日韓関係のもうひとつのCVID
日韓関係が混迷の度を深めたという報じ方を、よくメディアはしますが、逆でしょう。
日韓関係は急速にCVIDの定方向に整理されつつあります。
ただしこちらの"D"Dismantlement(解体)されたのは、nuclear weaponsではなく、日韓関係のDiplomacy(外交)ですが。
とうとう韓国国会議長殿が:軽々とこんなエポックメーキングなことを口走るありさまです。
「韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長は、日韓間の長年の懸案である従軍慰安婦問題が日本の天皇による元慰安婦への謝罪の一言で解決するとの見解を示した。
文在寅大統領に近い文議長(73)は7日のブルームバーグとのインタビューで、「一言でいいのだ。日本を代表する首相かあるいは、私としては間もなく退位される天皇が望ましいと思う。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか。
そのような方が一度おばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと一言いえば、すっかり解消されるだろう」と語った」(ブルームバーグ2月28日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-08/PMLGIP6KLVR801
「天皇は戦争犯罪主犯の息子」ですか・・・。ルビコン河を渡っちゃいましたね。といっても渡りっぱなしで、我々から見ればとっくに彼岸の国なんですがね。
ギャーテーギャーテー、ハラソーギャテー、ボジソワカ(般若心経ですよ)。
この国会議長のほうのムンは、大統領の特使として日本にも来たことがある男ですから、このセリフはムン大統領閣下の言葉ととるべきです。
2012年のイ・ヨンバクのこの発言をテンプレにしています。ね、そっくりでしょう。
「李明博韓国大統領は日王(天皇)について「痛惜の念などという単語ひとつを言いに来るのなら、訪韓の必要はない」「(日王が)『痛惜の念』などという良く分からない単語を持ってくるだけなら、来る必要はない。
韓国に来たいのであれば、独立運動家を回って跪いて謝るべきだ」と謝罪を要求する発言を行った」
韓国による天皇謝罪要求 - Wikipedia
このブルームバーグの記事を書いたのは米国人ですからムン議長が天皇を「日王」とよんだかどうか確認できませんが、おそらくそのように呼んだはずです。
このイ発言で日韓関係は氷河期に突入しましたが、今回日本国民が受けるショックは限定されたものになるでしょう。
その理由は日韓関係が2012年からの氷河期に入って久しく、絶対零度であるマイナス273.15℃に近づいただけのことだからです。
ですから、日本政府の対応は河野外相がダバオでこう言ったきりです。
「発言には気をつけていただきたい」と苦言を呈した」(共同2月10日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190210-00000119-kyodonews-pol
きっと苦虫をかみつぶしたような顔で言ったのでしょうが、気持が悪いくらいに抑えた表現です。
あーあ、回答期限を無視した上に、ヒサンの奴、米朝会談直前にヒサンなことを言いおってからに、これ以上こじらせてどうするの、という太郎氏のボヤキが聞こえてきそうです。
さて、これだけ日韓関係がこじれるのは、主役のムン・ジェインの強烈なキャラもさることながら、従来は日韓関係の間に入って世話焼きオバさんをしていた米国をまったく期待できなくなったからです。
今回レーダー照射事件でハリス駐韓大使が韓国国防部長官と面会したのが、1月28日ですから、事件から1カ月以上たってしまっているわけで、ずいぶんと熱のない話です。
その場でハリス大使は「ハリス大使は両国の確執に懸念を示した」(朝鮮日報)そうです。
いまの日韓関係において、その修復を企図する米国外交関係者は、国務省、民間を通じてほとんど姿を消しました。
かつての慰安婦合意において世話焼きオバさんを演じたのは、NSC上級アジア部長兼東アジア担当大統領特別補佐官としてジャパンハンドラーをしていたマイケル・グリーンだといわれています。
