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2018年7月

2018年7月31日 (火)

LGBT運動は政治利用されています

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CVIDじゃないや、ベーコンレタスバーガーでもなくてLGBTですか、正直言って疲れます。 

なぜって、運動の名前から言い方までほとんど全部アチラの国からの直輸入品なんですよ。 

日本人の悲しいサガというか、必ずアチラの国で流行れば、こちらに輸入したがる舶来品を崇拝する向きがあります。 

古くは遣唐使の頃から、日本人が必死になって荒れる東シナ海を渡って持ち帰ったものは、金銀財宝ではなく、当時世界最先端だと思っていた「思想」でした。 

当時は仏教ですが、ある時は朱子学となり、時には蘭学となり、明治以降はキリスト教やマルクス主義となりました。近年はエコロジーやフェミニズム思想となります。

脱線しますが、本来は水と油のはずのマルクス主義者とキリスト教徒が妙に日本で相性がいいのは、彼らが共に直輸入型だからです。

ですから、彼らがどんなに布教に精出しても、人口の5% ラインをなかなか超えられないでいます。

それはさておき、これらすべては、当時の日本人がナウ(死語)だと信じている先端思想でした。

特に、土着的なものに根深い嫌悪感を持つリベラルの皆さんはこの舶来品崇拝傾向が強いようです。

たとえば、かつて沖縄でよくやられた集団パーフォーマンスに、基地を包囲する「人間の鎖」というものがありました。

あのオリジナルモデルは、バルト3国の「人間の鎖」です。

1989年に、ソ連からの独立を求めて約200万人が参加し、3カ国のひとつひとつの国境を越えて手を握りました。その全長は実に600キロにも及んだそうです。

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デモ参加者が手をつないで包囲するのがイケルと思えば、「人間の鎖」だなんていってすぐにまねました。

バルト三国の人々は、国境の向こうにソ連軍戦車がいて介入を準備している状況で、身体を張って「人間の鎖」でそれを防ごうとしたわけです。

嘉手納基地や国会を「人間の鎖」で包囲した人たちに、バルトの人たちのようなひりひりする緊張があったとはとても思えません。 

アチラの国でイケル、パクれると思えば、即座にその社会的背景を無視して直輸入してしまうのですから、必然的に浅薄なものに終始します。 

たとえば「MeToo」運動です。英米の、映画界を中心として大量のセクハラが暴露されたことに抗議して、女性の映画関係者が英国アカデミー賞授賞式で「MeToo」(私もだ)と連帯の意志を示したのが始まりですが、日本の活動家はこれもすぐにパクりました。 

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先頭に立つのが男の柚木みちよし議員だというのが、お腹でお茶が沸きますが、どうやら柚木さんは、セクハラに合われたようです、こりゃまたどうも。

柚木さんは目立つことが国会議員の仕事だと思っている人物ですが、実感がないことは言わないことですな。 

しょせんはただの政権批判をしたいだけなんですから、外国製を直輸入して世界の最先端にいるだなんて勘違いしないで下さい。 

さて、このLGBTも似た側面を持っています。 

昨日紹介した鈴木賢氏は、こんなことを言っていました。 

「レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)は、それぞれ違った存在であり、社会的立場も異なる。そのような人々が連帯してきた欧米での歴史的背景が「LGBT」という言葉にあるが、日本には言葉だけが移入され、その後ろにあるストーリーがちゃんと伝わっていない状況であったことは確かだ」(ハフィントンポスト7月29日)
https://www.huffingtonpost.jp/2018/07/28/lgbt-demo_a_23491398/

この鈴木氏は、「それぞれが違った社会的立場だ」とし、「日本は言葉だけ移入されてひとり歩き」していると言いながらデモで「連帯」できたことが「革命の始まり」だと言っています。 

鈴木さん、モノマネで出来た「革命」なんか、この世の中に存在しませんから。 

下の写真は2017年6月11日に行われた、米国のレインボー・プライドのデモの様子です。 

Rhttps://jp.reuters.com/article/pride-idJPKBN1930M0 

この本来はLGBTのための行進が、他の異なった分野の運動が「連帯」してきたために、見かけの動員数は増えたものの、なんのためのデモだかわからない、安易に政治的問題に使うな、という批判がLGBT運動内部からも出たそうです。 

結局、米国でも、モロモロの反権力的運動をむりやりに「連帯」させようとすると、とどのつまりただのトランプ抗議デモに終始してしまったのです。 

日本の場合も、似た現象が起きました。

今回、主催者側は「東京レインボープライド(TRP)」が参加してきたことを諸手を上げて評価しています。 

というのは、TRPはGWの単独集会て数万規模の集会を成功させた動員力を持っていましたし、彼らは政治的に左翼陣営とは一線を画していたからです。 

東京レインボープライド(この言い方もメイドインUSAですが)共同代表の山縣真矢氏はこう述べています。 

「TRPのスタンスは、これまでも、そしてこれからも、特定の政党に偏ることなく、各政党横並びでの関係づくりであることに変わりはありません」(ハフィントンプレス前掲) 

ならばどうして、今回、アベヤメローと叫ぶ人たちと共に自民党本部にデモをかけたのか理解できません。 

Photo_7 田中龍作ブログより引用

このデモは本来その中心であるべきはずのLGBTの人たち以上に目立ったのは、いつもの反安保・反原発・辺野古移設反対を叫んでいる人たちでした。 

国会前の金太郎飴の皆さんたちですね。 

東京レイボープライドがこの人たちと「合流」することが、彼らにとってメリットがあるとはとても思えません。 

左翼の人たちがしたいのは、ひとことで言えば、ただのアベヤメロー以上でも以下でもないからです。 

その時々で仕込むネタが違うだけで、ある時は原発、ある時は安保法制、時には沖縄、そして今回はLGBTだっただけ、というだけのいわば流行のファッションにすぎません。 

彼らは、LGBTを深く考えないし、ましてやひとりひとり異なった状況に置かれているLGBTの人たちに思いを致すことはないでしょう。 

要は、この人たちは「杉田ヤメロー、安倍ヤメロー」というスローガン化された政治を、テレビカメラの前でパーフォーマンスしたいだけですから。

このようなアベヤメローを叫ぶ人たちとの安易な共闘は、まじめにLGBT運動を日本に根付かせようとしている人たちにとって、あるいはデモとは無縁の多くのLGBTの人たちにとって、百害あって一利なしだと、私には思えるのですが、いかがでしょうか。

 

 

2018年7月30日 (月)

杉田水脈氏のLGBT論議について

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杉田水脈氏の『LGBT支援の度が過ぎる』(新潮45・8月号)が炎上中です。 

杉田氏が自民党議員であるために自民党本部にまで、自称4千人のデモをかけられてしまったようです。 

モ主催者発表10分の1法則に従えば、400人程度といったところでしょうか。

それはともかく、ハフィントンポスト(2018年7月29日)は、ややうわずった声でこう書いています。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/07/28/lgbt-demo_a_23491398/
 

「明治大学教授でゲイを公表している鈴木賢さんは、デモの大きなうねりを見てスピーチでこう語った。
「今日は、日本の革命がはじまった日だ」
これまで「LGBTブーム」と言われながら、どこか「LGBT」という言葉が一人歩きしている感があったように思う。
レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)は、それぞれ違った存在であり、社会的立場も異なる。そのような人々が連帯してきた欧米での歴史的背景が「LGBT」という言葉にあるが、日本には言葉だけが移入され、その後ろにあるストーリーがちゃんと伝わっていない状況であったことは確かだ。
今回の抗議デモに、大きな怒りを共有した様々なセクシュアリティの人たちが個人の意思で集まったことは、実質的に日本のLGBTQが連帯した第一歩となったのではないか」

Dimsハフィントンポスト(前掲)より引用

「日本革命がはじまった日」かどうかは別にして、この鈴木氏も認めるように、日本では「LGBTという言葉が一人歩きしている状況があった」ことは事実です。
 

ヨーロッパやイスラム文化圏では、宗教が同性愛、性的倒錯、同性婚を禁じているために、LGBTは社会的に抹殺されてきた歴史が厳然として存在します。 

たとえば、有名な一例としてよく取り上げられるのは、英国の数学者であるアラン・チューリングの迫害の例です。
アラン・チューリング - Wikipedia

チューリングは、ナチスドイツの解読不可能と言われたエニグマ暗号を解き、彼の貢献によって連合国側は勝利の糸口を見つけました。 

また彼の業績は、後のコンピューターの誕生にも結びつくと言われています。 

このチューリングは同性愛者でした。その「違法」な同性との性行為が訴追対象となり、彼はホルモン剤などを投与された結果、精神に異常をきたして自殺に追い込まれます。

「チューリングは有罪となり、入獄か化学的去勢を条件とした保護観察かの選択を与えられ、入獄を避けるため、同性愛の性向を矯正するために、性欲を抑えると当時考えられていた女性ホルモン注射の投与を受け入れた」
(ウィキ前掲)

英国は国の至宝とでも言うべきチューリングを、同性愛者であるというだけの理由で葬ったのです。

ヨーロッパ諸国のLGBT運動は、このような社会的背景を背負っているのだということを認識することから始めねばなりません。 

では、同質のLGBTに対しての日本国内の差別や迫害があったかと問われれば、寡聞にして私は知りません。 

なかったと声高に主張する気はありませんが、同性愛者が故にチューリングの迫害のようなものを受けたという事例は、寡聞にして聞いたことはありません。 

その意味で、杉田氏のこの違和感は納得ができます。

 「どうしても日本のメディアは欧米がこうしているから日本も見習うべきだ、という論調がめだつのですが、欧米と日本では社会構造が違うのです。」(新潮45前掲)

 この認識は皮肉にも、LGBT運動している前述の鈴木氏の「LGBTという言葉がひとり歩きしている」という認識と重なる部分があります。 

私は、社会の根底に一神教的風土が岩盤のようにあるヨーロッパやイスラム社会と異なり、日本社会はトランスジェンダー(性同一障害)も含めて、大変に「緩い」性文化をもってきた社会だと思っています。 

糠に釘のような柔構造社会がわが国の伝統的体質であって、性の戒律に対しては呆れるほどルーズなのが、わが国なのです。 

それはテレビにま真っ昼間から性同一障害の芸人・文化人たちが、あたりまえのように出演しているのを見ればわかるでしょう。 

日本社会は、東大教授がケバイ女装をしようと、炭鉱町出身のいかつい男がおネェであろうとなかろうと、まぁどうでもいいことであって、目くじらをたてるのは野暮という文化を持つ社会だったと思います。 

このようなキリスト教やイスラーム文化を持つ国からすれば、「だらしがない」日本では、LGBTをその行為が故に捕縛して、去勢したり精神病院に収監することなどまずありえません。 

だから、いくらLGBT運動が「差別」を叫んでも、日本社会は無関心だったのです。 

Sugita杉田水脈氏 

さてここまで杉田氏の見方についておおむね私も同意しますが、そこから先はいただけません。 

東京レインボープライド共同代表の山縣真矢氏はこう述べています。 

「今回の杉田水脈議員の論考は、事実誤認も甚だしく、人権をないがしろにした酷いもので、また優生思想にもつながる看過できないものでした」
(ハフィントンポスト前掲)
 

この山縣氏の杉田氏批判を、私は優生思想とまでは思いませんし、ヘイト思想とするには無理がありすぎますが、事実誤認の批判はおおむね当たっていると思います。 

杉田氏は、いい意味でも悪い意味でも、「保守過激派」であることを看板にしていますので、自民党が公認を出した時にはやや驚いた記憶があります。 

彼女の主張は、かつての田母神氏の作った党などと相性がいいと思ったからで、安倍政権の持つリベラルにも片足を突っ込んだスタンスとはかなり異質に思えたからです。 

杉田氏が主張していることは、要は公的援助を「LGBTに与えるのはおかしい」ということです。 

「たとえば子育て支援や子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うというのであれば、少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります。
しかしLGBTのカップルのために税金を使うことに賛同がえられるでしょうか。彼らは彼女らは子供を作らない。つまり『生産性』がないのです」(新潮45前掲)

この「生産性がない」という部分のみがピックアップされて杉田氏への大バッシングが始まったわけですが、杉田さん、馬鹿なことを書きましたね。 

この杉田発言は弁解の余地なくアウトです。保守政治家としての節度に欠けているからです。

性で関係をもったり、婚姻をすることを「生産性」というガサツ極まる言葉で切ってしまっては、その常識すら疑われかねません。 

私は子どもがいませんが、では私も「生産性」がないのかとカチンときました。

当人にその気はないのでしょうが、政治家は言葉づかいに慎重であるべきです。

杉田氏が国会議員ではなく、ただのもの書きならば、こういう極端な書き方も芸風のうちでしょうが、政権党所属だと「政策」ととられてしまうからです。

杉田氏に政策に影響する力はなくても、そうとる人は多いし、現に自民党デモではお定まりのアベヤメローが叫ばれていました。

たしかに現行の行政は、同性婚を認めていませんが、それについては多様な議論があるべきですが、婚姻の「生産性」、つまり有体に言えば子供ができるかできないかとは別の次元で論じられるべきです。 

子供を作ろうとしたが出来なかったことと、初めからできるはずのない同性婚とは別だと杉田擁護論を言う人もいるようですが、結婚の目的は必ずしも子づくりの「生産性」が問われることとイコールではないはずです。 

事実、同性婚においては子供を育てる人も多く、あたりまえに子育てに取り組んでいます。 

そのような人たちに対して同性婚だからという理由で、子育て支援を行政がしないとなれば、これはLGBT運動の人たちが主張するように「差別」だと見なしてかまわないと思います。 

そもそもLGBT運動がレインボー運動と称しているのは、ひとりひとりがそれぞれに違う「好み」を持つからです。 

その生きづらさについては、杉田氏はふれています。

「LGBTの当事者の方たちから聞いた話によれば、生きづらさという観点でいえば、社会的な差別云々よりも、自分の親が理解してくれないことのほうがつらいと言います。(略)
親は子供が同性愛者だとわかるとすごいショックを受ける。これは制度を変えることで、どうにかなるものではありません」(新潮45前掲)

そのとおりです。

ならば、制度でなんともならないなら、制度はLGBTのあるなしや「生産性」のあるなしに関わらず、等しく運用されるべきではないのでしょうか。 

日本の社会は杉田氏が言うように多様な、言い方を替えれば、すこぶるいいかげんでゆるい社会です。

であるならなおさら、一定の健常者のものさしで、その網にはかからない異質な少数者たちを批判すべきではありません。
 
保守という生き方は、伝統を重んじますが、偏狭ではありません。

なお、杉田氏の発言をアベバッシングと短絡させたバカな論調もあるようですが、それは別稿で論じることにします。

 

 

2018年7月29日 (日)

日曜写真館 蓮華で眠りたい

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台風が通過中です。

被災地にまた災害がおきないように心からお祈りしております。








2018年7月28日 (土)

英国の変化 テロリストに対する死刑執行容認への転換の兆しか?

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オウム死刑囚の残された6人の死刑が執行されました。 

前回の麻原の執行時には、ドイツやEUがずいぶんと気色ばんた抗議をしたようです。 

いつものことですが、常に人類普遍の人道は我にありという態度でうっとおしいかぎりです。 

EUは死刑廃止を加入条件にしているはずで、各国ともに国民の死刑に対する考え方や歴史が大きく異なるはずなのに、「人道」という名の画一主義で縛ってしまっています。 

まぁしかし、EUはEUです。どうぞご勝手になさって下さい。外交は相互主義ですから、わが国はEUの「内政」に口出ししませんから、どうぞそちらもそうなさって下さい。 

今回の死刑執行でも反対集会や弁護士声明が出たようですが、死刑に関しては日本国民の大多数 が支持していることは、よく知られた事実です。 

内閣府が調査した「死刑制度に対する意識」の世論調査によれば、「死刑もやむを得ない」と答えた者の割合が80.3%であるのに対して、「死刑は廃止すべきである」と答えた者の割合はわずか9.7%という結果が出ています。
https://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-houseido/2-2.html

日本には日本なりの死刑に対する連綿たる哲学が、確固として存在することがわかります。 

国に死刑という制度があるから、国民が容認しているのではなく、むしろ国民の歴史的な死刑に対する考え方を、国が死刑制度として取り入れらたと考えるべきでしょう。 

さて、このオウム事件の本質は、大量破壊兵器を用いた大量無差別テロだということです。
関連記事「オウム事件を考える」http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/post-36d6.html 

テロリズムの大量殺人から社会を守るために死刑制度があることを忘れて、テロの戦場となって久しいヨーロッパから、野蛮だの中国と一緒だのと言われたくはありません。 

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 テロに対しての普遍的対応は、一にテロに屈しない、二にテロリストとは交渉しない、三にテロリストは完全に撲滅するということが原則です。 

この原則に国境はないはずですが、日本は最後の完全撲滅には破防法に反対した時の村山首相のために阻止されましたが、おおむねこの原則に従って戦ってきています。 

テロリズムは、一般的刑法犯罪と同次元で矮小化してはならないと思っています。

ですから、あくまでもテロリズムを撲滅する戦いの一環として、今回の死刑執行があるのであって、一般的な死刑論議の網をかけるのは誤りです。 

私は一般刑法犯の死刑については意見を保留しますが、大量無差別殺人を働いたテロリストはこの限りではないと考えています。 

ヨーロッパでは死刑廃止してしまったために、テロリストに対してその場で法執行機関の特殊部隊が射殺するという手段をとっています。 

死刑をしないことが人類の至上の人道上の価値だというならば、自動小銃など使わずに、どうぞ身体ひとつで逮捕して下さい。 

そしてヨーロッパの一部の国では「人道的」な刑務所に送って自由気ままにさせたために、刑務所が新たなテロリストを生み出す温床と化しています。

それが分かっているからこそ、ヨーロッパ官憲はテロリスト制圧作戦において、日本では考えられない現場での即時射殺を続けているわけです。

後述しますが、英国はテロリストに対して国外ではありますが、軍隊による無人機攻撃すらしています。

この方法ならば、正当防衛権が成立するからというわけです。しかし、それと死刑のどこが違うというのでしょうか。

これでは裁判なし死刑執行と同じではありませんか。 

実はこの矛盾に、ヨーロッパに気がつき始めています。ブレグジットによって、EUのキレイゴトに縛られなくなった英国では、変化が現れています。

20170323085956_2http://obaco.hatenablog.com/entry/2017/03/23/084003

上の写真はロンドンの5名が殺されたテロ現場です。日本でいえば国会議事堂前か、丸の内でテロか行われたようなものです。 

「ロンドン中心部の英議会議事堂付近で22日午後2時50分(日本時間同11時50分)頃、男が乗用車で歩行者を次々にはねた後、議事堂の敷地内に侵入して警察官を刺殺するテロ事件が起きた。
 男は直後に警察官に射殺された。ロンドン警視庁によると、男と警察官のほか、歩行者3人の計5人が死亡。重体・重傷者を含めてけが人は約40人に上る」
(読売2017年3月23日)

 ところで英国は1998年に死刑を完全に廃止しているだけではなく、死刑制度が残る国への犯罪者・被疑者の引き渡しを拒んできました。 

死刑制度がある国に、死刑相当の者を引き渡すと死刑にされてしまうからです。 

今回この例外措置が出ました。 

英国からシリアに渡ってISに加わり、凶暴なテロと拷問を繰り返していた英国籍のアレクサンダ・コティーとスーダン出身のエル・シャフィー・エルシークの身柄を、クルド人系反政府軍から米国政府に引き渡すことを認めることに踏み切ったのです。 

通常は死刑をしない保証を相手国に求めるのですが、今回はそれをしないとジャヴィド内相は表明しました。 

米国は州によってまちまちですが、死刑残置国とされていますから、英国はテロリストを従来の死刑廃止原則の例外としたのです。 

米国に引き渡しを求めていたのは、両名が米国人も殺害しているからです。 

この2名の上官は、モハメド・エンワジという男でした。 

エンワジというより、「ジハーディ・ジョン」と言ったほうがいいかもしれませんから、そのように表記します。 

私たち日本人が、忘れたくても忘れられないこの写真の男です。 

B741409eae39de45f8e46d2e63ddace6201この後藤健二さん、湯川遥菜さんをむごたらしく殺害したのは、この「ジハーディ・ジョン」です。 

一方、エルシークは、「ジハード・ジョン」の指揮下に、同じく英国籍を持つエーヌ・デービスと共犯して、ISが「捕虜」とした多数の者を残虐な方法で拷問し、殺害していたことが判明しています。 

「ジハーディ・ジョン」自身も、英米人のジャーナスト5名と人道支援関係者5名を殺害したことが分かっています。 

この男の残虐さは国際社会の怒りを買い、英米軍共同作戦で居所をあぶり出されて、2015年11月に無人機によってラッカで殺害されましたが、その是非はともかくとして、英国は国外では裁判なし死刑を執行したことになりますね。

当時、EU加盟国だった英国は、苦しい選択をしたことになります。なお、この英国籍野テロリストたちは英国籍を剥奪され、無国籍になっています。

これはテロリストの国内帰還を認めない英国政府の方針によるものです。

けいなお節介ですが、だとすると今回、米国に引き渡すことについて口を突っ込む法的根拠が薄い気がしますが、そのへんはどうなっているのでしょうか。

今回、英国政府はセッションズ米司法長官に対して、この2名について、「死刑に関する保証を米国に必要としないだけの理由がある」としています。

ただし、一方で英国内務省は、「これで死刑廃止原則が変更されたわけではない」としています。苦しいですね。

今後このテロリスト2名は、米国政府によって、テロリストが収容されている特殊施設であるグアンタナモ収容所に送られると見られています。

グアンタナモ収容所は、暴露されたように対テロ戦争でつかまえたテロリストたちの「捕虜収容所」です。

そこでは「厳しい尋問」と呼ばれる拷問が一般化していたことがわかって、オバマは閉鎖を命じていますが、トランプとなってまた復活しました。

ちなみに拷問を指揮したのは、いまのCIA長官ジーナ・ ハスペルです。

ヨーロッパは既にテロの標的となった以上、どこまでメルケル好みのキレイゴトを言っていられるのか、ということでしょう。

ヨーロッパが米国以上に激しいテロ攻撃に遭遇しているのは、裏返せば、米国やイスラエルのようにテロに対して手厳しい倍返しをされない「ゆるさ」につけ込まれているともいえるのかもしれません。

