世界に手を伸ばす中国のビックデータ支配
ファーウェイをめぐる事態は急速に進んでいます。
日本政府が中華携帯排除に合流し、日本において格安携帯の分野を制覇していたファーウェイは市場から姿を消します。
「政府は情報漏洩や機能停止の懸念がある情報通信機器を調達しないよう重要インフラを担う民間企業・団体に要請する。
電力や水道、金融、情報通信、鉄道など14分野が対象。悪意のあるプログラムで社会機能が麻痺するなど安全保障上の懸念があるためだ。
米国が取引を禁じる中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)などが念頭にある。
政府は既に中央省庁の情報通信機器の調達に関して指針をまとめている。通信回線装置やサーバー、端末など9項目が対象。
価格をもとに選んでいた調達先に関し、安全保障上の危険性を一段と考慮し、2019年4月以降の調達に適用する。
これを踏まえ、19年1月から民間事業者にも調達しないよう求める。
ファーウェイのほか、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)の通信機器などが事実上、排除される見通しだ」(日経12月13日)
ファーウェイとZTEを使う携帯会社は5Gに参入ができませんから、深刻な打撃を受けることは避けられません。
となると注目はあの白い犬の会社ですが、その前に今問題となっている中国通信製品のセキュリティリスクについて説明しておきます。
これはいまさら問題視されるべきことではありませんでした。とっくにわかっていたのです。
既にファーウェイ、ZTEの問題に関しては、2010年頃から米国議会で幾度となく問題視されてきた経緯があります。
日本の通信・情報専門家の誰でも知っていたことで、日本メディアが一切報じなかったために、国民が知らなかったというだけのことです。
中国に腰が引けていたオバマ政権に代わったトランプが始めた「新冷戦」でいきなりクローズアップされましたが、この中国製品のバックドア問題は20年前からあったのです。
中国はウィグル弾圧の記事にも書きましたが、世界最先端の監視社会が完成しています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-7215-1.html
この監視技術は、中国国民の生活を行動だけではなく、経済活動に至る隅々まで監視し、ビックデータとして保管し、管理支配しようとするものです。
ビッグデータ - Wikipedia
これを国家ぐるみで邁進するのが、今の中国社会です。
電子決済 https://ipod.item-get.com/2017/08/qralipay2018.php
たとえば中国はスマホを使った電子決済システムが゙進んでいて、今や14億の国民の7割がアリババ系のアリペイやテンサント系ウィチャットペイを使っています。
これに登録するには、住所氏名、預金額、法律違反履歴、親類縁者、交友関係まで登録する必要があります。
中国政府はこのビックデータを電子決済会社と共有していますから、これを基にして国民の生活に点数をつけていきます。
いや「共有」というと聞こえがいいですが、自動的に政府が顧客情報を吸い上げるお約束なのです。
個人情報管理がことのほかうるさい日本では、考えられもしません。
住民基本台帳ていどのことで「総背番号制度だ。1984年が来るぅ」と叫んでいた人たちにお見せしたいものです。
今、つい さらっと書いてしまいましたが、「政府が国民に点をつける」ということは、法律とは別枠です。
そしてそれは個人の情報や活動だけではなく頭の中の検査にも及びます。
ファーウェイやZTEの携帯、あるいはレノボのパソコンからブログやツイッターを送信すれば、それはフィルタリングされて、政府や共産党が検閲します。
会社名からして「華為技術」、つまりは「中華の為に奉仕する技術」ですから、政府直結なのは当然といえば当然なのかもしれませんがね。
ですから政府批判など書けば大減点されて、電子決済社会の中国では、商店で買い物すらできなくなります。
つまりは犯罪を犯す犯さないといった法治の次元ではなく、共産党政府に従順か、非協力的かで賞罰をつけるというシステムです。
背筋が寒くなるほど見事なまでの監視・支配ツールです。 私が中国国民だったらとっくに隔離されて、臓器を抜かれているかもしれません。おお、こわ。
かつては密告による相互監視と政治警察で成立していた一党独裁社会が、先端技術を手にいれるとこういうことになります。
ま、管理支配に先端技術を用いているだけで、行く先が隔離収容所か刑場なのは一緒ですがね。
まさに先端技術が生み出した「1984年」もどきのディストピア、それが中国です。
これを14億国民に止まらず、ワールドワイドでビックデータを収集・管理しようとしているのが中国共産党です。
それに気がついたヨーロッパでは、中国に今後ビックデータを渡さないために、携帯によるバーコード決済をしない方向に進んでいます。
