トランプは北の核の中身を「検証」することを要求している
日本ではスルーされているようですが、ポンペオが従来の、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」に代わって、「最終的かつ完全に検証可能な非核化」(FFVD・Final、Fully Verified Denuclearization)という表現を使い始めました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180705-00000061-yonh-kr
「検証」(Verify)は残して、「不可逆的」(Irreversible)という部分が消えました。気になるといえば、気になります。
これは悪く取ると、「検証」はするが、またぞろ核を作る気になれないように、完全に核施設・核物質・核弾頭などを国外に撤去することをあきらめたようにも聞こえるからです。
これが仮にヘッカー教授の非核化10年論のようなことならば、日本は強く警戒感をもたねばなりませんが、私は違うと思います。
かわった部分よりかわらない部分に着目しましょう。 それは「完全(非核化)」と「検証可能」です。
ポンペオはいやいやをするガキの口を、「ほ~ら、痛くないでしょう。先生に虫歯チェックさせてね」とあやしながら開けさせて、虫歯ならぬ核をヒッコ抜こうとしているようにも見えます。
ここで僕、イヤダもんと口を開かない悪い子だと、怖いボルトンおじさんが、優しそうなポンペオさんの後ろからヤットコを持って登場するということになります。おお、コワ。
さて、勘違いするメディアが多くて誇大宣伝されていますが、北はすこぶる弱い国です。強大な軍事国家と思っているのは、北のプロパガンダに騙されているからにすぎません。
https://www.jiji.com/jc/d4?p=nkp110-AH9J1011&d=d4_ftaa
上の写真は2015年の朝鮮労働党70周年の軍事パレードですが、こんなものを真に受けてはいけません。
だいたいなんですか、この兵隊さんたち。放射能標識の箱もって、核地雷で自爆攻撃でもさせるつもりなんでしょうかね。意味不明(苦笑)。
北にはなんとパレード用部隊という奇妙なものがあって、彼らはぴかぴかの軍隊パレードをすることだけが任務です。
ちなみに上空を飛ぶ戦闘機は、会場を大きく旋回してなんどでも航過飛行し、機数を水増しするのが習いです。
旧東側軍隊のオハコで、北はそれをまねたのです。
実態は通常兵器はさびついて使い物にならず、そもそも戦車を動かす石油がありません。
兵士は飢餓に苦しみ、指揮官は公安警察(社会保衛部)によって厳しい監視下にあります。
シンガポール会談時には、高級将校はほぼ全員が軟禁されたと言います。クーデターが怖いからです。
はっきりいえば、軍は張り子の虎にすぎず、唯一頼るべきものは核だけだと言って過言ではありません。
北にとって唯一の武器は、三代かけて国の富をすべて傾けて作った核だけです。核は今や北にとってたんなる武器を超えたいわば信仰であり、宗教の偶像ですらあります。
上の写真は、旧シリーズ映画「続猿の惑星」のワンシーンですが、核戦争を生き延びて地底に住む地底人は、核ミサイルを拝むようになったというお話です。
ま、北も気分はこんな感じでしょうか(笑い)。
核を放棄すると言った瞬間、正恩は国民、なかんずく軍の強い反発を受けることでしょう。
核原理教の祭主が、核を捨てるなど言ってしまってはシャレにならないからです。
そういえは今年2月まで頃まで北は、「我々に核放棄を望むのは、海の水が干上がるのを待つより愚か」なんて言っていましたしね。
オバマならこの台詞を額面どおり受け取ったことでしょうが、会社を潰すたびにタフなネゴシエーターに成長していったトランプは、こんなていどではダマされませんでした。
好むと好まざるとに関わらず、 トランプは外交をビジネス脳で解決しようとする人なのです。
ですから、型にはまった思考と発想しかできない外交官から蛇蝎のように嫌われています。
北の場合、トランプは弱小会社の主力商品を買収する大企業のようなつもりでいますから、こんなことをほざくのは北が売値をつり上げているに違いない、ならばこりゃよくある交渉前の吹っ掛けじゃんと考えている節があります。
だから、トランプは「マッドマンを相手にするリスクに関していえば、それは正恩のほうの問題だ」と3月に言ってのけたのです。
これを言われて、さぞかし小心このうえない正恩はたまげたと思われます。一子相伝のマッドマン芸が、トランプには通用しないと悟ったからです。
北は確かに「検証」を恐れています。それは間違いありません。
