北朝鮮粛清の嵐か
北朝鮮で大規模な幹部粛清があったようです。
「韓国の朝鮮日報は31日、北朝鮮が2月の米朝首脳会談が物別れに終わった責任を問い、金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表、および事務レベルの交渉を行った複数の外務省担当者を処刑した、と伝えた。
同紙が匿名の北朝鮮筋の話として伝えたところによると、金革哲氏は4人の外務省幹部とともに3月に平壌の美林飛行場で処刑された。いずれも米国のためにスパイ活動を行った罪に問われたという。
同筋は朝鮮日報に「交渉に関して米国の意図を適切に把握しない不十分な報告を行ったため」、金革哲氏はスパイの罪に問われたと述べたという。
ロイターは、この報道の信憑性を確認できていない。」(ニューズウィーク6月1日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/05/post-12233.php
5月30日付け労働新聞はこのように報じています。
「労働党の機関紙『労働新聞』は30日、「表では首領をあがめるふりをして、裏では背を向けて別の夢を見る同床異夢は、首領に対する道徳・義理を破ってしまう反動的、反革命的行為。こうした者たちは革命の冷厳な審判を免れなくなった」
ここで労働新聞が「背信者」と決めつけ「反革命行為」とまで罵るのは、2013年9月のチャン・ソンテク(張成沢)以来のことです。
今回粛清されたと見られるのは、ハノイ会談で正恩の横にいたキム・ヨンチョル(金英哲)統一戦線部長(当時)と、キム・ヒョクチョル(金赫哲)対米特別代表(当時)、キム・ソンヘ(金聖恵)統一戦線策略室長です。
出典不明
最も大物の党副委員長であったキム・ヨンチョルは労働改造所送りと言われています。
キム・ヨンチョルは、ご承知のように、この間一貫して対米外交の責任者を務めた人物でした。
元々はあまり大きな声ではいえないような危ない男でしたが、今は背広を着て外交官もどきのことをしていました。
今回は、正恩に失敗のツケを全部まわされたようです。
あえなく労働教育改造所送りとなり、ろくに飯も与えられず馴れない炭鉱堀りでもさせられるのでしょうか。獄死することは確実です。
https://www.sankei.com/world/news/190120/wor190120
一方、キム・ヒョクチョル(金革哲) は飛行場で処刑だそうです。わざわざ広い飛行場で処刑されたとなると、気の毒にもチャン・ソンテクのように高射砲で撃たれたのかもしれません。墓に入れるものも残らなかったことでしょう。
こういうスプラッタな殺し方は正恩の趣味です。
このキム・ヒョクチョルは外務官僚です。
2019年3月に北朝鮮反体制派の襲撃を受けた在マドリード北朝鮮大使館で、以前の17年までスペイン大使を務めていた人物でした。
この反体制派は、PCや文書を持って逃げたとされていますが、彼らの目的はキム・ヒョクチョルの情報だったとも伝えられています。
彼は大使の離任後の外務部に戻り、今回は米国担当特別代表として、裏交渉をしてきましたが、おそらく米国は妥協するだろうという甘い読みを正恩に伝えたと言われてます。
米国は首脳会談が行われるまで一切手の内を見せずむしろ楽観的観測を意識的に流したながら実際に蓋を開けてみると、会談の場でボルトンが書いた一枚の文書を手渡しました。
ここには「核の完全撤去なくして制裁解除なし」という内容が書かれていて、正恩は聞かされていたこととのあまりの落差に青ざめたと言われています。
というわけで、「最高尊厳」様に恥をかかせた罪で、「米帝スパイ」として死刑です。
もっとも間違った観測を教えて死刑になるなら、同様の楽観論を伝えたムン・ジェイン閣下などはどうなるんでしょうかね。
https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/2019053...
