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2018年9月15日 (土)

米朝2回目会談の意味

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どうやら2回目の米朝会談が開かれるようです。 

「【ワシントン時事】サンダース米大統領報道官は10日の記者会見で、トランプ大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長から、2度目の首脳会談を提案する「非常に前向きな」書簡を受け取ったと発表した。「すでに調整のプロセスにある」と述べ、開催を検討していることを明らかにした。具体的な場所や時期については言及しなかった」
(時事9月11日)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018091100234&g=use

2回目をやる理由は、この膠着した状態の打開以外に考えられません。 

北朝鮮は分かりにくい国のようなことを言われていますが、たいへんに「分かりやすい」国でもあります。

北は先祖代々、一貫して中国の人民戦争戦術の良き弟子でした。 

敵が一歩前に出れば一歩下がり、敵が一歩下がるときには二歩前に出る、これが毛沢東が定理化した人民戦争戦術です。 

対応している側から見れば、押せば引っ込み、引っ込めばつけあがり、膠着すれば攪乱してくるのです。 

今回、北から書簡で2回目を申し込んだわけですが、これには二つの見方があります。 

ひとつは、北が6月12日以降も止めていない核と弾道ミサイル開発において、新たな展開を得た自信の現れとする説です。

シンガポール会談で負けたトランプが、さらに正恩によってボロボロにされるという構図です。 

もちろんいうまでもありませんが、北には非核化の意志など寸毫もありません。

正恩のひ弱な権力基盤は核ですから、自分で自分の基盤を解体する馬鹿はいません。 

しかも3代かけて国際社会を手玉にとって作った国宝の核です。

ですからシンガポール合意以降も、38ノースやIAEAなどの分析によれば、核物質製造プラントや弾道ミサイル工場は、解体されるどころか稼働し続け、むしろ増築されています。

軍事専門家の黒井文太郎氏はこう述べています。

「北朝鮮は非核化を言いながら、実際には核戦力を増強していることを示す情報もある。たとえば9月10日には、国際原子力機関(IAEA)会合で、北朝鮮が国連安保理決議に違反して、今なお核開発計画を進展させていることに「深刻な懸念」が指摘された。
また、同日に米NBCが伝えたところでは、米情報機関は、2018年中に北朝鮮が5~8発の核爆弾を新規に生産する可能性があると分析している。さらに米情報機関は、6月の米朝首脳会談以後、少なくとも1カ所の弾頭保管施設の入口を偽装する工事を行ったり、核弾頭や核関連機材を頻繁に移動したりするなど、核武装への活動の隠蔽を進めているとも分析している。」
(現代ビジネス9月13日)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54098

38https://www.sankei.com/world/news/180821/wor180821...

その認識に立って黒井氏は、トランプがいまや正恩の手玉にとられていると見ています。

「金正恩委員長は、自分の判断をあくまで正当化するトランプ大統領の自尊心につけ込み、いわば味方に取り込むことに事実上、成功した。
「非核化への意思」を盛んに喧伝してトランプ大統領の自己正当化アピールと歩調を合わせつつ、具体的な非核化へは大きな条件を付けてそのプロセスを先送りしているわけだが、その間に、米朝対立の沈静化や、経済の回復という利益を手にしている」(同上)

なるほど具体的非核化のプロセスは明示されないままに、ムードだけ先行しています。

核プラントのみならず、長距離弾道道ミサイルは軍事パレードに出なかったというだけのことで、6月12日以降、部品ひとつ廃棄されたわけではありません。 

この説に従えば、正恩にとってトランプが「優しくて物分かりのいいおじさん」に変身してくれたので、そろそろちょっとだけ爪を出して、北がイニシャチブを握った形での開催を要請しました、といったところです。 

