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2018年10月24日 (水)

INF条約番外地アジア

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INF条約離脱問題を続けます。 訪露していたボルトンはパトルシェフ安全保障会議書記にIMF条約を離脱する旨を伝達したようです。

ロシアの態度は相変わらずで、条約違反そのものを認めずに証拠を出せと言っているようです。なかなかしぶといことです。

ボルトンはこう述べています。

「ロシアを(条約順守の)義務に立ち返らせれば条約は救えるという考え方があるが、ロシアが違反そのものを否定している以上不可能だ」と語った。ボルトン氏によると、パトルシェフ氏は会談で、ロシアの条約違反を強く否定し、「違反しているのは米国だ」と主張したという」(朝日10月23日)

今回のトランプのINF条約の離脱は、あらためて米国が差しだしている核の拡大抑止、平たくいえば「核の傘」について考えさせられることになりました。 

よくある誤解ですが、米国がロシアの核戦力に対して、「お、ロシアは核戦力を増強しているのか。ならばオレも核戦力を増強するぞ」というふうに捉えているむきがあるようです。 

ちょっと違います。ロシアが秘密のうちに開発し、実戦配備した核搭載型中距離巡航ミサイルの攻撃対象は、米国ではありません。あくまでもヨーロッパであり、日本です。 

米国には向けられていませんし、そもそも射程が500~1500キロではまったく届きません。 

ですから、ロシアの中距離核は米国の直接の脅威ではないのです。 

そもそもどうしてINF条約が結ばれたのか、考えてみればわかるでしょう。これは歴史上初めて結ばれた二国間核軍縮条約でした。 

核兵器そのものを非核化しようという北とのCVIDと性格が違うことは、その「射程」を決定する核兵器の運搬手段(ミサイル)がテーマだったことです。 

ここで単に「ミサイル」とだけ書くのは、2種類あるからです。

ひとつは、成層圏に一回飛び出して再突入してくる弾道ミサイル(BM)と、低空を低速で這うように侵入してくる巡航ミサイル(GLCM)のふたつのタイプがあるからです。 

今回、ロシアが条約破りをした9M729は、この地上発射型巡航ミサイルです。

9m72_4https://en.wikipedia.org/wiki/9K720_Iskander

INF条約には、これらの生産と実験について禁止するだけではなく、更にその担保として情報開示、施設査察まで認めています。 

ムン・ジェインのように、「北は非核化に努力しているんだから、制裁解除しようよ」なんて言っても、必ず核軍縮条約には情報開示と施設査察がワンセットでついてくることをお忘れなく。 

いやむしろ核軍縮の順番は、情報開示・施設査察があって初めて制裁の段階的解除が始まるのです。

ムンさん、ヨーロッパはINF条約を体験していますからそれを骨身で理解しています。

わかっていないのはムンさんだけですから、ヨーロッパで恥をかくのですよ。 

話を戻します。 

ではなぜ1987年12月という時期に、米ソでINF条約が結ばれたのかというこの「時期」の問題です。 

それは1970年代に、ヨーロッパ諸国が米国に不安を抱き始めたからです。 

1950年代から60年代の冷戦初期においては、米国は核優位をたもった上で通常戦力もソ連より一枚上手でした。 

こういう力関係だと、ヨーロッパは怒濤のように侵攻してくるであろうワルシャワ条約軍に対して、米国の核抑止が効いていていると信じられて枕を高くできたわけです。 

ところが、米国はキューバ危機においてソ連との密約をします。

それはキューバへの中距離弾道ミサイル搬入をしない見返りに、トルコに置いた中距離核ミサイルを「旧式だから」という理由で撤去してしまいました。

喉元のキューバの核を撤去する見返りは、米国にとっても大きかったのです。これで米国の核の傘にほころびが生じてしまいます。 

一方ソ連は、ヨーロッパ正面に中距離弾道ミサイル(IRBM)であるSS-20を配備し始めました。 

20SS20中距離核ミサイルhttp://www.military-today.com/missiles/rsd_10_pion... 

これは怖い。ヨーロッパ諸国にとって、つい目と鼻の先に「ヨーロッパ専用」の核ミサイルをつきつけられ、しかもそれに対して米国はなんの手だても打ってくれていないからです。

そりゃ米国はいいでしょうよ。SS20を発射されてヨーロッパが廃墟と課しても、大西洋を隔てて安穏としていられるんですから。

よくいう「ソ連が核攻撃しても、米国はロスやニューヨークを差し出して報復してくれるだろうか。してくれないなら、米国の核の傘はまやかしだ」という米国の核の傘についての深刻な懐疑の空気が高まりました。

実はこれがソ連の真の狙いでした。

ソ連は、米国とヨーロッパの同盟(NATO)を戦わずして分断(デカップリング)しようとしたのです。

とまれここに、西側陣営の結束に内部崩壊の可能性が生まれたのです。

そこで弱った米国は、1979年12月のNATO外相・国防会議において、ソ連を核軍縮のテーブルにつけるために圧力をかける方針を定めます。

それが米国のパーシングⅡと巡航ミサイル(GLCM)の配備でした。

201米陸軍パーシング2  地上発射型中距離核ミサイル
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181022-00...

