宜野湾くれない丸氏寄稿 主体思想と沖縄その2
宜野湾くれない丸さんの寄稿2回目です。
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■主体思想と沖縄その2
宜野湾くれない丸
思い起こせば「ヨドゴウ ジケン」が「よど号事件」、「セキグンハ」が「赤軍派」とおぼろげにも理解出来たのはそれから2年後、沖縄が祖国復帰を果たした昭和47年(1972)の頃だった。
それは叔父叔母の中で年が一番若かった叔母が、突然行方不明になったことが切っ掛けだった。
叔母はビートルズやPPM(ピーター・ポール&マリー)、サイモン&ガーファンクルが大好きで、いつも鼻歌でそれらのグループの曲を口ずさんでいた、そんなハイカラで明るい人だった。
叔母というより私にすれば「年の離れたお姉さん」的な存在であった。
そんな叔母が突然私たちの前から姿を消したのだ。どれくらいの時間が過ぎたか記憶にないが、安否が分かったのはNHKテレビの沖縄復帰ドキュメント番組に、何と!叔母自身がインタビューされていたのを親戚のひとりがたまたま見ていたことからだった。
結局のところ叔母は家出をして、復帰直後の沖縄へ渡り、かの地で米兵と知り合い恋に落ち、そのまま帰国する米兵と共にアメリカ本土へ行ってしまったのである。
親戚間では「家出」という見方が主だったと思うが、「セキグンハに捕まったんじゃないのか?」とか「セキグンハに誘拐されたんじゃないのか?」などの話も出ていたくらいだった。
パスポート紛失の「セキグンハ」と叔母行方不明の「セキグンハ」が同じ「セキグンハ」だと私が理解できたのは、72年当時「あさま山荘事件」や、それをきっかけに発覚した「山岳ベース事件」「テルアビブ空港乱射事件」などで巷に「セキグンハ」「ニホンセキグン」などの言葉が飛び交っていたからである。
しかも大人たちは、「テルアブブの犯人のひとりは鹿児島大学の学生らしい」とか、「シゲノブフサコ」(重信性は奄美群島にもいる)とか口々にしているので、幼少の私は「セキグンハ」「ニホンセキグン」「シゲノブ」とう言葉を「身近に感じていた」のである。
「パスポート紛失」の件もあるし、叔母は本当に「セキグンハに捕まった」のかもしれない!!と、半ば本気で思っていたのである。
「セキグンハ」が「赤軍派」とハッキリ認識出来たのはそんな流れからであった。沖縄の祖国復帰前後、お隣の奄美の島々には色んな意味で「そわそわ」とした「空気」が漂っていた。
そんなこんなで小学校低学年の私の中に「赤軍派」は鮮明に印象づけられた。
「三島由紀夫事件」「瀬戸内シ―ジャック事件」やその後発生した「三菱重工爆破事件」をはじめとする「連続企業爆破事件」などの事件や事故を報道するテレビニュースを食い入るように見ていたそんな私は、周辺からすると「少し変わった少年」だったかもしれない。
1975年(昭50)に発生した「クアラルンプール事件」を報じるニュースを見ながら「日本人ってやっぱりちっちゃいな~!」なんて思ったり、77年(昭52)の「ダッカ空港事件」は、その頃はもう思春期に差し掛かっていたので、時代背景や日本政府の対応や処置、釈放された政治犯などなどの事を自分なりにニュースを通して考えたりもしたものだ。
ダッカ空港管制塔との無線でのやり取りで犯人が喋る英語の発音を聞いて「赤軍派の英語って下手くそだな~」なんて軽口をたたいていたりしていた。
まぁ、その程度ではあるが・・・。ずっと後の事だが「横田めぐみさん拉致事件」が公になった時、その発生日時「1977年11月15日」を知った私は、同年9月28日に発生した「ダッカ事件の赤軍派」と何らかの繋がりがあるのかもしれない・・・?と、実に安直で薄っぺらい発想を抱いたりしていた。
とは言ってもその「薄っぺらい思い」は直ぐに忘れてしまっていたが、そのずっとずっと後「よど号の妻たち」の一件が世間を賑わせていた頃から再びフツフツと「薄っぺらい思い」が蘇り、気になり始めていた。冒頭に挙げた「宿命」を読んだのは2000年を過ぎてからであるが、北に渡った「よど号犯」たちが、ヨーロッパで「日本人留学生」の「騙し誘拐」に手を染めていたことを知った。
