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北の非核化プロセスとは

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本日は沖縄慰霊の日です。遠方より黙祷を捧げます。 

さて、いやな兆候がでています。北が予想はされていたのですが、引き延ばし戦術にでています。 

「マティス米国防長官は20日、北朝鮮が非核化に向け具体的な行動を取ったかについて『私の知る限りない』と述べ、核放棄の行程など詳細に関する米朝交渉も始まっていないとの認識を示した。ドイツのフォンデアライエン国防相との会談冒頭、記者団の質問に答えた」(産経6月21日)
https://www.sankei.com/world/news/180621/wor1806210009-n1.html

 米国は、既に北に対して米韓合同演習の中止というリトマス試験紙を渡していますから、このような事前協議すら始まらないという状況が続けば、演習の復活ていどの対抗措置だけでは済まないはずです。 

米国政府は制裁の継続を議会に通告しました。

「トランプ米大統領は22日、北朝鮮に対する米国独自の制裁を継続する方針を議会に通告した。米大統領は制裁を継続するかどうかを1年ごとに判断することになっている。北朝鮮の核・ミサイル計画などが「米国の国家安全保障にとって特別な脅威」に当たるとの見解を維持した。
 トランプ氏は、シンガポールで行われた12日の米朝首脳会談で金正義恩朝鮮労働党委員長が「完全な非核化」を再確認した後も、北朝鮮が非核化するまでは制裁を緩和しない方針を示している」(時事6月23日)

これはほんのジャブですが、今後、北がつけ込む余地があるとすれば、米国内に存在する非核化と制裁解除のテンポについての認識のズレです。 

Photo_2ジークフリート・ヘッカー米スタンフォード大学教授 

ヘッカー米スタンフォード大学教授は、完全非核化まで10年以上かかるとみています。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-9386.html 

かつてのリビアモデルと違って、北はGDPの大半を注ぎこんだ膨大な核施設と核物質、弾道ミサイル群を保有しています。 

これを一気に国外に搬出することは不可能です。

「ヘッカー教授チームは同報告書で、米国政府が迅速かつ完全な非核化方式として北朝鮮に求める「リビアモデル」を北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が受け入れるのはあり得ないことだと指摘した。彼は「リビアは核兵器の近くにも行けなかったが、北朝鮮は脅威的な核兵器と巨大な核施設を持っている」とし、「(リビアのように)北朝鮮の核兵器を国外に搬出するという提案はナイーブで危険だ」と指摘した」
(ハンギョレ2018年5月30日)

http://japan.hani.co.kr/arti/international/30721.html 

米国はこの間なんどとなく、「非核化に向けた長い道のりの始まり」という表現を使ってきました。 

非核化の代わりに「平和への道のり」という場合もありますが、意味は一緒で、非核化には多くのステップが必要だという認識は共有されているようです。

「非核化」という漠然とした概念は米国内で共有されているものの、ではどうするのかというプロセスはかならずしも共有されているとは言いがたいのです。

俗にいう、NSC派と国務省派の温度差です。

ひとつの非核化ロードマップに、ヘッカー教授の3段階非核化ロードマップがあります。 

第1段階:・1年で軍事的・人的活動を中止 
第2段階・:4年で核団地・武器・施設の削減 
第3段階・:5年で核兵器の除去・NPT加盟 
 

これがヘッカー非核化10年説です。 

ヘッカーが第2段階で提唱している「武器・施設の削減」は、いわゆる核軍縮協議を意味します。 

これは絶対に避けるべきことで、米露が1991年から2000年代始めに渡って2回に渡ってやったような戦略兵器削減交渉(START1・2)は、協議自体に極めて時間を要する上に、相互に核軍縮をするということになります。 

米国が北の自称戦略核兵器ごときとバーターで、核軍縮に臨むことはありえない以上、このプロセスは不毛な時間の浪費以外なにものでもありません。 

かくしてヘッカーによると10年という長期スパンの最終段階にならなければ、核兵器は除去できないわけで、これでは北の核の脅威を除去したとはいいきれなくなります。 

そしてこの間、北に対して制裁解除を段階的に実施すれば、次の段階に入る前にまた意図的遅延行為をして代償を要求し、困り果てた米側がハードルを下げてしまうということの繰り返しになりかねません。 

