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2019年5月21日 (火)

丸山発言がロシア人に「分かりやすい」わけ

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昨日からの続きです。
今回の丸山発言のやり切れなさは、よりによってこれがビザなし渡航という日露信頼醸成措置の時に起きてしまったことです。

一般的にもビザなし渡航国は沢山ありますからゴッチャにされますが、逆にいえばビザをロシアに発給してもらうほうがおかしいともいえます。
だって、どうして自分の国行くのにわざわざ「ビザなし渡航」と呼ばねばならないんでしょうか。
ではそこから「千島連盟通信」から押えておきましょう。
http://4islands.jp/exchange/post-38.php

「平成4年(1992年)から始まった、日本国民と北方四島(択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島)に住むロシア人住民との相互訪問による交流のことです。
この交流は、旅券(パスポート)、査証(ビザ)なしで、外務大臣の発行する身分証明書などにより渡航が認められていることから、「ビザなし交流」と呼ばれています。
日本とロシアの間で未だ解決されていない北方領土問題が解決するまでの間、日本国民が北方四島を訪れ(訪問事業)、北方四島のロシア人住民が日本を訪問する(受入事業)ことにより、相互理解と友好を深めることを目的としています。
どのような人が北方四島を訪問できるのか?【訪問事業】
現在次の者が日本政府により訪問を認められています。
①北方四島に居住していた者等
②北方領土返還要求運動関係者
③報道関係者
④訪問の目的に資する活動を行う各分野の専門家」

元々、旧島民をはじめとする日本人が、北方領土にロシアのビザで入ることは、日本がロシアの実効支配を認めることになってしまいます。
だから外務省は渡航自粛を勧告していたのですが、パスポートやビザはなしで、外務大臣が発行する身分証明書などの簡単な手続きで渡航が認められる特別な仕組みを作ったわけです。
これが「ビザなし渡航」です。

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墓を修繕する元島民 FNN https://www.fnn.jp/posts/00345790HDK

では、これはただのといっては失礼ですが、元島民の墓参りや友好行事かといえば、違うと思います。
もちろんそれは大事なことですが、それで終わってしまっては北方領土返還交渉とはなんの関係もないイベントになってしまいます。
現実には開始から30年ちかく続けてくると、そうなりかかっていたのも事実なようです。
これを惰性に流れていると批判する若い人たちの発言を受けて、鈴木宗男氏が答えたのが2018年8月3日の渡航団の船中のことでした。

「皆さんビザなし交流だけでは意味がないんです。平和条約締結のための一つの手段としてやっているということを最初に共有しなければいけない。国民の税金を使ってるんです。全部日本人の税金ですよ?夕食会、昼食会、御馳走様でしたじゃない。こっちが金払っているんですから。これ、みんなわかってますか?」(FNN 2018年8月3日 )

一方、受け入れ側のロシア人の対応もこのようなものだと参加者は語っています。

「日本とロシアの主張は並行線なんだと今回の訪問でつくづく思いました。(日本人が)『ロシアで税金払って』暮らすなら、(ロシアは)大歓迎ってことなんです。そしてこの活動の意義を明確にしないことで得をする人もいるんだなって」(FNN前掲)

これは領土交渉が進展を見せるかに見えた昨今でも同様で、ロシア側は共同経済活動はウェルカム、人口が少ないからロシアに税金を払ってくれるなら住もうが、会社を立ち上げようがどうぞご勝手にという態度です。

つまり、ロシアにとって北方領土は、ロシアの主権さえ認めるならば、開かれた土地ですよ、といいたいようです。

一方、鈴木氏が言う「平和条約締結のための手段」という意味は、こういったビサなし渡航を継続する中で互いに悪気はないんだという信頼関係を作り出し、それを平和条約に結びつけていくという流れをつくるということです。
すると平和条約を締結するには、国境線の確定をせねばなりませんから、本腰を入れた領土交渉につながるということになります。

では「主権」とはなんなのかといえば、それは統治権という言葉に置き換えてもいいでしょう。
そこに住む国民のために行政を敷き、税金を徴収し、治安を守り、軍隊を置くという諸権利のことです。

したがって、ロシアは北方領土で十全に主権を行使し、強力な軍隊を置いています。

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北方領土で軍隊を視察するメドベージェフ  ロイター https://www.newsweekjapan.jp/koizumi/2017/02/post-6.php

だからロシア外相のように「北方領土返還と呼ぶな」とまで言ってのける始末です。
彼らからすれば、日本にとっては「不法占拠」だろうと、ロシア人が血を流して得た土地は神聖な領土だというわけです。

日本人は強固に「固有の領土」という意識を濃厚に持っていますが、ロシア人にはそんなシャレたものはありません。
そもそもロシア民族の概念にないのですから、ラブロフと話すことは、宇宙人と「領土」について話すようなものです。

その理由は、これは中国もそうですが、領土というのは、伸び縮みするゴム風船のようなものだからです。
ちなみに米国も似たようなもので、メキシコのような周辺国からはカリフォルニアやテキサスをむしりとって領土にしてしまいました。
共通するのは戦争に勝てば、領土というゴム風船はパンパンに膨張し、負ければ縮むということです。

ロシアの起源は、882年頃に成立したキエフ大公国ですが、最初の首都はキエフで、えっ、そこってウクライナのいまの首都なのではと思う方、正解です。
このキエフ大公国は1240年に、モンゴルによって滅ぼされ、その後、モスクワ大公国へとつながっていきます。
ここで首都がモスクワになるのですが、以後ロシア・ツァーリ国(1547年~1721年)→ロシア帝国(1721年~1917年)と発展しました。
この間、ロシアが何をしていたのかといえば、東西南北に冒険商人を派遣して居住地を作ると、そこに砦を作って軍隊を置き、ひたすら征服をしまくっては領土を城げていたわけです。
そしてとうとうロシア版の「約束の地」である太平洋を臨む極東にまで到達したのです。ウーラー。

