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2018年11月

2018年11月30日 (金)

戦後世界秩序の敵対者となってしまった韓国

015

こうも連日、あ~あ、やっちゃった、ということを見せられるといささか食傷しますね。 

今度は、予想どおりでしたが、徴用工裁判2回目です。特に驚かなくなった、自分がコワイ。 

「【ソウル聯合ニュース】日本による植民地時代だった戦時中に強制徴用され、三菱重工業で働かされた韓国人被害者5人が同社を相手取り起こした損害賠償請求訴訟の差し戻し上告審判決で、韓国大法院(最高裁)は29日、原告が逆転勝訴した差し戻し控訴審判決を支持し、被害者1人あたり8000万ウォン(約800万円)の支払いを命じた」(聯合 11月29日) 

Ajp20181129001000882_01_i_p4聯合https://jp.yna.co.kr/view/AJP20181129001000882?section=japan-relationship/index

 まだ70社が係争中で、この韓国最高裁判決の勝訴を受けて、我も我もと殺到することでしょうから、最後には数百社になるんじゃないですか(苦笑)。

「先月末には同様の訴訟で、新日鉄住金も敗訴したばかりで、他にも約70社の日本企業が係争中。賠償を拒んだ場合、韓国内の資産を差し押さえられる恐れもあり、企業側は対応に苦慮している」(時事11月29日)
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12145-135735/

この三菱重工なども三菱商事を通してコンプレッサーなどを売る合弁会社を作ったばかりでしたが、もう撤退を視野にいれねばならなくなったわけで、お気の毒様です。 

今回の徴用工問題の深刻さは、ほんとうの徴用工ではなく、ただの一般募集工についての判決だということです。 

おさらいしておきます。 

今回の判決事例を、日本のメディアは韓国側の言い分そのままに「強制徴用された韓国人」、あるいは「強制労働させられた人々」という表現を使っていますが、間違いです。 

9654c43dd306f7f182bc62585e559436フジTV

がさつに韓国や日本のメディアが一括して「徴用工」と分類していること自体が間違いです。
 

朝鮮人(当時は日本国籍者でしたが)の、国家動員法に基づく戦時労働は3種類に分類されます。 

①大戦前の1939~41年の期間は民間企業による「募集」
②開戦後の1942~44年9月の期間は、朝鮮総督府による「官斡旋」
③大戦末期の1944年9月~1945年3月は国民徴収令による「徴用」
 

判決事例は①の「募集」工員です。募集というくらいですから、自分で応募したのであって、強制でもなんでもありません。

もしこれが韓国最高裁判決文がいうように「反人道的な不法行為」ならば、今、日本企業に大量に押しかけている韓国人学生が70年後に、「強制的に連行されて奴隷労働された」と訴えるかもしれませんから、採用なさらないほうがよろしいですね。

当時の募集工も似たようなもので、高い給料を求めて求人が殺到したために高い倍率でした。

特に軍艦島は設備が当時最新で、給料もよかったために狭き門でした。

それにしても、高い倍率に殺到する「奴隷労働者」ですか(力なく笑う)。

下の写真は映画『軍艦島』ですが、これ全編ウソばかりというファンタジー映画ですが、韓国人の「徴用工」のイメージはこういう「奴隷労働」なのです。

2『軍艦島』

日本が「軍艦島」に強制的に連れてきた朝鮮人労働者を奴隷労働させ、メシもろくに食わさずに、虐待の限りを尽くして殺しまくったという内容のようです。

フィナーレでは、これまたお約束のように、凛々しいイケメンの主人公を先頭に大暴動へと展開していくようです。

もちろん、当時の軍艦島住人の証言や記録から一切否定されています。

そういえば、世界遺産申請時にも、軍艦島はアウシュビッツだったなんて言っていましたっけね。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-a099.html

この映画の監督ですら歴史的事実に基づいたものではないといっているにもかかわらず、ムン・ジェインはこの映画が大ヒットしたことをきっかけに韓国国内での徴用工への関心の高まりを捉えて政治利用しました。

今回の訴訟で出てきた原告らは、ただの募集工員にすぎません。 

原告らはこの賃金の未払いを訴えたのですが、それも日本企業を訴えるのは筋違いです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-5723.html

なんども書いてきましたが、これは日韓請求権協定の議事録をみればわかることです。 

日本が個人補償をしようと主張したにもかかわらず、韓国政府が、いいや、個人補償もオレがやるからその分も全部くれ、といって持っていったものです。 

まぁ、当時の韓国は金庫が空っぽで、経済建設一つ満足に出来なかったので、一括して韓国政府が預かって経済に重点的に投下しようということだったようです。 

当時のパク・チョンヒさんとしては、経済が軌道に乗って余裕ができれば、なんらかの形で個人補償をする気だったのかも知れませんが、なし崩しに黙っているうちに韓国国民は誰も知らないことになってしまいました。

日本の左翼文化人が、「日本政府は個人請求権を認めろ」なんて言っていましたが、そんなもんは初めから認めています。

韓国が自分でやるというので、その分も渡してしまっただけのことです。

韓国国民に日韓請求権協定を説明するのは韓国政府の責務ですから、もう日本が知ったことではありません。 

さて、韓国最高裁は戦時ではない一般の募集工員まで「強制労働」だといって勝訴させた以上、日本統治下のすべての労働は「強制労働」だということで判例が決定したということになります。 

言い換えれば、日本統治自体が違法であって、それにまつわるすべてが訴訟の対象となるということですね。 

「倭人の眼」という良質のコラムを送ってくれている、産経ソウル支局長・名村隆寛記者は「日本統治時代がらみなら何でも請求できるのか」と題してこう述べています。
https://www.sankei.com/world/news/181125/wor1811250001-n1.html 

「1965年の日韓請求権協定により解決済みの請求権問題を蒸し返し、「徴用工訴訟」で新日鉄住金に賠償を命じた韓国最高裁の確定判決に続き、韓国政府は2015年の慰安婦問題をめぐる日韓合意を無視し、合意に基づき設立された「和解・癒やし財団」の解散と事業の終了を予定通り発表した。
一方的で勝手な解釈に基づき、日本が相手なら国際的な協定や合意を無視しても平然としている。韓国との関係は、もはや軌道修正が困難な所に来ている」(11月29日)

 まったくそのとおりですね。 ただ私は、日本とだけ軌道修正不可能になったのではないような気がします。

今回の「徴用工」判決二つで、日韓関係は今までの竹島領有や慰安婦合意、あるいは軍艦旗騒動などとは、まったく違った次元に入ってしまいました。

それは韓国人の好む表現を使えば「日帝支配36年」はすべて犯罪だと、韓国が主張し始めたからです。

つまり日本統治下のすべて、たとえば教育・交通インフラ作り、教育、農業、鉱工業生産等々の一切合切全部が「犯罪」であって、補償の対象となりうるということです。

すると統治下における、日本企業、日本の農業者、商人などもまた、今回と同じような判決が下され、賠償請求される可能性が出たということになります。やれやれ。

もし日本側がこれに応じたりすれば、どうなるのでしょうか。

それは、解決済みはずの戦後の植民地統治に関わる独立処理を、全部一からやり直すことになります。

たとえば、インドは英国と、ベトナムやアルジェリアはフランスと、フィリピンは米国と、インドネシアはオランダと、そして中東諸国は英仏と再交渉して、「植民地統治下の苦痛に対する物的・精神的損害」について賠償を求める権利が発生したということです。

そうなった場合、ただの反日の枠では収まりません。そりゃそうでしょう、世界の戦後秩序そのものを仕切り直そうとすることですからね。

韓国は戦後世界秩序が漠然とあるのではなく、戦後処理としての講和会議と、植民地独立時の独立処理協定によって成り立っていることをお忘れらしい。

当人たちはいつもどおりの気楽な反日のつもりなのかもしれませんが、実は戦後世界の柱のひとつである独立処理を揺るがしているのです。

そんなことをすれば、他ならぬ韓国もその上に乗っているはずの現在の戦後世界秩序を根底から揺るがすことになります。

そこまで分かってやっているなら、韓国さん、どんどん進めて下さい。

ただし、そのような国は核を欲しがる北の兄弟国とは違った意味で、戦後秩序の敵対者ですから、おつきあいは御免こうむります。

 

2018年11月29日 (木)

入管法改正案衆院通過

019

ウィグル弾圧や北方領土交渉をシリーズで書いているうちに、入管法改正案が衆院を通過したそうです。

台湾では民進党が大敗して政変が起きそうですし、クリミアではロシアがウクライナ海軍艦艇をだ捕するしで、こういう時にはひとりで書いている身のつらさよ、と泣けますね。

私は深堀りしたいタイプなので、身体が二つ欲しいもんです。

さて入管法、やれやれ、愚かなことをやっちまったかというかんじです。だいだい自民党の部会で9割反対していたものをなぜ出してくるんでしょうか。 

多くの人も同じ思いでしょうが、国柄が変わる危険すらある外国人労働者受け入れを、なぜこうまでして急ぐ必要があるか、皆目わかりません。

外遊と絡めた時期なので、ひょっとして首相はこれを手土産にする気かしら。 

この入管法には、私は強い危惧をもっています。

Plt1811270042p1産経 11月27日 https://www.sankei.com/politics/news/181127/plt1811270042-n1.html

安倍氏は地球儀外交と自認するほど世界を股にかけているのですから、英国のEU離脱に象徴されるように、ヨーロッパにおいて移民問題こそが社会不安の震源だと知っているはずです。 

英国がブレグジットを国民投票にまでかけねばならなかった最大のテーマは、まさに今日本で通過しそうな移民の受け入れでした。

フランスやドイツ、あるいは北欧が、過去に安易に受け入れた移民で大変なツケを払わされているのを知らないとでもいうのでしょうか。 

Migフランスの移民暴動 出典dogma.at.webry.info

独法「労働政策研究機構の『移民への警戒感の高まり』というレポートがあります。
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2014_5/france_01.html

ここでフランスの移民状況について言及した部分があります。

「この調査は、フランスに居住する18歳以上の1026人を対象として、2013年12月2日から12日の間に実施された。同報告書によると「移民」を経済や社会の不安要因として挙げた人が全体の16%に上り、前回調査から6ポイントの大幅上昇となった。
2002年にこの調査が始まって以来で最高となった。
また、「フランスには移民が多すぎる」と回答した人は全体の74%に上る。
この割合は年々上昇しており、2009年と比較して27ポイント上昇したことになる。
「移民は過去10年間の間に増加している」という認識を示したのが76%で、この数値は2012年から1ポイント、2011年から7ポイント増加している。
さらに、「移民は社会的保護を受けるためだけにフランスへ来る」と回答したのが77%で、2012年から4ポイント上昇している」

France_01労働政策機構レポート 前掲

よもや自民党の議員諸氏は、これが「移民受け入れ法」だと認識していないなんてことはありませんよね。 

入管法がいう「外国人材の受け入れ拡充」とは、受け入れ国の人間でも代替が効く人材なのです。 

政府は「余人をもって代えがたい優秀な人材」を受け入れないと、時期を失するというような答弁をしていますが、何を言っているのか。 とうに失しています。 

日本は、日本語という習得が困難なマイナー言語国家であり、移民コロニーがいまだ一部を除いては未形成なために、いわゆる「熟練した人材」は、特にいまさら日本に来る必要がないのです。 

もっと高給を払う国なら中東にでも行けばいくらでもあるし、ヨーロッパのように国家間の移動も自由な地域もあります。 

いやなら、別の国に行き、更に高い条件で雇用を求めるという移動の自由が保証されているのに、なんでわざわざ日本に来ると思うのでしょうか。 

日本が欲しい「余人を持って替えがたい人材」は、現行法でも労働ビザを取得するのは簡単です。 

これは、今回の日産のゴーン事件ではしなくもバレたように、グローバル企業が大量の外国人取締役を雇用していて、それに目を剥くような巨額な報酬を払っていたことでもわかるでしょう。 

また、おそらく自民案が念頭に置いているような、介護労働や医療従事者は賃金水準が低すぎて、わざわざ外国から来る意味がありません。 

そもそもこれらの職種は対人労働ですから、日本語の壁が立ちはだかります。 

このような職種に人材がほしいのなら、内国人の報酬や労働条件を向上させることをまず考えるべきです。 

したがって、問題はいわゆる「熟練工」ではなく、誰にでも代替できる単純労働者の受け入れなのです。 

これは、私が住む茨城の農業現場を見ればよくわかります。茨城は成田空港から近いせいもあって、かなり前からかつては中国人、今はベトナム人の農業労働者で溢れています。 

そのための受け入れ団体は各地に多くあって、それぞれが系統ごとに独自のルートを持って競い合っています。

Chart02

https://www.nca.or.jp/gaikokuzin/sikumi/gaiyou.php

彼ら外国人農業労働者の賃金は、かつては内国人よりそうとう低く買い叩かれていた時期もありますが、今は野党が追及するような奴隷労働ばかりとは思えません。

また、今回メディアや野党が騒いでいた受け入れ先からの失踪事件もいくつか具体例を知っていますが、一概に受け入れ先ばかりを責められない複雑な背景があります。

また米国国務省が人権問題として批判しているという、パスポートを雇用者が管理している事例も失踪と裏腹ですから、これも外からだけでは判断がつきません。

受け入れ条件には個別のバラつきがあるということを知ってから、この研修生制度を見ないと見誤ります。

劣悪な労働環境が奴隷労働だのなんだのと言われていますが、日本人の研修生も似たようなもので、特に外国人だから差別的というのもあたりません。

要は、日本農業が永年に渡って家族労働に頼ってきたために、いざ労働力不足になってから外部から慌てて入れた結果、問題が生じたのです。

とまれ現行法では「研修生」資格で働いていて、労働ビザを取得することはほぼ不可能でしょう。 

研修生制度は、労働ビザを単純労働者に与えないための苦し紛れの抜け道として作られたものでした。

都合よく働かせて、都合よく返す、安くよく働く人材を確保したい、そんなことができるはずがないじゃありませんか。

ですから、とうぜん研修生制度は矛盾の塊でした。

私は、今回のような入管法改正をするなら、研修生制度を廃止してから、時間をかけてその問題点を洗い出し、新たな外国人労働者受け入れ制度として再構築する必要があると思っています。

今回のように研修生制度を残しておきながら、新たに労働ビザ制度をつくるというのが理解できません。

審議時間が20時間に満たないと批判されていますが、200時間でも足りません。国柄を変えることなのですから、徹底審議が必要なのですから、自民は猛省すべきです。

一方、追及する野党がつくづく馬鹿だと思うのは、この技能実習制度に批判を集中してしまったことです。 

その上に、論点を「他民族の共生」「外国人差別を許さない」といった、立民好みのリベラルの色眼鏡をかけてしまいました。

野党のヒアリングも、受け入れ側はろくに聞かれず、外国人側の意見のみを聞いていました。

これでは受け入れ側だけが強欲悪辣に見えてしまいますが、現実には研修生が労働条件をツイッターなどで交換しあって、逃げることを前提にして入国する者すらいるのです。

そして一回逃げた外国人研修生は、二度とまともな就職はできませんから、膨大な不法残留者の闇の中に消えていくことになります。

そしてこの不法残留者の泥沼は、外国人犯罪者の温床です。

この法案はあくまでも「出入国管理」がテーマであって、現行の研修生実習制度とは区別すべきです。 

野党やメディアは「多民族共生」という絵空事から現行の研修制度を批判しているために、単純労働者受け入れを前提として許容してしまっています。

こういうヤワな批判ばかりならば、政府は怖くありません。

最低賃金は保証されているとか、待遇面での改善は進んでいることを言えばよいことになってしまいます。

実際、私が知る限り、最低賃金などは遵守されていますし、時間外労働は強制ではなく、むしろ少しでも金を持って帰りたい研修生が自ら望んだものが大半です。

問題はそこではないのです。

現行の待遇一般ではなく、入管枠を拡げることで労働ビザで入ってくる単純労働者が引き起こす社会問題をどう考えるか、です。  

労働ビザで入国した労働者は、研修生とは別次元です。

単純労働者の需給は世界的に逼迫していませんから、おそらくこのタイプの労働者が多く流入することになるでしょう。 

すると結果は見えています。 

初めは、今の改正案のように外国人労働者の種別を作ったりして、なんのかんのと入り口を狭く設定して国民の理解を得ようとします。

しかし、かつての不正規労働者のように、徐々になし崩し的に受け入れ枠が拡大し、社会問題化することでしょう。 

いったん受け入れた場合でも、一定期限で切って返すと言っていますが、現実を知らなすぎます。 

たとえば4年間働けば、単純工もあたりまえですが熟練します。その頃には日本語もあるていどは出来るようになるでしょう。 

職場の側もこれだけ仕事を覚えて日本語ができるようになったような労働者を返したくはありません。 

その間に教育コストもかかっているし、労賃だけではなく、社会保障も負担しているのですから、なおさらです。 

その間に、恋人ができたらどうしますか。結婚したい、子供を作りたい、家庭を持ちたい、としたらどうしますか。 

今回の改正案でも「熟練したら」家族を呼べるのですから、そうなった場合、家族丸ごと帰れというつもりなのでしょうか。

シンガポールのように、妊娠したら強制送還できるような国なら、苦労しません。

外国人労働者に国が子供は生むな、恋をするな、家庭を持つなと言えないなら、初めから呼ばねばいいのです。

事実、前掲の労働政策機構のレポートによれば、フランスでは移民労働者は増えておらず、その家族が増加しているのがわかります。

「国籍取得者数は、2013年には5万2207人で、9万4573人であった2010年からは減っている。その一方で滞在ビザ発給数は2013年には251万4994人で、2009年以降、増加傾向にある。
また、入国理由別の人数を見ると、就労を前提としない「家族移動」(これはフランス人の家族、婚姻のための入国及びフランスに滞在する外国人の家族再統合を意味する)の入国者数が、就業を目的とする「経済的移動」の人数を著しく上回る」(前掲)

France_04労働政策機構レポート前掲 

更にこのレポートは移民家族の移動について、こう述べています。

「外国人受入れよる国内経済への貢献が低いとされる「家族移動」が多いという傾向は過去数十年続いており、このことが「社会的保護」だけを求めて移民は入国してくるという国民意識を反映しているともとれる」(前掲)

社会保障や保護を求めて流入する家族にも、内国人と同等の権利を保証せねばなりません。 

このように人権というのは、先進国の最も弱い脇腹なのです。

批判があるでしょうが、私は外国人労働者を受け入れること自体は時代の趨勢だと思っています。

これは私の農業現場を見ての偽らざる実感です。この流れは止められないでしょう。

仮に完全に止めてしまえば、必ずアンダーグラウンドで入ってきます。

ならば、移民に等しい外国人労働者が増えることによる社会問題や、安全保障まで目配りした中長期的制度構築をすべきでした。

この審議に時間をかけなかった拙速のツケは、必ず5年後、10年後に現れるでしょう。

 

 

 

 

 

2018年11月28日 (水)

北方領土交渉が膠着する根本原因は

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北方領土交渉はどなたかも言っておられましたが、結局、プーチン御大のキャラにつき当たってしまって、それが岩盤になっています。 

歴代の共産党書記長、そして今ならプーチンです。素朴におかしくはありませんか。 

確かに交渉は交渉当事者の人格に由来する属人的要素もあるにはありますが、こうまで前面にそれが出てくるとたまったもんじゃないぜ、と愚痴のひとつも言いたくもなります。 

私はそれは日露間で戦後処理が終わっていないからだと、何度か書いてきました。 

しかし、ここでちょっと待って下さいよ。日本はロシア(旧ソ連)とだけ戦争をしたのでしょうか。 

日本は連合国と戦争をして敗北したのであって、実はソ連とは戦争をしたのかどうなのかさえも疑わしい上に、仮にしたとしたらなおさらのこと、あくまで連合国との間で戦後処理がなされるべきでだからです。 

ところが70年以上も経過した今になって、ロシア一国とサシで国境線確定交渉をしているわけです。

なんせ二国間ですから仲介国もいずに、ロシアの都合と日本の都合でいっかな進みませんでした。

のために半世紀前にやっておくべき平和条約が、まだロシアとだけ締結できていないという異常事態になってしまったのはご存じのとおりです。 

骨折して半世紀放置したために、曲がったままになったようなものです。安倍氏がもう先送りできないというのは、そういう意味です。

戦後処理は、昨日見たドイツ最終規定条約のように終戦から何十年たっていようと、相手陣営の国家群とすべきです。 

ドイツの場合、東西に分裂国家となってしまったために、統一を前提とした1990年まで待たねばなりませんでした。 

しかし敗戦から46年たっていようと、連合国を構成した主要国(英米仏露)が領土の帰属や、外国軍隊の駐屯といったことを仕切り直ししたという点では、このドイツ最終規定条約もまた講和会議でした。 

これはヨーロッパにおける近代戦争のすべてが、国家陣営と国家陣営との間で戦われているからです。 

したがって、どちらが勝つにせよ負けるにせよ、その戦後処理は戦後にどういう勢力図となるのかに直結するために、講和会議のテーブルでシビアに論議されることになりました。 

古くはナポレオン戦争から、第1次大戦まで一貫してその形でした。これが国際的な戦後処理のルールです。 

300pxtreaty_of_versailles_oldphot_2ヴェルサイユ条約 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A7%E... 

ところが、第2次大戦だけは例外が起きてしまいました。なんと戦後処理の過程で勝者の側の国家連合のほうが分裂してしまったからです。 

冷戦の開始です。ここでねじれが生じます。その経過を振り返っておきます。 

旧ソ連の参戦自体は国際的には合法でした。

私たち日本からすれば、日ソ不可侵条約を一方的に破りやがってという恨みつらみはあっても、この参戦自体はヤルタ密約で決定されたものですから、国際的なルールに従っています。 

2ab95525e280e4bbf2b74b8746782348ヤルタ会談

「日米開戦当初からソ連に対日参戦を求めていた米国はヤルタで、わが国や中国国民政府に無断でソ連とヤルタ秘密協定(ヤルタ密約)を結び、南樺太を返還し、千島列島を引き渡すことを条件に、ソ連がドイツ降伏後、2カ月または3カ月後に対日参戦することを取り決めました。
また、わが国が持っていた大連、旅順、南満州鉄道の権益をソ連に与えました」(産経2017年2月5日)
https://www.sankei.com/premium/news/170205/prm1702050009-n2.html 

これをルール破りだというなら、その主犯のひとりはルーズベルトです。日本嫌いで有名なこの男の強い要請があって、ソ連は対日参戦をしたのです。 

もちろんロシア(旧ソ連)は舌なめずりをせんばかりに、この米国のオファーを受けたのはいうまでもありません。

「わが国の降伏文書調印式が行われた9月2日、スターリンは国内向けメッセージで「1904年の日露戦争で日本は南樺太を奪い、千島列島に地歩を固めた」「わが国民は日本が粉砕され、(日露戦争敗北という)汚点が一掃される日を待っていた」などと述べました」(産経前掲)

もちろん、南樺太の領有はスターリンが言うように日露戦争とは無関係です。  

1904年の日露戦争の29年も前の1875年に締結された樺太・千島交換条約で平和的にわが国の領土になっているからで、戦争で奪ったものではありません
南樺太譲渡は、日露戦争の講会議のポーツマス条約によります。この条約により、
ロシアは樺太の北緯50度以南の領土を永久に日本に譲渡する、ことになりました。

その意味では日露戦争の結果には違いありませんが、講和条約を経て領土化されたものであって、領土拡張を目的とした北方4島への侵攻とは別次元です。

Karafuto300x237出典不明

1945年7月26日、連合国は日本に降伏を勧告したポツダム宣言を出しますが、その8条に日本政府の主権が及ぶ範囲、つまり領土の範囲が書かれています。
ポツダム宣言 - Wikipedia

原文http://www.ndl.go.jp/constitution/e/etc/c06.html
外務省仮訳
http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j06.html

"The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.
「カイロ宣言の条項は、履行せられるべく、また日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並びに吾等の決定する諸小島に局限されるべし」 

ではさかのぼってこのカイロ宣言においては、日本の領土の戦後処理についてこう書いてあります。
カイロ宣言 - Wikipedia
対訳http://www.chukai.ne.jp/~masago/cairo.html

"They covet no gain for themselves and have no thought of territorial expansion"
「同盟国は、自国のためには利得も求めず、また領土拡張の念も有しない」

つまりポツダム宣言は、勝手に連合国の国々が火事場泥棒のように領土拡張をするな、とも言っているわけです。

しかし、ソ連は「自国のための利得を求め、領土拡張に専念した」からおかしくなりました。

そういえば少し前のコメントに、「あんな国が信用できるか」という声がありましたが、気持ちはわからないではありませんが、逆です。

信用できない国だからこそ、条約を結ばねばならないです。

信用できないロシアと平和条約ひとつない状態でいることのほうが、私にはよほど怖い。

それはさておき、ならば、なぜこういうことになったのかといえば、本来なされるべき講和会議が機能していなかったからです。

先ほど述べたように大戦直後に連合国が米ソ2陣営に分解してしまっために、講和会議が米国が主導する自由主義諸国とだけなされることになりました。 

Img16サンフランシスコ講和会議https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/g_sfjo...

