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2019年2月

2019年2月28日 (木)

初め美しき夢の如し、やがて哀しき悪夢かな

012

この間、移転について、かつての当事者だった人の証言がいくつかでています。 

移転が橋本政権から打診された時の知事は大田昌秀氏でしたが、その後を受け継いで具体化に務めたのは稲嶺恵一氏でした。

氏の手記が公表されています。
(「稲嶺恵一独白「『反対』だけでは沖縄の声は届かない」2018年10月1日)

https://ironna.jp/article/10825

「私は1998年の沖縄県知事選で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の「条件付き県内移設」を掲げ、現職の大田昌秀知事を破り、99年に辺野古(名護市)への移設を正式に表明しました。私にとって苦渋の選択でしたが、もちろん県民の方々にとっても苦渋の選択でした。
 物事には理想論と現実論がありますが、あの時は、現実論を考えた場合、沖縄が苦渋の選択をしなければならないのではないか、と県民のマジョリティー(多数派)がそう考えたということです」

稲嶺氏は「苦渋の選択」と書いていますが、移転を打診された場に同席した江田憲司氏はこのように述べています。
(「独占手記」江田憲司が初めて明かす普天間合意「23年目の真実」)2019年2月19日)

https://ironna.jp/article/11987 

As20170612003917_comm橋本首相と大田知事https://www.asahi.com/articles/photo/AS20170612003

当時江田氏は橋本氏の秘書官をしていました。評判は、まぁご想像どおりあまりよくはありません。あの高慢ちきな官僚口調で将軍側用人を務めたようです。 

それはさておき、当時の雰囲気が分かって興味をひきます。

「私には、今でも忘れられない光景がある。時は1996年12月4日。場所は沖縄県宜野湾市のラグナガーデンホテル。当時の橋本龍太郎総理と沖縄の基地所在市町村長との会合でのことだ。
その場を支配していた雰囲気は、感涙にむせび、その涙をこらえる嗚咽(おえつ)ともつかない声で満ち満ちていた。そして、この会の最後に発せられた地元新聞社社長の言葉が象徴的だった。
「こういう雰囲気は、40年のマスコミ生活を通じて空前の出来事だ。これまで沖縄は、被支配者としての苦悩の歴史だった。橋本総理、本当にありがとう。どうか健康には留意してください、それがここにいる皆の願いです」
橋本総理の沖縄への篤(あつ)い思い、真摯(しんし)な向き合い方が、ヤマトンチュ(本土人)とウチナーンチュ(沖縄の人)の厚い壁を初めて打ち破った! と心の底から感じられる、そういう「歴史的瞬間」だった」(江田前掲)

この地元紙社長とは沖縄タイムスだろうと思いますが、今の沖タイの記者諸君に読ませて上げたいものです。 

今となっては「ウチナンチューの厚い壁を打ち破って真摯な心で向かい合った」と自己陶酔されても困りますね。 

この後、この陶酔は速やかに覚め、基地利権、土木利権、利権配分、政治的思惑がからみあったジャングルのような様相を呈します。 

それも実に23年間!オギャーと生まれた赤子が23歳のいい若者になっています。そしてまだこの先10年は移設問題に足をとられるでしょう。 

今や移設問題は本土と沖縄、日本と米国を分断させるベルリンの壁ならぬ「ヘノコの壁」と化しています。 

橋本氏が「打ち破った」のは、ただのパンドラの蓋の封印だっただけのことです。

江田氏は陶酔気味に、当時の地元自治体の「熱い感謝の言葉」を紹介しています。 

「那覇市長「総理は沖縄の心を十二分に理解してくれている。その情熱が心強い」
名護市長「沖縄に『お互いに会えば兄弟』という言葉があるが実感した。沖縄の痛みがわかる総理に初めて会った。あとは感謝で言葉にならない」
 宜野湾市長「一国の総理が心を砕き、我々の国政への信頼が倍加した。普天間基地の跡地開発をしっかりやりたい」
金武町長「希望が見えた。町民全体が燃えている」
読谷村長「日本の生きた政治を見る思い。村長をして22年になるが、総理が初めてボールを沖縄に投げた。もうやるしかない」(江田前掲)

今は「新基地を押しつけられた」として、本土政府の暴虐の象徴のように扱われている移設施設が、当時は「感謝で言葉にならない」とまで絶賛されていたのがわかります。 

この大田-橋本両氏の結びつきは強く、橋本氏は財界中枢の諸井氏を大田知事に「特使」として送り、さらにはモンデール駐日大使を動かし、クリントンにまで話をつけたという秘話を稲嶺氏は述べています。 

江田手記に至っては、当時の上司であった橋本氏を褒めちぎり、返す刀で安倍氏を「このような橋本氏の情熱がない」と斬って捨てています。 

あのね、江田さん。状況がまったく違うのですよ。具体的中身が見えない分だけに、美辞麗句の総論にすぎないからです。  

口開けはそりゃあ気持がいいでしょう。橋本氏が沖縄を愛し、負担を減らそうと善意で試みたこと自体は真実だったからです。

しかしその「善意」も23年もたてば、当事者の多くが鬼籍に入り、一体なにが始まりの動機だったか忘れられてしまいます。

さて総論から各論にはいるやいなや、利害対立が露呈します。それはどこにでもある話で、美しい理想から現実の泥の中に手を突っ込んだからです。

その交渉がいかに悪路の連続であったのかは、防衛事務次官だった守屋武昌の『普天間交渉秘録』をお読みいただければお分かりになるはずです。

08f0d2d1c5d501152101d8d4caae80a5稲嶺恵一元知事
https://ironna.jp/article/10825

次の県知事となった稲嶺氏はこう書いています。

「辺野古は、軍民共用で、将来は返還してもらい、基地を財産として使うこととし、固定化を避けるために「15年」という使用期限をつけました。あの時はまだ「最低でも県外」という鳩山由紀夫氏の発言がありませんでしたから、反対が60%程度だったわけです。十数パーセントが、こっちに賛成してくれれば進めることができる状況でした」(稲嶺前掲)

「反対が6割」、これが現実の壁でした。あれだけ感謝の涙を流した首長たちは、それぞれの御家の事情で反対に回っていました。 

自分のところに来ない限りは総論賛成、来たら突っぱねて突っぱねまくって、更に逃げ場がなくなれば、ゴネてゴネて自分たちの要求を通す、これが移設候補地探しの実態でした。 

今の辺野古埋立案も、メガフロート案は地元業者が「自分らはペンキ塗りくらいしか仕事がない」とゴネてボツ。 

もっとも現実的だったシュワブ陸上案すら、土砂を入れて埋め立ててなんぼだと反対されてあえなくボツ。 

つくづくこの陸上案に決着すればよかったと思います。ジュワブ敷地内の整備で済みましたからね。 

今、埋立用地が軟弱地盤だと鬼の首をとったように反対派が騒いでいる水深90m問題も、とっくに分かっていたことです。 

それを工事する特殊な船がないと言われていますが、そんなことは外国から借りてきてもやるでしょう。 

もちろん、その工法変更についてデニー知事がゴネるのは必至ですが、そんなことは日常茶飯事で、政府は慣れっこにすらなっています。 

結局、海上フロート案もダメ、陸上案もダメで、やむなく漁協をと困難な交渉の結果、着陸したというわけです。

まさに20いくつかの候補の消去法による決定にすぎませんでした。

埋立案に決まってからも、最小の埋立で済ませようとする政府案に対して、更に沖合まで埋立るように言い出したのは名護市です。

埋立を要求した当の地元の名護市と土木業者がゴネまくったからです。 

もっと埋立面積を増やせというのですから、これも絶対反対を唱えた稲嶺前名護市長にお聞かせしたいものです。

これは埋立事業ほどぼろい儲けがないのは事実だからで、本島沿岸のそこかしこは虫食いのように埋め立て地だらけです。

名護市の要求どおり市街地をはずして飛行ルートを定めたために、飛行場のキモである滑走路がわずか1300mという短さという結果になりました。 

そのうえ共産党を中心とした基地反対派の反基地運動が、これにからめばもうワヤです。 

何度となく書いてきていますが、辺野古埋立案は下策でした。環境的にも軍事的にも最善とはほど遠い案にちがいありません。 

それは本来対立する関係者の利害を無理やりにまとめた必然的結果でした。

その始まりは冒頭の江田手記にあるような、「(沖縄関係者が)感涙にむせび、その涙をこらえる嗚咽」の中から生まれたのです。

そしてすったもんだのあげく、鳩山氏がすべてを破壊します。

都合よく誤解されているようですが、安倍政権は鳩山政権の閣議決定を踏襲しているにすぎません。

稲嶺氏はこう書いています。

「ところが、私の次に知事に就任した仲井真弘多さんの時代に、当時首相だった鳩山さんの「最低でも県外」発言があり、県民の意識を変えてしまった。政府がその気になればできるのではないか、沖縄が苦渋な選択をしなくて済むと。あの時、マスコミにあの鳩山さんの発言をどう思うかと聞かれて、私は「覆水盆に返らずです」と答えましたね」(稲嶺前掲)

稲嶺氏が言うように、あの鳩山氏の「最低でも県外」発言は、長年作ってきたガラス細工のようなグゾーパズルを粉々にしてしまいました。

残ったのは、「政府が出来るといったんだから県外は可能だ」という「夢」です。ただし、それは現実性に欠けた白昼夢にすぎませんでしたが。

言った当の鳩山氏自身が裏切るのですから、いかにいい加減な「熱い思い」だったかわかります。

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枝野官房長官「少なくとも、現時点でアメリカ政府と日本政府それぞれの執行機関同士は、去年5月に日米合意がある。我が国政府としては、沖縄の負担を速やかに軽減するとの考えの下で合意を着実に実施する方針に変わりありません。(略)
普天間基地の辺野古への移設をめぐっては、沖縄県の理解が得られていない。また、普天間基地の代替施設の設置や工法などを決めるため、先月に予定されていた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会も延期されるなど、実現の見通しは全く立っておらず、普天間基地の固定化が懸念されている。」(2011年5月11日日テレ)
http://www.news24.jp/articles/2011/05/12/04182610.html 

すっかりハト氏は忘れているようですが、辺野古移設を閣議決定したのは他ならぬ鳩山政権であって、以後の政権はそれを継承しているにすぎません。

それを今になって枝野氏のように、「元々反対していたんだ、党名が変わったから許される」、などと言うのは、国民をバカにするのもいいかげんにしてくれと言いたくはなります。

稲嶺氏は諸井氏との記憶に寄せて、こう締めくくっています。

「諸井さんは私にこう言ったことがあります。「稲嶺さん、国民の60~70%のコンセンサスが得られないものについては、いかに沖縄がどんな大きな声で、沖縄だけで言っても、通りませんよ」と。
会うたびに何度も言っていた。多く人は、ただ反対するだけだったり、逆に甘い言葉はよく出ます。でも、沖縄のために、きれい事ではなく、本当の話をしてくれる人は少ない。
(略)
)国民のコンセンサスを得るためには、沖縄が一つにならならなければ実現できないでしょう。
今、大切なのは、沖縄を一本化して、国民のコンセンサスを得られるように努力することです」(稲嶺前掲)

2019年2月27日 (水)

宜野湾くれない丸氏寄稿 主体思想と沖縄その2

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宜野湾くれない丸さんの寄稿2回目です。 

                                             ~~~~~~ 

                                  ■主体思想と沖縄その2
                                                                                   宜野湾くれない丸
 

思い起こせば「ヨドゴウ ジケン」が「よど号事件」、「セキグンハ」が「赤軍派」とおぼろげにも理解出来たのはそれから2年後、沖縄が祖国復帰を果たした昭和47年(1972)の頃だった。

それは叔父叔母の中で年が一番若かった叔母が、突然行方不明になったことが切っ掛けだった。

叔母はビートルズやPPM(ピーター・ポール&マリー)、サイモン&ガーファンクルが大好きで、いつも鼻歌でそれらのグループの曲を口ずさんでいた、そんなハイカラで明るい人だった。

叔母というより私にすれば「年の離れたお姉さん」的な存在であった。

そんな叔母が突然私たちの前から姿を消したのだ。どれくらいの時間が過ぎたか記憶にないが、安否が分かったのはNHKテレビの沖縄復帰ドキュメント番組に、何と!叔母自身がインタビューされていたのを親戚のひとりがたまたま見ていたことからだった。

結局のところ叔母は家出をして、復帰直後の沖縄へ渡り、かの地で米兵と知り合い恋に落ち、そのまま帰国する米兵と共にアメリカ本土へ行ってしまったのである。

親戚間では「家出」という見方が主だったと思うが、「セキグンハに捕まったんじゃないのか?」とか「セキグンハに誘拐されたんじゃないのか?」などの話も出ていたくらいだった。

パスポート紛失の「セキグンハ」と叔母行方不明の「セキグンハ」が同じ「セキグンハ」だと私が理解できたのは、72年当時「あさま山荘事件」や、それをきっかけに発覚した「山岳ベース事件」「テルアビブ空港乱射事件」などで巷に「セキグンハ」「ニホンセキグン」などの言葉が飛び交っていたからである。

しかも大人たちは、「テルアブブの犯人のひとりは鹿児島大学の学生らしい」とか、「シゲノブフサコ」(重信性は奄美群島にもいる)とか口々にしているので、幼少の私は「セキグンハ」「ニホンセキグン」「シゲノブ」とう言葉を「身近に感じていた」のである。

「パスポート紛失」の件もあるし、叔母は本当に「セキグンハに捕まった」のかもしれない!!と、半ば本気で思っていたのである。

「セキグンハ」が「赤軍派」とハッキリ認識出来たのはそんな流れからであった。沖縄の祖国復帰前後、お隣の奄美の島々には色んな意味で「そわそわ」とした「空気」が漂っていた。

そんなこんなで小学校低学年の私の中に「赤軍派」は鮮明に印象づけられた。

「三島由紀夫事件」「瀬戸内シ―ジャック事件」やその後発生した「三菱重工爆破事件」をはじめとする「連続企業爆破事件」などの事件や事故を報道するテレビニュースを食い入るように見ていたそんな私は、周辺からすると「少し変わった少年」だったかもしれない。

1975年(昭50)に発生した「クアラルンプール事件」を報じるニュースを見ながら「日本人ってやっぱりちっちゃいな~!」なんて思ったり、77年(昭52)の「ダッカ空港事件」は、その頃はもう思春期に差し掛かっていたので、時代背景や日本政府の対応や処置、釈放された政治犯などなどの事を自分なりにニュースを通して考えたりもしたものだ。

ダッカ空港管制塔との無線でのやり取りで犯人が喋る英語の発音を聞いて「赤軍派の英語って下手くそだな~」なんて軽口をたたいていたりしていた。

まぁ、その程度ではあるが・・・。ずっと後の事だが「横田めぐみさん拉致事件」が公になった時、その発生日時「1977年11月15日」を知った私は、同年9月28日に発生した「ダッカ事件の赤軍派」と何らかの繋がりがあるのかもしれない・・・?と、実に安直で薄っぺらい発想を抱いたりしていた。

とは言ってもその「薄っぺらい思い」は直ぐに忘れてしまっていたが、そのずっとずっと後「よど号の妻たち」の一件が世間を賑わせていた頃から再びフツフツと「薄っぺらい思い」が蘇り、気になり始めていた。冒頭に挙げた「宿命」を読んだのは2000年を過ぎてからであるが、北に渡った「よど号犯」たちが、ヨーロッパで「日本人留学生」の「騙し誘拐」に手を染めていたことを知った。

つづけて「よど号の妻」のひとりであった「八尾恵」が、2002年に「謝罪します」(文藝春秋)を発表して「よど号グル―プ」の「日本人留学生騙し誘拐」への関与は決定的になった。

このような叔母の行方不明を契機に「赤軍派」「日本赤軍」の動向が気になり始めていたのである。

また、国内で北朝鮮の「拉致問題」が国民的関心が増してからは「赤軍派」「よど号グループ」「北朝鮮」「拉致」「誘拐」はそれぞれ糸で繋がっている、ということをハッキリとした。「宿命」によると北朝鮮の思想体系をなす「主体思想」とは、「肉体的生命」より「政治的生命」を絶対的に重視する「思想」であると述べている。

これには「戦慄」するばかりである。

目の前の「事実」には完璧なまでに「目を閉じる」そのことは決して「主体」ではないはずだ。

自身の全身で感じ、認識し、そして再確認したことが「主体的な事実」であるはずだ、と私はそう思っている。

その「主体的な事実」を各々がぶつけ合い、話し合うことで更なる「真実」に迫っていくものであろう。

「民主主義」というものは「そのぶつけ合う過程」に重きをおくことだと思う。同じく「宿命」によれば、「なぜかこの国ではヒットラーも悪人ではない」らしい(「宿命」612頁)。

長くなったが、沖縄での「問題」は、そのような主体思想の研究会の日本本部が「沖縄にある」ことである。しかも研究会へ参加する人たちが年々増えているということらしい。

「よど号グループ」のリーダー田宮高麿が自身の言葉で述べているが、1980年代世界に広がった「反核運動」は、その裏側では「よど号グループ」がコントロールしてた、と「宿命」の中で詳しく触れられている(「ウィーン工作」403~420頁)。

「世の中の動きに乗じて主体思想を世界へ広める」ことを水面下で工作していたのだ。翻って辺野古・高江での反対派の活動状況や冒頭に挙げた「韓国の女性団体の普天間第二小学校への突然の訪問と政治的発言」などなどの具体的な例を考えると、沖縄での反米軍基地運動に乗じて、何らかの工作活動が進行しつつあるのではなかろうか?という疑問や疑惑を感じるのは私だけではないはずだ。

日本共産党を除名された篠原常一郎氏が、我那覇真子氏がキャスターを務めるネット番組に最近出演されて「主体思想と沖縄の関わり」を分かりやすく解説している。是非ご覧戴きたい。番組では「宿命」も紹介されている。
https://www.youtube.com/watch?v=9Ldoz5EvGt0&feature=youtu.be&fbclid=IwAR3ZhvxenInkOEZT-76BaPATm9Z3c9G4R1e9rkQdv5jQ4v6C2hTFAZEH4A8

「いつのまにか、沖縄人は大江健三郎と筑紫哲也が言う被害者沖縄のイメージ通りに振る舞うクセが付いてしまった」(「沖縄の不都合な真実」大久保潤、篠原章新潮新書 2015年 142頁)とは、高良倉吉氏の言葉だ。

「ヤポネシア論」の島尾敏雄の長男である島尾伸三氏は「劇的なことの好きな母は、泣いたり笑ったりの表情が手におえぬほど大きく(略)」と記した(「星の棲む島」島尾伸三
岩波書店 1998年 94頁)。

テレビやラジオのCMでこれでもか、これでもか、と流れていた今回の「県民投票」のCMは、大ヒット曲「ジュピター」のメロディーにウチナー口の歌詞を「乗っけただけ」のもので、広く県民の「感情」に「訴え」「効果を狙う」演出であった。CMを見るたびに、聴くたびに「どこかの、誰かが思い描いたストーリー、その通りに踊るウチナンチュを想像した」のは、たぶん私だけではなかっただろう。

「県民投票」の日に・・・。

                                                                                                        了

 

 

2019年2月26日 (火)

宜野湾くれない丸氏寄稿 主体思想と沖縄その1

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宜野湾くれない丸氏からのエッセイを頂戴しました。ありがとうございます。

いつ読んでも氏の文章は独特の趣があります。私にはまねできません。

                                           ~~~~~~~~

                                   ■主体思想と沖縄
                                                                          宜野湾くれない丸
 

もう随分前になるが「宿命~『よど号』亡命者たちの秘密工作~」(高沢皓司新潮文庫)を発売当初に読んだことがある。

初めて読んだとき、その感想は「驚愕」そのものであった。

それ以来、時々思い出したように何度か読み返していた。そして、ここ最近再びページをめくってみた。

それは近年辺野古や高江での反対運動に極左活動家が参加しているとか、韓国から参加者が来ているとか、ハングルで書かれたプラカードや看板が目につき始めたとか、文在寅政権の登場後に出てきた南北朝鮮の動向(南北首脳会談、平昌五輪への北の参加、米朝首脳会談、いわゆる「徴用工問題」、レーザー照射問題、文喜相議長発言問題)が激しくなってきたからである。

簡略して言えば「何だか反対派活動家の匂いが、色合いが変わってきたぞ?」ということだ。

そして今回の有意義とは思えない「県民投票」である。決定的なのは、先月「韓国の女性団体が小学校視察時の政治的アピールも、普天間第二小」というニュースが出たことだ。

正直あれには驚いた。部外者は簡単に学校には入れないはずなのに、アポイントもなく突然来訪した「外国人団体」を学校長は許可し、招き入れ、そして「政治的なアピールまでさせてしまった」とは・・・・!?

