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2018年10月26日 (金)

米国のINF条約離脱は一位二位連合による三位潰しか?

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忘れられているようですが、元来、トランプは米露協調主義者でした。 

ロシアとは協力できる余地が多くあるのになぜ米国はロシアを敵対視ばかりするのだ、というのが、就任前からのトランプの持論だったはずです。 

ここがロシアと聞くだけで冷戦を思い出して虫酸が走るという共和党本流や、世界中にリベラルの花束を届けようという米民主党とは一味違うところです。 

ロシアン・ゲート事件の本質は、米露協調へと向かうトランプと、ロシアを主敵と定めるワシントンの政官界と米国メディアとの対立なのです。 

トランプのやることなすこと、すべて癇に触る、追放してしまえというのが、メーンストリームの考えでしょう。

Photo_2http://www.afpbb.com/articles/-/3182638

トランプからすれば、現にあれほど世界の脅威だったISを壊滅させたることができたのは、米露が協調したからだぜ、と言いたいはずです。 

IS壊滅の見返りとして、シリアのアサド政権が残ってしまうという代償を支払ってしまったために、評判はかならずしも芳しくはありませんが、トランプにとってはISを米露の力で潰したことは強烈な成功体験だったはずです。 

ですからトランプは今後も、アフガンやシリア・イラクの安定化、そして北の核問題について大いにロシアと協調したいところでしょう。 

既に実効支配が完了して久しいクリミア併合などは、なんなら譲ってもかまわないていどに考えているはずです。 

一回軍事支配が完了した地域の原状復帰には、戦争で取り返すしか手段しかないのですから、どこかで経済制裁も切り上げねばならないのです。 

経済制裁カードは大いに対露圧力として有効な手駒ですから、そうかんたんには手放す気はないにせよ、こと次第では妥協出来る余地があると思っているかもしれません。 

ただし、タダというわけにはいきません。米国の利益のためにロシアには大いに働いてもらわねば困るわけで、それが中国の覇権国阻止という大目標です。 

Photohttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-07-...

「なぁプーチンよ、世界第1位の米国の軍事力と、第2位のロシアが手を握れば怖いもの無しだ。このままチャイナを増長させれば、お前さんの国もいずれアジア部分は奴らのもんだぜ。な、今、阻止しておけば、お互いの利益になるじゃないか。協力できれば、おっつけ経済制裁も緩めることができるってもんだ」

まぁトランプがプーチンに言いたいことを、翻訳すればざっとこんなかんじでしょうか。 

この1位2位連合による3位潰しに、いかにしてプーチンを本気にさせるかです。 

この手段として登場したのが、INF条約離脱ではないかと私は考えています。 

さて、このトランプという人物は、よく言えば勇猛果敢、悪くいえば思いつき的な部分が残ります。 

別な言い方をすれば、歴史を動かしてやろうという気宇壮大はいいのですが、足元が拙速なのです。 

ですから、手のひらからザーザーと水がこぼれるわけです。この辺が元外交官僚の宮家さんなどにボロクソに言われるゆえんでしょうな。 

ひとことでいえば、トランプさん、あんた準備不足ですよ。 

静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之氏はこのように述べています。 

「弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)脱退を2001年12月にロシアに通告し、6か月後に実行したブッシュ政権には、中間段階ミサイル防衛を米国の陸上に配備するという目的があり、既に開発を始めていた。
ところが、トランプ政権はINF条約脱退を表明しながら、脱退後に欧州・アジアに配備する地対地ミサイルを用意していない。米陸軍は、この射程でもINF条約に違反しないという兵器を研究しているものの、開発・調達の段階に至っていない」
(『NEWSを疑え!』第720号(2018年10月25日号)
 