本来はこの連合国のすべてが集まった講和会議で、ソ連に参戦を勧めた米国の立ち会いの下で、北方領土の帰属が論じられるべきでした。 

ところがソ連は、サンフランシスコ条約に署名することを拒んで、講和会議にも参加することすらしませんでした。 

米国は、自らがソ連の参戦を要請しておきながら、ポツダム宣言8項に違反したソ連の北方領土強奪を事実上黙認しました。(後ろめたいのか、米国は何度か北方領土は日本領であることは言明していますが)

とまれこれが、北方領土交渉がいっかな進まない根本原因です。

つまり、そもそも北方領土交渉は日露の二国間でやるべき議題ではないのです。

このように考えてくると、私たち日本は北方領土については共犯である米国にご登場願わねばならないと思います。

二国間でこれ以上、膠着状況が続くなら、日本版「ドイツ最終規定条約」を旧連合国にやれと、国際社会に訴えるべきでしょう。

 

2018年11月27日 (火)

北方領土に米軍が進駐することを拒否できる前例がある

18_011_2
北方領土交渉のネックふたつめについて考えていきましょう。 

それは北方領土を返せば、必ず米軍が北方領土に進駐してくるだろう、なぜなら、条約で「全土配備」は認めているからだ、という疑問でした。 

まずは、時事(11月23日)です。 

やや長いですが、米軍配備、すなわち日米安保条約が北方領土交渉のネックになっているという主張が整理されています。 

「日本政府関係者によると、ロシア側が譲らない条件としているのは、引き渡し後の2島に米軍基地を造らないという確約だ。(略)
日米安全保障条約上、米側は日本の同意を前提に、日本国内に米軍施設・区域を設置できる。ロシア側に「基地は置かない」と言うのは、北方領土が安保条約の例外になることも意味する。
沖縄県・尖閣諸島防衛では日本の施政下にあることが、米側に「尖閣は対日防衛義務の範囲」と表明させる根拠になっている。
尖閣で安保条約適用を求め、北方領土は例外扱いにすることには、米側が難色を示すのは必至だ。了承しても、例外であることを理由に有事の尖閣防衛から手を引くリスクもはらむ」

このロジックはプーチンが言い出したものです。

「プーチン氏がこだわっているとされるのは、外務省が冷戦下の73年に作成した秘密文書『日米地位協定の考え方』だ。これを特報した琉球新報の報道によると『「返還後の北方領土には(米軍の)施設・区域を設けない」との義務をソ連と約することは、安保条約・地位協定上問題がある』との趣旨が記されている」(朝日11月16日)

この朝日のネタ元の琉球新報報道とは、同社の元記者だった前泊博盛氏の『憲法より大事な地位協定入門』です。

この前泊氏の本は2013年に出版されていますから、憶測ですが、ロシア大使館あたりが買ってプーチンに教えたのかもしれません。

佐藤優氏もことあるごとに、前泊氏と同趣旨のことをしゃべっていましたが、これの元ネタも前泊氏のようです。 

要約すれば、こんな内容です。 

①外務省は国民に知らせない極秘文書を持っていて、その中に米軍は無条件に「全土配備」する権利を持っていると記されてある。だから、日本政府の了解を得れば、北方領土にも駐屯することが可能だ。 

②日本政府が拒否すれば、「安全保障条約の例外」を作る気かと米国に怒られ、そうなると、尖閣防衛にも「日米安保の例外」だといわれるかもしれない。 

③ロシアは防衛線の前線に米軍基地を置かれることは許さない。だから、北方領土は返らない。 

とまぁ、こんなリクツです。砕いて言えば、こうなります。 

「日ソ共同宣言に戻っても無意味だよ、だって安保があるじゃん。
あそこには米軍がどこにでも基地作れるって書いてあるのさ。
だから、安保条約がある限り返還なんかムリムリ。ロシアは北方領土を餌にして平和条約を先に結ばせようとしているだけで、アベはそれに乗せられているんだ」

 つまり、朝日や琉新からみれば、アベは米国従属の安保を大事にすれば、国民悲願の北方領土は返ってこない、北方領土返還で手柄をたてようとすると、今度は本尊の安保にヒビが入る、ざまぁみそ漬け、というところでしょうか。 

ところが安倍氏は、昨日もふれたように、この主張をあっさり退けてしまいます。

「首相周辺はこの文書を改めて分析し、『当時の外務省職員の個人的見解』と判断。ロシアとの間で『2島に米軍は置かない』と確認することは同条約上も可能と結論付け、首相や谷内氏ら複数のルートで日本側の考えを伝達した」(朝日前掲) 

2986744_2谷内正太郎NSC局長 スプートニク 

おそらく首相と谷内NSC局長は、当該文書を調査したのでしょう。 

これは前泊氏が明らかにしているように、「日米地位協定の考え方」という文書で、書いたのはロシア大使などをしていた丹波實氏です。 

この文書は前泊氏がいうような「秘密文書」という仰々しいものではなく、ただの内部マニュアルで、聞かれたらこう答えろという内容です。 

ですから安倍氏にいわせると、そんなことは外務省の内部資料であって政府の公式立場ではない。ただの「外務省職員の個人的見解」にすぎない、というわけです。 

では、この「秘密文書」は正しいことを言っているのでしょうか。

この文書を書いた外務省の人間は、外務官僚のくせにドイツの統合時の「ドイツ最終規定条約」第5条1項をご存じなかったとみえます。 

『NEWSを疑え!』第727号(2018年11月19日)で、小川和久氏はこう述べています。

「 同盟条約の適用地域の一部には米軍を配備・展開しないことを、米国と同盟国が旧ソ連・ロシアに保障した例として、ドイツ最終規定条約(東西ドイツ、米ソ英仏の6か国で締結)の下記の条項を紹介した。
ドイツは1990年10月3日の再統一と同時に、米国を含むNATOの北大西洋条約を全領土に適用される一方、旧東独地域では現在に至るまで米軍が活動せず、1994年まではロシア軍が駐留していた

ドイツ最終規定条約とは、ドイツ降伏、東西冷戦による分断を経て、ドイツ統一時にドイツ占領4カ国(米英露仏)と東西ドイツが結んだ、国境線などを確定した条約のことです。
ドイツ最終規定条約 - Wikipedia 

実はこの条文の中で、NATOは統一後のドイツ全土に対して適用される一方、米軍は旧東独地域には駐屯しないとされました。 

参考までに、ドイツ最終規定条約の当該部分全文を欄外に転載しました。特に北方領土との関係で重要なのはこの5条1項です。 

「5条(1) ドイツのこの地域には、外国軍、核兵器及び運搬手段は駐留も展開もしない」 

これは米軍のみならず、外国軍すべての「展開」にまでおよんだもので、いうまでもなく、ロシア(当時ソ連)が無用な警戒心を起こすことに配慮したものです。 

ちなみにこの枠組みを作ったのは、当時米国NSCソ連東欧部長(後に国務長官)のコンドリーザ・ライスです。 

Image3ブッシュ大統領(右端)とゴルバチョフ書記長の会談を準備中の コンドリーザ・ライス氏(中央、1990年9月9日、ヘルシンキ大統領宮殿 『NEWSを疑え!』第727号(2018年11月19日)より引用させていただきました。 

小川氏はライスが、"ermany Unified and Europe Transformed"(ドイツ統一と欧州の変革)という著述の中で、このドイツ最終規定条項の交渉過程を詳述しているのに、外務省の当該部局が知らないはずがない、と指摘しています。 

外務省はドイツ最終規定で、米軍基地の東ドイツ展開が拒否されたことを知りながら、北方領土交渉部局に知らせてなかったと思われます。 

それは北方領土交渉官のひとりだったはずの佐藤氏がまったくこの条約に言及せずに、前泊氏に引きづられて地位協定うんぬんの発言をしているのでわかります。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/35340

それにしてもこの人、ドイツ最終規定条約も知らないで、よく外務省情報主任分析官なんかしていたものです。

それはさおき、戦後処理の一環として行われた国境の変更交渉において、ドイツは旧東ドイツ領土への米軍の進駐を認めずに処理したという前例があるわけです。

とうぜん、わが国の戦後処理である北方領土交渉においても、これは重要な前例となりえるます。

このようにドイツ統合時の前例を見ればわかるように、北方領土への米軍進駐は拒否できるし、そうすべきです。

とうぜん、米国はこのドイツ最終規定条約を知っていますから、日本が拒否したからといって日米同盟が瓦解するわけでもなんでもないのです。

                                                  ~~~~~~~ 

●ドイツ最終規定条約
第4条(訳注・ソ連軍撤退の期限) (1)ドイツ連邦共和国、ドイツ民主共和国及びソ連の政府は、現在のドイツ民主共和国及びベルリンの領域におけるソ連軍駐留の条件及び期間並びに1994年末までに完了するこの軍隊の撤退の実施について、本条約第3条第2項におけるドイツ連邦共和国及びドイツ民主共和国の約束(訳注・統一後の軍縮)の実施と関連して、統一ドイツとソ連が条約で決着すると表明した。
 

(2)フランス、英国及び米国の政府はこの声明に留意する。 

第5条 (1)(訳注・ソ連軍撤退完了まで旧東独地域にはドイツ軍のうちNATO指揮下にない部隊だけが駐屯し、第三国の軍隊は駐留も活動もしない)  本条約第4条に合致する、現在のドイツ民主共和国及びベルリンの領域からのソ連軍の撤退が完了するまで、この地域には、ドイツの他の地域でドイツ軍が配属されている同盟構造に、統合されていない、ドイツの地域防衛部隊だけが駐屯する。この期間は本条第2項の規定によるほか、第三国の軍隊はこの地域に駐留せず、いかなる活動もしない。 

(2)(訳注・その間、米英仏軍はベルリンに残留する)  現在のドイツ民主共和国及びベルリンの領域にソ連軍が存在する間、フランス、英国及び米国の軍隊は、ドイツの要請があれば、統一ドイツ及び各国の政府の合意に基づいてベルリンに駐留を続ける。(後略) 

(3)(訳注・ソ連軍撤退後の旧東独地域には外国軍を配備しない)  現在のドイツ民主共和国及びベルリンの領域からのソ連軍撤退完了後は、ドイツの他の地域のように同盟構造に配属されたドイツ軍隊を、核兵器運搬手段を除いて、この地域に配備することができる。(訳注・核・非核両用兵器に関する規定を省略)ドイツのこの地域には、外国軍、核兵器及び運搬手段は駐留も展開もしない。

第6条  統一ドイツが同盟に属し、それに伴うあらゆる権利及び責任をもつ権利は、本条約に影響されない。 

※訳出 小川和久氏前掲による

2018年11月26日 (月)

北方領土交渉のネックはふたつ

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北方領土交渉のネックはなんでしょうか? 

それは2島返還か、はたまた4島返還か、という形而上的論争ではありません。 

いまさら4島一括返還を主張することは、徒にハードルを高くして、解決不可能な領域に送り込んでしまうことに等しいと思います。

私はこのような原理主義は、実は無為と同じだと考えています。

ちょうど9条2項改憲を主張する石破氏が、「野党も納得してから改憲論議を始める」と言っているようなもので、要はやらないと一緒のことです。

端的に言えば、戦争で失った領土は、それがいかに不当であろうと、道理を欠いていようと、戦争以外の方法では返って来ないということです。

国際紛争の解決方法としての戦争を憲法で放棄したわが国にはそれが不可能だから、戦争で奪われた領土を外交交渉で取り返すというとてつもない難事業をしているのです。

世界史的に見ても、ただ一例沖縄を除いては、戦争で失った領土を外交交渉で取り返した例はありません。

いかに例外的なことだったのかわかるのは、「平和的手段で領土を返還させた」ことを評価されて、佐藤栄作首相がノーベル平和賞を受賞したほどです。

さて冒頭の問いに戻りましょう。私は北方領土交渉のネックは二つあると思っています。

ひとつめは2島返還された場合、残り2島の主権と帰属問題をどうするのか。

いまひとつは返還された2島に、米軍が安保条約を根拠にして基地を置くか、あるいは拒否するのかどうか、の問題です。 

読売はこう書いています。

「プーチン氏は、引き渡した島への米軍の展開などを念頭に安全保障上の『懸念』を繰り返し示してきた。
首相は過去の首脳会談で『柔軟に対応する』と伝えているが、『返還された島を日米安全保障条約の適用除外とするのは困難』(外務省幹部)だ。
米軍基地を置かない『非軍事化』には、米側との協議も必要となる。3年で山積する課題を解決できるかどうかは不透明だ」」(読売11月17日)
 

読売が書いている外務省レベルの、「3年では困難」うんぬんは、官僚には伝統的に4島一括返還主義者が多いために、こう言っているにすぎません。 

そもそも彼らがもうちょっとましならば、もっと早く解決可能だったし、そのためのメニューも作っていたはずでした。

2002_3逮捕された佐藤氏。別人みたいに痩せていたなぁ。出典不明

ところが外務省は、現実に2島返還を鈴木宗男氏と一緒に現実化しようとした佐藤優氏を警察に売ることまでして、省外に叩き出してしまいます。
佐藤優 (作家) - Wikipedia

北方領土交渉を遅らせた原因のひとつが、外務省が北方領土問題を省益化してしまったためです。 

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 外務省https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/rss/hoppo/page4_0... 

ところがいまや、外務官僚に出番はありません。外交は官邸とNSCの専管案件になって久しいからです。

外交官僚に出来るのは、指示に従って会談場所と日時を設定するくらいの事務的作業にすぎません。 

今は首脳間の政治力で決着すべき、「時の時」なのです。 

2016年11月の日露首脳会談で安倍氏は、北方領土交渉は既に外務省案件ではないと言い切っています。この部分です。

「プーチン氏は、谷内正太郎・国家安全保障局長の発言を念頭に『君の側近が「島に米軍基地が置かれる可能性はある」と言ったそうだが、それでは交渉は終わる』と迫った。首相は『全くの誤解。これから交渉しよう』と応じた」(朝日9月16日)

北方領土交渉と沖縄返還は、領土交渉として似た部分があります。 

それは2島(歯舞・色丹)が返った後の、残り2島(択捉・国後)の主権と帰属をどうするかという部分についてです。 

これについては、佐藤優氏に答えてもらいましょう。

佐藤氏の知識のひけらかしには辟易しますし、多くの言説には首をかしげることのほうが多いのですが、北方領土交渉とロシア外交は彼のホームベースだけに的確です。 

「まず今年中に日ロ平和条約を締結し、歯舞群島と色丹島の主権は日本に、一方、国後島と択捉島の主権はロシアに帰属させる。
さらにこの平和条約に、「歯舞群島と色丹島の引き渡しに関する協定は、協議を継続した上で策定する」と定めるのではないでしょうか。
そうなれば、法的には歯舞群島と色丹島が日本領であることが確定し、領土の帰属に関する問題が解決することになります。
沖縄、奄美、小笠原の施政権は米国に残りましたが、1951年のサンフランシスコ平和条約に日本が署名したことと類比的に考えればいいでしょう」

https://www.nippon.com/ja/genre/politics/l00233/ 

つまりかつてサンフランシスコ条約でそうしたように、施政権と帰属を別けて考えるという方式です。

仮に北海道に近い2島に関しての主権は日本にあるとすれば、残りの2島はロシアに主権があるとします。

そして歯舞・色丹についての施政権は日本にあるが、国後・択捉についてはロシア側が持つとします。

ただしそれについては永久に認めるということではなく、平和条約下で協議を継続するということになります。

沖縄の復帰前の法的位置と一緒です。

施政権は当座は米国が持つが、潜在主権はあくまでも日本にある以上、将来的に全面的に返してもらい、今は争わないという含みです。

この「含み」をどのように条約に書き込むのか、あるいは秘密条項にしてしまうのか、それが外交の妙味というものかもしれません。

ちなみに私はこのような難しい外交案件に密約はつきものだと思っています。それまで否定してしまうと、まったく交渉が進まなくなってしまうからです。

いずれにしても゛この主権と施政権を分離させる方法が最も現実的だと思います。

ではふたつめの、米軍が安保条約で全土に基地を置く権利を有している安保条約はどう処理するのでしょうか。

これについてロシアは、「歯舞群島と色丹島を日本に引き渡しても、在日米軍が北方領土に駐留するような事態にはならないという言質を日本から取った」(佐藤前掲)と思われます。

こちらの安保条約と北方領土への米軍配備については長くなりますから、次回に続けます。

 

 

2018年11月25日 (日)

日曜写真館 冬に向かう湖

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2018年11月24日 (土)

大局を考えると、日露平和条約は必要だ

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北方領土のことを考えていると、必ず「日本対ロシア」という固定された構図にはまってしまいがちになります。 

これは沖縄の左翼陣営が、えてして「日本対沖縄」の視野から自由にならないことに似ています。 

北方領土交渉の場合、こうあるべきだという当為論に、やられた史観がついていますから、4島一括返還論から一歩も出られないことになります。 

それはそれで充分に理解出来ますし、間違ってはいないと思いますが、それだけでいいのですか、というのか私の考えです。 

では、もう少し広く視野をとってみましょう。 

韓国は、日韓請求権協定の一方的廃棄、慰安婦合意の廃棄、そして有事統制権移管という三つの政策によって、米国を接着剤とする米韓日安全保障体制から脱落しようとしています。

今の時点では「事実上」ですが、遠からず現実化することでしょう。 

Soc1810030025m1https://www.zakzak.co.jp/soc/news/181003/soc181003

 すると論理的には、行く末はひとつしかないことになります。韓国と北朝鮮による一国二制度の「高麗連邦共和国」の建国です。 

ムンジェインは、大統領の任期4年に限るとした現行法から、1回に限り再任可能(連続2期まで)とする「連任制」を盛り込んだ憲法改正案を出しています。
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20180322001500882 

するとムンは2026年までその地位にいる可能性が濃厚ですから、必ずその期間に「統一朝鮮」への道筋をつけるはずです。

民族がなにより大事なあの国民性なら、韓国民もその道を選ぶことでしょう。

問題は米国と中国が承認するかどうかですが、米国は内定していたビクター・チャからハリー・ハリスに駐韓大使に替えた時点で、韓国を見限っていますからありえます。 

米国は日米同盟をより堅牢かつ実用的に、より双務的にレベルアップすることで、対処しようとするでしょう。 

中国は在韓米軍なき赤化統一に反対するはずがありません。外交的勝利とすら思うことでしょう。

すると2030年代には私たち日本人は、38度線なき「高麗連邦共和国」を見ることになるかもしれません。 

高麗連邦が核を持つか持たないかは、今後の北の非核化の進展次第なのでなんともいえませんが、非核化に失敗した場合、核兵器を持った統一朝鮮が出現します。

0c134d4ca506c7c4c7427b055c005b03https://blog.goo.ne.jp/madakate00/e/2d1f47a37478925015331d65c5f7c1af

それにしてもこの時期、韓国が請求権問題、慰安婦合意などといった二国間関係を一方的に破壊したことは、逆説的にですが、いいことでした。

ムンがあえてこの時期を選んでやったのなら、正気を疑います。

日本などどうせ「大人の対応」をするに決まっているさ、と甘く見ていたのでしょうが、今ここで日本とことを構えていい時期ではありません。

生憎なことに、日本人は沸点は低いのですが、低くはないのですが、いったん怒るとかなりしつこいのです。※ふゆみさん。ありがとう。逆に書いちゃった。

朝日、毎日すら、今や韓国の取った愚行をおおっぴらには支持できないありさまです。

これによって我が国は、外交的に韓国を法的・道義的に非難する根拠を得ることができした。韓国政府の見境のない愚挙に感謝いたします。

今後、このままムン政権が統一に傾斜するならば、大いにこの名分を使わせていただきましょう。

また仮に統一された暁にも、かつて日韓基本条約に基づいて韓国に渡した「独立祝い金」と同等の援助資金を北に渡すかどうかは、その法的根拠そのものが韓国政府の暴挙によって破壊されてしまった以上、慎重に判断をさせていただくことになるかもしれません。

正恩さん、そして自称「徴用工」((実は募集工)の皆さん、あなた方に手渡されるべき補償金は、かつて全部韓国政府がひとり占めしたんですらね。そっちに請求してくださいね!

とまぁこんなことをしてみても、残念ながらうっぷん晴らしと遅滞効果しか望めませんが、やらないよりましでしょう。

いずれにせよ、38度線は対馬海峡にまで降りてきます。 

言う必要もないでしょうが、わが国に対して敵意をむきだしにする新国家の誕生です。 

さきほど、米中の意志と書きましたが、実は北朝鮮と地続きの沿海州・シベリアに巨大な領土を持つ国家がもうひとつあります。 

衰えたりともいえど世界2位の軍事大国・ロシアです。 

Img_5_mhttps://blogs.yahoo.co.jp/nemurohishidaidaiki/3466... 