「認識不足だった」だけでは「すまされない」ことではなかろうか?「小学生たち」を「小学校」を政治的なイデオロギーに「利用したことになるのではないのか?」と、私はそう感じたのである。

「宿命」のページをめくったのはそんな事が重なっていったからである。
http://www.yaeyama-nippo.co.jp/archives/5184?fbclid=IwAR1R5jiNRvxkjDeiFHjU1mSVTdkHWNhs-z5Ge5WYTWZ_ESFrqn-qEyUWUtU

昭和40年代半ば、奄美群島のある島に住む私の親戚らは台湾旅行を計画したことがあった。

当時の台湾旅行はそれはもう大騒ぎするくらい大変なイベントだったので、親戚中浮かれていたことを記憶している。

小さな島の田舎者はパスポートなどは持ったこともないので、旅行代理店を介して全員分のパスポートを申請したが、待てど暮らせどパスポートは届かなかった。

結局、代理店の担当者から「パスポートが紛失した」と親戚らには告げてきたらしい。出発に間に合わなかったので、期待していた台湾旅行は当然のことオジャンである。

当時私は小学校低学年であったためにその詳細は知るべくもないが、今でも憶えているのは「セキグンハに盗まれたんじゃないの!?」という親戚のひとりの言葉だった。

「セキグンハ」とう単語は「ヨドゴウジケン」の際にも度々耳にしてはいたが、「大変な事件を起こした大人達」という以外そんなに気にも留めていなかったし、そもそも当時私は小学校低学年だったのだ。

「ヨドゴウジケン」を覚えているのは、同じ年に「大阪万博」があったからである。

同級生のお金持ち一家が「万博に行く」と言っていたので、南の小さな島から大阪万博を見に行く事自体が私たちの間では「大事件」なのである。

そんな「大事件」があったからこそ、「ヨドゴウジケン」という事件も同時並行で記憶に残っていたのである。

                                                                                                   (続く)

2019年2月25日 (月)

県民投票が終わりました

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予想どおりの結果でした。  

欣喜雀躍のご様子の沖タイの記事です。

「沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に必要な埋め立ての賛否を問う県民投票が24日、投開票された。3択のうち、埋め立てに「反対」は43万4273票に上り、投票総数の71・7%を占めた。
県民投票条例で定める知事の結果尊重義務が生じる投票資格者総数の4分の1を超え、昨年9月の知事選で新基地建設反対を訴えて当選した玉城デニー知事が獲得した過去最多得票の39万6632票も上回った。「賛成」11万4933票で、反対が賛成の3・8倍に達した。「どちらでもない」は5万2682票。投票資格者総数は115万3591人で、投票総数は60万5385人。注目された投票率は52・48%だった」(2月25日沖縄タイムス)

注目されたのは投票率と「反対」の得票数です。後述するように、県民投票は反対の人が多く行く性格でしたから、得票総数の7割というのは無意味です。

篠原孝氏はこの投票率と得票数についてこう指摘しています。

「1996年9月8日、大田昌秀知事の下で行われた「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票」での投票率は59・53%で、うち89・09%の48万2538人が「基地の整理縮小に賛成」に投じた。これは当時の有権者総数の54・32%に相当する。有権者の過半数が基地の整理縮小に賛成したことになる。
 この時、「59・53%」という投票率をめぐってちょっとした議論が起こっている。沖縄県民の総意は基地の整理縮小にあるとするためには、当時の知事選や国政選挙で一般的だった70%程度の投票率が必要だといわれたのである。
 大田知事サイドでもこの数字を「敗北」と捉える人もいたが、有権者の過半数が整理縮小を訴えたことは大きな事実として残った。
この前例を参考にすると、今回の県民投票でも有権者の50%(約58万票)が「埋め立て反対」の意思を表明するか否かが一つの分水嶺になる」(2月23日『沖縄県民投票、辺野古埋め立て反対は「有効な武器」になり得ない』)

https://ironna.jp/article/11981?p=3

●米軍基地県民投票結果比較
・1996年9月8日 大田昌秀知事 「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票結果
・・・投票率59.3% 基地縮小に賛成89.09%
・2019年2月24日 玉城デニー知事 「辺野古米軍基地建設のための埋め立てについて」の県民投票結果
・・・投票率52・48% 反対71・7%

なんだ23年かけて、大田知事時代より後退しているじゃないですか(苦笑)。

メディアは盛んにデニー知事の得票数を超えるか超えないかということに焦点をあてていましたが、何をおっしゃる兎さん。

公職選挙法に従った法的拘束力を有する県知事選(といっても違法行為が横行しましたが)と、そもそも今回のようなやりたい放題の法的拘束力を持たないアンケート選挙とを同一視する方がおかしいのです。

そんなものは、デニー陣営が勝手に設定した虚像にすぎません。

結局、得票率は52%、反対43万ですから、大田知事の基地反対の実績である59%、48万にはおよばず、目指した半数ギリギリで通過したようなものだったといえます。

今後、まちがいなくデニー陣営と野党・メディアは、「県民の7割が反対している」という修飾語をつけてこの結果を喧伝すると思われます。

数字のトリックです。5割の投票率のうちの7割ですから、実体は約35%程度にすぎません。

しかもその「反対」は県内の別の地域・水域案も含めた数字ですから、オール沖縄のように「あらゆる県内移設反対」となると、さらにそれから数を割り引いて考えねばなりません。

そう見ると3割前後がデニー派の真水ですから、まぁ、こんなもんでしょうというていどの妥当な数字で、特に驚くに値する数字ではありません。

しかしプロパガンダでは、「全国の基地の74%」の新種として大いに使い回される数字となりそうですから心して下さい。

こんな「反対派による、反対派のための、反対派による投票」(藤原かずえ)に対して、せめてもの抵抗として「投票に行かない」ことを選択した人が多かったと思います。  

私がわざわざ前日に、「賛成の方は行ってくれるように」とお願したほどのシラけようでした。  

そりゃシラけます。こんなデキレースの結果は分かりきっていますから。 

公職選挙法の縛りがなく、ルールなしの「選挙戦」に、税金を1億3千万円かけてありとあらゆる媒体を使って島内真空状態を作り出せばこうなります。  

Plt1902190025p1

https://www.sankei.com/politics/news/190219/plt190...
しかも県民投票最大のトリックは、事実上の2択であったことです。 

この選択肢だと、私のような陸上部移設案を支持する者すら「反対」に投票するしかなくなります。 

またなによりも普天間飛行場をどうするのかという問題の本質を隠蔽することになります。 

言い換えれば、普天間移設と辺野古移設を分断し、前者を覆い隠すことが県民投票の真の狙いだったのです。 

この2択方式は、基地移設を願う宜野湾市などの地元自治体から強い反発を受けました。 

地元5市が不参加であり、有権者の3割以上が参加せず、かつ、その3割の県民は基地を受けいれるリアリティがある地元であるという事実を、満天下に示すことができました。 

まさにこれこそ、移設反対一色ではないという沖縄の現実そのものを雄弁に語っているのではないでしょうか。

基地反対派に抵抗する最良の手段は、この沖縄の現実をさらけださすことでした。

沖縄は一枚岩ではない、沖縄には多様な意見があるのだ、多くの県民は米軍基地を全否定しているわけではないということを、本土の国民に強く伝えることでした。 

そのために5市の拒否は実に有効なメッセージでした。

ところが自民党県連は、謝花副知事や県議会議長の「どちらでもない」を追加する妥協案をするすると呑んでしまいます。  

「どちらでもない」とはなんなのでしょうか。意志を問われて「どちらでもない」というのは、どちらかというと反対なのか、どちらかと言うと賛成なのか、ヌエ的な選択肢です。  

これでは「県民投票はどんな意見でも受け止められますよ、多様性は確保してありますから」、という欺瞞のオブラートを一枚余計に作ることでしかありません。  

むしろこれなら、露骨に移設先の是非を問う反対派の露骨な誘導設問のままのほうが、その「暴力性」においてまだましだったほどです。この県民投票の欺瞞性が露骨に現れますからね。 

それをなにをうろたえたのか、5市を守るべき責務があるはずの自民党県連は3択の妥協案にころび、それは見事にデニー県政の窮状を救う結果になりました。

なんと醜悪な予定調和劇だったことよ! 

デニー県政は自民県連と妥協することで5市の参加をとりつけられ、自民はともかく抵抗したというアリバイを残せたわけですから。

果たすべき責務を放擲し、デニー県政を幇助したような自民党県連は万死に値します。 これほどダメな県連は全国でも稀でしょう。

しかも自民党県連は県条例の審議において4択を主張しておきながら、新条例の制定を求めるという恥の上塗りまでしています。  

もはやこのような保守政党であることを自ら捨てたような自民県連は、解体的出直しをする以外に救いはありません。

このまま唄を忘れたカナリア状態がを続ければ、自民県連は今年の参院選でも惨敗するのは必至です。

佐喜真氏や安里氏と今回造反した議員たちで、新しい県連を一から作り直して下さい。

20190106130253http://ospreyfuanclub.hatenablog.com/entry/2019/01...

一方、県民投票を拒否し、リコール運動までちらつかされた宮古島市の下地俊彦市長はこのように述べています。

「米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の賛否を問う県民投票が2月24日に実施されます。当初、私は宮古島市長として「県民投票を実施しない」と表明しました。
なぜなら宮古島市では関連予算案が市議会で2度にわたり否決されており、その議会議決を重視したからです。
 県民投票の不参加について、報道などでは否定的な論調にありましたが、行政の長としては議会における議員の意見がまさに民意であり、地域の代表者としての議員の意思は到底無視することはできません。そのような中で、リコール運動を示唆し、県内の市町村長に県民投票の実施を迫った市民団体などの手法は、尋常ではないと感じていました。
 県民投票は昨年10月の県議会で、普天間基地の移設の背景や経緯などに深慮なく、賛否のみを問う二者択一方式での実施が決まりました。
「普天間基地の危険除去のための辺野古移転についてはやむを得ない」とする一定数の県民が選択する可能性のある項目の検討が求められながら、かたくなに追加を認めないまま県民投票を推進する県与党の姿勢について再考を求める意見があったのも事実です」
(2月23日『宮古島市長手記「県民投票に参加しない」私の真意を改めて語ろう』)

https://ironna.jp/article/11989?p=1

結局、この5市も「多様な県民の意思を確認することが可能になった」(下地前掲)として実施の方向に妥協していきます。  

元の宜野湾市は普天間の撤去を願い、受け手側である名護市は、去年の市長選で容認派が勝利しています。  

基地を出す側と引き受ける側の気持は一緒であって、それを当事者ではない他地域がするなというという、まことに奇妙なねじれの構図となりました。

As20190223002079_commlhttps://www.asahi.com/articles/ASM2R52Z1M2RTPOB003...

デニー知事は政府と米国大統領にこの結果を伝えるそうですが、無意味なことです。

答えは分かりきっています。

大統領は内政には干渉しないと言うでしょうし、首相はこの結果は既に折り込み済みのはずです。

もしここで政府が折れれば、今後緊迫の度合いを増す一方のアジア情勢の中で、今後の安全保障関連の施設、新型機配備は限りなく困難になります。

特に、宮古への陸自配備に強い影響が出るでしょう。

もしこれが阻害されたり、配備が泥沼化するようなことがあれば、離島防衛は絵に描いた餅になるからです。

本来、このような基地移設は、軍事的あるいは建設技術的リサーチの結果を尊重するしかないものでした。

それを逸脱して、基地賛成か反対かというイデオロギー対立に巻き込まれたことにより、船、山に登ってしまったことになります。 

改めて県民にお聞きしたいのですが、確かに辺野古の選択は最善ではありませんでしたが、当時はこれ以外なかった選択でした。

一部の沖縄の有識者は長崎への移転があり得ると言っていますが、多くの専門家はそれを否定しています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-25e0.html

米軍がこれを了承する可能性はゼロです。

したがって辺野古を拒否すれば普天間基地に、そのまま宜野湾に居てくれということにつながりますが、ほんとうにそれでよいのでしょうか。

とまれ、ほんとうに問われねばならなかった普天間基地の存続と日米安保の是非を問わないまま、この小芝居は終了したようです。

 

 

 

2019年2月24日 (日)

日曜写真館 水鳥の声だけの朝

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2019年2月23日 (土)

真に県民に問われていることは、「普天間飛行場を移設することに賛成か、反対か」です

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県民投票が明日に迫っています。既に投票された方もおられるでしょうが、投票に行くことを強くお勧めします。 

県民投票の性格が移設反対派の政治的パーフォーマンスであるために、投票を拒否する方もいるでしょうが、ちょっと待って下さい。 

棄権という行為は、デニー県政によって「反対」と見なされるからです。

デニー県政は「棄権」や「どちらでもない」といったあいまいな答え方をすれば、必ず都合よく 解釈します。 

棄権は「どちらでもない」と同等に使われます。

たとえば「賛成とどちらでもないを合わせれば〇〇%だ。これでデニー県政の移転反対路線は信任された」という具合にです。 

もしあなたがデニー知事の移設反対路線がおかしいと思われたのなら、ためらわず「賛成」に入れて下さい。 

移設先が辺野古であることは、とりあえず関係ありません。 

今、あなたに問われているのは「移設に賛成か反対か」であって、その方法論や移転先ではないからです。 

そもそも、県民投票自体がデニー県政が仕掛けた巧妙な「罠」です。 

本来、県民の「民意」を問うと言うのならば、「普天間飛行場の移設に賛成ですか、反対ですか」を問うのが順番です。

移設問題の発端は、住宅地の真ん中にある普天間飛行場を移転するということから始まっています。

ならば、これを移転することが最優先課題であって、県民の安全な生活を保証するのが県の責務のはずです。それに反対するのは筋が通りません。

これではまるで、普天間飛行場にそのまま居てくれというのと同じです。

だから地元の宜野湾市は県民投票に非協力的だったのです。

この普天間飛行場の危険性を問わずに、どうして移設先の賛成、反対を問うのでしょう?

移設に反対してしまったら、普天間飛行場が半永久的に今のまま固定化されるのはあたりまえではありませんか。

これをデニー県政の詐術といわずして、いったいなにを詐術と呼ぶのか。

繰り返します。

今問われているのは移設先ではありません。そのようにデニー県政は設問をすり替えていますが、あなたの心の中て読み替えて下さい。

真に県民に問われていることは、「普天間飛行場を移設することに賛成か、反対か」です。

答えはひとつしかないはずです。

2019年2月22日 (金)

ブレグジットの後に来るものとは

025

まずはひとことこのブログのタイトルとなっている「農と島のありんくりん」についてご説明しておきます。 

このブログは来訪されている方はご承知のように、いわゆる農業ブログではありません。 

かつては濃厚にそうでした。 

始めたのは

先日のホンダの「イギリスが出ていく」ではなく「イギリスから出て行く」という別の意味でのブレグジットは、ヨーロッパ全体に衝撃を走らせたようです。

ホンダ英国工場閉鎖発表翌日のBBCニュースは、これをトップに置きました。 

もちろん、BBCはこれが単純にブレグジットのためだとは書いていません。

「企業が大きな決断を下すとき、その理由がひとつしかないということは、滅多にない。
ホンダが2022年に英イングランド・ウィルトシャー州スウィンドンの生産工場を閉鎖するという報道に、多くの人はすぐさまブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)のせいだと槍玉に上げるだろう。しかし、閉鎖の原因は他にもある。
2月1日に施行された日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)では、EUは2027年までに日本車の輸入関税(現在は10%)を撤廃する。
つまり、日本企業がEU域内に製造拠点を置かなくてはならない根拠が薄れているのだ。実際、ホンダは欧州のどこかに拠点を移すのではなく、欧州市場向けの生産を日本に戻す計画だ」(BBCニュース2月19日)

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-47288102

この指摘は日本のメディアもしていますし、昨日記事にもしましたが、当事国としての英国国営メディアが言うとなるとやや趣が違います。 

今英国は、EUとの交渉期限切れの崖っぷちであって、ハードブレグジット(合意なき離脱)となると、英国のみならず、世界経済にあたかる影響は甚大だからです。 

EUが日欧EPAを急いだのは、背景に英国のブレグジット交渉期限切れが迫っていたからです。 

Plt1807170037p1署名式における安倍首、EUのトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長https://www.sankei.com/world/news/180717/wor180717...

安倍氏が日程的にヨーロッパに行けないとなると、なんとEU大統領と欧州委員長のほうからわざわざ日本にまでやってくる熱の入れようでした。 

昨日も説明したように、ブレグジットすれば、同国を製造拠点として無関税で大陸のEU加盟国に自社製品を輸出してきた企業は大打撃を受けます。 

なにせ英国に工場を置く唯一の理由は、特に英国が好きだからではなく、EUに無関税で輸出できることだったからです。したがってこの特典がなければ逃げていきます。

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それはホンダのみならず、英国への初乗りだった日産にも及びつつあります。日産はエクストレイルの英国生産を終了してしまいました。

日本企業のみならず、英国が誇る唯一の家電メーカーのダイソンすら、工場はとっくに中国、本社さえ国外移転するというのですから、この非国民と時代錯誤なことを言いたくなります。

「イギリスから投資を引き揚げるのはホンダだけではない。2月には日産が、英サンダーランド工場での「エクストレイル」の次期モデル製造を撤回。ソニーとパナソニックも、欧州本部をイギリスからEU域内に移した」BBC前掲)

これはかねがね指摘されていましたが、その悪夢が現実のものとして 英国国民の眼前に忽然と姿を現したことになります。 

ひょっとしてこれは外国企業の一斉撤退に結びつくのではないか、そうなれば外国資本のキャピタルフライト(資本逃避)となるかもしれない、そうなったらパニックだ・・・、これが英国人の恐怖です。 

逆に言えば、EU中枢は日欧EPAを急ぐことで、いかにEU離脱が高いものにつくのか英国はもとより、加盟国全体に教えたかったのです。 

さて英国がブレグジットした最大の理由は、とりもなおさず移民問題でした。 

EUはヒト・モノ・カネ・サービスの自由な往来を原則としています。 

特にヒトの自由な往来はシェンゲン協定によっ て認められた、EUの根幹理念です。 

このヒトの自由な移動によって、英国には大量の移民が流入しました。 

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 英国の移民の総人口全体に占める率は13.0%で、EUでも上位に位置します。

Img_be426991206d254768aed85ede3000dhttps://diamond.jp/articles/-/93863?page=5

ロンドンに行けばわかりますが、非白人が半分以上占めているようで、現実に市民の5割は外国人だといわれているようです。

これはかつての大英帝国の名残だけではなく、近年のEUによる外国人労働者移入です。

というのは外国人家庭は、元来の英国人家庭より幸か不幸か子沢山です。4人、5人は珍しくありません。

かくして英国で生まれた新生児の名前のトップは、モハンマドということですから、おいおいです。

かくして先進国病である少子化は、移民家庭の人口の自然増によって治癒してしまったことになります。

ただし10人以上にひとりが外国人という社会を作ってしまったことで、元々の英国人は今や先住民といわれかねない冗談のようなことになりつつあります。

どちらがいいのやらと彼岸の火事のようなことを言えなくなった、改正入管法以後の我が国ですが。

それはさておき、国民投票でブレグジット支持に強い支持を与えたのは、このような外国人人口比率が高い大都市を抱える地域であったことは象徴的です。

英国からの分離傾向にあるスコットランドやアイルランドは、ブレグジットに反対しました。

この現象は仮に独立しても、直接にEU加盟が可能だと踏んでいるからです。

これらの移民労働者は、新規雇用が英国にあることと、手厚い社会保障を目指して流入したわけですから、今回のブレグジットによって外国資本が逃避していくことに連れて国外に流出していくことになるかもしれません。

あるいは、家族は社会保障や教育を目当てに定着し、父親と息子が出稼ぎにEUへ行くようなことになるかもしれません。

その動向は今後を見ねば分かりませんが、仮にブレグジットしたとしても既に13%もの「外国人があたりまえにいる社会」を作り上げてしまった以上、その解決にはならないということにです。

その意味でも、私はブレグジットは早まった選択だったと思います。離脱自体は誤っていないとは思いますが、まだいくらでもやりようはありました。

キャメロンのバカが国民投票などしたから地獄の釜の蓋を開けてまったのです。

と言っても、既に引き返せませんが。

 

 

 


 

2019年2月21日 (木)

ハードブレグジットの足音に脱出する日本企業

013

ハードブレグジットの足音が近づいています。

このまま推移すれば、2月26日まで協議を続ける方針を示した英国政府が2月26日まで協議を議会と継続するという期限が過ぎ、3月29日のEUとの交渉期限切れとなってしまうというまったくみっともない結末が見えてきます。

英国にとって気の毒なことに、離脱協定案の修正をめぐる EU との協議はまとまることはないでしょう。

ここでEUが譲れば、押せば妥協するという悪しき前例を作ることになるからです。 

今、EU離脱の火の粉は、ご本尊のドイツ、フランスまでに広がっており、ここで弱みは一切見せないというのがEU中枢の堅い意志のようです。 

EU の堅い壁に当たって跳ね返ったボールは今英国側にあるのですが、英国には二つの選択肢しかありません。 

ハードブレグジット、つまり合意なき離脱か、メイ首相が示している現行の協定案を受諾するかのいずれかです。 

では、二度目のちゃぶ台返しで、離脱自体を止めるというのはどうでしょうか。 

現実には、国民投票のやり直しを求めるということになりますが、メイ首相は拒んでいます。 

メイを解任できればそれもありえるでしょうか、再任された以上このては使えません。

2018121400305592zaifxf0001viewhttps://m.finance.yahoo.co.jp/news/detail/20181214

メイが再任されたのは、彼女に代わってどうやっても叩かれることになる火中の栗をどの政党も政治家も拾わないからです。

英国は共通通貨のユーロには参加していないのですから、他のEU諸国とは違って独自の金融緩和政策をとる景気対策が可能です。

ならば焦ってブレグジットでこんな醜態をさらすくらいなら、移民問題などの不満な点はEU内部にとどまって変革したほうが上策だったような気がます。

国民投票などという愚かなポビュリズムをしたツケです。

前回沖縄の県民投票の時にも書きましたが、後先考えずにこんな国の運命を分けるような大事なことを、国民直接投票で決めてしまうからです。

直接投票の最大の欠陥は、その投票時の感情で左右されることです。

間接投票のように「政党」というショクアブソーバーがない分だけ、結果が良く言えば鋭敏、悪くいえば過剰に反応します。

いままでの沖縄の選挙で、選挙前に不思議と発生した米兵の犯罪ひとつで、空気ががらりと変わったことを思い出して下さい。

冷静に考えて一票を投じるのではなく、「お仕置きをしてやる」という気分で投票を決めてしまいがちです。

そしてその結果に、長い期間拘束されることになります。翁長知事を作った空気はデニー氏に受け継がれ、実に最長18年間にも及ぶことになりまた。

直接投票はセーフティネットなしで空中ブランコをするようなものなのです。 

沖縄県民の皆さん、英国のブレグジットを他山の石としてください。県民投票は棄権をしないで賛成に一票入れに行きましょう。 

Brexitmaphttp://www.newsdigest.de/newsde/component/content/...

