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シンガポール会談は、新しいトランプ・トラップか?

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シンガポール会談以後、私の頭を去らなかったのは、「なぜ、トランプはこのような融和劇を演じたのか」ということでした。

これを単純に失敗と片づけていいのかどうか、今回ほど分からない会談は珍しいことです。

朝日と産経が期せずして、ともに「具体策なし。検証にふれず」と書いていることからも,立場を問わず否定的分析になっています。

そこでこの難問を、三本の補助線を引いて考えてみましょう。

ひとつめの補助線は、ホンペオが直前まで言っていたCVID方式の発祥の地であるリビアです。これを実質で担当していたのがボルトンです。

ルトンはこの方式の全米指折りのプロパーといってよいでしょう。

その彼が会談に同席しながら、なぜあのような融和劇となってしまったのか、それがどうにも解せませんでした。

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ボルトン安全保障担当大統領補佐官がぶちあげた核弾頭の米国への移送などの案、いわゆるリビア方式などは、実現すれば外交史に残る金字塔になったはずでした。 

しかしそれを急がずにあえてあのような融和劇を許したのか、なにかもうひとつ先の思惑があるのではないかと私は考えました。

かつてのリビアの保有する核施設や核兵器は一握りであり、後ろ楯となる大国がないカダフィは協力的でした。

そうなったのは英米がある時は脅し、ある時は猫なで声でなだめすかしたからです。 

かつてのリビアの非核化をふりかえると、結果としてのCVIDのみが強調されますが、それはあくまでもエッセンスのようなものです。

そこに至るまでに、米国は1986年にカダフィ自宅を空爆する斬首作戦で脅し、同時に丁寧な言葉で「なだめすかす」手法を織りまぜているのがわかります。

001ec94a25c50f2069882f米空軍・海軍によって爆撃されたカダフィ自宅。とうぜん、米国は北に対しても同様の作戦が可能である。

そう見てくると、ひとつの絵が浮かんできます。

憶測の域をでないとお断りしておきますが、今回のシンガポール会談で、「脅す」ステージから「なだめすかす」ステージに入ったのではないでしょうか。 

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北にはある種の幼児性があって、ダメだ、とりあげるぞと言おうものならかえって依怙地になってしがみつきます。 

あるいは必死に核という宝物、あるいは玩具を、隠そうとします。 

それを手放させるためには、いくつかしか方法がありません。 

一番目は、殴って玩具を取り上げる方法です。 

二番目は、殴るぞと強く脅す圧力をかけることです。 

三番目には、いい子だからこれを手放せばハッピーになれるんだよと言って警戒を解くことです。 

前提として押えておきますが、北の核は未完成です。投射能力が不完全なために、「ある」というだけで、実戦に使用できるようなシロモノではありません。 

特に長距離核は、火星15のミサイル誘導と再突入技術が未完成な上に、核の小型化にも成功していないはずです。 

プンゲリ核実験場を検証する前に爆破したために、実は核実験と称してきたものもフェークではなかったのかとさえいう専門家もいます。 

核実験場のガスなどをサンプリングすれば、その威力がバレるからです。 

ですから、トランプは「正恩の宝物」が玩具でしかないことをよく知ったうえで、今回の会談をしたのかもしれません。 

ならば、どうして北の核が「存在する」という前提でこの間、圧力をかけてきたのでしょうか。 

理由は難しくありません。核というのは一定の推定する材料が揃えば、それが完全であろうとなかろうと「ある」ことを前提として対応せねばならないからです。 

仮にグレイだとしても、仮想敵国がブラックとして政治的に利用する以上、あくまでもホンモノとして対応するという外交セオリに従ったまでです。 

ただしフェークだと認識している場合、その切迫性はありません。

本当に米本土に到達しうる核ミサイルを保有したと認めたならば、ウーもスーもなく直ちに爆撃をしているはずだからです。

すから、ただちに「玩具」相手に軍事攻撃を仕掛けるというようなリスキーなまねは控えたのです。 

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トランプとマティスには一種の漫才のような役割分担があって、トランプが「炎と怒り」を叫んで明日にでも攻撃命令をだすようなそぶりをすると、マティスが「まぁまぁ」となだめてきました。 

こうやって緊張を人為的に高めて言って、その裏では先日にも書きましたが、北の外貨稼ぎの道を閉ざし、さらには金王家の秘密口座を凍結しました。 

これで正恩は独裁者としての権力の源泉を失いました。外貨はこの夏で払底するでしょうし、農業生産はとっくにズンドコです。 

民は食えず、取り巻きの将軍どもにバラまくカネがない、これが正恩の置かれた状況です。

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となればもはや中国にすがりつくしかないわけですが、それは中国の属国となることと一緒で、父祖の主体思想の教えに背くことになります。 

