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2018年4月

2018年4月30日 (月)

プンゲリ核実験場の公開 世界は気持ちよく騙されたいのか

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なんとまぁ、ノーベル・フェークピース賞をいただけそうな雰囲気で、ムンさん、正恩さん、おめでとうございます。 

まぁ、少し前にはなにもしなかったオバマにあげてしまったり、去年は去年でユーキャンじゃなかったアイキャンなどというゴリゴリの左翼系反核運動団体にやっちゃったような賞ですから、,とうに権威なんかないんですがね。 

さて、北はプンゲリの核実験場を閉鎖とぶち上げましたが、お疑いなら公開してもいいと言い出しています。 

正恩は落盤事故を起こしたというのはデマだ。あと2つ大きい坑道が残っているぞ、と主張しています。 

ただし、このてはちょうど10年前の2008年6月に寧辺の5MW原子炉の冷却塔を爆破した映像を提供して「核開発は終わった」とやった手口に似ているので、いかがなものか、大変に楽しみです。 

Apx200806270006http://www.asahi.com/special/08001/TKY200806270292.html

 この先代の冷却塔爆破は、今と同じように経済制裁に苦しんでいた北が「テロ支援国家」指定をはずしてもらうために打ったものでした。 

さすがの南北首脳会談に「感動の嵐」のはずの韓国メディアも、眉に唾つけて受け取っているようです。 

「29日ユン・ヨウンチャン青瓦台国民疎通主席によると、キム委員長は核実験場を5月中に閉鎖し、これを公開するために韓米の専門家とジャーナリストを招待する意思を明らかにした。
北朝鮮は2008年6月、当時6カ国協議参加国の取材陣が見守る中、無能力化対象であった5MW級原子炉の冷却塔を爆破し、これを全世界に録画中継方式で公開している。当時、一部において「政治的ショー」という批判も出てきたものの、冷却塔が核開発に持つ象徴性を考慮すると国際社会の評価も概ね肯定的であった。
しかし、北朝鮮が核開発に速度を出しながら、最終的には監視を避けるショーに過ぎないという当時の懸念が証明されるまでさほどの時間は必要ではなかった」(朝鮮日報4月29日)

今後の北の「非核化」の予行練習になりますので、ぜひIAEAや米軍の核専門家を交えて拝見しに行くことにしましょう。 

ところでひとつ気になる兆候がでています。トランプ政権の口調が柔らかくなったように感じられることです。

正恩と会談したポンペオは、今まで呼び捨てにしていた正恩を「リーダー」(指導者)つきで呼び始め、トランプはトランプとてこんなことをツイッターしています。 

「みんなは『私が核戦争を起こす』と言ったが、核戦争は弱腰の人間が起こす。これまで『小さなロケットマン』とか『私の核のボタンの方が大きい』と発言したが、暴言だった。北はこちらが要求する前に、私が発言する前に諦めた。私はうまくやっているのだ」

この人のツイッター発言は、例によって5掛けで聞けというのが私の見方です。 

しかしそれにしても、おいおい「(北は)こちらが要求する前に諦めた」はないでしょう。

もちろん正恩はいささかも「諦めて」などはいないし、南北首脳会談という「民族の祭典」をしたあとの仕掛けまで考えています。 

それがおそらく、このプンゲリ核実験場の「公開」です。 

ここで、正恩がプンゲリでなにをどう見せるかは分かりませんが、間違いなく西側ジャーナリズムの注視を浴びることでしょう。 

そしてあんがい坑道も残存している可能性もありますから、この坑道入り口を爆破するていどのパーフォーマンスはやってみせるかもしれません。 

すると、流れはいっそう北の誠意を信じたい空気が醸成されます。 

あの無意味な南北首脳会談ひとつで、あれだけの世界の視線を浴び、ノーベル平和賞までささやかれるなら、核実験場の「閉鎖」はそれに増す効果があることでしょう。 

本当のところ、世界は気持ちよく騙されたいのです。

いまから感動で身を震わせながら、日本のメディアはこんなことでも言うのでしょうか。南北首脳会談時の金平某氏をパロってみました。

「北の非核化への意志は本物でした。歴史とはこんな風にして劇的に動くのかと感慨を抱いた人も多いことでしょう。蚊帳の外の日本にいてそう思いました。今、私たち人類は、核のない世界が到来する歴史的瞬間を経験しているのです」

正恩が共同宣言で14回も「平和」を連呼したように、真剣に「平和」を望んでいる指導者だと信じたいという気持ちが、私たちの側にも濃厚にあるのです。

軍事力行使と簡単に言っても、米国も返り血を覚悟せねばなりません。ほんとうは回避したいからこそ、今、経済制裁で締めつけているわけです。

おそらく米朝会談が失敗した場合、米国は次の一手に困惑するかもしれません。

限定的核施設攻撃を取るか、米海軍による海上封鎖行動ていどしかオプションが残らないからです。

ムンが訪朝するといってしまった以上、よもやその真っ最中に軍事攻撃はできませんし、ムンは危険期間といわれる9月までなにくれとなく南北の行事を突っ込んで妨害してくるでしょう。

それはさておき、北に対する経済制裁はいささかも緩んでいません。

朝鮮半島水域の背取り監視は、米軍のみならず海自も参加し、今、嘉手納にカナダと豪州のP3Cが配置されるという国際体制になっています。

やこのようなことしか出来なくなりつつある、というのも反面事実なのです。

Photohttp://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/20180428/5090002700.html

ですから、米朝会談が失敗した場合、米国も打つ手が限られるのだという点さえくすぐれば、ちっとやそっとの妥協は止むなしという世論が、自由主義陣営側の社会に醸成されるでしょう。 

本来ならば、核製造施設・核ミサイル発射基地・核物質のIAEAによる査察・解体・撤去という検証を経なければ北の「非核化」は終わらないはずなのに、なんとか落とし所をこちら側で用意してしまおうとする流れができてしまうでしょう。 

その妥協点が、長距離核のみ廃止した代償に、中距離核を認め、それの段階的廃棄を協議することでお茶を濁すことです。 

そしてこの引き換えに米国は、テロ支援国家指定を取り下げ、経済制裁を解除するというシナリオです。 

もちろん、北は長距離核を諦める気などさらさらありませんから、何年後かに密かにまた長距離核も製造していたことが発覚するでしょうが、その時はその時で、例によって例の如しで憤然として協議の場から脱退すればいいだけの話です。

そしてまた元の木阿弥です。

かくして北の「非核化」は、ネバーエンディング・ストーリーと化すことでしょう。 

 

2018年4月29日 (日)

日曜写真館 群青の朝

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2018年4月28日 (土)

南北首脳会談終わる

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あーあ、つまんねぇもん見させられた。もちろん、南北首脳会談とやらの話です。 

テレビではサプライスがないなんて、言っていましたが、当然でしょう。 

残ったのは、異様に高揚したムン・ジェイン閣下の壊れたマリオネットのような口パッカだけ。夢に出そう。 

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失礼ながら、なんとかならんかね、ムンさん。足が地についていないじゃないか。あなた、はるかに歳下の正恩に貫祿負けしていましたぜ。 

不気味な抱擁まで見せおってからに、千代丸の腹押しかって(笑)。

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正恩を褒めるようでナンですが、初めてこの人物のしゃべるところをリアルタイムで見ましたが、3代70年も職業的独裁者をやると、ああいうタイプの人物が生まれるんですな。 

さて、内容ですが、見るべきものはなにもありません。

収穫?「非核化」の具体策? あるきゃないでしょう、そんなもん。

と、これでは愛想がないので、多少コメントを書いておきます。共同宣言文全文は欄外にアップしておきました。太字は引用者です。 

いちおう要約しておきましょうか。 

骨子は4つです。

①[交流促進] 経済協力・民間交流・共同選手団・離散家族の再会・開城に連絡事務所
②[政府間交流の促進] 高官級会談・国防相会談・ムンのピョンヤン訪問
③[緊張緩和] 不可侵合意・年内に朝鮮戦争の終結宣言
④「非核化] 朝鮮半島非核化が目標

ざっと見ても、特に新味なし。昨日の記事の予測から1センチも出ていません。 

別に私に予知能力があったわけではなく、俗に言う「歌舞伎」なんですよ。 

Photo
決められたことを決められた所作でやって、観客に大見得を切るということを、ムンと正恩はして見せたわけです。 

米国の反応です。トランプはツイッターでこんな感想を書いています。 

「中国の習近平国家主席の力添えにも言及。「私の良き友、習国家主席が米国のため、特に対北国境でくれた『大きな助力』のことを忘れないでほしい。習氏がいなければ、より長く、より厳しいプロセスになっていたはずだ!」 

この人のツイッター政治にはイライラさせられますが、5掛で聞きましょう。 

トランプが習を「良き友」と呼んでいるのは(経済戦争を激化させておいて、よー言うよと思いますが)、確かに中国の経済制裁は効いているからです。 

先日記事にしましたが、アジア・プレスの石丸次郎氏によれば、北の対中輸出はわずか10億円にまで減少し、NHKによれば中国からの輸入も87%の減少です。 

そして、去年の春の「田植え戦闘」時期に軍事的緊張を煽ったために、食料は減産したと見られています。 

北の食料事情は、今、もっとも食べるものが払底する春窮の時期に当たっているはずです。 

一時期、核の完成にめどがついたことでのぼせ上がって中国のコントロールが効かなくなった正恩を、習は経済関係の締め上げで、北京に顔を向けさせました。

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ですから北京訪問で、正恩が習から命じられたことは二つあるはずです。 

ひとつは「非核化」を、中国方式の「階段性・同歩的措施」(段階的・同歩調的)とすることです。

これが共同宣言文に出てくる「南と北は、朝鮮半島非核化に向けた国際社会の支持と協力を得るため、積極的に努力することにした」という文言に反映されています。

いうまでもありませんが、これは朝鮮半島の「非核化」は、北と米国が同歩調でしろということで、いくらでも拡大解釈が可能な表現です。 

これは韓国が、米国の「核の傘」(拡大核抑止)から離脱することを意味します。 

ふたつめは、遠藤誉女史が言っていることですが、開放経済に転換しろということです。

「習近平は金正恩に対し、経済の改革開放を推進するように求めたという。軍事(核開発)よりも経済に力を注ぐことが北朝鮮にとって得策であることを金正恩に理解させたというのだ。
鄧小平以来のどの政権になっても、間断なく「中国式の改革開放」を北朝鮮に要求してきた。金正恩政権は2013年から経済建設と核戦力建設の並進路線を唱えてきたが、今や核戦力の建設は終えたと勝利宣言している。
ようやく経済建設に全力を注ぐ状況になったにちがいない。今後の北朝鮮はまさに「中国式の改革開放」満開といったところだろう」

遠藤女史の言い方は例によって、北京臭が濃厚で割り引いて読むほうが無難ですが、これはそのとおりかもしれません。

それは訪中直後の党大会で、経済と軍事の「並進路線」のトーンを高めたことでもうかがえます。

この中国の意志を「忖度」したのがムンで、今回の共同宣言には多くの経済交流という名の経済支援が盛り込まれています。

特に開城に連絡事務所を設置するというのは、おそらくは年内の開城特区の再開をもくろんでいると考えられます。

もはや、経済制裁や圧力もくそもあリませんな。北支援一直線です。

ムンさん、いいんですかね。今回の宣言はことごとく、堂々たる国連決議違反ですぜ。

この男は、「民族融和」という魔術的言葉を弄せば、国連決議違反をしようと、同盟を裏切ろうと平気なようです。

日米韓の三者で北の非核化を目指すという構図は、完全に形骸化したとみるべきでしょう。

宣言はなんの実効性もありませんが、米国にとって軍事力行使は米韓同盟の廃棄と同義語になったと見るべきでしょう。

とまれシンシアリーさんによれば、韓国は「感動の嵐」だそうで、ああいう出し物で感動できる韓国の民に幸あれ。

 

                  ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

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   ■朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言 【2018南北首脳会談】 全文 

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が27日に署名した「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」の全文は次の通り。(韓国側発表による) 

 大韓民国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長は平和と繁栄、統一を願う全民族のいちずな願いを込め、朝鮮半島で歴史的な転換が起きている意義深い時期である2018年4月27日に、板門店の平和の家で南北首脳会談を行った。 

 両首脳は、朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8千万のわが同胞と全世界に厳粛に宣言した。 

 両首脳は、冷戦の産物である長い分断と対決を一日も早く終わらせ、民族的和解と平和繁栄の新たな時代を果敢に切り開き、南北関係をより積極的に改善し発展させていかなければならないという確固たる意志を込め、歴史の地、板門店で次のように宣言した。 

 1 南と北は、南北関係の全面的で画期的な改善と発展を実現することで、途絶えた民族の血脈をつなぎ、共同繁栄と自主統一の未来を早めていくだろう。 

 南北関係を改善し発展させることは、全民族のいちずな願いであり、もはや先送りできない時代の切迫した要求だ。 

 (1)南と北は、わが民族の運命はわれわれ自ら決定するという民族自主の原則を確認し、既に採択された南北宣言や全ての合意などを徹底的に履行することで、関係改善と発展の転換的局面を切り開いていくことにした。 

 (2)南と北は、高官級会談をはじめとする各分野の対話と交渉を早期に開催し、首脳会談で合意した内容を実践するため、積極的な対策を立てていくことにした。 

 (3)南と北は、当局間協議を緊密にし、民間交流と協力を円満に進めるため、双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を開城地域に設置することにした。 

 (4)南と北は、民族的和解と和合の雰囲気を高めていくため、各界各層の多方面の協力と交流、往来や接触を活性化することにした。 

 対内的には、(2000年の南北共同宣言が発表された)6月15日をはじめ、南と北にともに意義がある日を契機に、当局と国会、政党、地方自治体、民間団体など、各界各層が参加する民族共同行事を積極的に推進し、和解と協力の雰囲気を高める。対外的には18年アジア大会をはじめとする国際競技に共同で出場し、民族の知恵と才能、団結した姿を全世界に誇示することにした。 

 (5)南と北は、民族分断により発生した人道問題を至急解決するため努力し、南北赤十字会談を開催して離散家族・親戚再会をはじめとする諸問題を協議、解決していくことにした。 

 差し当たって、今年8月15日を契機に離散家族・親戚の再会を行うことにした。 

 (6)南と北は民族経済の均衡的な発展と、共同繁栄を成し遂げるため、(07年の南北首脳による)10月4日宣言で合意した事業を積極的に推進していき、一次的に東海線と京義線の鉄道と道路などを連結し、現代化し、活用するための実践的な対策を取っていくことにした。 

 2 南と北は、朝鮮半島で先鋭化した軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するため共同で努力していくだろう。 

 朝鮮半島の軍事的緊張状態を緩和し戦争の危険を解消することは、民族の運命と関連する非常に重大な問題であり、われわれ同胞の平和的で安定した生命を保証するための鍵となる問題だ。 

 (1)南と北は、地上と海上、空中をはじめとするあらゆる空間で、軍事的緊張と衝突の根源となる相手に対する一切の敵対行為を全面的に中止することにした。 

 差し当たって、5月1日から軍事境界線一帯で拡声器(宣伝)放送やビラ散布をはじめとするあらゆる敵対行為を中止し、その手段を撤廃し、今後非武装地帯を実質的な平和地帯としていくことにした。 

 (2)南と北は、黄海の北方限界線一帯を平和水域とし、偶発的な軍事衝突を防止し、安全な漁業活動を保証するための実質的な対策を立てていくことにした。 

 (3)南と北は、相互協力と交流、往来と接触が活性化することに伴うさまざまな軍事的保証対策を講じることにした。 

 南と北は、双方間に提起される軍事的問題を遅滞なく協議、解決するため、国防相会談をはじめとする軍事当局者会談を頻繁に開催し、5月中にまず将官級軍事会談を開くことにした。 

 3 南と北は、朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築のため、積極的に協力していくだろう。 

 朝鮮半島で非正常な現在の休戦状態を終わらせ、確固たる平和体制を樹立することは、もはや先送りできない歴史的課題だ。 

 (1)南と北は、いかなる形態の武力も互いに使用しないという不可侵合意を再確認し、厳格に順守していくことにした。 

 (2)南と北は、軍事的緊張が解消され、互いの軍事的信頼が実質的に構築されるのに伴い、段階的に軍縮を実現していくことにした。 

 (3)南と北は、休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした。 

 (4)南と北は、完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した。 

 南と北は、北側が講じている主動的な措置が朝鮮半島非核化のために非常に意義があり重大な措置だという認識を共にし、今後それぞれ自らの責任と役割を果たすことにした。 

 南と北は、朝鮮半島非核化に向けた国際社会の支持と協力を得るため、積極的に努力することにした。 

 両首脳は、定期的な会談と直通電話を通じ、民族の重大事を随時、真摯に議論し、信頼を強固にし、南北関係の持続的な発展と朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた良い流れをさらに拡大していくために共に努力することにした。 

 差し当たって、文在寅大統領は今秋、平壌を訪問することにした。 

 2018年4月27日

 板門店 

 大韓民国 大統領 文在寅 

 朝鮮民主主義人民共和国 国務委員会 委員長 金正恩

2018年4月27日 (金)

南北首脳会談の意味とは

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南北首脳会談が開かれるようです。 

辺真一氏などは「東西ドイツの壁が崩れたようなものとか」言っていますが、そう思いたければ、どうぞそのままそう思っていたらいいんじゃないですか。

この人は昔は朝鮮総連のスポークスマンでしたが、いったんふらふらとその批判者のようになり、またいつの間にか元の定位置に復帰したようです。 

某ジャーナリストは、「南北朝鮮民族の外交的手腕のDNAを感じる」なんて言っていましたし、エコノミストの武者さんなんか「戦後の枠組みが変わる」と手放しのご様子(苦笑)。 

寡聞にして私はコリア民族の「外交手腕」の実例を知らないので、また例によってムンの師匠のノムヒョンのように、バランサー外交を気取って、結局はコケるのかなとしか思えません。 

Photo2007年5月、盧武鉉大統領(当時、右)と 秘書室長時代の文在寅

ムンは、ノムヒョン師の外交が失敗に終わって自らも崖から投身自殺するはめになったのは、太陽政策を妨害する輩が韓国内にたくさんいたからだと考えています。 

ムンの胸中には、師を追い詰めたこいつら、つまり韓国保守が憎い、ひとり残らずムショに叩き込んでくれるという思いがギラギラしているのだと思います。 

そうでなければ、相次いで先代、先々代の前任者を逮捕し、重刑に処するという、まるで中世宮廷劇のようなことが行われるはずがありません。 

そしてかつてノムヒョンが言った「バランサー外交」の第二幕が、その弟子のムンによる南北首脳会談を頂点する南北融和劇です。 

ここで先日紹介した、ミアシャイマーのインタビューの一節を思い出していただきましょう。 

彼は、「台頭する中国が韓半島にもたらす含意は」という質問に答えて、こう答えています。  

覇権国家になった中国に韓国が便乗する可能性がある。そうすれば、韓国は『半主権国家(semi-sovereign state)』になるだろう 

さらには、質問者の朝鮮日報記者が青ざめるようなことを述べています。この一節です。 

経済的には自立性を持つが、外交・安全保障面では思いどおりにはできず、中国のコントロールを受けることを意味する。その場合、韓国は中国という鳥かごにとらわれた鳥になるだろう」  

ここでミアシャイマーが近未来予測という糖衣をかけて言っている、「経済的には自立しているが、外交・安全保障では隷属する」という韓国の状態は、実は既に現実のものとなっています。 

これが半島国家の地政学的位置に支配された両属性というやつで、言い換えれば、二股外交、更に有体にいえばコウモリ外交のことです。

この二股外交は、ムンが獄中に送ろうとしているパククネが既にやってしまいました。 

2016年10月、韓国は中国と既にTHAAD配備撤回とワンセットになった関係修復の密約、いわゆる「三不の誓い」をしています。  

内容は以下ですが、まともな主権国家がやることではありません。これで、韓国は外交的自主権を手放したわけです。

第1の誓い 中国様がお怒りになるTHAADの追加配備をいたしません。
第2の誓い 中国様がお怒りになる日米韓の三国同盟など結びません。
第3の誓い 中国様がお怒りになる米国のミサイル防衛システムには参加いたしません 。

米国はこの公然たる同盟の裏切りに対して、冷やかに対応します。 

下の写真を見ると、日本人の私にはそうとうにみっともない光景に写りますが、ムンにとってはまさに「外交天才」の面目躍如のようですから、どういう神経しているんだとため息が出ます。 

それにしても、そっぽを向くトランプ、上から冷やかに見下す習。見事にムンという男が考える「バランサー外交」が、米中首脳からどう見られているのかがリアルに伝わってくる一枚です。 

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さて韓国は表面的には米国との同盟を維持しながら、中国が考える北の非核化の落とし所を「忖度」しようとしています。

表面的にはムンは米国と同歩調をとるような顔をしていますが、本当の心づもりは北を非核化する気などありません。

むしろ「統一朝鮮」は核を持つべきだと思っているはずで、これがムンの属する親北派の伝統的考え方です。

しょせん同床異夢にすぎませんが、ムンと中国、北の三者の考えは大変に似たものなはずです。

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だから、ムンは南北首脳会談という世界に向けて発信できるステージを使って、中国と北の「非核化」方針を「忖度」しようとしているのです。

「忖度」というのは他者の意志をくみ取って、ていどの意味ですが、 まさにムンは中華帝国勢力下の「半主権国家」として命じられなくとも、その意図を読んでお仕えするのです。

そして南北で朝鮮戦争の「終結」を宣することによって、米朝会談が破綻した場合に備えて、米国が軍事力行使をすることを難しくさせる予防線まで張ろうとしています。

といっても、韓国は休戦協定の当事国ではないので(当事者は中朝と国連軍ですので)、法的にはいくら「終結」を宣しても無意味ですが。

ところで、実は北の「非核化」の姿勢は、中国案とほぼ重なります。 

正恩が言っている「朝鮮半島の非核化」とは、日米のいう「非核化」とは本質的にまったく別物です。 

北にとっての「非核化」とは、米国の「核の傘」を撤去することが前提です。そして長距離核は凍結しても、中距離核は手放すことはしません。 

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3月28日の中朝首脳会談の中国外交部発表によると、正恩は北と米韓が段階的に同時に進む措置(中国語で「階段性、同歩的措施」)を主張しています。 

これだけが朝鮮半島非核化の解決だと、中朝は言っているわけです。 

砕いて言えば、中国はこう言っていることになります。 

「米国さんも東アジアの核をフリーズしなさいよ。そうすれば、北も長距離核をフリーズしますから。お互いに核の脅威からのがれられてウィン・ウィンじゃないですか」 

これが中国のいわゆる「フリーズ・-フリーズ案」です。この方針で中朝は足並みを揃えました。 

中国にとってこの案が実現すれば、単に東アジアが安定するだけではなく、米国の「核の傘」を東アジアから撤去することになりますから、これほどおいしい話はありません。 

一方、北はまったく核を手放す気はさらさらありません。 

4月20日、朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会での正恩はこう述べています。 

「兵器化の完結が検証された」「(北の核は)平和守護の強力な霊剣」「われわれの子孫が世界で最も尊厳あり幸せな生活を享受することのできる確固たる保証」 

また3月10日以降手控えてきた自らを「核強国」と呼ぶ表現も復活させました。これは中国と話がついたことを意味します。 

「(経済と核の)並進の険しい道のりで、わが党は、ただ自らの偉業の正当性と私たち人民の固い信念を抱いて、試練と難関を乗り越え、止まることなく走ってきた。
党と全人民の一心一体の巨大な威力は、私たちの国を世界的な核強国として再誕生させ、世界の政治構図の中心に堂々と載せ立てた原動力であり、根本的な秘訣だった」(朝鮮中央通信4月21日)
 

さて、このように見てくると、これから開かれようとしている南北首脳会談とは、大甘の南北融和というシュガーコートをかけた中朝流「非核化」を宣言する場だとわかるでしょう。 

