ボルトン、北の非核化に「リビア方式」を主張
新しい大統領安全保障補佐官のジョン・ボルトンの米朝首脳会談についてのコメントがでているので、紹介します。
「北、リビア式核放棄でなければ米朝首脳会談は偽装」(中央日報 3月26日)
http://japanese.joins.com/article/925/239925.html
ボルトンの発言のみピックアップしておきます。発言ソースは3月23日・自由アジアラジオ(RFA)インタビュー
「今回の首脳会談のメリットは6カ月、12カ月かかる予備交渉を短縮したという点だ。北朝鮮が会談でリビアのように核放棄をしなければ時間稼ぎ用の偽装にすぎない。
北朝鮮が真剣な非核化対話の準備ができていなければ非常に短い会談になるだろう。5月であれ、それ以前であれ、北朝鮮がどれほど真剣であるかを見てみよう。
北朝鮮は過去25年間、合意と違反を繰り返したため懐疑的だ。北朝鮮の時間稼ぎに二度とだまされることがあってはいけない。
大統領も時間を浪費しにそこへ行くのではなく、北朝鮮が核兵器をどのように早期に除去するのか、具体的な方法について議論しに行く。
(首脳会談の議題について)13、14年前のリビアのように北朝鮮の核兵器と装備を包装してテネシー州オークリッジ研究所に移す議論をしなければいけない。
そうでなければ(北朝鮮の意図は)運搬可能な核兵器をずっと開発するという目標のための偽装だ。
はっきりと言うが、私は北朝鮮の核兵器を除去するための軍事行動を好まない。
北朝鮮への軍事行動は非常に危険だが、北朝鮮が核能力を保有すればさらに危険だ。
過去25年間失敗が続いてきたため、トランプ大統領は印象が良くないオプションを持つことになった。時間は多くない。残された方法はないため、さらに先送りすることはできない」
ここでボルトンは、リビアでの非核化合意の方法を、北との会談の条件としていることを示唆しています。
ボルトンがここでいう「リビア方式」とは、2003年、リビアの非核化核作業において、2年間けて米国本土のオークリッジ研究所に検証と解体のために核兵器を送った方式を指します。
参考資料リビアの核開発に関するIAEA事務局長報告(2004年2月20日付け)
簡単にリビアの事例を見ておきます。
リビアはカダフィ政権時代、各種の大量破壊兵器を製造していました。化学・生物兵器、そしてメーンはなんといっても核兵器でした。
カダフィは1970年代には中国から核技術を密輸しようとして失敗、74年にはアルゼンチンとウラン濃縮で提携協定、77年にはパキスタンと核協定、78年には同じくインドと核協定。
そしてとうとう79年にはタジュラ(トリポリの南西約10マイル)で旧ソ連提供の研究炉(熱出力10メガワット:軽水冷却・減速プール型:高濃縮ウラン(80%)を使用)を建設しました。
http://www.gensuikin.org/nw/libya.htm
ところが88年のパンナム機爆破テロ、89年ニジェール上空のフランス民間機爆破テロによる国際世論の硬化により、原油輸出停止などの経済制裁を掛けられます。 原油輸出を唯一の財源にするリビアは困窮します。似たようなことは、イランも同じです。
北の場合は、そもそも輸出するものが、石炭と若干の鉱物、そして海産物ていどですから、いわば初めから国民の生活水準は世界最貧国です。
皮肉にも、庶民から奪うものはこれ以上ないために、リビアやイランのように原油で高い生活水準を保障してきた国と違って、ある意味で強靱でした。
「強靱」に鍛えられてしまった国民こそ、いいツラの皮ですが。
それはさておいて、リビアはこの経済危機と孤立化から抜け出すために2003年になって、英米に仲介を要請し非核化の道を探り始めます。
これは、大量破壊兵器関連の計画についての情報を両国に提供し、IAEAの抜き打ち査察を可能にする追加議定書の調印の用意があるとするものでした。
また、射程300キロメートル以上、搭載重量500kg以上のミサイルを廃棄すると約束しています。 つまりリビアは、中距離弾道ミサイルまで廃棄すると合意したわけです。
ここは重要なポイントです。
今回の北との交渉においても、長距離弾道ミサイル(ICBM)の廃棄はあたりまえですが、問題は既に保有している中距離のノドンなどをどう処分するかだからです。
これが廃棄されないかぎり、日本国民は半永久的に北の核の刃の下で暮らすことになります。
