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沖縄のレフト方向の人たちの通弊は、沖縄を本土政府との関係でしか見ないことです。
その視野に入る「外国」といえば、せいぜい米国と中国ていどなもので、「国境の県」としてのアンテナはなきが如しです。
故翁長知事は県の「大使館」を米国に作りましたが、そもそも食い込めもしないワシントン政界にそんなものを作ってみてもしょうがないのです。
どうせ「大使」を置くなら、米国や中国、あるいはアジア諸国の動向を探れる、たとえばシンガポールなどに気の利いた「諜者」を置くほうがよほどましでした。
あるいは、外国に展開する商社筋に情報コネクションを持つだけでもだいぶ違います。
ですからデニー知事は、国際政治に何が起きているのか、まったくブラインドなくせに安易に火遊びに手を突っ込もうとしています。
中国の一帯一路について、歓迎するとデニー知事が言い出しました。それを伝える琉球新報です。
「玉城デニー知事は26日の定例記者会見で、河野洋平元外相が会長を務める日本国際貿易促進協会の訪中団の一員として16~19日に訪中した際、面談した胡春華副首相に対し「中国政府の提唱する広域経済圏構想『一帯一路』に関する日本の出入り口として沖縄を活用してほしい」と提案したことを明らかにした。胡副首相は「沖縄を活用することに賛同する」と述べたという。
巨額融資によって債務を抱えるリスクも指摘される同構想だが、玉城知事は「沖縄がどのように関わっていけるか詳細に検討している段階ではない。情報収集し、沖縄がどのように関わっていけるか模索し、広く中国や台湾、アジア全域への懸け橋につながっていけることを期待している」と説明した」(琉球新報4月27日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190427-00000003-ryu-oki
ハーバービネスオンライン https://hbol.jp/173834
ほー、「一帯一路の出入り口として沖縄を使ってくれと中国要人に伝えた」、ですか。
公人として訪中した席上での発言ですから、大変に問題です。
よもやこんな重大なことを知事の独断専行で言ってしまったんじゃないでしょうね。とうぜん県議会にかけて審議した上での発言でしょうね。
いやそもそもわが国の外交政策とも大きく異なりますから、政府に打診したのでしょうね。
一帯一路の国際会議が国の大統領・首相クラスが集まったのは、これが国家が国家を対象として貸し出す融資だからです。
そんなことをたかだか地方自治体の首長が国の頭越しに発言してしまっても、沖縄だけは特別だとでも言いたいのでしょうか。あんた何様?
こういう沖縄県の恣意的な「県外交」はいいかげん止めてもらえませんか。
デニー知事は小沢親分の影響で親中派ですが、親中かどうかであるというよりも無知に過ぎます。
政治家の無知は県民どころか、国民全体を不幸にします。
この中国の一帯一路政策は、ひとことでいえばヤクザがよく使う「債務トラップ」です。
借金が返せそうもない案件を甘い言葉で勧誘し、カモがそれに食いつくと巨額の融資をしてやり、その見返りに土地や港を担保にしてしまいます。
当然返済は予定調和的にショートしますから、担保物件としてそれを押えてしまうという悪どいやり口です。
出典不明 一帯一路の概念図
日経
先日の4月25日に、第2回一帯一路の閣僚級会議が開かれました。この席上、中国は参加各国の「オレたちを債務トラップに陥れて、土港を取り上げる気か」という声に、火達磨になって言い訳に追われました。
中国人民銀行(中央銀行)の易綱 (いこう)総裁は、4400億ドル(約49兆2千億円)を提供した」と豪語する反面で、 こんなことを認める始末です。
「債務が増加しても、インフラ整備や貧困率の低下などに貢献しているならば、経済が成長し長期的には財政の持続性をもたらす」
苦しいですね。債務が超過してもそれ以上の成長のメリットがあるんだから問題ないだろうという論法ですが、ちょと待ってくださいよ、その担保で取られた港は中国が所有権を押えて私物化し、運営権も握っていたんでしたよね。
誰が誰のためにやっているのか、その国の「貧困率を下げる」ためにやっているなんておためごかしはよして下さい。
あるいは劉昆(りゅうこん)財政相はこんなことを言ってなだめようとしています。
「(途上国の)財政の持続性を評価する仕組みを作り、債務リスクを防止する」
同じことは、他ならぬ会議で演説した習近平も言っています。
「中国の習近平国家主席は26日、北京で開かれた巨大経済圏構想「一帯一路」がテーマの第2回国際協力フォーラムで演説した。習氏はインフラ建設などで、「国際規則・標準に基づいて進め、各国の法律法規を尊重しなければならない」と述べた」(産経4月26日)
え、なんですって。
では、いままで国際規範も当該国の国内法も尊重せずに、債務返済の持続性を評価する仕組みもなく、債務リスクを増大させていたということですか。呆れたものだ。
こういう無計画で杜撰極まるインフラ投資は、今の中国ではあたりまえでした。
金融機関が不良債権化することも厭わずにカネを貸し付け、中国全土に「鬼城」とよばれるゴーストタウンを林立させました。
この過剰資本が国内で融資先に行き詰まり、外国に資本投下を拡大したのが、この一帯一路です。
19世紀の古典的帝国主義そのままのことをしているのが、今の中国です。
会議の席上、IMFのラガルド゙専務理事はこう述べています。
「[北京 26日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は26日、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」について、インフラ事業は必要な地域でのみ行い、負債を持続可能な水準に抑えるべきだとの認識を示した。
専務理事は、港湾・道路など取引の拡大につながるインフラの建設事業は一部の国で成長に好影響を与えているが、慎重な管理が必要だと指摘。
その上で、透明性向上、競争入札による調達プロセスの公開、プロジェクト選定のリスク管理向上を盛り込んだ「一帯一路2.0」に改革すべきだと主張した。専務理事は「歴史を振り返れば分かるが、インフラ投資は慎重に管理しないと、債務の拡大につながり、問題を引き起こす」と発言。「以前にも指摘したが、一帯一路は、完全な成功を収めるためには、必要な地域でのみ行う必要がある。そして今日追加するが、あらゆる側面で、持続可能な場所でのみ行うことも必要だ」と述べた。」(ロイター4月26日)
だから、一帯一路は巨大な街金のカードローンだといわれるのです。
簡単に貸すものの、トイチですぐに返済が行き詰まり、家屋敷が丸ごととられるか、苦海の泥沼に身を沈めることになります。
中国の典型的な手口として、スリランカをケーススタディしてみましょう。
まず中国は、絶対に返せないことを見込んで港湾、空港、大型高速道路などといった巨大インフラの投資話を持ちかけます。
前スリランカ大統領のラジャパクサは、親中派だったことから目をつけられ、三期当選を可能にする改憲を強行し独裁政権を固めるために、この中国の甘い誘いに自ら飛び込みました。
そして自分の地元のハンバントタ県に、現地経済の実体にまったく不必要な港湾と空港を建設したのです。
借りたカネは、なんと約13億ドル(約1440億円)。
ハンバントタ港 産経前掲
その裏にはおそらく巨額なリベートが支払われたはずです。プロジェクトに乗り、中国企業に発注することで、おそらく3割近いリベートが大統領とその周辺にばらまかれたと思われます。
一帯一路と中華民族の伝統的しきたりである賄賂は切っても切れない仲で、アジア・アフリカの各地で汚職疑惑が浮上しています。
ところでこのハンバントタ港は2010年に、中国から建設費用の85%を借款して、中国港湾工程公司という国有企業が受注しました。
金利は年利6%という高利で、返済がいったん滞ればたちまち返済不能となります。
日本のスリランカ支援は0.5%で、付帯する危ない条項は一切ついていません。
「最終的には株式の70%を中国国有企業に99年間貸与せざるを得なくなった。リース料として11億2千万ドル(約1240億円)が支払われるが、事実上の“売却”といえる。
債務によるわなだ。植民地になったと同然だ」。野党系国会議員は憤りを隠さないが後の祭りだ」(産経2018年1月18日)
https://www.sankei.com/world/news/180118/wor1801180016-n2.html
しかもこの港湾の利用率は一日一隻。
国の経済規模にふさわしくない事業見通しと、ズサンな返済計画、未熟な財政基盤。返済不能は目に見えていました。
そしてこんな閑散とした港を作らせたあげくさらに、中国資本1600億円を投入して大型港湾都市を空港と都市を建設しています。
ハンバントタ港から北へ30キロは、同じように中国の融資で中国国有企業が作ったマッタラ・ラジャパクサ国際空港があります。
ここも建設費2億1千万ドル(約234億円)の9割ほどが中国の融資で、中国港湾が建設担当しましたが、開港してみれば月の収益はわずか約1万5000円(!)。
国際空港を名乗ってはいるものの、付近には漁村と不人気なビーチリゾートがあるだけで、当初から建設はラジャパクサ前大統領の地元への利益誘導だったことは明らかです。
ちなみにこの空港はフォーブス誌に、2016年「世界で最も空いている国際空港」に輝きました(苦笑)。
なお、同じような巨額融資を中国から貰っているコロンボ港では2014年には、中国の潜水船が寄港しており、このハンバントク港も遠からず、中国海軍の施設が作られるとみられています。
一般的に今のグローバリズム経済下ではそうですが、政治と経済が一体化しており、経済を外国に握られた国はその国の経済的・軍事的支配下に組み入れられてしまうのです。
このような流れを受けて多くの国が眼を覚まし始めています。
第1回一帯一路会議にあったイケイケムードは影をひそめ、パキスタンは、計画途中で中国資本での開発継続の見直を開始しマレーシアのマハティール政権は、ナジブ前首相と中国共産党政府が契約した、2つの一帯一路プロジェクトである計4兆円相当の鉄道計画の中止と見直しを発表しました。
それでもまだ懲りない国は旧東欧圏やアジア・アフリカの一部に残っており、たとえばラオスでは現在、中国とラオスを結ぶ高速鉄道の建設が進められていますが、その総事業費はラオスの国家予算の2倍にも及ぶといいます。
これでは破綻した場合(当然そうなるでしょうが)、国全体が中国の経済植民地となる可能性があります。
デニー知事はこういう事例研究をしてから、中国要人に沖縄を一帯一路に使ってくれと言ったのでしょうか。
わけはありません。
善意に解釈しても、左面に落ちた橋下徹氏のように「本土政府を牽制するために、本土政府が一番いやがる那覇港を租借させると中国に言ってみる」ていどのことでしょう。
悪くすれば、ただ中国に媚びて、本土政府からの3千億円の振興予算以外にも、チャイナマネーを吸いたいかのいずれかです。
前者なら沖縄を真面目に考えない浅知恵。後者なら欲ボケで島のみならず国全体を売る愚者です。
いずれにしても、為政者失格であることに変わりありません。
予想どおりでしたが、正恩・プーチン会談は、収穫ゼロでした。
「ウラジオストク(ロシア極東)渋江千春、大前仁】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は26日、専用列車で帰国の途についた。プーチン露大統領との初めての首脳会談で非核化交渉への協力は取り付けたものの、ロシアが実際にどの程度影響力を発揮するかは未知数だ。経済協力の具体的合意もなく、会談は両首脳の顔合わせに終わった印象だ。(毎日4月26日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190426-00000063-mai-int
こんな微笑ましい報道もあります。
「ロシアのウラジオストクで初顔合わせを果たした北朝鮮の金正恩委員長とロシアのプーチン大統領は、会談後も一緒にコンサートを鑑賞するなど友好ムードを演出しました。 会談終了後に行われたコンサートでは、ロシアの代表的な楽器「バラライカ」による演奏が行われ、2人は時折、互いに笑顔を見せながら鑑賞していました」(ANN4月27日)
絡み合う視線、見交わす笑顔。(ゲぇ~)
日経 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44171570V20C1
ほー、なんとほのぼの、かつ馬鹿げた情景でしょうか。
正恩はバラライカを聞きに行ったのでしょうか。それともいわゆる「友好親善」しに行ったのでしょうか。
その上にこの精神不安定な坊やは、こんなことまで口走ってしまう始末です。
「【4月26日 AFP】(更新)北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長は、ベトナムの首都ハノイで行ったドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領との首脳会談で米国が「不誠実」な振る舞いをしたと述べ、朝鮮半島情勢は「臨界点」に達したとの見解を示した。北朝鮮の国営朝鮮中央通信(KCNA)が26日報じた。
KCNAによると、金委員長の発言は25日、ロシアのウラジオストク(Vladivostok)で同国のウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領と会談した際のもの。
金委員長は「朝鮮半島と地域の情勢は現在、膠着(こうちゃく)状態にあり、臨界点に達している」と述べ、「最近の第2回朝米首脳会談において米国が不誠実で一方的な態度を取ったため、(情勢は)元の状態に戻るかもしれない」と警告した。
さらに金委員長は「朝鮮半島の平和と安全保障は、全面的に今後の米国の態度に左右される。DPRK(北朝鮮)は起こり得るすべての状況に備える」と述べた」(AFP4月26日)
おいおい、キミ正気ですか、熱ありませんか。
「米国が不誠実で一方的な態度を取ったため、元の状態に戻るかもしれない」だなんて、いまさら言われなくてもとっくに元の定位置に戻っているでしょうに。
せめてトランプにまだ多少の色気が残っていることだけが唯一の光明なはずで、それをプーチンから「お前の後ろ楯になってやるぜ」と言われたのかもしれませんが、急に強気におなりになって、なにが「臨界点に達した」ですか。
脅せばなんとかなるなんて瀬戸際芝居はもう通用しませんよ。
それにしてもなんて分かりやすいお方。ちょっとプーチンからリップサービスをされると舞い上がってからに、もう。
では、「元の定位置」とはなんでしょうか。今北は崖っぷちにいるという人がいますが、違います。とっくに落ちています。
すでに崖からアーレーと転落して、途中の木の枝に引っかかっているような状態です。
国庫は火の車、農業は壊滅。
金一族の個人資産が凍結されて下回りに配るカネすらなくなり、外遊とシャレこんでも国を留守にすればクーデターが心配で夜も寝られず、せめて景気づけにICBMの一発でもぶっ放したいもんですが、それをやったら完全に投了なのは三才の子供でもわかります。
唯一の打開策は、米国になんとか譲歩させて、経済制裁の解除を引き出すことしかありません。
労働新聞 https://news.infoseek.co.jp/article/20190227jcast20192351403/
そもそも肝心要の経済が恒常的に破綻状態な上に、泣きっ面に蜂でこの間の経済制裁がモロに効いてきています。
特にテロ支援国家再指定は、金融機関を締めつけたので、金家の懐を直撃しました。
ですから、北の獲得目標は優先順でこのようなものだと思われます。
①テロ支援国家指定解除
②国連経済制裁解除
③軍事圧力解除
一方、ロシアの優先順位はこのようなものです。
①ウクライナなどの欧州正面
②シリアなどの中東方面
③米露中距離核戦力
④サイバー空間戦力
⑤極東方面
プーチンは帝国再興を急ぐあまり欧州と中東の2正面で深入りしすぎてしまいました。
クリミアとウクライナは自ら侵攻の主役でしたし、シリアはイランと並んでアサド政権の支援勢力です。
というか、アサド政権に代わってしシリア国民の頭上に爆弾を降らせていたのはロシアです。
もうプーチンは引き返しがきかぬほどの泥沼に足をつっこんでしまっているのです。
その上に対米関係もINF u希有距離核戦力)協定を破ったために、いまさらながらの米国との核戦力競争が再燃してしまいました。
これで極東にもうひとつ戦線を開きかねない朝鮮半島に肩入れできるかどうか、常識で考えれればわかるはずです。
仮にできても、中国を牽制するていどのことでしかありません。
このような情勢で、正恩がプーチンの興味を引こうというのは、元々ムリなのです。
外交とは一種の物々交換ですから、手土産になるオファーをなにひとつ持たずに、おねだりするだけの正恩に色好い返事をしてやる義理はプーチンにはありませんからね。
おまけに北の制裁には、2017年9月から始まったセカンダリーボイコッ(二次的制裁)が付帯しています。
実はこのセカンダーボイコットこそが曲者で、仮に中国やロシアが北を支援したくとも出来ない原因となっています。
セカンダリーボイコットとは、制裁当該国への経済制裁を破った場合に科せられます。
制裁破りをした場合、違反当該国の金融機関も同様の制裁対象となります。
これによって北がいままで延命してきた抜け道がほぼ完全に塞がれてしました。
「米国が明らかにしたセカンダリーボイコットの内容は大きく3つある。まず北朝鮮と金融取引をする第3国のいかなる金融機関も米国金融網への接近が遮断される可能性がある。
北朝鮮に入った第3国の船舶と航空機は180日間、米国に入ることはできない。また相当な水準の商品やサービス、技術を取引した個人や機関も制裁対象となる。北朝鮮の金脈をふさぎ、対北朝鮮封じ込めもあるということだ。
北朝鮮と取引するだけで制裁が可能な史上最高レベルだ。2日前に「必要ならば北朝鮮を完全破壊する」というトランプ大統領の発言は口先だけでないという点を見せている。
北朝鮮としては耐え難い状況に向かっている。米国と北朝鮮のうち二者択一という米国の最後通告に北朝鮮を選択する国はほとんどないだろう。その間、北朝鮮を支えてきた中国も困惑している。
北朝鮮企業の9割近くが中国の金融機関を利用するなど北朝鮮と取引する個人・企業の大半が中国系であるため、今回の措置の事実上のターゲットは中国という声まで出ている」
」(中央日報2017年9月23日)
https://japanese.joins.com/article/747/233747.html
「北朝鮮と金融取引をする第3国のいかなる金融機関も米国金融網への接近が遮断される可能性がある 」ということは、事実上その国は国際貿易の決済ができなくなることを意味します。
国際貿易から排除されてまで、北と手鎖心中してもいいと思うのはムン・ジェインくらいなものでしょう。
この米国のセカンダリー・ボイコットによって、今まで半ば公然となされてきた中国からの制裁破りは激減したしたといわれています。
その上に各国海軍が共同で瀬取り監視活動を強化したことも痛かった。
これでかつての南太平洋戦線の日本軍もどきのネズミ輸送の道も遮断されました。
フランス海軍フリゲート「ヴァンデミエール」 出典・フランス軍事省
ちなみにいい機会ですから紹介しておくと、瀬取り監視参加国は今や6カ国にも及んでおり、ソマリア沖海賊退治作戦を思わせるものになりつつあります。
各国の根拠地は沖縄の嘉手納基地です。沖縄米軍基地が、東アジアでいかなる位置関係にあるのかお分かりになると思います。
「米国が平素から我が国周辺の海空域において航空機及び艦艇による警戒監視を行っているほか,これまでに,オーストラリア,カナダ及びニュージーランドが,在日米軍嘉手納飛行場を拠点として,航空機による警戒監視活動を実施。さらに,オーストラリア,カナダ及びイギリスが,海軍艦艇による警戒監視活動を実施」
「フランスは,北朝鮮関連の国連安保理決議を履行するための措置を支援するため哨戒機Falcon 200を派遣するとともに,今春,海軍フリゲート「ヴァンデミエール」を派遣し,警戒監視活動を行う予定です」(外務省平成31年3月8日)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_007163.html
さて、このような四面楚歌の正恩が、今もっぱら怒りの矛先を向けているのは中国です。
米国には向けたくてもポンペオくらいしかできませんし、トランプおじさんに向ければそれこそジ・エンドです。
ロシアは局外中立の顔をしているし、そもそも北朝鮮という国の創造主はこの国ですから、甘えもあるのでしょう。
一方、今や中国は後ろ楯になってくれるどころか、いちばん厳しい経済制裁を科してきています。
北にとって最大の貿易相手国であり、かつ原油供給の命綱だったこの中国の冷淡な態度に、正恩は怒りを募らせています。
この中国の豹変ぶりの原因は、米中経済戦争のさなかに、セカンダリー・ボイコットなんかを食ったら対米貿易がストップしてしまうからです。
正恩に抱きつき心中されて、我が身に火の粉がかかるのはまっぴらだということでしょうね。
こうなればもはや正恩にとってすがる相手はプーチンしないことになります。
実はプーチンもクリミア・ウクライナ紛争で、国連経済制裁を科せられている身です。
国際的お尋ね者として相身互いですから、現実にはなにもできなし、やる気もありません。
天然ガスは売るほどありますが、そんなものを供給したら自分もセカンダリーボイコットされてしまいます。
ということで、「坊や、プーチンおじさんはトランプの当選を助けてやった貸しがあっからさ、ナシをつけてやるぜ」というリップサービスくらいはしてあげたのかもしれません。
もちろん口からでまかせで、そんなツテはプーチンにはありません。
まぁ割り引いても、今後ロシアが大好きな口先介入を朝鮮半島にもしてくることだけは確かだと思われます。
日本ではほとんど報道されていませんが、南シナ海が緊張しています。
日中間で一定の緊張緩和があったので勘違いする人が多いようですが、別に中国は南シナ海の膨張政策を止めたわけでもなんでもありません。
海洋膨張路線は既定方針どおりですし、その勢いはまったく止まる気配はありません。
「フィリピン政府は4月、南シナ海の係争地となっている島付近を数百隻の中国漁船が航行したことは「違法」であり、領域から退出するよう求めた。同軍司令官は、漁船乗船員について「中国の海上民兵と見なしている」とし、ときおり中国の沿岸警備艇が巡視しているという。(略)
フィリピン外務省の発表では、今年1~3月の3カ月間で、275隻の中国船がパグアサ島周辺を航行した。同島周辺には、中国が軍事拠点化するスービ礁がある。
フィリピン軍西部司令部情報補佐官エルピディオ・ファクター氏は3月29日、同3カ月間で657隻の中国船舶がパグアサ島周辺に接近し、旋回したという。同補佐官によれば、中国船の乗船員は「中国の海上民兵と見なされる。ときどき中国の沿岸警備艦が警備しており、中国領域であると主張する」と述べた。
軍司令部によれば、2月10日は最大87隻の中国漁船がパグアサ島周辺を航行した」(大紀元4月12日)
https://www.excite.co.jp/news/article/EpochTimes_41962/
この記事に出てくるスービ礁では、中国が既に軍事拠点化を完成させています。
まずはスービ礁の航空写真を見てみましょう。
https://www.afpbb.com/articles/-/3219380?cx_part=logly AFP スービ礁
更に拡大します。
既に2017年段階で撮影された下の衛星写真では、このスービ礁には滑走路と軍港が完成し、ミサイル基地やレーダー施設が出来上がっていました。
またビルが立ち並び、グラウンドすら備えた大規模な市街地すらできていることが確認されています。
2017年2月22日公開された南シナ海のスービ礁の衛星写真。戦略国際問題研究所は屋根が可動式の施設とみている(CSISアジア海洋透明性イニシアチブ・デジタルグローブ提供、ロイター
「 米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は23日、最新の衛星写真に基づき、中国が南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島に造成した人工島に、長距離地対空ミサイルを格納できる施設を建造中だと発表した。 ロイター通信が21日、複数の米政府当局者の情報に基づき、南沙諸島でミサイル格納施設がほぼ完成したと報じており、それを裏付ける内容。
CSISによると、ミサイル格納用とみられる施設がスービ(中国名・渚碧)礁、ミスチーフ(美済)礁、ファイアリクロス(永暑)礁の3カ所で建設されているのが確認された。
中国はこれまでに、パラセル(西沙)諸島のウッディー(永興)島に地対空ミサイルを配備している。(産経2017年2月24日)
https://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/170224/wor17022415520014-n1.html
スービ礁に建設された恒久的ビル群は約400棟。
ここが南シナ海で最初に中国の空軍部隊と海軍基地、そして陸上部隊が駐屯する場所になると専門家は見ています。
「安全保障専門家と外交関係者によれば、スービ礁には将来的に人民解放軍の海軍陸戦隊数百名が常駐する可能性があるだけでなく、中国が文民の存在によって領有権の主張を強化しようとしているため、行政拠点が置かれる可能性もあるという。(略)
シンガポールで活動する安全保障専門家のコリン・コー氏は、データと画像を見た後で、「信じがたいことに、バスケットボール・コートのすぐ下に、中国本土で標準的とされる人民解放軍の基地が見える」と語った。
「だが、何らかの部隊を派遣することが大きな一歩になる。その後は、その部隊の安全を守り、維持していく必要がある。つまり、軍事的なプレゼンスは現状に比べて大きくなっていく一方だろう」(ロイター2018年5月28日)
https://jp.reuters.com/article/china-southchinasea-idJPKCN1IT0AR
まだ軍事部隊は進駐していないようですが(先遣隊は入っているでしょうが)、いったん本格的に駐屯した場合、そこを守るためにいっそう多くの軍事的リソースを継続的に投入せねばならなくなります。
元来国際海図にはここはただの岩礁でしかありませんから、米軍は指をくわえて眺めているはずがありません。
出典不明 スービ礁、バグアサ島は画面中央
このスービ礁に近いフィリピン領バグアツ島では、中国の275隻に及ぶ大規模漁船団が接近し、一部では沿岸警備隊同士の衝突も発生しました。
「パグアサ島(Pag-asa Island、中国名:中業島、Thitu Island)はフィリピンが実効支配しているが、同国軍によると、今年1~3月に同島周辺で中国の漁船と沿岸警備艇合わせて少なくとも275隻が確認されたという」(4月4日AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3219380?cx_part=logly
新華社
おもわず皮肉な口調になってしまうのですが、今回怒っているのは、東南アジア諸国の中でも指折りの親中派で鳴らしたロドリゴ・ドゥテルテ大統領です。
彼は元々フィリピン共産党のジョナ・シナンに師事している共産党シンパでしたし、家系には中国系の血も入っているようです。
大統領になってからは「中国をだいじな友人とする」外交に徹し、ASEANの定めた海上ルールである「南シナ海行動規範」を中国有利に歪めました。
従来の米比合同訓練を止めた代わりに、新たに中国との中比合同訓練をしています。
自国領海を中国の軍事拠点にされる侵略を受けておきながら、とんだ売国ぶりです。
「2017年4月には予定されていた南シナ海での軍事作戦も「中国に頼まれ、大事な中国との友情を思って止めた」と発言して中止し、その後に開催された同年5月のASEAN首脳会議では議長声明から中国を非難する文言を削除し、習主席から電話会談で称賛された。また、同時期に長年 ASEAN 諸国が求めてきた「南シナ海行動規範」の枠組みが中国に有利な形で高官協議で合意され、同年8月のマニラのASEAN外相会議で承認された。
2017年5月1日に地元のダバオに寄港していた中国人民解放軍海軍の蘭州級駆逐艦「長春」に中国海軍の軍帽[を被って乗艦し、中国とフィリピンの両国海軍による合同軍事演習を開始することで合意した」
ロドリゴ・ドゥテルテ - Wikipedia
中国駆逐艦上で中国軍帽をかぶって敬礼をするドゥテルテ 。しまらない敬礼ですな。 出典不明
経歴を見る限り生粋のパンダハガーなことは確かで、国民はギャング退治の虎を選んだつもりで、実はチャイナに喉を鳴らすペットの猫を大統領にしてしまったということになります。
「ドゥテルテは政権は概して、対中貿易や中国からの投資を優先し、中国側の主張に対してかつてのような強硬姿勢で応じることは避けてきていた。」(2019年4月4日AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3219380?cx_part=logly
その彼が今回はこう叫びました。おっ、虎の復活でしょうか。
「友人同士でいよう」と呼びかけながらも「パグアサ島やその他の島に手を出してはならない」と強調。「それらの島々に向けてことを起こすなら、話は変わってくる。わが軍の兵士たちに『自爆任務の準備をせよ'prepare for suicide mission,'"』と命じることになるだろう」
パグアサ島に手を出すな。手を引かない場合、自爆任務を担う部隊を送り込むことも辞さない」(CNN)
「自爆部隊」とはisみたいでおだやかではありませんが、ダバオでギャングと戦ってきた頃の勢いの復活なんでしょうか。パチパチ。(なのか?)