これを許すと中国製携帯からだだ漏れで個人情報が、中国に伝わることがわかったからです。
日本はここでも遅れをとっていて、ソフトバンクは中国系アリペイ互換のPAYPAYを導入していますが、これを使うと携帯の記録と合流しして、クレジットによる購買情報や活動記録などが流出して中国に管理されることになります。
外国の公安当局が、日本政府以上に日本国民の生活の隅々まで知っているというのは、なんとも不気味な話です。
さて、いち早く中国系電子決済を導入したのが、ソフトバンクだというのは象徴的です。
ソフトバンクは今、このファーウェイ事件をきっかけに大ピンチに陥っています。
下のグラフは国内のモバイルキャリアと携帯基地局などインフラベンダーの供給関係をみたものです。
5G商用化を前に本番を迎えるインフラベンダーの競争構図
赤く塗った部分がファーウェイ、ZTEの中華勢です。
図 前掲
一見しておわかりのように、NTTドコモやKDDIは富士通やNECといった国内メーカーとの連携を重視し、それにノキアやエリクソンといった北欧メーカーを取り入れています。
それに対して、ソフトバンクは一貫して国内メーカーには目もくれず、北欧勢と中華勢だけに頼ってきました。
この流れは5Gとなっても変化しないと見られていたところに、先だってのエリクソンが原因のソフトバンクの大事故、そしてほぼ同時に今回の中華勢に対して政府からの要請です。
「情報漏洩や機能停止の懸念がある情報通信機器を調達しないよう重要インフラを担う民間企業・団体に要請」が来た以上、ソフトバンクとて無視は不可能です。
もはや決定的でしょう。
情報漏洩の危機があるファーウェイ・ZTEといった中国製品や、機能停止の危機があるエリクソンだけでやってきたのがあなたの会社なんですからね。
インフラを5G対応どころか、遡って投資済みの4G対応までそっくり交換しなきゃならなくなったというわけです。悲惨。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/36876?page=2
そもそもどこの誰が、物好きにも機能停止して1日使えなくなる上に、生活の隅々までスパイされる可能性のあるソフトバンクの携帯を使いたがるでしょうか。
となると孫さん、顧客離れを防ぐためには顧客ごと他社に移行してもらうか、19年をサービスインとした5Gを諦めるか、極めて限定された地域だけに絞るかです。
4Gからも中国系を排除するという話ですが、そうなるとほとんど総入れ替えです。
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12198-145204/
いずれにしても、ソフトバンクの本業は、極めて厳しい状況となるでしょう。
これで孫さんのビジネスモデルだった、足元をチープな中国製品で固めて利潤を出してシェアを伸ばし、外部への積極投資で買収しまくる、という路線は破綻しました。
あとは、いまやこちらのほうが本業ですが、ソフトバンクはバンクはバンクでもM&Aのための投資銀行です。
みずほ銀行から1兆円超という巨額な融資をもらって、派手なM&A(合併・買収)を繰り広げるという路線をとってきました。
盟友のみずほ銀行と組んで、サウジの皇太子と10兆円ファンドを作る計画もありましたね。
「サウジアラビアなど中東の政府系ファンドとともに、10兆円規模の投資ファンドを作るという一大構想がそれ。ソフトバンク自身も2・6兆円ほどの巨額資金をぶち込みテクノロジー企業に投資すると宣言して、世界中の市場関係者の度肝を抜いたのである」(2016年12月7日 現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/466.html
強気ムンムンですが、すでに1兆円貸し付けた「盟友」みずほ内部ですら懸念が強まっていました。
「孫氏がビッグプロジェクトを威勢よく打ち上げる裏では、ソフトバンクの有利子負債(借金)が約13兆円と莫大な額に膨れ上がっているからである。
すでにソフトバンクは借金が売上高を上回っていて、その「借金経営」を支えるみずほからすれば肝が冷える事態になってきた」
「ソフトバンクは機関投資家から3000億円超の募集があると見込み、主幹事の野村證券も自信満々だったが、実際にふたを開けてみればたったの710億円しか集まらなかったのである。
生命保険会社や年金基金が、ソフトバンクの信用力に疑問符を持って、買いに動かなかった。こんな危なっかしい企業の債券には手を出せない、ということです」(現代ビジネス前掲)
ソフトバンクは、現在大型上場株として12月19日締め切りの株式公募をしている真っ最中です。
この社運を賭けた公募が通信障害を受けてまったく集まらない上に、今回の中国製品排除です。おそらく公募割れするのは必至と専門家はみています。
ソフトバンク上場の初値予想!公募割れのリスクも?
