元航海士さんのコメントにお答えして
元航海士さん。いつも鋭いコメントをありがとうございます。勉強をさせていただいております。
おっしゃるとおり中距離多目的誘導弾は、高機動車に搭載するコンパクトなものです。
中距離多目的誘導弾 - Wikipedia
高機動車に搭載された中距離多目的誘導弾 - Wikipedi
元航海士さんもご存じのように、自衛隊は駐屯地正面ゲートの警備隊員すら、銃は持っていても肝心な弾倉は持っていない丸腰です。
警護出動か防衛出動がなければ、原則として弾を持てないので、攻撃にさらされた場合、銃をこん棒として使うしかありません。
銃で反撃できるのは、後述しますが、緊急避難が認められた場合、すなわち撃たれた後のことです。
だからと言って、通常の駐屯地においては歩兵(普通科)の最大の武器の一つである迫撃砲弾や、上陸を阻止する切り札である中距離多目的誘導弾まで、駐屯地から離れた別の施設に入れていることはありえません。
今回の宮古駐屯地はそれをしてしまいました。
後述しますが、おっしゃるように事前に島内各地に展開といっても、このような反自衛隊感情を煽られては制限が強いでしょうし、そもそも防衛出動が命じられるのは、侵攻が実現した後のことです。
公海上に侵攻艦隊が止まっているかぎり防衛出動が出せない可能性がありますし、対空ミサイルに至っては領空外からスタンドオフで発射するでしょうから、相手方の爆弾やミサイルが着弾し、駐屯地に大きな打撃を与えるまで黙って見ているしかないでしょう。
迫撃砲の弾もなく、あるのは小銃弾だけで侵攻軍に対応しろというのは隊員に死ねというようなものです。
この日本の法体系による政治的不備を少しでも埋めるためには、防衛出動 を速やかに出さねばならないのはむろんですが、弾薬・ミサイルなどを手元の駐屯地敷地内の保管庫に置いて、自衛隊法84条「正当防衛、または緊急避難による武器対処」※が発令されれば直ちに即応せねばなりません。
その時になって慌てて取りに行っては遅すぎるのです。
※「自衛隊員に認められた武器使用」http://www.asagumo-news.com/techou-pc2019/bukishiyou/bukishiyou2013.html
中距離多目的誘導弾も一緒です。たぶん、自衛隊は初動において叩かれるだけ叩かれます。
抗堪性(※)が脆弱な自衛隊基地は第1撃で壊滅状態になる可能性もありえます。
※ 抗堪性・ 軍事施設が、敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力
叩かれた後にやっと武器対処が可能なのがわが国だからです。
おそらく部隊長が超法規的判断で、弾薬庫までミサイルを取りにいって高機動車に詰んでおかなければ、おっしゃるような島内各地に展開するのはミサイルを積まない空の車両となってしまいます。
これが合法的に可能になるのは、自衛隊法第91条の2第2項の「警護出動」が出た後のことです。
「警護出動を命ぜられた自衛官の職務の執行について、準用する警察官職務執行法第7条の規定により武器を使用する場合のほか、職務上警護する施設が大規模な破壊に至るおそれのある侵害を受ける明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを排除する適当な手段がないと認める相当の理由がある場合、その事態に応じて合理的に必要と判断される限度での武器の使用を規定」(前掲)
ここまではあくまでも準備段階にすぎません。本格的に防衛するためには、「自衛隊が我が国を防衛するため、必要な武力を行使できる」必要があります。それができるのは、自衛隊法第88条第1項の「防衛出動」が発動された後のことです。
これを発動できるのは政府であって、自動的にその出動段階に移行するわけではありません。「高度な政治的判断」が要るのです。
今回ならルートとしては岩屋大臣が判断して、更に官邸にあげてNSCで判断するはずです。
岩屋大臣なら、現場部隊から早く警護出動を認めて欲しいという要請があっても、「まだその時ではない」ということを言い出しかねません。
なぜなら第91条が規定する、「職務上警護する施設が大規模な破壊に至るおそれのある侵害を受ける明白な危険」はどうにでも判断できるファジーなものだからです。
公海上に中国艦隊がいても「これは通常訓練である」と通知されれば、それを信じるか否かはひとえに「政治的判断」なのです。