この意味で日本は、ヨーロッパ以上に「ゆるい」ということをお忘れなきように。

あえて言えば、わずかに死刑制度だけが数少ない防波堤であるとも言えるのかもしれません。

とまれ、好むと好まざるとに関わらず、これが対テロ戦争の現実です。

無差別テロを一般的刑事犯と混同してはなりません。

セッションズ司法長官は、ISなどのテロリストは一般的刑事法廷ではなく、グアンタナモ特別軍事法廷で裁くことをしてきており、今回もそのような措置になると思われています。

これに対しても英国はそんなことは百も承知で、異論を唱えていません。

2018年7月27日 (金)

イージスアショアが高くなったのはあたりまえです

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どうにか「災害レベルの炎暑」が峠を超えたら(西日本の皆さん、すいません)、今度は台風ですか。やれやれ。もうなんでも来やがれというかんじです。 

野外労働は早朝に押し込むようにしていますが、恥ずかしながら私、体力の限界に近づいたらしく胸の赤ランプがピコピコと点きはじめました(笑い)。 

こういう時期に高校野球やオリンピックをするという神経が分かりません。日程を変えるなり、厳重対策をするなりしないと、スポーツ大会で死人が出たらシャレになりませんよ。 

タオルで首を冷やしたらいいのよ、なんていう「対策」を大まじめに言っていた主催者の東京都知事いましたが、前から実務能力が欠落している人だと思っていましたが、大丈夫ですかね、こんな知事に任せておいて。 

さて切りがいいところまでやらないと気持ちが悪い性分なので、イージスアショア連載を終いにしてしまいますね。 

まずは昨日もふれました秋田の候補地についててすが、防衛省はこのような回答を秋田県にしました。

「防衛省は20日までに、秋田県と秋田市が出していた質問状に文書で回答した。今後の地質・測量調査や、レーダーが発する電磁波に関する環境影響調査の結果を踏まえ、敷地内に緩衝地帯を置く必要性も検討。適さないと判断した場合は、「配置しないこともあり得る」としている。(略)
配備候補地の選定は、日本海側の自衛隊施設を軸に検討。イージス・アショアのレーダーと発射台を配置するには、約1キロ平方メートルの平坦(へいたん)な敷地が必要で、新屋演習場と山口県のむつみ演習場以外は条件を満たさなかったと説明した。レーダーによる電磁波の、住民生活に与える影響については「今年度中に環境影響調査に着手する」とした」(産経7月20日)
https://www.sankei.com/politics/news/180720/plt1807200020-n1.html

秋田設置がむずかしそうだという情勢認識が防衛省に生まれたようです。無理して住宅地に隣接した場所にすると禍根を残します。 

今後の日本の安全保障の基幹となる施設ですから、秋田にこだわらず、さらには陸海空の敷居も超えて発想すればよいのです。 

そもそも論になりますが、なぜイージスシステムに習熟した海自の管轄にしないのか、高空防衛が任務の空自にしないのか、どうして低空防衛が管轄の陸自になったのか、からして不思議ではあるのですよ。 

まず簡単にイージスアショアについて押えておきます。ひとことで言えば、イージス艦のミサイル防衛(BMD)システムの部分を切り取ってきて、よっこらしょと陸上に据えつけたものです。 

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 ミサイル防衛局 [PDF]より)
http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50788821.html 

ですから、イージス艦のブリッジだけ陸上にあるという奇妙な風景になります。 

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http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50788821.html

多くの実験を重ねてきて折り紙つきのイージスシステムのSPY-1レーダーと、それを管制するC4Iシステム、そして弾道ミサイルを打ち落とすMk 41ミサイル垂直発射システム(VLS)、そしてこれらをバックアップする電源・水冷装置などをセットにしたものです。

これは海自のイージス艦の欠陥を補うものです。欠陥というのは気の毒で、宿命的限界といったほうがいいでしょうか。 

あたりまえですが、北や中国からのミサイル攻撃を防ぐためには、どこにいてもいいわけではありません。 

太平洋側にいたりしたら、飛来する弾道ミサイルをいち早く探知して落とせないからです。 

いつも必要な位置に、必要な隻数がいるわけではありません。 

海自の4隻の弾道ミサイル防衛(BMD)艦は、作戦航海・整備休養・訓練などのローテーションで回っていますから、4隻丸々日本海にいることはありえません。 

そりゃそうでしょう。イージス艦そのものがたった6隻しかないのに、そのうち4隻を常時日本海の定位置に張り付けておくことは、現状で海自にとって大変な重荷となっているのです。 

下図は2017年3月6日に、北が弾道ミサイルを4発同時発射した時のものです。 

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いまだから言えますが、これがすべて核ミサイルだった場合、この4発を同時に100%迎撃するのは至難の技だったでしょう。 

現況では、常に理想的位置に理想的数を24時間360日配置しておくことは、極めて難しいからです。 

それでなくとも海自は、南西諸島などの緊張で忙しいのです。いつ何時起きるか分からないミサイル発射に対応できる位置に、常にいられる保障はありません。 

これを解消するのが、イージスアショアです。これは従来のイージス艦の宿命を補うために考えられた、弾道ミサイル迎撃に特化したシステムなのです。 

ここが分かっていないと、東京新聞などのように高いの安いのということになります。

「防衛省は一基約一千億円と説明してきたが、試算通りなら倍増となる。搭載ミサイルの購入費などを含めると、総額で六千億円近くに膨らむ可能性もある。政府関係者が二十三日、明らかにした。
 北朝鮮の完全非核化に向け、六月に米朝首脳会談が開かれた中、ミサイル防衛(MD)強化に巨額の防衛費を投入することになれば、費用対効果の面でも批判や疑問の声が上がりそうだ」
(東京2018年7月24日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018072402000130.html

何を言っているんだか、です。イージスアショアが弾道ミサイル防衛に特化した探知・管制・迎撃システムだという本質を理解していないから、こういうことを言うことになります。 

これが設置されることによって、海自のイージス艦は大幅に任務の自由度が増します。 

本来任務の哨戒活動や、艦隊防衛などに回す余裕が生まれます。これは金額では換算できませんが、巨大な利益です。 

また価格が高くなったというのは当然です。当初の見積もりは、レーダーと管制部分だけのヌードの価格だからです。 

高くなったのは、SAM3ブロック2Aという1発40億もする宇宙空間迎撃ミサイルを購入するコストが、ヌード価格に上乗せされたからにすぎません。 

これは別に虚偽の数字で安く見せようとしたためではなく、軍用機でも一緒です。 

軍用機にはモロモロの装備が付帯しますが、当初予算はこれを抜きにして計上します。 

どんな装備をつけるかということは、初めから決まっているわけではなく、装備の進歩に合わせて判断せねばならないからです。 

イージスアショアのレーダー部分だけだと、ただのレーダーサイトですが、これにVLSと迎撃ミサイルがついて、初めてイージスアショアシステムが完成します。 

たとえば、イージスアショアに使われるSM-3ブロック2Aではなく、旧式な安物を買えば安くなりますが、それでは意味がありません。 

一発外したら万単位で死者が出る核ミサイルに対応するには、万全の準備がいるからです。 

するとイージスアショア1基につき8連装VLSが3基ありますから、2基のイージスアショアが装備するのは全部で48発。 

一発40億×48=1920億かかってしまいます。これが弾薬代です。この弾薬代だけで、当初予算のイージス2基とほぼ同額です。 

そして、当初予算時には出来ていなかった最新のレーダーシステムを導入すれば、またこれに上乗せされていきます。

既存の基地内ではなく、新たに土地買収でもすれば取得費用もかかるし・・・。 

これはまだ現時点では不明ですから、4千億~6千億という含みを残しているわけです。 

というわけで、防衛省からすればそんなことは装備の常識を知っていたら当然のことでしょう、という話にすぎないのです。 

イージスアショアは、あくまでも弾道ミサイルを防ぐ装備です。しかも純然たる専守防衛のためのものです。

万が一の時は数十万人が死ぬ可能性があります。これを高いの安いのというお買い物感覚で発想すること自体がおかしいのです。

 

 

 

2018年7月26日 (木)

イージスアショアの設置場所は揉みようがあると思う

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イージスアショアについてもう少し続けます。 

今日はコメントにありました設置場所についてについて、考えてみます。 

イージスアショアは、100キロ超にも及ぶと言われる大変に長い射程距離を持っています。

そのために短射程のものと違って、設置する場所についての自由度は高いといえます。

下図はイージスアショアの概念図ですが、その広大な探知エリアがわかります。

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日本列島をふたつの黒い楕円形の輪が囲んでいますが、これが探知範囲です。北海道から沖縄までほぼ日本列島全域をカバーしているのがわかります。

これだけ探知エリアが広いということは、この楕円の範囲内で、重点防御ポイントである首都を被覆し、かつ北朝鮮や中国に近い日本海側ならばどこでもいいことになります。

現状ではふたつ候補地があります。山口(陸自むつみ演習場)と秋田(陸自新屋演習場)です。 

ふたつともに陸自の演習場であるのは理由があります。 

ひとつは、このイージスアショアの管轄が陸自だから、陸自の演習場になったわけです。 

第2に、イージスアショアが大規模な施設であるために、レーダーサイトのように山のてっぺんに持っていくと資材を搬入するのが難しくなるために平地の演習場に予定されています。 

メディアや反対運動の人たちが口を揃えて主張するレーダーが出す電磁波の脅威についてですが、まず、小野寺大臣も視察に行った米国ハワイ州カウアイ島の実験施設からみていきま。 

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拡大するとわかりますが、近隣の人家まで500メートルほどしか開いていません。 

次に、ルーマニアの首都ブカレストの西140kmにあるデベセルにあるイージスアショアの施設です。 

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ここはルーマニア空軍の基地施設の中にあります。見る限りは畑のど真ん中という印象です。

米国は小野寺大臣の電磁波についての質問に対して、グリーブス米ミサイル防衛局長は「全く問題ない」とあっさりと回答していますが、どうやら米国はほとんど電磁波の健康被害に危機を感じていないようです。

実際米国がまったく心配をしていないのは、下のワシンンD・Cにあるイージスアショアの航空写真を見ればわかるでしょう。 

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これに至っては、おいおいという距離に人家が多数点在しています。 

では、日本の候補地に上がっている秋田の陸自新屋演習場を見てみます。 

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うーんですね。イージスシステムは高出力の電磁波を出すのは事実で、イージス艦は使用時には甲板から乗員は退避します。 

この電磁波の影響については多くの周辺住民が不安に思っていることは確かですので、米国は詳細なバックデータを開示すべきでしょう。 

もちろん防衛省もそれを理解していて、電磁波などの影響評価を予定しているようです。

先程も述べましたが、秋田になったのは陸自管轄だから陸自施設内にしたという単純な理由があるからにすぎません。

そのなわばり意識を捨てれば、候補地はいくらでもあります。

周辺に人家がまったくない空自の男鹿半島にある加茂分屯地なども候補で考慮してみたらどうか思います。

下は航空自衛隊加茂分屯基地の航空写真ですが、山の上にあるために工事は若干大変ですが、市街地住民との摩擦による計画遅延となるよりましだと思います。 

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当初の計画では男鹿半島は候補地のひとつでしたし、自衛隊の縄張りという理由以外に特に秋田にこだわる理由はないように思えます。

沖縄の辺野古と違って、候補地選定の幅が狭いわけではないわけですから、もっと揉みようがあると思います。

ージスアショアは、弾道ミサイル攻撃に対する切り札ですので、大事に育てていっていただきたいものだと思います。



 

 

2018年7月25日 (水)

イージスアショアを中止できるのは北と中国の非核化が実証された後です

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イージスアショアについて、あれやこれや言われています。 

もっともよく聞くのは、朝鮮半島が緊張緩和したのだからもう弾道ミサイル防衛のためのイージスアショアは不要になったとする議論です。

「秋田県 佐竹敬久知事
「正直言って当初は、北朝鮮と極度の緊張関係にある中で取り上げられました本事案でございますので、どこかが引き受けなければならないものであれば、状況次第では協力もやぶさかではないと思っておりました。
ただ、これまでの御省(防衛省)のことの運び方をみますと、不安を覚えざるを得ない。具体的な説明をもって、地域住民はもとより、我々が納得できる状況を作り上げていただくことなしに強行することは、大変私どもの不本意なところ。」
(NHK7月4日クロ現)
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4154/index.html

失礼ですがこの佐竹知事の言説は、根本的に勘違いの産物です。いささかも緊張は緩和していません。 

Img_4d15cd20e415d00941506285ecf8c25http://bunshun.jp/articles/-/5450

現在の朝鮮半島は、ひとつの大きな戦争と戦争にはさまれた束の間の「戦間期」である可能性があります。 

互いに軍事力を誇示するやり方を休止し、高度の政治的駆け引きの時期に入った束の間の時期なのです。 

なんどか書いてきていますが、北は核を積んだ弾道ミサイル配備を諦めたわけではありません。 

抽象的に「朝鮮半島の非核化」と言っているだけなのかもしれませんし、そうでないのかもしれません。 

誰にも分かりません。なぜなら、正恩自身の腹が定まっていないからです。 

今までのようになんとかいかないものかと中国に泣きついたり、日米韓の国内に「北の平和姿勢」を称賛する世論を作ろうとしています。

後者については米国は別にして、メディア の融和報道の成果で、あるていどの成功を収めているようです。

なんせ正恩を「見ると血の通った人間なんだっていう、すごく好印象」なんて言っていた某女性キャスターなんかもいましたもんね(笑い)。バカですか、この人。

一方、米国の意志は大変に分かりやすいと思います。 

昨日のコメントにありましたように、北が米国をなめてトランプの退任までこの「高度の政治的駆け引き」を引き延ばす戦術に出たら、米国はこの中途半端な「平和」に即座に終止符を打つだけのことです。 

Odonaldtrump570https://www.huffingtonpost.jp/2016/11/05/trump-mex...

もちろんトランプ特有の癖はあります。言ったことの裏を読まないと、何を言っているのかわからないことを平気でツイッターするという特異な政治家です。 

一般的な大国の首脳が外交的シグナルという隠微な手法で言うべきことを、トランプはあけすけに過激な表現で口にしてしまいます。 

たとえば、米韓軍事演習の中止や、在韓米軍の撤退、はたまた朝鮮戦争の終戦宣言もやぶさかではないようなことを、突如言い出して関係国をギョっとさせたりもします。

しかし注意深く観察すると、トランプは一定の枠内で、一定の思惑の下に言っているのがわかります。

米韓合同軍事演習など、その気になれば直ちに再開可能ですし、在韓米軍撤退はすぐにマティスが強く否定しました。 

終戦宣言に至っては、トランプは早々と北が欲している成果を与えてしまったという言い方をする人がいますが、北が欲しているとしても、米国にとっては痛くもかゆくもない宣言です。 

このような終戦宣言などは、状況次第のいわば紙切れにすぎない部分があって、今まで古くは1941年のナチスドイツは独ソ不可侵条約を一方的廃棄し、ソ連に侵攻しました。 

日本は、このソ連から1941年に結んだ日ソ中立条約を破られて侵攻を受けています。 

米国は、つい先だってオバマが2015年に結んだイラン核合意を一方的に廃棄して離脱してしまいました。 

その横紙破りをしたのが、トランプであることをお忘れなく。 

条約すら一方的廃棄が可能なのですから、「終戦宣言」などはなんのことやあらん、です。 

国際政治とは、このような危ういバランスの上に成立しているのであって、口で「平和」や「非核化」を言ったからといって、平和がすぐ来るわけではないし、状況が根本的に変わるわけではないのです。 

日本人の悪癖は、言葉づらをそのまま本質だと錯覚することです。正恩とトランプが握手すれば平和到来したと思い、「非核化」を約束すれば非核化が既に成ったかのような勘違いをします。

かつて旧ソ連が崩壊した後に、ヨーロッパで軍縮が進んだことから、あたかもアジアでも冷戦が終わって平和が到来したかのような言い方をする人が日本に大量に発生したことを思い出します。

この人たちは、冷戦が終わったのだから、日本も防衛費を削減しろと主張しました。

もちろんアジアでは軍縮どころか、中国の核は強化され、海洋膨張が急激に進んだのです。

今回もまったく同じ轍を踏んでいます。

日本人の言葉づらを信じる癖は、あまりにもナイーブに過ぎます。 

ですから、日本が民間防衛訓練を一時中止したのは、この米朝対話が続いている間は、北が弾道ミサイルを発射することが不可能だと読んでいるからのことです。 

米朝対話が決裂すれば、粛々とまた再開することでしょう。

日本を狙った中距離弾道ミサイルは核を搭載しているかどうかは分かりませんが、いぜんとして廃棄するそぶりもありません。

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そして、防衛省は外交的配慮でハッキリと言いませんが、日本を大量の中距離弾道ミサイルと巡航ミサイルの標的としているのは中国です。

北の脅威のなん十倍も恐ろしいのが、中国の核なのです。

中国の非核化が、ラクダが針の穴を通るほど困難なことである以上、それに対しての唯一の専守防衛的備えはミサイル防衛だけに頼るしかないのが現実です。

反戦運動家たちが言うように、「イージスアショアはトランプが買わせたんだ。アベの戦争準備だぁ」なんて言ったら、すいませんが、どうやってわが国を弾道ミサイルから守るのか、ひとつご教示願えませんか。

そもそも必要だから買っただけで、トランプの言説とは関係ありませんし、「戦争準備」ではなく戦争をさせないための準備にすぎません。

イージスアショアは巨額の防衛予算と長期の建設期間を要します。今日思いついて来年できるものではありません。

ですから短期に変動する国際政の波に合わせて、長期計画をオンオフできないのです。

今行われている米朝対話がデッドロックに乗り上げたからといって、慌ててイージスアショア計画を再開することは不可能です。

日本がイージスアショア計画を唯一中止できるのは、北の完全かつ検証可能・不可逆的非核化が現実のものとして確認され、なおかつ、中国の中距離弾道ミサイルと巡航ミサイルが廃棄されたことが確証された後のことなのです。

あ、それと韓国の中距離弾道ミサイルも廃棄して下さいね。

 

 

2018年7月24日 (火)

時間がたてばたつほど追い詰められるのは北朝鮮のほうだ

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メディアの報道というのは、だいたいが表層をなでるだけです。これが意図的に増幅されると印象報道に引っかかってしまいますから、お気をつけ下さい。 

たとえば昨今では、北朝鮮の非核化の進展が見られないという報道が流されてきました。 

例の6月12日の米朝首脳会談については、メディアの9割がトランプの負けという報じ方でしたので、かえって私のほうがホントにそうなのだろうかと考え始めてしまったくらいです。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-7896.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-a36b.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-3.html 

このトランプ負け負け報道に続いて、直後から「非核化の進展が見られない」というものが出回りました。

下の写真などは、さんざん正恩大勝利説に利用された一枚ですが、会談は一貫してトランプが主導権を握っていたのに、たった一枚の写真で印象が真逆に代わってしまいますからコワイですね。

Prm1806220005p1https://www.sankei.com/premium/topics/premium-3273...

「だが「検証」や「不可逆的」への言及どころか、トランプ米大統領は記者会見で「完全な非核化には時間がかかる」と発言した。13日に帰国したトランプ氏は機中で「もはや北朝鮮の核の脅威はなくなった。今夜からよく眠れるぞ!」などとツイッターに投稿した。
 北朝鮮の朝鮮中央通信は13日、異例の早さで前日の会談内容を報じた。「両首脳が朝鮮半島非核化のプロセスで段階別、『行動対行動』の原則順守が重要との認識を共にした」と伝え、トランプ氏から言質をとったと強調した。
「段階別」とは、北朝鮮がカードを切るごとに、米国が経済制裁の緩和などの「対価」を払うことを意味し、時間稼ぎの余地も与える」
(日経6月13日)。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31718480T10C18A6EA2000/

 北の「段階別」非核化のわなにはまって、譲歩を迫られたトランプといった構図ですね。 

実に安易な絵解きですね。メディアによれば、ハッタリ屋のトランプは正恩との会談に飛びついて安易な譲歩をしたあげく、北の思うつぼにはまったということのようです。 

で、どうなるのかと言えば、「非核化は長引く」とメディアは見立てています。

「[ワシントン 18日 ロイター] - ポンペオ米国務長官は18日、非核化を巡る北朝鮮との合意には「時間がかかる」可能性があるとの見方を示すとともに、その間、制裁は継続するとあらためて強調した。
今月初めに北朝鮮を訪問したポンペオ長官は18日の閣議で、幾つかの問題で進展が得られたと述べた。
その上で「多くの作業がある。目指すところに行き着くには時間が掛かるかもしれないが、全ての作業は既存の制裁を継続しながら行う」とした」

https://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2018/07/217150.php

米国の主流メディアには、そもそもトランプ大嫌いというバイアスがあります。

日本メディアはそれを鵜呑みにして、「米国メディア様はこう言っておられるぞ」と報じますから、何か権威づけされたように見えるだけです。 

では、日米メディアが言うような、北の「時間稼ぎ」に右往左往する米国という見方でいいんでしょうか。 

私はハズしていると思います。米国メディアのトランプ憎しは、日本メディアの安倍憎しに似て、まずは否定することをあらかじめ結論にして始めてしまっています。 

これで歪みなく観察できるはずがありません。

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バランスよく見たければ、ポンペオの「時間がかかる」という意味をもう少し考えてみたらいかがでしょうか。 

トランプが「時間がかかる」発言や、ポンペオが言った「既存の制裁を継続しながら、時間をかけてやる」ことで、一番困るのは誰ですか、そこから考えましょう。 

ハッキリしていますね、それは北のほうです。 

米国はいささかも困りません。

そもそも米国は北の核兵器自体が実戦配備されているとは思っていませんし、ましてや米国に届く長距離核など使い物にならない玩具だと冷徹に分析しているはずです。

ただし、核をオモチャにして国際社会を脅迫するなら、まともに軍事的脅威としてお相手するよ、ということです。

そして首脳会談で北から非核化の白紙証文をとりつけたから、トランプは「北の核の脅威はなくなった。今夜からよく眠れるぞ」と言ったのです。 

また現在、北と米国は「交渉中」という段階ですから、どちらも軍事攻撃を仕掛けることはできません。 

交渉中に軍事攻撃したら、反撃を食らうだけではなく、そんな話あいの途中で殴りかかってくるような相手と金輪際平和的交渉を持つことはありえなくなるからです。

それで困るのはどちらです。北のほうに決まっています。

つまり米国の軍事攻撃というオプションは遠ざかりましたが、軍事的弱者の北もまた、米国以上に核攻撃はおろか、それにまつわる実験・訓練などいっさいが封じられたということになります。 

それだけではありません。北はじゅうぶんに、ポンペオが「既存の制裁を継続しながら行う」ということの深刻な意味を理解しているはずです。 

制裁は緩和するどころか、継続されるのですから、今、北の首を万力のように締めつけている経済制裁は速攻され続けるのです。

では、制裁はいつまで続くのでしょうか? 