ただしその理由は、ただ売値を引き上げたいだけではないし、あるいは大量の核兵器を隠匿しているのがバレるからでもない気がします。
私は逆に北の保有する核の中身が、あんがいショボイからだと思っています。
なんどか私は書いてきていますが、多くの軍事技術者たちは、北の長距離核は未完成だと指摘しています。
誘導もできず、大気圏再突入もできないような弾道ミサイルは、ただのロケットにすぎません。
仮に北がヤケのやんぱちで、北米大陸に向けて火星15を発射しても、大気圏内で核弾頭は燃え尽きてチュドーンとなるでしょう。
それを知ってトランプは正恩を、「リトル・ロケットマン」とあざ笑ったのです。
https://twitter.com/i/web/status/91283648733439180
北はおそらく複数の核爆弾を保有しているでしょうが、かんじんの弾道ミサイルに搭載するための弾頭の小型化が遅れています。
ほんとうに小型化が完成していれば、北の側から、どうぞどうぞ見てください、といわんばかりにプンゲリ核実験場に米国の立ち入り調査を招待したことでしょう。
しかし、ただの爆破ショーでお茶を濁し、マスコミから線量計すら取り上げたそうです。
分かりやすいことをやってくれます。これは坑道の残存ガスを分析すれば、核爆発の威力が満天下に明らかになるからです。
逆にそれをしないのは、北はおそらく実戦で使えるような核兵器を、ほとんど保有できていない可能性があります。
実はフェーク核を作る事は、閉鎖的な独裁国家ではそんなに難しいことではありません。徹底した情報統制が可能だからです。
自由主義国家ではメディアにすぐバレてしまうような核実験も、長距離核にしても、国営プロパガンダ放送しかない国ならいくらでも偽造が可能だからです。
ですからこのような独裁国家においては、独裁者が核を持っていると宣言すれば持っていることになってしまうようなやっかいな兵器なのです。
そして独裁者はこのフェーク核を作ったと称することで、それを政治的に高く売りつけることができるわけです。これが今までの北のやり口でした。
それを「高価・迅速買い取りします」と言っているのが、トランプです。
クラス委員のような体質のオバマは、非核化でノーベル平和賞をもらってしまったことがかえって足かせとなって(性格もありますが)、手も足もでませんでしたが、トランプはこれを「よっしゃ、オレが買い取ろう」と言い出したのです。
かくてシンガポールで売買契約の商談がもたれ、その外枠はできたわけです。
トランプが正義恩を「合理的だ」とか褒めたのは当然。商取引の相手を、米国ビジネスマンの慣例に則って激賞しただけのことです。
というわけで、これで後は契約の細部を詰めるところまできたのが、ただいま現在というところです。
その買い取り担当が、ポンペオとボルトンです。
ならば、いくらで買うか「検証」するのが買い主としてのとうぜんの権利だろう、あんたら売り主が核といっている商品の中身を見せて頂こうじゃないか、これがトランプの言い分です。
CVIDでもFFVDでも言葉なんてどーでもいい、大事なのは北の取引「商品」の中身を知るために「検証」をさせよ、これがトランプの今の買い主としての主張です。
それさえ呑めば、「体制の保証」はあげられないが、せめてあんたの国の「安全の保証」(Security guarantees)くらいはあげられるよ、なんなら、中国から守ってやってもいいんだぜ、ということなのかもしれません。
これでハタと困ったのが正恩のほうでした。見せちゃっていいもんかどうか、でも見せないと契約不履行でボコられそうだし・・・。
悩みは深い正恩でした。
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ブナガヤさんこんにちはHYです。
猿の惑星の地底人……私も同じことを考えていました。北朝鮮は核兵器を信仰していると(笑)。
私はトランプ大統領による北朝鮮の非核化は不可能と考えています。ブナガヤさんは彼を買いかぶっていらっしゃる。
アメリカが北朝鮮から核を買うと合意したとして「検証」が進まないのは北のペースに振り回されているのではないですか。核を買うということはすなわちビジネスであり、相手の企業秘密に食い込むことはできません。おそらくアメリカは「核を取り上げる」から「核産業を買収する」というスタンスに代わってしまって強く出られないのだと思います。一方、北朝鮮にとって核産業は唯一の先進産業ですからビジネスに応じても買収には応じないでしょう。
ブナガヤさんは北の核がしょぼいから「検証」を拒んでいると考えていらっしゃいますが、アメリカにはしょぼくても「核を持ちたい国や団体」にとっては「汚い爆弾」でも十分魅力的です。まさか今さら核物質自体が虚構というわけではないでしょうし。
