今年もありがとうございました
今年の更新は今日で終わりとなります。
この拙いブログを支えて頂いた皆様に、心から感謝いたします。
ありがとうございました。そして来年もまた宜しくおつきあい頂きましたら幸いです。
新年は、元旦の賀詞の後3日まで正月休みをとらせていただいて、4日金曜からの開始となります。
皆様、よきお年をお迎え下さい。
管理人拝
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今年の更新は今日で終わりとなります。
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皆様、よきお年をお迎え下さい。
管理人拝
P-1哨戒機
NHKがいい仕事をしてくれましたので、資料として追加いたします。
こういう事実だけを淡々と提供する姿勢で、いつもやってほしいものです。
と、憎まれ口を叩かずに、転載させていただいたことに素直に感謝いたします。
※は筆者のもので、画像は私が挿入しました。
この映像は防衛省のHPから見ることができます。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/28z.html
https://www.youtube.com/watch?v=GNBhAAMc2Hk
~~~
NHK「レーダー照射 そのとき哨戒機内では… 隊員やり取り詳細」2018年12月28日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181228/k10011763001000.html
自衛隊の哨戒機が韓国軍の艦艇から射撃管制用レーダーの照射を受けた問題で、防衛省が公開した映像の、機内の隊員たちのやり取りは次のとおりです。一部音声が消されていますが、防衛省はそれ以外の加工はしていないとしています。用語の説明は映像の字幕をそのまま記載しています。
「防衛省は28日、韓国海軍の駆逐艦が石川県・能登半島沖の日本海で海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題で、哨戒機が撮影した当時の映像を公表した。韓国側がレーダー照射の事実を否定することから、自衛隊の対応の正当性を示すために公表に踏み切った。
映像は13分7秒。20日午後3時ごろ、駆逐艦がP1に対して武器使用の前提となる火器管制レーダーを照射した際のもので、通常の警戒監視のために撮影したとしている。
情報保全の観点から位置情報など一部の音声が消されているが、赤字で「火器レーダー探知」と点滅させるなどの字幕を入れたほかは処理されていない。 防衛省は28日、公表したものと同じ映像を在京の韓国大使館を通じて韓国側に提供した」(産経12月28日)
https://www.sankei.com/world/news/181228/wor1812280023-n1.html
この映像を防衛省は、防衛省のHPからも見ることができます。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/28z.html
https://www.youtube.com/watch?v=GNBhAAMc2Hk
この映像資料の価値が高いのは、「情報保全の観点から位置情報など一部の音声が消されているが、赤字で「火器レーダー探知」と点滅させるなどの字幕を入れたほかは処理されていない」(産経前掲)ことです。
ぶつぶつと恣意的に切り取られていた場合や、誰それから聞いたという伝聞情報ならば、その価値は減じます。
こういった事故ないしは紛争の処理において、一次資料としてもっとも価値が高いのは、事件当事者による無編集の航海日誌、飛行記録などの記録資料ですが、この海自記録はこれに相当します。
「韓国国防省は会見を行い、防衛省が公開した映像について、「単純に日本の哨戒機が旋回する場面などが入っているだけだ」と指摘したうえで、「レーダーを照射したという日本側の主張に対する客観的な証拠とみることはできない」としました」(新潟放送12月28日)
https://www.ohbsn.com/news/detail/zenkoku20181228_10979332.php
では、韓国が言うように「単純に旋回しているだけ」なのかどうか、内容を見ていくことにします。
※静止画像に切り出しで頂いたnetgeek様に深く感謝いたします。
http://netgeek.biz/archives/134013
動画の冒頭に当時の撮影された状況について表示されています。
[気象 海象 ]P-1哨戒機が機上で撮影
天気 晴れ
風邪 北東の風15KT([7m/sec)
風浪階級 1m さざ波があるていど
うねり南に1m
波はわずか1mで、凪といって言い状況です。これだけで、当初の韓国の言い分である「当時波浪が高いために、すべてのレーダーで探知していた」という言い分は崩壊しました。
「波が高かったので漂流漁船を捜索する為に水上捜索レーダーだけでなく対空用のMW-08三次元レーダーを対水上モードで使用した」という説明は、まったく信用するに値しません。
「すべてのレーダーで探索する必要」があるどころか、肉眼で充分に北の漁船が見えたことがバレてしまいました。
動画にはクァンゲト・デワンの目と花の先に韓国警備救難艦(サンポンギョ5001)と北朝鮮とおぼしき漁船が写っています。
下の写真の右隅の小さな船が北の漁船です。指呼の距離ですね。
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E9%9F%93%...
現場位置は世界有数の漁場である大和堆(やまとつい)で、この間北朝鮮漁船団が日本のEEZ内に多数違法操業して事件となったあたりです。
蛇足ですが、「大和堆」という名称が「やまと」なのはけしからん、改名しろと子供みたいなことをいっている某国がありますが、ま、いいか(笑い)。
他人の国の旗や国際地名にまで文句を言うとは立派な趣味です。
閑話休題。おそらくこの水域で韓国海軍や海上警察は、北朝鮮漁船を日常的に幇助していたと推測されます。
とすると、国連決議制裁に抵触する疑いも出てきまた。
おそらく「見られたくないもの」を見られたとクァンゲト・デワンの艦長は考えて、後先を考えずに火器管制レーダーの照射を命じてしまったのでしょう。
sankei.com/world/news/181… pic.twitter.com/YtFapWMD2h
いずれにてもこのようにピーカン・ベタ凪、しかもなにも遮るもののない広い海洋上ですから、電波の受信感度は最高のはずです。
それが海自の問いかけが「小さくて聞こえなかった」というのですから、きっと無線機を積んでいなかったのかもしれません。
P-1は、海上を航行する船舶を目視確認しようと韓国海軍艦艇に向かっています。これは世界の海軍共通の常識的行動で、なんら特異なことではありません。
クルーは冷静に「スタンバイ・マーク・アビーム(真横を通過中)」と記録しています。
このビデオ全般にいえることは、クルーのきわめてプロフェッショナル意識の高いクールな対応です。
http://netgeek.biz/archives/134013
この通過時に、韓国側は日本機が低空でクァンゲト・デワンの上空を低空で通過する威嚇飛行をしたと主張していますが、そのような行為は一切写っていません。
仮に海自が実際に威嚇飛行をして、都合悪かったので公開動画からその部分をカットしたのならば、この動画の前後に最低でもう1回航過する必要があります。
ならば韓国海軍は2回日本機がフライパスした記録を持っていることになりますので、これについても航海日誌をぜひ開示して下さい。、
防衛省HPhttp://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/28z_1.pdf
P-1は、航空法174条、81条の定めどおり、「広い水面において地上または水上の人または物件から150m以上の高度をもって飛行する高度」を保っていました。
英国ロンドン大学キングス・カレッジの戦争学部講師アレッシオ・パタラーノ博士はTwitterでこのように述べています。
"Press Release: Regarding the incident of an ROK naval vessel directing its fire-control radar at an MSDF patrol aircraft - long but quite instructive video on 3 accounts: 1. Flying distances were well within the ordinary for on scene observation"
[意訳]プレスリリース:韓国海軍艦艇が自衛隊の哨戒機に向けて火器管制レーダーを照射した事件について長くて実に有益なビデにより1.飛行距離は現場での観察では通常の範囲内でした。
ぜひ韓国国防部におかれましては、この「低空で威嚇した日本機」の映像、ないしはレーダーなどの物証を開示してください。
なお威嚇飛行とは、2015年5月31日に黒海でロシアSu24がミサイル駆逐艦ロスに攻撃態勢から超低空飛行した時のようなことをさします。
USS Ross in the Black Sea: May 30, 2015
先に進めます。すると平常の確認のための飛行をしていたP-1に対してクァンゲト・デワンから6:00に火器管制レーダー(クルーはFCと呼称)が照射されます。
この横を通過した際に、既に火器管制レーダーは日本機に向けられていました。
P-1のESM(電子戦支援装置)が火器管制レーダーのビームを感知して、警告音を機内に響かせ始めています。
警戒音はあえて耳触りな音を大音響で鳴らして、クルーに注意を喚起しています。
クルーはオグジュアリー(音響外部入力端子)でこの韓国艦艇が出した電波や機内の警戒音が記録されていることを確認しています。
この時のクァンゲト・デワンから発射された火器管制レーダーの電波について防衛省はこのような解説を加えています。
上図でわかるように、火器管制レーダーの受信波には、周期がみられません。捕捉・監視用の三次元レーダー(MW-08)は360度回転を続けてきますから周期の山谷がでます。
それに対して火器管制レーダー(STIR-180)は、三次元レーダーで捉えた空中目標をロックオンするためのものです。
三次元レーダーで大きくすくって、ピタッと仕留めるために火器管制レーダーがあるわけですから、普段は後方や前方に向けて固定されていて回転していません。
電波もまた周期の山谷がなく、目標に指向して当たりぱなしになるために台形の波形を描きます。
この二つのレーダーのまったく違う波形を誤認することは、ど素人でもない限り絶対にありえません。
さて、「友好国」の艦艇からロックオンされた海自哨戒機は、艦載砲がこちらに指向していないことを確認しています。
netgeek
仮に韓国艦艇が攻撃の意志をもっていた場合、このような近距離からの艦載砲による対空射撃から回避する方法はありません。
実際この直後に、海自機は緊急回避行動をせねばならなくなりました。
ロックオンした後は、艦載砲か対空ミサイルで撃っつしか残っていないからです。おお、こわ。
ほぼ100%命中したはずで、「海自機謎の行方不明」という報道に接することになったはずです。
海自機は直ちに、このもの騒がせな挑発した意志を韓国艦艇に問い合わせています。
またP-1は、無線で明確に韓国海軍駆逐艦クァンゲト・デワンの艦首に描かれた艦番号971を名指しして呼び続けています。
「加えて、海自P-1は、国際VHF(156.8MHz)と緊急周波数(121.5MHz及び243MHz)の計3つの周波数を用いて、「韓国海軍艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で計3回呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みました」
韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について:防衛省(平成30年12月25日)
この三つの周波数帯は、船乗りの常識として常にモニターておかねばならないもので、聞いていなかったでは済まないことです。
韓国側は、「電波が弱く受信できなかった、海洋警察を呼び出していると思った」と言っていますが、先ほども述べたようにこんな晴天で凪状況で聞き取れなかったとしたら、韓国海軍の無線機材は100年前のものでも使っていたのか、ひょっとして通信士が乗船していなかったのかもしれません(笑い)。
ちなみに一部では海自機が"japan navy"と名乗っていることをとって、海自が自分を「海軍」と名乗っているという揚げ足とりですが、国際的には半世紀前から英語ではそれで通用して、いまだ抗議されたことなど皆無です。
航空用通信は簡潔に縮めて発信するからです。
まぁ抗議が来るなら、自衛艦旗を戦犯旗などと子供のようなことを言ってひ.とり悦に入っている国くらいなもんでしょうがね。
このように今回の防衛省の証拠の一部開示によって、韓国側の主張はことごとく否定されてしまいました。
あとは、切り札の火器管制レーダーの記録の開示だけとなりましたが、韓国側はそれまで要求しているそうです。
ESM(電子戦支援装置)の探知能力が、軍事機密に属するとわかって言っているのでょうか。
日本に軍事機密の開示を求める以上、とうぜんのことして,クァンゲト・デワンのレーダー関連の記録類、無線通信記録、CIC(戦闘指揮所)の記録、航海日誌、乗員の証言などを公開するのが筋です。
言い分を二転三転させた理由もお教え下さい。
とまれ外交は相互主義が原則です。自分は隠してなにも見せないが、お前の国は軍事機密まで見せろでは通用しませんよ、韓国さん。
もういいかげん、これ以上つまらない言い訳をするほど恥の上塗りになります、と衷心から御忠告申しあげておきます。
そもそも初めに「単純ミスでした。再発防止をこころがけます」の一言で済んだのに、今や日本の外交的カードにしてしまいました。
さすが「外交天才」を大統領に戴く国です。
IWC設立条約の規定により、来月1日までに脱退を通知すると、来年6月30日に離脱が発効し、脱退日以降に商業捕鯨は可能となります。
「政府は26日、国際捕鯨委員会(IWC)から脱退すると発表した。日本は来年7月から領海や排他的経済水域(EEZ)で商業目的の捕鯨を再開する。政権幹部の意向で商業捕鯨に向かうが、鯨肉の国内需要は大きく減り、再開しても産業としての展望は描きにくい。主要7カ国(G7)の一つである日本が国際協調から離れるのは異例で、批判のリスクも残る。
日本政府は脱退を通知した上で2019年6月末に離脱する。転機は9月のIWC総会だった。日本は商業捕鯨の一部再開などを提案したが、オーストラリアなど反捕鯨国が反発し、反対41、賛成27で否決された。
日本の調査などによるとクロミンククジラは南半球に51.5万頭、ミンククジラは北西太平洋に2.2万頭生息し、年数%のペースで増えている。調査が正しいなら捕鯨国と反捕鯨国の争いは食文化の違いともいえる。中央学院大の谷川尚哉教授は「IWCはクジラの保護組織としての性格が強まっている」と話す」(日経12月26日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39409090W8A221C1EA2000/
シーシェパードは勝利宣言を出しているようです(苦笑)。
http://news.livedoor.com/article/detail/15797975/
ここで注意してほしいのは、南氷洋という最大の頭数が生息する水域の商業捕鯨はしない考えです。
捕鯨を再開するのは、あくまでも「領海や排他的経済水域(EEZ)で商業目的の捕鯨」(日経前掲)にすぎません。
領海とEEZに限定したのにはいくつか理由がありますが、そのひとつに今まで白昼堂々とやられてきたシーシェパードやグリーンピースなどの過激なエコテロリストの襲撃を避けるためがあると思われます。
このエコテロリストたちは世界のメディアに呼びかけて、テレビの前での日本の調査捕鯨船公開処刑ショーに打ち興じるのですから、たまったもんじゃありません。
彼等はこれで支持を集めて、巨大化していったのです。
※関連記事
「シー・シェパードの源流・グリーンピースの錬金術 なにが彼らを堕落させたのか?」http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-0587-1.html
「環境テロリスト・シーシェパードの誕生その1 当たり屋戦術の創始者グリーンピース」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-5a83.html
http://news.livedoor.com/article/detail/15797975/2013年2月、南極海(日本鯨類研究所提供)
上の写真は、シーシェパードが調査捕鯨船の「日新丸」に給油しようとしたタンカーに襲撃をしかけた時のものです。
シーシェパードの船が、日本船の船腹に突き刺さる寸前なのがおわかりと思います。
また、彼等の抗議行動ではレーザー照射や劇薬を投げつけるなどのテロ活動が日常茶飯事でした。
これはただの抗議ではなく、もはやテロ、ないしは海賊行為ですが、今後は領海とEEZ内ですので、とうぜん海保がお相手します。
さてこのIWC撤退をかつての国際連盟脱退になぞらえている人がいますが、まるでIWCをやめると国連まで脱退しなければならないような言いようです。
安直な過去とのアナロジー(類推)や、ましてや政局に利用するのは止めて下さい。
リットン調査団の時代と、現代を安直に比較すること自体が愚かですし、そのリットン報告書も日本の満州に対する関わりをおおむね認めた上で、逃げ道を作ってありました。
ですから日本は短慮で国際連盟の脱退を急ぐ必要はなかったのです。
脱退を急ぐあまりに、日本は国際社会での発言力を著しく弱めてしまいました。
同じように現代においても、私はかつてのリットン報告書がそうであったようにまだやりようが残っているように思えます。
日本は沿岸捕鯨だけをとりあえず守っておけば国益を害することはないので、強い反対論を押し切っての商業捕鯨の再開をする必要があるのか疑問に思っています。
沿岸捕鯨は伝統的漁業との関係もあって、1997年のIWC年次会合で、アイルランドから容認提案がなされたことがあります。
しかも反対派は米、豪、.といった、安全保障上も強い連携を作らねばならない諸国ですので、上策とは思えません。
日本捕鯨協会はIWCについてこう批判してきました。
日本捕鯨協会 - 反捕鯨団体の言われなき批判に対する考え方 -
「捕鯨に反対しているのは、食料供給のため水産資源に依存する必要性が低い欧米諸国が中心です。
一方で、国土を海に囲まれた日本としては、鯨類を含む海洋生物資源を人類の食料として有効利用すべきという主張を、粘り強く続ける必要がありますが、多くの国がこれを支持しており、このような主張を続けることで日本が国際的に孤立したり立場が悪くなるといったことはありません。
仮に、反捕鯨国や反捕鯨団体の圧力に屈して日本が従来の立場を転換すれば、全ての海洋生物資源を食料として有効利用すべきであるという日本の主張を支持してくれている国々の期待と信頼を裏切ることになり、逆に日本の国際的立場を大きく損なうことになります」
https://www.sydney.au.emb-japan.go.jp/japanese/top/important_info/standpoint_of_japan.htm
では脱退することによって、日本の立場を支持してくれた国々に対して「信頼を裏切った」ことにはなりませんか。
少なくとも、日本が再開された領海・EEZでの捕鯨についての国際社会での報告はこのような限られたチャンネルだけとなります。
「今後日本は 日本が締結する国連海洋法条約でクジラの管理は「国際機関を通じて活動する」とされていることから、IWC科学委員会へのオブザーバー参加などで対応する方針だ」
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/181227/mca1812270500003-n1.htm
これで日本の捕鯨についての姿勢を伝えきるのは、ちょっと苦しいのではないでしょか。
ところで、反捕鯨国はあたかも国際世論は我にありという顔をしていますが、4分の3の過半数を押えきってはいません。
再開に対しての反対票が上回るのは、反捕鯨国が新規加入国を捕鯨はおろか漁業にも縁がない国々を引き込んだ過去があるからです。
現在のIWCの塗りわけは以下です。
・捕鯨支持35
・中間派3
・反捕鯨50
・計89 (不明1)
青く塗られたのが加盟国ですが、笑えることには捕鯨どころか漁業すら行われていない国々もあります。
「当時グリーンピースの海洋哺乳動物のコンサルタントを務めていたフランシスコ・パラシオによると、このような工作で新規加盟させた国は少なくとも6か国あり、それら加盟国の年会費だけでも年間約15万ドルに達したという。 この頃に日本代表団の首席代表であった米澤邦男によると、新規加盟国の中にはIWCへの分担金をNGOからもらった小切手で支払ったために関係が発覚した例もあった」
国際捕鯨委員会 - Wikipedia
外交の常としてとうぜんこんなていどの多数派工作は日本もやっていますが、今やIWCはこんな双方の政治的争いの場になってしまっています。
それはIWCが創設理念である「捕鯨産業の秩序ある発展」から大きく逸脱し、捕鯨自体を全否定する傾向が顕著になったからです。
今後、日本はノルウェイ、アイスランド、カナダ、インドネシアなどと共に、IWCの創立理念に立ちかえって、科学調査を前提にした海洋生物資源管理の国際機関を作らねばなりません。
ところで私は捕鯨は、厳密な科学的根拠に基づく、管理された制限捕鯨がベストだと思っています。
クジラは絶滅危惧種ではなく、むしろ過剰に増加していく傾向があり、そのことで逆に生態系のバランスを崩しています。
鯨類は海洋生物の食物連鎖の頂点に位置するために、人間が生態系の外から適正な管理を加えてバランスを整えてやる必要があります。
一時絶滅を危惧されるほど減少したのは、米国による大西洋の根こそぎ捕獲と、それに続く1904年に始まった南極海での英国などによる大量捕獲のせいです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8D%95%E9%AF%A8
かつて20万頭もいたシロナガスクジラは、わずか数百頭にまで減少したといわれています。
現在の鯨類の生息数はこのようなものです。
捕鯨問題における日本の立場 - Consulate-General of Japan, Sydney
日本IWC科学委員会は、1990年、南極海にミンククジラが76万頭存在すること、また、1992年、南極海で毎年2,000頭のミンククジラを100年間捕獲しても資源に影響がないと推定しています。
他方、シロナガスクジラの減少に伴い、その穴を埋めるように、繁殖力の強いミンククジラが大幅に増加しました。シロナガスクジラが捕獲禁止となって40年が経ち、少しづつ回復してますが、低い水準にあります(1,260頭(IWCによる推定値))。
〇ミンククジラ 761,000頭(南極海全体)
○ナガスクジラ
インド洋系群 31,000頭(南緯40度以南)
西大西洋系群 16,000頭(南緯40度以南)
○ザトウクジラ
豪州西部系群 31,800頭
豪州東部系群 3,728頭
むしろクジラを適正に管理することによって海洋資源のバランスが維持されるのです。
絶滅型乱獲は言語道断ですが、やみくもに一切の捕鯨を「かわいくて賢いクジラをとるな」という感情論によって禁じる考え方には賛成できません。
以下、私の捕鯨についての考え方について、2014年3月6日の過去記事を参考までに再掲載しておきます。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-4bfa.html
パタゴニアに対する公開質問状
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-12b4.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-db8e.html
~~~~~~~~
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8D%95%E9%AF%A8%E...
