・2014年4月・・・夫人と籠池容疑者の写真撮影。
・2015年9月・・・名誉校長。
・2015年10月~11月・・・谷秘書の財務省問い合わせ

自民党竹下亘総務会長はこれについて25日、こう述べています。 

「時系列を見ると、すべて決まった後に昭恵さんが動いた形になっている。それを見ないで『昭恵さんが…』と言うのは政治が取るべき姿ではない」(前掲) 

佐川氏が今日の国会でどのような証言をするかわかりませんが、この時系列を頭に入れてご覧になるとよいでしょう。 

 

2018年3月26日 (月)

いつまでこんな詐欺容疑者の言うことに振り回されているのだろうか

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私はこの一週間で、「書き換え」疑惑について、なんらかの「決着」がつくと考えています。 

まず、昨日の自民党大会です。ここで、党内で時間をかけて積み上げてきた改憲自民党案が首相案でまとめきれるかどうかです。 

首相は「買い換え」疑惑で浮足立ちしかかっている自民党を、改憲でまとめようとしています。

自民党議員諸氏よ、3項加憲という、これ以下はないマイルド改憲ですら一致できないなら、未来永劫、改憲なんぞ口にしないほうがよいというもんですよ。 

メディアは、「書き換え」問題での支持率急落を受けて、会場に来る議員に執拗に反安倍コメントを採集したようです。 

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党首が免罪をかけられているというのに、その足を引っ張るような者がわらわらと出るようでは政権党など止めてしまったほうがよろしい。

よくメディアが多用する「安倍一強」論には、周到な罠が隠されています。

今の野党には政権を担う能力はおろか、対案を示す能力も欠落しています。それはメディアはもちろん、野党自身わかっているはずです。

ですから、政権内野党に「次」を担わせるしかないわけで、そこで出てきたのが、「安倍一強」批判です。

これは与党内野党を、野党・メディア連合に引きずり込むことを目的としています。

つまり「オール沖縄」のような野党+メディア+寝返り保守を作ることに目的があります。

で、例によってあの人と、この人が出てきたようです。

「石破氏は党大会後、首相の発言を「1年前と同じ。議論の集大成という形にはなっていない」と公然と批判した。石破氏は、改憲問題を総裁選の争点に据える考えだ。
自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は「権力は絶対腐敗する」と述べ、首相の政権運営に暗にくぎを刺した」(産経3月25日)

石破氏が本気で自分が政権をとったら改憲を2項削除でやりきると政治生命をかけて発言するなら、聞く耳もあろうというものですが、ダメです。 

この人は泥を被って改憲なんぞに挑む気はありません。日本の政治家にとって、改憲と口にしただけで戦後国体の護持に反しました。

野党・メディアの袋叩きに会うからです。

だから改憲などというオッソロシイものは神棚に上げて、実際はなにもしなかったのです。

それを戦後、初めて手をつけたのがこの安倍氏でした。

安倍氏は改憲を、国民投票法から始めて長い時間をかけてこつこつと具現化してきました。

仮に今、石破氏が首相になるなら、朝日が火をつけたモリカケ騒動にすがるするしかテはありません。 

つまりは、朝日推薦の改憲強硬派というわけですから、そんな人に改憲ですって、笑わせないで下さい。 

石破氏という人物は、悪い意味での政局師で、元来が9条削除派であるはずの首相がなぜこのようなマイルド改憲という手段をとらざるを得ないのか、わかっていてわからないふりをしています。 

2項削除論というそれ自体は正しい原則論が、彼にかかるとただの政局狙いに卑小化してしまうのが、私にはたまりません。 

その上に、政治家としての政局勘が悪い。 

小池氏が都知事選で圧勝した時に、石破氏がなんと言っていたのか思い出してほしいものです。

「都議選が終わって「安倍1強」体制は揺らいでいる。「都民ファーストの会」という保守の選択肢が出てきた。「自民党っていろいろあるけど、民進党よりはマシ」と言っていた人たちがガラッと変わったのが今回の都議選でしょう」(毎日2017年7月21日)
https://mainichi.jp/articles/20170721/ddm/005/010/143000c

失笑します。 今でも同じことを言えるのでしょうかね。

政治家としての勝負勘が致命的に欠落している上に小心なために、ここぞという時に勝負をかけられないのです。 

だから、味方を背中から撃つことくらいしかできません。 コワイのは顔だけです。

一方、あんな草食系の顔をしておきながら、祖父譲りの勝負師である首相は解散総選挙という勝負に出て、一気に危機を正面突破し、小池新党など雲散霧消してしまいました。

その後の野党の醜い離合集散は、論評にも値しません。 

小池氏が都知事就任移行やってきたことを冷静に評価せずに、政局を念頭にして「保守の選択肢」などという戯れ言を口にする。 

それも反安倍発言を欲しがるメディア相手にしゃべってしまう、という耐えられない薄っぺらさ。

ああ、たまらん。この人だけには、絶対に政権を渡したくないものです。 

小泉ジュニアにしても、「絶対権力の絶対腐敗」なんていう聞いたようなことを言うなら、さっさと副幹事長なんぞ辞めてパパと一緒に反原発新党でも作ったらいかがでしょうか。

まぁ石破氏と違って、まだ年齢に余裕があって、しかも父親譲りの勝負勘抜群の進次郎氏ならその道はとらないでしょうが。 

さて、次は明日27日の佐川宣寿前理財局長の証人喚問です。 

参考人招致ではなく、証人喚問であることに留意してください。 

証人喚問は、虚偽の証言をすれば偽証罪に問われます。厳しさは参考人招致のほうが低いのですが、それは見かけだけです。 

証人喚問は訴追される可能性がある場合は、証言を拒否できます。例の「記憶にございません」「捜査中の案件にはお答えできません」というアレです。

過去の証人喚問は、ロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件や、今回のような旧大蔵省が舞台となった事件では、98年のノーパンしゃぶしゃぶ汚職がありました。

この過剰接待事件は、金融機関への検査情報を事前に得ようとする大手銀行・証券会社から過剰な接待を受けた収賄容疑で、今回の森友事件よりはるかに根が深いものでした。

東京地検は、大蔵省、日銀などの職員を相次ぎ逮捕、起訴し、同省だけでも112人もの停職、減給などの処分が下り、財務省と金融監督庁に分割される原因となりました。

今回の事件は、贈収賄がからんでおらず、書き換えもそのものは重大事であったとしても、過去の喚問事件と比べてスケールははるかに局部的です。

私が先週に書いたような佐川氏が、突如「財務省の前川」に変身する可能性は低いと見られます。

ですから、攻めてを欠いて勾留中の籠池容疑者に助けを求めにいくようなていたらくの野党議員には、佐川氏から「お答えできません」をやられると、とりつくしまがないはずです。

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とまれ、一時は「書き換え」で沸き立ったものの、なんの新材料もでなかった、ここが重要です。 

いい機会ですから、経過をおさらいをします。 

そもそも、このモリカケは安倍氏が籠池容疑者のために国有財産を8億円も値下げさせた、という「疑惑」から始まっているわけで、ターゲットはあくまでも安倍首相です。 

これでなんと丸々1年間国会をモリカケ一色に染めました。しかしモリカケを争点とした総選挙で大敗した上に、何ひとつ首相と結びつく事実が出てこないので自然終息に向かっていました。 

そこに「書き換え」爆弾が炸裂したわけで、さすが私も絶句しました。 

しかしその改竄前文書に何か首相に結びつく新事実が出たのかと思いきや、真逆。 

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「書き換え」前の文書に出てきたのは、安倍夫妻が関与していない証拠ばかりでした。

出たのは、鴻池、鳩山、平沼、北川という4人の政治家側が近畿財務局へ「問い合わせた」ということがひとつ。

そして今ひとつは、昭恵さんが「いい土地ですから、前に進めてください」と籠池容疑者が言ったという伝聞記述だけです。

さぞかし 頭抱えたでしょうね、朝日。「書き換え」疑惑炸裂。ここまでは朝日の目論見どおりでした。ここまでだったら、社長賞ものでした。

やったぜ、死ねアベ、と思ったらなんのことはない、安倍氏と関わりがなかった証拠しか出て来なかったのですから、朝日は密かに頭を抱えたことでしょうね。

そこで野党・メディア連合軍は、とりあえず首相本丸攻略は断念して、徹底して昭恵夫人に照準を定め、夫人を落として首相「関与」の状況証拠とする方針に戦略変更を迫られます。

しかし昭恵さん関連すら、削除されていたのは先述のただの一行だけです。

実はこれも籠池容疑者自らが国会証言で、「安倍昭恵氏が「いい田んぼができそうですね」と発言したと証言していたことを覆すことになります。

伝聞は証拠にはなりませんし、野党・メディア連合があくまでも「前に進めて下さい」発言にしがみつきたいのなら、国会証言が嘘だったことを証明してみせねばなりません。

また忘れているようですが、籠池容疑者は国会証言で「昭恵氏は口利きはしていない」と証言してしまっているわけで、ついでにこの国会証言録も「書き換え」ねばなりません。

拘置所で籠池容疑者が言っているのはほんとうだが、同じ人物の国会証言は嘘だというと言いたいのでしょうか。ご都合主義にもほどがあります。

ところで、籠池容疑者の虚言癖はもはや病的で、知られているだけでこれだけあります。

いかに口からでまかせ、自分の都合いいようにしゃべりまくったのか分かります。

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●現時点でバレている籠池容疑者の嘘一覧

[有力者関連]
①昭和天皇が森友学園に来園された。
②安倍首相が森友学園に来訪した。
③安倍首相と居酒屋で会った。
④麻生大臣と2回会った。
⑤稲田大臣に感謝状贈呈式で会った。
⑥竹田恒泰氏から推薦をもらった。
 

[経歴]
①関西大学法学部出身。
②総務省入省に入省。
③自分は日本会議の大阪代表。
④本名以外に別名を複数使用。
⑤教員免許取得。

[小学校建設関連]
①新小学校名は安倍晋三記念小学校だ。
②大阪府に提出した契約書が虚偽記載で告訴される。
③国交省へ提出した契約書が虚偽記載で告訴される。
④関西エアポートに提出した文書に虚偽記載。
⑤財務省職員から身隠すように指示された。

[寄付関連]
①安倍首相から寄付を貰った。
②無断で安倍首相の名前を騙って寄付を集めた。
③安倍氏から貰ったと称する振込用紙の偽造。

④昭恵氏より貰ったから返すと称した札束の偽造。

[現在係争中]
①昭恵夫人から「いい土地ですから進めて下さい」と言われた。

このような籠池容疑者の嘘を垂れ流したまま1年間も放置したのがメディアです。

れによって国民の、「アベは怪しい」という心証形成がされてしまいました。そりゃそうです。

怪しい怪しい、アベは怪しいと1年間ありとあらゆるメディアから注入されれば、「なにか怪しい」と思いますもんね。自分でネットのひとつでも調べなければそうなります。

この「何か」が肝で、モリカケ疑惑の芯がないからです。

結局、ただの「気分」ですが、それでいいのです。

芯がないからこそ、いくら安倍氏が否定しても、否定材料が揃っても終わらないからです。

したがって、どこまでも野党・メディア連合はモリカケ営業できます。

罪深いことよ。

まぁ、このモリトモ劇場の主演の籠池容疑者の釈放運動があるというのですから、びっくりしました。

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いつのまにか、籠池容疑者は強権によって捕らえられた「良心の囚人」だそうで、ただの詐欺容疑で捕まっているだけなんですがね(苦笑)。

その一方このような反アベ原理主義者の人たちは、昭恵氏に対しては自宅住所まで拡散させて、いやがらせを呼びかけています。

籠池容疑者のシモヤケまで心配しておきながら、一個人の住所も拡散してしまうというダブスタぶりです。

言うも愚かでが、公人にも人権はあります。なにをしてもいいことにはなりません。個人情報は公的なもの以外は保護されます。

昭恵氏は人権停止してよいとでも思っているようです。

まさにリンチ。仁義なき現代の魔女狩りそのものです。人権意識のかけらもない。恥ずかしくないのですか。

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どこまでこんな詐欺容疑者の言っていることに、私たちはつきあわされねばならないのでしょうか。

籠池容疑者は、ともかくねぎりたくてあの手この手を使っただけ。それをタダ同然の土地を売りつけたくてたまらなかった航空局と近畿財務局が振り回されただけの事件です。

つまりは、森友国有地払払い下げ疑惑も、剥いていけばタマネギのようなものでした。

いつまで私たち国民は、このような低レベルの詐欺師の言動につき合わされねばならないのでしょうか。

今週で区切りをつけたいものです。 

 

2018年3月25日 (日)

日曜写真館 怪鳥ではありません

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英名ストレリチア、和名極楽鳥花、学名Strelizia reginaeです。

南アフリカを原産とするバショウ科の花で、花言葉は「気取った恋」「輝かしい未来」「寛容」「恋の伊達者」だそうです。

今が盛りです。

2018年3月24日 (土)

米中経済戦争とボルトン就任が意味するもの

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世界が揺れています。 

きっかけは、トランプ政権の極端な対中強硬シフトです。

「NQNニューヨーク=戸部実華】22日の米株式相場は大幅に続落した。ダウ工業株30種平均は前日比724ドル42セント(2.9%)安の2万3957ドル89セントで終えた。
心理的な節目の2万4000ドルを下回り、2月8日以来1カ月半ぶりの安値を付けた。下げ幅も2月8日以来の大きさとなり、過去5番目となった。トランプ米大統領が22日、中国製品に高関税を課す制裁措置を正式に表明した。貿易摩擦への警戒感が高まり、幅広い銘柄に売りが膨らんだ。
 トランプ大統領は中国が知的財産権を侵害しているとして「最大600億ドルの中国からの輸入製品に高関税を課す」と表明した。
対象品目はハイテク製品が中心とみられる。中国企業の対米投資も一部制限する。中国による対抗措置が懸念され、貿易摩擦への警戒感が改めて意識された」
(日経3月23日)

https://www.nikkei.com/article/DGXLASB7IAA05_T20C18A3000000/

ただし、これはあくまでもきっかけであって、実際の原因は、エコノミストの安達誠司氏によれば、FOMC(連邦公開市場委員会 )で、FRB(米連邦準備理事会)のウォーレンが強気の利上げを口にした影響ではないかと観測されています。 

おそらくそうでしょうが、これだけ崩れるのですから、やはりこの対中経済戦争の宣戦布告が与えたインパクトは強烈だったのです。 

中国鉄鋼・アルミの輸入制限は今月の初めに発表されていて、中国を逆上させていました。

「【ワシントン=鳳山太成】トランプ米大統領は1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。鉄鋼に25%、アルミに10%の高い関税を課す」(日経3月2日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27598150S8A300C1MM0000/

WTOの輸入ガード発動要件である「安全保障上の理由」を使ったようですが、それはただの言い訳にすぎません。

なぜなら、鉄鋼・アルミだけではなく、ハイテク製品、知的財産権の侵害、中国企業の対米投資の一部制限まで及んでいる、絨毯爆撃ぶりだからです。 

なお、日本が鉄鋼・アルミの輸入制限国に入っているのを見て、「アベがトランプから切られた。やーい、やーい」と大喜びしている人たちがいますが、放っておけばよろしい。

あのようなブラフは一時のものです。まともに対応する必要はありません。

中国に対して向けられたそれは、米国の安全保障上の戦略的なものであるに対して、日本に対するそれはしょせんトランプ特有の貿易摩擦幻想にすぎないからです。

日本企業の米における現地雇用は英国に次ぎ世界2位です。

Mcb1702060700001f1田村秀男氏による

トランプ氏が最重視する製造業の雇用数は日本企業が最大で、いまさら日本叩きなど時代錯誤も甚だしい。

かつてのUSTR代表も言っているように、「日米経済摩擦などとっくにない」のです。

一方、中国は上のグラフでもわかるように:対米貿易赤字の最大国である上に、米国企業の進出先雇用もダントツです。

トランプの不勉強ぶりと、中国を撃つのに日欧のような同盟国まで味方撃ちするセンスにはイライラしますが、同一視する必要はありません。

あわてて妥協のためのお土産などを考えなくても、やがて自然消滅します。

完全なWTO違反ですが、トランプは百も承知、二百も合点のようです。 

そもそも中国の鉄鋼の過剰生産によるダンピング輸出に、国際社会がなんどとなく懸念を表明しようと、まったく歯止めをかけられなかったのがこのWTOですから。 

WTOは、国連以下の使い物にならない学級委員会だと、トランプは言いたいのでしょうから、中国のWTO提訴、喧嘩上等ということです。 

トランプは中国が提訴するなら、それを受けて立ち、一気にWTO改革まで含んだ議論を展開する予定なはずです。 

中国の驚きはこれだけで終わりませんでした。

この中国に対する経済制裁とほぼ同時に発表されたのが、マクマスター国家安全保障問題担当補佐官の辞任(実質更迭)と、後任に「あの」ジョン・ボルトンを起用したことです。 

2ジョン・ボルトン

やっぱりボルトンですかぁ、というかんじです(ため息)。山路さんもないだろうと書いておられましたが、まさか本当にやるとは・・・。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-13d4.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-040a.html

既にティラーソンの後任はマイク・ポンペオと決まっていますから、ツインターボで思いっきり右方向にシフトしたことになります。 

あとは聡明な「止め男」・マティスの去就ですが、そうとうに暗雲が垂れ込めてきました。 

「米・北・韓三か国会談をするんだーい、日本なんか入れてやんねぇかんな」、とばかりに浮かれていたムン・ジェインは、背中に冷水を流し込まれたような気分になったことでしょう。 

この人事シフトを見て、米朝会談があたかも規定路線だなどと報じている日本のメディアはアホです。 

米朝会談があるとしても、その前にはいくつものハードルがあります。いきなりトランプと正恩がやぁやぁと会うことはありません。

事務方による事前折衝の積み重ねをして8割がた詰めたうえで、最終決断を首脳会談で決着させるのが常道です。

事務折衝ではいくらでも修正が効きますが、首脳会談で言い直しは効きませんからね。

では、この「事務方」の指揮を、誰が指揮を執るのでしょうか。そう、ポンペオ国務長官とボルトン国家安全保障担当首席補佐官なのです。

そこで、この事務折衝の指揮を執ると思われるボルトンの北に対する認識を見ておきましょう。
日高義樹 ワシントンリポート 第161回ジョン・ボルトン 元 国連大使に聞く

●北朝鮮をどのような国と認識しているのか
①北朝鮮は、国民に1ヶ月 5ドルの生活を強いながら、テポドン2発射準備している。
②ミサイル・核兵器開発に邁進し、世界で最も危険な国である。
③米国は6カ国協議で騙され続けてきた。

●北朝鮮の本当の狙いは何か
①北朝鮮は6ヶ国協議を続けながら核兵器の小型化を急速に進めている。
②北朝鮮は核兵器の進み具合を隠そうとして査察に反対している。
③北朝鮮は6ヶ国協議の交渉を楽しんでおり譲歩するつもりはない。

●北朝鮮と外交交渉できるか
①北朝鮮は核兵器開発あきらめはしないだろう。
②6ヶ国協議では 国際社会を騙し経済援助だけ手にしようとして成功してきた。
③北朝鮮は政権を強化するために交渉を続けているにすぎない。

●オバマ大統領に北朝鮮戦略はあるのか
①オバマは中国に「北朝鮮に核を持たせてはならない」と言うべきだ。
②中国とは貿易摩擦が生じて難しい事態になるだろう。
③北朝鮮は日本に圧力を加え、挑発しながら米国がどうでるか計算するだろう。
④韓国駐留軍は米本土に戻し、アフガニスタンへ派遣すべきだ。

●朝鮮半島にこれから何が起こるか
①キム・ジョンイルが死ねば軍内部に対立が起きて混乱し、南北の併合があっという間に起こるだろう。
②難民問題について日米両国は人道支援などあらゆる準備をしなければならない。
③北朝鮮の核兵器と施設へのテロリストの手に落ちるようにしなければならない。

これを読む限り、ボルトンが米朝会談に幻想を持っていることは100%ありません。

会談の場で、何を正恩が言おうと、何を約束しようと、必ず裏切ると見ています。

おそらくボルトンと前CIA長官だったポンペオは、ムン・ジェインがどのような勢力に操られているのか、何を意図して米朝会談を準備したのか、正確に読んでいるはずです。

したがって、首脳会談前までにキッチリと非核化の「検証可能、かつ不可逆的非核化」が担保されない限り、米朝会談は開かれることはありえません。

実は、米国が核保有国に対して非核化を求める時のモデルがあります。

それが米露との間の核軍縮条約(戦略核兵器削減条約・START)です。
米露間の戦略核兵器削減条約(START)
新戦略兵器削減条約 - Wikipedia

STARTにおいては、核兵器保有量・核貯蔵施設・核ミサイル発射基地にまで互いの軍人査察官が立ちいって、解体作業を確認しています。

とうぜん、米国はこのSTARTの前例を踏襲することを、北に要求するはずてす。

それは私はなんどか記事で書いて来ましたが、それはIAEAによる無制限かつ、自由な北国内での査察を、北が呑むことです。

それ以外「検証可能性」が担保されることは、絶対にありえません。

これを北が呑めば、北国内でIAEA査察官の肩書を持った米国軍人が、査察に入る権限を持つことになります。

彼らは、徹底的に北の核施設・核ミサイル製造施設、そして核兵器貯蔵施設の位置と詳細を洗い出し、核ミサイル発射基地にまで立ち入ることを要求するでしょう。

正恩にこんな国民に赤っ恥なことが呑めますか?

え、呑まなかったら、ですか。それはただ北が米国に開戦するための大義を与えただけです。

うがった見方をすれば、米国にとってどうせ米朝会談は不調に終わるだろうが、かまわないさ、ここまで外交努力を重ねたという国際社会への「大義」を得たんだから、ということです。

米朝会談に至る事務折衝が不調ならばそれはそれで良し、会談自体をあっさり流すだけですし、仮に予備折衝で呑みがら、会談本番で蹴るようなら、それもそれでよし、これが米国の立場です。

なぜなら会談本番で蹴れば、もう後は武力行使しか残りませんし、米国の軍事行使の準備は過半が終了しているからです。

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極東に世界最大の病院船まで配備したのは、とりあえずは示威ですが、それだけではありませんよ。

ですから、戦争をする覚悟で正恩は蹴ることです。

つまり米国は二枚腰、三枚腰なのです。なぜ、ややうきうきした調子でトランプが、会談オーケーを言ったのかこれでお分かりでしょう。

とうとう「ロケットマン」を追い詰めた、と思ったからです。

どうしてこんな分かりやすいことを、「北の平和攻勢に押されるトランプ。乗り遅れて北と会談したがる惨めな日本」と報じるのか、一回メディアの頭の中を覗いてみたいものです。

安倍氏がここで日朝会談を考えているのは、ここで北を徹底的に押し込まないと、もう拉致問題の解決のタイミングがないからです。

それを野党とメディアが総掛かりで「忖度」で足を引っ張り、できなくしているだけです。

最後にもう一点。

中国の仲介は無駄だった、もう今後一切期待しないというのが、この経済制裁と、トランプ政権の新人事の意味するところです。

東アジア情勢がここまで煮詰まってきているのに、わが国は地方小学校の用地問題でメディアによれば「政権、断末魔」だそうです。

むしろ問題は、野党とメディアです。

私が野党なら、この時期だけは政治休戦しますがね。休戦ならずとも、国会審議くらいは、まともに北情勢を討議します。

まことに脳内まで春爛漫な人たちなことです。

 

 

2018年3月23日 (金)

近畿財務局の職員は誰を「忖度」したのか?