彼は日韓関係の障害であった慰安婦問題を、日本に頭を下げさせ、癒し財団をつくることで終わりにしたかったのでしょう。
もちろん北とその後ろ楯である中国に対抗している日米韓による三国疑似同盟を維持するためですが、そのグリーンの思惑は、ムンが慰安婦財団の解散をすることによって一方的に破壊されました。
それどころか、徴用工判決で、日韓基本条約の根幹である日韓請求権協定を破壊するところまで進み、その上念押しのようなレーダー照射事件です。
いま、彼のようなタイプで手腕を発揮する米国人は、ほとんどいなくなったような気がします。
現在の米国の関心は北に対して向けられており、韓国は添え物にすぎないような空気が漂っています。
いわば、トランプがムンに注文を付けているのは、南北問題について余計なことで出しゃばるなということだけにすぎず、この国がどのようになっていこうと意識の外にあるように見えます。
これは日韓が、米国を仲立ちとしてかろうじて形骸化しながらも維持してきた日韓防衛協力体制の事実上の終焉を意味します。
ハリス大使は、当然のこととしてこの事件の顛末と韓国側の言い分を専門家(ハリス氏はP-3Cのパイロットでした)の意見を添えてトランプに報告したはずです。
これは在韓米軍が撤退する方向を加速させる新たな材料となっていくはずです。
残念ですが、在韓米軍の撤退は、わが国の安全保障に直接関わる問題でありながら、日本は関与できません。
その前提となる日韓基本条約が「徴用工」判決で破壊され、さらには軍事的にもレーダー照射事件による日韓防衛協力の終焉でダメを押されたからです。
今後韓国経済が再びデフォールトしようと、日本が前回のように一肌脱ぐということは、国民感情が許さないでしょう。
かくして韓国ウォンは、通貨スワップが結べないまま、国際通貨の裏書きなきままに、経済危機を迎えることになりますが、知ったことではありません。
前回のようにIMFにすがると徹底的にスパルタンにしごかれますから、中国にすがるのでしょうね。
米国が手を引き、日本も距離を開けるとなると、残るは中国しかありませんからね。
つまり外交--軍事-経済、いかなる形であれ関わろうにも、日本にとってそのとっかかりが消滅してしまったわけです。
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韓国人の反日感情(知識人たち)には驚き、落胆する。あんなにも日本人であることを誇ってもいた(戦前のこと)のにどうしたのだろうとしか思えない。
しかし、人間って、正反対の方向へ変わるのはよくあることではないかと気づくのだ。日本人が敗戦後、戦前とは真逆な価値観を持つようになった。 ロシアは共産党主義国家からロシア正教の国家となってしまった。 ドイツは今やもっともナチズムを嫌う国である。
韓国人の反日も、再度変わってもらいたいものだ。韓国の今の状況は常軌を逸している。このままでは韓国のためにもならないだろう。経済政策もおかしいし、将来性はない。
このような隣国への対応は、我慢をしながら距離を置く関係がが最善ではないのか。この国がどうなっていくかは分からないので、こちらとしては、最悪の事態に備え、軍備を整えながら国家を経済大国へと再建していくことだと思う。消費税を廃止し、緊縮財政からの脱却により、日本は再生すると思う。三橋氏の経済論を私は支持している。
投稿: ueyonabaru | 2019年2月11日 (月) 10時15分
お久しぶりです。
いつも勉強させていただいてます
いわゆる徴用工、レーダー照射、次は天皇ですか。
反日と言うより卑日って印象です。
話はいわゆる徴用工で申し訳ないですがいろいろないわゆる徴用工に関する記事や書籍などを読んで勉強させていただいてますが韓国側が正しいと論じてる人の中にざっくりですが徴用工は補償ではなく賠償を求めている。条約には補償は明記してるが賠償は明記していないと主張もあるのですがどうなんですかね?
今回の記事から外れてすいません。
投稿: つよし | 2019年2月11日 (月) 16時48分
李明博にしても、文喜相の今回の発言もそうですが、天皇陛下に対する息苦しくなるほどの思慕の存在を感じてしまうのは私だけでしょうか?