つまり先程の人民戦争戦術でいえば、「敵が一歩下がった」という判断ですから、更に二歩前進して戦果を拡大せよ、となるわけです。 

具体的には、シンガポール合意のさらなる曖昧化です。非核化のケツも切らない、具体的検証方法も問わないということです。

この説を唱えるのは、トランプ馬鹿説を唱える識者に多いように見受けられます。 

私はこの説には、疑問があります。

このような意見は軍事や外交の専門家に多いのですが、合理性をトランプが無視しているように見えるからです。

それゆえ、専門性をはみ出す異形の大統領の性格を読み間違っているように思えます。 

この傾向は米国内部でも同じで、暴露本にはバカアホ、シロートと罵りたい放題の元スタッフのぼやきが並んでいるようです。

日本のメディアは、これをそのまま無検証で受け取りますから、私のように,ちょっと待て、という者は圧倒的な少数派です。

さて非公式情報では、トランプが北の書簡を見て書いたツイッターの中身がモロに軍事力行使を示唆するものであったために、高官がびっくりして投稿を止めさせたという話もありました。 

この噂自体は見てきたような嘘の可能性が濃厚で、たぶん意識的に正恩に「聞かせる」ためにホワイトハウスがリークしたのだと思われます。 

トランプの発言、特にツイッターでの発言は7掛け、いや5掛けで受け取るべきです。 

Photohttps://www.businessinsider.jp/post-105453

トランプにはこんな逸話があります。

米韓のFTA交渉でトランプは、USTRのライトハイザーにこう言ったそうです。

トランプ「30日を与えよう。そこで譲歩を引き出せなければ、手を引く」
ライトハイザー「わかりました。では、韓国政府に30日あると伝えます」
トランプ「ノー、ノー、ノー。交渉はそんな風にするものじゃない。彼らに30日あるなんて言う必要はない。『大統領は本当にクレイジーだから、すぐにでも手を引くつもりだ』と言うんだ」
『すぐにでも』と言うんだ。実際、その可能性もある。君たちもそれを理解しておくべきだ。30日とは言うな。30日あると言えば、彼らは期限を引き延ばしてくる」(ビジネスインサイダー2017年10月2日)
https://www.businessinsider.jp/post-105453

なんのことはない、トランプの言葉自体がポーカーのカードのようなもので、それを切るのは「マッドマン」だと思わせるのが、彼の手法なのです。

2http://www.afpbb.com/articles/-/3178131

この場合は、正恩に「優しいトランプオジさん」を演じてみせ握手しながら、北に非核化の約束を取り付けました。

え、韓国には板門店宣言でしているだろうって、何をおっしゃいます。お仲間みたいなムンとの約束なんかただの紙切れにすぎません。

ムンの最近の発言です。

「文大統領はさらに、「北朝鮮は米国に相当の措置を要求している」と北朝鮮の見解を詳しく紹介した。
そして、「自分たちは(北朝鮮は)これまでさまざまな措置を誠実に実践してきたのに、米国は韓米合同軍事演習中止以外に何もしていないではないか、北朝鮮がとった措置は一つ一つすべて不可逆的な措置だが、我々(韓国)の軍事演習中止はいつでも再開できるではないか、だから北朝鮮が追加的措置に出るには、米国が相応の措置を取ることが必要だというのが、今の米朝間膠着の原因のようだ」と語った」(朝鮮日報9月14日)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/09/14/2018091400906.html

すごいですね。もう恥も外聞なく、北の代弁者そのものです。

こんなムンが何を言おうと米国には関係ありません。世界の盟主たる米国が裏書きしてこそ、非核化に意味があるのです。

曖昧であろうとなんであろうと、正恩は非核化を「約束した」ということ自体が重要なので、ここに何を裏書きするのかは2回目以降にすればいいのです。

それまでシンガポール合意は白紙小切手のようなもので、それをトランプが預かっているわけです。

そして100日たったので、ホワイトハウスの金庫からおもむろにこの非核化の白紙小切手を出して、そろそろ一回目の決済をしますか、というのが今回の2回目会談です。

軍事専門家であるマティスにとっては、刃は抜いてしまったら抑止ではなくなるので、極力最後の最後まで軍事力を自制しつづけるでしょうが、トランプにとってその敷居ははるかに低いのです。 

それは彼はいい意味でも悪い意味でも大衆政治家だからであって、宮家邦彦氏が軽蔑的に言うように「トランプの頭には11月中間選挙しかない」のは一面で事実だからです。 

強いリーダーを演出するのに、「核を手放さない北を征伐する」以上のものはないのは確かですから、米朝会談をやるなら11月中間選挙の前の今しかないという判断があったとしてもおかしくはありません。 

