北は核を諦める気などない
なにか北朝鮮問題の専門サイトになりかかっているのでコワイ。もちろん違いますが、当面はお許し下さい。
さて、いくつか情報が入ってきています。
私がもっとも信頼するに足る北情報と考えているデイリーNKの記事です。このサイトの強さは、北内部に協力者がいることで、貴重な内部情報を伝えてくれます。
https://dailynk.jp/
あたりまえの話ですが、情報の積み重ねから国際関係が見えてきます。特定のロジックから導き出される結論があって、そこから演繹されるものではないのです。
ですから、情勢認識に善し悪の価値判断を押しつけるべきではありません。こうあるべきだという価値判断と、こうであるとする客観情勢認識は別次元なのです。
たとえば仮に私が、「北は核を手放さないだろう」と言ったとしても、それは北の核を肯定することでもなんでもありません。
麻生氏はこう言ったというので叩かれているようです。
「麻生副総理兼財務相は30日、東京都内で開かれた自民党議員のパーティーであいさつし、北朝鮮が進めてきた核開発に関連し、「『俺のところは核で武装する以外に手がない』と思う北朝鮮の感覚の方が、少なくとも戦略外交とかをいうときは正しい」と述べた」(読売5月30日)
この麻生発言のどこが間違っているのでしょうか。まったくそのとおりで、北は趣味で核をもっているのではなく、それが正しい外交戦略だと考えているから保有に突き進んでいるのです。
北は核を手放す気は毛頭ありません。それを大前提にして米朝首脳会談を考えるべきで、妙な期待感は持たないほうがいいと思います。
その手放さないという傍証の一つに、北が核実験を放棄したわけでもなんでもないことをデイリーNKが報じています。
何回も書いてきているので説明は控えますが、プンゲリ核実験場爆破は三流の政治ショーにすぎません。
それどころか、北の幹部はこううそぶいていています。
「北朝鮮政府のある幹部は20日、この実験場について、「すでに廃棄されていたもの」だと指摘。爆破については「金正恩時代の核戦略システムの完成を宣言するイベントでしかない」と述べたという」
(2018年5月18日「8月までに戦争準備が完了する」北朝鮮幹部が語る )
日本のメディアはまんまと引っかかって、一面に大きく「北、核実験放棄」と書き立てました。まったく馬鹿としかいいようがありません。
こんな感じでしょうか。
北は核のない平和な世界を望んでいる。そして圧力一辺倒の日米に対して平和攻勢をしかけている。この核実験場爆破は、この平和外交そのものなのだ。日本も平和と話し合いのバスに乗り遅れるなぁ(棒)。
これに似た解説は、うんざりするほどメディアでお聞きになったことでしょう。
裏返しに保守系論客の中には、北は追い詰められていて、もはや核放棄しか生き残る道はないということを言う人もいます。
楽観に過ぎます。追い詰められているのは確かですが、中国の動き次第では延命もありえますし、仮に会談もの別れになった場合に、いかにして北の核を軍事力でとりあげるのか、不透明です。
それどころかデイリーNKによれば、「新たな核システムの完成記念式典だ」というのですから、いささか驚きます。
「この幹部によれば、北朝鮮には豊渓里のほかにも、小型化された核実験に使える施設があるという。それと目されているのは、江原道(カンウォンド)板橋(パンギョ)郡の梨上里(リサンリ)から、隣接する黄海北道(ファンヘブクト)谷山(コクサン)郡の新谷(シンゴク)貯水池(1965年完成)を結ぶ水路だ。
「2013年から朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の部隊が動員されて滅悪(ミョラク)山脈を貫いて建設した」(同幹部)
トンネル水路が山脈を縦に貫いているため、貯水池の水門を閉じて水を抜けば、核兵器の実験ができるという」(前掲)
北が2013年から軍を動員して建設しているのはカンウォンド・パンギョ郡のリサンリから、隣接するファンヘブクト・コクサン郡のシンゴク貯水池を結ぶ水路に、新たな核実験場を建設していると言われています。
