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2019年2月 5日 (火)

米朝交渉をゲーム理論で見る

054

韓国がからんだ話をする前にひとつ。

昨日の記事で、私はこの米朝首脳会談を焦点とした朝鮮半島情勢をひとつの「ゲーム」として考えてみました。 

ですから、「カード」とか「見返り」という概念がポンポンでてきたので、戸惑われた方もいらっしゃるでしょう。 

Photo_2http://majyan-item.babymilk.jp/post-569/

おいおい、現実の国際政治は遊びじゃないんだぜ、というご意見が聞こえてきそうです。

実際、国際政治分析に経済学のゲーム理論を応用する考え方を、イェール大学の浜田浩一先生は提唱しています。

ただし、ゲーム理論の本場米国でもこんなていどの理解度のようです。

「米国の外交問題評議会に呼ばれたので、「ゲーム理論と外交の関係についてお話ししましょう」と提案したところ、「ゲーム理論という言葉を口にした途端、誰も聞いてくれなくなります」と、瞬時に却下されてしまった」(浜田前掲)
https://blogos.com/article/182590/

とまぁ、ノーベル賞候補の浜田先生ですらこの扱いです。

外交は職業外交官と学者が永年の経験でやるものという堅牢な意識が支配しているのです。 

しかし、国際政治の力学も経済も人間がやるものに違いはありません。「競争と協調」という二つの要素で成り立っていることは、経済も政治も一緒です。

「ゲーム理論の創始者フォン・ノイマンは、「人間社会は競争と協力のバランスで成り立っている」と考え、「他の相手の出方を見ずに、自分の都合だけを考えて行動しても、思うような結果は得られない」という。
複数のプレーヤーが互いに競争と協力の関係を持っている点では、国際政治も同じ。各国政府は、自国の利益を最大化することを目的として外交戦略を立てる。ゲーム理論を応用しやすい領域である」(浜田前掲)

この経済学のゲーム理論には、多くのバージョンがありますが、そのひとつにアナトール・ラポポートが考案した「囚人のしっぺ返し」戦略というものがあります。 

この「しっぺ返し」戦略は、こういう流れで進行します。 

まずこのゲームは「協調」から開始されます。ほら、どこかで見たでしょう。シンガポールの第1回会談で、トランプが大げさな身振りで投げたカードがこの「協調」でした。 

日本人は喉元すぎると忘れる傾向があるのですが、正恩を引きずり出すためにこれ以上ないとさえ思える史上空前の軍事的圧力をかけました。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-4305.html 

朝鮮半島海域に空母を3隻呼び寄せるわ、空軍は爆撃命令を待っているわ、要人暗殺部隊は釜山に入るわと、そんな状況でしたね。 

それと同時に国連の経済制裁と、正恩の個人財産凍結も開始します。 

Webw171114usthumb720xauto124381https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/11...

正恩も負けじとばかりにICBM実験を敢行しました。 

Photo_2火星15 。正恩が視察している 

追い詰められた正恩は唯一の打開策として、トランプと直接交渉というカードを切ります。 

さてここで「しっぺ返し」戦略の最初の「協調」フェーズが開始されます。

Photohttps://jp.sputniknews.com/politics/20180614499029...

「2回目以降は前回の相手の行動と同じ行動を採る。つまり相手が前回、協調してきたならこちらも今回は協調し、相手が裏切ったなら同じく裏切るものとする。
相手が協力的なら、もとより協力してまずはフレンドリーに接するが、相手が戦いを仕掛けてくるようなら、タカ派に変身してガツンと叩く。
相手が協調しないならば、その代償は大きいぞということを示して、相手を好むと好まざるとにかかわらず協調行動に導こうとする戦略が功を奏するのである。
相手の心根を変えて信頼関係を築くのではなく、当方を信頼しないと困ったことになるぞと協力を必然化させるのである」(浜田前掲)

図式にするとこういう流れです。 

Img_651fa92495841f48405a6820b7eb124

 浜田前掲 

ここで浜田先生が、プレイヤーは「まずはフレンドリーに接するが、相手が戦いを仕掛けてくるようなら、タカ派に変身してガツンと叩く」ことが肝要だと述べていることに留意下さい。

協調と「ガツンと叩く」ことが同時にできるキャラの政治家でないと、このゲームは進行しません。

「ガツンと叩く」というのは、現実の国際政治では軍事的オプションの行使を意味します。

今回この「しっぺ返し」戦略が成立するのは、トランプと正恩が共にいわゆる「タカ派」だからです。

「タカ派の政治家のほうが、長期的にはかえって国際平和に貢献するという事実には、このような理論的裏付けもありうる」(浜田前掲)

似た例は、北方領土交渉における安倍氏とプーチンとの関係にも言えます。両人ともに長期保守政権です。

安倍氏の哀しさは、軍事的オプションが憲法によって制限されているために、経済力を武器にするしかないという戦後日本の事情を背負っているからです。

それはともかく、これが一方がムン・ジェインやハトさんのようなフラワーパークの住民だと、「ガツンと叩く」ことに平和イデオロギーの嫌悪感がありすぎて、相手からなめられきってしまいます。

ですから皮肉にも、協調を叫びながら、逆に「協調」フェーズにたどり着くことすらできません。

ハトさんは日ソ共同宣言を作った鳩山一郎の孫でありながら、プーチンは彼など交渉相手とすら考えていませんでした。

だって、どう見ても短期政権のフラワーパークとつきあっても仕方ないじゃないですか。なにか合意しても、すぐにひっくり返されるのが目に見えていますからね。

またムンのように南北が「協調」したように一見みえても、実は相手プレイヤーの意のままに動く操り人形だったりするわけで、これではかえって北が核保有を固定化することを手伝っています。