こうしてトランプは、シンガポールに正恩を「追い込んだ」のです。 

捕獲してしまえばこちらのもの。後は「とろかす」だけです。これが今回の融和劇だったと私は見ます。 

今回の会談は予想を超えて長引きました。何を話していたのか気になるところですが、コメントにあったような付帯文書や秘密条項ではないでしょう。 

だったらそれはそれで大変に面白いのですが、おそらくトランプはCVIDを事細かに論議していたのではなく、北の「明るい未来」を延々と口説いていたのだと思います。 

それはトランプの夕方の記者会見の前に、延々と流されたビデオ・クリップでなんとなく想像がつきます。 

あれで正恩に見せたかったものは、核を手放せば開けて来るだろう「明るい北の未来」でした。

ここで二番目の補助線が見えてきました。

それはあのプレゼン用ビデオクリップの意味です。 あのビデオ・クリップを誰に見せたかったのでしょうか?
The action-movie style trailer Trump says he played to Kim Jong-un   
https://www.youtube.com/watch?v=aYsaC2CADs0

フツーは首脳会談でこんなもの作りませんよ。米独首脳会談でこんなもの見せたら、メルケルならその場で帰っちゃいますから(笑い)。

正恩だからこんなものを用意したのです。実際にトランプは直に見せているそうです。

そうでなければ、合衆国大統領登場の前座として流すようなものではありません。オバマだったらぜったいにしないでしょう。

こんなものを米国は会談前から作っていたのですから、これを見ただけでトランプの思惑が透けて見えます。

これは「教育ビデオ」なのです。

世間知らずの核を持って何様になったと勘違いし、それで大国と張り合えるとおもっている田舎の若造に「教育」するためのものです。

では、なにを「教育」するのでしょうか?

すると、ここでもう三番目の補助線が浮かんできます。それはこのシンガポールという会談場所です。

なぜシンガポールだったのか、です。言い換えれば、トランプは何を世間知らずの田舎の若きボンボンに見せたかったのか、です。

それはシンガポールがこの会談を充分に利用し尽くしたことでもわかるように、したたかな商業都市国家であり、個人GDPで日本を凌ぐ国だからです。

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正恩が夜に出かけたマリーナ・ベイ・サンズは、カジノとショッピング・モールの複合施設として、莫大な富を生む金の卵を生むガチョウであることは有名です。 

商売人であるトランプが正恩に見せたかったものは、核のダンビラを手放せば、安心して外国人旅行者が「最後の秘境」の北に押し寄せ、マリーナ・ベイ・サンライズのようなカジノでも作れば、金が流れ込むぞという絶好の実例です。 

非核化をすれば、経済制裁を緩めて金家の秘密口座も凍結を解除してやらんでもないぞ、ということです。

締め上げられたあげく、斬首作戦も含む軍事攻撃を受けるか、カジノでも作ってウハウハするか、さぁどっちを選ぶのかね、というわけです。

えげつないですが、トランプなら考えそうなことです。

このように考えてくると、シンガポール会談とは、周到に仕組まれた新しい非核化へのトラップなのかもしれません。

■お断り 冒頭部分は主張を明確にするために全面削除して、書き換えました。いつもすいません。

 

 

 

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コメント

アメリカがなだめすかしているというのは、私も当たっていると思いますし、それはあくまで態度の差でしかありません。
制裁は当面維持と明言していますしね。
どうでも良い「名分」を譲歩したように見せ、「実利」に一切妥協しないのならば重畳だと思います。
よく「北の外交的勝利」と言う識者がいますが、実際には何も決まっていないし、「何も変わっていない」のです。
非核化を一挙にやろうが、段階的にやろうが、まずはアメリカやIAEAの主導で、「北による制限のない査察」が必要になります。
実態も分からずに非核化もない訳です。
しかし、論点はまずそこで躓きます。なぜなら、北は核に限らず国民生活等、「見られては困るもの」、「見せられないもの」で構成された国だからです。
北の実態が明らかになると、ともすれば金家の為政者としての資質に国際的な疑義と批判が突きつけられるでしょう。
となれば、査察を受け入れない、または制限付きでの査察を要求し、結局何も変わらないというオチなのではないかと・・・
緊張を緩和しつつ制裁を引き延ばして、北に「渇え殺し」をし続け、さらに食料(経済援助)をちらつかせれば、早晩相手は折れてくる。
今回の会談は、その中の茶番のひとつ程度のものなのかな、と私は考えています。

投稿: ゆき | 2018年6月14日 (木) 07時35分

会談がよかったのかどうかは、時間をおかないとわからないので、
静観していましょう。
アメリカが懐柔してというのはあるかもしれませんね。
朝鮮半島の地勢的にみて、中国が出てくるのは当然ロシアが出て
いないのはなぜでしょう?
また、トランプ政権が終わる2~4年後また方針が変わるのだろうなと思います。
北朝鮮の核はもう安全だよ~と、トランプさんが言うならイージスアショア導入
見送るね~というのはありなんだろうか。建前上は北を見据えて、だから。
お金の支援・・・、拉致問題が解決するまでは、NOです

