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2019年5月

2019年5月31日 (金)

ファーウェイ、米国政府を違憲で提訴

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ヒンすれば鈍するというのでしょうか、中国がこれ以上ない悪手をとってしまいました。
米政府のファーウェイ排除政策は違憲だから排除してくれと、米国裁判所に提訴したのです。

「[香港 29日 ロイター] - 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]は、同社の製品を米政府機関が調達することを禁じる米国防権限法(NDAA)は違憲だと訴えた裁判で、審理を省略できる略式判決を米テキサス州の連邦地裁に申し立てた。」(ロイター5月29日)
https://jp.reuters.com/article/huawei-ndaa-idJPKCN1SZ0BX?il=0

なにを考えているのか、チャイナ。ファーウェイの作りたい構図はこうです。

「シニアバイスプレジデントのビンセント・パン氏は、大統領令や購入規制を巡る動きについて、正常な市場競争の領域を越えたと指摘。「世界的な技術のエコシステムや標準の分断につながる恐れがある」と語った」(ロイター前掲)

ここでファーウェイが言いたいのは、こうです。
「米国は自由主義市場だろう。ならばなぜ一私企業であるファーウェイに差別的排除をするのか。これを認めれば世界中の企業もやがて同じ目に合うぞ」ということのようです。

また、「世界の技術が分断される」という言い方をしていますが、これはファーウェイ5G技術を導入することを拒否しない韓国などの国が一定数存在するからです。
韓国は例によって股裂き状態です。典型はサムスンです。

「輸出依存度の高いこれら企業は米国の『顔色』をうかがわざるを得ないが、ファーウェイとの取引を停止すれば中国での業績が痛手を被る」と指摘。サムスン電子を例に取ると、同社にとってファーウェイは5大顧客の1つだ。中国での販売額は昨年の販売額全体の17.7%を占めた」
(レコードチャイナ5月28日)https://www.excite.co.jp/news/article/Recordchina_20190528056/

政治も股裂き、経済も股裂き。コウモリ国家の哀しさ全開のようです。
韓国には米中間で第2次冷戦が勃発しているという現状認識がなく、いつまでも両国にいい顔をしてうまく立ち回りたいの一心ですから(これはムン閣下も同じですが)、このような緊迫した情勢では両陣営から叩かれることになります(苦笑)。

おそらくファーウェイが言うように、欧米日と韓国などのアジア地域で5Gが二系統になることがは大いに考えられます。米国への輸出依存度が高くない国は、安価なファーウェイを選択する可能性があるからです。

しかし、それはあくまでもファーウェイの主張どおり「一私企業への不当な米政府の排除」だったら、にすぎません。
米国政府はファーウェイなどを「安全保障上の脅威」と認識したからこそ、国防権限法という連邦政府の伝家の宝刀を抜いたのです。
つまり米政府は、ファーウェイが使う「一私企業に対する不当な排除措置」という構図に、「安全保障上の脅威」を対置したことになります。

ならば米国の安全保障の傘に入っている国々は、国防上ファーウェイを排除すべきだという米国の「勧告」を、果たして無視できるでしょうか。
ファーウェイに加担する国に対して、米国はやがて安全保障の協力関係を凍結したり、武器体系の輸出にも消極的になっていきます。
いや、今、既に保有する米国製航空機などの交換部品の補給すらしなくなるかもしれません。

これは単なる意地悪ではありません。
ファーウェイを使うような国に、軍事情報を提供すれば中国にダダ漏れするからです。
実は、今この段階に達しているのが、他ならぬ韓国なのですが、鈍感なために自らの置かれた立場をまったく理解していないようです。
気がつけば引き返し不可能地点にいた、それがムン閣下の国ですが、分からないから、ま、いいのか。

米国は中国の覇権に尻尾を振るのですか、それとも今までどおり米国と仲良くやって自由主義陣営にとどまるのですか、勝手に選びなさい、と言っているわけです。
ただし、米国市場へのアクセスを禁じられるなどのペナルティ付ですが。
いわば関が原の合戦で東西両軍に別れてしまったら、泣いても笑ってもどちらかを選ぶしかないわけですし、それはいずれを選んでもリスクを払うということなのです。

つまりこの米中経済戦争は、経済のマスクをかぶった弾の飛ばない米中戦争なのです。

ところでテキサス連邦地裁がとるだろうシナリオはふたつです。
第1のシナリオは門前払いです。これが可能性としては高いでしょう。
このファーウェイ排除は連邦政府の統治行為の範疇だから、司法は政府の高度な政治的判断についてクチバシを入れてはならないとする司法判断です。

ただし、米政府としてはなんなら裁判をして世界の耳目を集めてもかまわないと考えているかもしれません。
法廷闘争ともなれば、米政府は今まで行政府としては出しにくかった証人や証拠を法廷で開示できます。
法廷というのは、裁判官を前にしたプロパガンダの場だからです。

たとえばポンペオはこう述べています。

「[ワシントン 29日 ロイター] - ポンペオ米国務長官は29日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]が中国政府から指示を受けているとの見方を示した。
ポンペオ氏はフォックス・ビジネス・ネットワークとのインタビューで「ファーウェイは中国政府の道具」と指摘。「両者は密接な関係にある。それは米国人には理解しがたいものだ」と語った。
ファーウェイは28日遅く、同社の製品を米政府機関が調達することを禁じる米国防権限法(NDAA)は違憲だと訴えた裁判で、審理を省略できる略式判決を米テキサス州の地裁に申し立てた。
28日に収録されたインタビューでは、同裁判に関するコメントはなかったが、ポンペオ氏はファーウェイが国家安全保障上の脅威であることを強調。「米企業は米政府に協力、つまり米国の法律を順守している。ただ米国の民間企業に対して大統領が指示することはない。この点において中国とは大きく異なる」とした」(ロイター5月30日)
https://jp.reuters.com/article/huawei-tech-usa-pompeo-idJPKCN1SZ1ZH?il=0 

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任正非ファーウェイ創業者。WSJ前掲

この中国の企業スパイの実態が、ウォールストリートジャーナルに載っています。

「2004年夏のある日の夕刻、シカゴでの通信機器展示会スーパーコムのイベントが閉幕する際の出来事である。現場にいた人々の話によると、中年の中国人来訪者が、ほとんど無人となった展示ブースの間を歩き始めた。そして、高価なネットワーク機器のふたをポンと開けると、内部の回路基板の写真を撮ろうとした。
 警備員が男性の行動を制止し、メモリースティック、写真、AT&Tに帰属するデータや図表が記されたノート、富士通ネットワークコミュニケーションズやノーテル・ネットワークスなど6社のリストなどを押収した。
 男性はイベントのスタッフに対し、エンジニアのZhu Yibinと名乗った。首から提げた名札には「ウェイファー(Weihua)」と記されていた。これについて男性は、勤務先である華為技術(ファーウェイ=Huawei)の前後のつづりが逆になったと説明した」(WSJ5月30日)
https://jp.wsj.com/articles/SB12240879310288303561304585331864196561670

ほ~、やりますな。ファーウェイ従業員が、IT見本市に出品されているネットワーク機器のフタを勝手に開けて回路の写真を撮ったんですか。
このようなことは同業他社でもままやることらしいですが、ファーウェイが「同社を特別な存在にしているのは窃盗行為の悪質性」(WSJにあります。

中継基地設備大手のスウエーデン・エリクソンに対してファーウェイは、技術を盗むためにアテリエイというスパイ専門会社まで作っています。

「元従業員らによれば、ファーウェイ事務所のスタッフらは、ライバル企業の人材のリクルートを指示されたが、当初はうまくいかなかった。
そこでファーウェイは、ライバル企業のネットワーク機器を精査するようになった。
リード氏によると、ストックホルムの事務所では、アテリエイの研究者らが、電子的な情報漏れを防ぐ機密保持の地下室に外国製の機器を隠匿していたという。
その一部は中国に運び出され、技術者らによって分解された。 こうした秘密の部屋は、ファーウェイ帝国のあらゆる拠点に設けられていた。米当局者らによれば、ファーウェイは、テキサス州など各地のオフィスの奥に、米国人従業員立ち入り禁止のこうした機密保持の部屋を作っていた。」(WSJ前掲)

そしてこれらのスパイ会社は世界各国のファーウェイ帝国に張りめぐらされていたといいます。
被害者である米国シスコ社の証言です。

「シスコは裁判で「彼らはシスコのユーザーマニュアルの全てを一語一句変えずにコピーした」と述べた。シスコによれば、同社のマニュアルはルーターに同封されており、同社のソフトウエアはルーターが動いている間、見えるようになっている。
そのため、この2つは容易にコピーされたという。 裁判によると、コピーがあまりにも広範囲になされていたため、ファーウェイはうっかり、シスコのソフトのバグもコピーしていた」(WSJ前掲)

バグまで一緒にコピーですか(笑)。
沿海州に落ちたB29を総パクリしたソ連が、その製造欠陥まで一緒にパクってしまったことを思いだしますな。
そういえば、中国の主力戦闘機のJ15も、ロシアのスホーイ27の丸パクリでしたが、一緒にエンジンの欠陥までコピーしてしまったといわれています。

米政府はこのようなスパイ行為の実例を全力で調査し、多くのファクト&エビデンスを押えた上で国防権限法を行使しています。
以後、ファーウェイは外国情報監視法による「外国エージェント」、つまりは外国のスパイ指定を受けると思われます。

ファーウェイさん、違憲裁判を地裁に起こして勝機があるのは日本くらいなんですよ。
米国の思うつぼに球を投げてしまいましたね。

 

 

 

 

 

 

2019年5月30日 (木)

ソフトターゲット・テロとしての登戸無差別殺傷事件

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川崎市登戸で、痛ましい無差別殺傷事件がおきました。凶刃に倒れたお子さんと、外務省職員の方のご冥福を心からお祈りします。

このような事件が起きると日本では、かならずと言ってよいほど「犯人の心の闇」といったしたり顔の評論がでますが、まったく無意味です。
このような言説は、犯人を免罪しかねません。
犯人像の調査は必要ですが、それは「心の闇」とか「人間が持つ狂気」などいった文学趣味とは無縁な、犯罪社会学的なそれでなければ意味がありません。
そもそも犯行直後の今必要なことは、哀悼の意を表し、再発をふせぐために社会的な知恵を絞る以外になにがあるのでしょうか。

さて残念ですが、世界でこのような無差別殺傷事件を防げる国はありません。
というのは、この登戸無差別殺傷事件はソフト・ターゲットに対するテロだからです。

今回、犯人が引きこもりの異常者であった可能性があるために、狭い意味での「テロ」に該当しないのではないかという声も上がるでしょうが、動機や犯人像とは関係なく、やった事象のみで評価すれば完全なテロそのものです。
しかも守るすべがない子供を狙った卑劣極まるテロです。
ソフトターゲットの中でも、もっとも弱く危うい存在でした。

ソフトターゲットとは
「軍事目標のうち、警備監視が手薄で攻撃されやすい標的民間人や民間車両、民間の建物など」(コトバンク)

今回、犯人が狙ったのはスクールバスの停車場でバスを待つ児童たちの集団という典型的なソフトターゲットでした。
犯人は背景は分かっていませんが、おそらくどんな社会にも一定の割合で含まれる異常性格者であると思われます。
学校側は教頭を現場で保護に当たらせていて、手落ちはまったくありませんでしたから、メディアは学校をうるさく取材しないように。

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警官を配置したらという声もありましたが、実際には仮に警官がその場に居合わせたとしても、今回のようにわずか数十秒で無音のうちに犯行がなされた場合、警官は拳銃を抜く時間的余裕さえ与えられなかったはずです。
もちろん一定の抑止効果はあるでしょうが、相手が今回のように初めから自殺することを覚悟していた場合、逮捕を前提にする警察には限界があります。

民間警備会社を使うということもありえますし、現に警備員をバス停に配置することも検討されているようです。
しかしあまり期待しないように。教師よりややましていどにすぎません。
警備員の多くは逮捕術の訓練を受けていないか、受けていてもわずかの講習です。それで凶刃を振り回す狂人に対峙せよというのは酷というものです。

わかっていないなと思うのは、従来の「大人を付き添わせる」というレベルではもはやないという事実認識です。

ましてや銃器所持を自由化するなどは論外です。
訓練されていない一般人が銃器を扱うのは大変に危険であって、そのことによって社会内部に銃器が拡がることのほうが遥かに社会的リスクが高まります。
その世界最大の実例は銃乱射事件が年中行事化している米国です。
銃器所持が自由になれば、いま柳刃包丁を使っているテロリストは、次回はライフルや拳銃をって襲撃してくることになります。

本気で警備員を付き添わせたいなら、欧米社会の民間軍事会社(PMC・private military company )を張り付けるしかありません。
民間軍事会社はアフガンやイラクなどの戦地において軍事基地周辺の警備をする会社もありますが、民間空港や駅の警備を任されている会社もあります。
有名な例では、イスラエルのICTSや英国のコープセキュリティがそうです。(写真は英国コープセキュリティ)

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「1982年、イスラエルの民間軍事会社がエルアル・イスラエル航空と共に新たな民間軍事会社を作った。それがICTS社である。この会社の本社はオランダのアムステルダムにある。2005年に作ったI-SEC・インターナショナルセキュリティBVは、ICTS社の空港であり、飛行特殊部隊もかねている。
1990年代後半にICTS社はアドバンスド スクリーニングという特殊なコンピュータ技術を導入した。この技術は乗客の個人情報に基づいて、その乗客が安全を脅かす人間かどうか調査するものである。2008年度ICTS・インターナショナルの売り上げは日本円にしておよそ100億円だったという」
http://karapaia.com/archives/52153673.html

ソフトターゲットは開かれた無防備な民間エリアですから、守ることが非常に困難です。
空港のような出入り口とエリアが限定されている場所ですら、高度のセキュリティを施すことは容易ではありません。
ましてや、スクールバスの守備範囲は広大で、セキュリティの穴は探し出せばキリがありません。

たとえば、今回のような集合場所は守れても、乗り込んだ児童の後からテロリストがバスに乗り込み凶刃を振り回す事もありえます。
降りる場所を狙うかもしれません。三々五々集まってくるところを襲撃するかもしれません。あるいは、自宅の外で待っているかもしれません。
つまり、そう考えると無限のリスクの可能性が存在し、それをひとつひとつ潰していかねばならないことになります。

つまり点でリスクを潰しても限界があって、面で潰さねばならないのです。
地域でこの事件の犯人のような危険な兆候が見られる不審者の洗い出しですが、これも人権と個人情報の壁に遮られてたいへんに難しいものになってきています。

今回の事件は腹立たしいものでしたが、改めてソフトターゲットテロについて考えさせる契機となりました。
社会が守らねばならない児童の通学路は星の数ほどあり、そして来年に迫ったオリンピックでは数百箇所のソフトターゲットが散在するのですから。

 

 

 

2019年5月29日 (水)

資料 田村秀夫 激化する米中貿易戦争… 嵐を前に「消費増税」という愚策

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本日も昨日に続けて、消費増税について田村秀夫氏の論考を資料としてご紹介いたします。https://www.sankei.com/premium/news/190518/prm1905180005-n1.html
産経5月18日

先日の日銀短期経済報告がGDPプラスだったことから(これ自体驚きですが)、もはや消費税増税に障害物がなくなったといわんばかりの風潮に、政権内部すら冒されていることを、田村氏は強く警戒しています。

田村氏はかつて日経の記者でしたが、その論調を批判して産経に移籍した反骨の経済ジャーナリストです。
いまや日経は、「経済記事以外はよい新聞」とまで揶揄されるほど財務省の御用媒体と化しています。
日経に限らず、日本のメディアは新聞に対する消費増税免除の餌にまんまと乗って、まともな論陣を張ることができなくなっています。
朝日などは増税のタイコを叩いている始末です。
私の知る限り、消費増税に反対する記事を掲載しているのは産経だけです。それも、私が見るところ、社内は反対で一本化できているわけでもなさそうです。

さて、この田村氏の論考が優れているのは、氏がかねがねテーマとしてきた中国経済との関わりで論じていることです。
米中経済戦争は終息するだろう、リーマンショック級変動はないだろうという増税論者の読みを、田村氏は「インチキ占い」と痛罵しています。
それは世界の経済情勢を読まず、増税法という政治スケジュールがあるから予定通り増税するという、経済が生き物だということを知らない愚論にすぎません。

この10月までという短い時間尺ではなく、この1年をみると、特に日本経済が影響を強く受けるであろう中国経済の変動は明らかです。
中国景気下降の原因は、中国の外貨不足に起因します。
中国はかつての景気加熱を収めるためのインフレ抑制のために金融引き締めを行いましたが(ファーウェイのような国営企業は別ですが)、習にとっては折悪しくその時期に米国の中国制裁が開始されてしまいました。

トランプは、おそらくこの中国経済減速期を狙っていたのだと思われます。
経済制裁以前の去年2018年9月26日の日米共同声明にはこのようにあります。
在日米国大使館
https://jp.usembassy.gov/ja/joint-statement-united-states-japan-ja/

6. 米国と日本はまた、第3国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者を守るため、協力を強化する。したがって我々は、世界貿易機関(WTO) 改革および電子商取引の議論を促進し、知的財産の収奪、技術の強制移転、貿易を歪める産業補助金,国有企業が生む歪みなどの不公平な貿易慣行、および過剰生産に対処するため、日米、および欧州連合を含めた日米欧の協力体制を通じて緊密に連携する。

名指しこそ避けていますが、これが中国を念頭に書かれたことは疑い得ません。

かつての21世紀初頭の十数年間に渡る中国の台頭は、実は中国の金融膨張によって富を生みだし、ダブつくチャイナマネーをIT関連と軍拡にそそぎこんできました。

中国はファーウェイのように、世界の5G分野で覇権を握る寸前にまで達していました。
軍備にはおしげもなく巨額の国家予算が注ぎ込まれ、今や米国の覇権を脅かすまでになっています。

それはかつてのような中国近辺に止まらず、世界全体に食指を伸ばすまでに成長しました。
かつての植民地帝国主義が、国内市場の飽和によって海外市場へと溢れだしたように、中華経済圏構想「一帯一路」という帝国主義的植民政策を取るまでになりました。

これを許さないとするトランプ政権は、短期的な貿易戦争ではなく中国の反市場主義的国内市場のあり方まで変革を強いています。
おそらくそれは、国家資本主義とでもいうべき中国の体制変換まで突き進む性質のものです。
トランプは来期も再選される可能性が高いと思われます。
なんせ民主党は24人も乱立しているうえに、最有力候補がオバマNO.2のさえないバイデンでは負けは決まったようなものですから。
したがって、言ったことは必ずなんらかの形でやるトランプがあと5年政権にいると思われます
ということは始まったばかりの米中経済戦争は、緊張・妥協・再発といったサイクルを繰り返しながら、あと5年間は続くと見たほうがいいでしょう。

一方習政権は、自らの権力基盤のみならず、共産党一党独裁モデルを崩壊に追いやるような譲歩はできません。
妥協すれば、容赦ない党内反習派の引きずり下ろしが待ち構えているからです。
習は容赦ない党内粛清を行ったために、彼を殺したい奴で党内は満ちあふれています。
あの国で権力の座から引きずり下ろされるということは、すなわち死を意味します。

ですから、前門のトラ・後門の狼状態の習は、田村氏の見立てでは、自殺行為である妥協を避けて、「時間稼ぎに徹する」とみています。
故に、中国経済失速は前面崩壊することはありえませんが、長期化し泥沼化するでしょう。
その影響は日本の対中輸出の大幅減速をもたらします。

このような時期に個人消費を冷え込ませ、税収をかえって減らし国力を削ぐ増税に走るなどというのは、正気の沙汰ではありません。

 

                                                          ~~~~~~~

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http://electronic-journal.seesaa.net/article/26085...

米中貿易戦争が激化している。トランプ米政権は対中輸入品2000億ドルへの制裁関税を25%に引き上げたばかりでなく、同税率を残る対中約3000億ドルすべてに広げる手はずを整えた。 
市場では「米中通商協議は合意に至り、最終的には制裁関税が段階的に引き下げられる」(ゴールドマン・サックス調査部)との見方が依然根強い。そんな楽観論は、消費税増税しても構わないという論拠になる。

 日本経済は20日に発表される1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率速報値がマイナスになる情勢だが、その主因は対米輸出減を受けた中国経済の減速による。
ならば米中貿易戦争が終息に向かうのだから増税OKというシナリオが描き出されるのだが、拙論は街頭の易占いよりもお粗末な非科学的インチキ論法だと断じる。

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産経5月18日 記事と同じ

グラフを見てもらおう。日本の対中輸出と中国の新規融資の前年同期比増減率の推移である。中国経済の減速は実は、米中貿易戦争が始まった昨年7月以前から始まっている。中国景気の下降は中国金融の量的縮小、つまり金融引き締めの産物だ。 
経済という体の成長に必要な血液であるカネの量を増量せずに減らせば、成長できなくなる。経済を支配する共産党のエリートたちはわかっているが、カネを拡大したくても制約を受けている。
それは外貨、すなわちドルの流入量に応じて人民元資金を発行するという中国特有の通貨発行制度に起因する。

発券銀行である中国人民銀行は自身が決める交換レートによって外貨を市中銀行から買い上げ、人民元資金を市中に供給する。
人民元を切り下げた2015年夏以降、中国からの資本逃避は止まらない。
当局は企業などの海外からの外貨借り入れを容認して外貨を確保し、金融を拡大してきたが、多くは不動産や生産設備の過剰を生み、債務バブルを膨らませた。

それはやばい、ということで当局は新規融資の縮小に踏み切ったが、主たる対象は党直結の国有企業ではなく、経済の裾野を形成する民営の中小企業であり、景況を一挙に落とし込んだ。
習近平政権はあわてて金融緩和と減税に転じたが、米中貿易戦争の影響が実体景気に波及するようになって景気刺激効果は減殺される。金融も外貨難が続くので思い切った拡大策がとれない。
財政も収支が悪化するので同様だ。 
中国の金融膨張こそがハイテク覇権、軍拡や中華経済圏構想「一帯一路」という対外進出策のエンジンだとみるトランプ政権は当然、対中強硬策を緩めない。習政権は経済モデルの存亡にかかわるので譲歩はできないので、ともかく時間稼ぎに徹する。
その帰結が中国経済失速の長期化であり、グラフが示すように日本の対中輸出減をもたらす。そんなときに、消費税増税とは、まるで嵐が来るというのに雨戸を開けておくような愚策なのである

 

2019年5月28日 (火)

資料 本田悦朗氏 「増税することがリーマンショック並の出来事」となる

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本日はニフティがメンテのために資料のアップだけとなります。
安倍首相の経済政策のブレーンで内閣官房参与も務めた本田悦朗 ・前スイス大使の産経新聞のインタビーューを資料として紹介します。
産経5月24日https://special.sankei.com/a/politics/article/20190524/0001.html

小見出しは引用者です。
残念ですが、本田氏のような人物を日銀総裁にできないことが、日本の現状です。

                                                            ~~~~

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ブルームバークhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-11-08/OZ1I296JIJUO01

GDPの5月月例報告が上昇したといういう偽り
政府は5月の月例経済報告で「景気は緩やかに回復している」との認識を維持しましたが、回復力は弱く、回復という言葉が本当にふさわしいのか疑問です。20日に内閣府が発表した今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)でも、個人消費や企業の設備投資など内需関連は軒並み弱い。

消費増税は延期ではなく凍結すべき
 消費税増税を実行する環境にないのは明らかだし、増税する理由はみじんもありません。最近の報道機関の世論調査でも増税反対は全体の50%を超えています。多くの国民は今、増税したら大変なことになると肌で感じている。
増税は延期でなく、凍結すべきです。何年も前から「何年何月に増税します」と時期を決めるのは無理です。例えば「実質成長率2%、名目成長率3%程度で景気が安定している」と経済実態を前提に増税の可否を議論すべきであり、カレンダーベースで増税するなんてあり得ない。

●無責任なOECD事務局長の提言
経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は4月、日本は将来、消費税率を最大26%まで引き上げる必要があると発言しました。国民にとって10%は税率がどんどん上がる過程にすぎない。
だからますます消費は低迷し、貯蓄志向が強まる。1、2年程度増税を延期したくらいで消費マインドは回復しません。

日本経済の最大のリスクは米中経済戦争
日本経済の最大のリスクは米中貿易摩擦です。米中どちらのルールが世界のスタンダードになるかという覇権争いなので、長く続く可能性がある。中国は巨額の不良債権など構造問題を抱え、英国の欧州連合(EU)離脱など世界経済は不透明感が増しています。

●増税することが「リーマンショック並の出来事」となる
政府は「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り増税する」と言っていますが、あと4カ月でリーマン級の出来事が起きる確率は低い。ただ、増税すれば日本経済はリーマンの時と同じくらい悪影響を受ける可能性があります。
賃金は上がらず、設備投資も低迷し、個人消費は一層落ち込む。20年以上、デフレに苦しんできた日本が今増税すれば最悪、デフレに逆戻りし、アベノミクスは失敗するかもしれない。

増税をあてにした政策は国債を利用すべきだ
増税を前提とする幼児教育の無償化や高等教育の負担軽減は「人材育成国債」を発行し、財源を確保すればいい。法律上は赤字国債ですが、人材という日本にとって最も大事な資産を育成し、将来の生産力を高めるためなので、実態は(将来世代も恩恵を受ける)建設国債と同じです。

キャッシュレス決済が混乱するなどというのは、経済全体を見ない議論にすぎない
増税を延期すれば、キャッシュレス決済を対象としたポイント還元の準備を進める中小の小売店などが混乱する? 「混乱を招くからできない」というのは財務省の常套(じょうとう)手段です。
増税して経済が失速し、国内外から「日本はだめになった」といわれる事態を招けば、子供や孫の世代に何と言い訳するのか。アベノミクスを貫徹することは、今を生きるわれわれの責務だと考えています。

 

2019年5月27日 (月)

トランプ訪日の目的は

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トランプさんの大相撲見物は見ているほうがハラハラしましたが、まぁ何事もなかったようで、ほっとしました。朝乃山、日米首脳からカップを授与されるという超ラッキーな巡り合わせで、来場所負け越したら承知しないぞ(笑い)。

見た3番はいまひとつ面白くなかったので、炎鵬戦のほうを見て欲しかったですが、かんじんなトランプさんはやや気難しげな顔していましたから、楽しんでいただけたでしょうか。
彼はWWEという米国のプロレスに一方ならぬ入れ上げていた人ですからね。格闘技にはうるさいんです。
WWEは政治的スタンスがゴリゴリの共和党支持で、東部インテリが絶対に見ませんから、親和性があったのでしょう。
トランプさんは、負けたレスラーの髪までバリカンでつるつるにしていますから、この人の大衆の受け狙いは筋金入れです。
今回も、相撲観戦そのものよりも、千秋楽というビッグイベントに合衆国大統領が乗り込むという派手なパーフォーマンスを狙ったのでしょう。
その意味では成功でした。まったく、たいしたタマです。

たぶんレスリングの眼で相撲を見たでしょうな。
相撲のような、ぶつかり合いのスピードと強さと低さを争うシブイ面白さが理解できたのかどうか。これもま、いいか。
どうでもいいですが、合衆国大統領杯って毎回あるのかしら。(※)あの白頭ワシのついた重そうなカップは、いかにもアメリキャンでなかなかでしたからね。
※来年以降もあるそうです。ありがとう。

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https://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/2019...