パグアサ島は南シナ海のスプラトリー諸島の一部で、フィリピンが領有する9つの島の内、最大の島で、住民はおよそ100人ですが、今年2月4日、ロレンザーナ国防相が、この島の老朽化した港湾施設や空港施設の更新を表明しました。
なぜ建設大臣ではなく、国防相がインフラ整備を表明するのかはわかりませんが、バグアサ島がおそらく先ほど述べた中国が主張するスービ礁が見える位置にある為だと思われます。
このフィリピンの動きに敏感に反応したのが中国でした。昨年11月には、中国がなんとこんな工事は中止しろと言い出しました。
「フィリピン駐在中国大使がパグアサ島の港の整備計画中止を要求してきた」
おいおいです。他国のインフラ整備に介入する馬鹿がどこにいますか。ところがこれは初めてではなかったのです。中国は確信犯的にフィリピンのバグアサ島のインフラ改良工事にケチをつけ続けています。
2017年8月には、フィリピン漁民がバクアサ島の砂州に休憩用の小屋を建てれば、たかだか漁民の掘っ建て小屋ていどのことなのに即後に中国側は海軍を出して島を取り囲み、そのうえ100隻近い漁船の大群がわらわらと押し寄せました。
これに対してフィリピンも負けじと、米沿岸警備隊からもらったハミルトン級警備艇を派遣し対抗しました。
これが2017年5月でドゥテルテがダバオに入港した中国駆逐艦において、中国軍軍帽までかぶって媚を売ったわずか3カ月後のことなのですから失笑してしまいます。
出典不明
これらの「漁船」は、おそらくいわゆる「海上民兵」という中国独特の準軍事組織であると考えられます。
普段は漁民として暮らし、軍の招集によって随時船団を組織して、命じられた海域に出動します。
当然のことながら、軍事教練を受けており、時には漁船からターゲットにされた島や岩礁に上陸し実効支配を狙うというぶっそうな集団です。
平時には船員や漁民、退役軍人から採用されて、軍によって軍事訓練と政治教育を受けます。
そして軍からいったん招集されれば、軍の指揮下で中国の海洋権益の尖兵として働くわけです。
海上民兵は建国初期から存在していましたが、近年の海洋大国化に伴い、世界有数の船団を有し、ここ数年は南シナ海への建設資材や物資輸送などに従事しているとみられています。
とくに海上民兵の出番として注目されるのが紛争初期で、海警やましてや海軍が登場すると国際社会の非難を受けると見た場合、中国は必ずこの海上民兵をあくまで民間船として前面に立てます。
もっともこの「民間漁船」とやらは、対空ミサイルや対艦ミサイルを持った小型海軍なのですが。
おそらく尖閣にはこの海上民兵が登場するはずで、日本は対応に苦労するはずです。
さて、「だいじな友人」に裏切られて怒れるドゥテルテに対して中国側外務省の反応は、同島の主権は中国にあると冷やかに対応しました。
あいも変わらぬ厚顔無恥ぶりで、今回も「非難されるのは心外」などとのたもうているようです。
いうまでもありませんが、上の南シナ海地図の赤い線で囲まれたいわゆる九段線は、2016年に国際司法裁判所から国際法違反と認定されて久しい海域です。
この裁定で、中国はフィリピンの領海を侵していると認定されているのですが、なにぶん国際社会では力が強ければ道理は引っ込むようです。
何を決めても、守らなければいい、非難されても力付くで押えつけたほうが勝ちというわけです。
これで多少は眼が覚めたのかドゥテルテは、いままであれほど嫌っていた米軍とフィリピン海軍の共同演習を命じました。
4月1日から12日まで、米海軍はワスプ級強襲揚陸艦、F35Bを10機、MV-22オスプレイを4機、MH-60Sシーホークヘリコプター2機を参加させたようです。おそらく沖縄海兵隊も参加していると思われます。
両軍はフィリピンの最大の島・ルソン島とパラワン島で、水陸両用訓練、実戦訓練、都市部訓練、空港作戦およびテロ対策訓練を実施するとのことです。
またこの件にかかわるのかどうか詳細は不明ですが、フィリピン政府は造船会社の再建計画から中国資本を安全保障上の理由で排除しました。
「マニラ=遠藤淳】フィリピン政府は、経営破綻した韓国・韓進重工業の造船子会社の再建企業の候補から中国企業を排除する方針を明らかにした。中国企業が海岸施設を利用することに安全保障上の懸念があるとして軍や国防省が反対していた。ドゥテルテ政権は中国に融和的な外交を進めているが、南シナ海を巡り中国を警戒する軍の意向に配慮する」(日経4月25日)
遅きに失しますが、眼が覚めないよりはましです。
北朝鮮がブレています。
これは求心性こそが命のはずの独裁国家としては大変に珍しい現象で、今まで金日成が死のうと金正日が死のうと、この体制自体は磐石に見えたものです。
独裁体制の常として、グラつきは周辺部から現れます。
今回の場合、ハノイ会談を決裂させてしまって、正恩に責任をなすりつけられかねない立場の外交部から発生しています。会談後の異例の外国記者団との会見です。
「【ソウル=恩地洋介】北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は15日、平壌で記者会見し、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が米国との非核化交渉に関する声明を近く発表すると明らかにした。複数の海外メディアが伝えた。米国側の要求は受け入れられないとして交渉中断を表明する可能性がある。弾道ミサイル発射実験の中止を続けるかどうかを巡っても、近く金正恩氏が判断を示すという」(日経3月15日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42520200V10C19A3FF8000/
上の写真の大阪のオバンみたいなのがチェ・ソンヒです。通訳上がりで、対米外交のプロパーと称していますが、専門家は専門家でも「怒らせる」ほうの専門家です。
チェは、弾道ミサイルの実験中止の継続について正恩が近々結論を出すと言っていますが、出した様子はありませんし、唯一それらしいのは「精密誘導ミサイル」の実験をしたことくらいです。
これすらも長距離弾道ミサイルを実験すると第3回会談など夢のまた夢と消えますから、先日の「精密誘導ミサイル」の発射ていどで、軍部を抑えたていどのところです。
ちなみにこれはおそらく対艦ミサイルではないかと思われていますが、米国艦隊の位置情報がないのにどうやって「精密誘導」するんでしょうね(苦笑)。
そしてチェは、職業外交官とは思えないような、こんな危ないことまで口走っています。
「崔氏は一部の海外メディアや外交官を集めて記者会見した。タス通信によると崔氏は、2月末にハノイで開いた米朝首脳会談が物別れに終わった責任は米国側にあると主張。「我々はいかなる形でも米国の要求に譲歩する気はないし、このような交渉には関わりたくない」と強調した。AP通信によると「強盗のような米国の姿勢は状況を危険にさらす」と警告した」(日経前掲)
「いかなる形でも譲歩はしない」なら、外交交渉は不要ですから外交官なんかいらないじゃないですか(笑)。
ついでにチェは、ポンペオが会談を壊したから首を切れと言ったとか。言われて切るようなタマかよ、トランプが。
チェがここで言ったことは、額面どおりに受け取ると交渉打ち切りです。
ま、このチェ・ソンヒという人物の役割は、危険球を投げることですので、ここまで言うかという強面のことを言い、打者をビビらせて要求を呑ませるという先鋒の役割をしているようです。
難点は常にやりすぎるきらいがあって、一時は侮辱が過ぎてシンガポール会談を流しそうになったことさえあります。
ただし、吹かしは吹かしなりに、北の本音を代弁している部分があるのは事実ですから、スルーしてはいけません。
この記者会見でも、チラリと北の内情を漏らすふりをしています。注目はこの部分です。
「崔氏によると、会談に先立って何千人もの軍関係者が核計画を放棄しないよう求める嘆願書を金正恩氏に送ったという。内部の反対が大きいため譲歩はできないと説明したかったようだ。崔氏は「米国は絶好の機会を投げ捨てた」とも話した」(日経前掲)
ほー、たいへんに興味深い。「何千人もの軍関係者の反対」ですか。
もちろん話は盛ってあるとは思いますが、人民軍内部に強力な反対があることは事実のようで、これが岩盤守旧派となって非核化を阻んでいるということのようです。
嗚呼、こんなに仲がよかったのに 出典不明
事実は確認しようがありませんが、今まで3代に渡って核による「強盛大国」への長い「坂の上の雲」を歩んできた北が、簡単に核を放棄できるはずがありません。
核を持つという目標があるからこの国はここまで持ってきたのです。
各戸に電球1個、飯は欠配、軍隊にはガソリンすらないといったことを乗り越えて、ありとあらゆる国のリソースを核兵器と弾道ミサイルに注ぎ込んできたのですから目もあてられません。
軍に言わせれば、いったん核を掴んだのにその代償がたった「体制の保証」かい、冗談じゃねぇや、核があればそんなものは保証されるんだ、といったところです。
北の軍部のお怒りはごもっともで、おそらく正恩にはこれを統御して非核化に持ち込む器量はありません。
ですからなにがなんでも第3回米朝会談をしてもらって、そこで経済制裁の一部解除ていどの収穫をえないことには体制そのものが持たなくなります。
しかし、ハノイ会談の後に中朝会談を要請しても一蹴され、今やロシアだけが頼りの状況です。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20190424-OYT1T5015
え、韓国ですか。あれほど熱烈な相思相愛に見えたのは遠い過去のこと、プラグマチズムで鳴る北からは、今や一片の期待もかけられていません。
だって、本来なら、3月1日独立運動記念日にソウルに行っていなければなりませんし、4月11日の臨時政府式典に正恩が来るとなれば、ムン・ジェインは訪米など見送ってソウルに居たはずですから。
正恩はムンにどこかで、ソウルに行ってもいいという言質を与えているはずで、ムンを有頂天にさせました。
ソウルの広場に集まった数十万の人並みを前に、ハグし合うふたり。おお、なんと美しい(ゲー)。
ああ、こんなに仲がよかったのに。 読売https://www.yomiuri.co.jp/world/20190424-OYT1T5015
ソウル訪韓の中止の最大の原因は、いうまでもありませんが、ムンがものの役にたたなくなったからです。
ムンが熱望してきた、開城工業団地や金剛山観光業の再開は、米国から一蹴され、この議題を出す気ならワシントンに来るに及ばずとまで言われてしまいました。
つまりは経済制裁のごく一部すら解除できないようなムンなど、居てもいなくても一緒なのです。ああ無情。
正恩にすれば、舎弟にすぎないムンなど役に立つからつきあっているだけのこと。5週続けて支持率が急落し、今や40%を切るボーダーラインにいるような奴に抱きつき心中を迫られるのはまっぴらだといったところです。
その上に、2月22日スペイン・マドリードの北朝鮮大使館を海外反北朝鮮団体「自由朝鮮」が襲撃し、コンピューターや書類などを奪って逃げるという事件が起きました。
このグループは正恩が殺した実兄・正男の長男を保護した団体だと見られています。コンピュターを奪取したというのは渋いですね。
いまの警察が手入れで真っ先に押さえるのは、コンピューターやスマホですから。
たぶん噂どおり、正男の長男を保護し、この「自由朝鮮」のバックについているのは米国情報部なのかもしれません。
この「自由朝鮮」は、「われわれは北朝鮮の臨時政府だ」と表明し、3代続いてきたキム一族の独裁政権を崩壊させると宣言しました。
こんな「臨時政府」宣言は戯れ言だとしても、「自由朝鮮」が一定の北国内に同調者を抱えており、特に韓国社会内部の脱北者が拠点であることは事実かもしれません。
そんな団体が潜んでいる韓国などに、正恩が行けるはずもありません。人は思ったように集まらず、群衆から罵倒の声どころか弾の一発でも発射されようものならシャレにならないからです。
その瞬間、ムンの夢である南北統一は吹っ飛びます。
というわけで、北も四面楚歌、韓国も四面楚歌。なんとか光明を探すべく正恩はウラジオに行き、ムンはワシントンに行ったというところです。
気の毒ですが、たぶん仲良く収穫は乏しいはずです。
韓国軍がレーダー照射事件が解決しないうちから、次の「一手」をくりだしました。
今回はナント公然と自衛隊を「敵国」認定したことです。
「【ソウル=岡部雄二郎】韓国軍の艦艇から3カイリ(約5・5キロ・メートル)以内に近づいた軍用機には火器管制レーダーの照射を警告するとの運用指針を韓国軍が作成し、日本側に通告した問題で、韓国国防省は22日、「偶発的な衝突を防ぐための軍事的措置」について日本側に説明したことを認める見解を発表した。
国防省は「作戦の細かな手続きといった対応マニュアルを日本側に公開した事実はない。(日本側に説明した)具体的な内容は作戦の保安上、明らかにできない」ともしており、指針の内容をどこまで通告したかについては言及を避けた。
複数の日韓関係筋によると、3カイリ以内への接近を拒む韓国軍の新たな指針は今年1月、国防省が防衛省に通告した。昨年12月のレーダー照射問題を踏まえた対応だが、日本側は国際法上の根拠がないとして抗議し、指針の撤回を求めている」」(読売4月22日)
これに対して在韓ハリス米国大使は、公海上のこのような恣意的な措置は問題であると、即座に抗議しています。
これは公海における自由な航行を保障する立場の米国としては公平な立場の表明です。
要は、公海上では国際法を守れということです。
これが守れないような国は、他国軍隊と接触する機会がある外洋海軍を持つべきではありません。河川警備艇くらいにしておきなさい。
なぜなら、こんな国際ルールを守れないような軍隊は、いつかほんとうの戦争を誘発してしまうからです。
「偶発的衝突防止措置」が必要なことは事実ですが、ならば日中間で合意ができていている「海上連絡メカニズム」(日中司令部間のホットライン)の日韓版を作ればいいだけのことで、日本にだけ挑発やってもいいでは話が逆です。
いままで何回か触れてきましたが、公海における軍艦はやっていいことと悪いことが国際法によって定められています。
前回、韓国海軍のやった射撃用管制レーダー照射事件は、世界の海軍のルールであるCUES(キューズ・Code for Unalerted Encounters at Sea 海上衝突回避規範)の明確な違反行為です。
レーダー照射は以下のように禁止されています。
[PDF] Code for Unalerted Encounters at Sea (CUES) | Western Pacific Naval Symposium 2012
Assurance Measures for Ships
え、ただのシンポジウムで決めた規範じゃないの、国際法と呼んでいいのかって。もちろんいいんです。他に公海上においての定めはありませんから。
「国際法」とは、国際間の条約、あるいは取り決め、あるいはそれに準じる規範を指します。
平時における公海上の軍艦の行動については、このCUESしか世界に存在しません。ちなみに有事は別枠ですから念のため。
●CUES(海上衝突回避規範)
①砲やミサイルの照準、火器管制レーダーの照射、魚雷発射管やその他の武器を他の艦船や航空機がいる方向に向けない。
②遭難時などを除いて、信号弾やミサイル、ロケット、各種火器などの物体を艦船や航空機に向かって放出しない。
③艦橋や航空機の操縦席を(探照灯や照明などで)照らさない。
④レーザーを使用し、乗員や艦船の装備に悪影響をおよぼすような行為をしない。
⑤アクロバット飛行や模擬攻撃を艦船の付近で行わない
今回の韓国国防部は、「偶発的な衝突を防ぐための軍事的措置」との名目で、「韓国軍の艦艇から3海里(= 5.5km)内に接近した軍用機に火器管制レーダーを照射する」と日本側に通告したとのことです。
念のためにつけくわえますが、「日本の艦艇にだけ」です。
言い換えれば、日本だけは「敵国」だと言ったことになります。
勝手にやりなさい。そんな国際法を無視した「通告」をいくら他国に押しつけても無効です。
今回この「偶発的な衝突防止措置」というネーミング自体がお笑いです。
前回、韓国海軍と海警の2隻が、国際社会に後ろめたいことをしていたのが発覚し、慌てふためいて偶発的に射撃管制レーダーを浴びせるという戦闘準備行動をとってしまいました。
たぶん正恩暗殺未遂事件の実行犯のひとりが逃亡したのを韓国軍が押えたか、あるいは瀬取リしている現場でも見られたのでしょう。
素直にミスでしたと言っておけばよかったものを、日本の抗議を受けて嘘も大声で百回いえば真実となるの教えにしたがって、まぁ言うわ言うわ。今日言った言い訳が翌日には変化しているという七転八倒ぶり。
さすがに他国のことは善意で解釈しようとしたいわが国の民も、これでそうとうに韓国という国はイッちゃっていることを認識しました。
この教育効果はてきめんで、歴史認識と絡まる「徴用工」判決や慰安婦問題よりも、ずっとストレートに韓国をわからせてしまっことになります。
それはさておき、こうまで堂々と国際法を破り、しかも逆ギレしてその責任はわが国にあると言い募り、またまたそれを合理化するつもりなのか、今度は韓国海軍の内規の方を変えて、日本機だけは「艦船から 5.5km 以内を飛行する軍用機に火器管制レーダーを照射する」と宣言してしまったのですから、なんんともかとも。
驚いたことに、これが韓国側の「再発防止策」だというのですから、テルリンのようにアギジャビヨ~とうなりたくなります。
間違っているのはCUESの方だから変えてしまえ、ただし世界各国に対してそれをやるとさすがに袋叩きに合いそうだから(実際米国は直ちに抗議しましたが)「日本にだけだ」ということのようで、いつもながらの特段のご厚意に感謝申し上げます。
次回同様の事件が起きたら、韓国軍は合法だから問題ないや、ということのようです。(そんなわけないだろう)
では、どう日本は対応したらよいのでしょうか。
日本としてはこの愚かな措置を韓国とったことを、国際社会に大量に広報することです。
逆にもっともしていけないことは、この時期に妙な融和的態度をとることです。
たとえばこのような二階幹事長の行動などは、その最たるものだといえます。
中央日報 4月11日、自民党本部幹事長室で、李洙勲(イ・スフン)駐日韓国大使と握手する二階幹事長
「自民党の二階俊博幹事長が李洙勲(イ・スフン)駐日韓国大使大使に会った席で、200人以上の議員団の訪韓を約束した。
在日韓国大使館によると、二階幹事長は11日、自民党本部を訪問した李洙勲駐日韓国大使が今年も200人以上の日本議員団の訪韓を進めるよう要請すると、現在開催中の通常国会日程を考慮して早期に実現させると約束した。
二階幹事長は昨年7月31日から8月2日まで、地方議員を含む自民党議員およそ300人を率いて韓国を訪問し、研修会を開いた。
李大使は、韓日関係が難しい状況にあるが、こうした時期であるほど議員交流を通じた葛藤解消の努力が重要だと述べ、具体的な実践案として日本議員団の訪韓を要請した。
二階幹事長は韓国は日本と最も近くて重要な近隣諸国だとし、国家間の関係が近いほど葛藤があるのは自然な側面があるが、葛藤を早期に解消しようという姿勢と真摯な努力が重要だと述べた」(中央4月12日)
このイ韓国大使と何をしゃべったのか知りませんが、二階さんは政権与党幹事長としてしっかりと「徴用工」判決、慰安婦合意の一方的廃棄、そしてレーダー照射事件について抗議したのでしょうね。
今の日韓間に一般的な「友好」はありえません。
日韓氷河期の今、「議員交流」とやらでニコポンすればなんとかなる段階はとうに過ぎました。
今はプリンシパル(原則)を通すべき時です。
なにが「葛藤があるのは自然」ですか。「徴用工」判決のどこが自然でしょうか。次は撃つぞとレーダー照射をすることのどこが「自然」なのですか。
呆れたものです。
二階氏のようなオールド自民党や日韓議連のお歴々は、もの言わぬことが「友好」、当たらず触らずカネを出すことことがが「外交」、ごもっともごもっともということが「親善」、こういう姿勢こそが今の韓国の常軌を逸したエスカレーションを招いてしまったことに深く思いを致すべきです。
自民党内で、今回の衆院補選2連敗の動揺が拡がっています。大変にけっこうなことです。
この党は、元々確固たる理念があって結集した党ではないために、無風状態になるとすぐにダラけます。
その弛緩ぶりはこの間の無能大臣たちのバカぶりによく現れています。
こういう傾向に歯止めがかからず大臣の首を切られていくことになれば、朝日が嬉しげにいう「補選2敗の自民、「悪い流れ」 安倍1次政権の再来懸念」(4月22日)の流れが現実味を帯びてきてしまいます。
一面で、今回の沖縄と大阪の2連敗は、官邸にとって折り込み済みのはずでした。
それは官邸が、最後の最後まで現地応援に腰が重かったのをみればわかるでしょう。
首相は大阪に行っても、軽く選挙区に行って一度演説をして義理を果たすと、もっぱら吉本新喜劇で万博のアピールをしてお茶を濁しました。
万博が維新の目玉なことは首相は百も承知でしょうから、首相の立ち位置がどこにあるのかがわかります。
渋々ながらも大阪入りしたのは、あの二階氏の突き上げがうるさかったからだと言われています。
「維新が圧勝した7日の大阪府知事・市長選で官邸は静観。自民党内から「(官邸の)サボタージュがあったとすればけしからん」(二階氏)との声が上がり、首相は選挙最終日の20日になって、ようやく大阪入りした」(朝日4月22日)
沖縄もしかりです。3区はデニー知事の牙城だった地区です。デニー氏の地盤・看板を引き継いだ後継者が選ばれてあたりまえでした。
そこにわざわざ島尻氏という、自民党県連の数少ない有為な人材をぶつけてしまうのは、島尻氏を潰すつもりなのかとうがった見方のひとつもしたくなります。
あれだけ大差で負けると、島尻さんに次の選挙はないかもしれませんよ。
https://www.news-postseven.com/archives/20171211_6...
