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2018年12月 4日 (火)

ロシア海軍によるウクライナ海軍艦艇のだ捕事件

019

ロシア海軍がウクライナ海軍艦艇3隻をだ捕しました。 

こういうことをする国がロシアなのであり、我々日本人もこういう国際情勢の下で対ロシア交渉が進んでいることを、あらためて心したほうがいいでしょう。

メディアのように、北方領土だけに視野狭窄するとわからなくなりますよ。 

日本のメディアの扱いは小さいものでしたが、欧米のメディアは大きく取り上げました。11月26日のBBCです。
https://www.bbc.com/japanese/46340472 

「ウクライナ海軍の小型砲艦「ベルジャンスク」と「ニコポリ」、曳航艇「ヤナ・カパ」は25日朝、黒海のオデッサ港からアゾフ海のマリウポリに向かおうとした。
ウクライナ海軍は、ロシア側が曳航艇に体当たりし、艦艇の進行を阻止しようとしたと説明している。ウクライナ側はケルチ海峡まで航行したが、すでにロシアのタンカーが海峡を封鎖していた」
 

ケルチ海峡は下図中央やや右側で、ロシアと海峡一つで隔てられた位置にあります。

5636797ケルチ海峡付近地図 スプートニク https://jp.sputniknews.com/opinion/201811285639470/

ここはアゾフ海から黒海に抜ける重要なルートです

ここをロシアが通さないと言い出すと、ウクライナはアゾフ海北岸にあるベルジャンスク港とマウリポリ港から穀物、鉄鋼、石炭の輸出入ができなくなります。 

ここで問題となるのは、両岸の領土の主張です。 

ケルチ海峡西側はウクライナは2014年3月にロシア軍によって不法に軍事占領された地域と主張していますし、それは国際的に認められています。 

東岸はロシア領ですから、この場合は国際海峡ということになります。 

しかし西岸のクリミア半島部分も含めてロシアは領土だと宣言しているわけですから、ロシアの主張が正しいならば、ケルチ海峡はロシアが国家主権に属する水域管轄権を持ちます。 

つまり全部オレ様のものだとロシアは主張しているために、一定の制限をかけられます。 

領海内であれば、他国の艦船による無許可の海洋調査、示威的活動、特別な理由のない滞留は禁止されます。 

外国軍艦は通ることは通れますが、無害通行権を課せられて、海峡中央部を静々と通航するしかありません。
無害通航 - Wikipedia  

砲塔をグルグル旋回させて挑発したり、艦載機を飛ばしたり、海域調査をすることは御法度です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/7-bf02.html 

実際には、ロシア政府とウクライナ政府は2003年に、ケルチ海峡とアゾフ海は「両国が共有する領海」という協定を結んでいます。

これはクリミア侵攻以前ですが、侵攻自体が不法であるうえに、その後、協定が廃棄されたことはないので、いまなお生きているはずです。

「ウクライナとロシアが2003年に結んだ協定は、両国の船団による自由航行を保証していた。しかしロシアは最近、ウクライナの港に出入りする船舶の臨検を始めた。EUは今月前半、問題に対処するため「的を絞った対策」を実施すると通告した」(BBC前掲) 

これはロシアも認めており、ロシア政府系スプートニク(11月28日)もこう述べています。

「二国間合意の第1条項にはアゾフ海およびケルチ海峡は歴史的にロシア連邦およびウクライナの内海であったことが指摘されており、第2条項にはロシア連邦またはウクライナの国旗を掲げる貿易船、軍艦また非商業的目的で用いられる国家の船は、アゾフ海およびケルチ海峡の自由な通航権を行使できると書かれている。
2007年、ロシアとウクライナはケルチ海峡の通航権についての合意を締結した。この文書によれば、ケルチ海峡を通航するいかなる船もケルチ海峡の通行の意図をあらかじめ通知せねばならないと明記されている」(スプートニク11月28日)

https://jp.sputniknews.com/opinion/201811285639470/

と、ここでは二国間協定で通航の自由は双方の国に認められており、通航の意志を通知することが義務づけられるとしています。 

そして、クリミア侵攻によって海峡両岸はロシア領だから無害通航権はないと言い出しています。

「2014年、クリミア半島はロシアの構成体に編入され、ロシアがケルチ海峡の両岸のコントロールを開始した。
ロシア外務省は、ケルチ海峡は過去も現在も国際的な水域であったことはなく、外国船舶に対するトランジットあるいは無害通航権の要求は行使されないとする声明を表していた」(スプートニク前掲)