大相撲の後は居酒屋でした。失礼ながらダサー(笑い)。
日本文化を使った接待というと、プーチンの時みたいな日本旅館か、今回のような炉端焼きになっちゃうんですかね。
安倍さん、あなた外交センスがあるんだから、いつまでもフジヤマ・ゲイシャ・スシ・スキヤキみたいなところから、いいかげん抜け出して欲しいものです。

とまれ、今回のトランプと安倍氏が欲しかったのは、あくまでも日米同盟が強固だという対外的国内的な「絵」です。
令和初の国賓、仲むつまじいゴルフ、千秋楽の相撲初観戦と大統領杯の初授与、そして新天皇が催される命令和初の宮中晩餐会と初初づくし。
そして最終日には米国の根拠地である横須賀では海自の最新鋭「空母」に初乗艦、こういったテレビの「絵」が目的だったのです。

習やプーチン、正恩、そして自称同盟国には素晴らしくパンチ力がある「絵」のはずです。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45280750V20C1...

さて、財界人との懇談は、ソフトバンクの孫さんとトヨタの豊田章男さんが主役だったようです。
孫さんのソフトバンクの系列化にある英国ARMは、つい最近、あっさりとファーウェイ切りました。

ファーウェイは一応独自のプロセッサを持っていますが、ARMから供給を切られたので、今後の不透明感が増しました。

「ARMは、プロセッサの設計を提供する企業。ARM自身は設計を提供するのみだが、Qualcomm製CPUなど、スマートフォン向けプロセッサの9割はARMベースといわれる。(略)
だが、KirinはARMの設計を採用している。既存の製品はこのまま提供可能だが、今後ARMからのライセンスを得られなければKirinの新製品開発は非常に困難になる」(ニューズウィーク2019年5月23日)

ソフトバンクは日本の5Gをファーウェイに任せるつもりでしたから、いわばファーウェイとは盟友関係といっていい仲でした。
それが今回の手のひら返しですから、ファーウェイの任会長はこの裏切り者めがぁと、歯ぎしりしているんじゃないでしょうか。

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孫社長と豊田社長 https://toyokeizai.net/articles/-/241349

また、昨年ソフトバンクとトヨタは「モネ・テクノロジーズ」という合弁会社を作っています。出資比率はソフトバンクグループの通信子会社ソフトバンクが50.25%、トヨタが49.75%です。
トヨタのトヨタ社長のほうから孫さんに出向いたそうです、設立目的は次世代自動運転です。

「新会社は2020年代半ばをメドに、交通事故を起こさない自動運転の実現を目指す。2020年まではスマートフォンで乗り合い車両を呼ぶなどの「オンデマンド・モビリティ・サービス」を展開する予定だ。「日本連合で世界に打って出ようと握手した」。ソフトバンクの宮川副社長はそう言い放った」 (東経2018年10月4日)

ソフトバンクがファーウェイを切ったのは、まちがいなく制裁回避ですが、それにトヨタも便乗したといったところです。
トヨタの中国投資はハンパではないので、トランプの顔色を冷や汗をかきながら伺っていたことはまちがいありません。
下手すりゃ、米国の貿易を制限すると宣告されかねませんからね。

いずれにしても、今回のトランプの訪日に実質的事務的な意味あいはありません。
ですから、「共同声明出ず」といったことがさも一大事であるかのような報道をメディアはやっていますが、なにを見ているのやら。

「4日米両政府は、首相と25日から来日するトランプ米大統領による首脳会談後の共同声明発表を見送る方向で調整に入った。複数の日本政府関係者が20日、明らかにした。日米貿易交渉で合意の見通しが立っていないことから、共同声明を出すのは困難と判断したとみられる」(時事5月4日)

共同声明が出るも出ないも、そもそも日米貿易交渉は始まってはいませんから、共同声明なんか出るはずがありません。
トランプはこんなことを言っていますが、国内向けの発言ていどに受け取っておいたほうがいいでしょう。

「冒頭で日米の貿易不均衡に言及し「これから数カ月でとても大きないくつかの発表ができることを望んでいる」と述べた」(日経5月25日)

自動車関税と農業が焦点となりますが、数カ月以内になにか新たな前進があるとはとうてい考えられません。
これらは共にオバマの時代のTPP交渉で すでに終わっているからです。

かつてのTPP交渉でUSTRのフロマンは、一桁台を要求して蹴られました。
当時決まっていた日豪合意の冷凍牛肉19.5% ですから、吹っ掛けもいいところです。
るいは、米国は自動車関税で「トラック」に分類されたSUV車になんと未だ25%という法外な関税をかけていました。
SUV車というのは、スポーツ多目的車のことで、ジープ・グランドチェロキー、フォード・エクスペディションといった米車が日本で競争力を持つ数少ない分野で、利益率も高いのです。 
競争相手はひしめいていて、トヨタ・ランドクルーザー、英国ランドローバー・レンジローバー、独ベンツGLクラスなどの強力なライバルがいます。
これらの外国車に25%もかけていて、まだ米国市場すら征圧できないわけです。

ちなみに日本は自動車関税ゼロ、農産物は畜産物以外はゼロです。
もう十分に譲るものは譲ったのですから。

既に多国間貿易協定であるTPPでは妥結し、今や米国輸出農産物は他国より高い関税がかけられています。
欲をかいてTPPを脱退して二国間なら動かせると思ったとしたら、はっきり言って馬鹿です。
ですから、時間が立てばたつほど米国の農業者は苦しくなります。
自動車産業も自動車部品がTPPよ合意より高くなったために悲鳴を上げています。
その上に中国が大豆などを制限しましたから、いっそうひどくなるばかりです。
なんのことはない、トランプがいい顔をしたい自動車産業も農業も、早くTPPに戻れと要求しているのです。

ですから、日本には早期に日米貿易交渉で妥結する理由はありません。
大いにトランプの足元を見るべき時期です。
どうぞ大統領閣下、TPPにお戻り下さい。
名誉ある復帰でもなんでもお好み次第ですよ。レッドカーペットを敷いてお待ちしております。

 

※明日、またニフティがリフォームのためにサービスを停止します。ゾゾっ。
前回は丸々2日大混乱でしたからね。
混乱しなくとも明日午前2時から朝まで制作画面がひらきません。
一般画面はご覧いただけるとおもいますが、記事の更新ができなくなる可能性が高いとおもわれますのて、あらかじめご了承下さい。



 

 

 

 

 

2019年5月26日 (日)

日曜写真館 オオサギさんの初夏

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青々とした田んぼを滑空するのを楽しんでいるようですが、餌場探しです

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首を上げたり引っ込めたりして餌をさがしています

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家族はいつも一緒です

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こういう岩の下に虫や小魚がいるんで、ていねいに探しています

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湖の中心はウやカモさんたちのなわばりなので、この水辺あたりがギリギリです

 

 

2019年5月25日 (土)

「名無し」さんにお答えして 私は揶揄しているのではなく、当事者として発言しています

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「名無し」さん、なるほどね。
私は具体的に自主避難者の実態と現在を知っていて書いています。
そのうち友人が2名います。ちなみにかれらは千葉の住民でした。
想像であなたがいうような「自主避難者を揶揄するような発言」をしているいるわけではありません。

事故当初自主避難者を好意的に迎い入れていた周辺自治体も(私の村も受け入れましたが)、一定期間で支援を終了しました。
それは当然で、事故当初のパニックが過ぎて数年立てば、避難指定が解除されるか、公開された多くの資料から自分の住んでいた地域が果たして避難するべきなのかどうか自ずと判断できねばおかしいからです。

避難地域に指定され続けていたのならば致し方ないとしても、それ以外の地域はできるだけ早い帰還を目指すべきでした。
さもないと、避難先で生活の根ができてしまうからです。
学校、職場などはそうそう簡単に動かせませんからね。

一方、さきほど述べたように周辺地域ではなく、はるか遠くに避難した人たちは、決意して移動したと考えられます。
具体的には個人情報になるので控えますが、自主避難者はいまでも南西諸島や四国、沖縄本島、その離島などに相当数住んでいます。
多くは避難者だけで固まって住んでいて、周囲とは調和しているとはいいがたい生活を営んでいます。

国家が支援すべきなのは、国が指定した避難地域の住民で、いまも帰還が困難な人たちに対してだけです。
そのような人たちに国が補償するのは、国の権限でした措置な以上、とうぜんのことで、私はそれについて異議を唱えるつもりは毛頭ありません。
しかし帰りたくない人、帰れるのに帰らない人たちに対しての支援は、支援本来の意味をはき違えています。

「名無し」さんは「訴訟を起こしている自主避難者のうち、県外から避難している人は、私が調べる限り確認できませんでした」と書いていますが、朝日にはこう書いてあります。

「今回の訴訟を起こしていたのは、放射線量が高いなどの理由で避難指示などが出された区域からの避難者44世帯125人と、自主避難者16世帯50人。「ふるさとを喪失し、生活を破壊された」ことへの賠償として1人あたり2千万円を請求していたほか、不動産や家屋に対する損害賠償なども求めていた」(朝日2019年2月20日)

ではこの「避難指示44所帯」とは別の「自主避難者16所帯」とはなんなのでしょうか。
おそらくは避難指示地域外の人で、勝手にといっては語弊がありますが、国の指示を無視して自主的に逃げた人の事だとかんがえられます。
ですから規制委員会が、「国の指示が理解されなくて残念だ」といったコメントをだしたわけです。

※追記 「とある福島県民」さんの提供された資料です。知らないのは「名無し」氏だけです

京都訴訟の原告のほとんどは避難指示区域外の福島など5県からの自主避難者だったが、このうち賠償対象の区域外に住んでいた21人の請求が認められた。(略)「大半の原告の避難の相当性を認め、賠償対象の区域外に住んでいた人にも賠償を命じた。積極的に評価できる」と話す。(略)
また、福島第1原発から距離が離れていたり、空間線量が低かったりしたと判断された仙台市や茨城県つくば市からの避難者にも賠償が認められなかった」(産経2018年4月5日)
https://www-origin.sankei.com/west/news/180405/wst1804050003-n1.html

朝日は内訳を書いていませから出身地域は分かりませんが、ここに福島県外がいようといまいと本質的なことではありません。
初期には多くの県外者が含まれていて、指定避難者以外に数万人規模いたというだけのことです。
彼らが何を恐れて逃げたのか、誰の煽動を信じたのか、どこに逃げたのか、そしてそこでどのような暮らしをしているのかについては山下祐介、開沼博の『原発避難論』という優れた調査記録がありますので一読されることをお勧めします。

また「名無し」さんはこうも書いています。

「人が避難したのがただの被害妄想によるものだとするのは、当時の状況を理解していないと言えます。「放射線計測の結果が危険だったから逃げる」というのは、既に被爆してしまっており、もう手遅れだからです」

なにも分かっていませんね。
あなたは2011年夏までの悪夢なような状況を、「被曝」現地で体験して書いていますか?
私はこの2011年3月11日から約2年間に渡って、ほぼ毎日書き綴ってきています。
「当時の状況を理解していない」などと書くなら、少しは私のこの期間の記事を読んで書いてほしいものです。
私が決してただの高見からの皮肉で自主避難者を扱っていないことがわかるはずです。
なぜなら、私もまた「当事者」だったからです。

「危険だと分かってからでは遅い」というようなことをいいますが、その前に自分の住む土地の放射線量を、ただの安物のガイガカウンターではな、ましてやネットに当時溢れていたヨタ情報を丸飲みするのではなく、専門機器で計測してから、逃げるかどうか判断すべきだったのです。
自分ひとりではできないならば、測定グループを作って、地元大学の門を叩くなり、行政に働きかければいいのです。
当時はなにかしらの形で、地元の国立大学や行政はそのような対応をしていたはずです。
アレもできない、これもできない、信じるのはネットの風聞だけでは困ります。

私は下の写真にある業務用シンチレーション・サーベイメータ を使い、地元大学の専門家と共同作業で、数十箇所の測定をしました。

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その結果は逐一公表しています。記事の右脇のカテゴリーから「原子力事故」に入れば、山ほど記事があるはずです。
少しは読んでから来なさい。

また、これらの専門家は福島県内の農地や山林、湖水などを計測しました。
その詳細な記録はこのブログでも公表しています。
下図は、もっとも初期の11年9月に、福島県山木屋地区標高600mの福島第1原発側斜面で、新潟大学・野中昌法教授が行なった壌に対するセシウムの沈着状況の計測結果です。

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 ●山木の土壌の放射性物質分布
・A0層(0~7㎝)・・・・98.6%
・A1層(7~15㎝)・・1.4 
(2011年9月測定)

つまり、山林では事故当初の地層(地表下7センチくらい)に大部分存在し、それに毎年上から地層が重なるために地表線量は著しく低下していくことがわかりました。
これと同じ減少は畑でも観察されました。畑の場合、地中の粘土にトラップされて利用できなくなります。
湖水も同じ現象が見られました。
住宅地では雨水と共に放射性物質が移動するために、下水路や雨樋に多く検出されました。

確かに放射性物質の半減期は理論的には数十年ですが、現実には放射線量は自然の営みによって急激に低下することがわかりました。

これらの事実を知る努力を、私はできるかぎり骨身を惜しまず払ったつもりです。
風評に踊らされる前に、そのような努力を自主避難者の人たちはしましたか?
ただ怖い、恐ろしいだけではありませんでしたか。

「被曝してからでは遅い」と怯えるところまでは当時の私も一緒でした。
誰も民主党政府が満足な調査を公表しないのですから恐ろしかったのです。
しかし問題はそこからです。自主避難して家族がバラバラになるくらいなら、自分の足で調べ、自分の頭で考えるかどうかです。
風聞の濁流に家族を委ねてしまったのが自主避難者の人たちです。

当時も風評に加担しない放射線医学の研究者や医師も多くいたはずですが、この研究者たちの言論にまったく耳を貸さず、「東電のイヌ」とまで罵って葬ろうとしたのは、まさにこの人だちではなかったのでしょうか。
なにが「当時の状況を理解していない」ですか。ふざけるな。
私はまさにその中に生きていたのです。

私たちが戦っているまさにこの同時期に、ふるさとを捨てたのが自主避難者でした。
ふるさとと家族守って放射能禍と戦ったのか、逃げたのかの差です。

逃げたこと自体を批判しようとは思いませんが、当時、いまそこで頑張っている私たちに対して遠方から聞くに耐えないことを言っていたのが、反原発運動家となってしまった自主避難者の一部の人たちでした。

なお、私が知る友人たちのように多くの自主避難者は、新たに住みついた土地に溶け込む努力をし、静かに暮らしています。
かれらに対していかなる非難もする気はありません。心から気の毒だったと思うだけです。
今の土地で安らかに暮らしていることを願うばかりです。

この自主避難についてのやりとりはこれで終了します。
先の記事の論点は自主避難者にはないことはわかるとおもいますし、いまさら自主避難者について議論を蒸し返す意味はないからです。

なお「名無し」というHNは責任があいまいですし、複数いるので使えません。

2014年8月14日の記事を再録しておきます。

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スピリッツ2014年24号 「美味しんぼ」より引用

うちなーさんが、原発自主避難者について書いています。沖縄問題とはそれますが、こちらから先にいきます。 

うちなーさんはこう述べています。

「私自身、東日本大震災・福島第一原発事故後、沖縄県の避難支援援助があり、福島他避難の呼びかけを続けて来ました。多くの方は初期被曝をされ、健康被害を訴えています。甲状腺の異常、目の異常、疲れやすい、だるい他様々です。
事故後は原発のない沖縄へ東北・関東以外全国から避難移住しているのが現状です。母子避難、一家バラバラ、多くの方々が精神的、金銭面と苦しみの中で暮らしています」

困っている人を支えようという気持ちは尊いものです。 
しかしこの「自主避難者」と名乗る人達が、ほんとうに悲劇的な人々なのかどうなのかについては大いに異論があります。 

なにより、自主避難者の人達が避難した理由です。それは被爆の恐怖ですが、うちなーさんは彼らが、「甲状腺異常、目の異常、疲れやすい、だるさ」を発症していると言っています。 
こういう病気に関することは明確に言っておくほうがいいとおもいますのではっきり言いますが、ありえません。これは福島で住み続けている人々が圧倒的多数な以上、私はこう思ったなどという主観では済まされないことなので、明確に否定しておきます。 

Photo スピリッツ前掲

これに類似した訴えに例の「美味しんぼ」で妙に有名になった鼻血がありますが、すべて根拠のないデマの類です。 

というのは、被爆が原因と思われる「耐えがたい疲労感」、鼻血などは医学的に定義されていて、それは急性被曝症状以外ありえません。 
非常に高い放射線を一時に浴びた場合、鼻血や「耐え難い疲労感」が出る場合があります 
その時の放射線量は一体どれだけだと思いますか。いいですか、500ミリシーベルトですよ。 

100ミリシーベルトを超えた場合は、確定的影響が出ます。つまり確実に急性放射線症が出るのです。 

ですから、もしほんとうに自主避難者が「耐えがたいだるさや疲労感」を訴えていて、それがうちなーさんが言うように「初期被爆」が原因ならば、その人は一時的に非常な高線量を浴びた可能性があるわけです。 
もしそうならば、直ちに専門医を受診してホールボディカウンターで、体内の放射線量を測定してもらうべきです。 

しかし私の知る限り、その人が原発建屋内にでも防護服なしでいたのなら別ですが、福島県内において、ましてや他県で500ミリシーベルトを超える被爆地域は存在しません。 

福島において原発近隣県民が事故時に浴びた放射線量の平均は24ミリシーベルトです。この線量で急性被爆症が出ることは100%ありえません。 
したがって、自主避難者の「自覚症状」は、精神的ストレスによる心気症(※欄外参照)である可能性が高いと思います。

こういうなんでもかんでも被曝と結びつける精神の傾きを、あの小出裕章氏がうまいこと言っています。

疫学調査を経ないまま『福島でこんな障害が』とすべてを被曝にむすびつけるでたらめも多い」(ニューズウィーク2013年月11日号)。

まさにその通りです。この脳内地獄症候群の人たちは、なんでも被曝に結びつけたがります。  
そして小出氏は、それが必ずしも反原発運動とは関係ないと見抜いています。  

「(反対運動の新規参加者は)原子力に反対なのではない。と小出は言う。自分のところに火の粉が降りかかるのを恐れているだけだ」(同) 

では、小出氏が言う疫学的調査結果をみます。 

2011年夏という自主避難者が避難を開始し始めた時期に既に完全ではありませんが、政府のホールボディカウンターを使った疫学調査結果は出ていました。  

・2011年9月末までの福島県の住民4463名の内部被曝の疫学調査結果

・最大数値であった3ミリシーベルト・・・2人
・2ミリシーベルト           ・・・・8人
・1ミリシーベルト以下     ・・・・4447人

セシウムが女性の卵巣に影響を与えるとすれば、750ミリシーベルト以上の被曝線量が必要です。それがチェルノブイリでの疫学調査の発症ラインだからです。
セシウムは筋肉などに蓄積する性格をもっていますから全身均等被曝します。一定の臓器に蓄積されることはありません。 

百歩譲って、卵巣にのみ蓄積されたとしても、福島の最大内部被爆量3ミリシーベルトは、チェルノブイリの750ミリシーベルトの、250分の1でしかありません。
これで福島の女性が不妊になる、あるいは先天性奇形を出産することは断じてありえません。
また甲状腺ガンの可能性は、原因物質の放射性ヨウ素は8日間ほどで急激に減衰するのですが、その間に適切な摂取制限がなされたために事なきを得ています。

福島の千名を超える子供たちを対象に甲状腺の被ばく量を測定した結果、最大値でも35ミリシーベルトです。
チェルノブイリでは実に10シーベルト(1万ミリシーベルト)という途方もない高線量の牛乳を子供に与えるという重大ミスをしているのとは、根本的に異なっています。

なお、甲状腺の被ばく量としては、50ミリシーベルト以下ではがんは増えないという放射線医学の知見があります。
それを裏付けるように今年4月に出た国連科学委員会(UNSCEAR)の最終報告書によって完全に否定されています。

「人々が自身や自分の子どもの健康への影響を懸念するのは当然のことである」とUNSCEARの議長、カール=マグナス・ラルソン氏は述べ、「しかし、本委員会は、今回の評価に基づき、今後のがん統計に事故に伴う放射線被ばくに起因する有意な変化が生じるとは予想していない」との見解を示している。
これらの解析結果は、様々な集団(小児を含む)の被ばく線量の慎重な推定と放射線被ばくを受けた後の健康影響に関する科学的知見に基づいている。
解析によれば、対象とした集団のがん発生率への影響は小さいと予想されるとし、これは日本の当局側が事故後に講じた迅速な防護措置に拠るところが大きいとしている」
(国連広報センター
 http://www.unic.or.jp/news_press/info/7775/

したがってうちなー氏言うような、初期被爆による放射性ヨウ素を原因とした甲状腺異常の増加は、現時点でありえないと断言します。

Photo Photo スピリッツ前掲

もし、自主避難者の方で甲状腺異常があるのなら、彼女が2011年3月中に暮らしていた場所、野外にいた期間、摂取した食物、検診の有無などについて本土の専門医に相談されることをお勧めします。

ところで、今回の事故で100ミリシーベルトを超えた地点は皆無です。
この100ミリシーベルト以下のいわゆる低線量の有害性については分からないと言う人が今でもいますが、これくらい研究されて疫学的実証データを持っている分野は医学では稀なほどです。

医学者が「わからない」という表現をするのは、「解明されていない」という意味ではなく、「100ミリシーベルト以下は確率論だから発症するかどうかはわからない」という意味です。
これを運動家やマスコミの一部はねじ曲げて、今でも「健康被害が出るかどうかわからないのだから、ほら見ろやはり危険なのだ」と言っています。

もちろんこれで安心することなく、今後とも長期間の検診活動を続けていかねばなりませんが、むやみと体調不良を被曝と結びつけることはむしろ健康にとって有害だと思います。
ところが、現実には「福島浜通りの女とは結婚するな」「福島に子供は行くな」「福島は人が住む所ではない」という差別が発生しました。

昨今でも、室井佑月氏が子供を修学旅行に行かせるのは反対という発言をしています。
後にも触れますが、今でも自主避難者の中には福島県産農産物を拒否する者が多くいます。
このような根拠のない福島差別や恐怖は、かえって福島の復興を遅らせていることを自覚したほうがいいでしょう。

そもそも、自主避難者の多くは福島県外から出ています。千葉、茨城、神奈川などといった遠距離地域においてはまったく避難する必要はなかったのです。必要がないのに武田邦彦などの放射能詐欺に騙されて避難したにすぎません。 

ところで、うちなーさんがおっしゃるように、沖縄県は最多の避難者678名を受け入れていますが、地元の給食センターで福島県産農産物を使うななどと陳情し、摩擦を起こしています。 

「事故後しばらく、『沖縄に避難したいが、福島産米を使っているようだ。大丈夫なのか』といった電話が相次いだ。多くは福島県以外の人だった
沖縄は本県産米の全国有数の消費地で、給食も原発事故以前は2割が本県産米だった。2012(平成24)年度以降は使っていない」(福島民友新聞14年1月4日)
 

また、那覇市で青森からの雪のプレゼントの行事を企画した「はぐくみ児童クラブ」で三線を指導する当間栄助氏は、こう述べています。

「ウチナーンチュ(沖縄の人)は避難者に同情的だが、避難者が放射能への不安を強調すればするほど『避難者こそ放射能を運んできたのでは』との反感が生じる。避難者は自ら、沖縄で暮らしにくくしている』と残念そうな表情をみせる」(同)

 このような自主避難者の過激な行動は当然のこととして地元の顰蹙を買い、いっそう受け入れ地域と摩擦を起こして、住みづらくなり、またストレスが溜まり心気症が募り、それをツイッターなどで仲間内に拡散して尚更ひどくなる、という悪循環に陥っています。

そしてうちなーさんがこのように言うとおり一家離散です。

「母子避難、一家バラバラ、多くの方々が精神的、金銭面と苦しみの中で暮らしています」

そして、避難したくなかった夫や子供とのいさかいは絶えず、避難先では仕事も見つからずに収入が激減し、一家離散の人達も多く出ているのが現状です。

これは誰を恨んだらいいのでしょうか。一般的に原発を恨むのは筋違いです。放射能の健康被害を隠している政府?それは妄想です。

その恨みは、騙した人間たち、あえて名を記して記憶に留めますが、上杉隆、岩上安身、早川由紀夫、そして誰より武田邦彦といった醜悪なデマッターたちに向けられるべきです。

事故直後は誰しもパニックになったものです。しかし3年もたって、これだけ福島事故の情報が出ているのに、いまだ放射能パニックが治癒しないとなると、もはや単なる愚行にすぎません。

自主避難者は、早く脳内被爆地獄から覚醒して、故郷に戻って元の穏やかな生活を再開すべきです。 

心気症は、重大な病気にかかっているという恐怖感にとりつかれる障害です。
心気症は20~30歳で起こることが最も多く、男性にも女性にも同程度にみられます。心気症の人には、うつや不安もみられる場合があります。
心気症の場合、重大な病気にかかっているのではないかという患者の心配は、体の正常な機能についての誤解から発していることがよくあります。
医師が診察して心配ないと説明しても、不安は解消されません。心気症の人は、医師が病気を見落としているのではないかと考えがちです。
『メルクマニュアル医学百科』より抜粋)

 

 

2019年5月24日 (金)

ロシアの仕掛ける「情報戦」

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丸山穂高氏がさんざんな目にあっているようです。例によって週刊誌に当夜の行状まで暴露されるありさまで、ここまでするのかというかんじですが、私は同情していません。
というのは、いま仕掛けられているのは大きな意味でのロシアの「情報戦」だからで、それに自ら飛び込むような人物には同情できないからです。