ちなみに、この時リビアはIAEA事務局長に、10年以上前から報告義務をサボタージュして開発を続けており、現在すでに大量の遠心分離器を持っていると告白しています。
80年にはリビアはIAEAとは保障協定を結んでおり、当該国が隠そうとすれば隠しきれるということが分かり、衝撃を与えました。
リビアは協定破りをしていたわけで、口約束など無意味だという教訓を米国に与えました。
そこで、IAEAの委託によって米国による非核化作業が開始され、リビアの製造途中の核兵器とその製造施設は米本土に搬出され、2年間かけて解体作業をすることになりました。
そして2005年までの検証と解体作業を経た後、原油輸出制裁解除と国交正常化をしました。
ところがその6年後の2011年、いわゆる「ジャスミン革命」が起きて、カダフィは自国民によって惨殺されます。
このカダフィの死にざまを横目で見ていたのが北でした。彼らもまた別な意味で衝撃を受け、彼らなりの総括をします。
つまり核を手放したら最後、必ず独裁者は殺されるという教訓を得たのです。下図が米国がテロ支援国家に指定した政権のたどった道です。
・キューバ・・・米国と手打ちして国交正常化
・イラク ・・・イラク戦争の結果フセインは処刑
・リビア ・・・ジャスミン革命でカダフィは惨殺
・シリア ・・・内乱によってISを生み出す
・イラン ・・・米国と手打ちして限定つき非核化を受諾
・スーダン・・・内乱によりアルカイーダを生む
・北朝鮮 ・・・国連制裁・軍事圧力
今や、残るのは内戦の巷のシリアを除いて、唯一北のみ。孤立感はハンパないでしょうな。
さて現在この北に、事前協議の場で高い確率でこの「リビア方式」が突きつけられる状況が迫っています。
正恩が、いかなる心境で、過去の大量破壊兵器に手を染めた独裁者たちの末路を見ているのか、ご想像下さい。
ちなみに、北はまたぞろ核実験の用意を始めたようです。
「北朝鮮が核実験用意」 河野氏、日朝会談に慎重:日本経済新聞 3月31日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28850180R30C18A3EA2000/
「核実験に関する北朝鮮国内の動向に関し、河野氏は「(過去に)核実験をした実験場で、トンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命やっているのも見える」と明言した。
河野太郎外相は31日、高知市で講演し、北朝鮮が新たな核実験に向けた準備と受け取れる動きを見せていると明らかにした。米国提供の衛星画像を踏まえた発言とみられる。北朝鮮との対話については「焦る必要は全くない」と述べ、日朝首脳会談の早期開催に慎重姿勢を示した。
核実験に関する北朝鮮国内の動向に関し、河野氏は「(過去に)核実験をした実験場で、トンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命やっているのも見える」と明言した。北朝鮮に核放棄の意思がないことを強調し、包囲網を緩めないよう内外に呼び掛ける狙いがある。
日朝首脳会談の開催に慎重な理由に関しては「北朝鮮から『さあ、平壌へ来てください』と言われ、みんながこぞって行くようなことになったら足元をみられる」と説明した。米朝、南北首脳会談の実現見通しに触れた上で「日本は何もしなくていいのかという評論家がいるが、別に何もしなくても構わない」と指摘した」
まったくその通りです。前の外相の昼行灯ぶりとは偉い違いです。
これで河野氏が正しい経済政策を持っていたら、次の首相候補にエントリーしていいくらいです。
外相がいみじくもいうように、みんながピョヤン詣でをはじめたら足元を見られるのです。
しっかりと自国の国益を見つめてなすべきことをすればいいだけです。
日本は一部の野党やメディアがいうように、「乗り遅れて蚊帳の外にいる」わけではありませんし、そもそもそのような言い方自体、北の意図を忠実にリピートしているにすぎません。
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河野さんの超リアリストぶりには感心します。
国を動かす政治家さんたちはこうでなくちゃいけませんよね。
投稿: やもり | 2018年4月 2日 (月) 07時17分