あ、そうそう忘れていました。正恩が「人民のため、命をかけて1人で南側に行かれる」(朝日4月26日)そうです。

この凛々しき姿を世界に映し出して、「何たる勇気」ともちあげるんでしょうな。といっても、目の前の家に行くだけの話なんですがね。

かくて、ムンは中国様の意のままに落とし所を飾りたてる場を提供し、ついでに正恩の神格化にも一役買うと言うことになります。

 

 

2018年4月26日 (木)

イラク日報問題のくだらなさ

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イラク日報問題ほど、心底ウンザリさせられる事件はありませんでした。 

朝鮮半島でいつ何どき有事になってもおかしくない時期に、よりによって自衛隊を上げて日報探しですか。 

小野寺大臣は、「本来業務に支障がでている」と述べています。まったくどうかしています。 

日報があったのなかったの、出てくれば出てきたで「戦闘」があったのなかったの、どーでもいいでしょう、そんなこと。 

メディアは「記録文書が廃棄されていた」と書きますが、そういう表現を使うとまるで自衛隊がこっそりと文書の隠滅行為をしたか、政権に「忖度」して隠滅したかのごとくに印象されます。

財務省は実際に、省トップに「忖度」して文書改竄をやらかして痛ましい自殺者までだしてしまったのですが、「さぁ皆の衆、自衛隊も同じだ」と言いたいようです。 

その通りです。メディアは、またまたモリカケ・カイザンと同じように「政権に忖度した」という手垢のついた構図にもちこみたいのです。

メディアさん、柳の下にいったい何匹のドジョウを飼っているんだい。

違います。財務省の公文書改竄や書き換えは罪に問われる可能性がありましたが(結局、大阪地検は立件できなかったようですが)、自衛隊は違法行為をしたわけではありません。

前にも一度紹介したことがあった、2011年4月1日付「防衛省行政文書管理規則」第2条を見てみましょう。
防衛省行政文書管理規則

「防衛省行政文書管理規則第2条
この訓令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)行政文書  防衛省の職員(以下「職員」という。)が職務上作成し、または保管した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下同じ。)であって、職員が組織的に用いるものとして、防衛省が保有しているものをいう。ただし、法第2条第4項各号に掲げるものを除く」

メディアは、「ここでもあそこでも文書発見」という報じ方をしますが、そりゃあるでしょうよ。 

そもそもこの管理規則がいうように、自衛隊では「組織的に用いるものとして、防衛省が保有」していなければ廃棄するのが決まりだったからです。 

防衛省が保管を義務づけているのは、文書管理規則によれば「組織的に保有する」旨の指示を出して、防衛省中央の文書アーカイブ内に保管してあるものを指します。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-68f6.html におけるaetos様のご指摘を参考にさせていただきました。感謝します。 

ですから、職員が個人の参考資料として自分のローカルPCに入れておいたものが見つかっても、あったからナンだというのでしょうか。 

自衛隊は24万人を擁する大組織です。

ひとつの巨大企業として考えれば、文書規則に則って本社のアーカイブに入れなかった文書が、膨大な数に登るのはあたり前です。 

本社総務課で、海外支社や支社、出張所レベルの作業記録まで残していたら、大変なことになりますからね。 

だから、しかるべき正当な手続きを踏んで防衛省中央アーカイブに保管したもの以外の文書は、「なかった」と答えてよいのです。 

それが、自衛隊の訓練研究所の個人のPCの片隅に参考資料として残っていたからと言って、そのどこが問題なのでしょうか。 それは隠滅でもなんでもありません。

イラク派遣空自指揮官だった織田邦男元空将は、このように述べています。(アゴラ2017年8月23日)
http://agora-web.jp/archives/2027909.html

「先ず2011年施行の「公文書管理法」に関する認識の甘さは、陸自は責めを負わねばならない。
この法律は「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であり、「適切な保存及び利用等を図り」、「現在及び将来の国民に説明する責務が全う」することを目的とする。
従って行政機関で作成され、「組織的に用いる」文書はすべからく公文書となる。盲点は、個人パソコンに保存される電子データも含まれることである」

公式には保管していなかったものを、隊員の個人が陸自隊員なら誰でもおとせる共有ホルダーからダウンロードして、たまたま持っていたというだけの話です。

そもそも、このような他国では間違いなく情報公開法の埒外に置かれるべき日報をなぜ公開してしまうのか、理解に苦しみます。 

イラク日報が公開されましたが、専門家が見ればイラク派遣の自衛隊の配置体制がどのようになっていたのか、弾薬や食料の状況はどうであったのか、どのような命令を下されていたかなどなどの、隊員の安全に直接関わるような情報が手にとるように分かってしまいます。 

自衛隊は市役所ではありません。軍隊、おっと違った、「実力組織」です。 

したがって、その安全は隊員の生命と直結します。 

このような日報をただの「行政文書」扱いにして開示することはあってはならないことです。

後に防衛省防衛研究所戦史研究センターのようなセクションが収集・編集して、アーカイブに保管し、数十年後(国際常識では30年から50年)の歴史研究のための開示に備えればよいのです。 

次に、でてきた日報に「戦闘」、あるいは「銃撃戦」があったと騒いでいますが、野党とメディアはこれが政府の「非戦闘地域」という説明と矛盾していると批判しています。 

そりゃ、銃声が聞こえれば「戦闘があった」と隊員は正直に書きますよ。

脱線しますが、きっとこの日報事件で懲りた自衛隊は、今後日報に「戦闘」やそれに類する表現は使うなと内々に指示するでしょう。 

すると派遣された部隊は、「集団で争う物音がした」なんて、書くんでしょうな。

こんな低劣な言葉狩りをすれば、現場では必ず言葉でかわそうとする対抗策が出ますから、いっそう真相がわからなくなるのです。

馬鹿か。かえって真相がわからなくなるだろって。

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それはさておき、問題はその「戦闘」がどのような性質であったかです。 

自衛隊がイラクに派遣された根拠法は「イラク特別措置法」ですから、それを当たってみましょう。

イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施
3 対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする」

はい、ご覧のとおり、イラク特別措置法による「戦闘行為」の定義は、あくまでも「国際的武力紛争の一環として行われる」戦闘なのです。 

2018年4月17日の、小野寺防衛大臣の記者会見の文書をみると更に「戦闘行為」は具体的に定義されていることがわかります。
防衛大臣記者会見概要を掲載 - 防衛省

「国内治安問題にとどまるテロ行為、あるいは、散発的な発砲や襲撃などのように、組織性や計画性、継続性が明らかでなく、偶発的なものと認められ、それらが全体として国又は国に準ずる組織の意志に基づいて遂行されていると認められないようなものは、イラク特措法にいう「戦闘行為」に当たりません、というのが政府の今までの解釈であります。このような判断基準に照らし、自衛隊が活動した地域は、いわゆる「非戦闘地域」の要件を満たしていた」

つまり「戦闘行為」とは、日報に書かれた「戦闘」や「銃撃戦」一般ではなく、あくまでも「国、または国に準じる組織」が、継続的、かつ組織的に戦闘を行っている状態を指すのです。

その対象は国際人道法によって、捕虜の保護・交換などを行える「国、ないしは国に準じる組織」なのです。 

ですから、山賊まがいのゲリラやテロ集団が「銃撃戦」を行おうと、それは「戦闘行為」とは呼びません。

銃声が鳴ったから「ほら、戦闘が起きているぞ。政府はまたウソをついていた」ではないということです。 

野党・メディアは、政局にしたいあまりに「戦闘行為」を極度に矮小化して捉えているからおかしくなってしまったのです。 

私はなんどか書いてきていますが、日本が本気で国際平和維持活動に参加するなら、現在のPKOが日本がPKO5原則を作ったのどかな時代から大きく変わっていかざるをえなかった実態に対応して、新たなPKO方針を議論すべきだと思っています。

しかし、こんなイラク派遣の根拠法ひとつ読まないような野党・メディアにはその百歩手前で止まったままですから、望むべくもありませんが。

とまれ野党とメディアは、安全保障問題を政局のオモチャにするのは止めなさい。 

 

 

 

2018年4月25日 (水)

独裁者もつらいよ

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今日も二本立てです。山路氏の寄稿もぜひお読み下さい。

さて今の北朝鮮情勢は、夾雑物を取り除けば、そんなに分かりにくい図式ではありません。 

夾雑物とは、ひとつはムン・ジェインであり、もうひとつは日本の野党・メディアの野次です。 

この夾雑物諸君たちにかかると、日本は米国に力いっぱい尻尾を振るポチであり、米国に自国の安全も、拉致被害者の救出も懇願するといった惨めな存在ということになります。 

ですから「蚊帳の外」の日本は、韓国が北と共に進める融和の流れに乗り遅れるな、というわけです。 

ここから導き出される北対応としては、ムン政権とほとんど一緒になります。 

南北融和こそが平和の到来の証ですから、非核化も同じ文脈で考えます。 

要は、米国を圧力路線から引き離して、韓国と同じ融和路線に持ち込めれば万事オーケーということになります。 

すると、北は核を絶対に手放しませんから、米国が怒っているICBMだけを凍結し、中距離弾道ミサイルは「やがて」段階的に解決すりゃいいじゃないか、ということになります。

実はこれこそが、北の言い分そのものです。

北の「非核化」とは包括的非核化(全面非核化)ではなく、長距離ミサイルの凍結しか意味しません。 

え、これだと韓国にも核ミサイルが届くだろうって。大丈夫です。正恩は同じコリア民族を狙わないと約束してくれましたしね。 

となると、標的は我が日本だけということになりますから、三方両得じゃないですか。 

米国に向けられた長距離ミサイルはなくなって制裁解除してくれますから、もちろん北は万々歳。 

韓国も一安心。その上にムンの師匠だったノムヒョンから叩き込まれた南北統一にも繋がります。

米国だって、本土に届くミサイルがなくなって安心できますから、よかったねぇこれで万事うまくいく、というわけですね。

ま、唯一日本だけが貧乏.くじ引くんですがね(苦笑)。

北はこれで稼ぎ出した時間で、弾道ミサイルの誘導技術や、指令系統の整備、なによりも再突入や核の小型化も出来ちゃいます。 

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なになに、正恩が20日の党大会で「核弾頭を弾道ミサイルに搭載するという作業が完成していることを考えると、大陸間弾道弾の発射実験は必要なくなった」と言っているって。 

ご冗談を。完成していると言わなきゃ、国内をなだめられないから、そう言っているだけです。 

西側の軍事専門家で、北の核が完成していると言っている人は皆無に近いんじゃないですかね。 

もし、正直に正恩が、「完成していてないけど、米国に押されて、核実験と長距離ミサイル実験を中止し核実験場も閉鎖する」、なんて言ったら、独裁者のメンツ丸潰れですからね。

核実験を止める」ですって。止めるじゃなくて、当面は「やれない」の間違いです。

プンゲリは坑道が崩落してもう使えません。使えないもの閉鎖して、恩を着せるなと言いたいですね。

でも、日本のメディアだけは「北核実験中止」なんて嬉しげに北のプロパガンダに協力してくれますから、ありがたいことです。

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それはさておき、独裁者だって絶対権力を握りしめるためには、気に食わない奴らを粛清したり、好きでもない隣国のボスに「お兄様」と抱きついてみたり、人民諸君に「安心しろ。もう核ミサイルはできているんだ」と胸を張ったりと、けっこう気を使っているですよ。 

その上、トランプの特使のオットロシイことこの上なしと言われる怪人・ポンペオまでがお忍びでくるんですから、独裁者稼業も楽じゃない。

ちなみにこのポンペオ訪朝については、日本に事前通告があったそうです。

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ところで、一度、この独裁者君の立場に身を置いて考えると、世の中よく見えてきますよ。 

独裁者君は、もうこれ以上譲れないと思っているんです。

初代から半世紀以上も家訓よろしく、「核を持った強盛大国を建設するんだ」と国民を叱咤激励してきましたからね。 

一日3杯の飯を1杯にし、一家に3個の電球をひとつにして、コメ食えなきゃ家畜用トウモロコシ食えと、食うや食わずでここまできたのに、「いや、米国が怖いんで止めました」では示しがつきませんものね。 

ろくに飯も燃料も供給されていない軍が、クーデターを起こしちゃいますよ。 

下の写真は、北のウオッチを長年してきているアジア・プレスの記事のものですが、石丸次郎氏によれば、北の対中輸出は実にいまやたった10億円にまで減少しています。

中国輸出が9割ちかく占める北にとって、もう経済なんか崩壊しているも同然です。10億円の輸出で食える国なんて世の中にありません。

古川勝久氏は制裁は効いていないと主張していますが、それは限られた核開発部門だけのことです。

北は一点豪華主義よろしく、核ミサイルだけに金を注いでいるからで、その一方、国民経済の実態はこのていたらくです。

10http://www.asiapress.org/apn/author-list/ishimaru-jiro/post-58522/
往来もなく閑散とした朝中国境の連絡橋。2017年10月撮影石丸次郎

「北朝鮮の主要輸出品は石炭、繊維製品などの加工貿易、海産物、鉄鉱石などの鉱物資源で、2016年にはざっと3000億円を稼いでいたが、これらが全て止められた状態だ。経済制裁の影響が北朝鮮国内にどう現れているのか。
咸鏡北道の茂山(ムサン)郡。ここから中国に輸出される鉄鉱石は、かつて輸出額第二位の品目であり、2014年には2億2190万ドル、2016年には7441万ドルを中国に輸出した。(出所:Global Trade Atlas)。
北朝鮮の外貨稼ぎの優等生である。だが、昨年夏以後の制裁で輸出が完全に止まったままだ」(アジア・プレス2018年3月29日)

また中国からの輸入も、87%激減したと伝えられています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180424/k10011414981000.html

「中国の、ことし1月から先月までの北朝鮮からの輸入額は、去年の同じ時期に比べて87%減少しました。(略)
ロイター通信が中国税関当局の統計として伝えたところによりますと、ことし1月から先月までの中国と北朝鮮の貿易総額は4億8000万ドルで去年の同じ時期より60%減りました。このうち中国の北朝鮮からの輸入額は7000万ドルで87%減少しています。
これは、北朝鮮からの主要な輸入品の石炭や海産物などが国連安全保障理事会の制裁決議で禁輸となったためで、北朝鮮の外貨稼ぎに大きな影響が出ています」
(NHK4月24日)

石丸氏は、最低限に落ち込んだ北の民情をこう述べています。

「3月に入ってやっと前月分の配給が出たが、それも一人トウモロコシ6キロ(職場によって若干差があるとのこと)。労働者は出勤しない者の方が多い」
「約800人いる労働者には、それまでは一カ月に白米14キロと食用油20-50キロが支給されていた。
食用油は、中国側の合弁相手が、売って現金化せよと給与の代わりに支給していたものだ。2月からそれらが一切なくなった。それでも労働者は出勤を強要されていて、食べていくために家族の誰かが商売している状態だ」(同上)

つまり、北にとって経済制裁が効きまくっているということで、すぐにでも経済制裁を解除してもらわないと干上がるということを意味します。 

下の写真は石丸氏の北内部の協力者が撮影した末端の兵士の写真ですが、説明する必要もないでしょう。まるで骸骨です。

優先して食糧を与えられているという軍隊さえこの様子です。ましておや、一般ピープルは・・・。

人民の窮状は待ったなしです。

Photo_2http://www.asiapress.org/apn/author-list/ishimaru-...

よく北は独裁国家だから、「独裁者は国民がいくら死のうと気にもしない。だから経済制裁など無意味だ」、なんてことをしたり顔で言う「専門家」がいますが、そんなことはありません。 

初代から北は「肉のスープと瓦ぶきの家」を目指して励んできたはずで、初代、先代も記念日には肉と酒なんか配っていたもんでした。 

これは軍部の反乱がコワイからで、だから正恩の代になって、先代の「先軍政治」を改めて、党主導体制にしてしまいました。 

その時、100人以上の大量の将官クラスを、文字通り殺戮しまくったと伝えられています。 

それはさておき、こういう国内事情だと、「分かりました核開発は止めます」なんていえるはずがないじゃありませんか。 

こんな正直なことを言ったら最後、亡命を考えねばなりません。 

あの正恩が外国に行くのに陸路しか通らないのは、飛行機だとミサイルで打ち落とされるかもしれないからだっていうのが、もっぱらの噂です。 

というわけで今回もまた、金一族相伝の嘘八百で煙幕を張っているわけです。

お気の毒に、その手は先代が六カ国協議で使い過ぎたので、米国はお見通しです。

「金正恩発言の最大の疑問は北が核兵器そのものを放棄するかどうかだ。譲歩を引き出すために相手を混乱におとしめる北朝鮮の古くからの戦術の焼き直しに過ぎない」(NYタイムス4月20日)
「トランプ氏は過去の過ちを再び犯さないとしているが、これは北朝鮮が核プログラムの解体を大幅に進めない限り、米国は制裁解除など大幅な歩み寄りをしないことを意味している」(ウォールストリートジャーナル4月20日)

見事に引っかかったのは、わが国の凡庸なメディアだけ。

え、トランプも喜んでたって?

はい、あれはポーズ。更に恐ろしい事前交渉をして追い込む仕掛けにすぎません。あの人のツイッターをまともに受けちゃだめでしょう。

というわけで、ここまで正恩を追い詰めたのは、まさに制裁圧力だったのです。

それを担ってきたのは、西側経済大国1位、2位の日米だったことを忘れてはいけません。

ここで、「圧力一辺倒が破綻したぁ」「蚊帳の外だぁ」「拉致問題を米国に頼んでいるぞぉ」なんて言うことは、日米同盟に楔を打ち込みたい北の代弁をしているも同然なのです。

気をつけよう、北の甘い言葉に夜の道。

山路敬介氏寄稿 かくれた基地推進派~翁長知事は早期辞任の決断をしろ その4

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今回で山路さん寄稿の最終回です。 

                       ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

承前

翁長氏の中に眠る琉球士族血の怨念 

すでに知られるところですが、翁長家は琉球王朝に仕えた首里士族の末裔です。 

旧士族としての唐名(からな)を「顧」氏と言い、この姓名は重要でこれで「門中」も成立しています。 

篠原章氏がどこかで書いていましたが、翁長氏の先祖は琉球処分時には喜界島に赴任していたそうで、まさに琉球処分によって没落の憂き目にあった典型と言えましょう。 

知事が高裁で行った知事の意見陳述では、「歴史的にも現在においても、沖縄県民は自由・平等・人権・自己決定権をないがしろにされていた」という文脈の中に琉球処分を位置づけ、これをも歴史的な「「魂の飢餓感」の一因としました。 

私はこれには今でも「フザケるな!」と言いたい。 

知事ら旧士族の先祖にとっての「琉球処分」は知事の評価のとおりでしょうが、大多数の琉球国民にとっての琉球処分は「農奴からの開放」であって、国民の自由・平等・人権・自己決定権をないがしろにしたのは琉球王朝の手先となった知事の先祖たる琉球士族たちの所業のゆえです。 

かつてこのような馬鹿げた事を保守側の政治家が言った前例はなく、不必要な対立を避け、歴史の汚い部分を語る事を極力避ける知恵を皆が持っていたものでした。  

その傷口をわざわざ引っ掻いてみせるような様を知事は見せたのであって、それゆえ私としてはそこに知事の「情熱」の根源を見ざるを得なくなります。 

知事の言うような事は歴史家が自己の歴史観から言う事は自由ですが、知事としてのこの見解はまんま歴史修正主義的であり、到底許せるものではありません。 

どうもロマンチストというものは主観的にすぎて、ストーリー重視のうえに歴史を多角的に見る観点が不得手なようで、故意でないにしろその時の状況に従って都合よく解釈する方向に与しやすい性質があるのです。 

翁長氏の自滅は約束されていた 

ともあれ、そうした意識を根底に秘めた知事が目指したものは、「どうせ国がつくる」辺野古移設反対や阻止ではなく、政府と沖縄と間の関係性の再構築です。 

知事にとっての米軍基地の存在は、沖縄と日本を結ぶ「特別で妙なる紐帯」であり、基地があるからこそ、そこを利用して本土との交渉に役立て、その結果として物心ともに潤ってきた経験が過去に多々あったわけです。 

しかし、近年では運動員の高齢化や米軍の努力、日本を取り巻く安全保障環境の悪化があったりして県内の基地反対派勢力が激減してきていて、本土からの「基地反対」の声も低調です。 

知事の眼目は「本土と沖縄との力学的バランス」を温情的な旧経世会時代そのままに戻したい狙いであって、それでこそ県議時代に革新の太田知事を議会で追い詰め、辺野古移設計画に尽力した自分と内部矛盾なく一貫性を持った人生として完成されるのです。 

知事のこうした心情はシュミットの言う政治的ロマン主義の特徴にして根幹をなす「~~を取り戻す」のような「復古主義」そのままであり、ここにこそ知事の主観的な価値観と情熱の根源があると言って良いと思うのです。 

それを「以前から積み重ねたうえでの約束だから」とか、「普天間の危険性の除去」だとか木で鼻をかんだような正論を言われても、知事には到底受け入れらもしないのです。 

しかし、安倍政権が「頑な」なのではありません。知事の責任です。 

共産党をも内にはらんだ県政である以上、どのような政権であっても「話し合い」は成立の余地がなく、翁長氏は最初から自滅する事を約束されていたのですから。  

                                                                                                (了) 

                                                                                                                                                      文責 山路 敬介

2018年4月24日 (火)

山路敬介氏寄稿 かくれた基地推進派~翁長知事は早期辞任の決断をしろ その3

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山路氏寄稿の3回目となります。

                       ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

承前 

翁長氏をプロファイルする 

話がそれました。翁長知事に主題を戻します。 

ブログ主様は4月12日の記事で「翁長氏という人物は、善きにつけ悪しきにつけ、バイタリティある泥臭い野心家」で、「政治家は当選してバッチをつけてなんぼというのが、翁長氏の信条」、「絶対反対の交渉ハードルを高くすれば、本土政府は更に譲歩を重ねて補助金交渉も楽に進むという現実的思惑があった」と言っています。 

これはもう、そのとおりです。 

そして「右でもなけれは左でもないという意味」で、「無思想な人物」としています。 

翁長氏の父助静氏、長兄の助裕氏は何度となく選挙に落ちています。 

その時の反動意識として彼は「選挙通」、果ては「執念の選挙屋」になったのだし、保守政治家の息子としていじめにあった経験から「共産党とさえ組む」という無限融和の道を最後に選んだのも理解できます。 

また、金に汚く評判の悪かった長兄の助裕氏を反面教師として、自身は「クリーン」でもあります。 

しかし、助裕氏らには選挙に落ちた経験からこそ、「学んだ点や掴んだもの」もあるのです。 

翁長知事にはそれがなく、私には不良息子のように反面教師としてしか親兄弟を見ていない感じが強くしてしまうのです。 

私にとっての翁長知事は、「右とか左とか」との前提を除いても「無思想な人物」としか映らず、対して評判の悪かった助裕氏は著書の『私の政治論』のなかで、(若干、上から目線ではありますが)今日の状況にも通じる沖縄の問題を「大衆のあり方」の観点からも解き明かす試みをしています。 

両者の知的懸隔は明らかで、「深い思想」が長兄の助裕氏にはちゃんとありました。 

翁長知事はかつて市長会において、「辺野古はどうせ国がやるんだ。しかし、簡単には同意するな。反対する事が大事なんだから」と発言し、喜納昌吉氏には知事選前に「賛成して基地を作らせるよりも、反対しながら作らせるほうが何かとやりやすい」と言って驚かせています。 

中山石垣市長との覚書の中でも、はっきりと「県内移設を排除しない」と書いて署名押印もされているのです。 

つまり、最初から翁長知事には「辺野古移設阻止」など政治的道具にすぎず、その本質は選挙と権力維持のために県民・国民を謀り続けて来た外道政治家にすぎないのです。 

知事によってこれまで辺野古関連で無意味に投下された損失は、篠原章氏によれば既に100億円は超えると見られており、これは到底許されるべきではありません。 

こうした小悪党にスキなく喰らい付くもの左翼の本分で、ついににっちもさっちもいかない状態に追い込まれた姿を4/12の記事でブログ主様は次のように表現しています。  

「やがてこの場当たり的な政治選択は、翁長氏(自身)をがんじがらめにして、ミイラ取りがミイラになるようにして知事という「黄金の籠」の捕らわれ人となった」 

翁長知事の「命がけ」の意味とは 

さて、ここまで書いてきても、多くの納得がいかない人には、やはり納得が行かないものでしょう。 

それは知事が命懸けであるからで、まして膵臓腫瘍という病を押してまで成そうとしているその事自体に一定の共感を覚えるからです。 

なるほど、それはそれで「情緒的だ」と切って捨てるわけにも行きません。 人は誰かが命懸けで事を行おうとする場合には、そこに重大な意味を求めようとするものだからです。 