少し前のことですが、2019年版の外交青書から「北方四島は日本に帰属する」との記述が削除されました。
これはロシアが「北方領土交渉とヤポンスキーが称している事自体が間違いだ」、といった発言に対応したものだと考えられています。
また2島先行返還論も同じく、過剰なロシアに対するおもねりとも言える「配慮」からきています。

確かに、中国の軍事大国化の最前線に立たされているわが国が、背と腹に敵対国家を受けることは外交・安全保障上、賢明ではありません。
日本にとって最悪の国際環境は第1に日米同盟の消滅であることは自明ですが、第2に朝鮮半島が丸ごと反日核武装国家となることです。
第3に、ロシアと中国が強力な反日共同戦線を締結してしまうことです。

これらの現象が次々に起きると、わが国はぐるりを敵国に囲まれて、かつての大戦前段に酷似した状況に追い込まれます。
いや、核兵器保有国に包囲されていることを考えると、大戦前夜より厳しいかもしれません。

ですから、現在の中露の準同盟を分断し、すり寄ってくる中国に悪い顔はせず、韓国に対しても核を持った統一国家などという悪い夢から覚めて貰わねばなりません。
そして第3にロシアとの緊張を和らげ、さらには中国と同盟関係を止めさせることです。
ですから、この間のロシアに対する4島一括返還論の事実上の放棄、北方領土呼称を止めるなどの措置は、領土交渉にポイントがかならずしもあるわけではなく、日露友好条約締結の方にむしろ重点があるのです。

現に、大塚訪問団長などのかつての島民はもはや帰還を望んでおらず、4島周辺の漁業権を取り戻したいというのが本音です。
ここが住民が多く県民が居住していており、祖国に復帰することを熱望していた沖縄とは異なるところで、あえて言えば急ぐ必要はないとも言えるところです。
といっても交渉事には時の勢いというものがありますから、それを逃すと次にそれが訪れるまで十数年待たされることになるのですが。

ところでソ連が崩壊した後、米国などの自由主義陣営には甘い見通しがありました。
冷戦の勝利によって得た米国一強の世界が、永続的に続くだろうという夢想です。
この米国一強の夢は、21世紀の冒頭から始まる中国の台頭で打ち破られることになるわけですが、ロシアも一時の国内体制の崩壊からプーチン独裁によって立ち直り、かつての米国に匹敵する軍事力を回復しつつあります。

英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の上級コンサルティング研究員キア・ガイルズはロシアによる外国の政府や選挙に浸透する戦略が復活したと分析しています。
(木村正人「ロンドンでつぶやいたろう」による)

①偽情報などロシアの情報活動予算は年30億~40億ドル(約3300億~4400億円)。人員は1万5000人。サイバー技術など新たな手段を加え「偉大なロシア」を復活させるというイデオロギーを広めている。
②)07年にバルト三国のエストニアが大規模なサイバー攻撃を受けたのをはじめ、ジョージア(旧グルジア)やウクライナに実際の武力と情報攻撃、サイバー攻撃を組み合わせたハイブリッド攻撃が仕掛けられた。
③EUに人を混乱させるための偽情報・サイバー攻撃を仕掛けている。
④16年のリトビネンコ暗殺事件や18年のスクリパリ暗殺未遂事件などプロパガンダと暗殺を組み合わせた作戦を展開している。
⑤シリア空爆で欧州難民危機を作り出し、「政治的な武器」として使用している。
⑥石油・天然ガスを外交上の脅しに使っている。
⑦外交上の反動を避けるため、情報活動をオリガルヒ(振興財閥)やトロール部隊、犯罪組織のネットワーク、ハッカーに外注している。

ロシアの基本的なやり口はソ連時代からなにも変わっていません。
強力な軍隊を背景に、相手国の内部深くスパイ網を張りめぐらし、要人を手なずけ、情報を流させるといった古典的な方法以外に、今や世界有数のサイバー戦争能力を持つに至りました。
サイバー攻撃により、相手国の秘密情報にハッカーしたり、自国に有利な方向に仕向ける偽情報を流す世論操作さえ厭わないとされています。

ちなみに、中国はロシアと一番弟子で、北朝鮮は二番弟子格だったのですが、今や弟子筋の中国のほうが予算やそのエグサにおいてロシアの上を行ってしまったようです。

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自由党党首シュトラッヘ副首相 ロイター

それはさておき、最近のロシアの情報戦の実態として、たとえばオーストリアでは右派政党の自由党党首シュトラッヘ副首相がロシア絡みの汚職疑惑で引責辞任させられていますが、これはロシアのトラップにかかったものだと言われています。 

このオーストリア自由党は1950年代にナチス協力者が結成したもので、連立で内相、国防相、運輸・技術革新相の重要ポストを得て、外務・欧州・統合相にも自由党系の学者を送り込むことに成功しました。
その上に、オーストリアの3つある情報機関も支配下に収めました。

この情報機関は、今までのオーストリア国内での右翼やネオナチに埋め込んだスパイに関する書類を持っていましたが、武装警察に急襲されて押収されてしまいました。
その上この自由党は親露であり、政権入りする前にプーチンと政策協定すら結んでいます。
このシュトラッヘ副首相とロシアの蜜月の背景には、ロシアが仕掛けたハニートラップがあったようです。

「副首相は総選挙を控えた17年7月、スペインのイビザ島で、ロシアの投資家でオリガルヒ(新興財閥)の姪と称する女性に「大衆紙を支配して有利な報道をしてくれたら公共事業を受注させる」とほのめかしている様子が長時間にわたって隠し撮りされていました」(木村前掲)

このような「情報戦」を相手国に仕掛けるのを常道としているロシアにおいて、丸山氏が「女の子のいる店」にでかけなくてつくづくよかった思います。
まず間違いなく、あのように酒にダラしなく、酔えば本音を垂れ流すような子供ぽい政治家は、たわいもなく「店の女の子」のハニートラップにかかったでしょうから。

ハニートラップにかからずとも丸山氏は、「ロシア様に謝れ」という声を世論にしてしまっただけで、十分にロシアに利益となる働きをしたと言うべきなのかもしれません。

 

 

 

 

2019年5月23日 (木)

福島が復興するのがそんなにイヤか、朝日新聞

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あいかわらず朝日新聞は福島原発事故が終息するのがいまいましいようです。「福島復興を演出する政権 避難者少なく見えるカラクリ」というアジビラもどきの見出しをつけた5月20日の朝日の記事です。

「世界最悪レベルの事故を起こした東京電力福島第一原発。4月14日、メルトダウンした1~3号機から100メートルほど離れた海抜35メートルの高台に、安倍晋三首相は防護服とマスクをつけず、スーツ姿で車から降り立った。
 東電側から廃炉作業の現状について説明を受けた首相は「防護服に身を固めることなく、スーツ姿で見られるようになった。着実に廃炉作業も進んでいる」。視察後の作業員らとの懇談でも「5年前に視察した時は防護服に身を固めた。今回はスーツ姿で視察ができた」と繰り返した」(朝日新聞5月20日)
https://www.asahi.com/articles/ASM5J5RS7M5JUTFK01G.html

まだこんなことを言ってるんでっかぁ、アホとちゃうか。
この記事の一行目から印象報道をしています。「世界最悪レベル」というのは福島事故が「レベル7」だったことを指すのでしょうが、こういう表現をすれば「チェルノブイリと並ぶような世界最悪の事故だった」という印象を与えることができます。

強い印象を与えるワード、この記事なら「世界最悪レベル」という言葉をぶつけて、見る人の意識をメディアの思うがままの一定方向に誘導することを印象操作と呼びます。

現実にはチェルノブイリと福島は原因も規模も違い、したがってその後の影響も大きく異なっています。これについては過去記事で何回かとりあげました。
関連記事「国連科学委員会 (UNSCEAR)報告書「福島事故とチェルノブイリとは違う」http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-ff6a.html

チェルノブイリは黒鉛炉の操作ミスによる原子炉の暴走事故でしたが、福島事故は宮城県沖の大地震により発生した17mもの津波により全電源が水没した、全交流電源停止により発生しました。
これにより放出された福間事故の放射性物質は、チェルノブイリと比較してひとケタ違います。

7https://synodos.jp/science/15817/2
「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」
「文部科学省による、ストロンチウム、プルトニウムの核種分析の結果について」
UNSCEAR 2013年報告書」

福島事故の科学者による評価は定まっています。各国の専門科学者によって作られた国連科学委員会(UNSCEAR ) はこのような評価を国連総会に報告し、承認されています。 

●国連科学委員会 (UNSCEAR)報告書要旨
①日本国民の総被曝線量(集団線量)は、甲状腺がチェルノブイリ原発事故の
約30分の1
②全身が10分の1
③チェルノブイリと比べて、放射性ヨウ素131の総放出量は3分の1未満
④セシウム137は4分の1未満
⑤ストロンチウムやプルトニウムは「非常に微量」
⑥(がんが増加しても非常に少ないために)見つけるのは難しい
⑦「福島はチェルノブイリではない」

この評価を覆す事実はいまだに発見されていません。
ですから、8年もたってなおことあれかしと熱望する人たちは、飽きもせずに自分の脳内地獄を宣伝し続けていますが、そんな所業は福島の復興を妨げるに等しい行為です。
そんなに脳内地獄が溢れ出して困るのならば、自分の家の裏庭の壺にでもゲーゲー吐き出すんですな。

 

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出典不明

この反原発主義者たちとそっくりの手口を使っているのが朝日です。
今回の朝日の記事は安倍憎しが宗教化しているいかにもこの新聞らしいものですが、問題視されたスーツ姿での視察のいったい何が問題なのでしょうか。

だが、1〜3号機周辺の屋外で、防護服とマスクをつけないことが許されるのはバスの車内と視察用の高台だけで、高台視察は6分ほど。高台の放射線量は毎時100マイクロシーベルト超と高く、長居は許されない 」(朝日前掲)

朝日にかかると、安倍氏はオリンピックへのスタンドプレーがしたくて、あえて一般服で視察するというパーフォーマンスをしてのけたということのようですが、
嘘です。
防護服をつけないで住むエリアは、朝日が書くように「視察用のエリアとバスの中だけ」ではありません。いまや96%のエリアが一般服での作業が可能です。少しは調べて書きなさい。
これは秘密でもなんでもなく、東電は一般の服装で歩ける場所を公表しています。安倍氏は一般服のエリアを歩いたにすぎません。
下の東電が出している構内作業環境区分けをご覧下さい。
http://www.tepco.co.jp/decommission/progress/environment/index-j.html

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東電「福島第一原子力発電所の作業環境 」
※11~3号機原子炉建屋内、及び1~4号機タービン建屋並びに周辺建屋のうち滞留水を保有するエリア
※2黄色点線のY zoneは、濃縮塩水等を取り扱う作業など汚染を伴う作業を対象とし、パトロールや作業計画時の現場調査などは、G zone装備とする
なお、上図以外においてもG zone内で高濃度粉じん作業(建屋解体等)や濃縮塩水等のタンク移送ラインに関わる作業を行う場合は、Y zoneを一時的に設定する
※3図中のG zoneの他、共用プール建屋2、3階の一部エリアも対象とする

東電はこのように解説しています。

「福島第一原子力発電所では、工事の内容や作業エリアなどによって、防護服やマスク等の着用基準を設けています。除染や地面の舗装等で放射性物質濃度が下がるなど、基準を満足した場合には、作業員の身体的負荷の軽減や作業効率の向上を目的として、順次、一般服エリアを拡大しています。事故当時は、敷地全体のエリアで防護服と全面マスクの着用が必要でしたが、今では敷地全体の96%のエリアで、一般服と防塵マスクでの作業が可能となっています」(福島第一原子力発電所の作業環境 図と同じ)

朝日が何を根拠に「一般服で歩けるのはバスの中と見学用高台だけ」と書いたのか知りませんが、ろくすっぽ裏付け取材をしなかったことだけは明らかです。

事実は96%のエリアで一般服と防塵マスクなしで作業ができます。
上図の赤く塗られた原子炉施設内がアノラックエリア(Rゾーン)、原子炉施設周辺が黄色のカバーオール(Yゾーン)、大部分の一般副エリアが(Gゾーン)と区分けされています。

朝日は、「5年半ぶりとなる原発視察。首相周辺は、防護服やマスクをつけない姿をメディアに取り上げさせることで見栄えを良くし、「復興の進み具合をアピールすること」を狙った」(朝日前掲)と書いていますが、まったく見当違いです。
ならば朝日は安倍氏が、かつての枝野氏のように全身防護服に身を固めてマスクをして視察に行き、作業員とゴム手袋をしたまま握手でもすれば満足だったのでしょうか。

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安倍憎しは不治の病ですから苦笑して済ませられますが、福島復興にまで冷や水をかけるような報道は止めていただきましょう。

またここで朝日はこの記事で、自主避難者を切り捨てて「避難者を少なく見せよう」としている」という書き方をしています。
朝日がいう「避難者」は自主避難者を水増ししたものです。
自主避難者は避難者とはまったく別物です。しっかり区別して考えるべきです。
避難者とは、現時点で福島市がHPで公表している下図のピンクに塗られた居住禁止区域の住民のことです。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list271-840.html

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この自主避難者は各地で訴訟を起こし、一部で勝訴していますが、その中には福島県内ならいざ知らず、神奈川、東京、千葉などの人も含まれていています。
訴訟内容は平均数百万から1500万円で、本来彼らが受け取るべき補償額の一部だとしています。
いわば、政府が定めた避難区域に、「自主避難区域」とでもいうべき枠を作って、同様の補償金を寄越せということのようです。

「東京電力福島第一原発の事故の影響で、神奈川県に避難をした60世帯175人が東電と国を相手取り、計約54億円の賠償を求めた訴訟の判決が20日、横浜地裁であった。中平健裁判長は東電と国の責任を認め、原告152人について、計約4億2千万円を支払うよう命じた。
福島第一原発の事故を巡る集団訴訟は全国で約30件起こされており、判決は今回で8件目。8件すべてで東電に賠償が命じられ、国が被告となった6件のうち5件で責任が認められた」(朝日2019年2月20日)
https://www.asahi.com/articles/ASM2M6FT5M2MUTIL050.html

彼らの中は避難地域の人もいますが、いわゆる自主避難者も多く含まれています。
では、自主避難する必要があったのかどうか、2011年9月、福島事故から半年後の東日本の放射線量をみてみましょう。

●東北、関東の空間放射線量(2011年9月4日午前9時~5日午前9時)
・福島県浪江(避難区域)・・・15.5マイクロシーベルト
・福島県福島市      ・・・1.2
・茨城県           ・・・0.083
・千葉県           ・・0.043
・東京都           ・・0.056
・神奈川県         ・・・0.049
 

これが事故当時の福島の南方にあたる関東の数値ですが、東京、神奈川に行くと、福島より100分の1にまで放射線量が下がることが分かります。
まったく避難する必要はありません。

放射能の影響がなかった当時の大阪の放射線量と比較してみれば、その馬鹿馬鹿しさがお分かり頂けると思います。

・大阪府           ・・・0.076マイクロシーベルト 

大阪のほうが関東より高い放射線量なことがわかります。
仮に関東全域が危険ならば、大阪も避難区域に入れなければなりません。

要は、この自主避難者の大部分は、武田邦彦・早川由紀夫・岩上安身・バズビーなどの煽動に乗って、その必要がないのに自分の脳内ディストピアに怯えて、政府の指示とは無関係に勝手に逃げただけの人たちのことです。
このような自
主避難者まで一般的な避難者の枠組みに入れて補償金を支払うならば、当時逃げなかった私たちなどはどうなるのでしょうか。
風評に惑わされず、生きてきた土地に止まって自分の地域の放射線量を計測し続け、勇気を奮い起こして復興に立ち向かった多くの現地住民のほうが馬鹿ということになりはしませんか。これでは逃げ得です。

反原発主義者は衰退する一方の運動を続けたい政治的思惑から、「自主避難者が帰還できないかぎりフクシマは終わらない」と言っていますが、そんな脳内地獄まで面倒は見切れません。
自分で公表された資料を読み、自分の力で脳内地獄から脱洗脳するしかないのです。

このように朝日の記事は、自分がまき散らした「プロメテウスの罠」における鼻血デマをろくに総括もしないうちから、新たなデマをふりまいて福島の復興を妨害しようとしています。

 

 

 

2019年5月22日 (水)

ファーウェイ排除進む

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ファーウェイが詰みました。
5月15日、トランプは米民間企業によるファウェイ製品の調達を事実上禁じる大統領令に署名し、米商務省も輸出管理法の運用を強化することを命じました。
これにより、米企業によるファーウェイへの部品やソフトの供給路は遮断されます。

「ワシントン 15日 ロイター] - トランプ米政権は15日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]が米政府の許可なく米国の重要な技術を購入することを禁止するとともに、国家安全保障を理由に米国の通信ネットワークから同社の製品を事実上排除する措置を発表した。 
ファーウェイは部品調達を米国のサプライヤーに頼っているため、今回の2つの措置によって多くの製品の販売を継続することが難しくなる可能性がある。
米国は現在、中国と関税強化の応酬を繰り広げており、今回の発表は米中関係にとって微妙なタイミングとなった」(ロイター5月16日)

これに先立ち、グーグルはファーウェイのブラックリスト入りを受けて、アンドロイドOSの供給を止めるなどの措置をとりました。
このグーグルの禁止措置により、ファーウェイはスマホの基本ソフトを使用できなくなり、更新プログラムへのアクセスも不可能となりました。
つまり、現在中国国外で今後発売される新モデルのファーウェイスマホでは、他の互換ソフトに入れ換えない限り、アプリもメールも使えずないただのドンガラと化したわけです。
OSのスタンダードは数種類ありますが、いずれも米国です。通信機器のハードは、設計段階からOSに最適化されて作られているために必然的にそうならさるを得ません。

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ではファーウェイにグーグルの代替えがあるかといえば、泣き面に蜂で、グーグルに追随して、インテル、クアルコム、ザイリンクス、ブロードコムなどの米IT企業も、ファーウェイへのアプリやソフトウェアなどの提供を停止してしまいました。
クァルコムは従業員にファーウェイとの連絡すら禁じたそうです。よくこれだけ嫌われたもんです(苦笑)。 
ファーウェイはこの秋にも代替えOSを出すと言っていますが、中国はその努力をせずにここまでのし上がってきたわけで、万人がみるところおそらく使いものにはならないでしょう。
ハードをまねるのは競合製品をバラバラにしてそっくりさんを作ればなんとかなりますが、膨大な知見と経験の上に成り立っているソフトは簡単にはパクれないのですよ。

下は中国空軍のJ-16とロシアのSu-30、Su-27UBですが、ほとんど見分けがつきません。
中国がロシアから大量購入をエサに実機を買い取って、総パクリして「独自製品」を作ってしまったからです。
パクっただけならまだしも、それを外国に輸出までしてしまうというのですから心臓に毛が生えています。
これがチャイナの流儀です。

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上から中国空軍のJ-16とロシアのSu-30、Su-27UB

中国系企業は典型的なキャッチアップ・ビジネスモデルで、先行する米国の成功モデルを技術ごとコピーして、米国製のソフトを乗せてそれをグローバル市場に安売りすることで成立してきました。
ですから、世界のサプライチェーンと販売ネットワークが前提としてあっての今の繁栄だったわけです。
ここから遮断されれば、いくら5Gの覇者を目指すと息巻いてみても、ファーウェイにはかんじんな製品を作る部品やマザーマシーンも気の利いた独自ソフトすらありません。
これらは日米欧の独壇場だからです。
したがって、テキメンにこの兵糧攻めは効果を現すでしょう。もはや時間の問題です。

中国のこのキャッチアップ戦法は一定のところまでは通用しました。
国営企業として国家から潤沢な資金と補助を貰って、先行する日米欧企業のまねさえしていれば済んだからです。
しかし今や、世界のサプライチェーンから追放され、単独で新たなビジネスモデルをいちから構築せねばならないことになりました。
ステーブ・ジョブズのようなまったく新しいビネスモデルを作る柔軟な発想を持つ人材が、中国社会から生まれるわけがないのです。
そもそも中国のような世界一の監視社会には、自由な想像力と思考を持つような人材はいられないからです。

そういえばこのファーウェイという企業は、監視社会システム作りのために中国政府が作ったような国営企業でしたっけね。
元来がただの携帯会社ではなく、他人の個人情報に忍び込んだり、外国企業の技術情報を盗むのが本職のような会社だったのです。
関連記事「ウィグル監獄社会」http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-7215-1.html

中国全土は人類がいまだ経験したことのない監視社会ですが、特に新疆ウィグル自治区は、「世界でも有数な強力な監視システム」(ニューズウィーク1918年10月23日)が張りめぐらされています。 
中国が外国企業から盗んだ最先端技術は、集中的に少数民族弾圧に用いられました。 
ガソリンスタンドに行けば顔認証によって身元を確認され、WI-FIを利用すれば、その通信記録は当局に傍受され、記録に残されます。
中国で電子マネーが優勢なのは、個人のカネの出し入れが当局に監視できるからです。 

中国国民はひとりひとり持ち点を与えられて、反共産党的行為や言動をすればどんどんと減点されて、しまいには労働改造所送りになってしまいます。
中国のIT企業がそろって共産統系国営企業なのは、この監視社会のシステム作りに携わってきたからです。
たとえば、ハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)は共産党系企業ですが、ダーファ・テクノロジー(浙江大華技術)と合わせて世界シェアの実に4割を独占する監視カメラの大手です。
http://www.security-d.com/hikvision/ 
これらの中国企業は、中国共産党、あるいは人民解放軍の指導の下に手厚い資金注入を受けて作られました。
ですからファーウェイを作った会長が、軍の情報関係の軍人なのはけっして偶然ではありません。

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ニューズウィーク1918年10月23日

このファゥウェイが世界の次世代通信インフラである5Gを支配してしまえば、どのようなことになるのか、想像をたくましくする必要はないでしょう。
企業や国家機関、そして個人にいたるまで中国共産党へ流れるバックドアが開通してしまうのです。
かくして世界の「ウィグル化」が始まります。

ところでそれにしてもこの徹底ぶりがトランプ流です。口先だけでノーベル平和賞をもらってしまった前任者のヘタレとは大いに違います。
トランプがいまやっていることはまさに弾の飛ばない「戦争」です。
ありとあらゆる中国からの物品に高関税をかけるだけでは終わらず、おもだった中国系IT企業をサプライチェーンそのものから排除してしまいました。

「トランプ米大統領はこの日、国家安全保障上にリスクをもたらす企業の通信機器を国内企業が使用することを禁止する大統領令に署名した。
大統領令は、非常事態を宣言して商取引を規制する権限を大統領に与える国際緊急経済権限法を発動するもの。発令を受け、商務省は他の政府機関と協力し、150日以内に実施計画を取りまとめる」(ロイター前掲)

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バリカンパーフォーマンスをされているレスラーがファーウェイ会長にみえます。
産経 https://www.sankei.com/world/news/151015/wor151015... 