ですから、ただ公海上に艦船が存在する、あるいは領空すれすれに航空機がいるというだけの場合、警護出動はでにくいでしょう。
今回のケースをみれば、出動命令の初発の位置にいる岩谷大臣は、沖縄の反基地感情に慮って極端に腰が引けた対応をするようなきがします。
立民なら絶望的でしょうし、自民にすら親中政治家は掃いて捨てるほどいますから(現職幹事長からしてそうですが)、中国を配慮して決断がグズグズになることは大いにありえます。
したがって私は、元航海士さんのおっしゃるように、「中距離多目的誘導弾の短い射程に敵が入る前に、島内の必要な場所に展開して迎撃態勢を整えることは問題なく行える」とは思えません。
また法体系上の縛りだけではありません。法体系外の要素が沖縄には強固に存在するからです。
元航海士さんには誤解がおありのようですが、高機動車に載せていようとなかろうと、どこにでも自由に発射装置を据えることはできません。
必ず、防衛省が買収して取得した土地か、何らかの契約を結んだ土地にしか展開できないのです。
あらかじめ対艦ミサイル部隊を分散して展開をするための用地買収がどれほど進んでいるかわかりませんが、駐屯地用地を売った牧場がそうであったように反対派からのいやがらせを受ける険しい道なはずです。
一方、本島の沖タイや琉新、あるいは朝日・毎日・東京はこれを「安倍政権の戦争準備」として激しく攻撃するはずです。
なぜなら、彼らにとって中国は友邦であって、攻めてくるはずがない国で、アジアの緊張はひとえに日米安保が作り出していると考えているからです。
琉球新報富田詢一社長 財界さっぽろ
琉球新報・富田詢一社長の発言です。
「仮想の敵をつくっては軍備を強化する。では実際の敵はどこにいるんだというと答えられない。参議院の議論では中国の名前が出てきましたが、中国だって国連安全保障理事国ですよ。他国をいきなり侵略するなどということは、あり得ないでしょう。(略)
1カ月ほど前に中国の駐日大使、程永華さんと話す機会があって、沖縄が独立したら中国は侵攻してくるのかと聞いたんです。すると程さんは、中国の何千年という歴史の中で他国を植民地化したことはないというお話をされました」(財界さっぽろ)
富田氏はジャーナリストでありながら、世界の緊張を強めているのが、ロシアのクリミア・ウクライナ侵略であり、南シナ海の中国軍事基地化だと知らないようです。はて、この二国は私の記憶が正しいならば、国連安保理の常任理事国じゃなかったでしたっけ。
「中国は他国を植民地したことがない」とはよく言ったものです。チベットは独立国でしたし、ウイグルは独立国を持った民族でしたが、あれは私の眼の錯覚でしょうか。
それにしても中国大使に、「沖縄が独立したら侵攻するか」などという誘い水のような仮定質問をするのですから、きっと琉球新報は「独立」した暁には侵略してほしいのかもしれませんね。
https://www.gettyimages.co.jp/%E5%86%99%E7%9C%9F/2...
中国の南シナ海軍事基地 ロイター
このようなメディアによる世論操作を受けて、分散展開用地に至る道路は、高江のケースでいえば激しい反対派の「検問」と阻止にさらされる能性があります。
「おっさんひとりめし」様より引用させていただきました。ありがとうございます。http://ossanhitorimeshi.net/?p=29961
高江のケースでいえば、沖縄県警は上司であるデニー知事に「忖度」して排除しないでしょうから、こんな状況が長期化し膠着する可能性があります。
この空隙を中国が利用しないと考えるほうが楽観的です。
このように初めからハンディと制約だらけの宮古警備隊にいっそう足かせを重くして、抑止の役に立てなくしかねないのが、今回の岩屋大臣の処置でした。
私が強調したいのは、小川和久氏がいう「平時の戦い」のことです。
「防衛省・自衛隊は、国民を納得させるだけの説明能力を備えることこそ、平時に最優先しなければならない任務であることを理解し、説明能力を磨く取り組みを始めて欲しいと思います。「平時の戦い」を軽視した先にあるのは、愚かで悲惨な戦争だと肝に銘ずべきです」(『NEWSを疑え!』第760号(2019年4月4日号)
なお、駐屯地が発足して式典があリましたが、朝日は嬉しげに「岩屋防衛相、宮古島で謝罪 砲弾搬入、抗議の声やまず」と伝えています。
※追記、入稿と入れ違いにKYさんから新しいコメントを貰っていますが、リンクは貼っていませんが?