知事職も何もかも放り出して治療に専念し、「一日でも長く生きる」という選択肢があるにもかかわらず、それをしない信念に打たれもするでしょうし、これまでの私の説明と矛盾する点を「命懸け」という理由一点で嗅ぎ取るかもしれません。 

しかし、ドンキホーテが騎士道に則って風車に向かって決闘を挑んだ際に、相手が風車だったからと言ってドンキホーテが「命懸けでなかった」とは言えません。 

同時に、ドンキホーテが「命懸けであった」からと言って、風車が「退治すべき巨人」であったことにはならないのです。  

さらにこの説明がうまく出来るかどうか自信がありませんが、私が翁長氏の中で一番嫌悪する点にも関連するので最後に試みます。 

■思想なき心情の人、翁長氏 

すでに言ったように翁長知事には思想はありません。  

それはそれでいいのですが、困った事に知事は非常なロマンチスト(ロマン主義者)であって、その事が翁長氏の信念の実行に重要なポイントとなって現れていると思うのです。 

ロマン主義は思想や理論ではなく、つまるところ「心情」です。  

翁長氏は、カール・シュミットが言う政治的ロマン主義者の定義にそのまま当てはまります。 

シュミットは、政治的ロマン主義は概略として、「保守から出でる」ものであって、「美学的・観念的言葉で語る」、「合理主義に反する」こととしています。 

そして最大の特徴は「主観的な生の充実だけを求める情熱であり、その条件さえ満たせばどのような政治的イデオロギーとも結びつくことが出来る道徳的無節操である」点としています。 

そうしたロマン主義者特有の政治の困難について、シュミットは次のように指摘しています。 

「(ロマン主義は)至上化した生の高揚のために政治を利用する「機会偶因主義」」であり、「その本質は、一切の原因との対応を欠いた浮動性にある」、「いかなる思想とも合体しうる政治的受動性を持つ」のです。 

また、「無意識のうちに、最も身近で最も強力な勢力に服従し、その優位性はきわめて皮肉な逆転を蒙り」、結局のところ「ロマン的なるもののすべては、他の様々な非ロマン的なエネルギーに仕え、他者の力、他者の決断に屈従的にかしづく事になる」としています。 

まるで、シュミットが生きて、翁長氏をとりまく現状を描写したかの如くです。 

ポイントは「主観的な生の充実だけを求める情熱」という点です。  

つまり、「情熱」が発火点であって、翁長氏の命懸けのそれが何処からどういうふうにもたらされたのか、が次の問題です。 

                                                                                            (続く)

                                                                                                  次回終了

 

沖縄政局の流動化は止められない

014

今日は二本立てです。山路氏の3回目も是非お読み下さい。

さて私事ですが、先週から広島に母の見舞いに行って、昨夜帰りました。骨の髄まで疲れ果てました。歳ですなぁ(苦笑)。

その間に、沖縄市市長選で現職の保守系候補が再選されました。
左翼陣営は沖縄第2の都市でも敗れたわけで、連敗記録を塗り替えてしまいました。
もう「オール沖縄」の衰退は誰の眼にも明らかで、翁長氏の病状とは関係なく、その終焉を迎えたと思われます。

「沖縄県沖縄市長選が22日、投開票された。与党などが支援した現職の桑江(くわえ)朝千夫(さちお)氏(62)(無=自民、公明、維新推薦)が、翁長(おなが)雄志(たけし)知事らが支えた新人の前市議・諸見里(もろみさと)宏美(ひろみ)氏(56)(無=希望、民進、共産、自由、社民推薦)を破り、再選を果たした。
 県内の市長選は、2月の名護市長選、3月の石垣市長選に続いて与党側の3連勝となった。今秋にも予定される知事選に向け、与党側は弾みをつけた形だ」
(読売4月22日)

翁長氏が手術をしました。手術には本土からの医師があたったとの情報も流れています。この情報が真実なら、良性の腫瘍ではない可能性もあります。

今の時点ではなんともいえませんが、良性であることをお祈りします。

検査結果は2週間先とのことですが、結果が良性か悪性であるかにかかわらず、沖縄政局は激しく流動化を開始し始めました。

それはこの時期がよりによって知事候補を擁立する時期に当たっていたからで、その中心人物の2期目が著しく不透明になったからです。

知事の検査結果にかかわらず、次の焦点は7月といわれている辺野古の埋め立て工事開始となります。

「オール沖縄」としては、なんとしてでもこの「撤回」をするまで翁長氏に知事職にとどまらせねばなりません。

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画で、護岸工事が始まって25日で1年になる。国は海域を埋め立てるため、7月にも土砂の投入を始める見通しになった。移設に反対する翁長雄志(おながたけし)知事が埋め立て承認の「撤回」にいつ踏み切るかが、焦点になっている」
(朝日4月23日)

なんとも非情なことですが、政治の論理で事態は進行しつつあります。

ところで、正恩のいわゆる「核実験・ICBM実験中止」ですが、私が土曜の追記で書いたとおりに、メディアは1面をデカデカと使ってまるで北が譲歩したかのような報道をしています。

あまりにも予想どおりなので、失笑してしまいました。

もちろんそのような事実は一切ありません。北は1センチの譲歩もしていません。

本気で思っているならそもそも北を語る資格がありませんし、分かって言っているなら平壌の出先機関と呼ばれても仕方がないでしょう。

首相の日米首脳会談外交を感情的に否定し「蚊帳の外」を言う人たちに、そのようなことを言う人が多いのは何かの偶然でしょうか。

正恩にとってプンゲリ核実験場は既に使用不能ですから痛くもかゆくもありませんし、ICBM実験などしたら米朝会談自体が吹っ飛び、あとは戦争しか残っていないことくらい分かりきっています。

トランプは、正恩を米朝会談に引きずり出して叩きのめすためにツイッターで喜んだふりをして誘っているだけで、何の意味もない外交的ジェスチャーです。

これについては、明日あたりに元気が回復したら書きます。

2018年4月23日 (月)

山路敬介氏寄稿 かくれた基地推進派~翁長知事は早期辞任の決断をしろ その2

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山路氏寄稿の2回目です。

 

                           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

承前 

革新陣営は翁長氏を骨までしゃぶりつくそうとしている 

むごい事に病身の知事の体にムチ打たせ、最悪でも任期を努め上げさせるところまでは革新側も知事・保守側と最大公約数的に一致します。 

しかし、革新側(共産・社大・社民・オール沖縄会議)のその目的は「県民投票」をやりたい知事側とは違っていて、7月末にも予定されている辺野古への土砂搬入の前に無理にでも知事に捻じ込んで「撤回」をさせる腹です。 

知事の病気で、そのチャンスは「むしろ近くなった」と捉えているようでもあります。 

一方の自民党としては知事選候補者の決定を前倒しして行いたい意向であり、様々な紆余曲折を経ながら9月の統一地方選と同時に知事選を当てて来るだろう、との観測があります。 

自陣にタマはあるのですが、戦う「相手が誰なのか」マトを絞れない中で、なるべく先送りしたほうが良いとの意見もあるようです。 

その上で、「県民投票をやりたい知事」と書きましたが、革新系の大きな部分は知事を全然信用していなく、「知事は県民投票を実行しないだろう(あるいは、それを辺野古阻止には結びつかないようにやるだろう)」、「小事の許可権限を元にした訴訟の乱発は、知事の目くらまし」と、正確に知事の本心を見抜いています。 

革新陣営は辺野古移転阻止が現実に可能だとは考えていない 

はっきり言って革新系は知事を利用して骨までしゃぶりつくそうとしているのであって、知事は知事で「県民主体の住民投票を」という(県民投票派にあっても、金秀だけが同意)、上げたハードルを今だに下げていず、意図的に住民投票に踏み出せないようにしているかのように見えます。 

ここにも対決の構図がはっきりとあるし、知事に騙されるつもりもリーダーシップを握らせるつもりもない革新系(特に「オール沖縄会議」と共産党)と保守系の対立が結果的には知事への求心力を削いでいるのが現状です。 

しかしながら(こういう事をいうと、一生懸命に純真な気持ちから辺野古反対の運動に汗を流している皆さんには申し訳ないですが)、その革新系にしてからが「会議」以外の頭の方はよもや「辺野古を阻止出来る」とはゆめ考えていません。 

本当の目的は、反対運動を通じて自らの政治的立場を拡大させる目的だったり、自派の(広義の)利権の拡大のために行政の深部にくい込む事を企図した「反対運動」であるにすぎません。 

ムーブメントを起こして「反原発」や「反安倍」に動員運動を繋げる事、「運動支援」から生じる選挙活動的な副次的効果が目的なのであって、辺野古移設を阻止出来るかどうかはもはや主眼ではなさそうです。 

「デモ」や「反対運動」などに対する一般人が感じる嫌悪感は本土並にあると思いますが、それでも沖縄というのは特殊な環境下にあります。 

運動家上がりのデマゴ-グが大学の学長にまで上りつめたり出来るようなラインが確立されてあり(この人は、つい先日死にましたが)、新報のへっぽこ記者でも左派色が強く詭弁が得意であれば容易に大学教授にもなれるのです。 

皇太子殿下に火炎瓶を投げつけたりする輩でも、名護市議に選出される馬鹿げた心情性もあり、革新思想に透徹しておらずとも、損得勘定と口がだけが達者な人間ほどお手軽に左にハマる傾向と、そのほうがむしろ出世の近道であるような構造もあるのです。 

そうした意味では全く無駄に見える「基地反対運動」の類も、その手の人たちが目指す到達点によっては応分の価値があると言っても良いかと思います。 

                                                                                               (続く)

 

2018年4月22日 (日)

日曜写真館 山形氏寄稿 桜前線ただいま通過中

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今回の日曜写真館は、初めての試みで、山形県在住のHN山形氏からの写真を掲載いたしました。

なんと写真メだそうで、発色はよくないですが、私の一眼レフと変わらんじゃん(号泣)。


2018年4月21日 (土)

成果が上がった日米首脳会談

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本日は二本立てです。山路氏論考はもう一本のほうです。ぜひお読み下さい。

日米首脳会談が開かれました。ひとことでいえば、これ以上望みようがないほどの成果があったと評すべきでしょう。 

訪米の目的は3つありました。 

一つめは、これが最大の目的ですが、米国が北の長距離核ミサイル(ICBM)だけではなく、中距離核ミサイルの非核化を強く主張することを約束させること。 

二つめは、米国に非核化を北の主張のように「段階的」に進めることを拒否させること。 

三つ目は、米国に対して拉致問題を北に強く解決を要求させること。 

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まず、ひとつめに関しては満額回答といってよいでしょう。 

なんどか書いてきていますが、日本にとって最悪の「解決」は、米国一国だけの利害であるICBM撤去にこだわり、同盟国を照準する中距離核ミサイルをないがしろにすることです。 

これを米国にされた場合、日米同盟は解体も含む危険コースに入ります。 

この懸念を首相は率直に伝えたようです。 

それに対してのトランプの回答は、「大丈夫だ。米国の懸念はICBMだが、それより深刻な問題は君らにある。同盟国である日本の利益も含めて北と対話する」でした。 

二つ目は、トランプはここで北が言っている「段階的で同時並行的な朝鮮半島の非核化」、すなわち長距離はフリーズしても、中距離は温存するという手管を拒否して、包括的非核化しかありえないと約束しました。 

この言質をとったことは、日本にとって大きな外交成果です。 

北が今、画策していることは「時間」です。核武装体系を完成させるために、小型化を確認するためのあと1回の核実験と、再突入と誘導技術獲得のための複数回の弾道ミサイル実験をする「時間」が必要です。 

いったんいかに小規模であろうと核武装という「絶対武器」を完成させさえすれば、「核保有国」としてそれを背景にした新たな交渉ステージが開けると北は考えています。 

そのために北は「段階的・同時並行的非核化」などという寝言を言っているわけで、この「同時並行的」とは北を脅かす米国の核戦力、ないしは在韓米軍そのものの撤退を意味すると考えられています。 

とうぜんこのような要求を米国は呑めるはずがありませんから、押し戻します。 

すると、「段階的・同時並行的非核化」をめぐって、かつての六カ国協議もどきの時間の空費でしかない牛のよだれ交渉が始まることになります。

正恩にすれば 、任期の2021年まであと2、3年頑張れば、トランプが辞めてまたオバマのような大統領になると踏んでいます。

一方、正恩は終身独裁者ですから、その時点で勝ったようなものだと北は認識することでしょう。

これに対して、日米韓は2020年までに全面非核化を達成するという「ケツ切り」の合意がなされようとしています。 

これは達成目標ですから、逆算すれば来年いっぱいでIAEAの査察プロセスまでいかねばなりません。

2019年度中のIAEAの査察受け入れ→核物質・核製造装置の搬出・撤去→2020年度北の非核化完了といったロードマップが、そう遠くない時期に公表されるだろうとみられます。 

さて今の時点でトランプは、正恩に強い揺さぶりをかけている状態です。 

北の目の前にぶら下げた餌は、米朝首脳会談です。米朝会談を北外交の勝利といわんばかりの識者もいたようですが、真逆です。

正恩は感情的には米国以上に憎んでいるチャイナの懐に飛び込まざるを得ないほど窮地に追い込まれたのです。

今や正恩は、自らが言い出した直接首脳会談を死ぬほど怯えています。

と、同時にアンビバレンツにも、彼ほど、米朝会談を喉から手が出るほど欲している人物は世界にいないはずです。 

なぜなら、米朝会談が今の時点で米国側から蹴られた場合、後は戦争という直接対決の場しかシナリオが残されていないからです。 

それがどのようなことを意味するのか、トランプはシリアの化学兵器工場攻撃でほんの一端を披露したわけです。 

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おそらく北の核施設・発射基地攻撃においては、この数十倍のミサイル攻撃と空爆が実施されるはずです。

それに北は耐えられるか、正恩よ、そうトランプは問うています。 

そして首脳会談の時に、ポンペオが訪朝し正恩と直接面談をしたことをトランプは首相に明かしました。

「ポンペオ中央情報局(CIA)長官が3月末から4月1日のイースター(復活祭)休暇にかけて極秘に訪朝し、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と協議していた」
ワシントン・ポスト CIA Director Pompeo met with North Korean leader Kim Jong Un over Easter weekend

後にトランプはツイッターで公表していますが、国内向けより先に、いち早く同盟国の首脳にこの極秘情報を教えたというわけです。 

ポンペオはいうまでもなく、現職はCIA長官ですが、近日中に国務長官に任命されることになっています。

ポンペオが、いままでのような第3国を使ったバックチャンネルではなく、直接に訪朝したのは、今までのような国務省主導の外交方法ではラチがあかず、結局北のペースに巻き込まれることが分かったからです。

内容は公表されるとは思えませんが、ポンペオはCIAのボスとして十分な情報を握った上で、核心的な議論をしたはずです。

ポンペオは、「事前交渉の結果次第では、会談を流す選択肢もありえる」ということを、直接に正恩の耳に入れたことでしょう。

さて、三つめの拉致問題については、必ず議題に乗せると明言しました。おそらくこれもポンペオの口からも正恩に伝えられたはずです。

初めて拉致問題が、日本の国内問題からパワーゲームの議題に乗った瞬間です。

つまり、北にとって非核化と拉致は別次元のテーマではなく、一体となってしまったわけです。

なんらかの妥協カードとして、北が拉致被害者の帰還をテーブルに乗せる可能性が高まりました。

この時期をはずせば、もはや拉致被害者は奪還できないでしょう。そのくらい煮詰まった状況です。

このような画期的と言っていいような外交的成果を上げたにもかかわらず、野党・メディア連合はモリカケ、ニッポウ、セクハラ、アベやめろーの一色で、野党などはゴルフなんかするなぁ、とあさってのことを言う始末です。

まぁ下のようなパーフォーマンスが国会議員の仕事だと信じている人たちに、なにを言っても無駄でしょうけど。

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ねぇ野党さん、トランプと首相がゴルフで頭を突き合わせて長時間議論していたのは、点数の計算じゃないですよ(笑)。

野党とメディア、どこまて落ちれば気が済むのでしょうか。

ちなみに、TPPについてはトランプは内心はしまったと思っていても、口に出せません。中間選挙までは突っ張ることでしょう。

中間選挙で、TPPを熱望する中西部の農民の声を聞いて気がつくまで、しばらく見守るしかありません。

産経のように政熱経冷なんて悲観することはありません。

■追記

脱稿後に時事が以下の配信をしていますので、アップしておきます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180421-00000024-jij-kr

「ソウル時事】北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会が20日、開かれ、21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射を中止し、北部の核実験場を廃棄することを決定した。
 また、朝鮮半島の平和と安定に向け、周辺国や国際社会と緊密に連携、対話していく方針を打ち出した。朝鮮中央通信が21日、伝えた。
 金正恩党委員長は、核開発と経済建設を同時に進める「並進」路線について、「国家核兵力の建設が完璧に達成され、貫徹された」と宣言。「今や、いかなる核実験も中・長距離、大陸間弾道ミサイルの試射も必要なくなった」と強調し、社会主義経済建設に総力を集中する新たな戦略路線を表明した。
 南北、米朝首脳会談を控え、核・ミサイルの開発を進める路線を転換する姿勢を明確にした形だ。」

北朝鮮が核実験とミサイル実験をやめるとのことですが、完全停止なのか、一時凍結なのか不明です。

前者の可能性はかぎりなくないか、あるとしたら、米朝会談の準備に特使で渡ったポンペオの恫喝が効いたということです。

しかし、共にありえないと思います。私には北お得意のマヌーバー(欺瞞行為)に感じられます。

現実には核実験場として使ってきた豊渓里(プンゲリ)では、2017年9月頃に大規模落盤事故が起きており、坑道が埋まっていると思われています。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-5d96.html

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現況は不明ですが、なんらの方法で再度核実験をするには新たな坑道を掘る必要があると思われます。「廃棄」と言っていますか、これはほんとうでしょう。

ただし、理由は使用不能になったからにすぎませんが。

ミサイル実験は、今やったら最後米朝会談は完全におじゃんですから、やりたくともできないはずで、それをして「中止」と言っているだけのような気がします。

今後、北は米朝会談までこのような一見すると融和の姿勢を見せるような欺瞞を繰り返すはずです。

それを日本のメディアは大喜びで「平和の到来」と騒ぐでしょうが、冷静に見て行くべきです。 

 

 

山路敬介氏寄稿 かくれた基地推進派~翁長知事は早期辞任の決断をしろ その1

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山路敬介氏から寄稿いただきました。 

編者の不手際で掲載が遅れましたが、この論考は、翁長氏のすい臓腫瘍が分かった4月15日直後に寄せられたものです。 

状況的にややズレたものとなってしまったことを、山路氏に深くお詫びいたします。

寄稿の沖縄テーマが続く異例のものとなりましたが、このような優れた沖縄の論考を取り上げるのも、私のブログの仕事だと考えています。

なお、小見出しは編者によるものです。

 

                    ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

            ■かくれた基地推進派~翁長知事は早期辞任の決断をしろ
                                                                                   山路敬介
 

翁長氏は知事在職のまま入院加療するつもりか?

沖縄二紙の報道では「腫瘍が見られ」、その腫瘍の摘出手術をしながら「悪性か良性かの判断をする」としています。 

また、「これまで自覚症状はなく」、「検査によって発見された」としています。 

このような報道内容をそのまま信じる県政界関係者はおらず、逆に「相当に深刻な状態」であるとの観測が大勢です。 

私はこの「相当に深刻な状態にある」との情報は信ぴょう性が高いものと見ますが、客観的に誰が見ても短期間でのあの異常な痩せ方、食事量の著しい減少などの証言もあり「自覚症状がなかった」との言はありえない強弁であって、政治的な意図を持った発言である事はあきらかだと考えるものです。 

この点、ブログ主様の4月13日の記事中、「いきなり健康診断で癌が見つかるという公表には疑問」があり、「おそらく1年前くらい前からは、時限爆弾のように「健康不安」はくすぶっていたはず」との推定には合理性があります)  

そのような中、知事会見の模様と二紙の記事を再三確認するにつけ、知事は「悪性」であっても少なくも任期中は知事職にとどまる意思が濃厚に感じられ、県民として大きな憤慨を禁じ得ません。 

4月12日のコメント欄では、「在職したまま入院治療しても、それはそれで構わないと思う」との意見がありましたが、胃癌などのように摘出すれば完治する方向がはっきり見えるケースとは事情が違います。 

その意味は私がコメント欄で申しましたように、「県民の負託に十分応えられない体調」であることや、「(税金から)職員に不必要な負担をかける事」等々の表層的問題だけではありません。 

肝心な事は県政一般の政策実現性の根幹にかかわる求心力の問題であり、県民から負託された知事権限を行政に対し十二分に反映させる事が出来づらくなる事への懸念があるからです。議会対応の問題もあります。 

わかりやく例えれば、ふつう現職知事が内心で再選出馬をしない決心をしている場合にも、その正式発表は政治状況が許す限りギリギリまで遅らせるものです。 

重要な課題が残存する場合はなおさらです。 

これは政治的レームダック化を回避すためで、ギリギリまで議会に対しても統括する行政機関に対しても、求心力を保つ事が継続的に政策を実行する立場にとって必須と考えられているからです。  

また極端で特殊な例ではありますが、一期限定制度を持つ韓国大統領の十八番のように決まっての後半の凋落ぶりを見ていただければ、言わんとするイメージの程はご理解頂けるものと思います。 

言いたい事は、「死に体政権」が生じさせる、その期間中の政治的混乱を防ぐのも知事の責務だし、長期間放置すればその結果として我々県民に損失をもたらすのが明らかなのであって、そうした状況は極力短く潰して行かなくてはならないという事です。 

この意味で翁長知事の今の姿勢は、この期に及んでも「二期目不出馬」を明言しなく、無理にでも「完治に向かっている状態」であり、「治療しながら知事職を全う」出来る、という「絵」をとりあえず県民に見せたいと理解できるのです。 

知事の場合には逆に病気を奇貨として、あえてモラトリアム期間を生じさせるが如き政治的手法、いわゆる「生臭さ」が常に付きまとうているのが現状です。 

翁長知事の思惑は県民無視だ

知事がこの「絵」を死守しようとする本当の理由は他にもあって、ブログ主様が記事で言うように「後継候補者問題」に他なりません。 

知事はいまだに是非とも意に沿う保守系の後継者を擁立したいと考え、水面下ではその動きを画策しているとの観測がもっぱらです。 

しかし、その「絵」はもはや「取るものを取った」感のある金秀、かりゆし両者の「オール沖縄会議」からの離脱で崩れ去ったと見ます。 

この両者は「オール沖縄会議」の外側から知事を支える事を明言していますが、支持母体が保革一本化された状況を保てないならば知事選は戦いにもなりませんし、それだとそもそも「オール沖縄」になりません。 

これからは保革の「ブリッジ共闘だ」などと言う声も聞かれますが、それはただの「言葉の遊び」にすぎません。  

そして、自からの政治的状況打開のために最も根治困難とされている膵臓癌を背負ったまま、この先5ヶ月間も知事職に連綿としてしがみつくとすれば、それは「県民無視」の最たるものです。 

県マスコミと翁長氏は、革新系の思惑も絡んで県民心情に訴えるような方向性が出来あがりつつあると見ますが、またぞろそうした県民へ感情操作的なやり方が行われるとするならば、それは私が個人的に最も嫌うところであり、吐き気がするほど嫌で嫌でたまらない事です。 

■「オール沖縄会議」の思惑

知事の「保守からの候補の擁立」の思惑は、今のところ「オール沖縄」内の革新系勢力、わけても「オール沖縄会議」の企図するところとはもちろん一致していません。 

むしろ革新勢力はそれを牽制した動きをしており、これからも一致する事はないでしょう。 

「オール沖縄」内においては革新勢力が圧倒的に発言権が強いものの、だからと言って革新系候補では知事選を戦えないのは革新勢力自身の大勢も理解しているところです。 

だから、今は「翁長二期目支持!」と言うしかないのであって、上述の「革新勢力の企図するところ」の内容は表向き翁長知事の続投に他ならず、知事選の司令塔として労組などの各組織を束ねる「調整会議」の方向性と一致して次のように述べています。 

「知事が自から元気である事を示した。予定通り走り出せる。ポスト翁長を議論する状況には至っていない」(与党幹部 4/11琉球新報2面)、「政治的にはやる気だ。知事は二期目にむけて出馬するという自分の見立ては変わっていない」(与党県議 4/14琉球新報2面) 

なんともナンセンスな発言ですが、もちろん本心ではありません。 

                                                                                               (続く)

※2回目の掲載は、一日おいてあさっての月曜日となります。

 

2018年4月20日 (金)

宜野湾くれない丸様寄稿 普天間高校西普天間返還地への移設断念 その2

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今回で終了となります。ありがとうございました。

宜野湾くれない丸さんの普天間2小問題については、こちらからぜひご覧下さい。

※「宜野湾くれない丸氏寄稿   なぜ普天間2小は1ミリも動かなかったのか その1~3」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/post-9e31-1.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/21-2-7d30.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/post-8595.html

                     ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

承前 

■そして「断念」へ 

準備は整ったはすなのに、閣議決定から半年もたたない2017年11月末に「土地収得は1%に満たない」とのニュースが流れた。一体どういうことなのか?