私がかつてパタゴニアへの公開質問書の第2項に、米国の先住民の沿岸捕鯨もシーシェパードは襲撃したが、それをパタゴニアは肯定するのか、と問うたのは、この和歌山の太地の伝統的沿岸捕鯨を念頭においた質問でした。
もし、これを否定するとなると、当然のこととして年間400頭ていどのイヌイットによるホッキョクグマやイルカなどの捕獲も否定されていくことになります。
つまりは、海洋哺乳類や極圏に住む哺乳類は聖域であり、いっさい人間が触ってはならない、ということになります。
大型海洋哺乳類は、海洋で食物連鎖の頂点にいます。したがって、頭数の淘汰が自然界ではかかりにくいことになります。
となるとどうなるのか?鯨類が食べる大量の食料としての食物連鎖下位生物が減っていくことになります。
今、手元に資料がありませんが、大型鯨類の食する量は膨大なものです。その為に他の魚類の繁殖が圧迫されています。
また、大型鯨類自身も食料が不足して、群れの中でストレスを溜めていくことが観察されています。
そのことにより、大型海洋哺乳類自身も群れを維持していくことが難しくなります。
では、このような自然界の食物連鎖を正常に維持するにはどうしたらいいのでしょうか。方法はそう多くはありません。
人間が生態系に一定のルールの下で介入することです。
一定の科学的なルールを作って人為的なコントロールをすることで、食物連鎖の機能を正常に保つことかできます。これを資源生物学と呼びます。
今、わが国の調査捕鯨はその資源生物学的データを採取するためであって、商業捕鯨をしているわけではありません。
グリーンピースは鯨肉が市場に出ていると批判していますが、日本人は捕獲した鯨を食べもしないで捨てるなんてバチ当たりの真似が嫌いなだけですよ。
この調査捕鯨はIWC(国際捕鯨委員会)が認めたものでまったく合法です。これすら禁止すれば、大型海洋哺乳類の生態系の実態解明ができなくなります。
たとえば日本でいえば北海道のエゾジカの淘汰などがその例になります。エゾシカは可愛い動物ですが、捕獲を禁止されているために急増してしまい、環境キャパシティを越えてしまいました。
結果として、シカも食糧不足になり飢えた個体が多数目撃されるようになります。また樹木や農産物への被害がひどく林業や農業に多くの害を出しました。
今、一定数を人為的淘汰をすることで、正常な頭数に戻す試みが数年前から始まっています。
私自身が関わった例では霞ヶ浦の外来魚ハクレンの捕獲がありました。ハクレンは藻を食べる大型種ですか、湖の閉鎖的生態系では食物連鎖上位のために増える一方でした。
増えすぎても、日本人の嗜好にいま一つ合わないために減るということがありません。漁網が破られたりする被害が頻発しました。
そのために市民と漁民が協力してハクレンを捕獲してバランスを保つ活動が行われました。
このように自然界は放置することが最善ではなく、適切な人為的なコントロールによってバランスが保たれるケースがあります。
今の反捕鯨白人諸国は、いままで自らが鯨類を絶滅寸前にまで追い込んだことを都合よく忘れ、日本人にその原罪のすべてをなすり付けることで、「可愛いイルカを食べるな」と叫んでいます。
「賢くかわいいイルカを守ろう」で済めばいいのですが、「日本人は残酷だからイルカやクジラを食べる」というような醜悪なジャパン・ディスカウント(日本の地位低下)に転化させたのが、この映画やシーシェパードたちです。
かつて鯨の肉を食べようともせず、鯨油のみを絞ってボイと捨てて絶滅寸前に追い込んできたのは誰であろう、今、反捕鯨諸国の連中、なかんずくアメリカ人ではなかったのですか。
https://sitejm.exblog.jp/1166632/
一方、私たち日本人は一物全体として鯨を余すところなく食しました。
肉はもちろん、サエズリといわれる舌も、果てはヒゲすらも文楽の操り糸として利用し尽くしたくらいです。
日本人は、鯨を「勇魚」(いさな)として敬って捕獲したからこそ、その生命のすべてを自らのものとする文化をつくりあげたのです。
韓国という国の惨状がよく現れているのが、今回の火器管制レーダー照射事件ですね。
言っていることが日替わりだというのが、年の瀬になんともやるせない。
危機管理で一番しちゃいけないことがなにか分かっていますか。初めに言ったことを覆して、あーでもないこーでもないと二転三転させることです。
産経http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/sankei/worl
この日替わり定食もどきの言い訳を始めたら、誰もそんなことは信じなくなります。
おそらく韓国政府は、これをリスクコントロールすべきほんとうの「危機」と認識していないのではないでしょうか。
「危機」を定義しておきます。
「危機を定義する際には3つの要素があります。
1つ目は、重大な害悪が迫っていること。
2つ目は、緊急性が高いこと。
3つ目は、情報不足です。
これら3つの要素が満たされた場合を、本当の「危機」と呼びます」
(塩崎彰久)
https://www.academyhills.com/note/opinion/14021702saiakunoscenario.html
まず今回の韓国の場合、日本と係争地域となっている竹島水域において軍事挑発をしたことがもたらす「重大な害悪」に気がついていないことです。
これは長年に渡って竹島の不当な実効支配があたりまえであって、日本側が弱々しい抗議しかしてこなかったことの上にあぐらをかいてしまっています。
領土紛争がもたらす災厄に無頓着なのか、はたまた日本相手なら何をしてもかまわない、どうせなにもできやしないさ、という思い込みなのか知りませんが、もっとも危険な水域で、もっとも危険なことをしでかしておいて、自分の仕出かしたことに自覚がないのですから、なんともかともです。
要は、日本をなめ切っていたから起きたのです。
だから今回、日本が退くことなく、証拠をバックにして事実を丹念に反論し始めると今度はうろたえて解決からの遁走を図ろうとします。
この事件の処理を誤れば、現在の慰安婦合意の一方的廃棄、そして「徴用工」判決と続く日韓関係の崩壊状況をいっそう加速させると思っていません。
日韓関係は破壊すべきだという戦略的意図に基づいてやっているなら、それはそれで危険きわまりない発想ですが、たぶん今回はそんな高級なもんじゃないはずです。
たぶん反日艦長の発作的はね上がり行動です。戦略的意図があるなら、もっと気が利いた対応をしていますって。
艦長の趣味で戦争を起こされたらたまったもんじゃないので、こんなバカは即刻解任し、軍法会議にかけるべきです。
それが事件後1週間たっても出来ないでいるということは、上級司令部がこの艦長の行動を是認しているというふうに国際社会は解釈します。
それでいいのでょうか、韓国海軍さん。けっこう恥ずかしいことですが。
三番目に、海軍の現場から上がってくる諸情報を、正しく上の国防部が対外発信していないようです。
いかに韓国海軍が緩みきっていたとしても、ああもくるくると口からでまかせを言うとは常識的には考えられません。
世界の海軍の常識では、海軍はテクノクラート集団なので、事件における記録類がないということは考えられません。
おそらく韓国軍は、下の現場にはあのような無謀なことを仕出かす馬鹿が新鋭艦の艦長の椅子に座っており、上は上で、下から上がってきた情報を歪曲して口からでまかせにしゃべり散らす組織と化したようです。
これで韓国軍の内実がよく私たちにも理解できました。いまや韓国軍は軍隊の態をなしていません。
須田慎一郎氏はそれについて、このように指摘しています。
「韓国の軍隊にしても情報機関にしても、この辺は重なっていますが、今はアノミー状態(=社会の規範が弛緩・崩壊することによる無規則状態)、つまり統制が取れていない状況に入って来ているとのことでした。
その方も退役されたのは、同僚が例えば逮捕起訴されたり、あるいはパージされたりする中で、今の文在寅政権ではやってられないということで、辞表を叩きつけて辞めている方なんです。
今、韓国の軍隊や情報機関においてもそういう現象が続出している。特に国情院、大韓民国国家情報院については4年以内に組織を解散するという話が持ち出ていて、やる気を失ったひと達が多い」(ニッポン放送飯田浩司のOK! Cozy up!」12月24日)
https://this.kiji.is/449769352786084961
須田氏の見立てでは、韓国軍はムン政権の圧力によって内部崩壊を起こしかけているようです。
それが内部規律のメルトダウンを呼び、艦艇の現場においても、中佐程度のランクの艦長の命令で他国を攻撃する準備行動ができてしまうというわけです。
おお、こわ。こんな国が戦略原潜持ちたい、なんてのたまうんですからくわばら、くわばら。
こういうたるみきったダルな軍隊が、イージスやF-15Eなどというおもちゃをもっているだけの軍隊なのです。
こんな軍隊に、かつてパク・チョンヒのように国を憂いてクーデターのひとつも起こす気概も実力も共にかけらも残されていないでしょう。(といっ私がクーデターを是認しているわけではないので、念のため)韓国海軍の駆逐艦「クァンゲト・デワン」 この艦名は、古代日本と戦ったとされる朝鮮の王の名に由来。https://www.fnn.jp/posts/00408436CX
さて、右往左往する韓国を横目に、自衛隊はひとつひとつ的確に反論を続けています。
最新の防衛省のプレスリリースです。珍しく長文ですが全文掲載ましす。
韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について:防衛省(平成30年12月25日)
「12月20日(木)午後3時頃、能登半島沖において、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から、海上自衛隊第4航空群所属P-1(厚木)が、火器管制レーダーを照射された旨、21日(金)、防衛省から公表を実施しました。
本件について、昨日、韓国国防部が見解を発表していますが、防衛省としては、事実関係の一部に誤認があると考えています。
まず、防衛省では、20日(木)のレーダー照射事案の発生後、海自P-1の機材が収集したデータを基に当該駆逐艦から発せられた電波の周波数帯域や電波強度などを解析した結果、海自P-1が、火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認しております。
また、海自P-1は、国際法や国内関連法令を遵守し、当該駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行しており、当該駆逐艦の上空を低空で飛行した事実はありません。
加えて、海自P-1は、国際VHF(156.8MHz)と緊急周波数(121.5MHz及び243MHz)の計3つの周波数を用いて、「韓国海軍艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で計3回呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みました。
防衛省としてはこのような事案が発生したことは極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求めてまいります。こうした事案によって日韓防衛当局間の連携を損なうことがあってはならず、今後、日韓防衛当局間で必要な協議を行っていく考えです」
韓国軍がグーの音もでない事実の積み重ねです。
「(火器管制レーダー)STIR-180であることが確かならば日本側の主張が正しくなります。ビーム幅の細い火器管制レーダーを数分間に渡って照射を続けたのであれば意図的に狙い続けた危険行為と見做されます。
しかし(捕捉追尾用)三次元レーダーMW-08ならば360度回転しながら電波を出し続けているので狙っていたとは言えず、広範囲の捜索も可能なので韓国側の主張が正しくなります。
この二つは周波数が異なるので識別は容易であり、日本側が照射を受けたレーダーの具体的な種類を公表すべきでしょう」(JSF) https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181224-00108916/
これらのレーダー波受信記録、映像資料など海自は大量に保管してあるようですので、これを開示させることなく収めて欲しいというのが日本政府の考えでしょう。
一方、日本政府が強硬すぎるという意見が国内にもあります。
「なによりも不可解な点は外交的な配慮が全くなされない点だ。
従来であれば第一、第二、第三の理由から内閣は防衛省を抑止した。そもそも防衛大臣や内局が発表を止めさせた。それが政府が果たすべき外交機能だからだ。 外交の目的はなにより相互対立の抑制にある。自国政府の主張と相手国政府の主張を対立させない。それによる摩擦や衝突、とりわけ国民感情の爆発を避けることが仕事だ」(文谷数重)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181226-00010000-jindepth-pol
なにを言っているのやら。「外交的配慮」など精一杯しているじゃありませんか。
岩屋防衛相は紳士的にも、「ナニか事実誤認がおありのようですが」と至って優しい言葉遣いで接しています。これが逆の立場だったら韓国がどんな言葉遣いでナニを言うやら、想像するだけでげんなりします。
文谷氏は旧来の自民党や民主党政権下のような臭いものに蓋、ならぬ堪忍が「外交的配慮」だとでも言うつもりでしょうか。
その結果が、今の親北親中・離米反日路線を生み出したのですよ。
今回は官邸の指示で強行な抗議をしているのです。もちろん意図的かつ戦略的な配慮に基づいています。
その理由は、明らかです。
官邸は、この間、特にこの10月移行のムン政権の極端な反日シフトの修正をこの事件をカードにして韓国に迫る意図なのです。
現時点で、このまま推移すれば、防衛省は韓国が逃げることも隠れることもできない証拠を開示せざるをかなくなります。
それを日本にさせたら国際社会で恥をかくのは、韓国のほうですよ、それがいやなら今の反日シフトは止めて、元の日米韓陣営に戻って来なさい、そう言っているのです。
これが韓国による「敵失」を「穏便」に済ませることの代償なのです。
石垣市議会が、デニー知事が進める「県民投票」に対する予算を否決しました。
行間に苦々しさがにじみ出るような沖縄タイムスの記事です。
「来年2月24日に投開票される沖縄県名護市辺野古の新基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票まで2カ月となった。投票事務に必要な補正予算案の審議が、これまでに県内38市町村議会であり、本会議で8市町で予算案を否決または削除した。
その他の市町村では可決され、投票の実施が決まった。全県での投票実施は依然不透明な状況だが、首長の判断で予算執行も可能で、否決または削除した自治体の首長がどのような判断を下すか注目が集まる」(沖タイ12月25日)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/363092
こ沖タイはまだ首長の判断でこの不参加自治体が参加するかもれんぞ、そうなれば全県での投票もまだまだありえるゾと未練たらしく言いたいようです。
いや、それはないでしょう。これが逆の立場なら、沖タイなどは首長の議会無視は民意の否定と糾弾するんでょしょうに、ご都合主義なこと。
とまれこれで県民投票に反対する沖縄県自治体は8つに登り、県民の約3割が参加しないことになりました。
なんのことはない、3割の県民が参加ないのですから、7割県民投票とでも名称変更するのですね。
全市町村が参加ないことが決まった段階で、条例の執行は不可能になったと判断するのが常識です。
さらに県民投票の執行責任者であるデニー知事が反対デモに参加するのは、中立義務違反だと、宜野湾市長から噛みつかれている始末です。
「条例で中立性が規定されている玉城(たまき)デニー知事が15日に反辺野古移設デモに参加したことについて「条例に抵触しているのは知事ではないか。憤慨している」と批判した」(産経12月25日)
https://www.sankei.com/politics/news/181225/plt1812250026-n1.html
https://news.nicovideo.jp/watch/nw4421823
ところで否決した自治体を見ると、ひとつの共通点があることに気がつきませんか。
普天間基地の地元の宜野湾市、翁長氏か残した那覇軍港移設を引き受けている浦添市、キャンプシュワブを引き受けている金武町、嘉手納基地のお膝元の沖縄市、そして中国野圧力を受け続けている国境の自治体である宮古市、石垣市、与那国町などです。
つまり、これらの県民投票に反対の意志を示した自治体は、基地問題を真正面から引き受けてきた自治体であり、また中国の軍使膨張に日々圧迫され続けている離島の自治体なのです。
これは基地問題について空理空論はもうたくさんだ、リアリティをもって議論して欲しいという意思表示です。
米軍基地を引き受けている当該地元自治体の声は聞かない、中国と接している自治体の声もシャットアウト、これで「県民の総意」を聞くことになるとは到底思えません。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-853644.html
ストレートにその疑問を松川宜野湾市長はこう述べています。
「宜野湾市長)松川氏は条例に「普天間飛行場の危険性除去が全く明記されていない」とし、「県民投票の結果によっては普天間飛行場の固定化につながる懸念が極めて強い」と述べた。市議会の予算案否決も理由に挙げた」(産経前掲)
松川市長は、デニー知事ら移設反対派が今まで無視し続けてきた、辺野古移設を阻止してしまえば自動的に普天間基地が永久固定化されてしまう、子供でもわかる道理を指摘しています。
県民投票は多様な考えがある、それも問うべきだとする反対論を強引に反対を押し切って、辺野古移設に賛成か反対かという2択にされてしました。
これでは米軍基地賛成か、反対かを問うているようなもので、今の緊張を増す一方のアジア情勢の中でそんなことに簡単に答えられる県民のほうが少ないでしょう。
それをボカすために、移転賛成か反対かに問いをすり替えただけなのです。
そこにある危険である普天間基地の撤去問題を問わないような県民投票は異常であって、反基地派のただの政治ショーにすぎません。
「県や基地反対派は「米軍基地の県内移設では負担軽減にならない」と主張し続けている。
県民投票の設問もこうした考えに沿い、宜野湾市民の負担を軽減する国策である辺野古移設を問うのではなく、辺野古への米軍基地建設を問うという全く別次元のすり替えを行っている。県民投票はいわば政争の具にされてしまっているのであり、そこに多くの県民が違和感を抱いている」(八重山日報10月26日)
http://www.yaeyama-nippo.co.jp/archives/3163
https://www.sankei.com/politics/news/181026/plt181...
ではイデオロギー対立になって久しいこの移設問題を、少しだけ立ち止まって考えてみましょう。
辺野古移設に「県民の民意」で反対したならば、どうなるのか、それを考えて言っているのでしょうか。
仮に県民投票でデニー知事ら基地反対派が勝利したとしましょう。
そこからがむしろ問題です。
辺野古に決まった経緯を簡単におさらいましておきます。
移転は基地負担軽減のために計画されました。
したがって移設問題とは、市街地のど真ん中にある普天間基地の危険性の除去のこととならざるをえないのですから、これを問わないような県民投票などはそもそも無意味なのです。
県内となったのは、普天間基地が海兵隊キャンプと一体で運用される性格であって、本土に移設不可能だったからです。
辺野古地区となったのも、そこしか受け入れを容認しなかったからです。
よく基地反対派の人たちは「本土か沖縄にだけ基地を押しつけている」と言っていますが、そのデンでいえば、「沖縄の他の自治体は辺野古地区にだけ押しつけた」です。
ここまでが前提です。いや政府がさらに「新基地」を作って沖縄を苦しめたいのだ、米軍基地は全部撤去しろと思う方は以下を読む必要はありません。
そのような全否定の考え方だと、一歩も前に進みませんから。
話を進めます。
22年間前、20を超える候補地から辺野古地区に着地しました。出て行く場所があれば、引き受ける場所が必要です。
それを唯一容認したのが辺野古地区でした。まさに消去法の選択そのものでベストではありませんでした。
まさに矛盾だらけ満身創痍の選択で、海兵隊にとっても満足できず、地元にも不満が残りました。
結局、政府と名護市とのすったもんだの協議の結果、市街地上空を航空機か通過しないために変則的なV字型の2本滑走路となり、当初あった地上案はどうしてもイヤダという地元の声を聞き入れてシュワブとつなげた海上に迫り出す計画にしたわけです。
ですから、今回の滑走路はシュワブの増築であって「新基地」ではありません。
当時の県や名護市、建設業界との話し合いの結果であって、政府はとにもかくにも移設さえ出来ればいいということで、地元の「民意」のそのまま丸呑みしたのです。
ま、それをチャブ台かえししてしまったのが、ハトさんだったわけですが、1年間ちかくの迷走の末に、結局は下のようなことを言うはめになりました。
この人物のおかげで、17年で済むことが22年かかってもまだ終わりません。
この合意プロセスの積み重ねだけで、実に3千億円が国庫から出ています。 沖縄関連予算の1年分に匹敵します。
ところで国が辺野古移設を県民投票で否定された場合、政府はそのまま移設計画を遂行するか、否かを問われたことになります。
法的拘束力もない上に、かんじんな宜野湾市が入っていないようなしろものに政府が従うとは思えませんから、あくまでも仮にです。
その場合、選択肢は3つしかありません。
①移設の断念。
②ハンセン基地内移設案(小川案)
③与勝半島南海域埋め立て案(エルドリッヂ案)
②③は、おそらくもっとも現実的解決です。
ちなみに、辺野古案も多くの問題点を抱えているのは、いうまでもありません。
水深が深い上に、先日指摘された軟弱地盤問題も浮上しましたから、政府としても合意の積み上げを考えなければ、いっそそこまで執拗に反対されるなら止めてもいいという気分になったとしましょう。
で、どうなりますか。同じことの繰り返しです。
③の与勝半島南水域埋め立てをしようとすれば、まったく同じことを基地反対派とデニー県政から言われるはずです。
「美しい海を埋めるな」「新基地反対」。そして①に戻る。
②は海を埋め立てないからいいかと思えば、共産党や稲嶺前市長のように、「いかなる米軍基地も反対」。 そして①に戻る。
つまりは、移設反対派は移設そのものに反対しているのではなく、米軍基地だから反対しているのです。
彼らの「民意」を聞き入れて辺野古移設を白紙撤回したとしても、②、③の代案も同じコースを辿ります。
つまりは移設を止めようが止めまいが、①の移設断念しか残らないのです。
基地反対派の皆さん、おめでとうございます。
移設は有効に阻止されて、普天間基地の移設も同時に消滅しました。
したがって、普天間基地は永久に宜野湾市のど真ん中に、米軍が望む限り居続けることになります。米軍にとってこれが最良の選択のはずです。
エルドリッヂさんも「辺野古へ動きたいと思うマリーンはひとりもいない」といっていまたしね。
あんな軍事的に使いにくいものなど作るだけ無駄というのも、一面の真実ではあるのです。
米国は安保の建前から、日本政府と歩調を合わしているだけなのですよ。
基地反対派と米軍が妙に平仄が合うというのも妙な話ではあります。
デニー知事は、移設反対するということの意味を県民にもっと説明せねばなりません。
県民投票で勝ったらどうなるのか、その先に何が待ち構えているのか、丁寧に説明する必要があります。
なんとなく「民意」を聞けばいい、なんとなく団結すればいいでは、なにひとつ解決しない、そんな時期なのです。
それに耳をふさぐようにして異常な県民投票に邁進する本当の理由は、一体なんなのでしょうか。
なんだかもつれてきましたね、韓国艦艇のレーダー照射事件です。
あっさりと謝っておけばもう解決していたのに、よもや事実そのものを否定するとは思わなんだ。
「韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題で、韓国軍合同参謀本部幹部は24日の記者会見で、レーダーと連動する撮影用カメラで哨戒機を監視したが、哨戒機に向けた「一切の電波放射はなかった」と主張した」(産経12月24日)
https://www.sankei.com/politics/news/181224/plt1812240014-n1.html
それどころか被害者は韓国のほうだ、日本が威嚇したんだ、と言い出したのにはたまげました。
「韓国軍関係者は「遭難した船舶を見つけるため人道主義的な作戦を行ったと説明し、日本もその内容を知りながら問題提起を続けることは理解できない」として、「公海上で韓国海軍の活動を制約する意図ではないかと疑われる」と述べた。
当時、日本の哨戒機は韓国艦艇の上空を飛行するなど、むしろ「威嚇飛行」を行っていたという。韓国軍関係者は「日本の哨戒機は艦艇が捜索救助作戦を始めてからしばらく後、接近してきた」として、「艦艇の上空を飛行するなど、むしろ威嚇的だった」と伝えた」
(聯合ニュース12月24日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20181223000600882?section=politics/index
広開土大王 聯合ニュース前掲
当初、韓国は火器管制レーダーは海面に対して作動させていたので、日本機には向けていないと言っていました。
しかしその言い分が、海自側の写真が提示されて明らかに日本機に向けていることがバレると、今度はいや空に向けてはいたが、海自の哨戒機のほうが威嚇的に上空を飛んだのでレーダー照射の中にそちらから飛び込んだんだという言い方に変化しました。
まるで子供の言い訳というか、都合が悪くなるといつの間にか自分を「被害者」、あるいは「弱者」にすり替えてしまうといういつものパターンです。
過去、コリアが何度となく繰り返したやり方ですが、現在進行形で見たのは今回が初めてです。
今回も日本側が挑発したんだ、悪いのはお前らだということですね。
海自哨戒機は5分間という長時間に渡って、接近時と回避離脱時の2回照射されています。
5分なんてあっと言う間だなんて思わないで下さいよ。 現代電子戦では致命的時間なのですから。
韓国艦艇は2種類の対空レーダーを搭載しています。
ひとつは対空索敵用レーダー(AN/SPS-49)で、もうひとつは火器管制レーダー(STIR)です。今回問題となっているのは後者です。
「対空索敵用レーダーは、アンテナを回転させ電波を広範囲に発信し、全周囲を警戒するために使いますが、「火器管制レーダー」は、対空索敵用レーダーによって探知した「目標」に対してアンテナを向け続け、リアルタイムで相手の情報を取得する目的に使われます」(関賢太郎)
https://article.auone.jp/detail/1/2/5/90_5_r_20181222_1545450881658254
そもそもこの火器管制レーダーは、発射目的以外で使用することはありません。
そのうえ、これと連動する対空ミサイル(シースパロー)は、レーダー誘導で命中するまで標的を照射つづけねばなりません。
シースパロー (ミサイル) - Wikipedia
だから5分間も日本機を照射し続けたのです。
現代の電子戦において、高速で飛行する航空機に向けられた対空火器レーダーは、極めて細いビームを使ってコンマ以下の時間で位置を測定をします。
ですから5分という時間は、執拗に日本機に対してピンポイントで標的し続けていたことを物語っています。
このような長時間に渡って日本機を追い回していたことは、偶然の事故ではありえません。
P-1は、海自の世界最新鋭の哨戒機で、電子機器の塊です。
ミサイルを妨害するフレアを投下する海上自衛隊の哨戒機P-1。機首部上部にレーダーを逆探知するESMを装備している(関 賢太郎氏撮影)https://article.auone.jp/detail/1/2/5/90_5_r_20181...
上の写真で機首上部に見える小さなドームがESM(電子戦支援装置)で、電波逆探知装置機能をもっています。
これによってリアルタイムで韓国艦艇が照射したレーダー波を受信し、そのレーダーの種類を判別したはずです。
このESMのデーターを海時は保管しているはずですから、いつでも韓国側に開示可能なはずです。
ただし、それをするとP-1の電子装置の分析能力が分かってしまいますから、手控えているにすぎません。
おそらくこのようにシラばっくれているならば、そのうち河野さんが出すでしょう。
つまり、韓国側はなんらかの理由で、意図的に日本機を撃墜するシミュレーションをしていたのです。
この不可解な行為に対して日本機が問い合わせしたところなしのつぶてでした。これについて韓国側はこう反論しています。これがまたケッサクです。
「日本側は哨戒機の乗組員が艦艇に対し、無線で火器管制レーダーを稼働させた意図を聞いたとしているが、哨戒機は国際商船共通網を利用したという。同共通網は漁船や商船も聞ける通信網だ。韓国軍関係者は「日本の哨戒機は国際商船共通網で海洋警察を呼び出し、通信感度も極めて低かった」として、「艦艇では海洋警察を呼んでいると認識した」と述べた」(聯合前掲)
海洋警察を呼んでいると思ったですって(プッ)。
レーダー照射を受け続けていた日本機が国際共通無線で、なぜ韓国海洋警察などという筋違いの部署を呼び出す必要があったのでしょうか。
そのくせ感度が低かったから聞き取れなかったなんて言っている以上、韓国艦艇はしっかり受信していたはずです。
そもそも威嚇飛行をされて脅威を覚えたから火器管制レーダーで追尾したといっているのですから、何の件で日本機が照会しているのかわかりそうなもんです。
寝言は寝て言え。 すぐにバレる嘘は言うな。
今回の韓国海軍のやったことは、世界の海軍のルールであるCUES(海上衝突回避規範)の明確な違反行為だからです。
●CUES(海上衝突回避規範)
①砲やミサイルの照準、火器管制レーダーの照射、魚雷発射管やその他の武器を他の艦船や航空機がいる方向に向けない。
②遭難時などを除いて、信号弾やミサイル、ロケット、各種火器などの物体を艦船や航空機に向かって放出しない。
③艦橋や航空機の操縦席を(探照灯や照明などで)照らさない。
④レーザーを使用し、乗員や艦船の装備に悪影響をおよぼすような行為をしない。
⑤アクロバット飛行や模擬攻撃を艦船の付近で行わない
もちろん韓国海軍もCUESに参加 いますから、知らないはずがありません。 知らなかったら田舎海軍です。
ですから、今回の韓国海軍のレーダー照射は、意図的かつ極めて悪質な挑発行為だと断じることができます。
やれやれ初めからあっさりと「間違って照射してしまいました」と謝ってしまえばお終いななのに、かえって引っ込みがつかなくなってとうとう外交案件にまで昇格してしまいまったというわけです。
ところで今回自衛隊が反撃すべきだったとか、韓国とはもう断交しろとか言う人がいます。
そもそもP-1は哨戒機で、当時ハープン対艦ミサイルは搭載していませから、したくても出来ません。
せいぜいできるのは、上の写真のようにチャフをたいて回避行動をとるしかありません。
本気で反撃するとなると、援軍を要請せねばなりませんから局地戦規模にエスカレーションしてしまいますし、政府から海上警備行動の承認を貰わねばなりません。
なお、念のために書いておきますが、この現場となった大和堆が日本のEEZ(排他的経済水域)であることによって、韓国海軍は制限を受けません。
EEZはあくまでも漁業などの経済活動を日本に優先して認めるだけのことで、「領海」ではないからです。
したがって日本は北朝鮮の漁船を実力で排除できますが、韓国海軍は排除できません。
日本が韓国海軍の軍艦を排除できるのは、「領海」に進入し、なおかつ無害通航権を逸脱してからのことです。
現状の日韓関係で、ここまでエスカレーションする理由がこちら側にはありません。
いままで中国は、海自の艦船に対して、魚雷発射管の扉を開けたことさえあると言われていますし、ロシアが年中行事のようにこのテの挑発行為をすることは知られたことでした。
ですから自衛隊は、こんな軍事挑発に馴れていいのかとは思いますが、「馴れて」しまえるほど大人です。
火器レーダー照射をしてそれが戦闘に結びつくのは、今のアゾフ海でウクライナ海軍がロシア海軍艦艇に対して同じことをした場合でしょう。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-9462.html
逆は成立しません。なぜなら、ウクライナ海軍のほうかはるかに弱いからです。
つまり、火器管制レーダー照射が戦闘、さらには戦争に拡大するのは、あくまでも軍事的緊張が極限まで高まっている場合に、軍事的優勢な側がそうするだけです。
ネットでは頭に血を登らせている人も多いようですが、今わが国と韓国は政治的には氷河期ですが、軍事的緊張関係にありません。
風前の灯ですが、米国をブリッジにした米韓日同盟は形式的には消滅していないからです。
ムンジェインがいつどういう判断をするのかは、おそらく当人も分かっていないでしょうから、状況の推移を見て、そのつどプリンシパル(原則的)な対応をするしかないのです。
このような過渡的状況の時に、日本がムンを北朝鮮の側に押し込むようなことは厳に慎むべきです。
かといって日本は韓国に対して今までのように「和解」を無前提にした交渉をすべきではありません。
日韓議連のように、日韓関係が半ば以上破壊されているのに、「へいへい韓国さんの仰ることはそのとおりでゲス」とやれば、かえって日韓関係を悪くさせます。
今、韓国に伝えねばならないのは、日韓関係を意識的に破壊し、共通の脅威であるはずの北にすり寄ろうとしているムン政権への懸念以外なにがあるというのでしょうか。
彼等のように初めから腰くだけで対応すれば、韓国が日本にだけは何をしてもかまわない、いかに侮辱しようと、いかに挑発しようと自由だというコリア独特の勘違いを認めることになります。
先だっての「徴用工」裁判判決でも、こんなに日本が怒るとは思わなかったと言っているそうですが(笑)、今回も同じように軽い気持ちで、日本をなぶってやろうとでも思ったようです。
軽い気持ちで戦争を仕掛けられては、たまったもんじゃありません。
かといって、ここで日本がぶち切れて過剰な反応をすれば、北や中国の思うつぼです。
それは宙ぶらりんな韓国を、かえって北朝鮮の側に追いやることを容認する結果になります。
やがて日本も韓国に対して何らかの結論を出す日が来るかも知れませんが、それは今ではないのです。
さて蛇足ながら、こんな水域で韓国海軍と北の船舶はなにをしていたのでしょうかね。
北の船の遭難救助をしていたと韓国政府は言っていますが、ならば北の船舶が韓国海軍艦艇に直接に救助要請をしてきたということでしょうか。
とすると北は韓国軍の軍用周波数帯を知っていたことになりますから、いつでも北が軍用バンドに侵入出来ることになります。
また国際商用周波数帯を使っていたのなら、近くを飛行していた海自が探知していないはずがありません。
韓国が北の「瀬取りに協力していた」という説もネットに出回っていますが、私には裏をとりようもないのでなんとも言えません。
ただここまでシラを切られると、裏になにかあるんじゃないの、と思いたくなるのはわからないではありません。
これもひとえにくるくる変わる韓国側の言い逃れがそうさせたのです。
※写真が映えなかったので差し替えました。すいません。
ジェームス・マティス国防長官が辞任しました。
形式的には任期一杯までの2月をもってということとですが、1月からはシャナハン副長官が代行をするそうなので、いうまでもなく辞任です。
これでトランプに直言できる人物は、ホワイトハウスからいなくなりました。
マティスは既に北朝鮮政策についてブロックされているようですから、辞任は時間の問題とされていました。
ただし、最悪の時期に最悪の選択をしたものです。
というのは、同時期にニッキー・ヘイリー国連大使の辞任しており、このふたりは既に解任されているティラーソンなどと違って、トランプの右腕だっただけに影響は深刻です。
現時点での情報をまとめておきます。
マティスは、辞任するに当たってのトランプへの12月20日付け書簡を公表しています。
海外ニュース翻訳局様によりました。感謝いたします。
原文https://www.documentcloud.org/documents/5655955-Secretary-Mattis-resignation-letter.html
https://www.newshonyaku.com/usa/201812221
「私がこれまで一貫して抱いてきた信念の一つは、米国の国としての強さは、同盟とパートナーシップという独自の包括的なシステムの強みと密接に関連しているということです。
米国は自由な世界において不可欠な国であり続けていますが、強固な同盟関係を維持し、同盟国を尊重しなければ、米国の利益を守り、その役割を効果的に果たすことはできません。あなたと同じように、私も最初からアメリカ軍は世界の警察官であってはならないと言ってきました。そうではなく、同盟国に効果的なリーダーシップを提供することを含め、米国のあらゆる手段を使って共通の防衛を提供する必要があります」
「同様に、我々は、我々のアプローチにおいて断固としたものでなければならないと信じています。例えば、中国とロシアが、自国の近隣諸国、米国、および同盟国を犠牲にして自国の利益を促進するために、他国の経済的、外交的、および安全保障上の決定に対して拒否権を獲得する、自国の権威主義的モデルに沿った世界を形作りたいと考えていることは明らかです。だからこそ、米国の力のあらゆる手段を使って共通の防衛を提供しなければならないのです」
辞意を表明したマティス国防長官とトランプ大統領 Al Drago / Bloomberg
マティスの「同盟重視」論はまさに正論ですから、きわめて深刻といわざるをえません。
マティスの言葉を借りれば、米国の安全保障の根幹は、「中国やロシアがめざす権威主義的な世界形成」に対して、「同盟に対する共通の防衛の提供」することだとしており、それについて意見が違ったということです。
直接のきっかけは、シリア撤退とアフガン撤収の方向についての意見の違いであったと言われています。
「シリアの米部隊は公式には503人だが、実際には4000人弱の規模と見られている。ほとんどが特殊部隊で、クルド人に訓練や武器援助し、ユーフラテス川の北東部に駐留。クルド人とともに、シリア全土の3分の1を支配下に置いている。トランプ大統領は30日以内に撤退するよう指示した、という」(佐々木伸星槎大学大学院教授)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14865
英仏の特殊部隊は残りますが、米軍特殊部隊がクルド独立勢力を支援しつづけるかどうかは、トランプ-エルドアン密約があるので不透明です。
トランプは12月19日に、シリア撤退をツイッターで公表しましたが、なんと軍幹部はおろかマティスやボルトンすら聞いていなかったようです。
シリアに駐留する米軍(AFP/AFLO)
一方撤収する米軍に代わってトルコのエルドアンは、トルコ軍によるシリア領内で作戦を開始することを明らかにしました。
「トルコのエルドアン大統領は12日、隣国のシリア北部での軍事作戦を近く開始すると表明した。シリア北部には、トルコが敵視する少数民族クルド人の武装組織の支配地域が広がっている。この地域には、武装組織を支援する米軍部隊も駐留しており、トルコが軍事作戦に踏み切れば、米国との緊張が高まる可能性がある。
トルコメディアによると、エルドアン氏は12日に首都アンカラの演説で、「ユーフラテス川の東側で、分離主義者のテロ組織を排除する作戦を数日以内に開始する」と話した。内戦により、シリア北部のユーフラテス川東側は、クルド人の武装組織「人民防衛隊」(YPG)を中心とする勢力が実効支配する。トルコは、YPGが自国の非合法武装組織「クルディスタン労働者党」(PKK)と一体のテロ組織と認定し、勢力の拡大を懸念している。」(朝日12月13日)
https://www.asahi.com/articles/ASLDF3C6MLDDUHBI04T.html
自国内のクルド人の独立を恐れるトルコは、シリア領内のクルド人武装組織に打撃を与えることを考えているようです。
シリア領内で治安作戦をする意志のエルドアンとトランプは電話会談をおこなっており、その直後にシリア撤収を決定したと言われています。
「トランプ大統領が撤退の決定をする要因となったのがこの電話会談だったようだ。エルドアン大統領はこの直前、テロリストと見なすシリアのクルド人勢力の脅威を取り除くため、数日中にシリアに侵攻すると恫喝、事実、シリアとの国境に軍や戦車を集結させ、巻き込まれないよう米軍に警告していた。
同紙によると、エルドアン大統領はこの電話会談で、シリアのクルド人はテロリスト集団であること、ISはすでに掃討されているのに、米軍が駐留する必要性はないこと、有事の際には北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるトルコが対処するので心配ないことなどを伝えたという」(佐々木 前掲)
シリア撤収は、就任前からのトランプの持論でしたが、IS作戦との兼ね合いでペンディングとなっていたものです。
それがIS壊滅作戦の終了した今年4月頃から再び頭をもたげて、ホワイトハウス内の安全保障チームのマティスやボルトンと対立してきました。
それでもとりえずこの夏頃まではトランプも、IS壊滅後もシリア領内でアサド政権の軍事部門を担っているイランの影響力排除のために、小規模の米軍部隊をシリア領内に残すことに同意していました。
当時、大統領の右腕のボルトンさえも、「イランの部隊が展開している限り、われわれが撤収することはない」と言い切っていましたから、このチャブ台返しにはボルトンも衝撃を受けているはずです。
同じくISを物理的に壊滅させても、われわれはこの地域の安定が維持されるまで留まる、と述べていた米国政府の有志連合代表のマクガーク代表も、マティスの後を追うようにして辞任してしまいました。
「トランプ米大統領は22日、ツイッターで、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討のための有志連合の調整を担うマクガーク米大統領特使が「辞任した」とツイッターで明らかにした」(産経12月23日)
https://www.sankei.com/world/news/181223/wor1812230016-n1.html
朝日は前掲記事で、「トルコと米国の緊張が起きる」と書いていますが、起きないでしょう。
http://www.afpbb.com/articles/-/3040739
なぜなら、トランプはシリアにおいて米国が果たしてきた役割を放棄し、トルコなどの地域覇権国に任せることを密約してしまったからです。
トランプは、かねてからトルコが求めていたパトリオットミサイルの供与にも同意しました。
「また、特筆すべきはトルコが1年以上も求め続けてきたパトリオット迎撃ミサイルの売却について、トランプ政権が撤退の決定と同時期に承認し、議会に通告した点だ。政権内部では、エルドアン氏がロシアから最新の迎撃ミサイル・システムを購入するなどしたため、パトリオットの売却に反対論が噴出していた。しかし、トランプ大統領は今回、エルドアン氏の要求をのんだことになる」(佐々木 前掲)
これは米国主導でやってきた有志連合諸国から盟主が勝手に脱退することを意味するだけではなく、米国を後ろ楯にしてIS壊滅作戦の主力を戦ってきたクルド人独立勢力のはしごを外すことになります。
これでクルド人の永きに渡る独立国への夢は消え、再びトルコ軍とアサド政権軍との両面作戦をせねばならないことになりました。
同時に、非人道的なアサド政権とロシアによるシリア国民虐殺を、米国が黙認したことも意味します。
トランプにしてみれば、シリアやアフガンといった不良資産を切り捨てたのです。
トランプにはオーソドックスな同盟関係を重視するマティスに対して、ビジネスマン的外交思考があって、不良資産を早く処分しないと、新たな外交展開ができなくなると考えているようです。
ただし、今まで同盟関係を形成してきたヨーロッパにとって、仮に米国が主導して有志連合を作ったとしても、米国は自国の思惑で何の協議も経ずに勝手に降りるというネガティブな印象を与える結果になりました。
ヨーロッパは、マクロンが提唱する米国抜きの「欧州軍」に傾斜していく可能性があります。
また東アジアにおいては、北朝鮮への軍事オプションを拒否し、在韓米軍を重視してきたマティスがいなくなったことで、今後の展開が読めなくなりました。
韓国そのものをトランプが不良資産だと考えていることは、公然の秘密だからです。
国家安全保障担当補佐官だったヒューバート・マクマスター陸軍中将、大統領首席補佐官であったジョン・ケリーに続き、このマティスの辞任によって、ホワイトハウスから軍人のすべてが姿を消したわけです。
皮肉にも、リベラルメディアの「軍人内閣だ。戦争内閣だ」という薄っぺらい見立てと違って、これらの軍人たちは政権内で「ハト派」の役割をつとめました。
ちなみに、マティスがイラクの戦闘で野戦病院入っていた時に、枕を並べていたのが当時の部下だった前沖縄4軍調整官のローレンス・ニコルソン中将だったそうです。
妻帯経験なしで「戦う修道士」というふたつ名をもつマティスは、入院中ずっと本を読み耽ていたそうで、その本は「孫子」だったとか。
私はマティスの辞任がもたらす影響は、大変に大きいと考えています。次に辞めるとすればボルトンかもしれません。
惜しい人物を米政府は失ったものです。
韓国海軍が海自のP1に対して、射撃照準レーダーを照射しました。
現時点で情報整理しておきます。
まずは防衛省のプレスリリースです。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/21g.html
「■韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について
防衛省12月21日
12月20日(木)午後3時頃、能登半島沖において、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から、海上自衛隊第4航空群所属P-1(厚木)が、火器管制レーダーを照射された」
発生場所は竹島北東100キロの地点です。
この竹島海域で韓国海軍は軍事訓練を実施していました。
「我が国固有の領土であり、韓国が不法占拠している島根県の竹島の周辺で、今度は韓国軍が、軍艦や航空機が参加する「竹島防衛訓練」を実施した」
(FNN12月14日) https://www.fnn.jp/posts/00400840HDK
下の写真が、その照射された海自哨戒機から撮影された韓国海軍艦艇です。赤丸で囲まれた円形に見えるものが火器管制レーダーSTIR-180です。防衛省 海自当該機からの撮影 韓国海軍 広開土大王(クァンゲト・デワン)(971) 赤丸はJSF様による
上の写真から、問題となっている火器管制レーダー部分を拡大します。 丸く写っているのがわかるでしょうか。
韓国艦艇火器管制レーダー拡大 JSF様による https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181221-00...