ムンは就任前から、「統一朝鮮」とロシア領沿海州をつなぐ「北東アジア工業ベルト」の構想を持っていました。

「南北が統合されれば、北朝鮮と中国の東北部3省(遼寧省・吉林省・黒竜江省)、ロシアの沿海州、日本の西部を結ぶ全長5000キロという世界最大の産業・経済のベルト地帯が誕生するものとみられている。
韓半島(朝鮮半島)を中心とするこの「北東ベルト地帯」は資本・技術・資源・労働力の全てがそろっている上、ユーラシア大陸鉄道や北極航路の出発点というメリットもあり、北東アジアの物流・産業の中核となるものと期待されている」(朝鮮日報2014年2月1日)

2014020100443_0http://www.asyura2.com/12/asia14/msg/708.html

今の時点では、「世界一の工業ベルト」などと吹かれると失笑しますが、ムンが統一朝鮮を前提にして沿海州にまで伸びる経済圏構想を持っていて、それを訪朝時に正恩に直接提案していることは間違いありません。
(正恩は関心を示さなかったという情報もありますが)
 

そして明らかにはされていませんが、ムンは統一朝鮮が中国、ロシアと安全保障条約を結ぶこともワンセットで考えているはずです。 

すると日本の北東には、対馬海峡ひとつ隔てて統一朝鮮、その西に中国、そして東にロシアという敵対国家群と対峙することになります。 

日本の国益は、この日本を締めつけてくる3国連合の環を完成させないことです。 

統一朝鮮との二国間関係は、こちらから敵対する必要はありませんから、大使を交換し、祝賀電報のひとつも打ってやればいいだけのことで、それ以上でも以下でもありません。 

統一朝鮮にとって、中国寄りの姿勢を明らかにしない限り、中国が統一を容認することはありえませんから、中国と統一朝鮮は軍事同盟関係に入る可能性があります。 

さてここで私が注意を喚起したいのは、東北アジアの隠れた軍事大国ロシアの存在です。

ロシアをこの中朝同盟から遮断し、最悪でもロシアに好意的中立の立場をとらせねばなりません。 

現状のロシアは、中露の準同盟関係に引きずられる可能性が残ります。

そのためには早急に日露関係の障害となっている戦後処理を終わらせ、平和条約を締結せねばなりません。

これを米国がロシアへの接近ととることもありえますが、あくまでも対中、対統一朝鮮を見据えてのことだと理解してもらわねばなりません。

親露的傾斜があるトランプなら理解するはずです。 

私はこの緊迫する東アジア情勢下では、北方領土交渉に一定の区切りをつけ、日露平和条約の締結を急ぐべきだと思います。

■改題しました。

 

 

2018年11月23日 (金)

日露首脳会談合意 この時期を逃したら未来永劫、小島ひとつ返ってこない

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やや旧聞となってしまいましたが、日露首脳会談が開かれました。 

外務省のプレスリリースです。味もそっけもありませんが、メディア報道は雑味が多いのでこれを選びました。 

「平成30年11月14日
2 平和条約締結問題北方四島における共同経済活動について,10月初めに「ビジネス・ミッション」が実施されたことを歓迎し,首脳間で作業の進捗を確認した上で,双方の法的立場を害さない形でプロジェクトを早期に実施するべく,更に作業を進めることで一致しました。
 元島民の方々のための人道的措置について,安倍総理から,より一層の信頼醸成に向けて,協力を更に進展させることを引き続き働きかけました。
 テタテ会談の結果として,「1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる。そのことをプーチン大統領と合意した」ことが発表されました」

日露首脳会談 | 外務省 - Ministry of Foreign Affairs of Japan

面白い展開となってきました。要点はひとつです。 

「1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる。そのことをプーチン大統領と合意した」、つまり1956年の日ソ共同宣言に日露が戻るということです。 

Photo日ソ共同宣言 出典不明 

日ソ共同宣言を押えておきます。肝は9項後段です。
日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言

「9 日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。 
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする

この日ソ共同宣言は戦後の日ソ関係の出発点で、これによりソ連と外交関係を回復しました。 

そこには、日本の国連加盟支持、通商関係の回復、漁業協力と並んで、互いの戦争の結果による請求権の放棄などが印されています。
日ソ共同宣言 - Wikipedia 

ただし留意していただきたいのは、あくまでも「共同宣言」はあくまでも「宣言」に過ぎず、本格的な戦後処理である平和条約はまだだからね、という意味です。 

本来はすっきりと国境を確定させてから平和条約を締結するのが筋ですが、この部分は「歯舞群島、色丹の2島の引き渡し」だけが合意されただけでした。 

ここが戦後だらだらと半世紀もかけて日ソ、やがてソ連が崩壊して後継国家となったロシアとも延々あーでもない、こーでもないとやってきたねじれの原点です。 

ここまで引っ張ってしまった原因は、私は日本側にあると思っています。

平和条約をこの時点、つまり1956年段階で締結すればよかったのです。 

ソ連は2島返還で手を打とうといっていたこの時期を除いて北方領土の返還可能性はゼロでした。 

理解の前提として、ロシアには「国境」という概念がないことを知る必要があります。 

国境は、固定されたラインではなく、中国の新疆の「疆」と一緒で、国境とは国家の衰退と共に伸び縮みするゴム紐のようなものなのです。 

戦争で勝てば容赦なく奪い、負ければ失うから、また奪還してやると思う、この繰り返しです。 

実に古代的な国境観ですが、ある意味分かりやすいともいえます。戦争で奪ったのだから、返して欲しければ戦争で取り返しに来い、ということです。 

このロシアの伸び縮み自由の領土観は、先のクリミア侵攻においてもいかんなく発揮されました。 

この国境観は、四方を海に囲まれて国境概念が世界有数に明確な我が民族と大違いですから、彼ら相手に日本人的筋論は通じないのです。 

というわけで、日本は一貫して4島返還筋論に立ったために、この日ソ共同宣言9項後段の2島返還部分をゴミ箱に放りこんでしまいました。

当時の冷戦下では、将来的に返して貰えるアテが皆無だったにもかかわらず、なんともったいないことを。 

Photo_2東京宣言 出典不明 

この不毛な半世紀の間で、あと唯一北方領土の奪還の芽があったのは、1993年エリツイン大統領訪日時の「東京宣言」の時期くらいでした。 

この時、エリツィンは「日ソ共同宣言は有効である」と言います。 

絶好の好機じゃないですか。この時期、ソ連の崩壊でロシア国内は大混乱、マフィアが横行し、国庫は空っぽ、軍にも給料が払えず、ウラジオストック軍港では電気を停められて沈んだ原潜まで出る騒ぎでした。

経済、社会が崩壊して国として態をなしていないという、日本から見れば千載一遇の好機到来だったのです。 

このソ連崩壊直後こそ、いわば北方領土を買い叩く、天が与え賜うた1世紀に1度あるかないかの大チャンスだったのです。 

ところが、日本は百年一日の如くの「四島全面返還論」を唱えて、この絶好の機会を自ら棄ててしまいます。バカか、と思います。 

私はこれでもう永久に北方領土は返らないと諦めました。これでは日本はオール・オア・ナッシングと言っているのも同様です。なんと生硬な!

その結果、日本側がお経のように「四島全面返還」を言い続ける間に、ロシアは原油輸出で盛り返し、強大な軍事力を復活させてしまいました。 

言ってみれば、四島全面返還論は沖縄の反基地派が叫ぶ「全基地撤去」論と同じようなものです。 

双方ともそう言われるとお嫌でしょうが、全面返還できるかどうか相手を見て言え、それが可能な情勢かどうか、国際情勢を見据えてから言え、ということです。 

沖縄の米軍基地を現時点で米国が放棄するわけがないのと同じくらいに、北方4島をロシアが返す状況にはないのです。

原則論は耳に快いのですが、相手に通じない筋論はただの観念論にすぎません。 

とまれ、東京宣言の時期には、ロシアは真剣に2島を返してもいいと思っていました。

そして経済協力と引き換えに、そこに「4島の主権は日本にある」と書き込むことも可能なような「足元を見る」ことができる力関係でした。

領土問題は、軍隊と住民で実効支配している者が勝ちです。竹島と同じです。 

竹島は韓国が軍事力で支配し、公的施設を作っているから面倒なのです。

韓国が頑として返す意志がない以上、日本としては戦争をして奪還するしかないわけですが、「国際紛争を解決する方法としての戦争」を放棄してしまった我が国には手も足も出ません。

尖閣も同根の9条的外交体質によって、公務員のひとりもおかないという曖昧さです。

あれでは国際社会に、尖閣諸島を日本が実効支配しているとは見なされないでしょう。

本題に戻ります。それはさておき、現状で4島はロシアが中韓の資本を導入して経済開発を進め、昨今では4島に移住する者には高給を払って、そのうえ住宅も与えるという優遇してまでも開発を進めています。

強力な軍隊も駐屯し、軍事演習すら行っています。

つまり 泣いても笑っても、北方4島は完全にロシアの領土と化しているのです。

もう既にロシアにとっては「神聖な領土」そのものであって、彼らから見れば4島返還とは「領土の割譲」以外のなにものでもありません。 

さて次に日ソ共同宣言が再浮上したのは、2000年のプーチン訪日時の「56年宣言(日ソ共同宣言)は有効であると考える」という発言でした。  

翌2001年には、改めて正式に「イルクーツク声明」において日ソ共同宣言の法的有効性が文書で確認されています。
イルクーツク声明  

そして3度目の正直が、今回の日ソ首脳会談ということになります。 

私はこの機を逃がしたら未来永劫、北方領土は小島ひとつ返ってこないと断言してしまいましょう。

Kitano20190912650x401https://www.mag2.com/p/news/370519

たしかにプーチンは、歯舞群島と色丹島についてもこんな馬鹿なことを言っているのは事実です。

「日本に引き渡された後の2島に日露どちらの主権が及ぶかは共同宣言に書かれていない。今後の交渉次第だ」

なにをトボけているのでしょうか、このおっさん。

これでは2島を「引き渡した」後もロシアの主権が残るということになり、二重主権ということになります。そのような「どこの国でもない」ような地域はありえません。

これでは戦後処理としての平和条約に必須の国境線の確定ができないわけですから、平和条約も結べないことになります。

日本にとって、最低で2島返還、そして残り2島については潜在的主権が日本にあることの確認と協議の続行、これが最低条件です。ロシアが呑めなければ、この話はチャラです。

これがいつもどおりのロシア流戦略的ハードル上げ(←吹っ掛け)なのか、自称ロシア通が言うように国内の愛国主義者たちへのすり寄りなのかなんぞ知ったことではありません。

プーチンのクリミア併合は、1991年のソ連崩壊以降初めての「領土拡張」でしたから、それで上がった支持率を、今回の「領土割譲」で失うことは、痛手でしょう。

だからなんなのです。

それはしょせん、ロシアの国内問題でしかありません。そんなことはプーチンの政治力量で解決しなさい。

日本もそんなことを言い出せば、安倍氏の支持層の大半は一括返還支持なのですから、互いに似たようなものなのです。

互いに強力な保守安定政権だからこそ、自分の支持層を説得できるのではありませんか。

これが1年たたずして政権交代するような脆弱な政権ならば、話にもなりません。このご両人だからできるのです。

ならばどちらが差し迫って困っているのか、我慢較べをしましょうか。

60年間返ってこなかったが故に、奇妙な諦観が支配する日本か、それとも青息吐息の経済を抱えて、今、カネが欲しいロシアか、どちらなのかです。

ロシアは今、クリミア侵攻による自業自得の経済制裁と、ひと頃の原油安で苦しんでいます。

えげつない言い方ですが、今こそ「足元を見る」いい機会の再度の到来なのです。 

おっと、今日は歴史経過の説明だけで終わってしまいました。次回に続けます。 

 

 

 

2018年11月22日 (木)

ウィグルの核実験 まさに悪魔の所業

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中国がウィグルに加えた悪魔の所業のひとつに、核実験があります。 

日本ウィグル協会は、「東トルキスタンで行われた核実験について」(2013年5月11日)という記事をこのように語り始めています。
東トルキスタンで行われた核実験について | 日本ウイグル協会

「日本は最初の被曝国です。しかし唯一の被曝国ではありません、また最大の被曝国でもありません。
中国は、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)で核実験を行い、周辺住民への甚大な被曝と環境汚染とがもたらされています」(前掲)

中国が新疆ウィグル自治区の楼蘭付近にあるロプノールで核実験を開始したのは、1964年のことでした。 

Photo

日本ウィグル協会前掲 

以後1996年まで、実に45回、総爆発出力22メガトン(広島原爆の約1370 発分)の核実験をしています。
核実験の一覧 - Wikipedia 

うち、放射線災害として最も危険な地表核爆発を含む大気圏実験を、少なくとも1980年までに21回実施しました 

簡単に地上核実験を説明しておきます。
核実験 - Wikipedia 

Photo_2核実験 - Wikipedia

●核実験の種類
①.大気圏内核実験
②地下核実験
③大気圏外核実験
④水中核実験。

すべての方法は、環境に悪影響を及ぼしますが、もっとも凶悪な影響を与えるのがこの地上核実験です。 

方法は、航空機からの投下などがありますが、もっとも原始的な方法としては地上にやぐらを建ててそこで爆発させる方法があります。これが地表核実験です。 

地下を掘ったりする手間が省けてコスト安ですし、効果を直接に観測できますが、核物質が混ざった地表の土砂を大量の放射性降下物として周囲にばら撒きます。 

地表の砂礫が核物質と混ざり合って高空に達して、冷やされて降下するために、核被害の範囲は広大、かつ深刻なものになります。 

34日本ウィグル協会前掲

日本人は直近では福島事故を思い出すでしょうが、あの時放射性降下(フォールアウト」した核種はセシウム134というおとなしいものでしたので、むしろウラン235・238が「黒い雨」として降った広島の被爆と同じだと思って下さい。
 

中国はこの安易な地表核実験の常習者でした。 

Png2日本ウィグル協会HPhttp://uyghur-j.org/japan/2013/05/%E6%9D%B1%E3%83%... 

上図をみると、中国が桁違いに地表核実験を中心にしていたことがわかります。 

しかも米国は、太平洋上の無人の孤島であるビキニ環礁、エニウェトック環礁であり、ソ連は北極海ノバヤゼムリャ島というこれも孤島でした。 

ところがひとり中国のみは、人工稠密地域の周辺で地表核実験を実施します。

下の地図をみると、ロプノール核実験場の近辺にはコルラやクチャなど大きな町も多く、ちいさな集落も点在しています。 

Photo_4

ちなみに1980年4月から放映されたNHK大型企画『日中共同制作シルクロード 絲綢之路』は、楼蘭を日本人にロマンチックに伝えました。

もちろん楼蘭が核実験場であることなど、おくびにも出さない美化されつくした内容でした。

この楼蘭付近はまさにロプノール核実験場地域で、事実放映開始から和すか半年後には核実験が実施されています。

このNHK番組をきっかけに起きたシルクロード・ブームが起きて、多くの日本人観光客がなにも知らないまま楼蘭を訪れています。

NHKはこの番組で日中友好を謳歌したのみならず、稼働中の核実験場に観光を誘致したことになります。罪深いことです。

当時の新疆ウイグル地区の平均人口密度の推定値は6.6~8.3人/平方キロメートルでした。

「核実験の中でも「地表核爆発」は、地表物質(砂礫など)と混合した核分裂生成核種が大量の砂塵となって、周辺および風下へ降下するため、空中核爆発と比べて核災害の範囲が大きくなります。このような危険な実験を、中国政府はウイグル人などの居住区で行ってきた」(前掲) 

 高田純札幌医大教授によれば、健康影響のリスクが高まる短期および長期の核ハザードが心配される地表の推定面積は、日本国土の78パーセントに相当する30万平方キロメートルに及ぶとされています。

1981年まで継続的に降下した大量の核の粉塵によって、胎児に影響を与え、奇形の発生や、若い世代の白血病や癌の発生を引き起こすなど現地ウィグル人住民への大きな健康被害が多数発生しました。

この核爆発を目撃した人さえいます。

「その老人は「自分は神を見たことがある」といった。それは太陽の100倍もの明るさだった。そして地面が大きく揺れて、凄まじい嵐になったという。彼は半身ケロイドとなった。軍人が彼を病院に連れて行き検査をした。そして彼の羊を百頭以上の羊を全て買い取ったという。老人は、それから2年後になくなった。」と話しました」
( シルクロードにおける中国の核実験災害と日本の役割)

http://www.youtube.com/watch?v=9hdv2pDOmMs&feature=fvwrel

5日本ウィグル協会前掲

ウイグル人医師のアニワル・トフティ氏は調査結果をこのように公表しています。

「アニワル氏は外科医としてウルムチの病院に勤務していたときに中国本土に住む漢人と比べてウイグル人の癌発生率が高いことに気付き2年間の調査でこれが核実験と関連があることを確信した。
1998年にアニワル氏はチャンネル4の取材班として極秘に東トルキスタンの村々を訪問し、被曝によると思われる人々の健康調査を行った。
核実験は中国本土に影響が少なくなるよう、東から西に風が吹くときを選んで行われた。このため、ロプノールから西に向けて核生成物質が大量に降下したと考えられる。実際に、口唇口蓋裂ばかり、あるいは大脳未発達の赤ちゃんばかりが生まれる村もあったという。
ウイグル人の癌の発生率は70年代から急増、1990年代以降には中国全国の発病率に比べ30%以上高い数値を示している。中国政府は核実験の被害を公表せず、現地調査も許可しないため、40年以上に渡って被曝者たちは放置されてきている」
(1998 年7・8月英国チャンネル4"Death on the Sik road"より)
https://www.youtube.com/watch?v=2lG9JfUVN5I

また同番組で現地の医師たちの証言を、覆面を前提にしてこう伝えています。

「化学療法の必要がある患者が多い。とにかく多いのです。
患者の90%が血液の癌かリンパ球の癌です。基本的には新疆のいたるところで癌がみられます。
急に癌が増えだしたのは、この20年ほどで、特に南部に目立ちます。
12才以下の小児の患者が多く、肺癌や肝臓癌ですね。この年齢までの子供たちにはその両方の癌を認めています。
この極秘文書(中国医学会で、医師達の証言内容の信憑性も確認できた。シルクロードの癌の中で、最も急増しているのは、悪性リンパ腫、肺癌、白血病であった」)同上)

この「秘密文書」とは中国医学会の非公開文書ですが、そこにはこうあります。

「1970年代初期から、実験場付近のシルクロードの町の癌の発生率は、中国全土の平均発生率より30%も高くなった。1976年以来、核爆弾の巨大化で、放射線量が増大した影響のようだ」(同上)

高田氏の推定で、核実験によって亡くなられたウィグル人の数は約19万人とされています。

未確認の中国共産党の内部極秘資料によるとさらに深刻で、75万人の死者が出たといいます。 

しかし、中国共産党政府は核実験のことを公開しない上に、核実験による被害の事実を極秘として隠蔽したのです。

しかも核実験を周辺住民を避難させるどころか、なんと事前通告もしないという徹底した非道ぶりです。

付近の住民は事前も事後もなにひとつ知らされず、空中から長い時間をかけて降り注ぐ大量の放射能の粉塵と、放射能汚染された地下水で生活をすることを強いられたのです。 

かつて米国のネバタ核実験で生まれた痛ましいアトミック・ソルジャーたちは、裁判で「私たち は原爆の人体実験に使われた」と訴えました。

ならばウイグル民族は、まさに数十万人単位で「原爆の人体実験」に供せられたのです。

こういう歴史が中国政府にあるからこそ、今の「再教育施設」があり、「臓器狩り」が生まれたのです。 

なお、中国はチベット地域においてもチベット側の合意をととらず、1995年7月に海北チベット族自治州のココノール湖附近に20万平方メートル核廃棄物処理場と、長距離核ミサイル基地を作っています。 

中国政府にとって、ウィグル人やチベット人の命などは虫けら以下だといわれても仕方がないでしょう。  

昨日と同じ言葉で締めくくることにします。

これはまさしく言葉の正しい意味で、悪魔の所業です。

 

 

 

2018年11月21日 (水)

オンデマンド殺人としての「臓器狩り」

1811_012

移植手術は、グロテスクな言い方で恐縮ですが、いわば「生もの」です。 

日本では、仮にドナー登録をした人ですら心配停止だけでは不十分で、さらには脳死判定があって、初めて移植手術を行うことが可能となります。 

ドナー登録されていても、脳死判定があって、しかもなおかつ、求められる血液型と細胞の組織型の同時一致がなければ、移植手術は可能となりません。 

その一致の可能性は、血縁者以外ではわずかに6.5%にすぎません。 

ですから、約8000万人のドナー登録を抱えるアメリカですら、長期間待たされるのは常識であって、その間に病状が悪化するケースもしばしばあります。 

ましてや、法整備が遅れた日本ではドナー登録が100万人あたり0.7人にすぎないために、国内での臓器移植は絶望的です。 

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https://www.sankei.com/life/news/171016/lif1710160 

これは世界で有数のドナー登録を持つ米国においても同じで、待機日数は1300日を超えています。 

「アメリカでは年間約2万5000件も行われる臓器移植手術。それに対し、日本では年間300件程度にとどまっており、移植の待機中に亡くなった人は6518人(1995年〜2018年7月31日現在、臓器移植ネットワーク発足以来の登録者)に上っている」
(ハフィントンポスト2018年8月31日)

https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/31/organ-transplantation-japan_a_23513456/ 

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上のグラフは、今日大変に参考にさせていただいた「SMGネットワーク(中国における臓器移植を考える会)」様のウェブサイトから引用させていただきました。ありがとうございます。
http://smgnet.org/china-organ-transplant/ 

あまりに待機時間が長く、事実上国内での移植手術ができないようなわが国の問題はそれはそれとしてありますが、一方異様に短い国も存在します。 

それは中国です。中国は移植件数も世界で群を抜いて多く、2009年には肝移植だけで2970件を記録しました。

ルガーは中国の移植手術数をこう見ています。

「中国国内に169軒もの移植認定病院があることから計算して、中国での臓器移植は年間6~10万件行われているという。
中国政府の公式発表では、臓器移植の年間件数は1万件とされており、大きく異なる」(『Bloody Harvest/ The Slauter:最終報告書』)

臓器移植回数が6万から10万という途方もない数に登るのにもかかわらず、平均待機期間はわずか14日間から長くて60日間にすぎません。 

今年10月8日、BBCは『誰を信じるべきか?中国の臓器移植』(Who to Believe? China’s Organ Transplants)と題する番組を放送しました。 

この番組で記者は、移植をもとめる人物に扮して病院に問い合わせたところ、待機時間はわずか2時間だったそうです。 

Index_139https://www.youtube.com/watch?v=IsOGUsp7Fn0

 さて、ここで一回立ち止まって下さい。おかしくはありませんか。どうしてこんなことが可能になるのでしょうか? 

中国のドナー登録者は、前のグラフにあるように100万人あたりわずか2.0人です。世界でも少ない国に属します。 

このような国が、なぜ世界最大の臓器移植国になれるのでしょうか。しかも待機時間は他国に較べてなきに等しいのです。 

この理由は、キルガー報告書が実施した中国の病院への覆面を条件としたアンケートでもあきらかになりました。 

中国の病院は、そもそもドナー登録制度とは無関係に移植手術をしているからです。 

移植手術は適合できる臓器をみつけるためには、膨大な生体データベースを必要とします。

このような生体データベースを提供するためには、大規模なDNA検査の生体データバンクがなければなりません。 

百人、2百人分ならいざしらず、年間数万件の移植手術を恒常的に可能にするにはその数百倍のデータバンクが必要です。 

それを可能するには、マスで逮捕・監禁するか、ひとつの地域丸ごとの大規模検査が必要です。  

中国はそれをしていました。かつては囚人でしたが、それは2000年以降は法輪功であり、そしてウィグル族でした。

「昨年12月に集計された国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の調査によれば、収集されたウイグル人の生体データは約1900万人にも及ぶ。
またウイグル民族のみならず、チベットその他少数民族のなかの独立派、民主化勢力などの反体制派、その他拘束された法輪功信徒やキリスト教徒など、中国共産党の方針に従順でないと看做されたコミュニティーに属する人々に関し、既に総数4000万人に及ぶ個人データベースが構築されてもいる」(SMGネットワーク前掲)

まずそれは法輪功への弾圧から始まりました。

法輪功は「伝統的な健康法である気功を仏教や道教に取り入れた団体です。

1999年4月25日、法輪功は宗教弾圧に抗議して中南海を包囲する1万人デモをしました。

官製のデモ以外許可されないこの国では、権力者の顔色なからしめるような「反乱」でした。

彼等は、穏健なこの団体の背後に、黄巾の乱や義和団を見たのでしょう。

江沢民は1997年7月、全治安機関に対して、法輪功の「名誉を毀損し、財を奪い、個体を消滅せよ!」という最大級の掃討指令を出します。 

Photohttp://www.epochtimes.com/b5/8/4/26/n2095376.htm

全国規模での令状によらない逮捕、裁判によらない監禁が開始され、監獄は法輪功の関係者で埋めつくされるようになります。 

その数は数万単位だと言われています。なんらかの犯罪を冒したから逮捕・拘禁されるのではなく、法輪功であること自体が「犯罪」と見なされたのです。

この中国共産党の迫害により死亡した法輪功拘束者数は3397人に達し、2003年の時点で投獄数は数万人に及ぶとされています。

また、2002年末までに約500人もの修行者が収容中に死亡したとされています。
法輪功 - Wikipedia
 
※数字に関しては諸説あります。中国当局は否定しています。

法輪功弾圧事件は、現代中国の人権状況を知る上で不可欠な事件ですが、今回は別の機会に譲ります。

さて、この弾圧が始まった2000年を境にして、なぜか臓器移植件数は急増していくことになります。 

6マタス氏講演会資料による  

2006年3月17日、闇の中に沈んだかに見えた法輪功拘束者たちの状況が伝えられました。 

「アニー」と名乗る蘇家屯病院職員の告発でした。彼女の夫はこの病院の執刀医であり、2000余りもの手術を実際に経験していました。 

デービッド・キルガーは、この女性と直接会って長時間のインタビューをしています。 

「キルガー:手術される人たちは、生きていましたか。それとも死んでいましたか?
アニー:通常、そういった法輪修練者たちは心臓麻痺が起こるような薬品を注射されていました。そして手術室に運ばれ、臓器を摘出されます。注射のせいで心臓は止まっていますが脳はまだ機能しています。
キルガー:あなたの元夫は角膜を摘出した。手術の後、角膜を取られた人たちはどうなったのでしょう?
アニー:他の手術室に運ばれていきました。心臓、肝臓、腎臓などを摘出するためです。夫はある手術で他の医師と一緒になったときに、彼らが法輪功の修練者だということを知ったそうです。それから、彼らが生きたまま臓器を摘出されるということや、角膜だけでなく他の臓器も取られるということも、同じ時に知りました」
(SMGネットワーク前掲)

キルガーはこう述べています。

たとえ臓器移植の件数が年間5万件だったとしても、1日に165人が殺されていることになります。
臓器提供者の多くは、"無実の囚人"である法輪功の学習者です。法輪功の学習者は、強制収容所で1日16時間働かされた上、臓器検査を受けさせられます。臓器を移植できる状態か、調べるためです」(SMG発足集会)

またニューヨーク市立大の生命倫理学者であるアーサー・カブラン博士はこのように語っています。

「中国で起きていることは、決してただの臓器移植ではない。ある患者がある時にある臓器が必要な場合、たまたま処刑される死刑囚を頼みの綱にするのは、当然不十分だ。
刑務所は目的を持って選んでいる。囚人の健康状態、血液型、細胞組織形態などを精査し、適する臓器提供者を見つけては、旅行者の滞在期間中に刑を執行する。
これはすなわち、需要のために人を殺す、オンデマンド殺人だ」
(『国家による臓器狩り』)

今日は報告書を書いたデービット・キルガーの言葉で結びます。

「人類はこれまでにもさまざまあ悪行を重ねてきたが、ここまで邪悪な行為は過去に例がない」 

まことにそのとおりです。まさに悪魔の所業です。

 

2018年11月20日 (火)

国家ぐるみの臓器売買

1811_014
ウィグルにおける臓器移植疑惑は、現状では傍証を積み上げている段階です。 

中国は世界でもっとも多くの臓器移植をしている国で、外国から移植ツーリストさえ受け入れ国家ぐるみの商売にしています。 

従来、中国は死刑囚から臓器を移植してきましたが、2014年にこれを禁止しています。 

「中国は、刑執行後の死刑囚の臓器を移植に利用する慣習を中止する方針を表明した。死刑囚の臓器利用は人権団体から長い間批判されてきた」
(ウォールストリートジャーナル2014 年 12 月 5 日)

https://jp.wsj.com/articles/SB11683622598075354008404580318430324313648 

これは2014年11月のカナダ下院外交委員会中国政府非難決議、2016年6月13日の米下院は343号決議案、そして2016年7月27日の欧州議会主席による48号書面声明などで、法輪功拘束者からの強制的臓器摘出に対して、国際世論の強い批判が巻き起こったからです。 

一方、カナダ政府アジア太平洋担当大臣であったデービッド・キルガー氏とデービッド・マタス氏は、2006年5月、中国で法輪功学習者を対象とした臓器狩りへの調査協力の依頼を受け調査を開始しました。 

Photo_2デービッド・キルガーとデービッド・マタス

現在もっとも信頼できる資料はこの両名によるもので、今回はこの報告書を参考にいたしました。 

※キルガー報告書
UPDATED REPORT INTO ALLEGATIONS OF ORGAN HARVESTING OF
FALUN GONG PRACTITIONERS IN CHINA (2007).