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27日に佐川前局長の証人喚問があります。先日も書きましたが、ここが山場になるはずです。  

裏返して言えば、これ以上野党とメディアにとってやりようがないのです。

「書き換え」発覚で、野党・メディア連合軍は狂喜乱舞したのはいいのですが、新事実はなにひとつでてきませんでした。

むしろ隠然たる反安倍の大立者だった財務省にも、火の粉が飛んでくる始末です。

結局、安倍降ろしといっても最後には「忖度」ですもん。テレパシーでもなければ、「お前は忖度しただろう」なんて決めつけられるはずがありません。  

今、野党とメディアは、「財務局は昭恵夫人に忖度して値引きした」というストーリーに持ち込もうと涙ぐましい努力をしています。 

どう見ても、無理筋ですね。あの人、ただのスピリチュアル好きの天然だもん。

よくしてあげたいという善意はあったかもしれませんが、秘書を通じて「あの話どうなの」と聞いたくらいです。

首相夫人という地位の定義が曖昧なので、これも厳密には関心できませんが 、このていどは政治家が日常的にやっていることにすぎません。

そこに金が絡んでくると、収賄になりますが、籠池容疑者は「夫人から100万もらった」っていうのが決めゼリフでしたから、おいそりゃ逆だろうって。

どこの世界に、金出して口聞きするアホがいるんだって(苦笑)。 

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こんな詐欺容疑者の言う戯れ言をまだ聞き足りないとみえて、野党は収監中の彼に面会しに行くそうです。 

「忖度したろう」というのは、いわば念力の証明のようなもので、いっそうのこと昭恵さんを証人喚問するなら、中世の魔女狩り裁判よろしく「身体にある魔女の印」探しでもやりますか。
魔女狩り - Wikipedia 

さしずめ、現代日本においての「魔女の印」は、籠池容疑者とのツーショット写真と、「あの女は魔女だ」という証言くらいなものです。 

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昭恵さんとこの森友国有地払い下げ事件との間にある関係とは、無関係という関係だけです。 

それを「無関係であることを証明しろ。できなければ魔女だ」と言うんですから、近代訴訟法を知らないのですね、この人たちは。 

相手に対して予見を持って強圧的に自白を迫ることは、自白の強要というのです。 

戦前の特高が共産党員を捕まえて、「お前が党員でない証拠を見せろ」というようなもので、そんなことを共産党が今やっているのですからシャレになりません。

そもそも、財務省が政権に気を使うはずがありません。 

どうもそのへんが大きな勘違いで、財務省が政権のいいなりになって国有地払い下げを安くしてやったり、決裁文書を書き換えてやったりなんか、するわきゃないでしょう。 

官庁と私企業は違うのです。私企業においては、社長の意志を「忖度」して動かないような社員は使えない奴としてどこかに飛ばされます。 

社員のほうも、社長を「忖度」することは、自分の地位や給料が上がることにも繋がりますからね。 

ですから、私企業においては、トップと社員には「忖度」関係が成立するのです。 

ところが、官庁は別に政治家に食わしてもらっているわけではありません。 

待遇は官庁の中でキャリアかノンキャリアかで入省したときから厳然と定められていて、給料も等級で定められています。 

ですから、政治家が官僚の待遇や地位に介入する余地など皆無です。 

そして、なによりも官僚にとって、政治家などただの「お客さん」だということです。 

だって、安倍氏の前まで、1年以上続いた大臣などいなかったでしょう。数カ月でコロコロ代わりました。 

その省の仕事も知らず、専門知識はゼロ、すぐに代わるような素人大臣などリスペクトしろというほうが無理です。 

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上の写真の民主党政権時の一川防衛大臣なんか、すごかったですね。安全保障のアの字もご存じなかった。 

普天間移設で、鳩山首相がチャブ台返しをしたという非常事態にも関わらず、担当の防衛大臣がその発端となった「(1995年の沖縄米兵少女暴行事件は)正確な中身を詳細には知らない」とシャラと言ってしまうのですから、相当のものです。 

この無知蒙昧ぶりを一川大臣はむしろ得意気に、「安全保障に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロール」と言ってのけた時には、さすが私ものけぞりました。 

その後任の田中直紀大臣に至っては、「答弁はペーパーを読むだけ」と言って、問責決議を食らっています。 

ま、安倍政権もやる気だけあって、無能力の稲田氏を任命した失敗もありましたしね。

このような一時的に通過していく腰掛け大臣を官僚にリスペクトしろ、「忖度」しろというほうが無理です。

ましてや、全国で一番頭がいい者しか受からない国家公務員一種試験を突破し、さらにその中から上から10名ていどしか選ばれないという財務官僚ならなおさらです。 

あ、もちろんいうまでもなく、出身校は東大、それも法学部以外ありえません。まれに経済学部や理学部などがいると奇異の眼で見られるそうです。

今、テレビにでてきている佐川氏や太田氏など、局長級はみんな揃ってこのウルトラ・スーパー超エリートです。

下の佐川氏の写真をみると、ほら、なんかメチャクチャに勉強できそうでしょう。 

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彼ら財務省キャリア組は、政治家という神輿は軽くてパーがいいとしか思ってこなかったはずです。 

なまじ専門知識を持っているよりも、空っぽならば財政・金融のイロハをご進講するか、田中氏ではありませんが、官僚が作ったペーパーを棒読みするだけの可愛いパペットにできますからね。

ちなみに官僚から嫌われるタイプは、石破防衛大臣のようなケースです。

石破氏は某トンデモ軍事評論家から仕込んだハンパな軍事知識を頭にたっぷりと詰めこんでいましたから、細かいことまでクチバシを突っ込むような親政を敷いて、防衛省職員や自衛官から大いに嫌われたようです。

結局、 F2の調達をバッサリ切って、空自の戦闘機配備計画に大穴をあけてくれました。

それはさておき、一方、現地財務局といった出先が採用するノンキャリア組は、今回痛ましくも自殺した職員が典型です。 

彼は国鉄に就職し、民営化以後に失職して、財務省の救済措置で現地採用された人でした。 

巨大官庁において、キャリアとノンキャリアは別人種です。ノンキャリア組が、局長クラスに昇格することは絶対にありえません。 

ですから、書き換えに関わったノンキャリアの職員が、誰に「忖度」したのかなど、考えないでも分かるはずてす。 

決裁文書の添付書類にくどくどと、政治家や昭恵さんの名を書き込んだのは、「私たちはこのとおり政治家の影響をブロックいたしました」という言い訳を本省キャリアにしたかったからにすぎません。

そしてそれを「書き換え」たのもまた、現地職員にとっての雲上人である本省キャリアに対する「忖度」からでした。

というわけで、筋違いの昭恵さんを魔女狩り裁判にかけてもなにもでませんよ。 

 

 

2018年3月22日 (木)

資料 2018年3月19日 参議院予算委員会集中審議 (抜粋)

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太田理財局長の答弁を資料として抜粋しておきます。長文ですので、大幅に要約してあります。煩雑なので「略」は挿入していません。太字は私が施しました。

ちなみに、共産党小池議員の質問において、太田理財局長の「基本的には総理夫人だからでございます」という部分のみが、メディアで執拗に流されたのはご承知のとおりです。

この太田答弁は続きがあって「籠池氏側が総理夫人の名前を出したのは事実なので、それがあってということ。そういう意味でお答えしたつもりだったのですが」と補足しています。

典型的な印象操作です。

全体を見ずに、なんとしてでも昭恵夫人の「関与」に強引に結びつけたいメディアと野党の思惑が露です。

メディアがスルーする太田局長答弁の全体を俯瞰するためには、よい資料だとおもいますので、アップいたしました。

原文は以下でご覧ください。書き起こしご苦労さまでした。 

ぼやきくっくり様
http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid2162.html#sequel 

                                           ~~~~~~~ 

■3月19日 午前9時 参議院予算委員会集中審議 

自民党青山繁晴議員の太田充理財局長への質問(抜粋) 

青山
「財務省のつけたタイトルが、決裁文書の書き換えの状況となっておりまして、これは、要は、この決裁書の主文ではなくて、調書です。
調書っていうのは、取り調べなんかでも調書って言ったりしますけれども、要するに、契約に至る経緯を示したものですね。
 で、これ調べますと、まあ当たり前のこととは言いながら、この契約の本体、契約の本体については、書き換えられていません。
つまり官房長官があえて主文とおっしゃったんでしょうが、契約そのものがごまかしたり、ごまかされたり、改竄されたりしたわけではなくて、調書、つまり経緯について書き換えたということが、事実ではないかと思いますけども、ここは理財局長、いかがでしょうか」
 

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太田充理財局長
「ただ調書というのは、鑑の後ろに付いてるものですが、極めて重要な部分でございますので、調書を書き換えたということは、決裁文書を書き換えたことにならないかといえば、そういうことではなくて、調書を書き換えたということは決裁文書を書き換えたと、それだけ重いことをしてしまったと、いうことだというふうに認識をしております
 

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青山
調書には都合の悪い部分が含まれていたと考えるのが、当然、客観的なことです。ところがそれを一旦、決裁してるわけですね。で、この決裁文書の鑑である表紙を見ますと、たくさんハンコが押してあってですね。
まさかめくら判を押したんじゃなくて、この、今、理財局長がお認めになったように、この鑑の下に調書もたっぷりついてるわけですから、その調書も、まさか見ないでハンコを押したってことは、想像しにくいですから、その調書を見た上で一旦決裁してるわけですね。
その一旦決裁したものを、今度は、決裁のハンコが全部押されてから、その後に削る。
これは、あまりにも前代未聞の、理解が難しい経緯なんですけれども。
まず、元に戻って、削ったということは、財務省、その他にとっては都合の悪いことがあったから削った、あるいは書き換えた、言い方によってももちろん改竄したと言ってもいいです。そこに決裁、決裁のハンコを全て押したのはなぜですか
 

太田
「決裁のハンコを押したというのは、貸付なり、あるいは売払をした時、平成27年なり28年の時に、それでいいと、いうことで決裁にハンコを押したということであります。
で、その決裁の最初のハンコの鑑をそのままにして、その後ろの調書を差し替えるということをやったのは、平成29年の2月下旬から4月にかけてということでございまして。
決裁をした時の貸付なり売払のことについて了解をした上で、29年の2月下旬から4月にかけてということは、要するに国会審議との関係、もう少し丁寧に申し上げさせていただきますと、
書き換えの内容を反映する、あの書き換えの内容の文言を見る限りで見ますと、それまでの2月から3月にかけての国会での答弁(※佐川前理財局長の答弁のこと)が誤解を受けることのないようにと、いうことで、そういう観点で、そういう考え方をもって、調書というものを差し替えていると、そういうことでございます。
大変申し訳ないことであり、深くお詫びを申し上げなければ、何度お詫び申し上げても許していただけないと思いますが、そういうことでございます」
 

青山
「客観的に文書を何度も読み込んでみるとですね、これ調書を作った時には、政治家の名前も出てくるし、あるいは籠池理事長がおっしゃった、安倍昭恵夫人の言葉なるものも引用で出てきますよね。
でもそれでも構わない、問題ないと思って決裁のハンコを押してるわけですよね。それ普通に考えたら、この契約に影響がなかったから、この調書で良いと思って決裁のハンコを押したんじゃないんですか
 

太田
「決裁文書についてる経緯も含めて、それでいいと思ってるからハンコを押してる、了解してるということであります。
逆に言えば、ある意味での不当な働きかけがあって、それでということではないという風には理解していると思います。
そうであれば、こういう風な決裁文書は作らないと思いますので、そういう意味で、そこを、その経緯も含めて、全て見た上で、決裁としては了としてると、そういうことだろうと思います」
 

青山
「佐川理財局長の答弁があったというだけで、明らかに犯罪ですよね、これ。公文書偽造ですから。
一旦決裁された公文書をいかなる理由があっても、勝手に変えるってことは、これは実はこの後はもちろん司法に任せなきゃいけません。
司法がどう判断するかでありますけれども、一般的に考えると、偽造で犯罪であることに気がつかない国家公務員はたぶんいらっしゃらないと思います。
それをいわば、全ての責をかぶるように、わざわざ決裁後の文書に改竄、書き換え、あるいは削除を加えるというのは、その、ここでさっき理財局長が先に答弁なさったその佐川答弁云々になるんですけれども、
しかし、もう一度申します。
前代未聞の、まあ憲政史上初めてとは言いませんけれども、おそらく表に、大規模に表に出てきたのは実は初めてのようなことを、その一人の局長の答弁に合わせるために、みんなでやるんですか。
そんなことは僕はあり得ないと思います。
したがって、その、決裁のハンコを押した時には、調書の中身に、後ろ指さされることはないと思って押したわけでしょう。
それが何で自ら削らなきゃいけなかったのか。その、佐川さんの答弁っていうだけでは説明にならない
 

太田
「私は、国会での答弁は大変責任が重いし、ものすごく緊張してると、いう風に正直に申し上げました。
人の心の中を全部覗ききることは難しいのかもしれませんが、同じ理財局長として思うに、前局長もそうだったろうと思います。
ただ、その話が、そのことが、それをもって決裁文書を書き換えるという方向に進んだのは、それはもう全然方向が間違ってるんで、そういう意味では私は理解できないんですが、その、やっぱり国会の審議をものすごく、ある意味では重く思ってる、それについての対応がものすごく間違った方向に行ってしまってると。そういうことだと思っております」
 

青山
「佐川、当時の理財局長の答弁を、僕は予算委員ですから、終始一貫その端っこで、間近に聞いておりました。で、その時に、例えば価格交渉がなかった、あるいは文書は基本的に全部捨てた、これで大丈夫かってことを正直、自由民主党の一員としても思いました。
政治家とか、あるいは総理夫人とか、そういう話を理財局長がここで答弁すると、国会が紛糾して、特に野党の方々から激しい追及を受けて、その、ものすごい困ったことになるから、だから木で鼻を括るような答弁にしたんではないかと。
これ健全な常識で考えたら、今回の奇っ怪な事件も、実は根っこにあるのは、ある意味何でもない、そういう国会軽視、つまり、騒がない国会、燃えない国会、その、淡々と終わればいいんだと。それはしかし正常な議論じゃないんですよ、それは」
 

太田
「基本的にお答えしようと思って、お答えしようと、あの、十分ではなかったと思いますが、しようとしてきたつもりです。
基本的にはお答えをするのは、やはりなかなか容易ではないし、その、簡単にご理解が得られるとは思いませんが、理解が得られない中でも、きちんと説明をして、それに対して違うというご批判を受けて、議論を深めるというのが国会の役割だと思いますので、それは委員のおっしゃってる通りだと、本当に思います」

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麻生大臣
「私も、全文、その後の文書を両方とも比較させていただきましたけれども、何でこれを書き換えることにしたのかが、ちょっと私にも理解ができないということころで、別に前に出してもらった方が良かったんではないかというのは率直に、私自身の感想ではあります」

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安倍首相
「決
裁文書の書き換えについて、私は全く指示もしておりませんし、そもそも、理財局内や財務局内の決裁文書など、私は存在すらも知りません。指示のしようがないわけであります。
私の2月17日の、ま、答弁は、私も妻も一切この認可にも、国有地の払い下げにも関係ないというものでありまして、
書き換え前の貸付に係る特例承認の決裁文書に、土地を見に行ったとか講演をしたとか書いてありますが、書き換がなされたとされる2月下旬から4月には、すでに妻が名誉校長でありまして、講演に行ったこと、あるいは学校建設予定地に行ったことは、いわばすでにに知られていたことであり、国会でも議論になっていました。
2月17日の一切関係ないという答弁をひっくり返すような記述では全くないということは、申し上げておきたいと思います」

青山
「今、総理がお触れになった調書、調書の中の引用部分には、まあこれはあの、野党の方々からもご指摘ありましたけれども、安倍昭恵の倍の字が間違っていたり、あるいは他の議員の名前も間違っていたり、する部分がありました。
したがって、契約に重大な影響があったと認識で引用したり記述したんではなくて、こういうことが多々ありましたと、相手はタフでありましたという、要は言い訳を並べてあるような調書だということも、実は、これあの、与党がどうのこうのじゃなくてですね、客観的に読めば誰でもお分かりになることではないかと思います。
それを、しかしもう少し踏み込んで正確に言えば、たかがそのような省内の言い訳のために、決済を受ける時のために、間違った引用もしたり、その、国会審議だけじゃなくて公文書の存在自体が極めて重いものですから、適当な引用をしたり、あるいは影響なかったことを何の理由もなく書き込んだりされたら困るんですよ。
それをさらにやってしまった後で自分で犯罪事実にもあたる恐れを犯して、書き換え、改竄、削除するっていうのは、大きな、大きな問題だ」
 

                                                                                     以下略 

 

山路敬介氏寄稿 「財務省文書書き換え問題」、私はこう考える その3

003
山路敬介氏寄稿の3回目です。 めずらしく私の見立てとはちがっています。

私は悲観的ですが、山路氏はリアルに突き放して分析されています。

なるほどなぁ、と思うことしきりです。 いずれにしても、来週が山場です。

私にはない視点から分析していただいたことを、あらためて感謝いたします。 

                             ~~~~~~~~  

         ■ 「財務省文書書き換え問題」、私はこう考える その3
                                                                                      山路敬介
 

承前 

この事件により、血税は流れていない

大事な事を書き忘れていました。
 

この問題でマスコミに踊らされて必要以上に大騒ぎしている人たちというのは、不当な安値で国民の財産を財務省が売り払ってしまい、今だに国庫に重大な損失を与え続けていると勘違いしているのではないでしょうか。

実際にはすでに件の土地は昨年7月1日までに同値で買い戻されており、籠池からの約定違約金1340万の支払いこそ受けておりませんが、土地代は一銭の損もしておりません。
 

上物はありますが先順位の買い戻し特約の実行には法定地上権は発生しませんから、破産管財人の意見を入れて一体売却するとしても、建物の価額が限りなくゼロに近づくだけのものです。藤原工業その他債権者の方々には気の毒ですが、仕方ありません。

また、現在は債権者が土地を占有していてそれを取り返せるのか、第三者に売却されたらマズイのではないかと考える人もいるでしょうが、まったく心配はいりません。
 

買い戻し特約の実行は第三者にも対抗でき、今後も国家の損失は有り得ません。

この事実をまず押さえておかないと、財務省の責任や佐川氏の責任がどの程度のものか分からなくなるのではないでしょうか。
 

すでに問題は財務省の「コップの中の嵐」なのであって、主に「財務省のあり方の問題」か、「綱紀粛正」の問題にすぎないのです。

告発のその後 その他

昨年3月までに近畿財務局職員や財務局長、佐川前理財局長などが市民団体などに告発されて大阪地検(東京地検分か大阪に移送して一本化)が受理し、現在捜査中です。
 

告発の主な理由は、「国有地の売却をめぐって近畿財務局職員らは、売却先である森友学園に利益を供与する意図をもって、適正な金額よりも著しく低額である事を知りながら売却し、国に損害を与えた」というものです。

先述したように、「国に損害を与えた」の理由部分はほぼなくなったので、被告発者が民間で犯罪性が乏しければ、買い戻された時点で不起訴決定となる事案です。
 

ですが、公務員としての則を超えた犯罪の可能性まだ残っているので、引き続き捜査をしているという状況なのだと思います。

高橋洋一氏は「書き換え問題」に関連して「佐川氏は起訴されるだろう」と見立てましたが、私はそうは思いません。
 

起訴される事を見越して退職したのかも知れませんし、これがけ世間の耳目が集まった事件はそうはないので、そこは自信がありません。 

しかし、もし仮に起訴されるにしても、国会での答弁や「書き換え後の決裁」を財務省が取り下げないかぎり、また辞任退職という重い社会的制裁を自から課している事からも有罪はないでしょう。 

だからこそ、証人喚問では麻生大臣の言った事以上にハミ出す事はなく、その他は固く口を閉ざすものと思われます。

佐川氏が理財局長になったのは、2016年6月17日からです。その前はまったく畑違いの税関局長です。佐川氏が変更した「書き換え前の決裁」は、前任の迫田氏が離任直前の2016年6月14日に下ろしています。
 

そうすると、佐川氏就任の時点で既に事実関係はすべて終了しており、佐川氏の責任は「書き換え」た事だけ、です。 

朝日の初発報道の要点もここにあり、だから冒頭「森友文書問題の捉え方」で申しあげた通り「書き換えがあったか、なかった」と「あった場合の相違点」だけが問題点であり、そこを立脚点として考えるのが当然だし普通の思考です。

また、近畿財務局のA氏という交渉担当者だった方が自殺して亡くなられた件について、一部報道では残されたメモで「文書を書き換えさせられた」との記述があった由ですが、それが直接の原因とは私には思えません。
 

人の価値観はそれぞれなので一概に言えませんが、「書き換え」そのものは犯罪ではないし、国民共有の財産を毀損したわけでもないのでもっと別の理由でしょう。 

                                                                                                    (了)                                                 
                                              
                                                                    文責 山路敬介
 

 

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2018年3月21日 (水)

資料 財務省の調査結果抜粋・日本会議の籠池容疑者に対するコメント全文

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財務省「書き換え」問題について、財務局文書から削除されていた政治家部分を資料として転載します。

財務局文書の削除部分にあった昭恵夫人部分と、首相に関わる記述にあった日本会議側のコメントも付記しておきます。

お読みになればわかるように、昭恵夫人に関わる記述は、財務局が直接に聴取したのではなく、あくまでも籠池容疑者からの伝聞です。

また首相部分に至っては、交渉過程で籠池容疑者が執拗に日本会議を圧力材料として使ったために、財務局がこの団体を「説明」している地の部分に「副会長」として登場するにすぎません。

何人ものコメンターの方が指摘するように、決済決裁文書にこのような不要な記述を加えることは、公務員の常識にはありえません。

仮に書いても、上長から「余計なことをぐだぐだ書くな。いつも公文書は簡潔に書けといってんだろ」と一喝されて書き直しされるだけです。

では、なぜこのような非常識なことを出先職員は書き込んだのでしょうか?