この火器管制レーダーは間近で見るとこのようなものです。
火器管制レーダーSTIR-180https://ja.wikipedia.org/wiki/STIR/STING
簡単に、技術的解説をしておきます。
艦船が積んでいるレーダーはおおまかに4種類あります。今回、海自哨戒機に照射されたのは②です。
①対水上用警戒監視・捜索
②対空用警戒監視・捜索(火器管制レーダー)
③航海用ナビゲーション
④ミサイル・搭載砲の照準をする射撃管制用
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC0800E_Y3A200C1EA2000
この火器管制レーダーは1平方mの物体なら140キロメートル以上の距離でも追尾できて、対空ミサイルにデーターを送ります。
このレーダーが真正面から見えていることが問題です。
「これは円形の皿状のレドームを持っているので、真円に見えているということはこちらに向けられていることを意味しています。哨戒機は目視で火器管制レーダーが動くのを確認、照射されたレーダー電波も感知して退避行動を取ったとのことです」
JSF 12月21日 https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181221-00108571/
火器管制用レーダーは、海上を捜索する目的のものではありませんし、アンテナが空に指向していますから海上捜索に使用することはありえません。
したがって、これを海が荒れていたために北の遭難船捜索のために使ったという韓国海軍の言い分はまったく信用できません。
また、レーダーから標的に電波を送り、発射後のミサイルが相手から反射してきた電波を拾って方向修正するので、このレーダーで捕捉されれば、確実に海自哨戒機を撃墜することが可能です。
本当に撃つ気なら、照準した直後の数秒で砲弾が着弾してしてしまいます。
この行為は「西大西洋海軍シンポジウム」が作ったCUES(洋上での不慮の遭遇をした場合の行動基準・Code for Unalerted Encounters at Sea)に違反しています。
これは世界の海軍同士の平時のルールを定めたもので、国際法に準じるものです。
危険な挑発行為の常連であるロシアの解説はこうです。
「もし2隻の船を2人の兵士になぞらえるなら、レーダーによる標的の捕捉とそれに付随する行為は、弾丸の入ったライフル銃を敵に向け照準を合わせるに等しい。
そうした条件においては、挑発者自身により偶然引き金が弾かれる可能性もないわけではないし、標的とされた側の船の乗組員が、生命の危険を感じて衝動的に危険な行為に出る事もあり得る」
(「ボイス・オブ・ロシア」2013年2月8日)
つまり射撃用レーダーを照射して、照準(ロックオン)するという行動は、世界の海軍の常識では「弾丸の入ったライフルを敵に向って照準を合わせること」、すなわち戦闘準備行為そのものなのです。
それに対しての岩屋防衛大臣のコメントです。
P1哨戒機 http://zapzapjp.com/54621593.html
「岩屋毅防衛相は21日、記者団に「韓国側の意図ははっきりと分からない」としつつ、「極めて危険な行為だ」と批判した。レーダー照射は「あとは引き金を引くだけ」の危険な状況で、防衛省関係者は「韓国軍との間で聞いたことがない。驚いている」と憤った。
(略)
だが、外務省幹部は「友好国なのにありえない事態だ。韓国側から詳しい説明を待つが、関係が維持できるだろうか」と落胆を隠さない。外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は23日に訪韓し、徴用工問題の解決策について協議する予定だったが、レーダー照射事件の抗議に時間が割かれる可能性もある。」(毎日12月21日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181221-00000114-mai-pol
公平を期するために韓国海軍の言い分も聞いておきましょう。韓国軍は意図的に「照射した事実はない」否定しています。
「韓国海軍の駆逐艦が火器管制レーダーで日本の海上自衛隊のP1哨戒機を狙ったという防衛省の主張に対し、韓国軍当局は「通常の作戦活動中だった」と明らかにした。
韓国国防部は21日、防衛省の発表に関して「作戦活動間にレーダーを照射したが、日本の哨戒機を追跡する目的で照射した事実はない」と述べた」(12日通21日
https://news.nifty.com/article/world/korea/12211-151588/
当時の状況についての韓国側言い分です。
「当時の状況は、20日独島北東方向100キロメートル地点の公海上に北朝鮮の船舶が漂流しているという情報により韓国の海洋警察と共に海軍の駆逐艦が出動し捜索作業を10時間近く実施している過程で発生したという。
韓国軍関係者は「当時、波が高く気象条件が良くなくて、駆逐艦のすべてのレーダーを総動員していた」として「この過程で射撃統制レーダーについた探索レーダーが360度回転し撃った信号が日本海上自衛隊のP1哨戒機に探知されたものと理解する」と話した。
日本が主張するように射撃統制レーダーがP1哨戒機を直接狙ったわけではないということだ。
岩屋防衛相は、韓国側に意図を尋ねたが応答がなかったと話した。しかし、韓国軍関係者は「人道主義的救助のための措置だったことを東京駐在武官を通じて日本政府に十分説明した」として「防衛相まで出て問題提起するとは理解し難い」と付け加えた」(ハンギョレ12月12日)
http://japan.hani.co.kr/arti/international/32409.html
以上の韓国側の主張をまとめると、こうなります。
●韓国側主張
①発生場所は竹島北東100キロという周辺海域。
②韓国海軍クァンゲト・デワンが竹島北東方向100キロメートルの地点の公海上で、北朝鮮の遭難した船舶を捜索していた。
③当時、波が高いために韓国海軍艦艇は、すべてのレーダーを捜索に使っていた。
④射撃管制レーダー(火器管制レーダー)が360度回転しており、それか海自のP1に当たった。
⑤韓国海軍が海自の問いかけに応答がなかった件については、在東京駐在武官が日本政府に充分に説明してある。
韓国艦艇が北の艦船を捜索していたことは本当かもしれませんが、後はリクツになっていません。
難破船の捜索 のために対空火器管制レーダーを使用していたならただの素人ですし、5分間という長時間の照射からみると海自に対する戦争挑発行為です。
同じことを中国やロシアの艦艇や航空機にやってみるのですね。直ちに反撃されます。
最後にこのレーダー照射事件を、この間の日韓関係の流れの中に置いてみます。
●2018年10月12日 国際観艦式での自衛艦旗(旭日旗)の不掲揚要請
https://www.asahi.com/articles/ASLBD4J9JLBDUHBI02Q.html
●同年10月30日 朝鮮半島出身労働者に対する日本企業への賠償判決
https://www.recordchina.co.jp/b657625-s0-c10-d0058.html
●同年11月21日 慰安婦財団の一方的な解散表明
https://special.sankei.com/a/international/article/20181121/0001.html
●同年11月26日 竹島への国会議員の不法上陸
https://www.sankei.com/world/news/181022/wor1810220023-n1.html
.●同年11月27日、竹島周辺での海洋調査船の航行https://www.sankei.com/politics/news/180803/plt1808030006-n1.html
●同年12月14日 韓国軍竹島領海内で軍事演習
https://www.fnn.jp/posts/00400840HDK
●同年12月20日 韓国海軍艦艇が海自哨戒機に火器管制レーダーを照射
https://www.sankei.com/politics/news/181221/plt1812210031-n1.html
こうして時系列で並べると、韓国の意志が透けて見えるようです。
もはや韓国は正常な判断能力を欠落させてしまいました。以後、私たち日本人は、そのような国として対応するしかないでしょう。
山路さん寄稿の最終回となります。あらためてありがとうございた。
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承前
■ウォーカー判決と日本政府見解の変遷
米国では1999年当時カリフォルニア州議会議員だったマイク・ホンダらが中心になって、ナチスとその同盟国による強制労働被害者が損害賠償を請求出来る期限を延長する通称「ヘイデン法」を成立させました。
※ヘイデン法 - Wikipedia
ジャパンバッシャーの当時のクリントン大統領も前向きだったと言います。
その結果、ただちに日本企業に対して元連合国軍捕虜が謝罪と賠償を求めて訴訟を提議しました。
サンフランシスコ連邦地裁のウォーカー判事は「サ平和条約14条によって、戦争の遂行中に日本国およびその国民がとった行動から生じた連合国およびその国民他の請求権は放棄されている」と判示し請求を棄却しています。
※ 編者注 欄外に当該サ条約14条をアップました。ウォーカー判決で根拠とされているのは最終部分((b)です。
サ平和条約の締約国でない中・韓国人被害者については14条の適用を受けないものの、日韓請求権協定によるものとされていて、加州での訴訟で日本企業は「サ条約の後に日本との間に締結された二国間条約や協定はサ条約の枠内にある」という議論を展開し、日米両政府も同様の見解を示しています。
結果として「ヘイデン法は憲法違反(遡及法の禁止)であり、訴訟は無効」と判示し、中・韓被害者の訴えを却下して、上級審でそのまま確定しました。
また、連邦高裁は慰安婦訴訟について「司法府に審査権が付与されていない」として請求を却下しています。
このウォーカー判決を契機に日本でも「外交保護権を放棄した」から、「サ平和条約とそれに準ずる条約によって解決ずみ」との見解にかわったと思われます。
またその後の最高裁の判決では「訴訟権もない」にかわりました。
もっとも、どう細部の解釈に変更があろうが日本政府の見解や日本の裁判所での判決は、最初から「請求権協定で解決ずみ」で一貫してかわらないので、批判にはあたりません。
橋下徹氏はこのような日本側の変遷に対して「フェアではない」とご不満のようですが、そうした言質はまず韓国側に対して発せられたらいかがかと思います。
日本側の見解の変化は米判決を受けて、まず均霑性※を問題としたと思われ、何らやましいものではありません。 ※きんてんせい・条約上の効果が各国不平等にならない事
これまでの「完全かつ最終的に解決した」としながら、和解という微妙な一手でゴマかして来た事の方に問題があり、誤りだったのです。
何となく「日本が金くれる」というような美しい誤解や、さらに攻め込んでいけば目的が達成されるというような理解を被害者側に生む事になり、その果ては現在の韓国政府の責任放棄につながったと思うと残念でなりません。
■ 人権理事会など
以上見てきたように、法的側面では日本側有利に運んで行くと思われますが、人権理事会などを中心とした外野はそのようにはいかないでしょう。
むしろ慰安婦問題では前項のウォーカー判決以降、米国でも日本糾弾がきびしくなりました。
米議会の慰安婦決議がなされたのもウォーカー判決以降です。
今回は女性の人権がクローズアップされないとの予想から、フェミが動かないので慰安婦問題の頃のような大騒動にならずに済む、という見立てもあるようですが、そうも行きそうにありません。
ダブルでプロパガンダするつもりの文在寅は、さっそく韓国国宝たる慰安婦の問題を蒸し返すために予算を付けたところです。
外信の八割方は日本批判にあけくれるでしょうし、それに引きずられて国内マスコミも準じていくでしょう。
人権理事会は今でさえ、「日本側の処置は不十分」などと言っています。
政治利用の場と化した人権理事会の活動は、法輪功やウイグル人に対する中共の人権侵害を放置し、アフリカも北朝鮮におけるそれも何一つ解決できない不道徳な組織で、くわえて米国の脱退により権威も失っています。
日本国内を見渡せば、「自国にネガティブである事」が良心的なリベラルの証であると勘違いしているインテリがほとんどだし、単純に反日を「インターナショナルリズムの実践」と考える馬鹿野郎も多いのが現状です。
総じて状況は芳しいとは言えませんが、そのような批判をまずおいても司法決着をすることの必要は先に述べたとおりです。
臆すことなく、その後の事は別個の処置として考えるほかないでしょう。
了
文責 山路 敬介
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■サンフランシスコ平和条約
http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/docs/19510908.T1J.html
[文書名] サンフランシスコ平和条約(日本国との平和条約)
■第五章 請求権及び財産
第十四条
2(I) 次の(II)の規定を留保して、各連合国は、次に掲げるもののすべての財産、権利及び利益でこの条約の最初の効力発生の時にその管轄の下にあるものを差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を有する。
(a)日本国及び日本国民
(b)日本国又は日本国民の代理者又は代行者
並びに
(c)日本国又は日本国民が所有し、又は支配した団体
並びに
(c)日本国又は日本国民が所有し、又は支配した団体
この(I)に明記する財産、権利及び利益は、現に、封鎖され、若しくは所属を変じており、又は連合国の敵産管理当局の占有若しくは管理に係るもので、これらの資産が当該当局の管理の下におかれた時に前記の(a)、(b)又は(c)に掲げるいずれかの人又は団体に属し、又はこれらのために保有され、若しくは管理されていたものを含む。
(II)次のものは、前記の(I)に明記する権利から除く。
(i)日本国が占領した領域以外の連合国の一国の領域に当該政府の許可を得て戦争中に居住した日本の自然人の財産。但し、戦争中に制限を課され、且つ、この条約の最初の効力発生の日にこの制限を解除されない財産を除く。
(ii)日本国政府が所有し、且つ、外交目的又は領事目的に使用されたすべての不動産、家具及び備品並びに日本国の外交職員又は領事職員が所有したすべての個人の家具及び用具類その他の投資的性質をもたない私有財産で外交機能又は領事機能の遂行に通常必要であつたもの
(iii)宗教団体又は私的慈善団体に属し、且つ、もつぱら宗教又は慈善の目的に使用した財産
(iv)関係国と日本国との間における千九百四十五年九月二日後の貿易及び金融の関係の再開の結果として日本国の管轄内にはいつた財産、権利及び利益。但し、当該連合国の法律に反する取引から生じたものを除く。
(v)日本国若しくは日本国民の債務、日本国に所在する有体財産に関する権利、権原若しくは利益、日本国の法律に基いて組織された企業に関する利益又はこれらについての証書。但し、この例外は、日本国の通貨で表示された日本国及びその国民の債務にのみ適用する。
(III)前記の例外から(i)から(v)までに掲げる財産は、その保存及び管理のために要した合理的な費用が支払われることを条件として、返還されなければならない。これらの財産が清算されているときは、代りに売得金を返還しなければならない。
(IV)前記の(I)に規定する日本財産を差し押え、留置し、清算し、その他何らの方法で処分する権利は、当該連合国の法律に従つて行使され、所有者は、これらの法律によつて与えられる権利のみを有する。
(V)連合国は、日本の商標並びに文学的及び美術的著作権を各国の一般的事情が許す限り日本国に有利に取り扱うことに同意する。
(b)この条約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとつた行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。
今日の記事は2本です。山路さんの寄稿はもう一本のほうです。
大変に触発された優れた論考です。ぜひお読み下さい。
さて今日の山路さんの論考は、韓国はとうぜんとして、日本の中ですら忘れられがちな「国際社会の立場」を再認識させられました。
韓国の独立は、決して彼らがファンタジーする分離独立闘争の結果ではなく、大日本帝国の崩壊によって連合国によってもたらされた棚ボタ独立でした。
だから、独立に一滴の血どころか汗すらかかなかった李承晩が、米国の傀儡として堂々と大統領の椅子に座れたのです。
弾一発撃たず、米国からお下渡しされた独立、大戦を「犯罪」と呼ぶなら共犯者。これが韓国の戦後の出発点でした。
連合国側は、この韓国の分離独立を当時構築されつつあった戦後秩序の枠組みの中に組み込みました。
そのための国際条約が日韓基本条約であって、単なる植民地独立一般に伴うものではないのです。
ですから、サンフランシスコ条約の各論に当たるのが日韓基本条約だったわけで、それがとりもなおさず日韓平和条約だ、という山路氏の指摘は正鵠を射ています。
実際、サンフランス条約締結が1951年(昭和26年)9月8日、日韓交渉開始はその翌月の10月20日でした。
あくまでも日韓条約は、この大きな国際的枠組みの中で成立した戦後処理としての二国間条約でした。
近代法は時効概念を持ちます。
戦争処理の場合は、戦後に結ばれる平和条約を以て以後いかなる遡及もしない、これで「完全かつ最終的に解決した」、即ちこれを以て時効とするのが、戦後処理のルールでした。
平和条約という名称にならなかったのは、戦時中韓国は日本国だったからで戦争などしていないからにすぎません。
このことを認識すれば、韓国最高裁のように「日本軍国主義の不当な支配」という果てしなく過去に遡及するが如き態度が、いかに「平和条約」の理念から大きく逸脱した前近代的妄執かわかるでしょう。
世界の一般的二国間関係において、平和条約の一方的廃棄は重大な結果をもたらします。
平和条約を一方的に廃棄した韓国に、その自覚がおありか?