これらを主導したのは、自民党中枢にとぐろを巻く二階幹事長でした。
この人物はいわば小型田中角栄です。こんなエピソードもあるそうです。
「野党の抵抗で法案審議が暗礁に乗り上げたとき、二階氏は野党のキーマンだった大幹部が可愛がっている孫の誕生日を覚えていて、その子にプレゼントを贈った。いたく感激され、法案に成立の道筋をつけた。それを臆面もなくやってのけるのが二階さんの凄味だ」(週刊ポスト2017年12月22日号)
ですから二階幹事長は細野氏を自民に引き入れたように、よく言えば「来る者は拒まず」の融通無下、ハッキリいって自派が増えればなんでもやる、選挙は勝てれば共産党とでも組んでも平気、故翁長氏とはいちばんウマが合った本土政治家で、中国に媚びを売る必要があれば中国指導者の銅像を建てることさえ厭わないというご仁です。
狭い意味での政治のプロで、オールド自民党の体臭がプンプンします。しかし無能ではないので歴代政権において重用されてきました。
ところで自民党という党は、首相は会社でいえば日経連に出向している会長、幹事長が社長という役回りです。
現実の党務を仕切るのはあくまでも幹事長で、首相が持っているのは執行部の人事権だけです。
ですから、自民党は官邸と自民党執行部の間の一定の緊張関係の中で存在しているともいえるわけです。
時事 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190422-000000...
さてこんな時に、萩生田発言と衆院補選惨敗という二つの大事件が発生しました。
荻生田氏の発言は朝日新聞4月19日によれば、 このようなものでした。
「景気が非常に回復傾向にあったが、ここへきて日銀短観を含めてちょっと落ちている。次の6月はよく見ないといけない。
本当にこの先危ないぞというところが見えてきたら、崖に向かってみんなを連れていくわけにはいかないので、そこは違う展開はあると思う。
そこは違う展開とは10月に予定されている消費増税の3度目の凍結・延期のことだ」(朝日新聞4月19日)
荻生田氏が言ったことは、消費増税は景気判断をして判断するもので、決められているからやるという機械的なことでよいのか、というあまりにも常識的なことでしたが、自民内で袋叩きにあうはめになります
https://biz-journal.jp/2018/03/post_22501.html
即座に反応したのは、麻生財務相でした。
「どういうつもりで言ったんだろう。萩生田(←呼び捨てですぜ)から始めて日銀短観という言葉を聞いた気がする」
まるで失言したようですが、荻生田氏からすれば失言王から言われたくはないやといったところだったでしょう。
まぁ麻生さんからすれば、「オレの専管事項の消費増税にイチャモンつけやがって、そのうち首を切ってやるからな」と言いたかったのでしょうが、この人は増税頑固派のひとりです。
というか自民党内の99%は、強弱の差こそあれ首を並べて消費増税派です。違うのは、私が知る限り首相と官房長官くらいなものですからイヤになります。
いうまでもありませんが、この荻生田発言は多くの人が指摘しているように、首相が観測気球として「言わした」ものです。
荻生田氏がここで言った「日銀短観」とは、日銀がアンケート方式で景気実感を調査し年4回発表する「企業短期経済観測調査」のことです。
この短観で示される大企業、特に製造業の業況判断指数は、景気を判断する重要な指標とされています。
ところがこの景気指標が芳しくありません。大企業製造業の業況判断指数は、2017年12月調査の+25ポイントをピークに連続低下し続け、最新の19年3月調査では7ポイントの大幅悪化となり+12へ低下しました。
2年前から半数の大企業製造業が景気は悪くなったと答えたのです。
ここで荻生田氏が「次の6月はよく見ないと」といっているのは、次回7月1日に発表される日銀短観の2019年6月調査のことで、6月調査の大企業製造業の業況判断指数がさらに低下したら(たぶんそうなるのは必至ですが)、景気は「この先危ないぞ」ということになります。
世界経済を見ると、中国経済の減速、EUの不安定、米国の利上げなどと問題は山積されていて、明るい材料は皆無です。
この様な状況で確実に個人消費を直撃する消費増税などは、まさに自殺行為以外何者でもありません。
ただしこれを再々延期するとなると、これまた問題が山積しています。
というのは消費増税は、民主党野田政権下の法律によって行政化された案件だからです。(立憲民主さん、思い出してね)
したがって今年10月の消費税率引き上げを延期するためには、いくつかの法律の改正が必要です。
ひとつめは税率引き上げを2017年4月から19年10月に変更した際に改正した「消費税法の一部を改正する法律」(16年11月成立)の再改正です。
ふたつめは、すでに国会で成立している2019年度予算の大規模な組み換えが必要です。
19年度予算には消費増税の財源を活用した幼児教育の・保育の無償化、介護人材の処遇改善、年金生活者支援給付金など「社会保障の充実」に関する予算が計上されています。
実際には、カネに色はないので、どこにどの財源が投入されてもわからないのですが、既に増税による増収分を予算化してしまっています。
これがみこめなくなると、財務省は「財源がなくなったぁ」とヒヨドリのようにギャギャーいうことでしょう。
実際は公共事業なら建設国債を発行すればいいだけで、使途に見合った国債発行にチェンジすればいいのです。
財務省の緊縮財政脳に浮かばないだけのことです。
三番目には、「消費税引き上げによる経済への影響の平準化」のための臨時・特別措置約2兆円が既に計上されています。例のキャッシュレス決済のポイント還元2798億円などです。また公共事業予算約1.3兆円も組まれています。
確実に落ち込むことが予想される個人消費に対して、焼け石に水なことはわかりきっていても、既に予算化されていることは、動かせない事実です。
となると、消費増税を凍結・延期するのなら、19年度予算の修正案を国会に出して通さねばならないことになります。
さて、ここからが法律から政治の領域となります。
実は荻生田氏が言うように7月まで待たないでも、景気の動向はおおむね分かっています。
それは3月の景気動向指数が5月13日、さらに1~3月期のGDP速報が5月20日にでるからで、ここで以後の景気判断はだいたいできてしまいます。
萩生田氏が言うように6月短観は7月1日の日銀短観発表になりますから、消費増税をストップするには消費税法と予算の改正案を国会に上程せねばなりません。
すると通常国会の会期末は6月26日で、短観発表前に終わってしまいますから、会期を延長する必要がありますが、それ以前に5月20日頃にはなんらかの判断を下すことは可能なわけです。
あるいはそこまで見ないでも、政治判判断があれば連休明けにでさえ可能です。
それはひとえに首相のタイミングと決断力です。
タイミングといえば、自民党増税頑固派の大物たちは、軒並み今回の統一地方選で敗北して力を弱めました。
竹下派は島根で大こけし、麻生氏は福岡で恥をかきました。二階氏は衆院補選を二つ連敗させ、政治責任をとらされても文句がいえない立場です。
自民党陣笠議員たちは、衆院2連敗を受けて自分たちの首も危ないことが身に沁みたはずです。
そんな時に、これだけ国民に評判が悪い消費増税ができるのかどうか、議員諸氏の皆さん、真剣に悩むことです。
首相は明らかに消費増税の3回目の延期を念頭においています。
少し前までは絶望的に見えた消費増税阻止も、ひょっとするとひょっとすると、あるいは・・・、といった状況です。
皮肉にも、この衆院補選2連敗がよい刺激になりました。
消費税増税を止めるのは、さきほど述べたように国会審議にかけて修正案を通す必要があります。
すなわち、消費増税阻止を大義に掲げた衆参同時選挙を敢行し、圧倒的に増税延期が国民の「民意」だとわからせる必要があります。
自民党が統一地方選後半戦と参院補欠選挙は、焦点となっていた大阪と沖縄で落としました。
メディアは安倍政権に打撃と矛先を揃えているようです。
「夏の参院選の前哨戦となる衆院大阪12区、沖縄3区の補欠選挙が21日投開票され、大阪12区で日本維新の会の新人藤田文武氏(38)、沖縄3区は野党が支援する無所属新人屋良朝博氏(56)がそれぞれ初当選した。自民党公認候補は両選挙区で落選した。安倍晋三首相が2012年に第2次内閣を発足させた後、自民党が衆参の補選で敗北したのは、不戦敗だった16年の衆院京都3区補選を除けば初めて。安倍政権は与野党の政治決戦となる参院選を前に危機感を募らせる。
大阪を本拠地とする維新は大阪都構想実現へ弾みをつけ、沖縄では辺野古移設への反対派が民意を引き付けた形だ」(共同4月21日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190421-00000101-kyodonews-pol
ただし大阪と沖縄では負けましたが、地方選を全体として見た場合、自民党が手堅く議席の半数を押えています。
「統一地方選の全体状況では、むしろ自公両党は堅調だった。自民党は道府県議選で1158議席と前回の平成27年、前々回の23年を上回り、全議席に対する占有率も2回連続で5割を超えた。地方組織の堅固さを示すものといってよい。公明党も政令市議選の2選挙区で惜敗し、全候補を当選させる「完勝」はならなかったものの、各地で得票を伸ばした」(産経4月22日)
https://www.sankei.com/politics/news/190422/plt1904220028-n1.html
一方、野党はどうかといえばこのような状況でした。
「総定数に占める獲得議席割合は、1158議席を獲得した自民党が50.9%で最も高く、前回に続き過半数を維持した。次いで無所属が23.5%、公明党が7.3%、立憲民主党が5.2%、共産党4.3%、国民民主党が3.6%などとなった。」(時事4月22日)
時事 https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_election-local20190408j-05-w480
前回2015年時と比較すれば各党の選挙結果はこのようになります。
・自民・・・50.5%→50.9% 微増 議会多数派を維持
・公明・・・7.5%→7.3% 微減 2政令としで敗北したが、全体としては堅調
※旧民主党系諸派(2015年11.6%)
・立憲民主・・・0→5.2%
・国民・・・0→3.6% 現有議席を割り込む
旧民主党系諸派・・・11.6%→8.4%(旧民主党議席の約7割)
・維新・・・1.2%→0.7% ただし、大阪では手堅く圧勝
・共産・・・4.9%→4.3% 敗北
この結果を立憲民主の長妻氏はこう評していますが、いかがなものでしょうか。
「立憲民主党の長妻昭選挙対策委員長は21日夜、衆院沖縄3区補欠選挙の結果を受けて「参院選に向けて、自民党の失速を感じている。(今後は)野党共闘を強力に進めていきたい」と述べた。党本部で記者団の質問に答えた」(読売4月21日)
はて、そんな浮ついた総括しちゃっていいのてしょうか、長妻さん。
自民は全体としてみれば堅調。旧民主系はボロボロ。唯一志気が高いのは、立憲民主とは同じ野党でも水と油の維新だけでしょうに。
共産を入れた全野党共闘を「強力に押し進め」たら地獄の道行ですよ、私は別にかまいませんがね。
ところで大阪と沖縄は地域の事情が異なるのでひと括りにできませんが、あえて共通点を探すとすれば、共に自民の地域組織がいずれも全国ボトムを争う弱体組織であることです。
もはや負け馴れてしまったのか、二階幹事長の意のままに動いて候補者を選んでいます。
読売
大阪で時の勢いを背に受けた維新に対して、自民候補の元の現職の甥の北川晋平氏はイケメン、高学歴といった事以外、なんのとりえもない人物のようでやる前から負けは見えていました。
そもそも統一地方選で共産党とまで手を組むような大阪府連に、未来はありません。負けて当然、負けないほうが嘘です。
一方沖縄ですが、ここは全国で唯一野党共闘が成功しました。前半の北海道知事選では同じ全野党共闘を敷いて惨敗していますから、今や共産まで入れた野党共闘で唯一勝てるのは沖縄だけとなっています。
その理由は簡単で、沖縄だけは共産党が政権与党で多数を握っている全国唯一の県だからです。
●沖縄3区補選
・屋良朝博 ・・・ 7万7156
・島尻安伊子・・・ 5万9428
ここもどうして島尻安伊子氏を立てたのか理解に苦しみます。
私は島尻候補を誠実な政治家だと考えていますし、実績も残したと思っています。
現に彼女が取り組んだ子育て支援、待機児童対策は、青年層から30代~40代の子育て世代の支持を集めたことは、投票の年代別を見ればわかります。
しかしこの3区はかねてからのデニー知事の指定席だった地区であるうえに、島尻氏は落下傘候補となってしまいます。
比嘉奈津美氏ならば3区出身ですから、地盤がありますし、彼女は自民中央に対してもの申す事のできる男勝りのキャラです。
その一面で、女性候補でありながら、女性票を取り込めないのが難点でした。
それ故に、二階氏から敬遠されたのか、女性票に強いと思われた島尻氏になってしまいました。
島尻氏は比嘉氏と対照的なタイプで、地道に子育て支援に取り組んで成果も出してきていますが、苦手な移設問題を取り上げろとでも命じられたのか「容認論」を訴えて、痛々しい限りでした。
しかも相手が悪すぎました。デニー陣営の安全保障問題の理論的支柱である元沖タイ論説委員・屋良朝博氏ときています。
屋良氏はこう述べています。
「フリージャーナリストとなってからも積極的に持論を展開してきた。シンポジウムに招かれ「沖縄に海兵隊の拠点があって、にらみを利かしているというのは勘違いだ」などと発言。部隊のローテーションや長崎県の佐世保基地から揚陸艦でアジア太平洋地域のパトロールに出ることを挙げ、政府が沖縄に米軍基地を置く理由として繰り返す「地理的優位性」について「ユクシ(うそ)」と説いてきた」(沖タイ4月21日)
出典不明
この屋良氏の長崎移転可能論は、今の沖縄海兵隊の機能を知らないまったくの謬論なのですが、予備知識を持たない人にはいかにも本土が沖縄にだけ押しつけているかのような聞え方をします。
現実には、有事において沖縄海兵隊はこのように動きます。
「朝鮮半島有事に海兵隊が動く場合、沖縄の海兵隊地上部隊はCRAF(有事動員される民間航空)のチャーター機で韓国に直行します。
そして、上陸作戦を行う場合は佐世保から釜山に直行した揚陸艦や米本国から合流してくる揚陸艦艇に乗船するのです。海兵隊地上部隊が、そのまま韓国駐留の米陸軍第2師団と合流して地上戦闘に投入される場合もあります」(小川和久(『NEWSを疑え!』第747号2019年2月14日号)
あるいはオスプレイで直接にピンポイントで作戦現場に向かいます。そのために沖縄海兵隊には航空機部隊が付属しているのです。
しかし屋良氏の意見は、それなりにもっともらしく聞えるので、知識を持たない選挙民には説得力があります。
はっきり言って、付け焼き刃の感がぬぐえない島尻氏の「容認論」では太刀打ちできませんでした。
むしろ正論に強い比嘉氏のキャラをぶつけるべきでした。
沖縄県連に対して、私はなんの期待もしていませんが、もし今後も政権与党の地方組織であり続けたいのなら、安保のイロハから真面目に勉強することです。
さもないとデニー陣営の「移設押しつけ」論には永久に勝てませんよ。
とまれ、今回の統一地方選においてはっきりしたことは、二階氏流情実政治は終焉を宣告されたということです。
天皇謝罪要求発言で、日韓関係に最後のとどめを刺してしまった格好の、あのムン・ヒサン(文喜相)韓国国会議長が日本との関係改善を狙っているいう報道があります。
「文喜相氏、「見指忘月」日本に水面下外交…最多当選議員・徐清源氏の派遣を検討
慰安婦賠償判決などで悪化の一途をたどっている韓日関係で和解の突破口を用意しようとする試みが国会で進められている。文議長がその中心にいる。文議長は与野党重鎮級の議員が日本を含めた海外の国々に「水面下外交を行うTF(タスクフォース、作業部会)」を推進している。
国会の李啓聖(イ・ゲソン)報道官は「韓日議員連盟次元で訪日を推進している。今、韓日関係が悪化して、議員連盟の関係も切れてしまっているため、今回の機会を通じて懸案に対する話を交わすことができるとみている」と説明した。
国会でこのような動きがある渦中に、日本の産経新聞は18日、「文議員が日韓関係の修復を図るために日本に特使を派遣する意向を日韓議員連盟側に示している」と報じた。同紙は「(特使派遣などには)6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議を前に事態の収拾を図る狙いがあるとみられる」とし「ただ、発言に対する日本側の反発は強く、特使派遣が実現するかどうかも含めて不透明な情勢だ」と伝えた」(中央日報4月19日)
https://japanese.joins.com/article/513/252513.html
ムン・ヒサン国会議長
ここでヒサン氏が言っている聞き慣れない「見指忘月」という言葉の意味を吟味してみましょう。なかなかどうして笑えますよ。
「見指忘月
月を示そうと指さしても、肝心の月を見ないで指を見る。道理を説き聞かせるのに、本旨を理解しないで、文字や言葉の端々にばかりこだわることをいう」(デジタル大辞泉)
なるほど、なるほど。ヒサン氏は日本に「道理を説き聞かせた」が、日本が「本旨を理解しないで、言葉の端々にばかりこだわった」ので、説明に行って「本旨」を分からせてやるということのようです。
日本が本旨を理解していないですって?はぁ、いえいえ、しっかりと理解させて頂いておりますですよ。
「指」が陛下ですね。
ヒサン氏がなんと言ったのか、もう一回思い出してみましょう。
「文氏は「発言の趣旨は『戦争犯罪や人倫に関する罪は時効がない。ドイツが敗戦国でも欧州の長なのは、全ての問題に謝罪し、現在も続けているからだ。心のこもった謝罪が最も重要だ。安倍晋三首相や安倍首相に準じた日本を象徴する国王(天皇)が慰安婦のおばあさんを訪ねて、申し訳なかったと一言言えば、根本的な問題が解決する』という話だった」と述べた」(朝日3月27日)
https://www.asahi.com/articles/ASM3W3GB4M3WUHBI00S.html
おいおいです。論評にも値しませんが、一本記事を書いてしまっているのて、よろしかったらそちらをお読み下さい。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-dca5.html
この部分だけを抜き出せば、朝日が言い続けてきた「戦争謝罪は終わらない」論と五十歩百歩ですが、実はムンはこの元ネタであるブルームバークとの会見でこんなことも言っていることがバレてしまいました。
「一言でいいのだ。日本を代表する首相かあるいは、私としては間もなく退位される天皇が望ましいと思う。その方は戦争犯罪の主犯の息子ではないか。
そのような方が一度おばあさんの手を握り、本当に申し訳なかったと一言いえば、すっかり解消されるだろう」と語った」(ブルームバーグ2月28日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-08/PMLGIP6KLVR801
ムン氏は「戦犯の息子などと言っていない」と言い逃れをしましたが、怒ったブルームバーグ側がインタビュー音声まで公開してしまい、文字化しています。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-02-11/top-japan-diplomat-warns-south-korean-lawmaker-on-emperor-remark
ミゼラブルですね。日本国民が新しい元号と天皇の即位を言祝いでいるこの時期に、あろうことか今上陛下に対して「戦争犯罪の主犯の息子に謝罪させる」とまで言ってのければ、どうにも言い逃れはできません。
またこの発言を鎮静化させるつもりか(笑)、はたまたオレは月を指しているのに、お前らは指をみている馬鹿どもめと哀れんだのか、「陛下が訪韓を自分に依頼した」ということまで口走ってしまいました。
護憲の教科書的存在であられた今上陛下が、こんな国事行為を逸脱する案件を、外国要人に個人的に依頼するはずもなく、宮内庁から「面会したことさえない」と一蹴されました。
会ってもいないのに陛下のお言葉が聞こえるとはすごい。幻聴ですか。
日本人の感性からすれば、暴言を白々しい嘘で上塗りするか如き所業で、これだけでこの人物の評価は定まってしまいます。
ま、この間のレーダー照射事件などの七転八倒ぶりの言い訳をみると、韓国ではこれでリッパに通用するとみえます。
もはやヒサン氏にできることは限られています。
ヒサン氏の言葉をそのままお返しします。「本当に申し訳なかったといえば、すっかり解消される」のです。
それを今度はなんですって、「見指忘月」、オレは月を指したが、日本人は馬鹿だから指先を見て怒っていやがる、ですか。
またまたいっそう燃え盛る日韓関係に燃料をぶちまけましたね。
またヒサン氏は議員外交とやらをしたいらしく、特使派遣も視野に入れているという報道もあります。
「国会の李啓聖(イ・ゲソン)報道官は「韓日議員連盟次元で訪日を推進している。今、韓日関係が悪化して、議員連盟の関係も切れてしまっているため、今回の機会を通じて懸案に対する話を交わすことができるとみている」と説明した。
国会でこのような動きがある渦中に、日本の産経新聞は18日、「文議員が日韓関係の修復を図るために日本に特使を派遣する意向を日韓議員連盟側に示している」と報じた。同紙は「(特使派遣などには)6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議を前に事態の収拾を図る狙いがあるとみられる」とし「ただ、発言に対する日本側の反発は強く、特使派遣が実現するかどうかも含めて不透明な情勢だ」と伝えた。」(中央日報前掲)
ちなみに二国間関係が破綻寸前のわが国だけではなく、他にも米中露とASEAN せ特使を出したいようで、なにをしたいものやら。
いずれにしても、この「特使」とやらが来ても言うことは決まっています。もうひとりのムンであるジェイン氏がお得意の「ツートラック外交」の提案ていどのことでしょうから、わざわざご来訪に及ぶ必要はありません。
普通の外交用語ではツートラック外交とは、正面の外交機関同士の交渉か行き詰まった場合、あえて別のチャンネルを作って打開を図ることを指します。
北朝鮮との外交関係が行き詰まった時に、米国がバックチャンネルをストックホルムに開いたようなものです。
あるいは、外交関係がうまくいかない場合、現場である軍同士が交流して信頼醸成をはかって偶発的衝突を避けようとする意味にも使われます。
これも自衛隊は中韓と定期的に行ってきました。
しかムン・ジェインが使う場合の「ツートラック化移行」は前二者とはまったく意味がちがいます。
彼がこの用語を使う時は、「政治はハチャメチャだが、経済はよろしくね」ていどの意味のようです。
なにをおっしゃる兎さん、日本にマウンティングしたいばかりに外交に慰安婦や「徴用工判決」を入れたのは韓国です。
今や韓国に進出した日系企業は、仮に法的係争となった場合、韓国司法の中立性は信用できないと考え始めています。
近代司法の三権分立が存在せず、司法が政府に従属しているからです。
これがいまや経済分野にまで及びつつあるコリア・リスクです。
これを意図的に作り出したのは、はてどちらの国でしたかな。
わが国のいまや消滅寸前の日韓議連の議員諸氏も妙な手助けをしないように。
昨日の記事を続けます。
ムンジェインが大統領となって、なぜ「独立記念日」(こういう名称は使っていませんが)1919年4月11日に変更したのかという理由についてもう少し考えてみます。
歴史捏造だと言ってしまえば一言でオシマイですが、今この時期になぜという問いに答えていません。
実は、韓国内でこの独立記念日論争はえんえと続けられてきていて、いまさら新しいものではありません。
ざっくり言うと、韓国内保守派は1948年8月15日を「建国記念日」としています。
その理由は、常識的に見て韓国が米国によって 「独立を与えられた」のが、この年月日以外考えられないからです。
一方、左派はそのへんが曖昧でした。キムテジュン(金大中)は1998年に、8月15日を「建国50年」と呼んでいますし、ムンジェインの師匠だったノムヒョン(廬武鉉)もまた2003年にこの日を独立した年と認識する発言をしています。
この前例を初めて破った大統領がムンだということになります。
では1919年4月11日と1948年8月15日ではどう違うのでしょうか?