米国が北の非核化を見届けるまで、ズッとです。

北が今までの経済政策の失敗に加えて、国際社会の経済制裁によって内部崩壊の淵にあることは知られています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-2f0d.html 

日米メディアがいうように振り回されているのは、日米ではなく北のほうです。

北が逃げ道を探すなら、ひとつはトランプが教えてくれたシンガポール式のカジノでも作って、外貨を稼ぐというのも即効性のある手段であるのは確かです。 

長期的には、非軍事的製造業や鉱業を建て直し、農業を抜本的に改革するしかないのでしょうが、今、そんな高等なことができるはずがありません。

まれ、いま、北が喉から手がでるほど欲しいのが外貨です。

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ところが生憎その原資がないんだな、これが(苦笑)。

だから日本に対して大いばりしながら、「金を出せ」とゴネているわけです。 

考えてみればわかりそうなものですが、この「交渉中」=制裁継続モードでいられては困るのは、圧倒的に北であって、日米ではありません。 

こんな簡単なことを、日米メディアはスルーしています。 初めのボタンを「トランプ憎し(=安倍憎し)で始めるから、最後までかけ違っていくのです。

それはさておき、こうなっては北としては、突然兄とお慕いし始めた習様や、ちょっと怖いけどプーチン様におすがりして、制裁解除をお願いするしか生き残る術はありません。 

ところがお気の毒にも、中露共に米国から経済制裁をかけられている真っ最中です。 

仮に、習が「そうか舎弟よ、なんとかしてやろう」と思っても、外交の世界は何かを頼むことは何かを譲歩することと等価です。 

米国と経済戦争の真っ最中の中国が、ここで米国に譲歩することは面子にかけてもできません。 

それも自分の国のっぴきならない事情ならともかく、可愛くもない舎弟のために、米国に譲歩するなんて、とんでもないことです。 

悪知恵は大いに授けるでしょうが、身銭を切るはずがありません。

プーチンも同じです。露からすれば正当な領土であるクリミアを奪還したくらいで、ギャーギャー言いやがって、経済制裁でズタボロだぜ、クソぉ。 

これで、ドイツに天然ガスパイプラインを敷いていなかったらアウトだった、と思っているプーチンが、正恩ごとき糞生意気なガキに一肌脱ぐ道理がありません。 

こちらも悪知恵はタダですから、いくらでも貸しますが結局なにもしません。

つまり米国にとって、フェーク核疑惑のある北の核など、ある意味でどうでもいいのであって、ほんとうのケンカ相手は中露、なかんずく中国なのです。

ですから、トランプとポンペオにすれば、どうぞ正恩よ、習やプーチンに大いに泣きついてくれ、と思っているはずで、時間がたてばたつほどほくそ笑むのは彼らのほうなのです。

米国の軸足はブレていません。ここで野党やメディアがいう「緊張緩和だから、圧力政策をやめろ」などという戯れ言に耳を傾けてはいけません。

制裁を堅持して、拉致被害者の奪還に全力を傾注すべき時です。

 

 

 

2018年7月23日 (月)

小・小共闘 真夏の夜のグロテスク

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真夏の怪談話は円朝祭りなどで聞くとなかなかいいもんらしいですが、炎暑の夏に現れる政界の亡霊はご勘弁下さい。 

こんどは日本一懲りない男・小泉翁と、とっくにさまよえる亡者となって久しい小沢翁の合体です。 

小沢翁にいわせると、なんですって、え~なになに「野党が一つになって『原発ゼロ』で勝負すれば必ず選挙で勝てる」のだそうです(笑)。 

勝負勘だけが命の小泉翁も 「その通りだ」と応じて、かつて細川氏を引っ張り出して都知事選で惨敗したことをわすれたご様子。老人性健忘症なのか、しみじみします。この人の場合、一度目は喜劇、二度目も喜劇です。 

6年前ならいざしらず、今やシラちゃけた「反原発」テーマに朝日だけが、ここぞとエールを送っています。
https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20180715003266.html 

「脱原発の必要性を訴えた小泉氏は講演後、「原発ゼロの国民運動を盛り上げるには、保守と呼ばれた私たちが声を上げていくことが大事だ」と述べた。小沢氏も「大変心強い」と呼応。脱原発に向けて協力していくことを確認した。
 講演で小泉氏は「思いがけないお招きで間違いかと思った」と笑いを誘うと、小沢氏との思い出を振り返り「政界では敵味方はしょっちゅう入れ替わる」と語った。原発再稼働を進める安倍晋三首相については講演後、記者団に「総理が原発ゼロにかじを切れば与野党一緒に実現できるのに、チャンスを逃しているのは惜しい」と述べた」(朝日7月16日) 

ひさしぶりで小沢翁の顔を拝見しました。あいかわらず、顔から権力欲という脂の粒がプツプツと浮き上がったような顔です。 

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なにが「保守と呼ばれた私たち」ですか。笑わせます。小沢さん、あなたのことを今でも「保守」だなんて思っている日本国民がどこにいるんでしょうか。 

かつて自民党の幹事長を勤めながら、今や外に共産党と組むだけではなく、内にも森裕子氏や山本太郎氏のような極左運動家を入れた節操のない政局亡者にすぎません。 政界の評判師の鈴木哲夫氏などは、いまでも小沢翁を「政界の要」などと言っているようですが、あの人に褒められると小池百合子都知事のように必ず周囲を巻き込んで自滅の道を歩むことになりますから、ご注意下さい。 

小沢氏を党首と仰ぐこのお二人は、つい先日も国会本会議の投票をデモと勘違いした愚行で、懲罰動議を食らっています。こんな所業が、議会制民主主義を破壊することになるとは思わないないのでしょうか。 

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さて、小沢翁が原発に関心があるとは初耳でしたが、これが来年の参院選に「反原発」一点共闘をしたいという思惑なのは、朝日に言われずとも見え透いています。 

「参院選を1年後に控えて意識するのは、第1次安倍内閣の退陣の引き金になった07年参院選だ。民主党を率いて年金記録問題などの政権不祥事を追及し、民主単独で60議席を得た。対する自民は37。衆参の多数派が異なるねじれ状態に持ち込み、政権交代の素地をつくった」(朝日前掲) 

小泉氏は、一世を風靡した政治家でありながら、かつての保守政治家のように気持ちよく枯れることができずに、現世にちょっかいを出したいようです。 

かっては細川氏、そしてとうとう今度はかつて天を共に戴かざる仇敵の小沢氏だそうですから、要するにこの老人にかまってくれればもう誰でもいいんですね。 

さて小泉翁の「反原発」は、まったく進歩していません。かねてからこの人を知る人たちが口を揃えていうのは、勉強をしない、耳学問だけの人物ということですが、相変わらずブレない人です。

 

かつて、この人の「反原発」妄論は徹底的に批判し尽くしたので、私にとってはいまさら感があります。
※関連記事「小泉翁の妄執「原発ゼロ」の嘘」その1~9
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-cf8d.html 

この人の「原発ゼロ」政策の致命的欠陥は、ゼロにした場合の代替エネルギーがないことです。 いま、現に基幹エネルギーの3割ちかくを占める原発をゼロにしていますが、この酷暑で関西電力を初めとする全国の電力会社は余剰電力を使い切りつつあります。これについてはそのうち記事にします。 

この原因は、いうまでもなく、もうひとりの「原発ゼロ」男の菅直人氏が行った原発の点検の超法規的停止と、再生エネ法のために、火力発電一本に頼りきったいびつな状況となっているからです。 

では、菅氏が福島第1事故の後に、ショック・ドクトリンよろしくドサクサに紛れて強行してしまった再エネ法はなにをもたらしたのでしょうか。 

私たちが身近に見ることができるのは、景観の変化です。 

5657f1f73cf247a495acca7b4936781a山口県萩市メガソーラーhttp://www.west-es.jp/results/mega-solar/details/01035.html

少し郡部にでかけてみれは、まるで皮膚病のように各所で森林が伐採されて、いいかげんな土止めの上に膨大なソーラーパネルがひしめいている風景に出くわすはずです。 

私の村でも、「ソーラー用地高価借り上げます」というチラシが頻繁に投げ込まれ、村ではちょっとしたブームになりました。 

今、ソーラー業者に貸し出せば、法外な金が手に入ると聞きつけて、我も我もと水田を捨て、谷他を潰し、山々を売ったわけです。 

20年間高値設定のまま固定買い取りするというような馬鹿げた制度(FIT)を作ってしまえば、人々は欲に目が眩むのです。 

いやいや、太陽光発電なら「地球に優しい」し、「原発ゼロ」でしょう、と信じている人がいたら、どうぞ現地をご覧下さい。 

理屈では、発電に際して温暖化ガスを出さないという建前でしたが、現実に太陽光パネルの数十万枚の大群が覆い尽くしているのはなんだったのでしょうか。 

それは見れば分かります。森林です。森の樹木を数ヘクタール規模で伐採し、いったん裸山にする勢いで山林生態系を破壊し、その上にソーラーを設置したのです。 

結果、「太陽光発電開発汚染」とでもいうべき、新たな自然破壊が急激に進行しました。 

全国各地でメガソーラーの設置反対運動が起きています。
http://ito-ms.chu.jp/%e5%8f%8d%e5%af%be%e9%81%8b%e5%8b%95/ 

このメガソーラー建設のためには、広い範囲で樹木を伐採しなければなりません。樹木の伐採は伊豆高原の美しい景観を台無しにしてしまいます。伊東市の基幹産業である観光業にとって、景観は重要な観光資源であり、それが損なわれることは死活問題と言えるでしょう」伊東メガソーラー建設の中止を求める会 

そしてさらに景観のみならず、森林が果たしている治水機能を破壊することになります。伊東市中止を求める会はこう述べています。 

「景観が変わるという、すぐに目に見える影響だけではありません。
斜面にある樹木を伐採することによって、森林の保水力が低下し、洪水や土砂流失の危険が高まります」 

ソーラーの事業者は、下の写真のような調整池や砂防池を設けて土砂流出を防止すると説明しています。 

6300x192杵築市のメガソーラーの沈砂池 

ところが、実際に蓋を開けてみると、上の写真のようなチャチな砂防池は日々流れ込む土砂に埋まって、やがて溢れ出して、斜面を急流となって下ることになります。

これはソーラー事業のみならず、西日本豪雨で砂防ダムが各地で決壊したのを見ればわかるはずです。

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下の写真は、現実に八幡町のソーラー事業地で濁流が流出した後の斜面の様子です。

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あげくは、ソーラー自体も水害に極度に弱いことは各地で実証されています。

下の写真は群馬県伊勢崎市のソーラーですが、ちょっとした豪雨でこのありさまです。

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このように自然環境保護を無視したソーラー事業は、メガソーラーを作れば作るほど、日本の貴重な森林は伐採され、農地は手放されるといった、再エネ普及の大義とはまる正反対のものになり下がっています。

森林の地道な植林と、保全こそが二酸化炭素対策としてもっとも有効な解決策であることは自明であって、大事な森林保全をないがしろにした「原発ゼロ」など欲惚けたちの虚妄の宴にすぎないのです。

しかも、これらの太陽光パネルのほとんどすべては中国製であり、事業者もまた海外企業がひしめいているのですからシャレになりません。

かくして再エネ普及賦課金によって電気料金は上昇し、山は荒れ、沃野は捨てられ、事業林益は外国に吸い出されて行くことになりました。

これが「原発ゼロ」を目指した結果です。

エコよ、地球に優しい原発ゼロよ、と囃し立てて、来年の参院選の「小・小共闘」で政権奪還とは、なんというグロテスクなことよ。

2018年7月22日 (日)

日曜写真館 天衣のような

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熱中症のお見舞いを賜りまして、ありがとうございます。
まだ頭痛が引きませんが、おおむね戻ったと思います。

天衣は「あまのはごろも」と読みます。天女の着る服で、縫い目がないそうです。

2018年7月21日 (土)

熱中症の危険下で高校野球大会をするな

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とうとうこの私もやってしまいました。熱中症です。 

昨日、仕事の段取りが悪くて、よりによって11時すぎの炎天下での野外肉体労働をやらかすというハメに。 

こういうハードな仕事は、朝6時台の涼しい時間帯に済ませなきゃならないんですよ。 

沖縄のお百姓に「アサブシ、ユウブシ」(朝星夕星)という言葉があるそうですが、あれは真っ昼間に農作業すると倒れること必至だからで、涼しい時間帯に片づけてしまうという意味です。

決して朝星がでる頃から夕星がでるまでズッと働きっぱなしということじゃありません。しっかり昼間は昼寝しますしね。 

それをよりによって私は、34度の直射日光下でやらかすというお粗末の一席。 

あ、そうそうよく気温34度なんて気象庁が発表している数値は、百葉箱の測定ですからね。 

野外の直射日光の下や、地表からの輻射がある道路、広場などではプラス3度、時にはそれ以上になっていますので、ご注意。 

いやー、死にましたね。

仕事の区切りに近づいた1時間過ぎには、汗が滝のように流れたあたりまでは想定内としても、やがて目の前が暗くなり、立つことも怪しくなって、終いには軽い吐き気が来た時には、うわ、やっちまったと内心悲鳴を上げていました。 

ウゲっと吐き気が上がってきて、暑いのに逆に寒くなるのです。典型的熱中症じゃないか、これは! 

私はかつて沖縄で農業をやっていた頃に一度熱中症をやっています。その時にも暑さを通り越してゾクゾク来たことをよく覚えています。

ちなみに、その時は汗も乾いていたような覚えがあります。 

熱中症って、ある一線を超えると視床下部が司っている体温調整機能がバカになってしまっていますから、かえって寒くなったり、汗がでなくなるんですよ。 

まぁ、私の場合直ちに仕事を放り捨てて、風呂場に飛び込み水をザーザーかけ流しにしました。ともかく冷やすしかないんです。 

その後に空調と扇風機をガンガンつけて、マグクールという水につけると氷嚢になるものを首に巻いておとなしくしていました。 

なんとか今は頭痛が残るていどで正常に戻っていますが、こんな熱中症からの帰還をやらかした後は、甲子園を目指す高校球児の諸君が気の毒でたまりません。 

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熱中症をやらかした私にとって、朝日のこんな偽善的な記事(7月14日)を読むと胸糞が悪くなります。
https://www.asahi.com/articles/ASL7G5H4GL7GUTQP03W.html 

「毎年、熱中症でみなさんと同年代の部員が亡くなったり、意識不明になったりしています。
今年も事故が起きました。12日に、
大津市の中学校で、男子ソフトテニス部の2年生が、熱中症で救急搬送されました。(略)
日本スポーツ協会はこのWBGTが25~28度になると「積極的に水分、塩分を補給する」、28~31度だと「激しい運動や持久走は中止」という指標を出しています。そうした状況では練習には細心の注意が必要なのですが、正しい知識を持たず、認識が甘い先生がいるのが事実です。
これからの時期、給水が少なかったり、過度な持久走が課されたり、そうしたことについての意見が言えない雰囲気があるなら、それは先生の間違いです。
「それは無理」と感じた時、「もうダメだ」と体に異変を感じた時、仲間の様子がおかしい時、自分や仲間を守るために、声を上げましょう。とても勇気がいることです。でも、みなさんの方が正しい場合がきっとあります」

 ここで朝日の編集委員が言っているWBGT評価というのは、下図の日本体育協会が定めた「熱中症予防のための運動指針」というものです。 

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 朝日さん、おいおいです。あなたの会社は主催者です。「声をあげることが勇気がいる」状況を作ったのは、他ならぬあなた方なのです。

朝日に言われないまでも、甲子園がある大阪では8月に入って、連日「運動は絶対禁止」の35度を連日超えており、30度を割った日は1日もありません。
https://weather.goo.ne.jp/past/772/20170800/ 

つまり、こんな時期にやるなということです。

結果、主催者の高野連と朝日新聞は、「運動絶対禁止」、ないしは「厳重警戒」下に、多くの高校球児と観客をさらしています。

それを「教育の一環」という美名で放置し続けてきました。

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忘れかかっているらしいので、朝日と高野連のために高野連規約をみておきます。

「第2条 学生野球は、教育の一環であり、平和で民主的な人類社会の形成者として必要な資質を備えた人間の育成を目的とする」

「教育の一環」というなら、生徒の身体を少しは心配したらどうですか。

こんな過酷極まる気象条件で競わせた上に、エース級投手はほとんどの高校がひとりしかいません。

しかも完投が強いられます。準決勝、決勝ともなれば、連日連投を強いられるというプロなら絶対にありえないスケジュールが組まれています。

プロがしないのは、こんな無謀な連投をやったら、投手が二度と野球ができない肩になるからです。

せめてもの改善は2013年からの準々決勝と準決勝の間に休養日を入れたことくらいですから、「教育の一環」という規約が泣きます。

これでいかに多くの高校球児が、一生使い物にならない肩になったのか、野球ができない身体になってしまったのか、高野連と朝日は調査してみるといいと思います。

全国高校野球大会を止めろなどという気は毛頭ありません。長く残すべき、日本の誇るべきスポーツ競技大会です。

だからこそ、なぜ真夏の炎天下、年間最も暑い8月にするのかを問うています。秋にできない理由でもあるのでしょうか。

日本が一番暑い時によりによってやることはありません。8こう書くと、年配者の人には、オレたちだって歯をくいしばって真夏にやったんだという人もいるでしょうが、あなたの若い頃とは気象条件が違うのです。

中には所沢市長のように、「教室にクーラーをいれないのが教育だ」なんてバカ言っている人もいるようです。

下は大阪7、8月の気温の推移グラフです。

夏の甲子園で優勝した元報徳学園のエース金村義明さんは、「僕が投げている時よりはるかに暑い。今だと僕死んでますよ」と断言した」(スポーツ報知7月20日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180720-00000270-sph-ent

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あるいはドームならまだしも、屋根もない甲子園球場で、未成年者の生徒に競わせるのが非常識だと言っているのです。

現に、2011年には出場選手が次々に熱中症で倒れ、没収試合となるケースが発生しています。

しかも球児だけではありません、勝ち進めば進むほどバスを連ねて応援に来る応援団の生徒たちも膨大な数に登ります。

それが全国各地で甲子園を目指して、連日繰り広げられているのです。

いかに多くの子供たちの身体が危機にさらされているか、思いを致して下さい。

 

 

 

2018年7月20日 (金)

遅れている避難所環境整備とスフィア基準

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今回のような大規模災害が起きるたびに思うのは、避難所の改善が遅れていることです。 

下の写真は典型的な避難所ですが(※今回の災害ではありません)、各個人のプライバシーの仕切りはなく、硬い体育体育館のフローリングの上にざこ寝を強いられています。 

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 これだけの避難民を収容するのですから、その人いきれだけで大変な暑さです。 

しかし、多くの体育館利用の避難所には空調はつけられていません。 

今年の夏のような35度を連日超える暑さは、ただでさえ自宅を失って馴れぬ環境で苦しむ人たちにとって大きな健康障害の原因となっています。 

避難者を保護すべき避難所が2次的被害を与えてしまっては、なんのために避難所を設置しているのかわからなくなります。 

被害が起きた直後に限定されるのならともかく、1カ月たっても2カ月たってもこのような収容所型避難所が改善されないならば、それは日本人の並外れた我慢強さに寄り掛かった国の甘えです。 

次の写真はやや進化した避難所です。やっと間仕切りカーテンがついています。ダンボールベッドが入った避難所もあるようです。 

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しかしこのようなわずかの改善すら、遅々として進んでいないのが現状です。

さて、日本ではほとんど聞かれない基準ですが、避難所の生活環境基準に「スフィア基準」があります。

ソマリアなどの難民キャンプを見てきた、アルピニストの野口健氏はこう述べています。

「スフィア基準はもともと地域紛争による難民問題に対応するために作られた基準なので災害時と事情が違うとは思うが、日本の避難所は1人当たりの面積も狭く、プライベートも確保できない。海外の専門家に「ソマリアの難民キャンプより状況が悪い」と言われても仕方がないのでは」と話す」
(「日本の避難所はソマリア難民キャンプ以下」)
ttp://www.risktaisaku.com/articles/-/2728

スフィア基準には三ツの要素があります。
①水の量
②トイレの数
③スペース

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多くの日本の避難所は、この国際基準を満たしていません。

まず水も初期の段階では、交通インフラが破壊されるために一部では深刻な水不足が発生しています。

「100世帯全員が避難している広島県熊野町の川角地区。熊野町役場で話を聞いてみると、避難所で必要とされているものは飲み物などを冷やす「氷」、使い捨ての「皿・コップ・スプーン」、「ペーパータオル」などだという。
また、水が不足している地域では給水所などから確保する水を貯めておくためのポリタンク、感染症を防ぐためのマスク、消毒用エタノールなど衛生を保つために必要なものが底をつき始めている避難所もあるという。」
(ハフィントンプレス7月14日)

https://www.huffingtonpost.jp/abematimes/sphere-standard_a_23481829/

水の確保、保管、皿・コップなどが不足している避難所もあります。水は避難者の生活のすべての基礎中の基礎です。

次に生活する上で絶対に欠かせないのがトイレです。

体育館を避難所とするために、女性用が不足しています。

また避難者にはお年寄りが多いために、健常者用のトイレしかない場合が多く、生活に支障がでています。

スフィア基準ではトイレについてこのように述べています。

「トイレの数は男女比で1:3を推奨。女性は生理や排泄の仕方の違いで時間がかかるため。トイレ1つにつき最大20名(初期は50名)。トイレまでの距離は安全性と利便性、衛生面から50m以内が理想」(ハフィントンプレス 前掲)

