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米国と北が今、膝詰め交渉していることは何だろうか

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こんなニュースが入っています。 朝日新聞(5月3日)はこう報じています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180503-00000006-asahi-int 

「6月初めまでに開かれる見通しの米朝首脳会談に向けた両国の事前協議で、北朝鮮が、米国が求める手法による核の全面廃棄に応じる姿勢を示していると米朝関係筋が明らかにした。
また、北朝鮮は核兵器の査察にも初めて応じ、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄も行う意向だという。ただ、核廃棄に向けた期間や北朝鮮への見返りでは意見の違いが残り、協議や会談の行方によっては予断を許さない状況だ。
 同筋によれば、米中央情報局(CIA)当局者や米核専門家計3人が、4月下旬から1週間余り訪朝。北朝鮮側との協議で、首脳会談合意にこうした内容を盛り込む見通しになった。
 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は南北首脳会談でも、米国が求める完全で検証可能、不可逆な方法によって廃棄に至る非核化措置を受け入れる考えを示したという。米国は国際原子力機関(IAEA)を中心とした非核化措置を進めようと、すでにIAEAとの調整を始めているといい、日本にも協力を求める見通しだ」
 

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よく読むとたいしたことを言っているわけではないにせよ、私としては現時点ではなんとも言えません。 

そもそもこの記事では長距離核には触れていますが、日本が注目している中距離核には触れていません。

情報ソースが朝日という、決して米政府内部情報に強いとは思えないところだというのも引っかかります。 

特に、朝日が提携しているNYタイムスやCNNはトランプ政権と真っ向敵対関係にありますし、彼らすら抜いていないのに朝日が抜くということはちょっと考えにくいと思います。 

ちょうど今の日本で、朝日があまりにも過激な反政権姿勢をとったために官邸内部や自民党中枢から取材がほとんどできていない現状と一緒で、一体この「米朝関係者」の「米」とは誰を指すのでしょうか。 

またこの「米朝関係者」の「朝」が北政府関係者であった場合は、今くらい攪乱情報を投入するにうってつけの時期はありません。 

これが仮に韓国であった場合、いっそう信用できません。 

なぜなら、韓国政府筋が「北がこう言っていた」という伝聞で伝える情報は、韓国政府の願望が投影されていて、ほんとうに北が言ったことが歪められている可能性があるからです。 

北は先だっての南北首脳会談を見ればわかるように、巧妙に言質を与えることを回避しています。 

北は韓国に対してあえて誤解を呼ぶような表現をリップサービスして、それをムンが増幅して世界に発信するというパターンです。 

このように考えてみると、失礼ながらこのグッドニュースを額面どおり受け取ることはためらわれます。 

ただし昨日、山路氏が指摘されたように、そうとうの所まで煮詰まってきていることは事実ではないかと思います。 

おそらく北は「非核化」には総論賛成各論反対という立場であることは、おとといの王毅国務委員(副首相級)兼外相・正恩会談でも疑う予知がありません。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6281258 

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その理由は、これ以上経済制裁が長期に及ぶと、北の経済全体が本格的に瓦解する可能性が出たことです。 

中国が本格的に制裁に乗り出したために、現況で輸出入の9割近くを北は喪失している状態で、核ミサイル開発を継続することは物理的にも困難です。 

北の核ミサイルは公表されていませんが、(形式によっても違うでしょうが)米国のピースキーパーの価格から1基でおおよそ70億から100億円と見られています。 

これは、対中輸出がわずか10億円にまで激減した北が、今後、気楽に週刊弾道ミサイルを撃てる状況でなくなったことは事実です。 

また北経済の専門家は、この1基のミサイルで北の国民配給量のほぼ2カ月分に相当するという説もあります。

ミサイル撃つなら、その金で国民にメシを食わせてやれというのが、国際社会の常識です。

電力不足も深刻です。 

夜、電気がともっているのはわずかにピョンヤンだけです。 

下写真はNASAが2014年2月に撮った東アジアの夜景ですが、まるで北だけがブラックホールのような闇に包まれています。 

お愛嬌のように、一カ所ポツンと点いている場所がピョンヤンです。 

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北の水力発電と火力発電の比率は、6対4でしたが、水力発電は設備の老朽化と、河川の干ばつによって稼働率が2014年で3割を切っています。 