AN UPDATE TO ‘BLOODY HARVEST’ AND ‘THE SLAUGHTER’
(JUNE 23, 2016)
 
※『中国臓器狩り』キルガー・マタス
https://bookmeter.com/books/7874566

キルガー自身による報告書の説明(和訳)は下記から見ることができます。

http://smgnet.org/2018-1-23-kilgour/
 

なお本日は、法輪功の広報サイト「大紀元」をソースとしています。

本来、ひとつのメディア、しかも宗教団体系のそれに依拠することはバイアスがかかる危険があります。

しかし今回は「臓器狩り」という国家の裏の顔を暴露したという性格上、その被害者である法輪功の情報を貴重だと判断しました。

さて中国において、臓器移植の最大供給源は、主に人民解放軍系の病院でした。

それは軍が政府取り締まり当局の管轄外にいるためで、この軍病院と監獄の公安関係者が絡んで移植犯罪に手を染めていました。 

監獄の公安が死刑囚の臓器を切り取り、直ちに軍病院に移送して移植手術をするという手筈です。 

この臓器移植は軍病院の大きな収入源となっていました。 

3

マタス氏講演会資料による 

それは下の価格票をみると、もっとも安い腎臓で620万、肺や心臓などでは1700万です。 

これは需給関係を反映するので、おそらく今はこんなていどでは済まないでしょう。 

しかし中国以外では簡単にドナーが見つからないので、べらぼうな金額の移植ツアーに参加してでも、中国に押しかけたのです。 

8同上 

ところが、表向き2014年以降の法改正で、囚人から臓器移植できなくなったわけです。 

では、供給源を断たれて、移植手術が下火になったのでしょうか? 

実はすでに2014年以前から死刑囚の数は減少傾向にあり、囚人を安定供給源とすることが難しくなっていたのです。 

Photo同上 

では、死刑囚の減少によって移植手術の件数が減ったのかといえば、これが違うのです。 

5同上

ご覧のとおり、2004年2219件から05年は2970件と、むしろ増加傾向にあります。 

6同上 

ここでありえるのが、日本や諸外国のように国内のドナーがその差を埋めたという可能性です。 

ところがこれも否定されました。

「上海市では昨年、当局は、ドナー登録数が200人に達したと報じられた。しかし、上海仁済病院は同年800件の肝移植を行ったことが、昨年12月29日付の中国の医学雑誌『医学界』の報道で分かった。しかも、同市では認定を受けた11施設が臓器移植を実施していた」(大紀元 2017年12月15日 )
https://www.epochtimes.jp/2017/12/30173.html

中国国内でドナー登録は少なく、実際の臓器移植数が登録者数をはるかに上回っています。 

マタス氏の共同調査者であるキンガー氏はこう語っています。

「臓器狩りは産業規模で行われており、中国側の言い分は口先だけで、移植件数は全く減っていません。
偏見のない方なら、数が増え続けていることを受け入れられることと思います」(大紀元2016年08月27日)
https://www.epochtimes.jp/2016/08/26063.html

つまり臓器の出所には、別の巨大ドナーバンクが存在するのです。 

死刑囚からの臓器移植が減っても、移植手術は減らない、この差を埋めてあまりあったのが、強制的な法輪功拘束者からの臓器摘出ではないか、とマタス氏は見ています。 

これは軍病院も、マタス氏の直接の問い合わせに認めています。 

7同上 

「それに対し、山東省煙台市の赤十字会の当直職員は電話調査で、「赤十字は数十のドナーしか提供できない。病院が数百件や数千件もの臓器移植を行っているのは、多くのドナーを取得できる独自のルートを持っているからだ。赤十字には関係ない」と主張した」(大紀元 前掲) 

この病院は赤十字系でありながら、赤十字からはわずか数十のドナーの提供がなかったにもかかわらず、数千件もの臓器移植手術をしていたわけです。

なんですか、このドナー数の需給バランスの違いは。

つまり一病院単位ですら、数千の移植された臓器は、「独自のルート」から来ていたわけです。

それがかつては囚人であた、そして法輪功でした。

キルガー氏はインタビューに答えてこう述べています。
「あらゆる関連要因があります。まず、中国全域にある350の強制労働所から逃れてきた人々にインタビューしたところ、法輪功学習者だけが医師の身体検査を定期的に受けていたことが示されました。
話を聞けば、ただの健康診断ではないことがわかりました。中国当局に、囚人の健康に関心ないはずです。
臓器移植のための検査なのです。法輪功の学習者だけが、これらの病院で検査を受けています。
無実の市民を、当局の都合で強制的に拘留する、ヒトラーやスターリンが採用した制度に習ったようです。明らかに、法輪功が主な臓器源です」(大紀元前掲)
かつてナチスの強制収容所において、ユダヤ人に奇妙なまでに徹底した健康診断をする時は、生体実験などに供される前兆でした。 

そして去年、中国当局は、ウィグルでは突然のように1900万人の住民に、DNA、血液のサンプル、指紋、虹彩、血液型などの生体データを集め始めました。

「中国当局は新疆ウイグル自治区で住民からDNAなど生体データを採集している。国際NGO人権組織の「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)」は13日、このような大規模な強制収集は国際人権規約を踏みにじるものだと批判した。
 当局に「全民検診」と呼ばれたこの無料のプロジェクトは、12歳から65歳までの住民を対象にDNAや血液のサンプル、指紋、虹彩、血液型などの生体データを集めている。
 中国国営の新華社通信は先月、衛生当局の統計として、新疆の総人口の9割に相当する約1900万人がこの「検診」を受けたと伝えた」(大紀元2017年12月15日)

https://www.epochtimes.jp/2017/12/30173.html

新疆ウィグル自治区出身の在英の元外科医エンヴァー・トフティ氏は、この奇怪な大規模DNA検査の目的について、こう言っています。

「トフティ氏は、こうした不合理な新疆地区住民のDNA採取について、中国移植権威で富裕層や外国人移植希望者のための移植用臓器となる「生きた臓器バンク」とし、住民を秘密裏に「ドナー登録」しているではないかとの推測を述べた」(同上)

 次回に続けます。  

 

 

 

   

2018年11月19日 (月)

アウシュビッツ・ラーゲリ・ラオカイ・ウィグル「再教育センター」

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中国に再教育施設ができたのは、ウィグルが初めてではありません。 

中国は中華人民共和国が作られたとほぼ同時期の1954年に「労働改造条例」を施行し、「反革命犯」を改造することを続けてきました。 

政治犯は人民法廷で裁かれて死刑になるか、「労働改造所」(労改・ラオカイ)に収容され、矯正労働を通じて毛沢東主義に忠実な人間に生まれ変わることを強制されました。
労働改造所 - Wikipedia 

このラオカイという再教育施設に強制的に入れられた人々は、共産党支配に反対する人たちだけではなく、党内闘争で破れた「反党分子」までもに及んでいました。

また当人だけにとどまらず、その妻子、親兄弟も連座しました。

このラオカイは、ソ連のラーゲリをモデルにして作られています。 

ラーゲリは今のウィグルの「再教育センター」の原型ですので、押えておきましょう。 

「党により反革命罪等の体制に対する罪を犯したと判断された政治犯や重犯罪を犯した者、また敵国の捕虜等を主に収容し、恐怖や猜疑心、疲労によって支配された過酷な環境下に置くことにより、体制への恭順な態度を導き出す手段として使用された。
収容者は無償の労働力としても利用された。特にスターリン体制下では家族ごと収容されることが多く、また収容所内での出産率も高かったため、幼児、乳幼児の収容者も多かった」

ラーゲリ - Wikipedia 

私たちが知るラーゲリ、あるいはラオカイ、さらにはウィグルの「再教育センター」に最も近い施設は、アウシュビッツ、ビルケナウのようなユダヤ人強制収容所です。
強制収容所 (ナチス) - Wikipedia

ソ連軍に降伏した日本兵や民間人57万5千人は、このラーゲリに強制収容されました。そして過酷な労働と栄養失調によって、実に5万5千人が死亡しています。
シベリア抑留 - Wikipedia 

中国のラオカイは全国各地に及び、経済の一部に組み込まれていました。

1千箇所以上、延べ5千万人という一国規模を強制収容所に叩き込んでいたのですから、ラオカイなしに中国経済はたちゆかなかった時期もあるです。

「ワシントンDCの人権NPO・労改研究基金の調査によれば、中国に点在する労働改造機関の数は1000ヶ所、総収容者数は300~500万人、1949年以降、労働改造機関に収容された人の総数は4000~5000万人に登っている」
労働改造所 - Wikipedia 

2労働改造所 - Wikipedia

さて、従来のラオカイと今のウィグルの「再教育センター」は本質は同じですが、若干違っています。 

ラオカイは政治弾圧と同時に、無償の奴隷労働による経済効果を狙って作られていました。 

ラオカイでは、収容者は道路や建造物、時には安価な商品づくりを一日10時間以上もさせられていました。

最近はちがいますが、ひと頃の百均はここのラオカイで作られたものが多くを占めていた時期もあります。 

一方、ウィグルの「再教育センター」は労働を目的としたものではなく、あくまでも「教育」施設であるという点です。 

目的は収容者から「邪悪な宗教」を洗い流し、共産党と習近平に忠誠を誓う人間に人格改造することです。 

このような行為を洗脳と呼びます。 

「強制力を用いて、ある人の思想や主義を、根本的に変えさせること。 日本語の「洗脳」は英語の「brainwashing」の直訳であり、英語の「brainwashing」は中国語の「洗脑/洗腦」の直訳である」
洗脳 - Wikipedia 

ラオカイは2013年に廃止されましたが、「再教育センター」はラオカイの代替施設として増殖を続けています。 

相違点は、皮肉にもむしろラオカイのほうが法治主義であったことです。 

なぜなら、ラオカイはいかに非人道的な悪法であろうと法によっていますが、「再教育センター」は今年に法が後追いでできるまで、なんの法的根拠もなかったのです。 

Photo_2ウィグルの老人を狙う武装警察。武警は公安警察の機能を持った準軍隊。

したがって、弁護士はおろか裁判を受けることすらできず、治安当局の恣意で誰でも自由に逮捕拘束し、強制収容が可能でした。

ウィグル弾圧が加速したのは、習の腹心のひとり陳全国がチベット弾圧の功績を買われて、ウィグルに転任してからだと言われています。 

800x1陳全国 共産党大会で、2017年10月19日  ブルームバークhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-01/PFR3AY6KLVR501

「2016年8月29日、陳全国が新彊ウィグル自治区の書記に任命されたと発表された。直前まで陳全国はチベット自治区の書記だった。つまりチベット弾圧の責任者だったから、ウィグル自治区にはいっても弾圧は得意技だった。
陳全国は1955年河南省生まれ、武漢の大学をでて軍隊に入隊し、共産党へ入党して頭角を現し、2010年に河北省長に就任した。その後、習近平の覚え目出度くチベット書記に栄転した。現在はトップ25の政治局員という異例の出世を遂げた。」
(2018年8月23日 宮崎正弘ニュース早読み)

陳はウィグル語を追放し、各家庭に習の肖像写真を掲示することを義務化しました。

12カシュガルにある習主席を描いた看板 ブルームバーク

この露骨な個人崇拝が習に評価されて、いまや25人しかいない政治委員のひとりになっています。次期常務委員入りは確実だと噂されているようです。

陳は対テロ作戦を口実に、ありとあらゆることを宗教弾圧の口実に使いました。

たとえば収容されているウィグル人の拘束理由は、ヒゲが長い、民族衣装を着ていた、金曜礼拝に行った、ハラールを食べたなどという宗教的理由がほとんどなのです。

これではほとんどのウィグル人があてはまってしまいます。

新疆ウィグル自治区の人口約2300万のうち、約1100万と半数近くをこの地域に昔から暮らしているウイグル族が占めています。

うち100万が強制収容されていますから、ウィグル族住民の実に1割が「再教育センター」に拘束されていることになります。

ですから、従来の矯正教育施設ではまったく足らず、公共施設や学校、体育館まで「再教育センター」に転用しているようです。

当然、面積が足らずにすし詰め、食料不足による健康悪化が起きています。

法的根拠がないために裁判は受けられず、改造が終了するまでの「刑期」も無期です。

また、その処遇も当局の思いのままです。無法というも愚かな暴虐です。 

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では、「再教育センター」はただの矯正施設なのでしょうか。
 

違います。それはもう一つの裏の顔をもっているからです。 

それはウィグル「再教育センター」の「経済」とは、グロテスクなことに臓器移植のための「臓器牧場」なのです。 

これについては長くなりましたので、次回とします。

 

 

 

   

2018年11月18日 (日)

日曜写真館 鋼鉄のデコイチ

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2018年11月17日 (土)

ウィグル監獄社会

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ウィグルは、世界の無関心によって孤立しています。 

ブログ、サイトなどはいうに及ばず、携帯電話、ツイッターまで日常的に監視されています。

当局の監視の眼をかいくぐれたのは、わずかにゲーム機の微信(チャット)だけだったそうですが、それすらももう通信しないでくれ、自分の記録を削除して欲しいという通信を最後に、途絶したそうです。

その理由は、外部と通信するだけで犯罪行為とみなされるだけではなく、外国にいる家族や友人も連座する可能性があるからです。 

中国社会は、かつてジョージ・オーウェルが描いた『1984年』そのままの、先端技術を用いた超監視社会です。 

1984jlh11984年 (小説) - Wikipedia

中国軍は10万を超える世界最大のサイバー部隊をもっています。
中国サイバー軍 - Wikipedia 

彼らは自由主義社会をサイバー攻撃するだけではなく、自国民の通信を監視し、摘発しています。 

もちろん軍だけではなく、公安、武装警察、人民政府などがそれぞれサイバー監視部隊をもっています。 

中国には、日本人が空気のように享受している「基本的人権」そのものが存在しません。

かつて欧米は、中国が豊かになり、先端技術を駆使するようになれば、民主化すると楽観していましたが、結果はオーウェルのディストピアが出現したのです。 

ニューズウィーク(10月23日)は、米国人記者が当局の音声認識によって記者の声紋が特定されてしまい、自動的に電話が切断されてしまった経験を伝えています。 

中国全土は人類がいまだ経験したことのない監視社会ですが、特に新疆ウィグル自治区は、「世界でも有数な強力な監視システム」(前掲)が張りめぐらされています。 

中国が外国企業から盗んだ最先端技術は、惜しげもなくウィグルに投入されてました。 

ガソリンスタンドに行けば顔認証によって身元を確認され、WI-FIを利用すれば、その通信記録は当局に傍受され、記録に残されます。 

たとえば、ハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)は共産党系企業ですが、ダーファ・テクノロジー(浙江大華技術)と合わせて世界シェアの実に4割を独占する監視カメラの大手です。
http://www.security-d.com/hikvision/ 

そのハイクビジョンとダーファの最大の市場は、この新疆ウィグル自治区です。 

22_076NW前掲 

「この2社は新疆で11件の大規模監視プロジェクトを受注し、すくなくとも12億ドルを売り上げ、ハイクビジョンは30%、ダーファは40%売り上げを伸ばしたた」(NW前掲) 

ウィグル族が生活するありとあらゆる公共空間は監視され、当局はそれでも飽き足らず、モスク内部にまで監視カメラを導入しようとしています。 

「イスラム的、もしくは反中的すぎるとみなされたウィグル人やその他の少数民族はこの「再教育キャンプ」に収容される」(NW前掲) 

22_078NW前掲 

スイス・ジュネーブで8月に開かれた国連の人種差別撤廃委員会において米国人人権活動家はこの「再教育施設」について、このように述べています。 

「男たちが弟のもとに来て『ただの教育施設だ。1カ月で帰ってこられる』と言って連れていったらしい」。
関東在住の40代のウイグル族女性、ザイトゥナさん(仮名)は昨年9月、新疆にいる弟が再教育施設に連行されたと連絡を受けた。
1カ月たっても弟は帰ってこず、故郷にいる母親が問い合わせても、警察は「わからない」と繰り返すばかり。8カ月がたったころ、急に警察から「心臓病で亡くなった」と母親に連絡が入った」(産経2018年9月13日)

https://www.sankei.com/premium/news/180913/prm1809130004-n1.html 

Photo日本ウイグル協会イリハム・マハムティ会長https://www.genron.tv/ch/hanada/archives/live?id=164

 

 

 

 

2018年11月16日 (金)

なぜイスラム世界はウィグル弾圧に冷やかなのか

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まずは昨日の記事と表題から、「民族隔離政策」、あるいは「民族浄化」という表現を削除して「弾圧」に変えました。 

理由はいまだこのウイグル弾圧の実態が、国際機関などによって完全に解明されたとはいえない状況だからです。 

私は、「民族浄化」に当たるか否かという概念規定論争には興味がありません。

今はウイグル弾圧の実態を広く「伝える」べき時期ですから、今の段階で用語論争にはかかわりたくありません。 

この時期において、最優先されるべきは、まずなによりもこの「伝える」ことです。

すから「弾圧」という、より価値中立の表現に改めました。 

さて、私が1年以上前からこのウイグル弾圧を知りながら、この時期まで記事を書かなかったのは、亡命ウイグル人だけの断片的情報しかなかったからです。 

いわば裏がとれない未確認情報でした。

これは事態の一定期間までは致し方がないことですが、中国社会の極度の情報統制が加わっていっそう見えにくいものとなっていたのは事実です。

このように裏がとれない未確認情報が多い場合、その鮮明度を上げるには三つの方法でクロスチェックする必要があります。 

ひとつは、同じテーマを複数の実績のある報道機関がクロス報道することです。 

単独の報道よりも、二つ三つの報道機関が同じことを報じた場合、その確度は高まってきます。

22_075ニューズウィーク10月23日号 

今回は、昨日引用したようにニューズウィークとBBCなどが同様の内容をほぼ同時期に報道しました。 

私はこれで情報のクロス・チェックの第1段階が終了したと判断しました。 

ふたつめは、主要国の政府機関、ないしは政府要人が、公式の場でこの問題について言及することです。 

Photo_22018年10月4日、ハドソン研究所におけるペンス副大統領演説 

これについては、10月4日の米国シンクタンク・ハドソン研究所におけるペンス副大統領の演説によってなされました。 

以下の部分がそれに当たります。 

「そして新疆ウイグル自治区では、共産党が政府の収容所に100万人ものイスラム教徒のウイグル人を投獄し、24時間体制で思想改造を行っています。
その収容所の生存者たちは自らの体験を、中国政府がウイグル文化を破壊し、イスラム教徒の信仰を根絶しようとする意図的な試みだったと説明しています。
しかし、歴史が証明するように、自国民を抑圧する国がそこにとどまることはほとんどありません」(海外情報翻訳局様より引用)

https://www.newshonyaku.com/usa/20181009

三つ目は、直接に認めることはありえませんが、別の形で中国当局がそれを認めることです。 

昨日、日経(10月12日)はこのように報じています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36410950S8A011C1FF8000/

「中国当局はウイグル族など少数民族を対象に、思想教育をする「再教育施設」を設置できるようにする条例を施行した。(略)
新疆ウイグル自治区の人民代表大会常務委員会が9日、2017年に制定した「脱過激化条例」を改正し、新たに条項を盛り込んだ。
それによると、自治区内の下級政府に「職業技能教育訓練センター」を設置するよう求めている」

ここで中国は「職業訓練センター」と称する再教育施設を、新疆ウィグル自治区に作れと命じる「脱過激化条例」を作ったとされています。

その再教育施設は、新疆ウィグル自治区に40箇所前後あることが確認されています。

22_070

ニューズウィーク10月23日

これがウィグル弾圧政策だと批判されているわけですから、違うと言うならばなおのこと、中国政府は自らこの法律の内容とその施設の実態を明らかにする責任があります。 

私たちにとっては、当座はこの時点で、中国政府が「再教育施設」の存在を認めたという事実こそが重要なのです。 

とまれ、今、早急に必要なことは、中国の国際機関の調査受け入れです。 

中国が大規模な再教育施設を建設して、そこにおそらくは100万人前後のウイグル人を収容しているこは疑い得ない事実だと私は考えていますが、まだ国際社会はその輪郭を掴んだ段階にすぎません。 

幸いにも帰還した人たちの口から、多くの証言が一次情報として採取されています。

当面は欧米メディアと、日本では産経が出すこれらの情報に依拠するしかありません。

ueyonabaruさんから、なぜムスリム諸国が沈黙しているのかという質問がきていますので答えておきます。 

確かにロヒンギャの苦難やパレスチナ人の闘争は毎日大量に報じられていますが、日本のメディアはウィグル弾圧をほぼスルーしています。 

報じているのは反中色が強い産経のみで、人権にことのほか熱心なはずのメディアに限って沈黙しています。

結果、ウィグル弾圧は「中国嫌いのネトウヨが騒いでいる」ていどの認識になっています。

人権に関しては中国や北朝鮮を例外としない姿勢の欧米リベラルと、旧共産圏にシンパシーを持つ日本の自称リベラルとの大きな違いですが、これが現状です。

それはさておき、なぜ外部にこのウイグルの悲惨な状況が伝えられないのか、という理由についてニューズウィーク誌のニチン・コカはこう書いています。 

「中国には通信アクセス制限と巨大な検閲体制があるため、きわめてクォリティ低い画像以外、新疆ウィグル自治区の最新の写真や映像はほとんど外に出てこない」

またコカはこのウィグル弾圧の当事国が中国であることが、最大の理由だとしています。 

仮にこれがイスラエルが、ムスリムであるパレスチナ人を、このような大規模な隔離施設に収容などすれば、全世界のムスリム国家は揃って立ち上がり、欧州各国は強い非難を浴びせたでしょう。 

しかし同じ宗教弾圧であるウィグル弾圧に、なぜかくもムスリム世界が冷やかかといえば、ムスリム世界は中国と対立できないからです。 

Photo_3https://www.sankei.com/world/news/171018/wor171018...

