プンゲリ核実験場の公開 世界は気持ちよく騙されたいのか
なんとまぁ、ノーベル・フェークピース賞をいただけそうな雰囲気で、ムンさん、正恩さん、おめでとうございます。
まぁ、少し前にはなにもしなかったオバマにあげてしまったり、去年は去年でユーキャンじゃなかったアイキャンなどというゴリゴリの左翼系反核運動団体にやっちゃったような賞ですから、,とうに権威なんかないんですがね。
さて、北はプンゲリの核実験場を閉鎖とぶち上げましたが、お疑いなら公開してもいいと言い出しています。
正恩は落盤事故を起こしたというのはデマだ。あと2つ大きい坑道が残っているぞ、と主張しています。
ただし、このてはちょうど10年前の2008年6月に寧辺の5MW原子炉の冷却塔を爆破した映像を提供して「核開発は終わった」とやった手口に似ているので、いかがなものか、大変に楽しみです。
http://www.asahi.com/special/08001/TKY200806270292.html
この先代の冷却塔爆破は、今と同じように経済制裁に苦しんでいた北が「テロ支援国家」指定をはずしてもらうために打ったものでした。
さすがの南北首脳会談に「感動の嵐」のはずの韓国メディアも、眉に唾つけて受け取っているようです。
「29日ユン・ヨウンチャン青瓦台国民疎通主席によると、キム委員長は核実験場を5月中に閉鎖し、これを公開するために韓米の専門家とジャーナリストを招待する意思を明らかにした。
北朝鮮は2008年6月、当時6カ国協議参加国の取材陣が見守る中、無能力化対象であった5MW級原子炉の冷却塔を爆破し、これを全世界に録画中継方式で公開している。当時、一部において「政治的ショー」という批判も出てきたものの、冷却塔が核開発に持つ象徴性を考慮すると国際社会の評価も概ね肯定的であった。
しかし、北朝鮮が核開発に速度を出しながら、最終的には監視を避けるショーに過ぎないという当時の懸念が証明されるまでさほどの時間は必要ではなかった」(朝鮮日報4月29日)
今後の北の「非核化」の予行練習になりますので、ぜひIAEAや米軍の核専門家を交えて拝見しに行くことにしましょう。
ところでひとつ気になる兆候がでています。トランプ政権の口調が柔らかくなったように感じられることです。
正恩と会談したポンペオは、今まで呼び捨てにしていた正恩を「リーダー」(指導者)つきで呼び始め、トランプはトランプとてこんなことをツイッターしています。
「みんなは『私が核戦争を起こす』と言ったが、核戦争は弱腰の人間が起こす。これまで『小さなロケットマン』とか『私の核のボタンの方が大きい』と発言したが、暴言だった。北はこちらが要求する前に、私が発言する前に諦めた。私はうまくやっているのだ」
この人のツイッター発言は、例によって5掛けで聞けというのが私の見方です。
しかしそれにしても、おいおい「(北は)こちらが要求する前に諦めた」はないでしょう。
もちろん正恩はいささかも「諦めて」などはいないし、南北首脳会談という「民族の祭典」をしたあとの仕掛けまで考えています。
それがおそらく、このプンゲリ核実験場の「公開」です。
ここで、正恩がプンゲリでなにをどう見せるかは分かりませんが、間違いなく西側ジャーナリズムの注視を浴びることでしょう。
そしてあんがい坑道も残存している可能性もありますから、この坑道入り口を爆破するていどのパーフォーマンスはやってみせるかもしれません。
すると、流れはいっそう北の誠意を信じたい空気が醸成されます。
あの無意味な南北首脳会談ひとつで、あれだけの世界の視線を浴び、ノーベル平和賞までささやかれるなら、核実験場の「閉鎖」はそれに増す効果があることでしょう。
本当のところ、世界は気持ちよく騙されたいのです。
いまから感動で身を震わせながら、日本のメディアはこんなことでも言うのでしょうか。南北首脳会談時の金平某氏をパロってみました。
「北の非核化への意志は本物でした。歴史とはこんな風にして劇的に動くのかと感慨を抱いた人も多いことでしょう。蚊帳の外の日本にいてそう思いました。今、私たち人類は、核のない世界が到来する歴史的瞬間を経験しているのです」
正恩が共同宣言で14回も「平和」を連呼したように、真剣に「平和」を望んでいる指導者だと信じたいという気持ちが、私たちの側にも濃厚にあるのです。
軍事力行使と簡単に言っても、米国も返り血を覚悟せねばなりません。ほんとうは回避したいからこそ、今、経済制裁で締めつけているわけです。
おそらく米朝会談が失敗した場合、米国は次の一手に困惑するかもしれません。
限定的核施設攻撃を取るか、米海軍による海上封鎖行動ていどしかオプションが残らないからです。
ムンが訪朝するといってしまった以上、よもやその真っ最中に軍事攻撃はできませんし、ムンは危険期間といわれる9月までなにくれとなく南北の行事を突っ込んで妨害してくるでしょう。
それはさておき、北に対する経済制裁はいささかも緩んでいません。
朝鮮半島水域の背取り監視は、米軍のみならず海自も参加し、今、嘉手納にカナダと豪州のP3Cが配置されるという国際体制になっています。
今やこのようなことしか出来なくなりつつある、というのも反面事実なのです。
http://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/20180428/5090002700.html
ですから、米朝会談が失敗した場合、米国も打つ手が限られるのだという点さえくすぐれば、ちっとやそっとの妥協は止むなしという世論が、自由主義陣営側の社会に醸成されるでしょう。
本来ならば、核製造施設・核ミサイル発射基地・核物質のIAEAによる査察・解体・撤去という検証を経なければ北の「非核化」は終わらないはずなのに、なんとか落とし所をこちら側で用意してしまおうとする流れができてしまうでしょう。
その妥協点が、長距離核のみ廃止した代償に、中距離核を認め、それの段階的廃棄を協議することでお茶を濁すことです。
そしてこの引き換えに米国は、テロ支援国家指定を取り下げ、経済制裁を解除するというシナリオです。
もちろん、北は長距離核を諦める気などさらさらありませんから、何年後かに密かにまた長距離核も製造していたことが発覚するでしょうが、その時はその時で、例によって例の如しで憤然として協議の場から脱退すればいいだけの話です。
そしてまた元の木阿弥です。
かくして北の「非核化」は、ネバーエンディング・ストーリーと化すことでしょう。
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