憶測だとお断りしますが、財務省本省と安倍首相は、消費増税をめぐって首相就任以来、鋭い対立を続けてきました。

首相の最大の政敵は石破氏ではなく、ましてや野党などは初めからお呼びではなく、日本最強の官庁と自称する財務省でした。

財務省は政治家を「忖度」するようなかわいい官庁ではありません。政治家に財務省を忖度させるのです。

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先日、答弁した太田充局長はかつて野田政政権時に野田氏の秘書官をしており、野田氏をゴリゴリの増税派(財政規律派)に「洗脳」したことが知られています。
太田充 - Wikipedia

国会で「(首相を貶めるために)意図的に変な答弁をしているのではないか」指摘されて、太田局長が「それはいくらなんでも」と声を荒らげていましたが、それがまさに図星だったからです。

今後、財務省が描くストーリーは、この自らの解体的危機を禍福は糾えるあざなえる縄のごとしとすることです。

つまり、この「書き換え」が政権の圧力によるものだとほのめかし、我々は強権的なアベに「忖度」させられるような弱い被害者なんだと泣きべそをかいて見せることです。

おそらく馬鹿なメディアはこの「絵」に大喜びで乗ることでしょう。

これで追求のベクトルは、一気に首相への「政治責任」へと向くことになります。

かくして、財務省改革には手をつけられることなく、安倍政権崩壊までのカウントガウンが始まります。

佐川前局長も証人喚問を受けるようですが、おそらく明解に語ることはせず「捜査中の案件については発言を控える」といった霞が関文学に徹すると思われます。

あるいは、いきなり「良心の告発者」に変身して、「財務省の前川」と化すかもしれません。 

佐川氏は一転して公文書変造の主犯から、正義のヒーローへとリサイクルします。

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なんのことはない、天下り斡旋でクビになった前川氏や、極右教育者にして詐欺容疑者であった籠池氏が、、安倍氏を攻撃すればいきなり「良心の告発者」に変貌したのとまったく同じ陳腐な手口です。

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しかし、朝日・NHKを先頭にしてメディアは必ずこの美味しすぎる「絵」に乗るはずです。

そして予定稿どおり、「疑惑深まる。安倍政権崩壊へ」と書き立てることでしょう。

仮にこのような展開になったとすれば、私たちの国の民主主義の成熟度は、このていどのものでしかなかったということです。

とまぁ、山路氏の見立てとやや違って、私はペシミスティッな気分です。

いずれにせよ、このような政治的対立関係にある安倍首相の「圧力」に対して、我々は屈せずにブロックしたんだという証拠を、出先は本省に対して残したかったのだと思われます。

あくまでも省益。どこまで行っても省益。国益など眼中になし。あるのはただひたすらに省益。

そんな腐った沼からメタンガスのように湧きだした事件が、この「書き換え」疑惑なのではないでしょうか。

なお、財務省文書太字部分が削除部分で、日本会議コメントについては編者が施しました。

お読みいただければ、いかにどうでもいい「疑惑」にすぎないか、ご理解頂けると思います。

                                        ~~~~~

                          ■財務省の調査結果(抜粋)
NHKニュースウェッブ
https://www3.nhk.or.jp/news/special/moritomo_kakikae/

財務省が書き換えを認めた14の文書はあわせて78ページの分量があります。         
このうち元の文書が削られたり、書き換えられたりした部分を一続きの文書や文言ごとに数えるとおよそ310か所にのぼりました。

■安倍昭恵氏の削除部分

削除される前は平成26年4月28日に行われた打ち合わせでの学園側の発言として、打合せの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから前に進めてください』とのお言葉をいただいた」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)と書かれていました。

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さらに平成27年1月8日に森友学園が小学校の運営に乗り出すことを伝える新聞社の記事がインターネットに掲載されたとしたうえで、記事の中で、安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した旨が記載されると書かれていました。

■安倍首相の削除部分

また「森友学園の概要」をまとめた文書では、理事長だった籠池泰典氏が「日本会議大阪」に関与しているとしたうえで、この団体を説明する注意書きとして、国会においては、日本会議と連携する組織として超党派による「日本会議国会議員懇談会」が平成9年5月に設立され、現在、役員には特別顧問として麻生太郎財務大臣、会長に平沼赳夫議員、副会長に安倍晋三総理らが就任と書かれていました。

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■鴻池 元防災相削除部分

本件は、平成25年8月、鴻池祥肇議員(参・自・兵庫)から近畿局への陳情案件」とか平成25年8月13日に「鴻池祥肇議員秘書から近畿局へ照会(受電)。籠池理事長が、本件土地について購入するまでの間、貸付けを受けることを希望しており、大阪航空局に直接相談したいとの相談を受ける」

■平沼 元経産相削除部分

「H27.1.29平沼赳夫衆議院議員秘書から財務省に『近畿財務局から森友学園に示された概算貸付料が高額であり、何とかならないか』と相談。財務省は『法律に基づき適正な時価を算出する必要があるため、価格についてはどうにもならないこと、本件については学校の設立趣旨を理解し、これまで出来るだけの支援をしていること』を説明」

■鳩山元総務相の削除部分

H27.2.16鳩山邦夫衆議院議員秘書から国会連絡室に『森友学園が近畿財務局から国有地を借受ける件について相談したい』との連絡」とか「H27.2.17鳩山邦夫衆議院議員秘書が近畿財務局に来局し『近畿財務局から森友学園に示された概算貸付料が高額であり、何とかならないか』と相談。近畿財務局はH27.1.29の財務省対応と同様な説明を行う」

■北川イッセイ元国土交通副大臣削除部分

「H27.1.15森友学園が国土交通省北川イッセイ副大臣秘書官に『近畿財務局から示された概算貸付料が高額であり、副大臣に面会したい』と要請。国土交通省は『貸付料は近畿財務局において決定する内容であるため、面会しても意味はなさない』旨回答」

                                     ~~~~~~~

日本会議のコメントです。

籠池容疑者は平成23(2011年)に退会したにもかかわらず、大阪代表・運営委員という虚偽の名刺を近畿財務局にも渡しています。

その結果、上記の首相部分の「説明」が文書でなされ、さらに削除されました。

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            ■財務省の森友学園決裁文書に関する報道について
https://www.huffingtonpost.jp/2018/03/14/nipponkaigi-moritomo_a_23385120/

森友学園問題については、昨年2月、本会と森友学園・籠池氏との関係について掲載しましたが、このたび財務省の文書書き換え箇所に日本会議に関する記述があったことから、改めて本会の立場を表明いたします。

森友問題に関する文書書き換えについての日本会議の立場

平成30年3月13日
日本会議事務総局

森友学園問題に関連し、財務省の決裁文書から日本会議に関連する記述が削除されたことが問題となり、日本会議が疑惑の渦中にいるかのような報道が散見される。かかる報道は、事実と異なり極めて遺憾である。

そもそも財務省が、決裁文書の「学校法人 森友学園の概要等」の説明箇所に、籠池理事長(当時)が関与している団体として、日本会議及び日本会議国会議員懇談会を記述したこと自体、的外れなものであり、事実から大きく逸脱している。

なぜなら、籠池氏はかつて日本会議の会員であったものの、平成23年1月に日本会議の年度会費が切れたことを契機として、自ら事務局に退会を申し出て今日に至っている。この事実は昨春既に新聞等で報道されているところである。

しかし籠池氏は、日本会議を退会しているにもかかわらず「日本会議大阪代表・運営委員」との虚偽の役職を掲載した名刺を財務省関係者に配布していた。そのことが今般の財務省の決裁文書の誤った記述へと直結したことは明白である。

籠池氏と本会の関係は7年前に消滅している。したがって、今回の財務省の決裁文書の書き換え問題に関し、日本会議に疑惑の目を向けられるいわれはない。

日本会議では、昨春「森友学園問題」が浮上して以来、学校設立や国有地払い下げ交渉について便宜を図るなどの一切の関与がないことを表明してきた。

今回の報道内容に鑑み、改めて本会の立場を表明するものである。

併せて、財務省の決裁文書に日本会議に関する事項がなぜ掲載されたのか、また、国会に開示する段階でなぜ削除されたのか、依然不透明な部分が多く、一日も早い真相究明を求める。

山路敬介氏寄稿 「財務省文書書き換え問題」、私はこう考える その2

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山路敬介氏寄稿の2回目です。 

                             ~~~~~~~~ 

         ■ 「財務省文書書き換え問題」、私はこう考える その2
                                                                                      山路敬介

承前 

今後の国会の展望

今回の最大の問題点は国会に提出された書類とその時点での決済書類に齟齬があった点で、これだと内閣が国会を軽視したという理解を生む事は必然です。
 

また、「憲法をないがしろにする行為だったと言わざるを得ない」というのが大勢の見方かと思われます。 

はっきり言って、内閣が乗り越えなくてはならない関門はここだけです。 

ここで問題となるのは結果的に「書き換え前の決済書類」と、現在ある「書き換え後の決裁書類」のどちらを「真」とするか、というところに収斂されます。 

「不備な決裁を真正なものに正した」という理解で言えば、時間的・形式的に相前後するとはいえ上記の批判は免れる一方、「書き換え前の決裁書類」が真正となるならば過程の国会審議は全部が無駄になり、内閣の立場は非常に苦しくなります。 

だから、麻生大臣は3月14日の会見で「書き換えは国会対応担当の本省理財局で行われたもので、答弁が誤解を受けないようにするために行ったと聞いている」と、佐川氏の答弁を否定せず「決裁後の書き換え文書が真正だ」という前提に予防線を張っているのだと思われます。

しかし、いくら両書類の差異がわずかなものとはいえ数だけは多くあるのですから、野党はこの点を重視して、遠回りのようでもネチネチと一々に「内容」で責める事の方が時間はかかるかも知れませんが、はるかに倒閣に結びつきやすいはずです。
 

かつての共産党・故上田耕一郎氏や旧社会党・故楢崎弥之助氏が生きていたら国会の場で必ずそうしたでしょうが、自民党の若い衆と比べても野党は全然幼稚なおぼっちゃま君達だらけなので、「攻め手」も持久戦も不得手なのです。結果、安部総理に舐められ苦渋を飲まされて終わりです。

野党のやり方は全く意味のない昭恵夫人の証人喚問にこだわり、マスコミに左右されやすい情報弱者の「気分次第」に期待をかけている有様ですから効果は限定的です。
 

受ける情報そのものに幾分の問題があったとしても、日本国民は例えば韓国民とちがい、ある時点でふと立ち止まって物事を考える性質が強いので、マスコミに形成された表面的「世論頼り」では長続きしません。 

今の倒閣を目指す野党連合が、能力がない上にまとまりがなく稚拙な戦略しか立てられない愚は、またしても安倍政権に対するオウンゴールとなって終わるでしょう。

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■証人喚問は「ほぼ無意味」

長妻昭氏は何処でも何人でも狂ったように「証人喚問」を声高に言い続けますが、こんな時だからそっくり返って言うのは構わないのですが、そんなもの真実の追究には何の役にもたちません。
 

籠池証人喚問にしても混乱を招致しただけに終わり、肝心のことはさっぱりわかりませんでした。

佐川氏は呼ぶ価値はありそうですが、地検の調べが入っている中で元々話せる範囲が限られている事にくわえ、刑事訴追を受ける可能性のある部分は証言を免除されているのですから、ほとんど意味はありません。

しかも国会答弁で見るとおりハナから野党を馬鹿にしきっているので、効果は上がらないでしょう。野党のとんちんかんな質問を聞くだけ不快になるだけのものです。

長妻氏は「昭恵夫人を呼べ」とか、「谷氏を呼べ」などと張り切って言いますが、書き換え前の文書には籠池氏の言葉で籠池氏の都合に合うように昭恵夫人の言った事としてしか書かれていず、しかも「書き換え問題」に関する直接的・新規性のある記述はなく国会に呼ぶ根拠も条件も満たしておりません。

それとも、私たちはまたしても詐欺師の残した言葉に右往左往しなければならないとでも言うのでしょうか?

ところで長妻氏はリベラルを標榜する国会議員のくせに、人権をどう考えているのでしょう。

国会という公開の場で個人に証言させる行為は、一時的に完全な人権を停止してもでも公益性のほうが勝ると判断される場合にのみ可能な国会の重大な行為です。

そうした点から、当然に呼ぶ人間の人選は事件の本質に迫るだけの要素や蓋然性がなくてはならず、財務省の「書き換え」に関連する不正行為を究明する目的の国会に昭恵夫人・谷両氏の招致など論外です。

何ら実力のない未熟な議員をかかえて長妻氏の苦しい事情はわかりますが、理屈に合わない倒閣運動丸出しで実に下品です。

もし本当に真実を解明したいなら、野党に出来そうなポイントとして近畿財務局に絞るべきで、あるいは噂のある中央公園や給食センターの補助金を付けた経緯や地歴まで洗い出して積極的に公開するべきです。それは結果として「空振り」でもいいのです。

国民は財務省に隠された「真実」をまず知りたいのであって、その上で安倍政権への自分の判断をしたいのですから、その為にこれだけ苦労して這いずりまわってやっているという事実を国民に見てもらい納得して貰う事が最上なのです。

野党らしく実地の地道な努力をしないで「真実解明~」などとだけ騒いで、宣伝効果が高いと勘違いして意味のない証人喚問によだれを流しているだけでは、これから先も支持率はあがりません。

                                                                                            (続く)

2018年3月20日 (火)

「書き換え事件」のなんだか感

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山路氏の論考のリードが長すぎたので、こちらに移しました。

さて山路さんも書いておられますが、この森友問題にはなんとも言えぬバカバカしさがつきまといます。

元来が、たかだかといってはナンですが、小学校用地の取得というローカルなお話。

さらには値引きがあったのなかったのといっても、それと隣の野田公園と比べてみれば、よく分かることです。

下の航空写真を見れば、森友用地の真横にあるのが野田中央公園です。

同じように伊丹空港の進入路の直線にあり、同じ大阪航空局の国有地であり、同じように震災ゴミの埋却地でした。条件はまったく同じと言っていい土地です。

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ところが、この両方の土地はまったく桁違いの価格で払い下げられました。

森友はゴミ撤去費用として8億を差し引かれたといって大騒ぎになっていますが、この野田中央公園では逆に撤去費用9億に5億が上乗せされ14億に増えています。

結局、野田中央公園のほうは撤去費用と相殺ということでタダになり、その上に2千万の補助金のおまけまでついてきました。

両者とも方や市営公園、方や学校法人で、共に公共性があると認められるケースにもかかわらず、どうしてこんな巨額の差が出るのか、財務局と当時これに関わった政治家は説明せねばなりません。

昨日の集中審議では案の定、昭恵さんの名があったのなかったのと追及していましたが、そんなものは籠池容疑者が「言っていた」だけのこと。

それも籠池本人が国会証言で「田んぼにいい土地がでましたね」という内容だったと、既に言っているようなことです。

安倍氏に至っては、日本会議をあまり籠池容疑者が何かにつけ「オレはグレートだぜ」と口にするので、その団体の説明を財務局がしている部分に「安倍氏も会員」とあっただけのことです。

これが朝日やNHKが言うように「書き換え」前文書に名前が出たから「関与の証拠」となるなら、なんでもこじつけられます。

詐欺師の発言で名前出された人に責任があり、名を出されたら最後、潔白は嫌疑をかけた人ではなく被疑者がせねばならない、あるいは「忖度」をされた側が「なかった」と証明せねばならないとは・・・、なんともスゴイ鏡の世界!

はっきりさせましましょう。立証責任は、嫌疑をかけた方にあるのです。

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そもそも籠池容疑者は上の写真のように日本会議大阪代表と自称していましたが、それも虚偽なことは、この団体によって確認されています。

第一、この土地購入事件の時は、とっくに辞めて会員ですらありませんでした。

日本会議は誰でも入れる間口が広い組織です。政治家で名を貸している人も大勢いるような、保守系社交団体にすぎません。

なにか巨悪の黒幕団体みたいに言うのは褒めすぎです。

そもそもが、公的文書に関わらずこんなどーでもいいことをアレコレ書くから、削除対象になったという側面もあるのですよ。

削除したことの当否は別にして、こんなことを書く理由がまったく私には理解できません。

籠池容疑者の「安倍氏のお友達」という言い分をブロックした後々の証拠にでもしたかったのでしょうかね。

さて、山路氏は書き換えの動機として、「公的文書の「記録」という観点からしても、また高級公務員の習いとして後日を期して書類をきれいにしておく事、「伝聞が些かでも決裁に影響を与えた」と取られそうな部分も消したかったのだ」と述べられています。

なるほどとうなりました。さすが公務員現場を知る山路さん。

野党、メディアの妄想じみた「政治家への忖度」ではなく、あんがいこのような佐川氏の「完璧主義」と財務省の特異な体質が根っこにあるかもしれません。

私になかった視点ですので、うれしい驚きでした。 

それにしても、いつまで続けるんだモリカケ第2幕。また今年いっぱいやる気なんでしょうか。

うんざりを通り越して、厭世的になっちゃいますよ。

厭離穢土 欣求浄土

山路敬介氏寄稿 「財務省文書書き換え問題」、私はこう考える その1

183_068

山路敬介氏の寄稿を頂戴いたしました。ありがとうございます。

                                       ~~~~~~~ 

                       ■「財務省文書書き換え問題」、私はこう考える その1
                                                                                    山路 敬介
 
私はこの問題についてはハナから興味がありませんでしたし、今も内閣を揺るがすような「重大な問題」などではありようはずがないと認識しています。
 

この件は、いわば財務省という「コップの中の嵐」に過ぎません。 

そもそも財務省の失態を、そのまま予断をもって政局に結びつけるような今日の馬鹿げた風潮は到底理解が出来ませんし、まるで韓国政界を見ているような気がして嫌気がさします。

ですが、事実として各種調査では内閣支持率は10%程度は下落しており安直にそうも言っておれなくなったし、私の考えも少しは述べておこうと思います。
 

このバカバカしい状況に心底から呆れすぎて、ちゃんとした記事としてまとめる努力が出来そうもなく、皆様には大変読みづらい文章になろうかと思いますがどうかご勘弁下さい。

森友文書問題の捉え方

朝日の3月6日の初出報道以降の「問題のありか」を整理しておくと、まず第一に「書き換えがあったか、なかったか?」であり、第二に内容の点で「書き換え前の文書と、書き換え後の文書にどのような相違点があったか」という事に尽きます。
(そう考える理由は最後まで読んでもらえれば理解して頂けると思います)
 

そこを押さえたうえでの「動機の解明」や、「法的問題点の検証」、「責任の所在」、「再発防止策」等々があるべき順序なのです。

しかし、「書き換えがあった」という事実だけで浮き足立って、ほとんどのマスコミ報道は印象操作を繰り返し、果は扇情的な取り上げ方になっているのは物事の本質を分からなくする危険な行為と言わざるを得ません。 

後で詳しく述べますが、この件はもとより政局に発展するような「疑獄事件」などではなく、少なくも「書き換え問題」での財務省の法的責任を問えるものでもありません。

法的には「改ざん」ではない

しかし斯く言う私も、山口真由氏がテレビで再三述べたように当初は「よもや財務省が決済後の文書を書き換えしている可能性は無いだろう」と考えていましたし、もしそれがあったならば財務省解体に匹敵するような大事件ではないかと考えていました。

ですが、当初の朝日報道にあった部分からは決裁内容を左右するような「重大な書き換え」は伺えず、NHKのHPから70Pもの文書を印刷してざっと確かめてみましたが、決裁そのもの「有効性」に影響を与えるような部分はありませんでした。
 

また、書き換えられた部分からは何ひとつ「新しい事実」の発見や、「変更された事実」の存在を明確に示すものはなにひとつありませんでした。

くわえて、文書そのものが一様に決裁文書に含まれるとはいえ、「書き直し」の大部分は添付付属書類にすぎない部位に集中されているので、結論として決裁権者の裁量の範囲内である可能性が極めて高いものと考えられます。 

少なくも、とても違法性を示す「改ざん」などと言えるような書き換えではない事は明らかです。 

法的にいう「改ざん」を決裁権者の側の財務省が行い得るというのは、それそのものが言語矛盾であって再決裁手順を踏んだ財務省あげての「書き換え」である事が明白になりつつある中で、佐川氏「個人としての改ざん」の線も消えたと思います。 

しかしながら結果的に財務省が公的文書の「公信力」を貶めた事はたしかで、これが密かに隠されて行われた事は、国民の信頼を損なう大問題だと言えます。 

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「書き換え」の動機は、佐川氏のキャリア財務官僚の完璧癖か

佐川氏が中心となって行われた「書き換え」の動機が何であったか、それを私が明確に分かるはずもありませんが、麻生大臣は「自分の国会答弁に合わせた」と言いました。
 

それはそのとおりだと思います。 しかし単純に、それよりも成績優秀で順調な出世を遂げてきた完璧主義者の佐川氏にとって、国会対策以前に前任者の行った決裁内容が杜撰で稚拙すぎて気に食わなかった。 

さらに高踏な佐川氏基準では「裁可水準を満たしていない」と判断したのかも知れません。 

普通に考えて「書き換え前文書」は不出来な代物で、「こんなものを元に国会対応なんか出来るか!」って感じだったのではないかと思います。それほどひどい文書です。 

しかも「書き換え前文書」が決裁されたのは、2016年6月14日で迫田元理財局長の離任数日前です。その点でも佐川氏が我慢ならなかったのも理解できます。 

公的文書の「記録」という観点からしても、また高級公務員の習いとして後日を期して書類をきれいにしておく事、「伝聞が些かでも決裁に影響を与えた」と取られそうな部分も消したかったのだとも思います。

安倍夫人の動静を籠池が語った部分などは記録しただけのもので、元より信ぴょう性も決裁要因としても価値がないものですが、これを公文書として後日に残すことの方が普通では考えられません。
 

国民から見ればそれが「証拠隠滅」のように取られても仕方のない面もありますが、「行政文書として適正化」したという要因も動機として大きいと思います。

そこで、もとより決裁書類の後日の書き換えは想定されておらず、従ってそれを禁止する規定もないところに目をつけて「書き換え」に踏み切ったものと思います。
 

佐川氏が「書き換え」が公的文書の「公信力」を失わしめる結果につながるとは思いもしなかっただろう事は、財務省のキャリアでありながら競売物件に手を染める行為でも「佐川氏らしく」現れていると思います。 

池田信夫氏は「国会答弁に合わせたというよりも、首相答弁に合わせた」、という見立てをする中で、根拠としてそれは「主に昭恵夫人の部分を除く行為に現れている」としています。
(3月16日の国会答弁で太田現理財局長も、その可能性を否定しませんでした)

そう考えるのも一定の合理性がありますし、そういう面もあるでしょう。
 

しかし、池田氏のそこにもある種の「勘ぐりすぎ」な面も入っていると思うのです。 

「「首相答弁を受けて」と仮定すると時期的にも良く合う」と池田氏は述べますが、それは局所的見方であって、変更箇所全体と答弁全体がすべて良く平仄が合っているので、麻生氏の言う事の方がまだ近いと思います。

蛇足ですが、池田氏は別に非常に面白い仮説も立てています。

杉田官房副長官はかなり早くから「書き換え」を知っており、3月2日の朝日報道が予算案の衆議院通過の直後だったことも考え合わせると、種々言うことをきかない財務省に業を煮やして官邸が朝日にリークしたというものです。 

それだと「肉を切らせて骨を断つ」戦法を財務省に対して官邸が使った、と言う事になって大変面白いのですが、果たしてどうでしょう。

結果的に自民党は財務省をひたすら叩く方向に舵を切り、これで財務省は消費税値上げが相当に困難になったと思えるので、全く有り得ない話でもないのかと思います。
 

■「忖度」は、財務省の問題ある組織性と意思決定過程にある

我がかつて敬愛した筆坂秀世氏が3月13日のJBpressの中で、「忖度」についてめずらしく朝日言論人のような綺麗事の建前論を開陳しているので取り上げてみます。
 

文章自体も随所にアヤを配置した、一見さすがに説得力に富むと思わせる巧妙な出来です。

要約すれば、「行政とは、本来的に忖度など入り込む余地がなく」、しかし「実態はそうではなく、「忖度」はある」としています。
 

役所の忖度は「上下関係」から発生し、「どういう場合に役人・官僚が忖度するか」と言えば、「上層部の意向に従う場合」であって、「ここから忖度が生まれる」とします。 

「(部下が正しさを主張するのは)「なかなか出来る事ではなく」、「人事権を握っている人に逆らうには、身を捨てる覚悟がいる」ので、「我が身大事さ」に「不公正と知りながら、捻じ曲げてしまう」のだそうです。

おいおい、「ちょっと待って欲しい」(朝日風)です。
 

ここまでで既に現役・公務員経験者としては、「侮辱」を感じるのではないでしょうか。 

一般化して語られる風は多くの公務員への印象に誤解を与えますし、だいいち話が簡単にすぎます。

公務員は法を執行するのが仕事ですが、前例があればそれに則って執行判断の用は足ります。 
 

しかし事案の状況は様々で案ずる時には上司に相談して方針を決めますが、往々にして上司と解釈をめぐって意見の相違は有り得ます。 

そんなものは避けては通れません。しかし、そこから「「忖度」がどうの~」、とか、いかにもわかったような結論に結びつけるのは間違いです。

部下は「執行すべき法律の解釈」について、より以上に上司の方がその「正しさ」に権限を持っているので結局はその判断に従いますが、「逆らう」とか「人事権を持っているから」などと考えるのはモロに「昭和の人」だと思います。
 

それに役所の忖度も普通の会社のように「上下関係」から生まれるだけじゃありません。専門的能力から生まれる事もあるし、実績から生まれる場合もあります。

筆坂氏の言われるケースでも、現在は市役所レベルさえもそうでしょうが、意思決定の過程のほとんどを様々な方法で記録化しているので、下の者は言うべき事を言い、やるべき事をやりさえすれば無用の責任を被らなくて良いようなシステムになっています。
 

つまり「筆坂風忖度」などしなくて良いようにシステムの方が改変されているのです。

この種の話をするなら、財務省独特の組織性や問題のある意思決定過程を前提として、事実上「法律の最終解釈権」を持つ理財局長の立場にそって議論を進めるべきです。

ここから筆坂氏は、「昭恵夫人が名誉校長だったり、籠池と親密な関係だったりする」と見てとった佐川氏が「忖度」判断して「特例的な扱いをした」とし、その佐川氏もまた「トカゲの尻尾切り」にあって、「巨悪は責任をとろうとしない」と結びます。
 

しかしまぁ、こういう逆下克上的判断というか、「弱者VS強者」あるいは「部下VS上司」、「支配者VS被支配者」的史観から物事を捉える向きには飽き飽きします。

私は、佐川氏が何らかの部分で安倍首相に忖度した可能性を完全には排除しませんが、それが主な原因であろうとも全く考えていません。
 

筆坂氏は9億5千万の価値の土地が1億3千4百万で売られ、その差額がそっくり「忖度」の結果であり(この認識がすでに誤り)、賃貸を含め財務省以外の学校許可の関係まで「忖度」に結びつけようとしますが、これには相当に無理があります。 

それは簡単にいえば、筆坂氏が言うように「悪事はいつか必ずばれる」からです。 

省をあげてこれを隠蔽しようとした事も、「「忖度した」と疑われないようにするため」との考えは私にもありますが、それは逆に「無用の忖度の疑いを持たれる事を予め避けるため」だと思われます。 

したがって、一般大衆の判断力を信頼しないエリート意識の発露こそが墓穴を掘ったと考えたほうが、その「書き換え」を隠蔽する手法の杜撰さを見ればしっくり来ます。

仮に佐川氏が目いっぱい「忖度」したとして、私のようなタイプの人間がもし佐川氏ならば、必ず先方にコンタクトを取り確認しつつ行為したと思いますね。
 

その上で、何らかの意思表示を相手方から貰う手立てを尽くすと思います。 

しかし、それはもう「忖度」ではないし、そのような考えは佐川氏にはなかったと思いますが、基本的に安倍政権なんて財務省から見ればはっきりした「敵」ですから、「忖度」が主たる理由なら苦労した案件に対して反対給付を求める事も有り得たと思うのです。 