「今や中国は、ほぼすべてのムスリム国家にとって重要な貿易相手国だ。その多くが中国主導のAIIBか、一帯一路に参加している。
中国は皆はアジアでインフラ投資を進め、東南アジアでパーム油や石炭といった原料を大量に買いつけ、中東諸国にとって最大の石油輸出国だ」(NW前掲)

ここでコカが一帯一路政策が、ムスリム諸国の口封じとなっているという指摘は重要です。

今までの習政権以前の共産党政府は、核実験場をウイグル人居住地域近辺に置いた時から抑圧政策をとってきました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-cd1f.html

また長年に渡って漢民族移住政策を推進し、ウィグル語を公共場から追放してきました。

その一方で、ひとりっ子政策についてはウィグル族を例外とするような融和策もとってきていました。

習政権のように、イスラーム教を根絶やしにしようとするが如き極端な政策は手控えてきていたのです。

ではなぜ今になって、より過激なウィグル弾圧政策に転じたのでしょうか。

その理由は、一帯一路の内陸ルート「シルクロード経済ベルト」上の要衝に、新疆ウィグル自治区があることと関連があります。

中国がウィグルに侵攻して領土化したのは、石油などの天然資源もありますが、それ以上に「戦略的辺境」を欲したからです。

この概念は、1987年に中国三略管理科学研究院の徐光裕が作ったものですが、外部世界との緩衝地帯という意味だけではなく、その時の国力に応じて伸び縮みするエリアとされています。

当初は、中華帝国を外部からの侵略から守る緩衝地帯としての位置づけでした。

中国はこの新疆ウィグル自治区、内モンゴル自治区、チベット自治区などの自治区を中東や西・中央アジアからの石油・天然ガスのパイプライン・ルートの要衝として確保してきました。

ここまでは歴代政権のエネルギー安保政策の枠内です。

ところが習政権に至って、この新疆ウィグル自治区の位置づけは大きな変化を開始します。

習が世界に冠たる世界帝国となる「中華の夢」を見たからです。これが一帯一路政策です。

これが今回の習によるウィグル弾圧を開始した動機です。

言ってみれば、いままでの歴代政権にってウィグルは、いわば守りのための「壁」であったのに対して、習にとっては攻めの「突端」に変わったのです。

ですから習にとって、ウィグルは二度と2009年7月のような動乱は起こさせない、反乱の可能性は徹底的に摘み取らねばならない地域となったのです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-fdc3.html

習が人民解放軍の創設90周年を記念し、 北京を離れてわざわざ「戦略的辺境」である内モンゴル自治区で閲兵式を実施したのは、このウィグル弾圧と決して無縁ではないはずです。

2_175出典不明

いずれにせよ、コカがため息と共に言うように、「その答えはカネがものをいう、なのかもしれない」が現実世界の力学だということです。

ムスリム世界で可能性が残るとすれば、民主主義体制を持ち、かつ中国に屈していないマレーシアか、ウィグルと民族的に同じで、ウィグルコミュニティを歴史的に持っているトルコでしょう。

エルドアンは2009年のウィグル騒乱時で1万名以上と言われた虐殺に対して、唯一ムスリム国家のリーダーとして声を上げています。

ただこのトルコも、昨今の反欧米色を強めているエルドアンは、引き寄せられるように中国に接していますから期待しすぎてはいけません。

というわけで、ムスリム国家は当面はあてにできません。

結局、人権問題に敏感な欧米と日本がやるしかないのです。

今日は再教育施設の中身に入ろうと思いましたが、その前提についての私のスタンスをお話しました。

内容的には次回に回します。

あそうそう、ふゆみさん。昨日と今日の写真はカシュガルで買ったものです。

 

 

 

 

2018年11月15日 (木)

中国によるウィグル人の民族弾圧政策

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書くのが遅くなってしまったことをお詫びします。 

ウィグルで、紛れもない民族弾圧が巨大な規模で進行しています。 

当初それは、現地からの断片的な情報として亡命ウィグル人の地下ネットワークから伝えられました。 

この団体はトルコのイスタンブールに拠点を置き、中国から細々と伝えられるウィグル弾圧の実態を外部に伝えてきました。 

この亡命ウィグル団体が、中国当局の資料などを基にして割り出した拘束者数は初めは約90万人。それが急激に増加し、今や120万人に達すると言われています。

そしてそれを確認するように、BBCやニューズウィークなどの欧米主要メディアが大きく報じるようになってきました。 

今やポンペオ国務長官やペンス副大統領までもが、強く中国を批判する事態にまで発展しています。 

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さて、ウィグル弾圧を報じるニューズウィーク(2018年10月23日)です。
https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2018/10/post-44.php 

「「再教育キャンプ」とは「過激思想にかぶれた」とみなされるウイグル人を拘束し、共産党体制を支持する考えに改めさせる強制収容所で、2018年5月段階で100万人以上が収容されているとみられる」(ニューズウィーク前掲) 

ほぼ同時期に、この民族弾圧政策を伝えたBBCです。
https://www.bbc.com/japanese/45859761 

「中国西部の新疆ウイグル自治区は9日、イスラム教を信仰するウイグル人向けの「職業訓練施設」を法制化した。同自治区では、大勢のウイグル人の行方が分からなくなっており、国際的な懸念が広がっている」(BBC前掲) 

この報道が相次いだのには理由があります。それは中国政府自身がこの民族隔離政策を隠しきれなくなって、公然と「職業訓練施設」として法制化したからです。

「中国当局はウイグル族など少数民族を対象に、思想教育をする「再教育施設」を設置できるようにする条例を施行した。ウイグル族をめぐっては米議会が「空前の弾圧」として中国を非難するなど、国際的な批判が高まっている。中国は施設に法的根拠を与えることで、弾圧を正当化するねらいがあるとみられる。
新疆ウイグル自治区の人民代表大会常務委員会が9日、2017年に制定した「脱過激化条例」を改正し、新たに条項を盛り込んだ。それによると、自治区内の下級政府に「職業技能教育訓練センター」を設置するよう求めている」
(日経10月12日)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36410950S8A011C1FF8000/Photo_3BBC NEWSより

 この法律化された民族弾圧政策は、ウィグル人にイスラーム教を捨てさせ、政府にのみ忠誠を誓う中国公民に再教育するために行われています。

「新疆ウイグル自治区当局は、施設が「厳しい転換」を通じて過激主義に取り組むことになると説明している。
新法は、中国政府のこの地域での活動を初めて詳細に示すものだ。
身柄拘束につながる可能性のある行為の例として、ハラルの概念(イスラム教で許されるものという意味)を食習慣以外の生活分野に拡大すること、国営テレビやラジオの視聴を拒否すること、子どもに公教育を受けさせないこと、などを挙げている。
中国政府によると、各地の収容センターではまた、中国公用語や法的概念を教育するほか、職業訓練を提供する」(BBC前掲)

22_070ニューズウィーク10月23日

BBCが伝える身柄拘束できる行為の一例は以下です。 

①イスラーム教の宗教習慣を生活の基礎にしていること
②中国国営放送を見ないこと
③中国の漢語教育に抵抗し、ウィグル語を使わせていること

④服装や髪形をウィグル族特有のものとしていること

これではウィグル人が民族としての風習や言語を保って、普通に生活しようとすれば、どこかで必ず強制的に隔離される可能性があるということになります。 

そしてこの「職業訓練センター」に収容されれば、これらを矯正し正しい中華人民共和国の「公民」に再教育するわけです。 

「ここではウイグル語の使用を禁じ、思想や行動を矯正して「社会復帰」させる役割を担う。条例に違反すれば処罰の対象になるという」(日経前掲) 

それだけにとどまらず、再教育施設においては徹底した個体識別作業が行われて、ウィグル人をデータベース化しようとしています。

「DNAや虹彩が採集されるなど、新疆ウイグル自治区は巨大な監獄と化しており、再教育キャンプはその象徴となってきた」(ニューズウィーク前掲)

誇張ではなく、21世紀のできごととは思えません。まさにナチスのユダヤ人政策を彷彿とさせるグロテスクな人権抑圧政策です。

次回はもう少し具体的に、この中国が行っているウィグル民族に対する少数民族弾圧政策を見ていきたいと思います。

■お断り 「民族隔離政策」と表現しましたが、いまだ実態が解明し尽くされたとはいえない状況ですので、「弾圧」で統一します。表題も変えました。

 

 

 

2018年11月14日 (水)

山路敬介氏寄稿 植村隆VS櫻井よしこ 名誉棄損訴訟と司法消極主義その3

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山路氏寄稿の3回目となります。今回で終了です。ありがとうざいました。

この論考で山路氏が指摘されている、「司法消極主義」の復権を印したこの判例は歓迎できます。

司法は万能ではありません。裁判官は超越的審判者ではありません。

あくまでも法の定める範囲と、判例に基づいて謙虚にそれを審判する法律家にすぎません。

しかし伝統的に左派は、政治課題をあえて法廷に持ち込み、有利な判決を勝ち取ることを闘争の火にくべるガソリンとする戦術を多用してきました。

しかも、近年はこれに自ら同調する裁判官も多数現れ、再稼働をめぐる一連の非常識な判決を残して行くことになったのはご承知の通りです。
関連記事「福井地裁判決  司法のひとりよがり」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-7e85.html

そしてこの風潮に便乗して、言論批判を名誉棄損として訴えるような訴訟が相次ぎました。

ひとつがこの植村訴訟であり、今ひとつが朝日が起こした小川栄太郎氏への訴訟です。
関連記事『朝日は「物言えぬ社会」を作りたいのか』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-c79c-1.html

いずれも、司法が裁く対象にならない政治案件を法廷の場に持ち込んだものです。

裁判官は歴史家でもなければ、モリカケ問題を裁く立場ではありません。

そもそも法律で言論内容は裁けないのです。

できるとすれば、原告の「被害」と言論との因果関係が物証をもって立証された時に限定されます。

たとえば桜井氏が当該論考の中で「植村を社会的に抹殺しろ」などと読者を煽動していたら、判決もまた違ったものとなっていたことでしょう。もちろんそのような事実はありません。

札幌地裁判決は、山路氏が述べるように、植村氏の「被害」と、桜井氏の言論による「名誉棄損」の因果関係を冷静に切り分けた上で、バランスのとれた判決を下しています。

悪しき司法優越主義が跋扈する中、まことに心強い判決でした。

隣国において司法は政府間の条約をも優越するがごとき判決がでている時期に、一服の清涼剤に感じました。

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        ■ 植村隆VS櫻井よしこ 名誉棄損訴訟と司法消極主義 その3
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承前  

■ 日本の司法は韓国と違い、正しい「司法消極主義」である事

「司法消極主義」というと、その語感から何やらネガティブなイメージがわくと思いますが、そういうものではありません。
 

多分に「保守的である」とは言えるでしょうが、むしろ法律の文言やこれまでの判例、立法の精神を逸脱する事はせず、立法府や行政府の判断も尊重し、違憲性が明確でないかぎり突飛な判断を下さない点や、優れた一般常識を有している点で「全国民的」と言えるでしょう。 

この対極にあるのが最近の韓国の司法の在り方で、これを「司法積極主義」と呼称する事はいささか判断に迷いますが、まぁ、ご存知のようにああいうものです。

今回の植村名誉棄損訴訟においての原告の植村隆氏の主張は、まことに情に訴える部分と「朝鮮民族に対する無謬性理解」による拡大解釈が多く、かつて前翁長沖縄県知事が「取り消し訴訟」でした「魂の飢餓感」の如くの戯言ような、かつ被害者意識丸出しの拙いものでした。
 

このような主張は韓国においてならば、そのまま認められて然るものでしょうが、今回の判決は植村氏が受けた「被害」と、「名誉棄損」という法律の運用上確定された解釈を見事に切り分けた優れた判決だったと言えます。

瞥見するところ、米国における合衆国最高裁はリベラル派と保守派に色分けされており、リベラル派が制している時期に数々の新しい価値判断が生まれており、これが日本の潮流にも明らかに影響を与えてます。
 

これらの判断はおそらく米国民全体のコンセンサスとは言えず、それがゆえに「分断が生まれている」とも言えると考えます。

この問題の所在は、立法府である議会においての議論が低調であったり、または決着がつかない場合において最高裁の多数がそれを決してしまうところにあり、私はそれが米国の衰退に婉曲に大いに繋がっていると考えるものです。(発祥は欧州なのかも知れませんが)

そうしてみると、トランプ氏が最高裁判事を決める権限がある上院で逆風のなか共和党が多数を占める事が現実となった事をして、これを大統領自身が「歴史的勝利」と評したのは、むべなるかなと考えます。

かえりみれば、我が国の左派が提議する訴訟というものは、いつもこの「司法積極主義」を待望し、促すものでした。
 

しかし、裁判官は万能の「神」ではないし、国民の意思が反映された「選良」でもありません。 

そうであれば裁判官において事例に則った、いわゆる「保守的」である事は必須の条件であり、立法府における役割をも裁判官が担うべきではありません。 

そうした意味からも今の司法の在り方は肯首でき、今回の判決も納得出来るものだったと考えます。

 

 
                                     文責 山路 敬介

2018年11月13日 (火)

山路敬介氏寄稿 植村隆VS櫻井よしこ 名誉棄損訴訟と司法消極主義その2

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山路氏寄稿の2回目です。

今回の札幌地裁判決は、山路氏が述べるように日本の言論の自由を守った画期的意義をもつものですが、なぜかネット界で取り上げられることが少ないようです。 

むしろネットは、あのお調子者の防弾少年団叩きに忙しいようです。 

彼等が批判されるのはいたしかたがないとしても、このベタ凪はなんなのでしょう。 

おそらくそれは、この植村訴訟の原因が、ネット界の反日への行き過ぎた反発が引き起こしたものだからです。 

退職した記者を再就職先まで追いかけて叩き、家族にまで迷惑行為を働くなどということまでしてしまっては、まるでこれでは「白色テロ」です。 

目的は過った行為を正当化しません。

結果、当該の大学当局名で抗議までだされる始末で、社会に対して「慰安婦批判をする者はこういうことをする奴らだ」という印象を強烈に与えてしまいました。 

2植村氏はこの不当性を訴え、それを支援団体が大規模に拡散したために、ニューヨークタイムズなどの外国メディアには「迫害されるジャーナリスト」という報道のされ方をしました。 

今回の徴用工判決についても同じ轍を踏んではなりません。 

今、韓国政府の正式な出方待ちというデリケートな時期です。軽はずみな行動をして、欧米リベラル・メディアに好餌を与えないでください。

                                        ~~~~~~~~ 

        ■植村隆VS櫻井よしこ 名誉棄損訴訟と司法消極主義 その2
                                                          
                                         山路敬介

承前

言論の自由は守られた

私はこの裁判の先行きに憂慮し注目して来ましたが、如何せん櫻井氏側からの情報発信が少なく、植村応援団のサイトや左派紙に情報を頼る以外にありませんでした。
 

当初、争いは櫻井氏側から管轄裁判所を東京に移す事の申し立てから始まっており、その経緯が地裁では認められ、高裁で却下されるという奇妙な具合でした。

同様の裁判で西岡力氏が同じく植村氏より「東京地裁」で提訴され、櫻井氏は「札幌」ですから、明らかに「合理性」に欠けています。

また、近年では名誉棄損は広範に認められる傾向にあり、その賠償額も一桁上がっている事も心配のタネでした。

まだまだ一審の判決が出たのみなので予断を許しませんが、しかし判決内容はかなり立派なもので、高裁がこれを覆すにはよほど骨が折れる仕事に違いありません。

何より一審を勝訴したことで、万一高裁で敗訴しても最高裁まで争う権利を得た事が大きな収穫と思います。

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この裁判を通じて誰しも思うことでしょうが、植村氏は自身の誤った記事についてはほとんど反省していないのです。

それでありながら櫻井氏のジャーナリストとしての資質を問うたり、直接的因果関係を証明出来もしないのに自身が大学を追われた事の責任や、家族が非難にさらされた責任を櫻井氏側に擦り付けようとする場面には、「身勝手がすぎる」と言わざるを得ません。

また、この裁判の中で高知での自身の生い立ちを話す中で、その小さな地域ですら朝鮮人が差別を受け、それが記者を志し「社会正義」に目覚めたきっかけ、という趣旨の事を語っています。

それはそれで立派な部分も全くないとは言いませんが、それが一般読者に向けて自身の書く記事に「角度」となって反映されて来た事は否めないでしょう。

そうした事は本件訴訟でこそ争点ではなく問題ともなり得ませんでしたが、植村氏の記事を書く上でのスタンスを如実にあらわすものとして興味深いものでした。

関係ない話かもしれませんが、一昨日の「よるバズ」において猿田佐世氏が今般の日韓関係について、「姿勢というか、韓国の人たちに申し訳ないという前提で物事を話して行けば、たぶん関係ってここまで悪くはならなかった」と話していますが、これは植村氏のメンタリティと通底するものがあります。

松川るい議員が即座に応じたように「日本はずっとそうしてきた」のであり、むしろその事によって韓国・朝鮮人との正常な関係を保つ事が困難となった事を、今さらながら日本人は強烈に思い知るべきです。

私はそういう日本人の緩いメンタリティが北朝鮮による日本人拉致を長期間に渡って許してきた一因だ、とさえ思っています。

話がそれましたが、私は今回の札幌地裁による判断でかろうじて日本人の「言論の自由」が保たれたと考えていますので、その点では「喜び」もひとしおです。

新潮45があれしきの事で廃刊となった事、ネット空間においてもYouTubeにおけるBAN騒動や言論狩りのような現象がある中で、本件が名誉棄損と判事された場合、その影響は決して小さくなくなかったでしょう。

現在進行している「旧朝鮮半島出身労働者問題」における韓国に対する批判的言論も、セーブされざるを得なかったのではないか、と心配しておりました。

また、かつて我が国の閣僚が朝鮮半島の統治について、「良い事もした」と事実を発言しただけでクビがとんだ時代とは隔世の感があります。

                                                                                        (次回完結)

2018年11月12日 (月)

山路敬介氏寄稿 植村隆VS櫻井よしこ 名誉棄損訴訟と司法消極主義その1

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山路さんから寄稿を頂戴しました。 ありがとうございました。

この植村訴訟は、氏がみずからの慰安婦言説についての言論における批判を、社会的不利益をうけたとして名誉棄損で訴えたものです。

植村氏は自らが受けたそれ自体は同情に値する攻撃を、自分の慰安や報道の誤りそのものが受けた「受難」にすり替えました。

私は当初から、植村氏の社会生活への攻撃を強く批判してきました。

こんなことをすれば必ず、慰安婦報道が正しかった主張することを助けてしまう結果を招くのは自明だからです。
関連記事「植村記者を「受難のヒーロー」に祭り上げさせるな」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post.html

この判決は、今、裁かれている辛淑玉氏の石井孝明氏に対する訴訟と通じる性格をもっています。
http://blog.livedoor.jp/ishiitakaaki3/archives/8254674.html

自分の言説に対する批判を司法の力を借りて圧殺しようとするもので、これを認めてしまえば、まともな言論における論争が成立しなくなります。

このような動きは保守論客から左翼論客に対しては行われたことはありませんが、左翼運動家からは、今やトレンドの戦術となりつつあります。

訴訟手段を戦術にすることにたけてきた左翼陣営にとっては、訴訟沙汰など朝飯前かもしれませんが、多くの社会人にとって訴訟をちらつかされるだけで気も萎えるのが一般的です。

訴訟におよばなくても、チェーンメールを用いたと思われる炎上攻撃、運営を不可能にさせるDDoS攻撃など、うんざりするような類似の攻撃も盛んになってきました。

そのことによって、論者が自分で自分の言論を統制してしまうという現象が生まれます。

実はこれこそが、左翼陣営が狙っているスラップ訴訟の真の目的なのです。

慰安婦問題については、このブログでも数多く取り上げました。検索していただければ理解が深まるでしょう。

またこの判決に対する植村氏の見解は産経が詳報しています。
https://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/160423/evt16042307530003-n1.html?utm_source=yahoo%20news%20feed&utm_medium=referral&utm_campaign=related_link

なお読みやすくするために、若干の編集を加えさせていただきました。

                                        ~~~~~~~

Photo_2産経https://www.sankei.com/main/group/main-35524-g.html

 

■ 植村隆VS櫻井よしこ名誉棄損訴訟と司法消極主義
                                                                                      山路 敬介 

さる11月9日、札幌地裁において原告植村隆氏、被告櫻井よしこ氏(ほか数社)の名誉棄損裁判の判決が言い渡されました。 

結果はご存知の方も多いと思いますが、櫻井よしこ氏側の主張がほぼ認められたもので、判決内容も良く精査されており、きわめて妥当な判断が下されたものと思います。 

しかし、一審であることを差し引いても、事前に旧マスコミ関係者のこの判決への注目度は非常に高かったにも関わらず、櫻井氏側が勝訴が現実になった今はどこの社も扱いは小さいので少し書いておきたくなりました。

原告・植村隆氏の主張は、このようなものです。
 

朝日新聞時代、植村本人が書いた金学順関連の記事等(慰安婦になった経緯など)について誤りがあり、櫻井よしこ氏らにこれをWILL紙や週刊ダイアモンド紙などで「ねつ造」と記述・出版されたことで、名誉を棄損された。 

またその為に大学の職を追われ、さらに家族が危険な目にさらされたなど、謝罪広告の掲載や慰謝料等の支払いを求めたものです。

Photo_3産経https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181109-00000553-san-soci

■ 判決のあらまし

判決文では、「金学順氏がどのような経緯で慰安婦になったかという点は最終的には不明」としつつ、また植村氏が望むような「植村氏(原告)が、ねつ造記者であったかどうか?」などの判断は当然しておりません。
 

そのような点はもともと全く論点ではなく、櫻井氏側もそのような点を法廷で主張していたのではありません。

まず大前提として、「櫻井論文で原告植村氏の社会的評価は低下した」事は判決で認めています。
 

そのうえで争点は、被告である櫻井氏側が原告をして「ねつ造」と論評するに際して取り上げた諸点が問われました。 

①公益性があったかどうか
②公共の利害に関する言論であったかどうか
③「ねつ造」と表現するついて、そのための重要な事実の部分に信じるに足る「相当な理由」があったかどうか。
 

これまでの名誉棄損訴訟における争点に則りこれらがあるかどうかが、「名誉棄損」が成立するための要件となる、という事です。

判決では、金学順氏は当初「義父(あるいは検番の継父)に40円で売られた」と言っており、また植村隆氏の義母が実質的に主催する対日本政府に対する訴状にも人身売買によって慰安婦になった旨を述べています。
 

だいぶのちになって証言を翻し、「日本軍による強制連行によるもの」との証言もしておりますが、ハンギョレ新聞や自身の体験を率直に話したと考えられる共同会見等をふくめ種々の事実から、「養父または義父が営利目的のために関与し、慰安婦になった」という証言に信用性が見られる事。 

そうであれば「金学順氏がいかなる経緯をもって慰安婦になったのか」を、植村氏が知り得る立場にあり、かつ知っていて件の朝日記事において故意に記載せず隠した」と櫻井氏が信じたことには「相当な理由がある」としています。

また植村氏の取材源となった金学順氏の供述録音テープの中で、金学順氏は「女子挺身隊の名で戦場に連行された」とは述べてはいないことは事実です。

しかしくだんの植村記事以前の朝日新聞の記事で、再三再四にわたり朝鮮人女性を狩り出し、女子挺身隊として戦場に送り出す事に関与したとする者の供述を繰り返し掲載して、一般読者の普通の読み方として、女子挺身隊として強制動員されたと理解できる事。