「トンネル水路が山脈を縦に貫いているため、貯水池の水門を閉じて水を抜けば、核兵器の実験ができるという」(前掲)
また北の戦略司令部には、小型原発が建設されているようです。
場所は、正恩の両江道(リャンガンド)三池淵にある別荘で、この別荘は山を貫いて地下司令部に繋がっています。
そこに小型原発を設置する目的はひとつしかありません。
すなわち、米国の軍事攻撃によって正恩の司令部が外部電源がブラックアウトした場合に備えているのです。いいかえれば、核戦争の準備です。
「両江道(リャンガンド)三池淵にある金正恩氏の胞胎(ポテ)別荘は、山脈を貫いて建設した地下司令部とつながっている。そこに小型原子炉を設置すれば、それをエネルギー供給源として、金正恩氏の司令部は米国から核攻撃を受けても生き残り、核兵器で反撃する余裕も持てるとのことだ」(前掲)
デイリーNKも述べているように、「ここで述べられているような情報は裏付けを取ることがほぼ不可能であり、どの程度まで信じて良いものか判断に迷う部分が大きい」のは事実です。
北は核に関する情報は一切公開していないために、必然的に伝聞となります。
ただし、ここから聞こえてくる北朝鮮軍の幹部の声は、「核戦略システムは完成した」という認識であり、また正恩が地下深く作られた戦時司令部に小型原発まで用意しているという認識なのです。
デイリーNKの記事はこう締めくくっています。
「そもそも、米朝対話や南北対話は成功が約束されているわけではない。不調に終わり、情勢がより悪化する懸念もある。そのとき、自分だけが「丸腰」であることを、金正恩氏が簡単に受け入れるとは思えない」(前掲)
米国のCIAがレポートを政府に出したと、米国メディアは報じています。そこにはこうあるそうです。
「CIA報告書はトランプ氏が首脳会談中止を表明した数日前に回覧された。閲覧した当局者らによれば、正恩氏が非核化に難色を示す一方、北朝鮮は事前協議で在韓米軍の完全撤収を求めていないと指摘。首脳会談でもそうした要求はないと予測しているという」
(時事5月30日)
https://article.auone.jp/detail/1/4/8/6_8_r_20180530_1527659771960696
また有名な北朝鮮分析サイトの「38ノース」はこう述べています。
「北朝鮮分析サイト「38ノース」の研究者たちの見方によれば、米朝の対話が再び軌道に乗る可能性は大きくないが、対話が動きだした場合も、北朝鮮の選択肢は以前より増えている。
「(北朝鮮の)立場が強くなった」と、38ノースの創設者であるジョエル・ウィットは述べている。「北朝鮮は、首脳会談が物別れに終わったり、トランプ大統領が一方的に会談を取りやめたりした場合に備えて、しっかり『プランB』を用意していた。今の北朝鮮は、中国、ロシア、さらには韓国とも良好な関係を築いている。以前のように最大限の圧力をかける路線に戻れると思っているなら、米政府は状況を見誤っていると言わざるを得ない」
(ニューズウィーク5月29日)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180529-00010001-newsweek-int
この「38ノース」のウイット氏の意見は、中国が後ろ楯になって、中国経済圏が延命手段になるというもうひとつのシナリオです。
これによって米国はこれ以上の圧力を封じられると見るわけですが、一理ありますが全面的には同意しかねます。
しかし、会談が決裂した後が、霧の中であることだけは確かなようです。ああ、ユーウツだ。
« 正恩が最も恐れるものは | トップページ | 翁長氏を継ぐのは誰か? »
お早うございます。
麻生財務大臣のコメント私は知りませんでしたが、管理人さんがご指摘通り
一体どこに問題があるのでしょう?さっぱり分かりません。
安倍総理や麻生財務大臣のコメントには何でも反対という脊椎反射でしょうか?
