• S-026_20241214013201
  • S-027_20241214013301
  • 20241213-153622
  • 20241213-154411
  • 20241213-160832
  • 20241212-235901
  • 20241211-032939
  • 20241211-154712
  • 20241211-160322
  • 20241210-023508

« 低線量被爆という「バカの壁」 | トップページ | 日曜写真館 里の春 »

2019年3月16日 (土)

国連科学委員会 (UNSCEAR)報告書「福島事故とチェルノブイリとは違う」

070

 

大震災と福島事故から8年目の3月11日から始めたこの特集も、今日でいったん締めることにいたします。

 

まだ福島事故の原因や原発の現況については残されたままですが、また別の機会ということで。

 

さて今でも平気でヒロシマ・チェルノブイリ・、フクシマと並べている無神経な人たちがいます。 

 

いやそれどころか、チェルノブイリより大量の放射能がばらまかれたという人さえいます。

 

昨日も常連さんのひとりから頂戴して、いまでもまだこんなものが出回っているのかとやや驚きました。

 

このかたは、「福島事故はチェルノブイリの3倍放射能が出た」という説を貼っています。その根拠はドイツということですが、どのようなものかは明らかにされていません。

 

ドイツは事故当座から、意図的とも思える悪質な煽り報道の発信地だったので、さもありなんと思いますが、ソースが明らかでない以上、それ以上はなんともいえません。
関連記事「ドイツTDZの歪曲報道とYouTube削除問題について」  
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-0a22.html

 

私が知っている3倍説は、日刊ゲンダイと東京新聞がソースです。

 

元の記事のリンクが切れていますが、『チェルノブイリの3倍!』ではありません。 - Togetterに一部が記録されています。

 

それによると、東京新聞は2012年7月12日)に、見出しに「つくばのストロンチウム  チェルノブイリ事故時の3倍超」と掲げています。東京新聞は見出しで間違った印象操作をしています。

 

内容的には「つくばの気象研観測、2011年3月の90Sr降下量は、チェルノブイリ事故時に観測された量の3倍」だったということのようです。確かにつくば市の気象研では、つくば市でのチェルノブイリ事故時の3倍の放射線値が測定されました。

 

一般的に「チェルノブイリの3倍あった」のではなく、つくば市でふたつの事故を計測したところ3倍あったということです。意味がまったく違います。3https://togetter.com/li/337042

 

同じく茨城県県北のモニタリングポストの測定値をみてみましょう。

 

002_edited1_2

 

茨城県HP

 

これを見て分かるのは、3月14日前後に大きな放射線量の増加が記録されており、3月21日にまた中ていどのピークがあって以後は低レベルで推移しています。

 

この極初期の放射線値が、チェルノブイリの事故時に測定した日本の数値の3倍あったというだけのことです。

 

そりゃそうでしょう。つくば市や県北は、福島原発から175㎞ですから、チェルノブイリまでの距離約8000㎞超とは比較になりません。大きく出てとうぜんです。

 

それを意識的にか無意識にか混同して東京新聞は「チェルノブイリの3倍あった」と見出しで書いてしまったわけで、これでは煽りだと批判されてもやむをえないでしょう。

 

またこの「3倍」説とは別に「4倍」説もありますが、丹念な検証の結果、これも誤りだと証明されています。
「セシウム放出量がチェルノブイリの4倍」というガセネタ – アゴラ

 

国連科学委員会 (UNSCEAR)はこのように結論づけています。

・チェルノブイリと比べて、放射性ヨウ素131の総放出量は3分の1未満
・セシウム137は4分の1未満

これを大きく覆す数字が出た場合、「3倍だって、大変だ。政府が隠蔽している!」とパニくらずに、元のソースを辿って下さい。

 

ほとんどの場合、伝達のミスか意図的歪曲をおこなっているはずです。

 

さてこのようにふたつの原子力事故は共に悲劇であることに変わりはありませんが、まったく違う事故だと認識すべきです。

 

両事故の放出された放射線量は以下だと推定されています。

 

7https://synodos.jp/science/15817/2
「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」
「文部科学省による、ストロンチウム、プルトニウムの核種分析の結果について」
UNSCEAR 2013年報告書」


今日はそのことを書いた2014年6月20日の記事を再載します。

 

■参考資料
「被災地を搾取し被害を拡大してきた「フクシマ神話」――ニセ科学とデマの検証に向けて」林智裕
「福島第一原発3号機は核爆発していたのか?――原発事故のデマや誤解を考える」菊池誠×小峰公子
東電福島第一原発の事故はチェルノブイリより実はひどいのか?――
福島原発事故に関してhttp://genpatsu.sblo.jp/article/47289931.html

 

                     ~~~~~~

 

ェルノブイリ原発と福島第1原発の事故は次元が違う事故です。 

 