その時には、ホワイトハウスにはトランプもボルトンもいないはずで、またもやオバマのようなタイプの戦略的忍耐主義者が座っている可能性があります。 

すると北の非核化作業は竜頭蛇尾となってしまい、グズグズと10年を超えても核兵器はいっかな解体されていていないという状況もあながちないとは言い切れません。 

こうならないためには、ヘッカー教授が10年先にしてしまった第3段階の「核兵器の除去」を、最初の第1段階に持って来ねばなりません。 

これはヘッカーがいうように非現実的ではなく、その技術を持った専門家は米英露に多数います。

まず最初のステップは、北に隠し立てなく核の保管状況を申告させることが第1段階です。

第2ステップは、それに基づいての国際機関の北国内の査察です。日本は非核化に資金提供すると言った以上、国際機関に拠出する形になるでしょう。

第3ステップはこの専門家たちが、北の核の中核的部分(つまり核爆弾と弾道ミサイルですが)をなんらかの方法で国外に搬出することです。

ここまでは北の対応次第ですが、1年から2年ていどで終了できるはずです。

あとの核製造施設、核物質、核基地、に関しては、続く第4、第5のステップに委ねてもいいでしょう。

とまれ、最も危険なものからまっさきに除去していくのが大原則ではないでしょうか。

サッカーじゃありませんが、遅滞行為はイエロー、次からはレッドカードでのぞまないとダメです。 

 

 

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コメント

 今日の記事を読んで、あるいはヘッカー氏の論説を先に読んでいた方々は「北に核放棄をさせる事は無理」と単純に考えてしまうのではないでしょうか?

あるいは北の「完全非核化には216兆円かかる」との、何とかいう英ヘッジファンドが試算した馬鹿げた数値もある事ですしね。

私自身は今だに、「アメリカは北核に関するの「意思」と「能力」の分離を画すべき」と考えてます。
その私の考えはともかく置くとして、CVIDはもちろん最終目標に違いありません。

けれども、上記のヘッカー論説を元にして「北に核放棄をさせる事は無理」と考える向きは、同時に例えば北核の運搬手段(ミサイル)がなくなる事をもって「北核の脅威は完全になくなった」と考えてしまう人たちなのだと思うのですね。

ヘッカー氏は専門家らしく「完全非核化」という完全無欠の最終目標の為の段取りを提示しているのであって、だから必然的・結果的に記事のような現実味のない段取りになるのでしょう。
教授の研究目標は、我々に対する「北による核の脅威を取り除く事」を第一の研究目標としているのではない事に留意すべきです。

具体的には例えば、二年以内の核運搬手段の廃棄が出来れば「一段の脅威は去った」と言えるのであって、そうなればトランプ氏やポンペイオ氏が言っている事に合致します。

投稿: 山路 敬介(宮古) | 2018年6月23日 (土) 19時40分

2018.6.24 相模 吾
23日付写真 木漏れ日の中の梅一粒、桃かな? 光の使い方がとても良いと思いますが、やはり場面の切り取りかたが見事です。ブルーローズも霞ヶ浦の夕焼けも、その一瞬と被写体の捉え方が良いと思います。すごく私の感性に合います。
 さて、ブログ内の最近の皆様のご意見には、北朝鮮、韓国の政情に不安と批判が多く見受けられます。曰く不誠実、嘘つき等々。私もそうは思いますが、半島住民のおかれた立場から見ると、そんなものだ、と突き放して考えたほうが良いと思います。 東の中華帝国、北の独裁拡張主義大国に挟まれ大昔から圧迫されてきた民族ですから。まして東海の小島の住民が可愛げのない日本民族ときているからなおさらです。5世紀には日本も半島の一部を統治していたこともありました。7世紀には渤海に日本人が移住したり、9世紀には女真族が九州に侵攻したり、元の侵攻では朝鮮が先発して日本に来襲しました。倭寇や秀吉の半島進出があり、徳川鎖国期には朝鮮通信使が往来した、また日清戦争、日露戦争も朝鮮政府の腰の据わらなさが、原因の一つです。文化面では、飛鳥古墳の壁画に朝鮮様式が見られたり、大仏建立に朝鮮技術者が活躍したり、それらの技術者が日本に移住してきて日本各地で街を作ったり。明治期には、日本が半島に近代化の技術、文化を持ち込んだり。そう、いろいろあったのです。紀元前100年ごろから2.100年間、仲よくしたり、角突き合わせたりの繰り返しでした。 仏教を廃し儒教の悪い影響を受けた現在の朝鮮は見苦しい。同じ仏教儒教の影響を受けた日本人がそうならなかった一つの原因は、天皇を中心に据えながら権力と権威をわけた統治体制をとったことでしょう。もう一つの原因は、中国、ロシアの影響が半島で勢いをそがれて、軽微に済んだことです。ああ東海の小島で良かった。 半島が安定していることが我が国の最大の国益です。つかず、離れず、程よい距離が必要でしょう。
私の願いは、北が無条件で拉致被害者を開放しないかな、です。人権無視どころか国家の犯罪を指導者が認めているのです。戦後賠償がどうの、慰安婦がどうのという次元の話しではありません。先日の貴記事に合った蓮池さんは我が法学部のずっと離れた後輩ですが、北に残された他の被害者を慮って、自分の言いたいことを我慢しながら発言するのが痛々しいし、横田早紀枝さんをみると涙がこみあげてくる。
 貴ブログの素敵な写真をみて心穏やかにいたい。作物や家畜を育てるお話を読みたい。おそらくブログ主が一番願っていることではないでしょうか。
     投稿ではありません。感想です。