9条という枷をはめられ、さらには国会が空転し続ける状況で日本はよく立ち回っていると思います。
蚊帳の外にいる国が電撃訪韓を要請されたり首脳会談を設定される事なんてあるわけないですし。
個人的には集団になると精神衛生上よろしくない事ばかりやらかす半島の方々とは一線を引いた関係であり続けたいところですが。
投稿: しゅりんちゅ | 2018年4月 2日 (月) 12時49分
安倍外交の成果
【ロシア】
・領土問題棚上げして経済協力で3,000億円献上→北方領土の軍事基地化加速。大規模軍事演習実施。事実上の領土放棄へ。
【韓国】
・デタラメ河野談話をなぜか蒸し返して公式に認めますやって
慰安婦に10億円やって、国交正常化時に放棄したはずの個人賠償の道を開く→大使館前の嫌がらせ像は撤去されず全世界に拡散中。今度は、徴用工で金寄越せのエンドレスモードに突入。
・そんな合意も全く履行されないのに、オリンピックで主要国の首脳として唯一出席→北朝鮮に持ってかれる。
【アメリカ】
・TPP入りのため、アメリカの言いなりに規制撤廃や輸入枠の拡大→アメリカTPP離脱で梯子外される。
・言い値でアメリカ製装備購入→国内の防衛産業壊滅。自衛隊の整備予算圧迫して、事故多発。自衛隊の無力化に拍車がかかる。
・アメリカの鋼材関税でEUや韓国は除外されたのに日本は対象になる。
【フィリピン】
・対中包囲網のために、1兆円プレゼント→中国から倍以上プレゼントされて、あっという間に寝返り。
投稿: 白兎 | 2018年4月 2日 (月) 13時23分
白兎とやら。どっちかと言えばライトの人みたいだが、この記事は安倍外交についてひとことも触れていていないし、議論にもなっていない。
テーマを無視して書き込まないでほしい。
次はブロックする。
それにしてもうすっぺらいね。外交ってきみがかんがえるほど簡単ではないのだ。
国際社会で自分の国の主張だけ通るとおもったら大間違い。
国益を基盤にして、いかに現実的回答をだすかだ。典型的には慰安婦問題をみればわかる。
短く答えておく。
●露・・・ここまでこじれた北方領土交渉はすぐに妥結しない。本来は1992年のソ連崩壊時に交渉すべきだったが、時期を逃した。いまは時間をかけて共同経済活動をして信頼醸成するしかない。
領土放棄?誰がいつ?ふざけなさんな。
北方領土に配備された露軍が拡大した。
はい、だからどうするの。露軍が自国領というところに展開するのは誰にも止められない。止めたければ戦争でもする?きみは戦争でもしたいのか。
どうするのか考えないなら、なんでも言える。
●韓国・・・河野談話は間違っていても日本国政府が出したものだから、いまさら引っ込められない。
できるのは検証だけ。それはやった。記事にもした。
もし一度出した官房長官名の正式声明をくつがえすなら、日本政府は前代の決め事をすぐにちゃぶ台返しする韓国政府と同列になる。
だから河野談話は、変更不可能。
これも、どうするのかかんがえなければ、なんでも言える。
したがって、できることは限られている
①このまま永久に韓国政府の罵詈雑言をあびつづけてディスられ続ける。
②河野談話を覆して、米国も含めた国際社会から批判を浴びて孤立する。
③日韓合意をして被害を最小限にする。
③を選んだのは賢明。さもなくば、いまのムンから100倍以上、慰安婦攻撃をされていた。
「解決済み。韓国は合意を履行しろ」という攻めのカードを握れたのは大きな成果。
それでも言われ続けるって。それはあちらの精神病理学的問題。
五輪で北に持っていかれた?
あたりまえ。ホスト国がその気で演出したんだから。
日本が出席したのは米国との関係で出ただけ。韓国とは関係ない。韓国だけだったら行かなかった。
北が来る以上、その歯止めが必要だった。だからペンスと一緒に緻密な作戦を練って出席し、ムンに釘を刺しただけ。
●米国・・・TPPは日本が勝利した。しかもほぼ完全勝利。
米国が負けたことは、逆にトランプの離脱で証明された。
米国は離脱してさらにいい条件を得る再交渉をねらっているだけ。
はしごをはずして困って いるのは、米国のほう。
TPP11を牽引したのは日本。これだけ大がかりな貿易圏を主導した成果は大きい。
米国は貿易圏のリーダーの立場を喪失し始めたことに気がつき始めているから、そのうち戻らざるをえなくなる。
米国製の高い武器買わされたって(苦笑)。
なに呼んだの?ソース教えて。よもや清谷氏?
