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トランプINF条約離脱へ

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トランプが、10月20日、レーガン政権下でゴルバチョフと結んだINF(中距離核戦力全廃条約)を廃棄する方向の検討を表明しました。
中距離核戦力全廃条約 - Wikipedia 

Reagan_and_gorbachev_signing INF条約に署名するレーガンとゴルバチョフ Wikipedia

「トランプ氏は同日、「ロシアは長年、条約違反をしてきた。我々は合意を破棄し、(条約から)離脱する」と明言した。ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が近くロシアを訪問し、トランプ氏の意向を伝える見通しだ。
 条約で禁止された核弾頭も搭載可能な地上
発射型の中距離ミサイルについて、トランプ氏は「我々はこれらの兵器の開発をしなければならない」と強調した」
(朝日10月22日)

表面的に見ると、トランプは中距離核戦力の相互廃棄を「やめるわ、オレ」というのですから、例によって米国が腕っぷしに任せて横紙破りを始めたのかと思われた方もいらっしゃったことでしょう。 

実際にNHKのニュー9などでは、「力に対して力での対抗はイカン」といった、いかにも9条の国の公共放送らしいことをのたまうていましたね。 

ほー、となると、いままでの米国の抗議を歯牙にもかけずに始まった、ロシアのINF条約破りは不問に付してもいいが、核のバランスを回復するための米国のそれはいかんということになりますね。 

実際、日本のメディアはロシアの新型巡航ミサイルについては、まったくスルーしていました。

そもそも日本のメディアは、いつもながら旧共産圏には甘く、米国と自国には厳しいという非対称のスタンスをとっているから、わからなくなります。 

INF全廃条約は、射程範囲500~5500キロの核弾頭および通常弾頭を搭載した地上発射型の短距離および中距離ミサイルを廃棄するよう定めていますが、この新型の9M729巡航ミサイルの射程は1500キロを超えると思われています。 

99299M729巡航ミサイル 出典不明

INF条約違反と目されているロシア製核ミサイルは下記です。
JSF氏による
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181022-00101377/

①SSC-8地対地巡航ミサイル  ・・・ 射程2000km~2500㎞
②イスカンデルM弾道ミサイ     ・・・短距離弾道ミサイルだが射程500km超
③RS-26ルベーシュ弾道ミサイル・・・射程5500km以下の中距離弾道ミサイル

いうまでもありませんが、ロシアの中距離弾道ミサイルの射程内には、ヨーロッパ全域と日本が納まります。 

たとえば、北朝鮮の中距離弾道ミサイルのノドンの射程は1300キロと言われていますから、日本列島がすっぽりと納まります。

Photo_2海国防衛ジャーナル http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstanc

先ほどふれましたが、オバマも2014年にロシアのINF条約破りを批判してはいるのです。 

しかし例によって例のごとく腰砕けに終わって、ロシアは開発を続行し、とうとう完成させて実戦配備してしまいました。 

2017年2月14日、ニューヨーク・タイムズ紙が米情報当局者の話として、ロシアがSSC-X-8・9M729ミサイル部隊を既に2個大隊保有しており、1個大隊はロシア南部ボルゴグラード周辺の開発実験施設に配備され、もう1個大隊は昨年12月に中央ロシアに実戦配備された、と発言したことが伝えています。 

ただし、これは西側インテリジェンスの調査によるものであって、ロシアは本来公開されるべきINF条約関連の情報を秘匿しているために確証情報ではありません。 

トランプが怒っているのは、「お前の時代にロシアを止めておけば、今、オレがこんなややっこしい条約脱退なんかしなくてよかったんだよ、このウラナリビョータンめ」ということのようです。

「トランプ氏は20日、ネバダ州で開いた支援者集会の後、「自分たちができないのにロシアは好きに兵器ができる」のを米国は容認しないと述べ、INF全廃条約について「どうして(バラク・)オバマ大統領が交渉や離脱をしなかったのか分からない」などと批判した。
オバマ前米大統領は2014年、
ロシアが地上発射型巡航ミサイルの発射実験を行った際、INF全廃条約違反だと抗議した。オバマ氏は当時、条約離脱は軍拡競争再開につながると欧州各国首脳から圧力を受け、条約に留まったと言われている」
(BBCNews10月222日)

かつてのクリントンが北の核施設を空爆しようとして腰砕けになった結果、北は核開発を続行し、とうとう実戦配備したと主張するまでに肥大させてしまったのとよく似た構図です。

