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2019年5月14日 (火)

北朝鮮版イスカンデルは誰に向けて撃ったのか?

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先週5月9日にも、北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射しました。
今回は米国もためらうことなく、これを「飛翔体」なんてわけのわからない表現ではなく「弾道ミサイル」だと認定しました。

なんというのか、こりゃ落語でいう「間」ですな。意識的に一拍置いて余韻を作り、次の踏み込みを強調するって仕掛けです。
もちろん米国は初めからこれが「弾道ミサイル」だなんて分かっていました。
素人のウォッチャーですら直ちに「9K720イスカンデル」と識別できるのに、米国の軍事情報関係者が分からないはずがありません。

初めの発射の5月4日から5日後ですから、この「間」はいわば北に対して米国が頭を冷やしておけというというシグナルだったはずですが、例によって例のごとく北はこれを都合よく「容認」と受け取ったようです。
馬鹿ですね。しょーもない。この甘ったれた状況認識癖が改まらない限り、正恩はこれで国を滅ぼすことになるでしょう。

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聯合

正恩はよせばいいのに、現況で満ち足りずに核大国の夢を見ました。
今のままでも核などに頼らずとも、米国からは中国と自由主義圏とのバッファゾーン、逆もまた真なりという役割を珍重されていたのですから、そのままでもよかったものを。

どこの国もインフラがガタガタで、国民が総飢餓線上の国なんか攻撃したくはありません。
いったん攻撃してしまえば、周辺国対応もさることながら、北の戦後処理が面倒だからです。
地上進攻すれば、穴にこもった北朝鮮軍をひとつひとつ潰していかねばならず、苦労して勝ったとしても飢餓の民を放っておくわけにもいきません。

ですから、北の存在が「管理された危機」としてある分には、どうぞおかまいなくそのままカルト最貧国としてご自由におやり下さいというのが米中露日の本音だったのです。
これは反対側の韓国も一緒で、鈴置氏がかねがね指摘しているようにムンが「核を持った統一朝鮮」などという危険な妄想にさえとらわれなければ、このまま機嫌よくわけのわからない反日国家をやって頂いてもよかったのです。

それをなにをトチ狂ったのか、南北融和から始まって、核開発に長距離核ミサイルときたもんだ・・。もうため息が出ます。
ここまでやってしまっては、正恩の解決能力をはるかに超えてしまっています。
今やもう彼は自分で振り上げた拳の降ろし場所がなくなってしまっているのです。

方や米国は第3回会談という餌をぶら下げつつ、更に徹底した制裁強化を狙っています。
3回目の米朝会談を否定しないのはトランプの腹芸の類で、こちらが会談を口にしているうちに妥協しろよと言っているだけのことです。
従わなければ、さらなる制裁強化案を国連安保理に提出することになります。
その時になっても第3回の米朝会談の可能性をトランプが言うでしょうか。微妙ですが、言わないでしょうな。
ここまで追い込んで会談を口にするなら、そりゃハードルは第2回の比ではないことでしょう。

米国は、海上臨検かそれに伴う海上封鎖と拿捕、そして正恩の個人資産の完全凍結という段階に進むということになります。
むしろこれが既定路線で、今までの2回の会談が脇道だったのかもしれません。
すでに米国はインドネシアで北の貨物船を拿捕していますから、このような違法な国連制裁破りは今後海上臨検し、拿捕する可能性があるということを北に通告していますから、実施段階に入るのは簡単なことです。

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[9日 ロイター] - 米司法省は9日、北朝鮮船舶を差し押さえたと発表した。北朝鮮から不正に石炭を輸出し米国や国連の制裁に違反したという。米国が北朝鮮船舶を差し押さえるのは初めて」(ロイター5月9日 写真も同じ)

これを無視して更に家伝の瀬戸際戦術なのか、軍部なだめなのか知りませんが、ムン閣下就任3周年を祝砲のつもりか気持ちよく撃ちまくっているわけで、さてさてどうなりますことやら。
ひとつだけ確実なことは、ムン閣下の「人道支援」の夢がはかなく散ったということです。

北からも「なにが人道支援だ。エラソーに」と言われている始末ですから、ムン閣下どうするんでしょう。(知ったこっちゃありませんが)

「ソウル聯合ニュース】北朝鮮の対外宣伝インターネットメディア「メアリ」は12日、「根本的な問題の代わりに人道主義に言及することは口先だけの方便と恩着せ」と主張した。人道主義の内容については明らかにしていないが、韓国政府が北朝鮮に対する食糧支援を推進していることから、これを指すとみられる」(韓国聯合5月12日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190512000200882?section=nk/index

「口先だけの方便で恩着せがましい」とまで言われちゃ、仕方ないですな(笑い)。
北が要求しているのは開城工業団地の再開ですが、コレをすれば100%韓国はセカンダリー・ボイコットの対象となりますが、ムン閣下の煮え切らない態度を見ていると、ぜひ意地悪くこの肝試しを勧めたくなります。
まぁ、今の韓国が米国から金融アクセスの禁止をくらったら、冗談抜きで韓国は二度目のIMF管理に転落しますがね。