ひとつは、ムンが反日運動の起点となった1919年3.11の精神を受け継ぐといった意味です。
これはいかにもろうそくデモで誕生したムンらしい発想です。
100年近い年月を超えて、民衆運動こそが歴史動かす真の原動力だと言いたいようです。
日本にもよくある左翼の民衆史観です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/shinmukoeng/201804...
二番目に考えられるのは、ムンが今までの左派政権が越せなかった壁を易々と乗り越えたことと関係があります。
いうまでもなく徴用工判決による日韓基本条約(日韓請求権協定)の一方的廃棄です。
これは今の日韓関係そのものの基軸的条約だっただけに、歴代の左派政権も手をつけられませんでした。
それを打ち破ったのがムンです。
韓国最高裁判決を読むとわかるように、日韓基本条約を廃棄するために持ち出したロジックは、日本の「植民地支配」こそが悪の権化であり、それに対する個人賠償の請求権は残っているとしたことです。
この論理は、後に現実に徴用工裁判判決を根拠とした原告団の差し押さえ判決が出るに及んで、「徴用工」のみならず日本統治時代に惹起したすべてのことに対して、韓国民は賠償する権利を持つという意味だとわかりました。
この論理を敷衍すれば、当時のいかなる企業活動も悪の権化である以上、日本企業は無条件に賠償に応じねばならないことになります。
実際に原告団は、当時の在朝鮮日本企業をすべて洗い出して賠償運動をするつもりのようです。
この場合、日本企業は天文学的賠償金を課せられることになります。
日本政府もその例外ではないことを、私たちは忘れないほうがいいでしょう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20180301...
三番目に、1919年と1948年の意味することの違いに注目してみましょう。
1919年には朝鮮半島は分断されていませんでしたが、1948年には既に南北で別個に政府が作られていました。
言い換えれば、1948年は分断の象徴的年でもあるのです。
私たち日本人から見れば、分断を固定化したのは1950年の北朝鮮軍の侵攻ではないかと言いたいところですか、ムンたちノースコリア・ラバーたちにとって朝鮮戦争などは「ない」も同然なのです。
ですから、1919年3月1日の独立運動と、それに続く4月11日の「臨時政府」樹立は輝かしい南北を問わない朝鮮人民の金字塔ということになります。
つまり朝鮮民族は決して米国やソ連にによって独立を与えられた属国ではなく、1919年に「臨時政府」を持った独立国であり続け、1948年に成立した韓国政府はその後継政権にすぎないといいたいわけです。
「臨時政府」を主権国として見るなら、日本統治時代の経済活動、行政活動の一切は違法であるということになります。
これは2番目の徴用工判決を支える影の論理です。
そして同時に、南北統一へ向けた下地づくりの一環でもあるのです。、
見ているこちらの頭がクラクラするような幻覚症状を呈していますが、これが今のコリアです。
ある種の傾きが強い人に見られるように、彼は彼の幻想の中では立派に筋の通ったロジックを構築しており、それは現実の生活を動かしていることもまた一面たしかなことなのです。
ただし国際社会はそんな身勝手な幻想にはおつきあいできませんよ、寝言は寝て見ろと冷厳に宣告したのが、4月11日しか訪米日程を認めなかった米国政府でした。
なんつーか、かんつーか、もう眼もあてられないご様子だったようです。ムン・ジェインの訪米です。鳴り物入りの4・11臨時政府樹立記念日をすっぽかしてまで行った米国で、お前なにしに来たんだという待遇を受けたようです。
時事
そもそもこの4月11日を正式に大韓民国の「建国記念日」にするというファンタジックなファンタジーは、かねてからムンジェインが温めてきたもので、去年政府が行政化したばかりでした。
「韓国の国家報勲処は13日、日本による植民地支配下にあった1919年、独立運動家らが中心となって中国・上海で樹立した「大韓民国臨時政府」の樹立記念日を従来の4月13日から同11日に変更する方針を発表した」(東亜日報 上写真と同じ)
「【ソウル聯合ニュース】韓国の国家報勲処は13日、日本による植民地支配下にあった1919年、独立運動家らが中心となって中国・上海で樹立した「大韓民国臨時政府」の樹立記念日を従来の4月13日から同11日に変更する方針を発表した」(聯合2018年4月13日)https://jp.yna.co.kr/view/AJP20180413001600882
それが最初に浮上したのが2017年12月の訪中時のことでした。この訪中は伝えられるところではここでも散々な冷遇で、国賓という触れ込みにもかかわらずムンは寂しくひとり飯をパンで済ませている写真が撮られています。
ムンさんの米中両国から浴びせられ続ける「何しに来たんだ」感はハンパではありませんね。めげないように見えるのがエライといえばエライ。
それはさておき2017年12月16日にムンは重慶を訪れて、「大韓民国臨時政府」庁舎跡を視察しました。
ここで彼が言ったセリフが、「臨時政府は韓国の根っこだ」というひとことで、これは韓国の成立が、世界が認識している日本の敗戦による棚ぼた式独立であった1945年ではなく、それを遡ること26年前の1919年だというのです。
まぁ私たちからみれば、まぁどっちでもいいようなことで、そう思いたければ思ってたらいいんじゃないですかていどのことですが、ややきな臭いのは中国で習相手に言ったことです。
これは中国に元「連合国」のよしみで、一緒に反日共同戦線を作ろうといういう腹で習に、中国韓国共に(ついでにいえば北朝鮮も入りますが)「抗日活動を継承して誕生した国家だ」という共通認識を強調したようです。
残念ながら、習としてはこんなことは既にパククネ時代に一札取り付けているので冷淡な対応だったようです。
ですから、習はとりあえず「臨時政府」遺跡は保存すると答えたそうですが、内心は一緒にすんじゃねぇよと思っていたことでしょう。
中国共産党部隊(八路軍)は日中戦争時には逃げ回っていただけという説が有力ですが、とりあえず抗日戦争を戦ったというのはあながち嘘ではありませんし、北朝鮮すらもソ連軍の朝鮮人部隊でしかなかったにせよ実体はありました。
ところがお気の毒にも韓国の「臨時政府」なるものは、いわば「独立同好会」に毛が生えたようなものでした。今の沖縄の琉球独立学会とやらとどっこいいい勝負です。
似た団体を探すなら、「アイルランド共和国軍」(IRA)くらいなものです。
大韓民国臨時政府の要人 Wikipedia
ところでこの1919年4月に「建国」説をいいふらしたのは、1945年に米国が政権を与えた初代大統領の李承晩でした。
彼はほとんどハワイで優雅な亡命暮らしをして、帰ってくれば済州島で大虐殺をするような無能な男ですが、彼の二枚看板は、晴れがましくもこの上海の「大韓民国臨時政府」なるものに名前を連ねたこととと、自分が李王家の傍流に連なる旧支配階級出身だということでした。
歴史の正当性にことのほかこだわる韓国ならではのことです。
「臨時政府」といっても30人に満たないサークルのようなもので、行政経験も軍事知識も皆無といったありさまでした。
もちろん国家の三要素たる「領域・国民・主権」のいずれも持ち合わせゼロでした。
このへんが後にドイツのヨーロッパ侵攻で複数生み出された、たとえばド・ゴールの率いる「フランス臨時亡命政府」とは本質的に異なるところです。
簡単に説明しておきましょう。
国はあたり前ですが、「ここが我が領土だ」といえる実効支配した「領域」が必要です
そしてそこには住んでいる「国民」が要ります。
三番目には、住んでいる国民が他国に支配されずに政治を行ったりする行政機構が必要です。そして国民を守るための警察や軍隊が必要です。
これが「主権」です。
この三要素が揃うと、国際社会は「では国と見なそうか」という機運が拡がり独立国として認知されます。
有体にいえば、国際社会の盟主である米国の承認が必須です。
1919年に自分は「独立」したといくら臨時政府が宣言しても、国家の三要素が皆無では国際社会から無視されて当然です。
国際承認を得るのは高い壁で、先ほど述べたフランス臨時亡命政府ですら、かつては実体ある政府でしたが、その時点での三要素が欠落していたためにただの交戦団体扱いでした。
ましておや、かつて一度として朝鮮半島内で実体ある政府を作ったこともなく、考えたことすらなかった「臨時政府」ではねぇ。
当時の韓国を実効支配しているのは、合法的に統治権を国際承認された日本国でしたから、「臨時政府」が入り込む隙間は1ミリもなかったわけです。
まぁ、平たく言ってしまえば、テロしかやったことのない独立愛好家、失礼、独立の志士たちは行政経験や軍隊を指揮した経験など皆無でしたから、国を名乗るのはジョークだと思われたのです。
おっと待て待て、余計なお世話ですが、この「臨時政府」が国際社会に承認される方法がひとつだけあったことを思い出しました。
それは日中戦争から続く大戦中の期間に、せめてフランス亡命政府のように交戦団体にあることでした。
仮に「臨時政府」が、北朝鮮並に兵隊をかき集めて連合軍に一定規模の「自由朝鮮軍」を派兵していたら、連合国の見る眼がまったく違ったことでしょう。
現に北朝鮮はソ連軍の制服を来て、その指揮下にありましたが、そうしました。
ところが韓国ときたら、リーダーの金九は内ゲバで殺されてしまい、ナンバー2の李承晩は優雅な亡命暮らしに浸っていたのですからどうにもなりません。
ここが韓国の政府としての正統性の根拠が怪しいところなのです。
なんせ正統性というなら、とりあえず交戦団体だった北のほうがありますからね。
朝鮮戦争時、金浦空軍基地に到着したマッカーサー将軍を出迎える李承晩 https://ironna.jp/article/2236
ところがフロックで初代大統領に就いた李承晩が、自分の正統性を主張するためにいいだしたのがこの「臨時政府」でした。
朝鮮北部にはソ連軍の下級将校だった金日成がソ連軍戦車に乗って進駐し、一方、米軍のジープに乗って入ってきたのが、この「臨時政府」」ナンバー2の李承晩でした。
ところがこの李承晩は独立どころか初めに連合国に言ったことは、「われわれの臨時政府を認めろ」ではなく韓国を国際連盟の「委任統治領にしてくれ」でした。
さすがにこれでは、当時の国際関係では米国の植民地にしてくれという意味でしたから、「日帝の植民地から米国の植民地にするするつもりか」から散々に批判されてしまい、またもや中国に逃げ出し、彼か復帰したのはもうしばらく後のことてす。
ま、李承晩とはこのていどの「志士」で、しがみついたレガシシーこそが「臨時政府」でした。
その後もしょうこりもなく、1952年のサンフランシスコ条約時には、「オレは戦勝国だから日本に賠償要求をさせろ」と言い出して、連合国の面々から失笑を受けていたりします。
ひとりの兵隊もいず、一発の弾も撃たないまま戦争が終わってしまって「戦勝国」とはいい度胸です。
ただし、米国から貰った独立ですとも書けないので、韓国憲法全文には「大韓民国は3.1運動で成立した大韓民国臨時政府の法統を継承する」と書き込んでいます。
つまり独立愛好会でしかなかった「臨時政府」は、現在の韓国の前身だというわけですが、もちろんそんなことに耳を貸す国は一国もありませんでした。
韓国自身も国際社会から失笑を買うのを恐れたのか、ムン時代までおおぴらには言ってきませんでした。
パククネ時代の国定教科書の韓国独立年は1945年と常識的記載がされていました
しかしムンジェインは就任するやいなや、ソウルで開かれた光復節(日本の支配から脱した記念日)式典で、「2年後の2019年は臨時政府百周年だから盛大に祝う」とブチ上げました。
これが今年の4.11の臨時政府百周年記念日だったわけで、よりにもよって米国はこの日を指定したことになります。
ありがとうございました。今回で完結です。
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「自衛隊弾薬庫問題」とは何だったのかその3
山路敬介
承前
■岩屋大臣の防衛省トップとしての資質は、やはり疑わざるを得ない
以上見てきたように、岩屋大臣の地元との協調性や政治的な面からは申し分のない大臣のように見えます。ですけれど、私は自衛隊本来の役割や任務から考えるとき、最初から岩屋氏の大臣の資質には疑問を持っていて、それが今回の件でさらにあらわになったと考えています。
その一番はやはり、島外へのミサイル等重火砲の全弾撤去です。防衛隊は組織され必要な人員は確保されましたが、弾がなくてどうやって本来任務を達成出来るか? これがはなはだ疑問です。
それに一体、ミサイルなどは今どこにあるのか? 「運用に関わる」として明かさないのは仕方がないとしても、即応性や初動対応に支障を来すのは間違いないです。
大臣によれば、島外にあっても「任務に支障のないように措置する事が可能という判断をした」としていますが、屁理屈をいえば「それなら、保良の弾薬庫も必要なかろう」と言いたくもなります。
ついでに、弾が島外でいいのであれば「砲筒」も島外にあれば足りるという事も出来るし、防衛部隊は洋上待機でも可能ではないの?などと意地悪く言ってみたくもなります。
また駐屯地保管について、「ここに弾薬を置きたいと考えた理由はある」として、千代田での保管の必要性を認めています。その旨は当然、初動や即応性を考慮に入れたものだったハズです。
「軍事的合理性の観点から、弾薬は近いところにあるのが望ましい」とも言っており、しかしその一方では「(距離はあるが)あたえられた状況の中で、ベストの状況を作っていく」として、防衛の必要性を努力目標に格下げしてしまっているのです。
図右手グラウンド横のピンク色に塗られた建物が「保管庫」 http://www.miyakomainichi.com/2017/12/104188/
■岩屋大臣は、保良地区で弾薬庫ができたら千代田で建設した保管庫は使わないと約束してしまった
最も深刻なのは、保良地区において弾薬庫が完成したあかつきには「その場において弾薬を集約して保管して行きたい」という明確な方針を示している事です。ここで大臣は、千代田で建設した保管庫はこれからも「使用しない」と宣言し、それを約束してしまっています。
それなら最初から千代田に建設された保管庫は必用がなかった事になり、まるで漫画でも見ているような塩梅です。
小野寺五典前大臣は4/9の国会質問で岩屋大臣に対し、「さまざまな理解を得るという事でやったが、初動で必要なものは手元に置かざる得ないのだから、地元の理解を得るという努力をすべきだ」としました。これが岩屋氏と小野寺氏の決定的な「違い」です。
岩屋大臣は国会質問の場において、決して色めき立つような感情の部分は見せず、淡々と最低限必要な答えをします。
一見、非常に有能な大臣に見えない事もない。けれども、相手の理解を促すような説明努力を全くしていない事には注意が必要です。
小野寺大臣なら、簡潔に前提や周辺情勢をつまびらかにしたうえで、相手の野党・与党の区別なく、わかるように説明する努力を惜しんでいませんでした。
もし、安倍一強といわれる弊害があるのだとしたら、岩屋氏のように近回りをして大臣としての労力を回避するような大臣がある事にあるのだ、と思います。
もっといえば、韓国軍のレーダー照射問題に関する処置も不十分なものでした。この事件に関して最初に幕引きを試みたのは日本側で、その最初は岩屋大臣の「日韓の防衛協力を未来志向で進めるよう真摯(しんし)に努力したい」との発言からでした。
私としてはとりわけ韓国など特別憎い対象にすらありませんし、大臣がそう言うからには、おそらく米国側の暗黙の要請もあるのだろうと考えていました。つまりその時はその対処でよく、必要な事柄はキッチリ成されるだろうと考えていたのです。
要は同様の事案が再び起きない事が肝要なので、その為の処置がどのようにか行われるであろう事を確信していたのです。
ところが、伝えられる範囲ではそれは全くなく、岩屋氏からそのような説明もいまだに皆無です。これで自衛隊員の不測の危険をどう回避・対処するのか? 安倍さんからでもキチンとした説明をぜひ伺いたいものです。
■ 防衛に関する法整備は不十分だ
KYさんという方がコメントの中で、「自称市民によるスパイ行為」というような表現をされていましたが、それは「弾薬の保管庫」という通常では手に入らないだろう図面を手に入れたその行為を指しての事のようです。
私にしても「自称市民によるスパイ行為」と言ってしまいたく誘惑はありますが、スパイとか、そういうものでは決してありません。あるいはブログ主様に迷惑が及ぶかも知れず、「スパイ」というような安直な言い方は避けてもらえればと思います。
弾丸の保管庫はおよそ著作権の対象物にはなり得ませんし、おそらく件の図面は工事の下職からでも任意に入手したものと思われ、そうであれば上述の運動家の女性は図面を盗み出したわけでもなければ、入手した図面を複製して販売したわけでもないのですね。
あのような施設であっても、元請け以外にも職方は木工事もあれば、電機屋もあり、型枠業者もあります。そのそれぞれが必要な施工図の配布は受けており、平面図などは共通して持っています。
問題は、防衛局は一般のビルディングを建設する場合のように、各職に守秘義務程度は課しているにすぎず、防衛機密に指定するような事は出来ないでいる事です。
弾薬の保管庫のようなきわめて重要に思われる案件にすら、我々と同じ一般法の範囲でしか秘匿できず、必要な情報統制も出来ない、こういう事が本質問題です。
きっと、運動家の人たちが違法行為によらず入手できるようなものは、人民解放軍ならもっと早く入手出来ている事でしょう。
くわえて言えば、一方でこういう状態が我が国の防衛体制という常態であり定着したものですから、岩屋大臣のようなやり方は「日本の防衛の現状に即したやり方」と言っても良いのでしょう。
このような現状を打破する一丁目一番地が「憲法改正」になるはずですが、それが仮に出来たとして、外国の軍隊並みになる事はまだ遠い先になるでしょう。
岩屋大臣のような政治家が自衛隊の惣領ならば、そのような火中に飛び込むことはせず、石破のように黙して日本の主権を少しずつ後退させる方向を取る方が得策と考えて、これも何ら不思議はないと思います。
(了)
文責 山路 敬介
山路氏寄稿二回目です。次回で完結です。
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「自衛隊弾薬庫問題」とは何だったのかその2
山路敬介
承前
■ 防衛局の市民に対する説明に誤謬はない
まず第一に、東京新聞や赤旗、後追いの朝日新聞などが報じるように、防衛局が住民説明会などで「小銃用などを除くほか、ミサイルなど重火砲系の弾丸の一切の装備品を駐屯地に置くことはない」とした事はありません。岩屋大臣は「説明が足りなかった」としましたが、地元説明を担当した局の誰も処分される予定になっていません。
また、北朝鮮のミサイル発射問題でも明らかだったように初動と即応の重要性を勘案すれば、駐屯地に弾薬庫から届くまでに必要な相当量が置かれることは当然です。
いえ、北核問題があろうがなかろうが、自衛隊の任務遂行上当たり前の事です。その事は、説明会で配られた見取り図様のペーパーにも、最初から二種類の保管庫のうちのひとつとして描かれているとおりです。
東京新聞の望月衣塑子記者の署名記事では、運動家の清水某という女性が独自に他所から図面を入手し、それが説明会で使用したものと別のものであり、面積等も違ったものであったので、ゆえにあたかも「国に欺かれた」ような印象記事になっていますが、これはおかしな事です。
■説明会に用いる概略図と最終施工図面は違っていてもあたりまえ
説明会には説明会の主旨や必要と目的があるのであり、そこで用いた図面がその面積も含めて最終的な施工図面と一致する必要はありません。
概要をわかりやすく説明するためのものと、実際に施工する側が用いる詳細図面が同じものであるはずがなく、建屋の面積が変動する事はこれからの実用によっても変化するのは当然です。そのたび毎に住民説明会を催して承諾を得る必要などない事もまた言うまでもない事です。
また、住民説明会というものは地元行政や議会制民主主義的手続きとしてあるのであり、自衛隊配備の可否をそこで住民に決めてもらうためにあるのではありません。しかしそこで例えば、住民側より提議された「誰が見ても不合理な事実」でも出て来たとして、それに基づいて反対の意見を付すのは市当局であり市議会の仕事なのです。
説明会では防衛局にとって様々な「答えられない質問」や、「答えにくい質問」が実際に出、それに対して防衛局側は説得的な回答を返さない場面もありましたが、それはその役割を逸脱しない範囲でしか回答出来ないゆえでもあります。
概要を示す事は当然ですが、第一に関係法令に則った施設である事の説明、配備によって地域に与える悪影響を排除するための留意点などが重要な内容となるので、そういう点では申し分のない説明会だったと思います。
ですので東京新聞や赤旗が主張するような、「国側による、そうした不十分な説明のうえで自衛隊配備を住民を納得させたのであるから、そもそも前提を欠き、配備は不当なもの」との主張はあたりません。
■ 政治的には成功した岩屋大臣の「謝罪」
それでは岩屋大臣は何のために「謝罪」したのでしょうか。大臣は隊旗授与式のあった4/7の午前中にも、再び千代田住民や下地市長に対して謝罪しています。
この日、記者団たちに対して大臣は「説明に不十分な点があり」、「明示的に説明が出来ていなかった」とし、「保管庫という概念で話したと思うが、具体的なカタチでどういうものかという説明を詳しく説明すべきだった」と言っています。
ですが、上でも申しましたように防衛局の説明には誤謬というような失点はなく、すくなくもこれまでの防衛局の説明要綱を逸脱した部分はありません。「明示的な説明」の意味も様々な解釈が可能で、言葉遊びの感が拭えません。
にもかかわらず大臣がここまで丁寧な「謝罪」を行った理由は全く別の所にあり、とても政治性の濃いものであったと言わざるを得ないと思います。