さて話を戻します。英国に展開していた外国企業は一斉に離脱を開始しました。 

「英国が出て行く」ではなく「英国から出て行く」という意味でのブレグジットは既に始まっています。

1387300https://m.finance.yahoo.co.jp/news/detail/20181214

まずホンダが英国の工場を閉鎖すると発表しました。

「自動車大手のホンダは2021年中にイギリス南部にある工場での自動車の生産を終了する方針を正式に発表しました。世界的な自動車の生産体制の見直しの一環だとしています。
発表によりますと、ホンダは2021年中にイギリスの南部、スウィンドンにある工場での生産を終了し、閉鎖する方針を決め労働組合との協議を始めました」(NHK2019年2月19日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190219/k10011820311000.html

元々ホンダは欧州市場は弱いためということもありますが、他の企業にまで同じ動きがでています。やや長いですが、各社の動向をご紹介しておきます。

「イギリスのEU離脱が迫る中、日本の自動車メーカーや電機メーカーの間では生産体制などを見直す動きが広がっています。
このうち日産自動車は今月イギリスで計画していたSUV=多目的スポーツ車の生産を撤回すると発表しました。
また、トヨタ自動車では、イギリスの工場に部品の在庫が生産の4時間分しかなたいめ、離脱による混乱で部品の納入に遅れが出れば工場の操業が停止するおそれがあるということです。
一方、電機メーカーのうち、ソニーはヨーロッパ事業を統括するイギリスの現地法人を通じて、日本やアジアの工場から輸入したテレビやカメラなどの製品をEU域内に輸出しています。(略)
また、パナソニックも、ヨーロッパでの本社機能をイギリスに置いていましたが、去年10月、機能の一部をオランダの拠点に移すなど、生産体制などを見直す動きが広がっています」(NHK前掲)

ブレグジットに関しては、自動車業界、電気業界の思惑は完全に一致しています。 

離脱の場合のEUとの間での部品や完成品の輸出入の条件変更はありえない、ということです。 

そりゃそうです。今まで無税でEU域内に輸出できたから英国に工場を置いたのであって、関税障壁が復活すれば、英国に投資する意味はなくなります。 

業界団体の調査によれば2015年には25億ポンドあった投資額は、2018年上半期には5億8900万ポンドへと激減しています。 

ブレグジットが決まる前から各社はシナリオを作っていたと思われ、静々と英国から出ていくというコースに入ります。 

これは日本社だけにかぎらず、他の欧米企業も同じ思惑であると考えられます。

現実には静々というわけにはいきません。大混乱となるでしょう。

これは英国とEU全域に広がる部品のサプライチェーンまでも再編せねばならなくなったからです。 

「英国で生産される自動車のおよそ半数が輸出されていました。自動車部品のサプライチェーンは欧州の自由貿易地域に広範にまたがっており、英国がEUに加盟しており輸出入の障壁がないことを前提とした生産が行われていました。
しかし、もはやそうした前提が成り立たなくなるのです。部品の供給が遅滞すれば、組み立てのラインそのものを止めなければならなくなってしまう」(エコノミスト2月19日)
 

たとえば、エコノミストは英国を代表するローバーMiniaを例にとっています。

「Miniの車を引き合いに出せば、一日に1000台のMiniを生産するオックスフォード工場では、一台当たり4000から5000の部品を使って完成するために、一日に400万個の部品を入荷しているのです。
それ自体ロジスティクスとしては難しいオペレーションだといいますが、この部品のうち5分の3がドーバー海峡を渡ってくるのです。部品はトラックで運ばれて生産ラインに直接荷下ろしされており、その順番までもが効率的に定められている。その流れが乱されれば、今の生産効率は到底維持できないわけです」(エコノミスト前掲)

日産の部品の85%は英国外ですし、他のすべての自動車会社は英国内外の(それも英国外のほうが多いのですが)サプライチェーンを遅滞なく回転させるために精密なプログラムを組んでいますが、これが根本的に破壊されてしまったことになります。

エコノミストは「多少の混乱では済まない」と書いていますが、そうだと思います。

悪いことには、この春は新車の販売開始にあたっていて、最悪のハードブレグジットの始まりとなることは必至でしょう。

ただし、日本にとって唯一の慰めとなるのは、日欧EPA ( 日欧経済連携協定)」がこの2月に発効していることです。

この日欧EPAによって、従来日本からヨーロッパに向かう自動車関税にかけられていた10%関税は、段階的に引き下げられて8年目には無税となります。

Photohttp://www.blossoms-japan.com/entry/2017/07/07/175...

なんのことはない日本から直接にEUに輸出しても、段階的に低くなり7年後には無税となるのです。

ならばブレグジットなどない(あたりまえだ)日本国内製造のほうがいいじゃありませんか。

とまれこのハードブレグジットによって、無関税を求めて欧州に出ていた日本企業にとって、英国のみならずEU域内に工場を展開させる意味はブレグジットで消滅したといえます。

日本企業にとって、勝手知ったる母国の地にこのような形で舞い戻ってくるとは夢にもおもわなかったでしょう。

これを期に、企業城下町と悪口を叩かれながら作ってきた、企業と国内の中小サプライチェーンのありがたさをかみしめることです。

今、英国がこの雪崩をうって出て行こうとする外国企業に歯止めをかけるには、ブレグジットの返上しかありませんが、ここまで状況が進んでしまえば、そうとうに難しいでしょう。

ブレグジットは、出て行かれる側にも出ていく側にも高いものにつきそうです。

ただし、国内で作ることの重さを国際企業が再認識することが出来れば、唯一の光明となるかもしれません。

 

2019年2月20日 (水)

原油の海に浮かぶ浮草社会主義国ベネズエラの終焉

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遅まきながら、日本政府もベネズエラのグアイド国会議長の反政府側の支援を決定したようです。

「混乱が続く南米のベネズエラで、暫定大統領への就任を宣言したグアイド国会議長率いる反政府側は、14日、アメリカの首都ワシントンで、各国の関係者を招いて会議を開き協力を呼びかけました。参加した日本政府の担当者は、「ベネズエラ国民の声が反映された国造りを支援していきたい」と語りました。(略)
今回の会議に参加した日本の相川一俊駐米特命全権公使は、NHKの取材に対して「ベネズエラの人道的状況を懸念している。国民の声が反映された国造りを支援していきたい」と述べ、日本としても支えていく姿勢を示しました。(NHK 2019年2月15日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190215/k10011815711000.html

K10011815711_1902150745_1902150746_NHK2月15日 

一方、故チャベスの後継政権であるマドゥロ大統領は、同じニューヨークで気勢をあげています。 

「ニューヨークの国連本部では、ベネズエラのアレアサ外相が、10数か国の国連大使らとともに声明を読み上げ、アメリカに対抗していく姿勢をアピールしました。
アレアサ外相は14日午前、ロシアやシリア、北朝鮮など16か国の国連大使や幹部らとともに記者会見を開きました」(NHK前掲)
 

マドゥロ政権の国際総決起集会に集まった面々を見て、思わず失笑してしまいました。 

方や米国とヨーロッパ諸国、そして日本。これはさもありなん自由主義諸国です。 

方や北朝鮮、中国、ロシア、そしてアサドが支配するシリアときていますから、分かりやすい。 まともな国がひとつもない(苦笑)。

これらの国々の共通項は、極端な独裁体制と人権弾圧です。 

願いましては、ウィグルで収容所列島を作り続ける中国、反政府ジャーナリストや反体制人士は暗殺してしまうロシア、自国民に毒ガスを撒くような国民の大量虐殺を繰り返すアサド政権、説明不要のひとり独裁国家・北朝鮮までが顔を出しているのはご愛嬌です。 

北朝鮮やアサド政権に支援される政権というだけで、もう説明する手間が省けるというものです。 

実に分かりやすい色分けですが、この両派以外に、カナダのように「米国は介入するな」という非干渉派も少数ですが存在します。 

さて今のベネズエラはインフレ率が年100万%(おいおい)というハイパーインフレに達し、全人口の61%が極端に貧困な生活を強いられています。

国民の89%は家族が生活できる賃金をもらえず、既に人口の1割の260万人が国外に脱出しています。

2014年末に220億ドル相当あったとされる外貨準備は、2017年8月時点で100億ドル以下まで減少し、ベネズエラはデフォールト寸前です。

ベネズエラ市民の4分の3以上が貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。商店の棚から商品が姿を消し、スーパーマーケットには、コメなどの基本物資を求めて、行列ができるようになった」
(フォーリン・アフェアーズ・リポート2016年10月号)

「ベネズエラが、政治的、経済的な危機に直面しています。IMFによると、2017年のインフレ率は平均で720%、2018年は2,000%超という破滅的な数字になると見られています。マドゥーロ政権の支持率は就任時の50%から20%に低下、国内では食料や医薬品といった必要物資が著しく不足し、海外への脱出者が多数発生していると報じられています」
(マネークリップ『原油に翻弄されるベネズエラ~デフォルト危機と今後の展望~』2017年9月15日)

「5月22日にはさらに、医師たちがカラカスでデモ行進し、保健省に対する抗議行動を実施した。アントニエタ・カポラレ保健相は5月半ば、2016年に妊婦死亡率が66%上昇したと発表した後で解任されている。
抗議行動に参加した医師たちの手には、「病気になるな。薬は無いぞ」と書かれたプラカードが握られていた。ベネズエラは石油大国でありながら、食料だけでなく医薬品も極度に不足しており、患者たちは必要な薬や包帯などを自力で調達せざるを得ない状態だ」(ニューズウィーク2017年5月27日)
『ベネズエラほぼ内戦状態 政府保管庫には大量の武器』
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7655.php

この発端を作った男が、このウゴ・チャベスです。
ウゴ・チャベス - Wikipedia
 

Photoウゴ・チャベス スプートニクhttps://jp.sputniknews.com/life/201611223036456

 この暑苦しそうな男は就任すると、それまで中南米の優等生と言われていた自由主義政策を廃止てしまい、反米・社会主義路線政策を実行に移しました。 

チャベスがやったのは、全土の急進的な社会主義化でした。 

農民の農地は国が接収し、外貨収入源の石油プラントはベネズエラ国営石油会社(PDVSA)の下に国有化し、電気・ガス・水道の公共インフラも国有化してしまいます。 

そして貧困層の支持をえるために徹底したバラマキ政策を行います。 

普通こういう急進的社会主義政策をとった場合、大きな反発が農民から出ます。 

農民こそが最も社会主義と相いれない天敵の階層であることは、古今東西の社会主義の歴史が証明しています。 

国はただ同然で食糧を国民に供給したいので農民に対して、国が定めた低い額で国に食糧を供出することを命じます。 

販売の自由が奪われているわけですから怒りが溜まって当然でしょうか、そもそも農地自体が自分のものでなくなっているために従わざるをえないわけです。

私なら死んでもこんな「社会主義農民」になるのはマッピラですから、殺されるか投獄されていたことでしょうね。

そしてもうひとつは民族資本です。

チャベス前には多くの民間企業が活発に活動していましたが、その多くが国有化されました。

特に石油生産には、資金と技術を持つ有力な外資が経営していたのですが、これが国有化のために国外へと撤退した結果、原油生産効率は大幅に低下しました。

原油生産量はチャベス就任前に比べて、実に4割以上減少したと言われています。

また、かろうじて生産される原油も精製が出来ずに低い品質で輸出せざるをえない状況です。 

このチャベス社会主義政権には国内で強い抵抗があり、対外的にも米国の目の敵にされていました。

しかしそれでもなお、世界の左翼たちから「21世紀の新しい社会主義」と偶像視されたのは、この原油輸出があったからです。 

安かろう悪かろう少なかろうの三重苦を背負っていても、痩せても枯れても世界有数の産油国の強みで、この原油を売った金を貧困層にせっせとバラまきゃ、これは強い。

これで、なんとか国内の不満を押さえ込んだのですが、そうは問屋が下ろしませんでした。

輸出収益の95%以上を石油と天然ガスに依存するという、ロシアも真っ青の原油一本足打法は、原油の国際市場価格の変動にもろに左右されます。

Img_fbee3a90ea97a15ec97b3bc71a85b78マネークリップ https://media.monex.co.jp/articles/-/7933

2002年から始まる原油価格の高騰は、チャベス政権にとって願ってもない追い風となりました。

それは幸運にもチャベスが生きているあいだ吹き続け、世界でエネルギーを爆買いしていた中国はこれに目をつけて630億ドルの融資を行います。

中国はこういうえげつないエネルギー漁りと、米国の裏庭に自分の息のかかる国を作る心づもりでした。

アメリカシンクタンク「ランド研究所」は近日発表した報告書で、中国共産党政権が海外展開するうえで重要な拠点となりうる11の国家を主軸国家(pivotal state)としてピックアップした。(略)
ベネズエラはその豊富な石油資源のため中国共産党から目を付けられている。中国はベネズエラに対し多くの投資を行い、軍需品と融資を与えた。ベネズエラは石油を輸出して得たオイルマネーで返済の大部分をまかなっている」(大紀元2018年10月29日)
https://news.nicovideo.jp/watch/nw4102955

チャベスはこんな融資を受けても苦にもしませんでした。なんせ全額現物で返済可能だったからです。

ただし、ベネズエラに貸し込んだ中国は、今や貸し倒れの危機にあります。

というのは、米国がベネズエラ国営石油会社ペトロレオス・デ・ベネズエラに対し、禁輸措置をとりました。

「ティラーソン米国務長官は4日、訪問先のアルゼンチンで記者会見し、政治混乱が続く南米ベネズエラに対し石油製品の禁輸を検討していると発言した。野党勢力の弾圧や不公正な選挙の強行で独裁化を進める同国のマドゥロ大統領をけん制する狙い」
(日経2018年2月8日)

これによって中国はカネも返ってこないわ、現物の原油も手に入らないことになります。

それはさておき、いっけん順風満帆に見えたチャベス政権は、彼の死後一気にナイアガラ瀑布よろしく転げ落ちることになります。

2014年の国際石油市場の暴落が発生し、ベネズエラ社会主義政権の一本足打法のたった一本の脚である原油輸出が急落することなります。

この時には、ラッキーにもこの元凶であったチャベスは、ガンで亡くなっていました。

チャベスはさんざん自分のガンを米国の陰謀だと吹いていましたが、ともかくまぁ自分が作った世界が地獄に落ちていくのを見ないで住んでよかったではありませんか。

このチャベスのガン治療はキューバで行われ、ベネズエラのキューバ化はいっそう侵攻することになります。

チャベス亡き後、これを継承したニコラス・マドゥロは、原油価格低迷を一層の社会主義化で乗り切ろうとします。
ニコラス・マドゥロ - Wikipedia

2ハフィントンポスト
https://www.huffingtonpost.jp/2016/07/25/economic-chaos-in-venezuela_n_11190370.html

この男の社会主義化とは、秘密警察政治のことでした。数知れない市民が暗殺部隊によって虐殺されました。

しかし、肝心のバラマキの財布の底が抜けて貨幣が100万%に達しデフォールト寸前の経済では処置なしです。

マドゥロが正気ならば行き過ぎた社会主義化を止め、国有化した石油会社を元の外国資本の運営に戻し、さらに米国とよりを戻せば、多少の救いはあるかもしれません。

「政策転換を契機に市場開放が進めば、外資を含む民間企業の再参入により、原油生産量の回復、さらには増産も期待できます。また、石油以外の外貨獲得手段を強化することも可能です。
ベネズエラはボーキサイト、鉄鉱石、ニッケル、金といった鉱物資源にも恵まれています。エンジェル・フォールを有するカナイマ国立公園という世界遺産もあり、観光資源もあります。政策転換によって米国など今まで関係が悪化していた国との関係が改善すれば、様々な投資や需要を取り込めるでしょう」
(マネークリップ前掲)

しかし、仮にマドゥロにその気があったとしても(ないでしょうが)、中国とロシアがバックについて、ベネズエラを国際政治の駒としてしまった以上、もう後戻りはできません。

日米はグアイドを暫定大統領を支持しましたが、まだ力量は未知数です。

軍部の出方にもよりますが、今後もベネズエラの動乱は続くものと思われます。

とまれ、まともな革命運動をしたわけでもなく、汗水流さないで原油という地べたから湧くものだけで国を社会主義に導こうという太い根性で、成功するはずがないではありませんか。

このような原油に浮かぶような国を、「21世紀の新しい社会主義」と礼賛していた人たちの顔が見たいものです。

 

 

2019年2月19日 (火)

漂流国家・韓国

045

結論からいいましょう。日韓関係において怒ったほうが負けです。 

今は拳を振り上げる時期ではなく、拳を準備しつつ冷静に相手国を観察する時期です。 

というのは、韓国には日本と「今」戦う意志がないことです。 

今の状況に目新しいことはありません。すべてがかねてからの反日政策が皺寄せされたものです。 

たとえば私たち日本国民にとって許しがたいと思わせた「徴用工」裁判は、2012年の下級審が出した再戻し判決に沿ったものでした。 

「10月30日に出された元徴用工らに対する最高裁の判決は、6年以上も前の2012年5月、同じ最高裁が下級審の判決を差し戻し、再び上告されてきたものである。
 どこの国においても、最高裁が自ら差し戻し、下級審がその最高裁の差し戻し判決の趣旨に従って出し直した判決を、最高裁がもう一度覆すことは考えにくい。
事実、今回の判決の趣旨は基本的に2012年の差し戻し判決に沿ったもので、その論旨が新しいわけではない」
(木村幹神戸大教授2018年11月28日)
https://ironna.jp/article/11300?p=1 

Soc1808150006m1https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180815/soc180815

「徴用工」裁判においてムンが入れた最高裁判事は、皮肉にも日韓請求権協定で個人請求権は消滅したという少数異見を出した2人の判事のひとりでした。 

請求権協定を廃棄する判決を出した判事は1名を除いては、イ政権とパク政権という保守政権が任命した人物でした。

また反日に関しては、このふたりの保守派大統領のほうがよほど熱心でした。 

ムンは対日政策に関してはどうでもよいのです。喧嘩を売られっぱなしの私たちにはふざけるなといいたくなりますが、当人たちはそうだとしかいいようがありません。 

少なくとも、かつての政権のように竹島上陸などといった反日外交で支持率を高める気などはないとはいえます。 

逆に言えば、韓国民は反日政策によって大統領支持を強めているわけではないということになります。 

それは支持率の推移を見ればお分かりになるでしょう。「徴用工」判決が反映されている10月末から11月の支持率は変化はありません。 

安定して下がっていますが、その理由も分かっています。最低賃金上昇政策による経済政策の失敗です。

とくに若年労働者の深刻な失業は、ムンの支持層である「ろうそくデモ」世代であっただけに、大きな打撃を政権に与えました。

Gpm0kwc韓国リアルメーター

このように見ると、ムンには反日政策をする動機そのものが意外にも希薄だといえるでしょう。
 

木村氏はこう述べます。

「そしてそのことは、文在寅をはじめとする韓国の今日の政治家にとって、対日強硬政策を取り関係を悪化させることで得られる利益がほとんどないことを意味している」(木村前掲)

では、この間の韓国海軍のならず者国家まがいの軍事挑発はどのように考えたらいいのでしょうか。

ひとことで言えば、無統制なのです。自分のとった行動が何を意味するのか理解できす、対日軍事攻撃を準備しているかに見えるのは、ただのアノミー現象の現れです。

アノミーとは「社会の規範が弛緩・崩壊することなどによる、無規範状態や無規則状態を示す」無制御状態を指します。
アノミー - Wikipedia

もし仮に韓国海軍が意図的に日本を軍事挑発する気だったとしたらなら、あのような見苦しいデタラメを日替わりでだすことはしないでしょう。

あれは初めに軽く再発防止に務めるていど言っておけば済んだことを全否定したために、整合性のある対応が不能になってしまったから起きました。

これは意志強固に「日本を火の海にしてやる」と叫ぶ北朝鮮より遥かに稚拙です。

これと同じことは、慰安婦合意の廃棄の韓国側の対応においても現れています。

「慰安婦関連の財団の解散も同様だ。仮に徴用工判決への対処として何らかの政治的妥協を日本との間で模索するなら、先に締結した慰安婦合意を無にするかのような行動を行うのはマイナスにしかならない。
 加えて11月5日には、韓国外交部はわざわざ「慰安婦合意には法的効力がない」という公式解釈まで示している。
先に結んだ国際的合意の法的効力を一方的に否定する相手と、歴史認識にかかわる重要な合意を新たに結ぶことは難しい。これだけ見ると韓国政府はわざわざ日本との妥協の道を閉ざしているようにしか見えない」(木村前掲)