スゴイですね。トランプは「国家安全保障」という概念を目一杯拡大解釈しています。
当初のファーウェイの政府調達をしないという段階から、さらに進めて「脅威となる外国企業の通信機器」を米国企業が使用する事自体にも禁止範囲を拡げました。
これにより名指しこそしていませんが、ファーウェイ、ZTE、チャイナモバイルなどは完全に米国市場から自動的に排除されます。

今回の措置はあくまでも大統領令による「非常事態を宣言」によるものですので(←ちょっと使いすぎだよ)、議会の反対がなければ150日以内に商務省が実施案にまとめます。
おそらくこの5カ月の間に中国が折れればよし(しないと思いますが)、仮に報復措置をとればいっそうハードルが高い制裁となってしまいます。

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今回の大統領令

これもトランプ流で、第1球はマイクパーフォーマンスよろしく、相手バッターがゲッというような高め一杯の危険球を投げて見せ、これに怒って相手が食ってかかってこようもんなら、待ってましたとばかりにおもむろに大統領令を抜いて見せ、それが実施段階にのぼる5カ月間に相手が膝を屈するのを眺めているという段取りです。

ここまで米国を怒らせた原因は、ワシントンと北京での準備会合を重ねておおむね実務者間では詰めの段階まで行っていたからです。
それを合意文書の字句にこだわってチャブ台返ししたのは中国の方でした。
事務方合意が出来上がり、6月の習の訪米でいったん中締めでシャンシャンとなる交渉予定でしたが、あろうことか中国が国営企業に対しての不当な援助の撤廃の一項にゴネだして白紙に戻してしまったのです。馬鹿ですねぇ。

これに激怒した(とみせかけた)トランプが第4弾関税攻撃をかけ、さらに今回のファーウェイの全面排除となったわけです。

では野党の民主党や、トランプの天敵のメディアは、バカヤロー右翼のトランプめと言っているかと思えば、これが驚いたことには逆です。
今回のトランプの措置に諸手をあげて賛成で、むしろ手ぬるいくらだと言いそうな雰囲気です。
つまり、トランプは対中イケイケドンドンといった挙国一致体制を背景にしているということになります。

いやまったく、怒った米国はホント恐ろしい。
つくづくこの国と二度と戦争してはいけないと思います。
反米ヒダリや愛国右の皆さんから、属国と言われようとポチと嘲られようと、どうぞご勝手になさって下さい。
日本の戦後が戦争なく過ぎたのは、対米路線の原則が間違っていなかったからです。
自民党がいかにダメダメであろうと、首相が短命で使えなくとも、経済が20年間衰退の一途をたどろうとも、異星人支配の3年半があろうとも、平和を維持し続けられたのは米国との同盟という岩盤の上に乗っていたからです。

 


関連記事
「吉田ドクトリン」いう知恵」  http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-0bb1.html
「吉田という「戦後の設定者」が見たら、今をどう考えるだろうか?」 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-6e61.html

 

 

 

2019年5月21日 (火)

丸山発言がロシア人に「分かりやすい」わけ

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昨日からの続きです。
今回の丸山発言のやり切れなさは、よりによってこれがビザなし渡航という日露信頼醸成措置の時に起きてしまったことです。

一般的にもビザなし渡航国は沢山ありますからゴッチャにされますが、逆にいえばビザをロシアに発給してもらうほうがおかしいともいえます。
だって、どうして自分の国行くのにわざわざ「ビザなし渡航」と呼ばねばならないんでしょうか。
ではそこから「千島連盟通信」から押えておきましょう。
http://4islands.jp/exchange/post-38.php

「平成4年(1992年)から始まった、日本国民と北方四島(択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島)に住むロシア人住民との相互訪問による交流のことです。
この交流は、旅券(パスポート)、査証(ビザ)なしで、外務大臣の発行する身分証明書などにより渡航が認められていることから、「ビザなし交流」と呼ばれています。
日本とロシアの間で未だ解決されていない北方領土問題が解決するまでの間、日本国民が北方四島を訪れ(訪問事業)、北方四島のロシア人住民が日本を訪問する(受入事業)ことにより、相互理解と友好を深めることを目的としています。
どのような人が北方四島を訪問できるのか?【訪問事業】
現在次の者が日本政府により訪問を認められています。
①北方四島に居住していた者等
②北方領土返還要求運動関係者
③報道関係者
④訪問の目的に資する活動を行う各分野の専門家」

元々、旧島民をはじめとする日本人が、北方領土にロシアのビザで入ることは、日本がロシアの実効支配を認めることになってしまいます。
だから外務省は渡航自粛を勧告していたのですが、パスポートやビザはなしで、外務大臣が発行する身分証明書などの簡単な手続きで渡航が認められる特別な仕組みを作ったわけです。
これが「ビザなし渡航」です。

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墓を修繕する元島民 FNN https://www.fnn.jp/posts/00345790HDK

では、これはただのといっては失礼ですが、元島民の墓参りや友好行事かといえば、違うと思います。
もちろんそれは大事なことですが、それで終わってしまっては北方領土返還交渉とはなんの関係もないイベントになってしまいます。
現実には開始から30年ちかく続けてくると、そうなりかかっていたのも事実なようです。
これを惰性に流れていると批判する若い人たちの発言を受けて、鈴木宗男氏が答えたのが2018年8月3日の渡航団の船中のことでした。

「皆さんビザなし交流だけでは意味がないんです。平和条約締結のための一つの手段としてやっているということを最初に共有しなければいけない。国民の税金を使ってるんです。全部日本人の税金ですよ?夕食会、昼食会、御馳走様でしたじゃない。こっちが金払っているんですから。これ、みんなわかってますか?」(FNN 2018年8月3日 )

一方、受け入れ側のロシア人の対応もこのようなものだと参加者は語っています。

「日本とロシアの主張は並行線なんだと今回の訪問でつくづく思いました。(日本人が)『ロシアで税金払って』暮らすなら、(ロシアは)大歓迎ってことなんです。そしてこの活動の意義を明確にしないことで得をする人もいるんだなって」(FNN前掲)

これは領土交渉が進展を見せるかに見えた昨今でも同様で、ロシア側は共同経済活動はウェルカム、人口が少ないからロシアに税金を払ってくれるなら住もうが、会社を立ち上げようがどうぞご勝手にという態度です。

つまり、ロシアにとって北方領土は、ロシアの主権さえ認めるならば、開かれた土地ですよ、といいたいようです。

一方、鈴木氏が言う「平和条約締結のための手段」という意味は、こういったビサなし渡航を継続する中で互いに悪気はないんだという信頼関係を作り出し、それを平和条約に結びつけていくという流れをつくるということです。
すると平和条約を締結するには、国境線の確定をせねばなりませんから、本腰を入れた領土交渉につながるということになります。

では「主権」とはなんなのかといえば、それは統治権という言葉に置き換えてもいいでしょう。
そこに住む国民のために行政を敷き、税金を徴収し、治安を守り、軍隊を置くという諸権利のことです。

したがって、ロシアは北方領土で十全に主権を行使し、強力な軍隊を置いています。

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北方領土で軍隊を視察するメドベージェフ  ロイター https://www.newsweekjapan.jp/koizumi/2017/02/post-6.php

だからロシア外相のように「北方領土返還と呼ぶな」とまで言ってのける始末です。
彼らからすれば、日本にとっては「不法占拠」だろうと、ロシア人が血を流して得た土地は神聖な領土だというわけです。

日本人は強固に「固有の領土」という意識を濃厚に持っていますが、ロシア人にはそんなシャレたものはありません。
そもそもロシア民族の概念にないのですから、ラブロフと話すことは、宇宙人と「領土」について話すようなものです。

その理由は、これは中国もそうですが、領土というのは、伸び縮みするゴム風船のようなものだからです。
ちなみに米国も似たようなもので、メキシコのような周辺国からはカリフォルニアやテキサスをむしりとって領土にしてしまいました。
共通するのは戦争に勝てば、領土というゴム風船はパンパンに膨張し、負ければ縮むということです。

ロシアの起源は、882年頃に成立したキエフ大公国ですが、最初の首都はキエフで、えっ、そこってウクライナのいまの首都なのではと思う方、正解です。
このキエフ大公国は1240年に、モンゴルによって滅ぼされ、その後、モスクワ大公国へとつながっていきます。
ここで首都がモスクワになるのですが、以後ロシア・ツァーリ国(1547年~1721年)→ロシア帝国(1721年~1917年)と発展しました。
この間、ロシアが何をしていたのかといえば、東西南北に冒険商人を派遣して居住地を作ると、そこに砦を作って軍隊を置き、ひたすら征服をしまくっては領土を城げていたわけです。
そしてとうとうロシア版の「約束の地」である太平洋を臨む極東にまで到達したのです。ウーラー。

つまり、ロシア領のほとんどすべては「征服した土地」であって、日本のような海に囲まれた列島とその周辺の島々という海で区切られた分かりやすい領土ではなかったのです。
もしロシアに「固有の領土」はどこだと問えば、キエフとモスクワ周辺のえらく小さな国になってしまうことでしょう。

ロシアの後継国家であるソ連において史上最大の版図と、多数の衛星国を従えるようになったロシアは、第3次大戦、つまり冷戦に負けてナイアガラ瀑布の滝下りを演じてしてしまいました。
ロシア本体はかろうじて保持したものの、ソ連邦として領土化していたベラルーシ、ウクライナ、バルト諸国は独立し、外周部だった東欧圏はごっそりと脱落しました。
ロシアからすれば、歴史的な大縮小です。

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ウクライナ紛争 http://freezzaa.com/archives/1079

縮むと悔しいので、また元の大きさにもどすべく陰謀をめぐらし、相手を挑発し、戦争をしかけようとしました。
中国の習の夢が「中華の夢」と称して最大版図だった清朝領土の復活であるとすれば、プーチンの夢は最大版図だったソ連の復活なのです。
こうして起きたのがウクライナ紛争です。
このウクライナ紛争によってロシアは、現代国際社会の「国境線の力による変更を許さない」という国家間原則に触れてしまい、経済制裁を食うはめになります。

このように見てくると、丸山氏が言った「北方領土は戦争でなければ戻らないのではないか」というのはあながち的外れではありませんでした。
ロシア人知識人からこのような質問をされたことがあると、小川和久氏は述べています。

「1875年、樺太・千島交換条約で、樺太はロシア領、千島は日本領と決められました。ところが日露戦争の後、勝った日本は南樺太を領有しました。もし第2次大戦がなくて、現在ロシアが南樺太を返してくれと言い続けていたら、日本は返還してくれたでしょうか?」

おそらくノーでしょう。ましておや、「固有の領土」意識がないロシア人なら、ということです。

と言ってしまうとこれで終わりになるので、ここからが勝負なわけです。
今までのビザなし渡航を、戦略的に平和条約締結にむすびつけていこうとする政府の思惑もその一環です。

ところが今回の丸山発言は、ロシアには変な「安心感」を与えてしまったはずです。

「日ロ関係の流れの中で最もひどい(発言だ)」と述べ、批判した。モスクワで開催された日ロ知事会議の会場で記者団に述べた。 コサチョフ氏は「そのような挑発的な発言ができるのは、存在する問題の解決を望まない人々だ」と語った。(共同5月14日)https://www.sankei.com/world/news/190514/wor1905140004-n1.html

ロシアは別に怒ってはいません。常識的なことをマルヤマは言っただけでのことで、それ自体に驚きはないはずです。
むしろそれにオタつく政党や、待ってましたとばかりにバッシングに勤しむメディアの様子を苦笑しているだけのことです。
たぶんロシア人はこう思ったはずです。

「なんだヤポンスキーも我々と同じ発想じゃないか。日露両国の信頼醸成が大事だ、共同経済活動だとアベは言っているが、本心は戦争で奪い返すっていうオプションも持っているだな。そもそも日本の親方は米国だ。米軍にクリル諸島まで出張ってこられたらたいへんだ。この話は引き延ばすだけ引き延ばして、むしるだけむしってやるきゃないか」、と。

 

 

2019年5月20日 (月)

丸山議員の戦争発言

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丸山穂高議員が袋叩きにあっているようです。なんでもロシアと戦争するの、しないのと言ったとか。
立憲や社民あたりが騒ぐならわかるのですが、所属していた日本維新の会からもバッサリと除名されて、議員辞職勧告までされそうな勢いです。

もっとも議員辞職勧告は法的拘束力がなく、かつて鈴木宗男氏への勧告が可決されただけで、すべて否決されています。
すると辞職勧告だけではなまぬるいと見たのか、維新がなんとロシア大使館に謝罪に赴くに至っては、さすがに私も呆れました。

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「日本維新の会の片山虎之助共同代表と馬場伸幸幹事長は17日午後、東京都内のロシア大使館を訪問した。ガルージン駐日ロシア大使と面会し、同党を除名処分となった丸山穂高衆院議員の戦争で北方領土を取り返すことの是非に触れた発言を謝罪した。 出席者によると、片山氏は「わが党にいた議員の発言で不快な思いをさせた。維新の考えでは全くない」と釈明した。
 タス通信によると、ガルージン氏は丸山氏の発言について「受け入れがたい」としつつも、この発言によってロシアと日本の関係発展が逆行することはないと表明。謝罪は「本国に伝える」と応じた」(共同 5月17日)

やれやれ、クリミアをむしり取り、ウクライナを侵略し、シリアの反アサド市民に爆弾を降らせているロシアに対して、「戦争」を口にしただけで平謝りですか。ナイーブなことです。
安倍自民党に配慮したのでしょうが、ここまで゙やる必要はありません。せっかく統一地方選で躍進したのに艶消しでした。

自民よりスッキリした保守政党をめざす維新が、このオタオタぶりはみっともない。
2島返還容認論の立場ですが、橋下氏もこんな言っていることですから、「丸山議員の言説は我が党の方針とは異なります」でお終いにしておけばよかったのです。

ちなみにその橋下氏のツイートです。

「これぞマーケティング政治の真髄。ポピュリズムと批判されるだろうが、今の世論ではある程度支持されると判断したのだろう。ロシアにも一切の返還を認めないという強烈な世論がある。再び戦争しない限りは妥協するしかない。2島決着に賛成だ」(2019年1月20日)

立場は円山氏とは違いますが、戦争で失った領土は戦争でしか戻らないとする認識は共通しています。
一般論としてはそのとおりなんですがね・・・。

さて丸山さんはよく言えばイキがいいというか、悪くいえば右寄りの過激な発言をしてきた人でしたから待ってましたとばかりニ標的にされてしまったようです。
こういう舌禍事件の時には、なにを言ったのか押えておきましょう。彼の発言は丸山氏のツイートにあります。

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 ま、このツイートで文字化されているだけなら問題とされるほうがおかしいと思えます。ところがこれは5月12日に酔いが覚めてから発信したものなのです。

問題はその前夜11日夜のことでした。
国後島に元島民で組織するビザなし訪問団との懇親会の時のことです。団長の大塚小彌太氏が同行記者団の取材に応じていたときに、どうやら丸山氏がからんたようです。

絡み酒の癖があるらしい丸山氏は、大塚団長に「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と議論を吹きかけたようです。
よくある議論好きの酔っぱらいがやりそうなことですが、内輪の飲み会でするならともかく、ロシアが実効支配している国後島でのビザなし渡航団という微妙なスタンスが分かっていてやっているとは思えません。

しかも相手が、長い時間をかけ粘り強い北方領土交渉に関わってきた大塚団長です。高齢になられてひとりふたりと欠けていく元島民の方ですから、デリカシーがないにもほどがあります。バカですか。
大塚氏が、「はい、戦争しましょう」なんて言うはずもなく、憤然と「戦争なんて言葉は使いたくない。戦争はするべきではない」とハネかえされました。

すると更に畳みかけるように、丸山氏は「戦争しないとどうしようもなくないですか」とやってしまいました。
大塚氏は内心、「なにが戦争だ、今までの交渉経緯も、いま首相が取り組んでいる領土交渉も知らないのか。このバカな若造め」、という気分だったのでしょう。

その丸山氏と大塚団長のやりとりのが明らかになっていますので、貼っておきます。
(高橋克己氏 アゴラより引用http://agora-web.jp/archives/2039115.html)

丸山穂高議員:「団長は、戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか?反対ですか?」
元島民・訪問団長:「戦争で?反対…」
丸山穂高議員:「ロシアが混乱しているときに、取り返すのはOKですか」
元島民・訪問団長:「いや、戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
丸山穂高議員:「でも取り返せないですよね」
元島民・訪問団長:「いや、戦争したって…戦争するべきではない」
丸山穂高議員:「戦争しないとどうしようもなくないですか? 僕らはその、いいならいいし…」
元島民・訪問団長:「…戦争なんてやめてください」
丸山穂高議員:「何をどうしたいんですか」
丸山穂高議員:「何をですか」
丸山穂高議員:「どうすれば」
元島民・訪問団長:「どうすれば、って何をですか」
丸山穂高議員:「この島を」
元島民・訪問団長:「それを私に聞かれても困ります。率直に言うと、返してもらったら一番いい」
丸山穂高議員:「戦争なく?」
元島民・訪問団長:「戦争なく。戦争はすべきではないと思います。これは個人的な意見です」
丸山穂高議員:「なるほどね…。」
元島民・訪問団長:「早く平和条約を結んで解決してほしいです」

やはり全文を読み通しても議員としての常識に欠けています。国会議員が、こういったオフィシャルな席で、一般国民と「戦争」を手段として認めるのか否かについて、迷惑がっている相手に絡んでしまっているのですからどうかしています。

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おそらく丸山氏は、今までの彼の発言から憶測すれば、軍事的手段を欠いた領土交渉には限界があると言いたかったのでしょうし、一般論としてはそのとおりです。

丸山氏に言わせれば、北方領土は日本国領土ですから、他国の領土を武力で奪う利己的他害性を有する侵略行為ではないと言いたいのかもしれません。
ならばこれは他国との紛争解決ではないから憲法には抵触せず、自国主権内部から外国軍隊を排除する一種の正当防衛だといいたいのかもしれません。
苦しいなぁ。
というのは国際社会は、実効支配を領土の絶対要件としていますから、実に70有余手放した主権が認められるためには、いつにかかって二カ国間の交渉次第なのです。

かつて辞職勧告が可決されてしまった新党大地の鈴木宗男氏は、「政治家の究極の目的は世界平和。戦争による解決を持ち出す発想はあり得ない」などといっていますが、いかがなものでしょうか。
なるほど鈴木氏が言うように、日本国憲法の第9条は、「国際紛争を解決する手段としての戦争」を放棄していますが、わが国に対しての侵略まで容認しているわけではなく、今の国際社会秩序の不安定さを見るといつわが国を取り巻く状況が暗転するのかわからない状況です。

韓国のように平然と国家間の条約すら廃棄する事態が現実のものとしてあることがわかりました。
さらには、レーダー照射事件のように一方的に武力紛争化する場合すらなしとはいえません。
その場合、鈴木氏のように「世界平和」を唱えてさえいれば平和になるのでしょうか。

北方領土交渉においては、戦争で失った領土は、それがいかに不当であろうと、道理を欠いていようと、戦争以外の方法では返って来ないというのは厳然たる事実であって、沖縄返還は世界史上まれに見る例なのです。
それゆえノーベル平和賞が授与されたわけです。
国際紛争の解決手段としての戦争を憲法で放棄したわが国にとって、実力奪還は不可能に等しいわけで、だからこそ戦争で奪われた領土を外交交渉で取り返すというとてつもない難事業をしているのです

それをいまさら「一筋縄ではいかないと痛感した」なんてツイートするようでは、丸山さん、あんた交渉経過ちっとも勉強してなかったでしょうと思います。

世界第2位の軍事大国相手の領土交渉を、純粋に平和交渉だけで返還させるというのは無理がある反面、だからといって「戦争」という最終的解決方法が必要かといえば、それも違います。

というのは、安易に「戦争」などを叫ぶことは、今まで継続されてきた対露交渉のハードルを無視して、いきなり解決不可能な領域に送り込んでしまうことに等しいからです。
いま「戦争」を手段として唱えることは、憲法上の制約でそのような手段がとれないことが分かりきっているが故に、悪しき原理主義です。
これでは、現実になにもするな
と同じです。

ちょうど9条2項改憲を主張するゲル氏が、「原理的には2項改憲でなければ意味がない」といいながら、一方で「「野党も納得してから改憲論議を始める」と言っているようなもので、要はやらないと一緒のことです。

現時点で、北方領土交渉のネックは二つあります。
ひとつは2島返還された場合、残り2島の主権と帰属問題をどうするのかという主権の及ぶ範囲です。
ロシアは「北方領土返還」という日本側の用語にすら反発しており、4島すべての主権はロシアにあると主張しているくらいですから、仮に2島(ないしは面積的に半分)返還したとしても、領土を何らかの条件で有償譲渡したという形にしたいのかもしれません。

いまひとつは返還された2島に、米軍が安保条約を根拠にして基地を置くか、あるいは拒否するのかどうか、の問題です。 
これについてはドイツの再統合時の事例から不可能ではないと思いますが、ロシアは色よい対応を示していません。

いずれにしても、どちらもロシア内部の「神聖不可侵なわが領土をカネで譲り渡すのか」といったナショナリズムともろに衝突することは必定で、現にラブロフが年がら年中吠えています。
だから、大変な交渉をしている安倍氏の足をひっぱりなさんなと思います。

 

関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-8277-2.html

 

 

 

 

2019年5月19日 (日)

日曜写真館 梅雨前のひとときです

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水田の向こうは湖です

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山椒のことを木の芽というのがわかります

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少し前までは裸樹でした

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柚子の花を知っていますか

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舗装道路の割れ目にすら咲くポピーです

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お百姓は水田の端に植えて楽しんでいます

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梅雨の前のひとときです

 

 

2019年5月18日 (土)

イラン情勢緊迫

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イラン情勢が沸点を迎えようとしています。

「ロウハニ大統領はテレビ演説で、英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアに書簡を送り、濃縮ウランと重水の他国への売却をもはや行わないと通知したことを明らかにした。濃縮ウランと重水の輸出は核合意で義務付けられていた。
これら5カ国はイランの石油・銀行セクターを米国の制裁から守るという約束を60日以内に履行する必要があると訴え、果たされなければ高レベルのウラン濃縮を再開すると明言した。
5カ国が交渉の場に戻って合意が成立し、石油と銀行セクターにおけるイランの利益が守られるなら、同国は義務の履行を再開すると表明した。
ロウハニ大統領はテレビ演説で、英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアに書簡を送り、濃縮ウランと重水の他国への売却をもはや行わないと通知したことを明らかにした。濃縮ウランと重水の輸出は核合意で義務付けられていた。
これら5カ国はイランの石油・銀行セクターを米国の制裁から守るという約束を60日以内に履行する必要があると訴え、果たされなければ高レベルのウラン濃縮を再開すると明言した。
5カ国が交渉の場に戻って合意が成立し、石油と銀行セクターにおけるイランの利益が守られるなら、同国は義務の履行を再開すると表明した」
(ロイター5月8日)
https://jp.reuters.com/article/usa-iran-rouhani-idJPKCN1SE0N8

米国は1年前にイラン核合意の枠組みから離脱していますが、これが1年後のイランの回答ということになります。
これでイラン核合意は事実上廃棄されたに等しい状態になりました。

2015年に締結されたいわゆる「イラン核合意」は、正式には「包括的共同行動計画(JCPOA)」と呼ばれ、共同という冠名称でわかるように核合意に参加した国々はオバマ時代の米国、ロシア、中国、ドイツ、英国、フランス、EUで構成されています。
ですから、米国の離脱に対して英仏独は厳しい批判をしています。

まぁ、他の締結国からすれば、渋るイランを交渉の場に引き出し、飲みたくない水を呑ませるのに実に13年もかかっていますから、トランプ流「思いつき」でつぶされたらたまらんということです。
そもそも壊しておきながらトランプに代替案があるのかないのかわからないわけで、あるのはCVID一直線です。
締結国からすれば冗談じゃないというのもわからないではありませんし、ちゃぶ台返しされた側のイランが怒るのも無理なからぬ側面もあります。

 

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産経

このイラン核合意は、オバマ時代に進められたもので、オバマ流現実主義が濃厚で、有体に言えば再びイランが核武装できる余地を残したあいまいな妥結でした。
内容を見てみましょう。トランプの怒りも理解できますよ。

728_41_nenpyo_i外務省http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics...

①イランは濃縮ウラン活動を25年間制限する。この期間は国際原子力機関(IAEA)の監視下に置く。
②兵器級核物質を作る遠心分離機数は1万9000基から約6000基に減少させる。兵器級にはウラン濃度が90%必要だが、3・67%までに制限する。
③既に濃縮済みのウラン量を15年間で1万キロから300キロに減少させる。
④ウラン濃縮活動は既にあるナタンツ濃縮施設で実施し、アラークの重水製造施設は核兵器用のプルトニウムが製造出来ないように変え、フォルド濃縮関連施設は核研究開発センターとする。
⑤以上の条約にイランが反した場合、経済制裁を再度導入するが、遵守すれば経済制裁を段階的に解除する。

読んでお分かりのように、一見イランが兵器級核物質をつくれないようにみえますが、時限条約なことに気がつかれたでしょうか。
たとえば③をご覧ください。イランは核兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを15年間は生産しないといいますが、裏を返せば15年後には許されるわけです。
条約発効が2015年ですから、2030年まで、あと正味10年間イランが辛抱すれば再び晴れて核兵器開発に乗り出せるわけで、その時には国際社会はしょーがねぇなとぶつくさ言いながら容認せざるを得ないというわけです。 

また、②の遠心分離機も1万千基あったのを10年間は6104基に限定するというものにすぎません。 
これでは10年後にまた遠心分離機を元の数に戻して下さい、といわんばかりにもみえます。
つまり、いかにもオバマが作りそうな初めから腰が引けて妥協を急いだザル条約なのです。

その上に、核兵器と一体となったその運搬手段の弾道ミサイルについては、なんの規制もないまま無条約状態のままです。

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「米国が主張する最も重要な項目は、イランによる弾道ミサイル開発を制限することに「失敗」した点だ。非核ミサイル開発の継続を許したことで、この合意による核開発制限が期限切れとなった場合、イランはすぐに核弾頭を搭載することが可能だと批判派は指摘している」
(ロイター2018年5月9日)

https://jp.reuters.com/article/iran-us-deal-idJPKBN1HG14O

「欧州諸国がいかなる懲罰的な対応を取ろうとも、イランが、ミサイルの射程距離に表面的な「上限」を設ける以上のミサイル開発規制に同意することは考えにくい。(イラン政府はこれまで、射程距離2000キロを超えるミサイル開発を自粛すると示している。これは、何らかの軍事衝突が起きた場合に、イスラエル中心部や中東地域の米軍基地を狙える射程だ。) 」(前掲)

整理すると、イラン核合意の問題点はこんなことです。 

①核物質製造装置・核原料については時限つき制限を受けているだけにすぎない。
②条約失効後には、イランの核開発に歯止めをかける者がいなくなる。
③弾道ミサイルが合意に含まれていないために、野放し状態である。

その上に、イランは中東の覇権国になる野望を隠そうともせずに、中東の火薬庫に火種をくべて回っています。
たとえばシリアでは、ロシアと並んで凶悪なアサド政権の事実上の主力軍事力です。
イランは革命防衛隊という準正規軍を派兵して、反アサドの市民を大量虐殺していることが分かっています。

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イランが支援するハマス

イエメン、レバノンでも軍事支援してきました。
イエメン内戦では、サウジ正規軍とイラン革命防衛隊が交戦関係にあるといわれています。
もっとも米国が神経を尖らせているのが、パレスチナガザ地区を統治しているハマスがイスラエルにロケット砲を打ち込むなどの軍事挑発を続けていることです。
ジハードの主力であるハマスは、イラン革命防衛隊のパレスチナ出張所のようなもので、物心共に大きな支援を受けてきました。

とりあえずハマスとイスラエルは停戦合意をしましたが、同じくイランから軍事支援を受けるイスラム聖戦(PIJ)は停戦に合意していません。
この5月の停戦発効前にガザ地区から700発以上のロケット砲がイスラエル領土に打ちこまれましたが、これの武器を供給しているのがイランです。

もしイランが核兵器を手にしたら、イスラエルはイランの核の射程内に入ることになります。
その場合、イスラエルは宿敵イランに自らの生命を預けることは拒否するでしょうから、いままで隠然と保有いるといわれた核を公然と登場させることでしょう。

また、イランのもう一つの宿敵であるサウジも核武装に走る可能性が高いと言われています。
つまり、イランの核を容認すれば、イスラエル、サウジへと核の連鎖が始まることになります。
地域の複数国が核武装に走った場合、米国にも止められません。

一方イラクにおけるイランの浸透ぶりは、すさまじいものがあります。

「米国は、イラクで兵士5800人と複数の軍事基地を擁している。一方、イランは、公式には95人の軍事顧問を置いているだけだが、イランの勢力は米国の5倍はあると、アバディ首相顧問は言う。安全保障の専門家も、「イランの影響力は、イラクのあらゆる機関に浸透している」と述べる」
(エコノミスト2017年4月12日)

「これら民兵組織は、イラン革命防衛隊の助けを借りてバグダッド陥落を防ぐと、国を「守る」ため、残された国家機構の大半を事実上掌握した。既にバグダッドの大半は約100の民兵組織の間で山分けされている。ほとんどのイラク・シーア派は自国のシスタニ師に忠誠を誓うが、民兵組織の指導者の多くはイランの最高指導者ハメネイ師に従うと言う。一部の民兵組織は議会に代表がおり、2018年の選挙に向けて親イラン連合を結成する可能性もある」
(岡崎研究所 前掲)http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9603

イラクはありとあらゆる国家機関・軍隊に親イランの勢力が浸透され、事実上イランの属国状態となっています。
おそらく次の選挙で親イラン政権が成立するでしょう。
かくして駐イラク米軍はイランの海に浮かぶ孤島にすぎないまでに追い込まれ、先日来のイラン情勢の緊迫を受けて大使館員の一部の国外脱出が進められました。

このような中東の覇権国への意志をむき出しにしたイランが、核を手にしたらどうなるのか、これが米国の強い危機意識です。

さて米国は、最大12万人の兵力を投入する計画を持っているとNYタイムスが報じています。

「国防総省の対イラン攻撃計画は何年も前から更新され続けてきたが、今回の新たな計画は政権一の対イラン強硬派であるボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当の指示で策定された。
きっかけはイラン並びにその配下のアラブ人武装組織が中東地域の米軍に攻撃を仕掛ける危険性が高い、との情報があったためだ。計画にはイランが本格的に核開発に乗り出したケースへの対処も含まれている。
計画の最も重要なポイントは米部隊がイランに侵攻するのかどうかだが、侵攻までは考慮されていない。
米国は過去のイラク戦争で約4000人の兵士を失った。うち600人以上はイラン支援のイラク民兵の攻撃によるものだ。地上侵攻は避けたいはずだ 」(NYタイムス2019年5月13日)

直ちに陸上兵力の侵攻が行われる可能性は低いと思われます。この状況て先に手をだすほどイランは馬鹿とは思えません。
ありえるのは偶発的衝突が局地的戦闘となり、さらには戦争に発展するケースです。
衝突シナリオとしては、第1に先述した親イラン武装勢力による米国軍人・米政府関係者・民間人へのテロが起きた場合、第2にホルムズ海峡における小競り合いから軍事衝突に発展する場合です。

既にイランは原油の主要ルートであるホルムズ海峡付近で対艦ミサイルを発射するなど軍事姿勢を強めていますが、このホルムズ海峡に面するカタールのアルウデイド米空軍基地には1万3千人の米軍兵士が駐留しているとポンペオは認めています。
また5月13日にはこのカタールの基地にB52戦略爆撃機が到着し、エーブラハム・リンカーン空母打撃群も中東海域に到着しています。

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ホルムズ海峡 出典不明

ホルムズ海峡はもっとも狭い部分で30キロ余りしかありませんが、5月12日、ホルムズ海峡付近でサウジの石油タンカー2隻、ノルウェーのタンカーとUAEのタンカーそれぞれ1隻が何者かの攻撃を受け、船体の一部を破壊されるという事件が起きました。
イランは否定していますが、米国はイランの仕業だとみていますが、決定的拠がないようです。

この情勢で、イランから米国に軍事攻撃をかける理由は乏しいと考えられますが、偶発的衝突から本格的軍事衝突へと発展する可能性はよりいっそう高まったと思われます。

 

 

 

 

2019年5月17日 (金)

北朝鮮の最後の外貨獲得手段「奴隷輸出」も禁止される

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北朝鮮と韓国はいわば鏡あわせの中に住んでいる住人のようなもので、互いに妙に似ているため憎悪を抱いたり、尊崇してみたりしますが、結局は似た所に墜ちていくようです。
その合わせ鏡の軸になっているのが米国です。それは米国がヘゲモニック・ステート(覇権国)だからです。
ですから、米国との関係が良ければ経済も社会も安定しますが、基軸から離れるに従って悪化していきます。

今の状況がそれに当たります。
韓国の状況は昨日見たように、肝心な為政者のムン・ジェインが、この悪化の一途を辿る経済に無関心だから始末に負えません。
彼の頭には北しかなく、経済危機である事すら認めないのですから、対応策など出てくるはずもありません。
今や韓国の主要紙にすら「幽体離脱」と書かれている始末です。
肝心の為政者に当事者意識がないのですから、もはや治療不可能です。

では、合わせ鏡のもう一方の北はどうでしょうか。
こちらも初回の米朝会談において、世界のメディアはこのまま北が非核化路線に入ることによって、十重二十重の制裁が解かれて国際社会に復帰するという美しい勘違いをしました。

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ニューズウィークhttps://www.newsweekjapan.jp/glenn/2019/03/post-21...