日経12月18日https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39094660Y8A211C1FF2000/
蛇足ですが、韓国政府を「徴用工」団体が韓国政府を訴えた件には、腹を抱えました。
要は、この間の日本政府の対応のきびしさを見て、日本からは簡単にむしれないと悟ったからでしょう。
下手すりゃ国際司法裁判所にまでいきますからね。
ならば、韓国政府は最高裁判決に従うと言う以上、個人請求権のケツの持って行く先は韓国政府のほうがてっとり早くカネになるや、ということです。
さてさて韓国政府さん、最高裁判決を否定するのか、「徴用工」の訴えを門前払いして国民世論を敵にするのか、ポピュリストのムンさん困りましたね、まさに自縄自縛。
いずれにしてもこういう想定外のケースも飛び出すんですから、さっさと態度を決めて一緒にハーグに行きましょう。
山路敬介氏寄稿の3回目です。
~~~~~
承前
■平和条約と一括処理協定
大韓民国という国家は、日本が戦争に負け、サンフランシスコ平和条約によって日本の領土が確定される中で誕生した日本からの「分離独立地域」です。
それが国際法上の位置づけです。
そうした地域が国家として誕生するにあたり、戦後の新しい世界構築のために連合国側の強い要請のもと、また日本としても韓国としても平和条約を結ぶ必要性を判断したのです。
そうして誕生したのが日韓基本条約であり、その条件を記したのが請求権協定です。
日韓基本条約はサンフランシスコ平和条約の「特別取極め」など諸条項によるばかりでなく、その根本的性格がサ条約と同等である事が連合国側の要請でした。
つまり、サ条約同様に互いに違法・遵法にかかわらず、それまでの一切合切全てを条約発効を期に清算されることが重要な要件であったわけです。
(それでも竹島問題だけは残り、密約的に「棚上げ合意」となりました。にもかかわらずこの約束すら守らず、今ではご存知のとおりの有様です。これを見た中共が尖閣を取りに来るのもまた当然でしょう)
そうでなければ根本的な「恒久平和」は達成されないという国際社会の総意があり、「戦争の効用」というか、機会をのがさず生かした国際社会の優れた判断だったと言えます。
そのような意味から「完全かつ、最終的」という文言が挿入されたのだし、それまでの互いの全ての請求権を消滅させることが再重要課題かつ条約の前提としたのです。
ゆえにこのような主旨で締結された日韓基本条約は、国家が個人の請求権などを含む保障問題を一括妥結する方式の取り決めであるところの、「一括処理協定」に明らかに該当します。
一括処理協定のもとでは、その当然の前提として自国民個人の相手国側に対する請求権は消滅したものとして処理され、被害者個人とその所属する国籍国政府との間の保障問題が残るだけになります。
ちなみに、このような裁判はICJですでに判例(2012年、ドイツ対イタリア主権免訴事件)にもなっています。
また「一括処理協定」においては、一方の国家がその所属する国民に対して一切の補償を成さなくても、それはその国家の自由で、その相手方の国家及び個人は責任を負う必要がありません。
あるいは実際の加害者が被害者に直接支払いをすることがないという事実が、あたかもそれが免責されたかのような錯覚に陥りがちですが、そうではありません。
20世紀初頭から、より具体的には第一次大戦の戦後処理の中で既に個人的な補償措置がその所属する国家によって行われる慣例がすでに定着しているのです。
こうした慣例が定着したのは、個人を行政的に管轄する政府がこれを行う事が円滑かつ的確に個人の利益を尊重する立場で保障を行い得る立場である事、平和条約締結にもかかわらず互いにバラバラに請求して行くことを許したのでは、新たな緊張や対立を国民相互間に惹起させかねない事から当然の取り決めとも言えます。
少し考えれば明らかな事ですが、今回の大法院判決がまかり通るならば、逆に例えば韓国軍に拿捕されたり銃殺された日本人漁業者の遺族があり、その方々が韓国政府や韓国人個人々々に慰謝料を請求出来る事になるでしょう。
すでにこの問題に対しても日本政府が遺族の方々に(十分かどうかは分かりませんが)保障措置をとっており、国内問題として処理しています。
そうでなければ、様々な案件が互いに無限に吹き出してしまい、条約の意味は無に帰して永遠に平和的環境が訪れる事はなくなってしまうでしょう。
いずれにしても請求権協定の取り決めを実施する事により日本側は条約義務を果たしており、その事によって「韓国民個人の請求権の負担は韓国側に移行した」という表現が分かりやすいかも知れません。
■日本政府は韓国民の「個人の請求権の存否」をいう立場にない
共産党や有志弁護士200名の声明を読むと、あたかも日本政府が韓国人被害者の個人請求権を否定したかのような錯覚を起こさせます。
事実は、これまで一貫して日本政府としても、日本の裁判所としても韓国人被害者の個人請求権の存在を否定した事はありません。
ですが、前項のように日本政府および日本人個人(法人を含む)は、韓国人個人の請求権の対象とはならないのです。
韓国政府はこれまで「請求権資金法」「請求権申告法」「請求権申告法」、「犠牲者支援法」などの立法を行って韓国民被害者個人に補償を行って来ましたが、それでも不十分なのか上手くいかず、自国民に対するガバナンスがなかなか効きません。
そうした渦中にあって、ある意味日本人よりも韓国人から注目される日本国の国会において当の外務省が請求権が消滅したともしないとも、あるいは対日本における請求権は消滅しているともハッキリ答える事も憚られたのも当然でしょう。
条約上の文言どうり、「完全かつ最終的に解決している」と繰り返す事はある意味やむを得なかったと思います。
しかし、その「付け回し」を今さら日本が韓国政府に押し付けられようとしているのが現在地点であり、やたら煩いとしても韓国人被害者に対しての韓国政府の責任放棄は、個人的には棄民的悲哀と同情をどうしても感じていまいます。
「韓国人は国家によって守られた事がない」とは呉善花さんが言った言葉と思いますが、そのような感じも理解できます。
(次回最終回)
山路氏寄稿2回目です。韓国最高裁の「徴用工」判決文を読む労作に脱帽しました。
ひとつ興味深い動きが出ました。
「第二次大戦中に強制労働をさせられたと主張する韓国人らおよそ1,100人が、日本企業ではなく、韓国政府を相手取り、総額110億円の補償を求める訴訟を起こすことがわかった。
日本企業で強制労働させられたと主張する韓国人と遺族あわせておよそ1,100人は、1965年の日韓請求権協定で、3億ドルの無償資金援助を日本から受け取った韓国政府が補償するべきだと主張し、1人あたりおよそ1,000万円、総額110億円の支払いを韓国政府に求めるとしている。
韓国では、日本企業に賠償支払いを命じる判決が相次ぎ、日韓関係の悪化が深刻化しているが、韓国政府に補償を求める今回の訴訟は、日本政府の主張と合致する部分があり、裁判の行方が注目される」(FNN12月18日)
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20181218-00408028-fnn-int
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承前
■大法院(最高裁)判決を読む
以下、私的整理なので雑駁です。また、判決では「請求権協定の範囲外」である事を言うために同じことが重複したりして本当にくどくどしく理由を書いています。
けれどそこが焦点と思うので、読みづらいと思いますが、あえてまとめず要約しています。
とにかく、しつこく「植民地時代」の日本側の認識を問題にし、判決そのものが「暗黒の日帝36年」の妄想を論拠の基盤に置いているのですが、その趣旨には合っていると言えましょう。
〈判決の要旨と要点〉
軍国主義のもとなされた日本の朝鮮半島支配はそもそも違法で無効あるところ、日本の「満州事変」以来、「日中戦争」、「太平洋戦争」と至る中で軍事物資生産の労働力が不足すると、国家総動員法を発布し「朝鮮人内地移入要綱」を定め、官斡旋などで朝鮮人労働者を募集した。
やがて国民徴用令にまで至るが、(原告4名が募集によるとしても)韓半島と韓国民らが日本の不法で暴力的な支配を受けていた当時、日本政府と旧日本製鉄の「組織的欺罔」による動員であったと見るのが妥当である。
当時、旧日本製鉄は核心的な基幹軍需事業体の地位にあり鉄鋼統制会に主導的に参加するなどし、日本政府の韓半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為を行ったと言わねばならず、原告らが受けたその精神的苦痛も経験則上明白である。
その継承会社である新日鉄住金がその責任を負う事もまた当然である。
日韓請求権協定について
①この事件における原告らの損害賠償請求権は、「請求権協定」に含まれておらず「適用外」である。
理由は「不法な侵略戦争目的」であった事にあり、かつ原告は未払い賃金や補償金を請求しているのではなく、過去二回行われた韓国政府による措置とは別個の「強制動員による慰謝料」であるからである。
②「請求権協定」の取り決めには日本の不法な植民地支配に対する賠償は含まれてはおらず、単に両国間の財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意によって解決したにすぎないものである。
(韓国側が提示した八項目の中にも、日本植民支配の不法性を前提とした内容はない事からも明らか)
③「完全かつ最終的」という文言からは上記請求権も「請求権協定」の適用対象になりうる、と解釈される余地があるにはある。
しかし、上記②のように明文化されたものはなく、2005年の民官共同委員会においても「請求権協定は日本の植民地支配の賠償を請求するためのものではない」としている。
(日本国政府は今日においてもなお、植民地支配の不法性を認めていない)
④請求権協定締結当時、日本政府自身も「経済協力の性格」としており、第一条(八億ドル記載の経済協力を明示)と、第二条(「請求権問題の完全かつ最終的な解決」記載)の権利関係の法的な対価関係があるとは見られない。
合意議事録で言及された8項目も同様で、当時の日本政府の立場も「一条と二条の間に法律的な相互関係が存在しない」という立場であった。
⑤韓国政府がおこなった1975年の請求権保障法などによる保障は「道義的次元」から見るとき不十分であり、その後に制定された2007年の犠牲者支援法および2010年の犠牲者支援法の両方が「人道的次元」と明示した。
(この意味がちょっと不明ですが、「日本が支払った金員、あるいは韓国政府が行った措置では不十分であった」とでも言いたいのでしょう)
⑥請求権協定の交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性と強制動員被害の法的賠償を徹底的に否認し、それゆえ韓日両国は日帝の韓半島支配の性格に関して合意することが出来なかった。
このような状況で「強制動員慰謝料請求権」が請求権協定の適用対象に含まれていた、と見るのは難しい。
⑦請求権協定の一方の当事者である日本政府が不法行為の存在を否認する状況で、被害者側である大韓民国政府が「強制動員慰謝料請求権」までも含む請求権協定を締結したとは考えられない。
⑧被告(新日鉄側)の主張により、第五次韓日会談で大韓民国側が「他国民を強制的に動員する事によって負わせた被徴用者の精神的、肉体的な苦痛に対する補償」に言及している事実や、第六次で「強制動員被害者」に対する補償額を細かく算定をしていた事実を知る事も出来る。
しかし、上記の主張内容は大韓民国側の公式見解ではなく、具体的な交渉過程で担当者が話した事に過ぎない。
「被徴用者の精神的、肉体的苦痛」に言及したのは、交渉で有利な地位を占めようという目的から始まったものと考えられ、実際に5次会談は妥結される事もなかった。
また、仮に韓国側が「被徴用者の精神的、肉体的苦痛」を請求に見込んだとしても、その算定請求額は12億2000万ドルであり、妥結したのは3億ドルのみである。
このような状況で強制動員慰謝料請求権も請求権協定の適用対象に含まれていたものとは、到底言えない。
⑨1965年に韓日間に国交が正常化したが、請求権協定関連文書が非公開(韓国では2005年に公開された)の状況にあって、それまで両国民に対する個人請求権までも包括的に解決されたものと受け入れられて来た。
そうした障害事由から、これまで原告らの権利が行使できなかった客観的事情があるのであり、消滅時効の完成をもって被告(新日鉄住金側)が主張するのであれば、著しく不当となるばかりでなく、信義誠実の原則に反する権利の濫用として許容できない。
⑩サンフランシスコ条約と請求権協定は、「賠償請求権」の観点からみると別個のものである。
請求権協定は「財産上の債権・債務関係」に言及しているだけであり、国家間の条約によって国民個人個人の権利を消滅させる場合、これを認めるには条約文で明文的に示すことが必要。
※続いて出た三菱訴訟の判決は、この新日鉄判決を踏襲している内容なので省きます。(特に付け加えられた点は、時効の起算日を示したのみのようです)
いかがでしょうか。 私は素人ながら色々な判例を読む事が趣味なのですが、このような馬鹿げた判例は戦前・戦後を通しても日本国内ではついぞお目にかかる事は出来ません。
韓国内に従来からある併合時代の認識の相違や歴史観といった差異、反日イデオロギーそのものなど別にしても、そこから生じた無理やりな解釈がこれほど常識とズレまくった例は稀有です。
都合の良い部分は採用し、都合の悪い事は無理やりこじつけて否定し去る。 >このような有様は、もはや「「日本人差別」が根底になっているから」としか言いようがありません。
■条約の読み方
条約法に関するウィーン条約第31条(解釈の一般規定) ~請求権協定21条で「両締約国及びその間の請求権に関する問題が~完全かつ最終的に確認する」となっているのだから、そのように素直に受け取っている多くの日本人が今回の判決に憤慨するのはしごく当然です。 ※編者注 欄外に当該のウィーン条約31条を載せておきました。
条文に限らず、法的な文書は時代をこえて誰にでも理解可能なものでなくてはなりませんし、普通の読み方をして、なるべく余計な解釈を加える必要のない文言で構成されている必要があります。
(その点、我が国の憲法のように、解釈を重ねなければ当然に所持しているハズの自衛権すら導き出せないような条文は最悪です)
その必要性は、一般的には権力者が恣意的解釈をして意味を曲げる事を防ぐ目的から来ていると思われますが、国家間の条約の場合には、一方の国家体制の変質などを要因として多様な解釈が生起し介在する事による紛争を未然にふせぐ目的が主たるものです。
そうした意味から、条約法に関するウィーン条約31条では「条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする」としています。
続く32条では、それでも文言的に意味が不明分の場合の規定が設けられていますが、上記請求権協定21条の意味はきわめて明瞭であり、「完全かつ最終的に解決した」以外に読める余地はありません。
韓国大法院の判決では「併合時代自体が不法であったから」とか、「単に財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意によって解決したにすぎない」、「被害者側である韓国政府が強制動員慰謝料請求権までも含む請求権協定を締結したとは考えられない」、またその「金員が不足」であった旨も指摘し、あげく当時の朝鮮人を「他国民」と規定するなど、強く「請求権協定には今回の請求権が含まれていない」旨主張し、まるで無頼漢のような言い分を展開します。
ですが、そのような言い分の正否は別としても、法的にはそれをもってすらも「完全かつ最終的に解決した」正味を覆す事にはなりません。
おかしいのは、このような激越な内容と論理を前提に主張する先は、ふつうは「憲法や国際法に違反している。したがって請求権協定は無効である」との判決が導き出されるはずと思うのです。
しかしそうでない以上、その良否を問わず文言と内容に従って解釈し協定を遵守しなければならないことにしかなりません。
(続く)
~~~~
■編者による当該ウィーン条約抜粋
http://www.houko.com/00/05/S56/016.HTM
■条約法に関するウィーン条約
昭和56・7・20・条約 16号
発効昭和56・8・1・外務省告示282号
第三部 条約の遵守、適用及び解釈
第一節 条約の遵守
第26条(「合意は守られなければならない」) 効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない。
第27条(国内法と条約の遵守) 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。この規則は、第四十六条の規定の適用を妨げるものではない。
山路氏より寄稿を頂戴いたしました。ありがとうございます。
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■「朝鮮半島出身労働者問題」、国際司法の場での日本側敗訴はないその1
山路敬介
はじめに 結論は明らかだが
表題のような結論は自明です。
けれど、旧メディアやその出身のライター諸氏の記事、あるいは有志弁護士200名の会などの声明をみると、韓国大法院の異様な判断を法的にあたかも正当であるかのような伝え方をしていたり、読者をして国際司法の場での日本の不利を想起させるような誤った言説が見られます。
こういう誤った言論にふれる事で、「日本が司法の場で敗北する可能性もあるのでないか?」などと心配される方々が必ず出てきます。
その結果として、韓国政府の音頭取りになるであろう「三者拠出金方式」などに世論が誘導され、最悪の解決方法である「政治決着」に行きつく意見が多数となる事が心配です。
また、「しょせん韓国は人口で日本の三分の一、経済規模で五分の一にすぎず、あえて事を大きくすることは日本経済にとってマイナスだ」との言論に与することも出来ません。
大法院判決は「併合時代が不法」だと言っているわけで、その論理からは「日帝36年間」に行ったすべての日本の行政行為はじめ、往時の日本人個々人の正常な経済活動まで悪とされ補償の対象となる行方が想定されるからです。
何をもって「勝ち」とするか、何が「負け」なのか?を定義する問題はありますが、けれど国際司法の場で法的に日本側が敗訴する可能性は100%ありません。
そもそも「日韓請求権協定」は、日韓両国が批准する「条約に関するウイーン条約」26条、27条により、韓国の司法、立法、行政の三権をすべてを拘束していて、大法院で今回のような判決が出る事自体が違法なのです。
そして実際、韓国大法院の判決全文を読み込んでみれば、それはあまりにも幼稚で初歩的な曲解と誤った前提から導き出される誤謬の数々に満ちていて、とてもまともな法律家のものとは思えない呆れた文書です。
なぜ、その初歩的な誤りを日本の法律家連中や評論家が個別具体的に指摘しないのか、その点も大いに疑問であり不満でもあります。
もちろん巷間いわれるように文在寅大統領自身、「大法院判決」が国際司法で通用するような代物でない事は良く理解しているのでしょう。(そうであれば、むしろ既存の「国際秩序への挑戦」と受け取れます)
なので、竹島問題同様に提訴してもICJ(国際司法裁判所)から逃げ回る事になるのでしょうが、日本は紛争の解決に関する交換公文に記されているように米国を第三者とした決着や、訴訟参加を忌避出来ない国際仲裁裁判所での司法決着に向けて、今すぐに淡々と手続きを始めるべきです。
その事が日本国のみならず、大韓民国国民の為の最良の選択です。
過去はどうあれ、韓国という国家は日本とは別個の国なのです。
日本政府は腹を決めて大韓民国という立派な独立国を最大限に尊重した解決方法をとるべきです。
なお本記事では、主として「法的な観点から」を中心に論じて行きたいと思います。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/11...
■ 「ほっと」とした私
先の新日鉄関連の韓国大法院判決は出るべくして出たものですが、私がその報に接したときの瞬間の正直な気持ちは「ほっとした」というか、胸をなでおろすような気持ちでいっぱいでした。
この理由はいくつもあり、韓国の日本に向けた「悪意」というものがようやくカタチとして可視化されるにいたり、多くの日本人にもそれが正しく理解できるようになるであろうと考えたゆえでした。
ですが、一番の理由はそこではなく、これまで曖昧にして隠されてきた日本政府の緩いスタンスからくる不首尾こそが目に見えるカタチで提出され、以降の外交の在り方に一本筋を通す事になるとの期待感からです。
例えば朝日新聞などを読んでおりますと、日本はILO(国際労働機関)から「29項の(時効のない)強制労働規約に違反している」と指摘されていると読める記事が出ていますが、ILOは同時に、「戦時の徴用に関する例外規定に該当する」とする日本側の主張の正当性をほぼそのまま認めています。
もし、朝日の記事内容が正しいとすれば(少なくも主旨は正しいと思われますが)、ILOの言っている事はきわめて二律背反的なものと言わざるを得ません。
なぜ、そうなるのか。一般論として、日本がILOの常任理事国であり、先頭に立って国際社会に置ける強制労働問題解消に寄与する役割を期待されている事がまずあるでしょう。
ですが、まずこれまで(2007年以前)のいわゆる徴用工問題における前向きな「日本側の対応」(企業の和解金支払いであったり、請求権は消滅していないとする妥当な正式見解を日本政府が一貫して取り続けて来た事があります。
また韓国人原爆被災者に対する特別立法措置など)の経緯を見ての、譲歩しやすい日本側の体質を見越したうえで、さらなる譲歩を促す意味や期待感のあらわれである事は間違いありません。
端折って言えば、日本のこれまでの緩い仕方こそが日韓基本条約や請求権協定の平和条約としての根本的意義を失わしめようとしていて、国際機関のジャッジメントに影響を与える最大要因になっているのです。
安倍総理は「戦後レジームからの脱却」をうたい、それが多くの保守派支持層のこころをつかみました。
しかし、それは西尾幹二氏が期待するような「日本の従来性の回復」というようなものではついぞなく、見る人から見ればむしろ最近は「戦後レジームの守護者」とさえ誤解されるきらいがあります。
しかし、そのような自称保守派反安倍組の意見は観念的であるばかりでなく、短絡的に過ぎるので採用できません。
少なくも(その目的自体が正しいとしても)一朝一夕には行かないのです。
安倍の「戦後レジームからの脱却」の重要な第一歩は、まずは戦後に確立したルールや枠組みの尊重、国際的な「法治の徹底」があり、その実現により日本がよりフェアな扱いを受ける位置を確立する事でした。
この事は国際主義オンリーのように一見みえますがそうではなく、日本国内にこそ重要な改革すべき点が存在するのです。
その象徴的なものが、日韓基本条約や請求権協定、日中平和基本条約の精神を自ら換骨奪胎した歴代日本政府・自民党、あるいはマスコミ等の朝鮮半島や中国との従来的な関わり方の中にあります。
そのような点にかんがみて今回の件に戻れば、いい意味で「日本は非常に追い込まれた」と言えます。
この事で日本国内の戦後レジーム的「ゆるみ」はハッキリしますし、さらにそれを介在する余地を残す事は日本企業のみならず、どれだけ日本国民に損失を与える事になるか明白になったからです。
文在寅に国際条約を守る意思はなく、南北統一を期にサンフランシスコ体制の枠組みを解釈変更させようとする企図さえ見受けられます。
国際社会を通じて合意した「慰安婦合意」が一方的に事実上破棄された以上、日本国として再び問題解決のための「基金の設立」など出来ようハズがありません。
北朝鮮問題などいろいろ言い訳は可能でしょうが、これをやれば安倍総理は死んだも同然です。
「差し押さえ」云々が注目されますが、そこがポイントではありません。
あのような確定判決が出た自体が国際法違反なのであり、その解決策はもはや国際的な司法判断を介在させるしかありません。
もし、このような判決を韓国政府が有効に是正せず、かつそれを日本政府が「差し押さえ未満だから」といって放置して、再び永遠に守られもしない合意を繰り返すなら、以降の日本は韓国側判決を「追認」したとみなすのが国際法の常識です。
大法院の判決どおりの、「条約の解釈の変更」が有効に成立した事になり得ます。
してみれば、韓国知識人や朝日新聞は「基金設立による解決」をしきりと喧伝するのもまた当然です。
ともかくも、日本がこの問題に安倍総理時代に当たった事はとても幸運だったと言えます。
韓国側が考えるようには日本の外交力は外務省も含めて落ちていず、事実は真逆です。
対する韓国外交部こそが、国内的に「積弊」扱いされて疲弊しきった状況にあると見て良いでしょう。
もちろん困難は想定されますが、むしろ複数の理由から「最大のチャンスが与えられた」と考えます。
(続く)
辺野古に土砂の投入が始まったようですが、とくに驚きはありません。
私の中には、美しい湾を埋め立てることに対する哀しみは残り続けますが、デニー知事が前任者の路線を縮小再生産して引き継いだ以上、政治過程ではこうなるべくしてこうなったということ以外に感想の持ちようがありません。
あえて言えば、前任者よりもカリスマ性と政治手腕が落ちたぶんだけ、現知事のひ弱さが浮きだして見えるのが痛々しいくらいでしょうか。
https://www.sankei.com/west/news/181214/wst1812140
語弊がありますが、デニー氏は既に本質的に終わった問題を蒸し返しているだけのことで、切り口になんの変化も見られない以上、果てしもないエンドロールを見せられている気がします。
あと強いて「新味」を探すなら県民投票ですが、肝心要の移設元の宜野湾市が反対している以上、なんの説得力も持たないものとなるでしょうし、2月実施予定の頃には埋め立てもそうとう進んでしまっています。
地元不在の県民投票を強行して、よしんば勝利したとしても、埋め立ての撤回とは現実には海中の土砂の撤去を指します。
そんな馬鹿な作業に、政府が税金を投じることがありえるとでも思っているとしたらかえって驚きを感じます。
https://www.fnn.jp/posts/00407431CX
さて、エマニュエル・マクロンが白旗を揚げました。ただし、半分揚げただけで、政治的延命には成功した気配です
「【12月12日 AFP】フランスの反政府デモ「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト、gilets jaunes)」運動に対し、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が最低賃金の引き上げや減税といった譲歩策を提示したことを受けて、運動に対する支持率が急落したことが、2つの世論調査で11日、明らかになった。ただしマクロン大統領の演説をめぐっては、世論が二分しているq
マクロン大統領は10日夜、国民に向けたテレビ演説を実施。2300万人前後が演説を視聴したという」(AFP12月12日)
http://www.afpbb.com/articles/-/3201757
ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト運動)※をなだめるために最低賃金の引き上げや退職者増税を凍結するそうです。※フランス現地の呼称を使います。
ジレ・ジョーヌが強く求めていた富裕税の撤回は拒否しました。
おそらくはジレ・ジョーヌが、まとまっていないことを見透かされたのではないかと思われます。
彼らの弱点は、デモが荒れていることを見ればわかります。
切り貼りのメディア報道ではなく、淡々と中継しているユーチュブ動画を見れば、あれでは政府は倒せません。
https://www.youtube.com/watch?v=Q6UpuouOomU
デモを荒れさせることは、一見「国民はこんなに怒っているぞ」というアピールしているように見える人もいるかもしれませんが、逆です。
商店を略奪し、市民の車に放火するような暴力分子が、ジレ・ジョーヌだという誤った情報を発信してしまうからです。
デモの9割は下の写真のように穏やかな抗議者たちで、暴徒はごく一部でした。
この人たちが自分たちのまとまった「司令部」を作ることが出来なかったことが、彼らの敗因です。
ジレ・ジョーヌhttps://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181213-032011
無統制な暴徒たちは、SNSで集散し、アメーバーのように各所で火をつけたり、バリケードを作ったりしていました。
当初はゲリラ戦術としては有効でしたが、これは統一された反政府指導部が存在し、強力なリーダーが状況を統制している場合だけのことです。
時間がたてば、騒いでいるのは極右か極左か、はたまた宗教テロリストかわからないようなアウトローたちだとバレてしまい、穏健なデモをする人たちから遊離していきました。
略奪を受けるフェンディの店舗https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181209-000398...
決定的なことは、店舗襲撃にまで及んだことです。
アップルやフェンディの店舗の略奪は、ただの反社会的行為の域を超えて立派な犯罪行為です。
犯罪によって社会がよくなることはありません。
かつての高江や辺野古で私は、抗議することの正当性が暴力を許すわけではないことをなんども繰り返しました。
暴力は必ず弾圧を呼び、いっそう社会を分断していきます。
マクロンは、この「ハネる一部暴徒」と「穏健な大多数」が分離する時期を待っていたわけです。
彼は一部の愉快犯もどきの暴徒集団と、9割の穏やかなジレ・ジョーヌの隙間ができたのを読み切って、妥協のカードを切ったということです。
ですから、妥協にもならない燃料税の一時凍結や最賃の引き上げなどという、こういってはナンですが飴玉1個程度の妥協でなだめることに成功したのです。
仮にこのような暴力「革命」が勝利したとして、それによって生まれた新政権には正統性がありません。
仮に新政権ができたとした場合、貧困層の減税、富裕層増税、そしてなによりEUからの離脱を掲げることでしょう。
これらを掲げなかったら、マクロンを倒した意味がないからです。
これに対して国際社会、特にEUは呆れながらフランスを眺め、新政権を承認するかどうかさえもめるでしょう。
承認されるとしても、それは冷厳な条約の履行との引き換えにしてです。
また国内政策においても、できることはあまりに少ないのです。
なぜなら、マクロンの政策はことごとく「EUのいい子ちゃん」路線だからです。
http://bunshun.jp/articles/-/6863
たとえば、ジレ・ジョーヌの批判の的だった年金受給開始年齢の引き上げは、フランスの財政事情が長年の社会党による既得権益者重視によって、危機的水準だったからです。
解雇規制の緩和に関しても同じことで、フランスの国有企業と公務員の多さは社会の流動性を低めていて、公務員天国・労働組合天国といったありさまでした。
むしろ解雇規制があるから企業は新規採用を見合わせてきたのであって、これが緩和されることは雇用の拡大に繋がってもおかしくはありません。
ではこの若年労働者の25%もの失業率の原因はといえば、それは端的に景気が悪いからです。
景気が悪い原因はわかりきっていて、ユーロという「みんなの通貨」を使っているために、フランス独自での景気浮揚策が封じられているからです。
景気浮揚するためには、基本的に二つの手段を用いるしかありません。ひとつめは金融緩和をすることと、今ひとつは財政拡大です。
ところが、フランスはこの両方を封じられています。
仮に金融緩和したくとも財政赤字が、一定枠に収束させるヨーロッパ財政収束基準(コンバージェント・ クライテリア)で3%以内に納めることが義務づけられているからです。
これではフランス独自の公共投資などによる景気対策はまったく不可能です。
ひたすらメルケル先生の教えどおり、ケチケチ緊縮路線をひた走るしかありません。
かくて今のざまです。街には若年労働者の失業者が溢れ、インフラはボロボロ。
地方に行けば公立病院や郵便局は閉鎖され、遠くの病院に行こうにも燃料が高くて行けない・・・。
鉄のお碗は公務員くらいですが、それもマクロン改革で既得権が脅かされて風前の灯。
フランスが取り得る最善の道は、外国人の私から見れば、EUから離脱しないまでもせめて共通通貨のユーロからだけからでも離脱することです。
EUという「黄金の檻」の中でもがいていてもどうにもなりません。
「革命政権」は国際承認を得たければEUの諸原則・条約を呑むしかないし、さもなくば国際承認を得られない浮浪政権となるしかないのです。
結局、ヨーロッパの各国政府にとって、国内政策が最後には必ずEU問題に行き着いてしまうことが、最大のヨーロッパの悲劇の源泉なのです。
富裕税の廃止も、素直に評価すればトランプもやっているような減税政策にすぎません。
減税政策は成長のてこ入れとして必要で、これに産業の成長戦略がくっついて一本の政策になります。
そこでマクロンは、燃料税を上げて電気自動車に誘導することを目指したわけです。今回の日産ゴーン問題の背景はここにあります。
日本にとってゴーン問題はしょせん一民間企業の企業統治のあり方の問題にすきない部分がありますが、フランスにとってはマクロン政権の肝だったのです。
マクロンにすれば、電気自動車で景気が浮揚するからやがて税収が上がって、やや時間をもらうがその恩恵は必ず分配政策として国民に等しく還元できるんだ、と言いたかったのでしょう。
このように見てくると、マクロンはそうメチャクチャなことをやっているわけではないのです。
ただ、彼に致命的に欠けていたのが、「石油を買えなかった、電気自動車を買え」と揶揄されるような政治家としてのコミュニケーション能力です。
それは彼が学歴超エリートの哀しさで、トランプのようなトランプ節を支持する鉄板の支持層などいないからです。
というわけで、私はマクロンの代わりは、現時点ではいないと思います。
あえていうならばマリーヌ・ルペンでしょうが、彼らに政権が担えるとは到底おもえません。
したがって、中道右派との連合政府になるでしょうが、統一された政策綱領ができるかどうかさえ不透明です。
特にEU離脱が金看板のルペンがこれを譲るとは思えません。
とまれ、ジレ・ジョーヌの皆さん、「革命」はもう終わりました。レ・ミゼラブルの「民衆の歌」※を歌うのはそろそろ止めて、家庭にお返りなさい。
※https://www.youtube.com/watch?v=WtfPZZtmThU
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ファーウェイについてはいったん区切って、また状況が動いたら書くことにします。
さて、護衛艦「いずも」について、安易に「空母化」という言い方が流布しているのでふれておきます。
「いずも」にF35Bを載せるということから話は始まっています。
「新たな「防衛計画の大綱」の策定で焦点となっていた、自衛隊最大の護衛艦を事実上「空母化」する方針は11日に与党の作業チームで了承されました。
政府は、護衛艦「いずも」と、同じ型の「かが」を「空母」の役割も担う「多用途運用護衛艦」として改修し、短い滑走路でも離陸し、垂直に着陸できる最新鋭のステルス戦闘機F35Bを8機ずつ搭載できるようにすることにしています。
F35Bは、将来40機程度導入される予定で、緊急時や訓練の際など必要に応じて、「多用途運用護衛艦」に搭載する方針です」(NHK12月12日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181212/k10011743791000.html
朝日は『防衛大綱改定 「空母」導入には反対だ』という社説(11月30日)を載せています。https://www.asahi.com/articles/DA3S13791107.html
その理由は煎じ詰めると、こういうことになります。
「歴代内閣が否定してきた空母の保有に向け、安倍政権が一線を越えようとしている。専守防衛からの逸脱は明らかで、認めるわけにはいかない」(前掲)
とまぁ、つまりは憲法が「専守防衛」という摩訶不思議な概念で自衛隊を縛ってきたために、政府が苦し紛れに取り繕ってきたことを、破るつもりかと言われているわけです。
政府見解はこうです。
「個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されません。たとえば、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有は許されないと考えています」
防衛省・自衛隊:憲法と自衛権
ここで政府が言ってきたことは、憲法が交戦権を否定しているために、相手国に対して壊滅的な打撃を与える攻撃が可能な戦力投射能力は持たないということです。
戦力投射(パワー・プロジェクション)自体は、「軍事力を準備、輸送、展開して軍事作戦を遂行すること」にすぎませんから,、「相手国の壊滅」などということは直接関係ありません。
戦力投射 - Wikipedia
戦力投射しても小規模の攻撃にするか、徹底な壊滅を選ぶのかは、戦略的意志との兼ね合いです。
それはその時点における情勢判断であって、前もって戦力投射能力の中には、これこれが入りますよと言っている国など日本以外に世界のどこにもありません。
ましてその中に、攻撃型空母が入っていたということだけのことです。
そもそも兵器には「攻撃」と「防衛」の区別などないのです。