「自称市民のスパイ活動」と、私が論じていることは別次元です。
そういうことがあればなおさら、岩屋さんは毅然としていなければなりません。
スパイ活動の疑いがあったからといって、計画を白紙にして防衛力を落とすのは問題です。
なお、他のネットがなんと言っているか知りませんが、まったく私の記事と無関係です。付和雷同という決めつけは不愉快です。
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コメントがスパム扱いされて入らないのでテストです。
投稿: 山形 | 2019年4月 8日 (月) 08時37分
「説明が不十分だったから」などと言う理由で、すでに保管済みの誘導ミサイルや迫撃砲の全弾薬を島外に撤去する、などという愚行はとても信じられません。
なんとなれば、理由があって弾薬を駐屯地に置く事にしたのであって、「明示的に説明出来ていなかった」という不内容の繰り言を言うのならば、せめて「保良鉱山に施設が出来るまでの応急措置で、時間的空白を埋めるための必須の措置」程度の事は言って、頑として理解を求めるべきだったのです。
結果的に三百数十名の警備隊員は丸裸同然にして、またしてもこのドタバタを見透かしたように中共の軍艦は宮古海峡を遊弋してる始末です。
保良の施設が完成するまでの空白期間について、岩屋大臣は「事態が緊迫すれば弾薬を宮古島に緊急輸送することで即応性に影響がないよう努める」というが、それならなぜ駐屯地に弾薬を入れたのか? 左派脳で考えれば突っ込みどころ満載の大臣です。
この先の緊迫状態にとても耐えられそうにない「弱さ」は、中共に秋波を送っていた石破元防衛相を彷彿とさせます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2019年4月 8日 (月) 08時59分
管理人さん、私のコメントに対するご返信ありがとうございました。
おっしゃる通り、私のコメントは、武器の性能や能力にばかり目が行って、
運用上の様々な問題に、全く考えが及んでいませんでした。
管理人さんが教えて下さった、防衛出動や武器使用に関する様々な障害に関しても
知らないことばかりでした。
私は、何年も前から、社会勉強のために貴ブログを拝見させて頂いております。
今回も、自分の意見を述べることにより、自分の考えの偏りを気付かせて頂き、
感謝しております。
今後も良記事を期待しております。
投稿: 元航海士 | 2019年4月 8日 (月) 10時29分
元航海士さんのコメントは好感が持てます。その姿勢がイイですね。異なる意見でも述べた方が良い。議論する中でこちらが利口になれるのなら儲けもの。自分の考えに偏りがあるのかないのかを知るためにも議論は必要です。
自衛隊が宮古島、石垣島に配備されることは防衛上とても重要なことです。ミサイル基地であればミサイル弾は付随する、だから部隊運用上一番便利な位置に弾薬庫は整備するべし。これは当然なことだ。マスコミは戦争に巻き込まれると危険視するが、そこまで心配をするべきではないと思う。ミサイル基地を建設する段階で宮古島の人々は危険負担をする覚悟はあったと思うのだ。政府の行うべきことは、防衛思想の普及であると思う。島民の理解を得るために普段から努力をしなければならない。政府が防衛思想の普及努力をしないであいまいなカタチで住民説明をするのはよくない。難しい作業ではあるが、これをやらねばならない。私は保守主義者の現今の課題は、防衛問題などの常識論の普及だと思う。
投稿: ueyonabaru | 2019年4月 8日 (月) 13時40分
保良地区は今日になって、また騒ぎが大きくなってます。
地区の賛成派の重要人物が反対にまわる事を表明する、と言っているからです。
「千代田地区では即座に撤去、島外にまで搬出された危険物を、未来永劫同地区内に置く事に同調する事は出来なくなった」という主旨。
これは保良の人たちに特に防衛に関する理解力が足りないせいではない。
人の心の動きを見通せない未熟な大臣のせいです。
岩屋はまた菅官房長官に泣きつきそれで収まればいいが、政治家としても失格です。
投稿: 山路 敬介 | 2019年4月 8日 (月) 22時27分