結果は、正恩が米国を甘く見すぎていた祟りで、第2回会談で妥協を出し惜しんだために従来のノーディール(取り決めなし)状態に逆戻りしました。
トランプが核を全部放棄しろと言っているのに、使わない核実験場と代替施設がゴマンとある核老朽施設の廃棄ていどでは、「段階的非核化」もなにもあったもんじゃありません。
思い切って火星15の査察受け入れと、解体のための国外撤去くらいは呑むべきだったのです。

うろたえた正恩はハノイからの帰り道に中国にすがろうとしてあえなく断られ、ではロシアにすがろうと向かったウラジオストクでは予定を切り上げて失意の帰国をするハメになりました。
ロシア紙からも「なんの成果もなかった」と言われてしまっては、もはや投了同然です。

あまりに正恩が青くて未熟なすっぱい果実だとわかってしまったためか、北の特権階級はもぞもぞと蠢動を開始しています。
というのは「給料」が政府から出ないからです。

「昨年11月に筆者(加藤達也記者)がインタビューした元北朝鮮兵士の脱北者、呉青成(オ・チョンソン)氏は北朝鮮には月給という報酬制度は事実上、存在しないと証言。ソウル在住の別の脱北者は「北の住民は権力の大きさに応じ、ピンハネや恐喝で金品を得て暮らしている。権力は暮らしの糧だ」と明かした。 
この脱北者によれば体制を中枢で支える層は、正恩氏が「統治資金(外貨)」から下賜する金品も生活の大きな原資となっている。指導者による“面倒見”で、この多寡が特権層の政権への忠誠度を左右するのだという。
北は資本主義社会以上に“カネの切れ目”にシビアなのだ」
(加藤達也 産経5月13日「虎穴に入らずんば」)
https://www.sankei.com/world/news/190513/wor1905130010-n1.html

たとえば2018年には思いつき的にいきなり給料を10倍に引き上げましたが(おいおい、そんなことしたら普通の国だったらインフレになるぞ)、それを喜ぶ国民はひとりもいませんでした。
だっていくら紙が10倍に増えたってそれで買える商品がないんですから、なんともかとも。

「通常、給料が10倍になれば、市場でモノを買う人が増えて、物価や為替レートに変化が生じたりするはずだが、そのような現象は見られなかった。 その理由を情報筋は次のように説明した。
 「市場の基準通貨はすでに中国人民元になっている。また、他に先駆けて2013年から生産担当制を試験的に導入した単位(工場、企業所、機関)で働いている人は、給料を他より多くもらっていた」
 理由はそれだけではない。北朝鮮の市場でのコメ1キロの値段は5000北朝鮮ウォン(約65円)前後であることを考えると、給料全額をつぎ込んでもたった4キロのコメしか買えない。10倍になっても、平均的な4人家族の1ヶ月の生活費50万北朝鮮ウォン(約6500円)とは依然としてかけ離れた額なのだ」(デイリーNK2018年5月18日)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180522/soc1805220021-n1.html

食糧は北朝鮮政府が定めた1日1人あたりの配給目標は573グラムですが、そんなものは守られたためしがなく、国民は自力で食糧を調達せねばなりません。

工場の原料も来ない場合が多いので、これではどうにもなりません。

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産経 https://www.sankei.com/world/news/180809/wor180809

ではどうするのかといえば、自由市場に横流しして売りさばき、中国元を得て中国から原料を引っ張ってくるのです。
これでやっと原料も工員の食糧も確保できるというわけです。

「昨年、お上(金正恩氏)が平壌の化粧品工場を視察し、国産化粧品の質を改善し、生産量を増やせと指示を下した。それに従い、新義州化粧品工場も原料を中国から輸入して、質の高い化粧品を作っている」(情報筋)
工場への原料供給が正常化し、国からの生産量のノルマが増やされた。それでより多くの労働者と技術者が必要になったため、工場は高待遇を掲げて人員の募集に乗り出した。
工場の幹部は、生産した化粧品を市場で売りさばき、その代金でコメを購入、労働者に配給することで、人員募集とノルマの達成を同時にやってのけたのだ」(デイリーNK 2018年04月30日)
https://dailynk.jp/archives/109232?zkzk=110561

どうしてこのようなことになったのか、説明する必要はありませんね。
正恩が「核大国」になりたいという野心という、危険な妄想を抱いたからです。
この男は、人民にコメを配給することにはすこぶる吝嗇ですが、核兵器を作るカネには糸目をつけませんでした。

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https://www.youtube.com/watch?v=dDwMDPN8AZc

たとえば上の写真の長距離弾道ミサイル・火星15だと(右に正恩がいます)、ピースキーパー・ミサイルが約70億円ですが、北が作るとなると法外な吹っ掛けをされたことでしょうからその10倍はしてもおかしくはないと言われています。

「指導者就任後、正恩氏は米国を対等な核軍縮交渉に引っ張り出す戦略を立て、米東海岸を直撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成を目指した。ウクライナから高性能ロケットエンジンを技術者ごと買った疑いも出ているが、核・ミサイルが急激に高性能化したことを考えると高額な技術の買い付け先は多岐にわたるはずだ」(加藤前掲)

居抜きで技術者込みで言い値でウクライナから技術者込みで買ったようですから、果たしていったいいくらつぎ込んだのやら。
もちろん北朝鮮ウォンなんかで払ったら冗談にもなりませんから、米ドルでしょうね。
世界最貧国がこんな馬鹿げたことをすれば、直ちに外貨が払底して当然です。

ではお宝の外貨と食糧を得るためにどうしてきたのでしょうか。
ひとつは、堂々とたかりゆすりをして外国からの援助をせしめるというのが、金家のお家芸でした。
初代はソ連と中国を手玉にとって、その両方から支援をせしめるという高等テクニックを使っていたのですが、1991年のソ連のほうかいによってあえなくオジャン。
以後、6カ国協議で2代目が奮闘してなんとか糊口をしのいできたのですが、これも3代目が本気で「核大国」を目指してしまっために国連制裁を受けてパー。

そりゃあ売れるものならなんでも売りましたよ、はい。
鉛入りのマツタケ、他国のEEZでとってきた水産物(自国のEEZは中国に売っちゃったもんで)、弾道ミサイル、化学兵器、弾道ミサイル、そしてなんといっても北の「特産品」は覚醒剤と偽札でした(おいおい)。
2001年12月の海保に追いかけられて奄美沖で自沈した工作船は、覚醒剤を運んできたものだと思われています。
九州南西海域工作船事件 - Wikipedia

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https://mainichi.jp/articles/20161222/k00/00m/040/...

偽札は「スーパーK」と呼ばれた精巧なニセ100ドル紙幣で、これを大量に流通させていたこともわかっています。
この原盤を作ったのがイランで、当時からイランとは核開発・弾道ミサイルなども含めた裏ルートが存在しているといわれてきました。

それはさておき、まともなものでは石炭ですが、チャン・ソンタクの頃はじゃんじゃん中国に売り飛ばしてにわか成金すら誕生したほどです。
しかしその石炭もいまや制裁破りの禁輸品に指定されて、密輸したらあえなく米国に貨物船ごと拿捕されてしまうという悲劇。
返せ強盗め、と北が罵っても米国が返すはずがありません。

それどころかさらに制裁の壁は高くなる一方です。
このまま調子に乗って弾道ミサイルを発射していると、次は拿捕・海上封鎖の段階に入るでしょう。

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https://www.news-postseven.com/archives/20160613_4...

しかし実は隠し球がもうひとつあったのです。それは「現代の奴隷輸出」とまで言われている労働者輸出でした。

「1970年代から始まった北朝鮮の労働者の輸出は、1990年代に経済難が発生して以来、北朝鮮政府が海外で外貨を獲得する重要な手段になった。アメリカ国務省は『2006年例国際人身売買報告書』の中で、北朝鮮政府が自国国民を「非熟練契約労働者」として輸出していると取り上げ、こういった労働者に対する労働搾取と人権問題を指摘した。北朝鮮は現在、中国、ロシア、東欧国家、中東などへ労働者を派遣しており、その数は3万人に上ると推算される」(北朝鮮分析2010年3化通10日)
https://plaza.rakuten.co.jp/spada100/diary/201003120000/

北は輸出商品として労働者を出し、その賃金の8割をピンハネしてきました。

「オランダ・ライデン大学のレムコ・ブロイカー教授は10日、米政府系ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」とのインタビューで「ポーランド各地では今も北朝鮮労働者が外貨稼ぎをしている」とした上で「ポーランドの造船所で外貨稼ぎのために働く北朝鮮労働者は1日12-16時間作業をしているが、毎月の給与は平均27ドル(約3100円)しかない」と伝えた。ポーランド企業が北朝鮮労働者に正確にいくらの給与を支払っているかは知られていない。 
米国務省などは「北朝鮮政府は海外で働く労働者が受け取る給与の70-80%をピンハネし、残りを労働者に与えている」との見方を示している」(朝鮮日報2018年11月12日)
http://www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2018111200866

海外に働く北労働者総数は約6万人から6万5000人、大所ではロシアと中国の二カ国。
それにサウジアラビア、クウェ―ト、アラブ首長国連邦など中東諸国、そしてアフリカ諸国など世界約40カ国に派遣されています。上の写真はタンザニアで撮影されたものです。
労働者海外派遣による総収入は推定で年間1億5000万ドルから2億3000万ドルとみられ、労働職種は建設業、レストラン、鉱山、森林業、道路建設などが主でした。

ところが対北制裁によって、北朝鮮の労働者の労働ビザ発給は禁止されたために、残された唯一ともいえる外貨獲得源であった労働者覇権ビジネスまでが解体の危機にあります。
ちなみに、先日のロシア訪問の裏テーマは、ロシアにいる8000人の北労働者のビザ再発給をプーチン氏に要請することだったと言われていますが、すげなく断られたようです。
しかも、中国までもが同調し始めました。

「中国政府が三月初旬、国内に北朝鮮から派遣されている労働者について、六月末までに帰国させるよう、雇用する中国企業などに求めていたことが分かった。複数の外交筋が明らかにした。国連安全保障理事会が北朝鮮に対する制裁決議で定める十二月の送還期限を、独自に繰り上げた形。制裁の確実な履行を要求する米国との間で貿易摩擦を抱えていることが、背景にあるとみられる。(略)
 国連安保理は二〇一七年十二月に採択した制裁決議で、北朝鮮が外貨獲得源として海外に派遣した出稼ぎ労働者を、二年以内に送還させるよう定めた。
中国が送還期限を約六カ月前倒ししたことについて、外交筋は「米国との貿易協議を意識しているはずだ」と指摘する。
 別の北朝鮮消息筋によると、北朝鮮は三月上旬、中国で活動する人民軍系列の複数の貿易会社に六月までに撤収するよう指示を出したという。消息筋は「(中国の期限繰り上げと)関連した動きだろう」と話している」
(東京新聞2019年4月23日)

このように北の最後の外貨獲得手段だった奴隷輸出の道も封鎖されようとしています。
まさに孤立無援・四面楚歌を絵に描いたようです。
 

 

 

2019年5月16日 (木)

韓国中央日報に見る韓国経済危機の現状

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模様替えしました。なんか自分のブログではないみたいですね(笑い)。

さて、朝鮮半島は南北共に仲良くドン詰まっています。

まずは韓国ですが、通貨の下落に歯止めがかかりません。
Investing.com でUSD/KRW - アメリカドル 韓国ウォンの相場を見てみましょう。まずは2017年からみてみます。ムンが就任後直後の2017年11月からの落ち込みが目立ち始めます。
ムン・ジェイン政権の始まりが2017年5月であったことを頭にとどめておいて下さい。

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https://jp.investing.com/currencies/usd-krw

直近の為替チャートです。

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現在は5月13日の相場が1187.50ウォンまでウォン安が進み、2017年1月から2年4カ月来の安値水準を記録しています。
このウォンの対ドル下落率は4月以降4.6%を超えており、主要国のうちトルコ、アルゼンチンを除くと最も高い下落幅です。

メドとされた1150~1170ウォンをあっさり突破してしまいました。鈴置高史氏はこのように述べています。

「4月30日のウォン急落も、同日発表の統計「2019年3月の産業活動動向」に足を引っ張られた側面が強い。
 3月の景気の動向指数(循環変動値)と先行指数(同)は、それぞれ前月比0・1ポイント下落した。2つの指数が共に10か月連続で下げるのは、1970年1月にこの統計をとり始めて初めて。
 2019年の第1四半期の製造業の平均稼働率は71・9で、世界金融危機直後の2009年第1四半期以来の低い水準となった。生産、投資はそれぞれ前期比3・0%減、5・4%減だった」(デイリー新潮5月2日)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190502-00561166-shincho-kr

1150ウォンは、外国投資機関が韓国株を手放す分水嶺だそうで、ここを切る後はもうとめどなくウォンは落下していくことになります。

「症状はウォン安と株安の連鎖だ。ウォンが一定水準以下に下がると、ドル資産を基に運用する外国人投資家が保有する韓国株を売って損の拡大を防ぐ。株価が下がると外国人投資家はさらに保有株を売ってドルに替えるのでウォン安が進む――という悪循環である」(デイリー新潮前掲)

このまま放置すれば、遠からずホットマネーの餌食となってしまうことでしょう。
サムスン系の中央日報は原因についてこう述べています。

「深刻な経済難に苦しめられる両国に次いでウォンが急激に下がっているのは決して軽く見過ごすことではない。
ある国の通貨価値は対外的にその国の経済の総体的位置づけと競争力を反映するものだ。ウォンの価値急落はそうした点で韓国経済に深刻な危険信号とみなければならない。

原因をめぐって多様な分析が出ている。国内景気不振、対北朝鮮リスクの再浮上、米中貿易紛争、韓米の金利差などが議論される」(中央日報5月14日【社説】急落するウォン、経済体力の危険知らせる信号だ」
https://japanese.joins.com/article/318/253318.html?servcode=100&sectcode=110&cloc=jp|main|top_news

中央日報の分析は一部当たっています。
米中経済戦争による中国経済の停滞予測はそのとおりです。中国輸出で食っている韓国経済にとっていい影響がでる道理がありません。

韓国は輸出に有利なウォン安政策をとっていますが、景気が回復せず、不況はいっそうひどくなる一方です。

「通常ウォン安になれば輸出は好調を見せる。しかし輸出はこの5カ月連続で減少した。半導体輸出不振に主力輸出市場である米国と中国の貿易摩擦の影響が重なったためだ。
そうでなくても内需景気が低迷する中で輸出までウォン安の恩恵を受けられず韓国の経済体力に対する悲観論が広がり、これがウォンをさらに引き下げている格好だ。」(中央日報 前掲)

国債格付け機関のムーディーズは韓国に協議団を送っており、その際に韓国エコノミストと面談しています。その内容はいささか衝撃的です。

「質問=ムーディーズ側の関心は何か。
  エコノミスト=例年とは違って北核に関する質問はほとんどなかった。多くの韓国経済の数値と見通しはすべて把握して来る。
今年は
(1)成長率目標(2.6%)は達成可能か
(2)税収見通しが良くないが、財政健全性は悪化しないのか
(3)過度な半導体依存に対する代案は何か
(4)市場的だった韓国でなぜ全国民主労働組合総連盟(民主労総)のような反市場主義が勢力を強めるのか
という4つの点を詳しく問いただした。

 質問=格付けは落ちるのか。
  エコノミスト=すぐに現在の「Aa3」を[Aa2」に格下げする可能性は50%以下だろう。しかし今後の見通しを「安定的」から「否定的」に変える可能性は高いようだ。これは6カ月以内にマイナス要因が改善されなければ格下げするという予告と変わらない。

  質問=どんな影響が予想されるのか。
  エコノミスト=1999年2月以降、韓国は12回も格上げされた。保守・進歩政権に関係なく一度も格下げされたことはない。これが20年ぶりに格下げとなる場合、文在寅政権は致命傷を受けるしかない。これ以上は「経済が良くなっている」と言い張るのも難しくなる」(中央日報前掲)

ムーディーズは「反市場主義勢力」の民主労総がなぜ勢いを強めているのかと問うていますが、それはパククネ政権を「革命」して誕生させたろうそくデモの黒幕が民主労総だからです。

民主労総は職場を文字どおり支配しています。争議のワンシーンです。

「きれいに塗装されてベルトコンベアに載せた白い車が赤くさびた鎖で縛り付けられていた。鎖には大きな錠前まで付けられている。
50代の労働組合代議員が車の中に入り、別の鎖で手首を縛って車体とつなげた。決死抗戦の態勢だ。
もちろんベルトコンベアは停止し、工場の業務はマヒした。労使に分かれた従業員たちは歯でかみ切ろうとしたり、押し合いになったり、足げにしたりした。 24日、現代自動車蔚山工場の作業場で繰り広げられた光景だという」(朝鮮日報2017年12月3日)

完成車を出荷させないなどは手ぬるいほうで、いったん暴発すれば下の写真のような暴動まがいの「抗議行動」が見られます。 

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彼らはムン政権をパペットにしている事実上の政権のオーナーです。
ムン政権の最低賃金上昇政策による景気てこ入れという奇妙な政策も、彼らに言われるままに採用し、韓国経済を衰弱させる原因となりました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-0a76.html

民主労総は各地で争議を頻発させているだけではなく、他の労組と職の奪い合いまでする始末で、よりいいところを見せようとするためか釜山の「徴用工」像設置にまで走っています。
また
いうまでもなく、民主労総は北朝鮮を崇拝する従北派です。

このような韓国版関西生コンに浸透された財閥系大企業は、生産現場を彼らに支配されたためにいっそう企業体力を奪われ、軒並み格付けで「ネガティブ」(投資不適格)宣告されています。

「雰囲気はさらに悪化している。ムーディーズは現代車、サムスン電子、SKハイニックスの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。
3月には投資不振と輸出悪化、最低賃金引き上げによる雇用委縮を理由に成長率予測値を2.1%に下方修正した。4月初めに訪韓したS&P評価団も「所得主導成長が格付けにマイナスの影響を及ぼすだろう」と警告した」(中央前掲)

原因は、大統領のムンの無為無策とそれを認めない強引な政治手法にあると中央日報は指摘しています。

「それでも大統領は「巨視的に見ると韓国経済は大きく成功した」という幽体離脱話法に固執している。
「現実を認めない政府の存在自体がさらに大きな危機」という経済学者の警告には耳をふさぐ。
ここには所得主導成長の失敗を認めた瞬間、政治的に自滅するかもしれないという恐怖感がある」(中央日報前掲)

そしてもうひとつの大きな原因は、中央日報がさらりと書き流した「北朝鮮リスクの浮上」です。
こうさらりと書かれると、韓国は当事者意識がないと見えます。
中央日報さん、ムン政権が内政を放り出してまで金看板としてきた政策が、対北融和政策でしたが、お忘れになりましたか。

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https://grapee.jp/491989

私から見れば今の韓国経済の窮状は、ムン政権によって、この先地獄に突入することになるだろうという暗い予測が内外を覆っているからです。

韓国のウォン相場は米国との協調関係の善し悪しに左右されてきました。
たとえば、最大の通貨危機だった1997年のキム・テジュン政権時のアジア通貨危機では、デフォルト(債務不履行)寸前となり、韓国はIMFの管理下に置かれました。

「1997年の危機当時は、米国との関係が極度に悪化していた。米国は日本に対してもスワップを締結しないよう指示して韓国をIMF(国際通貨基金)の救済申請に追い込んだ」(鈴置前掲)

いちばん激烈に南北融和・米韓安保の見直しを叫んだノ・ムヒョンの政権時には、最高900ウォン/1ドルのウォン高から1600ウォン近くのウォン安へと短期間での乱高下を演じました。

このようなことは偶然ではありません。特に米国はこの間あからさまなまでに、意にそぐわない政権に対しては金融・為替などの非軍事的方法で打ちのめす手法を取っています。
今の最悪となった米韓関係と、韓国ウォンの地獄へのスリップ現象は無縁ではありえないのです。

ですから、ムン政権がどれほど為替操作してウォン安に誘導しようとも、輸出も国内需要も伸びないのは、ムンがとった基本政策が誤っているからです。
外に対しては日米政府と逆方向に走った仲介戦術、あるいは米韓同盟を廃棄することを米国にいわせたいとみえるムン政権への米国の意思表明でもあるのです。

中央日報は現実を見ないで成長し続けていると主張するムンを「幽体離脱」と皮肉った上で、唯一の救助方法は日韓スワップしかないとしています。

「まともな政府なら今ごろ、韓米通貨スワップは難しいとしても、韓日通貨スワップ程度は復元して最後の安全弁を用意しなければいけない。しかし危機意識がないというのがさらに大きな危機だ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は「良い経済数値」探しに気を取られている」(中央日報 前掲)

 なにが「韓日スワップていどは」だつうの(苦笑)、日本がそれを呑むことは絶対にありえませんって。

 

 

 

 

2019年5月15日 (水)

グラフで見る中国の貿易構造にみる米中貿易戦争の行方

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中国は米国の制裁関税に対して報復措置を発表しました。

「発表の数時間前には、トランプ米大統領が報復行動をけん制するコメントを発したものの、中国はこうした米国の圧力には屈さない立場を明示し、米中貿易摩擦は一層エスカレートする様相を呈している。
中国財政省によると、対象は米国から輸入する5140品目。中国は昨年9月、米国が発動した追加関税への報復措置として600億ドル分の米国製品に対し5%および10%の関税を上乗せしたが、今回この税率を5─25%とした。
液化天然ガスや大豆、落花生油、石油化学製品、冷凍野菜、化粧品など2493品目に対する追加関税は25%に、その他の1078品目は20%とする。ただ、原油や大型航空機などは、今回の追加関税の対象には含まれていない」(ロイター5月13日)
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-tariffs-idJPKCN1SJ1QC

報復関税600億ドルの内訳はご覧のとおり 液化天然ガスや大豆、落花生油、石油化学製品、冷凍野菜、化粧品など2493品目です。
原油や航空機はまた別だと言っていますが、中国には気の毒ですが、これでは初めから中国の負けは決まったようなものです。

まず中国の貿易構造を押えておきましょう。
中国は世界最大の輸出大国です。2009年にドイツを抜いて世界一に躍り出ました。

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典拠 経済産業研究所 「世界一の輸出大国となった中国― 貿易大国から貿易強国へ ―」
https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/100224world.html

さらに先日も述べましたが、中国の輸出に占める外資系企業の比率が実に3割という大きな割合を占めています。

「中国における貿易拡大の担い手は外資企業である。1979年から2009年までの30年間、香港と台湾の企業を含む外資による対中投資の累計は9,400億ドルに達している。外資企業は中国において工業生産の30%のシェアを持つようになっており、中国の輸出全体に占める工業製品の割合も90%を超えている」(経済産業研究所前掲)

これは、アップルやナイキ、あるいはホンハイなどのような米国や台湾の企業が中国の輸出の主力になっていることを現しています。
言い換えれば、ファーウェイのような海外で大きなシェアを持つ製造業はまだ少なく、外資頼みだということです。
ですから、米国の制裁関税第4弾は、これら外資ブランドの消費財を直撃したために、大きな打撃となります。