それは議会での下地市長の初期答弁、あるいは千代田を擁する上野地区の自衛隊賛成派市議らの住民に対する最初の頃の説明に現れていたと思われます。
これら地元政治家の発言には、たしかに「駐屯地にはミサイルなど重火砲は一切置かれない」とうかがわせるものもあり、そうした認識を持ち続けて来た地元住民も全くいないわけでもありません。
■自衛隊が一身に「政治の泥をかぶった」のが真実
「説明が不十分」とか、「明示的でなかった」とは聞こえはいいですが、要は自衛隊が一身に「政治の泥をかぶった」というのが真実だと思います。自衛隊配備を実現した賛成多数の地元政治に配慮し、事をまるく収めるという大臣の苦衷は偲ばれますが、しかしその代償も小さくないです。
また、今回の岩屋決断を受けて、弾薬庫用地の予定地となる保良地区の考えとしてさっそく私の耳に入ってきたのは、「上野村でダメなものを、なぜすべて保良に押し付けるか!」との賛成派重鎮の当然とも言える怒りの声でした。
すわ、地域間格差問題にでも拡散発展するのか?と心配しましたが、地元はさらなる説明を受け入れる体制を崩してはおらず、最悪な状況にまでは至っておりません。軽々な事を申し上げるわけには行きませんが、粘り強く安全性を説明し、地元に対してさらなる措置を講ずる用意もあるようです。
(続く)
山路さんから宮古の「自衛隊弾薬庫事件」のレポートを頂戴いしました。ありがとうございます。
3回連載で掲載いたします。
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「自衛隊弾薬庫問題」とは何だったのか
山路敬介
はじめに
東京新聞の記事に端を発し、4月2日の衆議院安全保障理事会までには既に防衛大臣のスピード謝罪が行われていた本件ですが、この間の岩屋防衛相の対応は疑問と課題の残るものでした。
一体、岩屋大臣がとったような措置がそもそも必要だったのか? そうした判断によって生じる安全保障上の空白をどうみるか?等々、一貫して自衛隊誘致賛成派である私共にとっては納得しきれない苦いものを残しつつ、それでも大臣の目論見どおり急速に「騒ぎ」だけは収まりつつあります。
この問題にはこれまで自衛隊が抱えてきた問題や、わが国の安全保障対応をとりまく国内的問題点をそのまま敷衍させたような状況があります。
より具体的には、「政治の失敗」のツケのしわ寄せを、またしても「安全保障」に妥協させる本末転倒した事態が繰り広げられる有様の繰り返し、という事です。
■ 盛況だった4.7隊旗授与式
さる4月7日、新設なった陸上自衛隊宮古駐屯地で宮古警備隊の隊旗授与式が行われました。式典は思っていた以上に盛大で、自民系国会議員数名のほか協力会の野津会長、国・県・市の関係者ら、隊員のご家族の方々も招かれ、非常に立派なイベントになったと思います。
ハイライトだった岩屋防衛大臣が田中広明隊長に隊旗を授与するシーンは、地元紙である宮古毎日新聞と宮古新報のそれぞれ一面の8段・9段抜きで掲載されています。
なお、場外では反対派の約30名ほどがノボリを立て、「基地は認めない」などとシュプレヒコールを行なっていましたが、その様子も9面あるいは11面において一応は取り上げられています。
式典のあとの祝賀会の方も盛会で、田中隊長の「(通常隊務のほか)トライアスロン行事、夏祭りなども通じて、地域とともに歩んで行きたい」との言葉が印象的でした。
総じてこの日の行事を伝える宮古二紙の報道は、大多数の一般市民の自衛隊に対する気持ちや雰囲気を良く写し取っていて、バランスの取れたものだったと思います
この事は、本土や島外の皆さんが東京新聞や朝日・毎日などの媒体をみて判断されるような「自衛隊VS地元住民」という構図とはちがい、かつ相当にかけ離れたものである事をまず記しておきたいと思います。
沖タイ3月27日陸上自衛隊の編成完結式後、あいさつを交わす原田智総第15旅団長(前列左)と宮古島市の下地敏彦宮古島市長(中央)=26日午前、宮古島市上野野原の宮古島駐屯地https://newscollect.jp/article/?id=483370593665533025
■ 島外からみた(報道をつうじて見る)宮古島市の政治状況は誤り
東京新聞や朝・毎だけでなく、NHKや民法でも島内の極少数者の意見をクローズアップして報道されるせいで、たくさんの心配の声を頂きます。
それは「お前んとこ大丈夫なのか? 何か島内が二分されている状況のようだが?」とか、「自衛隊配備は失敗だったな。ここまで反対が多いと、これからが大変だ」、「もう保良の弾薬庫建設はこれで絶望的だろう」と言った深刻なものです。
ですが、そうしたご心配には全く及びません。どうも報道というものは少数者の意見に寄り添うクセみたいのがあって、それ以上に今回の報道では、そのウイングが「極めて少数者」にまで偏っていて、かつ一切にわたり「大多数の意見」が映し出されていず、結果として実像とは全く異なる宮古島市の政治状況を島外の方々に提示してしまっているのです。
もう旧聞になりますが、石嶺香織前市議が「自衛隊が来たら、婦女暴行事件が起こる」等々、自衛隊という属性に対する侮辱・人権軽視発言を行いましたが、ああいう人はまさに「変体」というべきで、とても一般の宮古島市民の与するところではありません。
また先月の市議会で問題になりましたが、平良港で運動家市民による自衛隊機材の運搬を実力で妨害しようとする行動があり、港を管理する市当局の職員が説得を試みるも言う事を聞かず、やむなく警察介入となった事件がありました。
その事に関連して共産党の上里樹市議が議会質問において、「市当局は、市民を罪人扱いにした」との質疑を行い、市長や市側が議場を退出するさわぎになり、あげく議長に職権で発言を削除されています。
こうした上里市議の発言内容や、運動家市民の行動にエールを送る一般市民は今の宮古島市においては極めて少なく、大多数がマユをひそめて遠巻きにしている状況にあります。
■ごく一部の過激な行動が、穏やかな反対の意見をかき消した
宮古島には自衛隊配備に反対するなかで特に高齢女性を中心とした「武力の存在は敵の標的になる」といった漠然とした、しかし根強い小数意見は確かにあります。
ですが、そういう方々にあっても、市役所前で毎日にようにノボリを立てて気勢をあげる、港で実力行使しようとする、隊旗授与式にまで出張って来て「自衛隊反対」をシュプレヒコールする、そういう人たちの行動を支持する事はありませんし、一緒にされる事にも迷惑の体で、まして決して接着することはありません。
むしろ、ごく一部の過激な運動体による突飛な行動が、穏やかな反対の意見をかき消した印象すらあります。
下地市長はまず水資源問題において、自衛隊に最初の候補地を断念させて見せ、次に十分に合意されたものとして千代田駐屯地建設や保良の弾薬庫建設を推進しました。その経緯によってこそ、良識ある市民の同意が取り付けられたとも言えます。
一方の運動側は最初の候補地断念を、「敵失=自らの功績」として勘違いしてとらえ、それを突破口としてさらに過激になりました。結果、運動側は今や市民の大勢に影響力を持たない、孤独な「糸の切れた凧」状態に陥ってしまったのです。
そして宮古島は「狭い」です。市役所前での抗議も、港で実力行使しようとした運動家市民も、駐屯地に参集する人も、「あぁ、〇〇ちゃん、こっちでもやっとるんかい? いそがしくて大変さね~」と声を掛けられるくらい掛け持ちで、運動側の員数は微々たる勢力です。
(続く)
昨日、日本人が心底怒っていいニュースが入りました。あろうことか、WTOが韓国の差別的輸入禁止措置について認めてしまったのです。
「2011年の東京電力福島第1原発事故後、韓国が福島など8県産の水産物輸入を停止している問題で、世界貿易機関(WTO、スイス・ジュネーブ)の最終審に当たる上級委員会は11日(日本時間12日未明)、禁輸措置を事実上妥当とする判断を下した。禁輸を「不当」とした紛争処理小委員会(パネル、一審に相当)の判断を覆し、日本の逆転敗訴となった。
8県産水産物の輸出再開を目指す日本は、戦略の見直しが避けられない。今回の敗訴は、事故後から日本産食品の輸入規制を続けている他の国や地域の対応にも影響を与えそうだ。
韓国が輸入を停止しているのは、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉各県の水産物。このほか、放射性物質が検出された食品については、追加検査を求めている」 (2019年04月12日時事)
時事前掲
この韓国の放射能を理由として輸入禁止措置は、禁止区域に被曝の影響をほぼ受けていない青森、岩手、宮城、群馬や、被曝の影響を受けても部分的だった千葉までもが含まれていることを見ればその不当性がわかるでしょう。
水産物といいながら海がない群馬・栃木までも禁止区域に入れるのですから、韓国政府の時計が島事故直後の2011年夏のパニック時期から一秒も進んでいないことがわかります。
当時は極度の情報不足が原因でしたが、それから8年経過し、あらゆる資料が公開されていつでも誰でも読めます。
いまでもこんな愚劣なことをを言っているのはおしどりマコなる芸人くらいなものでしょうから、韓国はいっそ「大韓おしどりマコ国」とでも改称したらいかがでしょうか。
韓国は、自国民の健康と安全の名を借りて、国際社会に対して東日本に対して許すべからざる憎悪表現をしています。
特に立ち直りつつある福島に対して、震災と福島事故で受けた傷に塩をなすり込むが如き卑劣な行為です。
今回も韓国は、得意のロビー活動に精出したことでしょう。
反日でも克日でも勝手にやっていなさいと常日頃は思っている温和な私でも、さすがに今回は堪忍袋の緒が切れました。
世界のどこに復興を妨害する国があるのですか、いいかげんにしなさい!
実際の福島事故による被曝地域は、西はスペイン、北はスカンジナビア半島、東はロシアまで拡がったチェルノブイリと比較すれば、被曝地域が遥かに狭く、限定されていました。
このクリーム色に塗られた低度の被曝地域にすら青森は入っていません。
福島原発事故に関してhttp://genpatsu.sblo.jp/article/47289931.html
韓国の姿には、震災直後、被災地で処理できなくなった震災瓦礫を大阪や北九州市に搬入しようとして、「放射能がうつる」と言ってまるで伝染病のように反対した「市民」の姿がダブります。
この韓国の輸入制限措置がいかに度が過ぎた虚妄だということは、禁止区域に被曝の影響を受けていない青森、岩手、宮城、群馬や、受けても部分的だった千葉までもが含まれていることを見ればわかるでしょう。
既に事故以来最も大きな被害を受けた福島に対しても、国連科学委員会(UNSCEAR ) が最終報告書を出して安全を宣言しています。
また、福島県は前人未踏とも言える、コメの全量検査を事故以来営々と実施しています。
「全量」という意味は、出荷するコメのみならず、自家用米まで含めて「全量」検査を通しているということで、驚嘆すべき努力です。
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/36035b/zenryou
全量検査の結果は以下で す。5年連続で検出ゼロです。
「■全袋検査...「新米」基準値超えゼロ 福島県産米、5年連続達成
県産米の放射性セシウム濃度を測定する全量全袋検査で、年内に精米される2018年産「新米」の約891万点全てが一般食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)未満となる見通しとなった。県産新米の基準値超えゼロは14年産から5年連続で、検出下限値(同25ベクレル)未満は99.99%に上る。 18年産の新米は、27日までに検査された891万2071点が検出下限値未満となった。放射性セシウムが検出されたコメは25~50ベクレルの34点だけだった。
一方、古米を含めた県産米の基準値超えゼロは15年から4年連続。全袋検査は県産米の安全性を証明するものの、生産者や集荷業者などへの負担が指摘されている。
県産米の放射性セシウム濃度を測定する全量全袋検査で、年内に精米される2018年産「新米」の約891万点全てが一般食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)未満となる見通しとなった。県産新米の基準値超えゼロは14年産から5年連続で、検出下限値(同25ベクレル)未満は99.99%に上る。 18年産の新米は、27日までに検査された891万2071点が検出下限値未満となった。放射性セシウムが検出されたコメは25~50ベクレルの34点だけだった。
一方、古米を含めた県産米の基準値超えゼロは15年から4年連続。全袋検査は県産米の安全性を証明するものの、生産者や集荷業者などへの負担が指摘されている」(福島民友2018年12月29日)
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20181229-338389.php
しかも福島がクリアしたこの基準値は、あれだけ食品安全にうるさいEUを遥かに下回る世界最高の厳しい食品規制値を、さらに福島県が独自に更に厳しく運用したものなのです。
ちなみに日本は100bq/㎏なのに対して、EU 基準値はその6倍の通常時600bq/kgです。
農産物等の放射性物質モニタリングQ&A - 福島県ホームページ
水産物の監視も同様の全量検査体制が取られています。こちらも検出ゼロです。
「原発事故のあと、福島県沿岸の漁業は、安全性が確認された魚種と海域で行われています。
福島県は、この海域で定期的に魚介類をとり、放射性物質の検査を行っています。
それによりますと去年までの3年間に調べた2万3782検体のうち、国の食品の基準の1キロ当たり100ベクレルを超えたものはなく、97.3%では、検査器が検出できる限界の値を下回ったということです。
一方、福島県漁連も水揚げされたすべての魚種で漁のたびにサンプル検査を行っており、この3年間で国の基準を超えたものが1件ありましたが、すぐにこの魚の出荷を停止しました。
さらに県漁連は、国の基準より2倍厳しい1キロ当たり50ベクレルという自主的な基準を設けていて、上回った魚種は一時的に出荷を停止する措置をとることにしています。
こうした1キロ当たりの基準は、アメリカの1200ベクレル、EUの1250ベクレルなど、国際的にみても非常に厳しいものとなっています」(NHK4月12日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190412/k10011881821000.html
「上級委員会が第1審にあたる小委員会における議論の手続きが不十分だと判断したためです。
水産庁によりますと、WTOの報告書では、韓国が国内に流通する食品の放射性物質の基準をできるだけ低い水準におさえたいとしていたのに、小委員会がこの主張を十分に議論しないまま判断したとしています。
また、日本産の食品が差別的な扱いを受けているかどうかの議論で、小委員会は放射性物質の水準を他の国の食品と同じ条件で比較できていない可能性があると指摘しています。
このため、上級委員会は韓国側に是正を求めた第1審にあたる小委員会の判断を取り消しました」(2019年4月12日NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190412/k10011881421000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_022
桜田オリンピック・パラリンピック担当大臣が辞任しました。事実上の更迭です。
その前には塚田一郎副大臣が「忖度」で辞任していますから、続きました。
「桜田大臣は10日夜、都内で開かれた自民党の高橋比奈子衆議院議員のパーティーであいさつして「復興以上に大事なのが高橋さん」と発言しました。桜田大臣は発言の後、直ちに総理官邸を訪れて安倍総理大臣に辞表を提出しました。
桜田五輪担当大臣:「被災者の皆さんの気持ちを傷付けるような発言をしてしまって申し訳ない。撤回させて頂きます。それだけでは十分ではないと思いますので、責任を感じて辞表を出させて頂きました」(テレ朝4月11日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000151937.html
「桜田オリンピック・パラリンピック担当大臣が「復興以上に大事な議員」などと発言して辞任しました。
ふー、やれやれです。弁護の余地はありません。
辞任はしていませんが、この前後に岩屋防衛大臣の「弾薬庫」謝罪と島外搬出事件があったばかりです。
少し前には塚田一郎副国土交通相のほうは「忖度」発言による辞任です。
共通するのはいずれの大臣も言語による説明能力に著しく欠けることです。
どうしてかくもコトバが軽いのか。
桜田氏は復興より自分が推す議員のほうが大事だといわんばかりの、いわずもがなの泥臭いリップサービスをしてしまいました。
はっきり言って、あんたら馬鹿ですか。
この桜田氏は大臣職が、ただの陣笠議員ではなく公人中の公人であることを忘れています。
大臣はあくまでも「内閣の一員」として発言しているのであって、その言葉はそのまま内閣の公式見解となります。
ところがこの御仁は、陣笠議員がよくやる選挙激励会のノリで「復興より」とやってしまったのですから、大臣としての自覚はないと見なさざるを得ません。
内輪の会だという気安さがあったようですが、ならばもっといけない。
今、自分がいかなる立場にいるのか自覚がなさすぎます。
自分の国会答弁などでいかに政権の足を引っ張ったのか、IT担当はお笑いとしても、肝心なオリンピック・パラリンピック担当省として能力不足が露わなことを、自分でわからなかったらアホです。
そしてメディアが、いったん眼をつけた「失言大臣」の首をとろうと手ぐすね引いていることを、よもや知らないわけでもないでしょうに。
http://pleasureaggre.com/sakurada-pasokon-dekinai-...
そしてその前の 塚田一郎副国土交通相のほうは「忖度」ですから、さらに目も当てられません。よりによって「忖度」とは!
https://www.excite.co.jp/news/article/Mainichi_201...
「下関北九州道路は下関市と麻生太郎副総理兼財務相の勢力圏にある北九州市を結ぶ。塚田氏は福岡県知事選の自民推薦候補の集会で応援演説し、道路建設を推進する県選出国会議員らが副大臣室を訪れ「これは総理と副総理の地元の事業だ」と迫られたと明かした。「私はもの分かりがいい」と応じたとした上で「総理とか副総理がそんなこと言えない。私は忖度した」と語った」 (毎日新聞00
今どきこんなメディアが泣いて喜ぶような「忖度した」などといえばどうなるのか、塚田という人の頭は帽子の台ですか。
塚田氏は、山口県下関市と北九州市を結ぶ関門新ルート(下関北九州道路)の国直轄調査への移行に関し、安倍首相と麻生太郎財務大臣の地元なので塚田氏は「オレが忖度して国の直轄調査にしてやった」という手柄話をしたわげです。
ダーです。モリカケにあしかけ2年費やして大山鳴動ねずみ一匹出せなかったメディアと野党が、「アベとアソウに忖度した」と名指しで国交副大臣が言えば、第2次モリカケ劇場が再開だと、狂喜するのは子供でもわかります。
そもそもこの道路は地元の強い要請があって計画が実現したもので、当時の民主党も賛成していたはずです。
そこに「オレが忖度」したという馬鹿が政権内に現れれば、「アベに忖度して国が有利に計らった」という例のモリカケ・ストーリーと繋がってしまいます。
実際にどのように塚田氏が関わったのかという検証も、「ツカダの秘書の友人の親戚の弟が土建会社社長で、アベの後援会の支部長だった」などとメディアがもっともらしく報道することでしょう。
そして国会空転。延々と第2モリカケ劇場の再演です。ああ、死ぬほどくだらない。
喜ぶのはメディアと野党と石破氏くらいなものです。
一方、桜田氏の方はまだ「可愛い」とはいえます。
去年11月の就任記者会見でオリンピックを飛ばした上に、パラリンピックもうまく言えなかったという「だけ」です。
動画に残っていますが、ひどいアガリ性とみえて、もうメタメタです。
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg17757.html
これで終われば、ああ馴れていないんだね、私もつまらないことに騒ぎなさんな、ていどのぬるい眼で見ていたのですが、その後、いやもう国会答弁は恥の上塗りでした。
「レンポウ」という確かに間違い易くはありますが、よりにもよってこのモンスター・クレーマーのような政治家の名を言い間違えたのはご愛嬌としても、オリンピック予算で「億」を何回も欠落させ、さらには石巻を「イシマキ」と連続して言い間違えたりと、ああ目も当てられない。
後ろで聞いていた首相もさぞかしアチャーの気分だったことでしょう。
失礼ですが、苦労して土建業をしながら夜間大学を出た人をつかまえてこういうことは言いたくないのですが、桜田氏の日本語の言語能力はそうとうに低い。
ただ一点弁護してあげれば、今年2月に、競泳の池江瑠花子選手の白血病公表の時に、「金メダルがとれずにガッカリした」という一部が切り取られ、かんじんな彼が言いたかったであろう「病気のことなので、早く治療に専念していただいて、一日も早く元気な姿に戻ってもらいたい」という気配り溢れた言葉は隠されてしまったことは、気の毒でした。
これは発言全部を読めばわかることですが、メディアの安倍憎しの罠に「失言大臣」が自分で首を差し出してしまった結果になりました。
※「がっかり」だけではなかった 桜田五輪相発言
https://www.sankei.com/sports/news/190214/spo1902140029-n1.html
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190407-000005...