今や女子挺身勤労令で規定する「女子挺身隊」と、慰安婦の関係は全くないものである事は明らかです。

そのように読者を結果的にせよ誤誘導したと考え得る事に対する櫻井氏の言論には「理由」があり、かつそれは「意見」または「論評」の域を逸脱しておらず、植村氏に対する「人身攻撃」とも認められない、との事です。

また、本件櫻井論文の主題は、慰安婦問題に関する朝日新聞の報道姿勢やこれに関する記事を執筆した原告を批判する点にあったと見られ、この問題が日韓関係にとどまらず、国連や米議会でも取り上げられるような国際問題となっている事をかんがみれば、櫻井氏の記述は「公共の利害」に関わるものであり、その執筆目的も「公益性」が認められる。としています。

結論として、「本件櫻井論文の執筆および掲載によって原告の社会的評価が低下したとしても、その違法性は阻却され、または故意若しくは過失は否定されるというべきである」としています。

                                                                           (続く)

2018年11月11日 (日)

日曜写真館 植物園はまだ夏

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2018年11月10日 (土)

基礎素材輸入が停止した場合を韓国は考えておいたほうがいい

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ネットでは、日本政府が韓国にフッ化水素の輸出制限をかけたか、と話題になりました。 

それを伝えるレコード・チャイナ(11月9日)です。

「2018年11月8日、韓国・電子新聞は「日本政府が韓国に輸出される半導体製造用フッ化水素の一部を承認しないという事態が発生した」とし、「韓国の半導体業界に緊張が走っている」と伝えた。
記事によると、フッ化水素は最近、原料の供給が減り需給が厳しくなる「供給難」に直面していた。そのため韓国の半導体業界では、日本政府が承認を拒否した背景に注目が集まっているという」

https://www.recordchina.co.jp/b660437-s0-c20-d0058.html

確かにフッ化水素(フッ酸)は電子工業の命脈を握る基礎素材であり、日本の企業が世界的に独占していることは事実ですが、この時期に日本政府がそのような手段に出ることはあり得ないと思います。 

韓国のネット民が、レコードチャイナのこの記事によれば、「これはまずい」「韓国はフッ化水素も国産化できていないのか」「半導体まで駄目になったら、赤化統一に近づく。文大統領はそれを狙っているのでは?」なんて言っていって悲鳴をあげているそうです。

コリアさん、そりゃ考えすぎってもんです、と思いますがね。 

いくらなんでもたった1週間で、しかも韓国政府の公式の態度表明がないこの時期に、日本政府がこんな危険球は投げませんって。  

これでは世界に対して日本の言い分が浸透しないうちに、韓国を一方的に攻撃しているように見えてしまって逆効果です。

フッ酸やレアガス、あるいは特定分野のマザーマシーンのように日本でしか製造ができず、しかも韓国への輸出を制限することで相手国の経済を崩壊させる可能性がある資材は、戦略物資の性格を持っています。

※追記
フッソ化水素は経済産業省の「戦略物質」指定です。
「通常は平和利用されていても、使い方によっては武器・兵器になる可能性のあるものを戦略物資と言います。戦略物資を日本国外ヘ輸出するには、経済産業大臣の許可を受けなければなりません」

https://webciss.sankyu.co.jp/portal/sby/asp/newsitem.asp?nw_id=38
今回の韓国への輸出制限は、韓国が北に6フッ化ウラン製造のためフッ化水素を横流していることが、国連の北朝鮮制裁に抵触したことによるという説もあります。

これは使い方によっては、形を変えた「戦争行為」なのです。

こういう相手国と決定的関係になるような手段は、それが煮詰まるような時期にこそ行使して意味があるのです。

考えておくことはいいですが、今ではありません。

ただ、この韓国電子業界の大慌てぶりを太郎ちゃんが見て、「ホー、これは使えるな」と思ったかもしれませんが。 

フッ化水素について押えておきましょう。 

フッ化水素はフッ化水素酸(フッ酸)という水溶液にして、電子工業や自動車部品などに用いられる重要な化学製品です。

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「各種フッ素化合物の原料として重要であるほか、ガラスの化学加工や、半導体製造時のシリコン酸化膜のエッチングに用いられる。ステンレスアルミニウム酸化被膜除去には、硝酸との混酸が使用される」
フッ化水素酸 - Wikipedia 

日本では、ステラケミファを筆頭に、三菱マテリアル電子化成や森田化学工業などが製造しています。 

ステラケミファは世界一のトップシェアを誇っています。ほぼ世界で独占的シェアと呼んでさしつかえないでしょう。 

その会社案内を読むとと、いかにフッ酸が、現代の製造業にとって欠くことのできない化学製品なのかわかります。
高純度薬品事業 | ステラケミファ株式会社 

「当社の主力事業である半導体・液晶関連では、半導体や液晶の製造工程におけるエッチング用の薬液などを手掛けています」(ステラケミファ前掲) 

つまり、ステラケミファのフッ酸製品が切れると、あらゆる電子機器に組み込まれている半導体製造がストップすることになります。 

しかもフッ酸は大変に危険な劇物なために、大量に貯蔵しておくことができません。 

現に、2012年には韓国慶尚北道フッ化水素流出事故が起きて5人が死亡、4000人を超える健康被害が起きています。
慶尚北道フッ化水素酸漏出事故 

136749399144_20130502ハンギョレ フッ酸漏出事故が発生した三星電子華城事業場http://japan.hani.co.kr/arti/politics/14615.html

また2013年にはなんとご丁寧にも2回、1月、5月にサムスン電子華城事業所で、これも流出事故を起こし、合わせて1人が死亡7人が負傷しています。 

同じ作業場で立て続けに同じフッ酸流出事故が起きて死亡者をだすなど、「世界のサムソン」がすることではありません。 

ところで、フッ酸以外にも多くの基礎素材を日本は韓国に供給しています。 

例えば、高純度のネオン、クリプトン、キセノンといったレアガスは、韓国は日本に頼りッきりの状態です。 

レアガスは化学反応を起こさない不活性な性質であることから、半導体の生産ラインには不可欠な基礎素材です。 

このレアガスは日本では東京レアガスが 製造していて、これも世界のトップシェアを誇っています。
http://www.tgc.jp/corporate/group_03.html 

日本製造業の強みは、こういう広範な基礎素材に圧倒的強みを持つことです。 

ですから、日本に大規模災害が起きるたびに、サプライチェーンが元から断たれてしまって、諸外国の電子工業などは震えあがるわけです。 

ステラケミファや東京レアガスなどは中小企業ですが、こういう「産業の米」とでもいうべき広大な基礎技術のすそ野を持っています。 

テレビドラマ「下町ロケット」の佃製作所のような中小企業こそが、日本の宝なのです。 

一方、この基礎素材という基盤技術が韓国にはごっそりと欠落しています。

急激な成長のためのシェア拡大だけに奔走し、足元の基礎技術を置き忘れた報いです。

韓国が得意なのは、諸外国から部品と基礎素材をかき集め、気の利いた商品にまとめるマーチャンダイジングにすぎません。
マーチャンダイジング - Wikipedia 

日本からすれば、ギャラクシーがあろうがなかろうが死活問題ではありませんし、むしろないほうが助かるくらいです。 

しかし日本からの輸出が途絶えた場合、当の日本企業は別な国にその分を売ろうと努力するだけのことですが、韓国の電子工業や自動車工業は、在庫が切れ次第製造が停止します。 

いや、フッ酸やレアガスが供給停止になったという情報が駆けめぐっただけで、サムスンやヒョンダイの株価は大暴落することでしょう。 

そして韓国のGDPの約7割は、サムスンやヒョンダイなどの10大財閥が占め、さちにGDP の 2割はサムソンが占めています。

こういう両手の数くらいの企業で市場を独占してしまえるということは、裏返せば、日本のような星の数ほどある「ロケット品質」の中小企業群が存在しないということの現れです。 

なんのことはない、これでは大韓民国ならぬ大サムスン民国です。

ですから、大サムスン民国はフッ酸やレアガスが供給が止まれば、それは単なる一企業の浮沈に止まらず、国全体の崩壊につながっていきます。 

ちなみに、こんな重要製品の輸出規制ができるのかと言われれば、微妙です。

中国はかつてのように、日本を締めたいと思ってレアメタル輸出禁止事件を引き起しましたが、日本が同じことをするのは、現時点では難しいでしょう。

なにも両国関係に障害がない時期に、これらの重要輸出製品に制限をかけることはWTO違反に問われますから、現時点で徴用工判決をもってそれに踏み切るのはそうとうに難しいと思われます。 

ただしWTOは安全保障については、ガット21条の正当化事由規定を設けていますので、今後も韓国側の対応いかんで、どうなるかはわかりません。
第 4 章 正当化事由 - 経済産業省 

すくなくとも韓国に対して、今後のあなた方の出方次第で、どうなるかわかりませんよ、あなたの国が今までのように野放図に挑発的なことを続けていると、この先は保証しませんよ、と思わせておくことは両国の友好関係にとってよいことでしょう。

2018年11月 9日 (金)

日韓想定問答集

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いつまで韓国政府が徴用工判決に沈黙しているのかと思ったら、やっと李洛淵(イ・ナクヨン)首相が口を開きました。 

その前日の6日にイム・ジョンソク大統領秘書室長が既報のように国会答弁していますが、イ首相発言は正式の記者会見での表明ですから、これが現時点における韓国政府の公式見解ととっていいでしょう。 

「李首相は「日本政府の指導者たちの発言は妥当ではなく、賢明でもない」と指摘した。
また、「司法部の判断は政府間外交の事案ではない」として「司法部は法的な判断をする機関で、司法部の判断には政府が介入しないことが民主主義の根源だ。日本政府の指導者たちもそれが分からないはずがない」と強調した」(聯合11月7日)

http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2018/11/07/0400000000AJP20181107004300882.HTML

 なかなか興味深い発言です。 

いえ、日本側の(おそらく河野外相でしょうが)発言を、「過激だ」なんたらかんたらという説教がましい部分は無視してください。 

韓国人に冷静になれと言われるほど落ちぶれてはいません。 

むしろ重要なのは、「司法部の判断には政府が介入しないことが民主主義の根源だ」と述べている部分です。 

Photo李洛淵首相 

このイ首相の言い分をとると、「あれは司法部が勝手にやったことだ」ということになります。 

続けてイ首相はこう述べています。 

「李首相は「日本政府の指導者たちは韓国司法部の判断に不満は言える」としながらも、「だが、日本政府の指導者たちがこの問題を外交紛争に持ち込もうとし、私もそれに関する意見を言わざるを得なくなったことを遺憾に思う」と強調。「日本政府の指導者たちの賢明な対処を要望する」と促した。 」(前掲)

韓国政府、いや限定して「行政部」としましょうか、これは日本側が外交紛争に持ち込もうとしていることが遺憾だ、ぜひ日本政府よ穏便に済ませろというわけです。

ここでもあんたらのほうが非常識なことをしておいてからに、なんて素の対応をしてはいけません。 

むしろぜひ韓国政府におかれましては、その立場を貫いて下さい、と言うべきなのです。 

なぜなら、日本は既に国際司法裁判所(ICJ)に提訴することを方針化していますから、今、問題となっているのは、韓国政府が提訴に応じるか否か、その理由づけに何をもってくるかの一点でだからです。 

このまま突き進むと、哀れ韓国政府は自分で言ったことに自分で反論するというお笑いを演じることになるからです。 

順を追って説明します。 

まず日本はICJに付託するに当たって、韓国政府に提訴の合意を求めまることから始めますが、さてここで韓国政府がなんと答えるのかが見物です。 

韓国政府は、今に至っても日韓請求権協定は有効、という立場に変化はありません。 

え、違うでしょう、徴用工判決でひっくり返したんじゃないのと思う諸兄、違うのです。 

ひっくり返したのはあくまでも、イ首相によれば行政部ではなく、「韓国司法部の(独自)判断」であって、それについて日本側は「不満は言える」としているのです。 

もちろんこんな言い訳は、近代国家の原則である三権分立を恣意的に解釈したものにすぎません。 

国家間条約など高度の政治的判断を伴う事柄に対して、司法はいかに最高裁であろうともクチバシを突っ込むことはできません。 

日本ではこれを「統治行為論」として原則にしています。 

「統治行為論とは、“国家統治の基本に関する高度な政治性”を有する国家の行為については、法律上の争訟として裁判所による法律判断が可能であっても、 これゆえに司法審査の対象から除外すべきとする理論のことをいう」
統治行為論 - Wikipedia

ですから、今回の徴用工訴訟が日本の最高裁に持ち込まれた場合、「本件は国家間条約に関わる案件であるから司法審査の対象としない」という判決となります。 

日本の最高裁にこんな日韓基本条約に関する判例が出せるわけがないだろう、帰れ、というわけです。 

この統治行為論は日本のオリジナルではなくフランスが起源であり、米国も採用していますから、近代法解釈のスタンダードです。 

しかし、韓国最高裁はムンが指名する最高裁長官がムンの意志を忖度して今回の日韓条約を否定する判決を出してしまったわけで、司法が国家間条約を超越してしまったことになります。 

Photo_2韓国最高裁 産経 

そして韓国政府(行政部)も、それを黙認することで追認する姿勢をとりました。 これがこの間のムンの不思議な沈黙です。

きっと支持したくてたまらないのでしょうが(なにせ自分が指示したんですらね)、そこまでやると条約の一方的廃棄となって、地獄の蓋を開けたような種々の問題が出てくるからです。 

日本政府としては、このイ首相の発言を受けて、正式に日韓請求権協定について見解をただすべきです。

Ajp20180419004200882_01_i聯合ニュース

ここから想定問答風にみていきましょう。 

韓国政府は今のイ首相の論法どおり、必ずこう答える筈です。 

「あの判決はあくまで三権分立に基づいた司法の独自判断である。韓国政府としては従来どおりの政府方針どおり廃棄する意志はない」 

ここで日本政府は、念押しせねばなりません。ここがキモです。 

「ならば韓国政府さん、貴国において日韓請求権協定を判断する権限は、貴国の司法にないのですね」 

そして畳みかけるように、こう続けるべきです。 

「ならば、貴国の司法判断が出した徴用工判決は無効であると確認するためにICJに共同提訴しましょう」 

これを呑むと韓国政府は、自分で自分の国の司法を訴えるという、世にも不思議な物語となってしまいます。 

そもそも韓国司法が政府を忖度して条約を超越したから、こういう矛盾を引き起したのです。 

それに気がついて韓国政府はICJに出ることを拒むでしょうが、別に驚くことはありません。 

「韓国政府さん、では日韓請求権協定を覆すのが韓国政府の新たな判断だと、解釈しますが、それでよろしいのでしょうか?」

はい、ここでこの想定問答の冒頭に戻ったことに気がつかれたでしょうか。

イエスと言えば、日韓条約を韓国政府が一方的廃棄したということになり、国際紛争を韓国側が引き起こしたこととなって、日本に大義名分を与えてしまいます。

ではノーと言えば、今度は自分の国の司法判断をみずから潰しにハーグまで行かねばならなくなり、大恥をかくことになります。

なんだどう出ようと結論は一緒じゃないかって、そりゃそうです(笑)。矛盾しているのは向こうの脳味噌ですから、こんなオーンゴールを演じるのです。

判決も恥ずかしいですが、恥の上塗りで、韓国政府が三権分立という聞いたようなことを言い訳にしているから、このような自縄自縛を引き起こしたのです。

 

 

 

2018年11月 8日 (木)

米国中間選挙はこともなし

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米中間選挙が終わりました。 

波瀾なし、想定どおりと、トランプは胸をなで下ろしていることでしょう。

え、メディアはねじれが発生したぞ、政権の前途に暗雲が立ち込めたぞ、って報じているって。 

なにぶん彼らはトランプ憎悪ですからね。割り引いて聞いて下さい。

お約束はこんなかんじでしょうか。NHKの昨日の解説です。、

「アメリカ議会の中間選挙について、上院はトランプ大統領の与党・共和党が多数派を維持する一方で、下院は野党・民主党が多数派を奪還することになりました。上院と下院で多数派が異なる「ねじれ」の状態が続き、トランプ大統領の公約の実現が一層厳しくなるとみられ、難しい政権運営を迫られそうです」(11月7日)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/us_election_2018/

Yjimage日経https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3746468007112

典型的な面白くもなんともない優等生解答ですね。

下院で負けたのは、歴代の大統領のジンクスどおりでだいたいの大統領は中間選挙で負けるのが習わしですから、特に驚くに値しません。 

前任者のオバマなども下院で落としましたが、2期めの大統領選では大勝しています。 

クリントンなどはもっとひどい。1期目の中間選挙では、上下両院ともににボロ負けしましたが、これも2年後の大統領選では勝利しています。 

そしてトランプが落とした下院は、日本でいえば衆議院的な地域密着、悪く言えば自分の選挙区にしか関心がないドブ板議員を集めたような議会です。 

ほら日本にもよく居るでしょう。選挙区は町内会の常会にまで顔を出すくせに、北の核についてはなんの関心もない代議士の手合いって。

米下院はこれに似た性格があるのです。

しかも任期は、上院が6年(2年で3分の1が改選)であるのに対して、下院はわずか任期が2年しかありません。

たった任期が2年間ていどというのも、短期があたりまえになってしまった日本の衆院に似ていますが、こんな短期でなにかやれと言われたら、選挙区のケア、有体に言えば利益誘導になりがちです。

もっとも日本と違って、大統領は公選で選ばれますから、上下両院で負けてもクリントンのように辞める必要はありません。 

日本の場合は、議院内閣制の決まりに従って、首相の地位自体が揺らいでしまいますが、トランプはやりにくくなるにすぎません。 

それとても、最後には大統領が法案の拒否権をもっているからです。

PhotoFNN https://www.fnn.jp/posts/00384730HDK

では、どのへんが「やりにくく」なるのでしょうか。これには、米国上院と下院の違いが分からねばなりません。 

上院が対外政策を審議する役割なのに対して、下院は内政を議論する立法府です。
アメリカ合衆国下院 - Wikipedia 

ですから、条約の承認、最高裁の判事任命の承認などに対する権限がなく、あるのは予算の承認です。 

確かに予算編成に当たっては、下院民主党の抵抗に遭遇することが予想されますが、全部の予算が否決されるというわけではありません。 

トランプが公約として掲げていた、オバマケアの廃止などはまったくの愚策ですから、公約が達成されないほうがいいくらいです。

そもそもオバマケアにいちばん反対していたのは、共和党内のジム・ジョーダンのようなフリーダム・コーカス(自由議員連盟)で、トランプの天敵とさえ言われてきたような連中の政策です。

ちょっと説明しておきます。

「フリーダム・コーカスは、減税及び財政規律を重視しています。この点において反オバマ色の強い保守系の市民運動である「ティーパーティー(茶会)」と類似しています。
次の税制改革でフリーダム・コーカスはトランプ大統領のインフラ投資に反対し、公約実現に対する阻害要因になる可能性が高いと言えます」
(海野素央 2017年4月10日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9335

よく巷では、見かけだけでトランプを極右呼ばわりする人がいますが、必ずしもそうではありません。

彼は一貫して財政拡大・減税・金融緩和という景気浮揚策をしてきたのであって、緊縮財政による「小さな政府」主義を旨とする共和党主流とは鋭く対立してきました。

また、「国境ある貿易」を復活させる、というアンチ・グローバリズムを前面に掲げました。

皮肉なことにはその経済政策においては、トランプはむしろ共和党本流よりもはるかにリベラル寄りなのです。

これが、米国に空前の好景気を招来したのであって、景気が絶好調なのに、メディアがいうような「求心力が弱まる」大統領なんかいません、って。

何か見たことがあるって、そりゃそうです。今うちの国でやっている経済政策ですから。

減税と反グローバリズム以外、アベノミクスとまったく一緒です。

むしろ安倍氏には、トランプの減税、反グローバリズム、そして財政拡大を真剣に学べといいたいくらいです。

ふたりとも間違ってもリベラルなんかには見えないところまで似ていますから、相性がいいのでしょう(笑)。

TrumpverteidigtpositionNHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181107/k10011701521000.html

それはさておき今回、トランプは共和党支持者と保守支持層の大半を固めたといいますから、共和党内で初めてしっかりとした基盤を作ることに成功したとも言えます。

ちなみに、共和党本流から彼らの意を体現する閣僚を押しつけられたために、トランプは頻繁に閣僚の首を飛ばすという荒療治をせざるを得ませんでした。

しかし、この中間選挙で共和党議員のお歴々はテッド・クルーズに象徴的なように、人気者のトランプに泣きついて議席を確保できたわけですから、異端扱いされてきた彼が正式に「共和党のオーナー」となったことに異議を唱えられなくなりました。

というわけで、民主党が下院で勝利したことは、メディアが評するように「政権運営が困難になった」ことにはならないのです。

むしろ逆じゃないかな。

トランプからすれば、お題目だけの民主党を外交・安全保障・移民政策で叩け、返す刀で共和党内のフリーダム・コーカスを潰すいい機会が生まれたのかもしれません。

そしてぶっちゃけ、こう言ってはナンですが、日本はトランプの反グローバリズムや財政拡大・減税というエッセンスだけを学べばよいのであって、基本的にはよそさんの国の国内問題にすぎません。 

わが国の官房長官が、結果を感想を聞かれてこう述べたのは当を得ています。

「日本政府は米中間選挙の結果に一喜一憂せず、引き続き日米同盟を外交の基軸に据え、北朝鮮問題などの国際情勢に対処する方針だ。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は7日の記者会見で「日米同盟は揺るぎなく、(米国の)共和党、民主党を問わず共通の認識が存在する。選挙の結果が日米関係に直接影響を及ぼすことはない」と述べた」(産経11月7日)

https://www.sankei.com/politics/news/181107/plt1811070016-n1.html

菅さんが言うように、私たち日本人にとっては、トランプの外交・安全保障政策が変更されたら一大事ですが、それが継続されればなんの痛痒も感じません。

今、わが国にとってもっとも困るのは、米国が対中圧力や北の非核化を投げ出してオバマ路線に戻ることです。

これをされれば、わが国は登った橋子をはずされた形になって、単独で中国の軍拡と北の核に立ち向かわねばならなくなるからです。

逆に、トランプと対立するメルケルや、イランは、「求心力が落ちた」と喜んでいる様子です。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181108-00000505-san-n_ame

というわけで、外交・安全保障に関して政権は信任されたが、内政には多少の修正をかけるかもしれない、というところでしょうか。

もっともその修正も、共和党本流の嫌がるようなオバマ・ケア廃止の妥協だったりするかもしれませんがね。

いずれにせよ、トランプが「今夜素晴らしい成功を治めた。みなさん、ありがとう」と言っているのは、ただの強がりではないのです。

 

2018年11月 7日 (水)

米国はとうに韓国を見限っている

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やっと韓国政府が徴用工裁判についての態度を公式に示しました。なかなかふるっています。 

「韓国の任鍾晳(イム・ジョンソク)・大統領秘書室長は6日、元徴用工による訴訟で日本企業に損害賠償を命じた韓国最高裁の判決に対する日本政府の反応に対し「非常に不適切で、遺憾だ」と不快感を示した。国会での議員からの質問に答えた。大統領府高官が最高裁判決をめぐって日本の対応を公の場で批判したのは初めて。
 また、韓国外務省当局者は6日、判決に河野太郎外相が「認められない。暴挙だ」などと反発していることに対し、「遺憾である」との立場を明らかにした」(産経11月7日)
 

「不適切で遺憾だ」そうですが、その理由がいかにもコリアコリアしているのが、私たちの微苦笑を誘います。 

「当局者は「韓国国民の感情を刺激する発言を続けていることを非常に憂慮している。特に韓国司法の判断に対し、節制のない言葉で評価するなど、過剰反応していることを強く遺憾に思わざるを得ない」と批判。「三権分立の原則に従い、行政府は司法判断を尊重せねばならない」とした」(前掲) 