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第3にスペースです。

「国際的な基準であるスフィア基準では、シェルター(避難所)の居住空間は最低限一人当たり3.5平方メートル。適切なプライバシーと安全が確保され、覆いがあり、天井までの高さは最低でも2メートルであることが条件とされる」(野口氏前掲)

3.5平方メートルという目安は、あくまでも1人用の面積ですから、平均4人家族とすれば14平方メートルということになります。

冒頭の避難所の写真を見ていただければ、スフィア基準の3.5平方メートルの何分の1の面積な上に、個人スペースなど皆無なことがわかります。

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つまり日本の現状の避難所は、残存ながらあらゆる点から見てもソマリア以下ということになります。視察した海外の専門家からはひどい環境だという指摘があるようです

東日本大震災時もそうでしたが、生活のすべてを失った人も多いでしょう。

仮設住宅といっても、すぐにはできるわけではありません。当然のこととして、避難生活は長引きます。

無理だと頭から思わないで、ではどうしたらいいのかを真剣に考えるべき時ではないでしょうか。政府は今までの体育館型避難所から脱皮する時期ではないでしょうか。

初期の避難には体育館使用もやむを得ないとしても、そのまま体育館では長期化には耐えられません。

Photo_3野口氏による岡山県総社市の避難者テント村

野口氏は自らが行ったベースキャンプ用大型テントによるテント村型避難所の実践をこう伝えています。

「テント村は、かねてから交流があった岡山県総社市の片岡聡一市長のサポートによって震災から10日後に誕生。100張以上のテントが約1か月半にわたり、およそ600人の生活を支えた。
テント村を視察に来た海外の専門家たちは、「日本の避難所の状況はひどいが、このテント村のテントは中が広く、天井も高く、環境がいい。かなりの部分で国際基準を満たしている」と口を揃えたという」(野口前掲)

テント村にかぎらず、まだまだやり方は行く通りもあるはずで、避難所=体育館という狭い発想にとらわれる必要はないのです。

こういう政府の足りなさを指摘し、よりよい提案をするのが野党の役割のはずです。

野党は酒宴がどうのと馬鹿を言っていないで、こういう地道なことを取り上げて、政府の尻を叩くべきです。

ただし、いつものように近視眼的に政局に結びつけないように。

 

2018年7月19日 (木)

西日本大水害デマ三点盛

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あいかわらず西日本大水害のデマはヒドイですね、。このすさまじい酷暑の中、よーやりますよ。 

まずは例の5日夜の赤坂自民亭を、大上段で「空白の66時間」ときたもんです。 

これについては既に記事にしましたが、災害時の初動の仕組みを知らない者たちの戯れ言にすぎません。 

政治家は予知能力者ではありません。大雨特別警報が発令されたのは翌日の6日です。 

日本の気象情報の分析に当たるのは、いうまでもなく気象庁という公的機関です。一義的には気象庁の分析に頼るのが正解なのです。 

下図は5日夜の警報状況ですが、この5日の時点では特別警報がでていないのがわかります。Div_6v2ueaabiwt特別警報の発令状況を時系列にすると、気象庁が特別警報を出したのは翌日の夕方6時からです。 

・7月6日18:10・・・福岡、佐賀、長崎三県に特別警報
     同20:40・・・
広島、岡山、鳥取三県に特別警報
・   同23:45頃・・・
倉敷市真備町地区・小田川堤防が決壊

 そして災害においては、厳密に災害における「行動基準」が定められています。 

行動基準とは別名で設置基準ともいわれ、各級の対策本部を設置する基準を定めています。 

こういう時にはどうする、こういう時にはこういう組織を立ち上げるというのは、防災計画の一環として既に定められています。 

ここに属人的要素はありませんから、政治家個人の能力とはまったく別次元の話です。 

この初動対応を、いまだ政治家という「ヒト」がやっていると思い込んでいるのが、勘違いの元です。

脱線しますが、被災対応を放っぽいといて、カジノをやる政府なんて、筋違いの批判がありましたが、これも国会の権限が分かっていないからこういうことをいいだすのです。

国会議員が災害初動でできるのは精神的支援ていどです。黙々と国会審議をしていただくほうがよほど為になります。

それはさておき、属人的に危機対応をやると、ひと握りの防災の素人の政治家が決定権限を握ることになります。 

世界最初の原発の重大事故において、独裁的権限を握っていたのが、菅直人首相という素人政治家だったという恐怖を忘れないようにしましょう。

防災のことをよく知らない政治家に、情報を収拾し、その真贋を選別し、その都度それに的確な指示を出すのは不可能です。

だから、危機管理としての防災対策行動基準が策定されているのです。 

よく対策本部がどうのと言っている人がいますが、こういうなんたら対策本部を作れば仕事をした気になるのが、最も安易な発想なのです。

立民の枝野代表は3.11の時の官房長官でしたが、政府より先に本部を立ち上げたと自慢していましたが、 バッカじゃなかろか。

枝野氏は菅氏の女房役の官房長官でありながら、狂乱する菅氏を諫めるどころか「総理は(原発)技術を含めて専門的な素養を持ってる」などという嘘八百を国民に流した人物です。

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上の写真は菅、枝野、野田の各氏といった民主党政権中枢です。この人たちに私たちは3.11で命を預けていたのかと思うと、心底ゾっとします。

そもそも野党のなんじゃら対策本部には一片の権限もないのですから、テレビを見るくらいしか仕事はないはずです。

なんたら対策本部は、自動的に立ち上がります。国、自治体、各省庁それぞれに各級でできるわけです。 

これを中央で束ねるのが危機管理監であることは既に書きましたね。 

そして政府対策本部は、これら多くの対策本部が適切に摩擦なく動くための調整に当たっているのです。 

こういう仕組みを知らないで、批判するのは止めましょう。 

次には、なんですって、え~「クーラーを避難所に入れたのは首相が視察するからだ」そうです。 低次元の極み。

これは世耕経産大臣によって、直ちに完膚なきまでに否定されました。 

政府は収容者数が多い避難所から空調を入れているだけであって、首相も視察に当たって避難者が多い所を優先的に回ったというだけの話です。 

まぁ、それで懲りて黙るような蓮舫氏ではありませんから、論点を別の場所に移しました。 

蓮舫氏の7月13日のツイートです。
https://twitter.com/renho_sha/status/1017627122242736128

「総理視察の直前に避難所にクーラーが設置されたとのツイッターに、経産大臣が随分とお怒りの様子で、かつ上から目線のような書きぶりで反応されていたが、もはや避難所にクーラーのレベルではなく、災害救助法上のみなし避難所の旅館・ホテルを借り上げ、被災者の居場所を確保すべきです」 

気の毒にも、このツイートの前日には政府は既に旅館・ホテルの借り上げを開始していました。

「安倍晋三首相は12日午前、西日本を襲った記録的豪雨を受けた非常災害対策本部の会合で、被災者向けに公営住宅や公務員宿舎、民間賃貸住宅など7万1千戸を確保したと明らかにした。「猛暑の中、一刻も早く避難所の不自由な生活から脱していただくよう全力を尽くす」と述べた」(日経7月12日)
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO32900430S8A710C1000000?s=1

責任ある政治家ならば、まずクーラー・デマについて「誤認でした」のひとことがあってもよさそうなものですが、「上目線で」などと感覚的に貶せばそれが反論になると錯覚しているのが、この人らしいとはいえます。 

Photo襟たてんなよ。気持ち悪い。

この人は民主党政権で東日本大震災・福島第1事故を経験しているはずで、どうしてこうも風評デマに対して鈍感なのでしょうか。

政党がデマの発信源になったら、シャレにならんでしょうに。

そして3番目に、被災地のローソンに物資を自衛隊が緊急搬送したのは、「被災地復旧よりも商売が大事なんだ。官民癒着だ。ローソンの親会社は安倍の兄貴がいるから忖度したんだ」というものまで現れました。
 

この酷暑で脳ミソが焼け焦げてしまったんじゃないですかね。 

このコンビニを救援拠点とする方式は、アベ氏の兄貴とはなんの関係もありません。(あたりまえだ) 

経済産業省「災害対策基本法」に則った対策の一環です。
http://www.meti.go.jp/press/2017/06/20170627001/20170627001.html 

「災害対策基本法」において、公益的事業を営む法人等のうち内閣総理大臣が指定するものを指定公共機関と位置付けています。官民が一体となった取組の強化を図るため、内閣総理大臣が指定する指定公共機関について、スーパー、総合小売グループ、コンビニエンスストア7法人が新たに指定公共機関として指定されます」 

これにはスーパー大手、総合小売グループ、コンビニエンス・ストア7法人が指定公共機関として指定されています。

「当該7法人は、災害発生時において、地方公共団体や政府災害対策本部を通じた要請により、物資支援協定等に基づき、全国の店舗網等のネットワークを活かして、支援物資の各種品目の調達、被災地への迅速な供給等を担うことで、災害応急対策に貢献することが見込まれます」

つまり緊急時の救援拠点に、各所に網羅されているコンビニやスーパーを利用する試みなのです。 

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このコンビニ・デマを流した者は、被災した経験がないんでしょうね。 

私は数週間に渡って、電気、水道、そして商品供給を断たれた経験があります。スーパーは半壊、セブンの棚は空っぽでした。

空っぽの棚、売れ残っているのは雑誌だけという風景は、経験しないとわからないかもしれませんが、スーパーやコンビニに商品が供給されるという心強さは、被災者にとってどんなにありがたいことか。

こういう東日本大震災などの反省から生まれた新しい被災地救援の試みを、くだらないアベ・バッシングのネタにせんで下さい。

今、このような大災害時に、誰が何を言ったのか、よくチェックしておきましょう。

こんな人物やメディアは、いざという災害時にどのような行動をとるか正確に予測できるからです。

また、こういう低レベルなデマに接すると、この私もそうですが、こんな人たちと同次元でやり合いたくないという気分になってしまいます。

しかし、それは違うと思います。

かつての3.11以後流された膨大な風評デマは、被災者を苦しめ復興を遅らせました。

デマは初期の段階で芽を摘んでおかねばなりません。それがこれ以上デマを許さない社会的抑止効果を生むからです。

さもないと真実が覆い隠され、かつての放射能デマのように「事実」としてひとり歩きするようになります。

そうなっては遅いのです。

 

 

 

 

2018年7月18日 (水)

山路敬介氏寄稿 沖縄県知事選選考は沖縄保守再生につながるのか 完結

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山路氏連載の最終回です。たいへんに難しいテーマを、よく書いていただきました。心から感謝します。

今回、山路氏がとりあげたテーマは、大変に重要なことでした。

地元紙はやや面白げに安里氏の登場を伝え、自民候補者選考委員会が混乱している様を伝えました。

沖縄自民は真っ先に手を上げた、自民党員でもあり、発信力の備わった安里氏がまるで見えないかのごとく選考を進めました。

そしてそれは、なにがどう議論されているのか外部からは伺えないものでした。

透明性を担保できねば民主主義ではないし、そもそも形だけの選考委員会なら作る必要がないではありませんか。

しかし、オール沖縄政治が続くことを恐れるあまり、今回の記事にあるように、「ではオール沖縄が続いてもいいのか」という反問されれば、口をつぐんでしまいました。

山路氏は、あえてそれに疑問を呈することから始めています。

「これで沖縄に民主主義がとり戻せるのだろうか」、と。

佐喜眞宜野湾市長はよい候補者だと思います。

であるならいっそう、安里氏と公開討論をしてみたらいかがでしょうか。

オール沖縄は、沖縄の民主主義を後退させました。

地元紙だけで充分すぎるくらいなのに、それに加えて左翼県政に保守の一部を取り込むことで、いっそう物言えぬ閉鎖空間を完成させてしまいました。

保守の良さは、開かれた議論ができることではなかったのでしょうか。大同小異を超えられる包容力ではなかったのではないでしょうか。

このオール沖縄が作ってしまった、なんともいえない息苦しさをうち崩すのは、選挙しかありません。

ならば、もっと選挙を大事にしませんか。

ぜひ、山路氏にはこの続編を書かれることを期待します。

                                   ~~~~~~~~~ 

          ■ 沖縄県知事選選考は沖縄保守再生につながるのか 完結
                                                                                                山路敬介
 

承前 

安里氏は出るのか、出ないのか? 

自民県連は当初から保守二分選挙になる事を最大限に警戒しており、その為の技術的な意味で選考委員会制度を作った経緯もあって、安里氏はそこにまんまと誘き出されてしまったの感が私には強くしています。 

しかも、佐喜眞氏と安里氏の支持層は多分に重複していると分析出来るので、見方によっては、その点で自民県連の今回の経緯と決定は近年まれに見る「上出来な仕事をした」とも言えます。 

あるいはさらに、佐喜眞氏を知事候補に押し上げた要因が「安里氏の出馬を抑える効用」を考えたゆえでもあったり、旧仲井眞グループなど多士済々の長老たちを抑えての佐喜眞氏に決定出来た事も「安里氏の存在ゆえ」、という言い方も出来るかも知れません。

いま「上出来な仕事」と申しましたが、それは当然、結果として安里氏の出馬を抑え切った場合の評価です。
 

しかし、安里陣営の大勢は「保守分裂しても勝てる」と踏んでおり、安里氏本人は「取引はしない」(出馬見送りの代わりに、副知事などの要職を得る事はないという意味)としております。 

しかし、まずは佐喜眞氏との直接対話を望んでいます。 

それはそうでしょう。

なぜならば、知事選出馬に前向きと伝えられる佐喜眞氏の、知事になった場合の抱負を誰か聞いた事がありますか? 
 

選挙のための工作は達者にするけれども、どういう沖縄にしたいのか? 何が沖縄の問題であると認識しているのか? そういう類の事は一言も述べられていないではありませんか。
すべて彼の順序が逆なのです。

安里氏自身は苦労人だしサッパリしたこだわらない性格でもあるので、現状では無理ですが、対話によっては引くべきは引く覚悟もあるでしょう。
 

ただ、安里氏にとって佐喜眞氏が今になり出馬に前向きなのは大いに意外でもあるようで、それは佐喜眞氏本人が終始出馬に否定的な発言をしていた経緯からも理解出来ます。

安里氏は佐喜眞氏が出馬しない前提で、そのうえで選考委員会が自分を指名しない場合でも独自に出馬する腹積もりだったと見て良いと思います。
 

さらに勘ぐればですが、密約的でないまでも佐喜眞氏との間で直接「出馬しない」とのやりとりが事前にあったのではないか、と私は疑っています。 

佐喜眞氏と安里氏は友人であり、これまで特別な信頼関係にあったからです。

どう転んでも沖縄の未来は従来政治の延長線上にはなく、徹底して現実に目を向けた政治姿勢を持つ候補にしか沖縄の未来は開けません。
 

そう考えれば、どうせ遅かれ早かれ安里氏の時代が来るでしょうし、来ざるを得ないものと私は承知しています。 しかし、それだからこそ安里氏はいま出馬すべきです。

私には結果的に安里氏が勝てるかどうかわかりませんが、松本哲治浦添市長の一期目のような選挙を展開できる要素が十二分にあり勝機はあると考えています。
 

ガチガチの自民党支持者を相手にする必要はありませんし、イデオロギーにまみれた層に訴える事も無駄で無意味です。 

しかし、普段から政治に期待せず投票すらしなかった層こそが分厚いのであって、そこがこれからの最大の票田となるのだと思います。

■「保守二分して、またもやオール沖縄系知事になったら、さらに困るのではないか?」の説について

そのような危惧は一見もっとものようでいて、そうたいして重大な意味を持ちません。
 

正直言って、無理に一本化して佐喜眞氏を当選させたところで、今の沖縄を変える何ほどの個性も発揮出来る見込みはありません。

誰が知事になろうが「辺野古移設」が中止になる事は最早ありえず、例えば謝花氏が知事なったとしても彼なら太田知事ほど極端な政策は打てないし、県議会で自民党が多数を取る事が出来れば、それでストッパーになります。
 

現在の沖縄の状況は辺野古以外の事は全て県庁がやっているので、どっちにしても今よりは遥かにマシです。 

経済はその伸びしろを生かせず、あるいは減衰する事もあるでしょうが、それだって緩やかなものです。

もちろん安倍政権への求心力が落ちる事は避けられませんが、むしろ日本国民は沖縄に無駄な税金を投入しないで済むメリットさえあるかも知れません。
 

保守二分化を避ける事の意義はオールドタイマー政治を継続したい自民党の為にこそあるのであって、我々県民の配慮とすべき事ではないと私は考えます。 

尚、本記事では長くなるといけないので、どうして私が安里氏を私が推すのかについて、肝心な部分なのですが、そこはやむなく省きました。 

そこを詳細に説明する事は沖縄政治の欠点や社会の状況まで説明する事と同義なので、別稿とさせて頂きます。

 

                                                                                                    (了)
                                                                                                    

 

                                                                                           文責 山路敬介 

 

2018年7月17日 (火)

山路敬介氏寄稿 沖縄県知事選選考は沖縄保守再生につながるのか その2

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山路敬介氏論考2回目です。

山路論考は、沖縄政治評論においてまったく新しい視座をつくりだしつつあるのではないかと思われます。

氏は正確な政局分析に立った上で、既に「オール沖縄vs保守」という、旧来の分析ツールから自由になっています。

その上で氏は、なにが沖縄政治に必要なのかを問うています。

                             ~~~~~~~

         ■ 沖縄県知事選選考は沖縄保守再生につながるのか その2
                                                                                      山路敬介

 

承前 

沖縄自民党はそもそも「保守」なのか? 「自民党外保守」の安里繁信氏の立場
 
安里陣営にしてみれば、安里氏が意思表示し面接(らしきもの)をしてのち、これまで一ヶ月以上も委員会が開かれなかった事など、どうしてもその選考過程に不明朗さが付きまとう不満が事実を持って幾重にもあります。

そうした不満の根本には、本来的に沖縄の従来政治・既得権益を差配してきた自民党に対するそもそもの不信感があります。

つまるところ、安里氏は自民党員でありながら「自民党外保守」の立場を色濃く有しているのが現状です。

私の考えでは、沖縄自民党は佐喜眞氏も含め「保守」として未熟であるばかりでなく、リアリズムで物事を考える事の出来ない点で革新陣営とさして変わらない体質を有していると思っています。

とどのつまり「対立」するか、「おねだり」するかの違いはあれど、「対本土」という狭い世界観からの政治から脱せられない点で、自民党も他の革新政党と同じ「ひと塊」のものにすぎないのです。

また、現下の日本を取り巻く厳しい国際環境のもと、いわゆる「海兵隊撤退決議」を行えるような保守派など到底考えられもしません。

移転すべき普天間基地を擁する市長であるにもかかわらず、その移転先を隠し「辺野古」と明示する事も出来ない者に保守の矜持などあるとも思われません。

だいいち、宜野湾市が擁する危険な普天間基地を撤廃する必要から辺野古への移設が決定され、現に工事が進められている現状を一体どう認識しているのか不明です。 

宜野湾市長として、宜野湾市からの基地移転だけを声高に言うのならば、それはまだ良いでしょう。

しかしそれならば、保守を名乗る側の知事になる資格は同時に失効したと言わざるを得ません。

沖縄自民党は名護市長選挙前に安倍総理がした「沖縄に寄り添う」宣言をもって再活性化したと私は見ています。

その実質を沖縄自民党内では、「広範な経済支援を約束したもの」と解釈しています。

そして沖縄自民党の政権奪還にかける最大の眼目は、安倍政権の継続が確実な情勢の中で、「次期沖縄振興計画」に最大の影響力を発揮することです。

それを大目標とすることが、今の沖縄自民党の結束力につながっています。

つまりこれからも、基地問題を軸にした補助金の多寡をパラメーター(基準項目)とする政治を繰り返そうとしているだけのものなのです。

このような伝統的な、いわゆる「沖縄エスタブリッシュメント政治」を終わらせようとするのが安里氏の考えの基底をなしています。

それを分かっている沖縄自民党が、最初から安里氏を指名するはずがないのは自明だったと思います。

                                                                                     (次回終了)

2018年7月16日 (月)

山路敬介氏寄稿 沖縄県知事選選考は沖縄保守再生につながるのか その1

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山路敬介氏から論考を頂戴いたしました。ありがとうございます。3回分割で掲載させていただきます。 

なおタイトルは編者がつけたものです。 

                                              ~~~~~~~~~ 

沖縄県知事選選考は沖縄保守再生につながるのか その1
                                                                                     山路敬介


今回の保守系候補者選びほど不透明なことはなかった
 

来る11月(翁長知事途中辞任による前倒しの可能性も大であるが)にせまる沖縄知事選の自民党候補者選考に重大な動きがありました。 

選考委員会は佐喜眞淳氏に決定のうえ知事選出馬の正式要請をし、佐喜眞氏も「前向きに検討」としています。

Maxresdefault佐喜眞淳氏

私は5月上旬よりの選考委員会の議論の様子を探るべく、色々な伝手をたどって話を聞きまわっていたのですが、この「委員会」はガードが堅く、一般の自民党県市議の間からですら報道直前までそれぞれの意中を聞かされるにとどまり、経緯を含め大した情報が得られませんでした。 

そうこうするうち、相変わらず委員会が開催されない中であるにもかかわらず、六月下旬に唐突感をもって宜野湾市長の佐喜眞淳氏の名前が報道によってまず取りざたされ、佐喜眞氏本人も十分な意欲を持って臨んでいるらしいとのニュースが一斉に流れました。 

今ふり返れば、その報道は自民県連が報道を利用した観測気球だったのであり、保守系一本化を佐喜眞氏で一般に既成事実化するべく企図した目論見であった事は誰の目にもはっきりしました。 

重要な選考委員の一人である下地宮古島市長は「勝てる候補を考えた。佐喜眞ありきではなかった」し、安里氏を予め排除したものでもないように言いますが、到底そのようには信ぜられません。 

もしそうなら、誰がいつ佐喜眞氏を知事候補とするべく決定し、「出ない」と言っていた佐喜眞氏はいつの時点でなぜ出馬する事にしたのか、この点をさっぱりと説明すべきです。

沖縄自民党の「三つの懸念」
 

候補者選定について自民県連は当初は「5月末まで」とし、その後「6月中の決定予定」として、さらに「7月上旬にも」と言うように結論を延引した理由はそれぞれ違いますが、その理由は三つありました。

ひとつは宜野湾市長の後継問題。
 

もうひとつは、一本化の至上命題に対して一般のコンセンサス形成に対処するテクニカルな部分から。  

最後のひとつは、一番槍で意思表示していたにもかかわらず、確たる理由も明示されずに自民党推薦を得られない事になる安里繁信氏の独自立候補を阻止する事。 

32070973_239711103451265_8411615023安里繁信氏

これが佐喜眞氏や自民党が「最終受諾」までに繕うべき佐喜眞氏自身の言葉で言うところの、「環境整備」の内容です。

宜野湾市長後継問題は翁長政俊氏に決定し、報道を利用した既成事実化の応用が功を奏して議員連中や長老・自民党員からも表立っての異議は出ていません。
 

前者二つの問題はクリアして粛々と進んでいけるメドが立派に立ちましたが、最後の問題は小さくはありません。 

安里繁信氏はいかなる意味でも、「泡沫候補」ではないからです。

佐喜眞氏は報道に対して今だに「後援会が~」云々であるとか、「市議会与党と相談」というように正式受諾をしていない理由を答えていますが、そのような段階はとうに過ぎています。

最後に残る問題は「安里繁信対策」です。 そこを円満に解決して初めて正式な出馬表明としなければならないと考えるのが彼の必須要件で、そこから一気に宜野湾市長選に向かいたい意向なのでしょう。

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オール沖縄系候補は誰か?
 