たとえばもっとも始源的な武器であるライフルは、他人を攻撃することにも使えますが、家族を守るためにも使えます。
兵器は使う人間の意志が左右するのであって、これは「攻撃兵器」、これは「防衛兵器」と区別するほうがおかしいのです。
ただし、現代では長距離弾道ミサイルや戦略原潜、戦略爆撃機などは攻撃に傾いているかもね、ていどのことにすぎません。
それすら、使う側からすれば、それによる抑止力をもつことは「国防」なのです。
戦後の9条神学論争の迷宮の中で、政府が苦し紛れに、これは攻撃兵器だからダメ、これは専守防衛だからオーケーなどと世界に通用しない分類を強いられた長年の結果、こういうことになったわけです。
思えば自衛隊は軍でありながら軍として認められないために、自衛隊という名称から始まって、歩兵を普通科と呼んだり、ヘリ空母をヘリ搭載護衛艦なんてわけのわからない言い方をしてきました。
朝日が「護衛艦と称しているが事実上のヘリ空母だ」と書いているのは、それ自体はそのとおりですが、そうさせたのは朝日のような護憲勢力にそのつど言葉狩りをされるのがうんざりだったからです。
かたや言葉狩り、かたやあいまい語で応じるわけで、いっかな本質的防衛論議にはなりませんでした。
今回も同じです。
今、この限られた日本の保有する防衛リソースの中から、いかに効率的に防衛空白地帯であり続けた沖縄の離島を守るのかということをまったく議論せずにヘリ空母にF35Bを乗せたら「攻撃空母」だというわけで、真面目に考えているのでしょうか。
F35Bを保有することでできることとできないことをしっかりと峻別せずに、言葉遊びに興じていては何もわかりませんよ。
さて、この政府答弁で「攻撃型空母」という言葉が出てきているので、朝日は「いずも」にF35Bを載せたら「攻撃型空母」だろうと言いたいわけです。
「自民党が政府への提言で、災害派遣などにも対応する「多用途運用母艦」という名称を使っているのが典型的だ。岩屋毅防衛相は27日の会見で「せっかくある装備なので、できるだけ多用途に使っていけることが望ましい」と語った。事実上、空母であることは明白なのに、言葉を言い換えることで本質から目をそらそうとする。安倍政権下で何度も繰り返されてきたことである」(朝日前掲)
子供みたいな言葉遊びですね。朝日の論法を分解してみましょう。
①「いずも」は全通甲板をもっている。全通甲板とは下の「いずも」の写真のようにがダーっと甲板がフラットな艦のことです。
②全通甲板をもっているのは「空母」だ。
③「空母」は攻撃型空母だから憲法違反なので、持てないはずだ。
全通甲板=空母=攻撃型空母=専守防衛逸脱=憲法違反、とまぁこんな流れです。
朝日は、「空母」の概念規定があいまいであることにつけ込んでこういった短絡した議論をしたいようです。 吟味してみましょう。
①はそのとおりですが、②は全通甲板をもっているからといって「空母」とは限りません。
たとえば「おおすみ」は全通甲板をもった海自初めての護衛艦でしたが、輸送艦にすぎません。
おおすみhttps://www.mes.co.jp/business/infra/ship/detail177.html
③の「攻撃型空母」は、世界の軍事常識では基準排水量3万トン以上で、固定翼機を運用可能なものを指します。
正規空母 - Wikipedia
たとえば最も代表的な正規空母は、米海軍のニミッツ級以降の大型空母で、艦種記号はCVNで、横須賀を母港とするロナルド・レーガンなどが典型です。
大きさは馬鹿馬鹿しく大きくて実に10万トンを超えます。ちょっと「いずも」と並べてみましょう。
「いずも」は基準排水量26000トンですから、米海軍のほんものの10万トン「空母」の約4分の1にすぎません。
http://news.livedoor.com/article/detail/12877620/
よく軍艦を長さで見て、戦艦大和が全長263mで、「いずも」は248mだから、戦艦大和と一緒だといった某有名経済評論家がいましたが、艦艇は長さではなく、排水量でみます(笑い)。
ついでに、よく戦争中の空母翔鶴は満載排水量32000トンと「いずも」に近いぞ、翔鶴は零戦などを84機も搭載して攻撃に使われたから、「いずも」は攻撃型空母に違いない、というボケをかます人もいますが、ものを知りませんね。
「いずも」が載せているSH-60K哨戒ヘリは零戦の5倍以上です。ヘリですら5倍ですから、F-35Bに至っては10倍もの重量と機体の大きさです。
そんなデカくなった現代の航空機を飛ばすために、現代の空母は大型化したのです。
というわけで、比較対象になりませんから、70年以上前の第2次世界大戦の空母と比較しないでください。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm25495606
話を戻します。空母を「攻撃型」とするか否かは、その搭載している航空機の数が目安の一つです。
そしてその艦艇が、どのように運用されるのかというドクトリンを検討しなければなりません。
代表的攻撃型空母のロナルド・レーガンは、通常、4個F/A18飛行隊を載せています。その他に1個電子攻撃飛行隊、1個早期警戒機飛行隊といった固定翼機(普通の飛行機のことです)と、それ以外にヘリを含めて最大で90機ていどを運用することができます。
これを4基の蒸気カタパルトとアングルド・デッキで射出します。ちなみに蒸気カタパルトは米国だけしか実用化できていません。
アングルド・デッキ - Wikipedia
それに対してわが海自の「いずも」は、F-35Bを載せたといってもたかだか6機から8機ていどです。
他にSH-60K哨戒ヘリも最低で4機ていど載せないと、本来の対潜水艦作戦を遂行できないために、限界があるのです。
詰めに詰めて、甲板にも露天係留してもせいぜいが12機がやっとでしょう。現実にはこんなに戦闘機を積むと、ヘリがゼロになって運用に差し支えます。
今のところ与党は、2艦を改修して8機、全部で20機導入と言っているようです。
予備機も10%考えておかねばなりませんから、20機F35Bを導入すると最低2機は予備機として別枠にせねばならないわけです。
これに稼働率をかけるのですが、新鋭機特有の初期故障を考えると、そうとうにやりくりが厳しいですね。
参考までにイタリア海軍軽空母「カブール」はF-35B12機+ヘリ8機の合計20機です。
なおイタリアは「軽空母」などといわず、ただ「空母」と呼んでいます。
いずれにしても米海軍の正規空母の10分の1以下ですから、比較するだけ野暮というものです。
そもそも「いずも」は伊海軍の「カブール」と違って、重たいうえにジェット噴射を甲板に吹きつけるジェット戦闘機を運用する空母として初めから設計されていないために、いくら甲板を耐熱処理しても、それを支える構造が貧弱過ぎるのです。
ですから、「いずも」には6機~8機、最大限で12機ていどしか乗らないために、これでは戦力になりません。
たぶん「かが」にも載せてやっと12~24機機ていどにして、1飛行隊ができるかできないかというぎりぎりのところです。
次に、どの程度の出撃回数(ソーティと呼びます) を確保するのかで、空母としての能力が わかります。
・米海軍ニミッツ級・・・1日平均120ソーティ・全力240~270ソーティ
・米海軍強襲揚陸艦・・・1日平均20ソーティ、全力出撃26ソーティ(湾岸戦争時のAV-8B実績)
・イタリア海軍軽空母カヴ―ル・・・1日平均30ソーティ(理論値)
このように見てくると、「いずも」と「かが」、さらには「ひゅうが」級2隻にもF-35Bを載せたとしても、ヘリを載せないで目一杯積んでも4隻で30~40機ていど、1日平均20~30ソーティできるかできないかです。
この規模で可能な作戦は、政府がいうように離島奪還ていどのものです。朝日や毎日か心配するような他国攻撃能力など皆無です。
小川和久氏はこのように述べています。
「周辺国を先制攻撃することを懸念しているようですが、そういう軍事大国を先制攻撃して、どういう結末が待っているというのでしょうか。
戦争を終わらせる能力を持たない国が周辺国を軍事攻撃することは自殺行為でしかありません。日本が「いずも」型護衛艦を改修してF-35B戦闘機を運用するとしても、周辺国からの脅威が島嶼部に及ばないよう、これまで欠落していた撃退能力を備えるということ以上のものではないのです」
(『NEWSを疑え!』第734号(2018年12月13日号)
まったく同感です。冷静に検証してから騒ぎなさい。
ファーウェイをめぐる事態は急速に進んでいます。
日本政府が中華携帯排除に合流し、日本において格安携帯の分野を制覇していたファーウェイは市場から姿を消します。
「政府は情報漏洩や機能停止の懸念がある情報通信機器を調達しないよう重要インフラを担う民間企業・団体に要請する。
電力や水道、金融、情報通信、鉄道など14分野が対象。悪意のあるプログラムで社会機能が麻痺するなど安全保障上の懸念があるためだ。
米国が取引を禁じる中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)などが念頭にある。
政府は既に中央省庁の情報通信機器の調達に関して指針をまとめている。通信回線装置やサーバー、端末など9項目が対象。
価格をもとに選んでいた調達先に関し、安全保障上の危険性を一段と考慮し、2019年4月以降の調達に適用する。
これを踏まえ、19年1月から民間事業者にも調達しないよう求める。
ファーウェイのほか、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)の通信機器などが事実上、排除される見通しだ」(日経12月13日)
ファーウェイとZTEを使う携帯会社は5Gに参入ができませんから、深刻な打撃を受けることは避けられません。
となると注目はあの白い犬の会社ですが、その前に今問題となっている中国通信製品のセキュリティリスクについて説明しておきます。
これはいまさら問題視されるべきことではありませんでした。とっくにわかっていたのです。
既にファーウェイ、ZTEの問題に関しては、2010年頃から米国議会で幾度となく問題視されてきた経緯があります。
日本の通信・情報専門家の誰でも知っていたことで、日本メディアが一切報じなかったために、国民が知らなかったというだけのことです。
中国に腰が引けていたオバマ政権に代わったトランプが始めた「新冷戦」でいきなりクローズアップされましたが、この中国製品のバックドア問題は20年前からあったのです。
中国はウィグル弾圧の記事にも書きましたが、世界最先端の監視社会が完成しています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-7215-1.html
この監視技術は、中国国民の生活を行動だけではなく、経済活動に至る隅々まで監視し、ビックデータとして保管し、管理支配しようとするものです。
ビッグデータ - Wikipedia
これを国家ぐるみで邁進するのが、今の中国社会です。
電子決済 https://ipod.item-get.com/2017/08/qralipay2018.php
たとえば中国はスマホを使った電子決済システムが゙進んでいて、今や14億の国民の7割がアリババ系のアリペイやテンサント系ウィチャットペイを使っています。
これに登録するには、住所氏名、預金額、法律違反履歴、親類縁者、交友関係まで登録する必要があります。
中国政府はこのビックデータを電子決済会社と共有していますから、これを基にして国民の生活に点数をつけていきます。
いや「共有」というと聞こえがいいですが、自動的に政府が顧客情報を吸い上げるお約束なのです。
個人情報管理がことのほかうるさい日本では、考えられもしません。
住民基本台帳ていどのことで「総背番号制度だ。1984年が来るぅ」と叫んでいた人たちにお見せしたいものです。
今、つい さらっと書いてしまいましたが、「政府が国民に点をつける」ということは、法律とは別枠です。
そしてそれは個人の情報や活動だけではなく頭の中の検査にも及びます。
ファーウェイやZTEの携帯、あるいはレノボのパソコンからブログやツイッターを送信すれば、それはフィルタリングされて、政府や共産党が検閲します。
会社名からして「華為技術」、つまりは「中華の為に奉仕する技術」ですから、政府直結なのは当然といえば当然なのかもしれませんがね。
ですから政府批判など書けば大減点されて、電子決済社会の中国では、商店で買い物すらできなくなります。
つまりは犯罪を犯す犯さないといった法治の次元ではなく、共産党政府に従順か、非協力的かで賞罰をつけるというシステムです。
背筋が寒くなるほど見事なまでの監視・支配ツールです。 私が中国国民だったらとっくに隔離されて、臓器を抜かれているかもしれません。おお、こわ。
かつては密告による相互監視と政治警察で成立していた一党独裁社会が、先端技術を手にいれるとこういうことになります。
ま、管理支配に先端技術を用いているだけで、行く先が隔離収容所か刑場なのは一緒ですがね。
まさに先端技術が生み出した「1984年」もどきのディストピア、それが中国です。
これを14億国民に止まらず、ワールドワイドでビックデータを収集・管理しようとしているのが中国共産党です。
それに気がついたヨーロッパでは、中国に今後ビックデータを渡さないために、携帯によるバーコード決済をしない方向に進んでいます。
これを許すと中国製携帯からだだ漏れで個人情報が、中国に伝わることがわかったからです。
日本はここでも遅れをとっていて、ソフトバンクは中国系アリペイ互換のPAYPAYを導入していますが、これを使うと携帯の記録と合流しして、クレジットによる購買情報や活動記録などが流出して中国に管理されることになります。
外国の公安当局が、日本政府以上に日本国民の生活の隅々まで知っているというのは、なんとも不気味な話です。
さて、いち早く中国系電子決済を導入したのが、ソフトバンクだというのは象徴的です。
ソフトバンクは今、このファーウェイ事件をきっかけに大ピンチに陥っています。
下のグラフは国内のモバイルキャリアと携帯基地局などインフラベンダーの供給関係をみたものです。
5G商用化を前に本番を迎えるインフラベンダーの競争構図
赤く塗った部分がファーウェイ、ZTEの中華勢です。
図 前掲
一見しておわかりのように、NTTドコモやKDDIは富士通やNECといった国内メーカーとの連携を重視し、それにノキアやエリクソンといった北欧メーカーを取り入れています。
それに対して、ソフトバンクは一貫して国内メーカーには目もくれず、北欧勢と中華勢だけに頼ってきました。
この流れは5Gとなっても変化しないと見られていたところに、先だってのエリクソンが原因のソフトバンクの大事故、そしてほぼ同時に今回の中華勢に対して政府からの要請です。
「情報漏洩や機能停止の懸念がある情報通信機器を調達しないよう重要インフラを担う民間企業・団体に要請」が来た以上、ソフトバンクとて無視は不可能です。
もはや決定的でしょう。
情報漏洩の危機があるファーウェイ・ZTEといった中国製品や、機能停止の危機があるエリクソンだけでやってきたのがあなたの会社なんですからね。
インフラを5G対応どころか、遡って投資済みの4G対応までそっくり交換しなきゃならなくなったというわけです。悲惨。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/36876?page=2
そもそもどこの誰が、物好きにも機能停止して1日使えなくなる上に、生活の隅々までスパイされる可能性のあるソフトバンクの携帯を使いたがるでしょうか。
となると孫さん、顧客離れを防ぐためには顧客ごと他社に移行してもらうか、19年をサービスインとした5Gを諦めるか、極めて限定された地域だけに絞るかです。
4Gからも中国系を排除するという話ですが、そうなるとほとんど総入れ替えです。
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12198-145204/
いずれにしても、ソフトバンクの本業は、極めて厳しい状況となるでしょう。
これで孫さんのビジネスモデルだった、足元をチープな中国製品で固めて利潤を出してシェアを伸ばし、外部への積極投資で買収しまくる、という路線は破綻しました。
あとは、いまやこちらのほうが本業ですが、ソフトバンクはバンクはバンクでもM&Aのための投資銀行です。
みずほ銀行から1兆円超という巨額な融資をもらって、派手なM&A(合併・買収)を繰り広げるという路線をとってきました。
盟友のみずほ銀行と組んで、サウジの皇太子と10兆円ファンドを作る計画もありましたね。
「サウジアラビアなど中東の政府系ファンドとともに、10兆円規模の投資ファンドを作るという一大構想がそれ。ソフトバンク自身も2・6兆円ほどの巨額資金をぶち込みテクノロジー企業に投資すると宣言して、世界中の市場関係者の度肝を抜いたのである」(2016年12月7日 現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/466.html
強気ムンムンですが、すでに1兆円貸し付けた「盟友」みずほ内部ですら懸念が強まっていました。
「孫氏がビッグプロジェクトを威勢よく打ち上げる裏では、ソフトバンクの有利子負債(借金)が約13兆円と莫大な額に膨れ上がっているからである。
すでにソフトバンクは借金が売上高を上回っていて、その「借金経営」を支えるみずほからすれば肝が冷える事態になってきた」
「ソフトバンクは機関投資家から3000億円超の募集があると見込み、主幹事の野村證券も自信満々だったが、実際にふたを開けてみればたったの710億円しか集まらなかったのである。
生命保険会社や年金基金が、ソフトバンクの信用力に疑問符を持って、買いに動かなかった。こんな危なっかしい企業の債券には手を出せない、ということです」(現代ビジネス前掲)
ソフトバンクは、現在大型上場株として12月19日締め切りの株式公募をしている真っ最中です。
この社運を賭けた公募が通信障害を受けてまったく集まらない上に、今回の中国製品排除です。おそらく公募割れするのは必至と専門家はみています。
ソフトバンク上場の初値予想!公募割れのリスクも?
ソフトバンクにもしものことがあると、大手銀行のみずほも無傷では済みませんから、軽度の金融ショックが来る可能性もささやかれています。
政府はみずほには救済するかもしれませんが、ソフトバンクにはしないでしょう。
このように今回のファーウェイ事件は、大きな影響の波紋を拡げています。
このファーウェイ事件は、ただこの事件だけを見ていてもただの米中貿易戦争の一幕ていどで捉えてしまいますし、メディアもそのトーンです。
しかし、もっと視野の縮尺を拡大すれば、色々なことが見えてくるはずです。
本質的に同じ根っこを持つ事象は、えてしてシンクロして起きるものですが、日本で同時期に何があったでしょうか。
日本政府はファーウェイの政府参入を排除し、カナダでは米国の逮捕要請でファーウェイの会長の娘が逮捕され、時を同じくして防衛大綱が改定されました。
これら3つの事象は、同じことの別の現れです。
ちなみに、朝日は「防衛大綱改定 「空母」導入には反対だ」という社説を出していますが、例によって「角度」のつけすぎで明後日の方角に飛んで行ってしまいました。
https://www.asahi.com/articles/DA3S13791107.html
たった8機(予定40機)の搭載機で侵略なんかできませんって(苦笑)。
このいずも空母化については、できたら今週中に検証してみますので、ちょっと待って下さいね。
焦点とすべきは、「空母」ではなく、大綱が宇宙・サイバー空間の防衛力強化を柱のひとつに上げたことです。
防衛省は9月にまとめた白書で、中露北の衛星破壊・電磁波攻撃・サイバー攻撃の脅威が高まっていて、陸海空の枠を超えた一元的対策を早急に講じるべきだと述べています。
防衛省・自衛隊|平成30年版防衛白書|3 サイバー攻撃に対する取組
日本は現時点で中国と仮に戦闘状態に突入した場合、瞬時に敗北します。おそらく1時間もかからないでしょう。
これは米軍が条約に基づいて支援をしたとしても同じです。
なぜなら中国は、米軍には核兵器あるいは通常兵器を用いた戦争には勝てませんが、唯一勝てる軍事能力がひとつあるからです。
それは大綱が上げた衛星破壊・電磁波攻撃・サイバー攻撃の3点セットです。
渡部悦和元陸将は、『米中戦争』の中で、中国が唯一米国に対してアドバンテージを持っている領域としてこのサイバー戦能力を上げています。
中国軍は第1撃で、偵察衛星を破壊し、情報収集を不可能にします。次にGPS衛星を破壊して、ありとあらゆる誘導兵器に内蔵されている誘導機能をオシャカにします。
そして同時に、米軍や自衛隊の神経系統である司令部ネットワークに電磁波攻撃とサイバーアタックを仕掛けて切断するか、偽造された情報を流します。
これで米軍と自衛隊の指揮統制能力は壊滅し、いくら現場部隊が丸々残っていても戦えません。
さらに、戦闘から戦争にエスカレートすれば、中国は、政府中枢、情報・交通・エネルギーインフラなどの国家機能に同様の攻撃を仕掛けます。
原発の複数暴走、いくつものダムの一斉放流くらいはやってのけるかもしれません。
かつてのようにゲリコマやスリーパーセルに頼らなくても、今やこのようなテロ攻撃が可能な時代になったのです。
前者の紛争時のサイバー戦を「作戦サイバー戦」と呼び、後者の戦争時のそれを「戦略的サイバー戦」と呼びます。
いずれが仕掛けられたとしても、日本はサイバー戦に対してまったくの丸腰ですから、無抵抗で敗北します。
ですから、大綱は遅れきったサイバー分野の腰が上がったということにすきません。
渡部氏はこう述べています。
「中国のサイバー戦は、まさに「国家ぐるみ」で行われる。人民解放軍、軍以外の公的機関(情報機関、治安機関など)、企業、個人のハッカーがすべてサイバー戦に関与する。
そしてその中心的役割、サイバー戦全体を統括する役割をになっているのが人民解放軍なのである」(『『米中戦争』
中国軍には特別軍事ネットワーク戦争部隊が存在し、それが軍のサイバー部隊のみならず、国家安全部(国務院に属する情報機関)、公安部(武装警察)などのすべての国家機関を指揮してサイバー戦に投入することになります。
出典不明
そして、中国においては私たちが想像する「民間」は存在しません。
平時においては、民間企業、民間人などのリソースは、国家が一元的に統制し、相手国の政府機関・軍に侵入して内部情報を入手し、企業の研究所を産業スパイしています。
そしていったん有事ともなると、これらは一括して中国軍の統制下に繰り入れられてサイバー戦に参加します。
これらのサイバー戦専門部隊は、多数の存在が確認されています。
人民解放軍総参謀部第3部の下には、数千人規模の部隊が所属しています。
「たとえば、上海所在の第2局には北米を担当する有名な61398部隊、青島所在で日本と韓国を担当する第4局61419部隊、北京でロシアに関する活動をしているとみされる第5局61565部隊、武漢所在で台湾、南アジアを担当する第6局61726部隊、上海所在で宇宙衛星の通信情報を傍受する代12局61486部隊まで計12の主要部局があるという」(渡部前掲)
人民解放軍の総参謀部第3部は、シギント (電子諜報)の中核的役割を帯びている点で、米国の国家安全保障局(NSA)に相当します。
「この第3部で諜報活動に従事する要員は傘下の下部機関、研究機関の要員を入れると、13万人にも上るとの未確認情報がある。これら要員の多くは、洛陽にある人民解放軍洛陽外語学院で語学研修を受けたあと、河南省鄭州の人民解放軍信息工程大学で電子工学、コンピュータ技術をはじめとする諜報情報分析能力を取得することが義務付けられている。(略)
第3部で諜報活動に従事する要員は傘下の下部機関、研究機関の要員を入れると、13万人にも上るとの未確認情報がある。これら要員の多くは、洛陽にある人民解放軍洛陽外語学院で語学研修を受けたあと、河南省鄭州の人民解放軍信息工程大学で電子工学、コンピュータ技術をはじめとする諜報情報分析能力を取得することが義務付けられている」
( 高濱賛2011年12月1日日経ビジネス)https://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111128/224513/?P=2
最初に世界にこれらのサイバー部隊を暴露したのは、2013年米国セキュリティー会社のマンディアント社でした。
きっかけは2012年10月25日に、ニューヨーク・タイムズが中国前首相、温家宝一族の巨額蓄財疑惑の報道をしたことです。
ところがこの記事の掲載直後から、NYTには猛烈なサイバー攻撃が始まり、依頼を受けたのがマンディアント社でした。
“APT1 Exposing One of China’s Cyber Espionage Units” ( 「APT1 中国のサイバー工作部隊を暴露」 PDF 全76頁)
彼らはハッカーを泳がせながら行動パターンや侵入経路を把握し、膨大な時間をかけてその所在を割り出してやっと駆逐したのですが、その間4カ月間NYTはサイバー攻撃にあっていたといいます。
さてマンディアント社は、この侵入したハッカー集団の侵入経路を辿ると必ず一定の場所にたどり着くことに気がつきました。
それが渡部氏も指摘した、人民解放軍総参謀部第3部第2局「61398部隊」です。
中国軍の関与は以前から噂されていましたが、部隊名、所在地、その写真まで突き止められたのは初めてで世界に衝撃を与えました。
マンディアント社は、中国は米国へのハッカー攻撃で手に入れた知的財産や情報を、中国政府・軍・国有企業などに流し、競争力引き上げに役立てようとしていると、述べています。
http://kankoku-keizai.jp/blog-entry-4173.html
マンディアントの報告書によれば
「米国を中心に141の政府系機関や企業に攻撃を仕掛け、10カ月のあいだに新聞で6000年分以上に相当する6.5テラ(1テラは1兆)バイトの膨大な情報を盗んだケースや、1764日に渡って攻撃を続けたケースもあった」(マンディアント・セキュリティ・レポート)
このような執念深く執拗なサイバー攻撃で自信を得た中国ハッカー部隊は、米国大統領選にまで介入したとされています。
このようなことを背景にして今回のファーウェイCFOの孟晩舟逮捕事件を見ると、別のものが浮かび上がって来るはずです。
なぜ一民間人にすぎない孟の身柄保釈要請を、中国政府がカナダ政府に直接したのでしょうか?
かの「ヨーロッパの中国」のフランスでさえ、ゴーンの釈放要求なんて恥ずかしいことはできなかったのに、です。
孟が大物経済人だからだけでは説明がつきません。
孟が国家の極めて重要な秘密に関わる部署と、強い関わりを持っていたからです。
また、なぜ7枚ものパスポートを所持していたのでしょうか?
パスポートは同一人物に対してひとり1枚であるのに、なぜ7枚ももてるのでしょうか?
中国と香港のパスポート二重取得はありえないと香港メディアは指摘しているのに、です。
たぶん米国に入国するに際して、米国イミグレにわかってはまずい国、たとえばイランなどののスタンプがあったからです。
あるいは、孟の父親であり、ファーウェイの創立者にして会長の任正非が、人民解放軍情報機関出身なのは、,ただの偶然なのでしょうか?
長くなりましたので、次回に続けます。
■模様替えして、なんかわが家ではないような(苦笑)。改題してしまいました。模様替えしてもこの悪い癖は治りません。
風邪はあいかわらず治りませんが、いちばんひどい時期からは抜けたのかなぁ。まだ頭と喉には鉛がたっぷり詰まっているようです(涙)。
10年間使ってきた新緑から模様替えをしました。
いきなり新緑から冬景色1号にして、風邪引いているので炬燵にと心変わりしたのちに、結局、きりりっとしたいまの冬景色2号に落ち着きました。右往左往してすいません。
左袖の写真をクリックすると当該記事に行くようです。
https://news.nicovideo.jp/watch/nw4333961?news_ref
さて、前々からささやかれていた中国通信業界の暗黒面が一挙に暴かれてきました。
米国の呼びかけから始まったファーウェイ(華為技術)の排除が、遅ればせで日本にも及んだことになります。
「政府が中央省庁の情報通信機器の調達に関する申し合わせで、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の製品を事実上、排除する方針を決めた。それを受け、NTTドコモなど国内の携帯大手3社と、来年秋に参入する楽天が、次世代通信の「5G」の基地局などで中国メーカーの機器を使わない方針を固めた。米政府による中国製の通信機器排除の動きが、日本にも影響を与えている。
石田真敏総務相は11日の閣議後記者会見で、申し合わせは政府調達が対象であり、「民間に何か求めることは現時点で考えていない」と話した。ただ、2020年から商用化を開始する予定の5Gを含む情報通信ネットワークの安全や信頼性の確保は重要だと指摘。「通信事業者もサイバーセキュリティー向上に向けて積極的に取り組んでいただきたい」と話し、自主的な対応に期待を表明した。」(毎日12月11日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181211-00000058-mai-bus_all
世界の動向ですが、多少の温度差がありつつも、ファーウェイを公的機関や大手通信網からの排除を進めています。
音頭取りの米国は、国防権限法で政府調達を禁止し、米軍基地での販売も禁止しました。
その理由は、下の写真のような米粒以下の「バックドア」がファーウェイの製品に仕掛けられていたからです。 これは日本政府も確認しています。
バックドアとはコンピュータ・セキュリティ用語で「正規の手続きを踏まずに内部に入ることが可能な侵入口」のことです。
バックドア - Wikipedia
中国は政府主導のサイバー戦争として、自由主義諸国の政府・民間を問わず派手に荒らしまくっていたことは、公然の秘密でした。
上のようなチップを製品に組み込むことで、政府や軍の秘密はおろか、一般人の通信記録、個人情報すらもだだ漏れになるといわれています。
この米国の警告を受けて、いち早くオストラリアとNZ、英国は今、進んでいる5G通信網から政府、あるいは大手通信会社が排除、カナダは政府が警告、そして今回の日本の政府調達からの排除です。
今のところなにもする気がないのは、中国に強依存しているドイツくらいでしょうか。 あの国は中国と地獄の道行をしたいようです。
政府がセキュリティ問題で政府調達を排除すれば、大手通信会社も追随します。
「12月10日、政府は「サイバーセキュリティ対策推進会議」を開き、各府省庁で使用する情報通信システムに関して「悪意ある機能が組み込まれた機器を調達しないこと」を申し合わせ、この方針を受けて、携帯電話大手3社(NTTドコモ、au、ソフトバンク)は、基地局などの通信設備から中国大手ファーウェイなどの製品を事実上、除外する方針を固めた」
https://news.nicovideo.jp/watch/nw4333961?news_ref=20_20
ファウェイは、日本の携帯基地局のシェアの13.2%を占めています。
先日大事故を起こしたエリクソンがシェア15%で、あのような規模の社会的損害を与えるのですから、ご想像下さい。
おそらく現在、商用化直前の5Gネットワークになれば、海外勢が一挙に市場を支配すると予想されていました。
「国内のモバイルキャリアが採用しているインフラベンダーのトレンドとしては、世代交代するごとに国内系から海外のインフラベンダーへスイッチしていることである。
その背景には、3GからLTE(4G)、5Gへと技術規格が世界で一本化していくなか、コスト競争力や標準化でリードする海外ベンダーの前に国内ベンダーの牙城が侵食されてきたということが挙げられる」(データで見るケイタイ業界)https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/mca/1133904.html
下図は、国内系が海外系に浸食される状況を現しています。
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/mca/1133904.html
3Gでは富士通、NECが健闘していましたが、4Gとなると国内3位のパナソニックが脱落し、ノキアとエリクソンが支配し、中国系のファーウェイとZTEが登場します。
5Gとなると、日本企業は従来のシェアを死守するのがやっとのありさまです。
既にファーウェイは、基地局のみならずスマホの国内でシェアを急増させています。ちなみ
にスマホの世界シェアではファーウェイは既に2位です。https://www.bcnretail.com/market/detail/20180802_7
5Gとなると、ただのスマホからAIによる自動運転やホームセキュリティなどとの連携システムが実用化しますから、通信界だけではなく、自動車産業や家電業界、住宅業界との異種連携が現実のものとなります。
また、物流業界もAIによる物流管理を前提にして、携帯もその中に位置づけられるようになります。
このAIの技術的根幹に5Gスマホがあるわけですが、これを外国、特に中国に制覇された場合、社会の根幹を中国に委ねるに等しいことになります。
このまま推移すれば、世界の通信・情報分野は中国による完全制覇目前でした。
中国は政府と民間企業の区別があいまいな上に、ファーウェイやZTEなどの通信機器大手は人民解放軍情報セクションとの繋がりが明らかになっています。
ですから、中国の情報・通信分野での世界制覇とは、とりもなおさず中国軍の制覇と同義語です。
だからこそ、ただの携帯電話の問題ではないから、米国は国防権限法まで使って国家の安全保障の問題として取り上げ、各国政府に危険を呼びかけたといえます。
ところでこの日本政府がファーウェイの排除を決めた同時期に、ファーウェイの創設者の娘である孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕されました。
孟晩舟 - Wikipedia
米国の身柄引き渡し要請に答えたものです。
長くなりましたので、それについては次回に続けます。
というわけで、今日は2015年12月7日の旧記事に国民戦線のものがあったので、再載させていただきます。
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フランス国民戦線(FN)について、もう少しお話しておきましょう。
この党は前回の大統領選で、ファイナルまで残りながら、世界中のありとあらゆるメディアから「極右民族主義者」というレッテルを張られて敗北しました。
いや、今思い出しても反「国民戦線」キャンペーンはすさまじいもので、マクロンは消去法で選ばれたようなところがあります。
マリーヌ・ルペンが得た得票数は1100万以上で、ただの極右の色物さと小馬鹿にしていたエスタブリッシュメントを青くさせました。
これまで国民戦線が獲得した票は、以下です。
積み上がってきていることにご注目下さい。
おそらくマクロン辞任後に大統領選が開かれることになれば、再び上積みがあると考えられます。
今回の黄色ベスト運動を見て、ドイツ、イタリア、スペインで似た動きが始まったようです。
どの国も、ガチガチの緊縮財政主義ですから、フランスと同根なのです。国民戦線の票の動向です。
・2014年欧州議会選挙・・・470万票(25%)
・2015年地域圏議会選第一回投票・・・600万票(28%)
・大統領選第1回投票760万票→第2回1100万票※マクロンは1700万票
実は、国民戦線は、今や日本のメディアの常套句である「極右」「排外主義政党」と簡単に言えるような存在ではなくなっています。
下の写真がマリーヌ・ルペンです。
マリーヌ・ル・ペン - Wikipedia
2015年議会選挙です。
「フランスの広域自治体である地域圏議会選挙の第1回投票が6日行われ、内務省の開票率82%時点での集計結果によると、移民排斥を掲げる極右政党・国民戦線(FN)が全国で約30%の得票率で首位となった。
パリ同時テロを受け、治安問題への有権者の関心が高まったことが追い風になったとみられ、ルモンド紙(電子版)は「歴史的な結果」と伝えている。
最大野党・共和党を含む右派連合が約27%で続き、オランド大統領率いる与党・社会党の左派連合は約23%の3位と劣勢。FNは全13の地域圏のうち少なくとも6地域圏で第1党の地位を確実にした。
ルペン党首は「素晴らしい結果だ」と評価。社会党のカンバデリス第1書記は「同時テロの影響が大きかった」と敗因を分析した」(時事 12月7日)
昨年5月の欧州議会選挙でも、同党は約25%の得票率を得て第1党となって、ヨーロッパ政界に衝撃を与えています。
あながち冗談ではなく、次の国政選挙を経てマリーヌ・ルペン党首が大統領になる可能性すら生れてきました。
ルパンじゃないよ、「ル・ペン」Le Penですよ。2名いますから、注意して下さいね。
まずは創設者にして、先代党首のジャン・マリー・ル・ペン氏です。この頑固そうなのがオヤジのル・ペンです。おお、ヤニ臭そうないかにもいかにも極右って臭気か漂いますね。
う~ん、いかにも生粋の「ザ右翼」って感じで、実に香ばしいキャラです。
去年には、国民戦線を批判したフランスのユダヤ人歌手ブリュエルに対して、「今度はこちらが窯に入れてやる」という凄まじい発言をしています。
「窯」が、アウシュビッツのガス窯であることはヨーロッパ人ならすぐ分かるわけで、こういうことを平気で言う政党だという猛烈な批判を浴びました。当然ですね。
これに対して直ちに、この反ユダヤ主義の発言の削除と、厳重処分を言い渡したのが娘の現党首のマリーヌ・ル・ペンでした。
https://www.foreignaffairsj.co.jp/theme/201611_le_...
