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2019年3月28日 (木)

仏大統領「中国に甘い考え抱く時代終わった」 

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EUが対中強硬策に転換しつつあります。

中国は今米国と欧州の間に大鉈をぶち込む攻勢をしかけています。その手段は臆面もなく札びらをちらつかせる田舎成り金のようなことをすることわけですが、これが効く国もあるのです。

まず習近平が最初に標的に選んだのはイタリアでした。

「【ローマ=細川倫太郎】イタリアを訪問中の中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は22日、ローマでマッタレッラ大統領と会談した。会談後の共同記者会見で習氏は「インフラや港湾などの分野で協力を深めたい」と述べ、イタリアとの連携強化に意欲を示した。習氏は23日にコンテ伊首相と会い、中国が推進する広域経済圏構想「一帯一路」で協力する覚書を交わす見通しだ。(略)
イタリアは高い失業率など厳しい経済環境に苦しんでおり、中小企業の倒産なども相次いでいる。一帯一路への協力で中国から巨額の投資を呼び込み、経済活性化の起爆剤にしたいという思惑がある。ディマイオ副首相は「(一帯一路の覚書の署名は)我々にとって偉大なチャンスで、イタリア企業の輸出も拡大できる」と指摘する」(日経3月23日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42821150T20C19A3000000/

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習とコンテ首相

この習の横でにやけているのがジョゼッペ・コンテ首相で、去年5月24日に指名されたばかりの無名の弁護士にすぎませんでしたが、EU離脱を主張する政党「五つ星運動(M5S)」と極右政党「同盟」が推しています。
これでわかるように政治的出自としてはたぶん右派に属するはずですが、EU全体の意志とは無関係に一国で抜け駆けしてしまいました。

これでイタリアはEU圏第3位の経済規模を持ち、なおかつG7主要国の一角でありながら、恥も大分もなくチャイナ・マネーにしがみついたことになります。
もっともイタリアからすれば、去年から財政悪化が再燃してニッチもサッチも行かず、マネーと名がつけばなんでも飛びつく心境だったわけです。
その原因は、今まで何度か書いて来ましたが、EUという「黄金の檻」に閉じ込められて、独自の景気浮揚策を禁じられているからです。
財政拡大でテコ入れしようにも欧州財政収斂基準で緊縮財政を強いられ、金融緩和をしようにも長期金利を決定する権限は当該国中央銀行にはなくECB(欧州中央銀行)がガッチリ握っています。
これではイタリア政府は景気浮揚策がなにも出来ません。これはイタリアのみならず、張本人のドイツを除くすべての国の不満の対象でした。

このためデフォールト寸前までの事態に陥ったギリシャは、ドイツに対して第二次世界大戦中の賠償として36兆円を要求するということをして、はねつけられています。
ちなみに、ドイツが戦後賠償をしたのはユダヤ人に対してだけで、侵略したヨーロッパ各国には一切の賠償をしていないことが、これでもわかります。
韓国が好んで言う「ドイツは戦後保障をきちんと行ったのだ。日本も見習え」がウソだとわかりますね。

それはさておき、ギリシャは既に中国に同国最大のピレウス港を売却してしまっています。
このまま返済が滞るなら(たぶんそうなるでしょうが)、ギリシアは港湾、空港などの交通・海運インフラを中心にして虫食い状態になると思われます。

このギリシアと同じ窮状を抱えるイタリアは、「インフラ整備にカネを貸してやるから」という甘言に乗って覚書に署名してしまったのですが、中国への返済が滞ったら最後、スリランカのハンバントタ港同様にイタリアのインフラ運営権は中国にもっていかれることになるでしょう。
そうなった場合、中国は自由に軍港としても使える港湾を手にすることが可能となり、地中海における中国海軍の拠点を獲得出来ることになります。そして中国のみならず、「同盟国」ロシアまでが、それに合い乗ることになるでしょう。
EUの安全保障環境は根底から崩れかねないことになります。

実は欧州首脳会議で簡単に中国との覚書を交わさないようにしようという取り決めがあったのですが、イタリアは緊縮財政を押しつけるドイツとフランスへの当てつけからか公然とそれを破ったことになります。

最近では、このEUの基幹国をなす仏伊は険悪そのものの関係になっていて、とうとう今年2月にはフランスは大使召還に踏み切ってしまいました。大使召還は断交のひとつ前の措置ですからハンパではありません。

