英国の変化 テロリストに対する死刑執行容認への転換の兆しか?
前回の麻原の執行時には、ドイツやEUがずいぶんと気色ばんた抗議をしたようです。
いつものことですが、常に人類普遍の人道は我にありという態度でうっとおしいかぎりです。
EUは死刑廃止を加入条件にしているはずで、各国ともに国民の死刑に対する考え方や歴史が大きく異なるはずなのに、「人道」という名の画一主義で縛ってしまっています。
まぁしかし、EUはEUです。どうぞご勝手になさって下さい。外交は相互主義ですから、わが国はEUの「内政」に口出ししませんから、どうぞそちらもそうなさって下さい。
今回の死刑執行でも反対集会や弁護士声明が出たようですが、死刑に関しては日本国民の大多数 が支持していることは、よく知られた事実です。
内閣府が調査した「死刑制度に対する意識」の世論調査によれば、「死刑もやむを得ない」と答えた者の割合が80.3%であるのに対して、「死刑は廃止すべきである」と答えた者の割合はわずか9.7%という結果が出ています。
https://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-houseido/2-2.html
日本には日本なりの死刑に対する連綿たる哲学が、確固として存在することがわかります。
国に死刑という制度があるから、国民が容認しているのではなく、むしろ国民の歴史的な死刑に対する考え方を、国が死刑制度として取り入れらたと考えるべきでしょう。
さて、このオウム事件の本質は、大量破壊兵器を用いた大量無差別テロだということです。
関連記事「オウム事件を考える」http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/post-36d6.html
テロリズムの大量殺人から社会を守るために死刑制度があることを忘れて、テロの戦場となって久しいヨーロッパから、野蛮だの中国と一緒だのと言われたくはありません。
テロに対しての普遍的対応は、一にテロに屈しない、二にテロリストとは交渉しない、三にテロリストは完全に撲滅するということが原則です。
この原則に国境はないはずですが、日本は最後の完全撲滅には破防法に反対した時の村山首相のために阻止されましたが、おおむねこの原則に従って戦ってきています。
テロリズムは、一般的刑法犯罪と同次元で矮小化してはならないと思っています。
ですから、あくまでもテロリズムを撲滅する戦いの一環として、今回の死刑執行があるのであって、一般的な死刑論議の網をかけるのは誤りです。
私は一般刑法犯の死刑については意見を保留しますが、大量無差別殺人を働いたテロリストはこの限りではないと考えています。
ヨーロッパでは死刑廃止してしまったために、テロリストに対してその場で法執行機関の特殊部隊が射殺するという手段をとっています。
死刑をしないことが人類の至上の人道上の価値だというならば、自動小銃など使わずに、どうぞ身体ひとつで逮捕して下さい。
そしてヨーロッパの一部の国では「人道的」な刑務所に送って自由気ままにさせたために、刑務所が新たなテロリストを生み出す温床と化しています。
それが分かっているからこそ、ヨーロッパ官憲はテロリスト制圧作戦において、日本では考えられない現場での即時射殺を続けているわけです。
後述しますが、英国はテロリストに対して国外ではありますが、軍隊による無人機攻撃すらしています。
この方法ならば、正当防衛権が成立するからというわけです。しかし、それと死刑のどこが違うというのでしょうか。
これでは裁判なし死刑執行と同じではありませんか。
実はこの矛盾に、ヨーロッパに気がつき始めています。ブレグジットによって、EUのキレイゴトに縛られなくなった英国では、変化が現れています。
http://obaco.hatenablog.com/entry/2017/03/23/084003
上の写真はロンドンの5名が殺されたテロ現場です。日本でいえば国会議事堂前か、丸の内でテロか行われたようなものです。
「ロンドン中心部の英議会議事堂付近で22日午後2時50分(日本時間同11時50分)頃、男が乗用車で歩行者を次々にはねた後、議事堂の敷地内に侵入して警察官を刺殺するテロ事件が起きた。
男は直後に警察官に射殺された。ロンドン警視庁によると、男と警察官のほか、歩行者3人の計5人が死亡。重体・重傷者を含めてけが人は約40人に上る」
(読売2017年3月23日)
ところで英国は1998年に死刑を完全に廃止しているだけではなく、死刑制度が残る国への犯罪者・被疑者の引き渡しを拒んできました。
死刑制度がある国に、死刑相当の者を引き渡すと死刑にされてしまうからです。
今回この例外措置が出ました。
英国からシリアに渡ってISに加わり、凶暴なテロと拷問を繰り返していた英国籍のアレクサンダ・コティーとスーダン出身のエル・シャフィー・エルシークの身柄を、クルド人系反政府軍から米国政府に引き渡すことを認めることに踏み切ったのです。
通常は死刑をしない保証を相手国に求めるのですが、今回はそれをしないとジャヴィド内相は表明しました。
米国は州によってまちまちですが、死刑残置国とされていますから、英国はテロリストを従来の死刑廃止原則の例外としたのです。