「内閣の人事権との関連についてどうの~」、と言う人がいますが、それも関係ないでしょう。 

振るい落とすだけのシステムとしては出来上がっていますが、財務省が容易に大事な人事権を手放すはずもなく、現在人事について実効性のある成果はあがっていません。
(ただ、官僚でも下位の人たちは勘違いしているフシもあるそうですが、それは今回は関係ありません)
 

むしろ政府自民党は今回の事件を奇貨として、人事について口を出せる方向に持っていこうとしているところなのではないでしょうか。 

                                                                                            (続く)

 

 

2018年3月19日 (月)

「書き換え」問題について与党は全面協力すべきだ

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今日、国会で「書き換え」問題の集中審議を行うそうです。 

今週の内閣支持率は出揃って30%台に突入しました。いうまでもなく危険水域です。 

問題を切り分けて、対処すべきです。 

まず、財務省「書き換え」問題についてですが、これは言い逃れしようがなく、国家の根幹を揺るがすものです。 

保守系の人の中には、明らかになった「書き換え」前の文書に首相と夫人の関与を裏付ける記述がないことをもって、問題がないかのようにいう人がいますが、間違っています。 

国会審議された文書に恣意的な官僚による「書き換え」があるとすれば、何をもって議論のたたき台にするのかという大前提が消失してしまいます。 

しかも驚くことには、これだけ大規模な「書き換え」をしていながら、当事者はそれをいとも気楽にやっていた様子なことです。

下級官僚が容易に罪の意志もなく「書き換え」や削除をしておきながら、平然とできるということは、いかにこのような「書き換え」が常態化していたかということです。慄然とします。 

おそらく、他の官庁でも行われていたことは明らかで、民主党政権の長沼厚労相時代にも「書き換え」が明らかになっています。 

なお、この時には長沼大臣が責任を取るどころか、官僚の減給でお茶を濁してしまっています。

このような官僚による文書改竄は、いかに添付文書(調書)であるにせよ、権力犯罪に等しいものだと、私は考えます。 

国会は、議員による審議から切り離して、福島第1事故で作られたような「書き換え」問題調査委員会を発足させ、早急に徹底した調査をする責務があります。 

与党はこれに全面協力するべきで、この結果がでるまで、麻生大臣は辞任すべきではありません。 

そしてもう一点。 

以上のような「書き換え」問題と、政局はいったん切り離して捉えるべきです。 

書き換えられた内容は、むしろ首相夫妻が関与していないことを裏付けるものでした。 

この問題がここまでごじれたのは、昭恵夫人の軽率さが招いたことです。 

メディアや野党は彼女の持つ顔のうち、都合いい籠池との関わりの一部を見ているだけにすぎません。 

少し昭恵氏の行状を追跡してみることにします。 

下のように、反安倍デモに紛れ込んでツーショットを撮るていどならヘンなオバさんで済ませることができました。 

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ところが、昭恵氏は下の写真のように、沖縄で高江紛争の拠点であったN1裏テントを、運動家の三宅洋平氏と訪れます。 

島尻候補の応援にいった帰りだそうですが、私も絶句した記憶があります。 

彼女からすれば、素朴に困っている人たちの声を聞きたいていどのことだったのかもしれませんが、これは運動側に大きなショックを与え、分断工作だと批判を受けています。
https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=115280 

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また、反原発の拠点の祝島にも訪問しており、そのときの発言が残っています。 

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「洋平くん、自民党から出馬すればいいじゃない」だそうです。おいおい。 

左翼陣営は深読みして、「反対者への共感ポーズをとり、期待感を与える社会心理学を応用した策謀」だそうで、伝授したのは電通だそうです(笑)。

ないない。そんな深いことを考えて行動する人じゃありません。 ただの天然なだけです。

皮肉にも、安倍昭恵氏の思想的傾向は、夫より朝日ワールドに近いのです。 

そして挙げ句は、今回のように籠池という小物の詐欺師に捕まって、まんまとしゃぶりつくされたのは、ご承知のとおりです。 

名誉校長にまつりあげられ、司直の捜査が迫って逆切れしている籠池夫人に心配のメールを送り続けるなんて、「いい人」、「断りきれない人」にもほどがあります。

下の写真は朝日がアップしたもので、撮影したのはひと頃籠池のスポークスマンをしていたライターの菅野完氏で、元しばき隊の幹部だった人物でした。

朝日はこの昭恵氏発言部分が削除されていたことで、鬼の首をとったようにこう書き、NHKも追随しました。

NHKの「削除文書から安倍首相夫人の名がでました」、という放送に仰天された方も多いことでしょう。

「この記述は、2015年2月4日に財務省近畿財務局が作った決裁文書にあった。国有地について、当面の貸し付けを望んでいた森友学園の籠池泰典前理事長が、14年4月28日に近畿財務局との打ち合わせで語った内容として記された。その3日前に、安倍晋三首相の妻の昭恵氏を現地に案内。籠池前理事長は昭恵氏と並んで写る写真を提示した、とも記されていた」
(朝日2018年3月13日)

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しかし、内容はなんのことはない、削除された添付文書に上の写真があったというていどのことです。印象報道ですねぇ。

この写真が撮られた時に昭恵氏が「いい土地ですね。進めて下さい」といったと籠池容疑者自身が国会証言で述べています。

この「書き換え」前文書にも、ただそう籠池容疑者が言っていたとあるだけです。

つまりは、この詐欺容疑者が「言っているだけ」のこと。

実際は下写真のように、彼女が言ったのは「いい田んぼがでてきそうですね」といった、実にノホホンとしたことでした。

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そもそも昭恵氏には、国有地をどうこうする権限もないわけですから、秘書を通じて「希望に添えない」と伝えています。

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それをあろうことか逆恨みして、安倍夫妻の「関与」を証拠だてようとして、ニセ札束を昭恵氏に返そうとして安倍氏宅に押しかけて、詐欺師の馬脚を暴露してしまうという情けないオチまでついています。

ちなみに、安倍氏自身の「書き換え」前文書の登場は、籠池容疑者が盛んに日本会議との関わりを口にするために、その説明で財務局が「安倍氏も会員の」と説明を加えたにすぎません。

ただの説明文に出るだけなのです。これで文春が大特集で言うような「安倍夫妻の犯罪」が立証されたとしたら、驚天動地、ビックリ仰天です。

詐欺容疑者の発言を、関与の証拠が削除されていた、と書き立てる朝日の神経を疑います。

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辻本氏がギャギャーと昭恵氏を糾弾していますが、夫人を国会招致してもこんなていどの人ですから、何も出ませんよ。

三宅、山本、菅野氏たちと交流していたのは、彼女の政治スタンスに彼らとの共通点があったからです。 

失礼ながら、こんないかがわしさのガスが充満する人たちにちやほやされれば、いつかこんな大事故を起こすのは眼に見えていました。 

私から見れば、昭恵氏はただファーストレディというステータスを楽しんで、今、その報いを受けているただの愚か者にすぎません。

昭恵さん、あなたには居酒屋の酔っぱらいママくらいがお似合いなキャラなのですよ。 

ですから、この「書き換え」問題の本質と、昭恵氏の愚かさとは無関係です。 

強引に接着しようとすると、辻本氏のようにFBで「いいね」と押したから国会招致だという魔女狩りモードになってしまいます。

そんなに証人喚問したければ、佐川元理財局長、書き換えた当の近畿財務局の官僚たちを呼びなさいって。

とまれ、今すべきことは、なぜこの「書き換え」問題が発生したのかを究明し、与党もそれに全面協力することに尽きます。 

そのためには、与野党共に政局と切り離す賢明さがなければ、この「書き換え」疑惑を解決することは不可能です。

政府はとうぶん赤信号の支持率に苦しむでしょうが、政権延命のために小細工を弄さないことです。

その結果、政権の「関与」の証拠が出れば、総選挙をすればよいだけです。

ただし、朝鮮半島有事を背景にやるべきことかどうかは別ですが。

 

 

2018年3月18日 (日)

日曜写真館 椿の早春

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一斉に花々が芽吹き始めました。こんな季節には、まったりと春に浸りたい。

正直、政治はうんざりです。

政治がない世界があるなら、この腐った沼地のような臭いを嗅がされ続けるくらいなら、さっさと引っ越したいくらいです。

時々、ひどく厭世的になっている自分を発見する昨今です。

とはいえ、うんざりだからこそ考えねばならないわけで、いつのまにか私のブログも時事ブログとなってしまいました。

しかし、せめてといわせて下さい。こんなすばらしい季節はやめてくれ。

まだ梅の香気が漂い、雪柳と桜が可憐な花をつけ始めたこんな季節くらいは静かにできないのか、と。

静心をもたなくていいのは、花びらだけ。

2018年3月17日 (土)

米国政権は対中・対北強硬派に変化した

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トランプの辞任ドミノが止まりません。今度はマクマスター安全保障補佐官が辞任の方向のようです。
ハーバート・マクマスター - Wikipedia

[ワシントン 15日 ロイター] - 米ワシントン・ポスト紙は15日、複数の関係筋の話として、トランプ米大統領がマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任する方針を決定したと伝えた。
ただ、大統領は後任選びを慎重に進めており、マクマスター氏がすぐに退任することはないという。
5人の関係者によると、トランプ氏は後任にジョン・ボルトン元国連大使や国家安全保障会議(NSC)のキース・ケロッグ事務局長などを検討している」

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ただ、ティラーソンには外遊中に首を飛ばすという屈辱を与えたわけですが、今回は「恥をかかさないために後任人事には時間をおく」そうです。 

去年来、トランプはティラーソンを生殺しにしてきたのを、引き止めてきたのがマティスだったことはよく知られており、遠からずマティスも辞任するのではという憶測が生じています。 

もし後任にジョン・ボルトンでもなることになれば、トランプ政権内で、ティラーソン、マティス、ケリーといった現実主義路線派の大部分が閣内から去るということになります。

さらには、大統領に経済政策を進言する大統領国家経済諮問委員会のゲ リー・コーン委員長が対中課税強化に反対して辞任し、後任には反中論客で有名とされるラリー・クドロオが任命されたようです。

もうひとつおまけに、USTR代表も対中強硬派のロバート・ライトハイザーですから、これにポンペオが国務長官に指名され、ボルトンが安全保障主席補佐官になれば、対中・対北強硬派で閣内が統一されることになります。

やや複雑な心境ですが、この対中・対北強硬派が米政権の新たなの流れだということを押えておくべきでしょう。

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トランプの政策決定には、多分にひらめき的なものがあります。

おっと、これは美的表現で、要するに典型的ハッタリ屋、あるいはスタンドプレイヤーです。 

私はこのような体質とはソリが合わないので、できたら安定したペンス副大統領に代わってほしいくらいですが、とまれそれが彼の資質なのですからしかたがありません。 

ただし、こと北との対応においては、このスタンドプレーのいい面が出た側面もあります。

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思い出していただきたいのですが、北が得意としてきたのは過激派まがいのおおよそ国家がいうようなセリフとも思えないイっちゃった言辞でした。 

いわく、「崩壊しちゃうぞ、核武装するかんね、戦争だ、戦争だ、核大国だ、火の海にしてやる、困るだろう。なら金出せ、石油だせ、原発作れ」というわけです。 

このような外交儀礼もくそもない言動をされると、オバマのような学級委員長的青瓢箪は、呆然としたのでしょうね。 

これがオバマの悪名高い、「戦略的忍耐」を生みました。

オバマ政権が、特に第1期において、断固たる対応をとっていたなら、あの時期は核ミサイルを持っていない時期だったのですから、はるかに解決は簡単だったはずです。

トランプ外交のことを「素人のデタラメ外交」と外交官出身評論家たちは評しますが、この無為無策のオバマの後をついで処置なし状態で手渡されたという側面もあることをお忘れなく。 

トランプという奴は何をするか分からない、これこそがトランプの最大の外交カードでした。 

なにせ、誰にも相談しないで、韓国使節に対して「分かった。分かった。北朝鮮に私がそうすると伝えてくれ。彼(金党委員長)に『イエス』と言ってくれ」と言っちゃうんですから、スゴイですね。 

同席していたペンス、マティス、ケリー、マクマスター、サリバン(国務副長官)は腰を抜かして、「大統領、リスクがありすぎます」と諫めたようですが、トランプは「分かった、分かった」と一蹴したとか。

多少の逆説的ニュアンスも込めてですが、これができるのはたいしたことです。 

このようなハッタリ一発で局面を開くという手法は、実は金一族の十八番ですから、正恩が「トランプ大統領に直接会って話ができれば、大きな成果を出せるだろう」といった球を見事に打ち返したことになります。 

打ち返された正恩のほうが、逆に正直たまげたでしょうね。

ウンとは言えまい、どうだ」と放ったら、オーケーとすんなり返ってきたわけで、これですっかりイニシャチブは米国ペースになってしまいました。

そのうえ、圧力をいささかも弱める気がない証拠に、ポンペオを国務長官の後任に据えるのですから、芸が細かい。 

何度か指摘してきていますが、このようにトランプ外交はあんがいハッタリの背後に中身が備わっているのです。

国連安保理の経済制裁・海上臨検という大義をとりつけて、国際社会は一丸となって北の核をとりあげようとしているという実績があるわけです。 

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そしてご存じのように、空母をズラっと3隻並べて見せたり、B!爆撃機を境界線すれすれに飛ばして見せるといった開戦恫喝も加え続けています。 

つまり、裏付けのある脅しで、そのうえに立って「オレはクレージーだぜ。ホントにやるぜ」と大統領本人が言っているのですから、確かにこれはほんとうに怖い。 

これがトランプの「マッドマン・アプローチ」です。少なくとも、あの青瓢箪の空疎な理想主義的無為とは対局であることくらい、北も理解できたはずです。 

この米国大統領が、「閣僚ひとりやふたりの首を飛ばしてでもやるぞ」、という決意があれば、事態は動くということでもあります。

おっと、初めはトランプをディスろうと書き始めたのですが、だんだんと褒めてしまったぞ(苦笑)。
 

とまれ、昨日書いたイラン核合意廃棄もそうですが、大統領が「こるらぁ、こんなもの屑籠だぁ」とわめいて一悶着起こし、それを「戦う修道士」のマティスがはがい締めにして諫めることができねばシャレになりません。 

つまり阿吽の呼吸で、「怒る大統領」vs「止め男」という二人羽織の構図があってなんぼのものなのです。 

怒鳴られた相手国はビビリ、妥協点を探ることになるかもしれないからです。 

イランの場合は、2次制裁解除を維持し、合意の骨格は崩さないことと引き換えに、トランプがいう「イラン合意の欠陥」の修正協議に応じる可能性もないとは言えません。 

北の場合、クリストファー・ヒルやジョセフ・ユンのような外交官たちが四半世紀かけて解決の糸口にも達しなかったのに比べれば、とりあえず入り口に達したと評価すべきでしょう。

うちの国の首相が、北との会談もやぶさかではないと言っているようですが、この機をおいて拉致被害者を奪還できる可能性がないからです。

先述したように、北は追い詰められています。

トランプに取りなしを頼めるのは、いまや世界の首脳で安倍氏しかいないのは明らかです。その交渉材料として、拉致被害者を返す可能性もありえます。

楽観はできませんが、状況は急速に動いているのです。

※お断り 改題し、新人事を加筆しました。いつもすいません。

 

2018年3月16日 (金)

イランとの核合意廃棄と北への核対応

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朝鮮半島情勢について、考えを進めていくことにします。

まず昨日のティラーソン解任・ポンペオ就任がどのような展開につながって いくのか、考えてみましょう。
 

私たちは北朝鮮にのみ眼を奪われがちですが、実はトランプはもうひとつの宿敵と対決しています。それがイランです。 

このイランの核開発は、北がイランと裏で技術供与していることもあって、いわば「もうひとつの北朝鮮」といった顔を持っています。 

ですから、イランとの核合意をめぐった米国の対応を観察すれば、北の核に対してどのような対応をとるのか、ある程度予測がつきます。 

そもそもこの3月13日のトランプのティラーソン解任事件自体が、イランとの核合意(包括的共同作業計画)に対する意見の不一致が理由でした。 

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上の一覧が、オバマ政権時に米国とイランと取り交わした核合意ですが、トランプが怒るように大変に中途半端で限定的性格だと分かります。 

特にトランプが「史上最悪の取引」と批判するのは、一覧の下から2番目の核開発能力を最低限で手打ちしてしまったことです。 

つまり、イランは濃縮ウランの生産能力と保有を2015年10月18日から10年間規制され、プルトニウム生産を15年間禁止された「だけ」という限定的なものなわけです。 

つまり、イランの核に対して米国は限定的に制限をかけたにすぎないことになります。 

そのうえ、弾道ミサイルも5年から8年で解禁となるわけですから、10年後にはイランの核ミサイル以前どおりに復活するかもしれません。 

この条件で、米国はイランに対する2次制裁を解除しました。

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たぶんオバマがもう一期やることになったのなら、北の核に対する落とし所は、イランとの核合意に酷似したものになったかもしれません。 

つまり核の制限封印、凍結です。 このイラン核合意をみると、米国は北に対しても似たことを考えていた、あるいはいまでも「いる」可能性があります。

つまり、弾道ミサイルにおける飛距離の制限、プルトニウム生産の10年ていど凍結、現有する核兵器の封印ていどで、北への国際制裁を解除する選択肢もありえるわけです。 

ちなみにこの案は米国内部で大変に有力で、たぶんティラーソンはこのあたりの線を狙っていた節があります。 

ですから、ティラーソンを解任しポンペオを据えたという人事は、北との対応という要素もあったにせよ、主要な理由は、今年1月12日に2次制裁を停止した際に、5月12日までの120日間が「最後のチャンス」だと宣言していたことに対応したものだと思われます。 

ただし、このトランプの決定に対して賛成しているのはポンペオくらいなようで、ティラーソンはもちろん大反対、マティス国防長官、マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官、ダンフォード統合参謀本部議長といった軍人組も反対しています。

なお、マティスはやや立場が複雑で、かつて現役大将だった時に、中東をエリアに持つ中央軍司令官として、オバマの進めたこのイラン核合意に反対して解任されています。

その彼が締結を守れと言うのは、ここで覆すとかえって状況が悪化するのが目に見えているからです。

同様に米国以外の締結国も、このトランプのチャブ台返しに賛成する国は皆無だと思われます。 

その反対理由は、イランがNPT(核拡散防止条約)に定められた以上の厳しい査察を受け入れていて、合意を忠実に履行しているからです。

このへんは合意を一方的に廃棄し、IAEAの査察官を追い出して、核開発を再開した2代目時代の北と大違いです。

これをチャブ台返しするとなると、また元の木阿弥となってしまい、逆にイランの無制限の核濃縮、弾道ミサイル保有を許す口実を与えてしまう可能性があるとみています。 

私も、おそらくそのようにイランは対応すると考えています。 

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では、イランとの核合意を米国が一方的に廃棄した場合、「イランの盟友」である北はどうでるでしょうか。 

とうぜんのこととして、北は仮に米朝会談を開いたとしても、そこでなにが決まろうと、米国は後から「致命的欠陥」としてチャブ台返しをする可能性があると思うでしょう。 

その上、北はイランとは違って、核兵器とその投射手段を限定的であっても現有しているという強みがあります。 

イランの場合、核開発を凍結すれば10年ていどのモラトリアムが得られますが、北は既に持っているものを手放せということになるわけで、はるかに非核化のハードルは高いのです。

ですから、トランプが反対を押し切ってイランとの核合意を廃棄した場合、5月とされている北との首脳会談もまた開かれるか微妙なことになるでしょう。

北の奇妙な沈黙は、このトランプのイラン合意を様子見しているためかもしれません。

このようにイランの核合意と北に対する核対応は二重写しになっていて、同時進行しているのです。

 

 

 

2018年3月15日 (木)

ポンペオ就任 北にとって進むも地獄、退くも地獄の季節が始まった

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日本がモリカケで足を取られているときにも、恐ろしい勢いで世界は回っています。 

ティラーソンが電撃解任されました。まさに電撃で、ティラーソンは外遊中だったようです。 

ま、彼は予想はしていたでしょう。彼とトランプとの不和は、今に始まったことではありませんから。 

ティラーソンと共に「不仲三羽ガラス」であったマティス国防長官、マヌーチン財務長官も一緒に辞めるか気になるところです。 

この3人が閣内から消えると、一気に軍事オプションが現実味を帯びることになるからです。 

「トランプ米大統領は13日、ティラーソン国務長官を解任した。ティラーソン氏は1週間近くに及ぶアフリカ訪問から戻ったばかりで、不意打ちを食らった格好だ。
トランプ大統領は同日午前9時(日本時間同午後10時)前にツイッターで、ポンペオ中央情報局(CIA)長官を新しい国務長官に指名すると発表し、政権の外交政策チームを一新することを明らかにした。(略)
米政権では現在、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長とのトランプ大統領による米朝首脳会談の準備が進められている。大統領はこの日、ホワイトハウスで記者団に対し、ティラーソン長官とはイランとの核合意を含む重要な問題について意見の不一致があったと説明。ティラーソン氏は「考え方が異なっていた。レックス(ティラーソン氏)は今、ずっとハッピーだと思う」と加えた。(略)
トランプ大統領は次期国務長官に指名したポンペオ氏について、CIA長官として「われわれの情報収集の強化や防衛・攻撃能力の刷新、国際的情報活動における友好国や同盟国との緊密な関係構築によって両党議員の称賛を集めてきた」と評価した。
元下院議員のポンペオ氏は、2017年1月の就任以降ほぼ毎日、諜報(ちょうほう)活動報告を通じて大統領との距離を縮めていた。大統領は朝鮮半島の非核化など政権が直面する困難な外交政策課題への対応で必要なスキルをポンぺオ氏はもたらすと述べた。」(ブルームバーグ2018年3月13日)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-03-13/P5J5PI6S972A01

Photoマイク・ポンペオ

ティラーソンの後任は、かねてから噂のあったマイク・ポンペオCIA長官でした。

マイク・ポンペオ - Wikipedia 

ご承知のようにバリバリの右派強硬派と呼ばれている人物ですが、この「人物」が問題ではなく、むしろこの「時期」にポンペオに替えたことが大事です。 

ここで思い出していただきたいのは、米国はいつまでもダラダラと引き延ばされる気はないということです。 

米国は伝統的に、自らの領土・国民を直接攻撃されることを許しません。それが民主・共和を問わず米国外交の大原則です。 

真珠湾攻撃、キューバ危機、9.11同時テロ、いずれも米国が本気で戦争を開始するきっかけとなった事件です。 

今回、正恩は米国にとって日本、ソ連、 テロリストに次いで4番目に「米国を火の海にしてやる」と公言した国であることを忘れないほうがいいでしょう。 

自国領土が直接に脅威にさらされるのみならず、世界に核兵器が拡散していく核のドミノ現象を、米国は恐れています。 

レッドライン?そんなものは、とっくに超えています。あとは「時間」なのです。その残り時間をホワイトハウスはこう考えているようです。これは去年12月のことです。

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「ボルトン元国連大使は「CIA首脳部はドナルド・トランプ大統領に、北朝鮮のICBMプログラム開発を中止させられるリミットまで3カ月しか残っていない」と告げたという。
またセドン教授は「ボルトン元大使の訪問が公式なものなのか非公式なものなのかは分からないが、彼によると、(CIA首脳部は)3カ月たったら北朝鮮はワシントンDCを含む米国の諸都市を核ミサイルで攻撃できる能力を有するようになるだろう、とトランプ大統領に告げた」(朝鮮日報)

この記事に出てくる「CIA首脳」とは、ほかでもないポンペオで、トランプに伝えたとされるのが隠れもしない超強硬派のジョン・ボルトンだというわけです。ボルトンも国務長官候補のひとりでした。
ジョン・ボルトン - Wikipedia 

このふたりは北を攻撃するなら、冬季をおいてないと主張してきました。 

それは冬季は偵察衛星のサーモグラフィによって、北の地下核施設が手にとるように分かるという軍事技術的理由だけではありませんでした。 

北が米本土に到達できるICBMを完成させるまで3カ月ていど、つまりちょうど今頃の時期に北はゴールテープを切ってしまう可能性が高いと見ているからです。

一度でもICBMのような絶対兵器を北に持たせると、後は飛距離や核兵器材料の値引き交渉をするしかなくなります。

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逆に正恩がなぜピョンチャン五輪というカードを切って、プリンセス・ヨジョンを派遣したのかという理由は、この裏返しです。