一方火力発電は、石炭の多くは輸出に振り向けられている上に、肝心の原油が途絶してしまっては回しようがありません。 

結果、工場は軒並み電力不足で開店休業状況だと伝えられています。 

となれば北としては、なにがなんでも経済制裁を解除させ、経済支援を得て原油や食料を調達し、寧辺原発を軍用から民需に回すしか残された方法はないのです。 

このように考えてくると、北が今、米国と膝詰めの折衝をしているテーマが透けて見えてきます。 

まず新たな核開発を放棄することに合意できても、作ってしまった現有の核ミサイル・核原料・核施設の処分です。 

北としては既存の核については、国際機関の監視の下に「保管」できないかということを主張している可能性があります。 

北は核保有こそ金王朝の「体制保証」の要と考えていますから、現実の軍事的合理性を離れて、固執しているはずです。 

よく世間には、「北の体制保証なんか簡単じゃないか。北を潰す気は米国だってないんだから、してやんなよ」と気楽に言う人がいますが、北が言う「体制保証」の担保は核保有なのです。

ちなみに米国も「北の体制保証を認める」と言うような場合もありますが、それは文字通りの意味で、核保有とは切り離して使っています。

「非核化」や「体制保証」などおなじ言葉を使っていても含む意味が米朝で違うことがよくありますので、ご注意下さい。

またこの「保管」を、朝日記事がいうように「IAEAの非核化措置」を受け入れて認めたとすると、経済制裁解除で一服した数年後に先代がやったようなIAEA査察官を追放して核保有復活というちゃぶ台返しが可能となるからです。 

第2に、先程述べた寧辺原発の民間転用をIAEAの保証措置(セーフガード)の監視の下で稼働を認めさせることです。

それはさておき これも、いつ何時ちゃぶ台返しをされるかわからない前歴の国ですから、米国が簡単に首を縦に振るとは思えません。 

第3に、今まで何度も触れてきたので短くふれますが、中距離核についてです。これをハズせば、日本への脅威は固定化されてしまいます。

第4に、経済制裁解除のタイミングです。米朝首脳会談合意と共に解除か、さもなくば核の解体・廃棄・搬出が完了されたことをもって解除時期とするかです。

後者にした場合、制裁解除は1年ほど先になります。 

識的には一気に制裁解除をやるべきではなく、何度かに分けてということになるはずです。

初回は交渉成立時に、2回目はIAEA査察受け入れ時に、3回目はその終了時に、4回目は解体・撤去時にということにでもなるのでしょうか。

今この時期、北はさまざまな観測気球を打ち上げて、自由主義陣営の世論の動向を探ろうとしているはずです。

「トランプはしょせんアメリカ・ファースト。長距離核さえ廃止できれば、中距離核や拉致には無関心だ」などというフェークを流して、日米同盟の分断を企むかもしれません。

ですから、私たちもしっかり吟味していかねばなりません。

 

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コメント

 数か月前の状況と様変わりになっておりますね。北朝鮮、もう強硬な態度はまったくとれそうもありません。

 数か月前までは、北朝鮮の暴発の恐れもあるのではないかと真剣に考えておりました。心配だったのです。途中、トランプ大統領が弱気になるのかもしれないとのうわさもありました。

 トランプ大統領に感謝します。えらい大統領だと思います。ケネディ大統領に匹敵する方です。トランプ大統領を心から称えたいと思っております。

 北朝鮮は亡んでほしい。人類のためにならない。覇権国家の中国もやはり今の体制は亡んでもらいたい。経済的に発展してきて豊かな中国人が海外へも旅行ができるほどにもなったのは良いことだが、覇権国家になってしまっては周辺国にとっては迷惑である。

