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2019年5月30日 (木)

ソフトターゲット・テロとしての登戸無差別殺傷事件

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川崎市登戸で、痛ましい無差別殺傷事件がおきました。凶刃に倒れたお子さんと、外務省職員の方のご冥福を心からお祈りします。

このような事件が起きると日本では、かならずと言ってよいほど「犯人の心の闇」といったしたり顔の評論がでますが、まったく無意味です。
このような言説は、犯人を免罪しかねません。
犯人像の調査は必要ですが、それは「心の闇」とか「人間が持つ狂気」などいった文学趣味とは無縁な、犯罪社会学的なそれでなければ意味がありません。
そもそも犯行直後の今必要なことは、哀悼の意を表し、再発をふせぐために社会的な知恵を絞る以外になにがあるのでしょうか。

さて残念ですが、世界でこのような無差別殺傷事件を防げる国はありません。
というのは、この登戸無差別殺傷事件はソフト・ターゲットに対するテロだからです。

今回、犯人が引きこもりの異常者であった可能性があるために、狭い意味での「テロ」に該当しないのではないかという声も上がるでしょうが、動機や犯人像とは関係なく、やった事象のみで評価すれば完全なテロそのものです。
しかも守るすべがない子供を狙った卑劣極まるテロです。
ソフトターゲットの中でも、もっとも弱く危うい存在でした。

ソフトターゲットとは
「軍事目標のうち、警備監視が手薄で攻撃されやすい標的民間人や民間車両、民間の建物など」(コトバンク)

今回、犯人が狙ったのはスクールバスの停車場でバスを待つ児童たちの集団という典型的なソフトターゲットでした。
犯人は背景は分かっていませんが、おそらくどんな社会にも一定の割合で含まれる異常性格者であると思われます。
学校側は教頭を現場で保護に当たらせていて、手落ちはまったくありませんでしたから、メディアは学校をうるさく取材しないように。

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警官を配置したらという声もありましたが、実際には仮に警官がその場に居合わせたとしても、今回のようにわずか数十秒で無音のうちに犯行がなされた場合、警官は拳銃を抜く時間的余裕さえ与えられなかったはずです。
もちろん一定の抑止効果はあるでしょうが、相手が今回のように初めから自殺することを覚悟していた場合、逮捕を前提にする警察には限界があります。

民間警備会社を使うということもありえますし、現に警備員をバス停に配置することも検討されているようです。
しかしあまり期待しないように。教師よりややましていどにすぎません。
警備員の多くは逮捕術の訓練を受けていないか、受けていてもわずかの講習です。それで凶刃を振り回す狂人に対峙せよというのは酷というものです。

わかっていないなと思うのは、従来の「大人を付き添わせる」というレベルではもはやないという事実認識です。

ましてや銃器所持を自由化するなどは論外です。
訓練されていない一般人が銃器を扱うのは大変に危険であって、そのことによって社会内部に銃器が拡がることのほうが遥かに社会的リスクが高まります。
その世界最大の実例は銃乱射事件が年中行事化している米国です。
銃器所持が自由になれば、いま柳刃包丁を使っているテロリストは、次回はライフルや拳銃をって襲撃してくることになります。

本気で警備員を付き添わせたいなら、欧米社会の民間軍事会社(PMC・private military company )を張り付けるしかありません。
民間軍事会社はアフガンやイラクなどの戦地において軍事基地周辺の警備をする会社もありますが、民間空港や駅の警備を任されている会社もあります。
有名な例では、イスラエルのICTSや英国のコープセキュリティがそうです。(写真は英国コープセキュリティ)

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「1982年、イスラエルの民間軍事会社がエルアル・イスラエル航空と共に新たな民間軍事会社を作った。それがICTS社である。この会社の本社はオランダのアムステルダムにある。2005年に作ったI-SEC・インターナショナルセキュリティBVは、ICTS社の空港であり、飛行特殊部隊もかねている。
1990年代後半にICTS社はアドバンスド スクリーニングという特殊なコンピュータ技術を導入した。この技術は乗客の個人情報に基づいて、その乗客が安全を脅かす人間かどうか調査するものである。2008年度ICTS・インターナショナルの売り上げは日本円にしておよそ100億円だったという」
http://karapaia.com/archives/52153673.html