投稿: 万年花粉症 | 2018年6月14日 (木) 10時07分

↑間違えました。
2020年か2024年だから、2~6年後だった。m(__)m

投稿: 万年花粉症 | 2018年6月14日 (木) 10時34分

 共同声明文の中に次の一節があります、

> トランプ大統領と金正恩委員長は新たな米朝関係の樹立と、朝鮮半島での恒久的で強力な平和体制を構築することについての問題に、包括的で詳細かつ誠実な意見交換を行った。トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の非核化を完結するための固く揺るぎない約束を再確認した。

 この声明文が出されたことだけでもも大きな意味があると思いますね。具体的にはこれから双方が詰めてゆくわけですが、 「金正恩委員長は朝鮮半島の非核化を完結するための固く揺るぎない約束を再確認した。」は、今後の双方の協議でも生きてくると思います。

 アメリカは経済制裁、軍事攻撃という武器があるのですから、北朝鮮は非核化を実行しなければこれらを使えます。中国が抜け道を作れば、中国への経済制裁も可能です。

 いろいろとアメリカが有利だと思いますね。

投稿: ueyonabaru | 2018年6月14日 (木) 15時16分

「朝鮮半島の非核化」ですので、北朝鮮だけが核廃棄をするのとは違うところがミソですかね。現実、在韓米軍が核兵器を所有しているのか否かは、藪の中ですし、公式には核は無いと言っていても、それを北が信じるか?逆説的に言えば、北の非核化の過程で、北が核兵器の数や実験施設、貯蔵施設の数を正直に申告するのか>それもまた藪の中です。交渉の過程で、韓国内に核は無いとアメリカが言っても、それを北が素直に受けつけなければ、「半島の完全な非核化」と言う合意事項に反しているといって、席を断つことも可能は訳ですし。一説によると、朝鮮半島の非核化には、在韓米軍だけでなく、在日米軍、B52戦略爆撃機、潜水艦戦略核も含まれるみたいな話も聞きますし、そうなると半島の非核化って、東アジアにおけるアメリカの核の傘をなくせと言うことですし、それは日本としては飲めない話で、もし仮にアメリカが譲歩したなら、日本の独自核武装論議も湧き上がってきそうですし。これからの交渉次第でしょうが、なかなか難しい交渉になりそうですね。ただ救いなのは、今の経済制裁が続けば、間違いなく北は潰れる訳で、それをテコにこちらに有利な条件で交渉できれば良いのですが。

投稿: 一宮崎人 | 2018年6月14日 (木) 15時37分

[管理人より]
中華三振氏です。


※ueyonabaru氏
>>アメリカは経済制裁、軍事攻撃という武器があるのですから、北朝鮮は非核化を実行しなければこれらを使えます。中国が抜け道を作れば、中国への経済制裁も可能です。
 いろいろとアメリカが有利だと思いますね。

会談も行われ、実態なき和平ムードが覆っている現在、軍事攻撃は難しいでしょ。中国への経済制裁といっても本格的にしたらノーガードの殴り合いになって中の被害より米の被害が大きくなるだけなのでやらないと思う。

投稿: | 2018年6月14日 (木) 18時29分

食の安全についての農薬や種についてのトピックス期待してブロブを拝見していますが、一筆啓上致します。
一昔前のシンガポールが、明るい北朝鮮と言われていたのを思い出します。
具体的な非核化へのロードマップが提示されなければ、体制を保証しないという、シンプルで分かり易いボール投げられたようですが、ワールドカップが終わる頃までに、我々大衆が納得する、シンプルで分かり易いボール投げ返されてくるのでしょうか?

投稿: ブログフアン愛媛 | 2018年6月14日 (木) 21時19分

共同声明で出されなかった部分、私は中東方面への武器販売や核移転をさせない確約だったのではと憶測しています。あくまで素人の憶測です。
イランやシリアに変なもん売って空爆されるか、カジノでもやって西側の一員としてウハウハするか、どっちやねん。
金正恩氏のなんだか生き生きした表情は、外遊先で自由と繁栄を見た高揚感を伝えています。
しかし、中国に接する立地が自由な繁栄を許さない訳で、これから数十年混沌とする半島に、日本が下手な同情や無防備な受け入れをしないで対峙する法整備を急ぎたいです。

投稿: ふゆみ | 2018年6月14日 (木) 23時52分

トランプ大統領は米朝会談の前に
一回だけののチャンスと発言しました。
そのうえで共同声明を出し、世界が聞いた。
翌日から、ボンペイオ長官が日韓外相と会談し、
トランプの任期中にやると説明。
安倍総理が拉致家族に今後の方針説明。
本気モードに突入です。
北朝鮮が一回だけのチャンスを生かしきれないと、ヒョットするかもしれません。そうなったとしても北の自滅行為。アメリカへの非難は無いでしょう。
北の体制保証とは言っても、アメリカは攻撃しないと言う意味で、今まで粛清された人たちの怨念まではアメリカとてコントロールできません。
一つ言えることは、今までの様にごね得は無いと言う事でしょうか。


投稿: karakuchi | 2018年6月15日 (金) 00時06分

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