米国民主党政権の負の遺産の尻ぬぐいをトランプがさせられているところまで、よく似ています。 

この時は米国は、欧州各国の首脳から反対されて条約に止まりましたが、今回、さすがに喉元にナイフを突きつけられた格好のNATOは違った対応を見せています。 

PhotoストルテンベルグNATO事務総長 スプートニク

「北大西洋条約機構(NATO)は4日、ブリュッセルで開いた国防相理事会で、ロシアによる新型の地上発射型巡航ミサイルの開発について議論し、ストルテンベルグ事務総長は理事会後の記者会見で、ロシアが中距離核戦力(INF)全廃条約に違反しているとの認識を明らかにした。
ストルテンベルグ氏は露側が「9M729」と呼ばれるミサイルの存在を最近認めたとする一方、信頼できる説明を拒否しており、各国は透明性に欠くとの認識で一致したと強調。その上で、露側を条約違反とみることが「最も妥当」とし、ロシアに対してNATO側の「深刻な懸念」に対処するよう要求した」
(産経10月5日)
 

西側自由主義陣営は、ロシアが新型9M929巡航ミサイルの配備を完了したことをもって、ロシアがINFから離脱したと見なしています。

プーチンが狡猾に離脱表明しないで、実戦配備をしているだけのことです。

核戦力は「力の均衡の論理」によって成立しています。人類は英知をもっているのに、なんて野蛮だと言わないでください。これが現実なのです。 

今日の国際社会の平和秩序は、二つの要素で保たれています。 

ひとつは「力」、すなわち軍事力であり、今ひとつは合意の積み重ねによる国際法という慣習法です。 

今回のINF条約は後者の国際条約ですが、これが破られた場合、それを守らせるには国際機関が仲介するか、さもなくば国際警察力を持つ国、つまり米国ですが、その遵守を強制せねばなりません。

国際機関、つまり国連安保理が、この掟破り常習犯の中露に拒否権を与えているために(与えないとさっさと脱退されてしまうからですが)、現実には単なる町内会の常会ていどの役割しか果たさなくなって久しいのは、ご存じのとおりです。

トランプは業を煮やして国連人権委からの脱退、分担金の減額、本部のNYからの立ち退きなどを構想していて、このまま推移すると国連脱退し、第2国連作りもあながち冗談ともいえなくなったとみられています。

といっても、実際に脱退できるのは予告期間の6カ月をみて、来年4月頃になるとみられています。

その間、米国は急ピッチで中距離核戦力を再構築せねばならなくなったわけです。

米国は完全に廃棄していたために、当座は核搭載トマホーク巡航ミサイルの復活といったことが現実的でしょうが、それはそれで大変なことではあります。

それはさておき、NHKのキャスターがしたり顔で「力に力で対抗してはイケナイ」と叫んでも、このような力学で国際社会が作られている性質上、いたしかたがありません。

つまりは、ロシアが条約の拘束から離脱した以上、INF条約の精神を守るためには自らも条約離脱をして、「力の均衡」を回復するしか道がないことになります。

これが核時代の哀しいパラドックス(逆説)なのです。

そしてもうひとつのトランプの狙いは、INFにすら加盟せずにせっせと核軍拡に励む中国を視野に入れていますが、長くなりましたので次回にします。

 

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コメント

力に力に対抗してはいけない?
何言ってんだかという。対抗する力を持たなければ何も言えなくなりますよ。
とにかくもトランプが悪い!我が物顔で秩序を乱す破壊者扱いが前提ですからね。
その後の「時論公論」でも、NHKの安全保障解脱委員さんがトランプ批判をしていましたが、じゃあもろにえいきょうを受ける我が国はどうするべきなのか?という視点が完全に抜けていました。

んじゃ、プーチンや習はどうなのかと。ここぞとばかりにミサイル戦力を強化しています。ロシアなんかそれこそ経済がボロボロなのによくやること。
そりゃあNATO諸国は気が気ではありませんね。

また、INF条約では中国は蚊帳の外ですからやりたい放題です。30年で時代は換わりました。

INF離脱は現状アメリカにも不利なことで、またぞろ巨額な出費が強要されます。


ウイグル問題。
共産党華人によるウイグル人虐殺、100万人規模の強制収容所送りという非情。
厳重な報道管制されても、この時代ですから情報は漏れてきます!
極悪非道。かつてのナチスドイツのユダヤ虐殺に近いことが起こっています。

ヨーロッパ諸国よ、「一帯一路」などという中華帝国支配の夢に乗っかって小金を稼ぐよりも、堂々と「非人道的支配」に対して怒りの炎を上げろ!と。。

投稿: 山形 | 2018年10月23日 (火) 07時14分

 ブナガヤさんと投稿者さんこんにちは、HYです。

 ロシアの中距離ミサイル開発"経済がボロボロなのによくやること"と山形さんがおっしゃっていますが、それは話が逆さまで「経済がボロボロ」だから通常戦力の整備が追い付かず、核戦力に頼るしかない事情があると思います。実際、ウクライナ相手にも苦戦してますし。