 日本ももう普通の国として、防衛政策をシッカリしたものにしたいものだ。国会での野党の行動は呆れるほどだが、これも日本が再生する前の最後の珍事であったという風にはならないか。

投稿: ueyonabaru | 2018年5月 4日 (金) 06時27分

王毅氏と正恩の会談からは、正恩に対して「約束どおり、米朝会談において米軍に半島からの撤退を突きつけろ!」とハッパをかけに来たように感じます。

どっちにしても正恩に中・短距離まで含めた核の完全放棄の意思はないですね。
それでは金王朝の崩壊です。

正恩が核を放棄しても、米国に独裁国家の「体制の保証」など出来るもんじゃありません。
仮に「平和条約」を結ぶとした場合でも、それは結果的に米国の価値観を一部受け入れるという事になる。
今度はその普遍的な部分である「人権問題」でギュウギュウに締め上げられる事にもなるし、これまでの正恩の罪を見過ごされる事はありません。(武貞さんは、ここを見ていない)
次に民主党政権にでもなれば、人権侵害を理由とした武力攻撃もありうる。
遅かれ早かれ、少なくとも金王朝は排除される事になるでしょう。

こうした米国の今までのやり方を正恩が顧みないハズはなく、それを回避する唯一の方法が、引き伸ばし策から核温存への道筋です。
この問題はまだまだこれからが正念場です。

投稿: 山路 敬介(宮古) | 2018年5月 4日 (金) 08時46分

管理人の主張は過去と大違いですね。

投稿: 武藤 | 2018年5月 4日 (金) 09時40分

武藤さん。

状況が変われば考えや主張が違うのは当たり前ですよ。

それこそ教条主義者や狂信者じゃなければね。

投稿: 山形 | 2018年5月 4日 (金) 09時49分

武藤氏とやら。どこがどのように変わったんのですか?
私は北の核についての主張を、いささかも変化させていません。

それとも
私がかつては北と融和しろと言ったとでも?
北の核は平和の核だとでも書いていたとでも?
北とは話あいすべきで、圧力路線はまちがっていると書いていたとでも?
ムン韓国は信用できる盟邦と書いていたとでも?
トランプのやり方は誤っているとでも?

私は、自分でも頑固と思えるほど、北の核には一貫して同じことを書いています。

ふざけたことを書き込まないで下さい。

投稿: 管理人 | 2018年5月 4日 (金) 10時12分

信頼出来る情報元が少なく成りましたよね。

多くの情報を集めて精査分類し、
そこから事実を探さないと正しい認識も、
それによる予想も建てられませんよね。

大変だとは思いますが、頑張って下さい。

投稿: 月影 | 2018年5月 4日 (金) 13時36分

私は、金正恩は自己保身のために行動していると思います。
文在寅を金家の番頭に据えて、アメリカ、中国の御用聞きをさせて、核も差し出す、拉致被害者も帰します、だから、後から僕や親爺の罪状あげて追い詰めたりしないでねと云うだけの奴だろうと思うのです。
この条件とりつけたら、さっさと国外退去するのでは?
リビアのカダフィみたいな末路は御免だよと云うところではないでしょうか?
その後の北朝鮮は中国の支配下の土地となり、さて韓国はどうしたものか?という情景になるのでは?
と思います。

投稿: アミノ酸 | 2018年5月 4日 (金) 16時37分

大きな懸念はトランプが中間選挙に向けて、会談をしたという実績だけを作ろうとすること

投稿: 中華三振 | 2018年5月 4日 (金) 16時44分

中国の王外相が訪朝してから、その意向を受けた北が
「THAADを撤去しろ、人権問題のことをうるさく言うな」とまた言い始めましたね。
米朝会談当日になって蓋を開けてみるまで、何が出てくるか分からなくなって来ました。

投稿: 保守(戦後の) | 2018年5月 5日 (土) 07時37分

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