ソフトターゲットは開かれた無防備な民間エリアですから、守ることが非常に困難です。
空港のような出入り口とエリアが限定されている場所ですら、高度のセキュリティを施すことは容易ではありません。
ましてや、スクールバスの守備範囲は広大で、セキュリティの穴は探し出せばキリがありません。

たとえば、今回のような集合場所は守れても、乗り込んだ児童の後からテロリストがバスに乗り込み凶刃を振り回す事もありえます。
降りる場所を狙うかもしれません。三々五々集まってくるところを襲撃するかもしれません。あるいは、自宅の外で待っているかもしれません。
つまり、そう考えると無限のリスクの可能性が存在し、それをひとつひとつ潰していかねばならないことになります。

つまり点でリスクを潰しても限界があって、面で潰さねばならないのです。
地域でこの事件の犯人のような危険な兆候が見られる不審者の洗い出しですが、これも人権と個人情報の壁に遮られてたいへんに難しいものになってきています。

今回の事件は腹立たしいものでしたが、改めてソフトターゲットテロについて考えさせる契機となりました。
社会が守らねばならない児童の通学路は星の数ほどあり、そして来年に迫ったオリンピックでは数百箇所のソフトターゲットが散在するのですから。

 

 

 

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コメント

物理的な攻撃(ソフトターゲットに対するもの含め)もそうでうが、情報窃盗、経済を装った買収工作、土地の購入含め、対中国防諜体制が必要だと思います。入国の規制、悪質在留者の送還、危険な中国企業の公表、中国に買収されている政治家の調査・公表などが必要だと思います。
私は、もう米中両国は実質的に戦時中だと思います。
米国のマスコミでは、中国のえげつない実態が結構暴露されてますが、日本では中国にもう買収されちゃったんすかね。

オイラーさん。今回のような事件と防諜とは次元が違いますよ。

何とも無残な事件です。、犠牲にになられた方々、御家族に哀悼の意を表します。

「無敵の人」が注目されていますね。

『失うものが何も無い人間』のこと。失うものが何もないので社会的な信用が失墜する事も恐れないし財産も職も失わない、犯罪を起こし一般人を巻き込むことに何の躊躇もしない人々を指す。
https://dic.nicovideo.jp/a/%E7%84%A1%E6%95%B5%E3%81%AE%E4%BA%BA

「無敵の人」が生み出される要因は生い立ちや、過去・現在にわたる環境要因等、複合的な要素が多すぎて簡単に説明できることなどないでしょう。今後も出てくる可能性は大いにあるでしょう。いったい私達に何ができるのでしょうか。私の拙い考えでは子供達を保護する立場にある人は後ろから襲われても致命傷にならないようにプロテクターを着用する(表から見えないもの)ことくらいしか思いつきません。

川崎19人殺傷事件「無敵の人がやった」という物語にひそむ危険性
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190530-00064916-gendaibiz-soci

こう来られるのを完全に防ぐのは不可能であり、点では無理という記事のご意見に同意します。面でといってもなかなか現実的に難しいですが…。
犯罪予備軍の情報管理の他のアプローチとしては、やる側に「今日はここでは犯行完遂できそうにないな」と諦めさせる日を1日でも多く持たせる事だと思います。

警察による射殺のハードルをもっと下げる必要もあると考えます。実行抑止にある程度はなると思います。それでも死ぬ気の者達を完全に止める事は出来ないのですが。

道を歩き日常を過ごす個々が「私のことは襲わせないよ」とある程度身構えて、しかも「今は大丈夫でも、突然何かあればあっという間に死ぬ恐怖」を心の隅に置きながら暮らす社会って、ストレス蓄積するんですよね…。
しかし五輪ー万博とイベントも続きますし、昔ながらの日本的なノンストレス生活を変えていく必要があると残念ながら痛感させられた事件でした。

一日ゆっくり考えても、上手い言葉が見付かりません。
こういう事件を見ると、どうしても秋葉原の事件を思い出してしまう……。


正直な話として、小学生などを通り魔的犯罪から守る為には、もはやドアtoドア(各家庭の玄関まで行って車に乗せる)しか考えられません。
そうなってしまっては、スクールバスというよりもライトバンを使ったタクシーみたいになって、予算が大変になりますけれど。

日本の街中では、有効射程の範囲内にあるものが多すぎて、拳銃の流れ弾が危険すぎるから足元くらいしか狙えません。
ゴム弾やテイザーもあるけれど日本の警察では採用していないし、そもそも射程が短いので、迫ってくる人間に対して冷静に発砲するのは訓練だけでは難しいと言います。