オヤジのル・ペンの三女です。おッ、シックなセンス。パリ第2大学卒の弁護士やってました。
別に国民戦線は同族世襲会社をやっているわけではなく、彼女は副党首のカール・ラングや、全国代表のゴルニッシュを押えて党首に選出されています。
このマリーヌがやったのが、オヤジ・ル・ペンの路線の大幅見直しでした。
おお、いきなり骨肉の対立か、日本の家具屋お家騒動みたいだと思われるでしょうが、日本もそうであったように、この父娘は考え方の基本は一緒なものの、現実的な路線では水と油だったのです。
この娘ル・ペンこそが、いままでヨーロッパ政界の色物扱いされてきた国民戦線を、まともな保守政党に変身させた人物だと言われています。
まずはオヤジ・ル・ペンの路線です。まさに日本のマスコミの形容どおりの、「極右」「移民排斥政党」そのものです。
これに対して、マリーヌ党首の新路線はこうです。ジャン親父のヤニ臭さがほぼ完全に一掃されているのに、驚きを感じるほどです。
●国民戦線新路線
・フランス文化を尊重する移民は認める。
・フランス国籍を持つ移民や移民二世・三世でも、犯罪を犯した場合は出身国へ強制送還させる。
・伝統的な生活様式を保護する。特に農民を尊重する。
・麻薬の密売人、小児性愛などの性犯罪者、母親による児童虐待、殺人者、テロリストを対象とする死刑の復活(現在、EU圏内では死刑はない)
・EU脱退
・極左系団体に対する公的補助金の廃止。
・道徳の復権
・犯罪者や移民の犯罪者には寛容ゼロ (tolérance zéro) で臨む。
・同性愛・妊娠中絶の容認
・国籍の血統主義
・減税
※Wikipedia
まるで、別な政党になってしまったようです。この新路線の国民戦線を「極右」「移民排斥政党」とレッテルを貼るのはそうとうに困難でしょう。
もっとも重要な移民政策について国民戦線の新路線は、な、なんと「フランスの文化を尊重、保護する移民は拒まない」としています。
国外追放するのは、「犯罪を犯した場合に限る」としています。
このあたりは日本の在特会あたりに聞かせたいほどです。
なにかというと在日認定したり、差別語を吐き散らす者たちは、保守でもなんでもなく、ただのレイシスト(民族差別主義者)です。
彼女はこういう在特会的レイシズム体質を持つ国民戦線党員に対して、党籍剥奪処分で臨んでいます。
父親にして創設者のジャンも、例外ではなかっただけです。
日本の「愛国勢力」も、いつまでも在特会レベルに止まっているかぎり、まともな国民政党になれる可能性は限りなくゼロです。
マリーヌ党首の移民についての考えは、朝日新聞(2015年1月27日)がインタビューしていますので、添えておきましょう。
※http://www.asahi.com/articles/ASH1P1RBXH1PUSPT002.html
「――でも、今回のテロ(※シャルリ襲撃テロ)の容疑者たちは、移民とは言い難いのでは。移民家庭出身とはいえ、国内で生まれ育ったフランス人です。
「いいえ。彼らはフランス人になることができた、というだけです。例えば(新聞社を襲撃した)クアシ兄弟。両親はアルジェリア人ですが、フランス領内で生まれたお陰で自動的にフランス国籍を取得しました。
国籍へのもっと厳しい条件を課さなければなりません。ハードルが低すぎるから、移民も殺到し、フランス人から雇用などの権利を奪うようになるのです」
「国籍法の改定も欠かせません。二重国籍を廃止すべきです。祖国は一つしかあり得ない。どちらか選ばなければなりません」
――日本では、国内で生まれただけだと国籍を取得できません。二重国籍も違法です。
「私たちが求めるのは、まさにそのような制度なのです。出生地主義の廃止です。フランス人は、フランス人の親から生まれるか、フランスに帰化するかだけ。帰化自体は否定しませんが、そのためには罪を犯さず、規則と価値観を尊重し、フランス文化を共有し、運命を共にする意思を持つ必要があります」
文化多元主義がお好きな朝日は、嫌悪感をこめてインタビューしているようですが、マリーヌさんの発言には、レイシズムの匂いはありません。
日本マスコミはいいかげんにオヤジ・ル・ペン時代と、娘ル・ペンをゴッチャにするのはやめたほうがいいと思います。
せんだっての土曜日にも、フランスで大規模な反マクロンデモがありました。
「パリ(CNN) パリなどフランス各地で8日、マクロン政権に抗議する大規模なデモが実施され、警官隊と衝突した。
デモは先月から4週末連続で繰り返されてきた。参加者が路上作業用の安全ベストを着用していることから、「黄色いベスト」運動と呼ばれている。
デモ隊の一部は車両やタイヤに放火するなど暴徒化し、警官隊がゴム弾や放水銃、催涙ガスで鎮圧を図った。
カスタネール内相によると、8日のデモにはパリ市内だけで約1万人、全国で計12万5000人ほどが参加。各地の衝突で警官17人を含む計135人が負傷した。1385人が取り調べを受け、974人が拘束されている」(CNN12月9日)
https://www.cnn.co.jp/world/35129842.html
私も昨日はユーチューブで淡々と送られてくる、パリの「市街戦」の様を観ていました。
https://www.youtube.com/watch?v=Q6UpuouOomU
デモといっても、指揮者がいませんから、警官への暴行は野放し、商店や車の襲撃すら止める者がいません。
隊列ひとつないままに、勝手にバリケードを作っては壊され、アナーキーに石を投げては捕まり、車を燃やしては消防車に駆けつけられるといったありさまです。
クリスマス商戦の真っ只中にやられるシャゼリゼ商店街は、たまったもんじゃありません。
ああ、なんと民度が低いデモ、いや、デモではなく単なる暴動です。
たぶん極左から極右までが「黄巾の乱」に相乗りしているので、統一集会ひとつ開けないのでしょう。
こんな無政府的な様子では、仮にマクロンが退陣したとしても、その後が危ぶまれます。
一方警官隊も警官隊で、こちらもろくに隊形を組まずに小部隊で催涙弾を打ち込んだり、小規模な突撃をくりかえして、警棒で無茶苦茶に市民の頭をかち割っていました。
日本の専守防衛型機動隊と違って、攻撃的なくせに訓練が行き届いているとはいえず、なにかというとすぐに警棒で叩いたり、ゴム弾で狙撃するのですから、負傷者が増えて当然です。
ああ、双方ともに「革命の本場」フランスの民度って、こんなもんだったのって感じです。
12万5千人が全国でデモに参加し、デモに行かずとも国民の8割が支持を与え、警察力だけで抑えている状態が、今のマクロン政権です。
警察力一本で状況を抑えようとする状況になれば、先は見えています。
仮に力で制圧すれば、国民には力で押さえ込まれた恨みが残り、制圧できなければ、首都のど真ん中を暴徒の「解放区」にしてしまいます。
どちらも政権としては悪夢の選択のはずですが、マクロンは前者を選んで、かつ、存分に暴徒に暴れさせてしまうという失態を犯しました。
もはやマクロンは、「国民の敵」という偶像の地位にまで登り詰めたようです。
こうなってしまってはいまさら石油税を凍結しようと、話合いを求めようと無意味です。もはやどこにも逃げ場はありません。
話しあいをしたいのならば、先週中に、テレビで全国民に対して、理性的行動が民主主義を守るのだという演説をすべきでしたが、もう遅い。
こうなってはマクロンは辞任し、大統領選挙のやり直しとなるでしょう。国民戦線が前回大統領選のように世界規模でディスられねば、どのように転ぶかわかりません。
EU諸国ははらはらしながら展開を注視していることでしょう。
いずれにせよ、EUの中軸国の出来事ですから、遠心力が強くなるのは避けられません。
メルケル政権の衰退と並んで、EUは弱り目に祟り目です。
政治力を振るう政治家がいませんから、ブリュッセルの官僚たちは、恐る恐る遠巻きにしてこのフランスの狂態をながめるしかないようです。
https://www.businessinsider.jp/post-180686
さて、フランス国民は忘れているようですが、マクロンは選挙前から、法人税を引き下げ、社会保障費の企業負担分を引き下げる、解雇時の罰金には上限を設ける、といった政策を主張して当選したわけです。
マクロンの「改革」は、よく「富者のための政府」という批判がありますが、それは「国営フランス株式会社」を改革しようとしたからです。
確かに社会主義国もどきの国家主導型経済が、経済発展を妨げてきたのは事実です。
下はフランス経済の実態です。
実にGDPの56%が政府支出ですから、少なすぎる日本などは少し分けて欲しいくらいですし、国際競争力は22位とEUの下位集団です。
https://www.sankei.com/world/news/180501/wor180501...
また失業率も10%とひどい上に、特に若年労働者の失業率は25%と韓国なみの悲惨な状況です。
今回、大学などでバリケード封鎖が行われたのはこのへんにも原因があります。
ニューズウィーク2018年12月03日)
https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2018/12/post-50_2.php
フランスは鉄道も国有、電信電話も国有ですから、日本でいえばJRとNTTがなくて、国鉄と電電公社が今も超巨大な国営企業として残存しているということなります。
ついでにフラッグシップだったエールフランスも国営でした。
また電力会社はいまでこそ民営化されていますが、十数年前まではフランス電力公社、フランスガスが一元支配していました。
基幹産業においても、ルノーのような大手自動車会社までもが政府出資比率が高く、事実上の国営企業です。
フランス銀行、4大商業銀行、34の保険会社も国有。
つまり、交通通信、エネルギー、金融、基幹産業のことごとくが国営、もしくは国有企業で占められていたわけですから、他国から「ヨーロッパの中国」と揶揄されていたのも当然といえば当然ですね。
だから、あながち皮肉ではなく、中国と親和性があるのかもしれません。
実際に、中国に対して軍事製品の輸出はEUでは禁輸しているはずですが、抜け穴を使って大量の武器を中国に売却しています。
「2008~12年におけるEU加盟国の対中国武器輸出に注目すると、フランスは対空ミサイル(SAM system R-440 Crotale)、ヘリのユーロコプター(AS-565SA Panther)、艦載レーダー(DRBV-15)、フリゲート用ディーゼル・エンジン(PA6)のライセンス生産を中国に認めている 。(略)
対中国武器輸出の総額は5年間でフランスは計9億9700万ドル」
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20130319-00023940/
中国がライセンス生産する仏製対空ミサイル。これが禁輸の対象外 ウィキペディア
とうぜんのこととして、公務員が労働者に占める割合がEU域内で最も多いのはいうまでもありません。
http://honkawa2.sakura.ne.jp/5190.html
このフランスの国家主導型社会は、少数の超エリート階層によって指導されています。
マクロンやゴーンが出た国立行政学院が典型ですが、そこの卒業生らは経済界、官界、そして革新保守の別なく政界の指導層を支配しています。
フランス国立行政学院 - Wikipedia
ここにも一握りの共産党エリート層が社会を支配する中国との似た体質がありそうです。
このようにフランスは「民主主義の母国」を標榜しながら、国家統制経済とはまでは言いませんが、先進資本主義国としてはありえない国家主導型経済であり、かつ、それが作った社会であるようです。
これで経済がよくなるはずがありません。
この国営資本主義を維持し続けたいミッテランのような社会党政権と、民営化しようとするシラクなどの保守政権とが綱引きをしてきました。
結局、民営化は一部でされたものの ルノーのように政府出資が多く残っていて、政府が筆頭株主だったりしている半官半民状態が続いています。
たとえば、フランスの自動車産業が半官半民なのは、今回のゴーン事件でわかったと思いますが、プジョーやシトロイエンとて一緒なのです。
ですから経営危機となると、必ず政府が資金を注入して救済してしまいます。巨大原子力企業のアレバも政府から資金注入をもらっています。
東芝の経営危機を突き放した日本と比較してみて下さい。
このような「フランス社会主義人民共和国」といった体質があるために、これを「改革」しようとしたマクロンは「改革される側」の公務員、国営企業の労働者、農業保護政策を受け続けてきた農民、そして失業率が高く、簡単に解雇されてしまう青年層から強い反発を食ったのです。
今のマクロンの窮状は、国営フランス株式会社そのものです。
マクロンが燃料税を1年延期したそうです。最悪の時期に、最悪なことをする人です。
それを淡々と報じるBBCです。「仏政府が発表した燃料税増税に対する全国的な抗議行動を受けて、エドゥアール・フィリップ仏首相は4日、来年1月1日から予定されていた増税の実施を6カ月延期すると発表した。
フィリップ首相はテレビ演説で、政府は国民の怒りを見ているし、耳にもしていると述べた。
3週間前から続く抗議行動によって、仏各地の主要都市で損害や破壊が続いている」
(BBC2018年12月5日https://www.bbc.com/japanese/46450110)
なぜ最悪かといえば、もっと前に燃料税増税を撤廃するという判断が必要だったからです。
このように暴動が全国化して、パリでは暴動に発展している極期に、こんな鎮痛剤を処方しても効かないからです。
BBC 同上
政府がこのような譲歩をひとつすれば、私がデモ指導者だったなら、マクロン辞任まで追い込めと号令を出すはずです。
実際この左右相乗りのデモは、マクロン辞任と大統領選のやり直しを求めています。このまま推移すれば、その方向になるかもしれません。
すると、政権は暴力デモに屈した結果になってしまいますから、次に誕生する政権は「革命政権」ということになってしまいます。
その場合、レジティマシィ(正統性)が疑われる政権交代となりますが、「民主主義の祖国」としてそれでいいのですか。
レジティマシイが危ない政変が「革命」です。
18世紀のフランス革命の再来を待望するのは、SEALDsに涙して「これが民主主義だ」と叫んだ日本のインテリ文化人くらいなもんでしょうに。
1968年の5月革命の再来といわれているそうですが、かつてはドゴールとマルローのカリスマ性たっぷりのふたりが腕を組んで行進して終息しましたが、今、軽量系大統領のマクロンが街頭行進したら石を投げられます。
さて、マクロンは公約として、就任前からガソリンとともにディーゼル燃料に対する増税を実施するとしていました。その大枠はこうです。
https://sustainablejapan.jp/2017/05/12/macrons-energy-policy/26778
①石油税を増税して、石油燃料の消費を抑制する
②2040年までに化石燃料自動車を廃止する
③電気自動車向けの充電スタンド設置を政府支援する
世界最大の原発大国フランスのエネルギーを、エコ方向に転換するという政策で、実は前のオランド大統領社会党政権時代に「エネルギー転換法」として2015年7月22日に制定されていました。
この法律によって、フランスの重要な輸出品のひとつだった電力を、原発から再エネシフトに替えていこうという政策です。
こんな脱原発政策は、メルケルの轍を踏むようなもので、確実に失敗します。ドイツの脱原発政策の失敗についてはかなりの分量の記事を書いていますので、お読み下さい。
マクロンの場合、理念的なメルケルと違って電気自動車に政策誘導するためのものでした。
だからマクロンは電気自動車の優れた技術を持つ日産を、なんとしてでもルノーと合併させたかったし、そのキイマンだったゴーンを重用してきたのです。
また、脱原発政策の一環として、マクロンは化石燃料消費量の廃止、石油由来廃棄物の大幅削減、企業及び金融機関に対する気候変動関連情報開示制度などを作ろうとしました。
さらに、このオランド社会党路線を継承した上で、公的年金制度、住宅費補助といった生活支援政策にまで大なたをふるおうとしました。
まとめるとこんなところです。
①石油税増税・電気自動車推進
②財政赤字をGDP3% 以内に抑えるための緊縮財政
ここまではお隣のメルケル路線に似ていますが、そうとうに違うのはマクロンがグローバル企業優先シフトを敷いたことです。
「マクロン氏は就任以来、アメリカ流の規制緩和や「小さな政府」路線に基づく改革を行ってきた。
そこには雇用契約や農産物貿易の規制緩和や、公共サービス削減、主に富裕層向けの減税などがあげられる」(ニューズウィーク2018年12月03日)
https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2018/12/post-50_2.php
すると、グローバル企業の投資をフランスに呼び込むために、その障壁となるフランス国内の規制を撤廃していくことになります。
となると必然的に、マクロンが非効率的と見なした規制や労働条件の改悪、国民サービス、農業への支援の削減がやり玉に上がりました。
「フランスではもともと公的機関が経済にかかわる傾向が強く、GDPの50パーセント以上を公共セクターが占める(いま話題のルノーの最大の株主もフランス政府だ)。
労働者の権利なども手厚く保護されてきたため、簡単にレイオフされない反面、これが経営者に新規採用を躊躇させ、失業率は慢性的に高い状況が続いてきた。
また、安全保障上の観点から食糧とエネルギーの自給を重視してきたため、伝統的に農家への補助も手厚いが、これは財政赤字の一因にもなってきた」
(ニューズウィーク前掲)
https://toyokeizai.net/articles/-/186201
国民生活に直結する、マクロンの「改革」政策はこんなところです。
①規制緩和
②解雇契約の緩和のための労働法改正
③公共サービスの削減
④住宅費補助の削減による生活支援のカット
⑤農家支援の削減
⑥石油税増税
⑦富裕層向け減税
①の規制緩和は個々をみないと評価は下せませんが、②以降の施策はこれを全部一気にやったら国民から総スッカンを食って当然なものばりです。
ニューズウィーク 前掲
上のフランスの失業率グラフを見ると、フランスの失業率は極めて高くこの数年22~25%で推移しています。 実に4人にひとりが失業者です。
たしかにこのマクロンの外資導入路線によって、大都市は経済活況が生まれましたが同時に襲ったのが、物価が高騰する中での失業率の高止まりです。
しかも、労働法改正による雇用契約の緩和、生活サービスの削減の結果、簡単にクビにされる若年層に皺寄が来ました。
そしてもうひとつ大きな影響を受けたのが、地方です。
農業と地場産業が基盤の地方経済は、マクロンのグローバル企業優先政策によって大打撃を受けました。 つまり、フランスは貧富の格差が開いて、地方を痛めつけたわけです。
マクロンはゴーンを助けるべく安倍氏にまでかけあったわけですが、デモの市民からは「ゴーンみたいな億万長者なんか日本の刑務所に入っていろ」となどと言われしまっています。
日本の失業率2.88%と比較すると、その悲惨さがわかるでしょう。
日本は既に理論的最低値となっていますし、若年層の就業率(大学就職率98%)も過去最良です。これが安倍政権を若年層が支持する最大の理由です。
完全失業率 - 総務省統計局
平成29年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在):文部科学省
安倍氏も規制緩和をしていますが、そのような「改革」はこういう失業率の極小化が完成して初めてできるのです。
マクロンの場合、いわば富者優遇、貧者死ね、といわんばかりの政策をしてきて、冬入り前に燃料代を上げようとしたのですから、国民が怒って当然です。
このような貧者のセーフティネットをはずしてしまうところが、マクロン自らが「右でもなければ左でもない」と言っているゆえんでしょう。
反原発を掲げて再エネ推進などは保守政権ではとれなかったしょうし、一方、労働者の既得権を破壊し農家支援をカットすることなどオランド社会党政権にはできなかっでしょう。
ではマクロンとは右でも左でもない何者なのかといえば、外国企業優遇、つまりはグローバリストだったというわけです。
その上に緊縮財政主義者ですから国防費を削減し、それに抗議した軍のリーダーに高圧的に対応したために、軍からも総スッカンを食っています。
「フランスのマクロン大統領と国防予算の削減を巡って対立していた軍の制服組トップ、ドビリエ統合参謀総長が19日、辞任した。
ドビリエ氏は声明で、予算の制約が厳しい中で効果的な防衛力の維持に努めてきたが、これ以上は維持できないとし、「現在の環境下では、フランスやフランス国民の保護に必要な防衛力をもはや保証できない」と表明した」(ニューズウィーク2017年7月20日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/07/post-8015.php
とうぜん支持率はいまや危険ゾーンに突入し、いつ辞職に追い込まれても不思議ではない水準にまで落ちています。
その上に、まだあるんですから、お立ち会い。
マクロンという男は、パリ政治学院、そしてフランス国立行政学院という二大超エリート大学出で、ロスチャイルド系の投資銀行で200万ユーロ(約2億5千万円)の年収を稼いでいた人物ですから、娑婆の切なさを知らないのです。
エマニュエル・マクロン - Wikipedia
「例えば、「駅は面白いところだ」といい、その理由として「成功した者と何でもない者に会えるから」(前者は彼自身のようなビジネスエリートを指し、後者はほとんどの一般の人を指すとみてよいだろう)。
また、就職活動に苦労している若者に対しては、「どこでも働き口はあるはずだ」と言ったうえで、私なら、あの通りを渡るだけで、きっと君に仕事を見つけてやれる」(ニーズウィーク前掲)
「私なら見つけられる」って、そりゃベスト&ブライテストの国立行政学院でてりゃ、通りを渡るだけで見つかるわな。
フランス国立行政学院 - Wikipedia
それを4人にひとりが失業している「なんでもない者」たちに言ってどーするの。イバりたいの、怒らせたいの、それとも単なるエリート馬鹿なの?