そしてこれが功を奏して、大変な交渉バトルの末に結ばれたのが、このINF条約でした。

米ソは1991年6月までに、米国は計846基のINF(パーシングⅠ・ⅡおよびGLCM)を廃棄し、ソ連も計1846基のINF(SS-20、SS-4、SS-5、SS-12、SS-23、SSC-X-4)を廃棄しました。

これが歴史の教訓です。軍縮は力による軍事的・外交的圧力によって初めて成立するのです。

実は当時ヨーロッパ諸国が抱いた米国の核の傘に対しての懐疑は、形を変えて今も残っています。

今、ヨーロッパでも再浮上しているのはご承知のとおりですが、一貫してINF条約の蚊帳の外の地域があったからです。

それはもちろんわがアジア地域です。

米国はINF条約によって、すべての地上発射型中距離ミサイルを全廃してしまいました。

しかしINF条約が結ばれた当時、その対象となっていない国があったのです。

いうまでもありませんが、中国と北朝鮮です。この二国は今世紀に入って、急速に中距離核戦力を開発・、配備しました。

とくに中国は史上かつてない規模の大軍拡をした結果、ずらりと「日本専用」の核ミサイルを配備にするに至っています。その保有数、種類、共に豊富です。
中華人民共和国の大量破壊兵器 - Wikipedia

21東風21http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2010-09/...

●中国の中距離・準中距離核
①東風3中距離弾道ミサイル( IRBM)                         ・・・射程3,000+ km
                                                                               保有数2
②東風21C 道路移動式 準中距離弾道ミサイル(MRBM)・・・射程1,750+ km
                                                                                保有数36
③東風21道路移動式弾道ミサイル (MRBM)              ・・・射程1,750+ km
                                                                              保有数80
④東風15 道路移動式短距離弾道ミサイル(SRBM)    ・・・射程600 km
                                                                             保有数96
⑤東風11A 路移動式 SRBM                                 ・・・射程300㎞
                                                                             保有数108
⑥東海10巡航ミサイル(LACM )                              ・・・射程3,000+ km
                                                                             保有数54
⑦巨浪1潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)                ・・・射程1,770+ km
                                                                            保有数12
⑧巨浪2SLBM潜水艦発射弾道ミサイル                   ・・・射程7,200+ km
                                                                              保有数24

その中距離弾道ミサイルの範囲を示した図が下です。

400pxpla_ballistic_missiles_rangehttps://ja.wikipedia.org/wiki/DF-21_(%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB)

このような現実がある中で、米国はINF条約に拘束されたままです。

そしてそれに加えて、本来、中距離核戦力を持てないはずのロシアまでもが持つに至っています。

「INF条約の番外地」、それがアジアだったのです。

日本はぐるりを敵対感情を持つ中距離核保有国で包囲されていて、しかもそのことに当人は気がつかないまま、「力には力の対応はいけない」なんてことを公共放送の解説者がもっともらしく言えるような国となっていたわけです。

なんのことはない、ヨーロッパはともかくとして、アジアではINF条約など影も形もなく、馬鹿正直に条約を遵守していたのは米国だけというまことに馬鹿馬鹿しいお話です。

これで米国の核の傘を信じろ、トラスト・ミーは無理というものです。

日本の中に、米国の核の傘に対しての不信感が残り続けているのは、故あることなのです。

ボルトンの訪露にあわせた記者会見で、トランプはこう記者団に述べています。

「「ロシアのプーチン大統領に対する脅しか」と問われ、「あらゆる者に対する脅しだ。(脅しの相手には)中国も、ロシアも、(私と)ゲームをしたい者はだれでも含まれる」と威嚇した」(朝日前掲)

「威嚇」とは朝日らしい厭味たらしい表現ですが、いい得て妙です。

トランプの真の標的は、ロシアを貫いて中国の核軍拡に対する「威嚇」だからです。

トランプは、かつてINF条約の交渉テーブルにソ連を引き出したレーガンの手法をそのまま踏襲しているのです。

そのためには、「我々はだれよりもずっと多くのカネを持っている。人々の目が覚めるまで我々は(軍事力を)増強する」(前掲)ということになります。

このトランプの核軍拡を、中国の核軍拡と同列に扱うわけにはいかないはずです。

長くなりましたので、次回に続けます。

■すいません。悪い癖で改題し、加筆してしまいました。

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コメント

 ブナガヤさんこんにちは、HYです。INF条約の経緯をまとめて下さりありがとうございます。こんな内容はニュースには勿論、教科書にも書かれていません。

 米国に届かず同盟国を標的にしたミサイルを配備することは、米国と同盟国間のデカップリングを誘う戦略になる。その客観的視点をうっかり見落としていました。わたし自身昨日の投稿で"米国のあるかどうかわからない傘”と書いてますからね。

 しかし米軍が地上発射型の中距離ミサイルを作るとしてそれを同盟国に配備する場合、日本も対象になるのでしょうか?ブナガヤさんは以前日本へのニュークリア・シェアリングについて否定的な見解を示されております。わたしも日本に地上発射核を配備することには反対です。

安倍訪中を直前にして、この米国の動きは相当程度日本の動きを縛るものとなるのでしょう。
同盟国としての日本のスタンスをますます問われることになりそうで、安倍さんにとってはキツイ旅になりそうです。

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