そして、先日の岩屋大臣は謝る必要がないところで謝ってしまい、こともあろうに宮古駐屯地という最前線基地において、弾薬庫と駐屯地を引き離すという愚挙にまで及びました。
この岩屋氏の場合も、桜田・塚田氏と同じく大臣としての説明能力の致命的不足です。
大臣は有事、つまり外国軍隊の侵略や、大震災、大規模事故の場合危機対応の指揮を執らねばなりません。
その時に、的確に言葉を選んで短い言葉で官僚を使えないようだと、いてもいなくてもいいような大震災時の民主党政権の大臣諸氏のような飾り物になってしまいます。
その意味で大臣は平時においても言葉で説明する能力を鍛え、その能力がない者には、当選回数が何回だろうと大臣職に就けるべきではないのです。
安倍さん、こんな人たちを大臣に就けたことを反省してください。
空自の最新鋭機が墜落し、現時点ではパイロットは見つかっていません。危険な夜間の訓練で、ミッション・アボート(mission abort 任務中止)を宣言した後の事故でした。
パイロットのご無事を心からお祈りいたします。事故原因については詳細が発表されていませんので、またわかりましたら記事にするかもしれません。
CNN https://www.cnn.co.jp/world/35135550.html
「三沢基地所属の航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35が太平洋上で消息を絶った件で、防衛省は10日、同機が墜落したと明らかにした。同機は9日、三沢基地から他のF35戦闘機3機とともに訓練飛行に出発したが、東約135キロの太平洋上で通信が途絶えた。防衛省によれば、10日午前、機体の残骸の一部が発見された。
捜索チームが尾翼の一部を回収した。日米が行方不明となったパイロットの捜索を続けている。
日本は昨年12月までにA型105機、B型42機の調達を決めた。不明機を含む三沢基地の十数機は先月末に運用を開始したばかりだった。
昨年9月には米海兵隊のF35Bがサウスカロライナ州で墜落した。米国防当局は燃料管の不具合が原因との見方を示し、F35の運用を一時的に停止して検査を実施した」(CNN4月10日)
また、大規模な捜索を日米が連携しておこなっています。グアムのB52までが捜索に加わったのには驚きました。
これはB52が暗視能力のあるAN/AAQ-33スナイパーポッドを装備しているからと、夜間長時間の捜索が可能だからです。
「今回墜落したF-35Aは、アメリカ国外で組み立てられた機体で初めて墜落した機体でもあるため、原因追求のために日米はなんとしても機体を発見、回収したいのが本音でしょう。実際、米軍も捜索に艦艇や航空機を投入しており、過去の自衛隊機墜落でここまで米軍が捜索に加わったのは記憶にありません」(石動 竜仁)
https://news.yahoo.co.jp/byline/dragoner/20190411-00121862/
落ちたのは三沢基地の東約135キロのEEZで、相当に深い深度に沈んだと思われます。回収は難航するでしょうが、空自は意地でも引き上げをするでしょう。
「空自によると、機体は水深約1500メートルに沈んでいる。引き揚げは難航が予想され、回収できたとしても、機体の部位によっては保全上、公表されない可能性もある。米軍は三沢基地の哨戒機P8ポセイドンと横須賀基地(神奈川県)配備のイージス艦「ステザム」を現場に派遣し、捜索に協力している。墜落現場付近にロシアや中国の軍用機や艦船が接近しないか警戒する目的もあるとみられる。」(時事4月12日)
危惧としては、ロシアや中国がサルベージして最新鋭機の機密を調べることですが、「今回のF-35Aは海に墜落したとみられていますが、その場合は衝撃かショートによって電源が絶たれるでしょうから、既に機体から重要なソフトウェアは消えている」と思われます。(石動前掲)
さて、いくつかの疑問について考えてみましょう。
ひとつは当然この事故がどうして起きたのかということでしょうか、なんとも言えません。情報が不足しているからです。
考えられる可能性としては、空間識失調(バーティゴ)をパイロットが起こしたのではないかという説です。
このF35の訓練に3機が出たという報道がありますから、おそらくなんらかの夜間における空中戦の訓練をしていたものだと推定されます。
きわめて危険な訓練です。
なぜなら、パイロットは水平線が見えない状況、言い換えれは、昼と違って空と陸の区別が突かない漆黒の闇の中を飛んでいるからです。
その場合、パイロットは視界情報がないわけですから、身体の感覚と実際の姿勢が乖離したままになることがあります。
空間識失調 - Wikipedia
この現象は濃霧などの悪天候や夜間に起きます。
去年2月には、浜松基地の救難ヘリが空間識失調と思われる原因で墜落しました。
「航空自衛隊浜松基地(浜松市)の沖合で2017年10月、空自のUH60J救難ヘリコプターが墜落し4人が死亡した事故について、空自は機長が機体の態勢を正しく把握できなくなる「空間識失調」に陥ったことが原因とする調査結果を公表した。
空自によると、事故機は離陸から約10分後、異常な速さで降下を始め、約45秒後に墜落した。この間、墜落回避の操作は一度も行われていなかった。
空自は機長が空間識失調に陥ったと推定。高度が低いことを伝える警報音に対応できなかったことや、高度計などを十分に確認していなかったことが原因と判断した。(日経2018年2月18日)
また夜間には、星空と地上の光源の違いがわからずに、気がついてみたら背面飛行していたり、上昇するつもりで降下してしまうことがあります。
http://pilot-sunaga.com/post-1842
浜松の救難ヘリのパイロットはレスキュー・パイロットとして十分にベテランでしたし、今回のF35事故のパイロットも全国の空自から選抜されて新鋭機を任され、今回も編隊長を努めていました。
レスキューパイロットは、ヘリパイロットで最高の腕と経験が備わっていないと任されませんし、今回のF35パイロットも40代の三佐で「飛行時間約3200時間のベテラン、F35の飛行時間は約60時間」(時事前掲)でしたから、共に教官クラスの腕だったはずです。
それでもなお、事故はあり得るのです。
なぜなら、戦闘機パイロットはぎりぎりまで機体の性能を絞り出すような訓練をしないと、実際の役には立たないからです。
夜間だからといって外国軍隊が来ないということはありません。
だからいついかなる状況が起きようと日本を守るために万全を尽くさねばなりません。
そのために自衛隊はあるわけです。
かつて空自のF15Jのパイロットだった人は、このように今回の事故について述べています。
「航空機はどうしても事故が起きるのです それは自動車や電車等と同じ だから事故を起こさないようにみんなが最善の努力をする 戦闘機はより厳しい環境で性能範囲ぎりぎりで飛行する事もある だからパイロットは訓練し、自身の技量や機体不具合には非常に敏感 完璧な機械は存在しないと思っています」
https://twitter.com/FlyTanuki
先日にも書きましたが事故は起こり得ます。だから機体の整備を万全に整える努力をするし、パイロットも高い技量を要求されます。
しかし、それでもなお防ぎようがない事故が起きたとしても、地上への被害がない海上で訓練を行っているわけです。
またよくある誤解に、F35はスティルス戦闘機だからレーダーに写らないから、そんなものが飛んでいたら民間航空機が危険だというも気がありますが、間違いです。
F35は通常の訓練やスクランブル時には、あえて3箇所にレーダー反射板をつけて「見える」ようにしています。
https://twitter.com/masa_0083
メディアや一部団体はこの事故でF35に「危険機」というレッテルを貼ると思われますが、冷静になってパイロットの消息と事故報告を待つべきです。
ああ、やっぱりね、というかんじです。
いえ、先日、私が多少の期待を込めて記事にしたデニー知事の「 万国津梁(ばんこくしんりょう)会議」の詳細がわかってきました。
法的権限がないアドバイザー会議な以上、その選ばれるメンバーで初めから答えまで決まってしまいます。
よく官庁がやる民間有識者会議という手法で、メンバー選定は用意された答えを言うに決まっている「識者」が選ばれ、会議ともなれば官僚が「皆様、こちらに資料をご用意してございます」とか言いながらペーパーを配り、筋書き通り進行させ、決まりきった答えに落していきます。
やるだけ無駄な飾り物にすぎませんが、とまれこれで「民間の意見も聞きましたよ」という言い訳にすることができます。
これとまったく同質なものがこの万国津梁会議なようで、前回評価したことをお詫びして訂正いたします。
まずはどのような「方針転換」があったのかですが、沖タイはこのように報じています。
「名護市辺野古での埋め立て工事が進む中、県は4月に設置する万国津梁会議で、安全保障や外交、沖縄の戦後史の専門家からの意見を集約し、「辺野古が唯一の解決策」と繰り返す政府の方針を覆したい考えだ。理論の構築を急ぎ、日米両政府との協議開始を目指している」(3月27日)
デニー知事の触れ込みでは、この万国津梁会議に沖縄戦後史の識者を呼ぶまではいつもの平常飛行ですか、これに安全保障問題の専門家を加えるとのことでした。
「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、沖縄県の玉城デニー知事は、新年度から辺野古移設に代わる案の検討を始める。県政課題に関する諮問会議の中で、政府OBら専門家に協議してもらう。『代替案は政府が考えるもの』としていた前県政の方針を転換する」(朝日3月24日)
この朝日の記事を読むと「政府のOB」が顔を出しています。ここが匂うところです。
今まで沖縄の移設問題絡みで発言していた「政府OB」は、守屋武昌元防衛省事務次官と孫崎享氏くらいしか思い浮かばなかったからです。
孫゙崎氏は左翼言論人として鳩山内閣の外交ブレーンをしていました。当時、元朝日の「軍事専門家」の田岡俊次氏と一緒に、九州大村基地への移設を進言したこともあります。
日刊ゲンダイ
さて、朝日はこの記事の中で、もうひとりの「元政府関係者」と並んで万国津梁会議のメンバーを明らかにしています。
「メンバーには、これまで移設問題について意見を聴いてきたジョージ・ワシントン大のマイク・モチヅキ氏のほか、防衛省OBで元内閣官房副長官補の柳沢協二氏、元外務省国際局長の孫崎享氏らを起用する方向で調整。すでに一部からは了承を得たという。
普天間飛行場の移設先について、玉城知事は県外の立場で、知事就任前の昨年9月には『ぶれたことはない』と述べている」(朝日前掲)
ここで孫崎氏と並んで登場する柳沢協二氏は元内閣副官房長官補でした。柳沢氏は防衛官僚でしたが、退職後は孫崎氏と似た左翼スタンスで発言を続けています。
両氏とも政府に対する影響力は皆無で、むしろ元高級官僚として発言されることを政府は迷惑と思っている人たちです。
朝日新聞」2013年8月30日
マイク・モチヅキ氏の名も出てきますが、小川和久氏は「人物はいいが軍事知識はまったくない」とバッサリです。
ここにひとつの団体が浮上します。自身も移設問題に深く関わった小川和久氏はこう述べています。
「この顔ぶれを見たとき、私の頭に「新外交イニシアチブ(ND)」という組織を率いる猿田佐世さんという女性弁護士の存在が浮かびました」(小川和久『NEWSを疑え!』第759号(2019年4月1日特別号)
この「新外交イニシャチブ」がいかなる組織かは、その評議員の顔ぶれを見ればわかります。なかなかの陣容ですよ。
ND評議員http://www.nd-initiative.org/members/
柳沢氏は評議員、孫崎氏はNDと強い関わりを持っていたことは知られています。
小川氏もため息まじりにこう評しています。
「NDの評議員は鳥越俊太郎(ジャーナリスト)、藤原帰一(東大教授)、マイク・モチヅキ(ジョージ・ワシントン大学教授)、山口二郎(法政大学教授)、柳澤協二(元内閣官房副長官補)、屋良朝博(元沖縄タイムス論説委員)と、リベラルというか、左派というか、そちらの方の皆さんです」(小川前掲)
このNDが移設問題でなにをデニー知事に進言するか、考えないでもわかりますが、実はこのNDは既にデニー知事のブレーンとして訪米をセッティングするなどした事実上のデニー・チームとして機能しているようです。
「このNDの代表の猿田は、前掲のこの猿田さんは自分のブログに「私は本年(2018年)、鳩山由紀夫元首相や枝野幸男立憲民主党代表の訪米を企画・同行した」と記しているのですが、同じように昨年11月の玉城知事の初訪米にも同じ役割を果たしたとみられています。
そして、初訪米した玉城知事が会ったのはモチヅキ氏ら、仲井真知事、翁長知事の時代を通じて沖縄側が「米国の有識者」として頼りにしてきた顔ぶれだけだったのです」(小川前掲)
猿田氏は弁護士業界の望月イソ子氏のような人で、沖縄問題でもよく発言しています。ちなみにハンストで一躍有名になった元山仁士郎くんは、このNDのスタッフです。
政党が裏にいるかどうか知りませんが、左翼のフロント団体であることが濃厚な団体がこのNDのようです。
沖タイ2018年11月2日
猿田氏をデニー氏に引き合わせたのは琉球新報元論説委員長の前泊博盛氏だと小川氏は見ています。
「その背後でモチヅキさんたちに意見を求めるべきだと、玉城知事に助言した「ブレーン」がいることは知っておいたほうがよいと思います。
元琉球新報論説委員長で、現在は沖縄国際大学で教授をしている前泊博盛さんです」(小川前掲)
やはりこの人の名がでましたか。沖縄で数少ない「軍事問題専門家」にして、元琉球新報論説委員長。今はデニー知事の「軍事問題」ブレーンです。
彼の立場はあえて説明するまでもないでしょう。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-25e0.html
このように見て来ると、万国津梁会議が何を議論し、何を知事に進言するのか初めから決められていることがわかります。
それは県外、おそらく九州大村基地を候補に挙げ、さらに米海兵隊は抑止にならないなどと、専門用語を散りばめた報告書を出してくることは明らかです。
そして、政府からはいまさら寝言を言うな、大村案などとうに検討済だと一蹴されることは必至ですが、それでもデニー知事だけは対案を出したと得意気に鼻を高くするという仕掛けです。
こういう行いをアリバイ工作と呼びます。
東京新聞によると統一地方選挙前半は、自民が惨敗したそうです。
「第十九回統一地方選は七日、前半戦の十一道府県知事選、六政令市長選、四十一道府県議選、十七政令市議選の投開票が行われた。大阪都構想を巡る大阪府、市のダブル首長選はいずれも、地域政党・大阪維新の会の公認候補が自民党推薦候補を破って初当選した。保守分裂となった四県知事選のうち、福岡、島根両県で自民推薦候補が敗れた。
自民は知事選で三敗、政令市長選で一敗となった。保守分裂の相模原市長選では野党系候補が勝利した」(4月8日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201904/CK2019040802100013.html
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/2...
まぁ確かに自民は大阪と福岡、 島根 で落としていますね。
ただこれが東京新聞が欣喜雀躍するような、「自民敗北あいつぐ」といった中身かといえばハテナがつきます。
今回はある意味で勝つべく戦った政党が勝ち、負けるのがわかりきった路線を選択した政党が負けるべくして負けたという分かりやすい選挙だったと思います。
自民は負けて当然の2つと、竹下派の根城の島根を落としました。
一方、ある意味でこの統一地方選の影のキイパーソンだった共産党は惨敗しました。
結論からいえば、負けたのは麻生氏と共産党、そして小澤一郎氏です。
福岡は麻生さんの老醜による自滅で、勝った側も自民系ですから、麻生さんの政治生命の導火線が短くなっただけのことです。
2016年の衆院福岡6区補欠選挙の後遺症だといいますが、県連会長の座もからんで、よくある地方自民党が起こすポストと利権の争いによる内紛です。麻生氏はかつて自分が推した(笑)小川洋氏が貰えるはずだった自民公認を、自分が推す新人武内和久氏を公認しなければ副総理を辞めると中央選対と官邸を脅迫したのだとか。もう、馬鹿丸出しですね。
これで武内氏が勝っていたら、逆に麻生氏の横車が通るような世も末の選挙だったということになってしまいました。
島根知事選に勝利した丸山達也氏
https://www.sankei.com/politics/news/190226/plt1902260050-n1.html
島根もまたひとりの老害が寂しく敗北を迎えました。
かつては「参院のドン」と呼ばれて権勢を誇った青木幹雄氏の竹下王国の崩壊です。
青木氏は引退しながらも、総裁選で強引に旧竹下派を石破支持に一本化させた人物ですが、今回県議 の実に6割に離反されました。
「島根県知事選は、自民党島根県連所属の国会議員5人全員が支援した同党推薦の大庭誠司氏が敗れた。島根の自民党県議(22人)のうち、6割超の14人が国会議員に反旗を翻し、勝利した丸山達也氏を支援した。島根は竹下登元首相や青木幹雄元参院議員会長が築いた「竹下・青木王国」。有力な国会議員を頂点に地方議員が連なる王国のピラミッド構造は崩れた」(産経2月26日)
https://www.sankei.com/politics/news/190226/plt1902260050-n1.html
利権配分とポスト配りで栄えた経世会の残照のような島根県にも、その日没の時が来たようです。
石破氏にとっても、唯一のまとまった票田が旧竹下派だっただけに痛い結果となりました。
というわけで島根も自民が落したとはいえますが、内実は自民系が押さえています。
一方、共産党と小澤一郎氏が主導する全野党共闘路線の破綻が顕著に現れたのが、北海道知事選です。
「自民党、公明党、地域政党の新党大地が推薦した元夕張市長の鈴木直道氏が、立憲民主党、国民民主党、共産党、自由党、社民党が推薦した元衆議院議員の石川氏を抑え、初めての当選を果たしました。
鈴木氏は埼玉県出身の38歳。東京都庁に入り、財政破綻した夕張市に応援職員として派遣されたあと、平成23年の夕張市長選挙に当選し、市長を2期務めました」(NHK4月8日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190407/k10011876161000.html
この北海道知事選がもたらす影響は大きいと思われます。なにせ、ダブルスコアですからね。
その理由は後に述べる大阪の首長選挙とも共通するのですが、共産党と小澤一郎氏が軸になって進めてきた全野党共闘路線が完全に終焉を迎えたことです。
共産党小池さんの敗軍の将の辞です。
「共産 小池書記局長「野党共闘 非常によかっただけに残念」
北海道知事選挙で石川候補を推薦した共産党の小池書記局長は記者団に対し、「野党の共闘自体は各党がリスペクトしあい、非常によかっただけに、結果が残念だ。候補者の発表が出遅れた面があるのではないか。これを教訓として、参議院選挙の1人区の候補者の擁立を急いでやらなければいけない」と述べました」(NHK前掲)
ほー、共産党は「参院選は1人区の擁立を急ぐ」ですか。また死に票の山を築くおつもりでしょうか。
全国の幹部党員に因果を含めて、自腹を切って立候補させては枕を並べて討ち死にさせ、あげくは供託金没収、一家離散。
そして下部党員の屍の山の上に、比例でボスの志位さんを国会に送り込んできた路線に逆戻りということのようです。やれやれ。
一方、全野党共闘のもう一方の旗頭だった元小澤一郎氏の秘書が北海道知事候補の石川知裕氏でした。
石川氏は、小澤氏の新党ころがしによるマネービルトの裏の裏まで知り尽くした人物で、資金運営団体「陸山会」の巨額政治資金規制法違反を問われて、最高裁で有罪が確定したような人物です。
こんな小澤金権政治の下回りのような男に相乗りせねばならない野党も野党です。貧すれば鈍するというやつでしょうか。
ところで負けて当然なことをして、やっぱり負けたのが大阪の自民府連です。
自民大阪府連の敗因は、自民党支持層の投票先をみればわかります。ひとことで言えば、共産党とつるむような「保守党」は愛想を尽かされただけのことです。
「毎日新聞は7日、大阪ダブル選の投票を終えた有権者を対象に出口調査を行い、投票行動を分析した。地域政党・大阪維新の会の支持層のほとんどが、知事選では吉村洋文氏、市長選では松井一郎氏に投票したのに対し、自民推薦、公明府本部推薦の知事候補、小西禎一氏に投票した自民支持層は4割、市長候補の柳本顕氏では5割にとどまった。支持政党は維新が3割超、自民は2割半ばあり、支持層を固めたかどうかが勝敗を分けた」(毎日4月7日)
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190407/k00/00m/010/134000c
毎日新聞
自民支持層が投票したのは、大阪府知事でぴった50対50で半分維新に持っていかれ、市長では56対44で維新に勝ちを譲ってしまっています。
これは維新がもはや色物の一発屋政党ではなく、都市型第三極に定着したことを示していますが、合わせて行われた大阪府議会選挙では過半数を制したものの、大阪市議会では過半数割れをしました。
いつまでも利権にしがみついて、共産党とすら恥も外聞もなく「共闘」してしまうような自民党大阪府連に明日はないということを示しています。
下の写真は前回大阪府知事選で自民党の街宣車の上で演説する辻本のオバちゃんですが、今回もまたこの風景が再現されました。
前回も負け、今回もワンパターンで負けるというしょーもない、おもろない政党です、大阪府連は。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-f389.html
このように見てくると、今回の統一地方選で明らかになりつつあることは、「オール沖縄」を原型とする全野党共闘路線ではもはや勝てないということであり、共産党と野合する政党は、それが仮に政権与党であっても敗れるということでした。
そしてもう一点。自民党内老害グループの敗北でした。
元航海士さん。いつも鋭いコメントをありがとうございます。勉強をさせていただいております。
おっしゃるとおり中距離多目的誘導弾は、高機動車に搭載するコンパクトなものです。
中距離多目的誘導弾 - Wikipedia
高機動車に搭載された中距離多目的誘導弾 - Wikipedi
元航海士さんもご存じのように、自衛隊は駐屯地正面ゲートの警備隊員すら、銃は持っていても肝心な弾倉は持っていない丸腰です。
警護出動か防衛出動がなければ、原則として弾を持てないので、攻撃にさらされた場合、銃をこん棒として使うしかありません。
銃で反撃できるのは、後述しますが、緊急避難が認められた場合、すなわち撃たれた後のことです。
だからと言って、通常の駐屯地においては歩兵(普通科)の最大の武器の一つである迫撃砲弾や、上陸を阻止する切り札である中距離多目的誘導弾まで、駐屯地から離れた別の施設に入れていることはありえません。
今回の宮古駐屯地はそれをしてしまいました。
後述しますが、おっしゃるように事前に島内各地に展開といっても、このような反自衛隊感情を煽られては制限が強いでしょうし、そもそも防衛出動が命じられるのは、侵攻が実現した後のことです。
公海上に侵攻艦隊が止まっているかぎり防衛出動が出せない可能性がありますし、対空ミサイルに至っては領空外からスタンドオフで発射するでしょうから、相手方の爆弾やミサイルが着弾し、駐屯地に大きな打撃を与えるまで黙って見ているしかないでしょう。
迫撃砲の弾もなく、あるのは小銃弾だけで侵攻軍に対応しろというのは隊員に死ねというようなものです。
この日本の法体系による政治的不備を少しでも埋めるためには、防衛出動 を速やかに出さねばならないのはむろんですが、弾薬・ミサイルなどを手元の駐屯地敷地内の保管庫に置いて、自衛隊法84条「正当防衛、または緊急避難による武器対処」※が発令されれば直ちに即応せねばなりません。
その時になって慌てて取りに行っては遅すぎるのです。
※「自衛隊員に認められた武器使用」http://www.asagumo-news.com/techou-pc2019/bukishiyou/bukishiyou2013.html
中距離多目的誘導弾も一緒です。たぶん、自衛隊は初動において叩かれるだけ叩かれます。
抗堪性(※)が脆弱な自衛隊基地は第1撃で壊滅状態になる可能性もありえます。
※ 抗堪性・ 軍事施設が、敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力
叩かれた後にやっと武器対処が可能なのがわが国だからです。
おそらく部隊長が超法規的判断で、弾薬庫までミサイルを取りにいって高機動車に詰んでおかなければ、おっしゃるような島内各地に展開するのはミサイルを積まない空の車両となってしまいます。
これが合法的に可能になるのは、自衛隊法第91条の2第2項の「警護出動」が出た後のことです。
「警護出動を命ぜられた自衛官の職務の執行について、準用する警察官職務執行法第7条の規定により武器を使用する場合のほか、職務上警護する施設が大規模な破壊に至るおそれのある侵害を受ける明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを排除する適当な手段がないと認める相当の理由がある場合、その事態に応じて合理的に必要と判断される限度での武器の使用を規定」(前掲)
ここまではあくまでも準備段階にすぎません。本格的に防衛するためには、「自衛隊が我が国を防衛するため、必要な武力を行使できる」必要があります。それができるのは、自衛隊法第88条第1項の「防衛出動」が発動された後のことです。
これを発動できるのは政府であって、自動的にその出動段階に移行するわけではありません。「高度な政治的判断」が要るのです。
今回ならルートとしては岩屋大臣が判断して、更に官邸にあげてNSCで判断するはずです。
岩屋大臣なら、現場部隊から早く警護出動を認めて欲しいという要請があっても、「まだその時ではない」ということを言い出しかねません。
なぜなら第91条が規定する、「職務上警護する施設が大規模な破壊に至るおそれのある侵害を受ける明白な危険」はどうにでも判断できるファジーなものだからです。
公海上に中国艦隊がいても「これは通常訓練である」と通知されれば、それを信じるか否かはひとえに「政治的判断」なのです。
ですから、ただ公海上に艦船が存在する、あるいは領空すれすれに航空機がいるというだけの場合、警護出動はでにくいでしょう。
今回のケースをみれば、出動命令の初発の位置にいる岩谷大臣は、沖縄の反基地感情に慮って極端に腰が引けた対応をするようなきがします。
立民なら絶望的でしょうし、自民にすら親中政治家は掃いて捨てるほどいますから(現職幹事長からしてそうですが)、中国を配慮して決断がグズグズになることは大いにありえます。
したがって私は、元航海士さんのおっしゃるように、「中距離多目的誘導弾の短い射程に敵が入る前に、島内の必要な場所に展開して迎撃態勢を整えることは問題なく行える」とは思えません。
また法体系上の縛りだけではありません。法体系外の要素が沖縄には強固に存在するからです。
元航海士さんには誤解がおありのようですが、高機動車に載せていようとなかろうと、どこにでも自由に発射装置を据えることはできません。
必ず、防衛省が買収して取得した土地か、何らかの契約を結んだ土地にしか展開できないのです。
あらかじめ対艦ミサイル部隊を分散して展開をするための用地買収がどれほど進んでいるかわかりませんが、駐屯地用地を売った牧場がそうであったように反対派からのいやがらせを受ける険しい道なはずです。
一方、本島の沖タイや琉新、あるいは朝日・毎日・東京はこれを「安倍政権の戦争準備」として激しく攻撃するはずです。
なぜなら、彼らにとって中国は友邦であって、攻めてくるはずがない国で、アジアの緊張はひとえに日米安保が作り出していると考えているからです。
琉球新報富田詢一社長 財界さっぽろ
琉球新報・富田詢一社長の発言です。
「仮想の敵をつくっては軍備を強化する。では実際の敵はどこにいるんだというと答えられない。参議院の議論では中国の名前が出てきましたが、中国だって国連安全保障理事国ですよ。他国をいきなり侵略するなどということは、あり得ないでしょう。(略)
1カ月ほど前に中国の駐日大使、程永華さんと話す機会があって、沖縄が独立したら中国は侵攻してくるのかと聞いたんです。すると程さんは、中国の何千年という歴史の中で他国を植民地化したことはないというお話をされました」(財界さっぽろ)
富田氏はジャーナリストでありながら、世界の緊張を強めているのが、ロシアのクリミア・ウクライナ侵略であり、南シナ海の中国軍事基地化だと知らないようです。はて、この二国は私の記憶が正しいならば、国連安保理の常任理事国じゃなかったでしたっけ。
「中国は他国を植民地したことがない」とはよく言ったものです。チベットは独立国でしたし、ウイグルは独立国を持った民族でしたが、あれは私の眼の錯覚でしょうか。
それにしても中国大使に、「沖縄が独立したら侵攻するか」などという誘い水のような仮定質問をするのですから、きっと琉球新報は「独立」した暁には侵略してほしいのかもしれませんね。
https://www.gettyimages.co.jp/%E5%86%99%E7%9C%9F/2...