投稿: 相模 吾 | 2018年6月23日 (土) 22時23分

2500年前の中国人軍師が既に書いているように、国と国
との対決は、巧妙に騙くらかして油断させトンデモナイ
奇襲攻撃を仕掛けてテッテ的にブチのめしダメモトの捨
て身の反撃を受ける前にわずかに退路を与えて深追いし
ない、というのが必勝法です。

日本の取材力も無いたいして情報元も持たないマスゴミ
の方々には、もうテンで予想する能力がありませんので
彼等の流す情報?は聞き流しで良いと思います。視聴率
が取れるように、オモシロオカシク脚色してるだけ。

私のシロート予想は、今なぜ親ビンが中共に貿易戦争を
執拗に仕掛けているのか?を考えると、旧ソ連の成功例
を夢見て「どうせチビロケのバックにはプーさんがいる
んだろーが?米国の覇権にかけてココは退けねー、中
共の巨大な不良債権に火を点けてやるぜぃ」「もろとも
兵糧攻めだ」「オレの舎弟も酷い目に合うが、安全保障
をしてやるんだから文句は言わせねぇ、なぁシンゾー」

北朝鮮は新しい中国の楽浪郡となり、かつて眠れる獅子
と言われた清国が本当は死んだ獅子だったように、中共
も実はありふれた貧乏共産国でマネーはあってもカネは
無く、体外的にはお金持ちである日本が楽浪郡に資本を
注入させられるのであった。

投稿: アホンダラ1号 | 2018年6月23日 (土) 22時33分

日本人を拉致した北朝鮮に対して対話も譲歩も一切必要ない。なぜ人さらい相手にこちらが白旗を上げてご機嫌取りをしなければいけないのだろうか。核ミサイルを持っているからといって、北朝鮮の足を舐めて尻尾を振る必要など無い筈。

投稿: ヒロ楡谷 | 2018年6月24日 (日) 18時02分

上記コメントは『蓮池薫氏インタビュー』に対するものだったのを誤ってこちらに送信してしまいました。

投稿: ヒロ楡谷 | 2018年6月24日 (日) 18時05分

ヒロ楡谷さん。ものすごく短絡していますね。
交渉することはあなたがいうように、「白旗をかかげて足をなめるようなご機嫌とり」することではありません。
言葉を使った弾の飛ばない「戦争」です。

日本が軍事力という圧力カードを使えないいらだたしさは理解できますが、今この時期にそんな大枠のことを言ってもせんないことです。
落ち着いて下さい。

投稿: 管理人 | 2018年6月25日 (月) 07時28分

ヘッカーさんは北朝鮮から招かれていた人。
江崎道朗先生が解説しています。
ヘッカーさんの2年かかる説を重要視する必要がないことも説明されています。必見です。

https://youtu.be/SleCovNgQGg

投稿: しぇりー | 2018年6月29日 (金) 11時44分

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