投稿: HY | 2018年7月 6日 (金) 09時03分
関係のない話ですが麻原彰晃死刑執行されましたね。
平成の混乱を象徴する存在だった人間が消えたことでまた平成の終わりが近づいているなという実感をした次第です。
関係のない話を失礼しました。
投稿: 中華三振 | 2018年7月 6日 (金) 09時34分
HYさん。コメントをありがとうございます。
「買う」という表現はもちろん比喩です。トランプが「買う」という意味は、文字どおりのビジネスではなく、核を放棄する代わりになんらかのものを与える取引だと思っているからです。
あなたがおっしゃるように北の核を廃棄させるのは不可能に近いと専門家はみていました。
今でも黒井文太郎氏などの軍事専門家や宮家邦彦氏のような外交官出身の外交専門家
の多くはその意見でした。
私もいまでも半ばそう思っていますし、限定的軍事攻撃以外手段はないということも事実です。
しかもそれが有効かどうかをめぐって専門家の意見は分かれてきました。
つまり専門家の見解は、北の非核化に対して膠着していたがゆえに「手のうちようがない」というある種の無気力に落ち着いてしまっていたのです。
トランプはこの奇妙な膠着状況に風穴をあけたことは事実です。
彼が採用したのは、商業取引の手法を大胆に取り入れることでした。
彼は専門家諸氏の嘲笑を受けながら、彼はいままでオバマや国務省官僚が成し得なかった直接会談に持ち込みました。あなたは「かいかぶり」と仰せですが、これは正当に評価されるべきです。
そしてその結果が具体的ではないということに、批判が噴出しているのが、現在です。
そこから私の謎解きが始まったわけです。
現時点では、私の意見は極小派にすぎません。私はトランプを正しいと言っているわけではなく、このようにも解けるということを素人が書いているだけだと思ってお読み下さい。
なお触れられたダーティボムについては、その流出は核兵器と同一の対応となります。
麻原死刑執行。やっとか、です。
明日書くことになると思います。
投稿: 管理人 | 2018年7月 6日 (金) 10時01分
わたしは、ありんくりんさん(管理人)の少数派意見に賛成です。
トランプ氏は普通の人ではありません。アメリカに必要なス-パ-マンのよう大統領なんだと思いますね。アメリカの経済の再興を担える人ですし、経済復興の後は、世界のリ-ダ-としてのアメリカを作り上げるのではないでしょうか。トランプ氏のさらなる活躍を祈っております。
トランプ氏の真価が認められるようになるのは、北朝鮮の核を実際に廃絶し、北朝鮮を西側へ開国させることができた時点なのでしょう。じっくりと彼のこれからの成果を見つめていきたいと思います。
最近、アメリカが台湾に大使館なみの建物(数百億円)を建てたとのニュ-スがありましたが、これはトランプ氏には台湾防衛意思があることをうかがわせるものでしたね。彼には実行力があり、中国という悪の帝国を封じることが出来るだろうと思われるのですよ。日本にとっては今後トランプ氏とともに歩むことが大事ではないでしょうか。
投稿: ueyonabaru | 2018年7月 6日 (金) 20時10分
記事のように考えるならば、たしかに今までトランプさんのやって来た経緯は平仄が合います。
明らかに言える事は、我々日本人はじめ、正恩が仕掛けた北朝鮮の伝統芸である「恐怖プロパガンダ」を鵜呑みにする事こそが思うツボだった、という事でしょう。
マスコミやヘッカー氏のような親北的研究者等が、それにさらに拡大呼応・再生産して認識を誤らせた部分も多々あるのでしょう。
90年代から久しく食料配給さえ行えないで、社会主義の重要な理念さえ失墜していた北朝鮮です。
そこで正恩が初期の韓国やシンガポールのような開発独裁に憧憬を抱いたり、そのための「資金調達が活路だ」と動機したとしても、これは何の不思議でもありません。
また、そのようにトランプ氏が誘導した気配も濃厚です。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2018年7月 6日 (金) 21時25分
HYです。私ごときに丁寧なご回答をありがとうございます。素人だなんて謙らないでください。型に嵌った記事しか書けない新聞社よりも参考になるのですから。
もちろんトランプ大統領は評価されるべきです。これまで闇の中だった北朝鮮の核ドクリトンに間接的ながら干渉する余地を得たのですから。その上、米朝間で交易でも盛んになれば専門家は打って変わって彼を称賛し始めるでしょう。
ですが交渉は話半分といいますし、こちらの要求がすべて通るとは限りません。「取引」のために日米安保が解消されても困りますし……。
投稿: HY | 2018年7月 6日 (金) 22時41分