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171127-00175578-okinawat-oki

上に挙げた記事では「売らない理由は?」の問に『軍用地等地主会又吉真一会長は、「先祖代々の土地、子や孫に譲りたい、投資目的・・・土地は大切な財産で、売らない理由はさまざま」と難しさを訴える』とある。 

何とかならないものなのか。正直な気持ちとしては歯がゆさを感じるのであった。 

そんな思いを抱いていたが、「1%にも満たない」から半年後のこの4月14日に冒頭に挙げた「移転断念」のニュースが流れた・・・・。

土地取得予算は約45億円、校舎整備予算に約40億円と県は試算し、国と調整を行ってきた。2022年までに工事を終え、2023年9月には移転が終了するという予定で進行していたということだ。
 

これらの計画は全て白紙に戻ったわけである。普天間高校在校生は、関係者は、どのような気持ちでこの現実を受けているのであろうか。 

この機会を逃したら、普天間高校の条件の良い近隣地への移転はほぼ不可能に等しい。 

6(普高の移転予定地だった人材育成ゾーン 右奥の白ビルは米軍病院。その他のビルも米軍関連)

■なぜ普二小は返還地へ移転させないのだろうか?

以前の投稿でも少し触れたが、この返還された跡地へなぜ普二小を移転させないのだろうか?という疑問がずっとある。
 

過去の普二小の移転問題に関しては紆余曲折あったが、学校から約500メートルの地点に広がる約51ha(東京ドーム約11個)の土地が2015年3月31日には日本へ返還され、整地作業も外から見る分では、順調に進行しているように見受けられる。 

80年代に移転話が出た頃に米軍から提供の申し出があった「その同じ場所」が返還されたのにも関わらず・・・・なぜ? 

これも以前に宜野湾市役所へ問い合わせを行ったが、「検討はしたが、無くなった」旨の返答があった。 

さらに「なぜ無くなったのか?」という問い合わせも行ったが、返答は全くない。

ただ、普天間高校の移転計画経緯を参考にすると、学校関係者らからの「要望」があって行政は動くという事が分かる。
 

過去の普二小も騒音被害が増し、近隣に米軍ヘリが墜落事故を起こしたりする中で、79年、80年ごろより「この頃より移転が話題に上がる」とPTA新聞に掲載されていた。 

PTAや学校関係者らが市へ「移転要望」を行っていたのである。普天間高校の場合は同窓会からの「要望」を受けて県が動き始めたのである。

真意のほどは分かりかねるが、普二小関係者らからは、返還地への「移転要望」はあったのか、そうではないのか?
 

先にも書いたが以前市へ問い合わせした際には「普二小の返還地への移転は、検討はしたが、なしになった」ということであったので、学校関係者らはもしかしたら市へ「要望を行った」かもしれない。 

であるならばなぜ「無し」になったのか? 

疑問は尽きないが、約51haもの近隣の土地が返還されたのであるから、子どもたちの安全安心、ましてや普天間飛行場の閉鎖はともかく、辺野古への移設の目途もたっていないこの現状の中で、学校関係者らはどのように考えるのか?という事である。

話は少しそれるが、先月3月3日の琉球新報1面トップに『夜間中学補助打ち切り県教育庁「成果出た」』とあった。
 

同紙27面にも詳細が掲載されていたが、それによると「戦中・戦後期の混乱期で義務教育を受けられなかった人らを対象に、那覇市のNPO団体が運営する夜間中学へ県は2,011年から支援を行ってきた。 

17年度の支援額は395万円。この団体へは来年度(H.30)以降も5名の人が在学している(概要)」。支援打ち切りについて「文科省が全国に公立夜間中学を設置する計画がある。設置されれば、対象者も広がる。後退ではない」と。 

一方で、県は昨年9月に「しまくとぅば普及センターを県文化振興課内に開所」し、普及促進に取り組んでいる団体等を対象に「上限100万円の普及促進事業補助金制度を設けている」。

沖縄戦により義務教育も満足に受けられなかった方々が通う夜間中学への「年間400万円弱」の支援を打ち切り、翻ってかつての「本土化教育の裏返し」のような取り組みには力を入れる。
 

学校の校庭が狭く体育祭も満足に開催出来ないような普天間高校の移転計画は「予算も土地の目安」もついたが、「用地取得が出来ずに白紙撤回」・・・。

この先、辺野古の工事が順調に進んで完成しても、飛行場機能の移転などを含めると約10年の時間が必要であろう。
 

その間、ずっと「子供たちを危険な場所へ通わせ続ける」のであろうか・・・・。

SACO最終報告が出てから22年。西普天間住宅跡地は返還されて3年。整地は順調に進んで既に地権者へ返還された。
 

高校移転予定地の地権者は用地として土地を売ることを拒み、高校移転も「白紙」になった。何も動かぬ「普天間飛行場」と「普天間高校」そして「普天間第二小学校」である。 

テレビを観れば「しまくとぅば普及運動」のコマーシャルが流れている。

沖縄は、私たちは、一体「どこへ向かって」いるのであろうか?

これが「沖縄の現実」の一端である。
 

                                                                                     (了)

 

2018年4月19日 (木)

宜野湾くれない丸様寄稿 普天間高校 西普天間返還地への移転断念その1

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宜野湾くれない丸様より寄稿いただいております。ありがとうございました。 

政局にふりまわされることなく、このような熱のこもった論考を掲載できることをうれしく思います。

                           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

                 ■普天間高校 西普天間返還地への移転断念
                                                                 宜野湾くれない丸
 

先週の土曜日(4/14)、沖縄タイムスの1 面トップに、那覇市が憲法の定める政教分離に違反する判決の記事が掲載されていた(孔子廟訴訟)。 

「違憲か合憲か」を争う住民訴訟で原告の住民側が勝訴した画期的な判決であった。 

さらに同紙の 2面には、「西普天間への移転断念 県立普天間高校 県が方針 必要な用地確保できず」とあった。 

宜野湾市に住むものとして、最近まで子供が同校に通っていた父兄の立場からすると、「違憲判決」をうわまわる驚きと同時に「やはり・・・」という何とも言い難いやるせない気持ちに覆われた。  

2018_4_14_3(「西普天間への移転断念」沖タイ2018_4_14)

これまで私は、普天間第二小学校の移転にまつわる経緯を少しずつ調べてきたが、ここへきて再び「断念」という新聞記事に遭遇したわけである。 

「危険と同居仕方ない 第二小移転を断念」(沖タイ・朝・1992年9/19 )がひとつめの「断念」で、今回が二度目の「断念」である。 

普天間高校の「移転断念」について、新聞報道などを基本ソースとしてこの二度目の「断念」の経緯を探り、何故再びこのような結果になってしまうのかを、その背景を考えてみたい。 

■普天間高校の概要 

沖縄県立普天間高等学校は、1946年(昭21)にコザ高校野嵩(のだけ)分校として設立され、1948年(昭23)に野嵩高等学校として独立。 

1957年(昭 32)に普天間高等学校と改称。本土復帰の1972年(昭47)に沖縄県立普天間高等学校となり現在に至る。 

各学年10クラス、普通課程のみで全校生徒は男子 510名、女子691名、合計1,201名(H.27 )。 

校訓は「質実剛健」「進取創造」、校章にある二つのペンは「戦争で灰じんに帰した郷土を再建し、平和な道を歩むには、『一にもペン(教育)、二にもペン(学問)が大切だ』ということを表している(制定昭和 23年6月)。 

卒業生の殆どは上級学校へ進学している。佐喜眞淳宜野湾市長や喜納昌吉氏は卒業生である。 

■移転の経緯 

普天間高校は、敷地の狭さや施設の老朽化、学校正門が県道81号線、国道330 号線がまじわる三叉路沿いにある。 

この付近は日夜を通して交通量の多い危険な三叉路である。

正門両脇には民間の建物が連なっており、狭い土地へ学校が「押し込められた」ような息苦しさを感じる。

普天間飛行場が出来たために歪な都市計画をせざるを得なかった現実がここにある。

新聞報道や宜野湾市のホームページ(まち未来課)などを参考にして移転計画の経緯を追ってみたい。

5(「普高の正門。手前の道路は国道330号線」)

宜野湾市はSACO最終報告を受け、地権者と行政との協同によって西普天間住宅跡地(以下、跡地)の利用検討を進め、平成15 年度に「まちづくり計画」を策定した。

2013年(H.25 )には跡地の利用方向性を「住宅系のまちづくり」から「沖縄の発展をけん引する都市機能を持つまちづくり」へと転換した。

これを受けて同年12 月、普天間高校同窓会が県教育委員会へ同校の跡地への移転要請を行った。

その後、佐喜眞淳宜野湾市長らも県教委などに求めたが、同教 委は「国からの特別な財政措置がない限り難しい」 との回答であったと。

県としては既に、琉球大学医学部及び付属病院を中心とする「国際医療拠点ゾーン」と普天間高校の移転を想定した「人材育成拠点ゾーン」、地権者の土地利用を想定した「住宅ゾーン」を設定し、国へ対して支援の要請は行っていたが、宜野湾市への回答は「難しい」というものであった。

事態が急変したのは、2016年(H.28)11月28 の新聞紙上で「移転計画頓挫」の報道からである。

「県と市の連携不足」が頓挫の原因であった旨の内容であった。

私は報道を知り宜野湾市役所へ問い合わせメールを入れたが、ひとことの返答もなかった。

1(普校移転促進横断幕)

半年後の 2017年(H.29)5月、状況は好転した。

「県、普天間高の移転検討 国に費用負担要望」(沖タイ2017年5/11 )、『「知事検討を指示」自民党会合で表明』(琉球新報2017年5/11 )と出ていた。

これまでも要望はしていたはずであろうが、新聞発表されたことは何がしかの「見通し」が立ったのであろうか、と感じた。

この時点での新聞報道ではなされていなかったが、知事の発表直後に県と内閣府が調整して「土地購入費に一括交付金を充てる予定」になった様子である。

『同年( 17年)6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に、「普天間高校を活用した人材育成拠点の形成を図る」と明記。』(沖タイ2018年 4/14 )と書かれていた。

つまり政府は「資金は出し」「骨太の方針へも高校名を記載」したということは、高校の移転へ向けての「準備は整った」・・・・、はずであった。

                                                                                            (続く)

 

2018年4月18日 (水)

たまにはまったりと

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相模吾さん。初期からおつきあい頂いて感謝の言葉もありません。 

拙ブログが始まったのが2008年5月ですから、もう10年のおつきあいというわけですね。 

さて私、写真で褒められるのがいちばんうれしい(笑い)。 

切り取り方とおっしゃいましたが、「そこにいること」が一番なんだと思っています。 

どんな名写真でも、そこにその場に居合わせないとダメなわけです。 

あとは、最近の一眼カメラなら、おい、これオレが撮ったのかぁというものにしてくれます(←ネタばらし)。 

写真が好きになって変わったのは、歩いていて草木、生き物、花、風、雲、太陽、そしてなにより光線が気になり始めたことです。 

どんなに素晴らしい風景がある場所、場面に居合わせても光線がつまらないといい写真にはなりません。

言い換えれば、それは撮る「時間」です。 

ですから、私の場合、どうしても早朝や夕暮れに集中してしまいます。いい光が来ますからね。 

写真から離れますが、そうですね、農業テーマ、書かなくなったですね。いろいろな人から言われます。

ブログタイトルから「農」を外しなさい、なんて勧告されたりもしましたっけね。一度つけたタイトルは外せないもんで難しい。

もちろん農業はライフワークなのですが、ブログを書き始めた頃は農業団体の代表や県の有機農業フォーラムの代表などやっていたせいもあって、農政について現実的にしゃべれたんです。

しかしその後、身体を壊した時期もあって、今は離れてただの農業者に戻っています。

かねてから、テーマとしては国際関係論をやってみたかったのですが、TPPがいい機会になりました。 

頑固な反対派だった小生は、後にその交渉過程を知るにつけ、国際関係と農業とは表裏一体の関係にあるのだと思った次第です。 

たとえばそうですね、なぜ今トランプが、一丁目一番地の公約にしていたはずのTPP離脱を撤回しようとしているのでしょうか。

それはそもそもTPPが、太平洋に中国主導による経済圏を作らせないために構想されたからです。

中国流貿易ルールが、普遍的なアジア・太平洋の経済ルールになるということは、政治的にも中国が名実共にアジア・太平洋地域のヘゲモニック・ステート(覇権国)となるという意味なのです。

で、トランプは自分が中国と貿易戦争を開始しようとして、はたとそれに気がついたというわけです。(遅いよ)

韓国はいまになって入りたいと言っているようですが、「三不の誓い」を立ててしまった中国様がお許しにならないでしょう。

というように、国際社会では経済・貿易と政治・軍事は渾然一体となって存在しているのです。

当時の私は中野剛志氏に煽られていたせいか、「グローバリズムが攻めてくる」というような被害者的な狭い見方しかできていませんでした。 

危機感はあって当然なのですが、いかんせんわれながら視野が狭いのですよ。

それは流動する国際経済や情勢と切り離されたグローバリズム諸悪の根源論ですから、結局、TPP版「やられた史観」となってしまったわけです。

というわけで、中野氏や三橋氏に煽られてしまった反省から、私は極端なバイアスがかかった意見は参考ていどにする習性が身につきました。

彼らは保守を名乗っていますが、極端な主張は今やほとんど共産党と一緒となってしまいました。

平凡ですが、バランスのとれた中庸的思考が私には性に合います。

沖縄についても似たような部分があります。往々にして当時の置かれた国際情勢を初めから度外視して語る人がどれほど多いことか。

その人たちは、<日本対沖縄>といった固定した見方に縛られているわけです。独立国だったのに琉球処分されて皇民化教育で差別されて苦しみ抜いた末に沖縄戦だ、みたいな一面的な見方になりがちです。

NHKが好きそうでしょう。本土文化人の「沖縄好き」は、伝統的に大江健三郎以降ほとんど一貫して9割がそうですね。

私も住む前までは似たようなものでした。

私は当時の明治政府を全面肯定するつもりはさらさらありませんし、ずいぶん無茶したもんだと思いますが、列強の帝国主義時代にあった当時の東アジア情勢との関係で見ないと見逃すこともたくさんある気がします。

今も同じで、<基地容認vs基地反対>といったドメスティックな視点だけで見ているのが、常識となっています。

私は今、沸騰点寸前の朝鮮有事、あるいは空前の膨張を続ける中華帝国との関わりで、沖縄の基地問題を見ない限り、なにも見たことにはならないと思っています。

さらには、東アジア情勢も単独であるわけではなく、中東情勢とも同調しています。

大きく世界を見ていき、その中で日本や沖縄が置かれた位置を見る視点を持ちたいなと、常々思っている次第です。

さてさて毎日の世相、ささくれますよね。こんなマスヒステリーを起こしたような今の日本社会からは現実逃避したくなります。

世相なんか見ずに、捕物帳かミステリーでも読んでいたいって気分です。

実際、時事ブログらしきものを書きながら、新聞は必要最小限、テレビニュースなどはまったく見ませんし、一般番組も自然・動物系と大河と朝ドラくらいかな・・・。

週刊誌などは、表紙に触っただけで馬鹿が伝染すると思っています。

いや改めてみると、立派な偏屈ジジィじゃん、オレ(笑い)。

新聞・週刊誌・テレビまでモリカケ一色。全体主義の国かと思いますよ。メディアがこんな狂態を演じているのを、私は初めて見ました。

テレビだと「プライム9」くらい、ラジオならかつての「ザ・ボイス」くらいかなぁ。それで十分ってかんじ。

私はアナログ世代ですから、情報源は圧倒的に書物です。本が読めなかったら死にます。

私がランキングに入らないのは、時事ネタオンリーになっちゃうからです。

ランキングは多くの人に読んでもらうにはいいんでしょうが、政局ネタばかり。

も左も同じ事件を正反対の政治的立場で応酬し合っています。

巻き込まれたくないですから、ランキングには入りません。

来ていただいた方と濃厚な議論ができれば、そっちのほうが望ましいですね。

ま、たまに書くと法則的に必ず炎上して、「安倍信者」「文鮮明」「農家のジジィの手なぐさみ」などと言われます。

「農家のジジィの手なぐさみ」か、なるほどあたらずとも遠からずだ(爆笑)。

ところで、農や沖縄暮らしのひとこまエッセイがご所望ですか・・・。これも耳が痛い。好きなんですけどね。

評論ばかり書いていたせいで、このところ脳味噌が「評論脳」というか「分析脳」になってしまっていて、切り換えるのが難しいんですよ。 

エッセイは、まったく別な脳味噌のもっと直感的な部分、いわば音楽を聞く時のようなものを使いますからね。 

なんて言い訳しないで、また書いてみます。

今日はとりとめのないお話でした。

2018年4月17日 (火)

シリア攻撃後の世界の新しい対立構造とは

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今回のシリア攻撃は、極めて慎重に行われました。 

米国が神経を使ったことは、三つあります。 

一つめは、シリアの残虐非道な化学兵器使用に強い警告を与えること。
二つめは、それを国際社会共通のメッセージとすること。
三つめは、ロシアに警告は与えても、不必要な刺激を与えないこと。

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一つめは昨日説明しました。今回言葉で「レッドラインを超えた」と表現していることに留意下さい。 

極東にもう一国、とうに「レッドラインを超えた」国がありますが、それに対する強い警告でもあったということです。

中東情勢と東アジア情勢は、同時平行して連動しています。アッチとコッチと分けて考えないで下さい。 

二つめは、朝日などは国連決議を経ていない「無責任な武力行使」などと寝ぼけたことを言っていますが、なにをおっしゃる兎さん。

拒否権を持つ当事者のロシアが安保理常任理事国だったから、シリアにおける大虐殺を止められなかったのではありませんか。

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なにひとつ身動きができない学級委員会が、この国連なのです。
 

今回、米国主導という形をとりながらも、米国はメイやマクロンにも花を持たせ、西側自由主義諸国連合の意志という形を作ることに成功しました。 

そして昨日、EU=ヨーロッパ連合のトゥスク大統領が支持表明を出して、これでほぼ出揃いました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180414/k10011403971000.html 

この主要国の「警告」はアサドに対してだけではなく、アサド政権軍を形成している、ロシア軍、イラン革命防衛隊などに対してのものです。

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アサド政権軍はかなり前から、指揮中枢はロシアの軍事顧問によって支配され、大量の専門家やロシア人民間軍事会社らが、アサド軍の上位に位置するまでになっていました。 

イランもまた大量の革命防衛隊を派遣しています。
イスラム革命防衛隊 - Wikipedia

一方、あたかも英米仏のシリア攻撃に合わせたかのように、サウジが20カ国が参加する大規模な合同軍事演習をして見せたのは、イランを念頭においたものです。

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2017年6月に、サウジはカタールと断交しました。

その理由はイラン系過激派のハマスやエジプトのイスラム同胞団をカタールが支援していることです。 

カタールはイランと同盟関係にあると見なされたわけで、サウジ・UAE・エジプト・バーレーン・イエーメンが加わった、反イラン・反カタールのアラブ諸国連合が作られました。 

今回のシリア攻撃が、ロシア人やイラン革命防衛隊に及んで、直接英米仏軍と戦闘を交える事態になった場合、このサウジ主導の反イランアラブ諸国も巻き込んだ第5次中東戦争に発展する可能性があったともいえるわけです。

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ですから三つ目に、不必要にロシアを挑発しないということに神経を使っています。 

ホワイトハウスに共通の認識として、ロシアとの関係を今の緊張から戦闘に、そして限定戦争にまでエスカレートしないという合意がありました。

それについてブルームバーク(米国版)のTOLUSE OLORUNNIPA, JENNIFER JACOBS AND TONY CAPACCIOの記事があります。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-04-14/warship-ruse-and-new-stealth-missiles-how-they-attacked-syria

"The president asked Bolton and the military leaders to justify each potential target, and was particularly focused on limiting the risk of escalation by Russia. There was unanimity among Trump’s top national security staff about conducting strikes but debate about how hard to hit the Syrians, the person said."

「大統領は、ボルトンと指揮官たちに(シリアの攻撃)目標を上げることを要請したが、特に注意をはらったのはロシアとのエスカレーションのリスクを制限することだった。 最高国家安全保障担当者の間では、攻撃の実施について全員が一致したが、シリアをどれほど激しく攻撃するかについては議論が分かれたという」

トランプが軍事的には非常識にも「48時間以内の攻撃」をツイッターしたのは、シリアに施設からの人員退避を促すためだと見られています。

とくに、施設に張りついて警備しているはずのロシア人軍事顧問や民間警備会社を避難させる時間をあえて与えたのです。

このように見てくると、今回の攻撃の構図が浮かび上がってきます。

それは英米仏vsロシア、それを取り巻くサウジ主導の中東諸国連合という新しい「冷戦」の図式です。

2018年4月16日 (月)

英米仏軍のシリア化学兵器工場攻撃は「警告」だ

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4月14日、シリアのアサド政権に対して英米仏軍がミサイル攻撃をしました。攻撃は成功したと発表されています。 

それを報じるBBC News(4月14日)です。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12519

「大統領発表に続き、ジェイムズ・マティス国防長官とジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が国防総省で記者会見した。会見でダンフォード議長(海兵隊大将)は、3つの標的を爆撃したと説明した。
(略)
シリア国営テレビは、政府軍は10基以上のミサイルを迎撃したと伝えた。
 

マティス長官は記者団に、撃墜された報告はないと述べた。大統領は攻撃継続の用意があると表明したが、国防長官は攻撃の第一波は終了したと述べ、「今のところ、これは一度限りの攻撃で、非常に強力なメッセージを相手に伝えたと思っている」と述べた。
(略)
ダンフォード議長は、米国はロシアの人的被害を「軽減する」標的を意識的に選んだと述べた。一方で国防総省は、空爆対象をロシアに事前通知した事実はないと説明している。

テリーザ・メイ英首相は英軍が参加していることを確認し、「武力行使に代わる実用的な選択肢がなかった」と述べた。一方で首相は、英米仏連合による攻撃は、シリアの「体制変換」を目指したものではないと慎重な姿勢を示した」

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攻撃を受けたのは、シリアの毒ガス製造プラントです。

 ・ダマスカスの科学研究施設(生物化学兵器の製造に関わるとみられる)
・ホムス西部の化学兵器保管施設
・ホムス近くの化学兵器材料保管・主要司令拠点
 

下の写真は、シリア・アサド政権最大の後ろ楯となっているロシアのスプートニクからの映像です。破壊されたプラントが写っています。 

4782297https://jp.sputniknews.com/middle_east/201804154782414/

「国営シリア・アラブ通信(SANA)は「被害は物的被害のみ」と伝えた」(スプートニク4月14日) 

米軍の攻撃は4月14日午前3時55分に開始され、東地中海に展開している米海軍の3隻のイージス艦から、巡航ミサイルトマホークが約100発発射されたそうです。 

また、空爆には遠距離からの精密攻撃(スタンドオフ攻撃)が可能なB1爆撃機も投入されました。 

Lfp2saefアメリカ国防総省の報道向け説明図よりシリア武力制裁

英軍はキプロス島の基地から、トーネード戦闘機4機が参加し、空中発射型巡航ミサイル・ストームシャドーを発射しています。 

一方フランス軍はフリゲート艦4隻とミラージュ戦闘機、ラファール戦闘機を出撃させました。 

ドイツは攻撃自体には参加していませんが、素早く支持表明を出しています。 

このように国際社会が一致してシリアの化学兵器工場を攻撃したのは、直接にはアサド政権が4月7日に首都・ダマスカス近郊のドゥーマという町で、化学兵器を使用したからです。

米国高官は被害者の瞳孔の収縮などの特徴から、塩素系ガスだけではなく、サリンなどの神経系ガスも使われた述べています。 

ロシアは攻撃を受けたのは民需品だったといっていますが、破壊された工場の瓦礫を撤去している作業員が防護服を着用している姿も目撃されています。

Photo_2https://www.jiji.com/jc/d4?p=bbs116-jpp026732575&d...