 しかしこうしてみると、核廃絶にうつつを抜かす日本が如何に厳しい立場に居るかがわかります。世界は核拡散の時代に入っているのです。核兵器禁止条約はこれを抑止できず、むしろ闇の核マーケットの活性化をもたらしています。数十年後には核保有が独立国のステータスになってるんじゃないでしょうか。

投稿: HY | 2018年10月23日 (火) 12時46分

HYさん ロシアがウクライナに苦戦? ただ西側諸国に配慮して進撃を止めているだけでしょうに

投稿: 中島みゆき | 2018年10月23日 (火) 14時03分

 トランプ政権はロシアとの関係に非常に丁寧な対応をしていますね。
INFは既にお互いに形骸化した条約にすぎないし、この条約の最大の受益者は中国です。

表面的にはともかく、この問題にあたっても米露関係は良好な方向に向かい続けると思われます。
ロシアにとっては米中関係の悪化は願ってもない米露接近のチャンスですし、かつて中国がした裏切りを逆の立場で再現できる可能性を見ないはずがないと思います。

投稿: 山路 敬介(宮古) | 2018年10月23日 (火) 17時13分

 > 表面的にはともかく、この問題にあたっても米露関係は良好な方向に向かい続けると思われます。

 山路さんの見立て、嬉しい予測です。INFが形骸化しているとは知りませんでしたので、私には新鮮な知識でありました。

 日米露が結び、中国を牽制したいものです。中国のウイグルなどへの人権侵害は許せません。ナチに似てきました。

投稿: ueyonabaru | 2018年10月23日 (火) 18時56分

ueyonabaruさんへ

文化大革命、天安門事件、チベット、ウイグル
中国は建国以来なんら変わってないと思いますよ
それを今まで咎められた事が無かっただけで。

投稿: しゅりんちゅ | 2018年10月23日 (火) 21時05分

 しゅりんちゅさん

 おっしゃる通りです。

 中国の残虐性、侵略性を確認した我々は、このことを世間に流布する必要があります。機会をとらえ宣伝してまいる所存です。

 不思議なのは、中国の事実がなかなか国民、県民に伝わらないことです。マスコミが伝えないこともありましょうが、大きな原因は国民一人一人が他国の事象に関心がないことなんでしょうね。尖閣にも関心があまりないようですし。自分の身に火の粉が及ばなければ他人事でしかありません。

 毎日ニュ-スをチェックしておりますが、国際の事象の変化は直接私たちに影響してくるのですが・・・。そのことは皆さん分かっておられない。

投稿: ueyonabaru | 2018年10月23日 (火) 21時40分

 こんばんわ、HYです。なんだか話題がそれてしまっているようですが、ここでは米国のINF条約離脱と核戦略がテーマですのであしからず。

 "力の均衡を回復"と言っても今の米軍に地上発射型の中距離核ミサイルが必要とは思えません。なぜなら同射程のミサイルは米本土に置いても対露・対中では意味がないですし、ハワイやグアムに置いても的になるだけです。核搭載できるAGM-129は空中発射式でINF条約にそもそも抵触しませんし。

 今さら冷戦期の古臭い核戦略概念でも持ち出す訳じゃありませんし、ICBMとSLBMを柱とした米国の核戦略は変わらないでしょう。せいぜいAGM-129の改良型が出るだけです。

 いずれにせよ核拡散の時代、日本は米国のあるかどうかわからない傘に縋るしかないのです。

投稿: HY | 2018年10月23日 (火) 23時49分

もう3日も前だから放っておこうかと思ったんですけど、

HYさんねえ、他人の(私の)コメントを利用して「むしろ逆です」とはいかなる根拠でしょうか。ロシア地上軍のどの舞台がいつどのように削減されたのですか?その規模は?
おそらく今までのあなたの作法から「誤解がありました」なんて丁寧に謝るだけの姿勢だけは見せるのでしょうね。

そんな平謝りなんか誰も求めていません。それはあくまであなたの自己肯定と保身のためだけの手段ですね。こちらの読者さん達ははとっくに気付いておられるでしょう。
で、何の反省もなく脱線して、突っこみが入ると「ここはテーマが違いますので」って何様なの?

つい最近も「脱線もいい加減にしなさい」と、管理人さんから注意を受けたばかりですよね。
自分の考えだけ押し付けて他人をバカにして楽しいですか?
旗色が悪くなると即座に「私が上位」であることを釘を刺しながら逃げるだけ。
挨拶が丁寧だからといって、中身がそんなスカスカでは呆れられますよ。

投稿: 山形 | 2018年10月26日 (金) 09時43分

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