オンデマンド殺人としての「臓器狩り」
移植手術は、グロテスクな言い方で恐縮ですが、いわば「生もの」です。
日本では、仮にドナー登録をした人ですら心配停止だけでは不十分で、さらには脳死判定があって、初めて移植手術を行うことが可能となります。
ドナー登録されていても、脳死判定があって、しかもなおかつ、求められる血液型と細胞の組織型の同時一致がなければ、移植手術は可能となりません。
その一致の可能性は、血縁者以外ではわずかに6.5%にすぎません。
ですから、約8000万人のドナー登録を抱えるアメリカですら、長期間待たされるのは常識であって、その間に病状が悪化するケースもしばしばあります。
ましてや、法整備が遅れた日本ではドナー登録が100万人あたり0.7人にすぎないために、国内での臓器移植は絶望的です。
https://www.sankei.com/life/news/171016/lif1710160
これは世界で有数のドナー登録を持つ米国においても同じで、待機日数は1300日を超えています。
「アメリカでは年間約2万5000件も行われる臓器移植手術。それに対し、日本では年間300件程度にとどまっており、移植の待機中に亡くなった人は6518人(1995年〜2018年7月31日現在、臓器移植ネットワーク発足以来の登録者)に上っている」
(ハフィントンポスト2018年8月31日)
https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/31/organ-transplantation-japan_a_23513456/
上のグラフは、今日大変に参考にさせていただいた「SMGネットワーク(中国における臓器移植を考える会)」様のウェブサイトから引用させていただきました。ありがとうございます。
http://smgnet.org/china-organ-transplant/
あまりに待機時間が長く、事実上国内での移植手術ができないようなわが国の問題はそれはそれとしてありますが、一方異様に短い国も存在します。
それは中国です。中国は移植件数も世界で群を抜いて多く、2009年には肝移植だけで2970件を記録しました。
キルガーは中国の移植手術数をこう見ています。
「中国国内に169軒もの移植認定病院があることから計算して、中国での臓器移植は年間6~10万件行われているという。
中国政府の公式発表では、臓器移植の年間件数は1万件とされており、大きく異なる」(『Bloody Harvest/ The Slauter:最終報告書』)
臓器移植回数が6万から10万という途方もない数に登るのにもかかわらず、平均待機期間はわずか14日間から長くて60日間にすぎません。
今年10月8日、BBCは『誰を信じるべきか?中国の臓器移植』(Who to Believe? China’s Organ Transplants)と題する番組を放送しました。
この番組で記者は、移植をもとめる人物に扮して病院に問い合わせたところ、待機時間はわずか2時間だったそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=IsOGUsp7Fn0
さて、ここで一回立ち止まって下さい。おかしくはありませんか。どうしてこんなことが可能になるのでしょうか?
中国のドナー登録者は、前のグラフにあるように100万人あたりわずか2.0人です。世界でも少ない国に属します。
このような国が、なぜ世界最大の臓器移植国になれるのでしょうか。しかも待機時間は他国に較べてなきに等しいのです。
この理由は、キルガー報告書が実施した中国の病院への覆面を条件としたアンケートでもあきらかになりました。
中国の病院は、そもそもドナー登録制度とは無関係に移植手術をしているからです。
移植手術は適合できる臓器をみつけるためには、膨大な生体データベースを必要とします。
このような生体データベースを提供するためには、大規模なDNA検査の生体データバンクがなければなりません。
百人、2百人分ならいざしらず、年間数万件の移植手術を恒常的に可能にするにはその数百倍のデータバンクが必要です。
それを可能するには、マスで逮捕・監禁するか、ひとつの地域丸ごとの大規模検査が必要です。
中国はそれをしていました。かつては囚人でしたが、それは2000年以降は法輪功であり、そしてウィグル族でした。
「昨年12月に集計された国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の調査によれば、収集されたウイグル人の生体データは約1900万人にも及ぶ。
またウイグル民族のみならず、チベットその他少数民族のなかの独立派、民主化勢力などの反体制派、その他拘束された法輪功信徒やキリスト教徒など、中国共産党の方針に従順でないと看做されたコミュニティーに属する人々に関し、既に総数4000万人に及ぶ個人データベースが構築されてもいる」(SMGネットワーク前掲)
まずそれは法輪功への弾圧から始まりました。
法輪功は「伝統的な健康法である気功を仏教や道教に取り入れた団体です。
1999年4月25日、法輪功は宗教弾圧に抗議して中南海を包囲する1万人デモをしました。
官製のデモ以外許可されないこの国では、権力者の顔色なからしめるような「反乱」でした。
彼等は、穏健なこの団体の背後に、黄巾の乱や義和団を見たのでしょう。
江沢民は1997年7月、全治安機関に対して、法輪功の「名誉を毀損し、財を奪い、個体を消滅せよ!」という最大級の掃討指令を出します。
http://www.epochtimes.com/b5/8/4/26/n2095376.htm
全国規模での令状によらない逮捕、裁判によらない監禁が開始され、監獄は法輪功の関係者で埋めつくされるようになります。
その数は数万単位だと言われています。なんらかの犯罪を冒したから逮捕・拘禁されるのではなく、法輪功であること自体が「犯罪」と見なされたのです。
この中国共産党の迫害により死亡した法輪功拘束者数は3397人に達し、2003年の時点で投獄数は数万人に及ぶとされています。
また、2002年末までに約500人もの修行者が収容中に死亡したとされています。
法輪功 - Wikipedia
※数字に関しては諸説あります。中国当局は否定しています。
法輪功弾圧事件は、現代中国の人権状況を知る上で不可欠な事件ですが、今回は別の機会に譲ります。
さて、この弾圧が始まった2000年を境にして、なぜか臓器移植件数は急増していくことになります。
マタス氏講演会資料による
2006年3月17日、闇の中に沈んだかに見えた法輪功拘束者たちの状況が伝えられました。
「アニー」と名乗る蘇家屯病院職員の告発でした。彼女の夫はこの病院の執刀医であり、2000余りもの手術を実際に経験していました。
デービッド・キルガーは、この女性と直接会って長時間のインタビューをしています。
「キルガー:手術される人たちは、生きていましたか。それとも死んでいましたか?