日本のメディアは、いまだアサド政権が毒ガスを使っている、いないというレベルの発言を繰り返していますが、ロシアとアサド政権のプロパガンダを信じる者をのぞいて、国際社会でもはやそれを疑う者は皆無です。 

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長年シリア内乱をウォッチしてきた黒井文太郎氏は、このように述べています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuroibuntaro/20180415-00084007/

「米英仏の三か国は明確に「アサド政権が化学兵器を使った証拠がある」と断定しています。ただし、その証拠は公開していません。オモテに出せない機密情報があるのかどうかはわかりません。
報じられているかぎりでは、「被害者の血液と尿から神経ガスを含む化学兵器の痕跡が見つかった」(4月11日「ワシントン・ポスト」)などの情報があります。
また、被害の様子が撮影された画像、さらに多数の目撃証言があります。世界保健機関(WHO)は「500人程度に毒物による症状がある」としています」

またこの3カ国のシリア攻撃を、米国とロシアの陣取り合戦のように評する人がいますが、それは間違いです。

「海外の主要メディアの報道では、この「どちらが真犯人か?」はほとんど議論になっていません。
「当然、アサド政権によるもの」が前提で、議論はむしろ「攻撃は充分だったのか?」「この後はどうすべきか?」となっています」 
「公開情報・画像を詳細に分析した検証サイト「Bellingcat」の4月11日の記事「2018年4月
7日のドゥーマにおける公然の化学物質攻撃に関する公開情報調査」では、以下の情報が提示されています。
▽アサド政府軍の2機のMi8ヘリがダマスカス郊外のドゥマイル軍事空港からドゥーマ方面に向かったのを、化学兵器攻撃から約30分前に目撃されている。▽アサド政権のMi8ヘリは、これまでも塩素ガス投下に使用されてきた。
▽2機のMi8ヘリが化学兵器攻撃直前にドゥーマ上空に現れていた」(前掲)

既に4月4日には、トランプはシリアからの米軍撤退の準備を指示しており、その3日後に化学兵器は使用されていることから、 米国がシリア内戦にこれ以上の介入の意志がないと見込んでのアサドの暴走だと考えられます。

一方昨日、シリアの旧宗主国のフランス・マクロン大統領が、「アサド政権が化学兵器を使用した証拠を掴んでいる」とTVインタビューで発言しました。 

シリア内部に強力な情報網を持つフランス大統領の発言だけに、信頼性は高いと思われます。 

おそらく、これらの毒ガス使用の証拠は、英米仏独などの首脳には開示されているはずで、いつもはこのような米国の攻撃に慎重なメルケルが、直ちに支持声明を出したことでも、それはわかるでしょう。

ドイツが攻撃に不参加だったのは、ガラス細工のような連立与党の社民党(SPD)内部に慎重論があったためです。

伝統的に社民党には反米親露的体質がありますので、今回ロシアのプロパガンダを信じた議員も多かったと思われます。

このように考えてくると、この英米仏の攻撃は内戦において自国民に無差別化学兵器攻撃を仕掛けるという言語道断のアサド政権に対する「警告」だと捉えるべきでしょう。 

テリーザ・メイが言うように、「武力行使に代わる実用的な選択肢がなかった。シリアの体制変換を目指したものではない」という言葉を信じてよいかと思います。

当然のことですが、このような人道的目的以外にも外交的動機が存在します。

それはアサド政権の後ろ楯になっている、ロシアに対する強い警告です。

現在、英国は元スパイ襲撃事件で断交一歩手前の状況です。

フランスもまた、ロシアからのサイバー攻撃を日常的に受けている上に、国内の極右勢力の資金源のひとつとされ、EUからの脱退・分断工作がなされているとされています。

欧米諸国が一致してロシア外交官の追放に踏み切ったことは、記憶に新しいことです。

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このような緊張した欧米vsロシア関係を直接の戦争に拡大しないために、マティスは慎重に証拠固めと各国への説得に当たったといわれています。

仮に、米軍の攻撃によって、ロシアが大量に派遣しているロシア人民間軍事会社やアドバイザーなどに死傷者が出た場合、米露の限定戦争もありえただけに、慎重に慎重を期したと思われます。

現実に心配されていたロシア人の被害はなく、ロシアも新式防空ミサイル・システムS400や旧式のS300すらもシリアには供与しなかったようです。※ロシア軍が管理していていたが、今回は発射しなかった。

ですから巡航ミサイルを7割落としたというのは、ロシアの流しているデマ宣伝にすぎません。

7割どころか、英米仏の紅海・アラビア湾・地中海の三方向からの飽和攻撃に対して、シリア軍のロシア製の対空兵器は、かすることさえできなかったと言われています。

ロシアはシリアの毒ガス使用や無差別都市攻撃について、一貫して嘘八百を流してきていますので、ロシア発信のシリア情報には、ひとまず眉に唾をつけて読んで下さい。

それにしても、国際社会が米露戦争に緊張していたときにも、日本メディアだけがモリカケ祭り一色。新文書がここにもあそこにも、だからなんなの。

まったくたいしたものです。鏡の国にでも住んでいるようです。

シリア報道自体が乏しいので、明日も続けます。

 

 

2018年4月15日 (日)

日曜写真館 オールド・ファションド

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2018年4月14日 (土)

孔子廟裁判 那覇市側敗訴

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金城テルさんが那覇市を訴えていた、孔子廟訴訟での全面勝訴が確定しました。

那覇市が控訴する可能性はありますが、差し戻し審での判決が動く可能性は極めて低いといえます。 

「那覇市の公園に建てられた久米孔子廟を巡る差し戻し審の判決で那覇地裁は住民側の訴えを全面的に認めました。
この裁判は那覇市が久米崇聖会に孔子廟の設置を許可し市有地を無償で貸したのは政教分離の原則に違反し、使用料を免除するのは無効だとして住民が那覇市を相手に訴えているものです。
これに対して那覇市側は「一般の人が使えるため宗教的な施設ではない」などと主張していました。これまでの裁判では一審の那覇地裁が住民の訴えを却下したものの控訴審では一審判決を破棄し、差し戻す判決が言い渡されていました。
13日の判決で那覇地裁の剱持淳子裁判長は久米孔子廟について「宗教的性格を色濃く有する」としたうえで「市が特定の宗教を援助していると評価されてもやむをえない」ことから政教分離の原則に違反すると判断し、市が使用料を請求しないのは違法だと結論付けました。那覇市は「判決文を精査して控訴するか検討したい」としています」(琉球朝日放送4月13日 下写真も)
 

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本土の人にはなじみが薄いと思いますが、那覇市久米には孔子廟という宗教施設があります。

私有地に建てるならどうぞご勝手にですが、ここは市営公園の敷地内です。 

市有地に特定宗教の施設を作って、憲法の政教分離原則に抵触しないとかんがえるほうがおかしいでしょう。

靖国神社に玉串料を奉納したからといって、クリスチャンの一部から訴えられるような我が国で、公共施設内に特定宗教施設ができ、しかも無償賃貸契約されてしまうという奇怪さ。

金城テルさんは、那覇市有地の松山公園に建てることを市が認め、使用料も減免してきたことについて、那覇市を訴えてきました。 

この特定の宗教団体にこの特例措置を決定をしたのは、当時市長であった翁長氏です。 

今回、翁長氏は知事になっていましたので、直接は判決とは関係ありませんが、やはり敗訴した真の人物は、翁長氏その人であるというべきでしょう。

下の写真は市営松山公園内に建てられている孔子廟ですが、正門まで付随した大きな宗教施設だと分かります。 

Top3http://kumesouseikai.or.jp/ja/toppage/

那覇地裁は孔子廟が宗教施設ではないとする現那覇市長の城間幹子市長と、参加人兼補助参加人久米崇聖会側の主張を退け、明確に「(特定)宗教的性格を色濃く有する」としたうえで、「市が特定の宗教を援助していると評価されてもやむをえない」と判決を下しました。

また運営主体の久米至聖会もまた判決では、「宗教行事を行うことを主たる目的とする団体」と評価され、」「憲法第80条及び第20条1項後段の「宗教団体」とされました

原告の金城テル氏自身に、その訴訟理由を語ってもらいましょう。(平成28年8月2日陳述書より)
http://nahaaction.web.fc2.com/pdf/kume_chinjutusyo.pdf 

金城氏は、この孔子廟が、これも翁長氏が3億円の税金を投じて建てた龍柱と同じ目的で作られたと感じたそうです。 

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「首里城の龍柱に模した4本爪の龍は、 中国の冊封を受け、属国となった印だということでした。
知り合いの議員に 聞くと、若狭にある久米孔子廟が跡地の松山公園に移設され、そこでも龍柱 2本が新設されるとのこと。
しかも、この龍柱は5本爪だといいます。5本 爪の龍は、中国古来、孔子の生地のほかは、皇帝だけに許されたものでした。
今、石垣市の尖閣で日中間の緊張が高まっています。
若狭緑地と孔子廟に建 つ4本爪と5本爪の龍柱は中国共産党が虎視眈々と狙っている沖縄侵略の象徴のように思えました」

そして裁判で争われた政教分離については、市側はこれは儒教施設であって宗教ではないという説を主張しましたが、それについて金城氏はこう述べています。

「この裁判では「儒教は学問か宗教か」が争われていますが、 私は儒教には 学問と宗教の両面があると思っています。
論語は学問ですが、釋奠祭礼(せ きてんさいれい)は宗教儀式です。 明倫堂は学問の施設ですが、 孔子廟は宗教施設です」
 

大変明快な答えです。儒教は哲学であると同時に、宗教的祭祀を行う宗教でもあり、現代世界においてはなによりも、中国の「政治」そのものです。 

たとえば米国においては「孔子学院」と呼ばれる施設が多く建てられましたが、その性格は「中国側のスパイ工作組織であり、米国の安全保障を脅かしている。孔子学院は米国の教育機関の監視外にあって、中国の意向に沿った政治をプロパガンダしている」(※)と糾弾され、各種教育機関から放逐されつつあります。
※2018年4月5日 テキサス州選出のヘンリー・クーラー共和党議員とマイケル・マッカール民主党議員 

私もこの中国の政治的意図を「忖度」し、まるで虎におもねる猫のような翁長氏の行為そのものに問題があると思っています。 

龍柱だけなら、中国人観光客誘致という言い分も成り立つでしょうが、孔子廟まで市有地にタダで作らせ、使用料は免除というのでは、いくらなんでもその隠された意図があらわです。 

それは、かつて中華帝国の朝貢国だった頃から染みついた慕華思想から発しています。 

今の韓国に露わですが、沖縄にも一部存在し、本土の野党、メディア、そして与党内部にも二階幹事長などの親中派や公明党などの中にも存在します。 

自分を帝王に扈従するしもべとして初めから位置づけてしまう、いわば自己植民地化思想です。 

それは近代国家間の友好などという水平目線ではなく、仰ぎ見るように中華帝国を奉り、その意に沿おうとすることが道徳だとする意識です。 

ひとえに中国に「忖度」し、中国の歴史上の恩義に感謝し、何くれとなく便宜を図ろうとするわけです。

これが嵩じると、黄龍旗をひるがえした中国軍艦を待ち焦がれる沖縄地元紙のようなことを言うようになります。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-85e9.html 

「黄色軍艦がやってくる…。船体に黄色の龍の文様を描き、黄龍旗を掲げる清国の南洋艦隊は黄色軍艦と呼ばれたという。知人とこの話をしていたら、黄色軍艦が沖縄を侵略すると、勘違いして話がややこしくなった。
実際は逆で、明治の琉球人にとって清国軍艦は援軍だった。武力で琉球国を併合した明治政府に対し、琉球の首脳らは清へ使者を送って救援を求めている。そして、沖縄側はその黄色軍艦を待ちわびたのだった」(沖縄タイムス2005年5月16日 大弦小弦)
 

この先にくるのが、翁長氏が国連で言った「民族自決権」です。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-e720.html 

「日本の沖縄県の知事、翁長雄志です。
私は、沖縄の自己決定権がないがしろにされている辺野古の現状を、世界の方々にお伝えするために参りました。(2015年9月2日、国連人権理事会)
 

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 この「民族自己決定権」は英訳ではright to self-determination 、すなわち民族自決権のことで、それは支配民族からの分離独立を意味する概念です。

民族自決権を翁長氏のように中国に媚びへつらう者たちが、尖閣問題で緊張する両国関係の下で言うなら、それがいかなる意味を持つのか、自ずと明らかだというものです。

この孔子廟訴訟判決がでたのは、偶然ですが、翁長氏のすい臓癌が分かった数日後でした。

私には翁長時代の終わりを告げる、弔鐘の音のように聞こえたものです。

※敗訴したのは翁長氏ではなく現行市長だ、という横須賀氏のご指摘をいただきました。そのとおりですので改題しました。
また正確に言えば「確定」ではないので、冒頭部分に追記しました。

 

 

2018年4月13日 (金)

翁長氏の「すい臓癌後」を考える その2

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ネットには翁長氏のすい臓癌(※)について、心ない書き込みが溢れています。
※追記 良性腫瘍の可能性も残されています。

止めていただきたいものです。なかには「早く死ね」などという下劣きわまるコメントもあって、げんなりします。 

翁長政治を批判するということと、彼の病を祝福するというのはまったく次元を異にします。このような人として恥ずかしいことはしないで下さい。 

さて、翁長氏のすい臓癌について、ひとつ引っかかっていることがあります。

まず、いきなり健康診断で癌が見つかるという公表には疑問が残ります。 

推測の域を出ませんが、おそらく1年前くらい前からは、時限爆弾のように「健康不安」はくすぶっていたはずです。

それほど1年前からの翁長氏の衰えは、隠しようがなかったのです。

検査入院は、その確定診断を受けるためのものだったろうと思います。 

翁長氏としては、なんとしてでも2期目をするという執念に駆られていたはずで、あと5カ月を残して、ここで辞任に追い込まれることだけは避けたいと考えたはずです。 

ただ、周辺が許さなかったのでしょうね。特に数少ない「オール沖縄」内翁長派の平良・呉屋氏は診断を強く勧めたはずです。

というのは、翁長陣営にとって最悪なケースは、翁長知事で一丸となって知事選を戦うという体制が出来上がってから、すい臓癌だと発覚することです。 

その場合、どんな対応策も取れないまま、知事選を戦わずして敗北してしまいます。 

ですから、まだ半年弱ある今、次善の手当てをしておく必要が出たのです。

一方、「オール沖縄」陣営からすれば、大変に難しい判断に迫られていると思われます。 

それはかつて移転反対派の大勝をもたらした、脱走保守組を取り込んだ擬似的「島ぐるみ」闘争の陣形を何らかの形で残すのか、あるいはかつてのように、むき出しの左翼陣営として戦うのかという判断の岐路に立っているからです。 

辺野古埋め立てを阻止する道は、今や完全に閉ざされた状況ですが、あとは承認撤回を求めて再訴訟すれば、敗訴は確実なものの、一時的に工事を止めることは可能です。 

これも、翁長氏が知事に座っていればこそで、だからこそなにがなんでも知事の椅子を反基地派が押えねばならないわけです。 

しかし、その翁長氏が候補たりえない状況となったわけですから、「オール沖縄」を再度構築するには、保守系の大物を再び寝返らせねばならないことになります。 

不可能ではないにせよ、そうとうに厳しいでしょう。 

となると、稲嶺前名護市長や糸数女史のようなゴリゴリの左翼運動家を候補とするしか方途はなくなり、これで自公連合に勝てる勝算は薄いと思われます。 

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なにせ3期目の現職市長という圧倒的に強い立場で、なおかつ本土左翼勢力の全力応援にもかかわらず、稲嶺氏は惨敗しましたからね。

となると消去法ですが、左翼陣営には、翁長氏になにがなんでも、代行を立ててでも任期中は知事の椅子に座っていてもらわねば困る事情ができたのです。 

さもなくばこういう書き方は、人の生き死にを政治力学で語ってしまうことになるので好きではないのですが、「オール沖縄」陣営にとって「最良」のシナリオは、翁長氏が知事選前に死去することです。 

死去した場合は、選挙におけるゴールドカードである「弔い合戦」という錦の御旗を掲げることができることになるからです。 

「本土政府の横暴と戦って病に倒れた翁長知事の遺志を継ごう」というわけです。 

死なないまでも、重病を押して決起集会にかけつけるパーフォーマンスのひとつもやれば、インパクトはあります。

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逆に見れば、これは翁長氏としては最悪シナリオで、「冗談じゃない。オレが死ぬのがそんなにうれしいのか」という気分になることでしょう。

まだ70前ですからね。死ぬには早い、将来的にそう感じるのではなく、今、そう思っているはずです。 

しかし現実政治がそんな生臭いものだというくらい、「島一番の政治屋」の翁長氏がいちばんよく分かっているはずです。 

そう考えてくると、翁長氏がとるべき選択肢はわずかしか残らなくなります。 

「現職知事」という権威を維持したまま、実務は職務代行にやらせ、自分の息のかかった後継者を選ぶことです。 

そしてその後継者が勝つためには、かつて自分が2014年にやったことの逆をするわけです。 

つまり、左翼陣営から決別して、元の鞘に納まることです。 

大病を理由に古巣の自民に詫びを入れ、自公にも自分の推す中道系後継候補者を推してもらうということも、非常に薄い確率ですが、まったくないわけではありません。

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吐き気がするほど卑劣な手段ですが、県随一の寝業師である翁長氏と、本土政界の寝業師・二階幹事長あたりが談合すれば、まったくないとは言い切れません。 

ちなみに、このふたりはかつてから肌があうらしく、安慶田前副知事を介してごそごそやっていた時期もあります。

二階氏は裏切った者を、寛容に許すことでも知られています。 

まぁここまで極端なシナリオでなくても、翁長後継候補を中道左派の保守に据えて三極とするという選択肢もあり得るでしょう。

というわけで、先行きが見えなくなった知事選ですが、私たちとしては「任期5カ月を残しての代行はありえない。知事は直ちに審判を仰げ」、という正攻法の正論を語るしかありません。

 

2018年4月12日 (木)

翁長氏の「すい臓癌後」を考える

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翁長氏がすい臓癌(※)であることが公表されました。
※追記
良性腫瘍の可能性も残されています。

知事は早期の公務復帰を述べていますが、常識的に考えてそうとうの無理があり、政治復帰を急ぐあまりかえって健康に障害がでることもあります。 

さて、今後について少し考えてみたいと思います。 

まず、前提として押えておくべきは、翁長氏はこれによって知事候補とはなりえなくなったことです。 

翁長氏は現在68歳、政治家としては決して老齢には入りませんが、胃癌に次いですい臓癌が分かった場合、今後、激務である政治生活を継続することには無理がありすぎます。
翁長雄志 - Wikipedia 

Onaga2http://www.sankei.com/affairs/news/180109/afr1801090017-n1.html 

当人がその気であっても、家族や周囲が許さないでしょう。 

では、反翁長陣営が有利になったのかといえば、まったく違うと思います。 

翁長氏はこの病によって、批判することが難しくなった「聖なる場」に登りました。 

「病」は、その人のさまざまな間違い、失敗をも浄化する働きがあるからで、以後、沖縄において翁長氏を批判することには慎重にならざるを得ない雰囲気が生じるはずです。 

これは反翁長陣営にとっては、大変にやりにくい状況が生まれてしまったことになります。 

翁長県政のどこが間違いだったのか、なにが行き過ぎだった のかを明らかにしていく議論をせねばならない今、その口が重くなるのは避けられないでしょう。 

また、翁長氏がこのまま辞任するなら6月にも知事選ということになりますが、翁長氏はその道はとらないでしょう。 

おそらく副知事を代行を立て、知事という権威を維持しながら次の知事候補選びに影響を与えると思われます。

なぜなら翁長氏という人物は、善きにつけ悪しきにつけ、バイタリティある泥臭い野心家です。 

彼は、本土では勘違いされていますが、無思想な人物です。誹謗しているわけではなく、右でもなけれは左でもないという意味です。 

そこが同じ「オール沖縄」陣営でも、伊波洋一氏や糸数慶子氏、あるいは山城博治氏とは根本的に異なるところです。 

彼らの思想と行動にはコミュニズムがありますが、翁長氏にはそれはありません。 強いて言えば、愛郷者たらんとしていたでしょう。

有名な話ですが、2001年5月に自民党の全面支援で那覇市長に当選した翁長氏が、まっさきにしたのが市庁舎に日の丸を掲揚することでした。

この時、彼が.日の丸を振った理由はひとつでした。本土政府からその報酬を得ることです。

以後彼は、本土政府の沖縄側受け皿として、自民党県連大幹部の経歴を重ねることになります。 

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 2014年11月、翁長氏が仲井眞知事を裏切って左翼陣営に走ったのは、思想故ではなく、端的にこのままでは知事になれないと踏んだからです。 

当時、翁長氏は63歳。仲井眞氏は右腕の自分に知事を禅譲すると思い込んでいたにもかかわらず、その思いが断たれたと感じたからでした。 

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そして今ひとつ転向した理由は、当時の沖縄を覆っていた空気です。 

それは鳩山首相の作った「最低でも県外」の夢が断たれた怒りと、まだ抵抗の術はあるのではないかとする気分が支配的でした。 

まさに空気で、翁長氏が丸々3年半かけて、その方途は実はまったくないことなど、本土政府との交渉を重ねてきたはずの老練の政治家に、それがあらかじめわからないはずはありません。 

それにもかかわらず、なぜ翁長氏はその袋小路にみずから飛び込んでいったのでしょうか。 

理由は、あんがい簡単です。先程述べたように翁長氏が泥臭い野心家であったからです。 

その野心家のリアリスティックな眼から見れば、仲井眞氏の承認もまた行政官としての理想論でしかなく、今の県の雰囲気に真正面から対決しては、ぜったいに敗れると踏んだのです。 

勝てない勝負には乗らない。政治家は当選してバッチをつけてなんぼというのが、翁長氏の信条だったはずです。 

知事選に勝つには、このポスト鳩山の「最低でも県外」の流れに乗るしかないじゃないか、そのためには、保守だとかなんとか言っていないで、共産党、社民党らと手を結ぶ以外なにがあるんだ、これが当時の翁長氏の考えでした。

だから、翁長氏は那覇市長選では日の丸を、そして知事選では赤旗を振ったのです。

しかしやがてこの場当たり的な政治選択は、翁長氏をがんじがらめにして、ミイラ取りがミイラになるようにして知事という「黄金の籠」の捕らわれ人となっていくのは、ご承知のとおりです。