第3に中国の輸出は基本的に、日本の生産財に頼ってきました。言ってみれば、かつての高度成長期前の日本を思わせる加工貿易をしているのが現在の中国です。

「部品と機械を主に日本から輸入し、製品を主に米国に輸出するという「三角貿易」を反映して、中国にとって米国は最大の輸出相手国である一方で、日本は最大の輸入相手国である」(経済産業研究所 前掲)

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典拠 同上

これは日本の立場からすれば、中国が最大の輸出相手国ということになります。

中国の輸出の3割を占める外資系企業の部品・製造装置などの中間財を輸出しているのは日本ですから、今回の米国の制裁関税で最も大きな影響を受ける可能性があるのはわが国ですので、心しておいたほうがよいでしょう。

第4に、中国の上位の輸出相手国・地域を見ると、先進工業国がその大半を占めています。これは中国における外資主導の加工貿易の主要輸出先が先進国市場であることを表しています。

では、中国の最大の貿易相手国である米国の貿易構造をみてみましょう。

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典拠 海外投資データバンク 「アメリカの貿易相手国(輸出・輸入別)
http://www.world401.com/data_yougo/usa_boueki.html

「80~90年代の日米貿易摩擦のイメージから、アメリカの貿易相手は「日本の割合が相当多いだろう」と思っている人が多いかもしれませんが、現実は全く違います。ご覧のように、日本はアメリカの輸入内訳で第四位(金額ベースで6%)にすぎません。為替が円高・円安に関わらず、90年代以降は日本からの輸入比率は漸減傾向にあります」(上グラフと同じ)

日本は米国にとってカナダ、メキシコからの輸入額より少ない位置を占めています。これは日本の経済力が平成年間衰退の一途を辿ったことだけではなく、NAFTAで進出した米国企業が大きな位置を占めていることを物語っています。

しかしなんといっても輸入のダントツは中国です。
米中間の貿易で大きいのは中国から米国への流れで、米国から中国の流れはさほど大きくありません
トランプのいう貿易不均衡は、日本に対しては間違いですが、中国に対しては当たっているともいえます。
ただしこの米国の貿易赤字は、米国の好景気によってもたらされたものであって、貿易赤字の額のみに注目するのは間違っています。
ただし、今回のように米中間で貿易戦争をした場合、米国よりも中国が失うものが比較にならないほど大きいということは確かです。

しかも、米国が中国へ輸出しているのは下図のように、中国に進出した米国系資本の作ったPCや携帯などの電子機器だけで3割を占めています。
機械設備とあるのは、「キャタピラ」などのように米国企業ありながら中国メイドで本国に輸出している米国ブランドも多いからです。
これがトランプが、中国進出の米国企業に「さっさと帰ってこい」という理由です。

中国は米国への報復関税で「原油と航空機は別に考える」としていますが、言い換えれば代替がないということを白状しています。
中国が暗に認めるように米国は原油の輸出先に困っていません。
国際原油市場の難点は、かつてはOPECによる原油統制でしたし、その統制が緩んだ今は世界の火薬庫中東に依存しているし危うさがネックでした。
しかし、シェールガスの実用化により世界一の産油国となった米国は、原油供給の不安定さに嫌気を持つ国々にとって政治状況に左右されない米国原油は福音です。
こんな米国は、あえて中国に買ってもらわなくともかまわないのです。

https://eetimes.jp/ee/articles/1902/15/news029.html

一方、中国が米国に輸出しているのは、下図のようにほぼすべてが生活必需物資であり、他の国からの代替えがそれほど容易ではありません。

米国から中国への輸出品は中国で生産できない中間財や穀物などの食糧関連です。
中国の国際穀物市場での爆買いは有名で、下図のように今や中国は国際穀物市場を独占する勢いで毎年増加し続けています。

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戦略検討フォーラム http://j-strategy.com/opinion2/1457

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戦略検討フォーラム 前掲

「特に、大豆の輸入については7,900万トンと、過去最高となった2014/15年度の7,700万トンを更新する輸入見通しだ。これは、世界の大豆貿易量1億2,392万トンの内の64%になる。
中国の通関(海関)統計によれば、2015年8月の大豆輸入量は、前年同月比+29%の780万トンとなった。1-8月累計では、同+9.8%の5,240万トンで、国別内訳ではブラジル2,790万トン(シェア53.2%)、米国1,700万トン(同32.4%)、アルゼンチン530万トン(同10.1%)である」(戦略検討フォーラム 前掲)

このように見てくると、、今回の中国による報復関税の引き上げは、中国自らの消費者物価を直撃することになる可能性が非常に高いといえるでしょう。
中国は中華バブル期に14億人がかつての自力更生路線から白米と肉に走りました。
結果は自給国家からの転落と、輸入大国です。しかも米国産のです。

このように食糧輸入においても米国穀物の3割を穴埋めする国は現れない以上、代替は存在せず、そのまま小売り物価値上げにスライドしていきます。。
中国は去年以来の景気減速下の物価上昇ということに見舞われるかもしれません。
これによる民衆の不満がどこに向かうのか予断を許しません。

またこのことによって生じるであろう中国国内の消費市場の低迷は、「14億市場」を夢見て進出した外国系企業の熱を覚ますものと思われます。

 

※桜も散ったので、デザインを変更しました。今回はシンプルな新緑カラーです。

 

 

 

 

 

 

 

2019年5月14日 (火)

北朝鮮版イスカンデルは誰に向けて撃ったのか?

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先週5月9日にも、北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射しました。
今回は米国もためらうことなく、これを「飛翔体」なんてわけのわからない表現ではなく「弾道ミサイル」だと認定しました。

なんというのか、こりゃ落語でいう「間」ですな。意識的に一拍置いて余韻を作り、次の踏み込みを強調するって仕掛けです。
もちろん米国は初めからこれが「弾道ミサイル」だなんて分かっていました。
素人のウォッチャーですら直ちに「9K720イスカンデル」と識別できるのに、米国の軍事情報関係者が分からないはずがありません。

初めの発射の5月4日から5日後ですから、この「間」はいわば北に対して米国が頭を冷やしておけというというシグナルだったはずですが、例によって例のごとく北はこれを都合よく「容認」と受け取ったようです。
馬鹿ですね。しょーもない。この甘ったれた状況認識癖が改まらない限り、正恩はこれで国を滅ぼすことになるでしょう。

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聯合

正恩はよせばいいのに、現況で満ち足りずに核大国の夢を見ました。
今のままでも核などに頼らずとも、米国からは中国と自由主義圏とのバッファゾーン、逆もまた真なりという役割を珍重されていたのですから、そのままでもよかったものを。

どこの国もインフラがガタガタで、国民が総飢餓線上の国なんか攻撃したくはありません。
いったん攻撃してしまえば、周辺国対応もさることながら、北の戦後処理が面倒だからです。
地上進攻すれば、穴にこもった北朝鮮軍をひとつひとつ潰していかねばならず、苦労して勝ったとしても飢餓の民を放っておくわけにもいきません。

ですから、北の存在が「管理された危機」としてある分には、どうぞおかまいなくそのままカルト最貧国としてご自由におやり下さいというのが米中露日の本音だったのです。
これは反対側の韓国も一緒で、鈴置氏がかねがね指摘しているようにムンが「核を持った統一朝鮮」などという危険な妄想にさえとらわれなければ、このまま機嫌よくわけのわからない反日国家をやって頂いてもよかったのです。

それをなにをトチ狂ったのか、南北融和から始まって、核開発に長距離核ミサイルときたもんだ・・。もうため息が出ます。
ここまでやってしまっては、正恩の解決能力をはるかに超えてしまっています。
今やもう彼は自分で振り上げた拳の降ろし場所がなくなってしまっているのです。

方や米国は第3回会談という餌をぶら下げつつ、更に徹底した制裁強化を狙っています。
3回目の米朝会談を否定しないのはトランプの腹芸の類で、こちらが会談を口にしているうちに妥協しろよと言っているだけのことです。
従わなければ、さらなる制裁強化案を国連安保理に提出することになります。
その時になっても第3回の米朝会談の可能性をトランプが言うでしょうか。微妙ですが、言わないでしょうな。
ここまで追い込んで会談を口にするなら、そりゃハードルは第2回の比ではないことでしょう。

米国は、海上臨検かそれに伴う海上封鎖と拿捕、そして正恩の個人資産の完全凍結という段階に進むということになります。
むしろこれが既定路線で、今までの2回の会談が脇道だったのかもしれません。
すでに米国はインドネシアで北の貨物船を拿捕していますから、このような違法な国連制裁破りは今後海上臨検し、拿捕する可能性があるということを北に通告していますから、実施段階に入るのは簡単なことです。

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[9日 ロイター] - 米司法省は9日、北朝鮮船舶を差し押さえたと発表した。北朝鮮から不正に石炭を輸出し米国や国連の制裁に違反したという。米国が北朝鮮船舶を差し押さえるのは初めて」(ロイター5月9日 写真も同じ)

これを無視して更に家伝の瀬戸際戦術なのか、軍部なだめなのか知りませんが、ムン閣下就任3周年を祝砲のつもりか気持ちよく撃ちまくっているわけで、さてさてどうなりますことやら。
ひとつだけ確実なことは、ムン閣下の「人道支援」の夢がはかなく散ったということです。

北からも「なにが人道支援だ。エラソーに」と言われている始末ですから、ムン閣下どうするんでしょう。(知ったこっちゃありませんが)

「ソウル聯合ニュース】北朝鮮の対外宣伝インターネットメディア「メアリ」は12日、「根本的な問題の代わりに人道主義に言及することは口先だけの方便と恩着せ」と主張した。人道主義の内容については明らかにしていないが、韓国政府が北朝鮮に対する食糧支援を推進していることから、これを指すとみられる」(韓国聯合5月12日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190512000200882?section=nk/index

「口先だけの方便で恩着せがましい」とまで言われちゃ、仕方ないですな(笑い)。
北が要求しているのは開城工業団地の再開ですが、コレをすれば100%韓国はセカンダリー・ボイコットの対象となりますが、ムン閣下の煮え切らない態度を見ていると、ぜひ意地悪くこの肝試しを勧めたくなります。
まぁ、今の韓国が米国から金融アクセスの禁止をくらったら、冗談抜きで韓国は二度目のIMF管理に転落しますがね。

さて 一方、米国は一発目の発射以降、このイスカンデルの出元を探っていたと思われます。

「高度なミサイルの試射に最初から成功していることから考えると、北朝鮮がイスカンデルの完成品をロシアか第三国から輸入したと考えるのが自然だ。ロシア軍向けのイスカンデルMの射程は400キロ以上、輸出用イスカンデルEの射程は280キロ以下である」(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之 『NEWSを疑え!』第768号(2019年5月13日特別号))

出元は、西氏の指摘ではロシアそのものが売ったか、ないしはロシアから買ったものを転売したものだと思われるようです。
ロシアは、天然ガス以外売るものが枯渇しているのて、外貨を稼げるならなんでも売ります。
「特産品」の軍事製品はその目玉商品で、戦車から戦闘機まで売れるものはなんでもみさかいなしに売ってきた過去があります。
虎の子のスホーイ27を中国に売ったら、違法コピーされたことさえあります。
ただし、売ったのはモンキーモデルの型落ちですが。

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上の写真(西氏前掲)は左がロシアのイスカンデル、右が北朝鮮が5月4日に発射した「精密誘導兵器」ですが、ロケット技術者のマルクス・シラー博士(ドイツのシュムッカー・テクノロギー社)は矢印の留め具と発射レールの類似を指摘しています。

仮に正規のものなら、たとえばこのイスカンデルならM型は400キロ以上の射程ですが、輸出商品は自分に向けて撃たれるとシャレにならないのでその半分程度の280キロ程度に押えてある廉価版です。
現在の状況で、ロシアが正規品を売るとは思えませんから、かつての顧客のシリアかベラルーシあたりからブラックマーケットを経て買ったものだと思われます。北はシリアのアサド政権に化学兵器を提供していた過去がありますから、おそらくアサド゙政権が売った可能性が濃厚です。

北-シリア-イランは、武器・化学兵器・弾道ミサイルや核開発技術の国際地下ネットワークを作っています。
北の弾道ミサイルの原型はスカッドですが、これもこの両国のいずれかから入手したもので、それを自国生産して逆に売りつけています。
今、米国は北と並んでイラン制裁にも乗り出していますから、その影響もそのうち出るはずです。

それはさておき、北が入手したのは、モンキーモデルでしょうから、誘導装置や射程などはかなり本家版から割り引いたほうがよさそうです。

ちなみに、 韓国も10年前からイスカンデルそっくりさんの玄武2B弾道ミサイルを保有しています。
この韓国版イスカンデルも朝鮮日報(2011年6月)によれば、ロシアにおいて弾道ミサイルの解体を請け負っていた韓国人スクラップ業者が、国家安全企画部(現・国家情報院)の指示で盗んだものだそうです。
やれやれ、南北揃って、他人様から盗んでコピー製品を作るという発想が同じというのが泣かせます。

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韓国聯合

それはさておき、北がこの米国が与えた「間」を理解することなく5日後に2回目を撃った相手は日米ではありません。
それは北の世界唯一の「友邦」であるかの国のケツを蹴り上げ、ついでに軍部をなだめるために撃ったのです。

米国は苦笑いしていることでしょう。
射程推定280キロでは朝鮮半島の半分ていどしか届きませんから、痛くもかゆくもありません。
到達可能な米軍施設は、平沢(ピョンテク)市の在韓米軍司令部も烏山(オサン)空軍基地のみで、軍事境界線100キロ後方から撃てば射程に入ります。

仮に北が撃っても、ミサイルはみかけは大きいのですが、全部爆薬ではなく大部分は燃料ですから、炸薬量はイスカンデルE型で480キロにすぎません。
つまり航空機がぶら下げている1000ポンド爆弾一発ていどの威力しかないのですから、命中してもビルが半壊すれば御の字ていどのものです。
そもそも航空機なら、1000ポンド爆弾をF15Eストライクイーグルならば13発搭載できるとされていますから、1機で13発分のイスカンデルと同等だということになります。
こんな貴重品のイスカンデルをなけなしの外貨を叩いて買ったのでしょうから、いったい何発あるのやら。
というわけで、北の弾道ミサイルをみくびってはいけませんが、過剰な不安を抱く必要もないのです。

 

 

 

 

2019年5月13日 (月)

米中決裂

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米国の対中経済制裁第4弾が、今日、正式に発表されます。

「【ワシントン=河浪武史、シリコンバレー=白石武志】トランプ米政権は13日、中国からの輸入品すべてに制裁関税を拡大する「第4弾」の詳細案を公表する。スマートフォン(スマホ)やノートパソコンなど消費者に身近なハイテク製品にも25%の関税が上乗せされる懸念がある。日本や韓国、台湾などアジアに広がるサプライチェーン(供給網)への影響も避けられない。
トランプ大統領は残るすべての中国製品の関税を引き上げるよう指示した。金額はおよそ3000億ドル(33兆円)分になる」。米中閣僚級協議が平行線に終わった10日夕、米通商代表部(USTR)は急きょ声明を出した。産業界の意見を踏まえて発動日や対象品目を最終的に決める予定で、実際の発動には2カ月以上かかるのが通例だ 」(日経5月12日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44690520R10C19A5EA2000/

今回のことが衝撃的だったのは、その3000億ドル(33兆円)という数字そのものではなく、従来制裁対象外とされた輸入依存度が高い品目が対象となったことてす。
その多くは下図にあるように、スマホやPC・衣類などの一般消費財で、その多くは米国ブランドです。

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日経前掲

トランプは返り血を覚悟しています。でなければ、このような制裁関税のかけ方はしないでしょう。

「第4弾は家計を直撃する消費財が多いのも特徴だ。米ピーターソン国際経済研究所の分析によると、第4弾の対象品目のうち、IT製品や玩具など消費財は全体の40%を占める。消費者への直接の影響を避けるため、第1弾と第2弾は消費財の割合が1%と低く、家電・家具などを含む第3弾でも24%だった。
USTRは第1~3弾で対中依存度が5割を超える玩具や履物、布製品を対象から外すなど、他国品では代替しにくい品目をリストから除き物価上昇を極力避けてきた。だが第4弾で制裁対象が大幅に拡大すれば、国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費が下振れするリスクも高まる」(日経前掲)

つまり、安価な労働力を目当てに中国に進出している米国系企業のみならず、世界各国の中国進出企業は、中国から輸出するに当たって製品に一律に25%の制裁関税がかかってくるということになります。
たとえば日経が記事の中で「象徴的」として紹介しているのはアップルです。

アップルの主力スマホiPhoneは、約200社に及ぶサプライチェーンからなっていますが、最終組み立ては中国です。
組み立てているのは、台湾の総統選にも出馬を宣言した郭台銘率いる鴻海(ホンハイ)精密工業です。

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ウォールストリートジャーナル

中国に進出した外国企業のビジネスモデルはこうです。
ダイソンやアップルの製品には、design by USAとかUKとか書いてありますが、Assembly in Chinaとも併記してあります。
これは商品企画・設計・マネージメント・アフターサービスなどは本社の「川上」でやり、「川下」の生産は中国でしているということです。
利益率も川上のほうが遥かに大きいですから、今回の第4弾の追加制裁は川上を直撃します。

また川下を握るのもこれまたホンハイのような外国系企業ですが、ここも上の写真のように産業用ロボットを導入せずに内陸部の安い労働力を使って労働集約型で利益を出しています。

ですから、今回の第4弾の制裁関税でこの中国進出企業のビジネスモデルが根本的に崩壊しかねません。
ホンハイはインドに逃避しようとしていますが、そう簡単に拠点工場を移すのは困難だとみられています。
郭さん、足元が燃えだしましたよ。総統選なんかでカネ使っている場合じゃないと思いますが。

また同じことはユニクロにも言えます。ユニクロは、従来の第1弾から3弾までの制裁関税では革ベルていどしか引っかからなかったのですが、この第4弾でほぼすべての製品が対象となる予想です。
ユニクロはかねてから中国シフトを縮小し、東南アジアや南アジアに分散を開始していましたが、これか決定的な中国離れの後押しとなることでしょう。

米国メディアによれば、アップルの場合、この第4弾の25%追加関税を食らった場合、主力モデルで160ドル(約1万7600円)もの値上げになるとの試算が出ているといいます。
常識的に考えて、1万7千円もスマホが値上がりしたら、ただでさえ高いので有名なiPhoneの価格競争力はゼロに等しくなります。

トランプの目的ははっきりしています。日経の見立てのように世界のサプライチェーンから中国を切り離し干上がらせることです。
過度なグローバル化が中国の急成長の秘密でしたが、ここから中国を追い出すと決意したことになります。
そのためには、米国企業であろうとも例外はないということになります。

影響はもちろん米国・中国のみならず、世界的なものとなるでしょう。

アップルのiPhoneの需要が低迷した場合、表面的には日本はiPhoneの完成品を生産していないため、日米二国間の輸出入金額には大きな影響が出ませんが、中国に向けて輸出される日本産部品への需要は縮小し、結果として日本経済にもマイナスの影響が及びます。

また、日本からの輸出だけではなく中国広州に新工場をつくってしまったトヨタを先頭に、多くの企業が中国進出していますから、受けるか影響はより大きく、かつ複雑なものになるはずです。

今日の株式相場は週明けからナイアガラとなるでしょうし、先行きはまったく読めなくなります。
当然、消費税など上げている場合かということになるはずです。

下の図表はやや古いのですが、OECDにより2015年に発表された国際産業連関表(2011年)に基づき、アジア各国と米国の「国内外最終需要依存度」を算出したものです。
各国の自国最終需要への依存度をみています。

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典拠 大和総研

ご覧のように、棒グラフの青色が自国消費分ですから、米国と日本は並んで9割弱が自国消費です。
この国内需要が鉄板であることが日本経済の強みです。
ただしこれを支える6割の個人消費次第が景気の不透明感に嫌気をさすと、デフレ帝国の逆襲となります。

一方、アジア諸国も、内需主体といわれるインドネシア・フィリピンは自国への依存度が8割に迫っているのに対し、韓国は6割、タイやベトナムは5割強にとどまり、国外需要への依存が相対的に大きいといえます。

国外依存のうち中国が占める割合を見てみましょう。

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典拠 大和総研

台湾、マレーシア、韓国が高い比率を示しています。
今回、早くも第4弾制裁が発表されると、中国依存度が高い韓国ウォンなどの通貨が投げ売られているようです。
事次第では、第2次アジア通貨危機に連鎖する可能性も捨てきれません。

特にウォン安が止まらない韓国にとって、更にホットマネーが売り浴びせられた場合、これが最後の一撃となるかもしれません。
その場合、既に外貨が払底しているうえに、通貨スワップもないに等しく(もっていてもジャンク債)、おまけにヒダリ特有の重度の経済オンチであられるムン閣下が座っている韓国はどうするのでしょうか。(まぁ、知ったこちゃありませんがね)

米国は返り血をあびる覚悟で、中国に進出した米国企業を国内に力づくで呼び戻そうとしています。
トランプのツイートはこう言っています。まぁ、そのとおりですな。

「関税を避けるためのそのような簡単な方法は? 古き良きアメリカであなたの商品や製品を作るか生産してください。 とても簡単です」
Such an easy way to avoid Tariffs? Make or produce your goods and products in the good old USA. It’s very simple!

中国の発展は、トランプにいわせれば、米国の技術と富を盗むことから始まりました。

●中国経済発展のビジネスモデル
①外国に低賃金で資本投下をさせる
②同時に技術移転を強要させる
③その外国技術を違法コピーし類似品を国内製造し、安価で輸出する
④中国から輸出品は為替操作による元安に助けられ、シェアを独占する
⑤外国企業は中国市場では資本移動を禁止され、経営介入されて中国市場から駆逐される

スマホのファーウェイが典型ですが、先端産業は米国が技術の主要な原産国であるにもかかわらず、いまや衰退の途を歩むことになります。
これは目先の利益に目が眩んだグローバル企業にも問題があるんだよ、アップルよ、自分の国に回帰しろ、そうトランプは言っているわけです。 

トランプはさらにFRBに1%利下げしろと命じました。
大統領のFRBへの命令権はないのですが、想定される対中経済戦争による景気後退の歯止めであることは間違いありません。

今後ですが、正直よくわかりません。
いちおう2カ月の猶予期間が設けてありますが、それは貿易の国際的慣習に従ったまででのことで、トランプはソンナものが役に立つとはおもってもいないでしょう。

というのは、ここまで強烈な第4弾を出した対中要求理由は、経済分野だけでもこんなにあります。

●米国の中国への要求
①資本取引規制・移動の自由化
②中国市場への自由なアクセスの完全保障
③外国企業経営への介入禁止
④為替操作の禁止
⑤知的財産権の剽窃防止と保護
⑥不正な輸出補助金の完全撤廃
⑦国営企業への保護の禁止
⑥労働教育施設を用いた奴隷労働の禁止
⑨以上が法律により担保され、行政による恣意的運用ができない環境づくり

更にこれに交渉項目には入っていませんが、今後中国との交渉で出てきそうなものは、南シナ海の人口島の解体、一帯一路政策の中止、国内の少数民族保護や人権尊重なども加わってくるでしょう。
これは中国共産党が自ら築いてきた利権を手放さねばならないことが故に、中国は絶対に呑めません。

これをすべて呑んだら、中国共産党のビジネスモデルそのものが根本的に瓦解し、晴れて「普通の国」となります。
「普通の国」とは、中華帝国はいくつかの自由主義の国家群に分解し、自由選挙が行われ、少数民族と人民の自由が回復することです。
あまりにも当たり前のことですが、それが中国国民と周辺国にとっては最良のことなのです。
しかし、かの国がそれを易々と呑むような可愛いタマでないことは誰もが知っています。

 

 

 

 

2019年5月12日 (日)

日曜写真館 たまには水彩画みたいに

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今、盛りの牡丹を水彩画タッチにしてみました

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牡丹のてらいのない美しさを淡くしてみました

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花弁の色が引き立ちます

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牡丹の黄色の花弁に淡いピンクが一点

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ごめんね、牡丹さん。次は元の色で出すからね

 

 

2019年5月11日 (土)

山路敬介氏寄稿 沖縄社会の矛盾・後進性や我那覇真子さんの事などその3

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 今回で終了となります。ありがとうございました。なかなか言葉化できないことをよく書いていただきました。感謝します。

一挙に3つのことが展開しています。
ひとつめは北が2回目の発射を行い、晴れて米国によって正式に「飛翔体」から弾道ミサイルへと格上げ認定されしました。
これでムンの南北融和路線は完全に瓦解し、国連制裁決議違反が明確になりました。
ふたつめは、米中交渉が決裂しました。長い時間尺でみたほうがいいと思われる変動が予想されます。
三つは、米国とイランとの緊張が一触即発になりつつあります。

以上についてですが、急展開があった場合を別にして月曜日といたします。

 

                                                     ~~~~~~~~~~

 

                     ■沖縄社会の矛盾・後進性や我那覇真子さんの事などその3
                                                                                       山路敬介

 

承前

■ 消極性と融和性
沖縄社会や沖縄県人の欠点を的確に述べたという点で、篠原章氏の18/8/21の批評comの記事(ttps://hi-hyou.com/archives/7779)が抜群におもしろかったです。まさに自分自身や身近におぼえがありすぎて、思わず苦笑いしてしまいました。沖縄の皆さんはぜひ読んでみてください。

ここでは沖縄大学の樋口準教授の説を紹介していて、「人間関係に敏感なウチナーンチュは、空気の変化を読み、自分の行動をすぐさま修正する。」、「周囲の意見や、目線や、批判に対して驚くほど敏感で、他人の気分を害することを何よりも恐れている」、「頑張る人(ディキヤーフージー)は、周囲の空気を悪くする」、「いかに失敗を避けるかが重要な関心ごと」、「ウチナーンチュは現状維持を好み、人から指示されることを嫌う」、「上から圧力がかかると行動が鈍る。そんな意図はないのかもしれないが、仕事が停滞して、結果としてサボタージュのような状況になる。」などなど。(笑)

たしかに沖縄の若者は大人しく見えます。また、こうした態度の結果は良くて「現状維持」や「問題回避」、そして「主体性の欠如」から「自己喪失」、最終的に自分の頭で物事を考えなくなるようになるんじゃないかと心配してしまいます。

指摘は主に学生への観察ではあるのですが、実社会においても、別のカタチをとって沖縄県人の特徴となって現れていると思います。ある種の「鬱憤」からたとえば、酒を飲み過ぎたり、飲むと人が変わったりする場合や、依存体質になりやすくなるようです。