さて 一方、米国は一発目の発射以降、このイスカンデルの出元を探っていたと思われます。

「高度なミサイルの試射に最初から成功していることから考えると、北朝鮮がイスカンデルの完成品をロシアか第三国から輸入したと考えるのが自然だ。ロシア軍向けのイスカンデルMの射程は400キロ以上、輸出用イスカンデルEの射程は280キロ以下である」(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之 『NEWSを疑え!』第768号(2019年5月13日特別号))

出元は、西氏の指摘ではロシアそのものが売ったか、ないしはロシアから買ったものを転売したものだと思われるようです。
ロシアは、天然ガス以外売るものが枯渇しているのて、外貨を稼げるならなんでも売ります。
「特産品」の軍事製品はその目玉商品で、戦車から戦闘機まで売れるものはなんでもみさかいなしに売ってきた過去があります。
虎の子のスホーイ27を中国に売ったら、違法コピーされたことさえあります。
ただし、売ったのはモンキーモデルの型落ちですが。

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上の写真(西氏前掲)は左がロシアのイスカンデル、右が北朝鮮が5月4日に発射した「精密誘導兵器」ですが、ロケット技術者のマルクス・シラー博士(ドイツのシュムッカー・テクノロギー社)は矢印の留め具と発射レールの類似を指摘しています。

仮に正規のものなら、たとえばこのイスカンデルならM型は400キロ以上の射程ですが、輸出商品は自分に向けて撃たれるとシャレにならないのでその半分程度の280キロ程度に押えてある廉価版です。
現在の状況で、ロシアが正規品を売るとは思えませんから、かつての顧客のシリアかベラルーシあたりからブラックマーケットを経て買ったものだと思われます。北はシリアのアサド政権に化学兵器を提供していた過去がありますから、おそらくアサド゙政権が売った可能性が濃厚です。

北-シリア-イランは、武器・化学兵器・弾道ミサイルや核開発技術の国際地下ネットワークを作っています。
北の弾道ミサイルの原型はスカッドですが、これもこの両国のいずれかから入手したもので、それを自国生産して逆に売りつけています。
今、米国は北と並んでイラン制裁にも乗り出していますから、その影響もそのうち出るはずです。

それはさておき、北が入手したのは、モンキーモデルでしょうから、誘導装置や射程などはかなり本家版から割り引いたほうがよさそうです。

ちなみに、 韓国も10年前からイスカンデルそっくりさんの玄武2B弾道ミサイルを保有しています。
この韓国版イスカンデルも朝鮮日報(2011年6月)によれば、ロシアにおいて弾道ミサイルの解体を請け負っていた韓国人スクラップ業者が、国家安全企画部(現・国家情報院)の指示で盗んだものだそうです。
やれやれ、南北揃って、他人様から盗んでコピー製品を作るという発想が同じというのが泣かせます。

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韓国聯合

それはさておき、北がこの米国が与えた「間」を理解することなく5日後に2回目を撃った相手は日米ではありません。
それは北の世界唯一の「友邦」であるかの国のケツを蹴り上げ、ついでに軍部をなだめるために撃ったのです。

米国は苦笑いしていることでしょう。
射程推定280キロでは朝鮮半島の半分ていどしか届きませんから、痛くもかゆくもありません。
到達可能な米軍施設は、平沢(ピョンテク)市の在韓米軍司令部も烏山(オサン)空軍基地のみで、軍事境界線100キロ後方から撃てば射程に入ります。

仮に北が撃っても、ミサイルはみかけは大きいのですが、全部爆薬ではなく大部分は燃料ですから、炸薬量はイスカンデルE型で480キロにすぎません。
つまり航空機がぶら下げている1000ポンド爆弾一発ていどの威力しかないのですから、命中してもビルが半壊すれば御の字ていどのものです。
そもそも航空機なら、1000ポンド爆弾をF15Eストライクイーグルならば13発搭載できるとされていますから、1機で13発分のイスカンデルと同等だということになります。
こんな貴重品のイスカンデルをなけなしの外貨を叩いて買ったのでしょうから、いったい何発あるのやら。
というわけで、北の弾道ミサイルをみくびってはいけませんが、過剰な不安を抱く必要もないのです。

 

 

 

 

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コメント

成果も出せず、訪露を途中で切り上げた正恩が帰国してまずやったのが、米朝会談後の最初の発射でした。この意味は国内問題の軍部不満分子への空気抜きと、接近阻止にあったと纏められると思います。

二回目はお得意の「容認」との勘違いですか。そういう自分中心主義は民族的伝統芸ですが、もはや救いようがありませんね。
それにしても正恩の腰はすでに砕けていて、日米に対しては涙ぐましい配慮が再び見られます。
この状況を見れば「条件を付けない」という、安倍総理のメッセージはしごく正しいもののようです。

正恩とすれば。せめて開城工業団地再開にメドをつけ、そのうえで「日朝会談」にでも三回目の「米朝会談」にでも望みたい考えが透けて見え、そのための文在寅へのメッセージでもあったのでしょう。

文在寅がどうするか知れませんが、北朝鮮に対する包囲網は厚く、かつ狭まっています。正面突破はもちろん、瀬取りも困難です。
シリアにしてもイランにしても、事実上の反米的同盟国である北朝鮮と共闘する状況ではありません。

韓国の民族主義なんて、しょせん外連にすぎません。もともと「ウリ」の範囲は都合によって常に伸び縮みするものです。
正恩を「水に落ちた犬」認定するか、お茶を濁す程度の対応しか出来ないだろう文さんの心中が偲ばれます。

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