複数の暴漢が出てきた時、マンツーマンで逮捕している間に他の暴漢が自由になってしまっては話にならない。
また、逮捕術を学んだ警官が発砲せずに取り押さえようとして、銃を奪われるケースもあるわけで。
凶悪犯と対峙したときに、逮捕術以外で無力化することを考えるのも、大事だと思います。

登戸無差別殺傷事件は広義でもテロとは言えないと思います。テロは独立、宗教、思想等を他者に強要するというはっきりした目的があります。その手段が戦争や殺人という暴力をふるうことだと認識しています。「誰でもよいから殺したかった」というのは単なる異常者による犯罪です。秋葉原や登戸の無差別殺傷事件のようなものが多くなっているのはなぜなのですかね。犯人は大抵男。近年増加している「いじめ」「パワハラ」も、他者を思いやれない点では、無差別殺傷事件と似ていると思います。いじめによる自殺者が出ると、まず教師、教育委員会が責められます。気が付かなかった、有効な対策をとれなかった等の責任はあると思いますが、責められるべきはいじめた者です。いじめた者が未成年であったり、死ぬとは思わなかったと責任を感じていなかったり、余程ひどくない限り卒業して終わり。子供たちは責任を取ることなく大人になる。・・・。男は弱いものを守るものと教わったように思います。人を殺してはいけないと教わったように思います。それが集団を守る規範だから、集団が国になっても同じはず。社会構成員としての男は、男女平等で死滅したのでしょうか。

はい、相模さん。
おっしゃるとおり、通常テロは狭い意味で「政治的な目的を達成するために暴力および暴力による脅迫を用いることを言う」(ウィキ)とされています。
ですから、今回の事件はその政治的目的を欠落しているために「テロ」とは呼ばないでしょう。

今回はあえて承知のうえで、逸脱しました。
というのはこのような無差別暴力を受ける側にとっては、テロとまったく同じ被害を受けるために、対策もまたも似たものにならざるをえないからです。

いままで多くのいわゆる異常者の犯行がありましたが、いずれも社会病理的考察、あるいは文学的素材として済まされてしまいました。
ただの異常者の仕業ですから、対策も限られたものにならざるをえませんでした。
一部の異常者としてしまうことで、本来とるべき対策がいかにも日本的な教師や親の登校への随伴といったものになりました。
結果、同じような事件はスケールを大きくしてなんどでも起きます。
これでいいのかという歯がゆさが、今回あえてこの事件を「テロ」と呼んだ理由です。
もはやテロとして見たほうがよい規模であり、その時期なのです。

米国では社会病理のように無差別乱射事件か絶えませんが、これは「政治的テロ」、これは「異常者犯行」と区別していません。
一律に「テロ」です。
あまりにも繰り返されたために、そのような分類が無意味になってしまったからです。
残念ですが、わが国もその領域にちかづきつつあります。

私は今回の事件をあえて犯人の出た背景を捨象しました。そこにつっこむといつもの日本的対応になるからです。
ソフトターゲットテロとすることで輪郭を鮮明にし、その対策があるのか、どこが難点なのかを考えようと思いました。
力量不足ではなはだ生煮えな記事に終わってしまって恐縮ですが、そういう次第です。

無差別殺人としての括りでのソフトターゲット保護について考えるこの記事は価値があると私は考えながら拝読しました。
本筋からはそれますが、コメント欄で管理人さんがお書きの「米国でのテロの区別」については、彼らは無差別殺人にテロというフレーズは使わなかったと思います。
殺人者とテロリストは明らかに区別され、
銃乱射や爆破など、殺人の方法を事件や犯人の呼び名につけて語ります。
意識的にテロと結び付けないようにそうしているとニュースなどを観て感じていました。今はもう同じ表現になっているのか、最近とんとCNNとか観なくなってしまい確かめられずすみません。

相模吾です。お考え了解しました。しかし本当に人間の命が軽くなったなと思います。亡くなられた方ご遺族の方のことを思うと切なくなります。 水郷のアヤメやカキツバタを眺めながら、気持ちを緩めればよいのに。私は貴ブログのアヤメでまったりします。

ふゆみさん。すいません。すべりました。おっしゃるとおりです。
相模さん、ご理解いただけて恐縮です。

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