それはさておき、当時はこのように絶対反対の交渉ハードルを高くすれば、本土政府は更に譲歩を重ねて補助金交渉も楽に進むという現実的思惑もあったはずです。

そして、翁長氏はこの知事選に勝ったわけです。 

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 そのような翁長氏にとって、長引かせて嫌がらせ的政策を小出しにすることこそが、権力の持続の秘訣だったはずです。 

ここには小川和久氏が期待する腹芸など入り込む余地など皆無です。 

つまり、翁長氏は移転問題を解決する気などそもそもなかったのです。 

移転問題の泥沼化こそが翁長氏の目指すものであって、これが左翼陣営の利害と一致しただけのことです。

長くなりましたので、続きは明日にします。

※改題しました。

 

 

 

2018年4月11日 (水)

翁長氏 膵臓腫瘍と公表

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本日は、事実のみアップします。 

私が「少し待てば分かる」と何度となく言い続けた検査結果が公表されました。

翁長氏の症状は「すい臓に腫瘍」と公表されました。 

膵臓の腫瘍について:膵臓の病気と治療 | 東京医科歯科大学肝胆膵科によれば、これは「一般的には膵臓癌」と説明されています。 (写真下参照)

■沖縄タイムス4月10日
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/235605 

「沖縄県の翁長雄志知事は10日午後5時、浦添市内の病院で会見し、人間ドックと検査入院の結果、すい臓に腫瘍が見つかったと発表した。診断結果を受け、今月中に治療のための手術を受けるとし「医師から根治できる状況と聞いている。手術後に早期に復帰し、私に与えられた知事としての責任を全うしたい」との考えを示した。
11月に知事選が想定される中で、2期目への立候補など自身の進退については「知事選に出る、出ないを考えていない状況で今の状況になった。早めに病気を治し、復帰を果たしたいというのが今の気持ち」と述べるにとどめた。
 同席した医師は腫瘍について、知事が以前に胃がんの全摘手術受けたためすい臓の細胞の検査などができない状態とした上で「限られた精密検査をしたが、今のところ正確に悪性か良性かという診断ができない状況。手術をして最終的に判断する」と説明した。すい臓以外の臓器を検査したが、異常はなかったという。
 翁長知事は今月5日の人間ドックで再検査が必要との医師の指示を受け、7日まで入院。8~11日に予定していた中国訪問を取りやめ、那覇市内の知事公舎で休養していた」
 

093ttps://pc.video.dmkt-sp.jp/ep/10275483 

また、今年の知事選についてはこうも述べています。NHK4月10日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180410/k10011397861000.html 

「一方で、ことし秋に予定されている県知事選挙に立候補するかどうかについて、「知事選のことは、この診断を受ける以前から考えていない。『出る』とか『出ない』とか考えていない状況でこんにちまできたので、これからもそれをベースにしながら早めに病気を治して公務復帰を果たしたい」と述べました」 

膵臓の腫瘍について:膵臓の病気と治療 | 東京医科歯科大学肝胆膵

「膵臓はみぞおちの奥の背中側にある薄い細長い臓器です。膵臓の働きは主にタンパク質を消化するための酵素を腸に分泌することと(外分泌機能)、インシュリンやグルカゴンといった代謝に重要なホルモンをだすこと(内分泌機能)です。膵臓にできる腫瘍で最も頻度が高いのは浸潤性膵管癌で、一般的に「膵がん」というのはこれを指します」

■筑波大学 医学医療系 消化器外科 橋本真治講師によれば以下です。
https://ocw.tsukuba.ac.jp/discovery/pancreatic_cancer/surgery/

「膵臓の腫瘍の治療の根幹は手術です。手術の方法は腫瘍が膵臓がんであるのか、それ以外の腫瘍なのかで方針が変わってきます。
膵臓がんではない膵腫瘍の場合は、膵腫瘍核出術などのより体の負担が軽い縮小手術を選択します。膵臓がんの場合は、がん細胞を残さずに切除してくることが大前提となります。腫瘍の出来た部位が膵臓の右側「膵頭部」にできたのか、左側「膵体尾部」にできたのかで手術の方法が変わります。
一般的に膵頭部の腫瘍に対しては膵頭十二指腸切除術、膵体尾部にできた腫瘍に対しては膵体尾部切除が行われます」

手術の結果次第ですが、ご快癒をお祈りします。

私がそう言うとおためごかしに思われるでしょうが、私は次の知事選は「翁長知事の4年」を総括し、審判をする知事選と考えていました。

ですから主役なき知事選になるのは望むところではありません。健康な身体になられて、ぜひ知事選にお出になって下さい。

翁長氏は公務復帰には意欲をみせていますが、代行を立てて治療に専念し、無理をなさらないほうがいいと思います。

現時点では、翁長氏自身が認めているように、「知事選のことは、この診断を受ける以前から考えていない」というのが正直な知事の考えに思えます。

いずれにしても、翁長氏の意志とは無関係に、沖縄政界はいっせいに「翁長なき知事選」に向けて走り始めたことは確かです。 

 

2018年4月10日 (火)

イラク日報問題を考える

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財務省文書改竄問題が終わりきらぬうちに、今度はイラク日報問題です。 

自衛隊の「隠蔽」文書が出てきたというので、また野党・メディアは狂喜乱舞しているようです。 

いわく、「日報問題は、タチの悪さでは学校法人『森友学園』の問題より上だ」(立憲)、「「現行憲法の基本を守る姿勢がなければ憲法改正論議など成り立たない」(民進)、「改竄・隠蔽政権に憲法を語る資格なし」(共産)、だそうです。

その上に、人もあろうに統合幕僚長がこのようなことを述べてしまい、火に油となりました。 

「陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報が見つかった問題で、自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長は5日の記者会見で、『結果として、大臣、国会に対して背信的な行為を行ったと言われても仕方がない』と陳謝した」(時事 4月5日)

 見出しには、「イラク日報『背信的行為』」です。 

河野さん、誠実たらんというのはわからないではありませんが、ナイーブすぎます。 

これは自衛隊の危機管理として見た場合、危機管理初期に、事実を隠蔽しないという態度は正しいのですが、結論まで拘束するような謝罪をしてはいけません。 

「背信行為」などという決定的言辞は、調査が終わってからにしてください。 

いくら「結果として」と言っても、メディアは「背信行為」というおいしい一言に食らいつきますからね。 

ここだけ取られると、統合幕僚長以下全自衛隊が頭を剃って懺悔しているような印象を与えかねません。 

時系列を追ってみます。

・2017年2月16日 野党議員がイラク派遣の陸上自衛隊部隊の日報を資料要求し、防衛省が「不存在」と回答
・同2月20日 稲田朋美防衛相(当時)が国会で野党議員の質問に「見つけることはできなかった」と答弁
・同年3月27日 陸自研究本部(現教育訓練研究本部)が日報の存在を把握
・同年11月27日 陸上幕僚監部が全部隊に海外派遣で作成した日報などに関する調査を指示
・2018年1月12日 陸自研究本部が陸幕総務課にイラク派遣の日報が存在と報告
・同1月31日 陸幕衛生部が総務課に存在と報告
・同年2月27日 陸幕が統合幕僚監部に報告
・同年3月31日 統幕が小野寺五典防衛相に報告
・同年4月2日 小野寺氏が日報の存在を公表
・同年4月4日 小野寺氏が陸自研究本部内で日報が昨年3月に確認されていたことを公表

では、一方で開示を要求された側の、防衛省文書管理規則ができたのは、いつだったでしょうか。 

それは2011年4月1日のことで、民主党の北澤俊美大臣の時でした。 

この時に文書管理規則第2条に以下の文言が、スラっと登場します。

「防衛省行政文書管理規則第2条
この訓令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)行政文書  防衛省の職員(以下「職員」という。)が職務上作成し、または保管した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下同じ。)であって、職員が組織的に用いるものとして、防 衛省が保有しているものをいう。ただし、法第2条第4項各号に掲げるものを除く」

防衛省行政文書管理規則

こういうとんでもないことをスラっと書いてくるのが官僚という人種なのですよ。 

それまで現場部隊は、紙媒体で保管していたのは2種類だけでした。 

ひとつは決裁をもらって発簡された公文書と、もう一つは、他部隊などが作成し、自分の部隊が受領した文書だけでした。 

それがいきなりすべての画像データ、文書ファイルも行政文書だから電磁的に保管しろとなったのですから、現場部隊はびっくりしたことでしょう。 

電磁化とひとことでいいますが、それは膨大な紙文書を、人間が手でPCに打ち込めということですからね。

当時、現場部隊にいた那覇市議会議員・大山たかお氏はこう書いています。https://ooyaman.jp/1528.html

「この時は、保存機関や行政文書として内閣府に登録するのに、部隊創設以来これまで発簡してきた、そして受領してきた数多くある文書をパソコンに一つ一つ打ち込みました。本来であれば、保存期間が過ぎた文書も参考資料として持っておきたかったんですが、破棄せざるを得ませんでした。もちろん、電子データも公文書としての取り扱いになるので、破棄をせざるを得なかったのです」

また現場部隊が上級部隊に問い合わせたり、それがまたその上に問い合わせたら違っていて変更となったりと、死ぬ思いだったそうです。 

とまれ、ひたすら膨大な文書を電磁化し続けたそうです。

自衛隊の場合、電磁化に際しては、「軍隊」ですから防衛上機密にすべき情報は廃棄しました。 

野党に言わせれば「空前絶後の暴挙」だそうなイラク日報の、文書分量をご存じでしょうか。

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日報はイラク復興支援群などの三つの部隊が、2004年1月から2006年9月に作成した延べ376日分の計約1万4000ページという恐ろしいような量です。 

しかも、これはとうぜんのこととして文書管理規則以前のものですから、当時の規則どおり廃棄してしまうか、一部の行政文書ではないデータ資料は、部内の閉鎖系チャットで、ほしがる部局があれば配布したそうです。 

それが今回、自衛隊の現場からみれば「浮世離れ」していると評されている陸自教育訓練研究本部のPCにたまたま3枚紛れ込んでいたのを、職員が偶然見つけたわけです。

今から10年以上前で、とっくのとうに教育訓練本部の担当は代わっていて、貰ったとすら忘れ去られている上に、空輸ファイルの中にまざっていたりすれば、「隠蔽」どころか、逆によく見つかったな、というところです。

このように今回の問題は、「隠蔽が安倍政権の特徴」だから起きたわけではありません。

そもそも日報が書かれ廃棄されたのは2009年で、廃棄した時の政権は民主党でした。2011年に電磁管理に移行した管理規則を作ったのも同じく民主党政権時です。

いずれにしても安倍政権ができるはるか10年以上も前のことです。

かてて加えて出てきた日報は、ただ「イラク日報」であるというだけで、「隠蔽」などする必要がないものでした。

これが「憲法を揺るがせる大問題」というなら、当時の担当政権だった民主党を母体とする各派に聞くことですね。

その上に、開示要求されたのは去年のことで、スーダン派遣の日報が炎上していたときのことです。

しかも当時、スーダン日報は野党や「市民団体」が情報開示請求をしまくったために、一日に6件も探すことになっていたと言われています。

当然、見つける努力はスーダンに傾注されたわけで、イラク日報のほうは念頭にすら登らなかったのは仕方がないのではないでしょうか。

ついでに言えば、稲田大臣がどうやら口頭で探すようにと命じていたようで、これでは文書が命令系統を律する自衛隊では通用しません。

結局、これらのことが重なって、自衛隊の教育・訓練研究所のPCの片隅にたまたま紛れ込んでいた3枚が見つかったというわけです。

見つかったこと自体を、奇跡と言うべきではないでしょうか。

2018年4月 9日 (月)

竹箒氏にお答えして

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竹箒氏から「ニンゲンとしてどーかと思う」とまで書かれたので、記事にします。  

黒兎氏は「憶測」と「推論」の、違いと連関がわかっていません。  

「憶測」も「推論」も、一定の物証が出揃わない事柄に対して、頭で考えて結論を出すことまでは一緒です。  

しかしその過程が異なります。憶測は根拠がなく「たぶんそんなことだろう」とします。  

ですから感情に流されやすく、初めから結論が決まっている場合も往々にしてあります。  

一方、推測は事実を積み重ねて判断した結果、「そうなるだろう」と予測することです。 

私は土曜の記事でこう書きました。

「翁長氏から最も多くの経済的利権を配分されていたはずの呉屋・平良2人組の泥船からの脱出劇は大変に象徴的で、前もって何らかのシナリオがあったようにすら思えます。
となると今回、検査入院と称して入院したのも、もはや隠し通せる状況ではないまでに病状が悪化したと見るべきかもしれません」
今後については情報が限られていますので、安易な予測は控えるべきですが、いずれにしても「翁長なき知事選」となるのはほぼ確実な情勢です」

私は今回確かな内部情報を得ていましたが、とうぜんのこととして今の時期にそれを開示することはできませんでした。私は週刊誌ライターではないからです。 

だからなんどとなく、「安易な予測は控えるべきだ」として書いています。 

では、私の書いたことは揣摩憶測、つまり根拠なき決めつけでしょうか。  

違います。情報を押えた上で、それに基づいての論理的蓋然性を論じた「推測」です。 

かつて仲井真氏の右腕でありながら、左翼陣営に走り知事の座についた当初の翁長氏は、自信に満ちあふれていました。 

保革をひとつ皿に乗せ「オール沖縄」を作る荒技を仕掛けるだけはある、泥臭いパワーを持つ人物だと思ったものです。 

山路氏がどこかで書いておられましたが、沖縄は他県よりその政治家の「カリスマ性」を重視する風土があります。 

その意味で当時の彼は、いい意味でも悪い意味でも、千両役者でした。 

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しかしそれから3年、翁長氏は、すべての裁判に破れ、目指した「承認撤回」の方策は、最高裁判決が出た時点でゲームオーバーだったことは、自民党県連幹事長だった彼自身がいちばんわかっているはずです。 

そして本来「オール沖縄」の核心でなければならないはずの翁長派旗本の自民脱走組は、腹心の安慶田氏は失脚し、これで唯一の本土政府との交渉パイプがなくなりました。 

更に悪いことは続くもので、普天間基地のお膝元の宜野湾市では市民派に敗北し、宮古市長選は自らの失策でとりこぼし、最も重要視したはずの稲嶺名護市政まで崩壊するありさまが続きました。 

これが昨今の翁長氏の置かれた状況でした。 

下の写真は去年8月頃のものですが、上の3年前と比べると一目瞭然です。特に頬から喉にかけての衰えは隠しきれません。 

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 事実、横須賀ヨーコ氏の投稿にあるように、昨今の翁長氏の体調不良は隠しきれない様相でした。 

「このところの翁長さんの痩せて弱った姿は、映像で見ても十分伝わってくるものがあり、声は小さくかすれ、記者会見でも今時の高性能のマイクだから音声を拾っているものの、実際のその場では後列にいる記者さんたちに聞こえないくらいの声だったのではないでしょうか。今回の検査入院報道がなくても、秋の知事選を戦えるとはとても思えませんでした」 

これは、横須賀氏のみならず、この数年の変化を見てきた私も同様に感じていたことです。 

私は高齢者の健康をあげつらうことはしたくありませんし、どの人もそうであるように、翁長氏のような年齢に達すれば、持病の一つ二つもっているものです。 

しかし、気の毒なことには、翁長氏は政治家で、しかもその持病がかつて胃の全摘をした癌という病歴だったことです。 

したがって、その持病の再発・進行を考えることはこの衰えぶりをみる限り、飛躍した観察ではないと思われます。  

もちろん、あくまでもそれが推測な以上、間違う場合もありえます。  

しかし、この可能性を論議すること自体を「憶測だから黙っていろ」となると、政治議論そのものが不可能になります。

なぜなら、彼は一個人ではなく、公人だからです。しかも再選を狙う政治的存在だからです。

比喩は適当かわかりませんが、今の朝日のモリカケ・改竄疑惑追及は、乏しい証拠から首相の「関与」に結びつけたものでした。

しかしそれでも野党・メディアにとっては、丸々1年間国会で審議するほど意味がある「憶測」だったということになります。

その理由は同じく、翁長氏が県第一等の公人であるように、安倍氏が首相という国第一等の公人だったからです。 

Photo_6左端が平良氏、一人置いて呉屋氏、中央は翁長氏

ひるがえって、今回はどうでしょうか。  

平良氏の「オール沖縄会議」脱退と翁長氏の入院をめぐって、憶測、果てはデマとまで書き込まれましたが、平良氏と金秀の脱退は入院の数日前のことです。  

平良氏らは今後も翁長氏を支援すると言っていますが、「オール」会議を抜けるというのは、知事選で応援しないという意味と同じです。  

「オール会議」という支援団体なきひとりの単独候補として翁長氏が勝つ可能性は、ゼロです。  

こう考えると、平良・金秀らにに何らかの翁長氏を支援できなくなった、ないしは、する理由そのものが消滅する事態が生じたということです。 

理由は、二つ考えられます。  

ひとつは、共産党が圧倒的ヘゲモニーを握る「オール会議」と平良氏、呉屋氏ら経済人は、同床異夢だったということです。

最大の問題は、体質が違いすぎました。 

経済人は一定の落とし所を考えて交渉するものですが、本質的に「革命党」の共産党は妥協案はすべてノーです。

永久に反基地闘争をすることこそが目的だからで、解決はないのです。

県民を怒らせていた美しい海を埋めない解決案は存在しました。

いわゆる小川案(ハンセン陸上案)です。これは現実性があるばかりでなく、県が提案すれば大いに検討の余地がある移転プランでした。

しかし、「オール会議」最大勢力の共産党は、「いかなる移転もノー」という硬直しきった姿勢である以上、解決は不可能となりました。

翁長氏と平良氏ら経済人は、これでは話にならないと感じた3年間だったはずです。

方や粛々と和解期間を設けて工事を中断してまで、司法に判断をゆだね勝訴した政府、方や「すべてノー」の共産党。

これでは知事の政治的采配の振るい所がないのではありませんか。

平良氏ら経済人グループが、「オール会議」と体質的に水と油だと悟り、いつか脱退することを考えていたとしてもなんの不思議もありません。

そしてそのような中で、もう一つの決定的理由。つまり肝心の大黒柱の翁長氏の健康問題が浮上したわけです。  

平良氏らの「オール会議」参加理由が、翁長氏がらみだったために、翁長氏なき展望は考えられませんでした。  

したがって、「オール会議」から脱退することをもって、彼らは翁長氏の再選のための知事選からも事実上下りたのです。

口では今後も支援するといっていますが、本気ならば脱退するはずがありません。

逆に、こういう出来もしないことを言えてしまうのは、もう責任がない立場に行きたいからにすぎません。  

また、仮に翁長氏が何らかの健康上の障害を抱えていた場合、それを知事が公表してからでは、あからさまに病人を見捨てたことになるからです。

だから、彼らは急いだのです。

ただしこれも「推測」の域を出ません。事実の裏付け材料が不足しているからです。

私は事実の欠落を、蓋然性とロジックで埋めているのです。

蛇足ですがもう一点。

私が翁長氏の健康悪化を願っているかのような書き込みがありましたが、正反対です。

大前提として、私は他者の不幸を望みません。政治的に批判的であったとしてもです。

それどころか、むしろ私はいわば賞味期限を過ぎてしまった敗将の翁長氏が再選に立ってくれるほうが、争点が見えやすいと思っていました。

ですから、皮肉でも反語でもなく、自分の4年間の審判をぜひ健康な身体で迎えていただきたいと願っています。 

これは本心です。

 

 

2018年4月 8日 (日)

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2018年4月 7日 (土)

翁長氏倒れる?

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速報ですが、翁長氏が倒れて検査入院しました。

検査入院で、なんらかの異常が見つかったということです。

「沖縄県の池田竹州知事公室長は6日、県庁で記者会見し、翁長雄志知事が「5日の人間ドックの結果、医師から再検査の指示があり、入院している」と発表した。再検査の対象となった内容や部位は明らかにしていない。翁長知事は2006年に胃がんの手術を受けているが、関連性について、池田氏は「検査中」と繰り返した」(沖縄タイムス4月6日)

9589a7a3f374fa0b01062aa4c2631949翁長雄志知事の検査入院について説明する池田竹州知事公室長(中央)=6日午後4時すぎ、県庁

詳細は不明ですが、翁長氏はすでに10年前に前胃癌を患って胃を全摘していますので、県の発表のように「長期に及ばない」ものかどうかは、今後を見ねば分かりません。

病状については知事自身が会見するということなので、それを聞かねば分かりませんが、常識的に考えて胃の全摘をして、更に健康不安が濃厚な翁長氏が再度立候補する可能性は低いと考えるべきでしょう。

おそらく翁長氏の体調悪化は、あるていど「オール沖縄」の中では「公然の秘密」だったはずで、少し前の4月3日の、金秀・かりゆしGの「オール沖縄会議」脱退は、この翁長氏の今回の出来事と無関係とはかんがえられません。

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この翁長氏から最も多くの経済的利権を配分されていたはずの呉屋・平良2人組の泥船からの脱出劇は大変に象徴的で、前もって何らかのシナリオがあったようにすら思えます。

となると今回、検査入院と称して入院したのも、もはや隠し通せる状況ではないまでに病状が悪化したと見るべきかもしれません。

今後については情報が限られていますので、安易な予測は控えるべきですが、いずれにしても「翁長なき知事選」となるのはほぼ確実な情勢です。

その場合、自民、特に二階幹事長がどのように判断するのか、大黒柱を失った安慶田前副知事などに代表される自民脱走組がどう動くのか、「オール沖縄」は共産・社民候補を立てるのか、あるいは翁長後継政権ができてしまうのか、まったく不透明です。

いずれにしても、これで知事選に向けた合従連衡が加速することは疑いなく、知事選は<翁長vs保守中道系候補>という構図カが崩れて、一気に混沌としてきました。

続報が入り次第、お伝えします。

                                                      ~~~~

さて、昨日の記事のコメントについて、簡単に触れておきましょう。

ふゆみさん。戦術核ではなく戦域核です。

戦術核は、侵入する戦車軍団などを阻止する目的で使われる短射程のものです。

一方、 戦域核は中距離弾道ミサイルで相手の心臓部を狙います。北のノドンなどがそれにあたります。 

韓国が持つことを要求しているのはこの戦域核です。

また日本が持つことを議論するとすれば、同じく中国と北の心臓部を狙うに足りる戦域核です。 

山路さんがおっしゃるように、日本が核兵器を保有するのは、改憲より難しいと思います。

私が想定する「核の議論」を開始すべき時期とは、米国が会談を流し、かつ軍事力行使に及ばなかった場合です。 

北の核を放置するなら、日本が核武装の道を選ぶしかないという意思表示が必要だからです。これはミアシャイマーが言うとおり、中国にとっての最悪のケースです。 

なにも政府がする必要はなく、(今の安倍政権には体力的に無理です)、民間で議論すればよいのです。

抽象的に核保有の是非を問うのではなく、あくまで北の核の現実的脅威との絡みで議論を進める時ではないでしょうか。

ですから、中国に北に対して強い影響力行使させるにはこの「日本核武装の可能性」という悪夢を一回、習に味合わせねばなりません。 

韓国はすでに引き返し可能ポイントを超えています。いまさらミアシャイマーがいうような米韓同盟の強化はありえませんし、在韓米軍撤退要求まで行くことでしょう。

それにしてもミアシャイマーがムンを「スマート」と表したのには笑いました。 彼クラスでも、アジアはわからないようです。

韓国紙の取材ですから甘かったのかもしれませんが、「三不の誓い」で、既に韓国は独自の外交選択を封じられた「半主権国家」となっています。

ミアシャイマーが、危惧として言っていることはすべて、すべて現実化していることです 

パククネの判決が出ました。恩赦と引き換えになるのでしょうが、長期実刑です。イ・ヨンバクも近く似た運命をたどることでしょう。

前大統領、前々大統領を「死刑」にする国に未来などありません。

■タイトル「?」を入れました

 

2018年4月 6日 (金)

ミアシャイマーの北朝鮮情勢インタビューその3 韓国にとって米韓同盟だけが唯一の生き残り策だ

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ミアシャイマーは、朝鮮半島情勢の現況をこのように見ています。