次に、上の写真中央でキム・ヒョクチョルと並んで写っている女性のキム・ソンヘは、強制収容所送りだと言われています。
この人物も外交官僚ですが、上司のキム・ヒョクチョル同行している様子も撮影されています。
ちなみに強制収容所に送られた場合、当該の人物の家族、親族も同じく同様の処分を受けます。この連座制と密告制度が、北の体制を内部崩壊させにくくしている秘密です。
家族は家族内でおかしな動きがあれば積極的に密告し、この連座制から逃れようとするからです。
それはさておき、この人物は日本とって失うことがもっとも痛手となる人物で、拉致問題の北側カウンターパートをしていました。
今回は、会談で通訳をしていましたが、トランプが去りぎわに「ひとつ提案がある」と言った言葉を、とっさに訳せなかった罪を問われたようです。
これまた、このていどで強制収容所に入れていたら、日本の外務官僚などは命がいくらあっても足りないでしょう。
また正恩の実の妹のキムヨジョン(金与正)は謹慎処分だそうです。理由は「出すぎた行動」だそうです。
「白頭山の血脈」でなければ、強制収容所送りだったことでしょう。
正恩は余りに母親に似ているこの妹にだけは甘いようです。
正恩にとって、田中真紀子よろしく「人間には、敵、家族、使用人の3種類しかいない」ようです。
正恩の「使用人」とは、国民のことだから始末におえませんが。
https://www.businessinsider.jp/post-190285
常識的には多くのメディアが昨夜報じたようにハノイ会談の失敗の責任を取らせたということでしょうが、ならば上の写真でキム・ヨンチョルと並んで左右を固めていたチェ・ソンヒ(崔善姫)が粛清を免れた理由がわかりません。
一部メディアは、チェ・ソンヒ以外は楽観論だったという解説をしていますが、彼女はゴリゴリの対米硬派ですから、正恩は融和派の幹部を切り、強硬派路線に乗り換えたということでしょうか。
この可能性もこの間のイスカンデル・ミサイルの発射を見るとないとは言い切れませんが、そこまで決意しての今回の粛清であるかどうかははまだ分かりません。いずれ明らかになることでしょう。
黒井文太郎氏のように、北特有の「NO2殺し」とする見方もありますので、つけ加えておきます。
狡兎死して走狗烹(に)らるという成句がありますが、北ではウサギを捕れない犬もどんどん殺されてしまうようです。
「彼(キムヨンチョル)はどのみち「そろそろ粛清される頃合い」だった。なぜなら、彼はもう長い期間、北朝鮮権力中枢において、実力組織出身の最高ランクの実力者というポジションにあったからだ。
このポジションは、北朝鮮ではきわめて危険な立場だ。この国では、政治的に突出したナンバー2、あるいは軍や秘密警察で強権を代行した実力者は、これまでほぼ全員が失脚あるいは粛清されてきた。独裁者の権力を脅かす存在だと疑われるからだ。
金英哲も、北朝鮮の独裁政権を維持するため「力を行使」する地位を歴任した。ただの官僚的なエリートではなく、真の実力者だ。金正恩からすれば、そろそろ排除しておきたい人間だった。
(黒井文太郎 ビジネスインサイダー)https://www.businessinsider.jp/post-190285
いずれにしても、北は確実に首脳会談以前の場所に復帰しているようです。
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極端な清算主義は共産主義国の十八番だし、その責任は「頭」ではなく、手足である下の者が取る事が合理化される思想が主体思想というものなんですよね。
これほどの事をやり続けて、核を放棄すればどうなるか正恩は正しく理解しているはず。
追い込んだ正恩の逃げ口を「日朝会談」と設定した日米の方式は手順として正しいですが、その事に対する一次回答なのでしょう。
米政権は、年内を待たず経済制裁と同時並行的に次の段階に進むかもしれません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2019年6月 1日 (土) 16時26分
私が気にしていた金与正(ヨジョン)さんは謹慎となったのですね。ある情報から、私は金与正が北朝鮮の鍵を握ると思っていたのですが、謹慎となれば彼女の影響力も削がれたことになります。今後、どうなるのか?
投稿: ueyonabaru | 2019年6月 1日 (土) 18時49分