「徴用工」判決に基づく新日鉄住金の財産差し押さえは実行段階直前となっているにもかかわらず、韓国政府はなにひとつ対応をとらないまま放置している始末です。

ここにも韓国を覆うアノミー現象が見られます。韓国には対日か移行の青写真はありません。

「結局、韓国では何が起こっているのか。その答えは彼らには確固たる対日政策がなく、政権内での十分な調整もされていない、ということである」(木村前掲)

レーダー照射事件と同じ流れです。

つまり意志を持って反日に突き進むのではなく、習慣的に反日をしていたら抜き差しならないことになってしまい、かといって引き返すことは面子がつぶれるからしたくはなく、その場しのぎで凌いでいる、というのが韓国の姿です。

では、日本は馬鹿だねで済ましてよいかといえば、そうではありません。

逆に、このような無統制で、かつ自分のやっていることの意味も理解していないような相手に対しては、警戒度を上げる必要があります。

なぜなら悪漢とは交渉可能ですし、やりそうなことは読めますが、自分が何をやっているのかさえ分かっていないような相手とは予測も効かず、交渉もできないからです。

私たちはつい自分の視点や好みで状況を観察してしまいがちになります。

たとえば、安倍氏嫌いは「なにもかも安倍が悪いんだ」と言い、韓国嫌いは「なにもかも韓国が悪い。報復の時期だ」というようにです。

だからこそ、その自分の見方さえ突き放して眺める必要があります。特に相手が韓国のような漂流国家が相手ならいっそうそうではないでしょうか。

 

 

 

2019年2月18日 (月)

県は県民投票をするならば、正しい情報を与えるべきです

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県民投票の期日前投票がはじまったようです。さぞかし今週はにぎやかになることでしょう。 

ところで住民投票と言っても、実は3種類あります。 

まず1番目に、国会が特定の自治体に適用する特別法を制定しようとする場合、憲第95条によって「(その自治体の)住民の投票で過半数の同意を得なければ、国会は制定することができない」とされている場合です。 

2番目は、議会の解散、首長のリコールに市町村有権者の3分の1の署名が集まった場合、地方自治法で住民投票で賛否を問わねばなりません。 

以上ふたつの住民投票には、法的拘束力があり、結果に従わねばなりません。 

では今回の普天間飛行場の移転に関する県民投票は、この前二者の範疇なのでしょうか。 

いいえ違います。沖縄県民投票には、法的拘束力はありません。 

今回の沖縄県の県民投票は県条例に基づくもので、それに対して総務省は「結果に従う義務を定めた法律は存在せず、法的拘束力はない」と説明しているようです。 

「法的拘束力」について押えておきましょう。

「法的拘束力は国会または行政の処分・運用、裁判所判決・決定、民事上の合意、国家間の合意について、正式な法律慣習法を含む)上の効果が義務となるかどうかを評価するときに使用される概念」
法的拘束力 - Wikipedia

なぜ、法的拘束力という概念が住民投票で大事なのかといえば、それはこのような理由です。

「個々の概念に於いて法的拘束力の及ぶ範囲は確立されており、その範囲を曖昧にすることはあらゆる分野に混乱をもたらすことになる」(前掲)

従う義務があるかないのかを明らかにしないで、住民投票をした場合、結果について誰がどのように責任をとるのかわからなくなります。

たぶん、県はこのへんをあいまいにしたまま、投票結果に国が従う義務があるかの如き主張をすると思われますが、そのようなものはありません。 

今回の場合、法的拘束力がないと所轄官庁である総務省が言明する以上、国はその結果がいかなるものであれ従う義務はありません。 

実際に既にあらかじめ菅官房長官は、「県民投票の結果には縛られない」と明言しています。 

それはそうでしょう。県と反対派 はありとあらゆる因縁をつけていますが、軟弱地盤であろうとなかろうと、予定外のコストがかさもうとかさむまいと、パイルを大幅に増やして地盤づくりをしてでも工事は継続するはずです。

それは国はこの問題で、もう一歩も引けないからです。 

移設問題は元来基地縮小政策の副産物にすぎません。

たかだかという言い方をすると語弊がありますが、安保の核心的テーマでもないものを、闘争目標に飢えていた左翼陣営が抜きさしならないイデオロギー対立にまでエスカレートさせてしまったものです。

したがって、好むと好むと好まざるとにかかわらず、もはや沖縄県だけの問題ではないのです。

ここで国が安易な譲歩をすれば、国家の安全保障政策に直接響いてくる悪しき前例となりかねません。 

仮にここで国が県の言うがままに移転を白紙化した場合、今後、地元自治体の意向こそが最上位にくることになります。

結果、国内では防衛関係施設の建設や新型機の配置に支障がでることになります。 

もちろん県民投票の結果を「尊重する」と政府は言うでしょうが、それは「聞き置いた」という意味以上でも以下でもありません。

では県は、どれだけ丁寧にこの県民投票の意味や、移設に関する情報を県民に与えてきたのでしょうか。

投票の怖さは、その時の空気に支配されることです。それでも間接投票は政党を選ぶことで、その振り幅をなくそうとしています。

政党内にはさまざまな意見がありますから、政党内の議論の積み上げの中で極端な意見はふるい落されて通らないからです。

しかし、直接投票はそうはいきません。感情がそのまま現れてしまいます。

たとえば英国は本音を言えば、ブレグジットの国民投票をせねばよかったとホゾかんでいるはずです。

これほどまでに難問が待ち構えているとは、国民投票を決めた当のキャメロンはもちろん、ブレグジットに一票を入れた人も含めて、誰も予想しなかったからです。

ですから直接投票は、間接投票というセーフティネットがないぶんだけ、一般の選挙より慎重に事柄を説明したうえで、その意味と限界をわかりやすく説くべきなのです。

県民投票はまるで「民意」が国の方針を変えられるような幻想をもたせるような言い方に終始しています。

だとすれば、まったく罪作りなことです。 

さて、この県民投票がただの「アンケート」ならば、県は県民投票条例を執行する中立的役割を果たすために、客観的な情報を与えるのが大前提です。 

Aad1569137537ad5a3d7e85eb856909ehttps://ryukyushimpo.jp/news/entry-872699.html

今年2月7日夜、那覇市の沖縄タイムスホールで行われた沖縄県主催の「県民投票フォーラム」で講演とパネルディスカッションに参加した小川和久氏は、このように述べています。

「そこで、相も変わらず続いている「情報格差」を目の当たりにしたのです。(略)
沖縄県における「情報格差」は東京との「距離」の面と「イデオロギー」の面から生じているように感じました。(略)
「イデオロギーが関わってくると客観的な議論が不可能なほど、バイアスがかかることになります。
さらに、人間には同じ考え方の者だけが群れる性質があり、自分たちの耳に心地よい話、都合のよい情報だけを共有し、固まる傾向が生まれます。
そこで沖縄の基地問題ですが、ここで述べてきたような「情報格差」の結果、県内の議論が問題解決を遅らせているように思われてなりません」
(小川和久(『NEWSを疑え!』第747号2019年2月14日号)
 

これは私が常々感じていることです。沖縄は一定の価値判断が入った情報だけが報じられ、それにそぐわない情報は意識的に切り捨てられます。 

たとえば、私がなんどとなく書いてきましたが、普天間基地の移設こそが、本来問われるべきことの最初に来なければなりません。 

そのうえで、移設する先が県外にあるのかないのか、その理由を客観的に教えねばなりません。 

小川氏は名指しこそしていませんが、同席した前泊博盛氏の言動に驚いたようです。 

前泊氏は、沖縄において軍事分野の有識者と目されている人で、よく地元紙に登場しますが、このパネルディスカッションでもあいかわらず周回遅れのことを言っています。

「長崎県佐世保を拠点とする強襲揚陸艦を沖縄に回航して海兵隊地上部隊を乗船させなければ、朝鮮半島での上陸作戦は不可能。それを考えると、海兵隊地上部隊の基地と演習場は佐世保に近い長崎県内に置くのが合理的で、飛行場も海上自衛隊大村基地や佐賀空港を使うべきだ」(小川前掲)

この長崎移設説は、本土の専門家の間ではとうに否定されて相手にされていませんが、沖縄ではあたかも軍事に精通した有識者の意見として奉られているようです。 

この前泊氏の謬見は、米軍の海兵隊の有事における動きを、不勉強なのかイデオロギーによるものか、恣意的に解釈していることから生じています。 

そもそも沖縄海兵隊は、速度がのろい強襲揚陸艦に乗って朝鮮半島に移動することはありえません。

民間機をチャーターした旅客機で直接に朝鮮半島の集合場所に飛びます。 

そんなことをしたら、有事で一国も早く朝鮮半島の現場に駆けつけねばならないにもかかわらず、一回長崎まで飛んで、更に強襲揚陸艦に乗り込み、それでトロトロと現場に向かうという手間暇をかけねばならなくなります。 

現実には、有事において沖縄海兵隊はこのように動きます。

「朝鮮半島有事に海兵隊が動く場合、沖縄の海兵隊地上部隊はCRAFのチャーター機で韓国に直行します。
そして、上陸作戦を行う場合は佐世保から釜山に直行した揚陸艦や米本国から合流してくる揚陸艦艇に乗船するのです。海兵隊地上部隊が、そのまま韓国駐留の米陸軍第2師団と合流して地上戦闘に投入される場合もあります」(小川前掲)

ここに登場するCRAFとは「民間予備航空隊のことで、アメリカ合衆国の予備軍事制度の一。有事において、民間航空会社の機材を活用し、 空輸兵力の一助となる」空輸力のことです。
民間予備航空隊 - Wikipedia 

あるいはオスプレイで直接にピンポイントで作戦現場に向かいます。そのために沖縄海兵隊には航空機部隊が付属しているのです。

したがって陸上部隊は短時間で航空基地に到着し、移動できねばなりません。

これが民主党政権時に出た徳之島案が、米国に拒否された理由です。

あくまでも駐屯地と航空基地はワンセットでなければならないと、海兵隊は任務を遂行できないのです。

小川氏はこう結んでいます。

「しかし、沖縄の有識者の無知と誤解に基づく説明を聞くと、沖縄県民は普天間基地の代替施設は沖縄県内ではなくてもよい、と信じ込んでしまうのです。
これでは、米軍基地問題の解決について地に足のついた議論はできません」(小川前掲)

まことにそのとおりです。

 

 

 

 

 

2019年2月17日 (日)

日曜写真館 スタンド アローン

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2019年2月16日 (土)

独自核武装はやってやれなくはないが、そう簡単なことではない

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昨日のコメントを読むと独自核武装についての意見があったので、あらためて核武装について考えてみましょう。 

私は、「やってやれなくはないが、そう簡単なことではない」と考えています。 

核武装するためには、国内世論の支持をうけねばなりませんし、NPT条約といった政治的問題もありますが、それについては今回は考慮からはずします。 

どうでもいいからではなく、逆にあまりにも大きすぎるテーマだからです。何回か扱ったテーマですが、技術的なことに絞って見ていこくことにします。 

さて、今の北の非核化を見ても、ひとことで核武装といってもいくつかの要素があることに気がついておられると思います。 

まず第1に、核爆弾を作れる核物質がなければ話になりません。

第2に、核弾頭が実際に想定どおりの性能かどうか証明するために核実験せねばなりません。

第3に、弾道ミサイルを発射する潜水艦が必要です。

ほかにも付随して、再突入や戦略原潜の保有など、いろいろたくさんの問題がありますが、今日は3ツだけを取り上げます。 

まず第1の核物質についてですが、「原発に詳しい」と事象していた管直人元首相は、かつて川内原発前の宣伝カーの上で、こんなアジ演説をしていました。

「原子炉はもともと核兵器製造に使うプルトニウムを作るために開発されたものだ。そして70年前にプルトニウム型原爆が長崎に落とされたのだ。
私はプルトニウムと人類は共存出来ないと考えている。そうしたプルトニウムを新たに生み出すこと自体が人類を危険に晒すことだ。原発がプルトニウムを作ったんです」

バッカじゃなかろか、この人は。この人は、軍事用原子炉と商業用原子炉が炉の構造自体からして違っていることを知らないようです。  

核兵器に使用できるプルトニウムは、純度90%台後半の高濃度Pu239だけです。

Puradioactiveplutoniumisotopepuradihttps://www.dreamstime.com/pu-radioactive-plutoniu...

一方、民生用原発から出るプルトニウムはPu240で、これはそのままでは軍事転用はできません。 

よく何発分のプルトニウムというガサツな言い方をメディアはしますが、商用プルトニウムと軍用プルトニウムは別物です。

この軍事用プルトニウムであるPu239を、日本は保有していません。 

世界の核分裂性物質の量 - 核情報によれば、日本の軍用プルトニウムの保有量は文字どおりゼロです。  

反原発・反核論者たちは、「日本がプルトニウム備蓄して核爆弾を作る気だ」と主張していますが、ナンセンスです。
http://kawasakiakira.at.webry.info/201507/article_14.html

それは「できる」というだけで、軍事的合理性を考えない妄論です。

日本が国策として核兵器を作るとなると、中国や北朝鮮の中距離核を抑止しうる同等のものが必要です。

そのためには、たとえば米軍が運用しているMk85核爆弾は約8メガトンですから、その程度の破壊力が必要となります。 

原発の副産物として作られるPu240は不純物が多く、不発の確率が非常に高いために、これを濃縮して軍用Pu239するためのプラントが必要です。

このプラントが日本にはありません。作ればいいのですが、そのためには立地確保から始めなければなりませんから、10年単位の時間が必要でしょう。

たかだかといってはナンですが、代替航空施設を作ろうとしている辺野古ですから、地元と20年間もめているのですから、推してしるべしです。

私は兵器級プルトニウムを作る濃縮プラントを作ることは、技術的にはそう難しくありませんが、政治的にはかぎりなく無理だと思っています。

核爆弾自体はちょっと優秀な理系大学生がクラブ活動で作れるていどの技術レベルですが、仮になんとかして核爆弾を作ったとしても、次の壁は本当に爆発するのか検証をせねばならないことです。

モノがモノだけに、作りましたでは終わらないのです。その威力や爆発特性などを実際に爆発実験せねばなりません。 

そこで第2の核実験の壁が立ちはだかります。 

核実験をしないと、予定されたスペックどおりの性能がでるのか、不具合がないか検証できません。 

考えるまでもなく、日本国内に核実験場などができる場所はありません。

日本は狭すぎるのです。それが広大な砂漠を持つ米露中との大きな違いです。

もちろん、フランスなどのように海外県でやるという暴挙はできませんし、外国が貸してくれるはずもありません。 

ひとつだけ抜け道があります。それはすべての実験を、スパコン上の仮想実験をすることで代替することです。

実際に、中国はそれを心配しているようです。
http://news.searchina.net/id/1584694?page=1 

コンピュータ・シミュレーション核実験とは、臨界前核実験のことで、実際の核爆発を伴わずにバーチャルにやってしまおうということで、既に核保有国は実用化しています。

技術的には可能です。ただし、核実験のコンピュータシミュレーションでやるとしても元種が要ります。

米国やフランスはスパコンで臨界前核実験をシミュレートする技術を持っていますが、それは既に実際の実験をして入力する諸元データーを持っているからです。

その実データーを得るためにフランスは、世界中の轟々たる批判を尻目にムルロワ環礁で核実験を強行したのです。

Bom00100564977ムルロワ環礁核実験https://www.jiji.com/jc/d2?p=bom001-00564977&d=011...

日本にはこの元種に当たる実データがありません。もちろん米国ですらこんな物騒なものを貸してくれるはずもありません。

ですから、日本に世界一のスパコン技術があろうとなかろうと、商用プルトニウムがあろうと難しいのです。

ただし、実験段階を飛ばして実戦配備という手もあることはありますが、そんな実際に爆発するかしないかわからないようなものは、大戦末期ならいざ知らず、現代では笑い物になるだけでのことです。

日本が作らねばならないのは、負けそうになってヤケッパチで作るものではなく、あくまでも「平時の抑止力」なのです。

第3に核弾頭の小型化や再突入技術をクリアしたとして、その運搬手段について考えてみましょう。

弾道ミサイルについては、日本は世界最高水準のものを既に持っています。だからすぐに独自核武装ができると思ったら大間違いです。

H2もイプシロンもそのままでは使えないのです。

というのは日本の国土は縦深が浅い国です。日本列島は前線から後方までの縦の線が極端に短いために、弾道ミサイル基地を隠しておくことが難しい地形です。

双方が核を保有している関係において相手方は、まずこちらの核報復能力を奪いにきます。

つまり敵が第1撃でねらう目標は核ミサイル基地ですが、これを地上で隠す場所は日本にはない以上、海に潜って水中から発射する水中発射弾道ミサイル(SLBM)を開発するしかありません。

その潜水艦は、深海深く沈潜し、静かに命令を待つ性格ですから、息が短く搭載能力に余裕がない通常動力型潜水艦は不適です。

したがって戦略原潜が必要です。

20101216165948戦略原潜http://d.hatena.ne.jp/masousizuka/20101216/1292486...

これもやってやれないことはないでしょうが、未知の領域ですから10年単位で考えねばなりません。

同様な理由で、大型空母も同じです。大重量の航空機と搭載物を射出するために蒸気カタパルトが必須です。

この蒸気カタパルトを製造し運用する技術は米国しかもっていません。よしんば売ってもらえたとしても大量の電気が必要です。それをまかなえるのは原子炉しかありません。

ですから、大型空母は必然的に原子力空母となってしまいます。米国の12隻の空母が揃って原子力空母なのはこの理由からです。

日本でも米国のような空母を欲しがる人がいますが、原子力空母が持てるかどうかちょっと考えればわかりそうなものです。

日本が国策として独自核武装をするということは、単独の核爆弾を作ればいいということではなく、その実験方法、原子力潜水艦などとトータルに考えねばならない問題なのです。

このように考えてくると、昨日書いたように自民党国防部会が「検討を開始」することはできますし、それはそれで一定のブラフにはなりますが、実際には極めて困難である私は思います。

白けさせてすまないのですが、ひとり独裁国が発射する核ミサイルを防ぐためには、現実的にはMDイージス艦か、イージス・アショア、ないしはTHAADしかありません。

政治的には非核三原則という時代遅れの虚構から醒めて、「持ち込ませる」ことを真剣に政治日程に載せるべきです。

私は自主防衛力は強化するべきだと思っていますが、かくほど左様に 「戦後」が作った壁は厚く複雑なのです。

 

 

2019年2月15日 (金)

いやな予感ほど当たるもの

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なにやらマーフィの法則どおり、悪い予感ほど当たってしまいそうな展開になりそうです。

「ベトナムの首都ハノイで27、28両日に開かれる米朝首脳再会談に向けた実務協議で、米側が米朝2カ国間の不可侵宣言や平和宣言の採択を、北朝鮮に打診したことが14日までに分かった。複数の日米両政府関係者が明らかにした」(共同2月15日)

この共同の報道が事実だとすれば、この間私が書いていたとおり、米国は平和条約締結の合意をしそうな気配です。 

ただし別な報道では、米国は平和条約ではなく相互不可侵条約といっているようですから、細部は不明です。

米国と北朝鮮の交渉の争点は下に共同が手際よくまとめてくれていますから、参照してください。 

1549781900_20190206j04w560https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190214-00000171-kyodonews-int

 平和条約でも不可侵条約でもかまいませんが、私が危惧するのは、トランプが中距離核で手打ちをする可能性が出た、ということです。

先日、スタンフォード大学国際安全保障協力センター(CISC)の調査報告書の執筆者のひとりであるジークフリート・ヘッカー氏は、現況の北の核は増殖して続けていると分析しています。

「北朝鮮は米国との非核化交渉中も爆弾用燃料の生産を続けており、過去1年に核兵器を最大7個増やすのに十分な燃料を生産した可能性がある」(ロイター2月12日)
https://news.goo.ne.jp/article/reuters/world/reuters-20190212069.html

そしてヘッカー氏は北の核は増えているという分析を踏まえて、このように述べています。

「報告書は「北朝鮮は核弾頭を確信を持って米本土に到達させることはできない」としているが、ヘッカー氏は、北朝鮮の核兵器は日本や韓国にとっては真の脅威であるとの見方を示した」(ロイター前掲)

イヤーな気分になるのはこの「米国にとっては真の脅威にはならないが、韓国と日本にとっては脅威となろう」という部分です。

つまり北が長距離核さえ廃棄するなら、米国はこと足りてしまえるわけです。

韓国はムンが病的な北への盲従路線を突き進んでいますから、北の核の残存を脅威と感じるどころか内心は拍手さえ送っていることでしょう。

北の中距離核は、米国に向けて使うしかない単目的の長距離核と違って、多くの使い道があります。

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上の射程距離の図表をご覧ください。

北が日本に向けているミサイルの数は、2017年9月の米国防情報局の報告書によれば、1100基以上、内訳はスカッド800基、ノドン300基といったところですが、おそらくはそのうち60基の核弾頭を保有していると推定されています。