しかし、6月12日の流れからいきなり軍事力行使に持ち込むのはいくらなんでも無理があります。

ですから、軍事力をスタンバイさせて(とっくに米軍は準備ができていますが)その圧力を背景にして、2回目の結果次第で決断するという流れでしょう。 

またこの時期は、中国が敗色濃厚な米中貿易戦争にかかずりあっていますから、北の保護者である中国の影響を最小限にできるという国際情勢もあるかもしれません。 

2番目の説が正しければ、第2回会談でトランプは北に対して軍事力行使か、さもなくば非核化を選ぶかという択一を迫ることになります。

となると、こんなところかもしれません。 

「もうたっぷり時間はやった。曖昧さは御免だ。非核化の期日を明確にしろ。できないなら、さらなる経済制裁と海上封鎖がお望みか、それともいきなり空爆をご所望か」

 

 
 

 

 

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コメント

人物の評価というのは立場によって色々な見方があるのは世の常ですが、
現米国大統領ほど評価の分かれる人も珍しいでしょうね。
自国の利益のみに奔走する狂人という人もいる一方で
そのように見せかけてはいるが腹では計算をしつくしている手練れと評する人も。
正直私のような凡人にはどちらが正しいのかさっぱりわかりません。

トランプと言えば日本ではカード自体を指す言葉ですが、
本来はコントラクトブリッジでいう「切り札」を指す言葉だそうです。
もし後者のトランプ評が正しいとしたら、まさに名は体を表すというところでしょうか。

ただ、もはや北のスポークスマンと化したお隣の大統領が役立たずだということは
私のような凡人にも十分に理解はできますが。

 今日のフロント記事が素晴らしい。

 トランプ大統領がシンガポ-ル会談後、多くの評者が言うように、キムジョンウンの戦術に乗せらているとすれば、アメリカの大統領なんてつまらない人物になってしまいます。そうであって欲しくはありません。

 アメリカ大統領は、これから中国へ攻撃をしかける筈です。これからが本番の戦いではないでしょうか?

 中国の人権弾圧は容認できるものではありません。中国の膨張主義も絶対に阻止しなければならないと思っております。トランプ大統領に期待します。

 宮家さん、VOICE誌9月号での柴山京大教授のグロ-バリズムなどに関する論文を読んだのだろうか、巻頭言において次のように書いております、

(引用)京都大学の柴山桂太准教授は、人間社会では自由化・グロ-バリズム化の波とこれによる不利益を意識する波が過去に何度も起きており、現状は、主権国家がグロ-バル化の弊害から国民を守るべく本来あるべき姿に戻りつつある流れの一部だと喝破する。至言だ。トランプ氏などのポピュリズムはグロ-バル化現象の民主制下での是正現象なのかもしれない。 

 宮家氏に、トランプ現象をこれまでと異なる視点から見直す可能性があるのも知れないと思われました。

トランプ政権の対北朝鮮対策チームでは、シンガポール後の「北朝鮮の非核化の意思に対する懐疑論」と、「文政権に対する深い懸念」の二つがコンセンサスとして形成されている(ア太平洋研究所 スナイダー教授)、という見方で間違いないでしょう。
(後者においては、「南北経済協力が進めば、米国による韓国への制裁措置」もあり得るとのこと。)

正恩から会談を申し入れてきた事の狙いは複数あるでしょうが、米国が「北朝鮮に戦争を仕掛ける犯罪を企てている」とか、「米国が古臭い「砲艦外交」を企てている」という労働党新聞にあらわれているような、常の「恐怖」が最も重きを成していると考えられます。

南北首脳会段で正恩が同意した「一年以内の非核化」がシンガポールに結びついて、その結果として米朝首脳間での北朝鮮の「非核化」が約束されたもの。
トランプ氏は会談で、正恩が切った手形に対する履行状況を確認すればよく、実際には依然として米国の優位が揺るいでいる事はあり得ません。

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