これ以上の設定がないためにレベル7に入ってしまって同一視されますが、別々に考えていく必要があります。

 

チェルノブイリは、黒鉛型で格納容器がなく、そのために原子炉の事故がそのまま大量の原子炉内のすべての核種の拡散につながりました。(図 黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉 (RBMK) の構造図。

 

Rbmkウィキ 黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉 (RBMK) の構造図

 

核燃料を収めた圧力管の間をポンプで送り込まれた冷却水が流れて蒸気となり、タービンを回す構造になっています。

 

核燃料を収めた圧力管の間をポンプで送り込まれた冷却水が流れて蒸気となり、タービンを回す構造になっている。格納容器がないのがわかる) 

 

その中にはプルトニウムやストロンチウムが含まれていたために、惨事となりました。

 

一方福島事故は、チェルノブイリと違って、閉じ込めるための格納容器が存在し、格納容器を覆う原子炉建屋が水素爆発によって破損しましました。 

 

2http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?...
(図 沸騰水型軽水炉(BWR)構造図 燃料棒が格納容器に収納され、さらに建屋に入っているのがわかる)

 

格納容器内にあった燃料棒が融解して一部が格納容器外へメルトスルーしましたが、セシウムやヨウ素といった揮発性の高い比較的軽い核種の放出に留まっていたために、プルトニウムなどの放出という最悪の事態は最小限に抑えられました。

 

もちろん、ストロンチウムなどの放出もわずかにありましたが、原発周辺数キロにとどまり、量も微量でした。

 

放出されたプルトニウム放出量を見るとこのようなところです。

大気中への放射性物質の放出量の比較(単位1015Bq) 
●ガスとして揮発した軽い核種 
ヨウ素131131I)    ・・・チェルノブイリ      1760
                        ・・・ 福島第1       16 (10月20日 以下計測日は同じ)
セシウム134134Cs)・・・チェリノブイリ    47
・                            ・・・福島第1          18

●重い核種
ストロンチウム9090Sr)・チェルノブイリ  10
                             ・・・福島第1        0..14
プルトニウム238238Pu)・チェルノブイリ 0.015
                                ・・・福島第1        0.000019
プルトニウム241241Pu) ・チェルノブイリ  2.6
・                                ・・・福島第1        0.0012

(※典拠 原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書-東京電力福島原子力発電所の事故について

 

 以上で分るように放出量自体のケタがまったく違います 

 

その結果、このように拡散規模に大きな差が出ました。上下を比較すれば、その規模の拡がりがまったく違うのがわかるはずです。

 

 

福島原発事故に関してhttp://genpatsu.sblo.jp/article/47289931.html

 

次に、わが国にとって非常に幸運だっのは、事故当時の風向きです。

 

風は北東方向の風に乗って太平洋へ吹いていました。そのためにかなりの割合の放射性物質は洋上へと吹き飛ばされ、拡散しました 

 

3月12日から3月21日までの4回に渡って、いずれもいったんは北東方向の海上に出て、1回目は北上し、以後3回は南下しています。

 

飯館村などへ向った例もありますので、地形によって複雑な変化はしていますが、基本はこ「神風」によって地表部分の汚染は、内陸部にあるチェルノブイリと比較して大幅に減衰したと思われます。

 

また、事故後の対応も異なっています。

 

事故当初、ソ連特有の秘密主義のために報道管制が敷かれ、一般市民は事故発生後1週間ほどはなんの避難措置も取っていませんでした。

 

事故後4日後に高濃度汚染区域でメーデー行進も行なわれた例もあるほどです。 

 

そのために、計画的な避難はおろか、放射性物質に汚染された食品や牛乳の摂取制限も実施されず、大きな健康被害を引き起しました。

 

特に事故後に被曝した10シーベルト(1万ミリシーベルト)というとんでもない高線量の牛乳を子供に与えるという重大ミスをしたために、小児甲状腺ガンが大量に発生しました。

 

チェルノブイリ事故を継続して調査しているベラルーシで事故後10年、25年経つ今でも小児ガンなどが発症していると唱え、震災瓦礫の搬入は低線量内部被爆の危険地域を更に拡大することになると主張した人達がいました。 

 

ベラルーシで10年後に小児ガンが出た原因は既に解明されています。高濃度汚染地帯のキノコを季節的に大量に食べたからです。(下図参照)

 

  073

 

                      (ベルラド放射能安全研究所作成) 

 

上の図を見れば、10月12月など、キノコが大量に食卓に登る森林地帯の季節が飛び抜けて高いのが分かります。 

 

周辺地域だけではなく、東欧、北欧を中心にして野生のキノコ類を食べる食生活のために健康被害が多発しました。

 