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この中距離核を放置した場合、日本の横須賀と東京が標的にされ、次いで中国の北方艦隊の根拠地の青島どころか首都すらも射程距離に入ってしまい、そのうえロシアの沿海州にあるロシア太平洋艦隊の母港ウラジオストクに対してもにらみが効くことになります。

さらに平和条約の締結まで進めば、先日来記事にしているように在韓米軍は段階的縮小か、撤退の方向に舵を切ることになりますから、朝鮮半島は軍事的真空地帯となります。

これを頭の軽い日本のメディアは「朝鮮半島の春」などと褒めそやすことでしょうが、現実には朝鮮半島にいったい誰が核の傘をさすのかという問題に直面するはずです。

すると選択肢は3ツです。

ひとつは、現行の米韓安保条約を、駐留ぬきに安保に改変することで核の傘だけの残すことですが、これだと「朝鮮半島の非核化」を主張する北の拒否に会うことでしょう。

第2には、中国です。この可能性はムン政権の中国傾斜の姿勢から高いと思われますが、意外にも北が反発するかもしれません。

北は韓国と異なり、鴨緑江を挟んで陸続きですから、常に中国の軍事的圧力と張り合ってきた歴史があります。

正恩の中国アレルギーは、昨今は抑えているようですが、ムンよりはるかに強いとみられています。

ただし現実的可能性が最も高いのは、この中国の核の傘に入ることであることに変わりありません。

それは端的に、朝鮮半島が南北共に中国の影響力圏に入ることと同義です。

第3には、南北共同で核を保有することです。

できるできないは別にして、南が戦略原潜を建造し、北が水中発射弾道ミサイル(SLBM)を提供するという方法です。

この南北共同核保有計画は、実はパククネの時代から密かに検討されていたようです。

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私はこのような高度な軍事技術は南北共に持っていないと考えていますが、やる気はあると思われます。

さて日本が導入予定のイージスアショアは、現在世界でもっとも進んだ弾道ミサイル防衛システムですが、北が数百発の通常弾頭のノドンに2割ていどの核弾頭を混ぜて飽和攻撃を仕掛けた場合、守りきることはできません。

この場合、日本が取り得る道は、理論的にはこれもまた3ツしかありません。

第1に、独自核の保有です。技術的にやってやれないことはありませんが、問題は世論です。きわめて世論の高いハードルが待ち構えているはずです。

安倍政権に改憲と核保有のふたつを通すことを望むのは、いくらなんでも荷が勝っています。

第2に、非核三原則を改訂して、米国に核を持ち込ませることです。おそらくこれがもっとも現実的なはずです。

米国はINF条約から離脱しましたから、地上発射型中距離核の保有も可能になりました。これは中国と北の中距離核に対して有効な抑止力となりえます。

これまた「持ち込ませない」原則を廃棄するとなると、野党とメディアは大騒ぎするのは必至です。

第3に、朝鮮半島、ないしは中国の核に屈伏して、彼らの言うがままに隷属することです。

そうなりたい方はご勝手に。私は死んでもイヤです。

というわけで、日本は早急に米国と中距離核について米国となんらかの交渉を持つ必要がでてきました。

わが国は米国に、ここで北の中距離核を認めてしまうことに断固として反対すべきです。

北に対してICBMにとどまらず、中距離核、SLBMの開発・保有も確実に放棄させる必要があります。

安倍氏はトランプがおかしな手打ちをしないように、日本はこの条件が達成されない場合に、独自核武装の検討を自民党防衛部会に命じざるをえないと通告すべきです。

 

 

2019年2月14日 (木)

米朝韓三者は在韓米軍撤退へとベクトルしている

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韓国保守はいまパニックになっているようです。 

鈴置高史氏が『正論」3月号で、朝鮮日報の金大中顧問の論説を取り上げています。 

金大中は同姓同名ですが、かつて日本で殺されそうになった元大統領とは別人で、保守系の論客です。 

このような内容です。鈴置氏の和訳と要約を引用します。

「①ムンジェイン政権は「親北遠米」に進路を定めた。このまま行けば韓米関係は終わる。米国は少なくとも米軍を韓国から引き上げるだろう。
②反米デモが横行するし、防衛費分担に吝嗇な韓国に対して、トランプ大統領はもう恋々とすまい。それよりも北朝鮮との関係修復と核取引にさらなる「うまみ」を見いだすだろう」(朝鮮日報2019年1月1日)

韓国の保守派とっては、在韓米軍は米韓関係が安定的に続くための担保でした。 

4bk7e4eb2f7250a93j_800c4502016年のソウルにおけるTHAAD反対の反米デモ。異様に某県の反米デモに酷似している。http://parstoday.com/ja/news/world-i12553

いくら親北派が大規模な反米デモをしようと、たとえ北朝鮮が好きで好きでたまらない男が大統領になろうとも、在韓米軍がいるかぎり赤化統一は不可能です。

つまり在韓米軍は、そのプレゼンスによって赤化統一を防ぐ堤防のような役割を果たしていたともいえるわけです。 

キム顧問の憂鬱は根拠のないことではありません。 

在韓米軍は、米国が望んでいて駐留しているわけではありません。 

よく左派の人たちは米国の世界制覇のために朝鮮半島に軍事基地を置く必要があるから、無理無体で在韓米軍を押しつけているのだ、という人がいますが間違いです。 

韓国にはそのような戦略的価値はありません。 

日本の横須賀を中心とする在日米軍が、米軍全体におけるいわば「東本社」だとすれば、韓国の基地は北の再侵攻をくい止めるための出張場ていどの前方展開基地にすぎません。 

韓国には横須賀に匹敵する根拠地はひとつもなく、あるのは簡単に撤収可能な空軍基地だけです。 

それも在韓米軍の航空機が故障すると、すぐに日本に飛んで来て修繕するような最前線基地でしかありません。 

M1202040防衛省 http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2010

米陸軍第2師団はかつて38度線付近にワイヤートラップとして駐屯していましたが、いつのまにか中部に下がり、内実はアフガン、イラクに抽出されてスカスカです。 

つまり、在韓米軍は米政府がその気にさえなれば、短期間で撤収が可能な存在にすぎません。 

米国から見れば、北の再侵攻は考えにくい情勢であり、対中対露の関係はあるものの、あくまでも韓国がすがって出ていかないでくれ、と言うから残留しているだけのことです。 

2003年、米国防総省は、ノムヒョン(廬武鉉)政権ができたことをきっかけにして、かねてからあった在韓米軍の撤退の方針を固めました。 

ちなみにこのノムヒョンによって抜擢されて大統領室長として政権中枢に座ったのが現大統領のムン・ジェインでした。 

このムン・ジェインの学生時代からの愛読書にリ・ヨンヒ『転換時代の論理』という本があるそうです。 

この本でリ・ヨンヒはこう述べています。 

「米帝国主義は世界の民族の内紛につけ込んで軍隊を送り、覇権を維持している。」(鈴置『米韓同盟消滅』) 

この本をムンは2017年の大統領選挙の時に「国民が読むべき一冊」として推奨していますから、彼の精神的バックボーンなのでしょう。 

リ・ヨンヒは反米思想家で、ムンは自伝『ムン・ジェインの運命』でこう述べています。

「米国を無条件に引き止め、米国の主張は真実だと思う。それに反する勢力はとにかく叩くべき悪だときめつける。そんな我が社会の姿を(リ・ヨンヒが)丸裸にしたのだ」(鈴置 前掲)

現在の青瓦台大統領府は中枢組織である秘書室のメンバー31人のうち、政権ナンバー2のイム・ジョンソク以下実に6割の19人までもが過激な学生運動か反米運動の出身者で占められています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-2.html 

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 右端がイム・ジョンソク大統領室長

「米帝によって分断されたわが民族の統一の一体化の回復にこそ、この政権の存在意義があるのだ」(鈴置前掲)

保守派にとって在韓米軍こそが安定した米韓関係の担保だとすれば、そっくりその正反対が彼ら親北派の目指すものとなります。 

つまり在韓米軍が存在するかぎり、分断された朝鮮民族の統一は不可能ということになります。 

ですから韓国政府中枢にとって、在韓米軍はなんとしてでも撤収させねばならない目の上のたんこぶなわけです。 

在韓米軍がいる意味は北の再侵攻に対する備えなのですから、その駐屯根拠を奪う必要があります。 

そのためには朝鮮戦争を正式に集結させることによって、駐留する理由をなくしてしまうことが前提です。 

5347860文正仁統一外交安全特別補佐官https://jp.sputniknews.com/opinion/201809175347884...

 それについてムンの軍師を務めるムン・ジョンイン(文正仁)統一外交安全特別補佐官は、米国外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』(2018年4月30日)でこう書いています。

「平和協定が締結されれば、在韓米軍の持続的な駐留を正当化しにくくなる」(鈴置前掲)

この認識と一対なのが、北の考えです。 

北は、トランプがシンガポール会談で在韓米軍に触れて「すぐにではないが、朝鮮半島の米軍兵士を故郷に返す」と言った発言をとらえて、朝鮮中央通信(2018年12月30日)でこう述べています。

「朝米交渉の足かせになっているのははなにか。それはまさに「朝鮮半島の非核化」に関する米国の誤った認識である。
6月12日の朝米会談共同声明には明らかに「朝鮮半島の非核化」と明示されており、,「北の非核化」との文言はどこにもない
・米国はいまからでも朝鮮半島の非核化という用語の意味を正確に認識せねばならず、特に地理の勉強すぐにとりかからねばならない。
朝鮮半島という言う時、我が共和国と同時に米国の核兵器を初めとする侵略兵器が展開されている南朝鮮地域を含む。
朝鮮半島非核化と言うときには、北と南の領域からすべての核威嚇要因を撤去すると正しく理解しなければならない。
・そう考えた時、朝鮮半島の非核化とは我々の核抑止力をなくする前に、「朝鮮に対する米国の核の脅威を完全に撤去すること」が正しい認識である」
(朝鮮中央通信2018年12月30日チョン・ヒョン論説 鈴置訳 太字引用者)

 読み違える余地もなく、あからさまなまでに明瞭な北の意志です。

北が言っていることはあくまでも相互非核化であって、単独非核化をする気などみじんもないということです。

逆に言えば、北に非核化を呑んだということは、米国がなんらかの「朝鮮半島非核化」に合意することをシンガポールで口にしたということになります。

鈴置氏によれば、今まではこんな北の挑発的発言に対して米国政府は直ちに「合法的な米韓同盟と非合法の北朝鮮の核を取引材料にしない」と一蹴したはずですが、今回はなんの反応もないということが、その憶測を裏付けています。

思えば、米朝首脳会談後の記者との質疑応答の中で、トランプは米国は北朝鮮との交渉中は米韓合同軍事演習を中止すると述べ、「そもそも米韓演習は「大変費用がかかるものであり、グアムから飛来する爆撃機も「長い時間がかかり高額だ」と述べました。

そもそも合同訓練をしないような軍事同盟はありえません。同盟は、常に共同で相互の軍隊を動かすことで有事に対応できるのであって、ただのハンコを押した文書ではないからです。

ですから、たとえ一的的にであれ共同訓練をしないという米国の方針は、韓国を同盟関係で見ないという意味にほかなりません。

そしてその半年後には、同盟堅持を主張していたマティスの事実上の解任がなされます。トランプは「在韓米軍撤退はない」と言っていますが、信じるに足りません。

このように見てくると、在韓米軍撤収を現実スケジュールに組み込んだ米国と、非核化をテコにして在韓米軍撤退を視野に入れた北朝鮮、そして在韓米軍を民族統一の最大の障害物と見る韓国政府、といった流れが見えてきます。

米朝韓三者の意志は、韓国保守派の気持とは裏腹に在韓米軍撤退へとベクトルしているようです。

 

 

2019年2月13日 (水)

天皇はエンペラーでもキング゙でもなく、ましてや一神教のゴッドではない

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やや驚きましたね。韓国外務省(外交部)が、先日のムン・ヒサン国家議長の天皇発言を韓国政府の見解としてしまいました。

「【ソウル聯合ニュース】韓国外交部の魯圭悳(ノ・ギュドク)報道官は12日の定例会見で、天皇の謝罪が旧日本軍慰安婦問題の解決になるとした文喜相(ムン・ヒサン)国会議長の発言に対し、「慰安婦被害者の方々の名誉・尊厳(の回復)と心の傷を癒やすためには、被害者中心のアプローチにより日本が真摯(しんし)な姿勢を見せる必要性があるという点を強調するための趣旨での言及と承知している」と述べた」(聯合2月12日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190212003000882?section=japan-relationship/index

Ajp20190212003000882_01_i_p4魯圭悳(ノ・ギュドク)外交部報道官(資料写真)聯合ニュース 

韓国は今回のレーダー照射事件で大方の日本人がわかってきたように、「謝る」という思考回路自体が欠落しています。 

ですから、仮に不用意な発言や行動だったとしても、日本人のようにすぐに頭を下げずに、さらに被せるように言い募るか、論点ずらしを開始します。 

とりあえず本意でなくても頭を下げて、強張ったその場を和らげようと考える日本人の対極です。 

日本人のすぐに頭を下げる習慣を私は好きではありませんが、かといって韓国のように場を読まないで雪だるま式に転げ落ちていくのを見せられると、なんともかともです。 

たぶん韓国は、いま日韓関係がこれ以下はない氷河期に突入していて、いかに日本の国民感情が怒りに満ちているのか、そしてそれは対北でどのような影響を及ぼすのか、念頭をよぎりもしないようです。 

国としての三半規管が狂っている、としか言いようがありません。 

ムン議長閣下、この時期に慰安婦問題に天皇の謝罪を求めるなど正気の沙汰ではないことくらい分からないのでしょうか。

日韓合意を一方的に踏みにじっておいて悪かったのひとこともなく、ハードルを上げる神経が分かりません。

そもそも天皇が謝ったからといって、納得する国民性じゃないことくらいわかっているでしょうに。

さて日本は既に2月8日の時点で韓国政府に抗議しています。ムン議長の発言が7日ですから、その翌日には対応したことになります。 

腰の重い外務省にしては素早い反応です。(パチパチ)

「8日に外務省の局長級で申し入れをし、翌9日には長嶺安政・駐韓大使から韓国外交省の第1次官に改めて申し入れた」(朝日2月12日)
https://www.asahi.com/articles/ASM2D3D1GM2DULFA002.html

日本政府は首相、官房長官、外相が揃って強い抗議の声を上げています。いかに日本がこの天皇発言を見過ごすつもりはないと考えているのかわかるでしょう。

「安倍晋三首相は12日午前の衆院予算委員会で、韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長が従軍慰安婦問題で「天皇陛下の謝罪が必要」との見解を示したことについて「発言を読んで本当に驚いた。強く抗議をするとともに謝罪と撤回を求めた」と述べた。国民民主党の渡辺周副代表への答弁」(日経2月12日)

首相は「強く抗議し撤回を要求」し、菅官房長官の会見では、更に「極めて遺憾である旨を厳しく申し入れをし強く抗議した」(朝日2月12日)という表現で、「極めて遺憾」という表現を使っています。 

これは「厳しく申し入れ」「強く抗議する」は、3番目に強い「抗議」の外交的表現です。 

C3634ed4f8ccaed2e49d40d0d270ab4b出典不明

外交表現は、国際的プロトコル(慣習)で縛られているので、勝手にしゃべるわけではありません。
 

日本外交において、「抗議」の意思表示は上図のように8段階になっています。 

もっとも強い「抗議」表現は「断固として非難する」で、これは「かばう余地のない、絶対に許せない、極悪非道な行動に対する痛烈な批判」の場合とされています。 

この表現は一般的には友好国には使いません。使うのはISのテロなどで、逆に使った場合、こちらとしても大使召還、国交断絶の用意があるということだからです。 

2番目の「非難する」は、一般的にも使いますからつい聞き流してしまいそうになりますが、外交的にはこれ以上怒らせると、後は知らんゾ、というきつい意味です。 

3番目の「極めて遺憾」は、もう堪忍袋の緒が切れかかっているゾ、なんとかしろ、という意味です。 

2番目の「非難する」が使われたのはロシアのウクライナ侵攻時ですから、「極めて遺憾」という表現は友好国としてはギリギリの強い表現だと思って下さい。

韓国が友好国と非友好国のボーダーライン上だと日本政府は認識した、という意味ととってよいでしょう。

Photoムン・ヒサン国会議長 出典不明

ところで、今回のムン国会議長の発言はこのようなものです。

「一言でいいのだ。日本を代表する首相かあるいは、私としては間もなく退位される天皇が望ましいと思う。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか
そのような方が一度おばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと一言いえば、すっかり解消されるだろう」と語った」(ブルームバーグ2月28日)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-08/PMLGIP6KLVR801

ムン氏は「戦犯などと言っていない」なんて言っているようですが、怒ったブルームバーグは音声まで公開し、英訳も載せています。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-02-11/top-japan-diplomat-warns-south-korean-lawmaker-on-emperor-remark

確かに"the main culprit of war crimes"と言っていますね。つまらない言い訳はしないようにね。

このムン発言の中の「戦犯の息子」うんぬんという部分は、日本の左派の天皇戦争責任説を密輸したもので、日頃から天皇を戦犯裁判にかけろと叫ぶ諸兄の今回のムン発言へのご意見を承りたいものです。

今回のムン発言の問題の本質は、そこにはありません。

天皇に対して「慰安婦の手を握り謝罪しろ」と要請をしているわけで、これは今上陛下を「最高権力者」と見立てて救済を請願した行為ととってよいでしょう。

ムン氏は明治欽定憲法の天皇の地位を復活させたいようです。

ムン氏はこうも言っています。

「元慰安婦が望むのは金ではなく、安倍総理大臣の謝罪のひと言だ。歴史の前に時効はなく、首脳間の合意は何の役にも立たない。それがなぜできないのか。今からでも遅くない」(NHK2月11日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181211/k10011743661000.html

ムン氏は安倍首相の謝罪と並べて天皇の謝罪を要求しているわけで、いかにこの日韓議連会長を務める「知日派」が、天皇という存在に無知であるのかわかります。

この天皇にたいする無知蒙昧さは、かつてイ・ミョンバク大統領が竹島に上陸して、その前後に「日王にひざまづかせて謝罪させる」と発言したときにも現れました。

その時のわが国は、イ大統領の「上陸」という政治的挑発よりも、天皇に対する土下座要求をしたことに反応しました。

この「天皇」に対する日本人の民族的感性はなかなか外国人には説明が難しいのですが、日本民族共通の「魂の奥深くにある尊いもの」を汚されたとでも表現したらいいのでしょうか。

Slide03河合隼雄http://www.kawaihayao.jp/ja/

心理学者の河合隼雄氏が興味深いことを書いています。

河合氏はユングの深層心理学を学ぶうちに日本文化に根ざした心理療法にたどり着いた人です。

彼は、その文脈で天皇が何かと考えたのですね。河合氏は、『中空構造の日本の深層』という本で、古事記から天皇をとらえていきます。

彼は、天皇を外国の国王や皇帝と較べること自体が大きな間違いではないかと思うようになります。

では、戦前言われたような「神」かといえば、これもまた違うのではないかとも思っています。

日本でいう「神」は、西欧的キリスト教の一神教的絶対神ではありません。

古事記に描かれているように、多くの神々の中心に座していて、深く尊敬されているが権力を行使しない「神」が天皇なのです。

「何かをする」のは、時の為政者たちであって、天皇は中心に座して祭祀を執り行い世の平安を祈念するわけです。

ですから、よくある天皇に対する外国人の誤解は「日本の最高権力者」という上下関係で見てしまうことです。

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マッカーサーなどは、わざわざ天皇とのツーショットに、外交プロトコルを意識的に無視しあえて作業服を着て現れました。

この写真を撮らせて日本国民に見せることで、自分が天皇に代わる最高権力者であることを日本国民に分からせようとしました。

天皇とは、マッカーサーと権力争いするような存在ではなく、むしろ民族の深い内側にある祠のような場所におわす存在なのです。

韓国があたりまえに使う「日王」呼ばわりも似た誤解から来ています。

天皇はエンペラーでもゴッドでもないし、ましてやキングなどではないのです。

ですからそう呼ぶ心根自体がわが国民の禁忌に触れるわけです。

このムン発言は、日本民族の本質にふれるが故に見過ごしにはできません。

韓国は日本人が魂の奥で大事にしている部分を泥足で踏みにじったのです。

ならばこのような粗暴野卑な国を、今年5月の新天皇の即位の儀式に招待すべきではありません。

ちなみに日韓議連の額賀氏が韓国をお忍びで訪問したそうです。

「超党派の日韓議員連盟の額賀福志郎会長が12日、非公開で韓国を訪問した。複数の外交消息筋が明らかにした。
 両国関係は強制徴用訴訟の判決や韓国軍のレーダー照射問題などに加え、韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長が慰安婦問題で「天皇の謝罪が必要」と発言したことでさらに悪化している。こうした中、額賀氏が訪韓したのは関係改善に向けた打開策を模索するためとみられる。
額賀氏は同日夕方、韓日議員連盟の姜昌一(カン・チャンイル)会長(与党・共に民主党)と会談した。13日は李洛淵(イ・ナクヨン)首相と会談するという」(聯合2月12日)

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/02/12/2019021280193.html

今回のムン議長が、額賀氏のカウンターパートだったからもあるのでしょうが、今さらなにをしにいくのか皆目見当につきません。

動くならば、去年11月の日韓議事連総会時に、日本国民を代表して苦言を呈するべきでした。

それを懐手して無為で見逃してしまって、ここまで状況が悪化しきってから行ってみてもなんの役にもたちません。

いわゆる親韓派は、ここまでモンスター化した韓国の反日意識を育てたのが、他ならぬ自分たちの「友好」のあり方にあることに、いいかかげん気がつくべきです。

 

 

 

2019年2月12日 (火)

米朝会談の後にくるのは?