おくめんもなく国民感情を表に出して国際紛争に対処しようというのですから、相手が愛国主義がタブーである日本でよかったですね。

とはいえ、今回は北海道新聞や「リテラ」周辺の左翼ライター以外は、判決に批判的ですから、日本にも「国民感情」があったことを発見して驚いたのではないでしょうか。

国心の発露が至上の価値である中国相手に、こんな判決を出したらただでは済みませんよ。

国交断絶、在中韓国大使追放、二国間貿易の完全停止、在中韓国資産の凍結くらいは覚悟せねばなりません。

どうせ日本は何も出来まい、遺憾でございますていどでお茶を濁すはずだと思って、初めからなめているからこんな判決を出せたのです。

さて、この「遺憾だ。理由は韓国国民感情を刺激しているからだ」と言ったイム・ジョンソク大統領秘書室長は、政権ナンバー2です。

日本には秘書室長というポジション 自体がありませんが、国政を動かす首相、検察と警察に強い影響力を持つ「青瓦台民政首席」と並んで、大統領の意を体現するのがこの「大統領室長」です。 

室長などというと、日本的感覚では中級管理職を連想してしまいますが大間違いです。 

強いて言えば、日本の官房長官に当たるくらいの権限を持っていますが、大統領制は首相よりもはるかに強い権限を持っていますから、やはり比べられません。 

Photo_2韓国の文大統領と(左2人目から)首相に指名された李洛淵氏、国家情報院長候補の徐薫氏、大統領秘書室長に任命された任鍾晳氏=5月10日、ソウルの大統領府(共同)産経2017年8月22日

上の写真の右端にいる、営業係長みたいな顔をしているのが、このイム・ジョンスクです。

任鍾ソク - Wikipedia 

この人物は分かりやすい履歴を持っています。混じりっ気なしのピュア従北派なのです。 

イム室長は、北のシンパなんていう小物ではなく、職業的北の代理人をしていた人物です。 

イムは大在学中から、日本でいえば全学連に当たる「全大協」の議長の座についていたというのですから、バリバリの極左学生だったのでしょう。 

イムを一躍左翼ワールドのスターにしたのは、まだ金日成が存命中の1989年に北朝鮮の世界青年学生祝典に、韓国代表として女学生の林秀卿出席させた指揮をとったことです。 

201206041326311世界青年学生祝典で金日成と抱擁しあう林秀卿

北との交流はまだ禁止されていた時期ですから、林が金日成と抱き合う姿は世界に華々しく伝えられました。 

もちろんこれを北は徹底的にプロパガンダ材料として使い回したのは、いうまでもありません。 

ちなみにこの林女史は、今、国会議員をしていて、脱北者を「この裏切り者め」と呼んだことで世間を賑わしました。

自分は北へ脱出したのにね。かつて祖国を裏切って北に渡った韓国国会議員が、北の圧政から逃げた人たちを「裏切り者」と呼ぶのですから、頭がくらくらします。

それやこれやでイムは、下の写真のように国家保安法違反で逮捕されて、服役したことがあります。 

2捕まった若き日のイム大統領室長

娑婆に出てからは、北の著作権業務の代行機関を運営し、南北共同事業をする「南北経済文化協力財団」理事長を努めています。 

ブレることなき、北の首領様マンセイの人生街道一直線です。

かつての民主党政権には、学生時代に火炎瓶を投げていたような人物が相当数いましたが、いまのムン政権も似たようなもの、あるいはそれ以上だと見えます。

イムはレッテル貼りではなく、文字通りの北のエージェントと評してかまわないと思います。 

このような人物が青瓦台の中枢にいるわけですから、米韓の軍事情報や外交機密はだだ漏れでしょう。 

ところでこの韓国政権中枢から中国や北に情報漏洩するのは、今に始まったことではありません。 

鈴置高史氏『米韓同盟消滅』によれば、この機密漏洩は金泳三時代から続いていたことで、特に奇異に思うことはないそうです。 

「1995年頃、米国の国防関係者が日本のカウンターパートに警告を発した。韓国金水泳三政権が日本の軍事機密を中国に漏らしているというのだ」(前掲)

 その韓国の情報漏洩のすさまじさについて、鈴置氏は米国防総省筋の話としてこう述べています。

「米韓が高官級の軍事協議を実施すると、その直後に韓国の情報機関トップが極秘訪中し、江沢民首席と面談し、米韓協議の内容を伝えている。
それを我々は黙って見ているのだが、韓国は露顕したことにきがついていない。
今後、日本は韓国に軍事情報を漏らしてはならない。漏らせば、すべて中国に筒抜けになる。
2000年に入った頃から、北朝鮮の諜報機関はスパイを南派する必要性がなくなった。外部から韓国軍内部に要員を浸透させなくても、情報は容易に入手できるようになったからだ。
韓国大統領の意向ひとつで、米韓連合軍のトップシークレットも北朝鮮最高責任者・当時は金正日国防委員長の机の上にすぐ置かれることになる」(同)

米国はこの悲惨極まるこの「同盟国」の裏切り行為に激怒し、ラボルテ在韓米軍司令官は離任にあたりこう韓国に述べたそうです。

「北と内通するな。お見通しだぞ」(同)

先日も記事にした米韓連合司令部が米国軍人を司令官にしているのは、朝鮮戦争時の国連軍の体制を引き継いでいるのが主な理由ですが、今やどこに内通しているかも分からないような韓国軍人をトップに据えられないからです。

このような北朝鮮支持者は、政界を筆頭に、財界、官界、教育界、学生層、そして軍隊にまでまんべんなく広範に広がっています。

従北派をガンに例えるならば、韓国はいまや全身に癌が転移した状態なのですから、北が南進する必要はもうありません。

熟した柿が落ちるのを待つだけです。その「柿」がムンジェイン政権です。

そのように考えると、この未来図の目の上のたんこぶは、そう、在韓米軍なのです。

在韓米軍こそが統一の最大の障壁、そう北とムンは考えているはずです。

米国はこんな韓国を既にかなり以前から愛想づかししていて、不良債権と考えるようになっていました。

その恥を知らない二枚舌ぶり、面従腹背ぶりには歴代の米国政権の悩みの種だったからです。

ですから、徴用工事裁判の結果を知っても、米国がナイーブに驚くはずがありません。

「あの国なら必ずそうするだろうと考えていた、なるべくしてこうなった、処置なしだ」、くらいが米国の感慨といったところでしょう。

トランプに限らず、民主党系議員に至るまでの共通の認識になりつつあるからです。

2022年のムンの任期までに有事作戦統制権を移管し、その後に在韓米軍は一部を残留させながら撤収方向に舵を切ることになるでしょう。

いったん決まれば、かつてのフィリピンからの撤収のように、瞬く間に米軍の姿は朝鮮半島から消えていきます。

スッキリと敵だった北朝鮮のほうよほど協議しやすい、こんな訳の分からない敵だか味方だか分からないようなコウモリ国家とは早くさっぱりしたい、これが偽らざる米国の本音のはずです。

米国にとって既に現在、いかに韓国からの出口戦略を具体化するかの段階になっています。

その場合、当然「統一朝鮮」も未来シナリオのひとつに入っているはずです。

ですから、今回の日本の厳しい対応は当然のこととして、米国の事前の了解を得てのことだと考えるべきです。

 

 

 

2018年11月 6日 (火)

見事に八方塞がりとなった韓国

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私は先月31日の記事で、韓国の徴用工裁判がもたらした結果をこう要約しました。 

①韓国政府は日本と正式に対立・紛争関係に入ることを宣言した
②米国を仲立ちにした対北朝鮮シフトである米韓日同盟からの離脱準備に入った
③北との融和はこれまで以上に強化する
 

さて今日は、この記事では変数が煩雑になるので触れなかった、米国、中国、そしてロシアの三大国の要素を入れて考えていきましょう。 

東アジアの地域情勢がどうしても複雑になるのは、この三大国が特定の狭いゾーンにひしめいているからです。 

下図をご覧いただければ、この狭い東アジア地域に三大国の核がひしめいているのがお分かりになると思います。 

Photo出典不明 

核が高度な政治のツールであると考えれば、この地域に大国間のパワーが密集して角を突き合わせているのが見て取れます。 

朝鮮半島の2国、そしてわが国は、好むと好まざるとに関わらず、その波間に揺れる舟のような存在です。 

では、大ざっぱに現時点での三大国の綱引きの状況を見ておきます。 

まず米国と中国の関係ですが、これ以上ない最悪状況です。この両国は歴史的な「新冷戦」に突入しました。 

中国に対する貿易関税戦争はただの始まりでしかありませんでした。

短期的には、人民元安に触れるので、かえって対米貿易を伸ばすことになるからで、実際に短期の貿易収支は米国の対中貿易赤字を増やす結果となりました。 

トランプが見ているのは単純な貿易赤字ではなく、自由で公正な貿易をしようとすれば必ず中国共産党が支配する中国経済の構造そのものと衝突することが不可避ということです。 

トランプが怒っているのは、中国は対米投資を自由にやって、米国企業を買収し、好き勝手に技術を抜いていくが、その逆に米国の対中投資は資本の自由が極端に制限されているということです。 

資本の自由、情報の自由、司法の自由、政治の自由がない中国は、自由貿易体制の敵であるばかりではなく、自由社会の敵だ、というのがトランプの主張です。 

これはかつて第1次冷戦における<資本主義vs共産主義>.という対立軸の、21世紀バージョンだといえるでしょう。 

この寝耳に水のような「新冷戦」の宣戦布告にもっとも驚倒したのは、.他ならぬ当の中国でした。 

中国はここで伝統的な外交戦略を取ります。日米同盟の分断です。 

中国の手のひらを返したような日本への秋波は、日本を抱き込むことで米国を孤立させようとする思惑から出ています。 

同じく、この米中「新冷戦」勃発に驚愕したのは北朝鮮でした。 

今まで足しげく習の元を訪れて、何事か謀議をこらしていた正恩は背筋に冷たいものが走ったことでしょう。

今の北朝鮮からすれば、少し前のように中国は米国の軍事攻撃の抑止にはならず、逆に中朝同盟を強化したりすれば、その巻きぞいを食いかねない恐れすら出ました。 

おお、危ねぇ。これ以上習とつるんでいたら、まとめてやられるところだったぜ、と。

そして改めて、シンガポール会談で米国との融和プロセスに入る意思表示しておいたことに胸をなでおろしたと思われます。 

ぎりぎりセーフといったところです。

Photo_2AFP 

もちろんこれは、軍事専門家が指摘するように核体系の完成までの時間稼ぎという側面がありますが、少なくとも、今までのように中国を後ろ楯にして妙に好戦的な言辞を吐いて緊張を高めるような路線には戻れないことは確かです。 

ロシアですが、ロシアはこの「新冷戦」において、米中どちらかに加担することはありえません。 

ただし米国が本気で中国の覇権主義の鼻柱を叩き潰すのは、プーチンにとっては楽しい眺めであることでしょう。 

トランプには、むしろこの時期はロシアと協調して、対中包囲網を強化したいという意図がありますから、ロシアと米国は互いに好意的な中立のポジションのまま推移すると思われます。

両国の唯一の喉に引っかかったトゲがINF条約離脱ですが、これもトランプが見ているのはあくまでも中国の中距離核であって、ロシアとことを構える気はありません。
関連記事「米国のINF条約離脱は一位二位連合による三位潰しか?」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/post-8eb2.html 

以上の東アジアの政治地図の変動を図式化しておきます。

①米中は「新冷戦」に突入した
②中国は日本と融和モードに入った
③北朝鮮は米国との融和モードに入った

④米国は韓国との距離を開けつつある
⑤ロシアは米国寄りの中立を保っている

Photo_3ムンさん、笑っている場合か 出典不明

て、ここで問題となるのは韓国です。 

私がこの徴用工判決と、それに続く有事作戦統制権の移管決定を聞いて、真っ先に感じたのは、「なんでよりによってこの時期に、こんな自殺志願みたいなまねするのか」という疑問でした。 

韓国は日本に対して、日韓基本条約が作り出した65年体制を総否定してみせました。

日本のばかな文化人が言うように、三権分立がどーとか馬鹿いいなさんな。

ムンはかねがね徴用工について韓国司法と同じ文脈の発言をし続けています。

2017年8月25日の安倍首相との電話会談の時の発言です。

「1965年の日韓請求権協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)で元徴用工の個人請求権は消滅していない」

そして今回の徴用工判決をだした最高裁長官は、ムン直接の政治任命です。

「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が指名した金氏は人権派の判事として知られる。過去2代の保守政権下で最高裁は日本統治時代に朝鮮半島から動員された徴用工についての判決を見送ってきたが、金氏の就任で裁判への影響を指摘する声もある」
(日経2017年9月21日)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H4M_R20C17A9FF1000/

この最高裁長官人事があまりにも偏っているとして、韓国議会の人事聴聞会ですら問題となったほどです。

「金氏は地裁、高裁の判事を歴任し、2016年に春川地裁の裁判所長に就任した。人事聴聞会の報告書では「実務に精通した適任者」との肯定評価と、文政権に近い進歩的な政治信条から「司法の中立性」を疑問視する否定評価が併記された」(前掲)

このように韓国内部ですら中立性が疑問視される人事だったわけで、この最高裁判事はムンが徴用工裁判において、己が意志に従った判決を出させるための人事だと分かるでしょう。

この流れをみれば、三権分立などというのは建前だけにすぎず、実際は韓国政府の正式な意思表示そのものなのです。

仮に判決が韓国政府の公式の立場でないというなら、歴代の政権のように「個人請求権の所在はわが国ある」と明言しなさい。 

韓国政府は、いまだこの問題がいかに巨大な日韓関係の地殻変動を引き起こしたのか自覚していないようです。

酔狂にもムンのために弁護してやれば、徴用工問題は就任以前からやる気を公言していましたし、有事作戦統制権移管合意もたまたまこの時期に当たったともいえないではありません。

ですから、よりにもよってこの激動期にドンピシャでこの二つの決定打を放ったのは、ただの偶然だったかもしれません。

えてして歴史はこういう耐えられないほど軽い男に、重大な決定を丸投げしてしまう皮肉屋なのかもしれません。

ムンは今、判決に沈黙していますが(※)、それは己の決定の重さに度肝を抜かれているのかもしれません。
※大統領府は「関与しない」そうです(爆笑)。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181104-00000001-asahi-int

いや、単純なムンのこと、ウェノムをやっつけてやってセーセーしたぜ、と思っているのかしらん。(あの軽そうな男ならあり得る)

生憎ですが、これは韓国が米国を仲立ちにする米日韓安全保障体制からの離脱の意志を示したに等しい行為です。 

この愚行はこの間トランプを苛立たせていた北への極端なすり寄りとあいまって、米国の韓国離れを決定づけました。

つまり日本とは断絶、米国にも見放され、では中国に抱きつくのかといえば、米国との完全断絶を招くためにその度胸もなく、それも無理ということになります。

なんせ、韓国の陸海空の兵器体系は完全に米国製ですから、関係が断絶すれば事実上国軍は半身不随に陥ってしまいます。

かといって米国と共に対中包囲網に加わろうにも、中国様は最大の貿易相手国ですからねぇ。

両属国の悲哀です。

残るは、北の盟友の正恩としみじみすることですが、正恩からすれば、米国に影響力が少しはあるからパシリに使っていただけのことで、ここまで米国に見放された韓国に用はありません。 

というわけで、ムン・ジェインは見事なまでの八方塞がりとあいなってしまいましたとさ。

自業自得です。

■蛇足 昨日記事にあった、ソウル市内の西大門刑務所の跡地(西大門刑務所歴史館)で土下座していた人物は鳩山元首相です。
https://www.sankei.com/west/news/170417/wst1704170001-n1.html

 

 

 

2018年11月 5日 (月)

徴用工問題は第2の慰安婦問題に成長する可能性がある

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韓国司法と死闘を繰り広げた経験がある、産経前ソウル支局長・加藤達也氏が、日韓紛争が「長期化に入る鉄板のサイクル」が、今回の徴用工判決にも現れていると述べています。 

箇条書きにして紹介します。(産経11月4日)
https://www.sankei.com/premium/news/181104/prm1811040014-n1.html 

日韓が長期化に入る定石のサイクル
[第1段階]反日の土壌に日本統治時代の“記憶”が目覚め
[第2段階」共感・同調圧力が作用し
[第3段階]人権やプライドの問題とすり替えられて活動が組織化し
[第4段階]司法・行政府が世論を忖度した判断や方針を示して公認し
[第5段階]日本に善処を要求する
 

この流れは、加藤氏によれば、「慰安婦問題、かつて筆者が当事者となった朴槿恵(パク・クネ)前大統領との法廷闘争、さらに「旭日旗」問題もそうだ」といいます。 

なるほどいわれてみればそうです。 

加藤氏によれば、現在は④から⑤への移行期だそうで、韓国は定石どおり「日本政府の善処を要求し、未来志向で発展させたい」のだそうです。 

「李洛淵(イ・ナギョン)首相名で、司法判断を尊重▽対応策を準備▽日韓関係を未来志向的に発展させることを希望-と表明した。これは定石パターン④の段階に来たから、次は⑤になっていくので、よろしく-と読み替えると理解しやすい」(前掲) 

「未来志向」ですか、何回この言葉を聞いたことか。韓国政権が反日政策を取る時の一種の枕言葉のようなものですから、この白々しさに特に驚きはありません。 

この「日韓鉄板のサイクル」は、無限ループ構造となっています。

第5段階までいくと、日本政府はいちおう口では遺憾の意は表しながら、今までなら必ず謝罪して鎮静化しようとします。 

これを日本政府は長年、「冷静な大人の対応」と称してきました。あまりに日本的です。

日本社会特有の白黒をはっきりさせず、ともかく相手様は怒っておられるんだからひとまずは頭を下げておこうと、儀礼的に謝罪することをしてきました。

商品トラブルがあれば、原因もわからないうちから担当者が「申し訳ございません」と土下座し、その後に原因究明調査をするようなものです。

日本社会では、儀礼的に謝るのは社会の潤滑油みたいなものですし、本心から悪いと思っていませんから、表現もおのずと「遺憾でした」とか、「あの不幸な時代」といったぼやかした表現になります。

本気で謝ると、こういうことせねばならなくなります。土下座しているのは平和の使者のハトさんです。

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本来、反論の役割があるはずの外務省は韓国との摩擦を恐れて、在外公館に対して一切の反論を禁じることすらしてきました。

かろうじて口を開けば、「もう既に謝っている」ですからね。

あたりまえですが、こんな日本人的な行為は韓国人にはまるで通用しませんから、「心がこもっていない」と言われて、結局のところ「日本は謝っていない」と決めつけられるはめになります。

日本人の間でしか通用しない慣習を、国家間外交においてやってしまったのですから、韓国もさることながら日本も充分に馬鹿じゃないかと思います。

しかも謝罪とワンセットで賠償金(名称は経済協力ですが)まで支払ってしまうものですから、韓国政府の言い分が正当であることを日本側自らが裏付けた形になってしまいました。

ちなみに、今まで何回くらい日本は韓国に謝ってきたのでしょうか。

えー、願いましては、1982年8月24日の鈴木善幸首相から始まり、1984年9月7日の昭和天皇、1990年5月の今上陛下を経て、2016年12月28日の安倍首相の「日韓慰安婦合意」謝罪まで、と実に16回に及びます。※2015年の間違いでした。ご指摘に感謝します。

それで和解が成立すると思いきや、あたりまえのように韓国は第1段階に戻って、またまた「日帝36年の悲劇の記憶」がよみがえって、あらたなネタが登場することになるというわけですからたまったもんじゃありません。

いや、日帝時代など手ぬるいかもしれません。先日の軍艦旗事件を振り返ると、次は文禄・慶長の役に対する謝罪と賠償まで言い出すかもしれませんね(ぬるく笑う)。 

Photo出典不明 

国家間外交において一方的に謝罪するというのは、極めてレアなケースですが、これを16回もしてしまった国も珍しい。

いくら謝っても挺対協のような団体から、「日本は人道犯罪を認めず、謝罪も賠償もしないという認識」(前掲)を広められ続けてきました。 

なお「賠償はしていない」というのは、前回説明しましたが、韓国政府に一括で支払ったものを経済開発に流用してしまったからです。

それを韓国政府は民間に秘密にしていたために、「賠償していない」というデマが流布したわけです。

大方の韓国人は、日本政府が公式に謝罪したことすら知らないといいますから、なんのために謝ったのやら。

Photo_2聯合 

あげくは、世界各地で韓国政府・民間共作の反日プロパガンダ大会を開催されたあげく、,慰安婦像なるものまで世界各地仁登場し、日本が辟易して謝罪すればしたで、これがまったく終わらずに再び振り出しの第1段階に戻ってしまうのですから、脱力するというか、なんともかとも。 

今回も韓国は、まったく同じコースをとるはずです。 

今後ありうる韓国の対応としては、政府はこの判決を「三権分立」を楯に肯定した上で日本に善処を要求しつつ、次の一手として、再び慰安婦問題のような世界化への道を選ぶはずです。

なぜこんな国際環境が厳しさを増す中で、日韓関係を悪くできるのか日本人には想像もつきません。

頭を冷やせば、かつてのそれなりに東アジアが安定していた時期と違って、民族感情を煽り立てていい時期かどうか、多少はわかりそうなものなのに、これがコリアにはわからないんですなぁ。

客観的であるべき韓国新聞記者の意見すらこんなレベルです。(楽韓さんサイトの採集による)
http://blog.livedoor.jp/rakukan/?p=2 

「-韓国人は昔の取り決めを、現在の物差しでひっくり返す、という批判もありますね。
・宋 過去の約束が「お話にならない」と思うから、ひっくり返すのではないか。
・李 請求権協定の締結当時、個別の被害者について突っ込んだ言及がなかった。あいまいに処理したから、今の問題がある。合意した韓国にも問題があるのではないか」

韓国人徴用工判決とは何だったのか 韓国人記者が語り合う(朝日新聞GLOBE+)

ね、まるでわかっていないでしょう。韓国社会の大インテリ先生たちですらこうです。

国家間条約なんぞ不具合があれば一方的に廃棄できるのだと考えているようですから、次のステップに自動的に入ることになります。

具体的には、判決の執行です。

敗訴した日本企業の韓国国内は言うに及ばず、在外財産まで差し押さえていきます。

これは既に、この徴用工裁判の韓国側弁護士が口にしていることです。 

「外国に新日鉄住金の財産があり、その国が韓国の判決を承認すれば、その財産を強制執行(で差し押さえ)できる」(産経前掲)

在外財産を差し押さえるに際して、慰安婦問題と同じく国際社会を舞台にして定番の韓国政府・民間共同による反日プロパガンダを大々的に行うはずです。

それも世界各地の当該の日本企業に対して、同時多発で当地の裁判所に提訴し、徴用工像を建てることをシンボルとします。

2出典不明 

その場合、「人権」というもっとも先進国の弱い脇腹を刺してきますから、それなりに効果は上がるはずです。

事情を知らない海外メディアはコロっとなびいて、「徴用工の悲劇」を書き立てるかもしれません。

外国人は日本人ですらあやふやな日韓請求権交渉の過程など知るよしもありませんし、請求権協定の結果をふりかざす日本政府が、「法匪」に写ることでしょう。

その場合、日本政府の表面的には感情のこもらない条約解釈論をおしのけて、第2の慰安婦問題に成長していく可能性があります。

その場合、日本のメディアもまたこの風向きを見て、また元の路線に復帰することでしょう。

その場合、この徴用工問題は延々と長期化し、泥沼化していくことになります。

そうならないためには、今の初動段階でこの芽を断ち切る以外にありません。

日本政府は国際裁判所に提訴する方針のようですが、韓国政府は敗訴を予想して合意しないはずです。

ならば、日本政府はその過程をしっかりとソフトパワーで海外に拡散していかねばなりません。

それを怠ると、韓国の言い分のみが国際社会に浸透し、またもや苦杯をなめることになるでしょう。

 

 

 

2018年11月 4日 (日)

日曜写真館 日の出前の散策

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2018年11月 3日 (土)

徴用工裁判は訴える方角を間違えている

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徴用工判決の問題は、朝日まで含めて韓国批判の矛先が揃いましたが、意外なところから異論が飛び出しました。 