つづけて「よど号の妻」のひとりであった「八尾恵」が、2002年に「謝罪します」(文藝春秋)を発表して「よど号グル―プ」の「日本人留学生騙し誘拐」への関与は決定的になった。
このような叔母の行方不明を契機に「赤軍派」「日本赤軍」の動向が気になり始めていたのである。
また、国内で北朝鮮の「拉致問題」が国民的関心が増してからは「赤軍派」「よど号グループ」「北朝鮮」「拉致」「誘拐」はそれぞれ糸で繋がっている、ということをハッキリとした。「宿命」によると北朝鮮の思想体系をなす「主体思想」とは、「肉体的生命」より「政治的生命」を絶対的に重視する「思想」であると述べている。
これには「戦慄」するばかりである。
目の前の「事実」には完璧なまでに「目を閉じる」そのことは決して「主体」ではないはずだ。
自身の全身で感じ、認識し、そして再確認したことが「主体的な事実」であるはずだ、と私はそう思っている。
その「主体的な事実」を各々がぶつけ合い、話し合うことで更なる「真実」に迫っていくものであろう。
「民主主義」というものは「そのぶつけ合う過程」に重きをおくことだと思う。同じく「宿命」によれば、「なぜかこの国ではヒットラーも悪人ではない」らしい(「宿命」612頁)。
長くなったが、沖縄での「問題」は、そのような主体思想の研究会の日本本部が「沖縄にある」ことである。しかも研究会へ参加する人たちが年々増えているということらしい。
「よど号グループ」のリーダー田宮高麿が自身の言葉で述べているが、1980年代世界に広がった「反核運動」は、その裏側では「よど号グループ」がコントロールしてた、と「宿命」の中で詳しく触れられている(「ウィーン工作」403~420頁)。
「世の中の動きに乗じて主体思想を世界へ広める」ことを水面下で工作していたのだ。翻って辺野古・高江での反対派の活動状況や冒頭に挙げた「韓国の女性団体の普天間第二小学校への突然の訪問と政治的発言」などなどの具体的な例を考えると、沖縄での反米軍基地運動に乗じて、何らかの工作活動が進行しつつあるのではなかろうか?という疑問や疑惑を感じるのは私だけではないはずだ。
日本共産党を除名された篠原常一郎氏が、我那覇真子氏がキャスターを務めるネット番組に最近出演されて「主体思想と沖縄の関わり」を分かりやすく解説している。是非ご覧戴きたい。番組では「宿命」も紹介されている。
https://www.youtube.com/watch?v=9Ldoz5EvGt0&feature=youtu.be&fbclid=IwAR3ZhvxenInkOEZT-76BaPATm9Z3c9G4R1e9rkQdv5jQ4v6C2hTFAZEH4A8
「いつのまにか、沖縄人は大江健三郎と筑紫哲也が言う被害者沖縄のイメージ通りに振る舞うクセが付いてしまった」(「沖縄の不都合な真実」大久保潤、篠原章新潮新書 2015年 142頁)とは、高良倉吉氏の言葉だ。
「ヤポネシア論」の島尾敏雄の長男である島尾伸三氏は「劇的なことの好きな母は、泣いたり笑ったりの表情が手におえぬほど大きく(略)」と記した(「星の棲む島」島尾伸三
岩波書店 1998年 94頁)。
テレビやラジオのCMでこれでもか、これでもか、と流れていた今回の「県民投票」のCMは、大ヒット曲「ジュピター」のメロディーにウチナー口の歌詞を「乗っけただけ」のもので、広く県民の「感情」に「訴え」「効果を狙う」演出であった。CMを見るたびに、聴くたびに「どこかの、誰かが思い描いたストーリー、その通りに踊るウチナンチュを想像した」のは、たぶん私だけではなかっただろう。
「県民投票」の日に・・・。
了
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>いつのまにか、沖縄人は大江健三郎と筑紫哲也が言う被害者沖縄のイメージ通りに振る舞うクセが付いてしまった
酷な話ですが「沖縄県」ってのは本土復帰後も必要な存在だったのでしょうか?「ヤマトンチュの差別発言」と言われようと、パヨクの為すがままにされても声一つ挙げない(そう言う空気だと言う事は百も承知ですが)沖縄県民って主体性があるのですか?