現在のところオール沖縄系県政与党はこぞって「二期目も翁長知事」と声を揃えますが、それは十中八九あり得ません。

革新系のラジカルな方面では水面下で様々な意見が出ていますが、全体として翁長知事に頼りきりなのが現状で、統一候補も結局は翁長知事の指名という実質に落ち着くと思われます。

県庁筋の話では謝花喜一郎副知事が最有力であるとの見方が大勢で、それが最も自然な流れであると思います。

辺野古阻止だけが翁長氏の妄念なのですから、そのための実務も戦略さえも担う謝花氏が翁長知事の意を継ぐ最適格者なのは当然だと思います。

また、元々「そうした含みもあっての副知事就任」だったと言う重要な翁長支持者もあり鉄板とまでは行きませんが、ここは固い予想ではないかと思います。

それでもこのままでは知事の姿勢を存続させる事が危ういとの認識はあるようで、知事選を目当てに県民投票や撤回をどういうふうに仕掛けるか、そこのあたりが最も腐心のしどころと考えているようです。

そこを練るのもまた謝花氏の手腕に託されていると言え、すでに影の県知事相当なのではないか、と揶揄している職員もあるようです。
                           

                                                                                             (続く)

※関連記事 「翁長氏を継ぐのは誰か?」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-aa06.html

※管理人から

フランスが優勝しました。おめでとうございます。

前半なんどとなく押し込まれてからの勝利。見事でした。若いチームを率いたデシャンは、これでサッカーの神殿の座入りすることになるでしょう。

クロアチア、まさに最後の力を出し切って倒れました。
いくどとなく続く延長PKを征して、他のチームより丸々1試合多く、しかも中3日という悪コンデションに屈しませんでした。素晴らしいルーザーです。
いやある意味で、勝者より記憶にとどめられるべき強者たちだったのかもしれません。拍手。

2018年7月15日 (日)

日曜写真館 光の中の蘭

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2018年7月14日 (土)

「赤坂自民亭」と、現在の国家危機管理システムについて

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くだらないので、あまり書きたくないテーマだったのですが、延々とまだやっているのでいちおう触れておきます。 

メディアはここぞと責めて、復旧・復興に尽力している政府の足を引っ張りたいようですので、しゃーない。 

やりたくないというのは、西日本大水害がなぜこれほどまでに大きな被害となったのかの原因究明になんの役にも立たないからです。 

なんども書いているように、このような大災害を狭い政局に絡ませるべきではありません。 

かつての東日本大震災時に、当時野党だった谷垣自民党総裁がいち早く政治休戦を呼びかけたのは、危機における判断としてはまったく正解でした。 

大きな災害に際しては、政府は国家的リソースを全部投入する必要があります。

ですからその権限をもっている政府に一任すべきで、政治意見の違いを一時凍結すべきであって、救援フェーズに政局の入り込む余地などはないのです。

ところが野党に転落した旧民主党諸雑派は谷垣政治休戦の前例に則るのかと思いきや、これがゼンゼンないんだなぁ。 

さて7月5日夜の「赤坂自民亭」のことですが、敵失とばかりに沸き立った野党はやったぜとばかりに浅ましくこのネタに飛びつきました。 

立民の蓮舫氏の発言です。 

「(5日夜に自民党議員が議員宿舎で酒席を開いたことについて)まず驚いたのは(安倍晋三)総理も出席していたことだ。気象庁が8日にかけて歴史的な豪雨になるという警戒を呼びかけていた夜だ。(略)
そして楽しそうに宴の写真が出回ったときに、まさかと思いました。責任感があまりにも欠如しているとしか思えない。これは言い繕えないと思います」
(朝日7月10日)
 

ご承知のように、こんなことを国会で騒ぎ立てた瞬間、足元で地雷がチュドーンと炸裂してしまったのは痛ましい限りでした(苦笑)。 

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国会で質問にとりあげるくらいだったら、自分のところの幹部の動向くらい調べてからにしなよ、というところです。 

蓮舫氏や辻本氏が同じブーメラン芸を繰り返すのは、「正義を糾す権利はただひとり自分だけが持っている」という特権的な思い込みがあるからです。

自分にはすこぶる甘く、他人には過激に厳しい。

絶対正義の立場は我にありとばかりに他者を糾弾すれば、じゃあ、あんたの手袋は白いのと問い返されて、毎回毎回マメに自分の掘った穴に自分で落ち込むことになってしまいます。 

蓮舫さん、こういう独善的な他者糾弾型政治スタイル自体をやめないかぎり、まだまだブーメランは続きますよ。 

それはさておき、今回もまた「言い繕う」もなにも、同じ5日夜、立民の枝野、辻元、蓮舫、長妻などといった立民の幹部たちが、同党のパーティに出席して、酒を呑んでいたことが判明してしまったのはご愛嬌でした。 

くだんの蓮舫氏など、こともあろうにピールのコップを片手に乾杯の音頭までとっていたというおまけつきです。

これは「言い繕え」ませんね、蓮舫さん。他人を糾弾するなら、自分の日程くらいチェックしてから言いなさいよ。

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え、オレら立民のは政治パーティで政治活動だから、自民党とは違うぞって。ご冗談を。 

自民党の議員が議員会館で集まって懇親会をすれば、それもまた政治活動の一環であることは一緒です。 

しょうがないよね、立民さん。あなた方も5日の夜にこんな大災害になるとは思ってもいなかったのでしょう。 ただし、そんなこと、自民も一緒でしょうに。

5日夜の段階で、西日本災害を予見できたものはひとりもいなかったのです。

メディアとてまったく同じで、明けて6日の朝から夜まで、大雨は片隅に追いやられて、麻原死刑執行一色でした。 

朝日6日の1面大見出しは、「東京医大理事長が不正合格決定」ですし、大災害を匂わせるようなものは、社会面の「列島各地に大雨のおそれ」ていどのものです。

なーんだ、オレはわからんかったが、アベは分かっていろということですか。ご都合主義なことよ。結果から見ればなんでも言えます。

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ところがメディアときたら、自分だけ口をぬぐって自民のみが予知能力を持っていねばならないとガナるんだからなんともかとも。 

ところで、あの5日の夜は確かに大雨特別警報発令の前日でした。既に警戒情報が出されていましたし、死者も少数ですが発生していました。

野党とメディアはこんな時期には、与党議員はどこかで待機していろということのようです。

え、していましたよ。

この時、自民の議員たちはどこで懇親会をしていたのでしょうか。 ホテルや料亭ではなく、質素にやろうと議員宿舎でやっていたのです。

この議員宿舎は、官邸や各省庁に速やかに行くことが可能な距離の場所にあります。 

いいかえれば、議員宿舎に首相以下の与党議員がいたことは、「議員宿舎に待機していた」とも考えられるのです。 

これは私の牽強付会の意見ではなく、危機管理の専門家である小川和久氏も同じ趣旨のことを述べています 

「待機状態だったというのは、誰も外の飲食店に出かけたのではなく、所掌の閣僚は必要な指示などを出したあと参加していたこと、連絡があればすぐに動ける態勢にあったことで説明できるでしょう」(『NEWSを疑え!』第695号(2018年7月12日号) 

おそらく、各大臣には省庁から派遣された秘書官が同行していたはずですから、災害担当セクションの大臣には、時々刻々と情報が届けられていたはずです。 

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では首相の女房役であり、危機管理対応の要である菅官房長官はその時どこにいたのでしょうか。

菅氏がいまや自宅にしてしまっているような首相官邸なはずです。もちろん彼はこの懇親会に出席していません。

たぶん首相官邸の危機管理室にいたと思われます。官房長官は首相不在の外遊時や地方遊説なとの時は、必ず官邸に待機しています。

そこでこのような大災害の危機管理は、どのようなシステムになっているのか見てみましょう。 

これについて宮家邦彦氏が、voice8月号の巻頭論考でふれた箇所があります。 

現在、東日本大震災や福島第1事故の苦い経験を踏まえて、危機管理体制が抜本的に刷新されています。 

宮家氏によれば、かつては関係省庁の事務次官や幹部が互いに連携せずに総理・官房長官に勝手に情報を上げていました。 

今回のような大水害ならば、国交大臣は国交省派遣の秘書官から、防衛大臣は防衛省の職員から情報が伝わり、首相や官房長官には全部の官庁からバラバラに上がってくる情報を聞かねばならないという仕組みだったようです。 

大臣レベルならまだいいのですが、こんなにバラバラと情報を上げられたらそれを統べる首相や官房長官は混乱します。 

官邸に上げられる内容も同一でないどころか、相互に矛盾することすらあったそうです。

こんな情報管理体制では、結局テンパった菅直人首相のような御仁の独走を許してしまう結果になります。 

現在、このような非合理的システムは大きく変わりました。それは2013年末に国家安全保障会議(NSC)が誕生したからです。 

「NSCは国家の安全保障に関する外交安全保障、自然災害などの突発的事項に関わる危機管理事案の棲み分けが進み、新規の国家安全保障局長と内閣危機管理監の協力・相互乗り入れが可能となった。
以前なら関係省庁がバラバラに説明した内容も、いまは省庁が総理・官房長官に説明する前に充分情報共有と政策連携を行う。これが昔ならかんがえられない手順と速度で進むのだ」(宮家 前掲)

たとえばつい先日の大阪直下型地震では

「これを官邸で仕切ったのは内閣危機管理監だろう。1995年の阪神・淡路大震災の時に、当時の村山政権は機能不全に陥った。霞ヶ関には教訓を生かしながら進化する官僚組織も少なくないのだ」(宮家 前掲)

今回は、首相が議員宿舎で懇親会をしていようとどうしようと、内閣危機管理監に率いられた関係各省庁派遣の職員は、各自治体・各省庁から上がってく情報を集めて整理し、それを一括して官房長官に伝達していたはずです。

このような進化した危機管理システムがあるからこそ、首相は外交日程をこなせるのです。

旧民主党系諸雑派の皆さんは、まだこのような危機管理システムが存在しない時代に政権についていた狭い経験しかもちません。

枝野さんや細野さんは当時官邸に居たから知っているでしょう。胸に手を当てて思い出してみましょう。

東日本大震災や・福島第1事故では、本来この危機管理の指揮を執るべきだった内閣危機管理監がいたにもかかわらず、助言すら求められませんでした。

最後まで内閣危機管理監は、その姿すら見えません。

本来、現場指揮を執るべき専門家集団の原子力安全委員会に至っては、菅氏から怒鳴られて萎縮してしまうといったありさまでした。

屈辱的体験をした斑目元委員長は、今になってこんなことを言ってウサ晴らしをしているようです。

おいおい、気持ちはわからんではありませんが、笑っている場合か。

Photo_2斑目元安全委員会委員長のヤケクソ発言

とにもかくにも結局、原発のシビア・アクシデントをズブの素人の首相が直接指揮するという恐怖の事態になってしまいました。

吉田所長の「抗命」がなければ、東日本は人の住めない地域に長期になったことでしょう。

このような「やってはいけない危機管理決定版」といった本ができそうな経験しか持ち合わせていない旧民主党系諸雑派は、なにがなんでも首相がいなくちゃならないと信じて疑わなくなってしまったのです。

現在の危機管理システムは、国家の危機管理は旧来の属人的なものから切り離され、危機管理の専門家が指揮するリスク・マネージメントに切り替わっています。

したがって、首相がいなければ動かないようでは困るのです。 

首相が危機管理においてやるべきことは、あまりありません。トータルな責任をとることだけといっていいくらいです。

首相の政治力が問われるのは、むしろ災害後の復興局面なのです。

まぁメディアのほうは、危機管理などという高次なことを言っているわけではなく、あの懇親会の笑顔が不謹慎だ、酒呑んで指示をだしていたのかけしからん、早くアベを辞めさせろということだけです。

ちっとも進化していませんなぁ。

ならば5日夜から民放はCM止めて、お笑い芸人のオチャラケ番組なども放送中止、そして東日本大震災の時のように公共広告機構一色にするのですね。

 

 

 

2018年7月13日 (金)

小田川合流視点はなぜ決壊したのか ?その歴史的背景を探る

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コメントを頂戴しました決壊した倉敷市真備町の小田川合流点について、もう少し考えていきましょう。 

この合流点は、たびたび洪水を引き起こしています。それはこの地点の地形と歴史をみれば理解できます。

「国交省岡山河川事務所によると、高梁川は小田川との合流後に大きく湾曲しており、大雨による増水時には小田川への逆流が起きるなどして水位が上がりやすい特性がある。合流点付近では1970年代以降、たびたび洪水が発生しており、今回の決壊も合流点で水が流れにくくなったことが影響した可能性がある」
(山陽新聞7月10日)

http://www.sanyonews.jp/sp/article/748479/1/?rct=area_syuyo 

この河川合流点は人工的に作られているのです。元々の川は、今は柳井原貯水池になっている場所を流れていました。 

柳井原貯水池は、下図の中央下に見える胃袋のような形をした溜め池です。 

20180710095708http://gentleyellow.hatenablog.com/entry/2018/07/10/151023

この柳井原は、江戸時代から決壊を重ねた場所で、明治期に堤防を建設しようとした地点です。 

しかし、その事業をするうちに、いっそこの堤防を閉め切って溜め池の堤にしてしまったほうが、農業用水にも利用できるし、一石二鳥だと考えたようです。 

そして合流点を付け替えてしまいました。結果的にはこれが仇になります。 

支流の小田側が本流の高梁川に合流するのですが、本流のほうが支流より水位が高くなって、支流の小田川の水をブロックするバックウォーター現象が起きてしまったのです。 

これも国交省は分かっていました。下図は国交省の「高梁川の概要と課題」(平成19年11月5日)という文書です。 

Photo高梁川の概要と課題https://www.cgr.mlit.go.jp/okakawa/kouhou/seibi/takahasi/files/1st_katarukai/08_siryo03.pdf 

この文書の中の「その地点の水位が高くなって流量能力が最小となる」という表現が、バックウォーター現象を指しています。 

国交省も呆然とこの危険性を見過ごしていたわけではなく、改修案を国交省「高梁川水系河川整備計画」(平成29年3月)として公表します。
https://www.cgr.mlit.go.jp/okakawa/kouhou/seibi/takahasi/files/8th_katarukai/08_siryo04-2.pdf 

●国交省「高梁川水系河川整備計画」
(1)高梁川からの背水影響による水位上昇
①小田川との合流地点の付け替え
②固定堰の改築
(2)小田川の河積不足
①河道の掘削
③河道内にある樹林の伐採
 

この国交省の案に対して、共産党が反対運動を起こしました。
共産党倉敷市議員団http://jcpk.sakura.ne.jp/dan/archives/2007/11/post_340.html 

共産党は付け替え工事に反対し、河道の掘削だけで対応する反対論を出して抵抗しました。 

この共産党の反対論は、水利の常識に反しています。

共産党の言い分は、ただ河道を深くするだけということで済ませようとしているわけですが、これでは水量がかえって増してしまい、水の運動エネルギーはそのままの勢いで小田川の狭いボトルネック部分に突入してしまうことになるからです。 

つまり、共産党案はかえって水害をひどくする愚案にすぎないのです。

実は、それ以前にも、改修案は旧建設省時代からなんどとなく挫折を繰り返してきました。

改修工事の時系列は以下です。

・1968年旧建設省柳井原堰建設計画を発表
・1972年実施計画に着手したが、地元の反対で中断。以後膠着常態
・1995年船穂町は国、岡山県が「同町振興計画」に協力することを条件に同意

なんと半世紀前からこの地点の危険性を国は分かっていて、その改修工事を1968年に計画を公表しています。 

1997年4月柳井原貯水池を堰として利用する『高梁川総合開発事業』が着手
2002年12月
(小泉内閣)
水道需要の低下などを理由に『高梁川総合開発事業』の中止が決定。ただ、「高梁川並びに小田川の治水対策は必要」との今後の方針が定まる
2007年8月
(第1次安倍内閣)
『高梁川水系河川整備基本方針』が策定される
2007年11月
(福田内閣)
国交省が第1回『明日の高梁川を語る会』で「柳井原貯水池を利用した小田川合流点付替え案」を公表。共産党倉敷市議団が「地元の反対」を理由に反対運動を始める
2010年10月
(菅内閣)
『高梁川水系河川整備計画』が策定される
2014年
(第2次安倍内閣)
国交省が事業を予算化。事業が動き始める
2017年河川整備計画(変更原案)が作成。公聴会などを経て、事業評価監視委員会に報告される。2018年秋に着工予定

 この旧建設省案も、反対運動で挫折しています。 

「小田川を巡っては国が1968年、周辺市町の都市用水確保と治水対策のため、柳井原貯水池を小田川のバイパスとした上で同貯水池内に柳井原堰を建設する計画を発表した。
しかし「堰を造れば基礎部分にコンクリートが打ち込まれ、地下水が枯れる恐れがある」といった地元の反対などもあり、事業の方向性は二転三転。
最終的に岡山県が2002年、水の需要減を理由に堰の建設をやめて小田川の治水を中心に事業を進めるよう国に要望、国が中止を決めた経緯がある」(山陽新聞前掲)

この第1次改修計画の反対運動については「地下水が枯れる」という山陽新聞の上述のような記載しかありませんので、実態は不明です。

そして2007年からの第2次改修計画もまた、先に述べたように共産党などによって阻止される運命になります。

「避難所にエアコンがついたのは安倍が来訪するからだ」というような馬鹿なデマを流している者が共産党界隈にはいるようです。
https://twitter.com/asunokaori/status/1016857066923687936

しかし、私にはそんなことより、なぜこの地点が決壊したのか、どうして改修工事が遅れたのか、そして共産党は何をしたのかに思い致すことをお勧めします。

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またこの時代背景に、民主党政権の最大公約だった「コンクリートから人へ」政策があったことはいうまでもありません。

その理由は、公共事業で削った財源を、子供手当てなどの人気取り政策に突っ込みたかったからです。

そのために民主党政権時の2013年の国内治水総事業費は、ピーク時1997年(平成9年)のわずか33.8%まて落ち込んでしまっています。

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よく水害があるたびに、スーパー堤防だけがとりあげられますが、民主党政権は公共事業費を大幅に削減し、当時進行していたダム、堤防の建設の多くを精力的に葬っていきました。

八ッ場ダムのように民主党が直接手を下さないまでも、この小田川合流点改修工事のように、民主党議員が大臣となった国交省は萎縮して、計画中の公共工事を積極的に進めることを止めてしまいました。

この小田川合流点改修工事も、2007年の第1次安倍政権時に策定されたまま、10年間も店晒しにされてしまいました。

そして第2次安倍政権となった今年秋、ようやく工事道路を作ることが始まった時点で、とうとう恐れていた決壊をみてしまったのです。

その意味で、私たちはこの民主党政権の負の遺産のツケを今、払わされているともいえるでしょう。

 

2018年7月12日 (木)

西日本大水害 真備町の小田川決壊は予想されていた

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今回の西日本大水害でもっとも大きな被害を出した倉敷市真備(まび)町の小田川について、あの決壊した部分は改修予定に入っていたことがわかりました。

この真備町一帯だけで1200ヘクタールが浸水し、約3500人が避難しています。現在も懸命の復旧がなされていますが、冠水状況が続いています。 

それを伝える朝日新聞(7月8日)です。やや長いですが、引用します。 

Yjimagejpg2https://www.asahi.com/articles/ASL7956K2L79PTIL02N...