国際社会は一致してこのウクライナ侵攻を認めていない以上、このロシアの言い分は通りません。 

もちろん、ウクライナは間違っても「両岸がロシアの構成体となった」などということは認めないでしょう。 

ただし、現実問題として無意味な衝突を避けるために、2007年の相互に通航を事前通知する協定を遵守してきたわけです。 

今回、ウクライナ海軍がロシア側にこの事前通知がなされたか否かですが、ウクライナはしたと言っています。

「ウクライナ海軍は通航についてはあらかじめロシア側に通知していたと語っている。
26日、ウクライナ海軍のイーゴリ・ヴォロンチェンコ司令官は、ウクライナの船舶はケルチ海峡を通過する際にロシア側に煽動は行わなかったと指摘した」(スプートニク前掲)

一方ロシア側の言い分です。 

「ロシア連邦保安庁国境警備課クリミア担当部署は、ウクライナの船舶は海峡通過の通知を行っておらず、通過予定の表にも含まれていなかったと主張している。
ロシア連邦保安庁はさらに、船舶は停止要請を無視し、危険なかじ取りを行ったために国境警備隊は発砲を迫られたと説明している」(スプートニク前掲)

スプートニクがこのだ捕事件の現場写真を2枚出しています。

5627676
5627650スプートニク11月26日https://jp.sputniknews.com/politics/201811265627707/

このだ捕した、ロシア海軍の艦長と副長の会話も傍受されています。 

「艦長 こいつの動きは、ロシアへの侮辱だ。あの船を締め付けてやれ。よし。右側にぶつけてやろう。心配することはない。ここで拿捕するぞ」
 ここで艦長は、左からウクライナ艦船を追うロシアの汽艇に告げる。
艦長 直進しろ。そうだ。
副艦長 停止
艦長 ウクライナ船の右側から乗り込むぞ。少しバックしろ。ウクライナ船員の身柄を拘束せよ」(中村逸郎筑波大学教授)

https://ironna.jp/article/11312

この艦長の発言を聞くと、たしかにウクライナ海軍艦艇がロシア側の停船命令に従わなかったのは事実だと思えますが、ウクライナ側からすればどうして停船せにゃならんのだ、これは海賊行為だということになります。

_104484525_ad27dbe7b6bf4c1491bc2300BBC前掲 

上のBBCの写真は、今回、ケルチ海峡を閉塞しているロシアタンカーです。 私はロシア海軍の発砲そのものもさることながら、この海峡閉塞に驚きました。

これは国際海峡の物理的封鎖ですから、国際海洋法上きわめて疑義がある上に、自分の国の民間船舶も困るでしょうに、信じられないことをやる国ですなぁ。 

ちなみに橋の上空にはスホーイ25と見られる攻撃機2機が飛行していて、ロシア軍が空海で厳重な監視体制を敷いているのがわかります。 

海峡の上に架かる橋は、クリミア半島部分が孤立しないように、2018年5月にロシアが自国領土東岸と結ぶ回廊として建設したもので、全長19キロもあるという長大なものです。 

この橋も、勝手に他国領土と結んでしまったわけで、よーやるよ、です。

いわば国家の威信をかけて作ったもので、ウクライナからすればオレの領土・領海の中で勝手なまねさらしやがって、ということです。 

このBBC記事でロシアが言っている「臨検の強化」とは、テロ対策で、最近になって強化され始めました。 

「ロシアによる臨検は、ウクライナ側が3月にクリミア半島で漁船を拿捕した後すぐに始まった。ロシア政府は、ケルチ海峡にかかる橋に対する、ウクライナ過激派による潜在的危機を指摘。安全保障上の理由で検査が必要だと述べている」(BBC前掲) 