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2019年2月11日 (月) 17時19分
山路さん
山路さんはすごいことをおっしゃる。私も同感です。私は若いころから一種の国粋主義者でありました。日本はすぐれた国なんだと思っておりました。今でもその思いは基本的に変わりません。天皇様がおられ日本の歴史は存在してきました。
ポール・リシャルというフランス人は日本を称えました。東洋に負える国、西洋に負える国という表現をしました。これは、東洋の文化を十分に吸収しまた西洋文化をも吸収しつくした日本の将来の世界的使命を語るものでした。世界は日本が統べるとも言えるものです。
こんなことを書くと、大方から反論を受けかねませんが、私の真情だから仕方がありません。もちろん軍事力で世界を統御しようという理想なんかではありません。これは中国がやろうとしていることでしょう。八紘一宇の精神、大和の心、大和魂です。
韓国や中国の理不尽なやりざまにも耐え、日本人の奥にある理想がいずれ開花するだろうという希望なんです。
韓国の国会の議長さんが天皇主義者であるということは言えませんが、天皇の国日本であることは直感的に感じるのでしょう。だから、天皇に謝れと言う。
投稿: ueyonabaru | 2019年2月11日 (月) 19時02分
韓国特有(中国も?)の儒教に基づく価値観が有り、一度謝れば上下関係が固定化してしまい
上の者は、下の者に何をしても構わないと考える様です。(対等と言う考え方は無い)
「隣の国だから、外見が似てるから、同じ考え方をするはずだ」との
誤った憶測による判断は棄てるべきです。
謝罪は、「自分の地位が下だ」と認めたと相手に思われる。
投稿: Coyote | 2019年2月12日 (火) 07時44分
つよしさん、徴用工に賠償はありえません。
ブリタニカによれば賠償とは「違法行為によって他人に与えた損害を填補すること」であって、徴用工の問題はそもそも未払い賃金の請求でしかないし、それは、一括で支払っています。
では何故、こういう要求になるのかといえば、韓国は併合時代を違法としているからにほかなりません。
このあたりの事情については、シンシアリーさんが幾度となく著書で言及していますので、韓国にかんしんがおありならご一読をおすすめします。
投稿: ユンボ | 2019年2月12日 (火) 08時13分
上のコメントは、わたしです、すみません。
投稿: ゆん | 2019年2月12日 (火) 08時15分
ゆんさん
ご返答ありがとうごさいます。
時間の許すかぎり著書や意見交換などしてわたくしながら勉強させていただいてるんですがまだまだ勉強不足ですいません。
シンシアリーさんの著書ですね。探して読んでみたいと思います
どうもありがとうごさいました
投稿: つよし | 2019年2月12日 (火) 13時51分
相模吾です。 山路さんの過去の論評に敬意を表しますが、韓国議会議長の発言を天皇への思慕とは言いすぎです。 議長発言を聞いた感想は「野卑な発言」です。韓国を代表する三権分立の一方の長である人物が、間違っても口にすべきではありません。①日本国の象徴②日本国民統合の象徴である天皇を、戦犯および戦犯の子と公に発言したのです。極東軍事裁判ですら決めつけていない。敗戦日本国民の天皇に対する考えを理解していたからです。先の大戦の責任をうんぬんするつもりはありません。戦後73年が経過し、同じ自由主義、資本主義経済圏にありながら同盟国にたいして一片のリスペクトも持てない国会議長を憐れむだけです。
安倍首相が猛烈に抗議したのも当然です。少なくとも文議長は発言を取り消し、日本国民に謝罪すべきです。冷え切った日韓関係をこれ以上悪化させるのは北や中国を喜ばせるだけです
是々非々をはっきりしながら、根気良くつきあっていくしかなかろうと思います。
投稿: 相模吾 | 2019年2月12日 (火) 16時06分
私は、次のサイトの記事をお薦めします。(Googleで検索して下さい)