中国の南シナ海軍事基地 ロイター
このようなメディアによる世論操作を受けて、分散展開用地に至る道路は、高江のケースでいえば激しい反対派の「検問」と阻止にさらされる能性があります。
「おっさんひとりめし」様より引用させていただきました。ありがとうございます。http://ossanhitorimeshi.net/?p=29961
高江のケースでいえば、沖縄県警は上司であるデニー知事に「忖度」して排除しないでしょうから、こんな状況が長期化し膠着する可能性があります。
この空隙を中国が利用しないと考えるほうが楽観的です。
このように初めからハンディと制約だらけの宮古警備隊にいっそう足かせを重くして、抑止の役に立てなくしかねないのが、今回の岩屋大臣の処置でした。
私が強調したいのは、小川和久氏がいう「平時の戦い」のことです。
「防衛省・自衛隊は、国民を納得させるだけの説明能力を備えることこそ、平時に最優先しなければならない任務であることを理解し、説明能力を磨く取り組みを始めて欲しいと思います。「平時の戦い」を軽視した先にあるのは、愚かで悲惨な戦争だと肝に銘ずべきです」(『NEWSを疑え!』第760号(2019年4月4日号)
なお、駐屯地が発足して式典があリましたが、朝日は嬉しげに「岩屋防衛相、宮古島で謝罪 砲弾搬入、抗議の声やまず」と伝えています。
※追記、入稿と入れ違いにKYさんから新しいコメントを貰っていますが、リンクは貼っていませんが?
「自称市民のスパイ活動」と、私が論じていることは別次元です。
そういうことがあればなおさら、岩屋さんは毅然としていなければなりません。
スパイ活動の疑いがあったからといって、計画を白紙にして防衛力を落とすのは問題です。
なお、他のネットがなんと言っているか知りませんが、まったく私の記事と無関係です。付和雷同という決めつけは不愉快です。
岩屋大臣が困った決定をしてくれました。
まずはそれを報じる毎日です。
「先月26日に新設された陸上自衛隊宮古島駐屯地(沖縄県宮古島市)に、事前に地元への具体的な説明がなかった多目的誘導弾や迫撃砲弾が搬入されていたことが判明した。岩屋毅防衛相は2日の記者会見で「説明が不十分だった。おわび申し上げたい」と謝罪し、弾薬を一時的に島外に搬出する考えを示した。
宮古島では島中央部のゴルフ場跡地に駐屯地が設けられ、警備部隊が配備された。島東部の保良(ぼら)地区に弾薬庫や射場を整備した上で地対艦、対空ミサイル部隊も配備する計画になっている。
防衛省は駐屯地について「警備に必要な小銃弾や発煙弾などを保管する」としか住民に説明していなかった。しかし、実際には対小型船舶や対戦車用のミサイルである中距離多目的誘導弾や迫撃砲弾も配備されたことが地元紙の報道などで判明。住民から反発の声が上がっていた。
防衛省幹部は「『など』の中に警備部隊の通常装備である多目的誘導弾なども含まれると考えていたが、明示的には説明していなかった」と釈明。誘導弾や迫撃砲弾は、島東部の弾薬庫が整備された後に改めて島内に搬入し、地対艦、対空ミサイルと合わせて保管するという」(毎日4月3日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190403-00000000-mai-soci
この毎日の記事では、防衛省が住民を騙して中距離多目的誘導弾や迫撃砲弾を配備したことが問題だといわんばかりです
おそらくこの「住民」とは、いわゆる「市民団体」と称する反基地派の運動団体だと容易に想像がつきます。
琉球弧の軍事基地化に反対するネットワーク より引用
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/
ちなみにこの「保管庫は弾薬庫だった」と大騒ぎを演じたのは、反対運動サイトによればあの東京新聞の望月イソコ女史だそうです。
本土紙の「衝撃の暴露」を受けて沖縄地元紙が騒ぎ、運動団体が抗議し、それをまた本土メディアが「地元怒りの声」と報じるというループ構造です。
オスプレイの時も同じ構造でした。
上写真と同じサイトより引用
「明示的に説明を受けていない」というのは、言いがかりに等しいもので、そもそもこの陸自の宮古駐屯地の設置目的は地対艦・地対空ミサイルの基地であることは再三再四に渡って政府から「明示」されていたはずです。
その設置目的のミサイルを搬入することが、「明示されていないから」といって騒ぐほうの神経のほうがおかしいのです。
これではたとえば航空基地に航空機を搬入したら「明示」項目になかったからといって騒ぐようなものです。
対艦ミサイル基地にミサイルが貯蔵されるのはあたりまえすぎて常識以前のことです。
だから自衛隊が「など」としたのはあたり前で、整備用スパナ何個、脚立何個とまで書き出せばコノヒトたちは満足するのでしょうか。
いや、満足しません。なぜならこの団体は自衛隊駐屯地の設置に、いや自衛隊そのものに反対だからです。
こういう言いがかりがあたりまえに通って、抗議さえすれば自分たちの目的を国に強制できるとわかってしまったのですから、やがて国はトラブル回避のために情報を開示しなくなるかもしれません。
このような団体がこんなことを言うのは平常運転で、自衛隊や米軍が何をしようと必ずディスりにきます。
今回問題にしたいのは、むしろそれに対応した岩屋大臣の側です。
岩屋大臣はこともあろうに、駐屯地と弾薬庫を別に設置すると言い出しました。軍事的うんぬんというより、非常識もいいところです。
結果、このような馬鹿げたことになりました。
「防衛省は今後、島内で駐屯地とは別の場所に、今年度末にも配備される地対空・地対艦ミサイル部隊の弾薬庫を建設する予定。完成し次第、島外に撤去した迫撃砲などの弾薬も保管する方針だ。ただ、使用する警備部隊との間に距離が生じることから、初動対処の任務に影響が生じることは避けられない。」(産経4月2日)https://www.sankei.com/politics/news/190402/plt1904020029-n1.html
岩屋防衛大臣 当該の記者会見とは違います。https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2019/02/05a.ht...
それはそうです、弾薬やミサイルを置かない基地、いざ有事となれば遠くの弾薬庫までミサイルや迫撃砲などの武器を取りにいかねばならない「ミサイル基地」。間違いなく世界で唯一の軍事施設でしょうな。
考えるまでもなく、確実に初動が大幅に遅れることが分かりきっています。あたふたと遠く離れた弾薬庫に肝心のミサイルを取りに言っている間に占領されてしまっているかもしれません。
呆れてものが言えません。さきほどの航空基地でいえは、スクランブルごとに飛行機を遠くの駐機場に取りにいかねばならない航空基地を作ってしまったというわけです。
この岩屋大臣という人は、この宮古島になぜ陸自の駐屯地を設置するのかその目的を分かっていてこんな決定をしたのでしょうか。
分かってやっていたなら防衛大臣として異常、分かっていなかったらただの馬鹿です。
そもそも、この陸自宮古駐屯地は、南西諸島というあまりに長い「防衛の空白」を埋めるためのささやかな一石でした。
この防衛の真空地帯は九州南端から与那国まで続き、その距離は実に本州と同じ距離に及びます。
何度か書いてきていますが、この南西諸島のラインは中国の第1列島線と平行しており、宮古海峡は中国艦隊・空軍の太平洋への出口に当たっています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-4c8e.html
それは中国軍の動向をみればわかります。すべてが宮古海峡に集中しているのがわかるはずです。
黄色の矢印で示されているのが、中国海軍のメーンルートで、空軍のルートも同様です。
この間に唯一防衛拠点としてあるのは那覇だけで、それ以外まったく手つかずでした。
これでは政府が沖縄県の防衛を放棄したと批判を受けても頷かざるを得ません。
政府は沖縄の反基地感情を刺激したくないからというだけの理由で、腰が引けた態度を続けていました。
その裏には、米海兵隊が居てくれるさというあなた任せの本心があったからです。
米軍はいつ何どき世界情勢の変化で撤収するかもわからないのに、国民の生命財産を守ることが責務の国としては、あまりにも恥ずかしいかぎりです。
県民はこのことをもっと怒っていいのです。
産経
さて「ミサイル」と聞いただけで、北朝鮮のノドンなどを連想する人もいるでしょうが、ミサイルの種類が違います。
この宮古駐屯地に配備される対艦ミサイルは、尖閣を含む先島諸島に武装集団が進入した場合に、外国の侵攻軍を載せた侵攻艦艇を迎撃して押し返すためのものです。
いうまでもなく他国を攻撃するためのものでないことは、その射程距離を見ればわかることで、純粋に防衛目的のものです。
このような抑止力を宮古に持つことで、侵略しようとする気持を外国に持たせないことができます。
このような重要な防衛拠点に、その抑止力の中核を担う対艦ミサイルや対空ミサイルを置けないということはありえないことです。
このような地元団体の抗議に対して、十分にその設置目的を説明する能力を持つことが防衛大臣の資質のはずではないでしょうか。
これができないでズルズルとこんな言いがかりに屈してしまうような人物は、防衛大臣としての適格性に欠けます。小野寺氏に替えるべきです。
論評する気にもなれない(といってもするけど)馬鹿なことが、同時期にふたつ起きました。
ひとつはオスプレイのダイバート(緊急着陸)に近隣10市の大阪空港周辺都市対策協議会が抗議したということ、そしてもうひとつは岩屋防衛大臣の宮古島駐屯地についての愚か極まる謝罪と措置です。
時系列の順にオフプレイのほうからいきます。
「米軍の輸送機MV22オスプレイが大阪(伊丹)空港に緊急着陸したことを受け、同空港の周辺市でつくる大阪国際空港周辺都市対策協議会(10市協)は2日、着陸を許可した国土交通省と防衛省、同空港を運営する関西エアポートに抗議文を提出した。10市協は緊急着陸した1日、関係機関に対し、情報提供の遅れを「遺憾」とコメントしていた。
抗議文は、10市協会長の藤原保幸兵庫県伊丹市長名で提出。市街地に位置し、安全への配慮が特に求められる空港にもかかわらず、着陸を許可した国交省に疑問を呈した」(神戸新聞4月2日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190402-00000015-kobenext-l28
神戸新聞前掲
周辺10市協議会の抗議は理不尽です。
なぜなら、航空機という機械は、軍用であるか民間であるかに関わらず、「常に非常事態がありえる」からです。
ちょっと考えてみればおわかりでしょう。故障のない機械などはこの世に存在しません。
機械は壊れる可能性があるのを前提にしてして作られています。だからあなたが使っている目覚まし時計ですら保証書がついていて、いったん壊れた場合には一定期間内はメーカーが修理する義務を負っています。
軍用機も同じです。そのリスクを最大限まで減らす努力をし、にもかかわらず事故が起きることが予測された場合、次善の対策をとります。
それが緊急着陸、あるいは予防着陸、ダイバートと呼ばれる処置です。
時事https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180108-00000034-jij-soci
沖縄では一時頻繁にヘリの緊急着陸が起きたことがあります。たとえば2018年1月にはAH-1Zヴァイパー が緊急着陸しています。
この時の読谷の村長の発言です。
「読谷村の石嶺伝実村長は現場を視察した後、記者団に「極めて異常な状況が沖縄で起こっている」と指摘。「ここは日本国かという感じだ。米軍の占領地ではない」と訴え、原因究明までの全航空機の運用停止を求めた」(時事1月8日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180108-00000034-jij-soci
石嶺さん、大阪でオスプレイがおなじような緊急着陸をしましたが、大阪もまた「日本ではなく占領地」なのでしょうか。こういう感情を煽る言い方は見る眼を曇らせますから、止めて下さい。
今回の大阪空港のオスプレイの緊急着陸も同じですが、おそらく当該機はEmergencyを宣言し、Maydayコールをして、付近に影響がでない場所を選んで着陸しています。
オスプレイの場合は滑走路がある民間空港でしたし、AH-1Zの場合は広い草地でした。
このようなエマジェンシー・コールをして緊急着陸することが、今回の大阪のように安全を脅かしたとしてが監督官庁までが非難されるならば、では協議会の皆さんは市街地に落ちたほうがよかったということでしょうか。
いや軍用機だからダメなんだというならば、民間空港には軍用機は緊急着陸をさせてはならないという航空法でもあるのでしょうか。
もしそんなものがあれば、軍用機は何時落ちるかもしれない機体を無理に引きずって自分の基地まで帰還せねばならなくなります。
そのほうが遥かに民間人に対して危険を及ぼす可能性があります。
途中で市街地に落ちるかもしれないし、むりやりに海まで引っ張って飛べば落ちる可能性が高まります。航空機パイロットにとってのエアマンシップは、民間人に被害をおよぼさないことが大前提だからです。
ですから事故や不具合が発生した場合、パイロットは緊急事態を宣言し、メイデイコールをします。
この宣言は、パイロットのみならず航空関係者にとって、最大の緊急度、優先度を有する言葉で、空港関係者は無条件に受け入れねばなりません。これが空港側のエアマンシップです。
ここに、軍用、民間、国籍の垣根は存在しません。人命が関わることだからです。
このように人命を損なわないための予防的着陸だから、別名を「予防着陸」とも言われているわけです。
逆に軍用飛行場も民間機の緊急着陸を拒否できません。
いや米軍機だからだというならば、緊急事態を宣言して着陸要請する機体に対して、仮に中国空軍機であろうとロシア空軍機であろうと、はたまたモロッコ空軍だろうと、空港側は拒否できません。(領空侵犯していれば話は複雑になりますが、基本は着陸を受け入れます)
緊急事態に、国籍・人種の壁を設けないのが世界共通のエアマンシップだからです。
またこういう事態が起きると、予防着陸のことを「墜落」と呼ぶ者がいます。米軍機の事故は大きなもののほうがありがたいと密かに願う人たちの表現ですが、どちらも概念の混乱です。
いい機会ですから、改めて整理しておきます。
・墜落・・・機体をコントロールできずに落下し、破損させた航空機の事故のこと
・緊急着陸・予防着陸・・・機体はコントロールされていて、航空機が目的地以外の場所に着陸すること
たぶん周辺自治体協の言い分は、当該機が「危険機」オスプレイだからということでしょうか、いい加減このオスプレイ・デマなどは払拭してほしいものですが、このことについてはかなりの本数記事にしていますから、そちらをご覧下さい。
関連記事「オスプレイは危険機か?」その1~その5
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-9b2e.html
かつて普天間基地のオスプレイのパイロットが沖縄メディアにガイダンスした時に、米軍が正直に「残念ながらこのような事故は完全には避けることはできない」と述べたことに関して、「事故を容認すると受け取れるような発言」と噛みついたことがあります。
このような沖タイの姿勢こそがリスクです。
なぜなら、運用側が「事故を容認する」もなにも、リスク管理というのは「事故を前提として容認する」ことから始まるからです。
沖タイは米軍に「事故は起こしてはならないから、絶対起きない。だから安全だ」と、かつての原発関係者のような精神論を言ってほしかったのでしょうか。
事故が起きませんようにと念仏を唱えていても起きる時には起きます。
運用側はその確率をかぎりなくゼロに近づけようと運用しているのであって、「事故は起こしていけないから起きない」わけではないのです。
仮に米軍が「事故は完全に避けられる。100%安全だ」と言ったなら、そのほうが嘘です。
嘘を言う言わないという倫理的問題ではなく、エンジニアなどの工学系関係者は、「100%安全」という言い方を絶対に避けます。
「事故は起こりうる」ということを前提にして発想しないと、事故対策そのものを工学的に構築し、それを運用できないからです。
「絶対安全」論と「ゼロリスク」論というのは、一見真逆に見えますが、ひとつのありえない確率「ゼロ仮定」から生えた二本の奇妙な樹のようなものです。
一方は「事故は起きるはずがない」と言い、方や「少しのリスクもあってはならない」としていても、発想の根は一緒で、ありえない「確率ゼロ」から発想している点で、兄弟のような発想方法なのです。
こんな根本的なことすら分からないで、オスプレイ危険説をまき散らし続けているメディアや、それに踊らされている地元自治体のほうが、世界的には珍しいのです。
またこういう米軍機の緊急着陸があると、必ず読谷村長のように米軍機全機種の飛行停止を言い出す人がいますが、ありえません。
米軍は事故が起きた場合、その程度に応じて同型機種の運用を停止したりする場合がありますが、航空機全部の飛行停止措置はありえません。
今回の事故は物損なし、人命に異常なしといった予防着陸レベルですから、通常なら同型機種ですら飛行停止されるかさえ微妙なレベルです。
このように航空法上なんの問題もないオスプレイの緊急着陸に対して、いちゃもんをつける周辺自治体協議会の対応はいかがなものでしょうか。
さてもう一点の岩屋防衛大臣の一件は、宮古島駐屯地から弾薬やミサイルを搬出したという一件ですが、氏の防衛大臣としての資質や適格性についてすら疑問符がつきかねない愚行でした。
こちらも長くなりそうですから明日に回します。
もう少し新元号について続けます。
今回の新元号に、もっとも関心を寄せていた国が二国ありました。
ひとつはいうまでもなく中国であり、いまひとつは台湾でした。共に世界でわずか三カ国になってしまった漢字文化圏の国々です。
まずは中国です。
「新しい元号を巡って中国メディアが当初の報道内容を修正し、「中国の影響を消し去れない」と伝えました。
中国共産党系の「環球時報」は当初、新しい元号「令和」がこれまでの元号と異なり、中国の古典ではなく万葉集に由来することに触れ、「初めての脱中国だ」と速報しました。しかし、1日午後になって「『令和』は中国の影響を消し去ることができない」と記事の内容を修正しました。「万葉集は中国の古典文学の影響を受けている」「中国の詩歌の素材や形式表現が参考にされている」などと指摘しています」(テレ朝4月1日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000151239.html
これは当初中国メディアが、新元号が国書を典拠としたことに対して「脱中国」と報じた訂正として発表されています。いじましいというか、失礼ですが笑っちゃいますね。
日本は195カ国に同時に通知しましたが、当初台湾はそれに含まれていないと言われてきましたが、イキな計らいというべきか、政府は官房長官の発表と同時に日本の対台湾窓口機関である日本台湾交流協会から台北駐日経済文化代表処に通知していました。
この台北駐日経済文化代表処は、事実上の台湾大使館ですので、日本は台湾をあえて差別しなかったことになります。
大変に結構なことです。
トランプ政権になって急速に台湾の位置づけを大きく変化させています。
これは沖縄の海兵隊を台湾に移動したらどうかと言っていたボルトンの影響もあるでしょうが、米国政府は最近になって、準軍事同盟である台湾関係法(TRA)を更に一歩進めました。
台湾関係法 - Wikipedia
従来から台湾関係法によって、国交関係は公式にはなくなったものの、中国が台湾を侵略した場合、台湾を防衛する義務を負うことを定めていましたし、現に中国が台湾の民主選挙を実力で妨害した時には、空母打撃群を台湾海峡に入れています。
トランプ政権は更に一歩進めて、北京の在中米大使館の実に10倍の面積を99年咀嚼してAIT(米国在台湾協会)を設置しました。
この広大な敷地面積は、中国が侵略の構えを見せた場合、「大使館」敷地内に海兵隊を一時駐屯させるためにも思えます。
台湾の蔡英文総統は日本に対して安保協議を打診しており、 私は離島防衛に大きな影響を持つ世界一の友邦国の安全保障に対して、日本版台湾関係法を作るべきだと考えています。
さて、中国の反応に話を戻します。
出典不明
この中国の「オレ様中国のおかげでしょう」論に呼応するように、岩波がツイーットでこんなことを載せて話題になりました。
「「新元号「令和」の出典、万葉集「初春の令月、気淑しく風和らぐ」ですが、『文選』の句を踏まえていることが、新日本古典文学大系『萬葉集(一)』https://www.iwanami.co.jp/book/b325128.html … の補注に指摘されています。
「「令月」は「仲春令月、時和し気清らかなり」(後漢・張衡「帰田賦・文選巻十五)」とある」
岩波書店ツイッート
中国が日本文化を隷属的に扱いたい、お前はいまだってオレの子分なんだという心理はよく理解でますが、だからナンだというのでしょうか。半分当たっているだけのことです。
いちおう、この変遷についてこのようなプロセスをたどったようですので、「週刊武春」サイトさんを引用させていただきます。
①張衡(ちょう こう)『帰田賦』→wikipedia
138年(後漢・安帝から順帝/永和3年)
↓
②王羲之(おう ぎし)『蘭亭序』→wikipedia
353年(東晋・穆帝/永和9年)
↓
③昭明太子(しょうめいたいし)編纂『文選』→wikipedia
6世紀前半(中国南北朝・南朝梁)
↓
④大伴家持『万葉集』→wikipedia
7世紀後半〜8世紀後半(日本)
↓
⑤2019年 新元号に採用」
https://bushoojapan.com/scandal/2019/04/03/122892
中国が言いたいことは、「新元号を国書に依拠したといいながら、なんだソースは中国だぜ。マネじゃないか。しょせんわが国の文化的属国であることには変わりはないんだ」というところでしょうか。
中国好き左翼の岩波がそれをフォローしたのは、いわばポジショントークです。
なるほど中国サイドから見ればその通りですが、そんなことは私たち日本人から言わせればただの文化の伝播にすぎません。
古代ギリシア・ローマを源泉とした西欧文明に対して、ギリシアが今になって「お前らに教えてやった」と言いだしたら滑稽ですね。
文化は必ず伝播し、その過程で変容していくものなのなのです。それは古今東西、よくあることで、今更恩きせがましく「お前の新元号はウチの国が出所だ」というのは野暮の極みです。
こんな古代のことで、21世紀にもなって「オレのおかげだ」というのは、中国と韓国くらいなものでしょう。
なるほど確かに、春の季語となっている韓国の染井吉野源流論とは違って一定の真実を含んでいます。
まちがいなく漢字は中国から取り入れたものです。昨日紹介した17条憲法も原文は漢文です。
ただし、ここからが大事なのですが、日本は漢字を受け入れ、更に発展させました。
それがカナ文字であり、ひらがなです。それも昨日今日の話ではなく、9世紀から11世紀のことです。
日本人はこの漢字・カナ・ひらがな、さらには明治以降はアルファベットまで組み入れて、日本文化を表現してきたわけです。
このように多様な表記で発信している言語は世界にも希有な存在で、それが故に日本語の習得が外国人には難しい原因ともなっています。
漢字は見ただけてデジタルに図形認識できるという特性があり、これをはずしては日本語は成立しません。
明治以降、日本が西欧近代をフォローアップしようと苦心惨憺したときには、既に漢文だけではまったく通用せず、そこにアルファベットをいれたり、外国語をカナに転換して対応しました。
ですから、明治期に日本人が頭をひねって漢字の術語(テクニカル・ターム)に翻訳した法律用語・制度用語・科学用語・経済用語・医学用語・スポーツ用語などは星の数ほどあります。
中国はそれをほぼ日本語どおり輸入しました。中国のこの分野の漢字の約7割は日本由来、言い換えれば「日本語」(和製漢語)です。
そもそも「中華人民共和国」は中華以外全部日本語ですし、中国共産党も共産党は日本語です(苦笑)。
おいおい、日本語使って国号や党の名まで作っておきながら、はるか大昔の9世紀前のことでとやかく言うなよと言いたくなります。
https://shokubutsuseikatsu.jp/article/column/p/315...