「住宅地が大規模に冠水した岡山県倉敷市の小田川の決壊は、高梁川との合流地点付近が湾曲して水が流れにくくなっているため、水がたまって、上流側の水位が上昇する「バックウォーター現象」が原因とみられると専門家は指摘している。水害の恐れが高く、河川改修の工事が計画されていた。岡山大の前野詩朗教授(河川工学)は「改修後であれば洪水は防げたかもしれない」と話した。
前野さんによると、家の2階部分まで浸水した
倉敷市真備町は、地区の東側を高梁川、南側を小田川に囲まれている。川の合流地点は湾曲しているうえ、川幅も狭く水が流れにくい。流れなくなった水は勾配が緩やかな小田川のほうにたまりやすく、決壊したとみられるという。一度浸水すると排水されにくく、浸水地域の水位が高くなりやすい。倉敷市が作ったハザードマップでも、今回浸水した地区のほとんどを2階の屋根ぐらいまで浸水する5メートル以上と予測していた。
 
国土交通省の資料によると、合流地点付近では1972年や76年などにも浸水が起きている。前野教授は「今回は過去最大級の被害だ」と話す。国交省によると、洪水を防ぐため、高梁川と小田川の合流地点を、湾曲している部分よりも下流側に付け替えて水を流れやすくする工事が計画されていた。今秋には工事用道路の建設を始める予定だったという。合流地点を下流に付け替えることで、小田川の水位が数メートル下がることが想定されていた」

As20180709005171_comm朝日新聞 前掲 

つまり小田川がここで決壊したのは、高梁川との合流点に当たっていて、その部分が狭くなっていたために推量が制限されて、急激な流水量の変化に対応できなかったためにでした。 

これをボトルネック現象と呼びます。 

220pxボトルネック - Wikipedia 

倉敷市はこの小田川-高梁川合流点の危険性を充分に知っており、国交省に改修を10年間に渡って再三要請していた曰くつきの地点でした。 

国交省もこの地点の危険性を見逃していたわけではなく、2014年3月には改修工事予算をつけるための計画段階評価をしています。
『平成26年度予算に係る河川事業の計画段階評価』(国土交通省HP) 

この評価文書をご覧いただきたいのですが、最上段が「治水安全度」、つまりは目的ですので、やらねばならないという合意は明確にあったと思われます。 

次ぎに、真っ先に検討対象になったのは2番目の「コスト」です。「完成までに要するコスト」には4種類あって、①410億円②350億円③420億円④280億円となっています。 

「実現性」という欄には、その問題点が記されていますが、最大の問題は立ち退きを要求される160戸の所帯に対する補償だったことがわかります。 

下の航空写真を見ると立ち退き予定地域には、多くの住居があるのがわかります。この住宅の立ち退きと新たな住居の選定などがネックだったようです。 

PhotoGoogle Earth  

結局、採択されたのは以下の文書に記されています。
『平成26年度予算に係る河川事業の新規事業採択時評価』(国土交通省HP)

ひとつ上の計画段階評価で最も安い④の280億プランが2014年(平成26年度)に予算がついたことがわかります。 

最もコストが削減されたといっても、上の航空写真で見える膨れた部分の更に上から、改修を始めて下流まで伸びる大規模なものです。 

工事期間は、2016年から2028年ですから、12年間に及ぶ大規模なもので、「今秋には工事道路が開始される予定」(朝日前掲)だったようです。

しかし自治体が2014年以前に危険を認識し、国も改修合意したにもかかわらず、まだ工事道路すら出来ていなかったというのが現実だったわけです。

なぜでしょうか?

理由は明らかです。緊縮財政のために予算が削減されたためです。

この倉敷市小田川のようないつ決壊しても不思議ではない川を、なんと12年もかけてトロトロと工事すること自体が異常なのです。

このような明らかな危険箇所は、単年度予算でチビチビするのではなく、建設国債を使って一気に改修してしまうべきでした。

日本には豪雨があれば決壊する河川、山津波を起こす可能性がある山は無数にあります。

そして今回のような異常豪雨は今や常態化し、待ったなしなのです。 

治水は国が国民の安全と財産を守るための根幹事業です。全国的に危険箇所を徹底的に洗い出し、その財政措置を含めて抜本的に見直さねばなりません。

それを怠れば、また多くの人の命が奪われます。

このような状況の時に、豪雨の前夜、自民が宴会をしていた、いや立民もやっていただろう、という低次元なことに、お願いですから眼を奪われないで下さい。

この西日本大水害が教えることは、そんなところにはないのですから。

 

謝辞   ニッポン放送飯田浩司氏にご教示いただきました。感謝致します。  

 
 

2018年7月11日 (水)

西日本大水害について考える

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西日本水害は大きな被害をもたらしました。お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りいたします。 

まだ非常事態は終了していません。いまだ救援を求めている方々がいるということを頭において、議論すべき時期です。 

やるべきことは、国が持っているリソースをすべて投入することです。 

逆にやってはならないのは、「強いリーダーシップ」をアピールしたいばかりに緊急対応している現場の足を引っ張るようなパーフォーマンスをすることです。 

私は東日本大震災と福島第1事故、そして常総水害も肌で知るひとりですが、この時期首相にして欲しくないのは、不必要に現場に来ることです。 

たとえば、まさに1秒も惜しかった福島第1に用もないのに「視察」に行った某首相や、口蹄疫が感染拡大している時期に、メディアを引き連れて「視察」に行った某宮崎県知事のようなパーフォーマンスは絶対にやってはいけません。 

無用どころか有害です。

エライさんが行けば、必ず警護などで本来は救援に向けられるべきリソースが削られ、取材するメディアが救護活動を遅らせるからです。

はっきり言って、今の状況で被災地を選挙区を持つ議員以外、国会議員にできることは情報の収集くらいなもので、特になにも期待されていません。 

対応に当たる所轄の大臣や官僚の足をひっぱらないで、通常の国会議員の仕事に励んでいただくのか最上です。

ついでに言えば、コメントでSiさんが述べていたように、首相すら外交日程をこなしていただいていっこうにかまいません。

首相にできることは、防災担当の大臣や官僚の決定に対して責任をとることだけであって、情報収集や指示なら、政府専用機からでもできます。

首相が前夜に自民党でコンパをしていたからどうのというのは俗耳に入りやすい事柄ですが,そもそも首相がいないと動かないような危機管理システムなら、根本的におかしいのです。

倫理的にはとやかく言われるのはやむを得ませんが、決定的に重要なことではないのです。

東日本大震災において民主党政権はいち早く政府対策本部を立ち上げたのはいいですが、ほとんど見るべき動きをしませんでした。

今回も立民は政府より早かった自慢していますが、野党の対策本部でいったい何をするんですかね。

首相の政治力が問われるとすれば、災害の初動が終了した後の復興局面で、どれだけ復興予算を投入できるかということです。

「外遊」などという物遊山を思わせる言葉を使うからおかしくなるのであって、EU側から調印式に日本へ出向いてくれるというほど、ETA署名式は重要なことだったのですよ。

かつて福島第1事故のときに、錯乱した首相が現場指揮に過剰な介入をしたため、かえって事故の収拾を遅らせたことを忘れないでください。

災害マネージメントは専門部署が当たる、政治家は余計な介入はしない、責任だけを引き受ける、これでいいのです。

その意味で、安倍氏が被災地を視察することは、初動期が終わったとはいえ、けっして評価できません。

被災地に行って見ねばわからないことは限りなく少ないのであって、官邸の危機管理室で充分に収集できることばかりのはずです。

野党はまだ因果関係が不明なうちから政治責任を言い立てているようですが、政党に限らず国民もまた、このような災害の政治利用は止めて下さい。 

安倍氏批判はけっこうですが、それを自己目的化したような言論は、ひまな平時にやって下さい。 

逆にこのような大規模水害があると、かならず定番のようにかつての民主党政権時の事業仕分けでスーパー堤防の予算が削られたことがあげつらわれますが、これもまた野党叩きに終わらないようにしていただきたいと思います。

とまれ、災害を政局に絡ませると、原因究明がおろそかになります。

おそらく、この大水害の原因は多く存在します。 

たとえば、今分かっている範囲で原因と考えられるひとつがダムの放流です。 

Photo産経https://www.sankei.com/west/news/180710/wst1807100074-n1.html 

「肱川上流にある大洲市の鹿野川ダム。安全とされる放流量の基準は毎秒約600トンで、超えると家屋への浸水の可能性があるとされている。
同市などによると、台風7号が九州に近づいた3日から基準の約600トンを上限に徐々に放流を開始。7日午前5時半には雨量が増し、上限を毎秒約850トンに引き上げた。午前7時すぎにはゲートをほぼ開いたままにせざるを得ず、午前9時ごろ、川の水が堤防を越え始め、放流量は最大毎秒約3700トンに達した」(産経7月10日)
 

今ひとつは、バックウォーター現象です。 

1998f42797d206225ff0cf7c1f9d1b9b_15産経前掲

「岡山県倉敷市真備町地区では高梁(たかはし)川の支流で5カ所の堤防の決壊が確認されたことが分かった。専門家は、決壊の一因として、豪雨などで水位が高まった川が支流の流れをせき止める「バックウオーター現象」が起きた可能性を指摘している」
「岡山大の前野詩朗教授(河川工学)は「高梁川と小田川の合流地点は、直後に高梁川が湾曲して川幅が狭くなるボトルネック構造で、水位が高めだった。豪雨で水かさが一層増したことによりバックウオーター現象が起き、小田川の堤防を決壊させた可能性がある」と指摘した」(産経前掲)
https://www.sankei.com/west/news/180710/wst1807100074-n1.html

今の段階では、大枠で緊縮財政のしわ寄せによる「人災」という言い方はできますが、それはもっと原因究明が進んでから因果関係が確定するものです。

現実には、気象庁は極めて早い段階で避難指示を出しており、自治体と連動して動いています。

自衛隊の災害派遣も的確に進められており、全国規模の自衛隊が災害派遣に投入されています。

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いずれにせよ、今回のように梅雨前線の異常な停滞によって、このような大規模災害が起きてしまうことが分かりました。 

実はこれはとっくに分かっていたことで、日本は世界でも稀な自然災害が多発地域に属しています。 

とはいえ、わかっていながら手を打ってこなかった歴代の政権を、いま責めてもせんないことです。

むしろ今後、このような異常気象があるたびに多くの犠牲者が出るのはどうしてなのか、どうやったら防げるのかを真剣に問うべきです。

いま、被災地以外の国民にできることは、余計なことをしないことです。

同情するあまり被災地に頼まれもしないものを送ったり、勝手にボランティアにいくことは、かえって混乱を招く結果になります。

できることは、心の支援と寄付だけだと思いましょう。

繰り返しますが、まだ、呉市のようにとり残されて孤立している地域も存在します。

電気・水道が復旧していない地域も多数あります。

このような地域で求められているのは、救援物資だけではなく正しい情報です。徒に不安を煽り、政府不信を増長させる言動は控えて下さい。

なお、寄付の受け付けには以下があります。

・平成30年7月豪雨緊急災害支援募金(Yahoo!基金)
https://donation.yahoo.co.jp/detail/1630036/

 

 

2018年7月10日 (火)

北朝鮮 「強盗のような非核化要求」と発言

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西日本大水害について、もう少し状況が判明したら書きたいと思います。この大災害は、財務省の緊縮財政による当然の帰結であって、人災の要素を強く持っています。 

さて、やはりと言えばやはりですが、正恩は世の中をナメているようです。 

いつかこんなことを言い出すと思っていましたが、まさかのっけからやらかしてしてくるとは思いませんでした。 

「北朝鮮は7日夜、ポンペオ米国務長官との2日間にわたる非核化協議について、米国側の「強盗のような」態度を非難した。同長官はこれに先立って記者団に対し、平壌での協議に関して「誠実な交渉」と語っていた。
北朝鮮外務省の報道官は朝鮮中央通信を通じて英語での声明を発表し、米国が過去の政権が求めたのと同様の提案を行い、混乱を生じさせたと指摘。
北朝鮮の評価はポンペオ長官と非常に異なっており、専門家が懸念するように、両国の非核化協議での目標が依然かけ離れていることを示している。
北朝鮮は声明で、米国が「一方的で強盗のような非核化の要求だけを持ち出してきた」と指摘。米国が「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を求めているのは、シンガポールでの米朝首脳会談の精神に反したとしている。
声明はまた、両国の信頼関係が現在危険な状態にあり、同国の非核化のコミットメントが揺らぐ可能性があるとしているが、北朝鮮はトランプ大統領を依然信頼しているという」
(ブルームバーグ7月8日 太字引用者)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-07-07/PBIR3KSYF01S01

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なぁに言ってるんだか(苦笑)。

交渉渉相手国の外務大臣にご足労かけておいて、「お前の要求は強盗だ」というのですから、恐れ入りました。 

北にそもそも論を言ってもせんないのですが、国連決議に違反して核を開発しておき、さらには「非核化」を首脳間合意した後になってから、「その要求は強盗だ」というのですから、倒錯するにもほどがあります。 

こんなことを外務当局が後から声明で言うくらいですから、似たようなことを北は会議で言ったのでしょうね。 

ポンペオはこんなことを私的な場で漏らしたそうです。 

北朝鮮の指導者が核兵器をあきらめることを疑うと言っている。 最近、兵器施設を解体することからほど遠い隠蔽行為を北朝鮮は拡大しており、われわれは情報機関によって、北への疑惑を強くしている」(仮訳 NYタイムス7月7日)
https://www.nytimes.com/2018/07/07/world/asia/mike-pompeo-north-korea-pyongyang.html

先日記事にしたように、北は米国をナメているのか、それともただの馬鹿なのか、公然と核関連施設を稼働し続けています。
関連記事「北の怪しい兆候」http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/post-bf65.html 

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とはいえポンペオは馬耳東風とばかりに、公式にはこんなことを日米韓で再確認しています。 

「韓国と米国、日本の外相会談が8日、東京で開催された。河野太郎外相は会談後に開かれた共同記者会見で、北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を求める方針を再確認したと明らかにした。(略)
「完全な非核化は完全な核物質の廃棄だ。これは明確に定められている目標」と強調。「北はこうした決議を完全に履行しなければならない」としながら、北朝鮮が完全な非核化をするまで国連安全保障理事会の制裁を維持しなければならないとの認識で3カ国が一致したと述べた」(韓国聯合7月8日)

米国の基本方針であるCVDIと非核化が達成されるまで国連安保理の制裁決議は続けることは、不変であるから、日韓外相よ安心してくれ、ということです。

ま、韓国のカン・ギョンファ(康京和)は内心ではチェッと思ったことでしょうね。

ほんとうは韓国は北への制裁など、明日にでも止めたくてうずうずしているからです。

米国の怖い眼がなければ、開城工業団地の再稼働なんて今週にでもしたいくらいなんですから。

どうやら北は瀬踏みをしているようです。中国がバックについているという安心感からか、いくら米国の鼻先をなぶっても大丈夫と思っているようです。 

北の浅はかな考えは、とっくに米国が研究済みです。 

米朝首脳会談においての共同声明文にCVIDの文言がなかったことを最大限使って、「段階的非核化」をするつもりでしょう。 

「段階的非核化」は、非核化という名が被っていますが、言葉にダマされやすい日本国民は勘違いしないでね。これは「永遠の非核化ゼロ」のことですから。 

北にとって、ともかく交渉場に大統領を引き出し(正恩からみればそうなるというだけのことですが)、一つずつ小さい妥協をするごとにその見返りを要求していくという寸法です。 

たとえば、弾道ミサイルの移動式発射装置の工場の稼働をちょっと止めてみせるとか、核濃縮プラントを再稼働するのをこれまたちょっと止めて見せるなんていうような小技を繰り出して、そのつど見返りとして制裁解除とか、朝鮮戦争平和条約なんかをおねだりという手法です。 

朝日などのメディアは、「力強く非核化の道へ前進」とばかりに大喜びしてくれますから、最終ゴールの米朝国交回復にまでジリジリと進んでいくわけです。 

米朝国交正常化とは、その前提として北に対して米国が「体制の安全を保証」(セキュリティ・ギャランティ)をせねばなりません。 

これは「朝鮮半島の非核化」と同義語ですから、米国が朝鮮半島に核を持ち込みたくてもその拠点がない状態でなければなりません。 

つまりは、在韓米軍の撤収です。 

と、このようなことが北の目論見ですが、では、なにが抜けていると思いますか? 

そう、「段階的」もなにも、北がどこにどれだけの核兵器を保有しているのか、どこでどのような核物質を製造しているのか、ぜんぜんわからないじゃないですか。 

つまり北の核の申告と検証という、最も重要な「査察」という工程が欠落しているのです。 

査察なしでは、北が秘密裏に核を温存させることがじゅうぶんに可能になります。 

今、北があちこちで核施設を稼働させたり、弾道ミサイルの移動発射装置を動かして見せているのは、ただのフェイントではなく、これも新たな交渉材料にしたいスケベ心です。 

「強盗」うんぬんの妄言も同じ範疇です。

正恩さんに老婆心ながら、ご忠告しておきます。

あなたの国は常日頃、共産主義国家とコリア口撃文化特有の伝統で、汚い言葉を使い続けた習慣がありました。

教祖のマルクス翁の口の汚さは有名でしたし、あなたのオジィさんもお父上も罵倒語の大家でした。

それが許されたのは、利害関係が絡む近隣国とは国交がなかったからと、もうひとつは「北はおかしな国だから」というマイナス評価が定着していたからです。

それをいいことに、とくに日本と米国には言いたい放題でした。「火の海にしてやる」とか、「海に沈めてやる」みたいな精神鑑定の要ありの発言を連発していましたっけね。

要は、子供じみた甘えです。しかし、シンガポール会談以後は違います。

これは正式の米朝国交樹立に向けた助走だと、会談に出た正恩さんにはわかっているはずです。

外交関係は厳密なプロトコルによってがんじがらめになります。外交儀礼からはずれた所作や発言は、それだけで軽蔑の対象となります。

会談前にも米国首脳を馬鹿呼ばわりして、会談中止を宣告されたことをもうお忘れでしょうか。

今後、「非核化」協議を継続したかったら、口を慎むことです。

さもないと、トランプなら「強盗とまで言われて協議を継続する理由はない」なんて言い出しかねませんから、お気を下さいね。

クレージーなことを言ってみせて、もう北は我慢に我慢を重ねている、もうキレるぞ、キレたらコワイぞ、という伝統芸の瀬戸際戦術ですが、米国はちっとも怖くありません。

初めから「世界の警官をやめた」といっていた青瓢箪のオバマと違って、トランプなら本気で軍事オプションをやるかもしれないからです。

・・・と言っても、聞いてくれる相手じゃないですよね。

その場合に備えて、中国が妙に北の肩をもたないように、その出鼻を叩き続けているのが米中貿易戦争のもうひとつの顔かもしれません。 

 

 

2018年7月 9日 (月)

オウム事件を考える

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西日本大水害で被害にあわれた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。がんばって下さい。

さて土曜日のオウムの記事は増築に次ぐ増築で、まとまりのないものになってしまいました。申し訳ありません。 

だいぶ前にオウム事件を調べたことかあったのですが、資料がどこかにいってしまって、ああもどかしいかぎり。 

そもそも一回で納まる問題ではなくて、そのうち機会があれば、もう少しまとめてみます。 

私が述べたかったことを要約すれば、このようなことになります。 

まず第1にオウム事件は、今世界を覆い尽くす勢いのISのような宗教テロの原型でした。 

ここをはずして議論しても始まらないと思うのですが、メディアの論調はこの観点をほとんどスルーしています。

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第2に、銃や爆弾、あるいはトラックなどを使うヨーロッパの宗教テロと、決定的に違うのはオウムが世界史上初めて大量破壊兵器を使用したことです。

その意味では、オウムはISをはるかに凌ぐ凶暴さをみせています。

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彼らはなんとウクライナで核兵器の物色に失敗しており、もし成功すれば化学兵器の使用と重なって、中沢新一氏のいうように「一万人、二万人規模の人間が死ねば、東京の霊的磁場が劇的に変化する」ことになったとみられます。 

もはやこのような大量破壊兵器を使用したテロは、ただのテロではなくもはや低強度紛争と呼ぶべきでした。

言い換えれば、オウムが引き起こしたことは、「事件」ではなく「戦争」なのです。 

これを矮小化して理解したのが江川紹子氏たちでした。江川氏や滝本氏にかかると、オウム事件は、ただの「カルト宗教の教祖の妄想に盲従した信徒の起こした事件」となってしまいます。 

そうではなくオウム事件は、大量破壊兵器を保有して低強度紛争を国家内から仕掛けてくる疑似国家からの宣戦布告ととらえるべきだったと思います。 

いわば北朝鮮のような存在を、日本が抱え込んでいたということです。 

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第3に、ではこの疑似国家は、どのような状況の中から生まれるのでしょうか。 

それが、オウムの理解不可能な「妄想」を解く鍵でもあります。 

そのヒントは、オウムがソ連崩壊と共に真っ先にロシアに上陸し、布教とともにロシアやウクライナ・マフィアと太いパイプを作っていたことからうかがえます。 

当時のロシアは巨大なソ連が崩壊することにより国家秩序が崩壊していました。 

ロシア市民にとって、共産党という「神」が崩壊した後に生まれた秩序崩壊で、新たな「神」を求めてオウムにすがりついた人たちが多かったと思われます。 

ここにISとの共通点が見いだせます。アルカーイダやISは、アラブの春によってできた秩序の崩壊の中から生まれてきました。

新たな「国家」は崩壊国家の焦土から生まれるという「革命幻想」は、このロシアでオウムの中に宿ったのです。 

松本や早川の眼には、当時の崩壊国家で知ったロシアのアナーキーな状況こそが、自らの「国家」成立のために必須であり、日本もロシアのようになるべきだと考えていたはずです。 

ところが、日本にはそのような国家秩序が崩壊する要素はまったくなかったわけです。 

ならば大量破壊兵器を使って、日本政府や皇室もろとも国家を爆砕することで、無理矢理にでも人為的にその無秩序な世界を作ってみせようとしました。 

この秩序の空白の中に、中沢氏流にいえば「霊的磁場」、つまりはオウム神聖帝国を樹立するということです。 

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そして第4に、日本はこのまったく新しい形のテロを根絶することが出来なかったことです。

破防法を適用しなかったために、根絶はおろかいまだ松本の写真を拝む集団が多く残存してしまいました。

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あえて名指ししておきますが、この不作為の責任は村山富市首相が負うべきです。