またほんとうにこう言ったのかどうか知りませんが、石油税増税に反対した者に対して言った台詞がまことしやかに流れています。
「ガソリンを買えなかったら、電気自動車を買え」
いくらなんでもこれはマリー・アントワネットの有名な言葉(ウソですが)のもじりでしょうが、そう言いそうな奴だと、国民から見られているのはほんとうのようです。
そういえば、抗議した軍トップに言ったセリフも残されてています。
「私が上司だ」
憤然としてドビリエ統合参謀総長は、辞表を叩きつけてしまいました。
やれやれ、この人が今までどういう生き方をしてきたのか、わかってしまいますね(ため息)。
政治家やっちゃいけない人なんですよ。
AFPhttp://www.afpbb.com/articles/-/3157919
ちなみに、マクロンはチャイナマネーに大きな期待を寄せています。
「マクロン氏は8日、西安から北京に移動して習近平国家主席と会見。国営新華社通信によると、双方は「重大な国際問題」について密接に協力することで一致した。北朝鮮の核問題などが念頭にあるとみられる。またマクロン氏は中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」について「重要な提案であり積極的に参加したい」と述べた。両氏は9日に正式な首脳会談を開く」(産経2018年1月8日)
https://www.sankei.com/world/news/180108/wor1801080027-n1.html
わざわざ訪中時には、習への手土産としてフランス軍自慢の軍馬を持っていって、習を喜ばせたそうです。
なおトランプ とは、メルケルと「独仏合同軍を作ろう」とブチあげて、激怒されています。
かくてマクロンは、「右でも左でもない」から「右からも左からもまんべんなく嫌われる」政治家になってしまったようです。
「外国人労働者の受け入れ拡大に向け在留資格を創設する出入国管理法改正案をめぐり、参院法務委員会の横山信一委員長(公明)は6日の質疑終了後の理事会で採決を提案した。
これに反発した立憲民主、国民民主、共産の各党などが委員長の解任決議案を提出し、6日の採決を阻止した。
与党は7日の参院本会議で解任決議案を否決する構え。同日中に参院法務委で改正案を採決し、参院本会議で成立させる方針だ」(産経12月6日)
https://www.sankei.com/politics/news/181206/plt1812060033-n1.html
どうせ明日のメディアのトップには、「自民強行採決」と出るんでしょうね。
くだらない時間をかけてグダグダやっていれば、ただでさえ総理の外遊と会期末が重なって時間切れになるのに決まっています。
われわれ国民は、このような極めて問題がある法案が通ってしまう、非力で無能な野党しか持てない悲哀をしっかりと味わいましょう。
野党は二重の誤りを犯しています。
まずひとつは、毎度のことですが、本質的議論から眼を逸らそうとする政府を近視眼的な政局がらみでしか追及できずに、結果的に手助けしてしまったことです。
今回の入管法の主題はひとつしかありません。それはこの法案が紛れもなく移民政策の開始を宣言する法律であることです。
30年後を見据えた議論がいるのに・・・、まったくもう。
本来、野党にとってこの入管法は、彼等が歓迎出来る法案なのです。
だって、多民族共生社会が持論の野党にとって、押し寄せる移民労働者の大群なんて、待ってましたの状況到来じゃないですか。
野党の支持層の理想はこうです。
街を歩けば、この街の工場で働く中国人もいる、焼き肉屋で働くコリアンもいる、コンビニのベトナム人もいる、自動車工場の南米の人もいる、みんな仲良く暮らしているね。
学校も多言語授業が始まって、日の丸掲揚もやめたってさ、やっと日本社会も開かれた多元的価値観を認める国になったんだね、よかった、よかった、とまぁこういったところです。
だから実は、野党は本心では多民族社会をもたらす入管法には賛成ですから、明後日の方向の既存の技能研修生制度の追及に終始しました。
これも与党とは別の意味で、目くらましです。
本心では総論賛成各論反対ていどですから、テレビカメラの前で存在感を演出するためには、委員長のマイクを奪うくらいのパーフォーマンスのひとつも演じないと絵になりません。
で、結局、多くの対決法案と同じような予定調和の委員長席の揉み合いに終わってしまったわけです。
日本の国柄を大きく変える法案だというのに、移民法だと言い切らない与党政府、明後日の方向を突つき回してもみ合うしか能がない野党。まったく不毛です。
https://biz-journal.jp/2018/11/post_25715.html
第2に、野党はこの法案が移民法ではないという政府説明の欺瞞を暴露すべきでした。
今回の審議において、世論もメディアも左右を問わず慎重論が主流の中で、唯一政府のみが世論の反対に耳を塞いで、審議を急いでいます。
「拙速反対」と叫ぶのなら、なぜ野党はもうひとつ議論を進めて「なぜ政府は移民問題から眼を逸らそうとするのか」と、,追及すべきでした。
そういう追及をしてくれれば、国民の多くはこの法案に懐疑的だったのですから、野党を支持できたのです。
入管法は明確に移民法であることを、政府に認めさせることから始めねばなりませんでした。
入管法を支持する人の中には、「大丈夫だ。ヨーロッパのようにはならない。あらかじめさまざまな受け入れ態勢のケアをするから」と言いますが、そのケアこそが、いわゆる「社会統合政策」と呼ばれるものです。
ここで、政府は珍妙な言い訳をいいだしています。それは移民の定義を「あらかじめ日本に定住することを目的で入国する人たち」と規定していることです。
この政府の移民の概念規定自体が虚偽です。
●国際移民機関(IOM)の移民定義
当人の(1) 法的地位、(2) 移動が自発的か非自発的か、(3) 移動の理由、(4) 滞在期間に関わらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人
「移民」の定義 IOM 国際移住機関移民とは異なる国家へ移り住む事象( immigration, emigration)、また基本的に出生国以外から12ヶ月以上当該国へ移住して居住している人々
移民 - Wikipedia
このように国際的には政府のような永住や妻帯を前提とした狭い概念規定を避けて、12カ月以上母国から国境を超えて入国した人たちを指します。
これはヨーロッパにおいて国境管理が廃止されてしまい、短期間の単身での労働力移動がよくあるケースとなってしまった状況を反映しています。
日本においても短期単身の労働者が増える可能性があり、家族帯同して永住資格の取得を目指す「特定技能2号」への移行規定は、速やかに空文化すると思われます。
日本に流入する移民労働者の主流は、特に技能を持たない単純作業労働者のはすです。
おそらくこの入管法を後押ししている最大の業界であるコンビニや建築労働には、このような単能工が多く向かうはずです。
http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entr
彼らの多くは日本に定住する気がない出稼ぎ労働者ですから、よりよい労働条件を求めて渡り歩くはずです。
これは既に農業が技能研修生という形で受け入れた外国人労働者たちの多くに、逃亡事件が頻発することでわかります。
外国人労働者は、携帯などで常に連絡をとりあっていて、よりよい条件があれば逃げるからです。
ちなみに、野党は現行の技能研修生制度の矛盾点の追及に精を出しましたが、政府の答弁の「よく調査して、不都合があれば改善を命じる」以上の収穫はありませんでした。
あたりまえです。
昨今のニュースに登場する不法長時間労働、賃金未払いなどの事例は、現行制度でも違法であって、露顕したなら来年から研修生の割り当てがこなくなる悪質な性格のものだからです。
技能実習生制度にはこういう実態が現実にあるから、入管法においては法の縛りをきつくしたのであって、これを叩いてもむしろ入管法を新たに作る理由づけになっても反対する理由にはなりません。
ただし、技能研修生制度を廃止しないという理解不能なことを政府は言っていますから、農業や建築現場での実態がどれだけ変化するのか、私には読めません。
おそらく新入管法に書かれた特定技能2号は、永住目的の少数の移民労働者たちだけが向かうことになるかもしれません。
なぜなら医療技術や工業関係の高いスキルが要求される職種には、そもそも言語の壁があり、必ずしも高賃金ではない日本に来なければならない特別な理由がありません。
高スキルの労働者は、中東でもヨーロッパにでも行けるからです。
ドイツの反移民デモhttps://www.bbc.com/japanese/45326837
次に、ヨーロッパのようにならないための社会統合政策に、現状のドイツなどの事例が反映されていないことです。
賛成論者はドイツやフランスの言語教育に妙な幻想を抱いているようですが、大量に受け入れた場合、外国人労働者は同じ民族でコロニーを形成します。
これは古今東西、世界共通の現象です。
今の池袋のチャイナタウンや、新大久保界隈のコリアンタウンや群馬県のブラジルタウンを見れば、おおよその想像がつくはずです。
彼等はこのエスニック・コロニーの中だけで、外の日本社会と無関係に生活するたとが可能です。
池袋チャイナタウンは増殖中http://d.hatena.ne.jp/santosh/20111015/1318677522
その場合、日本語習得は必ずしも必須ではありません。
特定技能2号で永住資格を得ようとする外国人労働者自身は日本語を習得しようとしますが、家族となるともうその限りではありません。
家庭内では、母国語、ないしはチャンポンで会話するのは、今の在日外国人の経験からも明らかです。
すると子供たちも小学校に上がる前までは、母国語がメーンで日本語はあやふや、そして母親は家庭にいる限りずっと母国語のままだと思われます。
そのうえ野党の支持勢力である日教組は、移民労働者の急増と共に多元言語教育を推進するはずですから、いっそう社会統合は遅れることでしょう。
野党革新勢力は、今回の技能研修生制度のヒアリングでも、一方的に研修生側を被害者に見立てて、受け入れ側を批判しています。
私は農村でのいくつかの研修生トラブルを知っていますが、一概にそう単純なものではありません。
彼等にかかると、人権擁護は外国人の為だけにあるようです。
受け入れ側の私たち日本人社会の人権や権利がおろそかに扱われ、生活が脅かされる可能性をもっと徹底的に審議すべきでした。
おそらく、ドイツやフランスの多くの実例から、移民コロニーと日本社会との摩擦が社会問題に発展するのは不可避です。
その場合、この入管法は、日本社会に調和どころか、新たな人種による無数の壁を作ることににつながっていくと思われます。
ムン政権を動かしているのは、どんな人たちなのでしょうか。
おそらくそれは韓国の過激な労働組合です。
小川和久氏は韓国の元閣僚との会話を、このように伝えています。
「韓国の元閣僚と昼食をともにする機会がありました。もともと情報機関の専門家で、しばしば意見交換してきた人です。この日も、貴重な助言がもたらされました。
「文在寅政権の姿は、労働組合に牛耳られてきた1970年代の日本と似ています。
過激な労働組合が文在寅政権を動かしており、労働組合が国民の支持を拡げようと反日的な動きを煽った結果が、今回の一連の動きなのです。心ある韓国の国民は憂慮しています。日本側は毅然たる姿勢で労働組合の策動を打ち砕く必要があります。
文在寅政権が北朝鮮に近いから注意すべきだということは、これまでにも指摘されてきました。しかし、北朝鮮との関係以前に労働組合の性格を把握しておく必要があるというのです。
この労働組合とは、戦後日本の総評、連合に当たる全国民主労働組合総連盟(民労総)のことです。組合員約70万人。世界的にも戦闘的な労働組合として知られているのだそうです。」
(『NEWSを疑え!』第729号2018年11月26日特別号)
ここで名前が出てきた「全国民主労働組合総連盟」(民主労総)は、ちょくちょく日本にもきていますから、ご存じの方も多いでしょう。
全国民主労働組合総連盟 - Wikipedia
日本で民主労総の姿かひんぱんに見られるのは沖縄の辺野古で、もはや支援団体の一角に名を連ねているといってよいくらいです。
日韓ネットより引用 http://nikkan-net.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/5...
日本においては、よく某老舗過激派C派や、関西生コンと共同行動をしています。
よくネットで辺野古にハングルがあったと言っていますが、それはこの民主労総です。
日本の過激派が極少派であることに対して、韓国民主労総は組合員約70万人、加盟単産16を擁するナショナルセンターで、日本でいえば連合にあたります。
ムンジェイン政権を誕生させた「ろうそく革命」も彼らが主役でした。
特に基幹産業である自動車大手のヒョンダイ(現代)労組のほか、全国教職員労組、全国公務員労組、交通関係労組などを支配しています。
このヒョンダイ労組の民主労総を取り上げてみます。なかなか壮絶ですよ。
象徴的なのは、ヒョンダイ労組組合員は世襲で雇用される権利を持っていることです。
さすが、労組幹部の経験者である私もたまげました。日本では考えられもしません。
「韓国の30大企業のうち現代・起亜自、大宇造船海洋、現代オイルバンク、LGユープラス、現代製鉄、韓国GM、大韓航空の8社は、労使の団体協約に「定年退職者や長期勤続者の子女を優先採用する」というような「雇用世襲」条項を設けている。この事実は、雇用労働部(省に相当。雇用部)の実態調査で確認された」(朝鮮日報2016年3月4日)
なんと労使間の団体協約に、「世襲条項」(!)があるそうで、その枠は労組幹部が握っているそうです。
しかも、作業工程のボルトの締めつけひとつまで、労組が管理していますから労組の意向を聞かないと、ネジ一本すら締められないことになっているそうです。
韓国GMでは、労組がバンパーを経営が勝手に改良しようとしたとして争議を起こされています。もはや笑うしかありません。
「現代自動車労使が締結した団体協約の規定は問題だらけだ。例えば労組が反対すれば下請業者に仕事を渡したり、海外に工場を新設したりすることも難しい。
「Aボルトを締める組合員にBボルトを締めるよう仕事を移すこともできない」とまでささやかれている。
長期勤続退職者の子どもを優先的に採用するなど、代々引き継いで仕事ができる「雇用世襲」条項に対して裁判所で無効判決が出たのが2013年のことだ。
それでも現代・起亜自動車をはじめとするかなりの数の大企業労使でこの条項が守られている。大多数の若年層求職者・失業者は血の涙を流していることだろう」
(朝鮮日報前掲)
労組幹部ともなると、専従として働きもせずに高給を食み、やることは唯一デモストだけ。
その上に、子弟は世襲で入社できるというのですから、まさに超格差社会の韓国の勝ち組そのものです。
この世襲制には、さすがに同じエリート勝ち組であるはずの韓国メディアも怒っています。
「現在の韓国の青年失業率は、この16年で最も高い10%に迫りつつある。未就業の若者は、きちんとした大企業に就職したいという一念で、就職の願書を数十枚、数百枚書いてさまよっている。こうした若者にとって、「雇用世襲」ほど怒りを呼ぶニュースもないだろう」(朝鮮日報前掲)
このような報道は日本のネット界ではかねてから知られていたことで、なにをいまさらですが、とりあえず朝鮮日報が保守系新聞だからできたので、韓国も沖縄に負けず劣らずの同調圧力が支配しています。
それはさておき、韓国社会で既得権者の最大圧力団体が労組であり、その中核が民主労総で、ヒョンダイ自動車のような財閥系の組立工は正社員であれば年収が1000万円を超えると言われています。
しかも子々孫々その地位を世襲できるのですから、まさに旧ソ連のノーメンクラトゥーラもびっくりの「赤い貴族」様です。
http://kankoku-keizai.jp/blog-entry-8995.html
民主労総は職場を文字どおり支配しています。争議のワンシーンです。
「きれいに塗装されてベルトコンベアに載せらた白い車が赤くさびた鎖で縛り付けられていた。鎖には大きな錠前まで付けられている。
50代の労働組合代議員が車の中に入り、別の鎖で手首を縛って車体とつなげた。決死抗戦の態勢だ。
もちろんベルトコンベアは停止し、工場の業務はマヒした。労使に分かれた従業員たちは歯でかみ切ろうとしたり、押し合いになったり、足げにしたりした。 24日、現代自動車蔚山工場の作業場で繰り広げられた光景だという」(朝鮮日報2017年12月3日)
完成車を出荷させないなどは手ぬるいほうで、いったん暴発すれば下の写真のような暴動まがいの「抗議行動」が見られます。
「労働運動界の暴力ざたは今に始まったことではない。ソウル・光化門広場で全国民主労働組合総連盟(民労総)が「国全体をマヒさせる可能性がある」として鉄パイプで警察官を殴り、警察車両に放火まで試みたのは2年前のことだ。
その前には「希望のバス」というデモ隊が蔚山で竹やりを振り回して数十人が負傷した。これに比べれば、今回の現代自動車の暴力ざたはささいなことだ。しかし、その内幕にはウミが破れたような労働問題が見え隠れする」(朝鮮日報前掲)
おいおい、これが労組のやることかよと思いますが、日本でいえば全トヨタ労連に匹敵するヒョンダイ労組が大ぴらにやっているわけですから、どうにもなりません。 こんなことやっていて、激戦の自動車国際市場で生き残れるのかと思いますが、そのとおりで、ヒョンダイは経営危機に瀕しています。
「韓国の自動車生産がどんどん落ちているということ。
中国には一気に抜かれて5位に、その後も順位を少しずつ落として、インド、メキシコに抜かれ、現在は7位に転落した。
そして、もうすぐスペインにまで抜かれて8位となるようだ。自動車生産上位10カ国のうち2年連続で減少を記録したのは韓国だけという。
その原因というのは米中といった主力市場での現代自動車の苦戦である。しかも、これはまだ米中貿易戦争前の話である。仮に米中貿易戦争が長期化すれば、韓国自動車にとっては厳しい展開が待っている」(マネーボイス2018年7月22日)
https://www.mag2.com/p/money/496414
このような過激な労組が争議を頻発させるために、韓国経済もまた減速を続けています。
「現代自動車によると、同社は今年だけで22回のストが起き、その影響による経営損失が2兆7800億ウォン(約2574億円)に及んでいるという。
これまで年間で最多だった12年の12回、1兆7000億ウォンの損失を大幅に上回る。
また、地下鉄・鉄道の労働者によるストでは、旅客部門の運休が1割程度と影響は軽微だったものの、貨物部門は運休が6割に及び物流に影響が出たもようだ。
このほかにも、金融・医療分野などでも労使の対立が続いているという」(産経2016年10月5日)
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/161005/mcb1610050500002-n1.htm
ヒョンダイだけで年間22回のスト、2574億円の経営損失とは、啞然とします。たぶん日本全国のストの年間回数よりも多いでしょう。
ヒョンダイが潰れないほうが不思議です。
いやむしろ、再建処理に入ろうものなら、労組が現物や債権を退職一時金として押さえるために工場占拠に走るでしょうから、やりたくてもできないのかもしれません。
民主労総にとって、このまま寄生して甘い汁を吸うのもよし、潰れたら潰れたで会社を叩き売れば巨額のカネが濡れ手に泡ですから、潰してもよし、なーんて考えているのかもしれません。
同じように経営が不振な上に、民主労総にいたぶりまくられている韓国GMは、撤退させたくなかったらカネを出せと韓国政府に迫っているようです。
すがられたムンは、1万5千人を雇用する外国資本に逃げて欲しくないために支援したいのはやまやまですが、支援すると支持層から反発を受けてしまうとハムレットを演じているようです。
そもそもそのムンは、憲法改正して、労働法にではなく憲法を改正して、「労働者は経営に参加する」「原則解雇は不可」と書き込むことを狙っているのですから、まぁどんな外国資本でも逃げますわな、これは。
今回、「徴用工」訴訟で差し押さえが決定すれば、これら外国企業は尻に帆をかけて韓国から逃げ出すことでしょう。
さて問題は民主労総が、ヒョンダイのみならずムンジェイン政権を支配下に置いていることです。さきほどの韓国元閣僚のはこのように述べています。
「(民主労総は)かつての金大中政権を含む保守・中道路線に批判的で、文在寅政権誕生に当たってはほかに野党候補がいなかったことから「消極的支持」の立場を取りました。
それだけに、文在寅政権としては民労総から積極的支持を勝ち取り、政権基盤を固めるとともに、後継政権にも影響力を残したいと考えるのは自然の流れでしょう。韓国の元閣僚は吐き捨てるように言いました」(小川前掲)
元来、ムンは昔から労働争議が専門の弁護士でした。
「文氏は司法修習を終えた1982年に地元の釜山で弁護士活動をしていた盧氏と出会い、共同事務所を運営することになった。文氏は、民主化を求める学生運動で検挙された前歴が問題視されて判事任用を拒否されていた。一方の盧氏は売れっ子の敏腕弁護士として活躍する一方、権威主義体制下の公安当局がでっちあげた事件の弁護引き受けを契機に人権問題への関心を強め始めていた時期だった。
2人はその後、人権弁護士として労働争議を積極的に受任するようになる。一時は釜山周辺地域の労働争議を一手に引き受けるほどだったという」
(澤田克己 毎日元ソウル支局長)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14687。
ムンは大統領の椅子に座った後も、過激労組を統治者として統制するどころか、むしろ彼らのご機嫌を伺うようになります。
「民労総が国際的な労働運動の会議などに出るとき、出張旅費など多額の経費を韓国政府が様々な名目で負担しています。これを見ても、いかに労働組合主導の政権だということがわかるでしょう」(小川前掲)
日本でいえば、関西生コンが政権をとってしまったようなもの、という比喩も当たらずとも遠からずなののかもしれません。
おっと、書き忘れましたが、とうぜんのことながら、民主労総は北朝鮮断固支持です。
「民主労総の中では現代自動車の現代労組が過激な闘争で知られるが、99年、労働組合のナショナルセンターとなったあと、民主労働党(民労党)という左派・親北政党の母体となった。
民労党は北朝鮮を信奉する主体思想派が主流で、民労党も民主労総も、富裕税の創設や財閥解体、在韓米軍撤退など北朝鮮の主張そのものの訴えを掲げた。
そして富裕税、財閥改革は文政権の看板政策でもあるのだ」(産経2017年9月25日久保田るり子)
https://www.sankei.com/premium/news/170925/prm1709250003-n1.html
とまれ、こんな悪霊に憑依された国が、私たちがお相手にしている国なのです。クワバラ、クワバラ。
ローマ法皇を呼ぶのならば、バチカン専属エクソシストにも一緒に来てもらったらいかがでしょうか。
さぁさぁ、ルビコン川が間近に迫ってきましたよ。ここを超えると、いよいよ日韓関係はポイント・オブ・ノーリターンを超えることなります。
いわゆる「徴用工」裁判で、弁護団は今月24日午後5時までに新日鉄住金から回答がなければ、韓国内の資産を差し押さえるそうです。
※ほんうとうは「募集工」、ないしは「朝鮮人戦時労働者」と表記すべきですが、世間で通用している表現なのでカッコをつけるか、「いわゆる」をつけて表記することにします。
「韓国人の元徴用工への損害賠償を命じる韓国大法院(最高裁)判決が確定したことを受け、原告代理人らが4日、東京・丸の内にある被告企業の新日鉄住金本社を再び訪れ、判決にもとづき賠償支払い義務を果たすための協議に応じるよう改めて求める要請書を提出した。24日までの回答を求め、応じない場合は同社の韓国内資産を差し押さえる手続きを進めるという」(朝日12月4日)
https://www.asahi.com/articles/ASLD44RNPLD4UTIL01M.html
代理人の林宰成(イムジェソン)、金世恩(キムセウン)両弁護士 。韓流ドラマにでてきそうなさわやかキャラ 朝日新聞https://www.asahi.com/articles/ASLD44RNPLD4UTIL01M
イムジェソン弁護士によれば、現金化のために具体的には新日鉄住金の韓国ポスコとの合弁会社の株と、韓国国内の知的財産も差し押さえるそうです。
株式だけならまだしも、ポスコの特許権侵害事件で争点となった知的財産権まで差し押さえるというのですから、もうハンパじゃありません。
「ただ、林氏は資産の差し押さえと資産現金化の手続きは異なるものだとも説明。「差し押さえの手続きに入ることは交渉の決裂を意味しない。手続きの過程でも(同社の)責任ある協議の意思を待ちたい」と強調し、あくまで新日鉄住金側との協議を最重要視している立場を示した。
新日鉄住金は、韓国鉄鋼大手ポスコとの合弁で設立したリサイクル会社の株式を保有。林氏によると、新日鉄住金は多数の知的財産権を韓国内で持っており、こうした資産が差し押さえの対象になるとみられる。(時事12月4日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120400636&g=int&utm_source=top&utm_medium=topics&utm_campaign=edit
実は2015年に、韓国財界第6位のポスコ製鉄は、新日鉄住金の方向性電磁鋼板に関する特許侵害で300億円の巨額賠償をしています。
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/21930.html
この損害賠償額は、コーロンが合成繊維アラミドの営業秘密侵害で米化学企業デュポンに支払った2億7500万ドルより多く、世界最高額といわれています。
方向性電磁鋼板は自動車、新再生エネルギー素材などに幅広く使われ、未来高付加価値鉄鋼素材に選ばれる製品です。
新日鉄住金は韓国内でこの方向性電磁鋼板など多くの特許を登録していますが、これを差し押さえるということも、訴訟団は視野に入れているということになります。
すると韓国司法がこの差し押さえを認めた場合(とうぜん認めるでしょうが)、この300億で和解したはずの知的財産は、韓国の法によることになります。
日本の場合、差し押さえた場合、評価額との兼ね合いもありますが、一般的には強制執行を行い、競売に付されます。
そして入札を行った後に、特許権が移転します。
訴訟団弁護士は、原告が高齢なために現金化は一日を急ぐという言い方をしていますから、競売で安くバーゲンセールをして叩き売りをするかもしれません。
その場合、ポスコだけが相手ではありません。
訴訟団は、世界各国の新日鉄住金の資産を押えると公言している以上、いずれにせよ世界相手の新日鉄住金の知的財産の競売がありえます。
世界有数の先端製造技術を持ち、高付加価値製品づくりに特化している新日鉄住金にとって、長い期間辛苦の末に作り出した知的財産を奪われた上に、それをあろうことか大安売りで叩き売られるはめになります。
当然、新日鉄住金は対抗訴訟を起こすでしょうが、「徴用工」をナチスドイツの強制収容所労働と混同するプロパガンダが浸透している人権先進国の欧米では、韓国の主張が勝訴する可能性が高いと思われます。
もちろんこれは、日本政府が指をくわえて傍観した場合であって、最悪シナリオだとお断りしておきます。
ところでイム弁護士は、「新日鉄住金との協議を最重要視している」(時事前掲)そうですが、なにを寝ぼけたことを。
産経https://www.sankei.com/photo/story/news/181112/sty...