北が欲しいのは、このICBMという絶対カードを持つまでの「時間」です。 

米国は国際社会に向けて、2017年5月、2017年年末、2018年春と軍事攻撃の噂を意識的にリークしてきました。 

開戦の噂だけではなく、2月2日に公表された「核体制の見直し」(NPR)にはこのような記述がありました。 

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「現在そして将来的に潜在的な敵が米国、同盟国、およびパートナーを核兵器または通常兵器に攻撃、侵略しても、その目標を達成することができず耐え難い結果を招くという高いリスクを確実に負わせるような、柔軟な核戦力を確保することがアメリカに必要である」

これは北が軍事的挑発を続けるなら、小型核で対応するというメッセージです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/22-5e08.html 

米国の一部は、米軍による小型核を含めた緒戦の猛攻撃で、北朝鮮の指揮命令系統や核施設、核基地を完全に破壊できると読んでいます。 

指揮命令系統という蛇の頭を叩き潰してしまえば、北は全身が麻痺した状態となり、38度線からのソウルに対するミサイル攻撃も限定的に終わる、そう考えるストーリーがあらためて浮上したのです。 

私は楽観的にすぎると思いますし、実際に先日ハワイで実施された机上演習では、地上軍を投入した大きな戦争に発展するというシナリオもでています。 

米軍の現場は、開戦オプションに消極的だと見られます。

その場合、日本に対するミサイル攻撃も想定する必要があります。北が核攻撃を日本にした場合、数百万人単位の被害が想定されます。 

そして、海上封鎖・臨検という圧力が続いて放たれます。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-fb5b.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/post-3df9.html

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経済制裁自体は、思いのほか効いていないと思われますが、問題はむしろ国際社会を翻弄していると思っていた正恩の手から、イニシャチブを米国が取り戻したことです。 

国連安保理決議による経済制裁は、その実効性そのものよりも、それをすることによって中国、ロシアすら北を制裁せざるをえない立場に追い込んだことの意味です。 

つまり、時間が立てばたつほど、北が有利になった今までと違って、時間がたてばたつほど正恩は袋小路に追い込まれる結果となっていったのです。 

この二重の軛によって、正恩は締め上げられ、ムン・ジェインを動かし五輪参加に踏み切り、一挙に南北融和を演出し、さらにムンに米朝会談を呼びかけさせたのです。 

したがって、今この「時期」に米朝会談があるとすれば、それは正恩にとって屈辱的敗北を意味する以外考えられません。

私は米朝会談を手放しで絶賛し、「北朝鮮の非核化と平和化が定着すればトランプ大統領と金正恩はノーベル平和賞を獲るんじゃないか」と叫んだ辺真一氏の発言を読んだ時には、飲んでいた泡盛を吹き出してしまいました(笑)。
 https://snjpn.net/archives/45261

辺氏は北のポジショントークをする人ですから、実に分かりやすく北の思いを解説していただきました。

また元朝日新聞記者の田岡俊次氏が、「米朝会談は自然の流れ、置いてけぼり日本は苦しい立場に」という記事にも失笑しました。
http://diamond.jp/articles/-/163374

今、朝鮮半島でやっていることはまぎれもなく「冷戦」なんですが。冷戦がとりあえず終わったのは欧州だけ。北と中国が非核化されないかぎり、「冷戦」は継続されているのです。

それはさておき、今回のティラーソン解任・ポンペオ就任です。 

ポンペオは国務長官として、米朝会談のバックステージの責任者となりました。おそらく彼は事前交渉の席上で、「検証可能、不可逆的な非核化」を北に要求するでしょう。 

ここで「検証可能性」というワードがきわめて重要になります。メディアはさっぱり報道しませんが、ここが米朝交渉の最重要ポイントなのです。 

それはすなわち、正恩の「ICBMを凍結してもいい」などという生ぬるい口約束では済まされず、物理的措置を伴うということです。

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すなわち、IAEAによる北核施設情報の公表・査察・破壊措置まで含むものとなるということを意味します。 

ですから、米朝会談が報じられると、IAEAは「北の査察に費用はいらない」という異例のコメントを出したほどです。

日本も同時に、IAEA査察に3億円支出すると表明しました。

IAEA査察官には米軍専門家が同行するでしょうから、事実上、米軍による北国内の自由な査察ということになります。 

さぁ、正恩がこの「検証可能性」を呑むか否かが注目です。

いずれにしても、北にとって進むも地獄、退くも地獄の季節が始まったのです。

 

 

 

2018年3月14日 (水)

財務省「書き換え」事件はなぜ起きたのだろうか

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レックス・ティラーソンが解任され、CIA長官だったマイク・ポンペオが就任したようです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-03-13/P5J5PI6S972A01 

ポンペオは強硬派として知られており、この人事は米朝会談が決して安直な直線上にはなく、米国は会談に向けていっそう北を万力で締めつけける決意であることを示しています。

これについては米朝会談の評価とともに、今週中のどこかで記事としてまとめるつもりです。 

さて、春一番も吹かない前から、日本の政局は大嵐のようです。

「学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書の書き換え問題で、安倍政権への信頼が揺らぎ始めた。野党は麻生太郎副総理・財務相の辞任を要求し、安倍晋三首相への追及も強めている。官邸は事態の沈静化をめざすものの求心力が低下すれば、9月の自民党総裁選での首相の3選が不透明になる。各派閥も影響を見極めようとしている」
書き換え問題で安倍1強失墜 野党、内閣総辞職迫る 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28030240S8A310C1EA2000/

この記事はメディアの誘導方向がよく現れています。

野党とメディアは、連日「書き換え祭り」に興じているようですが、マーケットは至って冷静で、「書き換え」の内容を見て、政局にならないとみているようです。 

Http___o_aolcdn_com_hss_storage_midhttps://www.huffingtonpost.jp/2018/03/12/taro-aso_...

今回の「書き換え」事件は悪質そのものでした。弁解の余地はまったくありません。 

おそらく今後、統合されてひとつになるでしょうが、公文書変造、公務員倫理規定違反、国会法違反、情報公開法違反などで、司直の手が入る可能性があります。 

ただし、決済価格の書き換えのような重大文言ではなかったために、微妙な部分もあるようです。 

さて国民としては、政局にのみに眼を奪われるのではなく、何が問題の本質だったのか立ち止まって見るべきです。 

さもないと、麻生・安倍の首は獲ったが、主犯の財務省はなにひとつ変わらなかったで終わってしまいます。 

では、いったいどうしてこの事件が起きたのか、現時点で分かる範囲で整理してみましょう。 

佐川前理財局長はこんなことを国会答弁していました。

「適正な取引だった」
「書類は全て廃棄した」
「新たに事実確認をするつもりはない」
「システムを変更すれば、データは全て消去される」
「メールは一定日数が経過すれば自動消去されるシステムになっている」(後に撤回)
「学園側からの要望を受けて土地価格について事前交渉した事実は一切ない」
「事前交渉はなく、また記録も残っていない」

全部嘘です。 

当初、財務省は知らぬ存ぜぬ、ございませんで通ると甘く見ていました。 

麻生氏はこの財務省の言い分を、そのまま国会で答弁してしまいます。重大な失敗でした。 

このことについては、財務省浄化のめどをついたら責任をとってもらわねばなりません。 

それはさておき、政府もやがて佐川答弁の異常さに気がつくことになります。 

それは国会議員に提出された文書が複数あり、その内容に違いがあることが明らかになってきたからです。 

政府は法務省を動かして、大阪地検が押収していた財務局のPCのHD内に書き換え前文書が残っていたことを見つけ出します。 

Oyt78esi財務省「決済文書についての調査結果」(2017年3月12日)
www5.sdp.or.jp/policy/policy/ 

ま、もっとも自動消去されるというのは半分は事実で、去年夏に財務省はシステム変更を行い一定時間たったデータは自動消去するようなシステム変更をしていました。

それにしてもなんと非常識な文書管理システムでしょうか。そもそも、後に問題が生じたためにデータは保管しておくのが常識です。 

このような脱税常習犯がやるようなことを、こともあろうに現職の国税庁長官がやり、それをマルサの得意技のはずのHD洗い出しでバレるというみっともなさの極み。 

結局、お気の毒なことには、上書きしてもHDに残るという初歩的コンピュータ知識がなっかために暴露されることになります。それも別官庁によって、という二重の恥さらしです。 

また、この近畿財務局の「書き換え」は14ありましたが、そのうちひとつは去年あった情報開示法による開示後にされていました。 

情報開示後に書き換えてしまっては、情報開示法が無意味になります。 

では、どうして去年夏にデータの自動廃棄を決めたのでしょう。

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この理由もわかりきっています。佐川局長のデタラメ答弁の尻拭いをするためです。 

たとえば佐川局長は、「学園側からの要望を受けて土地価格について事前交渉した事実は一切ない。記録も残っていない」と答弁してしまいましたが、もちろん事前交渉もしていましたし、交渉記録も残っていました。 

このへんの経過はかなり細かく書きましたので、そちらを参照ください。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-18ed.html 

近畿財務局はあんなボロ土地は産廃置き場ていどにしか使えなかったものを、欲張って有償にしようとして墓穴を掘りました。

国有を学校法人や、公園などの公共施設として無償で土地を供与することはよくあることです。

それを欲張って相対の随意契約でやってしまいました。本来は競争入札ですべきなのです。

おまけにその交渉過程で、買い主の籠池氏が名刺詐欺師よろしく有力者の名刺や写真を持ち歩いては「オレはグレートだぜ。首相夫人はダチだし、有名議員がいる日本会議サマだぁ。さぁまけろや」とやったものですから、いっそうおかしな展開となりました。

籠池氏が文科省に相談していれば、無償貸与の道などひらけたものを、バカなことです。

籠池氏のハッタリに危機感を感じた財務局職員は、後々にこんな言い分はしっかりブロックしましたという証拠を残そうとして、ご丁寧に文書にまで残してしています。

これが文書に何人かの議員の名などと共に、首相夫人の名前が登場する理由です。

こんなことが罪になるのなら、騙ったほうは問題なく、騙られたから悪いということになってしまいます。

このような現場での経緯を知ってか知らずか、あろうことか上司が、「ございません。記録もありません」と言ってしまったのですから、財務局職員はパニくったのでしょうね。

かくして下僚たちは、雲の上の人の答弁内容と辻褄をあわせるべく、せっせと文書の上書きに励むことになります。 

かつて私もある国家認証をとるために膨大な文書を作った経験がありますが、ひとつを改竄すると別の場所が狂い、そこを直してもどんどんおかしくなるということを知りました。

文書はひとつの体系ですから、改竄すれば必ずバレるのですよ。 

今回の財務局の「書き替え」の数の多さに仰天するでしょうが、それは辻褄合わせによる玉突き現象で同じ文言を消したからなのです。 

財務省はなまじ捜査権を持つマルサの親玉であるだけに、自分だけはごまかし通せると楽観していたのでしょうね。 

この「書き換え」に財務省上層部が直接指示していたのか否かは、現時点では不明です。 

佐川氏を擁護する気などいささかもありませんが、近畿財務局のお役人がトップのピンチを「忖度」した可能性のほうが高いと思います。 

あればダイレクトに佐川氏は完全にアウトで、塀の向こう側で麦飯を食ってもらわねばなりません。 

 

 

2018年3月13日 (火)

山路敬介氏寄稿 石垣市長選・中山市長の当選は本当に良かった!

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山路敬介氏からの投稿を頂戴しましたので、掲載いたします。ありがとうございました。 

私の更新は明日からです。 

                                       ~~~~~~~~

 

S1330933209282 ニヒトデ駆除ボランティアに参加している中山市長

               ■石垣市長選・中山市長の当選は本当に良かった!
                                                                                山路敬介

石垣市長選は保守分裂のうえ三つ巴の戦いになりましたが、予想どおり中山現市長が三選を果たしました。
 

これで平得大俣地区への自衛隊配備について市民の「一定の理解」は得られたものと見ていいでしょう。

尖閣諸島を擁する石垣市の政治状況の変化は、そのまま中共政府に誤ったメッセージとなりかねず、結果によっては無用な混乱を引き起こす要因としても懸念されていました。
 

尖閣問題があっても中国と本格的な戦争になるような事はおよそ考えられませんが、平時から戦端に通じる局所的な衝突の機会を常に伺っているのが人民解放軍のやり方です。 

中国側の動きを完全に補足し、かつ全てが有効に記録もされているいるのだという事を理解させる事、十分な即応体制の構築を通して「意思」を示す事が戦闘を防ぐための最大の抑止力です。

話は代わりますが、私は中山市長がまだ市長になられる前に一度だけ会った事があります。
 

JCのメンバーを介してと記憶していますが、この時はあまり中山氏の考えを聞く事が出来ませんでした。 

と言うのも、(普段から私は多弁ではないにもかかわらず)中山氏はもっぱら聞き役でしたし、したがってこの時には、今の会見などで見られる翁長知事の尖閣諸島への姿勢を糺すような強い印象は全然受けませんでした。 

着ている背広や靴なんかも決して上等なものとは見えず、(この時だけかも知れませんが)カバンなんかも持たずに、体裁の良い紙の手提げ袋に書類を入れて持っていたと思います。

けれど全体としてシンプルに整った都会的カッコ良さや清潔感が漂っていて、非常に好感が持てる人物に映りました。
 

つまり、若い時の國場幸之助氏に最初に会った時のイヤミな感じとは真逆の印象です。
(國場支持者の方、スイマセン)
 

ガキの頃から特権意識を振りまいていた下地幹郎氏とも、「天と地」の差があります。 

また、安里繁信氏のような天真爛漫さに支配されるイメージもなく、かと言って「閉じている感じ」は全くしない人物として記憶に残っています。

ですが、市長になってからの中山氏を外からだけ見ていて自衛隊配備問題に関してだけ言えば、「なぜそんなに遅いのだろう」という感じが拭えず、最初の印象から中山氏は「調和偏重のリーダーシップ欠如型の政治家」なのだろう、と考えていました。
 

宮古島市の場合は石垣市よりも後から提議され、それでも行政のツボを心得た下地市長の手腕とリーダーシップゆえ、わずかな機会を逃す事なく自衛隊配備を実現させました。 

しかし、そういう私の中山氏に対する単純な見立ては誤っていたようです。

信頼できる関係各方面からの話を総合すると、常に中山氏に手枷せ足かせをはめる強い勢力があり、それは中山支持の市議団の一部、あるいは外部の有力支持者であったもののようです。要するに「獅子身中の虫」です。
 

はっきり具体的に言えば、中山市長がゴルフ場の建設を容認し市の所有地を早期に業者対して賃貸契約しておれば、砂川利勝氏の出馬はなかったのです。 

仮に革新の宮良氏が当選したとしても、頑くなな中山氏に対するよりも遥かに御しやすいと考えたグループがあった。  

「宮良氏と砂川氏の間で、自衛隊配備を潰す事とゴルフ場許可をバーターして握った結果の「砂川氏の出馬」だ」とまで見る向きも非常に多かった。

進まない自衛隊配備と市政全般に方針を十分に反映させるために、県議選のさい砂川氏の推薦をとりやめた中山氏の決断は正しかったし、先を見れば非常に大きな勇気も必要だったでしょう。
 

しかし、安倍首相を見ても分かるように、国防を真摯に捉える政治家こそ実は「本当のリベラル」な真性を強く内包しています。 

この8年間に行った中山市長の市民生活に直接関連する行政サービス面での実現手腕は、無党派層にも十分に評価された結果と言って良いでしょう。

宮良操氏の大差での敗因ですが、この方は農業者でもあり地元を中心に人間的にも大きな信頼を得てい、そのイメージは外見同様柔和で温和なものでした。
 

ただ、大浜元市長のようなカリスマ性がなく、その強力な原像から脱し切れていないゆえに革新支持者層の運動は盛り上がりに欠けるものになったと思います。

どういうものか、沖縄の革新支持者の特徴として「担ぐ神輿」には強いカリスマ性を求める傾向があり、対象の権威主義的なパーソナリティを全然忌避しません。
 

その点、山城博治のような薄汚い犯罪者であっても「全然、おかまいなし!」なので、山城も今後再び参院選くらいには担ぎ出される事でしょう。 

つまり、それがなかったのが宮良操氏だった、と考察するわけです。

蛇足ですが、早くからYouTubeにシバキ隊の某のものと思われる関連動画がアップされていました。
 

それによると、「自民党の事前調査でも宮良氏の優位が認められた」というものでしたが、
当初から数度の自民党の調査で宮良氏が前に出た結果は一度もなく、二階氏の分裂回避への狙いも石垣市長選だけの一元的な理由ではなかったと思います。

 

                                                                               文責 山路敬介 

 

2018年3月12日 (月)

速報 石垣市長選現職中山氏再選!

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財務省「書き換え疑惑」については、財務省が今日出すといっている文書を、検証してからにします。昨日は滑ってアジってしまいました。すいません(汗)。

証拠を出せなかった朝日に代わって、産経がスクープを出しています。http://www.sankei.com/politics/news/180312/plt1803120007-n1.html

「学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、財務省近畿財務局が作成し、途中で書き換えた文書(決裁文書を含む書類の束)は14あり、このうち1つは、情報公開法に基づく開示請求後に書き換えていたことが11日、分かった。
書き換えがあった14の文書の内訳は、貸し付けに関する決裁書が2つ、売買に関する決裁書が1つ、特例に関する稟議(りんぎ)書が2つ、これらに付随する文書が9つだった。1つの文書から交渉の経緯などを削除しようとしたところ、玉突きで次々に書き換えせねばならなくなったという。(略)
一方、近畿財務局が、3年間貸し付ける計画だった問題の土地を、籠池氏の強い要請を受けて10年間に延長することの承諾を求める稟議書にも書き換えがあった。鴻池祥肇元防災担当相、平沼赳夫元経済産業相、鳩山邦夫元総務相(故人)、北川イッセイ元参院議員の各秘書らの働きかけがあったことの文面はすべて削除されていた。
ただ、近畿財務局は政治家に関連する働きかけについては「ゼロ回答」だったという」(産経3月12日)

これでだいたい分かりましたので、明日書きます。

なお、 トランプ-正恩会談についても、もう少し待ってね。 

                                     ーーーーーーーーーー

ろくでもないニュースが続く中で、やっとすばらしいニュースひとつ。 

尖閣を行政地域に持つ石垣市長選で、現職の中山義隆市長の再選を決めました。 

しかも、市議会補選では、中山市長を支える米盛はつえ氏が勝利するというダブル勝利でした。 

中山市長、米盛市議、当選おめでとうございます。 

Ed0b7985c84f4b02dbff507b8a091ff7_cohttps://gunosy.com/articles/al9D4

●選管最終得票数
・中山義隆・・・1万3822票
・宮良操   ・・・9526票
・砂川利勝・・・4872票

「任期満了に伴う沖縄県石垣市長選が11日投開票され、安倍政権が支援した無所属現職の中山義隆氏(50)=自民、公明、維新、幸福実現推薦=が、翁長雄志(おなが・たけし)知事が推した元市議の宮良(みやら)操氏(61)=民進、共産、自由、社民、地域政党・沖縄社会大衆推薦=と、元自民系県議の砂川利勝氏(54)の無所属新人2人を破って3選を果たした。
 石垣島への陸上自衛隊部隊配備計画の是非が争点となったが、計画を事実上容認する中山氏の当選を受け、政府は計画を予定通りに進めていく方針だ。投票率は73.55%。
 保守系は候補者一本化の調整がつかずに分裂選挙となったが、安倍政権は2月の名護市長選に続いて県内市長選で勝利し、今秋の知事選に向けても弾みがつく形だ。翁長知事は、告示前後に応援に入って支持拡大を図ったが及ばなかった」(毎日3月12日)

大変にはらはらした選挙でした。開票速報はひんぱんにトップが入れ替わるデッドヒートを演じました。 

一時は宮良氏7200票、中山氏6000票という大きな票差をつけられた時間帯(午後10時40分~10時50分)もあって、やはり砂川県議による分裂選挙が苦戦の原因かと考え始めていました。 

一般的に、首長選直前でどちらかの陣営が分裂すれば、ほとんど自滅するという経験則があります。 

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ところが、その後から保守分裂選挙のハンディをもろともせずに、中山市長は順調に票を延ばし1万票の大台に乗せますが、宮良氏は票数が延びずそのまま中山氏に当確。 

中山市長が負けた場合の予定稿まで心に浮かんでいただけに(苦笑)、心底、ほっとしました。 

今回の市長選の争点を、左派陣営は自衛隊の配備に置きました。

「石垣島は国内外からの観光客でにぎわうが、同じ石垣市にある尖閣諸島周辺の海空域では中国の公船や軍用機による挑発行為が繰り返されている。
政府が南西諸島防衛の一環として石垣島中心部に地対艦・地対空ミサイル部隊など陸自隊員500〜600人の配備計画を進めるのは、こうした脅威への対処力と抑止力を強化するためだ」
(産経3月12日)

https://gunosy.com/articles/al9D4

宮良候補は、自衛隊の対艦・対空ミサイル部隊の配備阻止を全面に掲げました。 

それに対して中山市長は、名護市長選において渡具知市長が勝利した手法を踏襲します。 

すなわち、安全保障問題は前提として国の専管事項であって、自治体は協力するが決定に介入する権限はない、とするものでした。 

選挙を控えた2月23日に、中山市長は、公明党八重山支部と政策協定を締結します。

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「中山氏は選挙中、陸自配備計画には言及せず「観光客数倍増」など2期8年の実績や国政とのパイプに力点を置いた。中山陣営幹部は「安全保障は国の専権事項。市民が望むのは国との対立ではなく、経済発展に力を注ぐ市長だ」と語る」(産経前掲)

中山市長の賢明な判断だったと思います。沖縄の首長戦において、中間左派である公明党がどちらにつくかで大きく情勢は変化します。 

かつて翁長知事-稲嶺前市長を誕生させた原因のひとつには、「オール沖縄」の構造を作らせてしまったことにあります。 

自民脱党組+共産・社民・社大・民進+公明という政治ポジションが異なる勢力が、辺野古反対で統一戦線を組み、自民をぐるりと包囲し孤立無援の裸城にしてしまうという構図です。 

このような擬似的「島ぐるみ」を作られてしまうと、政府が焦って振興予算をバラまけばバラまくほど逆効果で、カネで島人の心を買うのかという心理的反発が県民に生まれてしまいます。 

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その上、当時幹事長だった石破氏が自民本部が強圧的に自民選出議員らを東京に呼び出して叱ってみたりしたくせに、翁長氏やその手足の那覇自民市議団を除名するのが遅れるという不手際を演じます。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-845a.html

その上、本来はこれこそ党中央の仕事だったはずの公明対策を怠り、翁長陣営に追いやってしまいます。

翁長知事誕生は石破氏の失策にあるといっても過言ではありません。顔はコワイが、本当に喧嘩に弱い人物です。

今回も翁長知事誕生時と同じ、「オール沖縄」的布陣を作られかかっていました。

自民県議の砂川氏が中山市長陣営を割り、その上に公明まで「基地反対」で宮良陣営につかれた場合、敗北は必至でした。

しかし今回は、自民中央は自民県議の砂川氏の裏切り行為に対して、ただちにこれを除名し、公明も引き寄せる努力をしました。

[追記]砂川氏は宮良票を食って反中山陣営の共食いとなった、という分析がありますので、追加します。

●八重山日報(3月12日)
「中山義隆氏の勝因は、砂川利勝氏の出馬による支持離れを最小限に抑え、分裂選挙のダメージを回避したことだ。特定の支持政党を持たない無党派層の支持は、3氏に分散した可能性が高い。結果として中山氏と砂川氏の「保守分裂」選挙ではなく、宮良氏と砂川氏が反現職票を食い合って共倒れする「反中山分裂」選挙の様相を呈した。
八重山日報社が5日から6日間実施した期日前投票の出口調査では、309人から回答があり、全体の約2割だった無党派層の投票先は中山氏42%、宮良氏35%、砂川氏23%で、中山氏が支持率トップ。ただ、無党派層の過半数は中山氏を支持していない。
宮良氏と砂川氏の実際の得票も、合計すれば中山氏を上回っており「反中山」候補が一本化していれば勝機があった計算だ。」

そして公明県連との間で、「国防は国の専権事項であって、自ら誘致するものではない」(大石行英・公明八重山支部長)というラインで共闘とりつけに成功しています。

「中山氏は選挙中、陸自配備計画には言及せず「観光客数倍増」など2期8年の実績や国政とのパイプに力点を置いた。中山陣営幹部は「安全保障は国の専権事項。市民が望むのは国との対立ではなく、経済発展に力を注ぐ市長だ」と語る」(前掲)