アニー:通常、そういった法輪修練者たちは心臓麻痺が起こるような薬品を注射されていました。そして手術室に運ばれ、臓器を摘出されます。注射のせいで心臓は止まっていますが脳はまだ機能しています。
キルガー:あなたの元夫は角膜を摘出した。手術の後、角膜を取られた人たちはどうなったのでしょう?
アニー:他の手術室に運ばれていきました。心臓、肝臓、腎臓などを摘出するためです。夫はある手術で他の医師と一緒になったときに、彼らが法輪功の修練者だということを知ったそうです。それから、彼らが生きたまま臓器を摘出されるということや、角膜だけでなく他の臓器も取られるということも、同じ時に知りました」
(SMGネットワーク前掲)
キルガーはこう述べています。
「たとえ臓器移植の件数が年間5万件だったとしても、1日に165人が殺されていることになります。
臓器提供者の多くは、"無実の囚人"である法輪功の学習者です。法輪功の学習者は、強制収容所で1日16時間働かされた上、臓器検査を受けさせられます。臓器を移植できる状態か、調べるためです」(SMG発足集会)
またニューヨーク市立大の生命倫理学者であるアーサー・カブラン博士はこのように語っています。
「中国で起きていることは、決してただの臓器移植ではない。ある患者がある時にある臓器が必要な場合、たまたま処刑される死刑囚を頼みの綱にするのは、当然不十分だ。
刑務所は目的を持って選んでいる。囚人の健康状態、血液型、細胞組織形態などを精査し、適する臓器提供者を見つけては、旅行者の滞在期間中に刑を執行する。
これはすなわち、需要のために人を殺す、オンデマンド殺人だ」
(『国家による臓器狩り』)
今日は報告書を書いたデービット・キルガーの言葉で結びます。
「人類はこれまでにもさまざまあ悪行を重ねてきたが、ここまで邪悪な行為は過去に例がない」
まことにそのとおりです。まさに悪魔の所業です。
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もはや言葉を失いました。世の中には不条理なことで満ち溢れていますが、これほど徹底して大規模な不条理は、世界に例がないでしょうね。まるで大昔の奴隷国家と同じですね。本当に今潰さないと、日本は何らかの牧場に成り果てますね。昔、向こうは相当に自尊心傷つけられたので、復讐心に燃えてるでしょうね。このようなことをまともに議論できない日本の状況は、もう相当謀略が進んでしまっているんでしょうね。私のような野良犬でも、この危機に対して何らかの情報発信していきたいです。世界に神のご加護がありますように。
投稿: オイラー | 2018年11月21日 (水) 07時24分
ところで臓器移植というと大層な感がありますが(実際そうですけど)、技術的なものは数をこなすと上手くなります。これだけ多くの手術が行われていると術中死の確立はかえって減るものと推察されます。術後管理の方が余程問題です。
先ずは拒否反応とのの闘いです。免疫抑制剤が必須ですので他の手術以上に感染対策が重要です。感染対策は基本的に個人でやるものではなく、医療機関全体で行われるものです。元々状態が良くない体にメスを入れた上に免疫抑制剤を使用するわけですから、術後感染は命とりになります。
認可されていないような施設でも移植術は行われているという驚くべき状況を考えると、相当数のトラブルが発生しているのはないでしょうか。その実態が明らかになることはないでしょうね。トラブルが頻発したら患者見殺しどころか病院ごと抹消しそうな国ですし。
外国人がずさんな術後管理等で亡くなったり、後遺症が残った場合はどう処理されるんでしょう。入国した事実さえ無くなったりしかねないような気までします。うまくいったとして、「中国で移植してきた」なんて事実を母国や他の外国で言えるのでしょうか。「たまたま運よく治療できた」わけではないのですから。
実態を知ってしまった当事者としての医師達は平常心でいられるのか?それとも悪魔に魂を売ったまま治療を続けられるのか?