こうした事の原因について樋口氏は、「沖縄というシマ社会のなかでは、「隣人・他人と横並び」であることが、以前と変わらぬ平穏な暮らしを続けるための最大の要件であり、それは彼らにとってきわめて合理的な行動である」と言っています。

そのとおりと思います。沖縄人の人間関係は本来的にはとても濃いものです。その濃い環境が原因の圧力の中で、樋口氏が見た若者たちは生きて行かねばならず、そのために身に着けた「消極性」であったり「迎合的態度」で、それは防衛本能みたいなものです。

また、樋口氏のいう「シマ社会」とは、「島」であることの地理的条件というような一様の意味で述べているのではないと思われます。私なりには「縛りのある集団」とも解釈でき、そこにまた「うまりずま(生まれた島)への帰属意識」や「郷愁」を含んだ複雑な意味を持つものでしょう。
                                                                                                                                                        (了)


                                                                                                                           文責 山路 敬介

 

 

 

 

2019年5月10日 (金)

山路敬介寄稿 沖縄社会の矛盾・後進性や我那覇真子さんの事などその2

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                  ■沖縄社会の矛盾・後進性や我那覇真子さんの事などその2
                                                                                          山路敬介

承前

 我那覇真子氏の言説から

 ちょうど一年前くらいでしたが、我那覇真子氏の一行が宮古島を訪問してくれた事がありました。建設中の自衛隊施設や久松五勇士の記念碑などを視察し、講演も二回行った由でした。私も地元の我那覇ファンから誘われていましたが都合で行く事が出来ず、後でビデオでその模様を見ました。

その中で我那覇氏は、宮古島市が首尾よく自衛隊を誘致出来た事、例の「自衛隊が来たら婦女暴行が起きる」と発言した石嶺香織前市議を議会が辞職勧告した事や、その後落選した事に関して、「それは宮古島市民が一丸となった成しえた成果」であるとか、「宮古島市民の高い共同体意識のゆえである」と述べました。そうした見方は明確に事実と違うので、当時ここのブログにおいて一文書かせてもらおうかと考えていたものでした。

自衛隊の誘致成功については、粘り強く議会与党をまとめ切った長濱副市長の人間性と手腕によるものです。石垣市との違いはまさに「市政与党をまとめられたか、否か」の違いであって、石垣市には長濱氏のような存在がないことが中山市長の苦労の要因でしょう。
ですから、石垣市民より宮古島市民のほうが「共同体意識」があるという事もありません。

石嶺前市議の辞職勧告決議案の可決については、人権を蹂躙するような言動をする人間を置いておけない事は全ての議会人として当たり前で、これは当然の処置です。
その後の落選については、通常選挙においての宮古島ではそもそも過激で極左的な言動を容認する票は一議席分しかなく、それは共産党の上里氏のものだというにすぎません。二議席を争う補選でも再びあれば、石嶺氏がまた当選する確率は高いと思います。

我那覇氏は「家族のようにつながっていく、日本のネットワーク」をイメージした活動をされているそうで、それ以外の言説においても極端に言えば、何やら「全体主義化」を想起する感じを持ったものでした。
私の考えは、「常に個人の領域を拡大する事、個々の能力を高め、そこから個人々々の県民の意見の尊重や弱者の救済、それによる民主主義の伸長こそが沖縄問題の解決のカギとなる」というものです。

しかし、当時そのような記事を書かなくて本当に良かったと今は正直に思います。なぜなら、少なくも今の沖縄の状況を見、それに「見合った」という意味で我那覇氏の方法論は正しいと思わざるを得ない面があるからです。
いえ、それより何より沖縄社会の場合には「共同体意識」だとか、「家族的ネットワーク」というような古臭い観点に立ち返って考えるほうが、民主主義云々よりもよほど理解の助けとなるのだと気づかせてくれました。

私の理想論は「逸り」(はやり)だし、正しいがはるかに現実に遠い「理屈倒れ」のものでしかありません。そして、我那覇氏の宮古島評は「事実」ではないが、政治活動家の行動という観点から見れば「真実」ではあるのだ言うことも出来るでしょう。

いくら待っても叩いても、私の考える事が政治的有効性を持つようには沖縄社会は出来てはいず、民主主義行なう前提となる要件に、それこそ幾重にも欠けています。
民主主義を活かすには、それを受け止める成熟した人民あっての事なのです。
また、我那覇氏が目指す事を翁長前知事が逆の方向から先にやったと見る事もでき、ラジカルに変革を目指すならそれもいいかも知れません。ですが、保守にはそれは不可能です。

あと10年。ここが勝負だと思います。上の世代が抜けて下の世代と入れ替われば、今回の選挙の世代別投票率を見れば明らかなように、当落は逆転します。
ところがそれは革新陣営も強く意識しているところです。若者へのPR(実際は「教化」ですが、)が重要とされ、本土メディアや新聞労連などとも連携し、差別をキーワードとして「沖縄問題」に関するネット言論への締め付けは強化される一方となるんでしょう。

                                                                                                                                                  (続く)

 

 

2019年5月 9日 (木)

山路敬介氏寄稿 沖縄社会の矛盾・後進性や我那覇真子さんの事などその1

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  常に鋭い評論を寄せて頂いている山路さんから 寄稿を頂戴しました。いつもありがとうございます。


                                                        ~~~~~~

                     ■沖縄社会の矛盾・後進性や我那覇真子さんの事など その1
                                                                                               山路敬介
 
はじめに

 先の衆院補選の結果は十分予想出来たものとはいえ、私には非常にショックな出来事でした。
沖縄県民には「島尻安伊子」ではなく、「屋良朝博」を選択する合理的な理由は一切なかったからです。私はこの「島尻の敗北」こそは、辺野古後の状況や「県民の欠点」を説明出来る特別な出来事だったと考えます。

この敗因の分析については自民県連内部でも意見が多く出、我々のような一般人の立場からもさまざまな角度から話されます。いわく、「(島尻が)辺野古移設に賛成の立場を表明したからだ」という意見がある一方で、そうでなく、逆に「自民県連をあげて、辺野古移設に推進の立場をハッキリ打ち出せなかったからだ」という保守派議員もあります。

屋良朝博は、選挙中の言とはいえ、現に日々埋め立てが進んでいる現状にもかかわらず「辺野古には指一本触れさせない」などとオカルトまがいの事を言い続けました。
県民は、屋良らの国際左派連携による独自ソースから再構築された「米軍辺野古不要論」など信じているわけではありません。屋良に投票した人々を含め、もはや県民のほとんどが「辺野古阻止」など実行出来るとは考えてもいません。

屋良に投票した多くの県民にとって「辺野古問題」とは旗印にすぎず、単に象徴的に存在するのみで、別の動機や意味が県民の投票行動に結びついているのです。そこのところが、沖縄問題の根本的本質なのだと言えると思います。

これは全くあり得ない話になりますが、例えば「辺野古の工事を中止」などしたところでさしたる意味はありません。さらに少々うがって言えば、最終的に「沖縄からの全米軍撤去」をしてもその根本はかわらず、そのような処置だけでは「和解」もなく、これまでの本土の歴史的な責任を引き続き日本政府に求め続ける関係性を保持し続ける事になります。

この事は米軍撤去という沖縄革新にとっての「歴史の転換」を成し遂げた以上、きわめて自然な要求と捉えられます。この辺りまで視野に収めているのが屋良氏らのグループの方向性です。

もちろん、多くの屋良氏に投票した支持者をふくめ、沖縄県民が上記のように現在考えているはずがありません。ですが、そういうものを許容してしまう、あるいは引きずられてしまう土壌が沖縄にはあるのです。本記事では、そのあたりの重い意味を主題にして記してみたいと思います。

 政策的には正しかった島尻安伊子はなぜ負けたか? 民主主義に抗する沖縄報道

 島尻は早くから県民の関心は「辺野古移設問題」から、自身が得意とする「子供の貧困問題」や「女性問題」「低所得者層の家庭問題」などに移っている事を見抜き、そのことの正しさは3月27日に発表された県民意識調査でも明らかとなりました。
(県民意識調査結果では沖縄県が重点的に取り組むべき政策として、前回調査(平成27年)で1位だった「米軍基地問題の解決促進」を挙げた人は26・2%(前回比10・0ポイント減)にすぎず、2位に転落しています。1位は「子どもの貧困対策の推進」で42・1%でした。)

一方の屋良は、かつてより米軍基地問題にからむ新奇の主張こそ多数の発信してきましたが、今回の選挙戦においては、「子供の貧困対策」等の主張は島尻の主張をなぞるような低調な主張にとどまり、いかにも付け焼刃的な中身の無いものに過ぎませんでした。

ある自民党県議は島尻の敗因を「島尻さんは、政権と近い事がマイナスになった」と分析しました。そのとおりだと思います。それとともに、島尻が「本土嫁」である事も今回は要因していたと思います。
一般的に政権に近い事が選挙に有利に働くことは当然で、特に島尻の場合は、その事の効果として具体的な実績も豊富でした。

「訓練の移転」など次々と打ち出される基地負担の軽減策だけでなく、「今の沖縄に何が必要か?」を政権に直接アドバイス出来る立場にあり、特に「生活者」や「女性」の目線を重視して進言してきたのが島尻でした。
しかし、そのような島尻の補佐官としての活動は報道される事はなく、それどころか取材さえ行われていません。 島尻は一切無視されて来たのです。

民主主義社会において、マスコミの役割はきわめて重要です。県民は知る事が出来る範囲でしか判断できないのです。偏った報道により非対称の選挙戦を強いられたり、恥ずべき「女に政治は無理」などというポスターを張り出されたりで島尻はさぞかし無念でしょうが、県民にとっての問題の第一は、沖縄には民主主義を行うについて、このように重要な要素や前提が欠けて久しい状態にある事です。

たとえば基地問題において「政府は説明がたりない」とは良く言われる事だし、そういう面もあるでしょう。
また、県民投票のさいに小川和久氏は「防衛省はもっと丁寧に説明すべき」と力説しましたが、なべてそういう言説には意味がありません。

確かに不十分かも知れないが、政府も防衛局も説明はしています。国会の審議だけを見ていてもそれは明らかです。沖縄においては報道がするべきことをしていないのであって、受け手である県民の情報アクセスへの消極性もさらに問題です。なんでもかんでも、公はつねに「すべて上げ膳・据え膳せよ」というのは間違っています。

ところで、このような現象は県自民党にとって、幾度も直面して来た経験があります。本土からはメディア関連を中心に「反安倍」の応援団が喧しい中でしたが、全面的に「安倍政権だから」と言ったふうにも言えません。

これまでは県経済状況のありようが自民党県連を支えてきました。ところが今は「県経済は革新県政下でも、十分に何とかなっている」という気分が県民の間で生まれてきていて、それが自民県連の存在意義を脅かしています。
「安倍政権のせい」と言えるとすれば、政権の適切な経済運営と「沖縄に寄り添い政策」により、「自分で自分の首を絞めている」という事です。その上前を沖縄の革新がまんまとハネる状況になっているのです。

けれど、さらに重要なのは「翁長後」の沖縄世界においては昔からあった「脱本土」とか、「本土」と「沖縄」を対置して物事を捉える傾向が高齢者層において強固で顕著になり、その事が県民の選択に誤りをもたらし続ける原点だという事です。

沖縄のマスコミは民主主義に寄与していないと私は考えていますが、もちろん沖縄のマスコミ自身はそうは思っていません。彼らは県民の意識を重要視した論調を貫いているという意識が高く、その事を誇りにさえ思っています。
なるほど彼らは県民の深層意識の代弁者であり、「県民にとって有益かどうか」や、「妥当な方向性であるか否か」を別にすれば、ある意味地方紙としての役割を果たしているとも言え、それが彼らが言うところの「民主主義」でもあります。まるで戦前の朝日新聞のミニ版なのです。

翁長が「我々=沖縄県民」という精神的集合体をつくり、あるいはよみがえらせました。これは韓国民における「ウリ」的感覚とも、似て非なるものです。保守を革新に取り込んだ事で、それまで押さえ込まれていた県民のルサンチマンが「解放」されたという言い方もできるでしょう。

この精神的集合体は「政府は沖縄に寄り添っていない」という誤った認識を二紙など既存メディアによって植え付けられ、精神や思考がさらに強くよじ曲がります。(「ルサンチマン」の生成) 政府という「権力」に対峙する気分の爽やかさを首尾よく得る事で、これを不合理に見下す弱者たる集団性人間特有の道徳感情的弱点を誘発し(「畜群本能」の惹起)、この感情に基づく価値判断の基準(奴隷道徳)を当てはめた結果こそ、まさに「島尻の敗北」の本質と言えると思います。(一部、論理学の藤原かずえ氏のニーチェ哲学からの論考を参考。
https://ameblo.jp/kazue-fgeewara/entry-12427518905.html

                                                                                                                                                  (続く)

 

 

 

 

2019年5月 8日 (水)

国連機関、北への人道援助を要請

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北朝鮮の構造的病とでも言う農業がまたもやピンチなようです。
といっても凶作と飢餓は北の農業の代名詞で、うまくいった時など皆無に等しいのですがね。
それはさておき、朝日の報道からです。

国連世界食糧計画WFP)と国連食糧農業機関(FAO)は3日、今年3~4月に北朝鮮で行った実地調査の結果、北朝鮮の食糧事情がここ10年で最悪となっていると発表した。天候を主な原因に挙げ、降雨の減少や熱波、洪水の影響で、国民の約4割に当たる1千万人超が食糧不足に陥っていると報告した。 WFPによると、北朝鮮での2018年の食用作物の生産量は490万トンと前年から12%減り、08~09年以降で最も少ない。
天候に加え、燃料、肥料、農機具の部品が不足し、今年の早い段階での小麦・大麦の収穫見通しも不良だという。
 3日、ジュネーブの国連欧州本部で記者会見したWFPの報道官は「人道支援がなければ、さらに何百万もの人が飢えに直面する」と述べた。WFP北朝鮮事業はカナダフランススウェーデンスイス、ロシアなどの援助を受けているが、資金難に陥っている。(ジュネーブ=吉武祐)」
https://www.asahi.com/articles/ASM5401KLM53UHBI01V.html

2019年5月 7日 (火)

イスカンデル・ショーは国内向けだ

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今回の正恩のイスカンデル(ロシア呼称)発射の目的について、日本メディアは想像どおりのことを言っています。
米国に対する揺さぶりのために、グレーゾーンの短距離弾道ミサイルを撃ったという見立てのようです。

メディアがこの見方に執着するのは、南北融和路線の破綻を認めたくないからで、いやいやポンペオだって「短距離弾道ミサイルだかんね」と言っているぞ、トランプ御大だって信頼は崩壊していないと言っておるぞ、ということのようです。

実際にはトランプはこのイスカンデルの発射を聞いて、背信行為だとブチ切れかかったそうですが、ポンペオになだめられたという話もあるようです。
ポンペオはここで親方に切れられると、国務省の交渉路線が終了してしまうので焦ったのでしょう。
お、お待ち下さい閣下。これは短距離弾道ミサイルですぞ、短距離は約束の範疇外です、とでも言ったのでしょうか。

たしかに正恩はグレーゾーンを狙ったつもりだったようです。
長距離弾道ミサイルは自粛するが、ならば短距離ならいいんだろう、放射砲(多連装ロケットの北呼称)なら文句なかんべぇ、ということのようです。
ダメに決まっています。
多連装ロケットはともかく、弾道ミサイルの射程距離について国連決議は短距離ならオーケーです、などとひと言も書いていませんからね。

米国が今回北に対して「とりあえず見逃す」と言ったのは、中国に対する経済制裁のハードルを一挙に25%にした時期と奇しくもバッティングしてしまったからです。

「米中通商協議の妥結をほぼ織り込んでいた各国金融市場には動揺が広がり、米株価指数先物は2%超下落。アジア株も売り込まれ、中国の主要株価指数は4%超急落した」(ニューズウィーク5月6日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/25-16_1.php

これは世界市場に与える影響では、北のイスカンデル発射などよりはるかに大きいニュースで、これでいったんは中締めとなるかに見えた米朝交渉は中国の反自由主義的経済構造を抜本的に変えない限り継続されることになりそうです。

中国は米国が要求している資本の自由化などを呑むことは絶対にできません。
それは中国共産党による一党独裁下の資本主義、という矛盾した仕組みを変えられないからです。
また、米国の要求を呑むことは、即ち「中国の夢」である覇権を諦めることでもあるからです。

しかし米国もこの間の米中経済戦争で分かったことは、それを急進的にやれば自国の経済もダメージを受けるということでした。
ですから中国も変われない、米国は声を荒らげて迫ったかと思えば、妥協をしてみたりと、硬軟織りまぜていくわけですから必然的に時間がかかります。
トランプが再び当選すれば、2期目一杯この米中の戦いは継続されることでしょう。

北に対する米国の対応に話を戻します。
もうひとつ考えられるのは、米国にとって中露が北の支持に回らなかった以上、袋小路に自ら飛び込んでしまったのは自明なのですからことさらここで焦る必要はないし、怒ってしまったら後の仕掛けに影響が出るということです。

後の仕掛けとは、米国がひとつだけ意識的に開けてあった「逃げ道」のことです。
どうぞ正恩閣下、お困りでしょう。こちらへどうぞ、というわけです。
どこかって?もちろんそれは日本です。

いまや北はすべての道を塞がれて、泣いても笑ってもこの「逃げ道」の日本に米国との仲介を頼むしかなくなりました。
正恩もわかりかけているとおり、安倍氏はトランプと年がら年中北のことで相談し合っている仲です。
蚊帳の外どころか、ほとんど共謀者と言っていいほどです。
このすべての北の逃げ道を塞ぎ、まるで追い込み漁のように一定の場所に誘導していくというシナリオを書いたのは、もちろんこのふたりです。
その安倍氏が第2回会談の決裂を見て、おもむろに「前提条件なしでの会談」を呼びかけたのですから、さて正恩がこれを断れるかどうか見物です。

今、正恩が日本に対して切れるカードは、唯一拉致被害者を返すことしかありません。
弾道ミサイルや核の存在は、北の外交能力では今やかえって重荷なくらいで、現時点で北が使える交渉材料は拉致被害者の帰還しかないのです。
ここで拉致問題を大きく進展させたい日本、日本しか米国に経済制裁をゆるめてもらう仲介を頼めない北。
中国との経済戦争もあって、ここで手は出したくない米国。
奇妙な利害の一致の構図が出来上がったのです。

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https://biz-journal.jp/2019/03/post_26921.html

そもそも米国にとって北朝鮮は中国という主敵に対して、しょせん従の立場でしかありません。
いかんせん経済力と軍事力が天と地ほど違いますから、北がまかり間違っても中国のように世界の覇権国を狙ってくる可能性はゼロです。
しょせんいかに正恩が大物気取りでいようと、米国からすれば「小物界の大物」ていどの国なのです。
ただし主敵であるイランと核開発や弾道ミサイルで邪悪な裏コネクションを作ってみたり、あろうことか米国に届くと称する長距離核を持とうなどと野心を持つから、うっとおしいだけのことです。

長距離核と称する火星15がフェークICBMだということを米国は知っていますから、軍事力を行使することなく経済制裁だけで締め上げられると踏んでいます。
また今の北に肩入れする国など、ただの一国もないことも十分に認識しています。

中国はご覧のとおり米中経済戦争で、北になど加担すれば米国からナニを言われるかわかったもんじゃない上に、錯乱して北京に核ミサイルを撃ってきかねない正恩を支援する義理などいささかもありません。

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では方やロシアはといえば、できたら朝鮮半島に口先介入のひとつでもしたいスケベ心はあるものの、現実に肩入れする気などさらさらないことがわかりきっています。

「ウラジオストク=小野田雄一、ソウル=桜井紀雄】ロシア極東ウラジオストクを訪れた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、プーチン露大統領との夕食会で「抗日闘争」まで持ち出し、露朝の結束を誇示した。だが、翌日には地元が準備したイベントの大半を蹴って早々に帰国する冷淡さを見せた。まるで目的は関係強化でなく、大国ロシアに支持される指導者像を内外に印象付けることだったかのようだ」(産経4月26日)
https://www.sankei.com/world/news/190426/wor1904260029-n1.html

それにしてもプーチンから色よい返事がもらえないと、キレて後のスケジュールをドタキャンして帰っちゃったというんですから、おいおい坊や青いね。
この肥大した自我と、肥満した肉体を持つ男が、いかに甘やかされた環境で暮らしてきたのか忍ばれます。
しょせんこの人物にとって外交は国内政治の延長でしかなく、国内向けのカッコつけでしかないようです。

今回のイスカンデル・ショーもこの流れで見ればわかると思います。
正恩にとって政治とは、国内の不平不満分子を押さえつけ、金王朝を永続化することでしかありません。
北の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官のこの発言は、いかに非核化に対して軍部が強い不満をもっているのかわかります。

「崔氏によると、会談に先立って何千人もの軍関係者が核計画を放棄しないよう求める嘆願書を金正恩氏に送ったという。内部の反対が大きいため譲歩はできないと説明したかったようだ。崔氏は「米国は絶好の機会を投げ捨てた」とも話した」(日経3月15日)

何千人の軍人の署名ですか。どうせ盛っているのでしょうが、根強い軍部の反対は事実でしょうし、彼らは正恩の失敗で中国からもロシアからも見放されたことを知っています。
正恩としては、軍部の抵抗を押えるためには、ここで一発「米帝」の鼻をあかしてやらねばならなかったのでしょうね。
しょせんは国内向けの政治ショーです。

それを分かってのトランプの容認発言でしょうが、米国がどうであれ、これは明白な国連制裁決議破りですから、制裁強化を国連安保理で討議せねばなりません。

 



2019年5月 6日 (月)

北朝鮮、国連制裁決議違反を承知で弾道ミサイルを発射。その狙いは?

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北朝鮮がやりましたね。シンガポール会談以降、なんの成果もないくせに漠然として漂っていた融和ムードが、これで完全にご御破算となりました。

苦々しげにそれを報じる朝日( ) です。
https://www.asahi.com/articles/ASM5545GJM55UHBI00N.html

北朝鮮朝鮮中央通信は5日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が4日に、日本海上での軍事訓練を指導したと伝えた。韓国軍が同日発表していた北朝鮮による日本海への飛翔(ひしょう)体発射を指すとみられる。韓国の軍事専門家は、公開された写真の分析から、国連安全保障理事会が制裁決議で禁じる弾道ミサイル発射に含まれていたとの見方を示した。
 同通信によると、訓練は新型の大口径の長距離放射砲(多連装ロケット砲)と戦術誘導兵器の性能の確認が目的。正恩氏が発射を命じた。公開された写真には発射の様子が映っていた」

「朝鮮中央通信(KCNA)は「(このミサイルは)北朝鮮に攻撃を試みるあらゆる敵性艦隊を思うがままに地上から攻撃できる強力な攻撃手段」「(同ミサイルは)東海(East Sea of Korea、日本海)に浮かぶ標的を正確に検知し、命中した」と報じた」(AFP5月5日)

北が公表した動画にはミサイル発射に立ち会う正恩が写っており、正恩の直接の指導の下に行われた確信犯的違反だと分かります。
これは決議1874決議2087決議2094決議2270決議2321決議2356決議2371決議2375決議2397 に違反します。
朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁 - Wikipedia

また、韓国と北朝鮮が結んだ南北軍事分野合意も、これで一方的に廃棄されたと見るべきです。
これを弾道ミサイルと呼ぶとムン・ジェインが営々と積み重ねてきた対北融和路線が根底的に覆りかねないとみたのか、韓国政府は「あれは弾道ミサイルじゃないよ、飛翔体かただのミサイルだよ」と訳のわからないことを言い出しています。
ムン閣下にはお気の毒ですが、これは紛れもなく弾道ミサイルで、しかも明確な国連制裁決議違反の上に、韓国全域を射程範囲に置いたものですから、韓国国民の頭上に落ちてくるモノかもしれません。

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発射された弾道ミサイルの種類は、ロシアのコピー品と見られる近距離弾道ミサイル「イスカンデル」もどきです。下の写真のように中膨れのズングリした特徴的な形状をしています。

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5月4日、「火力打撃訓練」で発射された短距離弾道ミサイル「イスカンデル」 朝鮮中央通信

イスカンデル(9K720) は従来北が保有していたスカッド系ミサイルと比較して、段違いに優秀な弾道ミサイルです。
ちなみにネーミングのイスカンダルは、宇宙戦艦ヤマトとは関係なく(ありたまえだ)、アレキサンダー大王の異称のことです。

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9K720 - Wikipedia

イスカンデルは、ロシアの最新鋭の短距離弾道ミサイルで、以下の特長を持っているといわれています。

①射程距離400km以上の短距離弾道ミサイル(CRBM)。
②DMZ付近に展開すれば韓国のほぼ全域が射程範囲に入る。
②移動式装輪車(TEL)に2発まで搭載可能。
③固定燃料を使用。液体燃料方式と違って、命令があり次第直ちに発射可能。 

では北は国連制裁決議を公然と破って(韓国との合意破りなど屁とも思わないでしょうが)、なぜこの時期に弾道ミサイル、それも短距離の精密誘導が可能なそれを発射したのでしょうか。
日本のメディアは今回のイスカンダル発射を、「北が米国を対話に引き出すための挑発」というトーンで伝えるでしょうが、間違っています。
正恩はムンのようなデイドリーマーではありませんから、トランプの好意に一縷の望みは繋いでいるでしょうが、仮に第3回米朝会談が開かれても第2回よりもはるかにハードルが高く、決裂する可能性は高いと読んでいるはずです。

ハノイ会談ほどの成果が出ず、しかも3度目の決裂はシャレになりません。平和的手段での「非核化」(する気なんかありませんが)は投了ということになります。
その場合、ボルトンとポンペオはトランプに軍事オプションの進言をせねばならない立場となるでしょう。

その場合、北にとっての最大の軍事的プレッシャーである米海軍空母打撃群が、朝鮮半島近海に再び姿を見せることになります。
正恩は、これに対して「寄るな・触るな・近寄るな」と言いたいのです。

北朝鮮自身、この北朝鮮版イスカンダルが精密誘導可能な地対艦弾道ミサイルだということを北朝鮮自身、いまや大っぴらに「攻撃を試みるあらゆる敵性艦隊を思うがままに地上から攻撃できる強力な攻撃手段」(朝鮮中央通信)と明確に言っています。
この5月4日の発射実験時の正恩の写真のバックにも、目標とおもわれる艦艇が写り込んでいます。

今に始まったことではなく、北は2018年11月16日の「先端戦術兵器の実験」以降、鮮明に米国の空母打撃群を目標においています。
去年秋以降、北はイスカンダルの実践配備に拍車をかけて、今年4月の部分的試射、そして今回の5月4日の本格発射実験を行いました。