彼らが日本に来て真っ先に行ったのは新日鉄住金の本社でしたが、すげなく面会を断られています。
二国間紛争の次元にとっくに発展しているのに、あえて気がつかないふりをして無知を装っているのか、はたまたただのパーフォーマンスなのか知りませんが、愚かです。
彼らはお約束の怒りの抗議をしたようで、それを同情的に報じた日本メディアも多く出ました。
いきなりアポなしで玄関口に集団でおしかけて、面談出来るはずがありません。
「警備員から面会には応じられないことを伝えられたということで、弁護士の1人は記者団に対して、 「当事者と会わないということは、私たちと協議をする意思がないことを確信させた。財産の差し押さえに向けた手続きを始めざるをえない」 (NHK11月12日)
なにも考えないNHKは、なんだ会うくらいすればいいじゃないかと言いたいようですが、とんでもない、絶対に日本企業は会ってはいけません。
それがあの人たちのてなのです。
イム弁護士らが口を開けば交渉、交渉と言っているのは、個別交渉に持ち込みたいからです。
かつてそれに応じた日本企業があったために、柳の下のドジョウを狙っているのですが、ひとつ応じて一円でも払えばそれが前例となってしまいます。
下世話な話、彼等のような人権屋は、早く現金化したくてたまらないのです。
政府をからませずに、日本企業を別個に交渉テーブルに引き出して、そのつど解決金を取る、これがカネになる最短距離です。
一方、新日鉄住金は、仮に差し押さえに出てこられてもやりようはいくらでもあります。
そもそも韓国国内に新日鉄住金は資産がありませんし、先述したポスコによる特許侵害事件和解案では、新日鉄住金がポスコの生産の枠組みを決定することも可能です。
こじれれば、ポスコの生産をゼロに追い込むことすら可能なのです。
したがって、新日鉄住金が訴訟団と「面会を拒否した」こと自体が「回答」です。
仮に、メディアが望むように面会したとしましょう。すると、新日鉄と訴訟団の間に直接交渉窓口が開いてしまうことになります。
集団交渉をしたことがある人ならお分かりでしょうが、「協議に応じる」ということ自体に意味があります。
協議を始めれば、基本的にはゼロ回答はありえません。それをすると即座に決裂となって協議の場を持ったこと自体が無意味になるからです。
ですから、なにかしらの落とし所を互いに探り合うものだからですが、今回のような「ありえない訴訟」を吹っ掛けられた場合、賠償額の多寡ではなく、「訴訟を起こされたこと」自体が受け入れられないのです。
ですから現時点で、意味ある協議が唯一あるとすれば、それは日韓両政府による国家間協議でする以外にありません。
いつになるかムンの腹ひとつですが、未来永劫「司法が決めたことだ」で引き延ばすわけにはいかない以上、やがて何らかの意志表示をして、日韓政府間協議は開かれるでしょう。
その場合、交渉が二つあることになります。
ひとつは民間レベルの「訴訟団協議vs新日鉄住金」交渉と、政府間の「日本政府vs韓国政府」交渉の二つが存在することになって、同じことを交渉しながら片方が折り合っても、片方は折り合わないということになりかねません。
とまれ、24日午後5時と勝手に期限を切っても、新日鉄住金に回答も協議もする意志がない以上、いまや歴史上もっとも冷えきった日韓関係は、絶対零度にまで直滑降するまであと一歩となりました。
政府間関係や国民感情にとどまらず、韓国側訴訟団がほんとうに韓国内の新日鉄住金の知的財産権まで含む資産に手を付けた場合、在韓日本企業の大部分は「コリア・リスク」の存在を肌身で知ることになります。
そしてその結果は目に見えています。全力でそんな人治と恣意の国、あるいは過激労組の支配する国からの資本逃避を始めることでしょう。
いったん新日鉄住金や三菱重工などの巨大企業が撤収を本格化させれば、雪崩をうって日本企業の総撤退が開始されるかもしれません。
同時並行して、政府の制裁も開始されるでしょう。
たとえば、韓国の銀行への信用状の取り消し、金融庁による韓国債権のリスク評価の下方修正、経済産業省による六フッ化水素酸やネオン、クリプトン、キセノンといったレアガスの輸出の制限、外務省による渡航警告の引き上げなどをかけることも可能です。
民間と政府が同時にこれらの制裁を課した場合、その破壊力は予想がつかない規模となるでしょう。
ついこの間まで通貨スワップをするのしないのと言っていたことが、遠い昔のようです。
ロシア海軍がウクライナ海軍艦艇3隻をだ捕しました。
こういうことをする国がロシアなのであり、我々日本人もこういう国際情勢の下で対ロシア交渉が進んでいることを、あらためて心したほうがいいでしょう。
メディアのように、北方領土だけに視野狭窄するとわからなくなりますよ。
日本のメディアの扱いは小さいものでしたが、欧米のメディアは大きく取り上げました。11月26日のBBCです。
https://www.bbc.com/japanese/46340472
「ウクライナ海軍の小型砲艦「ベルジャンスク」と「ニコポリ」、曳航艇「ヤナ・カパ」は25日朝、黒海のオデッサ港からアゾフ海のマリウポリに向かおうとした。
ウクライナ海軍は、ロシア側が曳航艇に体当たりし、艦艇の進行を阻止しようとしたと説明している。ウクライナ側はケルチ海峡まで航行したが、すでにロシアのタンカーが海峡を封鎖していた」
ケルチ海峡は下図中央やや右側で、ロシアと海峡一つで隔てられた位置にあります。
ケルチ海峡付近地図 スプートニク https://jp.sputniknews.com/opinion/201811285639470/
ここはアゾフ海から黒海に抜ける重要なルートです
ここをロシアが通さないと言い出すと、ウクライナはアゾフ海北岸にあるベルジャンスク港とマウリポリ港から穀物、鉄鋼、石炭の輸出入ができなくなります。
ここで問題となるのは、両岸の領土の主張です。
ケルチ海峡西側はウクライナは2014年3月にロシア軍によって不法に軍事占領された地域と主張していますし、それは国際的に認められています。
東岸はロシア領ですから、この場合は国際海峡ということになります。
しかし西岸のクリミア半島部分も含めてロシアは領土だと宣言しているわけですから、ロシアの主張が正しいならば、ケルチ海峡はロシアが国家主権に属する水域管轄権を持ちます。
つまり全部オレ様のものだとロシアは主張しているために、一定の制限をかけられます。
領海内であれば、他国の艦船による無許可の海洋調査、示威的活動、特別な理由のない滞留は禁止されます。
外国軍艦は通ることは通れますが、無害通行権を課せられて、海峡中央部を静々と通航するしかありません。
無害通航 - Wikipedia
砲塔をグルグル旋回させて挑発したり、艦載機を飛ばしたり、海域調査をすることは御法度です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/7-bf02.html
実際には、ロシア政府とウクライナ政府は2003年に、ケルチ海峡とアゾフ海は「両国が共有する領海」という協定を結んでいます。
これはクリミア侵攻以前ですが、侵攻自体が不法であるうえに、その後、協定が廃棄されたことはないので、いまなお生きているはずです。
「ウクライナとロシアが2003年に結んだ協定は、両国の船団による自由航行を保証していた。しかしロシアは最近、ウクライナの港に出入りする船舶の臨検を始めた。EUは今月前半、問題に対処するため「的を絞った対策」を実施すると通告した」(BBC前掲)
これはロシアも認めており、ロシア政府系スプートニク(11月28日)もこう述べています。
「二国間合意の第1条項にはアゾフ海およびケルチ海峡は歴史的にロシア連邦およびウクライナの内海であったことが指摘されており、第2条項にはロシア連邦またはウクライナの国旗を掲げる貿易船、軍艦また非商業的目的で用いられる国家の船は、アゾフ海およびケルチ海峡の自由な通航権を行使できると書かれている。
2007年、ロシアとウクライナはケルチ海峡の通航権についての合意を締結した。この文書によれば、ケルチ海峡を通航するいかなる船もケルチ海峡の通行の意図をあらかじめ通知せねばならないと明記されている」(スプートニク11月28日)
https://jp.sputniknews.com/opinion/201811285639470/
と、ここでは二国間協定で通航の自由は双方の国に認められており、通航の意志を通知することが義務づけられるとしています。
そして、クリミア侵攻によって海峡両岸はロシア領だから無害通航権はないと言い出しています。
「2014年、クリミア半島はロシアの構成体に編入され、ロシアがケルチ海峡の両岸のコントロールを開始した。
ロシア外務省は、ケルチ海峡は過去も現在も国際的な水域であったことはなく、外国船舶に対するトランジットあるいは無害通航権の要求は行使されないとする声明を表していた」(スプートニク前掲)
国際社会は一致してこのウクライナ侵攻を認めていない以上、このロシアの言い分は通りません。
もちろん、ウクライナは間違っても「両岸がロシアの構成体となった」などということは認めないでしょう。
ただし、現実問題として無意味な衝突を避けるために、2007年の相互に通航を事前通知する協定を遵守してきたわけです。
今回、ウクライナ海軍がロシア側にこの事前通知がなされたか否かですが、ウクライナはしたと言っています。
「ウクライナ海軍は通航についてはあらかじめロシア側に通知していたと語っている。
26日、ウクライナ海軍のイーゴリ・ヴォロンチェンコ司令官は、ウクライナの船舶はケルチ海峡を通過する際にロシア側に煽動は行わなかったと指摘した」(スプートニク前掲)
一方ロシア側の言い分です。
「ロシア連邦保安庁国境警備課クリミア担当部署は、ウクライナの船舶は海峡通過の通知を行っておらず、通過予定の表にも含まれていなかったと主張している。
ロシア連邦保安庁はさらに、船舶は停止要請を無視し、危険なかじ取りを行ったために国境警備隊は発砲を迫られたと説明している」(スプートニク前掲)
スプートニクがこのだ捕事件の現場写真を2枚出しています。
スプートニク11月26日https://jp.sputniknews.com/politics/201811265627707/
このだ捕した、ロシア海軍の艦長と副長の会話も傍受されています。
「艦長 こいつの動きは、ロシアへの侮辱だ。あの船を締め付けてやれ。よし。右側にぶつけてやろう。心配することはない。ここで拿捕するぞ」
ここで艦長は、左からウクライナ艦船を追うロシアの汽艇に告げる。
艦長 直進しろ。そうだ。
副艦長 停止
艦長 ウクライナ船の右側から乗り込むぞ。少しバックしろ。ウクライナ船員の身柄を拘束せよ」(中村逸郎筑波大学教授)
https://ironna.jp/article/11312
この艦長の発言を聞くと、たしかにウクライナ海軍艦艇がロシア側の停船命令に従わなかったのは事実だと思えますが、ウクライナ側からすればどうして停船せにゃならんのだ、これは海賊行為だということになります。
上のBBCの写真は、今回、ケルチ海峡を閉塞しているロシアタンカーです。 私はロシア海軍の発砲そのものもさることながら、この海峡閉塞に驚きました。
これは国際海峡の物理的封鎖ですから、国際海洋法上きわめて疑義がある上に、自分の国の民間船舶も困るでしょうに、信じられないことをやる国ですなぁ。
ちなみに橋の上空にはスホーイ25と見られる攻撃機2機が飛行していて、ロシア軍が空海で厳重な監視体制を敷いているのがわかります。
海峡の上に架かる橋は、クリミア半島部分が孤立しないように、2018年5月にロシアが自国領土東岸と結ぶ回廊として建設したもので、全長19キロもあるという長大なものです。
この橋も、勝手に他国領土と結んでしまったわけで、よーやるよ、です。
いわば国家の威信をかけて作ったもので、ウクライナからすればオレの領土・領海の中で勝手なまねさらしやがって、ということです。
このBBC記事でロシアが言っている「臨検の強化」とは、テロ対策で、最近になって強化され始めました。
「ロシアによる臨検は、ウクライナ側が3月にクリミア半島で漁船を拿捕した後すぐに始まった。ロシア政府は、ケルチ海峡にかかる橋に対する、ウクライナ過激派による潜在的危機を指摘。安全保障上の理由で検査が必要だと述べている」(BBC前掲)
だ捕されたウクライナ海軍艦艇3隻 産経https://www.sankei.com/world/news/181127/wor181127
なおこのだ捕の際、ロシア海軍はウクライナ海軍艦艇を破壊しており、乗組員6名が負傷したと発表されています。 (ロシア側発表では3名)
これはロシア連邦保安局(FSB)も認めています。
国際海峡において、無害通航をしている外国軍艦の船団に対して発砲することは、国際法上きわめて悪質な挑発で、戦争行為とみなされる場合があります。
中村教授はこのように述べています。
「今後は、欧米諸国によるロシアへの経済制裁がさらに強化される。ロシア経済は2014年以降の経済制裁で衰退しており、財政破綻寸前の状況だという説もある」(前掲)
トランプもこの事件で首脳会談を取り止め、P8哨戒機を当該水域に派遣しました。このようなことをすれば、親露的傾向があるトランフですら、距離を置くしかありません。
また、ヨーロッパ諸国はいっそう厳しい経済制裁の段階に入るでしょう。
つまり、ロシアにとっていいことはなにひとつないのです。
このような国際情勢の中で、このような体質を持った国と、今の日本は交渉を続けていることをお忘れなく。
■公平を期するために、ロシア側の言い分を大幅加筆しました。
パリ暴動で足元に火がついているマクロンがG20で、ゴーン問題をなんとかしちくれぇと言ってきたようですが、うちの国の首相は「政府が関与することではない」とすげない返事をしたようです。
とうぜんです。日本はフランスのように、産業界に国営企業などないのですから、「ヨーロッパの中国」とまで揶揄される国有企業がはびこっているフランスと足並み揃えろというほうが無理です。
ロイターhttps://jp.reuters.com/article/nissan-ghosn-macron-abe-idJPKCN1NZ2MV
マクロンはこのG20で、フランスと中国を念頭においたと見られる「国有企業の腐敗についての清廉確保」についての共同声明を出されてしまう始末です。
外務省https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000424876.pdf
「29 我々は,腐敗の防止及び腐敗との闘いに引き続きコミットしており模範を示す。
我々は,新たな行動計画 2019-2021 に合意し、国有企業における腐敗防止及び清廉性の確保に関する原則」及び「公的部門における利益相反の防止及び管理に関する原則」を支持する。
これらの原則は公的部門及び民間部門における透明性及び清廉性を促進する。我々は、我々の G20 のコミットメントに沿ったものを含め、腐敗と闘いための実際的な協力を継続する。
我々は、腐敗とその他の経済的犯罪との結びつき、及び、そのような犯罪関係の捜査対象者の送還及び奪われた財産の返還に関する、国際的な義務及び国内法制度と整合的な形での協力を通じたものを含め、そのような結びつきに対処する方法について更に模索する」
名指しされたものではないですが、実質的にルノーとゴーンのケースはまさにこの「国有企業における腐敗」そのものであって、「経済犯罪とのむすびつき」が疑われる事例です。
この声明が出される前に、安倍総理とマクロン大統領が会談しました。
「日本政府によると、首相は「(3社連合は)日仏産業協力の象徴だ」との認識を示した。今後については「民間の当事者で決めるべきで、政府がコミットするものではない」と強調した。
ロイター通信は仏大統領府の話として、マクロン氏が「3社連合が安定した状態で維持されるように強く望む」との考えを示したと伝えた。日仏首脳は3社連合が安定的な関係を維持することが重要だという点では一致した」(日経12月1日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3842425001122018000000/
だまた、「マクロン大統領は「連合を存続させ、連合の安定性を維持すべきという強い願いをあらためて表明した」(ロイター12月1日)そうですが、首相はこのように答えています。
「連合の将来は民間株主にかかっていると伝え、日本政府が連合の将来について予断を持つことはないと述べた。
仏政府高官によると、安倍首相はマクロン大統領に対し、法的手続きが進められるのを見届けるべきとの立場を示したという」(ロイター同上)
ゴーン容疑者の今回の事件の全貌はまだ解明途中ですし、なにもわからないうちからゴーンはカエサルだと持ち上げて、日本人のクーデターだ、やれブルータスだ、と批判一色のフランスメディアの論調のほうがおかしいのです。頭を冷やしなさい。
そもそもG20で出すこと自体、マクロンの見識を疑います。
いくら国営だからといって、はたまた自分が経済相だった時にルノーへの肩入れ政策を強力に押し進めたからといって、首脳会談のテーマにすることではありません。
仮に日本政府が日産に、なぁ日産よ、お前らゴーンへのこれ以上の民事訴訟なんか止めろや、なんて言ったら、そのほうがおかしいじゃありませんか。
さて、日本では大きく報じられていませんが、マクロンは絶体絶命のピンチです。
それはフランスで2週間に渡って、暴力デモが沸騰しているからです。 マクロンはG20から帰る早々、焼け跡を見るはめになったようです。
「フランス全土で行われた燃料税引き上げに抗議する大規模デモから一夜明け、パリ中心部では多数の破壊行為が明らかになりました。
マクロン大統領がアルゼンチンでのG20から帰国後、すぐに向かったのは、歴史的建造物・凱旋門です。しかし、そこにはデモ隊がペンキで書いたとみられる無数の落書きがありました。
1日のデモには、フランス全土でおよそ13万6000人が参加、特にパリではシンボルの「黄色いベスト」を着たデモ隊の一部が暴徒化し、およそ400人が拘束されました。
一夜明けたパリ中心部では、民主的なデモとはかけ離れた暴動ともいえる破壊行為が明らかになり、至るところで車やオフィスなどが放火されたほか、一部の商店では略奪行為も起きていました」(TBS 12月 2日)
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12198-137539/「フランスで続いている燃料税引き上げなどに抗議するデモが1日、国内各地で行われ、パリでは凱旋門周辺にデモのシンボルの「黄色いベスト」を着た数千人が集結した。前週に続き警官隊と衝突、広場は催涙ガスや発炎筒の煙に包まれた。同国のメディアによると180人以上が拘束され、警官を含む80人が負傷した。
11月24日に大規模な衝突のあったシャンゼリゼ大通りは、当局が車両通行止めにし、入る際に身元や荷物を検査してデモを管理。
一方、規制のない凱旋門を中心としたエトワール広場にもデモ隊が集まり、警察が催涙ガスや放水で排除を図ったが、占拠を続けた」
(共同12月2日)
これが先進国のやることですかね。
いつもはデモに対しては節度を呼びかけるEUは、今回なぜか沈黙を続けているそうで、逆にいかにEU中枢の狂乱ぶりに驚いているのかがわかります。
数十万人が参加したデモがなんと600回もあったそうで、そのつど暴動に発展しました。
とまれハンパない荒れ方で、もはや市街戦の様相を呈してきました。
上の写真に見える黄色のベストは自動車の事故時の装備として常備を義務づけられているそうですが、これはとうに売り切れてデモ隊の制服と化してしまったそうです。
いつもはデモになど行かないサラリーマンまでが、この黄色のベストを付けて覆面してペンキや石を投げているのだとか。
もはや、デモの原因だった燃料税引き上げ、CAF(生活保護)の毎月5ユーロの削減といったマクロンの悪評さくさくの緊縮財政に対する抗議から離れて、暴動がもたらす快楽に酔っているように見えます。
一方、警官側 もデモ規制などという生易しいものではなく、軍事制圧の段階にきています。
警備主体も一般の警官に代わって、国家憲兵隊(ジャンダルムリ・国家警察軍)という準軍隊が大量投入されました。
国家憲兵隊 (フランス) - Wikipedia
このジャンダルムリは傘下に、IS掃討で名を馳せたGIGN(治安介入部隊)というすぐ自動小銃をぶっ放すことで有名な特殊部隊を擁しています。
たぶんこれも既に出動しているのではないでしょうか。
というのはカッサーと呼ばれる全身黒づくめのテロリストが登場して、計画的に放火と強盗を繰り返しているからです。
彼らはかねてから目撃されており、マクドナルドに火をつけたりするようなまねを繰り返す組織的テロリスト集団で、千数百人規模で黄色ベストのデモ隊に混ざって暴れまくっているそうです。
沖縄復帰デモに紛れこんで、火炎瓶を投げていた過激派のようですね。たぶんこいつらのバックには正真正銘の武装テロリストがついているのでしょう。
警察軍が介入した後も止むことなく、警備側136人を含む756人が負傷、693人が身柄を拘束され、それになんとまぁデモ隊側には2人の死亡者が出たそうです。
日本だったら内閣が飛びます。
石油貯蔵所は警備のために閉鎖し、デモ隊が入れ口を封鎖したりしたために、全国的に麻痺状態でだそうで、それがまた石油製品の高騰を招き、いっそう国民の怒りを招いてデモが拡大する悪循環となっています。
もうマクロンは、フランスマスコミの援護射撃の下に、せめてゴーンのことで日本の譲歩を勝ち取りたかったようですが、これもあえなく蹴飛ばされてしまいました。
というわけで、支持率は20%と最悪、人気も今やそのエリートヅラが嫌われて最低、国民生活を破壊する緊縮政策で経済もインフラもボロボロ。
そのうえデモで煮えくり返る国内を抱えて、盟友ゴーン逮捕、国営企業ルノーの金づるだった日産の反乱まで起きて大ピンチ。
やれやれ、マクロンさん、この四面楚歌をどうするつもりでしょうか。
■すいません。改題してしまいました。
終わり行く秋に名残を惜しむかのように、夜ともなると、まさに満天の星の下に何種類とも知れない虫の声です。
今、「虫の声」と言って、ふとかつて読んだ和辻哲郎さんの「風土」(岩波文庫)という本を思い出しました。
和辻さんは欧州に行った時に、欧州の夜に「虫の声」が聞こえないことに気がつきました。
そして欧州人が、私たち日本人がこよなく愛する虫の音を、単にノイズとしてしかとらえていないことに驚かされたことを書いています。
紅葉も同じことで、欧米人には紅葉を愛でる感性が希薄です。
ましてや日本人のように、紅葉の季節ともなれば、大挙して紅葉の名所にもみじ狩りに行くなどという習慣は、彼らの想像を絶するのかもしれません。
私たち日本人は、この列島の褶曲の多い、霞たなびく山がちの島国の中で特異に発達した感性をもった民族なようです。
そう言えば面白いことに、日本人は外国に移民してしまうと、日本で生まれ育った1世の世代は頑として日本人そのままですが、2世、3世ともなると急速に現地化が進みます。
現地の人に溶け込んでいってしまうのです。これは同じ中国や韓国系の移民集団と比べると、明らかに違いがあるそうです。
一方、日本に移住した韓国系のひとたちなど3世ともなると、民族意識はあるもののどこから見ても日本人です。
どうやら日本人、あるいは日本に住む人達は、この日本という風土に居る時において「日本人らしさ」を持っているのかもしれません。
和辻さんは、日本の「風土」をこのように美しく説明しています。
「気候もまた単独に体験せられるのではない。
それはある土地の地味、地形、風景などとの連関においてのみ体験せられる。寒風は山おろしであり、からっ風である。
浜風は花を散らす風であり、あるいは波をなぜる風である。夏の暑さもまた旺盛な緑を萎えさせる暑さであり、子供を海に雀躍せしめる暑さである」
「我々は花を散らす風において歓び、あるいは痛むるところの自身を見いだすごとく、ひでりの頃に樹木を直射する日光において心を萎えさせる我々自身を了解する。すなわち我々は風土において我々自身を、間柄としての我々自身を見いだすのである」
私はこの列島で生まれ、育ったことを嬉しく思います。そして私は骨の髄まで「日本人」なんだなと苦笑します。
「徴用工」問題の起爆剤となった韓国映画『軍艦島』は、ほんとうに真実を伝えているのでしょうか。
俗称軍艦島こと端島(はしま)の元島民らは、この韓国映画について2017年8月15日に韓国大使館に抗議文を手渡し、証言の一次資料を公開しているので、閲覧することができます。
「真実の歴史を追求する端島島民の会」より、映画『軍艦島』の公開 ...
内容的には映画はこのようなものだったようです。
「映画の冒頭、山口県・下関に到着した「徴用工」や「慰安婦」を日本兵が窓のない貨車に詰め込む場面があり、ナチスのホロコーストと同列という印象を観客に植え付ける。さらに、女子小学生が慰安婦として性病検査を受けさせられたり、朝鮮人徴用工は言語に絶する虐待を受ける。慰安婦が無残に虐殺される回想シーンもある。
日本の敗戦が近づくと、会社側は虐待の事実を隠蔽するために、朝鮮人全員の殺害を決定する。ラストは朝鮮人徴用工と慰安婦が銃を取って日本兵を倒し、石炭運搬船で軍艦島から脱出する、という内容だ」(産経2018.年9月26日)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180926/soc1809260008-n1.html
まず、映画の中に登場する朝鮮人たちは強制連行により送り込まれたか、甘い言葉にだまされて日本に渡ったところ奴隷労働を強制された,とされています。
日本政府、ないしは日本軍が直接関与して、朝鮮半島で労働者狩りをしたという事実はまったくありません。
「徴用」があったのは、大戦末期のみの6カ月間にすぎません。
昨日ふれたように、大戦前の1939~41年の期間は民間企業による「募集」、開戦後の1942~44年9月の期間は朝鮮総督府による「官斡旋」、戦争末期の1944年9月~1945年3月は国民徴収令による「徴用」でした。
韓国は、この時代区分による朝鮮人労働者制度をゴッチャにして、意図的に混同して使用しています。
そもそも「強制連行された徴用工」という概念自体が、朝鮮総聯系の朴慶植が1965年に書いた『朝鮮人強制連行の記録』から来ている造語で,当時は存在しない用語でした。
これは「従軍慰安婦」と一緒で、今や一人歩きの虚構に成長してしまいました。
誤解されているようですが、日本は朝鮮半島から労働者を輸入したのは、日中戦争の1939年から1945年までのわずか6年の短い時期にすぎません。
36年間あった日本統治時代の末期6年のことで、それまで朝鮮人は日本国内での労働を制限されていたために、それに対しての朝鮮人の不満のほうが大きかったほどです。
なぜ、日本国内での朝鮮人労働が制限されていたのでしょうか。
それは長く続いた不況で日本人労働者すら失業するものが多いのに、朝鮮人労働者を入れてしまったら、今の入管法改正案のように単純労働者市場が飽和してしまうからです。
このために、朝鮮人が日本に渡航するためには、国内での住所や仕事の証明書の提示が義務づけられた「渡航輸止制度」すらあったほどです。
ちなみに、徴兵制も朝鮮人は免除されていました。
朝鮮で徴兵制が敷かれたのは、戦争末期の1944年4月のことであり、実際に開始されたのは9月でした。
それも朝鮮人が同等に徴兵されないのは、差別的待遇だとする声が高まったためです。
パク・クネの父親であるパク・チョンヒ元大統領が血書をしたためて、軍官を願ったなどという新聞記事も残されています。
なお、徴兵実施が大戦末期だったために、朝鮮人兵士の大部分は戦場に赴く前に終戦になっています。
それはさておき、韓国が「強制連行」と呼んでいるこの徴用令は、国内は1939年(昭和14年) の国家総動員法第4条の発布からでしたが、これも朝鮮人に適用されたのは5年遅れの1944年(昭和19年)9月のことでした。
しかも、韓国では女子の勤労動員は終戦まで行われませんでした。
韓国が「従軍慰安婦」と混同している女子挺身隊は、国内ではとうに行われており、朝鮮人女性のケースはすべて志願制でした。
映画にある小学生女児の性病検査など妄想の類です。
もちろん、慰安婦は女衒が斡旋する募集制で、日本政府やましてや軍は一切関わっていないのはいうまでもありません。
これについては、カテゴリー「慰安婦問題」に大量に記事を書きましたのでご覧下さい。
慰安婦が日本軍によって強制的に連行されたというエビデンス(証拠)は、朝日と韓国の30年間の悪戦苦闘にも関わらず、気の毒になにひとつ見つかっていません。
では、1944年の「徴用」で軍艦島にやってきた朝鮮人労働者はどのような処遇だったのでしょうか。
韓国側は軍艦島の朝鮮人「徴用工」についてこう主張しています。
①大戦中日本人労働者は安全な場所に移され、中国と韓国の強制労働者に代わった
②強制労働者の1000人以上が死亡した
③死体は海か廃坑に投げ捨てられた
(2017年5月南ドイツ新聞に送付された端島島民の会の抗議文より引用)
①の危険な作業現場に日本人の代わりに朝鮮人労働者を送ったということですが、ありえません。
当時の朝鮮人労働者は、戦前から働き続けている日本人坑夫とは比べ物にならない未熟練工でした。
ガテン系現場を経験した人ならば、一番危険な場所にあえて新人の未熟練工を送るということがありえないのはお分かりになりますね。
未熟練工が間違った場所を掘削したりすれば、即落盤につながりかねません。どうしてそんな場所に朝鮮人労働者にわざわざ新米の朝鮮人労働者を送ることなんかありえません。
元軍艦島(端島はしま)の炭鉱夫の証言です。
「とんでもありません。馴れない者は危険な作業はさせられません。事故でも起きれば落盤やガス爆発に繋がります。危険な仕事は熟練した日本人がやっていました。
事故が起きれば全員の命が危ない。坑内は日本人も朝鮮人も運命共同体でした」
(松本国俊『軍艦島 韓国に傷つけられた世界遺産』)
また徴用工像はツルハシでふんどし姿で描かれていますが、これもありえません。
https://ironna.jp/article/7769
軍艦島でツルハシで仕事をしていたのは明治期だけで、大正期から既に機械化されていました。
軍艦島は石炭を掘り出すのは圧力作動式機械でやり、掘った石炭の運搬は昭和11年からベルトコンベアーに替わっています。
これらの装備は、日本国内でも最初であって、軍艦島がいかに時代の先端技術の粋を集めた鉱山だったのかわかります。
韓国側は、朝鮮人労働者が酷暑45度の地下1000メートルの坑道で労働を強制させられたと主張していますが、これも荒唐無稽です。
そもそも当時の坑夫だった島民の証言によれば、軍艦島の行動は最深で710mにすぎず、送風装置があるために最高で35度に押えられていました。
ですから徴用工像のようにフンドシ一丁になる必要はありませんでした。
仮にフンドシ姿だったとしても、当時の日本人はひと踏ん張りという時はすぐにフンドシひとつになったようですから、虐待の証拠にはなりません。
坑道には水飲み場も設置されていて、交代で休憩出来るようになっていました。
また韓国側は、朝鮮人労働者が一日12時間から16時間は働かされたことが、奴隷労働だったように主張していますが、当時は労働基準法は存在しません。
軍艦島に限らず、当時12時間ていどの労働はままあることで、戦時中にはそれが15時間に及ぶこともありました。
その代わり軍艦島の労働者は、国内賃金よりずっと高い賃金と住宅環境を保証されていました。
朝鮮人労働者もそれに惹かれてこの島に来たのであって、それを今頃になって奴隷と一緒だったなんて言って欲しくはありませんね。
そもそも日本人坑夫と朝鮮人坑夫は同一労働をしている以上、これも朝鮮人労働者だけに課していたわけではありません。
極めつけは、軍艦島の日本兵が残虐な弾圧していたという映画『軍艦島』の②の描写です。
そもそも、軍艦島には兵隊はひとりもいませんから、いもしない兵隊がどうやったら、朝鮮人労働者に銃を向けられるのか、ひとつご教示願いたいものです。
島にいたのは警官がわずかに2名だけにすぎません。いかに島の治安がよかったのか分かります。
当時の坑夫の証言があります。
「(警官による朝鮮人労働者の暴行が常態化していたことに対して)それがでたらめというのはね、警察官は坑内のことはしないんですよ、絶対。坑内のことは保安監督署がするのだから、坑内のことは警察がするもんじゃない」(『軍艦島に耳を澄ませば』)
いや、兵隊も警官もいなかったが、この保安監督署がナチスのSSばりの暴虐をしたんだというなら、1000人も殺しまくるくらいですから、さぞかしゴッソリと配置されていたのでしょうね。
残念ながら、そのような資料は見つかっていません。少し考えればあの狭い島でそんなナチの親衛隊みたいな凶暴な奴らが駐留していたら、なんらかの目撃証言があるものなのですよ。
1000人殺して処理するというのは、並大抵のことではありません。韓国は人の生き死にを軽く扱いすぎます。
他国を大量殺戮したと非難する以上、しっかりとした裏付けを出すべきです。亡くなった朝鮮人労働者はみな事故死で、坑内ではむしろ日本人坑夫のほうが危険な場所で作業しているのですから、朝鮮人労働者のほうが日本人より死亡率が高いわけがありません。
おそらく彼等朝鮮人労働者が軍艦島にいた期間に亡くなった数は、二桁の少ない数字のはずです。
『炭鉱誌長崎県石炭史年表』という資料に、事故死亡数の記録が残っています。
・昭和10年3月 ガス爆発事故 日本人18名・朝鮮人9名死亡
・同11年10月 落盤事故 日本人1名死亡
・同11年5月事故死 日本人1名
・同11年落盤 日本人1名死亡
死亡率に関しては、九州大三輪宗弘教授の石炭統制会資料の研究がありますが、日本人労働者と朝鮮人のそれとはほとんど差がないと記されています。
死亡した朝鮮人労働者の遺骨は、丁重に家庭に送ったという記録があります。
③で韓国は、海に1000体も死体を捨てたなどと妄想していますが、そんなことをすればいくら戦時中でも漂着した死体の山で警察沙汰になったことでしょう。
戦争中の日本には警察がなかったとでも思っているようです。
廃坑に捨てたというのも、日本人はそんな墓穴を世界遺産登録申請できるほど心臓が強くありません。
本当にあったらひた隠しにすることでしょう。
先ほども述べましたが、大戦中の軍艦島での事故による死亡数は二桁です。
とすると、事故以外で1000人近く死んでいることになりますから、その記録を開示して下さい。
兵隊によって多くの朝鮮人労働者が殺された、死体を捨てたなどというのは完全に虚偽で、死亡率や労働時間も日本人と変わらず、暴動や脱走事件などは皆無でした。
米軍による空襲も、1945年(昭和20年)7月31日の1度だけであり、その時に発電所などの施設が空爆されただけで、それ以外は戦闘に巻き込まれてはいません。
このように、韓国側の主張はうウソと妄想に満ちています。
最後に、韓国にも当時子供だった、このような韓国人体験者の記録も存在することを添えておきます。
「熟練労働者だった父の月給は戦時中物価が上昇した時は180円にも達した。教師や役所の職員よりも多い報酬だった。しかもお金を使おうとしても使う所がない孤立した島だったので、一定の金額を貯金することができた。
鉱夫の子供たちは学校に通うことができた。日本はその頃、普通学校を国民学校と、高等普通学校を中学校と名を変えて呼んでいた。故郷で普通学校1学年を終えたグ・ヨンチョルは国民学校2学年に編入した。40人を超える同級生の中で朝鮮人は3人だけだったが他の2人は女学生だった。
学校生活は悪くなかった。朝鮮で日本語を習ってきていたのに加え、頭の良かったグ・ヨンチョルは日本の子供たちを差し置いて最高の成績を維持することができた。性格もおだやかで、おもしろい冗談もよく言うし、運動もできたので、日本の子供たちにもよく溶け込んでいた。
(中略)
戦時体制となり全ての食糧について配給制が敷かれていた。朝鮮では聞いたこともなかったようなパイナップルやマンゴのような熱帯の果物が次々と入ってきた。毎日補給船にぎっしり載せられてくる新鮮な果物だけをみても日本が必ずや世界を支配するように思われた」
(『神仏山』(2011年 グ・ヨンチョル)
もちろん、戦争の激化に伴って、このような牧歌的風景は消えていったことでしょうし、日本側の行き過ぎた強制、あるいは暴行がなかったとも思いません。
いや、あって当然です。
しかし、考えていただきたい。当時の日本人も米は食えず芋を主食にしていた時代なのです。
韓国人「徴用工」らが痩せ衰えたという主張は嘘だとは思いませんが、それとて日本国民と一緒なのです。
しかし、朝鮮人労働者を兵隊が駆り集め、奴隷の如く働かせたあげくは殺しまくり、死ぬとごみのように海に捨てた、軍艦島はアウシュビッツだったなどという韓国側の主張は虚偽と妄想に満ちています。
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