そのために21世紀になってISやアルカイーダといった宗教テロリスト集団を世界各地に発生させることになります。 

日本がオウム事件に対して毅然とした対応を示し、根絶する努力をしたならば、21世紀になって数多く登場する宗教テロリストの発生に対して、何らかの抑止効果があったはずでした。 

今になってその首謀者たちを死刑に処したのは、あまりに当然すぎるほど当然で、テロに対して立ち向かう日本の姿勢を明確にしたという意味で、遅すぎたとはいえ意義あることです。 

それを、自分たちもまたISの無差別テロに悩まされているドイツなどのEU諸国から、批判される筋合いはありません。 

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大量破壊兵器を用いたテロに対してさえ死刑が執行出来ないならば、日本警察は今後、米国やフランスのようにテロリストをその場で射殺するしかないではありませんか。 

私たちがオウムで遭遇したのはあくまでも大量破壊兵器を使ったテロであって、これを一般的な死刑廃絶の人道問題にすり替えるべきではありません。 

ましてや、日本の野党のように首謀者7人の死刑執行は、モリカケ隠しのインボーだなどというに至っては、もはやギャグです。

なお、松本の家族が松本の遺体の返還を要求しているようですが、認めるべきではありません。

ウサーマ・ビン・ラーディンの遺骨が海に散骨された前例があるように、返還を認めれば墓が立てられて、そこが残党たちの「聖地」化する可能性があります。https://news.nifty.com/article/domestic/society/12198-054237/

 

 

 

 

2018年7月 8日 (日)

日曜写真館 クレマチスの初夏

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西日本大水害で被害に合われたかたがたを、心からお見舞い申し上げます。

財務省の緊縮財政政策によって、全国各地の治水が危険な状況にさらされています。

毎回大水があるたびに大きな被害を出し、多数の死者を出してしまうような状況を根本的に見直す必要があります。

2018年7月 7日 (土)

終わっていないオウム真理教事件

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麻原彰晃(本名・松本智津夫)以下7名の幹部の死刑が執行されました。当然すぎるほど当然の、法の裁きです。

ここまで刑の執行が延びたのは、最後の被告である高橋被告の判決が確定したために、死刑囚たちが証人として出廷を求められる可能性が消えたからです。
麻原彰晃 - Wikipedia

まったく思い出すだけで、胸くそが悪くなるような事件でした。 

「一連の事件で29人が死亡し(殺人26名、逮捕監禁致死1名、殺人未遂2名)負傷者は6000人を超えた。教団内でも判明しているだけでも5名が殺害され、死者・行方不明者は30名を超える。被害者の数や社会に与えた影響や裁判での複数の教団幹部への厳罰判決などから、「日本犯罪史において最悪の凶悪事件」とされている」(ウィキ)
オウム真理教事件 - Wikipedia
https://www.yomiuri.co.jp/matome/20180706-OYT8T50002.html

最初の在家信者が殺害されたのが1988年ですから、今年で30年となります。既に今の若者が生まれる以前の事件となってしまいました。 

一体オウム真理教とはなんであったのか、当時からさまざまな解釈がなされてきました。

ず私はこの事件の特徴の第1に、オウム真理教というカルト集団こそ、世界を先駆けての宗教テロリスト集団ISの原型のひとつだと思っています。 

ISがオウムを研究したかはわかりませんが、オウムを模倣したのではないかと思われるように疑似国家を作り、戦闘員たちを武装させ、既存の国家内に「領土」を拡大していきました。 

疑似国家を作り、現実の日本国家を武力で転覆する「革命」を夢想し、実行したのが、このオウムという集団でした。

彼らはこのようなことを計画し、その一部を実行に移しました。

事件当時、東京地検次席検事としてオウム捜査を指揮した甲斐中辰夫氏によれば、オウムはこのようなことを構想し、実行しようとしていたとされています。 

「教団は、自分の手で製造した70トンものサリンを霞が関や皇居に空中散布して大量殺人を実行し、混乱に乗じて自動小銃を持った信者が首都を制圧するという国家転覆計画を企てていた」(2011年11月22日読売) 

「オウム教団は、麻原教祖の予言を的中させるため、首都圏で数百万人規模の死傷者を出させるテロを実行するしかないところまで追い詰められている。
そして廃墟と化した首都に、オウムの理想共同体である独立国家を建設しようとしている」

計画は5段階に分かれ、第1段階はサリンを使った無差別テロ。第2段階は銃器や爆発物を使用した要人テロ。第3段階は細菌兵器を上水道に混入する無差別テロ。第4段階はサリンなどの薬剤の空中散布による無差別テロ。そして、第5段階は核兵器による首都殲滅である」
(一橋文哉『オウム帝国の正体』公安調査庁内部報告書)

彼らはよく比較される過激派の連合赤軍のように幼稚でなく、現実的に「国家」もどきを運営し、有り余る豊かな財源を有していました。 

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今思うと驚きを禁じ得ませんが、日本国内に国家内国家を作り、法や行政組織すら有していたのですから。 

頂点に君臨するのは唯一者である麻原ひとりであり、以下厳重なヒエラルヒーを構成する階級社会を作っていました。 

一方、一般信者は私有財産を禁じられ、家族すら別居を強いられました。子供は一カ所で育てられて、男女の交際は厳しい懲罰の対象となりました。 

ひとり「自由」を謳歌できたのは麻原だけであり、彼は北朝鮮の独裁者顔負けの100人を超える「喜び組」もどきを持っていました。 

麻原の生ませた子供だけで十数人を数えるそうで、書いているだけで気分が悪くなります。

この北朝鮮に酷似した宗教集団が目指したのは、日本をオウムが武力で乗っ取ることでした。 

第2の特徴は、オウムの武装化が国際化していることです。

教団ナンバー2の早川紀代秀は「世界統一通称産業」という貿易会社まで作って、当時ソ連の崩壊で混沌としていたロシアやウクライナのマフィアとパイプを作っていました。

早川の押収されたノートには、買いつける武器目録として核兵器、戦車、潜水艇まであったといいます。

Photoロシアで機関銃を構える早川と見られる人物

また北朝鮮とも接触をもち、北が軍事顧問を密かに派遣していたという見立て(高沢皓司氏)もあります。
http://www.asyura2.com/0406/nihon14/msg/117.html

今でもオウム残党がロシアに定着しているように、カルトとテロリズムは手を携えて国境を超えていきます。

この一見オモチャの欲しいものリストのような早川ノートも、もし買っていても操作要員がいないはずなので、なんらかの軍事顧問を密入国させる手筈だったのかもしれません。

その場合、諸外国にブラックマーケットを通じて、ハードとソフト、時には軍事顧問を販売してきたのは「あの国」しかないということになります。

当時、「あの国」に売れる原爆の手持ちがあれば、工作船は定期便のように日本海を往復していた時期ですから、オウムが国内に持ち込むことはそう難しいことではなかったはずです。

考えたくない想像ですが、オウムは世界最初の化学兵器テロと並んで、東京で核テロを行っていたかもしれません。

リンとなったのは、たまたま有機化学の専門家が信者にいたからにすきません。

話を戻します。オウムはクーデターによって神聖オーム帝国を作ろうと図ったのです。 

しかし、彼らは冗談どころか真剣でした。

学歴エリート集団の彼らは、実際に70トンもの神経ガスサリンを自力で製造するプラントを作り、AK突撃銃を千丁作る予定でその製造工場すら完成していました。 

Photo山梨県上九一色村(当時)のオウムのサティアン群 

オウムは化学兵器サリンを大量に製造し、その散布のためにロシア製大型ヘリまで購入し、国内に持ち込んでいました。 

147930946132661269177_heriオウムがロシアからサティアンに搬入したMi-17軍用ヘリ

突撃銃の試作品は既に完成し、製造ラインを稼働するばかりとなっていました。 

また信者によるコマンド部隊は編成を終わって訓練を行っていたとされています。 

当時迷彩服の信者が多数サティアン周辺の山中を走り回っている姿が目撃されています。

おそらくこの巨大テロ、ないしはクーデター計画が実施されていた場合、短期のオウム政権が樹立され、一時的に日本は「日本オウム真理教国」となっていた可能性もあります。 

そしてサリンの大量の空中散布によって、おそらく数千人から万単位規模の死者がでて、その中には天皇陛下ご夫妻も含まれていたかもしれません。 

しかし、最後にオウムは詰めを誤りました。1995年1月1日の読売が、松本サリン事件とオウムとの関連を掲載したことに焦ったオウムは、予定を繰り上げて部分的な決行に規模を縮小してしまったのです。
松本サリン事件 - Wikipedia 

また、TBSが一斉捜査をオウムに漏洩したために、計画を前倒しにしたという説もあります。

いずれにせよ、これによって引き起こされたのが、世界史上初となる公共交通機関内の化学兵器の散布テロでした。 

Maxresdefault_2地下鉄サリン事件 - Wikipedia

第3に、国が後手後手に回り、このような史上最凶のテロリスト集団を根絶出来なかったことです。

この事件は内乱罪(刑法第77条)を適用されてもおかしくはないオウムに対して、組織活動を禁じる破防法はついに適用されませんでした。 

事実、弁護団は麻原だけを首謀者として死刑にし、他の被告を救う目的で内乱罪を主張しましたが、退けられました。

一方、破防法は1952年7月に制定されました。 

この時期から分かるように、朝鮮戦争下の共産党の暴力闘争を封じ込める目的の治安法制でした。 

破防法が適用されれば、暴力主義的破壊活動をした団体の解散、デモ・集会の禁止などの処置が行えます。 

これに対して制定当時から左派政党や労組の激しい反対に遭遇してきた経緯があるため、団体に対する適用例はありませんでした。
※個人に対しては三無事件、渋谷暴動事件などがあります。
三無事件 - Wikipedia

いわば「あるが、使えない」法律だったわけです。 

必要とされるのは、純粋の法的判断ではなく、政治判断でしたが、国家転覆を試み、600人を超える死傷者を出した事件に使えなければ、ないのと一緒です。

この決断を迫られたのが、不幸にも今まで反対運動を続けてきた社会党委員長の村山富市政権でした。 

阪神淡路大震災時に「始めてなもんで」と自衛隊出動腰が引けていた(というか腰が抜けていた)村山氏は、このオウム事件においても破防法適用に頑強な「慎重姿勢」を貫きました

村山氏は回想録『そうじゃのう』でこう述べています。 

「あの法律を作る時には、僕らは反対したほうじゃけね。だから、適用については、人権にも関する問題じゃから、慎重のうえにも慎重を期してやってほしいと言っていた。
破防法の法律の体系から言うたら、総理の承認を得るとかいうことはないんじゃな。適用するかせんかは公安審査委員会にかける。かけるかかけんかは、破防法を扱う公安調査庁長官の権限じゃ。
だが、公安調査庁といえども行政の一環じゃないか。それで僕のところに言うてきたからな。僕の意に反してやるようなことは認めるわけにいかん。そう言うて議論した」

 一方法相だった宮沢弘氏は、適用可能だと判断し、適用やむなしの旨を村山氏に伝えましたが、村山元首相は最後まで首を縦にふることはなく、この腰が引けた対応によって公安審査委員会は適用を見送りました。

時事上、村山氏が握り潰したといってよいでしょう。

その上に、当時のオウムとの脱洗脳に関わっていた中心メンバーが、江川紹子氏や日弁連の滝本太郎氏などといった共産党系リベラル文化人だったことです。

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彼らは破防法適用が現実味を帯びるや、いままでの反オウムの立場を捨てて、オウム擁護に回ってしまったのです。

彼らはオウム事件でもっともメディアへの露出が多かったために、反破防法の世論形成をしてしまいました。

この江川氏などが唱えた反対論は、このようなものです。

①オウムの犯罪は政治目的ではない。教祖の空想妄想をただ実現したものにすぎない。
②適用すれば残党は地下に潜る。
③宗教法人の資格取消と教団の資産の差押えでオウムは潰れて、賠償が取れなくなる。
④麻原を神格化していた者はもういない。信者も減って無力化した。
⑤オウムに将来の危険性はなく、権力の濫用である。

この江川氏たちリベラル派の議論を聞いていると、カルトから脱洗脳するという視点はあっても、国民を危険から守るという視点がすっぽりと抜け落ちているのがわかります。

ですから、「オウムは教祖の妄想で、政治目的はない」などいった矮小化をしてしまいました。

「宗教テロリスト」という、従来の共産党や左翼過激派とはまったく次元の違う存在が誕生したという認識がなかったのです。

「政治目的」うんぬんというのは、破防法の第4条のニにこのように書かれているからです。

第四条この法律で「暴力主義的破壊活動」とは,次に掲げる行為をいう。
 政治上の主義若しくは施策を推進し,支持し,又はこれに反対する目的をもつて,次に掲げる行為の一をなすこと。」
破壊活動防止法 - 法務省

これは制定当時の世相を反映したもので、破防法は有体にいえば当時の暴力路線をとっていた共産党を念頭においたものだったからです。

つまりは、破防法をかける側も、それに反対する側も旧態依然とした政治的過激派のみを念頭において議論しているのです。

破防法自体に既に限界があり、それがこのオウム事件に適合するかどうか、常識で考えればわかりそうなものです。

では、適合しないからかけないでいいのではなく、オウムの息の根を止めるためには、「政治的目的」ウンヌンなどという字句解釈に引っかかるべきではなかったのです。

事実、21世紀に入ると、「政治目的ではない」宗教テロが、今やテロリズムの主流となっています。

これを当時もっとも強く破防法適用に反対し゛もっとも影響力が強かった江川氏はどう考えるるのでしょうか。

②の「地下に潜る」というのも笑止で、そもそも彼らの軍事部門は非公然で「地下に潜って」いたのです。

③の宗教法人の資格取り消しをしようとしなかろうと、彼らには民事訴訟に対して誠実に損害賠償を払っていく責務があるのは明らかです。

④についても、残党のアレフは麻原をいまだ神格化しており、一定数の信者を確保しています。なお彼らは賠償に応じていません。

⑤の「権力の濫用」うんぬんは、リベラル論者の定番の言い分ですが、29名の死者と6千名の負傷者という空前のテロの前に、いうべき言葉だとは思えません。

国民の安全を法を遵守して守ることは権力の濫用とは呼びません。

このようにこの反対論は、法治主義を否定し国民を守ることを忘れた大変に問題が多いものなのです。

とくに国民の安全を守る重大な義務がある総理たる村山氏が、法の厳正な執行より自分の政治信条を重んじたことは強く批判されるべきです。

かくしてオウムは破防法適用から逃れ、被告の罪はただの殺人罪に矮小化されてしまいました。

そしていまもなおアレフなどの後継団体として生き延び、更にそこから過激武闘分派すら生み出しているようです。 

アレフ道場の祭壇には今なお、麻原の写真が飾られ、信者には地下鉄サリン事件は国家謀略だと教えているそうです。

このような残党を残して、オウム事件が終わったといえるのでしょうか。

■今日は悩みながら書いていたために、大幅に加筆してしまいました。仕事の合間をぬってやっていたために、お見苦しいミスタイプも多くあって申し訳けありませんでした。今思うと2回分割すべきだったか・・・。

 

2018年7月 6日 (金)

トランプは北の核の中身を「検証」することを要求している

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日本ではスルーされているようですが、ポンペオが従来の、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」に代わって、「最終的かつ完全に検証可能な非核化」(FFVD・Final、Fully Verified Denuclearization)という表現を使い始めました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180705-00000061-yonh-kr

 「検証」(Verify)は残して、「不可逆的」(Irreversible)という部分が消えました。気になるといえば、気になります。 

これは悪く取ると、「検証」はするが、またぞろ核を作る気になれないように、完全に核施設・核物質・核弾頭などを国外に撤去することをあきらめたようにも聞こえるからです。 

これが仮にヘッカー教授の非核化10年論のようなことならば、日本は強く警戒感をもたねばなりませんが、私は違うと思います。

かわった部分よりかわらない部分に着目しましょう。 それは「完全(非核化)」と「検証可能」です。 

ポンペオはいやいやをするガキの口を、「ほ~ら、痛くないでしょう。先生に虫歯チェックさせてね」とあやしながら開けさせて、虫歯ならぬ核をヒッコ抜こうとしているようにも見えます。 

ここで僕、イヤダもんと口を開かない悪い子だと、怖いボルトンおじさんが、優しそうなポンペオさんの後ろからヤットコを持って登場するということになります。おお、コワ。 

さて、勘違いするメディアが多くて誇大宣伝されていますが、北はすこぶる弱い国です。強大な軍事国家と思っているのは、北のプロパガンダに騙されているからにすぎません。 

Nkp110ah9j1011https://www.jiji.com/jc/d4?p=nkp110-AH9J1011&d=d4_ftaa 

上の写真は2015年の朝鮮労働党70周年の軍事パレードですが、こんなものを真に受けてはいけません。

だいたいなんですか、この兵隊さんたち。放射能標識の箱もって、核地雷で自爆攻撃でもさせるつもりなんでしょうかね。意味不明(苦笑)。

北にはなんとパレード用部隊という奇妙なものがあって、彼らはぴかぴかの軍隊パレードをすることだけが任務です。

ちなみに上空を飛ぶ戦闘機は、会場を大きく旋回してなんどでも航過飛行し、機数を水増しするのが習いです。 

旧東側軍隊のオハコで、北はそれをまねたのです。

実態は通常兵器はさびついて使い物にならず、そもそも戦車を動かす石油がありません。
 

兵士は飢餓に苦しみ、指揮官は公安警察(社会保衛部)によって厳しい監視下にあります。

シンガポール会談時には、高級将校はほぼ全員が軟禁されたと言います。クーデターが怖いからです。

はっきりいえば、軍は張り子の虎にすぎず、唯一頼るべきものは核だけだと言って過言ではありません。 

北にとって唯一の武器は、三代かけて国の富をすべて傾けて作った核だけです。核は今や北にとってたんなる武器を超えたいわば信仰であり、宗教の偶像ですらあります。 

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上の写真は、旧シリーズ映画「続猿の惑星」のワンシーンですが、核戦争を生き延びて地底に住む地底人は、核ミサイルを拝むようになったというお話です。 

ま、北も気分はこんな感じでしょうか(笑い)。 

核を放棄すると言った瞬間、正恩は国民、なかんずく軍の強い反発を受けることでしょう。 

核原理教の祭主が、核を捨てるなど言ってしまってはシャレにならないからです。

そういえは今年2月まで頃まで北は、「我々に核放棄を望むのは、海の水が干上がるのを待つより愚か」なんて言っていましたしね。 

オバマならこの台詞を額面どおり受け取ったことでしょうが、会社を潰すたびにタフなネゴシエーターに成長していったトランプは、こんなていどではダマされませんでした。

好むと好まざるとに関わらず、 トランプは外交をビジネス脳で解決しようとする人なのです。

ですから、型にはまった思考と発想しかできない外交官から蛇蝎のように嫌われています。

北の場合、トランプは弱小会社の主力商品を買収する大企業のようなつもりでいますから、こんなことをほざくのは北が売値をつり上げているに違いない、ならばこりゃよくある交渉前の吹っ掛けじゃんと考えている節があります。 

だから、トランプは「マッドマンを相手にするリスクに関していえば、それは正恩のほうの問題だ」と3月に言ってのけたのです。 

これを言われて、さぞかし小心このうえない正恩はたまげたと思われます。一子相伝のマッドマン芸が、トランプには通用しないと悟ったからです。 

北は確かに「検証」を恐れています。それは間違いありません。 

ただしその理由は、ただ売値を引き上げたいだけではないし、あるいは大量の核兵器を隠匿しているのがバレるからでもない気がします。

私は逆に北の保有する核の中身が、あんがいショボイからだと思っています。 

なんどか私は書いてきていますが、多くの軍事技術者たちは、北の長距離核は未完成だと指摘しています。 

誘導もできず、大気圏再突入もできないような弾道ミサイルは、ただのロケットにすぎません。 

仮に北がヤケのやんぱちで、北米大陸に向けて火星15を発射しても、大気圏内で核弾頭は燃え尽きてチュドーンとなるでしょう。 

それを知ってトランプは正恩を、「リトル・ロケットマン」とあざ笑ったのです。

Dkswppkvyaazjtihttps://twitter.com/i/web/status/91283648733439180

北はおそらく複数の核爆弾を保有しているでしょうが、かんじんの弾道ミサイルに搭載するための弾頭の小型化が遅れています。 

ほんとうに小型化が完成していれば、北の側から、どうぞどうぞ見てください、といわんばかりにプンゲリ核実験場に米国の立ち入り調査を招待したことでしょう。 

しかし、ただの爆破ショーでお茶を濁し、マスコミから線量計すら取り上げたそうです。 

分かりやすいことをやってくれます。これは坑道の残存ガスを分析すれば、核爆発の威力が満天下に明らかになるからです。 

逆にそれをしないのは、北はおそらく実戦で使えるような核兵器を、ほとんど保有できていない可能性があります。 

実はフェーク核を作る事は、閉鎖的な独裁国家ではそんなに難しいことではありません。徹底した情報統制が可能だからです。

自由主義国家ではメディアにすぐバレてしまうような核実験も、長距離核にしても、国営プロパガンダ放送しかない国ならいくらでも偽造が可能だからです。

ですからこのような独裁国家においては、独裁者が核を持っていると宣言すれば持っていることになってしまうようなやっかいな兵器なのです。

そして独裁者はこのフェーク核を作ったと称することで、それを政治的に高く売りつけることができるわけです。これが今までの北のやり口でした。

それを「高価・迅速買い取りします」と言っているのが、トランプです。

クラス委員のような体質のオバマは、非核化でノーベル平和賞をもらってしまったことがかえって足かせとなって(性格もありますが)、手も足もでませんでしたが、トランプはこれを「よっしゃ、オレが買い取ろう」と言い出したのです。