これではムンの美辞麗句とは裏腹に、韓国の安全はおろか東アジア全体を危機に陥れてしまっています。

一方北は、ある意味でスッキリと分かりやすい国家です。

ひとり独裁なので永代政権です。

国際協調などという単語は正恩の辞書にはなく、あるのは徹底した国益追及であり、そのための核保有です。

なぜ核かといえば、通常兵器では勝負にならないから核にしがみついているだけです。

ですから、オバマのような「人類の核廃絶の夢」を追いかけて非核化を言い始めたわけではなく、非核化カードが国益追及に有効だと考えたから切っただけです。

切るカードが核しかないのです。

核「も」あるのではなく、核「しか」ないが故に、北は三代に渡って毛沢東流にいえば「パンツをはかないで原爆を持つ」ことに固執したのです。

だから、多くの国際問題専門家が口を揃えるように、「北は核をなくしてしまえばなにも残らないただの極貧国家にすぎない。だから絶対に手放さない」のは一面の事実なのです。

というわけで、この東アジアの平和を賭けた米朝のゲームは、第二幕を迎えようとしています。

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コメント

米中会談において、常に触媒となるのは中国の話題でしょう。

昨年の第一次会談、その後の動きから考えると
ト「自立したいんだろ?助けるよ。見ててごらん、これから君たちの足枷である中国をどんどん締め付けていくから。どっちについた方が良いかわかるよね?。」
キ「ガクブル(のフリしとこう)。」
こういったところが落とし所だったのかなと。

第二回会談も、もちろん中国の話題が中心です。
ト「な、やったべ?モチロンここまでで終わりじゃなくて、始まったばかりだよ。あいつら泥棒みたいな真似ばかりしているからね。(本題に近づけて)それに人を人とも思わない人権抑圧してる。あれは良くないよね、性根を叩き直さないと。(核心に近く)それに、INF破棄したのだって、本当はロシアなんか相手じゃなくて、中国や他の国が勝手に増やしてるからね。査察もしないし、変な所に売ってそうだ。
次には人民元の流通に打撃を与える。ヤミ市で元しか通用しなくなってきている国もあるらしいしね。
まぁそんな近いうちに無くなる国の話はさておき、君たちは何をすれば良いかわかるよね?」

というような方向性で、具体的な証拠や細部資料など示しつつ脅しを進めていくのかなと。
そして対中は関税モラトリアム明けに合わせて金融攻勢に出る。舞台となったベトナムには中共からの迂回輸出を止めるよう脅しをかけて帰るトランプ。

開催場所と時期から考えた妄想でした。

 ゲーム理論、興味深く読ませていただきました。それは正解だと思います。世の中、その通りになっている。

 

2月5日付トップ写真は、”けあらし”でしょうか。
早朝の一時しか見れないそうですがブログ主はとてつもない早起きですか。モノトーンから徐々に朝日の染まりだす一瞬の光と影のなかに,けあらしがゆっくりと流れるようにうねっていく。美しいですね。
また美しい写真を見せてください。

初春のお慶びを申し上げます
暖冬暖冬言われとりますが、ムーチーの頃にはちゃんと寒くなったし、旧暦は滅多なことでは裏切らないなと。

「やれるものならやってみな」
(Go ahead, make my day. 撃てよ、そうすれば俺が悪党を仕留められて気分が良くなるぜ)
ー映画「ダーティ・ハリー」シリーズの刑事ハリー・キャラハンが銃を持つ犯人に向かって

「撃ってやるから抵抗しろ」
ーアメリカのドラマ「クリミナルマインド」のFBI捜査官が小児性愛連続犯に対して(かつ、小児性愛者は囚人ヒエラルキー最下層で酷い目に遭わされるので、ある意味親切でもある)

このスタイルの源は、アメリカ往年の西部劇から続く、悪者の非道な行いに耐えた末にヒーロー(達)が立ち上がる構図に、という伝統的な価値観。
かつて西部劇作品は正邪・善悪の単純な二元の世界観から、時代とともに、それらの曖昧さがあるものに変わっていきました。
相手を叩けるように運ぶ腹黒さは、相手の出方を見るゲーム理論と、ゲームの支配の点で通じるものはあるように思えます。
トランプ大統領がゲーム理論を意識しているかは私には分かりませんが、格好良さの価値観で動くところがあるように感じます。

そして、我慢の末にという筋なら我々日本人に愛された時代劇にも一脈通じるものはあって、かつての人気ドラマ「水戸黄門」や「遠山の金さん」 のように、悪党が散々やりたい放題やってからの「もう我慢なりません、助さん格さん、やっておしまいなさい!」「この桜吹雪、散らせるもんなら散らせてみろ!」
今日現実の状況では、単にスカッとカタルシスを得る勧善懲悪よりも、「仕方ないな、全部お前が選んだことだぜ?」と運ぶわけですね。

ゲーム理論は、その単純な「しっぺ返し」戦略が、他のどんな複雑な戦略よりも生存に適していた、というのが驚きでした。

翻って日本は、「裏切り」が選べないために、隣国に「裏切り」を選択し続けるインセンティブを与えてしまっていました。

今、日本が戦後初めて「裏切り」を選択したことに、隣国は戸惑っているのだと思います。


アメリカがらみのや話題なので一言 トランプ政権はメキシコ国境での壁の建設に関しては断固譲らないみたいですね。それにしてもこの政権の公約の実行・達成率は異常ですよねぇ。今まで良くも悪くもここまで支持者に誠実な政権はなかったと思います。

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