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トランプが2月5日の一般教書演説の中で得意そうにとりあげたのは、正恩との第2回会談のことでした。 

1000x1ttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-...

トランプよりも北朝鮮から煮え湯を呑まされた回数が多い私たちは、米朝会談を外交的成果として分類してしまっているような口ぶりには失望を覚えます。

去年2018年1月の一般教書演説では北を「邪悪」と罵りましたが、今は「非常に良好な関係」とか「友人」と言っています。

いくらなんでも「友人」はないでしょうが、外交儀礼を無視するのが持ち味のトランプがそんなことを言ったらシャレにならんでしょうに。

いおいトランプさん、そこまであの坊やを信じると、ヒドイ目にあうぞと忠告のひとつもしたい気分です。

トランプの突破力は認めますが、言っていることがディールなのか本気なのかさっぱり分かりません。

正直言って、フツーの保守政治家であるマイク・ペンスに代わって欲しい。

おそらく今度の米朝会談では、なにも具体的進展はないでしょう。

「非核化」という言葉だけは盛大に連呼されるでしょうが、現実の収穫はごく限られた核施設の検証と、どうでもいいような実験場の廃棄ていどのはずです。 

たぶん北の最大限の譲歩は、長距離核の弾道ミサイルの検証と廃棄でしょう。

これもとうぶんは空証文で、実際にIAEAが査察できるのはかなり先まで引き延ばされるはずです。 

日本に向けた中距離核については、安倍氏の強い要請で議題には登っているでしょうが、とりあえずは「米国の安全」が最優先されます。 

拉致問題は議題にすら乗らないかもしれません。 

トランプにとってシンガポール会談で拉致を口にしたことで、日本に対する義理は済んだと考えているふしがあります。 

中距離核についても、トランプは安倍氏に対して「待て待て焦るな、まだ終わったわけじゃない。第2段階ってもんがあるんだ」とでも答えそうです。 

第2段階ですか?そりゃありますよ。

それがこの第2回会談最大の「収穫」となるかもしれない米朝平和条約の締結です。 

それは北の「非核化の固い意志」を引き換えにし、その担保として長距離核の廃棄でしょう。 

それで「米朝平和条約」の締結合意までゲットできれば、正恩にとって万々歳のはずです。 

というのは、平和条約締結に合意するという意味は、とりもなおさず敵対関係の消滅を意味するからです。 

それはふたつの事態を招来します。 

まず第1に、北への国連制裁の緩和、ないしは中止です。

第2に、在韓米軍の撤退です。 

Photohttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO30207770Y8A50...

北の核の主戦力である中距離核を残してしまっては、なんの意味もないと私たち日本人は思いますが、そこは第2段階の平和条約交渉の中で詰めるというあいまいな解決となります。

米国はINF条約を廃棄した流れから、北や中国を標的とした中距離核の配備を復活させて抑止力とするつもりかもしれません。

その場合、日本列島にも中距離核が配備される可能性がありますが、それ自体は独自核を事実上保有できない日本にとって決して悪い話ではありません。

というか、現実に私たちを標的とする中国や北の中距離核に対抗するにはこれ以外方法がないことは事実ですが、核の脅威は元から断たなければダメです。

それはさておき、北はその平和条約交渉の前提として米朝間の話合いをするに足る「平和な国際環境」ていどは要求するかもしれません。

それが経済制裁の緩和、ないしは中止ですが、ここが踏んばりどころで、これを緩和することがあれば、北の思うつぼです。

緩めたら最後、もう一回国際的制裁を再構築するのはむずかしいのですから、簡単にこのカードを手放してはなりません。

また北が「非核化」すれば、朝鮮戦争は形式的にも終結しますから、国連軍も解体され、在韓米軍も駐留する理由がなくなります。

000308074ブルックス国連軍・米韓連合軍司令官

これが北がシンガポール会談で米国に呑ませた「朝鮮半島の非核化」の真の意味です。

一方中露が北の「非核化」を望んでいる理由は、自分の頭に北の弾道ミサイルが飛んでくるということもありますが、いまひとつは非核化が達成されれば、在韓米軍が駐留する意味がなくなるからです。

在韓米軍は、中露にとっても大いなる目の上のたんこぶだからです。

形式的には国連軍=在韓米軍ではありませんから、在韓米軍は平和条約締結移行も米韓安保条約で地位は保証されているはずです。

平和条約によって、北の再侵攻と核の脅威は消えたと解釈されますから、駐留する目的は対中、対露の前方展開基地としてのみということになります。

ここまでは在日米軍と一緒ですが、大きな違いは現在の韓国政府が在韓米軍の駐留を望まないことです。

もっと有体にいえば、さっさと出て行って欲しいくらいが韓国政府の本音なのです。

これについてはムンジェインの言動を検証せねばなりませんから、次回に回します。

 

 

 

 

2019年2月11日 (月)

日韓関係のもうひとつのCVID

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日韓関係が混迷の度を深めたという報じ方を、よくメディアはしますが、逆でしょう。 

日韓関係は急速にCVIDの定方向に整理されつつあります。

ただしこちらの"D"Dismantlement(解体)されたのは、nuclear weaponsではなく、日韓関係のDiplomacy(外交)ですが。

とうとう韓国国会議長殿が:軽々とこんなエポックメーキングなことを口走るありさまです。

800x1ムン・ヒサン国会議長 ブルームバーグ

「韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長は、日韓間の長年の懸案である従軍慰安婦問題が日本の天皇による元慰安婦への謝罪の一言で解決するとの見解を示した。
文在寅大統領に近い文議長(73)は7日のブルームバーグとのインタビューで、「一言でいいのだ。日本を代表する首相かあるいは、私としては間もなく退位される天皇が望ましいと思う。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか
そのような方が一度おばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと一言いえば、すっかり解消されるだろう」と語った」(ブルームバーグ2月28日)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-08/PMLGIP6KLVR801

「天皇は戦争犯罪主犯の息子」ですか・・・。ルビコン河を渡っちゃいましたね。といっても渡りっぱなしで、我々から見ればとっくに彼岸の国なんですがね。

ギャーテーギャーテー、ハラソーギャテー、ボジソワカ(般若心経ですよ)。

この国会議長のほうのムンは、大統領の特使として日本にも来たことがある男ですから、このセリフはムン大統領閣下の言葉ととるべきです。

2012年のイ・ヨンバクのこの発言をテンプレにしています。ね、そっくりでしょう。

「李明博韓国大統領は日王(天皇)について「痛惜の念などという単語ひとつを言いに来るのなら、訪韓の必要はない」「(日王が)『痛惜の念』などという良く分からない単語を持ってくるだけなら、来る必要はない。
韓国に来たいのであれば、独立運動家を回って跪いて謝るべきだ」と謝罪を要求する発言を行った」

韓国による天皇謝罪要求 - Wikipedia

このブルームバーグの記事を書いたのは米国人ですからムン議長が天皇を「日王」とよんだかどうか確認できませんが、おそらくそのように呼んだはずです。

このイ発言で日韓関係は氷河期に突入しましたが、今回日本国民が受けるショックは限定されたものになるでしょう。

その理由は日韓関係が2012年からの氷河期に入って久しく、絶対零度であるマイナス273.15℃に近づいただけのことだからです。

ですから、日本政府の対応は河野外相がダバオでこう言ったきりです。

「発言には気をつけていただきたい」と苦言を呈した」(共同2月10日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190210-00000119-kyodonews-pol

きっと苦虫をかみつぶしたような顔で言ったのでしょうが、気持が悪いくらいに抑えた表現です。

あーあ、回答期限を無視した上に、ヒサンの奴、米朝会談直前にヒサンなことを言いおってからに、これ以上こじらせてどうするの、という太郎氏のボヤキが聞こえてきそうです。

さて、これだけ日韓関係がこじれるのは、主役のムン・ジェインの強烈なキャラもさることながら、従来は日韓関係の間に入って世話焼きオバさんをしていた米国をまったく期待できなくなったからです。

今回レーダー照射事件でハリス駐韓大使が韓国国防部長官と面会したのが、1月28日ですから、事件から1カ月以上たってしまっているわけで、ずいぶんと熱のない話です。

その場でハリス大使は「ハリス大使は両国の確執に懸念を示した」(朝鮮日報)そうです。

いまの日韓関係において、その修復を企図する米国外交関係者は、国務省、民間を通じてほとんど姿を消しました。

かつての慰安婦合意において世話焼きオバさんを演じたのは、NSC上級アジア部長兼東アジア担当大統領特別補佐官としてジャパンハンドラーをしていたマイケル・グリーンだといわれています。 

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 彼は日韓関係の障害であった慰安婦問題を、日本に頭を下げさせ、癒し財団をつくることで終わりにしたかったのでしょう。 

もちろん北とその後ろ楯である中国に対抗している日米韓による三国疑似同盟を維持するためですが、そのグリーンの思惑は、ムンが慰安婦財団の解散をすることによって一方的に破壊されました。 

それどころか、徴用工判決で、日韓基本条約の根幹である日韓請求権協定を破壊するところまで進み、その上念押しのようなレーダー照射事件です。 

いま、彼のようなタイプで手腕を発揮する米国人は、ほとんどいなくなったような気がします。 

現在の米国の関心は北に対して向けられており、韓国は添え物にすぎないような空気が漂っています。 

いわば、トランプがムンに注文を付けているのは、南北問題について余計なことで出しゃばるなということだけにすぎず、この国がどのようになっていこうと意識の外にあるように見えます。 

これは日韓が、米国を仲立ちとしてかろうじて形骸化しながらも維持してきた日韓防衛協力体制の事実上の終焉を意味します。

ハリス大使は、当然のこととしてこの事件の顛末と韓国側の言い分を専門家(ハリス氏はP-3Cのパイロットでした)の意見を添えてトランプに報告したはずです。

これは在韓米軍が撤退する方向を加速させる新たな材料となっていくはずです。

残念ですが、在韓米軍の撤退は、わが国の安全保障に直接関わる問題でありながら、日本は関与できません。

その前提となる日韓基本条約が「徴用工」判決で破壊され、さらには軍事的にもレーダー照射事件による日韓防衛協力の終焉でダメを押されたからです。

今後韓国経済が再びデフォールトしようと、日本が前回のように一肌脱ぐということは、国民感情が許さないでしょう。

かくして韓国ウォンは、通貨スワップが結べないまま、国際通貨の裏書きなきままに、経済危機を迎えることになりますが、知ったことではありません。

前回のようにIMFにすがると徹底的にスパルタンにしごかれますから、中国にすがるのでしょうね。

米国が手を引き、日本も距離を開けるとなると、残るは中国しかありませんからね。

つまり外交--軍事-経済、いかなる形であれ関わろうにも、日本にとってそのとっかかりが消滅してしまったわけです。

2019年2月10日 (日)

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2019年2月 9日 (土)

山路敬介氏寄稿 県民投票・自民県連はなぜ大敗したのか 最終回

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山路さんの最終回です。ありがとうございました。

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      ■山路敬介氏寄稿 県民投票・自民県連はなぜ大敗したのか 最終回
                                                                                               山路敬介

 

■ 5市長たちの判断を「違法」とした謝花副知事の傲慢 

市議会の再議での否決をうけて、「県民投票」を行わない旨を最初に表明したのは下地宮古島市長でした。

その後に次々と他の市長たちの意思表示がつづきましたが、早々と謝花副市長による「事務処理を行う事は義務」で、それを成さない事は「違法である」との見解が出されています。 

その根拠は地方自治法177条には「議会で否決されても、経費を支出することができる」と規定されていることや、県条例による「再議に付すものとする」等々から、義務的な執行であると解釈すべきというものです。

これは私も一般論としてみれば、その通りと思います。

しかし、今回のケースはもっと詳細に分別して見るべきで、おそらく訴訟などの場では県の側に理がなかったろうと思います。

多くの県民やほとんどの国民が理解は、下地市長らの抵抗には法的裏づけはなく、2月24日県民投票の実施という条例に定められた日程を意識した「政治的賭け」に勝ったものであろう、との認識ではないでしょうか。

しかし、そうではありません。

他の市長たちの事は詳らかにわかりませんが、下地市長の考えは県が「技術的助言」から「勧告」にすすみ、「是正の要求」が出れば自治紛争処理委員会への申し立てを行う、という法的決着を念頭においた自信と決意をハッキリ持っていました。

■宮崎衆議院議員の勉強資料をプロパガンダにつかう沖タイ

そのようななか、1月12日の沖縄タイムスはまるでスクープででもあるかのように一面大半を用い、宮崎衆議院議員が勉強会で用いたレジュメのペーパーの事を大きく取り上げました。

見出しは「不参加判断の根拠か、自民国会議員が作成」とし、リードで「沖縄タイムスは1月12日までに~複数の資料を入手した」となっていて、私はびっくりして思わず卒倒しそうでした。

議員でも記者でも、自民党員ですらない私が持っているものと同じものだったからです。「さすが沖タイ!」、手をたたいて大爆笑でした。

このペーパーはたぶん12月20日頃には私の手元にあったと思うのですが、誰から頂いたものかも思い出せません。

一読して「裁判官はこのような判断はしないだろうな」という感じだったので、うっちゃっておいたのです。

下地市長がこれに目を通したかどうか定かではありませんが、この説を「不参加判断の根拠」としたという事はあり得ません。

しかしその後、このペーパーにあるような論理を否定する専門家の意見が連日多数二紙に載せられ、そこから5市長らの主張を退ける事に成功しているかのような紙面構成が続きました。

まさに「空を切っている」ような議論です。その多くは宮崎氏がポイントとした「義務費か否か」であり、義務費であれば当然に「執行する義務」があるというものでした。

沖縄二紙はじめ多くの方々はお忘れかもしれませんが、五市長は県条令の発効を重んじ、市の原案として市議会で「義務費」として議会にかけているのです。

執行されるときには「義務費」として計上されるのですから、これは当然です。また、条令そのものが違法であるとの判断をしているわけでもないのは、議会提案をしている事から言うまでもない事です。

しかし、市議会にて否決され、再議に付しても再び否決されます。それでも原案執行権を行使せねばならない事かどうかという判断は、やはり基本的には市長の裁量の範疇でしょう。

何でもかんでも県の決定に服さなければならないとすれば、これはもう機関委任事務時代に逆もどりであり、都道府県と普通地方公共団体の平等の原則に反します。

ですから、ここは法文との整合性と考え合わせると、「条令の内容による」と考えざるを得ないのです。

ちなみに、沖タイに県幹部の話として載っていましたが「出向者などの給与は義務費で、それが市長の判断で執行されないとなれば大問題だ」というもので、それはそうでしょう。

しかし、そういうケースでの裁量権が市長にあるとは考えられず、これは明確に違法でしょう。

たぶん最初の下地市長の会見を最初から最後まで聞いておれば分かったと思うのですが、市長は「諮問的住民投票だ」といい、「住民投票もいろいろある」という事を言いました。

訴訟をにらんでそれ以上の事を言わなかったのか、メディア嫌いなのかわかりませんが、聞かれもしない事は慎んでいたように思います。

法律や政令は、条例とは手続きや取扱のうえで明確な違いがあります。

住民投票の類型は「法律を根拠とするもの」と「法律に基づかないもの」と二つにわかれ、その種類も、法律に根拠がある「拘束的住民投票」と、法律を根拠としない住民の多数意見を知るためにする「諮問的住民投票」があります。

今回の住民投票はもちろん法律に基づかない「拘束的住民投票」であり、そこに至ってまで議会の反対を押し切って原案を執行すべき義務が市長に課せられるはずはありません。

まして、逆にそこまで市長の原案執行権を拡大解釈していいのか、という別の問題も生起します。

保守派を自任する天方弁護士は沖タイ紙で、「住民投票は民主主義や国民主権を補完する意味であり、市長の判断で止めるべきではない」としましたが、本末転倒でしょう。

憲法に明記されているように我が国は国民主権国家であり、その実行の多くは民主主義的な選挙で選ばれた首長であり各議員たちが担っているので住民投票は確かにそれらを補完する手段でしょうが、議員たちがする判断を覆す判断になり得るとは言えません。

でなかった県の「是正要求」

また、この騒動で一番私が注目していたのが、国の関与である「是正の要求」が出るか否かでした。

それまでの「助言」や「勧告」は県の判断で出せるのですが、「是正の要求」となると国のお墨付きとなるからです。

市の事務の処理が法令に違反していると認められるときや、著しく適正を欠き、かつ明らかに公益を害しているときは国は県を介して市に対し「是正の要求」を出すものとしています。

これはデニー知事が五市抜きでの県民投票を決断したことや、その後三択での論議が出てきたので、うやむやになった感じがありますが、結果的には出ていません。

総務省行政課の担当者は記者から県民投票の実施は市町村の義務かどうかを問われ、「地方自治法では『条例の定めるところによる』としている。それは最終的に条令の解釈の話であり、一般論としては答えられない」としています。

その後、大臣も「条例の内容による」と答えています。

そうなると、知事が1月12日に「来週にも是正の要求をする予定」とハッキリ二紙が報道した事や、謝花副知事が市長らのした事を傲慢にも「違法」と決めつけた事はどうなのか。まったく面白くない幕切れでした。

                                                                                                       了
                                              文責 山路 敬介

2019年2月 8日 (金)

山路敬介氏寄稿 県民投票・自民県連はなぜ大敗したのかその3

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山路氏寄稿の3回目です。

エルドリッヂ氏の県民投票に対する意見は下記などでみることができます。
http://ospreyfuanclub.hatenablog.com/entry/2018/12/02/144422

                                      ~~~~~

県民投票・自民県連はなぜ大敗したのかその3
                                                                                 山路敬介
 

■ ロバート・エルドリッヂ氏の県民投票賛成論について

エルドリッヂ氏は一貫して県民投票賛成派でした。

その前提として、辺野古移設にかわる与勝半島南海域の埋め立てを柱とした優れたプランを持っておられ、日・米・県・米軍ともにより良い方向に進む理想からのものだと思います。

また、朝日新聞紙上で「保守系の方々には県民投票実施に反対したりボイコットしたりする動きがありますが、政府の言う「唯一の解決策」である辺野古への移設に本当に賛成であれば、その立場から大いに参加すればいい」などとしています。

いずれにしろ県民投票が三択で行われる事は決定したので、現時点では氏の言うとおりではあります。ただ、今回の県民投票の話が煮詰まる相当以前からチャンネル桜などで「基地問題で「住民投票」を行なうべし」と強調されていたと思います。根っからの「県民投票派」と言って良いでしょう。

あるいは米国の立場であればエルドリッヂ氏が考えるように、沖縄県民も米軍の役割りを理解し、米軍が駐留する意義を沖縄県民が誇りを持って正しく知るべきでしょうし、米政府もそう強く望むはずです。

利便的な面でも与勝半島沖がベストなのでしょう。日本政府の広報のやり方や取り組み方に問題があるのも言うまでもありません。

そうでなければ安保関係だって正常なカタチで長続きしやしません。県民の合意だって、ないよりあった方がいいに決まっています。

ですので、エルドリッジ氏の考えは「間違い」とまでは言えませんが、理想論的な「べき論」にすぎません。

大変失礼ながら、理想と善意の感情から現実をからめとられた知識人や過度な民主主義愛好者が結果的に陥った「dupes」(二重奏)、こういう言葉が頭に浮かんで来てしまいます。

率直にいって、辺野古移設を廃案にした場合において、なぜ代わりに与勝半島沖に移設合意が出来ると考えられるのか? そこが不思議です。

現実問題として与勝半島であれ勝連半島であれ、辺野古移設が廃案になった場合の行先きには決してなりません。断言しますが、辺野古がダメになれば普天間の代替え施設は出来ません。

辺野古はベストではないにはしても、もともと米軍基地内であり、埋め立て海域も米軍使用域内です。

したがって他に立候補のあった土地よりも権利関係の整理もしやすく、住民に対する影響が最小限にとどめられる事から最終的となったのです。

例えエルドリッヂ氏がいうように「普天間は世界一危険な基地」という認識が間違ったものであり、意図して作り出されたものであろうとも、普天間移設は沖縄県の強い要望を起源としていて、その代替えとして日・米・県の合意事項になった事の重要性を軽くみるべきではありません。

エルドリッヂ氏は県民投票が移設反対派が全基地撤去=日米安保廃棄派の武器だということを忘れて いる

また、エルドリッヂ氏は、辺野古反対派の最強硬部分の最終目標は明確に「沖縄県からの米軍基地の全撤退」であり、今回の県民投票もその文脈上にある事を理解すべきです。

この目標のもとに彼らは復帰以来60年近くもかわらず運動を保ち続けているのです。この事は特別彼らが隠し立てしている事ではなく、少し彼らの中に分け入ってみれば分かるハズです。