橋下徹氏です。いつもながらなかなかユニークです。

これは彼のメルマガなのですが、要約がBLOGSサイトに載っていますのて、そちらを参考にさせていただきます。ありがとうございました。
https://blogos.com/article/335611/ 

橋下氏の上記サイトのまとめを、更に簡潔にしてみました。 

①日本政府は平和条約などでは個人の請求権は消滅しないと言っていた。 

②日本の最高裁も、個人の実体的請求権の完全消滅までは言い切っていない。 

③世界では宗主国が旧植民地に対して悪しき効果が残存している場合には責任を負う流れにもなっている。 

なるほどねぇ。 彼らしく理路整然と間違っていますね。

1965年の日韓請求権協定と経済協定によっても、個人の実体的請求権は消滅していないから,、徴用工の訴訟もその判決も間違っていない、ということですか。 

橋下さん、そりゃ勘違いですよ。仮に日本の最高裁が「請求権の消滅」とまでは言っていないとしても、だからなんなんです。 

請求権が残っていたとしても、なにも日本側の結論は変わらないのです。 

Photohttps://www.sankei.com/world/news/181030/wor181030

なぜなら、徴用工の個人請求権は消滅していないとしても、訴える相手を間違えているからです。 

彼らが訴える先は、日本企業でもましてや日本政府でもなく、韓国政府なのです。

元徴用工(元慰安婦も同じですが)などが個人補償を貰っていないのなら、どうぞ韓国政府にご請求下さい。

ご説明しましょう。

多くの人が誤解している節があるのですが、日本政府は個人の請求権を拒否していません。むしろ直接に日本政府が支払おうと、言っていたくらいです。 

日韓請求権協定は1966年にまとまるのですが、なんとまとまるまで14年間というマラソン交渉をしています。 

その時の舞台が、日韓で1252年1952年に作った協議機関の「財産権請求委員会」です。※1952年の間違いです。 

この時に韓国政府が日本に突きつけたのが、「対日請求要綱」で、全8項目の5項目目に、韓国は「被徴用韓国人の未収金およびその他請求権を返済すること」を求めています。 

で、日本はそれを突っぱねたかって?とんでもない一部を除いて丸呑みしたのです。 

問題は個人請求権は認めるのはいいが、それをどのように処理するかでした。 

韓国政府に対して支払うのか、個人に支払うのか、の2択です。 

日本側は、韓国が上げた対日債権である韓国人軍人軍属、官吏の未払い給与、恩給、接収財産といった個別償還を認めたうえで、一括政府支払い方式を提案しました。 

519出典不明 

韓国は政府一括でもらって、なお、個人請求は残るとしたのです。

おっと、コリア、こりゃムシがいいぞ。 

韓国の主張の主張がとおると、条約締結後も個人請求権が残ってしまいます。 

日本側としては韓国政府に対して個人賠償分を払って、その後にまた訴訟を起こされるたびに韓国人個々に払うという二重払いになってしまいます。 

これではなんのために請求権協定をしたのか、その交渉意義がわからなくなってしまいませんか。 

だから日本側は、個人賠償を韓国政府に支払うのはいいが、すべてをこの日韓交渉で処理して終わりにすべきだと主張したのです。 

つまり日本は個別請求権を認めた上で、その全額を韓国政府へ一括で支払うとしたのです。 

これは国際法的にも認められている「一括補償協定」(Lump-sum-settlement)方式と呼ばれるものです。 

韓国側が要求した金額は、61年の交渉で韓国徴用被害生存者1人あたり200ドル、死者1人あたり1650ドルずつ、計3億6400万ドルでした。 

日本は無償で3億ドル支払っていますから、(別に有償で2億ドル、民間借款で3億ドルが追加されて合計8億ドル)、ほぼ満額回答です。

額そのものよりも、その名目を「植民地支配の保証」とするか、「新独立国への経済協力」とするかで、また一悶着あったのですか、それは別のテーマなので今日は触れません。 

結局どうしたかといえば、日韓は妥協したのです。 

金額は韓国のご要望どおりほぼ丸呑み、ただし日本は「植民地」ではなく合邦だったのいうのが建前ですから、あくまでも「経済支援」(独立祝い金)、個人請求権は払うが、それは政府一括とするとなったのです。 

韓国は実を取って名を捨て、日本は実を譲って名をとったとも言えます。

ここで有名な請求権協定のあの一句の文言が歴史に登場します。

「両国は請求権問題の完全かつ最終的な解決を認める」
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本

付帯する日韓請求権協定合意議事録2のgにはこうあります。(ゆうさんご教示ありがとう)
http://www.f8.wx301.smilestart.ne.jp/nihonkokai/zaimusyo/zaimusyo-2/139.pdf

「同条1にいう完全かつ最終的に解決されたこととなる両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題には、日韓会談において韓国側から提出された「韓国の対日請求要綱」(いわゆる八項目)の範囲に属するすべての請求が含まれており、したがつて、同対日請求要綱に関しては、いかなる主張もなしえないこととなることが確認された」

もうお分かりでしょう。

橋下氏は日本の最高裁判決文は読んでも、ちゃんとこの請求権協定の交渉経過を追っていないし、条約に付随する交渉議事録も読んでいないから、ああいうことが言えてしまうのです。

日本の最高裁が、「個人の実体的請求権の完全消滅までは言っていない」のはとうぜんです。

だって日本政府は、個人請求権が「完全消滅した」なんて過去も現在も言っていませんからね。

言っているのは、個人請求権は一括して韓国政府に支払ったので、もう「(韓国政府は)いかなる主張もなしえない」ということです。

請求するなら、一括で個人の代わりに受け取ってしまい、それを国民に周知することもせずに、うやむやにしてしまった韓国政府に言え、ということです。

 

2018年11月 2日 (金)

有事作戦統制権移管 ムンの超高速国家破壊

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あー、また韓国がやっちゃっいました。この国、意味がわかってやっているのかな、という感じです。

 米国は韓国との有事作戦統制権の移管に合意したそうです。 

立て続けに、韓国が70年間乗っていた存立基盤を自らぶっ壊しているムンの早業に、もう私、ついていけません。

お願いですから もう少しゆっくり壊してくださいな。

昨日来取り上げている請求権判決といい、真面目に国家運営を考えているならとてもできないことばかりです。 

それをサラサラとやってのけるムンの手際の良さは、かつての日本の民主党政権以上の超高速で、恐ろしさを通り越して爽快さすら感じるほどです。 

これは日本に対する請求権判決より、彼らに直接の影響が発生するはずです。 

日本の愚昧なメディアは、例によってハローウィンの渋谷のバカ騒ぎのほうが大事らしくこのニュースの重要性を理解していません。

韓国の報道から引きます。 

「■米軍からの有事作戦統制権移管 文大統領任期内の可能性も  

韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官とマティス米国防長官は31日(現地時間)、ワシントンで開かれた韓米定例安保協議(SCM)で有事作戦統制権移管後の連合防衛態勢の大枠を盛り込んだ連合防衛指針に署名。米軍主導の韓米連合軍から韓国軍への作戦統制権移管に備え、韓国軍主導の将来の連合指揮体系を検証する手順のうち、基本(初期)運用能力(IOC)の検証を来年から実施することで合意した。
 基本運用能力の検証を終えた後、2020年に完全運用能力の検証、21年に完全任務遂行能力の検証を実施すれば、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期最終年の22年に有事作戦統制権の移管が可能との見通しも出ている。
 ただ、段階別の検証作業を終えたからといって無条件で移管されるわけではない。
韓国と米国は14年のSCMで「条件に基づく有事作戦統制権の移管」の原則に合意し、
①韓米連合防衛を主導できる韓国軍の中核軍事能力確保②北朝鮮の核・ミサイル脅威に対する韓国軍の初期必須対応能力の確保③有事作戦統制権の移管に適した朝鮮半島および地域の安全保障環境――の3条件を満たしてこそ移管が可能だと念押しした」(聯合11月1日)
 

Photo_3聯合

まず有事作戦統制権は日本にない概念なので、そこから押えておきましょう。
米韓連合司令部 - Wikipedia 

実は韓国軍は自衛隊と違って、有事において独自に自分の軍隊を動かすことができない仕組みになっています。 

この指揮権は、米国軍人が司令官をつとめる米韓聯合司令部(ROK/US Combined Forces Command)が持っています。 

これは朝鮮戦争が休戦状態だからです。平和条約が締結されて、国連軍が任務を終えて初めてこの戦時体制が解除されるという段取りになります。 

ただし、1994年から平時の作戦統制権は韓国軍へ移管されています。 

この米国軍人が指揮官というのが肝で、韓国軍人は副司令官にしかなれません。  

いちおう建前としては、この米韓合同司令部は、韓国大統領の指揮下にあります。 

しかし、トータルな軍の戦略や具体的な作戦指針、部隊の編成などは、この米韓合同司令部が握っていますから、現実にはこれを無視してはなにもできないのです。 

つまり外見は韓国が軍事主権をもっていますが、実際に有事になると米軍司令官が指揮権限を持っているということです。 

この状況は見ようによっては属国か保護国のような気分がするとみえて(実際にその側面もないとはいえませんが)、韓国はかねがねこの戦時統制権を返せと言ってきました。 

返せ、いやちょっと待ってくれというジグザグ運転を韓国政府は演じてきました。 

2014年には翌15年に韓国の要請で、有事作戦統制権を返すことに決めておきながら、言い出しっぺの韓国のほうが「ちょっと待って、2020年代中頃まで延ばしてくれ」、という始める始末。 

ああ、見苦しい。一国の政府が他国に要請を出したり引っ込めたり、延ばしたり、ありえない醜態です。 

これはハッキリ言って、韓国にはいざという時になって、自力で「ソウルを火の海」から守れないのが自分でも分かっているからです。 

韓国軍には戦時に作戦を自力で完遂する能力はない、だから米国が指揮権を持っているしかないのだ、これが米国の親心だったのです。 

その証拠に、少し前までは、米陸軍第2師団というフル編成の精鋭師団が、38度線のすぐ南、ソウルより北に駐屯してトリップワイヤーの役割を買って出ていたほどです。 

トリップワイヤーとは、沖縄の海兵隊もそうですが、「これに手を出したらヤバイ」と相手に思わせる抑止力のことを指します。 

置いている国にとっては、大きな声では言えませんが、米第2師団や沖縄海兵隊は、「人質」のようなものです。 

韓国には妙な勘違いがあって、ここまで米国に厚遇を受けているのだから「あたしってスゴイ美人だから、こんなにもててるのね」とホンキで思っていた節があります(違うって) 

困ったもんです。韓国軍がまともに一人立ちできない軍隊にすぎず、それを米国が熟知していたからにすぎません。

米軍がそもそも朝鮮半島などという、彼らの感覚では辺境にいねばならなくなった理由は、韓国軍が大変に問題ある軍隊だったからです。

朝鮮戦争時には、中国軍が攻めてくると蜘蛛の子を散らすように我がちに逃げて、北のゲリラに合流してしまう奴まで出てくる始末でした。 

後にベトナムに連れていけば、ろくに北の正規軍とは戦わず、民間人殺しにばかり精をだしたあげく(下図参照)、混血児を大量に置いてくる、というていたらくです。

2http://www.mercury.sannet.ne.jp/emadukawiemogosi/1112KankokuNoSensooHanzai.html

こんな過去があるだけに、米軍はもちろん表だっては言いませんが、オレが監督していないとこいつらは使い物にならんと思っていたようです。

この米国の機微を韓国は理解しておらず、米軍を置いてやっているのだから、その見返りになんか寄こせ、みたいな発想になっているところがスゴイといえばスゴイ。 

保守派はあるていどはその意味を理解していたでしょうが、左翼は北に極度に融和的ですから、その絡みからも在韓米軍の撤退をスローガン化していました。 

Photo_2http://parstoday.com/ja/news/world-i12553

上の写真は反THAADデモですが、なんか猛烈に既視感がありますが、まぁいいか。 

ムンはいうまでもありませんが、この反米親北運動から出た人物ですから、米軍を撤退させる究極目標の第一歩としてこの有事作戦統制権を返還させることを狙っていました。 

ですから、ちらちらと早く返せという外交カードに米国に出してみたら、なんとあっさりマティスがいいですよ、そうしましょうと言われたという体たらくです。

トランプのような口が軽い人物が言うのではなく、沈思黙考タイプの哲学軍人タイプのマティスか言うのですから重い。 

返すことに合意という意味は、米軍はいかなる場合でも他国軍の指揮下に入らない鉄則がありますから、即、米軍は韓国軍と合同司令部は持たないことを意味します。 

裏返せば、ムンからすれば有事に米軍の指揮下に入って、北と戦うのですから、とんでもないといういうことで、この願いがついに叶ったわけです。

有事統制件権が韓国に移管されれば、従来は何か有事が起きた場合には在韓米軍は自動的に参戦する仕組みでしたが、移管以降は米韓安保条約があろうとなかろうと、その都度の判断になります。

仮に米大統領が戦争権限法を行使して出動を命じても、60日以内に議会の承認を受けねば撤退せねばなりません。

これだけ裏切りを重ねられて煮え湯を飲まされた後ですから、今の米議会が承認を与えるか微妙なところでしょうし、そもそも大統領がゴーというかさえ怪しいものです。

もちろんいきなり移管というのではなく、中間的な段階措置は決められています。

「在韓米軍と関連しては、韓米相互防衛条約の象徴であることを踏まえ、移管後も朝鮮半島に駐留を続けることが記された。
 また、有事作戦統制権の移管後も現在の韓米連合軍司令部形態の指揮構造を維持するものの、連合軍司令部の司令官は韓国軍大将、副司令官は米軍大将が務めるとの内容が盛り込まれた。現在の韓米連合軍司令部では米軍大将(在韓米軍司令官)が司令官、韓国軍大将が副司令官を務めているが、これが逆になる形だ」(聯合11月1日)

http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2018/10/31/0900000000AJP20181031002800882.HTML

まぁ、実際は日本などの関係国にショックを与えないために書いておいただけのことです。

聯合が報じているように、「連合軍司令部の司令官は韓国軍大将、副司令官は米軍大将が務める」ことなどは、先ほども述べましたが、米軍は他国軍隊の指揮下には絶対に入らないという鉄則がある以上、現実には絶対にありえません。

ですから、有事統制権が移管されれば、あとはもう一気呵成に在韓米軍撤退への道筋が開かれることになります。

ムンが在任中にということですから、2022年以降のある時期に在韓米軍が消滅のカウントダウンが開始されることになりました。

在韓米軍が撤退することは、米韓安保条約も空洞化することに等しいですから、遠からずこちらも廃棄の運命となるでしょう。

ここまで来ると韓国からではなく、愛想尽かしした米国のほうから別れ話を切り出すかもしれません。

超特急で国を壊していくムンに、思わず歓声を送りたくなります。

ああ、国が潰れていくって、こういうことだったのね、としみじみします。

■改題し、扉写真を差し替えました。いつもすいません。

 

 

 

2018年11月 1日 (木)

HYさんにお答えして 韓国は戦後国際秩序の枠組みから出ていこうとしている

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コメント欄に入れたのですが、長くなったので本記事にします。

HYさん。私も山路さん流の日韓は共同して米国と共に中国・北・露と対峙せねばならないという意味で、「親韓派」でした。

別の言い方をすれば、それは戦後の国際秩序の枠組みを肯定するという意味です。

ですから、私は貴兄のように「戦後の日本外交そのものを悲観して」はいません。

そう簡単に我が祖国は、「敗戦から立ち直れない慢性的な敗北主義」の軛から自由にはならないのです。

というか、過去の戦後外交はいたるところで屈辱的であり、時に歪んでいたとしても、戦後国際秩序の中に敗戦日本を位置づけようとした先人たちの努力には敬意を抱くべきだと考えております。

今回の徴用工判決は、サンフランシスコ条約を法的根拠とする戦後処理を定めた請求権協定を否定しています。

つまり韓国は、民族感情を国際秩序の上位概念としているともいえるわけてす。

一方、対する日本は、常に国民感情を国際秩序の下位に置いてきました。

日本が韓国に過度な気配りをしたのは、韓国に対してではなく、実は米韓同盟という楯によって中国と北朝鮮と対峙している米国に対してでした。

貴兄が反対するのはわからなくもありませんが、私は米国からの要請があるかぎり、慰安婦問題において一定の妥協もやむなしと考えていました。

また、ガラス細工のようにもろい日韓関係をこれ以上悪化させないためには、ピョンチャン五輪の開会式に出るていどは呑むべきだと思っていました。

そのていどには私は「親韓派」なのです。

しかしその持論を、こんなに早く変えねばならないとは思っていませんでした。

前回2012年の徴用工裁判で日本企業の責任を認めた元最高裁判事は、今回の判決を聞いて、「自分はかつて建国する心情で判決を出した」と述べました。

「建国」ですか。いい得て妙です。

というのは今回の徴用工判決は、とりもなおさず、韓国が戦後国際秩序の枠組みから脱するという意味で「建国宣言」にほかならないからです。

私たち日本からみれば、それは韓国による戦後の国際的枠組みのあからさまな否定です。

あちらが出て行きたいというのですから、私たちは引き止める道理はありません。統一朝鮮でもなんでも勝手に作ればいいのです。

このような情勢で、日韓関係が「危険水域にならない」と見る韓国ウォッチャーは皆無です。

温厚な武藤元駐韓大使ですら、「これからなにが起きても韓国を助けようという気持ちは親韓派にもなくなった」という意味のことを話しています。

韓国が色気を出しているTPPや日韓スワップ、ましてや韓国経済がデフォールトを起こそうが、前の時のように救助する理由はありません。

勝手に出て行ったのですから、勝手に死になさい、と言うだけです。このような「国民感情」は、なにも韓国の特産品ではありませんからね。

むしろ溜めに溜めてきた怒りのマグマは、年中小出しにしているかの民族より我が民族のほうが大きいかもしれません。

武藤氏など穏健なほうで、私が知るすべてのコリア・ウオッチャーが、日韓関係の崩壊を予想しています。私もそうなると思います。

貴兄は「そうなってはまずい」という主観と、客観的評価が混在しています。

確かに「そうなってはまずい」のですが、「そうなってしまった」以上ありません。

明日か明後日に書く予定ですが、私は38度線は対馬まで降りてくると思っています。

戦後日韓関係の基礎の基礎を破壊された以上、それは遅かれ早かれ必然でしょう。

C0a8ca3c0000015ff83c74f0009edbf_p2聯合

米国は既にコリアを不良債権と見なしています。

そう遠くない時期に、在韓米軍は段階的縮小、ないしは撤退するでしょう。

そんなことを考えていると、請求権以上に韓国を揺るがしかねないことが起きました。

かねてから時間の問題とされていた、戦時統制権がついに解消されることになったのです。

「韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官とマティス米国防長官は31日(現地時間)、ワシントンで開かれた韓米定例安保協議(SCM)で有事作戦統制権移管後の連合防衛態勢の大枠を盛り込んだ連合防衛指針に署名。米軍主導の韓米連合軍から韓国軍への作戦統制権移管に備え、韓国軍主導の将来の連合指揮体系を検証する手順のうち、基本(初期)運用能力(IOC)の検証を来年から実施することで合意した」(聯合11月1日)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2018/10/31/0900000000AJP20181031003300882.HTML

どうやら韓国は「建国」ならぬ亡国への最後の蓋を開けてしまったようです。

このことは、戦後日本の安全保障を根底から変えていくことになるでしょう。

これは楽でないことに決まっています。日本は、3正面で安全保障体制を構築せねばなりませんから。

その事態を回避したさのあまり、韓国に迎合すればどうなりますか。

仮にここで朝日や東京、北海道新聞のように、またまた謝罪して慰安婦癒し財団ならぬ「徴用工癒し財団」を作ったとしても、必ずまた別の問題を吹っ掛けてきます。

永遠のループなんですよ。

浜の真砂は尽きるとも、コリアに反日のネタは尽きないのですから。

平地に乱を起こし、火のないところに煙どころか火事にしてしまい、無から有を作ることができる、世界一のファンタジスタ民族ですからほ、あそこは。

だから日本側が、「韓国ぬきの東アジア」「在韓米軍なき東アジア」を真面目に考えねばならない時期にあたっているのです。

「ただ耐えるしかない」時代は終わりつつあります。

戦後レジームは、望むと望まざるとにかかわらず、準備が出来ているか否かを問わず、刻々と地殻変動を起こしているのです。

それを見ないようにするか、自覚して議論するかどうかだけの差だけです。

退屈な劇が退屈に進行する

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退屈な劇が退屈に進行しています。

劇中の登場人物は変わったものの、一方から見れば、相手変われど主変わらずといったところです。

背景も道具立も、なんの工夫もないまま臆面もなく使い回しているのですから、当然ではあります。

石井国交大臣が、承認撤回の効力を差し止めました。

「石井啓一国土交通相は30日、沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄県による埋め立て承認撤回の効力を一時的に止める執行停止を決定した。不服を申し立てていた沖縄防衛局は近く工事を再開し、年内に土砂投入に踏み切る構えだ。
一方、玉城デニー知事は執行停止決定を不服として、第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出る意向を示した。法廷闘争に発展する可能性が高い」(沖タイ10月31日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/337795

特に感想はありません。

ルーキーのデニー知事はともかくとして、謝花副知事がこの国交省決定に、真に驚いて怒ったというなら、熱はありませんかとオデコに触りたくなります。

しかし劇中の人物である以上、、ここは一番、怒りに燃えて抗議せねばなりません。

退屈で当然。前回の翁長時代と同じことをしているのですから、同じようになるというだけのことです。

次は「国地方係争処理委員会」に訴えて、そこでも決着かつかずに、訴訟という見飽きたリプレイとなります。 

おそらく100%、県は訴訟沙汰に持ち込むでしょう。それしか県には取る道がないからです。 

一方、承認撤回の法的効力が停止したので、国は今週にでも工事を再開します。 

前回と少し違うのは、地裁の審理が前回ほどかからないことくらいでしょうか。既に最高裁判例が出ていますから、下級審レベルでこれを覆すことは困難です。 

皮肉にも翁長氏が、唯一この移転問題に残したことは、この移転反対派にとって致命的ともいえるような最高裁判例だけなのです。 

裏読みすると、彼はこの最高裁判例を出してもらいたくて奮闘したようにすら見えます。もちろん違うでしょうけど。 

それはさておいて、県は県民投票まで時間が欲しいので、結果は度外視して引っ張るためだけに上告するかもしれません。 

逆に考えにくいですが、県が勝った場合も国は即時抗告して最高裁で争うことでしょう。

するとどちらでも、結局、最高裁までいくことになりますから、最高裁が自らの判例を覆すという前代未聞のことが起きない限り、県は再び敗訴します。

日本が韓国と違って法治国家であるかぎり、当然の展開です。 

なんやかんやで、こんな時間潰しをしていると年を跨ぐかもしれません。工事は今日再開されるようですし、国は年内に土砂投入をすると予告しています。

2https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/285782

いったん土砂投入がなされれば、復旧は不可能です。

私は個人としてはあの海をよく知っているので胸が痛みますが、いたしかたありません。

湾全体を埋め立てるわけではなく、上の写真の堤防内の工事なのが、いささかの気休めです。 

デニー知事が最終兵器と考えているらしい県民投票は早くても来春4月と予想されていますから、その時には争う理由が半ば消滅していることになります。

つまり、既に埋め立てが半ば完成しかかっているものの是非を争う、という間の抜けたことになるわけです。

自民党はせめて県民投票において、無意味なイエスノーの2択の設問を止めさせる意地くらいみせて下さい。

私としては土砂投入の前に、デニー知事がハンセン陸上案(小川案)、あるいは、勝連海上案(エルドリッヂ案) などの別の候補地を提起するていどの柔軟性が欲しいのですが、まったく期待していません。 

県政の表裏を知り尽くした翁長知事にできなかったことを、共産党に首ねっこを押えられた軽量級知事にできるはずもないからです。 

まぁ訴訟沙汰など、どうぞ勝手にやって下さいとしかいいようがありませんが、時間と税金が無駄に消えていきます。

徴用工問題は明日にまわしました。

私には、大衆の感情におもねって人治主義と県民感情至上主義に軸足を置くデニー氏が、ムン・ジェインとだぶって見えてしまいます。

 

 

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