そもそもこのINF条約は、北の核と一緒で、本来ならかつての民主党政権時にやっておくべきことで、腰が引けているからズルズルここまで既成事実化してしまった問題です。 

トランプからすれは尻拭いをする立場ですが、それだけでは面白くない、これを対中包囲シフトに使えないだろうかと考えたとしても不思議ではありません。 

いや、彼なら必ずそういう思考形式とるはずです。 

しかし、残念ながらロシアが違反しているから米国も破棄するというリアクションの立場であるために、何の準備もされていませんでした。 

たとえば、地上発射型の中距離核ミサイルが対象になっているわけですが、ではそんなもんが米国にあるかといえばないのですな、これが。

というのは、この「中距離」というのがくせもので、敵に近いために睨みを効かせるには有効ですが、逆に近すぎるために攻撃に脆いという欠点があります。

実はこれが、米国が沖縄に地上発射型の中距離ミサイルを、冷戦期の一時期を除いて配備しなかった理由です。

本来、この中距離核ミサイルの特長が生きるのは大陸です。

沖縄のような狭い島など初めから論外、日本列島や韓国ですらいかがなものかです。

やるとしても、初めから場所が分かってしまっている固定式サイロなどは話になりません。

3ミサイルの固定式サイロhttps://blogs.yahoo.co.jp/bdcxs228/34030371.html

可能とすれば、中国がやっているような道路を大きなトレーラーでガラガラと動き回れるような移動式発射装置がベストなのです。

Photo_3東風21 http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2010-09/...

今の日本列島でそんな移動式発射装置に核兵器を載せて米軍が引っ張り回したから、内閣のひとつや二つは軽く飛びます。

フィリピンという手がないわけでもありませんが、なにせ政情不安定で、ドテルテのようにいつ中国に転ぶかわからない国に、そんなものを置くわけにはいきません。

ですから、地上発射型中距離核という存在そのものを配備する軍事的合理性に欠けていたからこそ、米軍も手をつけていなかったのです。

そのかわりに取った手段が、空中発射型の巡航ミサイルです。

「セルバ統合参謀本部副議長は昨年7月18日の同委員会で、米軍はINF条約にかかわらず、艦対地・空対地ミサイルによって、中国本土の目標に攻撃のリスクを与えることができると主張した」(西前掲)

ですから、現況では政治的には大変に面白い展開を予想できるのですが、西氏も指摘するように、軍事的にはロシアにとって条約無制限状態を公然と続けられる言い訳を与えかねないリスクがあるともいえます。

とまれ、始まったばかりですので、なんともいえません。

 

 

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コメント

 欧州の反応も複雑です。
欧州委員会の第一声はINF離脱を歓迎したもののように感じられました。
仏や独はもちろん反対ですが、賛成派の小国の方が数としては多いのではないでしょうか。
戦後最大のNATO軍事演習の意味も深いのかも知れず。

プーチンさんの「米国のミサイルを配備するなら、相応の措置を取る」としたのは遅すぎてお約束的発言に聞こえるし、米国の離脱そのものに対する処置ではない事に留意すべきと思います。
トランプ氏に、欧州において新たな米製ミサイルで固めさせる意図も感じられません。

もっともINFに遅れている米国にとって、いまさら配備は意味がないのでしょう。
そうすると、主たる狙いは「中共を新しいテーブルにつかせる事にある」とみるのが妥当でしょう。

オバマ時代は、プーチンに会うことすらままなりませんでした。
ところが今は、枢要な位置の米高官はじめひっきりなしに訪ロしている変化・事実こそ重大でしょう。
その露払い的役割をした形跡が安倍・プーチン間の度重なる会談にあったと思われます。

沖縄県知事選ではご迷惑をお掛けしました。
今回もスレ違いですいません。

今、まとめサイトの「保守速報」が敵の攻撃を受けて遮断されています。まとめサイトは数カ月前から広告剥がし攻撃で運営が厳しい状況です。今後は敵のネット保守への攻撃が激化すると思われます。此処も敵の攻撃が多いようですが気を付けて下さい。

「玉城デニーは危険」さん。ご忠告はありがたいのですが、「保守速報」などは、記事本体ではなく、コメントに人種差別的なものが多くあったことが理由となっています。

私のは広告は一切乗せない主義なので、干しようがありません。
「保守速報」さんのようにそれで食っているわけではありません。
ブロッガーは自分で汗して働き、発信で飯を食うべきではありません。
これが体質化すれば、彼等が批判してやまないオールドメディアと一緒ではありませんか。

また私はあなたのHNのような、自分の意見を開陳せずに、HN自体が特定の政治傾向を主張するものは推奨していません。
はっきり申し上げて迷惑です。

次回入れるなら、まずHNを普通のものに変えて自分の意見を展開することです。
それがここのような言論サイトに対しての礼儀であり、ルールではないでしょうか。

管理人さんへ
HNの件は失礼しました。
玉城デニー・・・を変更しました。

で、話ですが、今、保守速やもえるあじあなどが、敵の攻撃でネット遮断されています。
あなたは、これを当然と思っていますか?

「4444.3333 」さん。記事に移しかえました。

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