このチェルノブイリの類推から、わが国でも大量の甲状腺ガンが出るはずだという一部の予見がありましたが、はずれました。 

 

一方わが国はチェルノブイリの教訓に従って厳しい食品の出荷統制を敷きました。

 

ベラルーシは野菜は3700ベクレル/㎏から40ベクレル/㎏まで実に13年かけて漸進的に基準値を落していますが、事故直後の基準値を見てみましょう。。

・事故直後のベラルーシと日本の食品基準値比較
・野菜  ・・・3700ベクレル
・豚・鶏肉・・・7400
・日本   ・・・300
(※米は500)
  

なお、日本は12年には食品一般の基準値を100ベクレルまで落しました。

 

チェルノブイリと福島を比較して、ロシア科学アカデミーバロノフ博士はこう結論づけています。 

「1986 年以来25 年が過ぎました。私たちは、今、公衆衛生上のどのような損害がチェルノブイリ事故によって引き起こされたか知っています。
損害のほとんどが、1986年5 月に、汚染された地域で生成された、放射性ヨウ素を含んだミルクを飲んだ子どもの高い甲状腺癌発生率に帰着しました。不運にも、当局と専門家は、この内部被曝の危険から、適時、十分に彼らを保護することに失敗しました。
福島では、子どもが2011 年3 月から4 月にかけて、放射性物質を含むミルクを飲まなかったことにより、この種の放射線被ばくは非常に小さかったといえます。このため、近い将来あるいは、遠い将来、どんな甲状腺疾患の増加も予想できません」
(
内閣府・低線量被ばくのリスク管理によるワーキンググループ報告) 

また国連科学委員会はこう国連総会に報告し、承認されています。 

●国連科学委員会 (UNSCEAR)報告書要旨
①日本国民の総被曝線量(集団線量)は、甲状腺がチェルノブイリ原発事故の
約30分の1
②全身が10分の1
③チェルノブイリと比べて、放射性ヨウ素131の総放出量は3分の1未満
④セシウム137は4分の1未満
⑤ストロンチウムやプルトニウムは「非常に微量」
⑥(がんが増加しても非常に少ないために)見つけるのは難しい
⑦「福島はチェルノブイリではない」

 

 

 

 

 

« 低線量被爆という「バカの壁」 | トップページ | 日曜写真館 里の春 »

コメント

2011年3月29日の朝日新聞には、チェルノブイリ事故当時ドイツに住んだ経験から、冷静にと呼び掛ける大学教授の投書が掲載されていたんですね。
https://twitter.com/nobuko_kosuge/status/1104358614188212226

より酷い事例の経験から「冷静に」と提言する人すら、存在からして許さなかった愚かな人々が少なくなかった(或いは態度が物凄く大きかった)黒歴史は、菅政権の無能・破壊・混乱を差し引いても、教訓として我々は記憶しておくべきだなぁと。

わかりやすい記事を書いていただき、あらためて勉強させて頂きました。要するに事故のレベルを比較すれば、チェルノブイリと同じく原子炉が溶融してメルトダウンしたため、最悪レベルの事故と言えるのでしょう。

しかし、福島原発には格納容器があるタイプであった為、放射能の拡散はチェルノブイリ事故に比べ大幅に少なく、“影響”はチェルノブイリに比べ桁違いに小さかった、ということでしょう。

事故そのもののレベルと、事故による環境や人体への影響のレベルを分けて考える必要があると思いました

はじめまして、アリです。一月前の記事に失礼します。
原発関連の丁寧な記事、読ませて頂きました。
当時茨城在住の学生だったのですが、震災当時の混乱、就活〜就職と忙しさにかまけて、対して知りもしないのに日常入ってくるネットやテレビのぼんやりとした情報だけで、福島県産の食品をなんとなく避けてきました。
こちらの記事を読み福島の方達に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
当時、きちんと自身で調べなかったことに後悔しています。
エビデンスのあるきちんとした記事を書くのは大変だと思いますが、今後も応援しています。

事故後に原子炉の停止には成功したが、その後、継続的な冷却に必要な電源を喪失し、崩壊熱を除去できずに、燃料・炉心溶融に至った福島第1
事故後、施設に原子炉を停止する術がなく、核反応が継続するなか、外部からホウ素入り砂を大量投入するなどしてなんとか反応を止めたチェルノブイリ(反応収束後に崩壊熱を除去するシステムを構築できるわけもなく、やむなく石棺で蓋をした)

原子力事故の規模を評価する尺度が、放射性物質の放出量(INES)くらいしかないため、最悪クラス(クラス7)の事故として一緒にされてしまう福島第1とチェルノブイリですが、同じクラス7でも規模も事故の経過も全然異なるものであることは、知っていただきたいですね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 低線量被爆という「バカの壁」 | トップページ | 日曜写真館 里の春 »