ソフトバンクにもしものことがあると、大手銀行のみずほも無傷では済みませんから、軽度の金融ショックが来る可能性もささやかれています。
政府はみずほには救済するかもしれませんが、ソフトバンクにはしないでしょう。
このように今回のファーウェイ事件は、大きな影響の波紋を拡げています。
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コメント
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もう戦争中ですから、それなりに考えないと理解できないと思います。あの不条理極まる毛沢東主義を世界に押し付けてきた国ですから、超監視社会という超独裁社会も蔓延するおそれもありあすよね。日本も戦争体勢にしないと、向こうは総力戦体勢ですから、経済的にどうのこうのといってる場合ではないですね。旧芙蓉グループは中国にのめりこんでいるようですが、大丈夫でしょうか、だいじゅうぶな訳ありませんよね。白い犬さんは、政治的にはうすぺっらのようですね。日本は中国の思想洗脳に相当やられて重症のようです…
投稿: オイラー | 2018年12月14日 (金) 08時20分
さすがのソフトバンクも基地局からファーウェイ製品を排除するみたいですね。
普段「監視だあ」と喚く活動家連中は絶対中国やロシアの監視には抗議しない。冷戦期の中ソの核は「きれいな核」と同じように中露の監視は「きれいな監視」。
活動家が中露にだんまりなのは左右のイデオロギーの問題もあるだろうが、抗議したら文字通り存在を消されるような相手には逆らわないという長いものには巻かれろの精神だから。
投稿: 中華三振 | 2018年12月14日 (金) 10時43分
確か最初に問題になったのはロシアに輸出された家電のスパイチップだったというのが皮肉ですね。メディアの扱いは小さかったけど・・・
紛い物に泣かれろ!(あれ?違ったか)な日本の反応悪すぎ!
投稿: 山形(改装工事中) | 2018年12月14日 (金) 11時28分
ファーウェイやZTEばかりクローズアップされていますが
中国にはシャオミ、OPPO、vivo、過去にやらかしたレノボといった大手がありますし、無線LANルーターでは近年TP-LINKというメーカーが結構売れて来ています。
これらのメーカーの製品は大丈夫なんでしょうかと素人ながらに不安に感じますね。
投稿: しゅりんちゅ | 2018年12月14日 (金) 13時38分
今回の件でどうやらアメリカ(少なくともトランプ政権は)中国と本気で戦う気があるとわかり安心しました。日本もこれからの対中政策を考えなければいけません。
投稿: 中島みゆき | 2018年12月14日 (金) 13時44分
中共国内ではGoogleもTwitterもFacebookもYouTubeもニコニコ動画もLINEもYahoo!Japanも使えません。
そこで、中共駐在・在住の外国人はVPNサービスを利用します。
中共駐在の方だけでなく、日本で日本人個人レベルでも、公衆無線LAN、free Wi-Fi利用時のリスク回避などの目的で、セキュリティ・ソフト会社や筑波大学などが提供する有料VPNサービスを利用している方も多いと思います。
無料のVPNアプリが林立しているので惹かれる人もあるでしょうが、何故それで運営が可能なのかを考えれば、無料や格安VPNに危険の匂いを嗅ぎ取れるはず。
当然中共当局はVPNサービスを摘発するわけですが、捕まらないところもあり、Apple Play Store やGoogle Play Storeにラインナップされているものもあります。
頂き物ですが、アメリカのMetric Labsというところのリサーチによると、米国英国向けApple Play StoreとGoogle Play Storeでそれぞれ検索上位20のモバイル用無料VPNを分析、その内10のアプリが両方のストアにあったので計30の上位アプリ、そのおよそ60%が中共国内運営または中共オーナーであったということで、「個人データに深刻な懸念が起きている」と警告するニュースも。
https://www.zdnet.com/article/many-free-mobile-vpn-apps-are-based-in-china-or-have-chinese-ownership/
中共への認識にちょっとトロいところのあったアメリカ人も気付いてきた今日この頃。
投稿: 宜野湾より | 2018年12月14日 (金) 22時15分