つまり、ロシア領のほとんどすべては「征服した土地」であって、日本のような海に囲まれた列島とその周辺の島々という海で区切られた分かりやすい領土ではなかったのです。
もしロシアに「固有の領土」はどこだと問えば、キエフとモスクワ周辺のえらく小さな国になってしまうことでしょう。

ロシアの後継国家であるソ連において史上最大の版図と、多数の衛星国を従えるようになったロシアは、第3次大戦、つまり冷戦に負けてナイアガラ瀑布の滝下りを演じてしてしまいました。
ロシア本体はかろうじて保持したものの、ソ連邦として領土化していたベラルーシ、ウクライナ、バルト諸国は独立し、外周部だった東欧圏はごっそりと脱落しました。
ロシアからすれば、歴史的な大縮小です。

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ウクライナ紛争 http://freezzaa.com/archives/1079

縮むと悔しいので、また元の大きさにもどすべく陰謀をめぐらし、相手を挑発し、戦争をしかけようとしました。
中国の習の夢が「中華の夢」と称して最大版図だった清朝領土の復活であるとすれば、プーチンの夢は最大版図だったソ連の復活なのです。
こうして起きたのがウクライナ紛争です。
このウクライナ紛争によってロシアは、現代国際社会の「国境線の力による変更を許さない」という国家間原則に触れてしまい、経済制裁を食うはめになります。

このように見てくると、丸山氏が言った「北方領土は戦争でなければ戻らないのではないか」というのはあながち的外れではありませんでした。
ロシア人知識人からこのような質問をされたことがあると、小川和久氏は述べています。

「1875年、樺太・千島交換条約で、樺太はロシア領、千島は日本領と決められました。ところが日露戦争の後、勝った日本は南樺太を領有しました。もし第2次大戦がなくて、現在ロシアが南樺太を返してくれと言い続けていたら、日本は返還してくれたでしょうか?」

おそらくノーでしょう。ましておや、「固有の領土」意識がないロシア人なら、ということです。

と言ってしまうとこれで終わりになるので、ここからが勝負なわけです。
今までのビザなし渡航を、戦略的に平和条約締結にむすびつけていこうとする政府の思惑もその一環です。

ところが今回の丸山発言は、ロシアには変な「安心感」を与えてしまったはずです。

「日ロ関係の流れの中で最もひどい(発言だ)」と述べ、批判した。モスクワで開催された日ロ知事会議の会場で記者団に述べた。 コサチョフ氏は「そのような挑発的な発言ができるのは、存在する問題の解決を望まない人々だ」と語った。(共同5月14日)https://www.sankei.com/world/news/190514/wor1905140004-n1.html

ロシアは別に怒ってはいません。常識的なことをマルヤマは言っただけでのことで、それ自体に驚きはないはずです。
むしろそれにオタつく政党や、待ってましたとばかりにバッシングに勤しむメディアの様子を苦笑しているだけのことです。
たぶんロシア人はこう思ったはずです。

「なんだヤポンスキーも我々と同じ発想じゃないか。日露両国の信頼醸成が大事だ、共同経済活動だとアベは言っているが、本心は戦争で奪い返すっていうオプションも持っているだな。そもそも日本の親方は米国だ。米軍にクリル諸島まで出張ってこられたらたいへんだ。この話は引き延ばすだけ引き延ばして、むしるだけむしってやるきゃないか」、と。

 

 

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コメント

鈴木宗男氏は、過去のインタビューで
>例えば今年(2016年)サケマスの流し網漁は禁止されていますが、色丹島が日本の領域ということになれば、流し網漁ができる。
これだけで、根室市の1年分の予算250億円に匹敵するほどなのです。

と言っていました。

ロシアとしては、排他的経済水域も考えれば、貴方たちはこれと引き換えになるような条件・利益を出せますか? 無理でしょ。ということになる。
だからこそ、ロシアで税金払って~って話になるのは、ある意味当然です。

日本には、北方領土「なんて」という感じの人も居ますけれど、その価値を知る所から勉強しないといけない時期だと思います。


>なんだヤポンスキーも我々と同じ発想じゃないか
価値観の違う国家との対話が難しいのは当たり前ですが、日本の周辺各国が揃いも揃って価値観が違うのは、日本にとっては不幸ですよね。
だからと言って、戦争も問題解決の手段の一つと考えられてしまうのは、日本にとっては周りの国が五月蝿すぎる。

国際社会の中で、安倍総理の肩を叩きながら「うんうん、わかるよ」って言ってくれる人、居ませんかね(笑)

衆議院が丸山らを北方に派遣した目的を考えれば、丸山の言動をかばう余地はないです。
けれど「ロシアとの信頼関係」だとか、「交渉の阻害要因になる」とか言った議論には疑問を感じます。

もともと安倍総理のねらいは戦略として「ロシアを敵に廻さない」事にあるのであり、領土の返還の方が副次的なものでしょう。その第一の効果はすでに半ば以上に得られていて、まして東アジアを取り巻く現今の状況をかんがみれば、ここでロシアが二島たりとも返還するはずもありません。

国後の人はもっと怒って当然と考える丸山の態度は「青臭い」といえば「青臭い」ですが、戦後の日本政治のあり方の本質を考えるうえで貴重な事件でした。

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