オンデマンド殺人としての「臓器狩り」というタイトルだけでも寒気が走りますが、本記事の内容となると身の毛がよだつものです。臓器の安定供給のための「人畜牧場」じゃないですか。こんなことが近代で行われてるなんて戦慄です。何故放置されるのか、博愛やら平和やら人権にうるさいマスコミや欧州諸国(特にドイツ!)は何してるのか。
長々とすみません真面目に考えるほどに気分が萎えます。なんかめまいしてきた。
投稿: クラッシャー | 2018年11月21日 (水) 16時54分
臓器移植そのものに私は大きな疑問があります。脳死が人間の死であると定義することがホントに正解なのかということです。臓器移植が始まったころいろいろと書物も読みましたが、脳死と判断された者たちが生体反応をするのだそうですよ。涙を流すものもいるし、体の成長もあるそうですし、たしか子供を産んだ事例もあったことが書かれていたと記憶しております。
テーマ臓器移植の可否ではありませんので多く主張はいたしませんが、移植そのものについて冷静に考えてみる必要はありそうです。
記事を読んで感じたことは中国人の一般人による臓器提供者が少ないことであり、反面中国では臓器移植が盛んにおこなわれているという事実です。これは、共産党にとって好ましくない人たちから臓器を勝手に取り出していることの証明になりますね。
フロント記事は憂鬱なテ-マであり、あまり考えたくもありませんが、私たちは中国の極悪非道な行為を見過ごすわけにはいけないと思うのです。一事が万事ともいいますので、中国世界は私たちが思う以上に悪くて忌避すべきものの多い世界だといっても良いでしょう。いろいろと悪いものが隠されているのでしょうよ。この国が中国の夢だといい理想的なことを口にしますがこれは信用できません。共産党中国の自己中心の唯物論者たちの夢なのです。神仏の存在を否定した理性・知性主義の悪い思想の支配する国家なのです。
投稿: ueyonabaru | 2018年11月21日 (水) 17時38分
いつも貴重な情報と考察の発信ありがとうございます。すごく勉強になっております。当方は医療関係で勤めており、十数年ほど前に中国で臓器移植を行ってきた患者に関わった経験があります。その方は肝移植後でクラッシャーさんがおっしゃる通り、ずさんな手術管理のため帰国後に膿瘍が発生し術創部が離開。肝炎となり亡くなりました。その方は「闇」での移植だったそうで、周囲にも体調を崩してから中国での移植がバレたそうです。そのため、泣き寝入りの状態で亡くなっていきました。臓器移植に関しては、治療方法のひとつとして悪いことではないと考えます。しかし、本記事のような、「臓器の受注発注」は許されることではありません。もしも、日本がこの件に対し中国共産党を否定すれば、日本軍の行ったことを引き出してくるとは思いますが、その比ではないと思います。ウイグルで行われている行為が白日の下に明らかにされることを願います。
投稿: ユタ | 2018年11月21日 (水) 18時23分
ゆきさんへ 中国はこの件で日本が責めてきたら日本軍のことを持ち出してくるかもしれないと言いますがその可能性は低いと思います。戦争の記憶が生々しかった時代ならともかく戦後70年以上が経過した現在において過去の日本軍のことを持ち出したところで全く正当化の役にたたないでしょうからね。
投稿: 中島みゆき | 2018年11月21日 (水) 19時28分
中島みゆきさん、これにかんしては、あなたの認識のほうが違っていると思います。
中国、韓国は、同質です。現在の韓国の日本に対する対応を見ていたら、戦後70年が何の意味も持たないことは自明ではありませんか。
韓国の反日が感情的なのに対して、中国は、それを政治的に使うという点が違うだけで。
投稿: coyote | 2018年11月22日 (木) 07時52分
coyoteさんへ おっしゃる通り中国は韓国とは異なり反日をあくまで政治の一環として行う国で韓国ほどの深刻な反日依存症にかかっていません。これは中国と韓国の大きな違いであると思います。国際法的な世論戦を考えた場合明らかに関係のない日本軍の蛮行(これはかなり誇張された部分が大きいと私は思いますが)を持ち出したところで説得力は皆無ですからさすがに反日プロパガンダをもってウイグル人への犯罪を相殺しようとはしないと思います。
投稿: 中島みゆき | 2018年11月23日 (金) 10時33分