Photoだ捕されたウクライナ海軍艦艇3隻  産経https://www.sankei.com/world/news/181127/wor181127

なおこのだ捕の際、ロシア海軍はウクライナ海軍艦艇を破壊しており、乗組員6名が負傷したと発表されています。 (ロシア側発表では3名)

これはロシア連邦保安局(FSB)も認めています。 

国際海峡において、無害通航をしている外国軍艦の船団に対して発砲することは、国際法上きわめて悪質な挑発で、戦争行為とみなされる場合があります。 

中村教授はこのように述べています。 

「今後は、欧米諸国によるロシアへの経済制裁がさらに強化される。ロシア経済は2014年以降の経済制裁で衰退しており、財政破綻寸前の状況だという説もある」(前掲)

トランプもこの事件で首脳会談を取り止め、P8哨戒機を当該水域に派遣しました。このようなことをすれば、親露的傾向があるトランフですら、距離を置くしかありません。

また、ヨーロッパ諸国はいっそう厳しい経済制裁の段階に入るでしょう。

つまり、ロシアにとっていいことはなにひとつないのです。

このような国際情勢の中で、このような体質を持った国と、今の日本は交渉を続けていることをお忘れなく。

■公平を期するために、ロシア側の言い分を大幅加筆しました。

 

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コメント

まあ、ロシアですからねえ。。
かつて北海道の漁船なんかオホーツク周辺で何度も銃撃・拿捕されていますし、ソマリアでは海賊相手に文字どおり「サーチ&デストロイ」をやってのけて捕まった海賊は海上に放置までやってのけた国です。やることがエグい!

まあ、戦前なら日本海軍が漁船団を護るために出動していたくらいですが、昨日起こった大和堆での韓国との漁船衝突でも、現在の日本は手が出せません。竹島や尖閣沖での勝手な海洋調査に対しても「抗議」がせいぜいで無策です。逆に尖閣周辺では日本の海洋調査船が中国に妨害される始末。。

おっと、国際海峡通過の話でしたね。脱線しました。
まさかタンカーで封鎖するとは・・・しかも14年のクリミヤ併合前とはいえ協定を結んでる相手にやるかねえ?明らかな国際法違反です。

今回使われたロシアの小型フリゲート艦は新型ですね。

ロシアのやり方に納得出来ない点有りますが以前のクリミア戦争で欧州方面で南下出来なかった(と思われる)ロシアはその後極東で南下目論み日露戦争など有ったので、向こうで揉め事起こすのはウクライナは大変ですが「まだまし」とも考えるべきでしょうか?

2018.12.4
相模吾です
 ロシアのウクライナ艦艇拿捕は由々しきことです。正確にはわかりませんが状況からウクライナの言い分が正しいように思えます。ウクライナ事件に対する国際反応を見ながら我が国の北方領土問題にもより強硬な発言を繰り出してくる可能性もあります。現在でも日ロ以外の国は北方領土問題などは知らんふりですが。管理人様は2島返還で実を取るべし、とのお考えですが私は国後島を含めた3島返還にすべきだと思います。 前提は平和条約の締結になるのでしょうが、その内容次第です。
国境線の画定、相互不可侵(あてになりませんが)を含めた軍事協定の取り扱いと米軍基地の問題、戦時賠償、シベリア抑留者および遺骨収集の資料、鮭ます漁業権、経済協力等々。
私は南樺太、千島列島、択捉島にあった日本の財産、国際法違反である57万人以上とされる抑留者への賠償とを担保に2島プラス国後島を考えます。抑留者を担保することの後ろめたさ、やるせなさはありますが、現時点でロシアはお金を絶対出せないでしょう。国後島まで渡すと国境線が実に複雑になり、そのことでまた問題を生みそうなことと、中国や韓国漁民の進出を規制しやすくするためです。3島返還論は麻生大臣が3島で北方領土面積の1/2にあたることで日ロ交渉において、ロシアが妥協しやすい(中ロ領土問題の解決になった)環境づくりのため提唱したと認識していますが、4島の旧住民のかたの戦後70年を考えると安倍内閣で決着をつけて欲しいと思います。

ロシアは基本的に二正面作戦はしないという特性がありますから西方で緊張が高まれば我が国の領土交渉がやりやすくなるかもしれませんね

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