野党は相も変わらずのモリカケ一辺倒。
馬鹿な連中は加計学園にアポなしで訪問し門前払いを食ったとか。
こんな馬鹿どもに年間数千万円の歳費を呉れてやっているかと思うと
なんともやりきれない思いです。
テレビはと言えば、こちらは日大アメフト問題ばかり。
いやするなとは言いません。
アメフトは好きで結構見るほうですが、あれほど質の悪いタックルは見たことがなく、
その後の大学側の対応も後手後手で決して褒められたもんじゃありませんが、
とはいえ、こうも連日横並びで報道する必要があるのかと思わずにはいられません。
「人の行く裏に道あり花の山」とは株の世界の格言だそうですが、
付和雷同ぶりが目に余るマスコミに是非贈りたい言葉ではあります。
記事内容と全く関係ない話になってしまいました。申し訳ありません。m(__)m
投稿: 右翼も左翼も大嫌い | 2018年5月31日 (木) 07時39分
麻生さんの見方は正しいし、だからこそ交渉が難航しているんですよね。
その交渉を網の目を掻い潜れるものにしたり、あるいは「段階的」と決着する事でもって、あるいは実際の検証作業をやる中においても、ありとあらゆる機会をもって、ありとあらゆる方法を用いて核を所持し続ける正恩の意思は全然変わっていません。
その意味は北朝鮮軍部の不満分子があって、ソフトランディングさせる必要があっての事かも知れませんが。
だから、会談が成功したからと言って武力攻撃の可能性が全くゼロになるワケではないし、失敗したからと言って必ず武力攻撃があるというワケでもないのでしょう。
米軍としても武力攻撃をするためには、北朝鮮をなるべく裸に近い状態にまで追い込まねばならず、ギリギリのせめぎ合いや神経戦、絶え間ない制裁と圧力の中で正恩が改心し、軍部の不満が分散・収束しないとも限らない。
その分岐点やメルクマールになるのが「拉致問題の解決」の位置づけなのだと思います。
いずれにしろ、この問題はまだまだ時間がかかりそうです。
しかし問題は、このデイリーNKの高さんの記事群だって全部が全部真実ではないにしろ、特に北朝鮮の地上最悪の人権状況を詳らかに伝えている重要なものが多く、こうした報道が我が国の新聞・テレビでは一切ない事です。
これでは我が国の国民の判断に誤りをもたらすだろうし、持久戦になった場合の耐力も培われません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2018年5月31日 (木) 08時54分
山路さん
> 特に北朝鮮の地上最悪の人権状況を詳らかに伝えている重要なものが多く、こうした報道が我が国の新聞・テレビでは一切ない事です。
これでは我が国の国民の判断に誤りをもたらすだろうし、持久戦になった場合の耐力も培われません。
おっしゃる通りですね。マスコミは何故報道しないのか。このことを度々考えたりするのですが、一つには、国民は北朝鮮の収容所のことなどに関心がないことが挙げられるでしょうね。国民が関心がないことをわざわざ取り上げはしないということでしょう。
尖閣諸島を中国が狙っておりますが、これもマスコミは取り上げません。北朝鮮の重大事も多くの国民には他人事のようなものです。ミサイルを撃たれない限り真剣に考えることはしないのでしょう。
話題を変えますが、沖縄と薩摩の関係がどのようなものだったかが私の大きな関心事でありました。不勉強でもあり、自己責任なのですが、良くは知らなかったのです。図らずも仲村覚氏の著書「沖縄はいつから日本なのか」に巡り合うことになりました。この本を読むと、薩摩と琉球の関係は親密なものではなかったのかと思わされるのですね。歴史の正確な理解はとても大切なものですので、このブログの皆さんには是非ともお読みいただきたいと思っております。なかなか立派な本ですよ。
投稿: ueyonabaru | 2018年5月31日 (木) 23時56分
ueyonabaruさん。ご紹介の本は心いたしますが、この記事は米朝交渉について書いているので、尖閣は関係ありませんし、沖縄と薩摩の歴史も無関係です。
常連さんなのであえてきつく言いましたが、記事内容について書き込むのがコメント欄の原則ですので、よろしくお願いします。
投稿: 管理人 | 2018年6月 1日 (金) 02時25分