これはこの間、明瞭になった「安全保障は国の専管であって、自治体選の争点になりえない」という自民党県連の方針があります。

「焦点は「経済政策」で、そこが名護市長選の争点なのだ。もう「辺野古反対」云々を主張する時期は過ぎた。
辺野古は経過的にも既に名護市がどうこう言うマターではないのだし、県がまた新たな訴訟を提議した。
辺野古移設を反対する市民の気持ちもわかるが、県が訴訟による解決の道を選んだ以上、名護市にやれる事はもうない。
そうであれば、「辺野古反対」は名護市長選の争点には成り得ないという事だ」(自民党県議)

関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/2-478a.html

左派陣営は「争点はずし」と批判しますが、逆に地方自治体になんの権限もない国の安全保障問題に過剰な介入をつづけ、問題を延々とこじらせてきたのは左派陣営にあります。

本来、意見を聞かれることはあっても、なんの決定権も持たない地方自治体首長が、あたかもキャスティングボードの主役に居すわり続けるといった倒錯した構図にも終わりが近づいたようです。

今回の石垣市長選の勝利によって、翁長知事の外堀は完全に埋まりました。

 

2018年3月11日 (日)

財務省との最終戦争の始まり

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状況に大きな変化がありました。 

財務省が書き換えを認めました。

「財務省は10日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書に書き換えがあったと認める方針を固めた。
 当初の記述を削除した例が複数判明したとの調査結果をまとめ、12日に国会に報告する。関与した近畿財務局の担当職員や本省幹部らの懲戒処分を今後検討する。複数の政府関係者が明らかにした。
 書き換えがあったのは、2016年6月に森友側と国有地の売買契約を結ぶ際の決裁文書に添付した調書など。当初の文書に記載されていた交渉経緯や「特殊性」といった文言が、国会議員らに昨年開示された文書からは削除されていた」
http://www.sankei.com/economy/news/180310/ecn1803100021-n1.html

書き換えはあったことで、ほぼ間違いないでしょう。

[追記]
「書き換えは決裁文書に付随する関連文書にあった記述の削除などとしている」(産経3月11日)

だとすれば、関連文書の性格が問われますが、最悪、毎日新聞のような決済文書にあった場合でかんがえます。

したがって、私の書き換え前の文書はでないだろうという見立ては誤りでした。

つまりは、財務省はこの森友取引に不正まがいがあったことを隠蔽するために、公文書すら書き換えという違法行為に手を染めるような手合いだったことになります。 

さて、今後ですが、野党・朝日連合のペースで内閣総辞職という路線を選んでも本質的解決には繋がりません。

なぜなら、彼らは財務省シンパで、ひたすら安倍氏の首を取るという狭い政局にしか関心がないからです。

彼らは共産党をのぞけばすべて財務省の従順なパペットで、消費増税の使徒です。

ちなみに朝日も消費増税派です。朝日は新聞に軽減税率さえしてもらえれば、金融緩和・財政拡大反対、そして消費増税賛成なのです。

ですから、野党・朝日ペースで政局が進めば、今回の主犯である財務省は無傷で温存されてしまい、書き換えと直接なんの関係もない安倍政権だけが打撃を受けてお終いになります。

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ここが重要な岐路です。

野党・朝日ペースにはまると、財務省の巨悪はそのままになり、リフレ路線のみが清算され、日本は安倍氏という与党内唯一のリフレ派の理解者にして、稀代の外交プレイヤーを失うだけという最悪の結果となります。

日銀総裁人事も黒田氏から雨宮氏になるでしょう。

今回の朝日へのリークは、当初私は、大阪地検かと考えていましたが、どうやら財務省内部のようです。

財務省内でリフレ派の首相を打倒し、消費増税・緊縮路線を堅固のものとしたい一派がいても不思議ではありません。

その場合、財務省の自爆テロです。

アベのポチと思わていた獅子身中の虫にすぎない佐川局長だけを始末する、これだけで財務省本流の意図は貫徹できるのです。

消費増税に執拗に抵抗する安倍が憎いという財務省と、改憲しようとする安倍が憎いという朝日との共通の利害が一致したのです。

またさらに想像をたくましくすれば、今の朝鮮半島情勢で日米韓の連携を分断したい北の影すら感じられます。

米国の最大の戦略パートナーである安倍氏を失墜させ、野党に政権を握らせるることができれば、北にとって願ってもないおいしい話だからです。

もちろん裏をとりようがないことですが、このような朝鮮半島情勢が煮詰まった時期に仕掛けられるということに、私はなにかを感じてしまいます。

さて、ひとつだけはっきりしていることは、安倍氏が政権として生き残ろうと思うなら、財務省と刺し違える覚悟を持つしかないことです。 

財務省の意図を汲み続けていた、麻生財務大臣の辞任は当然。 

政権は片肺飛行となりますから、大打撃を受けるでしょう。しかし、返り血覚悟でなければ財務省というモンスター官庁の息の根を止められません。 

危機はチャンスなのです。

一気にかつての社会保険庁と同じように、財務省を解体すべきです。 

次官のみならず、判をついたものの懲戒免職はあたりまえ。佐川局長は懲戒免職。 

そしてこんな公文書変造に手を染めるような組織に大事な徴税業務は任せられませんから、国税庁を解体分離して、歳入庁に再編。 

消費増税凍結は当然で、単なる凍結ではなく白紙化。 

PB黒字化も白紙。緊縮財政路線の大幅見直し。そして、日銀法改正。 

安倍氏にこれができないで、政権に連綿とするなら、今すぐに辞めてしまいなさい。 

さぁ、財務省との最終戦争の始まりです。 

明日もこのテーマになりそうです。

日曜写真館 福島は梅が満開になっていますか

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2011年3月11日を私たちは忘れることはないでしょう。

そして、今あえて言います。フクシマと呼ぶなら福島に行くな。

あたりまえの県として、うまいものを食べに行き、地酒に酔え。

そして梅を愛でよ、と。

福島は梅が満開になっていますか。私の里は満開です。

2018年3月10日 (土)

朝日と財務省のお粗末

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昨日のコメント欄は大荒れでしたね。 

私は朝日の書き換え疑惑報道に誤認の疑いが浮上したという事実を事実として指摘したに止まっているのに、初めから喧嘩を売るために来ているような攻撃的なものが大勢を占めました。 

冷静な議論が出来ずに、どうして口をねじ曲げた調子で書き込むのですかねぇ。

そんな野卑な姿勢では、伝えたいことも伝わらないでしょうにと思いますが、いかがでしょうか。 

コメントで上げましたが、こちらの記事に移すことにしました。 

さて、昨日夕方にかけていくつかのことが同時に起きました。 

まずは近畿財務局の森友元担当職員の自殺、続いて佐川国税庁長官の辞任、第3にトランプが正恩と5月に会うというニュースまで飛び飛び込んできました。 

こういう次元が違うことが同時多発した場合には、整理をかけて考えましょう。

まず、亡くなられた財務省近畿財務局の職員の方に、哀悼の意を表します。

「捜査関係者によると、男性職員は7日夕、神戸市灘区の自宅で死亡しているのが発見され、遺書もあったという。男性職員は当時、学園側と直接売却交渉をしていた職員の部下にあたる上席国有財産管理官を務めていた」(産経3月9日)
http://www.sankei.com/west/news/180309/wst1803090052-n1.html

背景には去年来延々と続くモリカケ問題が、この職員の心を蝕んでいったということは容易に想像がつきます。

この職員は精神を病んで通院していたそうですが、復帰するという意志を示したこの時期を狙ったような朝日の「書き換え疑惑」でした。

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公平を期するために、朝日の記事を長文ですが引用します。ご承知の方は引用下に飛んで下さい。

「■森友文書、財務省が書き換えか 「特例」など文言消える

内容が変わっているのは、2015~16年に学園と土地取引した際、同省近畿財務局の管財部門が局内の決裁を受けるために作った文書。1枚目に決裁の完了日や局幹部の決裁印が押され、2枚目以降に交渉経緯や取引の内容などが記されている。
朝日新聞は文書を確認。契約当時の文書と、国会議員らに開示した文書は起案日、決裁完了日、番号が同じで、ともに決裁印が押されている。
契約当時の文書には学園とどのようなやり取りをしてきたのかを
時系列で書いた部分や、学園の要請にどう対応したかを記述した部分があるが、開示文書ではそれらが項目ごとなくなったり、一部消えたりしている。」(朝日3月2日)
https://www.asahi.com/articles/ASL317533L31UTIL060.html?iref=pc_ss_date

朝日は連日、このような論陣を張っていました。

「(なくなっていたのは)学園の要請にどう対応してきたかを記述した部分や、学園との取引について記した「特例的な内容」「本件の特殊性」といった文言、「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」といった記載などだ」(3月3日朝日社説)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13384911.html?ref=editorial_backnumber

「■森友要望の記述なくなる 答弁に沿う内容に 書き換え疑惑

昨年2月の問題発覚後、野党は国会で、「前例のないことをしている」などと追及。学園への特別扱いや便宜がなかったか繰り返し尋ねていた。
財務省側は「全て法令に基づいて適正にやっている」(昨年2月24日、佐川宣寿・前理財局長)、「価格を提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」(昨年3月15日、佐川氏)などと学園側の要望に応じたことを否定する答弁を繰り返していた」(朝日3日6日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13389019.html
 

朝日は記事では「疑惑」とタイトルを打ちながら、実質的には断定的に改竄があったとして政府を糾弾しています。

そこまで断定的になれるのは、朝日新聞が文書を「確認」したからだとしました。

さらに近畿財務局が有印公文書変造という犯罪行為をしたのは、佐川宣寿前理財局長の答弁につじつまを合わせるためだと決めつけています。

この朝日の「書き替え疑惑」報道が真実なら、野党が言うように「国家を崩壊させる」とまではいいませんが、当該の官僚はくさい飯を食ってきていただかなくてはなりません。

しかも内容的には、その犯罪行為で「書き換え」たのは、失礼ながらたかだか「本件の特殊性に鑑み」だけだったというのです。

もし朝日の報道が正しければ、近畿財務局のお役人さんたちは、局長を守るためには刑法156条「虚偽公文書作成罪」をするような熱血役人たちばかりだったということになります。
虚偽公文書作成等罪

Post_20718_09 佐川宣寿・前理財局長

しかし、現時点では朝日がいう書き換え前の文書が「確認」されていないために、「書き換え疑惑」は宙に浮いたままです。

おそらく、今後もそんな「前の文書」は出ないことでしょう。出たとしても池田信夫氏が言うように、決済前の文案かもしれません。

しかし、朝日は大臣も眼を通す決済後の財務局文書が書き換えられていたと言っていたわけですから、その証拠を開示する必要があります。

さもないと、この朝日の「書き換え疑惑」報道は誤報ということなりますが、近々分かることでしょう。

すると朝日はこれではマズイと考えたのか、報道キャンペーンの軸足をズルズルと毎日新聞が出した複数文書にも「特殊性に鑑み」という文言があった、結果オーライじゃんという方向に変化させつつあります。

一方、財務省の対応もお粗末極まるものです。

大阪検察庁にあるからどうしたのこーしたのという逃げに終始した結果、かえってこの「書き換え疑惑」で国会審議が空転することになってしまいました。

麻生大臣が、「当該文書は地検にあるが捜査の妨げになるから帰ってこない」などという馬鹿なことをいうからいっそう混乱することになります。さっさと出せばいいのです。

ところで、この佐川局長なる人物の去年からの森友問題の答弁には、多くの問題があったことは明白です。

私は財務省を擁護する気などいささかもありませんし、この人物を擁護したことは政権の誤りだと考えています。

なぜならこの森友問題の原因は、近畿財務局の失態にあるからです。

経過を洗ってみます。

経過を見れば、この朝日がいう「特殊性に鑑み」と「貸付契約に至る経緯」とは何んだったのか、自ずと理解できるはずだからです。

去年11月22日、会計検査院は森友のごみの撤去費分コストの見積もりの根拠となったごみ推計量について、「十分な根拠が確認できない」とする検査報告書を出しています。

こう言うと身も蓋もあリませんが、そもそもこの値引きの根拠などはないに等しいのです。

金額が大きいので錯覚しますが、この近畿財務局と森友との交渉は、バナナの叩き売りのようないい加減なものでした。

それを佐川局長が、去年3月に苦し紛れに、「価格を提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」と答弁して墓穴を掘りました。

後にこの佐川答弁は、現職の太田充・理財局長から「(佐川氏の過去の答弁が)金額に関する一切のやり取りがなかったかのように受け取られたのは申し訳ない」と訂正されるありさまです。

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問題がこみ入った時には、元の場所に戻りましょう。

この森友用地は、新たに出てきた文書に記されているように、そもそも大変に「特殊」なものでした。できるだけ分かりやすく解説します。

理由はいくつもありますが、所有者が民間所有地と国有地を転々としたからです。

元来この土地の所有者は伊丹空港でしたが、2012年に関西国際空港が伊丹空港と統合した際に現物出資されて新会社の所有となっています。

ここで伊丹空港を管轄する国交省大阪航空局の国有地から、民間所有地に代わったわけです。

ならば、この事件の売り手はこの関西新空港会社だったはずで、そうだったらこの森友問題は起きなかったことでしょう。

ところが、ややっこしいことに、翌年2013年に近畿財務局は土地を国有地に戻してしまいます。

正確には、国交省大阪航空局の所管で、売却手続きは近畿財務局が行うという変則的な形にしたのです。

当時大阪航空局は、伊丹空港騒音区域指定区域の縮小に伴ってどんどんと処分していた時期にあたっていました。

つまり、こんな土地は早く処分したくてたまらない、というのが国の事情だったわけです。

ここで妙な色気を出したのが、近畿財務局でした。

近畿財務局は、隣接地の大阪音楽大学が買う気をみせたので、しめたとばかりに交渉を開始しますが、哀れ、破談の憂き目に。

それもそうですよ。

この土地は上の写真でも分かるとおり、高速道路が近隣をブンブン走る上に、あろうことか震災ゴミの埋却地で、少し掘ればざくざくとゴミが出てくるという二重苦三重苦の土地ですから、隣地の音大すら買わなかったのです。

不動産は隣地地主がほしがるのが常識です。それを隣接の学校法人も買わないものを誰が買うんですか。まさに不良資産そのものです。

近畿財務局は、航空局の手前もあって焦りまくったのでしょうね。

そこで、近畿財務局は新しいカモを探します。この新しいカモが、他ならぬカモイケならぬ籠池理事長だったというわけです。

Photo_3籠池理事長

当時、籠池氏は事業拡大の意欲に燃えて、幼児教育から小学校に手を延ばそうとしていました。

籠池氏は安い土地があると聞きつけ近畿財務局に飛び込んでいったわけですが、カモさんいらっしゃーいでした。

近畿財務局は、音大は失敗したが、今度はぜがひでも商談をまとめようと必死になります。

ところが、買ってもらえるにはにはいくつかハードルがありました。まず大阪府私学審議会の学校設置認可が必須です。

あたりまえですが、私学審の出した条件は学校用地を取得していることです。通信教育じゃあるまいし、土地がない小学校なんてありえませんからね。

ここで近畿財務局と森友が取り交わしたのが、売買予約付きの借地契約です。

ところが、建設のためにボーリングしてみると、土壌からゴミが出てくるのですな。

驚いた籠池側が近畿財務局にねじこみ、とりあえず森友が処理して、その代金を国が持つことにしました。

ところが、またまた建設中の2016年に廃棄ゴミが出たために、籠池側は硬化しました。

籠池氏はこんなゴミ処分で開校が遅れれば、私学審との話も怪しくなる、開校が遅れたら損害賠償をだしたるぞと近畿財務局のお役人にネジ込んだわけです。

困り抜いた近畿財務局は、東京ガスが豊洲を売った時の手法を取りました。

つまり契約書に、瑕疵担保責任の免除規定を一項入れて、今後なにかあっても一切責任を負わないということにしたのです。

その代わり8億円の値引きをしようというわけで、これでWin-Winだろうというわけです。森友が、開校を焦っていなければ、さらに値引きできたでしょうね。

極端に言えば、使ってくれればタダでもくれてしまいたいような物件だったのです。

籠池氏は二度目のゴミが出て大幅値引きされた時に、「神風が吹いた」と喜んだそうですが、おめでたいというか、気の毒というか・・・。

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籠池氏は、行政三カ所に別々な見積もりを出して補助金詐取を企ててみたり、勝手に首相婦人を名誉校長に据えたり、「安倍晋三記念小学校」と名付けて大物政治家とのつながりを誇示したりするといったアブナイ体質の持ち主でした。

えてしてこんなタイプの人に限って、もっと大きなトラップに引っかかってしまうようです。

もちろんこの「神風」とやらが、官邸から吹いて来たのではないことは、この経過をみれば明らかでしょう。

ですから、お分かりのように値引きの8億などには、なんの根拠もありません。

大阪航空局が近畿財務局に依頼されて見積もったという話もあるようですが、航空局はよもや値引き交渉でこの数字が使われるとは思わないので、腰だめでコンナもんでしゃろとポンっと出した額にすぎません。

後に会計検査院が怒るのは当然ですが、いきさつを説明すると近畿財務局の失態なのは明白ですから、むにゃむにゃとゴマかしたのでしょう。

これが、この曰く因縁のありすぎる森友用地売買の経過です。

原因の過半は、国有地払い下げに関わる財務官僚たちの行政ガバナンスの失敗です。

本来ならば、敷地数カ所をボーリング調査してゴミの量を確定して、不動産鑑定士に客観的評価額を出させて公正な価格交渉を行うべきでした。

それを怠って自分の都合だけで、交渉するから背任の疑いとまで指弾されることになります。

この経過を国会で正直にしゃべると、財務省の大失態になる上に、近畿財務局がほとんど詐欺同然の方法で籠池氏を手玉にとっていたことも発覚してしまいます。

ですから、佐川局長が国会でグニャグニャとわけのわからないことを言って、さらに立場を悪くしたのです。

今回もいかにも官僚らしく失態隠しが真っ先に頭にのぼって、文書があるだのないだのとのたくった挙げ句はアウト。 

財務局員自殺はこういった朝日の政権側に疑惑があるという見込み報道と、財務省のいかがわしい体質にバインドされた担当官の痛ましい結果です。

紙数が尽きましたが、トランプが正恩と会談するというのが、日本の外交的敗北だというコメントがあったことにビックリしました。

この半年の半島情勢をしっかりウォッチしていないから、こんなトンチンカンなことを言うのです。

真逆です。 

日米の圧力がここまで正恩を追い込んだのであって、結果はでていませんが、日米の外交的勝利です。

会談で核を放棄しないのなら、完全にデッドエンドなのは北のほうです。

このテーマについては、別記事とします。

 

2018年3月 9日 (金)

朝日は文書を取り違えたようだ

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残念なことに、わが国は朝日が騒ぐとまだ何もわからないうちから野党が騒ぎ、国会が空転までする、という民主主義が未熟な国だということがわかりました。 

野党は「日本国家が崩壊する」「民主主義が瓦解する」「内閣総辞職」とまで狂喜乱舞しましたが、その喜びもつかのまあっと言う間に陰りが見えてきました。 

多くの人が指摘しているように、朝日が「確認した」というマスコミ用語にはない表現でお茶を濁してきたことの背景が明らかになってきたからです。 

本来なら、朝日はドーンと前川文書の時のような写真入りでぶちあげたかったはずです。 

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上の「スクープ」は活字だけはいたずらに大きいですが、写真ひとつありません。 

前回の加計「疑惑」時の「総理のご意向」文書は、朝日が読ませたい部分だけをハイライトで抜くというトリッキーな手法を取りましたが、今回はその写真すらありません。 

上と下の写真を比べて見てください。今回は著しく訴求力に欠けますね。 

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弱いんですよ。おそらく朝日は証拠となる文書を持っていないはずです。持っていたなら、とっくに最初から出してアベ降ろし大会をしているはずですからね。

理由は容易に想像がつきます。

この「改竄疑惑文書」は、どこからかの、それもおそらく政府機関からのリークだからだからです。 

推測の域を出ませんが、この決済文書を持っているのは大阪の某司法機関ですから、そこがチラっと朝日記者に見せて疑惑を匂わせたといったところでしょう。

もちろん文書のコピーはおろか、写真すら撮らせませんでした。 

そんなことをしたら証拠物件を流出させたとして、某司法機関そのものが潰されますからね。 

これにダボハゼのように、朝日が食いついただけです。 

しかも、また例によって加計「疑惑」と一緒で、報道機関なら当然せねばならない裏取り取材を怠りました。 

足で稼いで「改竄疑惑」周辺を洗えば、似た文書がいつくもあったにもかかわらず、無検証のまま一面トップに出してしまいました。 

そしてその後には、追加で「改竄文書」を書くのかと思えば、妙に客観ぶって国会空転の報道ばかりです。

いったいどうしたことでしょうか。あんたが火をつけたんでしょうに。

火をつけた当の朝日がこれでは、去年、朝日が音頭をとったモリカケ祭に踊った毎日・東京・NHKまでもが、追随報道を手控えざるをえなくなりました。

それが動いたのが、昨日です。財務省が自民党にまで叱られて文書を開示し、他の報道機関も一斉に朝日の記事自体を疑い始めたからです。

下の写真は昨日夕方のNHKニュースですが「本件の特殊性に鑑み」という表現が、他の文書にもあったとしています。 

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「森友学園との国有地取引に関する財務省の決裁文書が書き換えられた疑いがあると報じられた問題で、財務省が同じ時期に作成した別の決裁文書には、書き換えの対象となったと朝日新聞が報じている「本件の特殊性」などの表現が使われていました。
この別の決裁文書は、近畿財務局が、おととし5月、国有地を森友学園に1億3400万円で売却する方針を国土交通省大阪航空局に通知した際のもので、すでに国会などに開示されています。
文書には、「本件の特殊性に鑑み」とか「特例処理について本省承認決裁完了」という記載があります。
こうした「本件の特殊性」や「特例」といった表現について、朝日新聞は今回、問題となっている決裁文書に作成当時にはあったのに削除された疑いがあると報じています」
(NHK3月8日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180308/k10011356371000.html

毎日すら同様の「文書が違う」という報道を始めています。

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 「学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書が書き換えられたとされる疑惑で、同省が国会に開示した文書とは別の決裁文書に、「本件の特殊性に鑑み」「学園に価格提示を行う」などの表現があることがわかった。毎日新聞が同省近畿財務局への情報公開請求で入手した」(毎日3月8日)
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0308/mai_180308_3133634096.html

これ以上引用しませんが、日経も同様の記事を出しています。

和田政宗議員が自身のブログで、「売買契約の決裁文書」と「予定価格の決定の決裁文書」の写真を公開しています。
https://ameblo.jp/wada-masamune/entry-12358581892.html

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Moritomoasahi1600x316netgeekより引用

写真を見ると、朝日が報じた「改竄疑惑」とした3点が一致しているのがわかります。

①文言が「要請」から「申し出」に変わっている。
②「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」という文言が削除されている。
③貸し付けに至る経緯を説明した項目がなくなっている。

そもそも別文書なのですから、改竄もクソもありません。違ってあたりまえです。

行政経験者によれば、現時点で3通の文書があったと考えられます。

①予定価格決裁文書
②貸付契約決裁文書
③売買契約決裁文書

現時点では断言はできませんが、朝日、NHKまでもが「朝日が報じている」という表現で、巻き込まれたくないという意志を明確にした以上、この「改竄疑惑」は「国家を揺るがす事件」とはなりようがありません。

あるとすれば、財務省の文書管理と危機管理の出来なさ加減ていどの問題です。

あの官庁ときたら、さっさと開示すればいいものを、あるだのないだのと醜態をさらすから、こんなことに発展してしまいました。

財務省は一度解体的出直しをしたほうがいいですね。

なお、長くなりそうなので、別記事にしますが、盛んに出てくるこの「特殊性に鑑み」とは、去年さんざん野党とメディアが煽った安倍氏からの「指示」などといったものではありえません。