彼らは沖縄返還のさい、「米軍基地付きの返還ならば、本土復帰はいらない」と方針転換した者たちの精神的末裔です。

驚くべき事に中共やソ連に与しようが、日本に復帰しようが、それすら問題ではなかったほどの妄念と執念を受け継いでいる人々が今でも核心を成しているのです。

そのうえで、「世界一危険な普天間基地」を共通認識に達せる事にはすでに成功していて、先の「取り消し訴訟」の確定判決にもなっています。

つまり「普天間の危険性の除去」は日本政府が全責任を負って必ず成し遂げなければならない重要課題となったのです。

逆に、だからこそ彼ら辺野古反対派の眼中から「普天間問題」が消えたのです。

辺野古移設さえ阻止出来れば、どれだけ時間がかかろうとも後でじっくり、しかし強烈に政府を締め上げ続けていけば良い事です。

これではいわば「宜野湾市民の切り捨て」ですが、以降は運動理論的に「第二行動」との位置付けとしているので、彼らの中に矛盾は全くありません。

その彼らもギリギリの判断をしていて、翁長前知事とは那覇軍港の移設と辺野古絶対阻止を取引し、今はすべて「辺野古阻止」だけを重大問題として全精力を傾注せざるを得ない事情もありました。

それだけに「辺野古阻止」は正念場とみています。

にもかかららず、「辺野古を止めて与勝半島沖に」などと言うのは実現性を全く見ない議論であり、もはや三周遅れです。

また、特に沖縄県に限った事ではなく、占領期以降、日本人全体的に国防意識や米軍駐留の意義などに対する意識は低いままです。

その面で日本は特殊な国で、軍を誇りとする米国や多くの立派な他国とは違うのです。自衛隊すら憲法に書き込む事が困難な情勢であり、先の「取り消し判決」でも米軍基地を指して「迷惑施設」との語を用いたほどです。

北朝鮮や中共の圧力が高まる中にあってすらも、この様です。

米国人(エ氏ではありません)はこのような日本人のメンタリティを笑うでしょうが、そうさせたのは米国の要請だったし米軍占領期に由来する事も確かなのです。

このような国民の感性は一朝一夕では変わるものではなく、ゆえに沖縄県民全体的なコンセンサスを待つ事など全く現実的ではありません。

国防は「国家の責任」としてあるのであり、沖縄県民の民意が不可欠なのではありません。

たとえ民主主義の昂進に役立たないにしても、原則に外れない限りこれまでの経緯や国家の機能と役割を軽んじるべきではありません。

                                                                                      (続く)







 

2019年2月 7日 (木)

山路敬介氏寄稿 県民投票・自民県連はなぜ大敗したのかその2

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山路氏の寄稿2回目です。

                                    ~~~~~~~~

              ■ 県民投票・自民県連はなぜ大敗したのかその2
                                                                                     山路敬介

■ 「辺野古反対派」の想定する票読み

主に反対派の関係者によると、共産党など辺野古反対派が想定する県民投票の数字の目論見は、投票率は50%以上、三択においてもそのうち80%の45万票内外が「反対」に票を投じる見込みとのことです。 

仮にそれを下回るとしても、デニー知事の知事選の得票数の36万票を確保できれば大勝利であり、県条例10条の2で定められた知事などに対する「結果の尊重義務」が生じる26万票程度は最低でも確実と見ているようです。 

「三択」になった事については、投票率を最大10%程度押し下げる事につながったとしても、50%を割り込む事はまずないだろうとの見立てです。 

義務的な選挙とは違い、意思表示をハッキリしたい人こそが足を運ぶのが県民投票の特徴で、「どちらでもない」は、投票者の意思表示の欲求を満たせないので、初めから投票には行かないだろう。 

そうであれば強い主張と展開するよりも、さながら投票率を上げるための運動を中心に訴えた方がイメージが良いという判断のようです。 

また、普天間を除外できた以上、実質的には「事実上の二択」なので賛成派の運動は浸透せず、そのような運動が仮に出来たとしても散発的にすぎない。 

ならば取りこぼしがないように、主として投票をうながす方向でアナウンスし、合わせて好印象を得られる運動に特化すべき。という事のようです。 

自民の議員さんらにも話を聞きましたが、三択に変更になった利を説くばかりで、特にここに書くような価値のある話は何もありませんでした。 

結果は概ね「移設反対派」の目論見に近いものになるのだろうと思います。 

 反対派の「県民投票のねらい」

反対派の「県民投票のねらい」にはいくつかあって、知事や県当局とは同床異夢である部分もあります。 

彼らはどうしても「辺野古阻止の為にはまず県論の集約をする必要がある」という発想をしてしまうのですが、その点は翁長県政当時から今の沖縄県も似たり寄ったりのようです。 

県当局もまだ共産党や武田真一郎成蹊大教授の法理論に未練があるような感じで、それはつまり「民意こそが最大の公益」と捉え、その点から「公益撤回は可能」とする考え方です。 

県民投票は「そのための準備」という側面がまずあります。しかし、時期を失しているうえにハードルも高く、説明は省きますがこれは無理筋です。 

次に「普天間の危険性の除去」と「辺野古移設」を人々の議論や意識のうえで分断するねらいです。 

ある県政与党県議は県条例の審議のころ、「普天間移設の是非とともにするのであれば、県民投票はしなくても良い」と明言していました。  

住民投票の本来的意義を考えれば、随分と無茶な意見ですが、これが本音です。 

先の取り消し訴訟の確定判決では「辺野古移設反対が民意だとしても、普天間移設の民意に反しているとは言えない」とされています。 

ですから反対運動側は、理論上「普天間基地の返還」と「辺野古移設の承認」の関連性を絶つ必要があります。

最高裁判決前までのように、「普天間基地の代替えを考えるのは国の責任だ」という理屈だけでは運動が持たなくなって来ているのです。

そこで考え出したのが、辺野古の可否一本での住民投票でした。

これが全県下で実行される事で、県議会の意思として普天間を条例案から除外でき、辺野古と普天間を分断できるというマジックです。

その意義は彼らの頭の中では絶大な価値があり、運動における政治的効果も期待できるというもののようです。

■   デニー知事の評価をめぐって 

少し話が少しそれるようですが、篠原章氏は12月18日の批評comのなかでこう述べています。

「これまでの玉城知事の言動や動静を見るかぎり、翁長前知事が強調してきた「被害者・沖縄」という視点が大幅に後退していることは明らかです。「琉球史」を背負いこんだ旧琉球国の長ではなく、」、「玉城知事による自治体行政の長としての「ふるまい」が相対的に(翁長前知事に比べて)ノーマルである現状は、和解に向けた1つのチャンスと捉えてよいだろう」

私もなにしろ翁長前知事の「魂の飢餓感」だの、「銃剣とブルトーザー」だのの時代錯誤的な過剰演出には辟易とし、時には本気で吐き気がしてしまったくらい嫌悪していたクチなので、デニー知事のプレーンさには好感さえ感じています。 

けれど、「和解に向けた機会が訪れている」という事はないです。万一それがあるとすれば、デニー知事二期目の退任直前の事になるんじゃないでしょうか。 

デニー知事はかつて民主党時代には「辺野古やむなし」の立場であった事もあり、熱心ではないにしろ沖縄防衛協会の顧問だった事もありました。 

翁長前知事と同じく日米同盟や安保体制にも理解があります。そもそも辺野古問題には、あまり関心がないほうだったと思います。

だからこそ、知事への締め付けの必要を生んでいます。 

デニー知事の従来のそうした認識からすれば、政府との着地点を模索するうえで共通の土台を形成する便利もあり得ますが、同時に辺野古最強硬反対派の疑念が付きまとう要因です。

そのデニー氏が翁長前知事の遺言様の鶴の一声によってダークホースとして躍り出、弔い合戦の風に乗って当選したのです。 

それは何もデニー知事の、早く言えば「実力」とか「適正」というものによる勝因ではありません。 

政治的な力を増大する目論見ゆえに「辺野古移設反対」を利用して日本政府と喧嘩し続ける事に利益を見出す共産党や社民党、それに連なる沖縄二紙などの強烈な影響力によってこそ生まれた知事なのです。 

そうした支援者から、デニー知事は政府に対して何か新しい発展的な提案が出来るような資格は最初から与えられていないし、それをする能力も、翁長氏のような自力や胆力も持ち合わせていません。出来るとすればせいぜい、水面下で政府に抜け穴を作ってやるくらいなものです。 

共産党や辺野古反対派の核心部分が考える事は常人には考えもつかないもので、自分たちがこしらえた知事にすらも首輪をしておかないと安心が行かないのです。 

かつての仲井眞元知事には「寝返った」として憎み続けてきたし、翁長前知事は少し目を離せば政府に寄ったような言論をした要注意人物でもありました。 

保守出身で県民に対してカリスマ性がある翁長氏などもちろん完全には信頼していなく、一面では「何をやるかわからない危険人物」という認識さえしていました。 

ですので、デニー知事や県当局を県民投票の「結果の尊重義務」で一応縛りつけるには、相当に重い意味と意義があり、また「踏み絵」としても機能させているのです。したがって、政府との一致した着地点の可能性は「さらに遠のいた」と言えるでしょう。

                                                                                           (続く)

2019年2月 6日 (水)

山路敬介氏寄稿 県民投票・自民県連はなぜ大敗したのかその1

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山路敬介氏から寄稿を賜りました。米朝会談について連載は、寄稿掲載終了後に再開いたします。

タイトル、小見出しは編者が施しました。 

                                             ~~~~~~~~

                        ■ 自民県連はなぜ大敗したのかその1
                                                                                 山路敬介

知事と地元紙の県民投票への異常な圧力

県民投票は三択案で決着をみました。 

例によって、今回の県民投票にむけた騒動にも二紙による誘導的な報道や偏向記事であふれかえりました。 

今回は特に世論のみならず、議員や首長らの意思決定過程においても強い影響力を与えている様子があらわになったと思います。 

その責任は何も二紙だけにあるわけではなく、デニー知事をはじめ二紙の報道姿勢に左右され続ける県内政治家たちにも同様にあって、そのようなドタバタの経過を暗澹たる気持ちで見ていました。 

例えば、デニー知事が一転して三択案の受け入れを「前向きに検討」と転換した翌日の紙面から、その直後の記事で、下地宮古島市長をはじめ五市長や自民党県議会までがそろって前向きで既に三択案で了承したかのような報道のされ方をされ、下地市長の動向に最も詳しい地元の宮古毎日新聞との論調の違いが際立ちました。 

また、年末26~27日の記事では「下地市長、年明け4日に再び回答を県に延期要請」なる主旨の報道がなされ、これにちょっとキレた市長が12月29日の記者会見で「結論はすでに出ており、延長したのは県の要請」と宮古毎日新聞一面で内幕を暴露しています。 

わけても「五市長は「違法」であるが、県には強制する手段がない」ゆえ、これを逆手にとった判断だったというような読者への理解のさせ方は特にひどいものです。 

そして、その間に例の元山某のハンストもどきのパフォーマンスがあり、その事が保守をふくめ県内政治家たちの方向転換を全体として促したような「作られたストーリー」になって行きました。 

事実はそうではなく、五市の県民投票不参加を危惧した支持者からの突き上げを食って公明が宜野湾市長や続くうるま市長の「可能条件」めいた言説にとびつき、そこから自民県連を二分する状況を生じさせた事が直接的な要因です。 

青山繫晴氏が言うように、五市長に業務に支障が出るほどの執拗な集中的非難が浴びせられていたのは事実でしょうが、それが直接的要因ではないです。 

島袋うるま市長の県市長会長としてのスタンドプレーがあり、照屋県連会長は県連内での否定的な声が大きかったのにもかかわらず「三択案」を受け入れてしました。 

いずれにしろ、県議会自民党が意思統一出来なくなり照屋会長の辞任騒動にまで発展してしまっては、市議会自民党も下地市長も照屋会長の要請をのんで矛を収める以外に選択肢がなくなったという事です。 

参院選や衆院補選も迫るなか、照屋会長の判断もやむを得ない面もあったと思いますが、辞任は当然です。 

県民投票条例11条二項の「客観的かつ中立的に情報の提供を行う」べきデニー知事においては当初からそのような心掛けはなく、それを民間で担保すべき二紙の動きも申すまでもありません。 

(関係者によれば、1月29日頃からようやく紙上において「対論的な紙面構成に変更される事になっている」という事のようですが) 

もとより「埋め立て権限」は国にあり、最高裁は「辺野古移設を普天間問題の解決の唯一の方法」と判示しています。 

もう結論は出ているのであり、埋め立ても始まっている現在において、県民投票など何の意味もありません。 

逆に条令は判例違反の気味があり、そこの矛盾をかろうじて支えているのが「撤回中」という状況だと言えます。 

ともあれ、懸案の軟弱地盤問題も地盤改良によって実現可能であり、あわせて変更申請の予定で方向性が出ています。 

経済的な手当ては別途に必須であるものの、言うまでもなくこの事によって「辺野古撤回の理由」とはならない事は明白となりました。 

くどいようですが、「県民投票」は無意味です。けれど、反対派核心部分や政治家たちにおいてだけは政治効果的な意味合いは大きいのです。 

それは一般県民から見えたり、また我々が常識的に考える価値判断とは別個に存在しています。 

それに付き合わされ、自ら縛られるために右往左往する沖縄県の姿は、まさに韓国の政治状況とかわるところがありません。 

いま振り返れば、デニー知事は当初「期日までに市長らの説得に最後まで全力を尽くす。それでも無理なら5市抜きで県民投票を行う」と決断をしていました。 

これは行政当局の秩序や議会の品位を重んじた、県民の長として誠に立派で毅然とした知事としての「あるべき姿」だったと思います。それも一夜にして沈んでしまいましたが。 

たかだか法律によらない諮問的県民投票であるにも関わらず、今回のような個別論的対応をしたツケは前例となり、沖縄県の今後において非常に高くつくでしょう。 

しかし、二紙に限らずこの論点から語られる事は皆無です。 

私的には特に、県民投票を「否」とした五市長に関する報道過程には我慢ならざるものがあります。 

それは、オスプレイの配備反対が辺野古反対に化ける過程、仲井眞知事を県民の裏切者に仕立て上げた過程にも似ていて、下地市長らを違法者・憲法違反者としてカタにはめ、報道はその偏りによって五市長への断罪的なおもむきを帯びていたからです。 

このあたりも少々論じたいと思いますので、ローカルな話題にて興味のない皆さまには恐縮ですが、我慢してお付き合い頂けますと有難く思います。

                                                                                              (続く)

 

2019年2月 5日 (火)

米朝交渉をゲーム理論で見る

054

韓国がからんだ話をする前にひとつ。

昨日の記事で、私はこの米朝首脳会談を焦点とした朝鮮半島情勢をひとつの「ゲーム」として考えてみました。 

ですから、「カード」とか「見返り」という概念がポンポンでてきたので、戸惑われた方もいらっしゃるでしょう。 

Photo_2http://majyan-item.babymilk.jp/post-569/

おいおい、現実の国際政治は遊びじゃないんだぜ、というご意見が聞こえてきそうです。

実際、国際政治分析に経済学のゲーム理論を応用する考え方を、イェール大学の浜田浩一先生は提唱しています。

ただし、ゲーム理論の本場米国でもこんなていどの理解度のようです。

「米国の外交問題評議会に呼ばれたので、「ゲーム理論と外交の関係についてお話ししましょう」と提案したところ、「ゲーム理論という言葉を口にした途端、誰も聞いてくれなくなります」と、瞬時に却下されてしまった」(浜田前掲)
https://blogos.com/article/182590/

とまぁ、ノーベル賞候補の浜田先生ですらこの扱いです。

外交は職業外交官と学者が永年の経験でやるものという堅牢な意識が支配しているのです。 

しかし、国際政治の力学も経済も人間がやるものに違いはありません。「競争と協調」という二つの要素で成り立っていることは、経済も政治も一緒です。

「ゲーム理論の創始者フォン・ノイマンは、「人間社会は競争と協力のバランスで成り立っている」と考え、「他の相手の出方を見ずに、自分の都合だけを考えて行動しても、思うような結果は得られない」という。
複数のプレーヤーが互いに競争と協力の関係を持っている点では、国際政治も同じ。各国政府は、自国の利益を最大化することを目的として外交戦略を立てる。ゲーム理論を応用しやすい領域である」(浜田前掲)

この経済学のゲーム理論には、多くのバージョンがありますが、そのひとつにアナトール・ラポポートが考案した「囚人のしっぺ返し」戦略というものがあります。 

この「しっぺ返し」戦略は、こういう流れで進行します。 

まずこのゲームは「協調」から開始されます。ほら、どこかで見たでしょう。シンガポールの第1回会談で、トランプが大げさな身振りで投げたカードがこの「協調」でした。 

日本人は喉元すぎると忘れる傾向があるのですが、正恩を引きずり出すためにこれ以上ないとさえ思える史上空前の軍事的圧力をかけました。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-4305.html 

朝鮮半島海域に空母を3隻呼び寄せるわ、空軍は爆撃命令を待っているわ、要人暗殺部隊は釜山に入るわと、そんな状況でしたね。 

それと同時に国連の経済制裁と、正恩の個人財産凍結も開始します。 

Webw171114usthumb720xauto124381https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/11...

正恩も負けじとばかりにICBM実験を敢行しました。 

Photo_2火星15 。正恩が視察している 

追い詰められた正恩は唯一の打開策として、トランプと直接交渉というカードを切ります。 

さてここで「しっぺ返し」戦略の最初の「協調」フェーズが開始されます。

Photohttps://jp.sputniknews.com/politics/20180614499029...

「2回目以降は前回の相手の行動と同じ行動を採る。つまり相手が前回、協調してきたならこちらも今回は協調し、相手が裏切ったなら同じく裏切るものとする。
相手が協力的なら、もとより協力してまずはフレンドリーに接するが、相手が戦いを仕掛けてくるようなら、タカ派に変身してガツンと叩く。
相手が協調しないならば、その代償は大きいぞということを示して、相手を好むと好まざるとにかかわらず協調行動に導こうとする戦略が功を奏するのである。
相手の心根を変えて信頼関係を築くのではなく、当方を信頼しないと困ったことになるぞと協力を必然化させるのである」(浜田前掲)

図式にするとこういう流れです。 

Img_651fa92495841f48405a6820b7eb124

 浜田前掲 

ここで浜田先生が、プレイヤーは「まずはフレンドリーに接するが、相手が戦いを仕掛けてくるようなら、タカ派に変身してガツンと叩く」ことが肝要だと述べていることに留意下さい。

協調と「ガツンと叩く」ことが同時にできるキャラの政治家でないと、このゲームは進行しません。

「ガツンと叩く」というのは、現実の国際政治では軍事的オプションの行使を意味します。

今回この「しっぺ返し」戦略が成立するのは、トランプと正恩が共にいわゆる「タカ派」だからです。

「タカ派の政治家のほうが、長期的にはかえって国際平和に貢献するという事実には、このような理論的裏付けもありうる」(浜田前掲)

似た例は、北方領土交渉における安倍氏とプーチンとの関係にも言えます。両人ともに長期保守政権です。

安倍氏の哀しさは、軍事的オプションが憲法によって制限されているために、経済力を武器にするしかないという戦後日本の事情を背負っているからです。

それはともかく、これが一方がムン・ジェインやハトさんのようなフラワーパークの住民だと、「ガツンと叩く」ことに平和イデオロギーの嫌悪感がありすぎて、相手からなめられきってしまいます。

ですから皮肉にも、協調を叫びながら、逆に「協調」フェーズにたどり着くことすらできません。

ハトさんは日ソ共同宣言を作った鳩山一郎の孫でありながら、プーチンは彼など交渉相手とすら考えていませんでした。

だって、どう見ても短期政権のフラワーパークとつきあっても仕方ないじゃないですか。なにか合意しても、すぐにひっくり返されるのが目に見えていますからね。

またムンのように南北が「協調」したように一見みえても、実は相手プレイヤーの意のままに動く操り人形だったりするわけで、これではかえって北が核保有を固定化することを手伝っています。

これではムンの美辞麗句とは裏腹に、韓国の安全はおろか東アジア全体を危機に陥れてしまっています。

一方北は、ある意味でスッキリと分かりやすい国家です。

ひとり独裁なので永代政権です。

国際協調などという単語は正恩の辞書にはなく、あるのは徹底した国益追及であり、そのための核保有です。

なぜ核かといえば、通常兵器では勝負にならないから核にしがみついているだけです。

ですから、オバマのような「人類の核廃絶の夢」を追いかけて非核化を言い始めたわけではなく、非核化カードが国益追及に有効だと考えたから切っただけです。

切るカードが核しかないのです。

核「も」あるのではなく、核「しか」ないが故に、北は三代に渡って毛沢東流にいえば「パンツをはかないで原爆を持つ」ことに固執したのです。

だから、多くの国際問題専門家が口を揃えるように、「北は核をなくしてしまえばなにも残らないただの極貧国家にすぎない。だから絶対に手放さない」のは一面の事実なのです。

というわけで、この東アジアの平和を賭けた米朝のゲームは、第二幕を迎えようとしています。

2019年2月 4日 (月)

米朝水面下での交渉内容伝わる

085

米朝首脳会談について、このような北朝鮮との議論が水面下で進行していることを、読売新聞(1月27日)が伝えています。 

残念ながら、なぜか読売が電子版で出していないために、神保謙慶応教授のツイートから編集して引用させていただきます。
https://twitter.com/kenj0126

「米朝段階的非核化を議論 北、開城事業容認要求 米、非核化へ柔軟姿勢
1月18日のポンペオ・金英哲会談、1月19日~21日のスウェーデンでの米朝実務者協議(19-21日)で、段階的非核化についての議論が進んだ。
 

【第1段階】として米側は北朝鮮に
①ICBM開発凍結と廃棄
②寧辺核施設廃棄と検証
③豊渓里実験場査察
④東倉里ミサイル発射場査察を求める。

.一方...北朝鮮は米側に「相応の措置」として
①開城工業団地、金剛山観光、鉄道連結事業を制裁の例外として除外する
②石油と金融部門に対する国連制裁緩和

米側は①を前向きに検討するが、②(石油・金融制裁)に言質を与えていない」

神保氏はこう評しています。

「ポンペオ長官が最近「米国の安全」を強調していたことから、米側が取引可能な措置を前倒しする妥協に傾く兆候は出ていた。米国は第2段階交渉でより包括的な非核化を継続協議すると言うだろうが、北朝鮮は制裁緩和のインセンティブを得て交渉を引き延ばす、となりそう」

Dxoqqbfxgaaqhf4Kim Jong Un expressing “great satisfaction” at Trump’s letter to him.