「日韓問題(初心者向け) - ブロマガ」の「【日韓問題】日韓で異なる「謝罪」の意味」
投稿: Coyote | 2019年2月12日 (火) 16時09分
相模吾さん
はぁ。 私の発言の意味を必要以上に拡大解釈なさるのは困ってしまいます。(笑)
ただ素直に議長らの発言を受け止めればこそ、率直にそういう感想を持ったものに過ぎません。
議長は「天皇(陛下)が手を握り、たった一言謝ってくれれば」、それで「全て済む」と言ったんです。 もちろんそんな事は出来やしませんよね。
しかし、陛下は何の権限を持たない御存在にも関わらず、それで全て了とするなどは「どれほど陛下を好きなのか?」って話ですよ。
李明博もそうです。就任当初から天皇来韓を日本政府に要請してましたね。
米韓関係も良かったし、経済も上向きでした。なればこそ、長年の念願である天皇陛下の来訪をますます強く望むようになったのです。
ところが支持率が下がり、政権が窮地に陥るとたちまち国内向け反日にカジを取り「天皇暴言」をしましたが、それはほとんど自暴自棄の反逆児の様でした。
とちらにせよ、その底意がどうであれ、彼らが考える天皇陛下の存在の重さは日本人以上のものがあるのだと思いますよ。
それはつまり、為政者としての彼らに足りないものを持っているのが「日本国の天皇陛下」なのであって、それを自覚している心情を「思慕」と呼んだものです。
かれらの解釈では天皇陛下は「絶対者」であり、それを自分の内に希求してやまないのですね。
主権者たる韓国民自身もそういう歴史的事大主義を受け入れやすく、さらに求める部分もあって、国家元首たる大統領に「天の意思」みたいな万能性を要求するからダメなんだと思います。
たしかに日本の国は一年事に首相がかわろうが、大地震や津波がこようが、騒乱やデモで国が崩壊する事もなく安定し続けます。 それは天皇陛下のご存在ゆえであるという事もできますが、陛下の直接的な絶対的権威ゆえではないですよね。
けれど、彼らは戦前のように日本の強さの源泉を天皇の絶対性に求めている部分があり、それをうらやましがっている気分は見逃せません。
そのような解釈はあながち全てが間違いではないのですが、天皇陛下のご存在とその有する権威との間に、李氏や議長の考えが及ばないものがまだ多く介在しているのですね。
まぁ、そんなふうに考えてコメントいたしました。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2019年2月12日 (火) 18時18分
相模吾です。山路さんからのコメント拝見。お考えはよくわかりました。すべて共感します
。しかしやはり「思慕」ではないですよ。山路さんがおっしゃている「為政者としての彼らに足りないものを持っているのが「日本国の天皇陛下」なのであって、それを自覚している心情を「思慕」と呼んだものです。」 これは「羨む;うらやむ」ということですね。
思慕と羨むは異なります。「彼らは戦前のように日本の強さの源泉を天皇の絶対性に求めている部分があり、それをうらやましがっている気分は見逃せません。」山路さんのこの部分のほうがしっくりきます。
今上天皇ご譲位論が盛んであったときに、天皇陛下の存在自体が天皇制であるという意見を今上天皇は否定したと聞きます。広島や東日本大震災の時に被災者の目線に立たれて哀悼とお見舞いを述べられ、また海外激戦地をおとずれて彼我の戦没者に黙とうされる。過疎に悩む地方を訪れて、その市井を支える人々に思いを寄せることを誰ができるのだろう。自らの使命を国民の安寧と繁栄と述べられ、全身全霊で取り組まれることを誰ができるのだろう。天皇に絶対的な権威などなくとも、日本人をこの無私の活動者を「象徴」として敬愛している。
昭和天皇を戦犯、今上天皇を戦犯の子と呼ぶ韓国国会議長が、どのような考えで天皇に謝罪を求めても、妬みから(羨むよりまだ悪い)でた言葉としか受け取れない。
と、まあ、冒頭すべて共感と言いながら山路さんに反論しちゃった。すみません。終わりにします。
投稿: 相模吾 | 2019年2月12日 (火) 21時56分