投稿: KY | 2019年2月27日 (水) 02時52分
KYさん
高良倉吉氏のこの言葉は、沖縄県民のみならず本土、もっと言えば日本国民にとっても大変重要な「問題提議」を含んだものだと私は考えてます。ご質問の「必要な存在だったのか?」という、その「主語」が「本土にとって」なのか「沖縄県人自身にとって」なのかいまいち分からないのですが、私個人的には「その両方の立場からも必要」であると思います。
私は「パヨク」という表現は好きではないのですが、KYさんおっしゃるような「パヨクの為すがままにされても・・」ということはないです。「声は挙げてます」が、それが「まともに取り上げられてない」だけのことです。県内メディアは周知のように、本土のオールドメディアも同様です。そして「沖縄県民に主体性はあるのか?」という質問ですが、県民投票が終了後、既に右派メディアからは出てきてますね。「玉城知事よ、沖縄県をどうしたいんだ?」「沖縄県民の皆さん、何をどうしたいんだ?」本当の心の底から「本音で話す段階だ!」と。「主体性はあるのか?」ということに関して、私は「沖縄県民には主体性はある。が、その主体性とは総じて『個(一県)』としての範疇を超えることがない」というのが感想です。例えが的を得てないかもしれませんが、「船頭が多い」のです。それも「小さな舟」の船頭。
投稿: 宜野湾くれない丸 | 2019年2月27日 (水) 06時26分
昨年10月23日 琉球新報に載った、城間幹子那覇市長のお言葉
>減少傾向にある一括交付金の確保に向け「県内の市町村で力を合わせて国に訴える必要がある」
>「誇りある豊かな沖縄県を目指している玉城デニー知事の思いと一緒に私が風格ある県都那覇市をつくると訴えてきた」
↑
いやホント、隣国3つは体制に物申せば有罪・投獄・落命なのに、我が沖縄、我が日本のなんと甘く自由で平和で幸福なことでしょう。
ところで、沖縄県は自動車保険における対人賠償保険と人身傷害保険の加入率が全国最低で、
http://www.sonpo.or.jp/news/statistics/syumoku/pdf/kanyu_jidosha_ken.pdf
先月ゆいレールに乗ったら、そのことを謳った日本損害保険協会の車内広告がありました。
これ、県民と沖縄を訪れる人にとって小さくないリスクです。
いくら自分はきちんと備えていると言っても、全体ではそうなので仕方ありません。
我が身に火がつかないと変わらない典型例のひとつで、沖縄に限らず似たようなことは日本に、世界にありふれています。
自分の頭も時間も行動もどう使うか使わないかが自由に選べる我々にとって、両極端を見るまで中庸が分からないのは全体としての自由の代償のひとつに思います。それでも自由がいいのは言うまでもありませんが。
とはいえ。
沖縄県は国際物流ハブであることを推進していて、「地の利」があるという良き面には宿命的に、狙われやすいリスクもあるのを忘れたら致命的です。
沖縄に対して日本国外勢力の工作があったって当然と考える人が増え、リスクにもしっかり備える警戒心を常識とするよう変わっていった方がよい、と思える現実が数々あるのは確かですね。
投稿: 宜野湾より | 2019年2月27日 (水) 13時54分
那覇市は「110番通報件数が全国1位」で、新宿区をも上回る件数です。https://ryukyushimpo.jp/news/entry-712530.html
沖縄県は「宝くじ1人当たりの購入額全国3位」です。(2016年12月の少し古い統計です)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/78084
「何かもめごとがあると直ぐに官憲に頼る一方、平均所得は全国最下位なのに夢見がち・・・」と捉えることもできます。昨今話題(?)の「統計」ですが、様々な統計データを眺めてみると「沖縄の姿」が垣間見れる気がします。客観的なデータをもとに思考し、政策や構想を練る、という事に慣れてませんね、悲しいかな・・・・。世界地図を見ることにも慣れてない気がします。
投稿: 宜野湾くれない丸 | 2019年2月27日 (水) 18時25分
チュチェ思想は知識人をも魅了するものがあるのですね。自分自身に知的独立心がまずあって、それからチュチェ思想を学ぶのであれば、そのような北朝鮮の政治思想にのめり込むことはない筈である。
チュチェ思想を信奉する方々は、勉強が足りないし、客観性がないし、・・・・・。 沖縄でチュチェ思想が流行ることはないだろうと思う。とは言うものの日本において実害を及ぼしているので、これに対してはシッカリ対応しなければならないと思う。
投稿: ueyonabaru | 2019年2月28日 (木) 00時37分
>「声は挙げてます」が、それが「まともに取り上げられてない」だけのことです。私は、KYさんが仰る通り挙げられない空気だと思いますよ、ニュースでの県民への街頭インタビューで反対派の意見はすぐ取れるが、賛成派は躊躇してしまうと思います。保守系政治家が問題を誤魔化し、堂々と説明さえし無いのでは新聞に少なからず洗脳されるのは当然の事だし、もうウンザリ。私の周りでは、普天間基地が残っても何の不便も無いし、そのまま引き受けたらって話しも冗談ではありますがでます。北部に投資した振興予算を宜野湾市へって落ちも・・
投稿: 宜野湾市民 | 2019年2月28日 (木) 08時42分
新聞をいちいち真面目に見ないので昨夜ツイッターで知りましたが、1971年に沖縄返還協定阻止を企んで集まった中核派で、当時21歳の中村常雄巡査を寄ってたかって鉄パイプで殴った上に火炎瓶を放って死亡させた実行犯7名の一人、星野文昭の解放を訴える広告が沖縄タイムス・琉球新報に出ていたんですね。
https://twitter.com/MARINA89583987/status/1100359666133921792
この広告、中核派支持者リストにもなっているのでそちらの方に興味をそそられます。
稲嶺進さんがいますの。
チュチェ思想の平良研一さん、辺野古で暴れる島袋文子さん、その他皆さんも知ったお名前が。
お若い方々はこれどうぞ。
渋谷暴動事件
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%8B%E8%B0%B7%E6%9A%B4%E5%8B%95%E4%BA%8B%E4%BB%B6
投稿: 宜野湾より | 2019年2月28日 (木) 11時56分