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                                    出典毎日新聞

そのきっかけは、イタリアの政権与党になった「五つ星運動」の党首であるディマイオ副首相(兼経済発展相)らがマクロン仏政権に対して黄色いベスト運動の幹部と会合を持ち支持を表明したことや、さらにはもう1人の副首相の「同盟」の党首のサルヴィーニ副首相がこの1月、仏国民が「ひどい大統領から逃れられるよう期待する」なんてやらかしてしまったためです。

元々、移民問題やフランスを中心とした 欧州委員会が、イタリア政府の新年度予算編成欧州財政収斂基準に適合しないとして拒否してしまったたことが響いています。
この時に、イタリア政府に対し「合意が成立しないならば制裁を科す」ともっとも強硬な態度でイタリア政府に接したのがフランス出身のEU経済・財務・税制担当のモスコビシ欧州委員であったことから、イタリアの反仏感情に火がついてしまったようです。

イタリア政府からすれば、「お前らはオレらをポビュリスト呼ばわりするが、正式な選挙で選ばれた一国の政府が編成した予算案を頭ごなしに潰すとはなんということだ」と怒り心頭に発したようです。
そしてマクロンに抵抗する黄色ベスト運動の指導者たちと面会して激励したというわけです。

さて一方のフランスのマクロンは、イタリアへの意趣返しというわけではないと思いますが、中国にとろかされたようなイタリアと対照的に対中姿勢を硬化させています。

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マクロン大統領 時事

「仏大統領「中国に甘い考え抱く時代終わった」 EU新戦略
欧州では近年、不公正な中国市場への不満や中国による欧州企業の買収などへの警戒が高まっている。5G整備では米国が中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)の排除を求めるが、加盟国には温度差もあり、対応は一様ではない。
 このため欧州委は先立つ12日、中国をパートナーであると同時に「競争相手」と位置づけ具体的な行動を盛り込んだ10項目の「戦略見解」を公表。首脳会議が議論の土台とした。フランスのマクロン大統領は22日、「欧州が(中国に)甘い考えを抱く時代は終わった」と強調した。
 ただ、中国との経済関係を重視する加盟国も多く、EUの結束維持は難しい。首脳会議ではイタリアの巨大経済圏構想「一帯一路」の覚書署名についても意見が交わされ、ドイツのメルケル首相は「差し当たり批判しないが、協調対応の方がはるかによいと、私らはこれまでに話し合ってきた」と不満をにじませた。
 3月22日、ブリュッセルで行われたEU首脳会議で、欧州委員会は域内市場を歪める他国の国有企業や国家補助への対処を年末までにまとめ、政府調達分野での互恵的な市場開放を求め、第5世代(5G)移動通信システム整備での安全保障確保のための共通の対策を取ることを決めました」(産経3月23日)
https://www.sankei.com/world/news/190323/wor1903230020-n1.html

ユンケル(力がつきそうな名前ですね)欧州委員長もこの欧州会議で、「中国はパートナーと同時にライバル。この状況に適応せねばならない」と述べて警戒感を隠していません。

このようなEUの他中国に対する脅威感は、単に米国の中国制裁になびいたというわけではなく 各国で急激に進むチャイナ・マネーによる浸食が表面化しているからです。

たとえばフランスでは、中国企業による投機的な農地買収が問題化していて、農地の高騰によりフランス人が土地を買えないという事態すら発生しています。

昨年8月には中国企業の農地買収への反対デモが起こり、マクロン大統領も「どんな目的かわからないまま、外国人に何百ヘクタールもの土地を買わせるわけにはいかない」と述べ、農地買収と外国人投資家に対する規制強化を打ち出しました。
https://www.news-postseven.com/archives/20180915_758056.html

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8月29日、フランス全土から集まった農業従事者100人ほどが、中国資本により土地が買収問題について反対するデモを行った(Guillame Souvant/AFP/Getty Images)大紀元