勉強してモノ言え。高いというのは、こういう先端兵器は、機体単体ではなく、システム丸ごとの導入せねばならない。だから一見高く見えるが、当然のこと。
F35も、イージスアシュアも、いまの防衛に必須だから、相場で買っただけ。
事故多発ってなにがソース。一個一個言ってごらん。全部理由が違うから。
正面装備によって予算繰りが苦しいのは事実だが、整備の手抜きはない。短絡するな。
鉄鋼が韓国が制裁にならずにうちが除外されたのは、米韓FTAがあったから。
米国がTPPを離脱しなければ、こんな言いがかりをつけられなかった。
どのみち中間選挙目当てのディールだから、放っておけばいい。
個別交渉で鉄鋼をやったら、100%日本が勝つ。
●フィリピン・・・ドテルテの反米親中は元々。彼は元は親中派コミュニストに近かった。
それをとりなして、自由主義陣営に引き戻したのは日本。
ドテルテとサシで話せる首脳はうちの国だけ。トランプにフィリピンにいかしたのもうちの国。
どのみち、フィリピンがふらふらするのは読み込み済み。
敵にならなければいいだけ。
投稿: 管理人 | 2018年4月 2日 (月) 13時31分
ピョンヤン詣でといいますか、そもそも日本が北朝鮮にしっかりした外交ルートがあるのか心配です、朝鮮総連を通じ日朝会談を申し入れているという報道もありますが…もしかして日本は何もしなくていいというより、何もできないという方が近いのではないかと。日朝会談も多額の経済援助を持参してなんとか実現するかどうかというくらいでしょうか。
しかし他国の外交のおかげとはいえ東アジア情勢が激動しそうな中、拉致被害者奪還の最後のチャンスですから、なんとか取り戻して欲しいと願っています。このままでは拉致被害者奪還なんて到底無理だった、もし戦争となれば日本も拉致被害者どころか多くの犠牲は避けられなかったでしょう。もちろん楽観は出来ませんが、米朝会談の行方に注目です。
投稿: 改憲派 | 2018年4月 2日 (月) 20時12分
改憲派さん
1点だけ。
日本はそもそも北朝鮮を国として認めておらず、それゆえに国交などないです。これは米国も一緒。よって彼の地は、地域を実効支配している人さらい集団でしかありません。
だから国交をもつ中国共産党に対して「何とかしろよ、(略)」と言ってるわけです。
そんなんが核兵器をつくることができるようになって、世界にばら蒔こうとしてるんですから。そりゃ核兵器保有国はたまったもんじゃないというわけです。
日本が拉致被害者を助け出す為に金を出すのは構わないですが、その後に金の回収と非核化はセットです。核兵器と拉致被害者という人質が無くなったら北朝鮮を守る盾はないのと同じじゃないでしょうか?
つまり、金一族の亡命と引き換えるくらいしか、拉致被害者を無事返してもらう方法はないかもしれません。嫌な結論だ。。。
投稿: スカイ | 2018年4月 2日 (月) 22時07分
やはり今日本は何もしないでいいというより、出来ないというのが近いのですね…安倍総理は以前から拉致被害者奪還を訴えていたのに、北朝鮮との水面下のルートすら確保していなかったなら驚きです。まさか圧力一辺倒で拉致被害者が戻ると考えていたわけではないと思いますが…
各国は水面下でいろいろ動いているのでしょう。
記事にある河野外相の「北朝鮮が新たな核実験に向けた準備」、どうやら米研究グループが否定していますね。実際どうなのでしょうか,
これについて日本は中国にまで足を引っ張るなと苦言を呈されていますが…
あれよあれよという間に北朝鮮情勢が動いています、日本が蚊帳の外でもなんでもいいのですが、いい着地点におさまるよう願うばかりです。
投稿: 改憲派 | 2018年4月 3日 (火) 23時13分