かくてシンガポールで売買契約の商談がもたれ、その外枠はできたわけです。

トランプが正義恩を「合理的だ」とか褒めたのは当然。商取引の相手を、米国ビジネスマンの慣例に則って激賞しただけのことです。

というわけで、これで後は契約の細部を詰めるところまできたのが、ただいま現在というところです。

その買い取り担当が、ポンペオとボルトンです。

ならば、いくらで買うか「検証」するのが買い主としてのとうぜんの権利だろう、あんたら売り主が核といっている商品の中身を見せて頂こうじゃないか、これがトランプの言い分です。

CVIDでもFFVDでも言葉なんてどーでもいい、大事なのは北の取引「商品」の中身を知るために「検証」をさせよ、これがトランプの今の買い主としての主張です。

それさえ呑めば、「体制の保証」はあげられないが、せめてあんたの国の「安全の保証」(Security guarantees)くらいはあげられるよ、なんなら、中国から守ってやってもいいんだぜ、ということなのかもしれません。

これでハタと困ったのが正恩のほうでした。見せちゃっていいもんかどうか、でも見せないと契約不履行でボコられそうだし・・・。

悩みは深い正恩でした。

  

2018年7月 5日 (木)

北の怪しい兆候

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ワールドカップモードから通常の更新体制に戻ります。まだ世界最大の祭りは終わっていないのですが、あとは純粋に楽しんで観られます。 

 

ああ、負荷がかからない世界最高のサッカー試合って、楽しくも虚しいことよ。せめてコロンビアでも生き残ってくれればいいのに。イングランドめ、苦手なPKを征しやがって(笑い)。 

 

さて、この1週間でテーマが溜まっています。沖縄の知事選の自民の人選が迷走していますし、北はおかしな動きを見せ始めています。今日は北のほうからいきます。 

 

北が複数の怪しいふるまいを始めています。 

 

整理すれば、このような危険な兆候です。

①寧辺の核施設改修の継続
②複数の非公表施設での兵器級核燃料(高濃縮ウラン)の増産の継続
③対日用準中距離弾道ミサイル・北極星2用のキャタピラ式移動発射台の増産継続
④北極星シリーズ向け固体燃料製造施設の増築

まずは北の核物質製造の大本のヨンピョン(寧辺)の実験用軽水炉周辺の6月21日に撮影された衛星写真を見ていただきましょう。 

 

Sty1806270012f1エアバス・ディフェンス・アンド・スペース/38ノース提供・共同 

 

38ノースの分析によれば、①ほぼ完成した技術棟、②トラック、③クレーン付きトラック、④)新たな建物、⑤実験用軽水炉、⑥変電所、⑦ポンプ室、⑧放水路 

 

これについて38ノースは、このような比較的冷静な分析をしています。 

「米国拠点の北朝鮮分析サイト「38ノース」は26日、21日撮影の商業衛星写真に基づき、北朝鮮寧辺の核施設でインフラ整備が速いペースで進んでいるとの分析を発表した。北朝鮮の「非核化の約束」と関連付けるべきではなく、指導部から特別な指示がない限り、通常通りの作業が続くと指摘した」(産経6月27日)

つまり、これはシンガポール合意とは関係なく、今までの既定の改修工事が続いていて、ただ上部からの中止命令がでていないだけなのだとするものです。 

 

これだけならそれもありかと思いますが、弾道ミサイルの固形燃料を作っているハムフン(咸興)市にある化学材料研究所での工事も継続され完成してしまっています。

「北朝鮮が、弾道ミサイルの製造施設の拡張工事を完了したとみられることが2日までにわかった。衛星画像の分析から明らかになった。
米国政府は先月の米朝首脳会談で北朝鮮側が核・ミサイル開発の放棄に意欲を示したとしているが、衛星画像の内容はそうした見方に疑念を投げかけるものといえそうだ。
問題の画像は米サンフランシスコに拠点を置くプラネット・ラブズが撮影し、モントレー国際大学院(MIIS)の研究者らが分析した。それによると、咸興(ハムフン)市にある化学材料研究所での工事が完了しているのが確認できるという。
化学材料研究所は、固体燃料を使用するミサイルのノズルや胴体部分、円錐(えんすい)形の頭部など、炭素複合材を使った部品を製造していることで知られる」(CNN7月2日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180702-35121803-cnn-int 

 

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上の写真が、去年11月に移動式発射台(TEL)から発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる火星15です。 

 

今回、分かったのは、もう少しサイズの小さい北極星2用のキャタピラ式TELです。 

 

148759597210_20170220TELから発射される北極星2 

 

つまり、北は北米大陸に到達すると称している火星シリーズについて新たな動きは「凍結」し、日本を標的にした液体燃料のノドンから、より即応性が高い液体燃料の北極星2に更新しているということになります。 

 

仮にこれが日本に対するメッセージだと解釈すると暗澹とします。 

 

また、ヨンピョンだけではなく、他にも複数の核物質製造施設を持っていることも分かりました。 

「1日付の米紙ワシントン・ポストは、北朝鮮の金正恩体制に自国の核戦力を全面放棄する意思はなく、むしろ多数の核弾頭の隠蔽を画策しているのが実態であると複数の米情報当局者が結論づけたと報じた。
 同紙が最新の北朝鮮に関する情報分析に接した複数の米当局者の話として伝えたところでは、一連の情報は米朝が6月12日の首脳会談で「朝鮮半島の非核化」で合意したのを受けて収集された。北朝鮮は核弾頭に加え、核兵器製造のための秘密のウラン濃縮施設の存在も隠し通そうとしていることも分かったという。
 同紙が昨年報じたところでは、北朝鮮は65発前後の核弾頭を保有。また、北朝鮮が存在を開示している北西部(ヨンビョンの核施設のほかに、寧辺の2倍のウラン濃縮能力を持つ「カンソン発電所」と呼ばれる秘密の地下核施設が存在することを米情報機関が把握済みだとしている」(産経7月1日)

これについて、ボルトンはこう述べています。

「ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は1日、CBSテレビの報道番組に出演し、同紙の報道について「コメントしない」と述べつつ、「米国は北朝鮮が何をしているのか全力で把握しようとしている」とした。
 また、「北朝鮮との協議に関与している政権当局者の中に(北朝鮮は誠実だと)ばか正直に考えている者はいない」と指摘し、北朝鮮に交渉を引き延ばされ、核・弾道ミサイル開発進展ための時間を与えるという歴代米政権の「過去の過ち」は繰り返さないと改めて強調した」(産経前掲)

このように見てくると、北がどこあたりを米国との落とし所に考えているのかは透けてみえるような気もしないでもありません。

 

それは北米大陸に到達しうる長期距離核のみを「凍結」し、日本を狙った中距離核は温存するだけにとどまらず、更に実戦的な新型に更新し、戦力増強していくという流れです。

 

朝日の社説などの俗論に、「北は緊張緩和している。イージスアシュアはやめるべきだ」などとしたり顔でいう人がいますが、北はなにひとつ「緊張緩和」の具体策をとっていません。

 

むしろ増強しているほどです。どこを見て、そんなことをいうんでしょうか。

 

一方トランプは、この北の動きを受けて、6月22日付けで経済制裁を今までどおり継続すると議会に送った文書で述べています。

「朝鮮半島での兵器に使用可能な核分裂物質の拡散の現実とリスク、および北朝鮮政府の行動と方針は、米国の安全保障、外交、経済に引き続き異常で並外れた脅威をもたらしている」(AFP6月 25日)
https://grapee.jp/520793

まだこれらの北の新たな兆候が、何を示すか結論づけるには早いと思います。材料が出揃っていないからです。

 

ポンペオが正恩と直接平壌で会うようですから、またなにか動きがあるかもしれません。

 

とまれ、いらいらさせられる非核化の成果と報酬の非対称がとうぶん続くようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2018年7月 4日 (水)

日本代表は日本人監督に任せろ

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北の怪しい核設備疑惑や、ドイツの苦悩など書きたいテーマは溜まっているのですが、もう一回サッカーを書きます。 

サッカー協会の田嶋会長は西野氏はあくまでも「臨時」だとのことで、契約更新はないような口ぶりです。

「W杯で16強入りした日本代表の次期監督として、前ドイツ代表監督のユルゲン・クリンスマン氏(53)の就任が3日、決定的となった。日本協会は1次リーグを突破した西野朗監督(63)に続投要請する方向で調整を進めていたが、並行して外国人監督もリストアップ。1勝1分け2敗で、退場者を出した10人のコロンビアにしか勝てなかった結果を疑問視する声があり、風向きが変わった。複数の関係者によると、既に水面下で本格交渉を開始。順調に進めば、20日の技術委員会を経て内定する運びとなる」(スパニチ7月4日)

クリスマンですか。スゴイね。

しかしこれだけの功績を残した西野氏を替えるという意味がわかりません。

サッカー協会がやらかしたマネジメントの不始末を、わずか2カ月で建て直し、見事に統率したきったのは西野氏ではありませんか。

田嶋会長にだけは、「コロンビアにしか勝てなかった」などと言っていただきたくはありません。

ハリルホジッチは決して無能な監督ではありませんでしたが、日本人のサッカーという特質を分かっていなかった気がします。 

今回のベルギーを見ると、日本のサッカーとは大きく違うのが分かります。 

エムバペやルカクのような2m近い業務用冷蔵庫を前線に並べて、それに球を投げ込んでプレスをかけるというやり方でした。 

E56a0702sR・ルカク

今回も突進するルカクからシャドリに通って日本チームに止めを刺しました。日本は本田のCKに全員攻撃で臨みましたが、結果として失策となりました。
 

あの状況では、キーパーに取られれば、一気にカウンターをかけられるのは必至だからです。 

しかも、こういう状況では必ずカウンターを遅らせる選手がいなければならないのに、ほぼ無人の野を行く状態にさせてしまいました。

ああ、あの時、カードを心配して替えた柴崎がいたらとおもいました。 

終了後、昌子が地を叩いて泣いていましたが、それはホイッスル間際の1分にルカクの背中を見て走らざるをえなかった屈辱感からだったのでしょう。 

ベルギー1点目のフェルトンゲンのヘッディングシュートは見事でした。(下写真) 

3ccdad06388a5cb1d1d21a5d73d02609_64フェルトンゲン 

そして2点目も、フェライニにゴール前で高い打点からヘディングを決められました。 

どちらも身長が190を超える巨人たちです。 

日本人はアジア人としての身体的特性から逃れることはできません。 

日本人が現時点で可能な戦術は、ショートパスを機能的につないで攻め、来襲する巨人軍団を数人で取り囲むようにして阻止する守備方法です。 

この数的優位で相手の攻撃をブロックする日本サッカーの戦法は、まるで巣に侵入しようとするオオスズメバチをニホンミツバチが退治する時の戦法を思わせます。 

Top11_2蜂球を作ってスズメバチから巣を守るニホンミツバチ

ニホンミツバチは、セイヨウミツバチよりはるかに小柄です。このニホンミツバチが自分の数倍あって装甲に身を固め、強い顎を持つオオスズメバチに対しての必殺技が「蜂球」です。

「偵察部隊のスズメバチがやって来ると、数百匹の日本みつばちが飛びかかり、「蜂球」を作ります。そして、羽の付け根の筋肉を震わせて発した熱で、中のスズメバチをやっつけるのです。蜂球の中の温度は45度以上になり、スズメバチは死んでしまいますが、日本みつばちは50度までなら耐えられるため、耐熱差を利用した必殺技なのです」
http://www.honey-is.jp/trivia/t30.html

 ニホンミツバチは彼らの身体的特性を知って戦っているわけです。ヒトも一緒です。

日本にはルカクなどのようなタイプの選手は生まれるはずがありません。

仮に可能だとすれば、ほとんどのヨーロッパ・チームがそうしているように旧アフリカ植民地から移民の形で連れてくるしかないわけです。

日本も大相撲がそうであるように、移民による巨大化は不可能ではありませんが、それによって日本サッカーの短いパスを組織的につないでいくという鋭い機動性という特性が犠牲になるでしょう。 

日本人には日本人の体格、気質に応じたチームづくりがあるのであって、ハリルと西野の差はこのあたりにあるのかもしれません。

それを知ってか知らずか、田嶋会長が何人かの外国人監督の名を上げています。

その中には、なんどとなく固辞された過去があるベンゲル氏もまたぞろ含まれていたのには呆れました。

いいかげん、日本サッカー協会は日本人監督に長期的に任してみてはいかがでしょうか。

また外国人監督で失敗すると、田嶋さん、辞めるのはあんたのほうだろうと、国民から言われてしまいますよ。

明日から通常更新に復帰します(たぶん)。

 

 

 

2018年7月 3日 (火)

頑張れ、われらが青い戦士たち

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負けた。素晴らしいファイトだった。一瞬でも2-0という点差をつけた。

ほんとうに美しい夢を見せてくれた。日本人が今まで見られなかったベスト8に、手が届いたと思った。

私はきみらを誇りに思う。ほんとうにすごい奴らだ。

胸を張って帰ってきてくれ。ありがとう。本当にありがとう、青い戦士たち!

                                                                                  5時10分

                                   ~~~~~~

残念なコメント欄騒動で乱されましたが、試合前のほどよい緊張に包まれています。

常識的には勝てる相手ではありません。相撲で言えば、前頭10枚目くらいの日本と、西の横綱、ないしは東の大関格のベルギーとの戦いになります。

正直に言って、ロシアがスペインに勝ったように、耐えて耐えて耐え抜いてカウンター狙いくらいしか勝機を思いつきません。

ただ一発勝負ですから、奇跡はありえます。それを信じるしかないでしょう。

いままでも16強には2回出ていますが、相手国は幸いにもトルコとパラグアイでした。それにも負けたわけですが、今回のベルギーはこれらの国とは比較にならない強豪国です。 

ひとつ面白いのは、ベルギーは前回のイングランド戦で今話題となっている無気力試合を演じています。

下図をご覧下さい。このベルギー-イングランド戦で勝ったほうが、アンラッキーにも左のブラジル、フランスがいるグループに入ります。

負けるとラッキーにも、右の比較的与しやすいグループに入れるわけです。負けたが勝ちなのです。

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つまり、負けてもグループリーグ突破は決しているのですから、ここは負けて2位狙いが両チームの思惑だったようです。

そのために昨日記事で書いた、マリーシア丸出しの試合展開となってしまいました。

「得点後の監督は、とってつけたようなリアクションで、「おいおい点とっちまったよアイツ」私にはそう見えました。
ベルギーの選手はというと、あれ、なんか思ってたんと違うけどもう点入っちゃったし俺らもやっちゃっていいのかな、とそんな感じした。
イングランドの選手たちは目に見えて手を抜いていたように思います」
https://honjitu.net/tingurando

さて先発はたぶんコロンビア戦の先発と同じだと予想されます。

GK: 川島
DF: 酒井(宏)、吉田、昌子、長友
MF: 長谷部、柴崎
MF: 原口、香川、乾
FW: 大迫

さぁ、あと2時間です。

2018年7月 2日 (月)

「ドーハの悲劇」を忘れましたか?

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気分を切り換えたほうがいいんじゃないでしょうか。もう火曜日午前3時には、次の試合が待っているのですよ。 

今、私たち日本のテレビの前で観戦するしかない人間にとってできることは、唯一ガンバレというだけのことです。 

応援することしかできないという絶対的な立場を忘れて、今まさにピッチに立とうととしている青い戦士たちを、「汚い試合だ。恥ずかしい」と外国と一緒になって罵ってなんの益があるのでしょうか。 

戦うのはあくまで代表チームであって、日本でビールを飲みながらのんきに見ている私たちではないのです。 

戦っているのは、西野であり、長谷部であり、本田であり、そして代表チームのすべての選手、スタッフであって、私たちではないのです。 

その区別をしっかりつけたほうがいいと思います。 

世界から激しいバッシングを浴びているのは代表チームであって、私たちではないのです。 

それを身勝手な「世界の声」なるものと一緒になって、代表チームを小突き回してどうしますか。 

「世界の非難の声」とは、一枚皮をめくれば、自分たちが永遠に強豪国であるために必須の武器を日本が手に入れようとしていることに対する警戒感です。 

サッカーには、速さ、フィジカル、組織力、戦術など以外にもうひとつ隠した武器があります。 

それが「狡猾さ」、あるいは「ずる賢さ」です。ポルトガル語でマリーシア(伊語マリツィア)と呼びます。
マリーシア - Wikipedia 

「『ルールの裏をかく』といった反スポーツ的な意味合いはない。相手の心理状態を読んで奇襲をかけたり、相手の油断や混乱に乗じて意外性のあるプレーを行う」(ウィキ)

 この「ずる賢さ」が成立する唯一の条件は、ルールに沿っているという一点です。 

極東某国のように相手選手の足を狙ってバックチャージをかけたり、カニばさみをして負傷させることを目的とするような真正の反則行為とは一線を画します。 

今回の大会で取り入れられたフェアプレーを加味するというルールに則って、クリーンに試合を重ねる努力をしたことによって、その正当な報酬を受け取る権利ができたということです。 

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日本はその「正当な報酬」を精密に計算して、後半10分を守りきったにすぎません。このどこが問題なのでしょうか。 

はからずも、既に敗退が決まっていたポーランドの1点を守り抜いて帰国したいという思惑と重なってしまったために、あのような一見ダルな展開になったわけです。

あ、そうそう、立憲民主の小西議員のこんなツィートもありましたね。

「日本代表の他力本願に批判。本当にがっかりは予選敗退確定のポーランドの無気力プレー。失うものはないのだから、攻撃選手を投入し二点目を奪い、自らの手で日本を叩き落とす気概があるべきだった。安倍政権打倒の使命を放棄し、ソロバン弾いて闘うフリだけしている野党議員を見るようで残念だった」

馬鹿ですか、この人。

なにが「他力本願」ですか。無教養にも意味を間違えている上に、あの1点先取しているポーランドがあえてリスクを冒してまで攻撃する理由がまったくないというサッカーのイロハも知らないようです。

そもそもサッカーを国内政治にからめるなって。

もし、もっと日本がずる賢くたちまわれたのなら、適当にポーランドと戦っているふりをすればよかったというだけのことです。

Photoドーハの悲劇

さて、日本サッカーは「ドーハの悲劇」から学ぶところから、ワールドカップ戦略を再出発しています。
ドーハの悲劇 - Wikipedia 

私はあの1993年10月28日の夜の、すさまじいばかりの敗北感をいまでも忘れられません。 あの晩は悔しくて眠れなかったのを思い出します。

あのラモスのパスから武田への無意味な攻撃によって生まれた一瞬で、日本はいったん手にしたはずのワールドカップのキップを、数分で手からすベり落としてしまったのです。 

その原因を作った、武田修宏に語ってもらいましょう。 

「サッカー日本代表は93年、W杯出場の切符をかけてカタール・ドーハで戦ったアジア地区最終予選イラク戦で、2-1リードで迎えた後半終了直前のアディショナルタイムに、相手クロスボールからの攻撃で同点に追いつかれた。
リードを守っていれば悲願のW杯初出場を達成していたが、当時のチームは、時間を稼ぐパス回しはせず、武田が敵陣でクロスボールを上げるなど、追加点を狙う戦いを最後まで続けた。 
武田は「もし、あの時代にアディショナルタイムの中で、ボールを回す今回のような文化があったら、W杯に出て歴史が変わっていたと思うんですよ。
(今回も)選手も攻めたかったと思いますが、そういうことを考えると(パス回しは)ありだと思います」と、あらためて西野監督が選択した戦術に理解を示した」(日刊スポーツ7月1日)

https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201807010000234.html

 ここで武田が言っている「ボール回し文化」とは、今回の日本代表がラスト10分でやったボールキープのことです。 

ここで武田が指摘するように、南米やヨーロッパには、平然とそれをやる「ボール回し文化」があります。 

それがマリーシアの文化であって、それを日本に習得させたくない、日本などというアジアの田舎チームはいつまでも若武者気分で走り回っていればいいのだというのが、これら強豪圏の連中の本音なのです。 

本田は今まで日本が超えられなかったもどかしさを、こう述べています。

「僕らは練習でやったことを100%出そうとやるものの結局、勝ち方が分からない。一生懸命いいサッカーやっているけど、相手を圧倒していても(イタリア戦で)3-3の状況で点を決められない」
本田「自信の差が格に」/コンフェデ杯 - サッカー日本代表ニュース : nikkansports.com

たとえば強豪国は、試合中主力は全力疾走してはいません。エースストライカーはディスェンスに加わるどころか、ただ歩いているだけだったり平気でします。 

FWの大迫がコロンビア戦で見せたような、最終ラインまで全速力で駆け戻っての守備などはしません。

日本がそれをせねばならないのは、DFの弱さが日本代表の弱さだからです。

強豪チームのエースストライカーがマリーシアしていられるのは、決定的な局面で出番を作るために、体力を温存していられるからでもあるのです。

日本が見せる精一杯の走り回る姿は、一面、マリーシアの余裕を欠いた弱点でもあるわけです。

「DF栗原は言う。『(強豪は)ここぞというときに余力を残している。足の止め方を知っている。FWはサボったりしている。日本はいっぱいいっぱい。相手のミスが起きてもパワーを発揮できない』。ここぞというタイミングで力を出すにはペース配分が重要であることを認めている」
https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2013/06/25/kiji/K20130625006080890.html

高校野球と重ねたコメントがあったことには、正直いって驚きました。 サッカーワールドカップは、オリンピックを凌ぐ世界最大規模の大会です。

仮にオリンピックで金メダルを得たとしても、307個のひとつにすぎません。

ワールドカップは、サッカーという世界すべての国がやっている普遍的な世界競技の世界一を決定する大会なのです。そのトロフィーの重さがまったく違うのです。

つまりワールドカップとは、私がなんどか書いてきているように、スポーツ競技の形をとった「戦争」です。

鉄砲の球ではなくサッカーの球を蹴ることで勝負をつける、血の流れない「戦争」なのです。 

そこに国家を背負ってピッチに立つ重みは、しょせんは一つの県の名誉をかけた高校野球レベルと比較すること自体愚かです。 

とまれ、戦っているのは彼らであって、私たちができることは唯一、声の限り応援すること、ただそれだけです。

 

 

 

 

2018年7月 1日 (日)

日曜写真館 石榴の花、まるで小さなトーチのような

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メッシとロナウドが去る・・・。

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