新元号「令和」は、8世紀前半に太宰府の大友旅人(いい名前だなぁ)の邸宅で開かれた「梅花の宴」で詠まれた32首の歌の序文から取られたことは知られています。
ではこの詠まれた大宰府はなにかといえば、中国との距離的関係から京と離れた場所に作った政府の出先機関でした。
ここが有名なのは、太宰府に左遷された菅原道真が祭られた太宰府天満宮があるからですが、道真を慕って京から飛んできたという飛梅は有名ですね。
http://www.pmiyazaki.com/kyusyu/dazaihu/ume.htm
道真は太宰府赴任にあたり、「東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅の花 主(あるじ)なしとて春な忘れそ(忘れるな)」という歌を詠んでいます。聞いたことがおありですね。
道真によって愛でられた梅の木は、太宰府に赴任した道真を慕って、京の邸宅から梅が飛んで来たという「飛梅」が有名です。上の写真で馥郁と咲き誇っているのが飛梅です。
そしてこの道真こそが894年に遣唐使を廃止した人物です。
日本はそれまで荒れる海を渡って中国に文化使節団を送って、中国の文化・制度・思想を吸収してきました。
日本から派遣された人々が運んだのは、金銀財宝ではなく仏典であり、漢書でした。
このようにいじましいばかりにして日本が、当時世界最先進国だった中国のそれをスポンジのように受け入れたことは事実です。
ちなみに朝鮮半島から文化を吸収した歴史はなく、あの場所は中国からの文化伝播のいちルートにすぎません。
韓国さん、ですから「コレも教えた、アレもルーツは韓国だ」なんて聞き苦しいですから言わないでくださいね。
それはさておきそれが終了したのが、この道真が遣唐使派遣の中止を決めた9世紀だったのです。
私は今回の新元号「令和」は、この歴史的事跡に思い致すような含意があると考えています。
おおむね新元号は好感をもって国民に迎えられたようです。
「新元号が「令和」と発表されたのを受けて、NNNと読売新聞が1日と2日に行った緊急世論調査で、「令和」に好感を持っていると答えた人は6割を上回った。緊急世論調査で、新しい元号「令和」に好感を持っているか尋ねたところ、「非常に持っている」が33%、「多少は持っている」が29%で、合わせて「好感を持っている」人が6割を超えた。「なじみにくい感じを持っている」は31%だった。
また、「令和」が元号として初めて、日本の古典から引用されたことについては「評価する」が88%に達した。「評価しない」は5%だった」(NNN4月3日)
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20190403-00000001-nnn-pol
書 藤井碧峰
ただし解釈となるとさまざまあって、こんなものもありました。
「新元号は令和。万葉集は大東亜戦争で若者が戦場に、もっとももっていった歌集。歌の意味よりも、時代の風潮からいえば、「令」は命令に通じ、「和」は和して従えの意だ。つまり奴隷の時代が始まるのである。お上の命令する通りに、カネがなくても文句をいわずに戦場に行け、という時代が始まる」
(兵頭正俊)https://twitter.com/hyodo_masatoshi
やっぱりこの人はこう言うことをこういう時に言う人だと再認識できたのが、石破茂氏でした。
「石破氏は「令」が「命令」を連想させることを懸念したとみられる。石破氏は「新しい時代は戦争がなく、人々が対話する時代になるようにと思う」とも語った」
(産経4月1日)https://www.sankei.com/politics/news/190401/plt1904010037-n1.html
共産党の志位さんあたりが言うならともかく、元自民党幹事長だったこともある人がこれをいうとシャレになりません。
これもまたやっぱりこう来るのね、という調子のことを外国紙が報じています。
https://1ovely.com/reiwa/
「過去1000年以上の歴史の中、日本が中国語を使わず日本語から元号を取ったのは初めてであると説明しています。そして、それが現政権の国粋的な(ナショナリズム)傾向を示唆していると言及。その背景として安倍保守党政権の右傾化、領土問題における中国との度重なる衝突と緊張、さらに安倍首相が平和憲法を2020年までに改正すると繰り返し述べていることも伝えています」(英デリーテレグラフ)
「安倍首相の右傾化した政権が中国古典からの引用を避けたのではないかと憶測されている」(英インディペンデント)
米国メディアも同じことを言ってです。
「東京のテンプル大学アジア研究所のキングストン所長の言葉を引用し、新元号の選択は日本の政権の右傾化を映す鏡ではないかという考えを紹介しています。新元号の『和』は『昭和』に使われたものと同じ字であることを指摘。昭和時代の戦時の歴史についてもっと肯定的な史観を推進するために、安倍首相がさまざまな機会で行っている働きかけと一致するとしています」(CNN)
欧米の安倍=歴史修正主義者=極右という陳腐な見方は、戦後70周年演説あたりで消滅したかと思ったのですが、こういう節目節目には飛びだすようです。
このように「令和」を統制的なニュアンスで支配・命令ととらえるからおかしくなります。
厩戸皇子
昨日私も取り上げたブルームバークの " order and peace or harmony"のうち" order"は、日本の歴史を少し学んだことがあるものなら、厩戸皇子(聖徳太子)の作ったとされる17条憲法第1条にある有名な一項「和を以て貴しと為す」(以和爲貴) に思いを致すべきでした。
この第1条全文は日本書紀第22巻に残されています。
「一曰。以和爲貴、無忤爲宗。人皆有黨亦少達者、是以、或不順君父乍違于隣里。然、上和下睦諧於論事則事理自通、何事不成。」
この意味についてはこのように解釈されています。
「一条の全文で述べられていることが、その意味なのです。第一条は「上も下も和らいで話し合いができれば、何事も成し遂げられないことはない」という言葉で終わっています」
https://president.jp/articles/-/27915?page=3
英訳すると " Harmony is to be valued"となるそうです。
つまり、「令」は、国家による支配・統制を意味せず、むしろ真逆の「上と下が和らいで話しあってハーモニーをもった秩序を作っていく」という意味となります。
この日本独自の元号の創出には大きな意味があります。
そもそも元号の歴史は、中国・漢の時代にさかのぼり、紀元前141年から紀元前87年まで皇帝の地位にあった武帝が、即位の翌年(紀元前140年)を「建元(けんげん)元年」としたのが元号の最初だそうです。
以来、中華帝国は自らの華夷文化圏において、唯一の「時の支配者」として、属国にこの元号を使うことを強制しました。
日本もその例外ではありませんでした。
卑弥呼の支配したといわれる倭国に元号はなく、対外的文書を記す場合、卑弥呼は魏の元号「景初(けいしょ)3年」(239年)としています。
ちなみに国号すら中華帝国が勝手に決めていて、この倭国も中華が勝手にこう呼んだという名称です。
同じく「朝鮮」も中華皇帝に賜った国名です。日本は大昔にに中華から貰った国号は捨てていますが、いまだにお大事にしているようです。ま、いいか。
厩戸皇子が行った外交政策はこの中華秩序からの離脱でした。
今風にいえば、いわばブレグジットならぬジャパグリットをしたわけです。
かといって直線的に抵抗するのではなく、中華が押しつければやんわりと断り、しかし気がつけばいつのまにか独自の文化圏と国の仕組みを作っていたというソフトかつ巧妙なやり方でした。
元号も中華が押しつけるものは使わなくなりましたが、漢籍を典拠とすることでいちおう中華のメンツも立てるという気配りも忘れませんでした。
今回の新元号も磯田氏が言うように、同じ漢字を使う文化圏であるということで、中国に一定の配慮をしつつ、和歌に典拠を求めたという意味で厩戸皇子の手法に相通じる部分があります。
新元号は漢字特有の「含み」を持っています。多義性、あいまいさが漢字や和語が英語などと違う特質です。
ですから、要は個々人で好きに解釈すればいいのです。
その中には「麗しい和」があってもいいし、「秩序と調和」があってもかまわないと思います。
ただし、歴史的に日本独自の元号の誕生の経緯から考えても、令和に無理矢理にレ点を入れて、「外国(たとえば米国や中国)が日本国(和)に命令」するとか、「国が強権的に国民に命じる」という解釈は成り立たないと思います。
ご承知のように、新しい元号は「令和」だそうです。国民のひとりとして、新しい元号を素直に言祝ぎたいと思います。
今回の元号は、中国の漢籍から初めて離脱して、国書、それも最古の国文学である万葉集から得たことです。
https://www.sankei.com/life/news/190401/lif1904010...
これについての磯田道史氏の意見は妥当なものでした。私も似た感想を持ちましたので、やや長いですが引用させていただきます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190401-00000084-asahi-soci
「今回、日本古典と同義の国書を出典としたことが非常に大きな歴史的転換だ。ちなみに令を上につけた年号は、過去に「令徳」、徳川に命令するという案があったが、退けられている。
21世紀のいま、なぜ転換が起きたのか。日本史で何度も繰り返されてきたことだが、海の向こうに強い他国が現れると、国家意識が高まる。幕末のペリー来航時には非常に国学が流行した。
いま、中国の台頭があって、やはり日本ということを強く意識している。転換に関して言えば、日本古典だけを典拠とした元号ではなく、日本と中国の両方の典拠を持つ元号を提示してもよかったのではと思う。日本文化を発見すると同時に、国境を越えた漢字文化圏の存在にも気づけるからだ。国益にもかなうと思う。
中国との距離感でいえば、元号には4段階ある。第1段階は中国の年号をそのまま使う。第2段階は、中国の年号を知っているが、あえて使わず干支(えと)のみを使う。第3段階になると、独自年号を立てるが出典は中国の文献。最後の第4段階は、独自年号を立てた上に国書を出典とする。(略)
グローバル化で、世界が全部同じようなかたちになる時代には、そこにしかない独自性を持ったものが価値を持つ。日本にだけ元号があるというのはソフトパワーだ」
」(朝日4月1日)
一部の保守が、「令徳」が幕末に幕府から拒否されたのがエンギが悪いなどという人もいますが、だから「令」の字は不敬だということです。ああこういう教養をひけらかすのって、とってもいや。
磯田氏の説のように2019年に至って、「独自に年号を立てて国書を出典とする」新たな段階に達したという意義は強調しすぎてもしすぎることはないでしょう。
その意味でこの新元号は「日出る処の天子、書を、日没する処の天子に致す。恙なきや」の現代版なのです。
もちろん今回の隠された宛て先は同じ漢字文化圏のあの国のあの人です。
https://www.asahi.com/sp/articles/ASM4201XCM41UTFK02T.html
また意味については、それこそ個人個人が好きに解釈すればいいことで、統一されたものは要らないはずです。
左翼の皆さんのように発表前には「安」が入ると騒ぎ、発表されれば「お国から命令される社会が来る」と悪意を込めて解釈するのも、どうぞご勝手にです。
「米紙ウォールストリートジャーナルは、令和を「"rei," which can mean auspicious(縁起が良い) in traditional texts, and "wa" meaning peace(平和).」と、米ブルームバーグ通信は、「 "order(秩序)," and "peace(平和)" or "harmony(調和)"」と訳した」(J-CASTニュース4月1日)
http://news.livedoor.com/article/detail/16249542/
なるほど " order and peace or harmony"か。いい訳ですね。むしろ和語でいうよりすんなり耳に入ります。
きょうの午前11時半に新元号の発表だそうです。
いかなるものになりますか、楽しみなような不安なような。なんせあと30年は身近にあるものですからね。出来たら西暦併記の習慣を徹底してほしいもので、私のような昭和、平成そして新元号の三代を知っていると、換算するのが煩雑ですからね。とくに官庁、よろしくお願いします。
それはさておいて、今まで断片的にしか分からなかったあのハノイ米朝首脳会談の内幕が徐々に分かってきました。
WEDGE Infinityに掲載された『アンドリュー・キム元米中央情報局コリアミッションセンター長の証言』(朴承珉 在韓ジャーナリスト)をご紹介します。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15761
このアンドリュー・キム氏はハノイ会談にポンペオと共に乗り込んだ基幹スタッフで、ポンペオとの写真が残っています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-07/P9XIUI6K50Y201
ブルームバーク(2018年6月7日 上写真と同じ) にはこのように紹介されています。
「歴史的な米朝首脳会談の実現に向け目まぐるしく繰り広げられた外交交渉の中で、普段なら目立たないはずの米中央情報局(CIA)のベテラン職員が注目されている。
CIAで数年にわたり北朝鮮を担当したアンドルー・キム氏は、ポンペオ米国務長官の平壌訪問に同行。トランプ米大統領が先週、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の特使として訪米した金英哲副委員長とホワイトハウスの大統領執務室で会談した際にも、キム氏の姿が見られた。トランプ大統領と金委員長は12日、シンガポールで史上初の米朝首脳会談に臨むが、会談の舞台裏を支えているのがキム氏だ。
ホワイトハウスや米国防総省で働き、現在はアジア・グループのパートナーをしているレクソン・リュー氏は「今、北朝鮮側との対話全般を事実上結び付け支えているのがアンドルー・キム氏だ」と指摘。同氏が「恐らく現時点で最も影響力のある人物だとしても驚きはしない」と語った」
ブルームバーク 前掲
ただし、このような位置にいる情報エージェントに特有ですが、その肩書の「米中央情報局コリアミッションセンター長」とだけ発表されているだけで、彼の履歴やインタビューは拒否されてきました。今回それが出ました。大変に興味深い内容です。
肩書がこのインタビュー時には元がついていますから、会談の後にCIAを辞めたようで、現在はポンペイオ長官の非公式諮問機関で、スティーブン・ビーガン米北朝鮮政策特別代表にアドバイザーをしているとされています。
守秘義務は厳しいでしょうが、その範囲で事実を語っています。
いままでの通説では、ハノイ会談が決裂したのは、北朝鮮が寧辺の核・施設廃棄の一部廃棄程度の代償で、米国に対して全面的制裁解除を主張したからと言われてきました。
この講演でキム氏はこのような驚くべき事実を暴露しています。
「北朝鮮はB-2爆撃機を含めて戦略資産の韓半島(朝鮮半島)の展開だけでなく、米国内にある韓半島に展開が可能な兵器も廃止しなければならないとシンガポール会談の時から主張してきた」と証言した。
これは、北朝鮮がいつ、どのような方法で核兵器や核物質・施設などを廃棄するというタイムテーブルは示さず、事実上、韓国への米国の核の傘を除去し、インド太平洋司令部を無力化させようという意図とみられる。
米国の戦略資産の韓半島への展開を中断せよということを超えて、グアム・ハワイから外せというのは米国としては受け入れられない要求である。これまで伝えられてきた内容以上に、米朝間の非核化に対する認識の差が大きいことがうかがえる」(WEDGE Infinity前掲)
これにはおったまげましたね。正恩が「鋼鉄の霊将」のお孫さんだとは聞いていましたが、これほど度胸がおありになるとは。パチパチ。
従来、彼のいう「朝鮮半島の非核化」が米朝双方を指すもので、「オレだけじゃないかんね。米国、お前も朝鮮半島から核を撤去すんだかんね」と言っていると思われていました。
といっても、現実には米国は韓国には核を配備していないので、北が何を言っているのかよくわかりませんでしたが、これで分かりました。
どうも朝鮮半島領域なんて生やさしいものではないようで、北の米国への要求は、朝鮮半島を大きく飛び超えてグアム、ハワイにまで及んでいることが、キム氏の証言で明らかになりました。
少し解説しておきます。米国の核戦力は数こそ多いものの制限だらけの陣容です。それはロシアと長年の核軍縮交渉の結果、ガンジガラメになっているからです。
米国の核戦力はおおむね以下の陣容です。
①米国本土の長距離核(ICBM)
②戦略原潜からの水中発射弾道ミサイル(SLBM)
③B2戦略爆撃機に搭載された空中発射ミサイル(ALBM)
地上発射型の中距離核はINF条約で禁じられていたためもあって、米国の東アジアを範囲とする核戦力は、米本土の長距離核を除けば、実はグアムのB2ていどしかありません。
このグアムこそが、中国と北朝鮮をにらんだ最大の米国の軍事拠点で、B2も戦略拠点としています。
したがって、中国海軍・空軍が宮古海峡から太平洋を目指して展開したがるのも、北の中距離弾道ミサイルが標的にしているのも、いずれの標的もグアムです。
北のテッポドン2は射程6000キロで、グアムを射程範囲に収めています。
いかに北がこのグアムが直接の脅威として認識しているかわかると思います。
一方米国は、2018年1月、米国太平洋空軍は、グアムのアンダーセン空軍基地に、高いステルス性能を持つ最新鋭のB2戦略爆撃機3機と、隊員約200人を配備したと発表しました。
たった3機で200人という大所帯なのは、核兵器の要員まで含んでいるからです。
出典不明
これは北を会談に引きずり出すための軍事的プレッシャーだったことは今になるとわかるですが、米国の本気度がわかると同時に、米国は北に軍事的に対応する場合、必ずグアムを使うのです。
北はグアムからこのB2を撤去しろと言ったことになります。
おっと、うっかりすらっと書いてしまいましたが、グアムって米国領土ですよね(苦笑)。
私は韓国が「米国の戦略的資産」ではなく、今や戦略的不良資産と化していると思いますが、グアムという米国領土にまで口ばしを突ッ込まれては交渉の余地はありません。
北は深く勘違いしているようですが、そもそも米国は北に対して核非拡散条約に違反する核武装をするなと言っているのであって、ロシアとのように核保有国同士の核軍縮をしようと言っているのではありません。
時代遅れの寧辺の核施設の廃棄と、米国本土以外の最大の軍事拠点の撤去は、俗にいう砂と金を交換するようなものでバーターになりません。
グアムこそが、米国の核戦略を支えているのであって、ここからの撤退は米国が世界に対して関心を失った場合以外ありえないことです。
そしてもう一点、北は自分の核武装化が世界の耳目を集めて米国大統領との直接交渉まで進んだので夜郎自大気味のようですが、北の核は米露中が普通車とすれば、アシストつきママチャリていどのレベルでしかありません。
なんどか書いてきていますが、鳴り物入りで発射した火星15も再突入技術と誘導技術が完成した証拠はありません。
ですから、グアムに配置された核戦力は、むしろ中国に対して指向されているのであって、北の核戦力など添え物にすぎないのです。
仮にグアムの核戦力を縮小・撤廃する時があるとすれは、それは中国との中距離核戦力交渉(中国版INF)が合意に至った後のことで、現時点ではそんなものが始まるかどうかすら分かりません。
それを代替施設を多く作っていることがバレバレな寧辺核施設の廃棄などというしわいカードで、米国の核戦略の2本柱を奪おうというのですからたいした度胸です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-d260.html
この誤算以前の勘違いは、正恩の未熟さがあるとキム氏は見ています。
https://www.sankei.com/world/news/180518/wor180518...
「金委員長との交渉過程でこれまで知られていなかったビハインドストーリーも公開した。「金委員長がまだ35歳と年齢が若いからか、立場が一貫しない。
非核化に対する意志に対して、ある時は太っ腹に話して、また、ある時は退く姿を見せた。ちょっと行ったり来たりしているようだ。そんなことを(交渉過程で)多く見つけた」と述べた。これは金委員長がまだ非核化に対する立場が明確に決まってないか、トリックである可能性が高い」(WEDGE Infinity前掲)
また正恩は何を思い上がったのか、中国・ロシアよろしく米国の国内政治にまで口バシを突こもうとしたとキム氏は証言します。
「また、米朝首脳会談の別の決裂要因として、金委員長の判断ミスを挙げた。「金委員長が米国政治に影響を及ぼすことができると過信し、寧辺・核施設の廃棄程度で提案すれば、トランプ大統領がサインすると考えたようだ」と分析した。さらに、米朝交渉過程で、北朝鮮側が昨年、「米国の中間選挙の前に(2回目の首脳会談を)したらあなたら(米国)に役立つのではないか」とも話したと、エピソードも伝えた」(WEDGE Infinity前掲)
北は米国に事前交渉で、「ハノイ会談を開いたらお得でっせ。ここでぎょーさん手柄上げたら中間選挙はトランプさんのもんや」(なぜか大阪弁)と言っていたようです。
この伝でいくと、ハノイ会談においてロシア疑惑に苦しむトランプは中間選挙目当てでズルズルと北に妥協してくると読んでいたようです。
たぶんこんなムシがいい米国情報を仕入れたのはCNNや韓国のムン政権などからに決まっていますが、彼らのトランプ憎しの空気に引きずられて誤算を演じてしまったようです。
なお、北は強硬派と目されるボルトンを毛虫のように嫌っていますが、トランプ個人に対してこのような含みのある言い方をしています。
「(北の外務次官は)トランプ大統領は全く非難せず、強硬派のボルトン補佐官らをターゲットにしたのだ。しかし、注意はトランプ大統領に向けられていた。この「両首脳の相性(chemistry)は神秘なほどすばらしい」という言葉から、北朝鮮は、非核化の交渉を中断する意思が全くないことを物語っているのがわかる。中止どころか、どんな形であれ、制裁を早く解決するために、短い冷却期間に危機を最大限高めた上で、早く3回目の首脳会談を開催することを内心望むだろう」(WEDGE Infinity前掲)
北はハノイ会談の後になっても、ボルトン・ポンペオを交渉相手からはずし、「優しいトランプオジさん」ひとりにしてしまえば、グアムまで「非核化」できるぞとまだ思っているようです。
ちなみに、会談決裂を決意したのはこのふたりではなく、トランプ自身だったと伝えられています。
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