要約しておきます。

●米朝会談の見通しは?
①米朝会談は開かれない可能性が高い。
②仮に開かれても、北が核放棄する可能性はゼロに等しい。

●中国の対応は?
①中国は北の核放棄に圧力をかけない。
②北の核については関心がない。むしろ連鎖して起きる日本の核武装を恐れている。

●中国はアジアの覇権国か?
①中国の浮上だけが、北東アジア最大の脅威だ。
②中国がアジアを支配する覇権国になろうすることは妨げられない。
③中国は覇権の拡大を妨げようとする国を排除する。
④米中間は戦争にならずとも、強い緊張関係となるだろう。

●トランプ外交の評価は?
①就任以前よりはましになったが、中国の覇権の拡大に対する「連帯の形成」に失敗している。
②中東では、イラン、トルコを中国寄りにさせてしまった。

●韓国については?
①韓国は地域覇権国・中国の「かごの鳥」=半主権国になろうとしている。
②半主権国家とは、経済的には自立し、外交・安全保障面では中国にコントロールされる国だ。
③韓国は北の政権交代を画策せずに、米韓軍事演習、国連制裁でコントロールすべきだ。
④近い将来、南北が統一する可能性は低い。中国はそれを望んでいない。

●ロシアについては?
①衰退しており、かつてのソ連になることはありえない。

では、残りの部分をどうぞ。
                                                  ~~~~~~

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■韓国の生き残り戦略は「韓米同盟と核の傘」 

 ミアシャイマー教授は先月21日、「韓国人は本当に統一を望んでいるのか」と尋ねた。

そして、「近い将来に南北が統一される可能性は低い。北朝鮮が統一を望んでおらず、中国も望んでいない。それでいてどんな手段で統一しようというのか分からない」と述べ、現実主義者らしい見方を示した。 

-世界で地政学的に最も不利な国として、韓国とポーランドが挙げられる。韓国の生き残り戦略は何か。 

 「ポーランドが一時地図上から消えたことを思い出す必要がある。韓国は韓米同盟を維持することが最大の生き残り戦略となるべきだ。米国は韓国から6000マイル以上離れており、領土欲がない。そんな国から核の傘の提供を受け続けることが重要だ」 

-2004年に出版された本で、韓国は核武装を検討すべきだと述べているが。 

 「その通りだ。米国の核の傘政策が変わろうとする場合、韓国は独自の核武装を検討しなければならない。その場合日本も同じことを考えるはずだ 

-文在寅(ムン・ジェイン)大統領の外交をどう評価するか。 

 「今のところ、スマートにやっている。米朝の仲介はうまくやった。再度言うが、米朝首脳会談が行われるかどうかは不確実だ。行われるとしても、ハッピーエンドになるとは思えない」

                                                                                   (了)

2018年4月 5日 (木)

ミアシャイマーの北朝鮮情勢インタビューその2 北が核を放棄する可能性はゼロに等しい

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ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大教授の最新のインタビューです。太字は引用者です。

非常に悲観的な見方ですが、私もおおむねそのとおりだと考えています。

ただし、私が考えうる最悪シナリオで、さすがに私もここまで悪いストーリーを口にするのは憚ったほどです。

ミアシャイマーが考える展開となれば、会談は流れ、北の核武装は固定化されます。

日本の横須賀などの枢要な米軍基地、あるいは東京、大阪など大都会を狙う北の中距離核ミサイルは、手つかずで放置される悪夢となります。

そして日本は常に北の核の恫喝の下で暮らすことになるでしょう。

一方、韓国は自衛的核武装を米国に要求します。

韓国が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を保有する了解を、既に米国と取り付けているという未確認情報もあります。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52742?page=5

今のムン政権のような「中国の鳥かごに入った半主権国家」が、米国から核武装を認められることはにわかに信じがたいとはいえます。

なぜなら、そのままその核は日米に向けられるでしょうからね。

その場合日本は、中国・北・ロシア、そして新たに韓国からの核によって完全包囲されることになります。

このような状況に立ち至った場合、わが国が防衛費を諸外国並の2%にするのは当然として、米国の了解を前提にして、独自核武装をすること以外にわが国を守る術は理論的にはなくなります。

ボルトンは日本に核をもたせるべきだというのが持論です。トランプもかつて就任前に似たことを発言したことがあります。

ちなみに、米国は日本が米国に図らずに単独で核を含む攻撃をすることができる権限を、そうそう簡単に手渡さないはずです。

核のキイを渡すなら、安保体制の枠組みを崩さずに、その中で厳しい管理をかけるのが大前提のはずです。

いずれにせよ、その場合は、ニュークリアシェアリングなどという中間的なものではなく、完全にわが国独自の技術による核武装と言うことになるでしょう。

技術的には、核実験のシミュレーションを米国から供与されれば、さほど難しいことではありません。
関連記事 日本は「自立」を真剣に考える時期に入ったようだ
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-18e5.html

私は最後の最後まで日本の核武装には反対の立場ですが、韓国が核保有すれば、その私の声も虚しいものなることでしょう。

日本が核武装に踏み切った場合、東アジアの軍事バランスは一挙に崩壊し、緊張の度合いはマックスとなります。

それはわが国にとっても、決して好ましい状況ではないはずです。

とまれ最低でも、独自核武装について現実的議論を開始すべき時なのかもしれません。

といっても、モリカケ・改竄・日報の泥沼にはまったままピクリとも動かないのが、国会の体たらくなのですが。

それはさておき、このように朝鮮半島の未来図は、どこか彼岸の景色ではなく、わが国の未来と完全に重なるということを、肝に命じてインタビューをお読み下さい。

                                      ~~~~~~~~

「国際政治学の大家」ミアシャイマー教授に聞く韓半島の未来
朝鮮日報2018年4月1日  

最近の韓半島(朝鮮半島)関連情勢を診断するためのミアシャイマー教授のインタビューは21日午前、2時間以上にわたり行われた。教授は自身の国際政治理論に基づき、よどみなく見解を語った。以下は一問一答。

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-台頭する中国が韓半島にもたらす含意は? 

 「中国がアジアで覇権国家に浮上することを阻む方法はない。覇権国家になった中国に韓国が便乗する可能性がある。そうすれば、韓国は『半主権国家(semi-sovereign state)』になるだろう 

-半主権国家は中国の植民地を意味するのか。 

 「そうではない。経済的には自立性を持つが、外交・安全保障面では思いどおりにはできず、中国のコントロールを受けることを意味する。その場合、韓国は中国という鳥かごにとらわれた鳥になるだろう」 

-中国と北朝鮮の関係の真実はどこにあるのか。 

 「中国は北朝鮮が核を持ったことにはさほど関心はない。それよりも北朝鮮が米国や日本に刺激的な行動を取ることの方が不満だ。この状況が続けば、日本が核武装しようとしかねないからだ。米国が北東アジアにさらに関心を注ぐようになることも好ましく思わない」 

-ロシアのプーチン大統領も続投が決まった。ロシアが中国のように韓半島の脅威になる可能性は。 

 「現在衰退しているロシアが過去のソ連になる可能性はない。中国の浮上だけが北東アジアにおける本当の脅威だ」 

-教授の「大国の国際政治」理論によれば、米中の協力は不可能ということになるが。 

 「中国は米国が西側を支配したことを真似し、アジアを支配しようとしている。中国はアジアで最も強い国になり、米国をここから追い出すことが目標だ。それゆえ、衝突は避けられない」 

-大国同士が平和にやっていくことは不可能なのか。 

 「大国には2つの究極的目標がある。地域の覇権国になることと他国が自国の掌握する地域でライバルとして浮上することを防ぐことだ。米中はいまそういうコースを進んでいる 

-ならば、米中間の戦争は避けられないのか。 

 「戦争の可能性よりも、緊張が高まるとみている。東中国海(東シナ海)、南中国海(南シナ海)、韓半島、台湾でもぶつかることになるだろう」 

-トランプという「異端児」の大統領の出現が米中関係にどんな影響を与えているか。 

 「トランプの最大の問題は、中国に対抗してバランスを取るための連帯を形成できずにいることだ。候補時代よりはかなりましになったが、トランプが外交をうまくやるとは思えない

-具体的にトランプが誤っていることは何か。 

 「中国が覇権を拡大することを防げずにいる。特に愚かにも中東でイランを中国寄りにさせている。トルコもそうだ。貿易戦争でも同じことだ 

-北朝鮮が非核化の意向を表明し、米朝首脳会談が5月に行われると韓国政府が発表した。見通しはどうか。 

 「見通しよりもまず、2人が首脳会談を行うかどうかが不確実だ。首脳会談の準備ができているかも不明だ 

-トランプが会いたがらないということか。 

 「トランプはブレーンたちに相談もなく、米朝首脳会談を受け入れた。トランプの立場では、『金正恩には本当に会いたいが、まだ双方の基本的な準備ができていないようだ』として、会談条件について、先に実務交渉をしようというのがスマートだと思う」 

-予定通りに会い、非核化について前向きの合意が成立する可能性は。 

 「前向きの合意が何を指すのか分からない。米国にとっては、北朝鮮が核を放棄することだが、そんな可能性はない。北朝鮮にとっては、核を放棄することは愚かしいことだと思う。北朝鮮のNSC(国家安全保障会議)の最高責任者は金正恩に核を絶対に放棄するなと言うはずだ」 

-北朝鮮が核を放棄する可能性はそれほど低いのか。 

 「その可能性は0.05%、0%と1%の間だ。分かりやすく、1%以下だとしよう(笑)。リビアのカダフィは愚かにも米国を信じ過ぎた。大量破壊兵器を放棄した結果はどうだったか。そんな事情を知っているのに北朝鮮が核兵器を放棄するだろうか」 

-韓国には交渉で北朝鮮の核放棄が可能だと考える人もいる。 

 「北朝鮮は絶対に応じない。中国もそうしろと圧力をかけない。韓国から戦術核兵器を撤収したのは、冷戦終結ムードによるものだったが、誤りだった。ウクライナが核を放棄したのも、ウクライナにとっては大きな失敗だった」 

-北朝鮮が核を放棄しない状況で、韓国が取るべき戦略は何か。 

 「核を持つ北朝鮮を抑制(containment)することがひとまず最善の戦略だ。みだりに北朝鮮の政権交代計画を進めるのは危険だ。韓米合同軍事演習、国連制裁も適切に行い、コントロールすべきだ」

                                                                                        (続く)

 

2018年4月 4日 (水)

ミアシャイマーの北朝鮮情勢インタビューその1 そもそもこの人誰?

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みなさまにご心配おかけしています。補助機を押し入れの奥から探し出して、ほこりを払って使っていますが、大変に不安定で、長時間の作業は無理のようです。 

PC環境なんて、ブロッガーにとっての空気みたいなもんですから、失って分かる日常の愛しさよ、ウルウル。 

メーン機の修理は今週いっぱいかかりそうで、しゃーない腰据えてPC非常時を乗り切ることにしました。 

さて私はけっこう韓国の新聞は読むほうで(もちろん日本語の電子版ですが)、日本のメディアにはまず出てこない記事が出る場合もあります。

むしろ、なにかといえば「識者」と称する畑違いの大学教員や、外交官くずれを重用する日本より、韓国のメディアのほうが米国の国際政治学者の意見をよく取り上げているくらいで、参考になります。

今日はそのひとつのジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授の朝鮮危機の現状分析をご紹介します。

「国際政治学の大家」ミアシャイマー教授に聞く韓半島の未来
朝鮮日報2018/04/01 

ミアシャイマーは国際関係論をかじったことがある人で知らなければ、もぐりというようなお方です。

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『大国政治の悲劇』は漬け物石になるほどの大著で、手に持っただけで重い。読む前にその厚さに私はめげました(笑い)。
 

しかも、書かれていることが、日本人が最も苦手かもしれない大国間の政治力学で世界は動くという観点を徹底させたものです。 

「憲法の理念」や「平和への希求」では、世界は動いていないぜ、というのがミアシャイマーの考え方です。 

では、なんで動いているのかといえば、それは大国のエゴだというのです。 

ここでミアシャイマーは、大国をプレイヤーにたとえます。世界には基本的に4人の米中露のメジャープイヤーがいます。 

おいおい、日本はどうなっているんだい、と思われるでしょうが、残念ですが9条にがんじがらめにされて、軍事力という決定的な交渉力を奪われているわが国は、マイナーリーグのサブプレイヤーでしかありません。 

プレイヤーは、自分の利益(国益)の最大限化が目的です。常に勢力圏を拡大することを狙っています。 

そしてその目的のためにこの大国プレイヤーは、時に協調したり、同盟を組んでみたり、時には激しく敵対したりもします。 

このメジャープレイヤーの性格は、常に「攻撃的」だという指摘をしたのが、このミアシャイマーです。それを彼は「攻撃的現実主義」(オフェンシブ・リアリズム)と名づけました。

歴史的に大国の台頭は必ず「攻撃的」でした。

ナポレオン時代のフランスは大陸を席巻しようとしましたし、ドイツ統一を達成したプロイセンのヴィルヘルム皇帝時代、ナチスの全欧侵略、そして帝政ロシアは常に領土拡張を目的としていました。

帝政ロシアの後継国家であるソ連もまた、中欧にまたがる巨大帝国を作りました。

クライナでプーチンが切れたのは、ここが旧ソ連帝国領土だったからで、ここまでEU・NATOを伸ばすなとあれほど言っていたろうというのが彼の言い分です。

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列強時代のわが国ですら、褒められたことではありませんが、大陸への拡大をした時期があります。 

米国は巨大島国だったので、その膨張は北米大陸のフロンティア拡大でしたが、それが行き着くと、あとは太平洋へと勢力を拡大していきます。

このあたりは島国であった大英帝国の海外膨張とよく似ている、とミアシャイマーは指摘します。 

米国は新たなフロンティアを求めて、太平洋を渡り大陸に利権を求めようとしました。

そのために中継地点として、日本列島が必要だったのです。それがペリー来航です。

そして太平洋の覇権を争って、後に日本とガチンコ勝負することになります。 

一方、共産中国の膨張拡大は露骨で、「新疆ウィグル自治区」は名称からして和訳すれば「新しい領土ウィグル」です。 

21世紀の今、紛争回避のための国際秩序維持システムが出来ているので、露骨な膨張・拡大は出来にくいのですが、堂々とやっている大国が二つあります。 

ひとつは、さきほどもふれたウクライナ侵攻をしたロシアです。その目的は失ったソ連帝国版図の復活です。 

一貫してプーチンは、この「帝国復興」の意志を持って外交を行っています。そう見ると、大変ロシアの行動がよく分かります。 

そしてもうひとつが、いうまでもなく、我らが隣国の中国です。中国が平和的に台頭するでしょうか?

ミアシャイマーは、はっきりと「ノー」と言っています。

この国の国家目標が、かつての失った中華帝国の領土の奪還と海洋進出である以上、既存の国境線の書き換えをせねばなりません。 

ウィグル、チベット、満州と大陸内部にむけた膨張は、少数民族弾圧でしたが、それが行き着けば、陸上では東に「帝国の復興」をすれば愛琿条約で失ったロシア沿海州となり、プーチンとことを構えねばなりません。 

西に伸びようとすると、今度は強力なインドが待ち構えています。

共に核保有国なので、国境紛争は限定核戦争に発展する可能性があります。 

となると膨張できるのは、必然的に中国の「攻撃的リアリズム」は、海洋に向けざるをえません。

つまり、東南アジア諸国という軍事小国しかいない南シナ海と、「平和憲法」のわが国相手の東シナ海、そしてその先には、おお、広大な太平洋がひろがっているではないか、と言うわけてす。

これを米国さんと二分しようというのが中国の言い分です。こんなスペイン・ポルトガルの世界分割なんて時代錯誤をマジに考えているのが中国なのです。

「遅れてきた帝国主義」なのですよ、この国は。習のいう「中華の夢」とは、そのようなことを意味します。  

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まことにはた迷惑な「夢」で、周辺国からすればただの国際平和秩序の破壊者にすぎませんが、これが「大国の本能」みたいなものだと、ミアシャイマーはいうのです。

ここがミアシャイマーの独特な点で、彼はこの大国の膨張本能 をイデオロギーや社会規範に置いていません。

その国が共産国であるから膨張するのではなく、大国だから膨張せざるを得ないとかんがえます。

大国の膨張の理由づけから、一切の理念、文化は捨象しろと彼は言います。

これをフランス革命の「自由・平等・博愛」とか、ソ連の「プロレタリア国際主義」、「米国流民主主義」、はたまた「日本軍国主義」なんて大脳皮質の産物で考えるな、とミアシャイマーは口酸っぱく言っています。

逆に言えば、ソ連は共産主義だからケシカラン、ナチスだから悪魔、軍国主義だからナンセンスでは、大国の行動は理解できないということです。

明治期の日本人のほうがミアシャイマーの考え方を理解したでしょう。国際リアリズム感覚がなければ、即亡国の時代を生きて来ましたから、明治国家は。

戦後の「平和憲法」と日米安保によって二重に保護されることに馴れた今の日本人に、わかりにくいのはこの辺でしょう。

安全保障論議すると、必ず憲法の神学論議にいつのまにかすり替わっているという風景に、私たちはあまりにも馴れすぎました。

では、具体的にミアシャイマーは今のアジア情勢でどう対応しろと言っているのでしょうか。彼は米国による周辺国への丸投げ=バック・パッシングはしてはならないと説いています。

これは利害を共有する周辺国、アジアの場合は日本、韓国、東南アジア諸国ですかが、それらの国々に安全保障を投げてしまい、米国はセットバック(後退)しろという発想です。

近年は米国でもクリストファー・レインなどが唱える極端な米国撤退論に現れています。

当初、トランプはこの路線に乗るのかと心配されましたが、違ってきたようでほっとしています。

たとえば台湾について、「丸投げ主義者」は、さっさと手放せと言いますが、ミアシャイマーは台湾を中国に統合されてしまうことによる地政学的リスクだけに止まらず、米国の信頼の低下が、米国にとって死活的にパワーの欠損になると述べています。

韓国についても、同様の考え方があると思われます。

またその一方、米中両国が核武装しているので、両国は戦争に至らないというシナリオについては疑問を呈しています。

ミアシャイマーは、冷戦期の欧州よりはるかに核戦争の蓋然性は低いとみています。

ただしそれがゆえに、通常兵器を使っての限定戦争はありえるというのが、彼の見方です。

この超リアリストの国際政治学者ミアシャイマー御大に、朝鮮日報がインタビューをしていますが、長いインタビューなので、次回からにします。

余計なお世話ですが、ファンタジーに生きる韓国民は、彼のようなウルトラ・リアリストの意見など聞かないほうがいいと思いますが、ま、いいか。

 

2018年4月 3日 (火)

再録 森友問題は大騒ぎするようなことなのか?

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本日、PCが故障したために更新はありません。これも借りた機材で打っています。 

復旧は今日PC屋に持ち込んでの修理次第で、もうまったく・・・。

埋め草といってはなんですが、この1カ月ヒット数が多かった記事を再録します。

書いたのは去年の3月ですから丸1年、まだやっていることに驚きを禁じ得ません。

多少の事実誤認がありますが、基本的に私の視点に変化がないので、修正せずにこのままの形で載せることにいたしました。

①の首相の便宜供与の証拠は、この1年間の野党・メディア連合の必死の調査にもかかわらずまったくみつかりませんでした。

見つからなかったために、野党・メディア連合は、首相の言った「便宜供与に関与していたならば辞める」という文言の前半分を切り取ってしまい、いささかでも「関わっていたら」に拡大解釈して、今に至っています。

そしてそれすら見つからないとなると、「関わった」対象を夫人にまで拡大して、ネチネチと魔女狩りに精をだす始末です。

②については、会計検査院の報告書などで、近畿財務局のゴミ埋蔵量の見積もりなど値引き根拠の算定が甘いことが指摘されています。

③の教育内容は、籠池氏の朝日サイドへの転向によってウヤムヤになってしまいました。

そうか、当時は軍国幼稚園って騒いでいたのがきっかけでしたねぇ(遠い眼)。

代わりに今は、財務省文書書き換えが登場しました。

これも削除された文書の中には首相の関与を示すものは皆無で、かろうじて籠池氏からの伝聞で昭恵氏が一カ所登場するだけでした。

今や、財務省文書「書き換え」事件の疑問は、削除された内容そのものから、どうしてこんな書き換えをあの財務省が行ったのかという動機の点に移行しています。

                  ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

               ■「森友問題は大騒ぎするようなことなのか? 」(2017年3月1日)

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森友学園騒ぎはいつまで続くのでしょうか。 

子供がこんな軍国主義幼稚園に行かせていいのかぁ、などと叫んでいるマスメディアのほうが、大挙して押し寄せて幼児や保護者たちの平和であるべき教育環境を脅かしています。 

現在進行形ですのですので、決定的なことは言えませんが、問題点とされていることを上げてみましょう。

①森友への国有地払い下げに首相が便宜供与していたか否か。
②森友への国有地払い下げは適切に処理されていたか否か。
③森友の教育内容

これら3ツの次元が違うテーマが、あたかもひとつの問題のように同時に議論されてしまうことが問題です。

いつもの私流の言い方をするなら、「切り分けが出来ていない」のです。

第1の森友への国有地払い下げに、安倍首相が便宜を計ったかという問題ですが、決定的なことは現時点ではわかりません。

ただ言えることは、便宜を斡旋したのならば、首相が工作せねばならない相手はあの財務省だったことです。

財務省と首相の関係を念頭に置けば、私はほぼないと断言できます。

というのは、首相は財務省と増税を巡って、はっきり言えば敵対関係、ソフトにいっても緊張関係にあります。

首相の「政敵」は、民進党でも石破氏でもなく、財務省なのです。

因縁は3年前に遡ります。

当時、2回目の増税を阻もうとする安倍氏と、財務省の対立は頂点に達しようとしていました。

2014年、財務省は省始まって以来といわれる、大規模な「自民党絨毯爆撃作戦」を敢行しました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-db86.html

財務省官僚たちは増税シフトを作るために、「ご説明」と称する与党議員に対する徹底した個別撃滅を実施し、与党の大勢は増税やむなしに傾いていてしまいました。 

日経新聞(2014年11月30日)は、こう報じています。

「解散権の背景には財務省の増税多数派工作 首相明かす
財務省が善意ではあるが、すごい勢いで対処しているから党内全体がその雰囲気になっていた」。安倍晋三首相は30日のフジテレビ番組で、衆院解散・総選挙を決めた背景に財務省による消費増税の多数派工作があったことを明らかにした。
首相は「責任を持っているのは私だ」と強調。「(増税延期に)方向転換する以上、解散・総選挙という手法で党内一体で向かっていく。民意を問えば、党内も役所もみんなでその方向に進んでいく」と説明した」
(日経新聞11月30日) 