それは去年時点で、完全に否定されています。

この「特殊性」とは、森友が買おうとした土地がいわく因縁の塊のような物件だったことを指します。

伊丹空港騒音訴訟の現場の上に、震災ゴミの埋却現場、つまりはごみ捨て場だったところで、財務局の不良資産でした。

頭上には航空機がガーガー、地下にはゴミだらけ、誰が買います、そんなもん。

補助金の締め切り絡みで開校を急いでいた籠池氏がまんまと財務局に、「あそこは特殊性がある土地だから、値引きしますよ」と甘言でダマされたのですよ。

あんな土地誰も買いませんって。周辺住民に聞いてみるといいのです。

だから、森友用地の隣接地の公園などは、森友よりさらに大きい値引きで売却されています。

だから、ほんとうはタダにしてもいいくらいの物件で、「大幅値引きされた理由」ではなく,「あんな値段で買わされた理由」が問題なのです。

鑑定評価額そのものがおかしいのではないかという疑義が、不動産鑑定士からもだされています。

それを極右の園長が学校を作るのが気に食わないと関西生コン出身の市議が騒ぎ出し、学園名に「安倍晋三記念小学校」とあったからという籠池氏のホラにまんまとだまされました。

メディアは、下の写真のような捏造写真を堂々と流したほどですが、真実は「開成小学校」で、籠池氏が首相を巻き込もうとして虚偽を流布しただけです。

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また夫人が名誉校長だから安倍が便宜を図ったんだという「疑惑」で、去年一年まるごとこれだけの国会審議となったのはご承知のとおりです。

安倍氏が「関係あるなら議員辞職する」と言ってしまったことを奇貨として朝日などのメディアと野党がそれぇと攻め込んでみたものの、森友「疑惑」はただの蜃気楼で、ことごとくスカ。

結局、安倍氏と森友の新小学校を結ぶ線は、なにも見つかりませんでした。

すると今度は今回のように財務省に論点を転化して「内閣総辞職」と騒ぎ始めたのですから、まったく懲りない連中です。

さて、例によって例の如くの展開になりかかっていますが、正直言って、私はあまり食欲が湧きません。

嫌韓感情を煽って「改竄疑惑」から逃げているとまで言われたので、記事にしたまでです。

 

2018年3月 8日 (木)

朝鮮半島危機 日本の最悪シナリオとは

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メッセンジャー・ボーイと化した韓国政府が「正恩様がこう仰せでございました」と言っているのを丸飲みするしかない私たちにとっては、ワジワジする気分です。  

重要な二国間協議が終了した場合、かならず首脳2人、あるいは首席代表が共同記者会見に臨みます。 

協議が不調に終わった場合は、終了後すぐに会議場の外で別個に会見を持ちます。 

会議場の外というのがミソで、あることないことを言うと即座に相手国からネジ込まれて延長戦に突入するからです。 

今回、この外交プロトコールはスルーされて、韓国政府は帰国後に大統領府のチョン・ウィヨン(鄭義溶)国家安保室長が会見しています。 

Photoチョン・ウィヨン(鄭義溶)国家安保室長 NHK

本来なら双方が大成功と喧伝しているわけですから、同時期に北の公式政府発表がなければなりませんが、韓国政府と同じ内容のプレスリリースがあったとは聞きません。
 

私が確認したいのはこの部分が、直接に正恩の口から発せられたかどうかです。

「韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領の特使として北朝鮮に派遣され、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長と会談した、大統領府のチョン・ウィヨン(鄭義溶)国家安保室長は、北朝鮮側が、朝鮮半島の非核化の意志を明確にし、北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消されて北朝鮮の体制の安全が保障されるならば、核を保有する理由はないとする考えを明確にしたと明らかにしました」(NHK3月6日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180306/k10011353861000.html

正恩がほんとうに、「北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消されて北朝鮮の体制の安全が保障されるならば、核を保有する理由はない」と発言したとしたら、北は大変に重要なメッセージを発したことになります。 

この言葉を日本のメディアは、「非核化」に重心を置いて「平和への前進」といった妙に好意的調子で伝えてしまっています。 

真逆です。これはその前段の「北に対する軍事的脅威が解消されたら」がポイントなのです。 

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 「北への軍事的脅威の解消」とは、初代金日成時代から言い続けてきたことで、端的に「朝鮮半島からの外国軍の撤退」を意味します。 

北には外国軍が駐留していませんから(これが韓国の北コンプレックスの一因でもあるわけですが)、今回の北のこの発言は「お前らの国から在韓米軍を叩き出したら非核化を考えてやってもいいぜ」という意味となります。 

4月に米韓合同軍事演習をするしないというレベルではなく、そもそも米韓同盟を廃棄するのが北が言う「非核化」の条件といういうことになります。 

Nikkei_20180306_nskoreameeting  ロイター

実は今の韓国政府には、この北の米韓同盟廃棄要求の受容体が存在します。 

「もうひとりのムン」、あるいは「大統領の本音を言ってくれるムン」こと、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一・外交・安保特別補佐官(延世大名誉教)の次の発言にご注目ください。

「(文大統領が強調した)運転席論は南北対話と米朝対話を並行して推進する過程で我々が北朝鮮と信頼を構築すれば米朝間対話の活性化を支え、韓半島の平和と安定をもたらすのに我々が主導的な役割を話そうとすること」と話した。
また、個人的な見解を前提に「南北関係がうまく解決すれば、韓米同盟にこだわる理由がない。韓米同盟にこだわる理由がなければ、韓中関係がギクシャクすることもなく、それでは中朝関係も改善するだろうし、そのような状況で米朝関係も良くなり、米朝、韓米、韓中、中朝、南北、このように好循環をもたらすだろう」
(中央日報2017年9月29日)

http://japanese.joins.com/article/291/235291.html?servcode=200&sectcode=200

「もうひとりのムン」は、南北関係を改善させることで、北からの軍事攻撃の脅威を払拭すれば、米韓同盟はむしろ邪魔者であって、在韓米軍がいなくなりさえすれば対北は言うに及ばず、対中関係もスムーズになり、いくいくは米韓関係にもハッピーだと説いています。

このロジックは、日本の左翼陣営の「在日米軍がいるから戦争に巻き込まれる」という主張のコリア・バージョンと思えばよいでしょう。

日本の左翼が韓国の従北派に影響を与えた可能性はあります。

いずれにせよ、「もうひとりのムン」が述べるプランが実行された場合、なるほど対北・対中関係は飛躍的に改善されるのは確かでしょう。 

なぜなら、在韓米軍の撤退と南北融和こそが、北による一国二制度による統一、つまり高麗連邦への助走に他ならないからです。

636797149bbe25c2e82b7a0f09f8862c_60高麗連邦新首都ピョンヤンの大統領宮殿から、歓声に手を振られる初代大統領閣下(嘘)

これがコリアウオッチャーたちが、いまやあながち冗談だとも言えないとぼやく「初代連邦大統領・正恩閣下」誕生のコースです。 

コリア・ウオッチャーたちはこんなディストピア(理想郷の反対)を描いています。

高麗連邦初代大統領選で、北側候補はいうまでもなく正恩に決まっています。高麗連邦が一国二制度な以上、北のひとり独裁体制は維持されたままだからです。

とうぜんのこととして、北からは正恩だけしか出られません。これが全体主義国家の強みです。 

一方、韓国側はとりあえず民主主義国家ですから何人かが乱立するでしょう。結果、韓国側は票が分裂します。今回の韓国大統領選のようなものです。 

北朝鮮の人口は約2500万人、韓国はその倍の約5千万人ですが、北の票は北の体制が変化していない以上すべて正恩に流れますから、有権者数を考慮しない単純計算で2500万票。 

一方韓国は、たぶん3人ていどに分裂してひとり1600万票ていどですから、正恩候補の圧勝です(笑)。 

このような正恩大統領閣下を戴く高麗連邦が誕生した場合、中国にとって米国圏の縮小、中国圏の拡大を意味しますから、大喜びで承認するでしょう。 たぶんロシアも同様だと思われます。 

これが、北が考えている大きな絵図です。 

ただし、今はとりあえず北が最も弱体化しているこの冬を乗り切り、制裁の締めつけを緩めてひと息つくこと、これが当面の獲得目標だと思われます。 

とまれ、北が核ミサイルの小型化を完成させてしまえば(技術的諸問題は残っていても)外形的にはICBMを完成に持ち込めます。 

ICBMは撃つ撃たないという純軍事的目的とは別次元で、米国との大きな交渉カードとなります。 

その場合、国際戦略研究所アメリカ支部のマーク・フィッツパトリック事務局長がいうような展開となるかもしれません。

「だがトランプが突き付けた非核化という条件については「北朝鮮側が検討することはほぼあり得ない」とホーアは言う。
より現実的なのは北朝鮮が核兵器や特定の原料の生産に上限を設けることに同意するという、1994年の米朝枠組み合意に近いものだろうと彼は言う(同合意でアメリカは北朝鮮から、原子炉の建設を凍結する合意を取りつけた)」
(ニューズウィーク 3月6日)

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/post-9669.php

つまり、米国は「検証可能、かつ不可逆的非核化」を店ざらしにしたまま、現実交渉の席では核兵器材料の生産に上限をつけたり、弾道ミサイルの飛距離を制限するといった値切り交渉に入るかもしれないということです。 

もちろん、北がICBMを凍結させ、韓国は同胞ということで核攻撃対象からはずした場合、北の核ミサイルは唯一わが国にだけ照準されることになるわけです。 

そしてそう遠くない将来、米国は韓国から撤収していき、流れは決定的に高麗連邦の「建国」へと舵を切ることになります。 

かくしてわが国は、世界最悪の反日国家である「赤い統一朝鮮」の核と直接対峙することになります。

日本を裏切った米国に対して日本は強い不信感を持つことでしょう。

この場合、日本の独自核武装という選択肢が現実のものとして浮上します。 

これが日本の最悪シナリオです。

 

 

2018年3月 7日 (水)

南北会談 南北揃って爽やかなばかりに平常飛行です

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いきなり下世話な話でもうしわけないのですが、金一家揃ってのお出迎えという歓待を受けるために、韓国はいったいいくらの現ナマを専用機で運んだのでしょうね。 

かつての金大中の時も、巨額の裏金が直接に2代目に手渡されたことが明らかになっています。

これが暴露されたために、金大中はノーベル平和賞はカネで買ったものと韓国国内で叩かれることになります。

「金大中政権時では、引退後の処遇を恐怖する金大中氏が、当時5億ドルの秘密支援を北に行い、南北首脳会談を実現してノーベル賞の権威付けによってこの恐怖を逃れた。秘密支援は3年後に暴露された。この時北は10億ドルを要求したという」
(産経2月10日 筑波大教授古田博司)

http://www.sankei.com/column/news/160210/clm1602100004-n1.html

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今回の北の南北会談をした目的は、韓国のムンが喜びそうなことを言ってやることで米韓日の結束を分断し、時間稼ぎをすることにあるのはいうまでもありません。

そしてもうひとつの隠れた動機が、韓国から金をむしり取ることです。 

推測の域を出ませんが、おそらく下の写真のような正恩の笑顔(←気持ちワルいぞ)をゲットするために、かつての15億ドルの数倍の現なまを要求されたはずです。

北からすれば、核兵器の開発までの時間稼ぎができたうえに、カネまで貰えるというひと粒で二度おいしい南北会談でした。

それを知ってか、プリンセス・ヨジョンも、得意の顎あげポーズで微笑んでおられます。

え、韓国ウォンかって、わけないでしょう。いつデフォールトするかもしれないような紙屑。ドル以外受け取りませんよ、正恩さんは。 

今後韓国は、何かの節目ごとにカネをせびられ続けるはずです。

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では何か成果があったのかといえば、よく分かりません。 

眉唾プレスリリースによれば、このような「進展」があったとされています。後に会談の内情が漏れてくるでしょうが、とりあえずこんなところです。

①4月末までの南北首脳会談を開催してやってもいいかも
②米朝対話において議題に「非核化」を出してやってももいいかも
③米朝対話の間は核実験はしないかも
④4月から米韓合同演習をしてもいいかも。

おー、なんと太っ腹。ちゃんと正恩は、裏金ていどのお土産は渡していますね。 

ただし、それは非核化の進展ではまったくなく、韓国政府の米国への言い訳を作ってあげたということにすぎません。

またこの「収穫」自体も、日米が圧力をかけ続けた結果、ここに追い込まれたということをお忘れなく。

もはや正恩には、この抱きつきクリンチ戦法しか起こっていないのです。余裕で笑っているんじゃありませんから、念のため。 

その上、これはあくまでもフェーク・プレスリリースの常習犯である韓国政府サイドの発言にすぎず、北の正式発表がないのでなんとも評価しようがありません。 

少なくとも、北の公式の言辞とは大きく乖離しています。

では、何か北に新しい変化があったのか、北自身に語ってもらいましょう。 

中央日報が北の労働新聞の論調を取り上げています。やや長いですが、引用します。

「■北労働新聞、1面には「満足した合意」…論説には「核は正義」
中央日報 2018年3月6日

http://japanese.joins.com/article/269/239269.html?servcode=500&sectcode=500&cloc=jp|main|top_news 

北朝鮮労働党機関紙労働新聞が5日に行われた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対北朝鮮特別事前代表団と金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の面談および晩餐の便りを6日、積極的に報じた。同日付の論説では「核武力は正義の宝剣」と主張して事実上核放棄の意思がないということを示唆した。 

労働新聞はこの日、1面に金正恩委員長の対北朝鮮特使団との面会内容を伝えた記事と写真8枚を掲載した。労働新聞は「最高領導者同志(金正恩委員長)は特使と一行の手をいちいち熱く握り、彼らの平壌(ピョンヤン)訪問を熱烈に歓迎された」として「首脳間対面に関連した文在寅大統領の意向を伝え聞き、満足した合意を見た」と明らかにした。  

新聞はまた「朝鮮半島の尖鋭な軍事的緊張を緩和して北と南の間の多方面にわたる対話と接触、協力と交流を活性化していくための問題に対しても踏み込んだ意見を交わした」として「談話は同胞愛的で真剣な雰囲気の中で行われた」と説明した。  

  しかし、新聞は同日「米帝の反倫理的な核犯罪歴史にけりをつけなければならない」という見出しの情勢論説で「我々の核武力は血で汚された米国の極悪な核犯罪歴史にけりをつけ、不倶戴天の核悪魔を惑星で永遠にはき捨てるための正義の宝剣」と話した。 

  論説は「米国の策動によって世界のいろいろな所で核戦争への脅威は日々高まっている。その中で朝鮮半島は核戦争の危険の陰が最も濃厚に落とされているところになっている」として「米国は南朝鮮に多くの核兵器を前進配置して各種挑発行為を繰り返しながら我が共和国を露骨に脅威・恐喝してきた」と明らかにした」   

なんの変化もありませんね。核兵器は「不倶戴天の核悪魔を惑星で永遠にはき捨てるための正義の宝剣」だそうで、見事なまでの北の罵倒文学のレトリックです(笑)。

以上の北の論調を読んで、「非核化の進展」「平和の訪れ」「よくやった、ムン閣下」と評価できる人たちの脳味噌に幸あれ。 

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事実、オリンピック期間中に、北は核施設を再稼働し始めたことを38ノースが伝えています。

「ワシントン時事】米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所は5日、北朝鮮・寧辺の核施設の最新の衛星画像を公開し、5000キロワットの黒鉛減速炉が稼働を続けている兆候があると指摘した。
 稼働継続が事実なら、北朝鮮が核兵器計画に利用するプルトニウム生産を再開した可能性があるという。
 2月25日撮影の画像によると、黒鉛炉から蒸気が立ち上っていた。稼働を示唆する冷却水の排出は確認されていないが、施設周辺の凍結した川の氷が解けており、黒鉛炉の稼働状況が監視されるのを防ぐため、冷却水排出用パイプを川の中まで延長したことが考えられるという」
 (時事2018年3月6日)
 
https://www.jiji.com/sp/article?k=2018030600306&g=prk 

北はゴリゴリと核爆弾を作り続け、一方韓国はいつものルーピーぶりという、南北揃っての爽やかなばかりに平常飛行です。 

一方、米国の対応はこのようです。

「米大統領は6日、北朝鮮が非核化に向けた協議に臨む用意があると表明したことについて、「非常に前向き」と評した。一方で、米国にはあらゆる選択肢が依然開かれたままだと警告した」(AFP3月7日)

米国は既にヨーロッパで非公式秘密接触を北と持っています。スウエーデンが仲介者だと言われていますが、米国側は辞めたばかりのジョセフ・ユンでした。

ですから、米国はいまさら新たな「対話」チャンネルをほしがってはいません。

北と韓国がうるさく言うなら、考えてやってももいいという程度で、大前提はあくまでも「検証可能かつ不可逆な非核化」です。

可能性は低いのですが、仮に米朝対話があるとしても、同じテーマがテーブルに乗るというだけのことです。

ただ、このような正式の場で話が流れると、もう互いに後がない、つまりはほんとうの戦争になってしまうので、「うわーい、話あい解決だ」と浮かれ気味の皆さんはご注意下さい。

2018年3月 6日 (火)

韓国政府のプレスリリースにはご注意を

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読売が正恩が韓国使節団と面談したという情報も出していますが、どうやらムンの親書を正恩が直接受け取ったようです。

ほんとうなら私がハズしたことになりますが、詳細が分かってからまたお伝えします。
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12213-20180305-50099/
 

まぁ、会ったなら時間稼ぎのためのさらなる攪乱と分断狙い。会わなければ平常飛行というところで、いずれにせよ、本質に変化はありません。 

Photo_3韓国特使団http://www.yomiuri.co.jp/world/20180305-OYT1T50099.html 

というのは、訪北する前から、北はあらかじめ回答を出しているからです。 

民主党政権時の読売・産経の立場に似てきた、朝鮮日報のスクープです。

「韓国政府はこれまで「北朝鮮と非核化関連の対話を行った」「北朝鮮が米朝対話の意思を表明した」といった形で、前後の脈絡を省いて断片的内容だけを流していた。
しかし、韓国政府が与党議員にのみ伝えた一部の発言だけを見ても、これまで事実上韓国国民の目から隠されてきたものと分かる。「非核化対話があった」というのと、「非核化の話はしたが、北朝鮮は核保有国の地位を認めなければ米国と対話しないと言った」というのでは完全に正反対で、天と地ほどの差がある。
現政権は、後半の部分を省いて伝えた。国民を欺く行為ではないか。
あたかも、北朝鮮が非核化対話の意思を持っているかのごとく、対話が進展しているかのごとく見えるように、偽りのショーをやったのではないか」
(朝鮮日報3月2日)

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/03/02/2018030201060.html

これが事実なら、朝鮮日報が怒るようにムン政権は韓国国内のみならず、世界に歪曲情報を流布したことになります。 

「非核化対話」は韓国政府が言うように、確かにあったのは事実でしょうが、それは日本のメディアも伝えるような「対話の意志がある」とイコールではありません。 

北はあくまでも、「北の核保有国としての地位を認める」というのが大前提だったわけです。 

つまりなんのことはない、オレの核保有を認めるのが対話の条件だといっているにすぎないわけです。 

実はいまさら朝鮮日報が怒ることでもなく、さる1月9日の南北会談でも、北は同様のことを言っています。 

Photo9日、板門店韓国側「平和の家」で開かれた高官級南北当局会談。統一部の趙明均長官(左)と祖国平和統一委員会の李善権委員長 中央日報http://japanese.joins.com/photo/103/1/184103.html

「韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は10日、年頭記者会見で、北朝鮮が平昌五輪参加に合意した9日の南北閣僚級会談を自賛し、対話による核問題解決に意欲を示した。(略)
終始、落ち着いた雰囲気で続いたという会談だが、「非核化」をめぐって最終盤に一悶着があった。友好的だった北朝鮮側首席代表の李善権(リソングォン)祖国平和統一委員長が突然、報道陣を前に「南側メディアで非核化問題を協議しているというとんでもない世論が広がっている」と怒りをぶちまけ、こう声を荒らげた。
 「われわれが保有する水爆や大陸間弾道ミサイル(ICBM)は徹頭徹尾、米国を狙ったもので、同族(韓国)や中露に向けたものではない」(産経1月10日)

http://www.sankei.com/world/news/180110/wor1801100031-n1.html

なるほど、北が怒ったのは、「南側メディアで非核化問題を協議しているというとんでもない世論が広がっている」ことですか、なるほど。 

北は戦略的嘘つきですが、一面でガチガチの原則主義者の部分があって、それが場当たり的な嘘つきである右往左翼のムンとは大きな違いです。 

ところで、この「南北対話」による解決願望は、もっと突っ込んだ別の形でも現れています。 

Photo_2文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一・外交・安保特別補佐官 

文正仁(ムン・ジョンイン)大統領統一・外交・安保特別補佐官(延世大名誉教)の、トランプ訪韓を受けての発言です。

「個人的な見解を前提に「南北関係がうまく解決すれば、韓米同盟にこだわる理由がない。韓米同盟にこだわる理由がなければ、韓中関係がギクシャクすることもなく、それでは中朝関係も改善するだろうし、そのような状況で米朝関係も良くなり、米朝、韓米、韓中、中朝、南北、このように好循環をもたらすだろう」とし、南北関係回復の重要性を強調した」(中央日報2017年11月10日)
http://japanese.joins.com/article/291/235291.html

またムン補佐官は、それ以前にもこうも述べています。

「文特別補佐官は27日、ある討論会で、「韓米同盟が壊れることがあっても戦争はいけないと多くの人が話す」と述べた。
中道系野党「国民の党」の孫鶴圭(ソン・ハクキュ)常任顧問が、「北朝鮮を事実上、核保有国と認める必要がある」と発言したことに対しても文特別補佐官は「同意する」とし、「北朝鮮が非核化しなければ対話しないと言うことは現実的でない」との考えを示した」
(中央日報2017年9月29日)

http://japanese.joins.com/article/291/235291.html?servcode=200&sectcode=200

実はこのもうひとりのムンこそ、大統領のほうのムンの外交方針を決定する軍師です。

「文正仁(ムン・ジョンイン)氏という。文大統領とは、韓国語の発音をカタカナ表記すれば「ジェ」と「ジョン」の違いだけ。紛らわしいが、外交・安保に関する限り、2人の考え方、発想の仕方は双生児のようだ。韓国人記者の間では「大統領が公式には言えない本音を代弁する人物」と見なされている」(産経2017年11月30日)
http://www.sankei.com/column/news/171130/clm1711300006-n1.html

例の中国とのTHAADでの「三不の誓い」は、このムン補佐官が下敷きを書いたと言われているそうで、韓国政府の外交頭脳だと考えておいたほうがいいでしょう。 

大統領のほうのムンの役割はムン軍師の言うがままに離米・親北・親中路線を走ることで、大統領はそれを米国に取り繕うことだけがお仕事という役割分担のようです。 

ああ、アホくさ。 

韓国の訪北団が帰ってきて、なんらかの大統領府のプレスリリースがあるでしょうが、皆さま、眉に唾をつけて聞くことにいたしましょう。 

 

2018年3月 5日 (月)

本日、韓国の使節団訪北へ

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五輪がとにもかくもに終了し、待ってましたとばかりにムン閣下が素早い動きを見せています。 

というか、期間中もめいっぱい助走をつけていたので、一気に飛距離を狙ったというところでしょうか。 

どこへって?もちろんピョンヤンに向かってです。

「韓国政府は、4日、ムン・ジェイン(文在寅)大統領の特使として、大統領府のチョン・ウィヨン(鄭義溶)国家安保室長などを、5日から2日間の日程で、北朝鮮の首都ピョンヤンに派遣すると発表しました。
韓国大統領府は、4日午後2時から記者会見し、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長が先月、ピョンチャンオリンピックに合わせて、妹のキム・ヨジョン(金与正)氏に親書を託し、特使として韓国に派遣したことへの答礼として、5日から2日間の日程で、ムン・ジェイン大統領の特使をピョンヤンに派遣すると発表しました。(略)
特使として派遣されるのは、大統領府のチョン・ウィヨン(鄭義溶)国家安保室長をトップに、情報機関である国家情報院のソ・フン(徐薫)院長など5人と、随行員5人の合わせて10人です。」(NHK3月4日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180304/k10011351241000.html 

「特使団は鄭氏のほか、情報機関・国家情報院(国情院)の徐薫(ソ・フン)院長、統一部の千海成(チョン・へソン)次官、国情院の金相均(キム・サンギュン)第2次長、大統領秘書室の尹建永(ユン・ゴンヨン)国政状況室長の5人」
(聯合3月4日)

http://news.livedoor.com/article/detail/14384608/ 

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5日といえばなんと今日で、時期を置くと南北融和の「感動の余韻」が覚めてしまいますから、あえて五輪直後を選んだのでしょう。