「仏で中国資本の投機的農地買収、デモで「中国人は出ていけ
農業従事者労働組合・フランス農家協会もデモに合わせて同日、「土地は農民たちの支えにより食糧を生産するものだ。しかし、中国資本はビジネスのためであり、世界的な株式に影響を及ぼす材料となっている」との声明を発表し、中国企業の投機目的による土地購入を批判した。同協会スポークスマンのローレン・ピナテル氏は「フランスの農民たちは中国企業の土地買い占めに本当に怒っている」と述べている。
この中国企業は2015年から翌年にかけて、同地域で総面積1600haの耕地を購入したうえに、2017年にはさらに900haの土地を買い増ししている。
 中国の投資家がフランスで購入するのは普通の農地だけでなく、ブドウ畑も含まれる。世界的に知られるワイン産地ボルドー地方では、7000あるブドウ農家のうち、140がアジア系企業に買収されているが、そのほとんどが中国資本だという。
 これらの中国企業は市場価格よりも高い値段で土地を購入し、周辺の土地価格の値段を釣り上げて、土地が値上がりするのを待って、転売するという手法をとっている。便宜的に小麦などを植えたりしているが、ほとんど収穫されていないという」(NEWSポストセブン2018年9月15日)
https://www.news-postseven.com/archives/20180915_758056.html

日本においても東京圏のマンションや北海道の水源地などを中心として不動産が中国の投機マネーによって買い漁られていることは知られていますが、フランスでは既に大規模に買い占めした後にそれを放置するといった実害が生じています。
それはチャイナ・マネーが国内の不動産市場が飽和したために、国外にまで食指を伸ばしているからですが、あくまでも彼らは投機目的でまともな農業経営をする気などさらさらないわけです。
これによってフランス人自慢のブドウ畑は瞬く間に荒れ果ててしまったそうです。罪作りなことよ。

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                           ロイター

ただしこのフランスに対しても中国は手を打っており、3月25日の習近平・マクロン会談では、中国がフランスのエアバス300機を購入することで合意し、中・仏が12億ユーロをかけてコンテナ船10隻を新たに建造することなどの大型契約が交わしたと発表されました。

「今回まとまった15件の商談には、欧州航空機大手エアバス(AIR.PA)の航空機300機を購入する推定300億ユーロの契約が含まれた。他には、再生可能エネルギーや海運、銀行部門で契約が締結された。マクロン氏によると、中国側はフランス産鶏肉の輸入解禁に合意した。
マクロン大統領は貿易やハイテク産業で存在感を強める中国に対抗するため、欧州の結束を促す考えも示した。習主席との共同会見でマクロン氏は「欧州は結束し、首尾一貫したメッセージを発するべきだ。われわれは戦略的投資でそれを実行している」と述べた」(ロイター3月26日)

共同会見でマクロンは「エアバスの巨大な契約という今日の成果は重要な進展だ」と述べて歓迎しましたが、同時に「欧州は結束してメッセーシを送るべきだ」とも言っていて、中国に釘を刺すのを忘れませんでした。
これは習は厳しいことを言われそうな国を訪問する場合、あらかじめ大型商談を持ちかけるのが定石だからです。

2017年11月の訪米時にはボーイングから300機買うと大口を叩きましたが、それは実は2013年からの契約済みの数を入れていただけだったというオチかついて、かえってトランプを怒らせてしまいました。
ですからこのエアバスの爆買いも、履行されるかどうかはわかったもんじゃありません。

とまれ中国は札束で頬を叩くようにしてイタリアをヘタリアにしてしまい、ギリシアと並んでEU攻略の拠点を得たことになります。
しかし、それがいっそう強くEUの対中警戒感を強めたのも事実ではあります。
とうぶんヨーロッパをめぐる攻防は続くことでしょう。

 

 

 

 

 

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コメント

中国の狙いはギリシャのピレウス港と同じように、イタリアではトリエステ港とかジェノバの港なんでしょう。中国がG7の一角を切り崩した意味は大きく、このまま行けば企業活動を通じてEU内の技術にアクセス出来る権利を保持し続ける事にもなりそうです。
しかし中国そのものが不良債権まみれであるうえ、連立政権の一角である「同盟」のサルヴィー二は猛反対しているので、まだまだこの先もありそうです。

気になる論説としては、遠藤誉氏が「日本の安倍首相が昨年11月に一帯一路に協力・融和的な姿勢を取った事が影響している」としています。
そうも言えると思います。

日本政府としては表面的にはともかく協力的実質を表してはいませんが、日本企業はずっぽり中共の人質と化したままなので、事態はイタリアよりさらに深刻と思います。
安倍政権は経済的自由を重んじるあまり、日本の技術の中共への「技術のダダ漏れ」を防ぐ事が全く出来ていません。

それにしても「中国に甘い考えを抱く時代は終わった」なんて今更感しかありませんね。

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