ソースはいわゆる「関係筋」ですから、たぶん韓国に入っている米代表団のリークだと思われます。

内容的には神保氏の分析どおりだと思います。

北は経済緩和を狙って小さな譲歩はしても、肝心な非核化の本体ではゴニョゴニョ言いながら遅滞戦術をとるつもりでしょう。

また驚いたことには、米中会談もベトナムで同時に開催するかもれません。

「トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、2月27・28両日にベトナムの港湾都市ダナンで会談することを検討している」(ブルームバーク2月4日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-03/PMCUYI6VDKHS01

米中は3月1日の期限切れをまえにして、なんとか譲歩を探りたい習が、会談を押し込んだようです。

同時開催となった理由は、現時点ではわかりません。

一方、米朝のほうは、前回合意した「非核化」の具体化ですが、この関係筋の内容が本当だとすると、制裁緩和と長距離核の開発凍結、査察受け入れです。

米国のビーガン北朝鮮担当特別代表は、CVID方式での北朝鮮の非核化については譲歩するつもりはないと明言していますが、これについてホワイトハウスとは温度差があります。 

読売の記事によれば、米国は「長距離核の撤廃」という表現を使っているようですが、それがほんとうならば、これはただの米国に到達可能な長距離核を撤廃するという意味でしかありません。 

そもそも長距離核ミサイルは再突入や核弾頭の小型化というハードルをクリアしておらず、未完成なはずで、それをして「開発の凍結」と呼んでいるとすれば、日本に届く中距離核は温存されてしまいます。

これでは日本が最も危惧する中距離核は残ったままゲームオーバーとなりかねません。

あくまでもCVIDのCは核の「完全(Complete・包括的)」廃棄のことであって、長距離核だけ廃棄すればこと足りるようなLimited(限定的)なものではないはずです。 

実はこれについてポンペオ国務長官は、あいまいな表現を繰り返しています。 

ときに「永久的(Permanent)かつ検証可能で不可逆的な非核化(PVID)」と言い間違えて混乱を引き起こしてきた」(ニューズウィーク2018年6月12日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/06/cvid.php 

「包括的」なら意味は鮮明で中距離核も含みますが、「永久的」ならば不可逆的(Irreversible)と重複します。 

そうなると最後のDである非核化(Denuclearization)の意味も、どこまでを指すのかぼやけてきます。 

Rtx68svcロイター 

というのは、シンガポール会談でもっとも憶測を呼んだ部分がこの「非核化」という言葉で、合意文書では「朝鮮半島の非核化」という表現にしてしまっていることです。 

合意文書冒頭部分のパラフレーズにはこうあります。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-a36b.html

トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を提供することにコミットし、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization of the Korean peninsula)への強固でゆるぎないコミットメントを再確認する」

この「非核化」の条件は「朝鮮半島が非核化され、北朝鮮にとって安全が保証されたという意味だ、と正恩は解釈したはずです。 

151743727214_20180201ビクター・チャ元米国交渉団代表 

ブッシュ時代の北との交渉代表であったビクター・チャはこの部分の解釈について、去年6月の議会証言でこう言っています。

「北朝鮮は非核化という言葉を「北朝鮮に対する脅威がもはやなくなった将来のいずれかの時点で、朝鮮半島から核兵器をなくしてもいい、という意味で使っている」と指摘する。
米軍が駐留部隊を撤退させること、そしてアメリカが、北朝鮮が核で抑止しなければならないような敵対的な軍事行動をやめることがその条件だ」(NW前掲)

このチャの解釈に従えば、正恩はただ米国が軍事的攻撃をしないと表明するだけでは納得せずに、核を保有している可能性がある在韓米軍の撤退まで含んで「非核化」と言っていることになります。 

実際には在韓米軍に核兵器は配備されていませんが、空軍基地にはかつての核爆弾の保管施設が残されており、B-2などを使った核攻撃はいつでも可能です。 

ですから、韓国の米軍基地は撤去しろ、在韓米軍は撤退しろという北の主張につながっていくわけです。 

しかしこの北の要求に、直ちにトランプが乗る心配はないと思います。 

現時点で北が求めているのは、首を締めつつある石油と金融に対する経済制裁を少し緩めてくれという段階であって、一挙に在韓米軍の撤退まで要求するとは思えないからです。 

トランプに常に在韓米軍を撤退させたがっているのはとうぜん正恩は知っているでしょうが、現時点でトランプ御大相手にこのカードを切るとは思えません。

ところで少し視野を拡げてみましょう。実は北の非核化のプレイヤーは三カ国あります。米中露です。 

この三カ国は共に北の核の射程範囲にあるが故に利害を共有しており、非核化という総論には賛成ですが、その方法論と「非核化後」の思惑がまったく違います。 

考えられるシナリオとしては、ロシアが原発を餌にしてロシア圏に取り込むか、中国が経済援助と中朝安保条約に基づいて核の傘を差し伸べて中国圏に組み込むことです。

こういう二カ国の思惑がある中で、在韓米軍撤退を宣言することは、米国が非核化以後、朝鮮半島には干渉しないということを宣言したことに等しいことになります。 

それは東アジア情勢の主導権を、中露に渡すことにつながりかねません。 

マティスなら必ずそう考えるはずで、ボルトンなどの専門家にとって在韓米軍は米国の朝鮮半島におけるプレゼンス(政治・軍事的存在感)そのものの消滅を意味しているのは自明のことだからです。 

これだけ重い撤退カードを正恩が米国に要求するならば、当然のこととして北も最大限の見返りを用意せねばなりません。 

ニョンビョン(寧辺)核核製造施設のIAEAによる直接立ち入りによる検証と、プンゲり(豊渓里)核実験場の同じく査察と廃棄、トンチャンリ(東倉里)ミサイル発射場査核製造施設とミサイル実験場の査察と廃棄などは、当然すぎるほど当然の条件です。 

これを廃棄しなければ、北はまたまた核兵器を再生産することが可能だからで、この部分で米国が譲歩するとは思えません。

とはいえ、これすらも現状は悲観的です。

K10011796011_1901300614_1901300615_コーツ国家情報長官 NHK

「アメリカの情報機関を統括するコーツ国家情報長官は、議会上院の情報委員会で北朝鮮について証言し、(略)
われわれは、北朝鮮が核兵器と核の製造能力を完全に放棄する可能性は低いと現在、分析している。指導部が体制維持のためには核兵器が極めて重要だと考えているからだ」と述べ、北朝鮮が核を放棄する可能性は低いという分析を明らかにしました」
(NHK2019年1月30日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190130/k10011796011000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001

さらには現在北が保有している長距離核(もどき)と、実戦配備されているとされる中距離核については、最低でも長距離核の廃棄ていどは呑まねばなりません。

中距離核は攻防になるでしょうが、最低でも長距離核を廃棄しなければ、いくらトランプでも国内に説明できません。

逆に言えば、北のCVIDを引き出すためには、米国も最大限の見返りとして在韓米軍撤退カードを与えるしかない、とも言えます。

この在韓米軍撤退問題については、韓国も絡んでいますので、次回とします。

 

 

 

 

 

2019年2月 3日 (日)

日曜写真館 ちょっと妖艶

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2019年2月 2日 (土)

EPA発効 日本農業にはよい刺激となるだろう

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EUとのEPA(経済連携協定)が成立し、発効しました。

「世界最大級の自由貿易圏が誕生。 日本ブランドにも商機到来。
1日に発効した日本とEU(ヨーロッパ連合)のEPA(経済連携協定)。
輸出入の際にかかる関税が多くの品目で撤廃され、千葉市にあるイオンスタイル幕張新都心では早速、EU産のワインを平均で1割値下げするセールが行われた。
人口およそ6億4,000万人。
世界の貿易額のおよそ4割を占める、巨大な自由貿易圏が誕生することとなった今回のEPA」(FNN2月2日)
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20190202-00411137-fnn-bus_all

このところのブリグジットや、マクロンの失速、メルケルのレームダック化、最大市場の中国経済の減速などでろくなことがないEUも、ひさしぶりに愁眉を開いたようです。 

0d1f2_769_ffcf5d1596b7a838bd3a2606cEUトゥスク大統領http://news.livedoor.com/article/image_detail/1587...

「【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)のトゥスク大統領は1日、日本との経済連携協定(EPA)が同日発効したことを受け、自身のツイッターに日本語で「今日は全ての日本人とヨーロッパ人にとって素晴らしき日」と書き込んだ。
 その上で「政治的また経済的には、これ以上緊密な友人かつパートナーはいない」とも述べた」(時事2月1日)

意外に思われるかもしれませんが、私は歓迎しています。

TPPとEPAを合わせれば世界経済の過半を占める巨大自由貿易圏ができるのは、時代の趨勢であるばかりではなく、日本農業にとってもよいことです。 

Epahttps://www.sankeibiz.jp/macro/news/180718/mca1807...

それは、いったん日本農業の内部に足を踏み込めばお分かり頂けると思います。 

素朴に思ったことはありませんか。なぜ国産のバターはあんなに高いのでしょうか?なぜ、チーズはあんな馬鹿げた値段で売られているのでしょうか? 

日本の生乳は常に余剰すれすれを維持しています。加工に回すと安くなるからですが、バターやチーズに振り向けて付加価値生産することは可能なはずです。

一番の大所のコメは、いまだに事実上の生産統制がなされて、自由に作ることは無理です。

一般的な商品ならば、乳製品に余剰がでたら加工品にし、コメがうれなければ価格競争に耐え抜こうとするでしょう。あるいは海外に販売先を探す努力を自力ですると思います。

ところが日本農業だけはそのような自律的市場調整の回路が働かず、お上の統制支配がいまでも生きている数少ない産業分野です。 

と、こんなことを私が言うと、「お前はかつて農は日本の安全保障だ。食なくして自由な国はありえない」と言っていたろうという声がきこえてきます。

それはあくまでも結果としてそうなるのであって、農業は産業としてそれを実現するしかないのです。 

食糧管理制度(食管)は、戦中戦後のコメ不足時代に、農家からコメを厳格に供出させるためにできました。

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勝手に作れない、勝手に売れないという奇妙な「商品」がコメだったのです。
関連記事「日本農業の宿痾 減反制度」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-a54e.html

これは、食糧不足という時代背景があったから成立したのであって、高度成長期以降の時代には古色蒼然たるものに劣化していました。

しかし、制度として残ったのは、ひとえにコメの時だけ納屋からトラクターの埃を払ってにわか農家に戻る兼業農家層を大量に抱え込んでしまったからです。

お断りすれば兼業農家は別に甘い知るを吸っていたわけではなく、コメで一家を支えるだけの収入にははるかに届かないからそうしているだけです。

本心は田んぼなど売りたいが、いったん土地改良工事が入ってパイプラインで結ばれた田んぼになると一軒だけ止めるわけにはいかないという縛りも生きていました。

専業で頑張って大型化したい農家には地域頭割りの生産統制が待っており、一方兼業農家は生かさず殺さず、これが日本のコメ作りの実態です。

この社会主義統制経済もどきを21世紀になっても維持できたのは、ひとえに村を票田とする農水政治家、日本最大の補助金を分配する利権を守りたい農水省、そして全農の三角同盟が堅牢だったからです。

こんなことを半世紀やって入れば、技術開発は進まず、ブランド力もなく、価格競争力も劣化し、産業全体がひ弱になるのは当然です。

いつのまにか、農業は岩盤規制の標本のようになっています。

逆に、統制品目から抜けている、野菜、果樹などが国際市場価格と比較しても妥当な枠に納まっています。

その理由は、健全な産地間競争が生きているからで、野菜や果樹の農業団体は熾烈な価格競争とブランド競争を演じています。

まともな競争が保証されさえすれば、日本の農業技術力は世界有数のものですから、あたりまえです。

具体的に冒頭で上げたバターを例に取ってみましょう。

バターに特徴的なのは、ブランドが少ないことです。それも北海道に集中して、特定のものだけに絞られています。

価格はバカ高いので、マーガリンなどという健康に疑問の代替品がいまや主流になってしまいました。

バターが高いの理由は、ひとえに高関税をかけているからです。

この高関税をかけている元凶は、農水省傘下の特殊法人である「農畜産業振興機構」です。

Photohttps://sugar.alic.go.jp/japan/fromalic/fa_0310a.h...


私は「なんとか機構」と聞いうもっともらしいネーミングを聞いただけで、虫酸が走りますが、よくある官製の利権団体です。

星の数ほどある天下り団体で、これがバター輸入を独占していることから発生しています。 

といってもこの振興機構が実際に輸入業務をしているわけてはありません。

するのはあくまでも一般輸入業者です。彼らはペーパーワークだけの仕事をするいわば官製トンネル会社です。 

乳製品の輸入業者は、2次関税を払った上に、いったん機構に輸入バターを伝票上買い上げてもらっ形にして、農水省の定めた806円/㎏(20014年現在)の輸入差益を支払わねばなりません。 

この振興機構はこのトンネル差益だけで年間11億も、彼らの懐に転がり込む算段です。

なにもしないで、806円乗っけただけの伝票仕事で、年間11億が転がり込むのですから、たまりませんなぁ。

ま、もちろんこの11億の一部は、補助金として畜産農家に回すのですが、これも分配する権限は農水省です。

農水省が作った輸入差益を、農水省が配分する補助に回すという、これが農水省の農水省による農水省のための農政です。 

これによって、農家はいささかも儲かっていません。そして最大の被害者は消費者です。

消費者は、外国製乳製品がバカ高いために買えず、高い国産乳製品を買わされているのですから、いい面の皮です。

日本の農産品高関税には必ずといってよいほど、農水省の利権がからまっています。私たち農家にはなんの関係もないことです。 

日本の農産物はその高品質と新鮮さで支持されています。関税などによって守られてはいません。 

私はこのようなトンネル会社方式を止めて、従価課税のスッキリした関税方式にすべきだと思っています。

今回のEPAで、バターや脱脂粉乳は原料の生乳に換算して、最大1万5000トンまでの低い関税枠が新たに設けられることになりました。

不十分ですが、いたしかたないでしょう。

いずれにしても、EPAで「農水省による農水省のための農水省の農政」に大きな穴が開きました。

2019年2月 1日 (金)

広がる「韓国うんざり感」とそれを知らない韓国世論

039

ある意味で、今回のレーダー照射問題というのは、今までの慰安婦問題や徴用工判決よりインパクトがあったようです。 

慰安婦問題や「徴用工」判決は、なんといっても70年前以上前の歴史的事件であって、立場によって見解が異なってもいた仕方がないところがあるのですが、今回はリアルタイム進行中のことです。 

ああまで一国の政府機関が堂々と出たとこ勝負、口からでまかせ出放題の主張を日替わりでやれば、こりゃ誰だってねぇ(ため息)。

あれが国のやることかと、啞然とされた諸兄も多いことでしょう。 

結果、さすがのバリバリの親韓派の立憲民主ですら、擁護できなくなって沈黙してしまったほどでした。 

かくして日本社会に、「韓国うんざり感」がまんべんなく拡がったのは当然のことです。 

いままで韓国好きだった人は今回はいかんねと思い、韓国に関心なかった人はたまらん国だなとイライラし、嫌いだった人はもう国ごと引っ越したい、という感じでしょうか。 

そういえば、私も昔は親韓派だったような(遠い眼)。

この傾向は世論調査にも現れています。 言論NPOの調査を見てみましょう。

2018年になって、10%ちかく韓国への良い印象が減少しているのがわかります。これは今の時点で調査すれば、もっ悲惨な数字になりそうな気がします。
言論NPOの調査結果のPDFファイルP3『図表2』 

●言論NPOの共同調査による相手国に対する印象

 

区分2018年2013年

日本:韓国に対して良い印象

22.9%

31.1%

韓国:日本に対して良い印象

28.3%

12.2%

日本:韓国に対して良くない印象

46.3%

37.3%

韓国:日本に対して良くない印象

50.6%

76.6%

2016122704内閣府『外交に関する世論調査』の韓国に対する親しみの度合い
https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-gaiko/index.html 

上のグラフを見ると、2012年頃を境にして「韓国に親しみを持たない」人が増えたのがわかます。 

覚えている人も多いでしょうが、2012年8月10日には韓国大統領李明博が竹島上陸をしています。 

P14imyonbakuhttps://www.news-postseven.com/archives/20160220_3... 

そしてそれだけに止まらず竹島上陸をした2日後の14日には、このような発言までする始末です。

「李明博韓国大統領は日王(天皇)について「痛惜の念などという単語ひとつを言いに来るのなら、訪韓の必要はない」「(日王が)『痛惜の念』などという良く分からない単語を持ってくるだけなら、来る必要はない。
韓国に来たいのであれば、独立運動家を回って跪いて謝るべきだ」と謝罪を要求する発言を行った」
韓国による天皇謝罪要求 - Wikipedia

なんともスゴイですね。しかもイは韓国人の天皇に対する蔑称である「日王」という表現まで使っています。

「日王」とは韓国人が、天皇とは小生意気な、日本の王ていどの小者だから「日王」だ、と勝手に呼び換えたものです(馬鹿だね)

そういう非礼を一国のリーダーが言って許されるなら、日本としては韓国大統領とは生意気な、「小統領」と呼んでやるという、くだらない言い合いになります。

罵倒合戦で済めばいいのですが、英国が女王に対して同じことを言われたら、サッチャーならその名もロイヤル・ネイビーを派遣するところです。

ちなみに、当時の日本の政権は民主党野田政権でした。

Afr1710270029p2https://www.sankei.com/affairs/news/171027/afr1710...

尖閣で海保の巡視船にぶつけてきた中国人船長を釈放したのも、民主党菅政権でした。

政権が態をなしていないと、必ずこのような近隣国になめられた失態を重ねます。

それはさておき、韓国国民はこんな日本社会における韓国に対する視線の冷たさかげんに気がつかないようです。 

あれだけ大量に日本に遊びに来て(金は落とさないようですが)、日本人特有のアタリの良さにだまされているのか、まるで日本人の国民感情に頓着がありません。

というか、国民感情は韓国人だけの特権的所有物で、日本人は持つべきではないと潜在意識で考えているようです。 

ところで、去年12月28日に朝鮮日報が「レーダー照射:「映像公開した日本側の対応に韓国『深い憂慮と遺憾』」記事への韓国読者コメント」というコーナーをひっそりと出しています。 

このひっそり感がそぞろもの哀しい。 

朝鮮日報は、ムンジェイン政権に批判的な保守的紙面を作っていたはずですが、本記事ではなく、「読者の声」欄で乗せるというのが、今の韓国保守派の凋落ぶりをみるようです。 

まるで干されたサラリーマンの居酒屋のぼやきみたいですが、こんなかんじです。

・クァク・キシクさん
文氏(文在寅〈ムン・ジェイン〉大統領)政権と左派たちよ。
お前らがメチャクチャ、しっちゃかめっちゃかにした韓米関係・韓日関係は、後で誰がどう収拾するんだ?
次が保守政権になると予想して、今、友好国との関係を全部壊しておこうと思っているのか?
米国も日本も…経済も国防・安全保障も、我々韓国人が困るのであって、米国や日本が困るだろうか?
外交関係をこれ以上壊さずに、自信がないなら国際関係を悪化させるような問題を起こすな。
賛成318反対5

・ソン・インシクさん
お前ら、射撃の照準合わせたなら、軍人なんだから「申し訳ありませんでした」と言えばいいのに、幼稚な言い訳ばかり言っているのか? 恥知らず。
賛成274反対7

ま、こんな人たちばかりだったら、こんなに日韓摩擦はひどくならないのにと思ってしまいますが、とうぜん極少派です。だいたいは下のような無意味に元気がいいものばかりです。

・イ・ギテクさん
駆逐艦「広開土大王」で日本に突進しろ。
突進しろ。
日本がふざけたまねをしてきたら、我々の力をよく見せてやれ。
韓国はやれるんだから。
賛成4反対94

おお、「我々の力をみせてやれ」ですか(苦笑)。典型的ウルトラナショナリズムですな。こういう人ばかりだと戦争になります。ただし、反対のほうが多いのはご愛嬌。

とまれ、日韓の国民感情の温度差は今や埋めることができないまでに拡がりつつあります。

韓国の皆さんは、ドメスティックな感情だけを抱いて、玄界灘の向こうの民の心も知らずに突進し続けるつもりのでしょうか。

ああ、なんとも疲れます。

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