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朝鮮中央通信  なんだこの不機嫌な顔は

「寄るな・触るな・近寄るな」とはA2AD(接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)とよばれて、中国軍が定式化したものですが、この北朝鮮版と思えばよいとおもいます。
接近阻止・領域拒否 - Wikipedia

「《A2/ADは、Anti-Access/Area Denial の略。接近阻止・領域拒否の意》米国に敵対する国や勢力が用いる軍事戦略で、自国や紛争地域への米軍の接近や、そうした地域における米軍の自由な行動を阻害すること」(デジタル大辞泉)

北朝鮮は、祖父の金日成時代に引き起こした朝鮮戦争において徹底的に米国空母からの空爆で痛めつけられました。
以来、北朝鮮軍主力は地中に潜っていますし、虎の子の弾道ミサイルも移動式にして山中から発射できるように努めています。
これは裏返せば、いかに米軍の空爆を恐れているかということの証です。

特に正恩が震え上がったのは、2017年秋に米空母が3隻、朝鮮半島海域に同時に登場した時です。

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おそらく当時からイスカンデルの開発には努めていたはずですが、政治的駆け引きの道具でしかない大陸間弾道ミサイルより緊急度が高いと判定したのかもしれません。

では、このロシアからパクったイスカンデルもどきは、有効な接近阻止・領域拒否を張れるでしょうか。
米国は脅威度が高まったと認定するし、対策は立てるでしょうが、それだけです。
というのは、現在、世界で数少ない米国空母打撃群を対象にした「空母キラー」(地対艦弾道ミサイル・ASBM anti-ship ballistic missile)は、中国が開発した「東風21D」(DF21・射程1500キロ)しかありません。

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これも実際に使用されたことはなく、果たして空母打撃群がどこに存在するのか捉えられるかさえ危ぶまれています。
前にも書きましたが、米空母打撃群は、実戦段階が近づくと完全な無線封鎖止をしてしまい姿を消してしまいますので、どこにいるのかまったく分からなくなるはずです。
それを索敵するためには宇宙からの偵察衛星か、空中からの偵察に頼るほかはありませんが、北にその能力は皆無です。
となると正恩さん、あんたお宝のイスカンデルをどこに向けてブチ込むんでしょうかね。

仮にまぐれでその位置が分かったとしても、艦隊自体が回避行動をとったり、イージス艦からは弾道ミサイル防衛(MD)がなされるでしょうから、いっそう命中は厳しいでしょう。

つまりは、北はパクった技術のお披露目をしている段階のルーキーにすぎません。
したがって、米空母打撃群の位置を精密に探り出し、正確無比の誘導で、MDを避けて命中できるとは到底思えません。

唯一、米空母打撃群を本気で撃滅したいのならば、米艦隊がいると思われる一定広さのの海域に対して面的飽和攻撃をかけることです。
飽和攻撃とは、イージス・システムが対応できる数倍の数の対艦ミサイルを雨と霰とばかりに降り注ぐ攻撃方法のことですが、そもそも北がそんな数のイスカンデルを揃えるのは夢のまた夢でしょう。

結果として、今回の正恩のイスカンデルの発射実験は、絶望的状況をいっそう絶望に追い込んだことにしかならないと私は思います。

 

※お断り イスカンダルから、開発したロシアの呼称の「イスカンデル」に表記を統一しました。アクキサンダーがロシアでは「アレクサンドル」と呼ばれるように、どちらでも一緒ですが、開発国に敬意を表してということで。

 

2019年5月 5日 (日)

日曜写真館 薫風を腹一杯吸い込んで

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腹一杯に薫風を吸っています

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一日だけでも鯉のぼりになりたいものです

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田んぼの準備をする人の見上げる空には鯉のぼりが応援しています

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田んぼの代掻きが始まると一年が始まったという気持ちになるそうです

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吹き流しは水の流れだそうです

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筑波山が田んぼの水の上に浮いています。やがて黄金の海に浮くことでしょう

2019年5月 4日 (土)

宜野湾くれない丸氏寄稿 空中戦に子どもたちを巻き込むな!その2

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今回で終了です。ありがとうございました。

                                                                               ~~~~~~~~~

                              ■空中戦に子どもたちを巻き込むな!その2
                                                                             宜野湾くれない丸

承前

「普天間高校に在学中、エアコンが設置された。そのとき、『基地被害を覆い隠すクーラーが設置された高校で勤務するのは基地を容認したことになる』と宣言し、辞職した50代の教師がいた。(略)生活をなげうってまで反基地のポリシーを貫く姿に、『この世代の先輩たちは強いなあ』と心を打たれた(24頁)」と別の卒業生は話す。

武勇伝のように聞こえるが、ここからは「暑くうるさい教室で学ぶ生徒らの視点」は見えてこない。見えるのは「反基地である自らの主張を自らの行動で示した姿勢」である。
「普天間基地がなくなる事が当たり前であって、なにゆえ普二小が移転せねばならないのか!」ここからも何十年も「うるさく危険な教室で学び続ける児童らの視点」は見えてこない。

言及すればこの何十年もの間、「安全ヘルメットのひとつ」さえも行政や学校関係者らは配布してこなかった事実からも明らかだ。
ちなみに一昨年、ヘリ窓枠落下事件が発生し、その後防衛施設局が校庭とプールにコンクリート製の避難場所をようやく設置した。
「辺野古のジュゴンを守れ!」と反対派は叫んでいた。その反対派へ向かって「ジュゴンの政治利用だ!」と容認派はこれまた叫ぶ。これまでその両者のどちらからも「県と国はジュゴン保護に本格的に動け!!」との声を聞いたことは「ない」。

私から見ると右も左も「空中戦」ばかりなのだ。
子どもらをこの大人らが行う「空中戦」からガードしなくてはならない。
韓国の女性団体が突然、普二小へ入ってきて政治アピールをしたり(されたり)、普天間基地近郊の小学校の児童がランドセルに「辺野古新基地反対」のステッカーを貼って反対運動を追っかけ、そしてそれを「カッコイイね」と褒める県議センセイがいたり、選挙のたびごとに運動に駆り出される(無意識な)子どもたちは後を絶たないし、クーラー設置に異を唱え教職を辞する姿に心打たれたりする生徒がいたり、辺野古のサンゴを守れ(その他の埋め立てで死にゆくサンゴには目もくれず)と整合性に欠ける主張に賛同するミュージシャンを礼賛したり・・・・「空中戦」ばかりだよね。ヨーロッパの子どもたちは「空中」を飛び出し宇宙へ行ってしまい、もはや話は「惑星」の事までなってしまった。

「火事が出た時にはどうする?」と問うと、
その場合「あらゆる対策対処を事前に検討する」と答える人がある。
一方では「火事そのものを出さないように全力を注ぐ」と答える人もいる。
どちらが「正しく」どちらが「間違い」とは言切れない。
つまるところは「過去からの経験で今後を考える」ことであることは誰しもが異を唱えることはないのではなかろうか?


                                                                                                                                                         (了)

 

 

 

 

2019年5月 3日 (金)

宜野湾くれない丸氏寄稿 空中戦に子どもたちを巻き込むな!その1

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いつも素晴らしいエッセイを頂戴している宜野湾くれない丸さんから新作を頂戴しました。ありがとうございます。
2回に分けて掲載させていただきます。

                                                       ~~~~~~~~~~~

 

                                                   ■空中戦に子どもたちを巻き込むな!
                                                                                   宜野湾くれない丸

昨年あたりから少し気になっていた情報だが、どうも北欧を中心としたヨーロッパの子どもたちが「惑星を救うための抗議デモ」を行っているらしい。デモはもはやヨーロッパ中に拡大し、その中心人物である
グレタ・トゥンベルクさん(14才)は既に超有名人物らしい。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63945
https://www.theguardian.com/environment/2019/apr/16/greta-thunberg-urges-eu-leaders-wake-up-climate-change-school-strike-movement?fbclid=IwAR2OYhrJFhhhK92fEBEc1Bgnl56m9D1spFBYDBKuUKhl6gX4eUsKweabO64

良くも悪くもヨーロッパらしいなぁ、などと思ってはいたが、「子どもたちの行動をやみくもに礼賛すること」には記事同様に違和感を拭いきれない思いが残った。
我が沖縄島でも性質は少し異なるが、やはり「子ども」という視点から同じように気になることがあるので駄文をしたためてみた。

2月の中旬ごろ、沖縄県議会議員(現職)M氏が自身のTwitterへ「辺野古に反対〇」「辺野古新基地反対」などのステッカーをランドセルに張り付けた小学生児童(低学年にように思われる)の写真とコメントを投稿した。
*「今日、普天間基地大山ゲートで軽く暴れて帰る際、こんなランドセルの小学生と遭遇。『カッコイイな。父ちゃん、母ちゃんに作ってもらった?』と聞くと、『ううん。じぶんで作ったてば』とメチャメチャどや顔」*
とコメントしている。

この県議のレベルがうかがい知れるコメント内容だ。児童の顔は分からないように写真を撮っているが、その制服からはどこの小学校かははっきりと分かる。
ちなみにこの県議センセイ、関係方面からの指摘により投稿を削除してはいるが、「削除したら、拡散される法則」をご存じないのかもしれない。
まぁ、こんなセンセイの事はどうでもいいのだが、気になったのはこの小学生である。

「辺野古反対に〇」「辺野古新基地反対」などのステッカーを張り付け学校へ通っていたわけである。親や担任の先生らはこの事を「どう考えている」のだろうか?
仮にではあるが、もし親がステッカーを張ることを「勧めていた」り、児童自身が張り付けたとしてもその行為を「褒めていた」りした場合はいったい・・!?
そもそも事実として、この児童は普天間基地大山ゲートで行われた反対派集会の「その現場近く」に居て、県議センセイと言葉をやり取りし、撮影されてる。つまり集会の「その場周辺に、その時間帯にいた」わけである。
これが児童「自身」の判断なのか、誰かが「参加しよう」と誘ったのかは分からないが、確実に言えることはこの時間帯に「大山ゲートの騒ぎの近くにいた」ということである。

親や学校の先生が「辺野古に反対〇」や「辺野古新基地反対」を「褒めたら」、この児童のその後の成長過程に大きな影響を及ぼすであろう、と素朴に感じざるを得ない。少なくとも公人である県議Mセンセイはこの児童を「褒めている」のだ。

随分と前になるが、「私たちの教室からは米軍基地が見えます」(渡辺豪 ボーダーインク2011年)という本を読んだことがある。
普天間基地に隣接する普天間第二小学校の文集「そてつ」に文章を書いた児童(当時)らは、普天間移設問題が拗れている状況下で、現在何を思い考えているのか、という事を追っかけたルポルタージュ本である。

本の帯には『「世界でもっとも危ないと基地」と隣合わせの小学校で、子ども達は、切実な思いを文集「そてつ」に綴った。大人になった今、彼らは何を思うのだろう?』と添え書きがある。
あの平成の迷言「最低でも県外」発言を撤回し、「やはり辺野古で・・・」とちゃぶ台返しをやった直後にこの本は発売されたので、本の性質は言わずもがな・・・ではある。

9名の卒業生らが登場するが、その中の女性のひとりの言葉が私には残った。『(普二小の)児童たちには「偏った考えにとらわれず、基地の有り方を広い視点でとらえる力を養ってほしい」と願っている』と、続けて「普天間飛行場が返還されるのを何年も待って、やっと第二小学校の環境が良くなるのではなく、一日も早く第二小を別の場所へ移転してもらいたい」と述べている。

その理由を彼女は「四十年以上も劣悪な環境で第二小の児童たちは学んできた。
だから、我慢するのはもう十分なのではないか」と。こう述べる彼女は第二小を卒業後、普天間中、普天間高校を卒業し、東京の語学専門学校へ進学し、米国への留学や貿易会社、旅行会社での勤務後、現在は米国在住とのこと。
取材を受けた他8名の卒業生らとは少し異なる経歴を持った人物である。
多種多様な価値観を仕事や住む土地などから経験してきた人の言葉である。「広い視点で物事を考える」という言葉は彼女のこれらの経験から出てきた「児童(子ども達)からの視点から出てきた言葉」であろうと私は思う。

                                                                                                                                         (続く)

 

2019年5月 2日 (木)

天皇が消滅しないために

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昨日の続きを考えていこうかと思います。
実は私は天皇や皇室についてこのブログでほとんど発言してきませんでした。
というのはしんどい問題なんて すよね。本来は国柄の根幹の問題ですが、妙にイデオロギーの色彩が強くなって論じにくいテーマだと思ってきました。
天皇に対する敬意を表しただけで極右扱いされたり、逆に天皇にまつわる伝統を護持しないと罵声を浴びそうな時代もかつてはあったのです。

ただし、今回の御世替わりの空気は、画期的といえるほど明るいものでした。
崩御に伴う改元ではなかったということが、かくも明るさに満ちた新時代の到来(錯覚かもしれませんが)を予想させたのかもしれません。
なんてたって改元で盛り上がれるのは、世界広しといえど私たち日本人だけの特権みたいなものですから、このグローバリズム全盛時代に実は民族という紐帯があって、そこに共通の感情が流れていることをわからせてくれました。

ほかにこういう機会かあるかといえば、ちょっと見あたらないんですね。
強いていえばオリンピックでしょうが、あれは他民族・他国との文字通りの競争があってのことです。
ところが今回は他の民族はまったく関係ないわけで、これが妙なナショナリズムに走ることを未然に防いでくれた気がします。

西尾幹二氏が言っていましたが、 健康なナショナリズムはいつの時代にも必要な「微量の毒」です。
過剰ならば、戦前の日本のように国を滅ぼしますし、少なければ国家を維持できません。
ほどのよいナショナリズムと共に改元できたのは、陛下の深慮だったと思います。

これは平成天皇が慎重に意図して考えられた賜物だと思います。
まちがいなく先の陛下はそこまで国民の心のひだを考えて、熟慮の末に譲位を発言されたのだと思います。
先帝陛下がくどいほど「憲法に則り」と置き土産の言葉を残された真意は、象徴天皇という憲法の定めが日本という国のスタビライザー(安定装置)の役割を果たしていると考えられているからだと思います。

私は現行憲法には懐疑的なひとりですが、良くできた部分もあります。
それがこの天皇条項で、これを憲法の長い条文の冒頭に置いたことです。

さて、私はこの天皇が存続できるか大変に心配しています。
それについては昨日書きましたが、継ぐべき男子がいないという事実です。

私は宮家や女性天皇という「知恵」を復活させる時期に入ったと思います。
このように書くと、立憲民主みたいなことを言うなといわれるかもしれませんが、あっちはあっちですからね。

「宮家」とは、「宮」は天皇と皇族のことですから、その「家」のことです。
宮家を作るには、現行皇室典範では、男性皇族の結婚や成年などをへるしか方法はありません。
しかもGHQが明治天皇直系以外の宮家を廃絶させてしままったために、
現在日本にある宮家は、「秋篠宮様」「高円宮様」「常陸宮」「三笠宮」の4つしかありません。

昨日も出しましたが、下図が皇族の家系図です。

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出典不明

どういうわけか皇族は圧倒的に女性です。女性皇族は14人おられますが、このうち成人した未婚の女性皇族は6人です。
このうちの眞子様は、小室さん問題でトラブっていますが、やがて結婚すれば5人となります。
佳子様もいつかはわかりませんが、やがてはご結婚なさるでしょうから4人です。

皇位継承権を持つ男子はご高齢の常陸宮様を別にすれば、秋篠宮様とその長男の悠仁親王(ひさひとしんのう)しかいません。
そして秋篠宮様と今上陛下は歳が近すぎますので、この先30年を考えた場合、確実に一緒にご高齢になると予想されます。

その場合、このまま推移すれば、30年後には悠仁親王しか皇位を継承する方はおられなくなります。
これでいいのですか、というのが私の心配です。

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結婚して一般人になれば黒田清子(くろだ さやこ)様のように、皇族としての活動はできなくなります。
仮に悠仁親王が、いつの日かわかりませんがご結婚されて男子が誕生すれば万事よしですが、こればかりはわかりません。
その場合、これで皇統は途切れ、日本が誇る「天皇」は消滅することになります。

それもそう遠いことではなく、30年かそこらの間に起きることです。
おそらく、この重大なリスクを女性宮家・女性天皇に反対する保守の人もよくご存じのはずです。
しかし保守系論客たちは、常日頃左翼陣営に対して「対案を示せ」と口酸っぱくいうのにかかわらず、この天皇家消滅リスクについては口をつぐんでいます。その理由は、男系天皇の伝統が破壊され、女系に切り替わるからです。

「女系天皇」というのは、母方を女性に持つ天皇の血筋に持つ天皇のことです。
これが日本の天皇の長い歴史を替えることになる、というのが反対理由です。
私もよく理解できますが、天皇が消滅してしまっては本末転倒ではないでしょうか。

整理すれば天皇家消滅を防ぐ方法は限られています。基本は3つしかありません。

第1に、旧宮家の復活です。「旧宮家」とは、11宮家51名の元皇族の総称のことです。
旧宮家はすべて伏見宮系の男子子孫です。
旧皇族 - Wikipedia

しかし、旧宮家はいずれも当主が高齢で、断絶の危機にあります。

・伏見宮家・・・高齢で男子子孫がおらず断絶の見込み
久邇宮 ・・・ 同上
朝香宮 ・・・男子あり

旧宮家復活の方法は今までも探られてきています。小泉政権下では有識者会議がひらかれています。

「現行の皇室典範・旧皇室典範ともに、いったん皇族の身分を離れた者がふたたび皇族になることを禁止しており、このアイディアの実現には法改正が必要である。具体的な方法については旧皇族男性を現在の皇族の養子とする、旧皇族男性を未婚の女性皇族と結婚させるなどのアイディアが提示されている。小泉純一郎首相の私的諮問機関皇室典範に関する有識者会議」は旧皇族男性を養子にする案については「当事者の意思により継承順位が左右され、一義性に欠ける」として否定的見解が出された。
近代以前の朝廷では、いったん皇族でなくなった者がふたたび皇族となった例がいくつかある」(ウィキ前掲)

天皇職を継承しうる該当者が希少なことと、皇室と養子縁組するなどの方法が上げられていますが、離脱してから70年ちかくたっているために簡単な道ではないと思われます。

もっとも重要なことは天皇になる心構えです。
天皇になるというのは、血を受けつげばよいということではありません。
今上陛下がそうであったように、幼少の頃より天皇としての自覚と責任の念を強く教育されて育ちます。
リベラル色が強い平成天皇ですら、長男と次男を分けて考えていて、長男は将来天皇となるべき帝王教育を施し、次男はそれを補佐するような立場になるように育てました。

果たして皇籍から離れて久しい旧皇族の人たちに、天皇という重責を担う自覚があるでしょうか。
私はないとまで断言しませんが、天皇という「日本でただひとりの人」となることは相当に難しいと思います。

ちなみに安倍氏は「あることは承知しているが、国民のコンセンサスがとりにくいのではないか」という旨の発言をしています。

第2に、立憲民主や朝日、NHKなどのメディアが好きな女性宮家・女性天皇です。
案としては検討に値しますが、この人たちの意見に透けて見えるのは、日本の伝統から天皇を切り離すことで天皇制を弱体化させたいという隠れた意図です。
どうもそれが見え透いているだけに、簡単には国民の理解をえられないでしょう。

第3に、もうひとつの手段があります。
それは今上陛下の長女である愛子内親王を女性天皇とすることです。
「女性天皇」であって「女系天皇」ではないことにご注目下さい。

「一般的には記紀の記述を尊重し、過去に存在した女性天皇は全員が男系の女性天皇であり、また女性天皇が皇族男子以外と結婚して誕生した子が践祚したことは一度としてないとされている。
歴史学界では、女性天皇は男系男子天皇と男系男子天皇の間をつなぐために存在していたとする「女帝中継ぎ論」が通説であるが、孝謙天皇のように女性皇太子を経て正式に即位した女性天皇も存在する。
ただし、その孝謙天皇についても、彼女を皇太子とした父の聖武天皇遺詔において道祖王を皇太子として指名(後、廃太子)していることか、彼女もまた適切な候補者が見つかるまでの中継ぎであったとする説がある
女性天皇 - Wikipedia

 

歴史的にも10名の女性天皇がおられますから、男系天皇の伝統は護持されます。
かつての女性天皇もそうであったように、あくまでもリリーフであって、彼女の子供に皇統が移るわけではありません。

また愛子天皇案は、あくまでも不幸にも悠仁様が亡くなられるとか、皇位を継ぐことができるまでの特例であることが前提です。
ですから、悠仁様が男子を残さずに亡くなられた場合は、必然的に女性天皇から女系天皇へと移行することになります。

これら3案すべてがそうですが、何らかの特例法を作るしかないでしょう。
現在の皇室の3人の女性が結婚して皇籍離脱をなさる前に決めなければなりません。  

いずれにしてもどの案もリスクはあります。
第1案の旧宮家復活は高齢で消滅寸前ですし、第2案は伝統から断絶し、女系天皇への本格的転換を意味します。
第3案の女性天皇案は、そのまま女系天皇に転換する可能性があります。
ただこのまま手をこまねいていては、取り得る選択肢が減り、リスクが増大するだけだということです。 

  

■お断り  
本日の記事は、最初にアップしてからさまざまなシナリオを考えて七転八倒しました。
結果、書いては悩み、書いては悩みで何度か書き換えを行いました。申し訳ありません。
これで最終原稿といたします。                            午前11時           

 

 

 

2019年5月 1日 (水)

令和の始まりに考えておくべきこと

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平成天皇が退位なさいました。国民に宛てられた最後のお言葉です。

■退位礼正殿の儀の天皇陛下のおことば  
                                                                     宮内庁 平成31年4月30日
今日()をもち,天皇としての務めを終えることになりました。
ただ今,国民を代表して,安倍内閣総理大臣の述べられた言葉に,深く謝意を表します。
即位から30年,これまでの天皇としての務めを,国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは,幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ,支えてくれた国民に,心から感謝します。
明日)から始まる新しい令和の時代が,平和で実り多くあることを,皇后と共に心から願い,ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります。

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FNN https://www.fnn.jp/posts/00044986HDK

素晴らしいお言葉でした。
このような言の葉をもって、自らの引退の言葉とできるこのお方の心の有り様の美しさにうたれました。
平易にして簡潔。簡潔にして心のこもったお言葉でした。

そして陛下は退室されるにあたって万感をこめて一礼されました。これは儀礼ではなく、陛下のお心そのものであったと思います。
眼の奥が滲みました。
私が長い間分からなかった、「大御心」(おおみごころ)という概念が素直に伝わった瞬間です。

頭をどうぞお上げ下さい。私たち国民こそ、陛下に深くお礼をせねばならないのですから。

こうして平成の時代は終わり、令和の時代が始まりました。
新しい天皇陛下のご即位を心から祝福いたします。

さて、正確に言えば「即位」ではありません。
皇太子殿下は、天皇に「践祚」(せんそ)してその地位に就かれた後に、しかるべき儀式を経て即位したことを宣下(せんげ)します。
今回、「譲位」に代わって「退位」という用語を政府が使っているように、伝統とは切り離された部分があります。

私は今回の譲位に賛成です。
職務に邁進されて身体を損ねておられる高齢の陛下に、これ以上の負担をおかけすることは非人道的です。
時間が限られており、陛下の意志が強かっただけに政府が苦慮し一代限りの生前退位特例法で処理してしまったことはわからないではありませんが、やはり無理を感じます。

天皇陛下も人である以上、死ぬまで働けと言うのは酷にすぎます。
しかも天皇職は想像を超える激務です。
いくつかの要件を満たせば「譲位」が可能なような、皇室典範の改正が必要な時ではないでしょうか。
一定の年齢(たとえば70歳くらいでしょうか)に達し、陛下がお望みになられれば「譲位」が可能なような皇室典範の改正が必要です。

それはさておき、今回の御世替わりが祝賀の空気に包まれて執り行われたのは、新時代の幕開けにふさわしいものでした。

思い出してみれば、昭和の御世替わりは、昭和天皇の崩御と共にあったために、暗い船出だったことを思い出します。
テレビは歌舞音曲を自粛し、CMも公共広告機構のつまらないものばかりを繰り返していました。
考えてみれば、平成を覆い尽くした憂鬱なデフレトンネルの入り口にふさわしい始まり方だったのかもしれません。

Genealogy

宮内庁 http://www.kunaicho.go.jp/about/kosei/koseizu.html

伝統から遠いといえば、天皇陛下の退位され、皇太子殿下が次期天皇として「立太子」されるのですが、今回は「立皇嗣」(りつこうし)の礼」という聞き慣れない言葉で執り行われることになります。
皇太子ではなく「皇嗣」というこれまた聞き慣れない地位になられます。

この皇嗣に秋篠宮文仁殿下が立皇嗣されることは既に決定していますが、成仁(なるひと)陛下と6歳しか変わらないために、現実問題として秋篠宮様が天皇職を継ぐことができるか、先述した生前退位の問題と重なって難しい問題となるでしょう。
大変に失礼な言い方で申し訳ありませんが、秋篠宮様が天皇位を継承されても大変に短い御世になる可能性が濃厚です。
実際、秋篠宮様もそのことに不安を漏らしておられるということも仄聞します。

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秋篠宮様ご一家 宮内庁

また将来、秋篠宮様が即位された場合、皇統は秋篠宮系へと切り替わり、悠仁親王(ひさひとしんのう)が継がれることになります。
理由はお分かりのように、今上陛下には敬宮愛子内親王(としのみや あいこないしんのう) しかおられないからです。

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旧宮家

このような綱渡りをせねばならないのは、GHQの命令によって旧宮家が廃絶されたためです。
GHQは軍事占領下だった1947年に、明治天皇の直系男子ではない11の宮家を皇籍離脱させました。
これにより、明治天皇直系以外の宮家しか存続を許されなくなりました。

GHQは日本弱体化政策の一環として、天皇のいわば貯水池の役目をしていた宮家を取り潰し、細い直系の一本のみに切り取ってしまったわけです。
今回の皇位継承の危うさは、その当然の帰結です。

女系天皇うんぬんの議論の前に、悠仁親王をサポートする旧宮家の復活や女性宮家の創設などを現実的問題として議論すべきだと思います。

先日どこぞの狂人が、悠仁親王の通う学校を襲撃するという事件がありましたが、これは今や彼しか天皇位を継承する人がこの世に存在しないためのテロだと思われます。
このような皇室テロを未然に防止するためにも、皇室の継続が磐石であるための方策を国民的議論すべきいい機会だと思います。

 

 

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