チョン・ウィヨン国家安保室長が代表ということですが、外交の相互主義からいえばこれでいいのか、他人ごとながら心配になります。
 

北は五輪に序列2位のキム・ヨンナム(金永南)とキム・ヨンチョル(金英哲)労働党副委員長、そしてなにより「白頭山の血脈」であるプリンセス・ヨジョンまで送ったのですから、本来ならイ・ナギョン(李洛淵)首相クラスを送るべきですが、妙に腰が引けていますね。 

Photo_3https://www.j-cast.com/2018/02/20321626.html

外交上の答礼と韓国は称しているようですから、だったらなおさらのこと首相格を送るべきでしょうし、ほんとうは元首であるムン自身が飛んで行きたいことでしょうね。 

まぁただ、それをしたら投了となってしまいますけど。 

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 チョン室長は、去年からの北との秘密交渉を担い、今回の五輪で訪韓した北のテロリストの親玉・キム・ヨンチョルと会談しています。 

政権中枢には位置しますが、いわば実務者レベルであって、政権内で数少ない知米派だとされているそうです。 

ピョンヤンに一泊して、帰国したらその足で訪米するそうで飛脚も大変です。 

「一行は帰還後に訪米し、トランプ政権に訪朝結果を説明する。大統領府は「中国や日本とも緊密に協議を続けていく」としている。
 鄭氏は、マクマスター米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らとの関係を構築した「米国通」と位置付けられている。徐氏は、過去2回の南北首脳会談の実務交渉を担った上、現在も北朝鮮や米情報当局とのパイプ役とされ、2人の起用は米朝双方への説得を見据えた布陣といえる。2人は与正氏や、五輪閉会式に派遣された金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長とも面談した」(産経3月4日)

 北がどのように対応するか見物ですが、行く前からそうとうに見えてしまうのが気の毒です。 

正恩はおろかヨジョンすら、まず絶対にこの程度の実務者クラスとの会談には顔を出しません。

万が一交渉ごとに失敗したら、「白頭山の血脈」が泣きますから。

閣僚級とはいえ、チョン室長はしょせん実務者でしかなく、相互主義として例のキム・ヨンチョル副委員長くらいがお相手することでしょう。 

チョン室長が非核化を口にするとしたら、例のムンが既にキム・ヨンチョル副委員長との会談で提案済みの「段階的・包括的アプローチ」とやらを繰り返すにとどまるはずです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/post-9cab.html 

これは中身スカスカで、いったいどうやって「段階的・包括的非核化アプローチ」できるのかまったく分かりません。たぶんしゃべったムン当人も分かっていないはずです。 

この案は、中国のfreeze-freeze方式の焼き直しで、要は米国が米韓合同軍事演習をフリーズ(凍結)すれば、北も核・ミサイル実験をフリーズするといったものです。 

メディアはほとんどこの案を伝えていませんし、そもそもなぜこの案がダメなのか説明していません。 

それは北が口で凍結すると「言った」だけでは、なんの保証もないからです。 

本来、NPTの枠内で凍結するならば、国際機関の査察官が現地で検証作業をせねばなりません。 

かつての2002年・2007年の寧辺核施設(ヨンビョン)の時と同様に、IAEAの査察官が北の核施設を自由に査察し、封印する権限を与えられねばなりません。 

Tto_tto_ttod2007年6月25日、北朝鮮 入るために北京に到着した国際原子力機関(IAEA)の北朝査察責任者オリ・ハイノネン。AFP 

「ハイノネン氏は、空港で報道陣に「の寧辺(ニョンビョン)の核施設は確実に停止、封印される必要がある。今回の訪問は長い道のりの第1歩だ」と語り、寧辺を訪問するかとの問いには「訪問したいが、北朝鮮に行ってみないとわからない」と答えた」
AFP 2007年6月25日
http://www.afpbb.com/articles/-/2244507?cx_position=16

核開発凍結を検証するには、北朝鮮国内をIAEAなどの国際機関の査察官が、一切の制限なしに調査活動する移動の自由が認められねばなりません。 

いかなる秘密研究施設であろうと、軍事基地であろうと査察官は自由、かつ無制限に立ち入って調査する権限を認められねば、核開発の「凍結」の担保たりえません。 

今の北が、そんなことを許すはずでしょうか?もちろん修辞疑問です。

2代目の時には核査察はヨンピョン核施設の一カ所だけで済みましたが、今や北国内に何カ所の核ミサイル発射基地や核製造施設が存在するのか、その実態すらわからない状況です。

まずは、ムンが第1段階で凍結を言うなら、その前提として北にすべての核施設・ミサイル発射基地・核兵器貯蔵施設・核実験場などの資料を洗いざらい出させることです。

どこの山の山腹に、どんな移動式発射機を隠しているのか、そのミサイル型式と弾頭の種類などのマップが必要です。

そしてそれが真実かどうかIAEAの査察官が、一切の束縛なく自由に北国内を査察せねばなりません。これが米国もいうところの「検証可能かつ不可逆な非核化」です。

それしか凍結が担保されることはありえません。 止めると「言った」だけでは無意味なのです。

北のシンパの方はお怒りになるかもしれませんが、北が重度の嘘つきであるのは有名だからです。

仮にそれができるようなら、もう一方のフリーズである米韓合同軍事演習をフリーズしてもいいかもしれません。

日本でも「話し合い」や「対話」を妙に意味ありげに言う識者が絶えませんが、真の対話は必ずその背後に担保が必要なのです。

ここで北から拒絶されたら、もうムンに後はないですから、北も小さなお土産くらいくれるのかなぁ。

行ってらっしゃ~い、チョンさん、お土産は期待していませんからね。 

 

2018年3月 4日 (日)

日曜写真館 真紅に沈む風景

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2018年3月 3日 (土)

「核を持った痩せ犬」が引き起こす核の連鎖とは

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毬三氏という方から、こんなコメントをもらいました。コメント欄に返信してから本質的なことを含んでいると思いなおして、反論ということではなく考えていきます。 

まずは毬三氏のコメントです。

「裁量労働制の「不可解」なデータや、森友文書の財務省書き換え疑惑などなど…
そこら辺の問題は北朝鮮有事以上に国家にとってクリティカルな問題だと思いますがね」「老骨に鞭打って記事をお書きになるなんて勿体のうございます」

毬三さん、「老骨に鞭打って」などという言い方は、自身を謙遜する場合に使います。相手に対して使うと侮辱になります。そんなことも知らないのですか。
意識的にやっているなら荒らしですし、知らないなら愚かです。

「「老骨に鞭打つ」は「年をとって衰えた身を励まし努力する」という意味。 「老骨に鞭打つ」は、例えば、以下のように使います。
老骨 に鞭打って、今回のトライアスロンに参加することにしました。 このように「老骨に鞭打つ」という言葉は、語り手本人のことに使うのが正しいのです。本人が自分のことを謙遜していう時に用いる慣用句です」(
「老骨に鞭打つ」の使い方を間違えると危険です。 | 美しい言葉。

というわけで、私はこれを読んだだけで、あなたと議論する気を失いました。

ですから、以下は特に毬三氏に宛てたものではありません。

ところで、比較衡量という概念があります。 

平たく言えば、ものごとを重い軽いで分別する思考ツールことです。 

森友や裁量労働の一件と、朝鮮半島危機はどちらが重いんでしょう。 

前者はしょせんといってはなんですが、ドメスティックなことにすぎません。財務局か厚労省の官僚のミスと、それをチェックできなかった政治の責任もあるかもしれません。 

一方、北朝鮮の核は人を数百万規模で殺します。 

日本を核の標的にしてやる「火の海だ」と正恩はなんども言っていることですし、それだけではなく今や米国も核の標的にすると言っていますね。 

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しかも年がら年中、言われたほうが「脅迫疲れ」して危機意識を持たなくなるほどです(苦笑)。 

自分が気に食わない国を核攻撃してやる、なんてことを公然と一国の指導者が言う国って私はかつて北朝鮮以外に聞いたことがありません。 

どんなに冷戦がひどい時でも、ソ連が米国を「火の海にする」なんて言わなかったし、米国も言いませんでした。 

中国もしかりです。南シナ海でやりたい放題しているようでいて、一定の「則を超えず」はかろうじてあったのです。 

というのは、あたりまえですが、こんな相手国を「火の海にする」というようなことを国際社会で軽々に口走ってはいけないことなのです。 

市民社会に置き換えれば、分かりやすくなります。 

「殺すぞ」という行為は生命に対し害を加える旨の告知ですからから、それによる脅迫行為があれば脅迫罪が成立してしまいます。 

「第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」 

もし国際法に脅迫罪があれば、北朝鮮は2年以下の禁固です。  

なぜ、こんな核を使った脅迫がダメかといえば、相手が本気でこの核という凶器を取り上げようとするからです。 

すると、取り上げられまいとすれば自ずと戦争になります。 

第2に、相手国を「火の海にする」というワードは、国際社会ではそのものズバリで最後通牒を意味してしまうからです。 

最後通牒とは、この後には外交交渉は存在しない、言うことを聞くか、さもなくば戦争で決着をつけようという意味です。 

北朝鮮は今まで言葉のインフレのように、過激派よろしく乱暴な言葉を叫んできました。国際社会もわが国も、妙にそれに馴れてしまって、またかという気分でいました。 

今になるとその暴言を許してしまったのは、いわば極東の痩せ犬がキャンキャン吠えている、そのていどの認識だったからです。

ある意味、意外に思われるかもしれませんが、北朝鮮は「甘やかされてきた」のです。 

ところが、今回はそうじゃありません。

北朝鮮は核保有国の確証を得ようと、その一歩手前の段階にいます。 しかも米国本土を「火の海にしてやる」と宣言して、そのとおりICBMを作り始めました。

国民を食わせることすらできない「痩せ犬」であることは同じですが、「核を持った痩せ犬」となりつつあるのです。

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その上、今や東アジアだけの問題では済まなくなりました。核の連鎖が始まったのです。 

この北の核保有を認めてしまえば、それはNPT体制(核不拡散体制)の崩壊を容認することになるからです。
核拡散防止条約 - Wikipedia

もし仮に北朝鮮が核保有国となってしまったら、世界で我も我もと核の保有に乗り出す国が後を絶たないでしょう。 

核というのは、それほど万能に思える外交カードなのです。 

核をチラつかせば、相手国はいくら理不尽なことを突きつけられよう沈黙せざるをえない、残念ですが、これが国際社会の裏ルールでした。 

かつて毛沢東が「パンツをはかないでも核を持つ」と叫んだのは、米国の圧力に抗するためでした。 

その中国が核を持てば、中国と戦争までした一方のアジアの大国であるインドもまた核保有に走りました。 

すると、インドが核保有すれば、犬猿の仲の隣国のパキスタンも負けじと核保有します。 

このように、核保有は連鎖するものなのです。 

そこでこれ以上の無政府的な核拡散は止めようということで、先に述べたNPT条約が締結されます。 

しかしこのNPT条約からの最初の脱退国が、他でもないこの北朝鮮だったのです。 

そしてあろうことか、国際社会をダマくらかしてとうとうホンモノの核を、しかも米国に到達するICBMを持ったと、北朝鮮は宣言したわけです。

ただ今現在、この段階まできてしまいました。後は核保有するか、非核化を実現するかしか残っていません。

そして今後ですが、果たして北の核保有だけのことで終わるのだろうかという問題があります。

つまり、かつてインドが核を持ち、パキスタンも持ったというようなことが再び起きないのかという問題です。

北の核が容認されてしまった場合、核の連鎖現象は再び起きるでしょう。

北が核保有すれば韓国も持ちたいと言い出すでしょうし、日本でも核武装の機運が高まります。

中国がもっとも嫌がっていることが、日本の核武装であることは周知の事実です。

中東ではイスラエルは潜在的核保有国ですから、最大の敵国であるイランも持とうとし、ストップをかけられた状態です。

しかしそれが止められなければ、イランを宿敵とにらむサウジも持つでしょう。

その核の連鎖は南米大陸にも及び、仮にブラジルが持てば、アルゼンチンも対抗上持たざるを得ません。 

その上にテロリストにも核が流れる可能性があります。

北朝鮮がシリアには化学兵器を、イランとは核兵器の共同開発をしていたことが知られています。 

おそらく北朝鮮の核兵器技術は、新商品として中東に流出していくことでしょう。 

この流出した核は、国に限らず国際テロリストの手にも落ちるのは目に見えています。

中東の兵器管理セキュリティは大甘だからです。 イラクで米国が供与した米国製兵器がテロリストにだだ漏れしたのは情けない事実です。

するとたとえば、IS残党がトラックでどこかの首都に核兵器を持ち込み自爆テロをするというシナリオも現実味を帯びるのです。 

もはやその場合、核は冷戦期のような「使えない兵器」から、手軽に「使える兵器」となってしまうこととなります。 

こんなことを望む人はいるのでしょうか。 

Photo
先日ノーベル平和賞を取ったというのが触れ込みの某平和団体代表が日本に押しかけて、核兵器禁止条約に入らない日本は、まるで世界の敵だといわんばかりことを言って帰りました。

大いにメディア受けしたようですが、言う方角を間違えています。

今、この時期に東アジアに来たなら、核武装などまったく検討すらしていないわが国に対してではなく、核武装を強引に進める北朝鮮、あるいは世界でもっともハイペースで核弾頭を増やしている中国に対して強く抗議すべきでした。

この団体が真剣に核廃絶を考えているか、はなはだ疑わしいといわざるを得ません。

今ここで、北朝鮮の核保有を完全に止めなければなりません。 

日本には国際社会の一員として、核武装に狂奔する隣国から核兵器を手放させねばならない義務があります。

それにしても、わが国が位置する東アジアにおいて、このような歴史的暴挙がなされようとしている時に、モリカケ、裁量のほうが大事だというのですから話になりません。

2018年3月 2日 (金)

米国駐韓大使候補に日本・韓国・北朝鮮を熟知する人物が浮上

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昨日お伝えしたように韓国大使で就任寸前までいったビクター・チャ・ジョージタウン大学教授が白紙化されて、現況では駐韓大使代理のマーク・ナッパー氏が大使職代行となっています。 

頬を切られるというテロに会ったマーク・リッパート大使の代理をしていますが、なかなか面白い経歴を持つ人です。 

Photoマーク・ナッパー

このナッパー大使代理の特筆すべき点は、東アジアに精通したプロの外交官だという点です。

マーク・ナッパー - Wikipedia 

韓国語のみならず日本語もペラペラだそうです。ただし、彼の日本語は沖縄訛りがあるかもしれません(←未確認)。 

というのは、ナッパーは父親が沖縄に駐屯する海兵隊員で、少年時代は沖縄で生活したそうです。 

ちなみに、NSCアジア上級部長のポッティンジャーも、沖縄海兵隊での軍歴をもっていますし、マティス国防長官、ケリー首席補佐官のケリーもご存じ海兵隊トップの大将です。 

これだけ大量の海兵隊幹部が政権中枢にいると、沖縄地方紙はすぐに「軍人政権」とか「狂犬」と書きたがるようですが、まったく逆で、マティスは政権の止め男筆頭です。 

ではもう少しナッパーの経歴を見てみましょう。 

プリンストン大学でケント・カルダー教授の指導のもと日本政治を専攻し、東アジア学を専攻した経歴を持ちます。

Photo_2ケント・カルダー

むしろ日本では、ナッパーより師匠のカルダーのほうがはるかに有名かもしれません。

カルダーはインタビューでこう語っています。
https://www.nippon.com/ja/people/e00048/

「日本の外交上、政策上の緊急課題は、日本が復活したこと、そして日本が極めて建設的なやり方で世界経済に貢献しようとしていることをより広く理解してもらうことです。
例えば、開発分野では
TICAD(アフリカ開発会議)の開催など、アフリカとの関係で日本が重要な役割を果たしており、オバマ政権の関心とも重なります。しかし、そうした政策と貢献度が十分に理解されているとは思えません。これらは今、日本が優先して進めるべき分野です」

また、中国との関係については

「G2構想は危険を伴います。もちろん、米国は中国と建設的で安定的な関係を築いていく必要があります。しかし、その実現のために日米関係を犠牲にすることは、長い目で見ればこの地域にとってリスクとなる。安全保障の問題はあくまでも日米の枠組みの中で取り組むべきです」

カルダーは96年まで戦略国際研究所日本部長を経て、97年から01年まで駐日本大使特別補佐官を歴任しています。 

弟子のナッパーはライシャワーの孫弟子に当たるわけで、91年から93年まで東大に留学し、その後になんと自民党国際局に入り、椎名素夫議員の秘書も経験しています。 

その後国務省に入省し、後はソウルと東京と大使館詰めを経て、2014年からは国務省日本部長を努め、リッパート大使が2017年1月に離任以後、大使代理を務めています。 

今の北の核との絡みていえば、97年に寧辺の使用済み核燃料の作業のため訪朝、さらに2000年にはマデレーン・オルブライト国務長官の訪朝先発隊として、北との難しい交渉にあたっています。 

この経歴をみると、よくもまぁ、この時期のこの難しいポジションに、こんな人物がいたことにいい意味で驚きすら感じます。 

中央日報とのインタビューを読むと、オーソドックスなジョセフ・ナイに似たことを言っていますので過剰な期待は禁物ですが、駐韓大使は余人をもって替え難い気がします。
http://japanese.joins.com/article/241/233241.html

おそらくナッパーは、安倍氏が進めた慰安婦日韓合意を米国側から提案した人物のひとりのはずです。

彼はトランプ訪韓時の、慰安婦ハグ事件に際して、「トランプかハグしたことは外交儀礼であって、政治的意味はない」という意味のコメントをしています。

内心こんな愚挙を北の面前で演じるムンに対して、職業外交官として苦々しい気持ちであったとお察しします。

米国のエリート外交官や政治家が揃って逃げ出す韓国大使職は、火中の栗を拾うようなポジションです。

さてこの日韓北を熟知するナッパーが、今後この困難な局面でどのような仕事をしてくれるのか注目しましょう。

2018年3月 1日 (木)

ジョセフ・ユンとビクター・チャの辞任は、対北融和派の一掃だ

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昨日のコメントにありましたジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表の辞任ですが、とうぜんの流れだと思います。 

結論からいえば、いままで国務省内部にあった隠微な対立が、米朝交渉派の一掃で決着がついたということです。 

少し前の2月2日には、アグレマン(※)までされていたジョージタウン大学教授ビクター・チャの韓国大使案が取り消されました。
http://japan.hani.co.kr/arti/international/29696.html
※外交使節団の長(大使もしくは公館の長としての公使)を派遣するに当たって事前に接受国に求める同意。 

したがって辞めたというのではなく、むしろ国務省からも切られたと言い換えるべきだと思います。 

ユンは今回の辞任を受けて、このようなことを述べています。 

「ユン氏はこの日報道が出た後、韓国メディアとのインタビューで「トランプ政権と政策的な違いがあって離れるのではない」とし「南北対話もうまく進んでいて、北米対話も始まろうかという時になったので、担当者を変えるのもよいのではないかと考えた」と強調した。
だが「トランプ大統領に近い方、近くで仕事をしている方が代表をされたらどうだろうかと考えた」と述べ、含みをもたせた。ユン氏はまた「米朝対話に対し、非常に希望的に見ていて〔韓半島(朝鮮半島)状況を〕楽観的に見ている」と付け加えた」(中央日報2月28日)

http://japanese.joins.com/article/092/239092.html 

Photo韓国の金本部長(左)と植村隆記者みたいなジョセフ・ユン米代表 聯合http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/12/05/0900000000AJP20161205002300882.HTML

さらにロイター(2月27日)はこう報じています。 

「ユン氏は米メディアに対し、退任は個人的な決断だとし、ティラーソン長官から慰留されたと説明。「このタイミングでの退任は完全に自分自身の決定だ」と述べた。CBSのインタビューには「北朝鮮は核・ミサイル実験をやめた」と語った」
https://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-diplomat-idJPKCN1GB0EP

ユンの情勢認識は、①南北対話もうまく進んでいる、②北米対話も始まろうとしている、③北は核・ミサイル実験を止めた、です。 

おいおいユンさんよ、願望でものを見るなよと言いたくなります。NSCから、ドリーマー(夢追い人)呼ばわりされるのもむべなるかなです。 

ユンは、ここで今回の五輪における南北会談を肯定した上で、北は核・ミサイル開発を止めたのだから、すぐにでも米朝会談をすべし、といっていることになります。 

いつ北が核・ミサイル開発を止めたのでしょうか。にわかには信じがたいほどの間違った認識です。

ほんとうにロイターが伝えたようなことを言っていたなら、33年間も米外交官をやっておきながらコリアのファンタジー愛好癖はかくも強いのかと驚かされます。

ユンのこの種の対北融和発言は、今に始まったことではありません。

去年秋から冬にかけて韓国が北との秘密接触をピョンヤンでしていた時期には、それを援護射撃するように、こんなことを言っています。 
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-1ae7.html

「国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が、北朝鮮が核・ミサイルの実験を60日間凍結すれば、米朝対話に応じる考えを10月末に示していたと報じた」
(ワシントン・ポスト2017年11月9日)

おそらく、ユンとこのピョンヤンに秘密使節を派遣したチョ・ミョンギュン(趙明均)統一相とは、なんらかの意志疎通があったと考えられます。 

これは推測の域をでませんが、チョの対話相手は、北の外務次官のハン・ソンリョル(韓成烈)外務次官だったろうと思われます。 

Photo_3ハン・ソンリョル(韓成烈)外務次官

ハンは北の生え抜きの外交官でスウェーデンなどにもパイプをもっており、仮に米国が外交接触する場合、最も適任の人物だと言われています。 

つまりユン-チョ-ハンという三者は、北朝鮮は非核化を前提にした対話には応じないと言い、一方米国は非核化を前提としない対話には応じないという膠着状況を、北がひとまず核・ミサイル発射を自重することで打開しようとしていたと考えられます。 

そして、五輪を奇貨として南北会談に持ち込み、対北雪解けを世界にアピールし、一挙に米朝会談に持ち込むという落とし所を考えていた節があります。 

ただしこの思惑は、他ならぬ北が11月29日、1月3日に相次いでICBM実験をしたことで、あえなく瓦解しました。 

この北のミサイル発射時点で、米国国務省内部ですらユンの持論であるミサイル実験さえ凍結すれば、核放棄を前提とせずに無条件に米朝会談をしようという考えはほぼ完全に否定されます。 

Photo_2ビクター・チャ  松井知事みたい。

それはユンと同じ対北融和派のビクター・チャが韓国大使内定を取り消されたことで分かります。

チャはかねてからの対北対話派であり、いわゆる「鼻血戦略」に反対の意志をもっていました。

「彼は「鼻血戦略という言葉は、ホワイトハウスでや行政府のどこでも使わない」とし、「ここ数週間、鼻血戦略に関するマスコミの報道で困っている」と話した。彼は「私と同僚たちは今日の朝も、鼻血戦略という言葉がどこから出てきたのかという話をした」とし、「我々は一度もそのような言葉を使ったことないからだ。我々が使用したことはない」と話した」(ハンギョレ2月2日)
http://japan.hani.co.kr/arti/international/29696.html

チャがひとりの外交専門家として軍事オプションに反対ということはありえることです。しかし、当該国の大使とすることは、米国が軍事行動をとらないと宣言することと同義だと受け取られます。

特に北は必ずそう考えます。

それでは米国が選びうる「最大限の圧力」シナリオを、自ら狭めるることになってしまいます。これはマズイとホワイトハウスは考えたのでしょうね。

私は人が悪いので、ホワイトハウスとチャが否定すればするほど、マクマスター大統領補佐官、ポンペオCIA長官、そしてNSCアジア担当専任補佐官ポッティンジャーらが主張する鼻血戦略(ブラッディ・ノーズ)の実施される可能性が強まったと思えます。

それはエドワード・ルトワックが主張するような限定的核施設攻撃です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/post-e3ab.html

 ルトワックはこう述べています。

「アメリカが北朝鮮に対する空爆を躊躇する理由として、成功が極めて困難だから、というのも説得力に欠けている。北朝鮮の核関連施設を破壊するには数千機の戦略爆撃機を出動させる必要があり不可能だ、というのだ。
しかし、北朝鮮にあるとされる核関連施設はせいぜい数十カ所で、そのほとんどはかなり小規模と見てほぼ間違いない。合理的な軍事作戦を実行するなら、何千回もの空爆はそもそも不要だ」
(ニューズウィーク2018年1月9日)

かつて私は、ルトワック翁のこの提案はホワイトハウスから拒否されるだろうと書いたのですが、どうもそうとだけはいえなくなってきたようです。

 

 

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