米国に引き渡しを求めていたのは、両名が米国人も殺害しているからです。
この2名の上官は、モハメド・エンワジという男でした。
エンワジというより、「ジハーディ・ジョン」と言ったほうがいいかもしれませんから、そのように表記します。
私たち日本人が、忘れたくても忘れられないこの写真の男です。
この後藤健二さん、湯川遥菜さんをむごたらしく殺害したのは、この「ジハーディ・ジョン」です。
一方、エルシークは、「ジハード・ジョン」の指揮下に、同じく英国籍を持つエーヌ・デービスと共犯して、ISが「捕虜」とした多数の者を残虐な方法で拷問し、殺害していたことが判明しています。
「ジハーディ・ジョン」自身も、英米人のジャーナスト5名と人道支援関係者5名を殺害したことが分かっています。
この男の残虐さは国際社会の怒りを買い、英米軍共同作戦で居所をあぶり出されて、2015年11月に無人機によってラッカで殺害されましたが、その是非はともかくとして、英国は国外では裁判なし死刑を執行したことになりますね。
当時、EU加盟国だった英国は、苦しい選択をしたことになります。なお、この英国籍野テロリストたちは英国籍を剥奪され、無国籍になっています。
これはテロリストの国内帰還を認めない英国政府の方針によるものです。
よけいなお節介ですが、だとすると今回、米国に引き渡すことについて口を突っ込む法的根拠が薄い気がしますが、そのへんはどうなっているのでしょうか。
今回、英国政府はセッションズ米司法長官に対して、この2名について、「死刑に関する保証を米国に必要としないだけの理由がある」としています。
ただし、一方で英国内務省は、「これで死刑廃止原則が変更されたわけではない」としています。苦しいですね。
今後このテロリスト2名は、米国政府によって、テロリストが収容されている特殊施設であるグアンタナモ収容所に送られると見られています。
グアンタナモ収容所は、暴露されたように対テロ戦争でつかまえたテロリストたちの「捕虜収容所」です。
そこでは「厳しい尋問」と呼ばれる拷問が一般化していたことがわかって、オバマは閉鎖を命じていますが、トランプとなってまた復活しました。
ちなみに拷問を指揮したのは、いまのCIA長官ジーナ・ ハスペルです。
ヨーロッパは既にテロの標的となった以上、どこまでメルケル好みのキレイゴトを言っていられるのか、ということでしょう。
ヨーロッパが米国以上に激しいテロ攻撃に遭遇しているのは、裏返せば、米国やイスラエルのようにテロに対して手厳しい倍返しをされない「ゆるさ」につけ込まれているともいえるのかもしれません。
この意味で日本は、ヨーロッパ以上に「ゆるい」ということをお忘れなきように。
あえて言えば、わずかに死刑制度だけが数少ない防波堤であるとも言えるのかもしれません。
とまれ、好むと好まざるとに関わらず、これが対テロ戦争の現実です。
無差別テロを一般的刑事犯と混同してはなりません。
セッションズ司法長官は、ISなどのテロリストは一般的刑事法廷ではなく、グアンタナモ特別軍事法廷で裁くことをしてきており、今回もそのような措置になると思われています。
これに対しても英国はそんなことは百も承知で、異論を唱えていません。
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遠藤が作ったほぼ純粋のサリンなら、ワゴン車から気体を流しただけで数人が死んだ。
遠藤がストをしていたため、10%ぐらいのしか作れなかった、それを地下鉄の車内でまいた。
運転手が規定に従って駅で止めて車掌がパックを外に出した。またPAMを用意していて患者にどんどん注射した。それで被害が極小になった。
もし純粋のサリンが使われて、トンネル内で車両が止まったなら5000~6000人が死んだ可能性がある。とんでもない事件だ。
上九一色村にプラントを建設して、数十トンのサリンを作り、ヘリで上空からまく計画だった。数十万人あるいは100万人単位で死んだ可能性がある。
投稿: 八目山人 | 2018年7月28日 (土) 06時46分
1人のテロリストがいたら、その被害は何十倍、いや何千倍です。映画で見るよ様な、テロ集団が国を支配するような出来ごとが、現実にいつ起こってもおかしくない。
それを未然に防ぐには、事前の情報収集。それでも網をかいくぐったら排除するしか方法は無いですね。
死刑囚にも人権はありますが、被害にあった方たちの人権はもっと何十倍も重いですね。
昔からよく言われるように、アメリカで起こったことは何年か遅れて日本でも起こる。戦後アメリカを手本に生きて来た、日本への揶揄かもしれませんが、教訓は生きています。避けて通れないなら私たちが出来ることは、危険な国へは行かない。身近で不審な人がいたら通報するなど、個人レベルでも出来ることはあります。
自分の身は自分で守る。私は新幹線テロ対策を本気で考えました。ただ現実に直面したときには思うことの半分も出来ないでしょう。嫌な時代になりました。
投稿: arakuchi | 2018年7月28日 (土) 20時36分
チョット回りくどい言い方をしましたが
何の罪のない人の命を突然奪うテロリストに、人権は無いですね。
投稿: karakuchi | 2018年7月28日 (土) 20時46分