増税攻防は首相を囲む少数派と、財務省及び「ご説明」に屈した9割の与党多数派の攻防の態をなしていました。

2014年秋までに財務省は、自民党内の支配を完成させていたわけです。

この増税派議員の中には、安倍氏と総裁選を争った麻生氏、石破氏、そして谷垣氏なども含まれています。

この間、財務省はメディアを使って、再三みずからに有利な情報をリークした痕跡があります。

このように安倍氏は首相就任以来最大の包囲網を作られたわけで、政権基盤すら危機に瀕していました。

結局はこの安倍包囲網を首相は打ち破って再増税を阻止するのですが、このように財務省こそが、安倍首相最大の「政敵」なのです。

このような経緯を持つ安倍首相が、たかだか小学校建設のための国有地払い下げていどのことで、近畿財務局に借りを作るということはありえると思いますか。

ありえません。こんな最高権力者が官庁に便宜供与を依頼したことが発覚すれば、今回安倍氏がタンカを切ったように首相職はおろか、議員辞職ものです。

そんな自分の政治生命が終わりかねないようなリスキーなことを、よりによって「政敵」の財務省に頼みますか。

財務省は縦割り構造が貫徹した官庁ですから、もし首相が近畿財務局に便宜斡旋を依頼するようなことがあれば、その情報は直ちに本省の耳に入るはずです。

そしてほぼ間違いなく、今頃はメディアに情報がリークされているはずです。増税を阻む最後の壁の安倍打倒こそが財務省の悲願なのですから。

某左翼サイトが財務省と首相が接触うんぬんと書きたていますが、あれなどはたぶん財務省からのリークです。

推測ですが、あるいは財務省は事務ミスなどの失敗を暴かれるのを恐れて、政敵に矛先を向けるように仕組んでいるのかもしれません。

もし首相、あるいは秘書が森友のために斡旋行為をしていたというなら、それを証明する記録を野党は明示すべきです。

今の調子だとそのうち野党は、「やましくないなら証拠を見せろ」などという悪魔の証明もどきのことを言いそうです。

森友が「安倍晋三記念小学校」にしようとしたとか、昭恵夫人が名誉校長だったとかいうのは、なんの証拠にもなりません。

民進党やメディアは状況証拠だと言いたいのでしょうが、無意味です。ただ、怪しいぞというムードを作って追い詰めた気になっているだけです。

首相が森友を支持者だと考えていたことは事実でしょうし、照恵夫人の名前を断りきれなくて貸してしまったことも事実でしょうから、脇が甘いとは言えます。

だからと言って、多くの支持者に日常的に接している首相が、接近してくる人たちすべての情報を把握することは物理的に不可能です。

仮に、森友学園の理事長と昵懇であったとしても、斡旋などが絡まなければ、政治家と支持者との一般的関係にすぎません。

これを悪いというなら、政治家は政治活動ができなくなってしまいます。

第2に、森友の国有地払い下げにまつわる疑惑ですが、これについては様々な疑問が提出されています。

森友は4年前に、国有地を紹介され、国交省を通じて近畿財務局委託で入札を何度かしました。その結果、8770㎡を定期借地料として2700万、10年間でということに決まりかかりました。

しかし、この時に、土地に鉛が見つかってその撤去費用として1億3千万円かかり、平成28年度の開校が29年度に延期になっています。

さらにトラブルが見舞います。建築工事でボーリングをしていると、なんと阪神大震災の仮設住宅の生活残さがでてきたのです。

これは森友も財務局から聞いていなかったために、ここで工事はストップします。

森友は財務局に調査を要請しますが、予算の関係でできず、結局財務局の言い値である1億3千万で森友が購入することになりました。

この購入価格についてはなんともいえません。私から見れば、よく森友はこんなクズ物件に手を出したなとは思います。

森友は安く買いたたいたというような言い方をよくされていますが、この国有地は鉛や生活ゴミの処分地です。こんな土地は資材置き場ていどにしかなりません。

森友は生活残さが5~10m地下にあるとして、建設を続行しました。

後に、この残差さは大量に埋め戻されたという話ですが、それは廃棄物処理業者の問題です。

このように、森友が国有地を買うに至ったいきさつに、首相が便宜供与を斡旋したのなら政治問題化するでしょうが、そうでない以上個別、財務省と森友の問題にすぎません。

第3に森友の教育方針ですが、これなどなんで国会でとりあげられるのかさえわかりません。

カソリック幼稚園があるように、民族主義的な幼稚園もあるだけの話です。

園児に「安倍首相ありがとう」「朝日なんじゃら」と言わせるのはやりすぎに決まっています。こういう判断力がない子供に馬鹿なことを言わせるなと思います。

しかしやり過ぎはやり過ぎとして批判するとして、私学の教育内容について野党やメディアが干渉するべきことではないと思います。

ニューヨークタイムスが森友の教育方針を「復古主義、軍国主義」と批判していますが、余計なお世話です。

おたくらの国は進化論がウソだと教えている学校など一杯あるだろうに、と言い返したくなります。

また理事長が日本会議メンバーだからといって問題視されているようですが、日本会議は保守オジさんの懇親会のようなもので、圧力団体といえるようなご大層なものではありません。

メディアにかかると、まるで悪の陰謀団体のようにいわれるのが、かえって不思議です。

あまり言いすぎると、園長が共産党員の幼稚園・保育園などは山ほどなるのですから天に唾することになりますよ。

このように、今回の問題はひとつひとつ冷静に切り分けてみれば、大騒ぎするようなことなのでしょうか。

2018年4月 2日 (月)

昨日の記事について

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今日は2本です。本記事もあります。

さて昨日、よせばいいのに、汚い言葉の決めつけはやめようと書いたら、荒れました。

なんでこんなことで、荒れるのでしょうか。呆れます。私は汚い言葉を使った議論は止めよう、論点が見えなくなって建設的ではないですよ、と書いただけにすぎません。
 

しかも左右両サイドに言っているのに、来るのはもっぱら左っぽい人ばかり。相手の人格棄損をしないで穏やかに議論しようと言っているのが、そんなにイヤですか。 

乱暴にレッテル貼りあって唾を吐きあい、相手を愚弄して、とっくみ合いがしたいのですか。やれやれ。 

当のメロン氏からはこんな返答がきました。

「ところで調べてみた所、貴方も下記のリンクの記事で「アベノセイダーズ」という不思議なネットスラングを使っているようですけど気のせいでしょうか?」

そういえは、私がブーメランになったと喜んだ書き込みもありましたね(笑い)。 

メロンさん、あなたはリテラシーがなさすぎます。 というか負けまいとして、私の論旨をねじまげています。

いいですか、ネットスラングなんて星の数ほどあります。私が全部のネットスラングがダメといっていると拡大解釈しましたか。オーバーな。

そんなわけないでしょう。常識で考えなさい。

ネットスラングには、たとえば「ググる」みたいなネット用語もあって、日常生活に溶け込んでいます。 

その中には、「意識高い系」なんていう、一定の集団の政治・社会傾向を多少の揶揄を含んだ調子で使ったものもあります。 

あるいは、いまやまったく普通に使われて、右の人自身もまれに自称することがあるような「ネトウヨ」などという言葉もあります。 

これなど元来は侮辱表現でしたが、一般化するにしたがってその色彩が薄められました。 

同じ範疇で「アベノセイダーズ」もあると思っています。 

なるほどこの言葉は確かにネットスラングですが、なにかというと「アベがいかん」「アベのせいだ」という一定の社会バイアスについて評した、それ自体は価値中立の用語です。

この1年間をふりかえって、野党とメディアの「アベのせいだ」というバイアスが否定できるでしょうか。 

もはや個人的リンチになる気配で、FBでいいねと書いただけで、アキエ魔女は国会証人喚問ですか。

もはや魔女のアキエは人民裁判で火あぶりということで、行き過ぎもいいところで、いい加減にしなさい。

批判するのはいいと思います。批判は健全な議論の礎ですから。しかしやり過ぎるな、と私は常に思っています。

相手を貶めたり、小馬鹿にすることからなにか生まれるでしょうか。

では今回、私がメロン氏に注意した「安倍信者」という言葉について考えてみます。 

これが価値中立でしょうか。まったく違いますね。気に食わない政権支持者をまるでカルト宗教の信者のように貶めています。 

安倍氏支持者が「信者」なら、日本はいまでも4割前後の国民が「安倍信者」であることになります。 「信者」がいまの自民の大量議席を与えたのですか。

ならば「安倍教」とは、超大規模宗派ですな(笑い)。

私も条件が沢山ついた「安倍支持者」ですが、私のような者は多くいるはずで、そのような人たちをおしなべて「信者」呼ばわりすることは妥当ではありません。

だって、細かい吟味も分析もないまま、まるごと盲信者のように貶めていますからね。

一方、右の人たちには「特亜の工作員」といった罵倒語もあります。これもひどい言い方です。 

これでは安倍政権批判派の人たちは皆、北や中国からカネをもらった職業的スリーパー・セルになってしまうからです。 

現実にありえないし、国民同士の議論をこのような言い方でおかしな「外国のひもつき」という言い方をするべきではありません。

左右共にあるのは、相手を自分の頭で考えない「外部から操られた者」という認識なことです。違うと思います。

というか、違うと信じたいのです。ここまで日本人の民度は低くないと。

だから、こういう不毛な言い合いは止めて、まともにロジックと政策で勝負しろと私は呼びかけています。 

貶すために貶すな。誹謗をやめて真面目に議論しろ、と。

さて、この人物だけは許しがたいのが「星野」という人物です。この男はこう書いています。

「言っちゃ悪いけど考え方がシンプルで素朴な農家のオヂサンがネット情報に溺れて賢くなったつもりで書いてるのがこのブログですからそんなに虐めなさんな。
せいぜいネット仕込みの床屋談義なんでシリアスに受け取ってカッカするだけ損しますよ」

ひさしぶりに、全身の血が逆流しました。 目の前で同じことを言われたら、唾を吐きかけてやります。

たぶん、この男のイメージする「農家のオヂサン」とは、薄汚い野良着を着て、田畑を泥だらけで這い回っている無知蒙昧で「シンプルな」肉体派というところでしょうか。

星野氏よ、「農家のオヂサン」が北の核について書いてはいけないかね?

分析したらしょせん「シンプルで素朴な床屋政談」にすぎないのかね?

その前に、そもそもこんな国際情勢を「農家のオヂサン」が分析すること自体がいけないかね?

ならば、農家は村内のことや、せいぜいが隣町だけ考えていればいいのだね?

はっきり言っておこう。

これは明確な疑う余地がない職業差別です。この男は農業は賤業だと言ったに等しい。

彼はこう言います。

「農家だから」、小馬鹿にしてもいいのさ、「農家だから」シンプルな発想しかできないに決まっている、「農家だから」ネット情報に溺れて賢くなった気になれるんだ、だから「農家だから」生ぬるくいたわってやろうよ、だってこいつら「農家だから」さぁ、というわけです。

私はかつて福島事故の風評被害の時に、いやというほどこのての言葉を反原発派から浴びたことを思い出しました。

いわく、「農家は毒を知っていてまき散らすテロリストだ」、「お前が農業をやめるのが復興の道だ」

この自称反原発派は、福島・茨城の農業者こそ放射能と戦う最前線にもかかわらず、自らは安全地帯に暮らしながら、こんなことを平気でのたまうのです。

神経を疑います。

こういう手合いに、農業がいかに季節と生き物、作物に目配りしていく「眼」を持ち、それを判断する「頭脳」を持ち、育む「手」の業と、長い目で生命とつきあう「根気」がいる、と言っても、無意味でしょう。 

ここにあるのは、ただの都市生活者の驕りだけだからです。 まるで自分が街に住んでいるだけで特権階級であるかのようです。

星野氏にかかると、都市住民はスマートで賢い、地方は劣っていて「ネット情報に溺れて賢くなったつもり」の馬鹿ばかり、できるのはしょせん床屋政談くらいさ、というわけです。 

こういうことを、よく文字化できますよ。あんた何様?

どす黒い思いを抱えて一生生きるのも勝手。差別意識を心に持つのも勝手。それはみずからの内で止めておけ。

しかし、それを農業者が書いているブログに投稿することはまったく違います。 よくいえるよな、こんなこと。ネットではなく、実名社会で同じことを言って下さい。 

ま、いちおう私はお茶の水で出版関係に勤めてから脱サラしたんですが、そんなことはどーでもいいこと。農業一筋30年です。農業団体の創設者と責任者もつとめました。 

しかしそれもどうでもいいこと。 

どの職業の人もそうであるように、私はひとりの農業者として農家であることにプライドを持っています。 

私をけなすことは自由ですが、農業者であるが故に、侮蔑されるいわれはありません。 

ただ星野氏よ、大変に貴重なご意見ありがとう。参考になりました。 

星野氏がそうかどうかは知りませんが、やんばるの森を守れとか、辺野古の海を守れなんて高邁なことを言う人たちの本心って、こんなにドス黒いエリート意識が眠っているのですね。

やんばるの森を日常的に守っているのは他ならぬ「農家のオヂサン」なのですが、守るのは自分ら意識の高い都会人だと思っているのかもしれません。

皆さん。ありがとうございました。ひさしぶりで素で怒ってしまいました。ごめんなさい。

・・・正直、心底からうんざりしています。孤独感もあります。こういう時に共に声を発してくださった方に深く感謝します。

 

ボルトン、北の非核化に「リビア方式」を主張

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新しい大統領安全保障補佐官のジョン・ボルトンの米朝首脳会談についてのコメントがでているので、紹介します。 

「北、リビア式核放棄でなければ米朝首脳会談は偽装」(中央日報 3月26日)
http://japanese.joins.com/article/925/239925.html 

Maxresdefaultジョン・ボルトン 

ボルトンの発言のみピックアップしておきます。発言ソースは3月23日・自由アジアラジオ(RFA)インタビュー

「今回の首脳会談のメリットは6カ月、12カ月かかる予備交渉を短縮したという点だ。北朝鮮が会談でリビアのように核放棄をしなければ時間稼ぎ用の偽装にすぎない。
北朝鮮が真剣な非核化対話の準備ができていなければ非常に短い会談になるだろう。5月であれ、それ以前であれ、北朝鮮がどれほど真剣であるかを見てみよう。
北朝鮮は過去25年間、合意と違反を繰り返したため懐疑的だ。北朝鮮の時間稼ぎに二度とだまされることがあってはいけない。
大統領も時間を浪費しにそこへ行くのではなく、北朝鮮が核兵器をどのように早期に除去するのか、具体的な方法について議論しに行く。 
(首脳会談の議題について)13、14年前のリビアのように北朝鮮の核兵器と装備を包装してテネシー州オークリッジ研究所に移す議論をしなければいけない。
そうでなければ(北朝鮮の意図は)運搬可能な核兵器をずっと開発するという目標のための偽装だ。
はっきりと言うが、私は北朝鮮の核兵器を除去するための軍事行動を好まない。
北朝鮮への軍事行動は非常に危険だが、北朝鮮が核能力を保有すればさらに危険だ
過去25年間失敗が続いてきたため、トランプ大統領は印象が良くないオプションを持つことになった。時間は多くない。残された方法はないため、さらに先送りすることはできない」

ここでボルトンは、リビアでの非核化合意の方法を、北との会談の条件としていることを示唆しています。 

98e2f6e7566eb07dd57090978a643278カダフィ 

ボルトンがここでいう「リビア方式」とは、2003年、リビアの非核化核作業において、2年間けて米国本土のオークリッジ研究所に検証と解体のために核兵器を送った方式を指します。
参考資料リビアの核開発に関するIAEA事務局長報告(2004年2月20日付け) 

簡単にリビアの事例を見ておきます。 

リビアはカダフィ政権時代、各種の大量破壊兵器を製造していました。化学・生物兵器、そしてメーンはなんといっても核兵器でした。 

カダフィは1970年代には中国から核技術を密輸しようとして失敗、74年にはアルゼンチンとウラン濃縮で提携協定、77年にはパキスタンと核協定、78年には同じくインドと核協定。 

そしてとうとう79年にはタジュラ(トリポリの南西約10マイル)で旧ソ連提供の研究炉(熱出力10メガワット:軽水冷却・減速プール型:高濃縮ウラン(80%)を使用)を建設しました。 

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http://www.gensuikin.org/nw/libya.htm

ところが88年のパンナム機爆破テロ、89年ニジェール上空のフランス民間機爆破テロによる国際世論の硬化により、原油輸出停止などの経済制裁を掛けられます。 原油輸出を唯一の財源にするリビアは困窮します。似たようなことは、イランも同じです。

北の場合は、そもそも輸出するものが、石炭と若干の鉱物、そして海産物ていどですから、いわば初めから国民の生活水準は世界最貧国です。

皮肉にも、庶民から奪うものはこれ以上ないために、リビアやイランのように原油で高い生活水準を保障してきた国と違って、ある意味で強靱でした。

「強靱」に鍛えられてしまった国民こそ、いいツラの皮ですが。

それはさておいて、リビアはこの経済危機と孤立化から抜け出すために2003年になって、英米に仲介を要請し非核化の道を探り始めます。 

これは、大量破壊兵器関連の計画についての情報を両国に提供し、IAEAの抜き打ち査察を可能にする追加議定書の調印の用意があるとするものでした。 

また、射程300キロメートル以上、搭載重量500kg以上のミサイルを廃棄すると約束しています。 つまりリビアは、中距離弾道ミサイルまで廃棄すると合意したわけです。

ここは重要なポイントです。

今回の北との交渉においても、長距離弾道ミサイル(ICBM)の廃棄はあたりまえですが、問題は既に保有している中距離のノドンなどをどう処分するかだからです。

これが廃棄されないかぎり、日本国民は半永久的に北の核の刃の下で暮らすことになります。

ちなみに、この時リビアはIAEA事務局長に、10年以上前から報告義務をサボタージュして開発を続けており、現在すでに大量の遠心分離器を持っていると告白しています。 

80年にはリビアはIAEAとは保障協定を結んでおり、当該国が隠そうとすれば隠しきれるということが分かり、衝撃を与えました。

リビアは協定破りをしていたわけで、口約束など無意味だという教訓を米国に与えました。

そこで、IAEAの委託によって米国による非核化作業が開始され、リビアの製造途中の核兵器とその製造施設は米本土に搬出され、2年間かけて解体作業をすることになりました。 

そして2005年までの検証と解体作業を経た後、原油輸出制裁解除と国交正常化をしました。

ところがその6年後の2011年、いわゆる「ジャスミン革命」が起きて、カダフィは自国民によって惨殺されます。 

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このカダフィの死にざまを横目で見ていたのが北でした。彼らもまた別な意味で衝撃を受け、彼らなりの総括をします。 

つまり核を手放したら最後、必ず独裁者は殺されるという教訓を得たのです。下図が米国がテロ支援国家に指定した政権のたどった道です。 

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左から「テロ支援国家」の末路を見ていきます。

・キューバ・・・米国と手打ちして国交正常化
・イラク    ・・・イラク戦争の結果フセインは処刑
・リビア    ・・・ジャスミン革命でカダフィは惨殺
・シリア    ・・・内乱によってISを生み出す
・イラン   ・・・米国と手打ちして限定つき非核化を受諾
・スーダン・・・内乱によりアルカイーダを生む
・北朝鮮  ・・・国連制裁・軍事圧力

今や、残るのは内戦の巷のシリアを除いて、唯一北のみ。孤立感はハンパないでしょうな。

さて現在この北に、事前協議の場で高い確率でこの「リビア方式」が突きつけられる状況が迫っています。 

正恩が、いかなる心境で、過去の大量破壊兵器に手を染めた独裁者たちの末路を見ているのか、ご想像下さい。

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ちなみに、北はまたぞろ核実験の用意を始めたようです。
「北朝鮮が核実験用意」 河野氏、日朝会談に慎重:日本経済新聞 3月31日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28850180R30C18A3EA2000/


「核実験に関する北朝鮮国内の動向に関し、河野氏は「(過去に)核実験をした実験場で、トンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命やっているのも見える」と明言した。
河野太郎外相は31日、高知市で講演し、北朝鮮が新たな核実験に向けた準備と受け取れる動きを見せていると明らかにした。米国提供の衛星画像を踏まえた発言とみられる。北朝鮮との対話については「焦る必要は全くない」と述べ、日朝首脳会談の早期開催に慎重姿勢を示した。
核実験に関する北朝鮮国内の動向に関し、河野氏は「(過去に)核実験をした実験場で、トンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命やっているのも見える」と明言した。北朝鮮に核放棄の意思がないことを強調し、包囲網を緩めないよう内外に呼び掛ける狙いがある。
日朝首脳会談の開催に慎重な理由に関しては「北朝鮮から『さあ、平壌へ来てください』と言われ、みんながこぞって行くようなことになったら足元をみられる」と説明した。米朝、南北首脳会談の実現見通しに触れた上で「日本は何もしなくていいのかという評論家がいるが、別に何もしなくても構わない」と指摘した

まったくその通りです。前の外相の昼行灯ぶりとは偉い違いです。

これで河野氏が正しい経済政策を持っていたら、次の首相候補にエントリーしていいくらいです。

外相がいみじくもいうように、みんながピョヤン詣でをはじめたら足元を見られるのです。

しっかりと自国の国益を見つめてなすべきことをすればいいだけです。

日本は一部の野党やメディアがいうように、「乗り遅れて蚊帳の外にいる」わけではありませんし、そもそもそのような言い方自体、北の意図を忠実にリピートしているにすぎません。

 

 

2018年4月 1日 (日)

日曜雑感 ここでネットスラングは使わないで下さい

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メロンさんにお答えしたら、またまた長くなりましたので、日曜雑感欄へ移動しました。 

私がメロン氏のコメントに引っかかったのはこの部分です。 

「今回のことも含めて「安倍さんには外交能力がない」というのが安倍信者以外の常識的な見方なので」 

まぁ、書き方は無礼ではないし許容スレスレなんですが、「安倍信者」はいただけません。 

この人たちが安易に使っている「安倍信者」なる言葉は、政権支持者に向けたものですが、ある特定のバイアスがかかった人の「常識」の中でのみ通用する隠語です。 

こういう隠語了解圏に安易に浸っている人だと思いました。 

この人らのインナーサークルだけしか通用しないのに、うちのブログみたいな場所でも平気で使ってしまう、こういうのイヤですね。 

ネットによくある現象で、まとめサイトに行くと左右互いにスゴイね。よく言って玉石混淆。ちっとは発言に責任持てよというものも無数にあります。 

この「安倍信者」なる珍妙なスラングもそのひとつで、中身抜きで政権支持者にむけて、お前らアベ教の信者だと決めつけているわけです。 

これでは政策批判になりません。  

.私は現時点ではという前提つきで安倍氏を支持していますが、それはここで潰れられたら困るという意味あいです。 

外交的には、いつ戦争に発展するかわからない東アジア情勢とのからみで余人をもって換え難いし、経済的には、デフレ脱却最終フェーズとの関係でこれも余人をもって換え難いわけです。

安倍氏に言いたいことは、山ほどあります。 

緊縮やめろとか、移民に寄り掛かるなとか、安易な規制緩和するなとか、モリカケの危機管理はなっていないとか、改憲について説明不足だとか、稲田さんみたいの選ぶなとか、挑発されてすぐにかっとなるなとか、脇甘すぎだとか・・・、わーあるある(苦笑)。 

ついでにいえば、私は第1次安倍政権には、「余人をもって換えがたい」2分・批判8分でした。

ああまで復古調でやれば、失敗して当然です。今後、安倍氏がそこに回帰するなら、私は遠慮なく批判者に回ります。

ただ現状では、「余人をもって換えがたい」6分・批判4分だから、我慢しています。完全な政権なんてありませんからね。 

安倍氏の支持者や自民支持者なんか、みんなそんなもんですよ。替わりがあればいいのです。 

替わりがいますか?よもや、お試し済みの枝野さんとか、獣医師会から100万もらっていたのにモリカケ追求の先鋒をしている玉木さんなんて言わんでしょうね。(玉木さん、あれはモロに贈収賄ですよ) 

ところがあなたにかかると、一括して「安倍信者」だそうです。はいはい。 

ですからやめませんか。こういう下劣でガサツな表現。 

批判が分析をともなわず、感情で消費されています。これでは建設的議論になりません。 

このような表現を許すと、逆に「パヨク」「工作員」というダーティな憎悪表現もアリなわけで、まったく不毛です。 

私は双方とも許容していません。 

批判したいなら、感情ではなく中身で書いて下さい。 

たとえばメロン氏は北方領土交渉が失敗と言っていましたが、どこがどうして「失敗」なのか、そしてどうしたら打開できるのか、分かるように書いてくれませんか。 

できたら北方領土交渉の歴史的経過も含めてね。ただ自分らの中での「常識」といわれてもねぇ。常識は人によって違うみたいですから。 

というわけで、このブログのコメント欄は、この流儀ですのでよろしくお願いします。

 

日曜写真館 たまには縦アングルだけも

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縦アングルはスペースをとるので、日常的にはアップできません。記事の3分の1が写真になっちゃいますからね(笑い)。

でも、好きなんだなぁ、縦アングル。いつもは、見えないものが見えて来る時の、ゾクゾク感があります。

だって、人間の眼にはこんな風景の切り取りはできませんからね。

人間の眼は、55ミリ標準レンズで横アングルで見ているのに近いと聞いたことがあります。

今日は、レンズが作り出した非日常をお楽しみ下さい。

といっても、いちばん楽しんでいるのは私なんですがね。

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